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<title>アラキ　十五のショートショート小説</title>
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<description>５分で読めるオリジナル作品集です。</description>
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<title>おすし屋サンボ</title>
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<![CDATA[ ある日、サンボはおかあさんと、大好きな回転すし屋に行きました。 <br>　サンボとおかあさんが店に着いたとき、店はすいていました。 <br>　ところが、二人が席に着こうとしたとたん、大勢の男たちがどやどやと店に入ってきました。みんな人相が悪く、感じの悪い人たちでした。 <br>　男たちは、サンボに、「おい、どけ」と言い、サンボたちを押しのけて席につきました。 <br>　あっという間に、回転すしのカウンターは男たちでいっぱいになってしまいました。 <br>　しかたなく、サンボとおかあさんは、後ろの順番待ちの席に腰かけました。 <br>　男たちは、Ｔシャツ姿で、二つのグループに分かれているようでした。 <br>　一つのグループのＴシャツには、背中に「友愛」と書かれていました。 <br>　もう一つのグループのＴシャツには、背中に「責任力」と書いてありました。 <br>　「感じの悪い人たちだね」とサンボはおかあさんに小声で言いました。 <br>　「昼間はいい人ぶってるんだけど、内輪では地が出るのよ」おかあさんも小声で言いました。 <br>　そのうち、「友愛」の男たちと、「責任力」の男たちは、口々に「オイ、板前、早くトロを握れ」「コラ、板前、早くウニを流せ」と騒ぎ始めました。 <br>　「高いネタばっかりだね」とサンボはおかあさんに言いました。 <br>　「昼間は、私の好物はサンマとゲソです、なんて言ってるんだけどね」とおかあさんも言いました。 <br>　そのうち、男たちは大きい声で言い争いを始めました。 <br>　するとどうでしょう。おどろいたことに、だんだんカウンターの上のベルトコンベアの回るスピードが速くなってきました。 <br>　サンボがびっくりしていると、横からおかあさんが「この店はね、早くお皿をとりたいお客さんが、右わきのボタンを押すと、ベルトコンベアのスピードが速くなるのよ」と教えてくれました。 <br>　どうやら、たくさんの人が右わきのボタンを押したようで、ベルトコンベアのスピードはどんどん上がり、目にも留まらぬ速さになっていきました。 <br>　「こんなに速くちゃお皿が取れないじゃないか。もっとスピードを落とさないと」サンボは心配して言いました。 <br>　「この店はね」おかあさんは言いました。「ベルトコンベアのスピードを上げることはできるけど、遅くすることはできないのよ」 <br>　「じゃあどうしたらいいの？」 <br>　「お客さんの左わきのボタンを押すと、座席が同じ方向に回るのよ」とおかあさんは言いました。 <br>　そのとおり、男たちは左わきのボタンを押したようでした。するとどうでしょう。男たちのすわっている席も、同じ方向に回りだしたではありませんか。 <br>　「これで調節して、おすしを食べるのよ」とおかあさんは言いました。 <br>　ところが、どうやらたくさんの人が左わきのボタンを押したようで、座席の回るスピードはどんどん速くなっていき、とうとうベルトコンベアのスピードを追い越してしまいました。すると、男たちは右わきのボタンを押し、ベルトコンベアの回るスピードもさらに速くなっていきました。 <br>　こうして、ベルトコンベアと座席はどんどん速度を上げて回り続けました。サンボは目を回して、気を失ってしまいました。 <br>　どのくらいたったでしょう。サンボが正気づくと、座席にいた男たちはみんなバターになっていました。 <br>　サンボは、そのバターを集めて、おかあさんにホットケーキを焼いてもらいました。 <br>　でも、サンボは、そのホットケーキをあまりたくさん食べられませんでした。 <br>　なぜなら、そのバターはにがい味がして、おいしくなかったのと、なによりホットケーキは、おすしに合わなかったからです。 <br><br>おわり
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<pubDate>Thu, 23 Sep 2010 13:39:00 +0900</pubDate>
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<title>相模線サンセット</title>
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<![CDATA[ <div class="FANCYURL_EMBED" id="diary_body">　夕暮れの小田急下り線車内は、座間を過ぎたあたりにもなると、乗客はまばらだった。寒々とした車内を、斜めに差し込む夕陽の暖気が辛うじて補っていた。 <br>　四号車の隅に並んで座る3人の男の不自然さが、多くの人目に触れていないのは幸いなことだった。右に座る初老の刑事三塚と、それと同じような年恰好の真ん中の男の手は、冷たい手錠でつながれていたが、男物の古びたマフラーが、その存在を不器用に覆い隠していた。 <br>　「ええ、次が海老名ですので、あとわずかで着きます。はい、そうです」左手の若手刑事大野は、低い声で携帯電話から署と連絡をとっていた。 <br>　真中の男は、車中ではずっと、身じろぎもせずに俯いていた。目は深く閉じられ、白髪の混じる無精ひげに覆われた口は堅く結ばれていた。 <br>　電車が海老名に近づくと、男はちらりと腕時計を見、やや落ち着かないそぶりで顔を上げた。そして右隣の三塚に低い声で言った。「・・・あのう」 <br>　「・・・何だ」刑事は、男の顔を見ずに言った。「・・・。」二人の小声の会話は、レールの音にかき消されていた。 <br>　「おい、降りるぞ」三塚に突然言われ、電話を切ったばかりの大野は虚をつかれた。 <br>　「は？でもまだ海老名ですよ。本厚木まで・・・」 <br>　「糞がしたくなった」三塚はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。それにあわせて、男も立ち上がった。 <br>　「糞って・・・」大野は、電車を降りる2人の後を慌てて追った。 <br>　3人は無言で海老名駅の階段を上った。大野は左右を見回した。「えーっとトイレは・・・。あっすみません、トイレどこですか？」 <br>　大野が駅員に尋ねている間もかまわず、2人は改札を出て左側の西出口に向かって歩いていった。　 <br>　大野は慌てて追いかけた。「三塚さん、どこへ行くんですか？トイレはこっち・・・」 <br>　 <br>　２人は小田急海老名駅を左に出て、田園風景の広がる陸橋の上をまっすぐに歩いていた。 <br>首をかしげながら、大野は2人の後を追った。夕陽は丹沢の上から、やわらかな光を注ぎ、3人の影を長く伸ばした。北風が3人に軽く吹きつけた。　 <br>　3人は陸橋を渡りきり、相模線の海老名駅にたどり着いた。三塚は大野に言った。「厚木まで3枚だ」 <br>　「は・・・」大野は観念して、三塚の指示に従った。 <br>　小田急線と相模線は、この海老名から次の厚木までの2駅間のみ並行していたが、2人が、あえてここで相模線に乗り換えようとする意図を、大野はまだ飲み込めずにいた。 <br>　改札を過ぎた3人は、無言で、体が離れぬよう階段をゆっくりと下りた。四両編成の相模線下り茅ヶ崎行きは、単線のすれ違いの上り線を静かに待っていた。 <br>　3人は無言のまま、三両目の車両に足を踏み入れた。相模線の車両は、さらにがらんとしていた。しかし、三塚と男は、広々とした座席には腰掛けず、扉の近くに立った。 <br>　 <br>　相模線は、しばらく駅に停車していた。それはしかし、数十秒の出来事のはずだったが、あたかも止まった時間であるかのように感じられた。小田急線とは明らかに異なる、停車を楽しむかのような、静かな時間が流れていた。 <br>　そこへ、上り線の電車がホームの反対側に入線してきた。男の目が鋭くなった。電車の扉がゆっくりと開いた。対面の扉から、2名乗客が降りてきた。男の目が何かを探し、そして止まった。 <br>　視線の先には、ブレザーにネクタイという制服を着た、ショートカットの女子高生の姿があった。彼女は対面の扉の近くにこちらを向いて立ち、参考書を読んでいた。男は、ドアの脇に少し体を寄せた。彼女からすぐには見えないような、しかし、ややもすると見つかりそうな微妙な位置だった。男の目は充血していた。口がかすかに開いた。しかし、欲求と躊躇をないまぜにした男の、渇いた喉から、声が発せられることはなかった。 <br>　女子高生は、そんな彼に気づく由もなかった。そして、その男の面影をたたえた顔を、上げることなく、ただ本に熱中していた。 <br><br>　やがて、下り線の扉が、父の視線を遮るように、ゆっくりと閉まった。 <br>　相模線は、動き始めた。 <br>　「学校帰りか・・・」三塚がつぶやいた。 <br>　「・・・・・。」男は黙ったまま、かすかに頭を下げた。 <br>　無言の三人を乗せた電車は厚木に向かった。 <br><br>　大野はようやく一部始終を知った。そして、来月定年を控えた、老刑事に刻まれた顔の皺の深さを改めて思った。最短距離を生きてきた顔じゃないと。 <br>　 <br>　相模線は厚木駅に着いた。再び３人は体を寄せ合って歩き始めた。大野は、改札口で、小田急線の本厚木行きの切符を3枚買った。 <br>　「三塚さん、ずいぶん時間が遅れましたよ。署には何と報告するつもりですか？」大野はわざと明るく言った。「糞ですか？」 <br>「そうよ」三塚は大野に顔を向けた。「糞をしたのはお前だ。いいな」三塚は初めてにやりとした。 <br>　歩く3人の向こうで、夕陽が丹沢に沈みかけていた。　　(完） <br></div>
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<link>https://ameblo.jp/arakitogo/entry-10656700064.html</link>
<pubDate>Thu, 23 Sep 2010 13:33:59 +0900</pubDate>
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<title>６八歩</title>
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<![CDATA[ <div class="FANCYURL_EMBED" id="diary_body">　　名人戦の最終日、いよいよ勝負は大詰めを迎えていた。対局室を、緊迫した空気が包み始めた。 <br>　 優勢な局面で、勝利を確信する挑戦者、谷下八段は、名人が長考する間、詰めの手順を、頭の中でひたすら繰り返していた。 <br>　ぴしゃり。やおら名人の手が動き、谷下の玉頭に駒を突きつけた。 <br>　６八歩。 <br>　既に何十通りもの名人の対応手を計算していた谷下だった。しかし、この手は彼の想定の外だった。 <br>　６八歩。 <br>　谷下は目を閉じた。 <br>　 <br>　谷下が将棋のプロへの登竜門である奨励会に入門したのは、ちょうど３０年前のことだった。 <br>　そこからの道は平坦ではなかった。彼は、なかなか勝てなかった。誰よりも研究した。誰よりも将棋のことを考えた。誰よりも駒を並べた。 <br>　しかし、なかなか勝てなかった。 <br><br>　奨励会の仲間や若手は、サークルを結成し、いろいろな戦法を共同で研究していた。時には楽しげな笑い声がこだまする横で、彼は黙々と盤上に駒を並べ続けた。 <br>　他人と群れるのは好きではなかった。というよりも、敵味方に分かれるはずのプロ棋士同士が、仲良く戦法を研究するのは、自らの「戦いの哲学」に反することだった。 <br><br>　時代は流れ、他の棋士たちは皆、パソコンを購入し、過去の棋譜をデータベースで管理するようになった。何万通りもの棋譜を容易に検索できるようになっても、谷下はそのようなものには見向きもせず、ただ、黙々と盤上に駒を並べ続けた。 <br>　彼はハイテクが得意ではなかった。　というよりも、血と汗と涙のしみこんだ将棋盤や駒を使わずに、過去の熱戦譜を再現するなど、自らの「魂の哲学」に反することだった。 <br><br>　他の棋士の多くは彼女をつくり、結婚していった。しかし、彼は動ずることなく、たった一人で、黙々と盤上に駒を並べ続けた。彼は女性にもてなかった。というよりも、名人位をとる前に棋士が結婚するなど、自らの「孤高の哲学」に反することだった。 <br><br>　しかし、ついに、ここまで来た。谷下は他の一流棋士の３倍の時間をかけて、すこしずつ階段を上っていった。いや、階段を上がったり下ったり立ち止まったりしながら、ここまで来た。彼の棋士人生に、エスカレーターはなかった。ただ地道に、歩を進めてきた。自分の可能性だけを信じて。 <br>　そして今年、ついに名人位に挑戦するチャンスをつかんだのだ。しかもあと１勝で、夢に見た名人になることができる。 <br><br>　相対する名人は、対照的に、若いときから天才棋士との名声を得て、順調にプロ棋士のトップの座に駆け上がってきた。年齢も谷下より２０歳近く若いのに、もう名人位を３期防衛している。電光石火の寄せに、「電光流」という異名をとっていた。 <br>　電光流対鈍行流。マスコミは両者をこう評した。谷下が挑戦権を得たことにより、名人の防衛は確実と言うのが、もっぱらの下馬評だった。 <br>　中年の星、がんばれ。谷下にはリストラ世代の代表のようなエールが出る始末だった。 <br>　谷下は、そうした周囲の雑音に惑わされることなく、自分の将棋を貫き通した。 <br>　変幻自在の名人の戦法に対し、谷下は常に矢倉戦法だった。しかし、彼の愚直なまでにオーソドックスな戦法が、名人に対し、一歩も引かない展開へと導いていった。 <br>　ついに勝負は最終戦へともつれこんだのだ。 <br>　 <br>　そして・・・・６八歩。 <br>　名人の、その一手が放たれた瞬間、対局室は凍りついた。マスコミの動きがあわただしくなった。 <br>　それは、谷下だけでなく、観戦していた誰もが予想し得なかった手であることを表していた。そして、名人戦の対局が終焉を迎えたことも。 <br>　今こそ、谷下ははっきりと言わなければならなかった。これまで、慎重に詰めへの手順を何度も確認してきた。しかし、もはや、それは必要なくなっていた。初の名人戦の晴れ舞台で、谷下は、その幕引きを自ら宣言しなければならなかった。もう躊躇いは許されない。 <br>　谷下は、顔を上げ、名人の目をまっすぐ見つめて静かに言った。 <br>　「二歩です」 <br>　名人が畳に引っくり返った。　　　　(完）<br></div>
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<link>https://ameblo.jp/arakitogo/entry-10656694059.html</link>
<pubDate>Thu, 23 Sep 2010 13:24:49 +0900</pubDate>
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<title>犯人はこの中に（後篇）</title>
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<![CDATA[ <div class="FANCYURL_EMBED" id="diary_body">　「まず確認しておきたいのは」 <br>私はヤマモト探偵に言った。 <br>　「ヤマモト探偵は、先ほど、犯人はこの中にいる、とおっしゃいましたね」 <br>　ヤマモト探偵は黙ってうなずいた。 <br>　「でも、この部屋には今、あなたと私の二人しかいません」 <br>　・・・・・！「その通りだ、ワトソン君」静かにヤマモト探偵は言った。 <br>　「私はワトソンではありません。理容師の張（チャン）真由美です！」 <br>　私はいすの後ろの壁際で答えた。 <br>　 <br>「つまり、ヤマモト探偵は、すべての証拠や動機が私を犯人だと示している、そうおっしゃりたい」 <br>「・・・・・・」 <br>「でも、私は、私が犯人ではないことを知っています」 <br>「・・・・・・」 <br>「でも、犯人はこの中にいるとあなたはいう」 <br>「・・・・・・」 <br>「ということは、犯人はヤマモト探偵、あなただ！ということになりますね」 <br>「・・・・・！」 <br>「ヤマモト探偵、あなたは被害者を殺害した際、誰かに罪を着せようとしました。そのターゲットが私です。あなたは私が犯人であることを示すため、警察が見落とすような細かい証拠を自ら細工しました」 <br>「・・・・・・」 <br>「挙げられた証拠は、一見もっともらしいが、よく考えると支離滅裂です。なぜ死人のモミアゲを犯人が剃る必要がある？まつ毛つきコンタクトレンズをどうやって見つけたのか？ブログのダジャレのようなダイイングメッセージって何？」 <br>「・・・・・・」 <br>「あなたは私立探偵になりすまし、警察に力説したが、相手にされなかった」 <br>「・・・・・・」 <br>「そして、警察が逮捕した容疑者は、あなたではなかったが、あなたにとって最悪の人だったのです」 <br>「・・・・・・」 <br>「彼はあなたの知人です。そしてあなたが犯罪に関与したことを知っている。取調べで彼は警察にあなたのことを話すでしょう」 <br>「・・・・・・」 <br>「あなたのことを良く知らない、私を犯人に仕立て上げれば、貴方の身は安泰だったのに・・・」 <br>「・・・・・・」 <br>「あなたは自首を決意している。その前に私にすべてを話したかった。そうですね？」 <br>「・・・・・その通りだ。ワトソン君。君も成長したね」 <br>「私はワトソンではありません。それに初対面じゃないですか」 <br>「いかにも、君が推理したとおりだ。私はこれから警察に行く。ただその前に一言だけいいたい」 <br>「何ですか？」 <br>「私は、難事件を解決するには、物的証拠が何よりも大切だ、木を見てさらに枝を見、さらにその先の葉の周りの毛を注意深く見なければならないといったが、君は、逆に、大木を見る方法で、この難事件の謎を解いたね。このことを、私は自分の探偵ノートにファイルしておこう」 <br>「・・・・・・ありがとうございます」 <br>「健闘を祈る。では」 <br>　ヤマモト探偵は静かに出て行った。 <br><br>「一件落着か・・・」その後ろ姿を見送りながら、私はつぶやいた。 <br>「それにしても、危ないところだった。しかしうまくかかったな。後は彼がうまくやってくれるだろう」 <br>　理容師で催眠術師の私、張（チャン）真由美はほくそえんだ。　　(完）<br></div>
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<pubDate>Thu, 23 Sep 2010 13:23:13 +0900</pubDate>
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<title>犯人はこの中に（前篇）</title>
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<![CDATA[ <div class="FANCYURL_EMBED" id="diary_body">　容疑者が警察に逮捕され、連行されて行った。室内にはホッとした空気が広がっている。 <br>　「一件落着ですね」私はヤマモト探偵に言った。 <br>　「一件落着？とんでもない」ヤマモト探偵は、鋭い目で前を見つめながら答えた。 <br>　「え？今何と？」 <br>　「だから、事件はまだ解決していないのだ。それに」ヤマモト探偵はマイルドセブンライトを一服し、煙を吐き出した。「彼は真犯人ではない」 <br>　「え・・・たった今、連行されて行った彼は犯人ではない？」私は驚いて彼を見た。 <br>　「警察は、もっとも基本的な誤りを犯した」ヤマモト探偵は解説した。 <br>　「このような難事件を解決するには、アプローチが非常に大切だ。第一に現場に残された物証。第二に被害者の置かれていた状況と交友関係、そして被害者を殺害する動機だ」 <br>　「警察は確かに、この両面から捜査を行った。しかし、そこから導き出された結論は、私に言わせれば極めて不十分だ。物的証拠を十分掘り下げない状況証拠からの推論、そして、いかにもありきたりな、ステレオタイプの価値観に基づいた、動機の推測と容疑者の特定。全くもって嘆かわしい。無実の人を、警察は罪人として拘束してしまったのだ」 <br>　私はおずおずと尋ねた。「それでは、ヤマモト探偵はすでに真犯人が誰だかわかっていると・・・」 <br>　「もちろんだよワトソン君。私には真犯人の確証がとれている。しかも、犯人はこの室内に居るのだ」 <br>　室内の一同は顔を見合わせた。「犯人はこの中にいる？」 <br><br>　　ヤマモト探偵は、二本目のマイルドセブンライトに火をつけた。 <br>　「では始めよう。まず、物的証拠だ。被害者の死体の周囲を私はくまなく調べた。このような難事件を解決するには、物的証拠が何よりも大切だ。木を見て森を見ず、という言葉があるが、名探偵の態度は逆で、木を見てさらに枝を見、さらにその先の葉の周りの毛を注意深く見なければならない。ワトソン君、あの時何かに気づいたかな？」 <br>　「確か、あの時死体の周りにおびただしい血が・・・」私はおずおずと答えた。ちなみに私の名前はワトソンではない。 <br>　「だめだねワトソン君。刺殺体の周りに血痕があるのは当然のことだ。その他のところを良く見てほしかった。彼のモミアゲを見たか？」 <br>　「モミアゲですか？いや、気が付きませんでした」 <br>　「あのモミアゲは剃った直後のものだ。周りの髪の長さからみて、散髪屋で剃ったものではなく、モミアゲだけを改めて剃ったものだ。被害者はおしゃれに関心がなく、散髪も2ヶ月に一度、1000円の床屋に行っているのみだったことが、彼の財布にあるお得意様カードからわかっている。つまり、被害者は殺害された直後に、犯人によってモミアゲを剃り上げられたとしか考えられない。」 <br>　「つまり犯人はかみそりで被害者を刺し殺した後、モミアゲをそのかみそりで剃ったと？」 <br>　「それはちがうね。胸を刺した刃物はもっと大きな包丁のようなものだ。このことが、何を意味しているか、わかるかね？犯人は、凶器のほかに、かみそりを常時持ち歩いている人物だ。しかも、殺害後に平然と、確かな上でモミアゲを剃っている。このようなことができるのは誰か？」 <br>　ヤマモト探偵は、壁際に立っている理容師を鋭く見た。 <br>　「えっ？私が犯人だとでも？わ、私がやるわけないじゃないですか」理容師はうろたえた。 <br>　「では、この状況をあなたはどう説明する？」ヤマモト探偵は迫った。 <br>　「どう説明しろといわれても・・・」理容師は口ごもった。「私にはアリバイがありますから」 <br>　「確かにあなたにはアリバイがある。犯行推定時刻に、あなたは散髪を行っていた。順番待ちも含め、常連の客3名があなたの姿を見ている」 <br>　「そのとおりです」 <br>　「しかしそれは・・・。まあいい」ヤマモト探偵は軽く苦笑いした。 <br>　 <br>「先へ進もう。次に、被害者が倒れている横に落ちていたコンタクトレンズだ」ヤマモト探偵は、ポケットからハンカチを取り出して開いた。そこには、コンタクトレンズが一つあった。 <br>　「えっ、コンタクトレンズが落ちていましたか？」私は驚いて尋ねた。普通の人は落としたとわかっていても、なかなか見つからないコンタクトレンズを、ヤマモト探偵は犯行現場で採取しているとは！さすが名探偵である。 <br>　「被害者は目がいいのでコンタクトをしない。したがって、このコンタクトは犯人のものである可能性が高い。さらに重要なことは」ヤマモト探偵は続けた。 <br>　「コンタクトにまつ毛が付着している。良く見ると、このまつ毛は毛先がカールされている。したがって女性のまつ毛と思われる」 <br>　「えっ？つまり、犯人は女性？ということは・・・」 <br>　ヤマモト探偵は、いすの後ろにいる真由美をじっと見た。真由美はカールされたまつ毛を激しく動かし、驚いて叫んだ。「私が犯人だっていうの？確かに私はコンタクトをしているけど、落としてなんかいない！」 <br>　「このコンタクトや、まつ毛ががあなたのものかどうか、調べればすぐわかりますよ」冷ややかにヤマモト探偵は言った。 <br>　「私はやってない！だいたい私は血を見ただけで気を失うくらい苦手なのよ！こんな残忍な犯行が出来るわけ無いでしょ？」 <br>　「そのことは、すでに調べさせていただいています。確かに血はおきらいのようですな。しかしまあ・・・」ヤマモト探偵は三本目のマイルドセブンライトに火をつけた。 <br>　 <br>　「最後に動機だ。警察は被害者の交友関係から、友人間の金銭関係のもつれとみて、容疑者を犯人と断定したが、これも大きな間違いだ」ヤマモト探偵は目を細めた。 <br>　「大事な点を見逃している。今や交友関係は、勤務先のリストや手紙やアドレス帳からのみ割り出すべきではない！」 <br>　「というと？」 <br>　「It's on the webだよワトソン君。現代の交友関係はブログの中にある。ちなみに被害者は”プリンちゃん”という名前でブログに入っていた。この意味がわかるかね、ワトソン君」 <br>　「いや・・・わかりません」 <br>　「これは彼のメッセージだ。いや、ダイイングメッセージと言ってもいい」 <br>　「ダイイングメッセージ？」 <br>　「この名前には、フリン（不倫）・チャン（張）、つまり、張という人が不倫をしている、ということを暴露する意味が含まれている。犯人は、被害者に間接的に不倫をバラされたことを恨み、口封じのために殺した」 <br>　「ということは犯人は・・・」 <br>　ヤマモト探偵は、横を向いている張（チャン）氏をまっすぐに見詰めた。 <br>　「私ガ犯人？アリエナイデショウ」張（チャン）氏はしどろもどろに言った。 <br>　「被害者はわれわれにしっかりとメッセージを残したのです！」 <br>　「私ハ、不倫モシテイナイシ、殺シテモイナイ」 <br>　「確かに夫婦仲はいいようですな。ふっ、かといって・・・」ヤマモト探偵はクックッと笑った。 <br><br>　「以上のことから、犯人は一人に絞られた。犯人は間違いなく、この中にいる。ワトソン君、君にも情報はくまなく伝えた。犯人が誰かわかったかね？」ヤマモト探偵は私に静かに問いかけた。 <br>　　 <br>　「情報は揃っている・・・。犯人はこの中に・・・」私は頭の中で繰り返した。 <br>　そして、しばらくして顔を上げて言った。「ヤマモト探偵！わかりました！」 <br>　（つづく）　 <br></div>
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<link>https://ameblo.jp/arakitogo/entry-10656690086.html</link>
<pubDate>Thu, 23 Sep 2010 13:18:52 +0900</pubDate>
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