<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>amesekaiのブログ</title>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/amesekai/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>小説を書いています</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>１６</title>
<description>
<![CDATA[ 　二人はベンチに腰を下ろす。<br><br>「あざり、お弁当出してよ」と真冬が言った。<br><br>　あざりは布に包まれたお弁当を二つ、リュックの中から取り出した。<br><br>「……はい」<br>「ありがとう」<br><br>　お弁当を受け取った真冬は包んであった布をとってお弁当箱の蓋を開けてみる。<br><br>　するとあざりのお弁当には主食におにぎりが入っていて、おかずはウインナーと卵焼き、それに唐揚げという真冬の好物ばかりが詰まっていた。<br>　野菜が一切入っていないのは真冬が野菜嫌いだからだ。普段はうるさく野菜を食べろと言ってくるあざりだが、今日は特別だぞ、ということなのだろう。<br><br>「おいしそうだね。早速食べてもいい？」<br>「好きにすれば」<br><br>　ぷいっと顔を背けるあざり。なんだか小学生時代に戻ったみたいな気がして真冬はあざりに気づかれないように小さく笑った。<br><br>　真冬はおにぎりを食べた。<br><br>「……どう？　おいしい？」<br><br>　あざりが聞く。<br><br>「うん。お腹が減ってたし、結構歩いて疲れてたからおいしい」<br><br>　真冬は言う。<br><br>「そこは普通においしいだけで良くないかな？　君は普段あんまり喋らないくせに、しゃべるときは本当にいつも一言多いよね。ひねくれ者だ。そんなんだから友達ができないんだよ」<br><br>　あざりの口数が多い。いいことだ、と真冬は思う。<br><br>「飲み物はないの？」<br>「あるよ」<br><br>　あざりはリュックの中から水筒とコップを取り出した。あざりが飲み物をコップに注いでくれる。その中に入っていたのはコーヒーだった。<br><br>　コーヒーを飲みながら、お弁当を食べ、もぐもぐと口を動かす真冬。そんな真冬を見ているあざり。<br><br>「ぼくも食べよっと」<br><br>　しばらくすると、あざりもお弁当を食べ始める。<br><br>　静かな時間が流れた。<br><br>　お弁当は本当においしかった。相変わらずあざりは料理がうまい。<br>　あざりは昔から両親の手伝いをして家事をこなしていたし、真冬なんかよりも実はずっとしっかりとしているのだ。<br><br>　真冬の食べたおにぎりの中身は鮭だった。<br>　真冬はそれを食べきると、すぐに次のおにぎりに手を伸ばす。<br><br>　黙々とお弁当を食べる真冬をあざりはじーっと眺めながら、懸命に小さな口を動かしていた。<br><br>「ちょっといいですか？」<br><br>　誰かが二人にそんな声をかけた。<br><br>　二人は同じタイミングでそちらを向く。<br>　するとそこにはにっこりと素敵な笑顔で微笑む雨森花が立っていた。<br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12164473473.html</link>
<pubDate>Fri, 27 May 2016 01:03:40 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１５</title>
<description>
<![CDATA[ お、追いついた……。<br><br>　花は肩で息をしている。<br><br>　ふふ、なめないでよね……。こう見えても私、毎朝走ってるんだから……、体力には、自信があるんだからね……。<br><br>　汗をぬぐい、呼吸を整えて平然を装う。<br><br>　雨森花は奇跡的に駅に入る直前の二人の姿を目撃することに成功した。それは執念といえば執念であり、運命といえば運命と呼べる出来事だった。花はもちろん、それを運命だと捉えている。執念ではロマンチックではないからだ。<br><br>　二人はそのまま電車に乗り、数駅ほど離れた駅で降りた。花はそのあとを追いかける。その駅はとても大きくて、利用客の数を半端ではないダンジョンのような駅だったので、花は二人の姿を見失わないように必死だった。<br><br>　二人は駅の中で一度立ち止まった。何をしているかと思ったら、そのあとトイレに寄ったので、駅中の地図でトイレの位置を確認していたようだ。ここでトイレに寄るくらいなら水族館で行っとけ、と花は言いたい。<br><br>　　駅を出た二人は傘をさして雪の降る街の中を歩いていく。<br><br>　それはまあいいのだけど、なぜかそこには今朝のように傘が二つ咲いていなかった。そこには青い傘がひとつあるだけ。<br>　<br>　一昨日のデジャビュのように、二人は相合傘をしているのだ。<br><br>　それは花にとって、もう一種のトラウマのような光景ではあったが、花は一昨日のように辛い気持ちに負けずに、二人のあとを追いかけた。<br>　その途中で雪の降る勢いが弱くなっていることに花は気がついた。この様子だともうすぐ雪は止んでしまうだろう。夜には雨に変わるかもしれない。<br><br>　あそこはなんだろう？　公園、かな？<br><br>　二人は大きな公園、というか森のような場所に入っていった。<br><br>　この街を歩くのは花は初めてだった。駅は利用したことがあったので少しは建物内の構造をイメージできたのだが、ここまでくるともう何もわからない。<br><br>　その公園の入り口にはゲートのようなものがあり、お金を払う施設が存在した。どうやら有料の公園のようだ。<br>　二人がゲートを通るのを見届けてから、花もお金を払いその中に入っていった。<br><br>「君の来たかった場所ってここだったんだね」<br><br>　久しぶりにあざりが口を聞いた。<br><br>「うん。そうだよ」<br><br>　真冬は答える。<br><br>「どうしてここなの？」<br><br>　あざりが言う。<br><br>「こういう場所、好きなんだ」<br>「それは知っている。ぼくが聞きたいのはどうして今ここに来たのかってことだよ」<br><br>　あざりは笑う。<br><br>　雪の森という風景があざりの顔を笑顔にしてれたようだ。<br><br>「もともと来たいと思ってたし、雪が降ってる景色ってあんまりないから、見ておきたいなって、思ったんだ」<br>「ふーん。なるほどね」<br><br>　あざりは言う。<br><br>「それだけなの？」<br>「それだけだよ」<br><br>　真冬は言う。<br><br>　二人は池の近くにある休憩所にたどり着いた。そこは結構混んでいた。<br><br>「もうちょっと歩こうか。できるだけ、人の少ない場所でお弁当が食べたい」<br>「……うん。わかった」<br><br>　橋を渡り、さらに奥に進むと一回り小さい休憩所が見えてきた。その周辺に人の姿は見当たらない。なので二人はそこでお弁当を食べることにした。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12164154403.html</link>
<pubDate>Thu, 26 May 2016 03:30:24 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１４</title>
<description>
<![CDATA[ 電車での移動中、あざりはずっと不機嫌だった。<br><br>　自分で勝手に失敗して、勝手に落ち込んで、勝手に真冬の隣で不機嫌になる。昔と何にも変わっていない。あざりはやっぱり、あざりのままだな、と真冬は思う。<br><br>「ここで降りるよ」<br><br>　真冬はあざりの手を引いている。あざりは黙ったままで、でも抵抗はしない。真冬に自分の体の動きを任せていた。<br><br>　あざりの頭の中では今、きっと真冬では理解できないような複雑な感情が渦巻いているのだろう。女の子は男の子よりも繊細で複雑なんだと子供のころにあざり本人がそう言っていたことを真冬は思い出す。<br><br>　水族館で笑ってくれたから、機嫌が直ったのかな、と思ったのだけど全然甘かった。ずっと一緒にいてくれる僕にとって奇跡のような存在であるあざりのことですらこうなのだから、僕はきっと女の子という生き物を一生理解することはできないんだろうな、と真冬は考え苦笑いをした。<br><br>　あざりが真冬のコートを引っ張った。<br><br>「どうしたの？」<br><br>　真冬が聞く。<br><br>「………おしっこ。トイレよりたい」<br><br>　あざりは言う。<br><br>　真冬は迷路のように複雑な駅の中で女性用トイレの場所を探すため、大きな柱にくっついている地図を見てその場所を確認した。そのあとで何度か道に迷いながらも真冬はあざりをトイレに連れて行くことに成功する。<br><br>　あざりは繋いでいた手を離すと、無言のままトイレの中に入っていった。<br><br>　一人になった真冬は通行の邪魔にならないよう通路の壁際に移動して、そこであざりを待つことにした。<br>　その間、人の流れは絶えることがなく、数え切れないくらいたくさんの人たちが真冬の前を通過して行った。真冬はそんな光景をぼんやりと眺めている。<br><br>　……水族館、楽しかったな、と真冬は思う。<br><br>　思っていた以上に面白かった。貴重な体験だったし、たくさんの新しい発見があったし……、それにあざりがいてくれた。<br>　楽しいと感じた一番の理由は、悔しいけどたぶんそれかな。<br><br>　そんなことを思う自分が何だがおかしくて、真冬は珍しくふふっと笑った。<br><br>「何笑っているの？」<br><br>　声をかけられ隣を見ると、そこにはあざりが立っていた。頬が膨らんでいるから、機嫌はまだなおってはいないようだ。<br><br>「いや、別に何も」と真冬は言う。<br><br>　あざりは黙っている。<br><br>　真冬はそんなあざりの手を握ると、先ほどと同じように目的の出口に向かって歩き出した。するとあざりもさっきまでと同じように真冬のあとについて歩き出す。<br><br>　二人が駅の外に出ると、雪の勢いは少し弱くなっていた。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163825089.html</link>
<pubDate>Wed, 25 May 2016 03:43:13 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１４</title>
<description>
<![CDATA[ 　トイレから戻ってきた花は二人がいなくなっていることに気がついて唖然となった。<br><br>　え？　何で？　何でいないの？<br><br>　きょろきょろと周囲を見渡す花。しかし二人の姿はどこにもない。まずい。完全に見失ってしまった。花は急いでカフェを出ると、まだ二人が行っていない屋上エリアの奥のコーナーに小走りで移動する。<br>　そこにはペンギンやアシカがいて、雪の中でも元気に水の中を泳いだりはしゃいだりしていたが、二人の姿はどこにもなかった。<br><br>　まずい。やってしまった。<br><br>　花は頭を抱える。完全に油断していた。建物内での尾行は難しいってわかっていたのに……。なんてバカなんだろう、私は。<br><br>　花はとりあえず近くにあった白いパラソルの下の椅子に座って気持ちを落ち着かせることにした。<br><br>　………落ち着け。落ち着け私。まずは冷静になって考えるんだ。<br>　<br>　もしこのコーナーに二人が立ち寄ったのなら、いくらなんでも移動するのが早すぎる。ペンギンとかかわいいし虹咲あざりなんて凹んでいたのが嘘のようにすごくはしゃぎそうな場所だ。こんなに早くはいなくならないと思う。つまり二人はこのコーナーに立ち寄っていない……。とすると、二人はもう出口から水族館の外に出ている？<br><br>　可能性は高い。いや、それしかない。<br><br>　そう結論づけた花は椅子から立ち上がると、そのまま出口に向かいカウンターを通って水族館の外に出た。花はすぐに目の前にあるエレベーターを確認したが、そこにも二人はいなかった。もう下の階に向かってしまったのだろう。<br>　　幸い、お昼の時間なので人は少なく、エレベーターの前には人がほとんどいなかったので、花はすぐにエレベーターに乗って、一階フロアまで降りて行くことができた。<br><br>　その間、花はずっとそわそわしていた。<br><br>　ああ、なんで私はアイスなんて食べてしまったのだろう？　と花は思う。<br>　虹咲あざりが凹んでいるのを見て、気分よくなってる場合じゃなかった。きっと私がトイレに入っているときにすれ違ったんだ。<br><br>　ああ、私のばか。ばか、ばか、ばか。<br><br>　チーン、という音でエレベーターの扉が開くと、花は周囲の風景には目もくれず建物の出口に向かって早足で歩いて行った。花が向かっているのは駅だ。<br><br>　一度こんな風に見失ってしまったら、再び二人を見つけることはかなり難しい。それは花にもよくわかっていた。でも、花にはとびっきりのヒントがあったのだ。<br>　<br>　それはまだ、二人がお昼ごはんを食べていないということだ。<br>　<br>　そして虹咲あざりのお弁当が残っているということを考えると、真冬がそれをほったらかしにして違う食事をとるわけがないことも花には理解できていた。北風真冬とはそういう男の子なのだ。<br><br>　だから二人はどこかにお弁当を食べに移動したに違いない。<br>　<br>　それが花の考えた推測だった。<br><br>　それがどこかまではさすがにわからないけど、この建物の周辺でないことは予測できた。なぜなら、あざりがお弁当を作ってきたという会話を聞いたあとで、花はすぐにスマートフォンで情報を集め、私ならどうやって北風くんにお弁当を食べさせるかという状況シュミレーションすでに頭の中で行っていたからだ。その結果、このあたりで雰囲気よくお弁当を食べることのできる場所なんてないということを花は知っていた。<br><br>　だから駅に行く。二人は絶対にどこかに移動する。そこを捕まえるんだ。<br><br>　花は走る。空から降る雪がすごく邪魔だった。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163493857.html</link>
<pubDate>Tue, 24 May 2016 04:02:14 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１３</title>
<description>
<![CDATA[ 「二人分ってことは、僕も分も、だよね？」<br><br>　コクンと頷くあざり。<br><br>「………どうしよう」<br><br>　あざりに復活する気配は感じられない。珍しく相当落ち込んでいるようだ。<br><br>　真冬はカフェの時計で時間を確認する。時刻は現在十一時三十分。雪が降っているせいなのか、それとももともと混雑するお店なのかわからないが、カフェの中はほぼ満席だった。もちろんみんなお弁当ではなく、きちんとカフェの料理を注文し食べている。<br><br>「あざり、このあとはどうするつもりだったの？」<br><br>　真冬が言う。<br><br>「………お弁当を食べるつもりだった」<br><br>　あざりはテーブルの上に突っ伏したままそう言った。<br><br>「いや、そうじゃなくて、そのあとだよ。雨か雪が降るのはわかってたんでしょ？　お弁当を食べたあとは水族館を出るつもりだったの？」<br><br>　あざりはむくりと顔だけを真冬に向ける。<br><br>「………うん。まあ、ペンギンとか少し見て、それで水族館は出るつもりだった。お弁当時間も含めて二時間くらいを予想してた」<br><br>　水族館のパンフレットには、だいたい一時間か一時間半くらいで楽しめると書いてあった。<br><br>「あざりは満足したの？」<br>「………満足した。クラゲも見れたし、マンボウも見れたし、クマノミも可愛かった」<br><br>　真冬は自分の隣で控えめにきゃーきゃーはしゃいでいたあざりの姿を思い出す。あの楽しそうだったあざりが今は見る影もない。<br><br>「雪降っているけど、ペンギンとかアザラシとか見ていく？」<br><br>　真冬は淡々と質問を続ける。<br><br>「……いい。なんかそんな気分じゃない」<br><br>　あざりの目には少し涙がたまっていた。そんなあざりの訴えかけるような視線を受けて、真冬は頭をかいた。<br><br>　なんとかしろ、ということかな？　<br><br>　真冬は考える。<br><br>　とりあえずはあざり手作りの、とは言ってもおそらく半分以上があざりのお母さんの手作りお弁当を食べて、あざりをこの深い悲しみから救ってあげなければならない、と真冬は思う。それが今自分に課せられている最大の試練であり、男の見せ所でもあった。<br><br>　真冬はスマートフォンでお弁当の食べられる場所を検索する。<br>　あざりはそんな真冬の様子をちらちらと見ている。<br><br>　しかし残念なことにお弁当の食べられそうな場所は近くでは見つからなかった。無理をすれば駅前の公園で食べられないこともないのかもしれないけど、今日は雪が降っている。<br>　自分の家かあざりの家に帰るのでは、あざりの失敗が家族にバレてしまう。お母さんっ子のあざりはそんなことは絶対にいやなはずなので、それも却下だ。<br><br>　そこでふと、真冬はある場所のことを思い出した。<br><br>　そこは前から真冬が行ってみたいと思っていたところだった。そこなら、お弁当が食べられる。それに、あざりは自分の行きたい場所として水族館を選び、そこに真冬を連れてきてくれた。<br>　なら、今度は自分の行きたい場所にあざりを僕が連れていくというのはなんだかバランスが取れていてすごくいいアイデアのような気がする。<br><br>　そう思って真冬は笑った。<br><br>「………何笑ってるの？」<br><br>　少し不満そうな声であざりが言う。あざりが凹んでいるのを見て、真冬が面白がっていると思われたみたいだ。<br><br>「ねえ、あざり。少しだけお昼我慢できる？」<br><br>　真冬が言う。<br><br>「できるけど、なんで？」<br><br>　真冬はコートのポケットから青色のハンカチを取り出すと、それであざりに手渡した。<br><br>「どうぞ」<br>「あ、ありがとう」<br><br>　あざりはそれで涙をぬぐった。<br><br>　真冬は荷物を持って立ち上がる。<br><br>「どうしたの？」<br><br>　あざりが聞く。<br><br>「場所を変えよう。あざり、黙って僕のあとをついてきてよ」<br><br>　そう言って真冬が片手を伸ばすと、最初はわけがわからないという顔をしてたあざりだったが、だんだんとその表情は輝きを取り戻していき、次の瞬間、真冬の手をぎゅっと握って、あざりはにっこりと笑ってくれた。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163483327.html</link>
<pubDate>Tue, 24 May 2016 01:36:34 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１４</title>
<description>
<![CDATA[ 「うわー、すごーい！」<br>「ねえ、見てみて！　トンネル！　トンネルがある！」<br><br>　はしゃぐ子供たちの声が聞こえる。みんなとても幸せそうだ。少なくともこの場所で一人でいるのは花だけだった。<br>　花はぶらぶらと歩く速度を調整しながら、水族館の一階エリアの中を歩いていた。きれいなお魚さんたちが周りにはたくさんいたけれど、それは昨日見たばかりだったので、それほど感動もしなかった。<br>　そもそも花はそれほどお魚さんが好きではなかった。どちらかといえば水族館よりも動物園の方が好きだ。それだけ考えても、虹咲あざりとは気が合いそうもない。<br><br>　しかしデートとなると話は別だ。<br><br>　確かにこの空間はデートに適している。おしゃれなデコレーションをされた青色の空間と静かな雰囲気。真冬と二人で歩くなら、花もこちらの場所を選んだかもしれない。明るい動物園は好きだけど、少し子供っぽい気がした。<br><br>　二人が階段を上がって二階に移動していく。花は数秒の足踏みを挟んでから、階段を上がって二人のあとを追いかけた。<br><br>　二階エリアは一階エリアよりも明るかった。そういうコンセプトなのだろう。どうやら展示されいるお魚さんの種類も違うようだ。出口付近にはおみやげ屋さんがあり、昨日、花はそこにあったぬいぐるみを買おうと思ったのだが、値段が高くて買えなかったことを思い出す。<br><br>　そこで水族館のエリアは終わりで階段を降りて元の屋上スペースに戻ることができる。<br><br>　あとは天気がいいならそこでショーを見たりできるし、近くにあるカフェで軽い食事をすることもできる。花は昨日そこで友人と二人でアイスクリームを買って食べた。すごくおいしかった。どうせカフェにはよるだろうし、今日も食べようかな、と花は思う。<br><br>　ずっと笑顔だった虹咲あざりが困り顔になったのはカフェのテーブルに二人が座って数分したときだった。<br><br>「どうしたの？　お腹でも痛いの？」<br><br>　もしそうならいい気味だ、と花は思う。<br><br>「しまった……。どうしよう？　ここ、食べ物の持ち込み禁止だった」<br><br>　あざりはそれをどうやらカフェでご飯を食べている周りの人たちの様子を見て、思い出したようだった。真冬がパンフレットを見てると、確かに食べ物持ち込み禁止と書いてある。<br><br>　あざりは頭を抱えテーブルの上に突っ伏している。<br><br>「あざり、食べ物何か持っているの？」<br>　<br>　真冬が聞く。<br><br>「……お弁当。朝早く起きて二人分作ってきた」<br><br>　お弁当？　そんなのありなの？　私料理はできないのに……。花は二人の会話に聞き耳を立てている。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163152701.html</link>
<pubDate>Mon, 23 May 2016 04:32:27 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１３</title>
<description>
<![CDATA[ 「正確に言うと屋上ってことになるのかな？　なんか公園みたいな施設が最初にあって、そこでいろんなショーとかもやってるみたい。まあ、今日は雪だからそういうのはやってないと思うけどね」<br><br>　真冬がパンフレットに載っている地図を見ると、確かにあざりの言う通りの構造になっていた。水族館は大きく三つのエリアに分かれていて、まず屋上のスペースを利用したエリアがあり、その隣に水族館のエリアがあって、さらに水族館は二階建てで二つのエリアに分かれていた。<br><br>「それじゃあ、今日は雪だからせっかくの野外スペースが堪能できなね」<br><br>　真冬は言う。<br><br>「別にいいよ。そこはこの間お母さんと一緒に楽しんだからね」<br><br>　とあざりは笑う。<br><br>　そんなあざりの軽口を聞いて、真冬は安心する。それが真冬の知っているいつものあざりだったからだ。<br><br>　二人は数分待ってから、ぎゅうぎゅうのエレベーターに乗り込んだ。いつもならとても嫌な顔をする真冬だけど、今日は周りが家族連ればかりで、小さい子供も多いためか、なるべくそんな雰囲気が表に出ないように我慢しているようだった。<br><br>　そんな真冬を見てあざりはにやにやする。<br><br>　屋上に到着すると雪が空から舞い落ちてきた。雪の水族館。これはこれでありといえばありかもしれない、と真冬は思う。<br>　上には白いテントのような屋根が貼られていて、端っこを歩いている限りは傘をささなくてもいいようになっていたが、水族館の入り口では貸し傘のサービスも行っていた。<br><br>　雪だというのに大勢の人で水族館は混雑していた。二人は家族連れの人達のあとについて歩いていき、チケット売り場までやってきた。あざりがリックから財布を出そうとするのを真冬が止める。<br><br>「僕が二人分払うよ」<br><br>　真冬が言う。<br><br>「え？　どうして？」<br><br>　あざりは困惑した表情をする。<br><br>「あざりと一緒に水族館に行くって言ったら、お小遣い貰えたから、それで払うよ」<br><br>　お小遣いは五千円もらえた。それはタダではなく真冬はこのあと家の手伝いを五千円分しなければならない。<br><br>「そ、そう？　それじゃあ、お願いしちゃおうかな」<br><br>　あざりはへへっと笑うと、一歩後ろに下がって真冬がチケットを購入するのを待った。真冬は二人分のチケットを購入し、二人は入り口カウンターから水族館の中に入っていった。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163150604.html</link>
<pubDate>Mon, 23 May 2016 03:43:57 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１２</title>
<description>
<![CDATA[ 　雨が雪に変わっただけで、周囲の風景は昨日とほとんど同じだった。二人は花の予想通りの道を通って水族館のある建物の中に入っていく。<br><br>　ここからが本番だ。外とは違い、建物の中は尾行に厳しい。<br><br>　一応、花は変装用に大きめの丸いメガネをかけていたし、髪型もストレートから三つ編みに変更していた。これでパッと見られたくらいでは、自分だとばれないと思うが、それはそれで少し悲しい気もした。それどころかもしかしたら真冬はじっと花の顔を見ても雨森花の存在に気がつかないかもしれないのだ。<br><br>　なぜなら花と真冬は今まで一度も、きちんとした会話をしたことがなかったからだ。<br><br>　花と真冬はクラスメイトだったが、クラスの用事ではい、とか、いいえ、とか言葉を交わしたくらいの関係でしかなかった。花のことに気がついてくれるのは現実の北風くんではなく、いつも妄想の中の北風くんだけだった。それでもあざりの存在を知るまでは花は満足していたのだけど、今はそうも言っていられない。<br><br>　時間は花のことを待ってはくれないのだ。<br><br>　それに考えてみれば、勇気を出して北風くんに声をかけようとしたときに、虹咲あざりが雨森花の前にあらわれたことにも運命的な要素を感じる。彼女はきっと私と北風くんの前に立ちふさがっている壁のような存在なのだ。<br>　<br>　その壁を乗り越えることが私に課せられた試練。<br>　私は虹咲あざりという名前の壁を乗り越えて、その向こう側にいる北風くんに会いに行くのだ。<br>　花は現在の自分の置かれた状況をそう判断していた。<br>　<br>　ただ、花は基本的には常識人なので、自分のしている行動に疑問を抱いていることも事実だった。その矛盾に花は自分は今危機的状態にあり、それを回避するための緊急行動であるという解釈をしていた。<br>　<br>　その代わり、二人のあとをつけたりするのはこれっきりにする、という条件を自分の心に誓って、花は今日、真剣に二人のあとを追いかけまわしている。<br><br>　結果がどうあれ、明日か明後日には、花はあざりと学校で呼び出して、直接あざりに真冬のことをどう思っているのか聞くつもりでいたし、自分が真冬のことをどれだけ好きかということをあざりに話すつもりでもいた。<br><br>　エスカレータを降りるとそこは三階フロアだった。ここから専用のエレベーターに乗ると、もっと高い階にある水族館に行くことができるようになっている。<br>　前を歩く二人は寄り道せずに、まっすぐにエレベーターに向かって歩いていく。<br><br>「ここだよ。これに乗ると、上の水族館まで行けるんだ」<br><br>　あざりが言う。<br><br>「へー、ここの水族館ってビルの中にあるんだ」<br><br>　真冬はあざりからもらったパンフレットを眺めている。エレベーターの前には、少し列ができていた。日曜日ということもあり、水族館は混んでいるようだ。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163067434.html</link>
<pubDate>Sun, 22 May 2016 21:51:51 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１１</title>
<description>
<![CDATA[ 「水族館は十時からだから時間に余裕があるね」<br><br>　あざりは言う。<br><br>「朝ご飯どうする？　どこかで簡単に食べていく？」<br><br>　あざりの背負っているリュックサックの中には二人分のお弁当が入っていたが、それはお昼用だった。<br><br>「いや、そんなにお腹減ってないし、大丈夫だよ。あざりはお腹減っているの？」<br>「ううん。ぼくも大丈夫」<br><br>　失敗したお弁当のおかずをたくさんつまみ食いしたからね。<br><br>「なら、食べなくてもいいんじゃない。それよりもコーヒーが飲みたいな」<br>「コーヒー？　じゃあ向こうの駅で降りたら、どこかコーヒーの飲めること探してよる？」<br><br>　最寄駅の喫茶店は一昨日行ったばかりだし、恥ずかしがり屋の真冬にはお店は変えた方がいいだろう、というあざりの判断だった。<br><br>「うん、そうする。それ嬉しい」<br><br>　雪は降っているけど、とても優しい雪だったので電車の運行には影響はないようだった。朝の風景も、日曜日という雰囲気も、空から雪が降っていること以外は普段と何も変わらない。<br><br>　電車に乗って水族館のある街の駅まで移動する。<br><br>　その間、二人はずっと無言だった。<br><br>　電車でから降りて、駅の中に入ったところで、あざりは辺りをキョロキョロした。コーヒーが飲めるお店を探すためだ。<br>　その駅は結構大きな駅で、駅の中にお店がたくさんあった。その代わり人もいっぱいいる。そのせいで真冬はどこか落ち着かない様子だった。あざりの後ろで真冬は大きな柱時計を見て何度も時間を確かめたりしている。<br><br>　お、あそこがいいかな。<br><br>　あざりは有名はコーヒーショップの看板を見つけて真冬に報告する。真冬はあざりの意見を受け入れて、二人はそのお店に寄ることにした。<br><br>　二人はカウンターに並んで注文をしてコーヒーを受け取ると窓際の席に移動した。<br><br>「水族館ってどんなところなの？」<br><br>　おいしそうにコーヒーを飲みながら真冬が言う。<br><br>「真冬、水族館行ったことないの？」<br>「ない」<br><br>　あざりはリュックの中からパンフレットを取り出すとそれを真冬に手渡した。<br><br>「あざり、なんでこんなもの持ってるの？」<br>「この間、お母さんと一緒に行ったときにもらってきたやつだよ」<br><br>　あざりは言う。<br><br>「え？　あざり、最近この場所に行ったばかりなの？」<br>「うん。そうだよ」<br><br>　あざりは首をかしげる。<br><br>「それなのに今日また僕と一緒に行くの？」<br>「うん。いけない？」<br><br>　真冬は信じられないな、といった顔をしているが、それがなぜなのかあざりにはピンとこない。すごく素敵なところだったから、真冬と一緒に行きたいと思った。だから真冬をこの場所に誘った。それのどこが変なのだろう？　<br><br>　ちゅー、とあざりはストローで白いポイップとカリカリのナッツとチョコレートソースがたくさんトッピングされた甘いコーヒーを口にした。<br><br>　それは予想以上にとてもおいしくてあざりは少しびっくりする。<br><br>「ねえ、真冬。これすごくおいしいよ。飲んでみる？」<br><br>　あざりは笑顔でコーヒーの入ったカップを差し出す。<br><br>「……いや、いい。遠慮しとく」<br>「どうして？」<br><br>　あざりは聞く。<br><br>「そんなのコーヒーじゃない」<br><br>　真冬はそう言っていつもと変わらないホットコーヒーを口にした。<br><br>　そんな二人の背後の席で花は小さくガッツポーズをとった。さすが北風くん。クールだわ。上機嫌で花は白いポイップとキャラメルソースがかかったコーヒーのストローに口をつけた。テーブルの上には別に注文したサンドイッチが置いてある。花は今朝起きてから家のキッチンに置いてあったのを持ち出した菓子パン一つしか食べていなかったから、ここで軽く朝食を食べてしまおうと考えたのだ。<br>　<br>　ちなみに花が朝食を食べられなかった理由は寝坊をしたからだった。<br><br>　あんまりゆっくりとはしていられないので花は急いでそれを口に運んでいく。<br><br>　すると背後の二人に動きがあった。どうやら移動を開始するようだ。サンドイッチを食べきった花はちょっとだけ間をおいてから立ち上がり、二人のあとを追いかけた。<br><br>　外に出ると空から雪が降ってくる。<br><br>　花は空を見上げた。<br><br>　そこにはとても高いビルと、灰色の空と、そこから落ちてくる白い雪があった。花は雪があまり好きではなかった。自然に降る雪ならともかく、特に街で降る雪はなんだか汚れているような気がして、花はそれをきれいだとか待ち遠しいとか思ったことはなかった。だから今日も雪が降っているのを確認して、いろんな不都合が出てめんどくさいな、くらいにしか思わなかった。<br><br>　ただ、北風くんと一緒だ、となると話は別だ。<br><br>　前を歩くあざりを見て、花の心は激しい嫉妬に囚われた。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12163023509.html</link>
<pubDate>Sun, 22 May 2016 20:00:47 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>１０</title>
<description>
<![CDATA[ 　雨森花は今日も一人だった。本当は誰か友人を誘おうと考えていたのだけど、そうすると自由に動き回れなくなってしまうし、最悪の場合、尾行がバレてしまうかもしれない。それはさすがにいやだった。<br><br>　なので結局、花は今日も一人で行動することにした。昨日は午後の時間を全部使って下見を済ませておいたので、遅れをとる心配もない。睡眠もバッチリだ。自分はもしかしたらこういう職業に適性があるのかもしれないと思うくらいに体が動く。今年初めての雪も、彼と一緒に見れないのは不満だけど、身を隠すには都合が良い。そんなことを考えながら花は手に持っていた菓子パンを一口だけかじって食べた。<br><br>「寒くない？」<br>「大丈夫。忘れたの？　ぼくは寒さには強いんだよ」<br><br>　あざりはへへっと笑う。<br><br>　そのあとで、ぼくは臆病な人間だな、とあざりは思った。自分を隠してばかりいるくせに、真冬にはそうしてほしくないと思っている。<br>　真冬はいつも通りとぼけた顔をしている。こうやって二人だけで、きちんと出かけるのは初めてだというのにいつもとまるで変化がない。<br>　今日の出来事が二人の初デートとして一生記憶に残るんだぞ、とあざりは思う。だからもっと何かこう、普段の真冬じゃないような一面を見せて欲しいと思った。そんな真冬を自分の中にいつまでも残しておきたいと思った。それが今日のあざりが心に抱いていた下心だった。<br><br>　昨日はドキドキしてあんまり眠れなかった。<br><br>　真冬はどうだろう？　ぼくとのお出かけなんて、真冬にとってはなんでもない出来事の一つでしかないのかな？<br><br>　真冬、ずっと黙ってる。雪ばっかり見ている。もっとぼくを見て欲しい。そんなことをあざりは思う。<br><br>「あざり、今日はいつもと少し違うね」<br><br>　真冬が言う。<br><br>「違うって、何が？　ぼく、いつもと同じだよ」<br><br>　あざりには本当に真冬の言ってる違いがわからなかった。服装も一応きちんと選んできたけど、今はいつものコートだし、髪型も、表情も、何もかもが同じはずだ。そのはずなのに、何かを期待している自分がいる。<br><br>「なんかおとなしいっていうか、あんまり喋らないね。元気がないみたい」<br><br>　真冬は言う。そこは今日はいつもよりも可愛いね、とか言って欲しかったな、とあざりは少し残念に思った。しかしその代わり、少し冷静にも慣れた。頭の熱が引いていく。雪が冷たくて気持ちいい。今日は雪が降っていてよかった、とあざりは思う。<br><br>「そう？　そんなことないと思うけどな」<br><br>　あざりは笑う。<br><br>　いろんな思いが交錯していた。絡まってもうどれがどれだが自分でもわからないくらい頭の中がぐちゃぐちゃだった。だからあざりはあれこれ考えることを一旦やめることにした。<br>　そうして一番大切なこと。真冬に元気になってもらうことだけを考える。あとのことは考えない。全部忘れることにした。そうしないとあざりの頭は容量オーバーで爆発してしまうかもしれないし、何より、それがあざりの本当に願っていたことだったからだ。<br><br>　迷いを吹っ切ったあざりは、ようやくいつもの自分に戻ることができた。一度できてしまえばそれはとても簡単なことだった。どうしてさっきまではそれができなかったのだろう？　そう不思議に思うくらいだ。一晩中悩んでいたのが馬鹿みたいに思えた。<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/amesekai/entry-12162989949.html</link>
<pubDate>Sun, 22 May 2016 18:11:46 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
