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<title>ARTと言葉</title>
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<description>利根山和光の文章と堀江美智子のアートのコラボレーションブログ</description>
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<title>【花と風の少女】</title>
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<![CDATA[ <div align="center"><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130331/09/art-word/94/05/j/o0480059612480877545.jpg"><img border="0" alt="photo:01" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20130331/09/art-word/94/05/j/o0480059612480877545.jpg" width="300" height="372"></a> </div><p><br><br>その庭は、 <br>街で最も日の当たりの良い急な坂道の中程にあった。 <br>庭は蔦の絡まった煉瓦造りの高い塀に囲まれていて、 <br>外から中を窺うことはできなかった。 <br>塀から突き出ている時計台。 <br>その頂きからは、<br>鉄筋を折り曲げて造られた獣の彫刻が<br>眼下の通行人をしかめっ面で睨み付けていた。 <br><br>気付いたら僕は庭を彷徨っていた。 <br>自分がその庭に入り込んだ経緯ははっきりと覚えていた。 <br>蔦と一緒に絡み付いた細い木の幹を足場にして、 <br>屈強な煉瓦造りの壁をよじ登って侵入したのだ。 <br>それでも僕は、 <br>そのような大胆な行動に至るまでの動機と、 <br>ここに侵入するまでの精神的経緯を思い出せなかったので、 <br>さも自分がそこに迷い込んでしまったかのような錯覚に陥っていた。 <br><br>広大な庭は見渡す限りの植物で溢れていた。 <br>それが庭全体を手狭に感じさせていたのだろう。 <br>品種ごとに区画整理された植込みには、 <br>図鑑などでは見たことはあるが実際には見たことがない植物が、 <br>血気盛んな群衆の挙手のように勢い良く生い茂っていた。 <br><br>僕の目の前で煉瓦の敷石が埋められた小道が暫く続き、 <br>花壇を巡らした遊歩道のすぐ脇には、 <br>僕の背丈くらいはある草花が群生していた。 <br>その先には鬱蒼とした森が広がり、 <br>土から立ち昇る湿度で視界の奥は霞んでいた。 <br><br>森を避けて歩いていると、 <br>白いペンキが塗られた鉄骨製のアーチが僕を迎え入れた。 <br>敷石は途切れ、 <br>革靴が細かい砂利に減り込んだ。 <br>僕は何となしに門の表面を指でなぞった。 <br>溶接の跡はなく、 <br>鉄は繊細に折り曲げられて空中にリーフ模様を描いていた。 <br>表面に薄っすらと密生している苔を指ですくって匂いを嗅ぐと、 <br>田園風景にイメージが繋がる湿った土の匂いがした。 <br><br>門を潜ると、 <br>背の高い草花は途絶えて右手に小さな東屋が現れた。 <br>藍色の瓦が何枚も重ねられた円錐形の屋根を <br>六本の白亜の柱が支えていた。 <br>腰ほどの高さの白い漆喰の壁が一つの柱間を除いて東屋をぐるっと覆い、 <br>その様相は海の向こうにある大統領府を想わせた。 <br><br>僕ははっとして息を呑んだ。 <br>僕の視界から、</p><p>庭を一周する形で囲んでいると思われた煉瓦造りの塀が <br>忽然と消えていたのだ。 <br>前方に視界を遮るものは東屋以外には何もなく、 <br>高台は僕が生まれ育った小さな街を眼下に踏みつけて、 <br>その遥か向こうに広がる風景の全体が視界をはみ出て広がっていた。 <br><br>東屋の入り口から中を覗くと、 <br>正面のベンチに一人の女性が体を横に向けて座り、</p><p>高台から一望できる景色を見つめているようだった。<br>僕が現実感と非現実感の間で揺れながら立ち尽くしていると、 <br>女性は別段驚きもせず顔をこちらに向き直した。 <br>女性は少女だった。 <br>少し切り過ぎた前髪が時々吹く強い風に揺れ、</p><p>その襟足が隠れるくらいの内巻の髪は風をその内側に含ませて、 <br>柔らかそうに丸まりながら風に弄ばれていた。 <br><br>僕は色々と言い訳を考えながら、 <br>幾分か洒落た服装で家を出たことを神様に感謝した。 <br>そう。</p><p>僕はあくまで侵入者であり不審者だったのだから。 <br><br>少女の、じっと見つめられると吸い込まれそうになる大きな瞳は、 <br>はっきりと僕に向けられていた。 <br>僕は集中してあらゆるパターンの言い訳を思い付こうとしたものの、 <br>それは具体的な形になることはなく、 <br>床に落ちた未使用のチョークのように未来を描けないままに砕け散った。 <br><br>柱を囲う腰の高さほどの塀の上で、</p><p>メジロが忙しなく飛び跳ねた。<br>少女は表情を変えずに少し首を傾げた。 <br>実際に傾げたかどうかは分からなかったが、 <br>少なくとも僕にはそう見えた。 <br>表情は曖昧であるのに、 <br>その意思は明確であるような不思議な雰囲気が少女にはあったのだ。 <br><br>強い突風が吹き抜けて、 <br>少女の髪が乱れて顔にかかった。 <br>少女は左手指の甲側でそれを勢いよく払い除けた。 <br><br>「中に入ってもいいですか？」 <br><br>僕は暫く、 <br>その言葉が自分の口から出たことに気付けないでいた。 <br>正確に時間を刻まない時計のように、 <br>外からは見えないところで何かが決定的にずれてしまっていた。 <br>僕の動機と行動は依然と分裂したままだったのだ。 <br><br>「・・・・・・」 <br><br>風に乗って少女の声らしきものが聞こえてきた。 <br>少女の唇はわずかに震えていた。 <br>もしかしたら、 <br>群生した草花の隙間を吹き抜けて鳴った風の音色だったのかもしれない。 </p><p>それでも、僕は心臓が止まりそうになった。<br>少女の濡れた厚い唇がわずかに開いた。 </p><p>その一連の小さな流れは目の前の世界を支配して僕を凍りつかせた。<br>少女の悪戯心と警戒心が、 <br>風に揺れる鈴の音のように凛とした声色の中で同居しているようだった。</p><br><p>どこかで聞いたことがあるような、 <br>すぐにでも忘れてしまいそうな、 <br>忘れても夢の中で聞こえてきそうな、 <br>捉えどころない空気の震えのように人の心を誘う声。 <br><br>僕は意を決っして、</p><p>前方に遮るものが何もない、 <br>住み慣れた街も見えなければ高い塀もない、 <br>向こう側まで開けた少女のいる空中世界に足を踏み入れた。 <br>するとすぐに、</p><p>僕は風の精霊の存在を信じたくなるような、 <br>後ろに控えた、何者かの気配を含んだ心地よい空気の動きに包まれた。 <br><br>少女は風で乱れた前髪を直しながら再び半身になって、 <br>風の動きの全体が見渡せる広大な景色を眺めはじめた。<br>風こそが絵筆となって景色を動かすという事実を、 <br>この東屋からは手に取るように把握することができた。 <br>海岸線を列車が走り、 <br>水平線の上を船がゆっくりと滑っていた。<br>気球は絵筆から放たれた絵具の一滴のように景色に貼り付きながらも、 <br>一定の高さを保ったまま空に浮いていた。 <br>図々しくも、 <br>僕は自分が招かれざる客であることを忘れてしまって、 <br>過去に少女と何事かを約束をして、 <br>それを果たすために遠くからやってきた兄であるような偽りの歴史を <br>自然と背負っていた。 <br><br>現実。 <br><br>僕は入口を除いて壁沿いにぐるっと備え付けられたベンチに座り、 <br>広がる景色をバックにした少女の表情を覗き見た。 <br>丁寧にニスが塗られた、 <br>木目のはっきりとした木製のベンチを拳をつくってノックすると、 <br>高価な木材特有の深い打音が返ってきた。 <br><br>少女は僕の不審な動作を気にすることもなく、 <br>その顔は風が行き交う景色に向けられ、 <br>整った横顔は風景を縁取っていた。 <br><br>また強い風が東屋の中を吹き抜けた。 <br>一瞬、 <br>少女の首と耳が露わになった。 <br>際限なく広がる景色の中で、 <br>最も美しい曲線がそこにあった。 <br>屋根を支える柱は額縁となり、 <br>背後に浮かぶ壮大な景色は少女の単なる背景となっていた。 <br>僕には、</p><p>少女の首から肩の流麗な曲線を風が喜びながら滑ってゆくのが</p><p>はっきりと見て取れた。 <br>風達は格好の跳躍台を見つけたスキー選手のように、 <br>次々と少女の表面を勢いよく滑降して飛び立っていった。 <br><br>水も空気も <br>透き通れば透き通るほどに透明に近い青になる。 <br>綿菓子のような雲はその青に浮き、 <br>そのまま透明な水面に映る。 <br><br>少女と僕の前で広がる世界の殆どは中空にあって、 <br>もはや地上は世界の上下を二人に知らせるためだけにあった。<br><br>重力。 <br>僕を唯一現実に繋いでいる力。 <br>風は重力を受け流す。 <br>僕は時々、 <br>今ここが何処であっても、 <br>自分が天井から逆さ吊りにされているような感覚に陥ることがある。 <br>その時はいつも想像している。 <br>僕の足は大きな球体の上に固定されていて、 <br>それは重力のない宙に浮きながらぐるぐると回り出すのだ。 <br><br>白亜の柱に蔦と一緒に絡む花。 <br>少女の近くには濃い赤色と薄いピンク色の大きな牡丹が咲いていた。 <br>東屋の脇に控えた鬱蒼と茂った観葉植物。 <br>花のあまりにも人工的で生々しい自然美が、 <br>開けた空間の非現実的な現実感を強固にしていった。 <br>少女は風と花に縁どられ、 <br>絵画の中に後退してゆくようだった。 <br><br>再び突風が吹いて世界は動いた。 <br>少女のドレスは膝までめくりあがり、 <br>少し切りすぎの重い前髪が風にそよいでおでこが露わになった。 <br>一瞬少女が照れたように見えた。 <br>風は再び格好の跳躍台を見つけ、 <br>その勢いを増していった。 <br>少女を囲む赤色とピンク色の大きな花。 <br>少女の唇は、 <br>ちょうどその間の色でもって世界の光を反射しながら風を操り、 <br>今にも何かを話し出しそうな予感に震えていた。 <br><br><br>絵 堀江美智子 文章 利根山和光 </p>
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<link>https://ameblo.jp/art-word/entry-11501688456.html</link>
<pubDate>Sun, 31 Mar 2013 09:42:05 +0900</pubDate>
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<title>【洗礼】</title>
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<![CDATA[ <br><div align="center"><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130201/10/art-word/de/b4/j/o0640048012400443607.jpg"><img border="0" alt="ARTと言葉" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20130201/10/art-word/de/b4/j/t02200165_0640048012400443607.jpg"></a> </div><br><div id="diary_body" class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">四つ足のついた西洋式の浴槽。 <br>二人の男がぬるま湯に浸かっている。 <br>左側の男は浴槽の縁を枕代わりにしながら右腕をだらしなく外に垂らして、 <br>外縁に沿って添えられた左腕の先で火の付いた煙草を弄んでいる。 <br>右側の男はこちらをかつて見たことがある風景として、 <br>もしくは、 <br>これから先も再び見ることになる風景として泰然とした眼差しで見据えながら、 <br>左手でしっかりと少女の左腕をつかんでいる。 <br>浴槽の外には一人の少女。 <br>浴室のタイル貼りの床に尻をつけて腰をおろし、 <br>浴槽の外縁に寄りかかりながら、 <br>こちらの世界をその大きな瞳に映している。 <br><br>女でも男でもない、 <br>子供でも大人でもない『人の子』。 <br><br>少女は浴槽から生まれた。 <br>浴槽の中で繰り広げられた二人の争いは <br>右側の男の勝利で終わり、 <br>男は祝福され、 <br>少女に洗礼を施した。 <br><br>男は少女の腕をつかみ、 <br>そのまま現在へと送り出す。 <br><br>少女は洗礼を受けて目を覚まし、 <br>その大きな瞳で現在を取り込みはじめる。 <br>男の手から伝わる情報。 <br>はじめて見る世界なのに、 <br>どこかで見たことがあるように感じるその感覚。 <br>目の前に広がる世界を、 <br>繰り返し見ることになるように感じるその予感。 <br><br>左側の男は敗北した瞬間に過去になった。 <br>少女の脱ぎ捨てられた過去。 <br>生まれてしまったことに対する隠された嘆き。 <br><br>浴槽で繋がるヨハネとヨハネの成り損ない。 <br>成り損ないは浴槽の中で体を伸ばし、 <br>半ば寝そべった状態でぬるま湯に浸かっている。 <br>二人の体は浴槽の中で交わり、 <br>少女はその間から生まれた。 <br><br>排水口は交差点。 <br>一つの世界からの出口。 <br><br>少女の中で行き交う時と経験。 <br>嘆き、敗北、勝利、永劫回帰。 <br>経験は平列的に並んで、 <br>ぶちまけられた写真やポストカードのように平面に散らばる。 <br>そのすべてが現在で、 <br>過去で、未来だった。 <br><br>少女の瞳を覗けば、 <br>カレイドスコープの中のように、 <br>数えきれない時間の一枚一枚がキラキラと乱反射している。 <br><br>ヨハネの成り損ないは地獄に落ち、 <br>ヨハネは天国に還る。 <br>次の洗礼はどうなるかわからない。 <br>次が次なのか、 <br>現在が次で次が現在なのか、 <br>ヨハネは逆転しているのか、 <br>あるいはまったくの別人が遣わされるのか。 <br>一つ言えるのは、 <br>少女がはじめて見る世界は、 <br>彼女が何時かは見た世界であるということだ。 <br><br>地獄と天国の狭間にある煉獄。 <br><br>現在。 <br><br>地獄と天国の記憶を持ったまま生まれ出て、 <br>煉獄を生きる宿命を持った少女。 <br>この世の産物である赤い実を食べてこの世の肉となり、 <br>現世で生きる知恵を授かった。 <br>こうして徐々に、 <br>少女の頬は血色良く赤らんでいった。 <br><br>煉獄に不意に降り注ぐ、 <br>天国からの音楽と地獄からの音楽。 <br>不規則に、 <br>断続的に、 <br>それらが混ざることもある。 <br><br>福音。 <br><br>少女は自分が何者かを知らない。 <br>静かに時と経験の交差点になり、 <br>その目でそれらを取り込みながらそれらを生き、 <br>そして最期を迎える。 <br><br>突然、 <br>赤い木の実が入った金属製の器が大きな音をたててひっくり返った。 <br>金属がタイルを打ち付ける音は浴室内で鳴り響き、 <br>肉と知恵の実は床にこぼれた。 <br>無表情であるはずの少女は微かに笑った。 <br><br>覚醒。 <br><br>少女はすべてを了解した。 <br>すべての時間を自覚した。 <br>少女はヨハネの腕を振りほどき、 <br>自分が何者かを知りながら一人で肉の世界を生きてゆくことになった。 <br><br>学校で、 <br>遊園地で、 <br>目抜き通りで、 <br>金融街で、 <br>寂れた路地裏で、 <br>カジノで、 <br>公園のベンチで、 <br>川沿いの段ボールハウスで、 <br>高層ビルのペントハウスで、 <br>デバートの地下で、 <br>独身女のいるバーで、 <br>新興宗教の集会で、 <br>ショッピングモールで <br>そして、 <br>教会で。 <br><br>少女は一人だけなのか、 <br>同時に何人も現れるのかはわからない。 <br>平面に同時にぶちまけられた時と経験、<br>彼女自身。 <br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">時間を選択する少女と私達。 <br>少女はもう、</div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">無自覚な整理役であることをやめてしまった。 <br>世界は意識的に動きはじめ、 <br>私達の選択を呑み込みながら予測不可能な連動の弧を描くのだった。<br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">絵　堀江美智子　文章　利根山和光</div>
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<link>https://ameblo.jp/art-word/entry-11461199463.html</link>
<pubDate>Fri, 01 Feb 2013 10:09:24 +0900</pubDate>
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<title>【完成されゆく少女】</title>
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<![CDATA[ <br><div align="center"><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130127/23/art-word/bc/cd/j/o0640063612394935975.jpg"><img border="0" alt="ARTと言葉" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20130127/23/art-word/bc/cd/j/t02200219_0640063612394935975.jpg" width="220" height="219"></a> </div><br><div id="diary_body" class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div>煙草の煙は世界と私を隔てて、 <br>私に私と世界を実感させる。 <br><br>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ <br><br>こちらを挑発するように椅子の上で片膝を立て、 <br>気怠そうに肘掛けに寄りかかりながら、 <br>今まさに煙草を吸おうとしている少女がいる。 <br>いや、 <br>すでに何服かは吸った後だろうか。 <br>少女はリラックスしているように見えるし、 <br>秘め事の余韻に浸っているようにも見える。 <br><br>彼女をはじめて見た時、 <br>私の中では様々なイメージが湧き起こった。 <br>現前としての体験に縛られない、 <br>体験の痕跡そのもの。 <br>それは、 <br>ある種の感触とでも言おうか。 <br><br>気恥ずかしさ、 <br>罪悪感、 <br>真昼の微睡み、 <br>月明かり <br>喜び、 <br>悲しみ、 <br>初恋、 <br>失恋、 <br>再会することのない幼なじみ、 <br>笑い、 <br>星空 <br>宴、 <br>性的充足、 <br>背徳感、 <br>光、 <br>夕暮れ、 <br>夢、 <br>愛。 <br><br>何かを覗き見してしまった時に感じる甘い後ろめたさ。 <br>火の点いた蝋燭がなくなるまでのとろけた時間。 <br><br>それらは、 <br>体験としての映画、 <br>音楽、絵画、文章などから感じたものかもしれない。 <br>その痕跡は具体的な体験から独立して、 <br>抽象的なイメージと一緒になって私の心の奥底にしまわれ、 <br>あるきっかけを発端にそのイメージから呼び起こされる。 <br>かつて、 <br>私の体と心の輪郭に微熱を持たせた甘美な感触達。 <br><br>ノスタルジー。 <br><br>過去、 <br>現在、 <br>未来といった三つの時間の概念にとらわれない実感。 <br><br>歓喜。 <br>憂鬱。 <br>快楽。 <br>破壊。 <br>建設。 <br>夢想。 <br><br>痕跡と一緒にしまわれた抽象的で象徴的なイメージ。 <br>過去に覚えた多くの実感。 <br>過去に想った今とは違う未来。 <br><br>そして今。 <br><br>私の中で想起されたイメージは、 <br>部屋に充満した煙草の煙に混じって少女の周りを漂う。 <br>少女は煙草の煙と一緒に、 <br>私の経験から発生して独り立ちしたイメージまでもを吸い込んで、 <br>絵の中でより生々しい女となってゆく。 <br>はじめは少女と私を隔てていたはずの煙は、 <br>私と絵という二項対立を溶かして、 <br>私の実存は少女に巻き込まれてゆく。 <br>少女が座っている椅子から後ろは <br>そのイメージと混じり合った紫煙が漂っているのに、 <br>私と少女の間にそれはない。 </div><div><br></div><div>少女の後ろで</div><div>艶めかしいポーズで何かの余韻に浸っている女は、 <br>私のイメージを吸いとって完成に近づく少女を <br>性的主体にさせるための生贄だったのだろうか。 <br>少女は女と何事かをして、 <br>その体験を反芻しながら煙草を吸っているのだろうか。 <br>後ろにいる女の様子は、 <br>何事かをした後のようでもあり、 <br>何かの余韻に浸って微睡んでいるようでもあり、 <br>己が為したその何事かを悔いて嘆いているようでもある。 <br><br>かつて客体であった少女は <br>私達の体験を吸い込んで主体となり、 <br>生々しく完成されていって不敵な姿勢でこちらを眼差している。 <br>私達の中のイメージは少女に眼差されることで湧き続け、 <br>少女はかつて私達が交歓したあらゆる性の痕跡を、 <br>それを包んでいたイメージと一緒に吸い込んで女となってゆく。 <br>イメージは生まれた瞬間に吸い取られ、 <br>痕跡の実感だけが現実感をともなって私達の内に残り、 <br>その流れは止まることなく絵の純度は増してゆくのだ。 <br><br>仮に私が女であったとしても、 <br>少女は違ったイメージを吸いこんで、 <br>違った生々しさを獲得していたことだろう。 <br>見る人によってはより幼くなりもすれば <br>より大人にもなり、 <br>より性的にもなれば <br>より無垢にもなっただろう。 <br>または男にさえなったかもしれない。 <br>いや、 <br>彼女はすでに性別を越えた何者かになっている。 <br>少女から想起されるイメージと、 <br>そのイメージを吸い取って完成した彼女にはもはや性別は関係ないのだから。 <br><br>少女のいる部屋はイメージが混じった煙草の煙で満ちている。 <br>しかし、 <br>少女と少女が座っている椅子は煙からはっきりと分かれ、 <br>女を含めた背景から浮き彫りになっている。 <br>少女は煙草の煙と一緒に私の体験の痕跡を包んだ</div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">イメージまでもを吸い込んで、 <br>ますます自らの輪郭を明確にしてゆく。 <br>私達の体験を食べながら、 <br>より生々しく完成された女に、男に、 <br>またはジェンダーにとらわれない何者かになってゆく。 <br><br>少女の後ろで何かに浸りながら微睡んでいる女は、 <br>私達の体験そのものなのかもしれない。 <br><br>少女は何者にもなりながら、 <br>彼女でしかない。</div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">絵　堀江美智子　文章　利根山　和光</div>
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<link>https://ameblo.jp/art-word/entry-11459799119.html</link>
<pubDate>Wed, 30 Jan 2013 09:33:19 +0900</pubDate>
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<title>【泉で繋がる少女たち】</title>
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<![CDATA[ <br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130125/12/art-word/ae/89/j/o0477047212391059343.jpg"></a><br><div align="center"><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130125/12/art-word/ae/89/j/o0477047212391059343.jpg"><img border="0" alt="ARTと言葉-image" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20130125/12/art-word/ae/89/j/t02200218_0477047212391059343.jpg" width="220" height="218"></a> </div><br><div id="diary_body" class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">乳房からの移行対象であるぬいぐるみを大切そうに抱えた少女が、 <br>新生（再生）と記憶（イメージ）の象徴である泉に浸かりながら目をつむって祈っている。 <br>いや、 <br>少女達の過去の体験を、 <br>あるいは想像した未来を想っているのだろうか。 <br>現世に生まれなおした彼女は、 <br>かつて自分が体験したであろうことに、 <br>自分の生まれ持った才能や感情に気付いていない。 <br><br>彼女の奥で眠る少女は彼女のすべてを知っている。 <br>彼女の無意識。 <br>欲望。 <br>少女が体験した過去と、 <br>少女が想った未来と、 <br>現在に生きる彼女の欲望は交差する。 <br><br>少女の体験や才能や想いは彼女の中で踊りはじめ、 <br>今まさに目覚めようとしている。 <br>彼女は現世を少しずつ食べながら、 <br>無意識にでも少女の祈りを抱えて歩きはじめる。 <br>彼女には自我が生まれ、 <br>自然に差し出された世界を口からこぼす。 <br>そんなものでは彼女を覚醒させることはできない。 <br><br>踊っている女性のイメージは少女の過去の体験か、 <br>想った未来のイメージか、 <br>それとも彼女の現在の欲望か。 <br><br>彼女もまた泉に体験を投影して、 <br>祈る少女といずれは同化して泉から生まれなおす少女のために祈るのだろう。 <br>少女であり母でもある彼女達は、 <br>泉という子宮で繋がっている。<br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br></div><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer"><br><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">絵　堀江美智子　文章　利根山和光</div></div>
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<link>https://ameblo.jp/art-word/entry-11456667488.html</link>
<pubDate>Fri, 25 Jan 2013 20:24:20 +0900</pubDate>
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<title>【なくならないソフトクリーム】</title>
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<![CDATA[ <p><br></p><div align="center"><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130125/12/art-word/c0/f8/j/o0467046712391054369.jpg"><img border="0" alt="ARTと言葉-image" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20130125/12/art-word/c0/f8/j/t02200220_0467046712391054369.jpg" width="220" height="220"></a> </div><p><br></p><p>大きなピンク色のソフトクリーム。 <br>溶けた分を補充するように、 <br>丁度良い速度で回転し続ける。 <br>クリームの量は増えもしなければ減りもしない。 <br>いずれは過ぎてゆくはずの少女時代も、 <br>ここでは永遠に続く。 <br><br>無邪気な様子で風船を両脇に抱えて遊ぶ少女。 <br>大人の女の大きな胸を模倣する、 <br>あの無垢で必然的な遊び。 <br>あの人にはあるのに私にはない。 <br>手に入れた代替物である風船がいつ割れるかわからない不安と安心。 <br><br>ソフトクリームが溶けきるまで、 <br>時の渦巻きが止まるまで、 <br>此処の甘い時間は続く。 <br><br>ソフトクリームの回転が止まり全てが溶け落ちてしまったら、 <br>だらしなく溶けゆく時間をたっぷりと味わった少女たちは、 <br>すぐに甘美な性的主体（女）に成長する。 <br><br>しかし、 <br>絵の中のソフトクリームはなくならない。 <br>少女たちは永遠とも思える甘い時間の中で、 <br>こちらを嗤いながら戯れ続ける。 <br><br>少女の頭上に浮かび上がる言葉。 <br><br>『喜びは見ることなのか、 <br>見られることなのか。』 <br><br>少女はこちらを眼差しながら、 <br>こちらに見せつける。 <br>こちらに興味はあるが、 <br>コミュニケーションは求めない。 <br>少女がコミュニケーションを求めるようになったら、 <br>ソフトクリームは回転をやめ、 <br>少女の世界は崩壊する。 <br><br>赤いハイヒールが唯一の選択された性的主張として、 <br>こちらの目を惹き付ける。<br></p><br><br><div class="FANCYURL_EMBED" data-widget-namespace="jp.mixi.home.pc.page.diary.embed.renderer">絵　堀江美智子　文章　利根山和光</div>
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<pubDate>Fri, 25 Jan 2013 20:21:00 +0900</pubDate>
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<title>【眼差す少女 ・ 眼差される私】</title>
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<![CDATA[ <div align="center"><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20130116/21/art-word/0c/3a/j/o0800081312379888837.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20130116/21/art-word/0c/3a/j/t02200224_0800081312379888837.jpg" alt="$ARTと言葉" width="220" height="224" border="0"></a></div><br>絵の前に立ってみる。 <br>絵を観てみる。 <br>鮮やかな色彩。 <br>ポップなデザイン。 <br>可愛いキャラクター。 <br>心は楽しくなる。 <br><br>しかし、 <br>ふとある事に気付く。 <br>少女達が私を見つめている。 <br>その視線は私を射抜き、 <br>その口は何かを語ろうとしている。 <br><br>そのうちに、 <br>少女達の視線は私の内部に住み着く。 <br>少女の目は私に何を見させるのだろう。 <br>その口は、 <br>私に何を語らせるのだろう。 <br><br>少女と私と世界。 <br><br>少女の瞳。 <br>唇。 <br>その普遍的で透徹したデザインは、 <br>私と世界を媒介して <br>私に私の実存を覚えさせながらも、 <br>そこから外させる。 <br><br>美智子の作品は、 <br>彼女が日本で生まれ育った時分に身に付けた『可愛い』ものに対する <br>日本的な感性と、 <br>日本からフランスに渡って学習した西洋の厳密な学が無理なく溶け合っている。 <br>ありきたりな『西洋対東洋』のような対立軸がまったくないのに、 <br>その両方を強烈に感じてしまうのだ。 <br><br>それは、 <br>美智子の肉体の移動と、 <br>その途上での具体的な他者との交通の軌跡がそうさせているのだろう。 <br>肉体の移動を伴わない、 <br>ネットや書物などからの視覚情報の脳内編集だけでは、 <br>そのような対立軸の自然な消滅は起こり得ない。 <br><br>西洋に媚びることもなく、 <br>日本的なものに回帰することもない。 <br>そのような浅はかな狙いは彼女にはない。 <br>西洋からも東洋からも自由でありながら、 <br>それらの内に生きている。 <br><br>絵を再度観てみる。 <br>不可思議でいて透徹した目線。 <br>何かを語ろうとする、 <br>いや、 <br>語らずとも存在そのものでもあるような唇。 <br>少女達は男女という対立項から見た『女性性』から逸脱し、 <br>処女的な領域＝可愛らしさの中で戯れている。 <br>しかし、 <br>少女達の目線は、 <br>何故か人生の何もかもを体験した者だけが持ち得る諦念からの普遍性を感じさせる。 <br>その口は、 <br>途上にある者には知りえない福音が話される予感に溢れている。<br><br>彼女達は裸でいて、 <br>着飾っていて <br>汚されていて、 <br>泣いていて、 <br>笑っている。 <br><br>私達は彼女達の目と口から感じる普遍性に似たものを知っている。 <br>そう。 <br>それは仏像の表情のデザインから感じるそれである。 <br>彼女達から感じる超越性は、 <br>一度は人生を全うして自己と世界の外部に出でて、 <br>そこから再度この世界に降臨した者だけが持つ艶かしい軽やかさだ。 <br><br>彼女達は現在は少女であっても、 <br>かつては少女ではなかった。 <br>現在は処女であっても、 <br>かつては処女ではなかった。 <br>可愛らしさから零れ落ちるエロティシズム。 <br><br>美智子は東洋芸術の持つ普遍性を西洋のデザイン技術で抽象化し、 <br>キャラクター化した。 <br>そうやって出来上がった少女達は、 <br>自然と東洋と西洋が溶け合って、 <br>実存的でいて可愛いポップアートになっているのである。 <br><br>もちろん、 <br>美智子が描く少女達はシンプルに可愛い。 <br>それだけでも鑑賞者を楽しませて、 <br>観賞欲＝所有欲を高めさせる。 <br>ある者はこの少女達に清濁併せ持った普遍的な可愛らしさを感じ、 <br>またある者は不可思議でエロティックな可愛らしさを感じるのだ。 <br><br>可愛くポップな少女達。 <br><br>彼女達は私を見つめている。 <br>そして、 <br>私に語ろうとする。 <br>その視線は私を射抜いて私の内に住み着き、 <br>私に私と世界を実感させる。 <br>その口は彼女達が体験した人生全体を、 <br>生まれ直して語ってくれる。 <br><br>表面だけを観れば優れて可愛らしいデザイン・アートであるが、<br>少しでも彼女達の目線に囚われたら、 <br>私達は彼女達の虜になる。 <br><br>私は増殖する彼女達と戯れたい。 <br>少女の瞳と唇の奥底には人生の秘密が眠っている。 <br>私は彼女達に見つめられながら、 <br>彼女達を観賞＝所有していたい。<br><br><br>文章　利根山和光　絵　堀江美智子<br><br>☆英語に翻訳できる人募集中です。
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<link>https://ameblo.jp/art-word/entry-11450562681.html</link>
<pubDate>Wed, 16 Jan 2013 21:15:17 +0900</pubDate>
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