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<title>あの戦争を忘れない</title>
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<description>多くの哀しみをもたらした太平洋戦争。二度とあの悲劇を繰り返さないためにも、そこで起こったことを忘れてはいけない。</description>
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<title>「笑顔の奥へ」　第三章　遠くの人（一）</title>
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ユキは、今日も歌う。熱を帯びて聞いている兵隊さんの心に、自分の声なんて届いていないのに。ユキは今日も笑う。笑顔で自分を見つめる兵隊さんの奥に見える、乾いた絶望感を前に。この青天の大陸でどしゃぶりの心の兵隊さんたち。そんな彼らを目の前にするとユキは、喉が潰れるまで歌う。ユキは、顔がこわばるまで笑う。それが。明日、死ぬかもしれない彼らに雪ができること。
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<dc:date>2009-07-05T19:12:01+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第二章　悲嘆の人（六）</title>
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カンスケの喉は、一気に水分を失った。何度も、何度も。唾を飲み込もうとして。でも。喉は乾燥して、水分など何にも出てこない。涙が出そうだった。ぐっと息をのみこむと。カンスケははっとして、もう一度振り向く。しかし、そこにはやはりだれもいない。カンスケはわかっていた。振り向いたって、彼女はいないということなど。これからずっと。
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<dc:date>2009-06-30T00:10:22+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第二章　悲嘆の人（五）</title>
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カンスケの心は、ざわざわした。理由なんてない。何でかはわからないけど。わからないけど。それから先の話は覚えていない。ただただ、戦争賛美の言葉が並んでいく。そこには、カンスケが惹かれたあの笑顔などなかった。そして、閉演した。暗かった館内が、ぼうっと照明がついて明るくなる。カンスケは、手に握られた手紙を見詰めた。そしてんっと口に力を込めると、静かに開いた。
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<dc:date>2009-02-22T09:38:58+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第二章　悲嘆の人（四）</title>
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カンスケは手紙に手をかけた。その時。ぷつりと照明が落ちた。「開演・・・。」カンスケはそうつぶやくと、真っ暗になった館内で静かに手紙を懐にしまった。その日の映画は見るのが辛かった。ユキはこんな役をやりたかったのであろうか。ただひたすらに、バンザイ！バンザイ！と言い続ける役。そこにはあの花が開くような笑顔なんて、微塵もない。のっぺりとしたその笑い顔。その瞳の奥で揺らめく光を見たとき、カンスケは言葉にできない不安を感じた。ばっ。カンスケは思わず振り向いた。真っ暗闇の一番後ろの席に、ユキはいなかった。
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<dc:date>2009-01-06T13:12:23+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第二章　悲嘆の人（三）</title>
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開演の直前。いつものように、お菓子やジュースなどを売って歩くおじさん。この頃の映画館では、おなじみの光景である。「坊よ。」「え？」カンスケは突然声をかけられた。「あの・・・。お菓子は特にいいです。」映画代だけで精一杯のカンスケは、必死に断った。そんな少年の顔を見て、おじさんはにっこりと笑った。「違う。はい。」そう言って、おじさんはカンスケの手に何かを置いた。驚いてそれを見ると、手紙であった。驚いて見上げるカンスケに向かって、おじさんは右手の親指で合図をする。その親指の先では、ユキがにっこりと笑っ
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<dc:date>2008-11-26T19:26:17+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第二章　悲嘆の人（二）</title>
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でもそれに反するように、ユキは銀幕に登場する機会が増えていった。その笑顔は、忌むべき戦争に彩りを与えた。大好きな笑顔が。利用され、穢され、平板なものになっていく。やめてくれ！やめてくれ！カンスケは心で叫ぶ。耳をふさぎたくなる。目を伏せたくなる。でも。見なければいけない。一番後ろの席で、グッと唇を噛んでいる少女がいるかぎり。
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<dc:date>2008-11-14T22:29:31+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第二章　悲嘆の人（一）</title>
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そして時は流れた。薄暗い世相の中、観衆は落ち葉が散るように一人二人と少なくなっていった。そして銀幕を見つめる人々の目も、沈んだ陰鬱なものとなっていった。それに比例するようにユキの与えられる役も、戦争を賛美する役が多くなっていった。笑顔で父を見送る役。嬉々と軍需工場で働く役。内容も、陳腐になっていく。演出も、単調になっていく。ユキに渡すメモに書くことも。ひとつ減り。ふたつ減り。そして何より、後列で座るユキの顔から、表情が消えた。
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<dc:date>2008-11-06T19:05:27+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第一章　笑顔の人（七）</title>
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父親が会社で来れない時でも、ユキの出演映画の初日は、必ずカンスケは貯めたお小遣いをかき集めて活動写真間に行った。カンスケは必ず映画が終わったあと、暗闇で書き留めた感想のメモを、出口に向かう途中でそっとユキに手渡した。ユキのハツラツとした演技の感想。それは山盛りあった。明るい笑顔が好き。歌う声が好き。伸びやかに跳ねる両足が好き。それを受け取る、ユキのぱあっと開く花のような表情が好き。浮ついた恋愛など許されない戦時下、こんなかすかな心の触れ合いですら、青い少年少女には幸せだった。
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<dc:date>2008-11-03T00:06:48+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第一章　笑顔の人（六）</title>
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「君、いつもこの活動写真館にいるよね。」「いや・・・、たまにだけど・・・。気になる活動写真のときだけ・・・。」「へえ！」ユキが強い口調で突然声をあげた。カンスケは驚いて、思わず横目で警察官のほうを見る。「じゃあ、この映画は気になったの？」「う、うん・・・。」カンスケの返答に、ユキは満面の笑みで応えた。その笑顔を見て、カンスケは決めた。彼女の出演する映画は、初日に絶対見ようと。その日から、父の目も、警察の目も盗んだ、たった２時間のデートが始まった。
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<dc:date>2008-10-14T23:04:30+09:00</dc:date>
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<title>「笑顔の奥へ」　第一章　笑顔の人（五）</title>
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カッカッカッ。何の音だろう。カンスケはふと視線をずらすと、言葉を失った。座席を一個はさんだ隣りには、ユキが座っていた。まん丸に見開かれたカンスケの顔を見て、ユキはにっこりと笑う。その満開のひまわりみたいな顔は、カンスケの心に激しい波を立てた。「ねえ、君。」ユキは銀幕のほうをまっすぐに見ながら、カンスケに声をかけた。カンスケも警察官の鋭い目に気がつくと、慌てて前に向き直った。「な・・・、何？」カンスケは震える唇を、必死で動かしながらそう答えた。歯と歯がぶつかって、カチカチと音を立ててしまいそうだ。
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<dc:date>2008-10-10T20:59:26+09:00</dc:date>
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