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<title>ドアの小説</title>
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<title>あとがき</title>
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<![CDATA[ この度ドアの小説を読んで頂きありがとうございます。<br><br><br><br>『雨の音色』はある某バンドのサイトを読んでいる内に出来上がってしまった話です。もしかしたら勘づいた方がいらっしゃるかもしれませんが…ファンの方々そして某バンドの方々すみません！<br><br><br><br>『十字架のピアス』はものすごく楽しく書かせて頂きました。友達がこの話はおもしろかったと言ってくれてすごく嬉しかったです。あと、色々こうしたらもっとよかったとか、色々感想を緊張して聞いていたのですが（笑）客観的に言ってくれて今後の参考にしたいと思います。<br><br>ただいま第三作目を制作中です。<br><br>ど素人で、まだまだ未熟で読み苦しいところがあると思いますが、これからも温かい目で見守って頂けたら幸いです。<br><br>よろしくおねがいします！うぃっしゅ！<br><br><br><br><br>ドアより
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<pubDate>Wed, 22 Oct 2008 16:06:27 +0900</pubDate>
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<title>十字架のピアス～4～完</title>
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<![CDATA[ 僕と沙羅は一定の距離を置いて仲良くなった。バイトの間だけ、僕は沙羅に会うことができた。深夜、暇な時は二人でよく話しをした。僕がここまで女に対して心を開いて話しをしたのは、沙羅が初めてだった。<br>彼女は僕の話しに相槌を打ち、僕からの質問をした以外は多くを語らなかった。そんな沙羅がもどかしくて、ある日バイトが終わり彼女を引き止めた。<br><br><br>「疲れてるに悪いけど、この後時間ある？」<br><br><br>彼女は少し考えて携帯電話を取り出して電源を切った。<br><br><br>「なんで電源を切ったの？」<br><br><br>沙羅は携帯電話を鞄に入れた。<br><br><br>「わたし、仕事以外は携帯電話を切りたいの。自分の時間を邪魔されたくないから。変かな？」<br><br><br>気持ちは分かる。けど、突然沙羅の声を聞きたくなった時、逢いたくなった時、いつも流れてくる機械的な女の声のアナウンスが流れたときを思い出したら僕は思わず「変だね」と言いたくなった。<br><br><br>「いいよ、時間あるから付き合うよ」<br><br><br>僕と沙羅はお腹が空いていたのでコンビニで余ったおにぎりや飲み物を手に、太陽がまだ顔を出さない午前5時過ぎにコンビニを後にした。<br><br><br>「どこに行くの？」<br><br><br>沙羅が隣にいる事だけで浮かれていて僕は、この先の事は何も考えていなかった。<br><br>僕は沙羅にバイクのヘルメットを渡し、僕はバイクに跨がった。沙羅は後ろの座席に座り僕の腰に手を伸ばした。彼女は無言だった。バイクを飛ばすと彼女が腰をさらに強く抱きしめてきた。<br>僕の心臓は飛び上がるほど高鳴りそして彼女をさらに愛おしく思えた。<br><br><br>着いたのは二人が初めて出会った神社だった。夏の太陽が早くも顔を覗かせかせていた。陽射しを避けるため僕たちは社の後ろの林に入りちょうど腰を下ろせる石で出来たボコボコの椅子のようなものに座った。沙羅は眠たいのか何度も欠伸をしていた。<br><br><br>「なにか話しがあるの？」<br><br>食べていたおにぎりをほお張りながら沙羅が聞いてきた。<br><br><br>「いや、何もないよ。ただ沙羅とこうして一緒にいたかったんだ」<br><br><br>自分が吐いた台詞に気持ち悪さを感じたが、それ以上にその言葉は自然と出た気持ちだった。<br><br><br>「ねぇ？今から彰くんの部屋に行ってもいい？」<br><br><br>沙羅からの意外な言葉に食べていたおにぎりが気管に入りむせた。<br>すると沙羅が僕の背中をさすってくれた。<br><br><br>「あ、ありがとう…」<br><br><br><br>沙羅を玄関の前で少し待たせている間、僕は部屋の中を急いで片付けた。なんとなく綺麗になった部屋を見渡し、玄関の扉を開け沙羅を部屋に招き入れた。<br><br><br>「綺麗に片付けたね」<br><br><br>「あはは、ばれたかぁ…日頃掃除とかしないから一気に片付けてよかったよ」<br><br><br>沙羅は笑ってから、僕の部屋を見渡した。僕はその間冷蔵庫からひんやり冷えたジュース取り出してテーブルに置いた。沙羅は開け放した窓をじっと見ていた。<br><br><br>僕は緊張していた。好きな子が自分の部屋にいるなんて。小学生が抱く淡い初恋のように、僕はドキドキしていた。<br><br><br>「沙羅、ジュース飲む？」<br><br>僕の声が聞こえていないのか沙羅は窓に立ちずっと外を見ている。<br><br><br>「沙羅？」<br><br><br>「ここからあの神社がよく見えるのね」<br><br><br>沙羅は振り向かず言った。<br><br><br>「彰くんは、あの夜起きた事件の時どうしてた？」<br><br><br>彼女の質問はいつも唐突だった。けれど、僕はずっと胸の中にためていた秘密を彼女に教えた。彼女だけには聞いてほしかった。<br><br>近くのコンビニから出るとき銃声を聞いたこと。そして、今沙羅が立っている場所から、神社の屋根に人が立っていたこと。<br><br>沙羅は相槌も打たずただ聞いていた。僕に背を向けて。<br><br>話しが終わると沙羅は隣にやって来てジュースを開けてぐいっと一気に飲んだ。そして僕を一度も見ずにテーブルの隅にあった、十字架のピアスを取り眺めていた。<br><br><br>「このピアスどこで拾ったの？」<br><br><br>今までの僕の話を一気に飛ばして聞いてきた。<br><br><br>「あの神社の林の中だよ」<br><br>沙羅はピアスを目に入るぐらいに近づいて見ていた。<br><br>「彰くん…」<br><br><br>僕は沙羅の言葉を待った。なにを言ってくれるのか少しだけ期待した。その時、沙羅は僕の身体を包むように抱きしめてきた。<br><br><br>僕の心臓はさらに激しくなった。<br><br><br>「もう一つだけ聞いていい…？」<br><br><br>「何？」<br><br><br><br><br><br><br><br>「貴方の本当の名前は？」<br><br><br>沙羅がその言葉を発した瞬間、僕は一気に力が抜けていった。<br><br>そしてカチッという音が耳の上で聞こえた。<br><br><br><br>「このピストルの意味が分かる？」<br><br><br>「沙羅、やっぱり君だったのか…？」<br><br><br>「そうよ。あの晩貴方がわたしの姿を見ただけならわたしは貴方を殺しはしないわ。<br>けれど、貴方は次に自分にくるかもしれない恐怖に怯えていたはず。だから必死になって、事件を探った。そうでしょう？井上雅弘くん」<br><br><br>「始めから全部知ってたのか…？」<br><br><br>沙羅が鼻で笑った。<br><br><br>「わたしは警察庁の秘密人間兵器。武器、武術を特訓させられてきた。けれどわたしが唯一ほかの人間に違うところがあった。それは…サイコメトリよ」<br><br>彼女は僕から離れた。相変わらずピストルをこちらに向けていた。<br><br>十字架のピアスを右耳につけた。ピアスはやはり彼女のものだった。左耳にも同じ十字架のピアスがちらっと見えたからだ。<br><br><br>「サイコメトリ…？」<br><br><br>「誰かの手に触れたりするだけで、その人の過去が見えてしまう。神社で貴方とすれ違うとき貴方はわたしが落としたポーチを渡してくれたのを覚えてる？」<br><br><br>そうあの時彼女と一瞬手が触れた。<br><br><br>「あの時少しだけ貴方の過去を見た。それを見て驚いたわ。まさか会ってもいないわたしが映ってたなんて…」<br><br>さらに続く。<br><br>「一年前付き合っていた女性とトラブルになり刃物で殺害。彼女の身体を切断し、それを段ボールに入れて彼女の家に送り付けた。その後貴方は名前も顔も変え、ここk市に引っ越してきた。」<br><br><br>「じゃあ…沙羅は初めから俺を…狙っていたのか？あのピアスも、バイトも全部…嘘だったのか？」<br><br><br>彼女が左手でピアスを触った。<br><br><br>「まさか、貴方が殺人犯だったなんて思わなかったわ」<br><br><br>「えっ…？」<br><br><br><br>「貴方のバイクに乗るまではね」<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>「何故奴を殺さなかった？」<br><br><br>相変わらず嫌な声だ。<br><br><br>「ピアスから全て聞いていたぞ。自分の素性を自分からばらすとは、沙羅、自分がしたことが分かっているのか？」<br><br><br>「はい」<br><br><br>「奴はいつか刑務所から出てくるだろう。その時、奴はお前を公にばらすかもしれんぞ。裏に警察が動いてると分かったら…」<br><br><br>「大丈夫ですよ。彼はそんな事はしません」<br><br><br>「何故分かる？」<br><br><br><br>「あの人は、彼はわたしを愛しているからよ」<br><br><br><br><br>「ふっ…相変わらず怖い女だ。おまえは。まあ、よい。沙羅、次の仕事だ」<br><br><br><br><br><br><br><br>「りょーかい」
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<pubDate>Thu, 16 Oct 2008 15:37:29 +0900</pubDate>
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<title>十字架のピアス～3～</title>
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<![CDATA[ 僕は海から帰った翌日から40℃近い熱を出し、悪夢のような夢を見た。<br><br>おかしい…<br><br>熱が身体も心も蝕んでいく。唯一の頼みの隆二とも連絡がつかない。僕はこのまま死んでしまうのではないかと本気で思った。身体が寒い…寒い…頭が…<br><br>僕は意識を失ったらしい。眼を醒ますと布団のシーツが汗で大きな水溜まりを作っていた。大量の汗をかいたせいか、熱がだいぶ下がったみたいだ。頭がしっかりしてきて身体が軽い。<br><br>今は朝の8時。僕は布団から出て水をがぶ飲みした。水分が体中に流れ込む。買っていたパンと牛乳を飲みながらテレビをつけた。朝からのニュースはどれも暗い。あの神社の事件ももう報道されなくなっていた。<br><br>携帯電話の着信音が鳴った。着信音相手は隆二だ。<br><br><br>「もしもし？」<br><br><br>「あ、もしもし、ワリィな、昨日電話もらったのにでれんくて…」<br><br><br>「あぁ～…大丈夫、大したことじゃなかったし」<br><br><br>「そう？じゃあさ…」<br><br><br>僕はその後隆二がまた新しい彼女が出来たと報告され、昨日は彼女に会ってたとまたご親切に報告された。<br><br>隆二の電話を切ると、バイト先に連絡をした。店長にまだ熱が下がらないといい、休みをとった。<br><br>熱が下がったおかげで僕は近くのコンビニに行き食べ物を調達した。その時ばったりと優香に会った。あの告白以来、優香とは会っていなかった。優香は僕を見つけるなり名前を呼んで歩み寄ってきた。<br><br>「久しぶり」<br><br><br>「あぁ」 <br><br><br>「元気だった？」 <br><br><br>「ん、まあ」<br><br><br>「なんか顔色悪そうだけど…」<br><br><br>「あぁ…」<br><br><br>僕は昨日から熱があると言いかけたが、これ以上言うのをやめた。彼女に要らない同情をされたくなかったからだ。<br><br><br>「バイトあがりだからかな。俺今から帰って寝たいから。じゃあな」<br><br><br>優香の返事を聞かず僕はこの場を去った。アパートに帰り僕は買ってきた食材を冷蔵庫に入れると布団のシーツ剥がし洗濯機にかけ、布団を小さな窓の縁にかけて干した。暑い陽射しに僕は目を細め、直線に位置する神社を眺めた。その時一人の女が神社の中を地面に這ながら歩いていた。なにか探しているようだ。<br><br>黒い長い髪が見える。黒い髪？長い…？<br><br>僕はテーブルに置いていた十字架のピアスを持ってアパートを出た。<br><br>神社にたどり着くと僕は階段を慎重にあがった。閑散とした神社にはさっきの女の姿はなかった。僕はひどい汗をかいていた。熱もまだあるというのにさっき無我夢中で走ってきたからだ。<br><br>僕は林の方に向かった。その時、黒い長い髪の女がこっちを見て立っていた。黒のキャミソールに薄手のカーディアンを羽織っていた。太ももまでの黒のズボンに黒びかりするブーツを穿いていた。<br><br>顔を見て僕は思い出した。ここで起きた事件翌日、階段ですれ違った女だ。<br><br>女は僕をじっと不審な顔で見ていた。耐え切れず僕は話した。<br><br><br>「君、ここで何してるの？」<br><br><br>女は黙ったままだった。<br><br><br>「あのさ…」<br><br><br>「探しもの」<br><br><br>「探しもの？」<br><br><br>「…ピアスよ」 <br><br><br><br>ビンゴ。<br><br><br><br>僕は片手に持っていた十字架のピアスを女に向けた。握ぎりしめていた手を開いた。<br><br><br>「もしかしてこれ？」<br><br><br>女は僕の手を見た。そして一歩一歩近づいてきた。女は僕の手の平からピアスを取ると僕の手の平に返した。<br><br><br>「違うわ」<br><br><br>僕の予想とは違う答えに僕は一気に恐怖から逃れた。もしこれが彼女のであればあの殺人に彼女は関与しているはずだ。僕はなんの根拠もないそんな回答にたどり着いていたのだ。<br><br>女は林を通り過ぎまた表の神社を探し出した。僕は一緒になって探した。<br><br><br>「どんな形のやつなの？」<br><br>「…アクアマリンが入っている丸いピアスよ」<br><br><br>女の声が少しずつ和らいだ口調になった。<br><br><br>「ほかの場所とか探してみた？」<br><br><br>「えぇ、でも思い当たるところ全部探したけどどこにもなかった。だから最後にここの神社を探してるの」<br><br>「そっか」<br><br><br>僕は青色に輝くものを必死に探した。彼女も必死になって探していた。しばらく二人は無言で探した。<br><br><br>神社のお賽銭箱の所を僕は探した。その時、何かを踏んだようで僕は慌てて足を上げた。そこにはアクアマリンが入ってある小さなピアスが落ちていた。<br><br><br>「あった！」<br><br><br>「本当！」<br><br><br>彼女は左と右の色の違う目を輝かせて僕の元に駆け寄ってきた。僕は丁寧にピアスを拾い彼女の手の平に乗せた。<br><br>彼女が左耳にピアスをつけた。そして僕を見て初めて笑顔を見せた。<br><br><br>「ありがとう！」<br><br><br>その笑顔はこの世とは思えないくらい美しく可愛かった。<br><br>今まで誰ひとり愛せなかった僕はその時一瞬にして彼女に惚れてしまったのだ。<br><br><br><br><br><br>南川沙羅。歳は僕より二つ下の19歳。仕事はしていないが時々臨時のバイトをしている。<br><br><br>「どんなバイトしてるの？」<br><br><br>「ん～色々。たまに嫌な仕事もあったけど…貴方は？」<br><br><br>「俺は夜からコンビニで働いてる。大学の近くにあるところ」<br><br><br>「楽しい？」<br><br><br>「別に…ま、生活するぐらいしか働いてないし楽しくはないけど、仲のいい友達もいるし、苦ではない…かな」<br><br><br>「ふ～ん。ねぇ、そこってさバイト募集とかしてないの？」<br><br><br>「えっ？」<br><br><br>「だって一度働いてみたかっただぁ、コンビニ」<br><br><br>「店長に聞いてみるよ」<br><br><br>「そう！やった、ありがとう」<br><br><br>沙羅は19歳にしてみればかなり大人の匂いがした。でも、笑うと少女みたいに八重歯を覗かせるときはやはり19歳に見える。<br><br>僕は彼女の連絡先を教えてもらった。そして僕たちは別れた。<br><br><br><br>翌日、バイト先の店長に沙羅を紹介したらさすがの店長も彼女の目に驚いたようでしばらく瞬きもせず沙羅を見ていた。<br><br><br>「履歴書を書いてきました」<br><br><br>店長が沙羅が出した履歴書を上から眺めるように見ていた。<br><br><br>「うん、いいだろう。君を採用するよ」<br><br><br>「ありがとうございます」<br><br>沙羅は僕にウィンクをした。それだけで僕の心臓はかなり速度を増していた。<br><br><br>沙羅は僕と同じ21時から5時までバイトを希望し、さっそく店長は明日から僕と沙羅と二人でシフトを組んだ。僕が沙羅に教えるように言われた。<br><br><br>沙羅はそれから用事があると言い僕と別れた。彼女ともっと一緒にいたかった僕は、さっき別れたばかりの彼女に携帯電話で電話をした。<br><br>しかしいくらかけても「ただいまおかけになった電話は電波の届かない場所か、電源が入っていないためかかりません」とアナウンスが流れるばかりだった。<br><br>アパートに帰り僕は十字架のピアスをとり布団の上に寝転がった。沙羅を一瞬でも犯人と疑ってしまった。けど沙羅はなんであの事件の翌日あの場所に行ったんだろう…僕はまた沙羅を疑っている自分に腹を立てた。<br><br><br><br><br>僕は翌日の晩、バイトで沙羅に手取り足取り教えた。彼女は覚えるのが早く僕がレジをしている間も教えた通りに棚に品物を陳列していた。彼女が時々僕を見る目が昨日とは違っていた。しかしすぐに笑顔を見せた。<br><br>彼女の姿ばかり目で追っていた。仕事が終わり僕は彼女を家まで送ろうと話したが、優しく拒否された。<br><br><br>そしていつものように電話は繋がらなかった。
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<pubDate>Thu, 16 Oct 2008 15:29:47 +0900</pubDate>
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<title>十字架のピアス～2～</title>
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<![CDATA[ その夜僕は、ひどい金縛りにあった。隆二にたたき起こされたときも、金縛りの余韻で身体が痺れなかなか起き上がることができなかった。<br><br>今日は大学は午後からで夜にはバイトがある。僕の身体が自由になると起き上がり、テレビをつけた。<br><br><br>「昨日23時40分、ｋ市にある神社で全国指名犯であった佐々木学被告が、何者かに心臓を銃撃され死亡しました。佐々木学被告は二年前…」<br><br><br>僕はニュースをあまり見ない方だがこの事件だけは何故かよく覚えている。それはあまりにも残虐的だったからだ。<br><br><br>「誰でも良かったから殺したかった」<br><br><br>佐々木被告はある女子高生の身体を切断。そして、内臓を引き裂きその子の家族の家の玄関にビニール袋の中に入れて置いていた。切断された身体はなんと彼女の通う学校の前に綺麗に並べてあったのだ。当時は毎日のようにその残虐ぶりをニュースにとりあげられていた。その後被告は逃走。二年の月日が流れ昨日何者かに殺された。<br><br><br>僕はある恐怖を抱いた震えた。そんな酷い殺人犯が自分の近くにいたことだ。考えただけで、身体が身震いしてきた。<br><br><br>昼からの午後からの講義をサボり大学にある図書館に行った。二年前のあの事件があった日からの新聞を細かく読みあさった。当時の事が事細かに書かれている。<br><br>僕は何故か必死だった。涼しい図書館なはずなのに何故か身体が熱い。ふと昨日見た事を思い出す。<br><br>屋根に誰かいた。髪が長かった。じゃあ、女？それにあの高さから綺麗に落下した。僕は新聞をもとにあった場所に戻し、一気に体温が上がる真夏の外に出た。<br><br><br>大学を出て向かったのは昨日事件があった神社だ。ここに引っ越し以来初めて行く。大学やバイト先への通路と反対側にあり、滅多に神社方面に行く事はなかった。<br><br>目的地にたどり着く。鳥居を抜け階段を数段上がると閑散とした風景がそこにあった。正面に社、その後ろは社を囲むように沢山の木があった。ただ一つこの神社に違和感を与えるなら、ちょうど真ん中に黄色いテープに囲まれた中に赤く染まった地面と、人型に囲まれた白の線だけだ。<br><br>昨日の事件、確かにここであったと実感する。そしてあの屋根に。高い社の屋根をじっと見つめると僕はその足で後ろの林を歩いた。ゴミばかりが捨てられていた。<br><br>いつしか僕は我を忘れるように神社を歩きそして何度も屋根を見上げた。<br><br>結局なにもなかった。ここに来ればなにか分かるかとそんな単純な動機は全て無意味であった。夜からバイトがあるのを思い出し僕は諦めても神社を後にしようとした。<br><br>ここまでなぜこの事件にこだわるのか。僕は昨日の晩、窓からあの人影を見なかったらいつものようにくだないと腹の中で笑っていたかもしれない。<br><br>けど、あれはどう見ても人だった。それが宙を舞って後ろの林に姿を消したのだ。<br>僕はなぜかどうしようもないくらい興奮していた。<br><br><br>階段を下りようとした時、下から真っ黒の髪が背中まであり、黒のキャソールに穴が所々破れたダメージジーンズを穿いていた女性が上ってきた。彼女は鞄からしきりになにかを探しているようで、僕と丁度すれ違う時鞄から何かを落とした。<br><br>黒く長いポーチのようなものが僕の足元に転がってきた。僕は転がってきたポーチを彼女に渡した。その時微かに手が触れた。<br><br><br>「…どうも」<br><br><br>一瞬の沈黙の後の彼女の声は短く冷たかった。この時初めて女の顔を見た。整った顔立ち。透き通るぐらいの肌が白い。薄い唇。そして…<br><br>僕は驚いた。<br><br>彼女の眼は左は黒、右は青だったからだ。<br><br><br><br><br><br>前期のテストが終わり、夏休みがやってきた。僕はテストやバイトに明け暮れたが、時々あの神社に行きなにか手掛かりがないか探した。そんなある時、十字架のピアスを林の中で見つけた。<br><br><br>夏休み。僕は久しぶりに隆二と二人で車を飛ばして海へ来ていた。提案したのは、隆二だった。二股野郎のこの男は先日浮気がばれ彼女と別れた直後、浮気相手の子にフラれた。その女は別の男の子供を身篭っていた。<br><br>隆二の立直りは早く、僕が夏休みに入るとすぐ二人でバイトを休んで海へ行こうと誘ってきた。夏。海には男も女も水着だらけ。奴の目的はやはりナンパだろう。<br>僕は、そんな奴の行動を遠く浜辺で眺めていた。それにしても暑い。肌がもうヒリヒリしてきた。<br><br><br>若い女が声をかけてきた。見た目は悪くない。胸もある。だが、僕は名前を聞かれても無視をしてその場に横になった。若い女は諦めたのか、どこかへいってしまった。<br><br>浜辺の砂が熱くて女が立ち去った後すぐ起き、なにか飲み物でも買いに行こうと思った。隆二はナンパに成功したらしく、女と楽しそうに海で遊んでいる。<br><br>僕はコーラを買って早速飲んだ。炭酸が喉を通りさっきまでの息がつまるような不快感は綺麗にさっぱり飲み込んだ。<br><br>海から離れ、誰もいない海岸線まで歩いた。防波堤に腰を下ろし僕は遥か彼方の水平線をただなにも考えず眺めていた。<br><br>しばらく眺めていると後ろから足音が聞こえてきた。何故だろうか？後ろを振り向く事ができない。<br><br><br>カツン…カツンと。ヒールの足音が僕の背後で止まった。振り向けない。何故だ？身体が固まってしまっている。<br><br><br>「何故ここにいるの？」<br><br><br>背後で女の冷たい声がした。僕は突然の事で思考回路がショートしていた。<br><br><br>「…と、と、友達と二人う、海にあ、遊びに、き来たんです」<br><br><br>「友達の姿が見えないけど？」<br><br><br>「あ、彼は、む、向こうの海で、遊んでいます」<br><br><br>「じゃあ、貴方はどうしてここに一人でいるの？」<br><br><br>どうしてか答えなくてはいけない予感だけはしていた。少しだけ冷静になると僕は深呼吸をして話した。<br><br><br>「一人で居る方が好きなんですよ。あまり人込みとか苦手で」<br><br><br><br><br>「わたしも嫌い」<br><br><br>しばらく沈黙が続くと彼女の声がさらに一段と低く、冷たくなった。<br><br><br><br>「貴方…死にたいって思ったことある？」<br><br><br>初対面の人間にかける質問ではないだろうと、僕は驚いた。<br><br><br>「ま、そりゃあ…」<br><br><br>なんて答えたらいいのか分からず曖昧に返事をする。<br><br>「人間なんて…」<br><br><br>後ろでカチッという音が聞こえた。<br><br><br><br>「儚いモノよ」<br><br><br><br>カツン…カツン…という音が背後から遠のくが分かった。僕の身体がその時やっと解放された。僕は後ろを振り返るが誰もいなかった。<br><br><br><br><br><br><br><br>「何故殺さなかった？」<br><br><br>「大丈夫よ。彼はわたしの事に気づいていませんから。」<br><br><br>「ふっ…まぁよい。しかし奴がおまえの存在に気づいたら容赦なく……殺せ」<br><br><br><br><br><br><br><br><br>「りょーかい」
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<link>https://ameblo.jp/a-1117-i/entry-10152212040.html</link>
<pubDate>Thu, 16 Oct 2008 15:25:19 +0900</pubDate>
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<title>十字架のピアス～1～</title>
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<![CDATA[ 銃声が夜空に鳴り響く。その感覚は快楽へと堕ちる。<br><br><br>「人間なんて儚いモノ…」<br><br><br><br><br>辺りが急に明るくなり人の声が聞こえてきた。さっきの銃声で不審に思った奴が警察に連絡したんだろう。<br><br><br>警察？ふっとな鼻で笑えてしまう。わたしがここに居て慌てて逃げ出す愚か者。<br><br>耳からのスピーカーから声がする。相変わらず嫌な声だ。<br><br><br>「殺したのか？」<br><br><br>「相手は銃を持ってたわ。ま、わたしの方が上だけどね」<br><br><br>倒れた男を見下した。周りにどす黒い血が溜まっている。たった一発で逝ってしまうとか、もっと遊びたかったのに。なんてね。<br><br><br>「もう、いい。すぐその場から離れろ」<br><br><br>「りょーかい」<br><br><br><br>警察のサイレンが聞こえてきた。宙を舞い上がり近くにあった神社の屋根へ上り下を見下ろす。<br><br>そしてすっと後ろの林に姿を消した。<br><br><br><br><br><br><br><br>「警察は身元を判明、今幼児連続殺人犯だと分かりました。今回の被告の事件は他殺として調べています。」<br><br><br>テレビをつけたら不快なニュースが飛び込んですぐまたテレビを消した。僕は、最近やたらニュースで報道されているこの事件に飽き飽きしていた。殺人犯が誰かの手に殺された。<br>きっと犯人に対して怨みがある奴の仕業だ。そう、僕はその時そう思っていた。<br><br>全身に熱いシャワーをかけてすぐ、タンクトップにジーンズのラフな服に着替え、軽く朝食を済ませ大学へ行く準備をして家を出た。<br><br>真夏の日差しが夏を感じさせる。早くも蝉の大合唱が聞こえ、僕は改めて夏は嫌いだと感じてしまった。<br><br>今日の講義は午前中で終わりだ。食堂でコーラーを買い講義がある教室へ向かう途中も蝉の大合唱が鳴り響いて、歩く速度を速めた。<br><br>相変わらずな講義だ。暇だ。教授がざわつく生徒に目もくれず淡々と喋っている。<br><br>つまらない…<br><br>講義だけじゃない。大学もバイトも人間関係も。<br><br><br>つまらない…<br><br><br>「彰くん！」<br><br><br>午前の講義が終わり、食堂でカレーライスを食べていた時だった。向かいの席にに座ったのは、派手なキャミソールを来た優香だ。<br><br><br>「ちょっといい？」<br><br><br>「どうぞ」<br><br><br>「あのさ…」<br><br><br>優香のウェーブがかかった髪からシャンプーのにおいと、カレーライスの独特の匂いが重なり合い、一瞬にして食欲が失せた。<br><br><br>「この前の告白の返事聞かせて欲しいんだけど…」<br><br><br>僕は優香から一週間前告白されたことを、今思い出した。<br><br><br>「ごめんけど…お前とは付き合えないから」<br><br><br>そう言い半分も食べてないカレーライスが乗ったお盆を持って立ち返却口に行った。<br><br>三浦優香。学科は違うが約一ヶ月前に、たまたま同じ講義で知り合った子だ。隣に座った彼女は、外見と同じく軽々と僕に名前を聞いた。スタイルもいいし、顔も男うけのメイクでばっちりで別に嫌いなタイプではなかった。<br>それから連絡先を交換して、何回か電話やメールのやり取りをした。優香が僕に告白する前の日に僕の部屋に彼女は遊びに来た。二人で酒を飲み僕は酔った勢いで彼女を抱いた。<br><br>彼女の好意には気づいていた。けど、僕には彼女は必要ではなかった。抱いたときも、僕は獣のように彼女を見下した。<br><br><br><br>「お前さ、なんで彼女作らないの？」<br><br><br>バイト先で知り合った一つ歳上の隆二が部屋に遊びに来ていた。なんとなくよくこいつにはなんでも話せてしまう。<br><br><br>「必要ないし、めんどくさいだけ」<br><br><br>「彰はカッコイイのにさ、もったいないね」<br><br><br>「別に」<br><br><br>「そういえばさ、お前はどんな子がタイプな訳？」<br><br><br>僕は今まで何人かの女性と付き合ってきた。タイプなんてみんな違う。ただ一つ言えば…<br><br><br>僕は、誰一人として好きではなかった。<br><br><br>「う～ん、いないね」<br><br><br>「ま、お前らしいな」<br><br><br>「二股かけているお前の方が疑問だよ」<br><br><br>隆二は彼女ともう一人女がいる。彼女の顔は知らないが、もう一人の女は同じバイトで働いている女だ。<br><br><br>「あれ、もうビールなくなったわねぇ」<br><br><br>酔った隆二がいつの間にか女言葉になっている。僕は笑うことを我慢して、ビールを買ってくると言いすぐ近くのコンビニに寄った。<br>コンビニでビールとつまみと煙草を買った。袋を持ちコンビニを出ようとした時店員の「ありがとうございました」と言う声と同時だった。<br><br><br>ドォーン！！<br><br><br>それはまさしく拳銃の音だ。僕はその音を聞いた瞬間心臓が止まるかと思った。周りがさっきの音にざわつき始める。消えていた周りの家から次々と明かりが燈されていた。<br><br>僕は今朝、ニュースでしていた事件を思い出した。すると全身に悪寒が走った。こんな近くで…<br><br>しばらくして警察の車がコンビニ前を通過した。僕はもうすっかりぬるくなってしまっているであろうビールを片手にしばらくその場から離れなかった。<br><br><br>三階立てのボロアパートに帰ってもさっきの凄まじい銃声の音が鼓膜から離れなかった。隆二はすっかり寝てしまっていて、僕はビールを冷蔵庫に入れ、買ったばかりの煙草を開け火をつけた。<br><br>窓の近くに立ち、そこからちょうど直線に位置する近くの神社の社をぼんやりと眺めた。神社の方が明るい。警察車のサイレンの明かりと人だかりが出来ている。<br><br>あまり遠くてよく見えないが、なにやら青のビニールシートも見える。もしかしたらさっきの銃声は…<br><br>そんな事を考えながらなんの拍子もなく神社の屋根に目をやった。僕は目を疑った。<br><br>真夜中である。辺りは暗かった。しかし僕は見てしまったのだ。<br><br>屋根の上に髪の長い人がしばらく立ちその後、宙を鮮やかに回転して後ろの林に落下していったのを。
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<link>https://ameblo.jp/a-1117-i/entry-10152210541.html</link>
<pubDate>Thu, 16 Oct 2008 15:19:40 +0900</pubDate>
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<title>雨の音色～7～完</title>
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<![CDATA[ 着信音が鳴りしばらくすると一瞬時間が止まったように向こう側から空白の空気が漂ってきた。<br><br><br>「もしもし？」<br><br>初めに言葉を発したのは悠からだった。変わらない優しい声。表情までも見えてきそうだ。<br><br>「悠…」<br><br><br>話したいことはやまほどあるのに続きが思いつかない。しばらく沈黙が続いた。<br><br>「手術はどうだった？」<br><br>重い沈黙を破り悠が質問してくれたおかげで、美雨は少し心が軽くなるのを感じた。<br><br><br>「手術成功したよ。今も症状は安定してる。悠…」<br><br><br>「ん？」<br><br><br>「ありがとう」<br><br><br>やっと言えた言葉だった。それ以上の言葉もそれ以外の言葉もない。<br><br>「俺はなにも…」<br><br>「悠のおかげだよ。手術をすることに背中を押してくれた。わたし、あの時悠に出会わなければ今こうしてアメリカにいる事なんてなかったと思うの。本当にありがとう…」<br><br>しばらく沈黙が続く。すると悠が、<br><br><br>「美雨…あのさ…話があるんだ。」<br><br><br>悠はこの時握りしめていた二枚の紙切れをさらに強く握りしめていた。<br><br><br><br><br>悠の話を聞いた美雨は通話が切れたあとも、戸惑いと喜びを噛み締めていた。<br><br><br><br><br>手術後一ヶ月たった暑い季節が訪れていた。<br><br><br><br><br>手元に届けられた便箋に二枚のチケットが届いた。ライブは明日夜18時ニューヨークのとある場所で行われる。一枚は美雨。もう一枚は母親へ。<br><br>悠が病院宛てに送ってくれた便箋のなかには一枚の紙に短く、<br><br>『待ってるからね』<br><br><br>と初めて見る悠の字。悠を想うといつも胸がチクチクと痛む。なんだろう…この気持ちは。<br><br>美雨は高鳴る胸をどうしていいのか分からず、手元に届いた少しシワの入っているチケットをもて遊んだ。<br><br><br><br><br><br>開演まであと一時間。母親と会場に到着した時、美雨は軽い眩暈を起こした。ライブが行われる会場の前には沢山の人々がうごめいていた。<br><br>会場に入ると熱気が肌に猛烈にあたる。もうすでに満杯になっているはずの人の中を母親と二人、前へ前へと掻き分けて進む。途中何度も人の足を踏んだり身体がぶつかりながらもやっと前の方に落ち着いた。<br><br>外も暑かったがここは尚更暑い。着ていた白のワンピースの下のキャミソールが汗でびっしょり肌に張り付いて気持ちが悪かった。。<br><br>まだ完全に健康な身体に戻った訳ではない美雨にとって、この状態で立っているというのはとても辛かった。隣の母親は娘の身体を心配しつつも、時々鼻歌を交えていた。<br><br><br>美雨は時計を見た。その瞬間爆裂な音が会場に響き、あらゆる方向から色華やかなスポットライトが前方に一斉に向けられた。<br><br>飛び上がる場内。音に負けじと行き交う声。ステージに立ったのはアメリカではメジャーなバンドらしい。<br><br>それと同時に現れた四人のバンド。アメリカのバンドと一緒に演奏を始めると場内はさらにヒートアップし、美雨はあまりの熱狂に唖然とした。<br><br>四人の東洋のバンドは激しく動き回り、ボーカルは英語で一緒に歌っていた。<br><br><br>美雨は呼吸をするのを忘れた。<br><br>ステージ右に全身黒で身を纏いメイクをして、激しくベースを弾いている悠を見つけたからだ。<br><br><br><br>一秒たりとも目が離せなかった。ステージに立っている悠。楽しそうにそして、真剣にベースを弾いている悠。仲間と楽曲が終わる度に肩を抱き合い抱擁しあう悠。<br><br>美雨はいつの間にか涙が流れていた。<br><br><br>悠、今やっと気づいたよ。<br><br>わたしは悠が…<br><br><br>好きなんだ……<br><br><br>約二時間のステージが終わりを告げた。<br><br>美雨は悠に対しするる気持ちをはっきり自覚したのと裏腹に、身体はひどく疲労していた。立っていることが限界なのを何回も感じたが、悠を見ながら深呼吸をしてまた限界へ挑戦していったのだった。<br><br>美雨はこの密閉された空間から早く出たかった。が、ステージ上ではなにやら薄暗闇の中淡々と準備がなされていた。他の観客も、もう終わったものだと帰ろうとステージを背にして歩く人が何人もいた。<br><br><br>美雨は少し周りに空間が出来たので、とりあえず膝をまげ身体を前に出して座った。隣にいた母親も同じ様に座ったが、彼女は来たときより顔が生き生きしていた。<br><br>15分くらい経過しただろうか。いや、それ以上か。ステージがパッと明るくなり、そこにはさっきあった楽器は全てなくなっていた。あるのは一つの椅子と、マイクスタンド。<br><br>帰ろうとしていた人々がなにかがはじまるのだろうかと思ったのだろう。また美雨たちの周りに集まりだした。美雨は立ち上がると軽い立ちくらみを起こしたが、なんとか目を閉じて深呼吸をした。少しだけ、疲労が回復していた。<br><br>周りがザワザワと騒ぎ立てた。<br><br>美雨もなにが始まるのかこの時分からず、ただステージを見つめていた。<br><br><br><br>悠がアコースティックギターを抱えて左から現れた時、場内はしーんと静まり返った。<br><br>さっき黒服に身を纏っていた悠ではなく、メイクも落としいつも日本で会っていた時ような白のＴシャツにジーパンに着替えていた。<br><br>マイクスタンドに立つと悠は静かに語りかけた。<br><br><br><br>『今日はみなさん来て頂いてありがとうごさいます。』<br><br>英語だった。<br><br><br>『僕たちのバンドがこうしてアメリカの方々に聴いていただけ、日本ではまだまだ名の知られていない僕たちですが、この場でまた成長させていただいたと思って感謝しております。今日は本当にありがとうございました。』<br><br><br>悠が一礼すると観客から拍手が湧いた。悠の話す英語が全く分からなかったが美雨もつられて手を叩いた。<br><br><br>『大変厚かましいとは思いますが、これから少しの間だけ…』<br><br>すると悠が美雨を見た。<br><br><br>『僕は彼女の歌声に惹かれまた彼女にも惹かれました。その歌声を僕だけではなく、みなさんにも聴いて戴きたいのです』<br><br>するとまた拍手が湧いた。賛成の拍手だった。<br><br><br>美雨はさっぱり分からず呆然と立ち尽くしていた。すると悠がいきなりステージ横の階段を下り、こちらに歩いてくる。美雨に近づいてきた。<br><br><br>「ど、どうしたの？」<br><br>答える間もなく美雨の手を引っ張り、人の列をくぐり抜けステージに立つと悠は、マイク後ろにある椅子に座った。<br><br><br><br>なに？どういうこと？<br><br><br><br>美雨が悠に問いただそうとした瞬間、悠がギターを弾き出した。<br><br><br><br>この曲は…？<br><br><br>場内からの拍手に我に返った美雨は、恐る恐る後ろを振り向いた。<br><br><br><br>この光景は……<br><br><br>沢山の人が美雨を見つめていた。鳴り止まない拍手。目を細めてしまったスポットライトが美雨を包む。<br><br>あの日見た夢と同じだ。<br><br><br>足元が震えて立ってもいられなくなり、振り返ると悠が満開の笑顔で口許だけで、<br><br>『頑張れ』と言った。<br><br>その笑顔に救われた。意をけして、悠が弾く曲に合わせて『ＡＭＡＺＩＮＧ ＧＲＡＥ』歌いだす。<br><br><br>「Amazing grace  how sweet the sound  …♪」<br><br><br><br>我を忘れるようあの河原で歌ったように、伸びやかに歌う。いつしか観客が美雨の歌声に聴き惚れていた。<br><br>ただ一人その中に母親だけは、娘の晴れやかな舞台に涙を流していた。<br><br><br>夢を…夢を覚えていてくれたんだね、ありがとう。悠。叶えさせてくれてありがとう。<br><br><br>美雨と悠は何度か目を合わせた。そしてその度に優しく笑いあった。
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<link>https://ameblo.jp/a-1117-i/entry-10151442372.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Oct 2008 18:48:49 +0900</pubDate>
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<title>雨の音色～6～</title>
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<![CDATA[ アメリカに着くと慌ただしく美雨たちは動き出した。二人して慣れない英語に悪戦苦闘しながらも、やっとタクシーで医師から招待された病院へたどり着いた。<br><br>時差ぼけで眠い目を擦りながら、美雨は到着するなり休む事なく診察を事細かにされた。<br><br>日本人の看護師が医師の通訳をしてくれた。担当医師の外国男性は明後日手術をすると告げた。<br><br><br>不安と恐怖が時差ぼけの身体を一気に逆転させた。手の震えが止まらない。隣にいた母親がそっと手を握ってくれた。<br><br><br><br>病室に着くころにはすっかり辺りは暗くなっていた。<br><br>迫りくる恐怖に嘔吐を繰り返した。しばらくして外国人の看護師が点滴をしてくれたり、母親が心配そうに額の汗を拭いてくれた。<br><br><br>その時母親の携帯電話が鳴った。母親は電源を切るのを忘れていたらしい。着信名を見るとすぐに、電源を切った。<br><br><br>「お父さんからだったわ。ごめん美雨、ちょっと電話してくるから…大丈夫…？」<br><br>美雨も悠に電話をしたかったが身体が疲れ果ててしまっていた。<br><br>「大丈夫。」<br><br>「そう…？すぐ帰ってくるから行ってくるわね」<br><br>「うん」<br><br><br>答えるだけで精一杯だった。<br><br><br>母親が病室を出て廊下を歩く音を聞きながら、美雨は目を閉じると、すぐに深い深い眠りについた。<br><br><br>手術前夜、母親の手を借り病院内の携帯電話使用可の場所まで移動していた。<br><br>食べ物を一斉受け付けなくなった美雨は、三日間で4キロも体重が減った。元から痩せいた美雨は頬がこけ、歩くこともままらなくなってしまっていた。移動はすべて母の手を借り、食事は両腕に青あざがいくつも残るほど点滴をした。<br><br>昨日は精神状態の不安定で夜は寝れず長い夜を過ごした。<br><br>一日何回もある精密検査や医者の説明も、恐怖からくる嘔吐も全身の汗。やり切れない思い。それらすべてを、胸の中にただ黙って弱音一つ吐かずにいた。<br><br><br>ただ手術の前の日に、どうしても悠の声が聞きたくなった。話すことも苦痛になっていた美雨がひさしぶりに発した言葉だった。<br><br><br><br>「お母さん…悠と話がしたい…」<br><br><br>母親はその言葉を聞くなり、美雨の鞄から白の携帯電話を取り出して、<br><br><br>「うん、行こう。きっと悠君待ってるわよ」<br><br>母親は美雨の体をゆっくりと起こして、左腕に流れている点滴を持ちながら美雨の体を自分の腕にしっかりと絡めて病室を後にした。<br><br>母親は娘がこの言葉を待っていたかのようにその動きは早かった。そして、病室から長い長い目的地の間、母親は両目にうっすらと涙をためていたのである。<br><br><br>薄暗い病院内に歩く二人。美雨はただらなぬ不安ばかりが渦巻いていた。<br><br><br>目的地にたどり着くと、ひんやりとした空気が美雨の体を透り抜けた。<br><br>ソファに座ると、母親が携帯電話を美雨に渡した。美雨は一瞬戸惑った。<br><br>悠の声を聞くと全てを吐き出しそうで、泣き出しそうで、迷惑しないだろうか…今なにをしているのだろうか…<br><br>しばらく携帯電話を見つめていた。<br><br><br>その時、母親が隣で呟くように話し出した。<br><br><br>「アメリカに着いてね、携帯電話の電源を切っていたの。もしかしたら、悠くん、心配して何度もかけてくれたかもしれないわ。発つ前に悠くんに話したんでしょう？着いたら連絡するって。…今まではずっと辛くてしたくてもできなかったのをお母さんが一番知ってるから…」 <br><br><br>「お母さん…」<br><br><br>母親の言葉が、美雨を決意させた。携帯電話のアドレスから悠を見つけだして発信ボタンを押した。<br><br>耳に鳴り響く音と心臓の音が重なり合うように動いていた。<br><br><br><br><br>着信音が虚しく鳴り響く。そして留守番電話に繋がると美雨は電話を切った。<br><br><br>「それでいいの？」<br><br>「うん…いいの。きっと向こうは昼ぐらいだから悠は忙しいんだよ」<br><br><br>「そう…」<br><br><br>「…帰ろう」<br><br><br>美雨は手を差し延べて儚い笑顔で母親に言った。そして来た道を虚しい気持ちで帰っていった。<br><br>昨晩寝れなかったため医師から指示されていた睡眠剤を飲んで美雨は眠りについた。<br><br><br><br><br><br><br><br>「美雨の夢は何？」<br><br>悠の声が聞こえてきた。すると画面が変わり目の前に何人もの人がいる。スポットライトが当てられて大きな拍手が聞こえてきた。すると突然辺りが真っ暗闇になった。悠の姿が現れて急に暗闇に吸い込まれるように消えていった。<br><br><br>どこへ行くの？…悠？悠！<br><br>自分の叫び声で目が覚めた。美雨の右目から一筋の涙が流れているのに気づくとさらに涙が溢れてきた。<br><br><br>悠……<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>美雨は父親から貰ったお守りを母親に渡した。母親は今にも泣きそうな顔をしていた。<br><br>ストレッチャーに乗せられ手術室に向かう。美雨は不思議に冷静だった。なにも感情をもたらない人形のように天井を見ていた。手術室に入り麻酔が打たれた。美雨の意識は遥か彼方へ飛ばされた。<br><br>生きるか死ぬか分からない。ただもう自分が受けた宿命を逃れるわけにはいかない。恐怖も不安もなかった。<br><br><br>意識を飛ばされた美雨は、新しい鼓動が聞こえてくるまで10時間にも及ぶ手術を受けたのだ。<br><br><br><br><br>どくん…どくん…と心臓の音が聞こえてきた。頭が白く霞み視界がうっすら開けていく。静かな病室が慌ただしく動き出すのを肌で感じた。<br><br>目を覚ました美雨に母親はすぐに医者を呼びだしたようだ。酸素ボンベを外された。外国人医師と日本人看護師の女性が美雨に話し掛けてきた。<br><br>美雨はいくらかの質問にただ頷くことしかできなかった。<br><br><br>「どうやら手術は成功したようです。もう大丈夫ですよ」<br><br><br>母親はその言葉を聞いて安堵のため息をつき、病室を出ていく医師と女性に頭を下げた。<br><br>美雨は微かに左手を心臓に移動させた。<br><br><br>動いている…生きている…<br><br><br><br>心臓を撫でるように美雨は自分が生きていることに嬉しさが込み上げてきた。すると母親が手を握って、<br><br><br>「よかったね…美雨…本当よかった…」<br><br><br>泣いていた。美雨はただ頷いた。<br><br><br><br>絶対安静の日何日か過ぎると、症状が安定したとの事で一般病棟に移さる。手術後の経過もよく、美雨も一人で歩き回れるぐらい回復し、新しい心臓はすっかり身体に馴染み、生き生きと活動していた。<br><br><br>大きな国際医療の病院の屋上は遥か彼方に海が見える絶景で、微かに潮の香りが漂ってきた。美雨はその海を眺めながら歌いはじめた。<br><br><br><br>美雨は携帯電話使用スペースまで来て携帯電話を取り出した。そして悠に電話をかけた。
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<pubDate>Tue, 14 Oct 2008 18:46:24 +0900</pubDate>
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<title>雨の音色～5～</title>
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<![CDATA[ 悠は美雨がアメリカに発つ日、その夜に控えていたライブのリハーサルが急に早まった事を、バンドメンバーの雅から連絡を受けた。仕方なく準備に取り掛かったが、さっきからの苛立ちがおさまらなかった。<br><br>昨日美雨の歌声を帰ってすぐにｉＰｏｄに入れた。苛立つ悠は部屋中に溢れんばかりに美雨の美しい歌声を流した。<br><br><br><br>美雨…<br><br><br>美雨に連絡した。電話ごしに聞こえてくる美雨の声が微かに震えていた。いますぐ側にいってやりたい気持ちを抑え切れなくなった。リハーサルに間に合うようにすぐ準備を済ませ家を飛び出しタクシーを拾って空港に向かった。<br><br><br>道中、携帯電話が鳴った。着信はさっきかかってきた雅からだ。<br><br><br>「今どこにいるんだ？」<br><br><br>「タクシーにいる」<br><br><br>「やっぱり…どこにいくつもりだ？あの子のところか？」<br><br><br>「そうだよ。リハーサルに間に合うようにするから」<br><br>雅は唯一美雨の存在を知っているメンバーだ。ギター担当の雅から、美雨が歌う曲を教えてくれたり、ギターの弾き方を教えてくれた。夜遅くまで付きっきりで教えてくれた。<br><br><br>雅は少し考えてから、<br><br><br>「今日は大事なライブだ。行くのはやめていてくれないか」<br><br><br>「なんでだよ！リハには間に合うように帰ってくるから！」<br><br><br>「悠…おまえにはあの子を支えてあげれる力があるのか？」<br><br><br>悠は一瞬にして言葉を失った。<br><br><br><br>「もうこれ以上深入りするな。支えられる力があるっていうなら俺は止めない。好きな気持ちだけじゃあなにもできない事だってあるん。支えれない力がないなら行くな」<br><br><br><br>「俺は…美雨を……」<br><br>もしもの場合支えてあげれるのだろうか…？<br><br>俺は…<br><br><br>「行くのも行かないのもお前自身だ。リハで待ってるから。ん、じゃあな」<br><br>通話が切れた。悠は美雨を好きな気持ちだけは確かだった。美雨の為に必死になってギターを覚えたり、毎日見舞いに行った。ただそれは彼女の笑顔が見たかったから。<br><br><br>悠はタクシーの運転手に行き先を変更するように伝えた。<br><br><br><br><br>「おっはよー！」<br><br>リハーサル場所に現れたビショビショに濡れた悠。雅を除き残りのメンバーは、いつもと変わらず冷やかしたり、冗談を言いながらタオルを渡したくれた。<br><br><br><br>悠は乾いたシャツを持ってトイレに入り濡れたシャツを脱ぎ捨てた。そして、ドアをドンッと拳で何度も叩いた。<br><br>俺は美雨を支えてあげれる自信が…分からないよ…<br><br><br><br><br>彼女を愛するが故に自分がそのためになにもしてあげれないことに気づいた。もう…考えるのはやめよう。<br><br><br>ライブが始まった。我を忘れるようにベースを弾く指が傷ついてしまうように激しく動いていた。<br><br>雅が横目でそんな姿をちらりと見た。<br><br><br>ライブが大盛況で終わると悠はすぐ帰ろうと急いで会場を後にした。その時、後ろから声がした。<br><br>「おい、悠」<br><br>悠はその声を無視して早足で歩き出した。<br><br><br>「待てよ」<br><br><br>雅が思わず走り悠の肩を止めた。<br><br><br>「…会ったのか？あの子と」<br><br>悠はまた早足で歩き出した。<br><br><br>「今朝は悪かった…けど俺は」<br><br>「わりぃ…今一人にさせてくれないか…？」<br><br><br><br>雅の言葉を遮るように悠は淋しそうに言った。雅は肩をすくめ反対方向へ歩き出した。<br><br><br>頭がずしりと重い。帰りの電車も歩き行く道もどう帰ったか分からない。気づいたら部屋中に溢れんばかりに美雨の歌声が流れていた。<br><br><br>初めて聴いた時全身に鳥肌がたった。あの声を聴きたくて毎日彼女が現れる河原に足を運んだ。彼女と打ち解けていくうちに次第に彼女に惹かれていった。<br><br><br>悠は突然どうしていいのか分からない感情を部屋中に当たり散らした。その時なにかがｉＰｏｄに当たった。突然美雨の歌声が聴こえなくなった。<br><br>悠は全身で息をしている身体をベットに倒した。<br><br><br><br><br><br>玄関からチャイムの音が聞こえてきた。と、同時に鞄から携帯電話が鳴りだした。でも悠は出る気力なくもどちらも無視した。<br><br>するとまたチャイムがなる。また。また。それでも悠は出なかった。携帯電話はいつしか諦めたように静かになった。すると、玄関の向こうから聞き慣れた声が聞こえてきた。<br><br><br><br>「おい！悠。生きてるのか！死んでるか？」<br><br>足かどこかで勢いよいよくドアを蹴飛ばしたのは雅だった。<br><br><br>しばらくして玄関が開いた。二日前とうって変わった悠の変貌ぶりに、雅は驚きを隠せずにいた。目は真っ赤に充血していて、もとから色白い肌が青い淀んだ肌に変わっている。なにより頬はこけ、見るからに死人のようであった。<br><br><br>悠は雅を部屋に入れるなりすぐまたベットに横になった。雅は部屋の荒れ模様をただ呆然と眺め悠を見た。<br><br>悠は雅に背を向けたままだった。雅はあの時自分が発した言葉に今更ながら後悔した。<br><br><br>「悠…昨日もろくになにも食べてないんだろう？お前の好きなマンゴープリン持ってきたから食べや」<br><br><br><br>無言の悠。雅は辛うじて空いていたテーブルの隅に袋を置き、床に散らばったガラスの破片や紙屑、服、大量のＭＤ、敗れた雑誌、漫画を片付けはじめた。<br><br>ふと悠が重たい身体を起こして、ｉＰｏｄへ近づいていく。雅は悠のふらつく体を心配して近くに寄ると、<br><br><br>「あれ？それここが壊れてるよ？悠、ちょっと貸して。たぶんすぐ直せるから」<br><br>手先の器用な雅がｉＰｏｄを5分足らずで直した。それを悠に手渡すと雅はまた片付けを続けた。<br><br>その時だった。雅は全身に鳥肌が立つのを感じた。ベットに横たわっている悠の腕の中から美雨の美しい歌声が流れてきた。<br><br>持っていた漫画を床に落としてしまった。だが雅は美雨が奏でる歌声にじっと耳を傾けていた。動くことさえ許されない。<br><br>悠はその歌声に二日ぶりに安らかに寝息をたてて寝れることができたのだった。
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<link>https://ameblo.jp/a-1117-i/entry-10151440039.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Oct 2008 18:44:07 +0900</pubDate>
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<title>雨の音色～4～</title>
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<![CDATA[ 悠と知り合って美雨は日に日に明るくなった。母親が驚くほど、美雨は笑顔が増え、悠との事を楽しく話した。 <br><br>悠は毎日のように見舞いに来てくれた。たわないのないことも、真剣な話も、二人は笑いときには喧嘩になったり沢山の時間を過ごした。 <br><br>いつの間にか美雨にとって悠はかけがえのない存在になっていた。<br><br><br><br><br><br><br><br>ある日悠は、美雨の母親から心臓移植の話と今まで手術を拒んできたこと聞いた。<br><br>ちょうど美雨が診察で病室にいなかった時だった。悠はしばらくして帰ってきた美雨を屋上に誘った。<br><br><br>屋上まで悠は無言だった。いつもの人懐っこい表情すらない。<br><br><br><br>桜は完全に綺麗な姿を隠し新しく小さな芽が出し始めていた。屋上に着くと何人かの患者さんがいた。<br><br><br>悠は真っ直ぐ空いているベンチに座り、美雨はいつもと違う悠に遠慮がちに距離を置いて座った。 <br><br><br>「…悠？」<br><br>美雨がおそるおそる名前を呼ぶと悠は突然話を切り出した。<br><br><br>「美雨、どうして手術を拒むんだ？」<br><br>美雨はふいをつかれたようでしばらく悠の顔を見れず俯いていた。<br><br><br><br>「…さっきおばさんから心臓移植の話を聞いたんだ。俺…正直すげえショックだったよ。なんで今まで言ってくれなかったんだろうとって。」<br> <br><br>「ごめんなさい…」<br><br><br>「違うよ？別に責めてないし今まで言えなかっただと思うし…けど、少しでも治る可能性があるなら信じてみようや」<br><br><br>美雨はいつの間にか涙が溢れてきた。悠は優しく涙を拭いてくれた。<br><br><br><br>「…ずっと怖かったんだよぉ…」<br><br><br>美雨は言葉にならない声で言った。<br><br><br>手術を今まで拒んできたのは本当に怖かったんだ。助かる可能性をどうしても信じることができなかった。悠の言葉が胸を痛めた。<br>涙が次から次へと溢れ出して困った。美雨は踏み出せない自分の弱さを憎んだ。<br><br><br><br><br><br><br>「美雨の夢はなに？」<br><br><br>悠が涙を拭いてくれながら聞いてきた。<br><br><br>わたしの夢…<br><br><br>今まで考えたことがなかったといえば嘘になる。ただ一つ。美雨には心の支えがあった。<br><br><br><br><br><br>「いつか大勢のみんなの前で、歌を歌いたい…」<br><br><br>美雨は今まで胸のなかで隠してた光を初めて他人に話した。悠は笑うだろうか…<br><br><br><br><br>すると突然美雨の身体を抱きしめて、<br><br><br>「そのときは俺を招待してくれよな」<br><br><br><br>美雨は悠の胸の中で何度も頷いた。<br><br><br>次の日、美雨は心臓移植の話を担当医師にお願いしますと頭を下げた。小さい頃から、お世話になっている女医は驚きと安心の表情を現し、最後に強く抱きしめてくれた。<br><br><br>躊躇してた美雨の背中を押してくれたのは、昨日の悠の言葉だった。<br><br>信じてみよう。<br><br>美雨は改めて悠の存在の大きさを感じた。<br><br><br>アメリカに発つのは三日後。母親は必要な荷物を家から持ってきて美雨と一緒に少しずつ荷造りをした。母親もついて来てくれるのが心強かった。<br><br><br>アメリカに発つ前日、外出届けを出した。悠と、ある場所で待ち合わせをしていたからだ。<br><br>母親が珍しく化粧を施してくれ、お気に入りの洋服に身を包んだ。 <br><br><br><br><br>柔らかな日差しが美雨の全身に降り注ぐ。眼を細め太陽を見つめながらも、美雨はこれから悠に会う嬉しさに足を早めた。<br><br><br>河原に近づくにつれギターの音が流れてきた。悠は昨日電話で、今日は予定があって来れないと言って見舞いには現れなかった。その時の明日ここで会おうと約束した。<br><br><br>美雨は汗ばんだ額をハンカチで当てながら久しぶりに公園に入り河原にいる悠の姿を見つけた。<br><br>「悠っ！」<br><br><br>振り向いた悠はしばらく眼を瞬きしていた。<br><br>お化粧をしたのは成人式以来で、すごく恥ずかしかった。<br><br><br>河原を下り悠の隣に行こうとすると奇妙な機械が眼についた。<br><br>「悠、なにこれ？」<br><br>悠はまだ美雨の顔を見ている。なぜか照れている。<br><br><br>「悠っ！ちゃんと聞いてる？」<br><br> <br>美雨の顔が怒りだした顔になると、悠はケラケラ笑ってますます美雨は頬を膨らませた。<br><br><br>「ごめん、ごめん。だって今日の美雨めっちゃ綺麗やから…でも怒ったらやっぱりいつもの美雨だな」<br><br>美雨は自分の顔が熱くなるのを感じた。そして今まで感じたことのない不思議な気持ちになった。<br><br><br>「あ、これな。録音機。今日は美雨の歌をいっぱい聴きたいだ」<br><br>「わたしの歌を録音するの？」<br><br>「明日から美雨はアメリカに行く。今までみたいに会えなくなるけど、美雨の歌を聴いたらいつも隣に美雨がいてくれるような気がするんだ。…嫌かな？」<br><br>「全然！」<br><br><br>美雨は嬉しかった。<br><br><br>悠がわたしを必要としてくれている。わたしの歌を聴いてくれる。<br><br><br>悠が何の前触れもなく録音ボタンを押しギターを弾いた。<br><br>この歌は…<br><br>美雨がこの河原で毎日のように来てた時いくつもの歌を歌った。どれも覚えていてくれてたんだ。<br><br><br><br><br>悠のギターの音色と美雨の歌声が鮮やかに二人の世界を包んでいた。<br><br><br><br>すべての準備が整った。お世話になった医師や看護師に挨拶をして父親の車に二人分の荷物を入れ空港へ向かった。<br><br>外は生憎の大雨だった。新緑の芽が久しぶりの恵みを受けて輝いて見えた。<br><br>美雨は不安と緊張で今にも発作が出そうだった。その時上着のポケットに入れていた携帯電話が振動した。着信は悠からだ。<br><br><br>「もしもし？」<br><br>「あ、美雨。おはよう。今どこ？」<br><br>「今、空港に向かってる途中」<br><br><br>悠はそれから一息入れた。<br><br>「そっか。ごめん、今日朝から仕事が入って見送りいかれなくなった。ごめんな…」<br><br>美雨は内心ひどくショックを受けた。<br><br><br>「そっか…仕事頑張ってね。またアメリカ着いたら連絡するね」<br><br><br>「うん、ごめんな…手術成功するように祈ってるから」<br><br><br>「うん、ありがとう」<br><br><br><br>通話が終わると美雨は酷く震えていた。昨日悠に会ったばかりなのに、声を聞いたらまたどうしようもなく会いたくなった。なんだろう…この気持ちは……<br><br><br><br><br><br><br><br><br>悠のバンドはいわゆるヴィジュアル系のバンドで担当はベース。<br><br>一部では物凄い人気があると、母親がある日悠が載っている雑誌を持ってきた事があった。また、悠に内緒でＣＤを聴いたこともある。初めて聴く曲調に美雨は初めは驚いた。<br><br><br>でも歌詞はどれも共感できた。自分は死んでしまうのではないかと毎日のように発作が起きたときや、一時期母親を憎んだこと、自分の身体を壊したくてたまらくなった時のことを思い出し泣いたのだ。<br><br><br><br>美雨はそのＣＤを鞄から取り出しぐっと握りしめた。<br>そうすることでまた悠の声が聞こえてきそうで少しだけ落ち着いた。<br><br><br><br>空港に着いた時は雨はあがっていた。荷物を下ろし、父親に笑顔で行ってくるねと言った。父親は美雨にこれを持っていきなさいと小さい紙袋を手渡し、日本で待ってるからと優しい笑顔を向けて車は去って行った。<br><br><br><br>アメリカ便に乗り込み父親から貰った紙袋を開けると『健康成就』のお守りが入っていた。<br><br><br><br><br>ありがとう、お父さん…<br><br><br><br><br>美雨たちを乗せた飛行機はゆっくりと離陸し始めた。
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<link>https://ameblo.jp/a-1117-i/entry-10151439215.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Oct 2008 18:41:03 +0900</pubDate>
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<title>雨の音色～3～</title>
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<![CDATA[ 点滴が外れ、食事も食べれるようになり、歩いて屋上まで上れるほど回復した。美雨は屋上からぼんやり空を眺めていた。雲がゆっくり流れていく。<br><br>美雨は流れゆく雲に向かって歌いはじめた。<br><br><br><br><br><br><br><br><br>「移植ですか…？」<br><br><br>美雨の担当医師は母親に告げた。<br><br>「アメリカに有名な心臓移植の医師がおられます。このまま、日本にいて現状維持のため薬や治療してもまた今回のような発作が続くと………」<br><br><br><br>「それは手術をするってことですか？それで美雨の心臓は…心臓は治るんですか？！」<br><br><br>「落ち着いてください、お母様…ただし……本人が手術をするという意欲があればの話です」<br><br><br><br>母親は言葉を濁した。これまで何度も心臓の手術を美雨に話したが、美雨は首を縦に振らなかった。どうしてか？と尋ねても美雨はなにも言わずいつも寝てしまうのだ。<br><br>母親は病室に戻ると娘の姿がないことに動揺したが、すぐ屋上の方に向かった。<br>階段を上がるたび娘の美しい歌声が聞こえてくる。<br><br>これまで母親として自分は失格だと責め続けた。堪えきた涙が流れだすと足を止めた。<br><br><br><br>『あの子を健康な体に産んであげたかった…』<br><br><br><br><br><br>母親の悲痛な叫びを美雨の美しい歌声が空高く運んでいった。<br><br><br><br><br>満開だった桜たちが散りゆく頃、美雨は医者と母親から心臓移植の話を聞いた。<br><br>散りゆく桜がまるで桃色の雪のように儚く落ちる。<br><br><br>病院のベンチに座り美雨は、医者の言葉を思い出す。手術が成功すればもうあの苦しい発作はなくなる。けどもしダメだったら…？<br><br>美雨は怖かった。死という恐怖も残される家族も考えれば考えるほど、イエスと言えなかった。今日も答えはいつもと同じだった。<br><br><br>美雨の頭に桜が落ち、手を伸ばしてみる。桜の木は遠い。そしてふと思い出した。<br><br>母親に一日だけ外出をしたいと頼んだ。それは病院に運ばれて一週間後のことである。<br><br>「お願い、今日一日だけ」<br><br>「…どこに行くの？」<br><br><br>「河原に忘れ物を取りに行くの」<br><br><br>母親はなかなか許してくれなかったが、やっとのこと了解を得て、医者に外出届けを出した。 <br><br><br>「すぐ何かあったら電話するのよ？………やっぱりあの公園まで……」<br><br><br><br>「大丈夫。行ったらすぐ帰ってくるし、なんかあったら電話するから」<br><br>美雨は久しぶりに洋服に身を包み病院を後にした。<br><br><br>病院からあの公園まで歩いて30分はかかる。けど、春風が舞うこの空気を吸きながら歩きたかった。町のあちこちに色とりどりの花が咲いていた。<br><br><br><br>美雨があの桜の木の下で思い出したのは、昨日携帯電話がなくなっている事に気づいたから。きっとあの日落としたに違いない。<br><br>美雨はゆっくりと公園に入るとベンチに誰もいないのを確認した。<br><br><br>「そうだよね。いるわけないよね…」<br><br>携帯電話を探したが見当たらなかった。そして自然とベンチを通り過ぎると、美雨は足を止めた。<br><br><br>♪♪♪♪♪♪♪<br><br><br><br>後ろ姿ですぐ誰かわかった。この曲は…<br><br><br>美雨は川原に向かった。<br><br><br><br><br>初めてこの川原に来たのも今頃の時期だった。風に流れ微かな心地よい香りが川原を下りる美雨を焦らせた。<br><br><br>その人は美雨のよく歌っていた『AMAZING GRACE』をギターで弾いていた。<br><br><br>音を消し隣に座ると、金髪の男は美雨に気付いたのだろう。流れていた曲がとまった。<br><br><br><br>二人の間にどれだけの沈黙があっただろか。川のせせらぎだけこの世を支配してた。 <br><br><br><br><br>♪♪♪♪♪♪<br><br><br>沈黙を破るようにギターがなり始めた。美雨はしばらく彼の弾く姿を見ていた。手が軽やかに弦を弾く。<br><br><br>「歌ってや」<br><br><br>優しい声。懐かしく感じる声。美雨はなんのためらいもなく曲に合わせて歌いだした。<br><br><br><br>夕暮れが二人を優しく包んでいた。<br><br><br><br><br>病院まで送ってもらう間、二人の会話はつきることなく、悠は時に少年のように無邪気に話たり、時には優しいお兄さんのように、美雨の話をほほ笑みながら聞いていた。<br><br><br>悠はなぜあの公園に行ったのか話してくれた。悠はあの公園の近くに住んでいた。仕事前にふらりと立ち寄った公園のベンチでぼんやりながれる雲を見つめていた。<br><br>すると後ろから誰かの歌声が聞こえてきた。その瞬間鳥肌がたった。<br><br><br>美しく透き通る川原の前に一人の女性が空高く歌っていた。儚く、今にも壊れてしまいそうなその中に、力強く歌う美しい声がそこにはあった。<br><br><br>その歌声をまた聞きたくなって仕事の日もオフも足を運んでいた。<br><br><br>「最初怪しい奴だとおもっただろ？」<br><br><br>「だっていつも帽子かぶって顔あげないしすごく怪しい人っ！って思った」<br><br><br>「あはは、やっぱり？」<br><br><br>悠は満開の笑顔で美雨を見て、そして二人で笑った。<br><br>「あっ、そうだ。これ美雨ちゃんの？」<br><br><br>「あっ！」<br><br>白い携帯電話を出された。それはまさしく美雨のものだった。<br><br>「あった…ありがとう」<br><br><br><br>「持っていてよかったよ。」<br><br><br>病院院に近づくと辺りはもうすっかり闇に覆われていた。持っていた携帯が振動した。きっと母親だ。<br><br>悠は心配そうに時計を見て、早く出なっていう合図をした。<br><br>案の定母親からだった。もう病院前にいるというと携帯越しに安堵の声が漏れた。<br><br><br>「すっかり暗くなっちまったな…お母さん心配してたやろ。」<br><br><br>「うん」<br><br><br>「そうか。今日はありがとな。美雨」<br><br><br>悠は美雨の頭にポンっと手をやると、<br><br>「んじゃ、俺仕事いってくら！ロック魂を弾いてくるぜ！」<br><br>と、無邪気に笑って背を向けて歩いた。<br><br><br>美雨は悠が見えくなるまで何度も手を振った。
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<link>https://ameblo.jp/a-1117-i/entry-10151438044.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Oct 2008 18:38:50 +0900</pubDate>
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