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<title>帰り道のマリアのブログ</title>
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<title>過去にいらしたお客様</title>
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<![CDATA[ <div><strong><font color="#7f003f" size="4">２００５年から、お部屋に来てくださったゲストの方々を紹介します。</font></strong></div><div><font size="5">　　　　　　　　　</font></div><div><font size="5"></font>&nbsp;</div><div><a href="http://www.geocities.jp/letteralbum/old-comment.html" target="_blank"><font size="5">http://www.geocities.jp/letteralbum/old-comment.html</font></a></div>
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<pubDate>Sat, 24 May 2014 07:10:42 +0900</pubDate>
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<title>最初に、４１通の手紙を公開</title>
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<![CDATA[ <div align="center"><img src="https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/008.gif" alt="ヒヨコ" width="16" height="16" draggable="false"><strong><font size="4">ハリウッド俳優</font><font size="4">へファンレターを送りました。<img src="https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/332.gif" alt="" width="16" height="16" draggable="false"></font></strong></div><div align="center"><strong><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20190803/02/6803087/fc/4a/j/o0250018814520572253.jpg" alt="イメージ 1" class="popup_img_250_188" style="HEIGHT:188px;WIDTH:246px;" width="250" height="188"></strong></div><div align="center"><strong></strong>&nbsp;</div><div align="center"><strong><a href="http://www.geocities.jp/letteralbum/old-diary.html" target="_blank"><font size="5">http://www.geocities.jp/letteralbum/old-diary.html</font></a></strong></div>
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<pubDate>Sat, 24 May 2014 06:52:35 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（62）</title>
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<![CDATA[ 　人を待つ心は、実はそれほど悲しく寂しくはない。逆に期待が持てるという嬉しさを感じないだろうか。負け惜しみかもしれないが、佳子はそう思い続けている。大石が現れたら、どんな話が聞けるのだろうか。今までの自分の生活をどこから語ろうか、そう考えると不思議と意欲が湧いてくるのだ。大石はきっといつかは帰ってくる。姿を消したままの表情から一体、どう変わった正体を再び現すのだろうか。<br>　そう考えるならば、楽しさも増すし、愉快でもある。佳子は閉店した居酒屋から帰宅する用意をしながら、頬に手を当てて物思いにふける。大石が戻ってくるのはいつか、明日なのか翌月なのか。年内なのか来年なのか。その時に、自分は生き方に迷いがあるだろうか。今のままでいるのだろうか。大石は何を得て帰ってくるのだろうか。何を求めに出掛けたのだろうか。<br>　佳子が自分自身を探す答えを見つけるのと、大石がそれを昇華して戻ってくるのは、どちらが先なのだろうか。これだけ生きてもまだ、わからないことはたくさんある。自分のこともわからない。社会のことも、今の商売のことも、これからのことも。この道を進むのに間違えてはいないだろうか。果たして、これでよかったのだろうか。少し、後戻りをして方向転換をしたほうがよいのか。<br>　「晃、あなたとの競争なのかな？」<br>店内の照明を消し、持ち物を抱えて、鍵をかける。カチリと音がして、ロックされる。扉を揺すり、戸締りの確認を終えると、佳子は外に出て夜空を見上げる。<br>　「明日も晴れるかしら、晃」<br>佳子は、いつも同意を求めるのに、大石の名を呼ぶ。心の中で話し掛けている。どうしようか、きっとそうよね、困ったわね、へいちゃらよ。<br>　「ねぇ、晃」<br>夜の道を歩きながら、自宅に向かう道すがら、佳子はまた、大石に語り掛けている。
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<link>https://ameblo.jp/6803087/entry-12500783036.html</link>
<pubDate>Fri, 04 Dec 2009 02:21:39 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（61）</title>
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<![CDATA[ 　あの日から、大石は消えてしまった。翌日は連絡があるかもしれない、２、３日すれば何事もなかった顔をして帰って来るのだろうと思いながら、そして佳子が店を１人で切り盛りするうちに、とうとう２年がいつの間にか過ぎてしまった。<br>　大石を信じているから佳子は、静かに待つことができたのだと思い返す。大石の友人や、焼き鳥店の元従業員たち、テニススクールの協力関係者へ、佳子はそれとなく大石の行き先に心当たりがないかを尋ねてみた。大石はだれにも何も言い残すことなく、蒸発してしまった。もしかしたら何かから逃げたかったのかもしれない。だとすると失踪なのだろうか。警察には、とうとう行方不明の届けは提出しなかった。佳子が自分はその立場にはないと思ったからである。どんなに大石のことを心配していても、自分は大石の身内ではない。<br>　大石が自分の元から去った理由は、あるはずだろう。だが、佳子にはどんなに考え、思い出しても残念ながら答えは浮かばなかった。佳子は大石の帰りを待ち続けた。待つうちに大石の消えた理由が何なのか、それは段々どうでもよくなってきた。とにかく大石はいつかは戻ってくるだろう。その日は一体いつなのだろうかと、佳子は考え始めるようになった。そして、また待ち続けるうちに、大石がいつ帰ってきてもよいように自分は心の準備をしておこう、と考えるようになった。<br>　店には、お客様のために季節の花を欠かさず飾っている。それに含めて、大石が店をもし訪れるなら、この場所でどのような角度で花に目が映るよう見せてあげようか、花言葉を調べ、どの花を見てもらいたいかを、佳子は思い描くようになった。<br>　大石が知らない、テーブルの配置を決め、食器棚の中も少しずつ整理した。カウンターの上に置く惣菜を盛り込む大皿食器の柄を変えた。<br>　「晃、あなたに、へぇ～変わったなぁ、って言ってもらいたいわ。この店、全然変わってないって言われるのより、ずいぶん変わったと私は言ってもらいたいのよ」<br>佳子は、居酒屋の火の元を確かめて帰り支度をしながら、居もしない大石に向かって、あれこれ語り出す。<br>　「店の中が変わったということは、それだけ時間が過ぎたということでしょ。長い時間、私が晃をこんなにも待ったんだ、ということを感じてほしいから、だから明日は、何をどう変えましょうかねぇ。あぁ、忙しくて目が回りそうよ、笑わないでね、晃。本当に本当なんだから」<br>佳子は独り言を続けながら、大石の声の響きを思い出すために、目を閉じて耳を澄ます。
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<pubDate>Fri, 20 Mar 2009 02:38:48 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（60）</title>
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<![CDATA[ 　海外での同時多発テロ事件を契機に、大石の運営するテニススクールのツアー契約者数は激減した。それにつれて不思議なことに国内受講の会員数も伸び悩み始めた。採算がとれなくなった。大石は目をかけていた男子中学生のコーチから手を引くのをとても残念がったが、いつまでも経営を続けるわけにはいかなくなり、苦渋の思いでスクールを閉鎖した。<br>　「晃の悔しさは、私はわかっていたけどね」<br>佳子は店の床を、縦型掃除機を使って汚れやチリを吸い取っていく。５年前から大石と佳子は、ここ神楽坂で新たに居酒屋を構えた。それまでの焼き鳥店は、収支を割り込んだ借金を返済するために手放すしかなかった。以前より狭い、ちっぽけな居酒屋だ。それでも、開店当初から客足は悪くなかった。またゼロからやり直せばいいと、大石も佳子も考えることができた。<br>　「どうして、居なくなったりするの？　私に何も連絡しないなんて、悲しいわよ。晃の心が見えなくなりそう」<br>佳子は掃除機を持つ手をふと、止めて天井を仰ぎ見る。<br>　大石が姿を消す直前に、佳子は居酒屋の客から妙なことを言われた。初秋に、常連の中年男性が佳子に伝えた。大石が席を外したときを見計らって、そっと佳子に耳打ちをした。<br>　「先日、この店で飲んでいたときのことだが、酔いでほてった体を涼ませるために、店外に出たところで妙な男が店の中の様子をのぞいているのを見た。その男は大石さんは居るかと自分に尋ねてきたので、ええ居ますよと伝えると、それなら結構と言い残して立ち去った。その男が歩いていく後ろ姿を見た時に、日本刀を持っているのに初めて気づいた」<br>　「いやだ、おどかさないでくださいよ」<br>と佳子は、酔客の冗談だと真に受けなかった。大石に伝えようか、どんな反応をするだろうか、そのうちに話そうと思っているうちに、大石が蒸発してしまったのだ。通常、大石と佳子は別々に居酒屋へ出勤した。開店時間前に佳子が先に店舗に到着し、いつものように店を開ける準備を始めた。大石がやって来ないことは、それまで１度もなかったが、体調でもくずしたのかと佳子は考え、開店したらそのうちに来るだろうと思っていたが、閉店時刻になっても現れなかった。どうしたのかと、マンションに帰って聞き出せばよい、テレビでも見ているに違いないと思って佳子は帰宅したが、マンションにも大石の姿は無かったのだ。
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<pubDate>Tue, 10 Mar 2009 03:15:51 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（59）</title>
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<![CDATA[ 　大石はずっと先のことを予知する能力、見通す能力に長けていたのかもしれない。佳子はいつも大石が自信満々に言い放つ様子に、つい対抗して「晃がまた、生意気を言っている。将来のことなんて誰にもわかりっこないのに」と心の中でため息をついたことが多かったと思い返す。でもやはり大石の予想は、当たっていたようだ。<br>　「ねぇ、晃。あなたの言った通りだったみたい。そうね、晃があのとき、オーストラリアで語ってたその時代が来たのかもしれないわね」<br>　佳子は、居酒屋の店内に並ぶテーブルの表面を台ふきんで水拭きをしながら独り言をつぶやき始めた。<br>　「今年は不景気ですって。この界隈の飲食街も店を畳むところが増えているみたいよ。私たちのこのお店、どうかしら。経済危機を乗り越えられるかしらね。でも、晃、あなたが帰ってくる前にここをつぶすわけにはいかないわよね」<br>　水拭きを済ませると佳子は、テーブルの上に椅子を逆さにして次々に載せていく。渋谷にあった佳子のマンションは３カ月前に引っ越した。大石が行方不明になってから２年目に、佳子は１ＤＫの三軒茶屋のマンションに移り住んだ。１人で暮らすには渋谷のマンションは贅沢になってきたと佳子は感じ、思い悩んだ末ではあったが、意を決して転居した。もし大石が渋谷のマンションに足を運んでも、佳子はそこには居ない。大石が佳子の前に姿を再び現すとしたら、この居酒屋に来るしかない。この店を畳むわけにはいかない、と佳子は毎日何度もそれを思う。<br>　大石が姿を消したのは、高円寺の家族の元に戻って暮らしているからなのだろうと佳子は当初考えていた。しかし、大石が経営していたテニススクールの昔の従業員仲間に尋ねると、そうではないとの答えが返ってきた。大石は忽然と蒸発してしまった。高円寺にも佳子の前からもいなくなった。<br>　数年前、アメリカで大勢の人々が一瞬にして亡くなる悲劇のテロ行為が起こった。その事故・事件を境にして、海外のテニスツアーをキャンセルする会員が続いたことがある。空港の出入国の検閲が厳しく取り締まられるようになり、誰もが日本国内でもテロ事件が勃発するのではないかと不安になった。
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<pubDate>Sat, 07 Mar 2009 01:46:58 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（58）</title>
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<![CDATA[ 　オーストラリアの日常生活を、現地人の行動を見ながら佳子は知った。少しの雨が降っても傘はささない。濡れるのを平気で歩いている。大降りになれば、やっと傘を取り出す。日本の街中の光景は、小雨がパラつくだけで、誰もが傘を広げる。周辺がすぐに傘のオンパレードになる。日本人なら、しかも女性なら、お洒落な柄（がら）の傘をたいてい持っているのだが、そんなカラフルな傘を現地では１本も見かけない。若い女性がモノトーンの無地の傘を当たり前の顔をして広げている。<br>　「ふうん」<br>佳子がうなると、近くにいた会員の１人が不思議そうに佳子の目をのぞき込んだ。同じツアーなので、１日経過しただけで、もうグループの同伴者たちの名前も顔も覚えてしまう。<br>　「佳子さん、どうしました？」<br>戸室（とむろ）と名乗る女性が佳子に親しげに声をかける。<br>　「オーストラリア人って、実に機能的な国民性ですよね」<br>佳子が答える。<br>　「やっぱり佳子さんも、傘のこと気づきました？　あんな若い女の子が濃紺の傘で、なんとも感じてないみたいでしょ。実にサバサバしてますね。先ほどのレストランでも思いましたけど、ウエイトレスは１人きりですよね。広々とした店内で、しかも会計まで担当してるのを見た時、私は驚いちゃったわ」<br>　「日本ならフロアに２人、お勘定係は別に１人、いつでもそのくらいは最低人数、いますよね」<br>　「そうでしょ。１人で動いているから、大変そうでした」<br>　「機能的って言うより、合理的っていうのかしらね」<br>佳子が戸室に同調したときに、大石が急に、会話に加わってきた。後ろを歩いて、２人の話を聞いていたようだ。<br>　「日本もそのうちに、そういう時代がくるよ」<br>　「まさか。そう？　そうかしら」<br>佳子は、あまりに無駄を省いて生活しているオーストラリアと、気ままな日本がかけ離れている印象をぬぐい切れない。<br>　「日本がいつまでもこんなに裕福でいられるわけは、ないさ」<br>大石は、ずっと前方を見て声にした。佳子や戸室に話しているのではなく、自分に言い聞かせるようにつぶやいているように、２人には見えた。
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<pubDate>Tue, 14 Oct 2008 02:15:47 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（57）</title>
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<![CDATA[ 　佳子の海外旅行は、３度目だった。８時間を航空機の中で過ごすのは初めてだった。オーストラリアは、やはり日本から遠くに感じた。睡眠と食事を繰り返しても、まだ時間が残った。航空機のエンジンの音は、かなり騒がしかった。過去の２度の海外旅行は、４時間もかからなかった。過去の飛行はエンジン音を気にするほど、長旅ではなかったのだ。でも今回、佳子は８時間もゴオーッという音を聞いていると、ずっと空中に体が浮いている不思議さから早く逃れたくなっていた。それでもテニススクールの会員と一緒の行動なので、佳子は周りに同化して目立たぬようにした。大石は、事務局のスタッフと共に、団体を統率していた。大石に面倒をかけないように、佳子はほかの会員と歩調を合わせた。<br>　日本人が数多くの世界の国の中でも、生活レベルが上だということを感じたのは、到着したメルボルンの空港でトランクの積み荷が、待機している人々の前に出てきたときだった。欧米人が回収する荷物は木箱だったり、布製バッグであるのがほとんどだった。かっちりしたスーツケースが運び込まれると、佳子と一緒の団体の者が、手を伸ばして回収した。上等なスーツケースの行方を目で追うと、別の団体の日本人が手元に引き寄せていた。<br>　空港からは、マイクロバスに乗り、優に１時間を移動した。長時間の空の旅の後に、さらに車で道路を進んだ。車窓から羊が群れている風景を見た。一般道なのだが、日本の高速道路のように３車線もある。対向車線は、樹木に遮られてよく見えない。土地が広大なのをすぐに肌で感じた。薄曇りの空気は涼しいというより、寒かった。日本では真夏のお盆の時期なのだが、南半球は冬である。バスの暖房もあまり効かない。座席のスプリングもよくない。日本の乗用車にはないことだと、考えながら佳子は窓の向こうの羊を見た。
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<pubDate>Mon, 06 Oct 2008 01:16:48 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（56）</title>
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<![CDATA[ 　国内の避暑地や高原でのテニスプレイに飽き足らなくなった人々は、佳子が思っていた以上に数が多かったようだ。ペンションやコテージで宿泊しながら気ままにスポーツを楽しむのは、最高に贅沢（ぜいたく）なイベントだと、佳子ならずとも誰でも最初はそう考えてはいたが、もっとそれ以上に休暇を思い出深く、輝くものにしたいという願いが徐々に、人々の心に増していったことも事実だった。<br>　テニスラケットを持ち歩く人たちを街で見かけなくなったと、佳子が思い始めたときには、すでにテニス人口は日本のテニスコートを抜け出して、海の外に居場所を求めていた。<br>　「えぇっ、晃。・・・今度はオーストラリアに行くの？」<br>　「そうだよ」<br>　「どうして海外でテニスをするのよ？　ちゃんとスクールでレッスンをすればいいじゃないの」<br>　「大型連休や夏休みは、海外のツアー参加者が殺到するんだ」<br>　「だからって、グアムやハワイじゃなくて、どうして今度はオーストラリアになるの？」<br>　「動物園でかわいい動物を見たり、昔のゴールドラッシュ時代の金鉱を観光したり、それをしながらテニスもプレイするんだ」<br>　「なんだかテニスは“おまけ”みたいね。観光がメインになっているわね」<br>　「実は俺もそこが心配なんだけどね、事務局がどんどん間口を広げちゃうんだよ。観光ツアーのオプションにテニスがあるぜって、この間、俺は皮肉を言ってはみたんだけどさ」<br>　「そうなの。でも晃のその顔は、とっても嬉しそうですよ」<br>　「う～ん、嬉しくなくは・・・ないな。そうだ、盆休みは佳子も一緒に行こう」<br>　「行こうって、どこに？」<br>　「オーストラリアの・・・テニスツアー」<br>　「えぇぇえっ・・・」<br>　「そうだよ、佳子も・・・行こう！」
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<pubDate>Fri, 03 Oct 2008 00:58:57 +0900</pubDate>
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<title>北の佳子（55）</title>
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<![CDATA[ 　橋本が帰り、佳子は店の暖簾（のれん）を降ろした。ふと空の彼方から、赤坂の天満宮の鐘の音が聞こえた気がした。雨の残る外気を吸い込んで、錯覚かと思いながらも昔のことを考える。あの天満宮に、ずっと時を戻して、大石から誘われ初詣に出掛けたのは、いったい何年前になるのだろう。暖簾を抱えた腕で、指を折り曲げて数え始める。その神社の隣に、大石はテニススクールを建設して、経営した。<br>　予想を越えて、開講時の生徒数は集まった。事前に佳子は不安にかられて何度も大石に話を聞いた。<br>　「ビヨン・ボルグやジョン・マッケンローが活躍したブームは過ぎているらしいけど、晃、大丈夫かしら。生徒が来てくれるかな」<br>　「もう１人、偉大な選手の名が抜けているぞ」<br>　「えっ？」<br>　「ジミー・コナーズの名が抜けている・・・」<br>　「それは、失礼しました」<br>大石はテニスのこととなると、急に自信家の顔つきになり、気質が変化した。いつもは柔和で、だれに対しても優しいのだが、大石は自身でも「頑固なテニス職人」だと佳子に漏らし、テニスに関しては妥協や安易な考えを一切嫌った。<br>　「全部ラバーコートにすれば、管理が楽でしょう」<br>と佳子が大石に言うと、<br>　「土や砂の維持管理を怠ってはいけないんだ。整備が行き届けば、クレイコートの味わいが広がって、テニスの奥深さがより理解できるから」<br>と至極、真面目に答えが返ってきた。素人の佳子はもう何も言えなくなった。大石のやりたいように、大石の考え通りまっすぐに進んでほしいと思った。<br>　佳子は焼き鳥店の営業を主体に受け持った。テニススクールは、大石に任せた。共同経営ではあっても、口を出すのは控えたほうがいいと感じ、すべてを大石の手腕にゆだねた。スクールの受講会員数がさらに増えて、経営が忙しくなると、やむを得ず大石は焼き鳥店には、顔を出す機会が減ってしまった。大石と相談して、それは仕方のないことなので、プロの板前を雇うことにして大石の多忙を切り抜けた。<br>　スクールは海外ツアーの申込者が殺到するほど、順調に運営していった。<br>　「晃、海外でテニスをしたいって思うくらい、テニス初心者がどうやってそんな楽しさを知るの？　どうやって面白さを教えているの？」<br>佳子は、どんどん会員数が増えていくのを不思議に感じ、大石に質問した。<br>　「テニスの知識を教えるんじゃないよ。俺が今までテニスについて知り得た体験をすべて結集して、パフォーマンスしているだけさ」<br>　「う～ん、よくわからないけど、上手にできているということね」<br>大石は、グアムやハワイでの海外ツアーを活発にこなすようになっていた。
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<link>https://ameblo.jp/6803087/entry-12500783026.html</link>
<pubDate>Sun, 24 Feb 2008 03:25:51 +0900</pubDate>
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