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<title>たなかのブログ</title>
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<title>都会のビー玉</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>小さい頃からこうだった。</div><div>違和感があったけど、全ては謝ってしまえば皆が笑顔になれたのだ。私は悪役に仕立てられ実際には歪み狂った世界のヒーローとして上手く世界を回していた事を分かっていた。駒が無いとチェスは出来ない。</div><div><br></div><div>違和感に確信を覚えたのはガラス工房を営む祖父が死んだ夏。</div><div><br></div><div>いたずら好きな祖父がラムネを飲んでいたらビー玉を飲み込んだふりをして苦しんでいる姿は苦手だった、人はいつかは死んでしまうのを知っていた。そして怖かった、魂が抜けて祖父のガラス細工はもう見れなくなった。</div><div><br></div><div>ガラスは綺麗だ、でも歪んで見える</div><div>それと同じように世界はいつも歪んでいる、変な顔で睨みつけて拳は腹や頭を何度も叩きつけた。その度少しづつ普通じゃない事に気づき出した。</div><div><br></div><div>ある日いつものように殴られて初めて反発してみたらボコボコにされた、運良く逃げ切れた私は家の外。とぼとぼ歩いた、知っているところまでしかいけない自分に腹が立っていた。</div><div><br></div><div>大人になりたい、大人になって好きなように転がって涼しい部屋で透き通って居たい。</div><div><br></div><div>「お前…綺麗になったな」</div><div>気持ちの悪い言葉を私を殴りながら父はそう言ったのは16になる年だったから、女になりつつある事を実感した。</div><div>ヒーローである事を信じて、毎日痣を作り歯を食いしばる。耐え無くていい、このまま死ねば何もかもこの絶対王政は終わるのだ。罪を背負い、罪悪感を一生刻み付ける事を想像したら痛みを感じる度にワクワクした。</div><div><br></div><div>より強く、エスカレートすればするほど終わりが近づくのだ。素晴らしかった。この後自分の葬儀が行われて、蔑まれる父の姿を思い浮かべてニヤリとした。</div><div><br></div><div>頭が壁に打ち付けられる、割れるようなズキズキとした痛みとバチンと平手の破裂音。柔らかい腹を肉を蹴り、埋まる私の体。もっとやれ、もっとやって、殺してみろ。そしてお前は一生、悪者になるのだ。透き通るほど歪みが見えてくる、この世界はビー玉そのものだ。</div><div><br></div><div>鏡を見た。</div><div>赤黒い血の塊、青紫と黄が混じった水彩画のような痣を見て順調だと笑った。叫び声をもっと響かせて行けば良い。ヘルプを求めたエンターテイメントだった、気が狂ったような勲章に綺麗だと言われた女体らしき肉を私は被ってそこに立ちつくした。</div><div><br></div><div>頭を下げ続けた。</div><div>「分かれば良いんだヨォ〜、ナァ！そこ！そこで土下座しなさい」</div><div><br></div><div>母を横目で見る。殴られる前に謝ってしまいなさいと言わんばかりの顔、むかつく。</div><div><br></div><div>私は床になじった額の感覚を絶対に忘れない。</div><div>屈辱を超えた先には、筋肉のついた膝の、頭を蹴り上げた父の膝の上に座って優しく微笑まれるのだ。それでいつもの茶番が終わる。</div><div>絶対に逃げられないようにする為に、自らおとりになり続けた。</div><div><br></div><div>その一方で高校生でもある、普通の少女として普通に振舞っていた。そこもまた、地獄だが家に比べれば幾分かマシだった。</div><div><br></div><div>「あんた、なんかおかしい」</div><div><br></div><div>そうある人に言われるまでは。</div><div>何時ものように私は先輩達とばかり側に居た、昼休みの時も決まって恋人の先輩とそのグループと一緒に購買に行きパンを買って走って自分の教室に戻る。同級生とも隔てなく話し、笑い決まって一人で帰宅した。</div><div><br></div><div>一人になると凄く楽だった、でも気を抜いていた。ずっとそれを見ていた奴が居たとは知らなかった。それはこの学校の同じクラスでは無いであろう、青白い青年が神経質だからこそ気づいた違和感だった。</div><div><br></div><div>「あんた、なんかがおかしい」</div><div>もう一度言われた。顔が引きつる。</div><div><br></div><div>彼の目は涼しげな奥二重で逆睫毛で今にも目玉に刺さりそうだった。そうだな、今なら分かる。彼は仲間だと思いたかったんじゃないかな。</div><div><br></div><div>彼の名は村上と言って、女子の間では人気だった。私は先輩の恋人とは別れて、別の大学生と付き合うことにした。暫く経つと、村上は帰り道に待ち伏せをして居て少し話す程度の中にはなっていた。くだらない話を極力した、村上は完全に私の中では外部の人間だし私は学校での自分の仮面に傷を付けたくなかった。村上は変わり者で、おとなしいがなんだか正義感があるようでそれが凄く迷惑だった。</div><div><br></div><div>私が学校と家の地獄に挟まれた中で、気の狂ってもおかしくない中で、唯一落ちつくのは危ない場所だった。高校生はこんな所へは来てはいけないのは分かっているが私は至る場所で偽りの自分を演じる事が快感だった。ある時は金持ちのお嬢様になり、親からの高額なプレゼントがやっかいだとか最近行ってみたい高級料理店などについてなど次々に嘘が出て来た。またある時は、大学生と偽り年上と仲良くなる事も容易かった。こんな風にして私はいくつもの人生を生きていた。</div><div><br></div><div>村上の迷惑なヒーロー気取りが私のプライドをズタズタにした日は今も鮮明に覚えている。</div><div>私は1人帰り道いつものコースで帰っている時にたまたまその息抜きの場所の偉い人に会い、立ち話をしていた。どの嘘を付いたか探り探りにしながらやり過ごした私は道の脇にいる村上を見つけた。</div><div><br></div><div>「誰？今の。」</div><div>「さあ、知らないおっさんだよ」</div><div>「やっぱお前おかしいよ、何か」</div><div>「私普通だよ、普通なつもりだから」</div><div>「なんか痣とか大丈夫かよ、いつも見えてないけどたまに見えてるよ。お前、帰り道は油断してるからさ…何かあったら連絡してくれよ」</div><div><br></div><div>そう言って携帯番号を描いた紙を押し込む。</div><div>やっぱり迷惑だったが、何か使えるかもなとも思った。少し頼りたい気持ちもありながら、また今日も家に引きずり帰った。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>「うるせえッ！！！お前はなんで口答えをするんだ！！！死ね！！！死んでみろ！！」</div><div><br></div><div>バシッバシッバシッ</div><div><br></div><div>顔を容赦なく殴られる、耳を引っ張りながら玄関先まで連れ込まれる途中にブチッという筋肉繊維の切れる音がして自分の耳が少し千切れた事に気づいた。痛い。</div><div><br></div><div>父の顔を見ると気が狂ったままだ、怒りを止められないのだろう。私はエスカレートする度にしめしめと思う程暴力による痛みに慣れ始めていた。痛いには痛いけど。</div><div><br></div><div>ああ、でも良く考えたらスリルがあった。アドレナリンが出ていて、毎日走り回り逃げていた。母の「やめてよぅ！！」という言葉には毎度毎度嫌気がさした。別に嫌いじゃないけど、メソメソ泣くならさっさと終わらすか、もう産まないで欲しかった。勝手なんだ、人ってのは。</div><div><br></div><div>耳から血が垂れてくる。視界がいつもグラつきグニャリの曲がる、やはり欠陥品は欠陥品なんだ。</div><div>私は弱い、こんな風にドブねずみのように小汚く泣きべそを書きながら歯をガチガチ言わせて震えて殴られている事しか出来ない。そして負けて、白旗で相手を突き刺すしか16かそこらの私には成す術はなかった。強くなりたい、殺意と憎悪で睨み付ける。それはもう眉に目がひっつく位に。</div><div>「親になんて目をするんだァ！！」</div><div>子供になんて事するんだよ、と思ったがもう意識が朦朧としてよくわからなかった。</div><div><br></div><div>母はまたやめてよぅと中途半端に間に入り、邪魔だなと思った。子供は動物なんだ、痛みで分からせないと駄目なんだ！と叫んでいたが何について怒っているのか正直良く分からなかったし分かってもそんなに全力で殴りかかるほどの事でもなかった。</div><div><br></div><div>母は私に何度も言った。</div><div>「もっと悲惨な家もあるのよ、うちはマシな方よ」「たった1人のお父さんなんだから」</div><div><br></div><div>悲惨な家もあるだろうな、確かに。</div><div>悲惨な家があったってなんだ？私は今まで生きて来て例えばアフリカの難民について可哀想だと思った事がないし私がマシなんだとも思った事もない。たった1人のお父さん？まあたった1人のお父さんだろうな。だからなんだ？全然理解が出来なかった。</div><div><br></div><div>人間はなかなかしぶとく暴力なんかじゃ死なない事も学んだ。エスカレートした分、怒りの沸点も低くなり状況が悪化しただけだった。もうお手上げだった、村上とはメールや電話を毎日する仲になり私は初めて全てを話した相手だった。嘘偽りも無く。村上は真面目に聞いてくれたが正義感が見え隠れする度に無力で威勢だけは良い小動物のような肝っ玉にイライラした。</div><div><br></div><div>こうなったらもう自殺するか。と思ったのは16歳が終わる夏だった。確か。</div><div>何もかもが嫌になった訳では無く、計画の内の切り札だった。良く考えたら私は誰よりも父を愛していたのかもしれない、これ程にまで他人に人生を捧げた事は無い。</div><div><br></div><div>学校に通っていた時、最初は輪の中心だった。</div><div>自分に自信があり、何より全て下級の物だと思っていたんだ。だから、神のように優しくピエロのように戯けて時には皆を仲を深める為に誰かを犠牲にして遊び使い捨てる。そうして私は王室を作り上げたつもりでいた。</div><div>私の中で会社で言えばトップ、幹部数人、部下というように役割を頭の中で位置付けて目的やアクションをした。その中のいつも私の隣に居た親友を私は裏切ってみた、その親友に恋人を提供し良い感じで奪い取った。凄い顔をして皆を巻き込み、私は自分で作り上げた王室から自分のせいで追放される事になった。いじめが始まった。なんだかもう芝居臭い幸せなハリボテを見るのも嫌になってきている。こんな風に私はいつしか壊れていった。いや壊していった。</div><div><br></div><div>苦痛が生かしているのかもしれない。</div><div>どこへ行っても地獄行きの方がなんだか楽だ。</div><div>私の株は大暴落した。それでもあんまり何も感じない、本来の自分がさらけ出せてせいせいしたとさえ思った。馬鹿が騙されたから悪いんだ。馬鹿が。</div><div><br></div><div>それからもう村上はおかしいなどと言わなくなった、なれたんだろう。電話をしても、メールをしても出なかった。思いの外、傷付いていた。最後のマッチが湿気っていたような喪失感だ。数日後の帰り道に村上が少し自分と似たような長い髪の女と歩いているのを見かけて街路樹を蹴飛ばし、まだ青々とした葉をローファーですり潰した。</div><div><br></div><div>人ってのは勝手なんだ。</div><div>いつも土足で踏み込んで部屋を散らして、物色して自分の荷物を持ってきて図々しく居座って汚い部屋は駄目だと文句をつけて去っていく。もうそれは1人の部屋に戻そうとも、香りも爪痕も残っているのだから。</div><div><br></div><div>いつも戦っていた気がする。</div><div>戦って空気を殴り向かい風に吹き飛ばされそうになって崖に向かうようなそんな道だ。</div><div>いつしか私は声をあまり出さなくなった。</div><div>じっとそこに涙を堪えて喉の奥の締め付ける、そうしているうちに悲しみが肺辺りを見回す。</div><div><br></div><div>息抜きの場所へふらふらともつれる足を歩かせる、自慢の白肌は青黒くくすんで見えたのは夜の街の卑しいブラックライトの所為かもしれない。</div><div>そこで出会った村上によく似た睫毛の落ちそうな男が私を見つけて気味悪く歯を見せた。喫煙者の独特な黄ばんだボロボロの歯をチラつかせて獲物のように見つめて離さなかった。</div><div><br></div><div>この人は悪い人だと思った。父とも村上とも違う、正義を語らないまっさらな悪人だった。安心した、この人は正体を明かしている。安全だった。地獄行きに歯車がかかり、私はついにおかしくなった。その人に罵倒され、髪を掴まれ抱き寄せられるのが好きだったし遠慮無く憎悪を抱いて見下した。変にすがすがしかった。この男は私を急降下しながら愛している。</div><div><br></div><div>村上は、学校に行かなくなった私をたまに気にして電話をよこしたが一回も出なかった。白肌の髪の長いあの女と上手く行かなかったんだろう、ヒーロー気取りを見るのはうんざりだった。</div><div>それでも時間は流れて行き、ドクドクと染み渡る。落としても落としてもなかなか割れないビー玉。春が迫っていたが私は同じレールにそもそも入れなかった。</div><div><br></div><div>天井を見上げても空を見上げても同じだ。</div><div>ただ桜は優しく花びらを落としてくれる、千切れて千切れてコンクリートにミンチにされる。桜は綺麗で苛々する。あんな風に花びらのゴミになれたら。汚れた制服の胸ポケットに入れているビー玉で桜並木を眺めると上に舞うように見えた。</div><div><br></div><div>死にに行くのは簡単だった、意識が遠のいて行く時に特に何も思わなかった。結局、なんか奇跡的に助かって良かったのか悪かったのか朝方意識が戻った。心臓の音が久しぶりに耳で感じる。</div><div>そうしたアクションは、私達家族に劇的な変化を遂げた。意外と皆は人間だった。</div><div><br></div><div>父は薄汚い生成りのメモに震えるボールペンの字で謝罪の手紙を私によこした、殴ってごめんなさいとそんな数分で書いた紙切れで私の何年もの毎日の毎時間の事を済ませられたことに傷付いた。</div><div><br></div><div>それからは父は泣いた、初めて泣いた所を見た。</div><div>何の心の痛みもない。中年の男の涙の垂れ流す様は気味が悪く汚らしく、シワに涙が入り込み潤って弾いたりしない。しみ込んで生き男のざらついた皮脂と化すだけである。気持ち悪い。</div><div><br></div><div>「お父さん、泣いてたよ」「許してあげなよ」</div><div>「大人の男なのよプライドがあるのよ」「許さないなんて鬼だよ」</div><div><br></div><div>そんな罵倒を皆から受けた時私は首をかしげた。</div><div>なぜ、何のために。このずっと敵を悪者を排除するためにボコボコに殴られて来たこの痣は何の為に。どうして、私を皆おかしいような目で見ているのか。どうして私が悪者なのか。</div><div><br></div><div>ロープのくくった首の感触がやけにリアルで未だに覚えている。後悔は無いが、祖父のいたずらっぽい顔が浮かんだ。あの顔は、私にとって濁りが無い。あの時ビー玉を飲み込んで死ねば良かったと思った。だったら閉じ込められずに済んだ。</div><div>17歳の私には何もかもを突きつけられても、突き刺さりそのまま刺し殺されていくだけである。</div><div><br></div><div>どうして逃げても逃げても帰っていたのか。</div><div>あんな風に真面目に学校にもきちんと行き、どんなに理不尽に殴られても家に帰っていたのか。</div><div>私にはどこにも必要とされていないような気がした。それでも反対向きの歪んだ世界を閉じ込めたような丸い世界に隅に隠れる事も出来なかった。</div><div>突然に世界に放り投げられて、捌け口となって振り回されて自分の事も分からぬまま否定され続けた。謝るしか術は無いし、憎んでも殺そうにも意気地なしで真面目な私には出来なかった。自分を殺そうとする事で何もかもが崩れてしまった事に少しだけ驚いて、少しだけ安心と嬉しかった。</div><div><br></div><div>それから家の中はぐちゃぐちゃになり続けた、母は倒れて入院して父は弱々しくおかしくなる。私も時折発狂するほどぐちゃぐちゃになった。でも快感だった、今までよりはましだった。でも今までの方がきっと家族にとっては正しくて幸せだったのかもしれないと気付いて、涙を垂れ流す。泣き声を押し殺す事も痛みの悲鳴を我慢する事も唯一の特技だ。</div><div><br></div><div><br></div><div>「お前のせいで」</div><div>「お前が家をぐちゃぐちゃにした」</div><div><br></div><div>その通り。</div><div>「お前さえ居なければ」</div><div><br></div><div>その通り。</div><div><br></div><div>「悪魔だ」</div><div><br></div><div>その通り、私は若さゆえにヒーローを気取った悪魔だった。静かに怒りも悲しみも押し殺す事しかできない。家から数メートル先の坂を降り切らずに帰ってくる日が続いた。</div><div><br></div><div>余計な事をしたのかもしれない。</div><div>私がおかしかったのか、そうかここが私の全てだったのか。受け入れられない私が悪かった。</div><div><br></div><div>可笑しかった。</div><div>あの悪人の男と泣きながら会った、青いボックスのダサい車が懐かしい。ダサい曲と静かな夜と、いつも酔っている男。私を見下し、馬鹿にする男。良く考えたら父に似ているかもしれない、父よりも深い悲しみを背負ってまだ少しだけ優しい気持ちが残った人。多分時間が経てばその少しさえ無くなる。その少しが本当に愛しい。</div><div><br></div><div>私はもう駄目かもしれない。</div><div>春はそこまで来ていたし、皆は今頃受験勉強をしている。青春を惜しんで、チャイムのBGMで笑っているんだろう。私は何周遅れだろう、そもそも本物の私は走っていなかったのかもな。</div><div><br></div><div>もうずっと日に当たらないせいで青白い蛍光灯のように、或いはあの高校生が立ち寄っては駄目なあの男達のあの場所のブラックライトのように卑しい肌をした女になっていく。少女と女の間の私は鏡を見る度美しいと思った。もうあの男に会う事は無いんだろう。</div><div><br></div><div>学校にはもう随分と行っていない。</div><div>退学だ、かつては輪の中心の可愛くて元気で皆を纏める気さくな私はどこにも居ない。ただ裏切者の泥棒女が静かに悲しくなっただけだ。生まれてから、男は最初から肝心な時には助けてくれないし女は産まれながらにして女の卑しさを持ち合わせているものなのだ。</div><div><br></div><div>芽吹く春を見て村上を思い出した、あの優しい無力な睫毛は瞳に刺さっただろうか。あのネオン街を久しぶりに歩いた。村上らしき青年がより一層虚ろな瞼で笑っていた、ああ私は何も知らなかったんだ。村上も歪んだ世界に閉じ込められている。でもそのふわふわして今にも飛び降りそうな一時的な悪い幸せを彼にどうかずっと与えてあげたくなった。さようなら、さようなら。</div><div><br></div><div>父はあのような謝罪の書いた数時間後に私の顔をグーでぶつけた。ゴツゴツしたあのグーは、何か正したのだろう？それとも私は鉄かなんかだと勘違いしていて叩けば叩くほど強くなるとでも思ったのか。実際にはガラスだった、あなたのせいで粉々にキラキラ光ってそのグーが次に破片で傷つけば良いのにと願う事しか出来ない。弱い母の病院へ、行かなくては。</div><div><br></div><div>母は涙を流して謝る。私が悲しめば、それ以上に悲しむ。うざったくて憎くて、それで凄く大事だった。かつての美貌も、折れそうな足も、しなやかで細いウエストも自由も全てを失って駄目になった母の人生に目を合わせる事は今でも出来ない。どうか母には、私が不幸でも勝手に幸せになるくらい憎まれたり憎んだりしたいなと思った。</div><div>トルコキキョウのレースをゆらゆらさせて、数日あまり食べていないお腹を抑えて来てしまった満開の春が咲いた坂をパタパタ登る。パタパタ。</div><div><br></div><div>小さく足音を踏みしめながらまた、祖父のビー玉に景色を写す。このビー玉は沢山の泣き声と叫び声を聞いて涙が詰まっているから歪んでいたんだなあ、顔なんかこんな風に歪んで泣いているのか怒っているのか全く分からないよ。控えめな色をした春の穏やかさが散って散ってやらかく私を包んで微睡んでこの町を出ることに決めた。その坂を登り切らずに17歳の私は倒れて、記憶が消える。</div><div><br></div><div>どこか見つからないバレない場所に流れついたらいい。都会に紛れて歪んでいる事さえ分からなくなりたいとミンチになった桜の残骸の散らばるコンクリートに左頬を擦り付けて、そう思った。</div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12297061624.html</link>
<pubDate>Sun, 30 Jul 2017 07:15:40 +0900</pubDate>
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<title>バスルームで花を詰まらせた話</title>
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<![CDATA[ <div>去年バスタブで彼女が死んだ。</div><div>気付くのに何日かかかっていた、間抜けな死体はあまり見ないようにした。</div><div><br></div><div>悲しみがいずれやってくるだろうと思い放って置いた僕の感情は彼女の仏壇のように見る事も無いであろう物になりつつある。</div><div><br></div><div>死因は謎めいたまま、最初から居なかったようにされた僕の彼女の顔はいつまで経っても笑顔な気がしていた。懐かしむより、真新しいまま返品するような感じだ。</div><div><br></div><div>僕はあれから気が違えてしまったのか、事故物件に住んでいる。勿論、彼女が死んだ彼女の部屋。別に死んだ女に縋るようにしている訳では無く、どうしてなのか住んでいる。</div><div><br></div><div>死ぬ前の日には花見に行った。確か新宿御苑。ビートルズのlet it be を口ずさんで恥ずかしくなってやめた、まだ付き合って間もなかったからだ。桜が好きな彼女は何時もより静かだった、桜が好きだからだと思った。その日は暖かくてそよ風が少し吹いていれば本当に花見に丁度良い天気だ。</div><div><br></div><div>お酒を飲むのが好きな僕達はそのままカフェでお酒と軽食を取り、たわいもない会話をしてキスをして部屋に戻りそうして無難な時間に手を振った。</div><div><br></div><div>そうして彼女は死んだ。バスタブで。</div><div>付き合って間もない僕は葬式にも呼ばれない訳だ。</div><div><br></div><div>今夜も体を洗って、髪を濡らしシャンプーをして湯船に浸かる。</div><div><br></div><div>普通の生活だ。</div><div>死んだ事も、普通かもしれない。</div><div><br></div><div>でももうじき、僕は悲しくなるんだ</div><div>もうじきに 。</div><div><br></div><div>彼女の嫌な場所も見つからないまま、見失うのは幸福で埋葬するべき場所はバスルームなのだ。</div><div><br></div><div>翌朝、急ぎで花を買ってバスタブに入れてお湯を張った。とても良い匂いだった、暖かい。</div><div><br></div><div>もうじき春が来る、悲しみはすぐそこに。</div><div>不可解な行動と不可解な行動。</div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12245065283.html</link>
<pubDate>Mon, 06 Feb 2017 02:38:49 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛20（最終話）</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>時計の音がもう耳になれて聞こえなくなった、この部屋は2階だから桜が咲いて散って行くのをずっと見下している。僕はずっと一人だった訳では無いし友人も居ない訳じゃないんだ。</div><div><br></div><div>一人でいれば比較する対象も孤独を味わい嘆くことも無い、そう思わざるを得ないのは病気がちで学校にも行けないからだ、時計は止まっていたのかもしれない。</div><div><br></div><div>春は嫌いだった。皆んながまた追い越してスタートを切る、周回遅れの僕は寝たきり。</div><div><br></div><div>毎日、日記をつけるよう命じられた時はうんざりしたが窓を眺めるくらいしかできないので「向かいの花屋が今日も繁盛しないらしい」とか訳の分からないことを書くと叱られた。</div><div><br></div><div>もう死んだ方がマシだ、と思いながら代わり映えの無い窓の景色に目をやるのは自分でも不思議だった。花屋には老人しか来ないし、少女でも来ないかと思ったのが始まりだった。作り話でもしてやろうって。</div><div><br></div><div>鉛筆は桜が散っても止まらなかった。してみたかったアルバイトも合格したのに行けなかった大学生も全て思い通りだった、惰性すら幸福だと思えた。</div><div><br></div><div>その内栗色の髪の少女と出会い、僕はその少女に惹かれ続けた。他人の葬式を手伝う僕は、それはもう生き生きしていたんだ。</div><div><br></div><div>でも、引き戻されてしまった。</div><div>魚の水槽には真実があったんだ、僕はベタを見て一匹じゃ戦えない癖にと呟いた。それにこの病室には、見舞いの花は一つもない。</div><div><br></div><div>僕はいよいよ、終わりらしかった。</div><div>体調は良いものの、急に自由にされると戸惑いがある。ふらつく足で向かう先は病院から数メートルばかりしか離れていない花屋だった。</div><div><br></div><div>そこには、新しいアルバイトが居て栗色の髪をした少女だった。ギョッとしたが、僕はすかさずこう言った。</div><div><br></div><div>「かすみ草の花束をあるだけ下さい。」</div><div><br></div><div><br></div><div>彼女は不思議そうに笑って、僕がその花束を渡したら驚いていた。僕がこの花束を渡したのはプロポーズでも何でもなく、棺桶に入れてほしかったからだ。誰も何も知らない。</div><div><br></div><div>もう病室に戻らない、何故なら今あの病室の魚を見たら僕の下睫毛が水浸しになってもっと生きたかったと言い訳しなければならないからだ。</div><div><br></div><div>誰にもばれていないだろうか。</div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12108521087.html</link>
<pubDate>Mon, 21 Dec 2015 02:02:58 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛19</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>僕は鉛筆を置いた。</div><div>右に目をやるとこじんまりとした水槽がこの部屋とはミスマッチに置いてある。</div><div><br></div><div>死にかけのベタのオスがヒレをぐしゃぐしゃに揺らせて泳ぐが僕には藻がいてるようにしか見えない。</div><div><br></div><div>栗色の髪をした、自分の葬式をあげる少女はまだだろうか。彼女が言った一つ一つの言葉は僕を棺桶に入れる言葉に変わっていく。</div><div><br></div><div>誰一人この部屋に訪れることの無いまま日が昇り、日が沈む。窓から見えるのは到底儲かっていないだろう花屋がある。少し先には良く噂になっている幽霊屋敷の蔦が後数メートルで花屋に絡まる所だった。ほんのあと数メートルで。</div><div><br></div><div>「さみしそうだね」</div><div><br></div><div>「だいぶさみしいよ」</div><div><br></div><div>窓を開けると春の匂いがして、桜が舞い込む。真っ白で薬臭いこの部屋は、病を治す力もなく微量の風で他人の幸せを吸うだけだ。</div><div><br></div><div>今度、外出許可が出たらあの花屋にかすみ草を買いに行こうと決めてからは少しだけ日差しが優しかった。</div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12106398831.html</link>
<pubDate>Tue, 15 Dec 2015 08:46:48 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛18</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>心臓が高鳴る。</div><div>と同時に、このカビ臭い部屋のせいか床に倒れた。</div><div><br></div><div>なんだろう、恋に落ちた瞬間？それとは違う。僕はいつの間にか体に自由がきかなくなっていた。</div><div><br></div><div>なんだって笑ってしまうよ、たった一人の少女に一目惚れして部屋に通い二人で葬式の為に生き急いで挙句に僕だけが死ぬなんてまっぴらごめんだ。ごめんだが、良く考えてみると仕方がないじゃないか。</div><div><br></div><div>彼女は綺麗だ。</div><div>透き通るような肌に変な色の深い瞳をして、たまにだけ話しかけてくる。</div><div><br></div><div>こんな人と一緒にいられたなら本望だ。</div><div>かすみ草が挟まる木でできた床が軋む音が聞こえる。これは誰かが歩み寄る音ではなく崩壊の音なのは夢うつつの、いや夢見心地の僕にも良く分かったことだった。</div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12103928164.html</link>
<pubDate>Tue, 08 Dec 2015 06:07:19 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛17</title>
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<![CDATA[ それから寂しがりな2人は薄暗い、かすみ草ばかりが舞う部屋で語りあった。水槽から溢れ出した水は淡いんだ。<div><div><br></div><div>僕は下らない連中を見下してやった事や何時も聞いているアイスランドのエレクトロニカだったりとか1人での暇の潰し方をひたすら語りかける。</div></div><div><br></div><div>それを真剣に聞いて、どこか幼い表情で笑う彼女との時間は今までで一番短く感じた。</div><div><br></div><div>「魚は息苦しい時にはどうすることも出来ないけれど、人間はそうではないと思う。」</div><div><br></div><div>「どうして？」</div><div><br></div><div>彼女は僕にキスをしていたと思う。</div><div><br></div><div>多分、恋に落ちていてその時部屋で息を止めていたのは2人だけ。数秒のことだった。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12101785793.html</link>
<pubDate>Wed, 02 Dec 2015 05:37:23 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛16</title>
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<![CDATA[ 何時も朝になると、嫌な感じがした。<div>どうにもならない事をどうにかしなくちゃあいけないような気になる。</div><div><br></div><div>彼女は、長い時間をかけてゆっくりゆっくり息を止める。魚は誰の面倒で生きるか死ぬかになるかなんて気かけちゃいなくて、なんて馬鹿なんだと思うが別に自然で生きようが大して危険は免れる事が無いから気にかけないのが一番なのかとも思った。</div><div><br></div><div>あれから良く会話をするようになって彼女の事をやっと少しだけ理解した。</div><div>かすみ草は増える度、時間は進むだけじゃなく僕達にとって減っていくような存在だった事に気付かされた、が知らないふりをする。</div><div><br></div><div>「自分がパズルのピースだと思っていたら、大間違い。無くてはならない存在になる程脆くなって壊れる準備をするだけで」</div><div><br></div><div>「水槽に魚が居なくても変わらずに世話をするのか？」</div><div><br></div><div>「裏切りだって悲しむくらいなら、最初から1人で居た方が良いし私は魚を捨てても目が悪いって言い訳する。」</div><div><br></div><div>「寂しそうだね」</div><div><br></div><div>「だいぶ寂しいよ」</div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12099462383.html</link>
<pubDate>Wed, 25 Nov 2015 15:34:53 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛15</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>不憫な魚は一匹である。</div><div>死にそうな目は多分助けを求めていない、僕にだって分かる。</div><div><br></div><div>彼女は、笑いながら部屋に新しく置かれた魚の入ったピカピカの水槽を眺めている。</div><div><br></div><div>女の死に際はさぞかし醜いんだろう、とげんなりしながら自分はどうだろうと考えてみたがゾッとした。</div><div><br></div><div>かすみ草の花は落ちる、日が沈む。</div><div>常に締切ったこの部屋の遮光カーテンはカビている、というかこの部屋はどうも湿っぽい。寿命なのか何なのか知らないが、僕と彼女はしきりに小さな咳をする。</div><div><br></div><div>彼女が選んだ水槽の魚は何匹かと比べて見ると貧弱で死にそうなみすぼらしさがあったが、こうして見るとそうでもないんじゃないか？という気になった。</div><div><br></div><div>「一人は本当に優しい人間が最後にする馬鹿なのよ」</div><div><br></div><div>彼女は多分、5日ぶりにまともな言葉を話した。</div><div><br></div><div>そうなのかもしれない。</div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12097162240.html</link>
<pubDate>Thu, 19 Nov 2015 04:42:35 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛14</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>君は何時も何かを見ているようで見ていなかった。前を見つめているようで、ちっとも前なんか見つめていなかった。</div><div><br></div><div>それは、君が唐突に魚を見に行くと言った日だ。嫌々ながらも後ろをついていった熱帯魚屋での事で、勿論春の花が咲いている。</div><div><br></div><div>君はまだ死んでいないのに、2度目の春の香りがするとなんだかセンチメンタルな気分になるんだ。僕は最近いかれているらしい。</div><div><br></div><div>2人は、歩くのがゆっくりだった。急ぐ事はない。死を受け止めきった後の人間の前には穏やかで優しい風が吹いている。</div><div><br></div><div>熱帯魚屋は、なかなか繁盛しているらしかった。寂れた街からは少し離れた都心部では、生きたインテリアとして飼われるのだろう。</div><div><br></div><div>沢山の水槽に囲まれて、部屋は青と緑の混じった不思議な光を帯びていた。そこに張り付く君の頬は、死人のように青ざめて気味が悪い。目は魚のようなのか、と思って目線を其方にやるとどうも魚を見ているようだ。</div><div><br></div><div>「それにしたらいいじゃないか。」</div><div><br></div><div>「ああ、そうね。」</div><div><br></div><div>素っ気ない返事とともに店の人間に指さした魚は今にも死にそうな弱々しく真っ青なベタであった。君は多分、名前も知らないのであろう。</div><div><br></div><div>帰り道、この魚が不憫でならなかった。</div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12090169395.html</link>
<pubDate>Sat, 31 Oct 2015 04:06:38 +0900</pubDate>
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<title>下睫毛13</title>
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<![CDATA[ <div>どうにもこうにも、君の事を考えると笑いが込み上げてくる。それが嘲笑か微笑みかでいうと可笑しな事に後者だと思うんだ。</div><div><br></div><div>君は、初めて会った時より綺麗になったんじゃないか？</div><div><br></div><div>あのみすぼらしい部屋の床がかすみ草の花びらで埋まる頃、君と僕は二回目の桜を見ていた。</div><div><br></div><div>「今日は、魚を見に行こうと思うの」</div><div><br></div><div>久しぶりに少しだけ楽しげに君はこう呟いた。僕は君の栗色の髪を見ながら、怪訝な顔をして</div><div><br></div><div>「死ぬのに生き物を飼うのか」</div><div><br></div><div>と嫌味を言った。</div><div><br></div><div>「あなた、生まれ変わりって知らないの？」</div><div><br></div><div>君はいつも上手で、僕はそれを滑稽に思いながら側を離れられないでいる。</div><div><br></div><div>部屋にはもう数ひゃくのかすみ草だ、雪のように白くて少しでも動けばドライフラワーと化したかすみ草が脆く壊れていくだけだった。</div><div><br></div><div>葬式の為に生き急ぐ女との時間はあまりに急いでいるようには見えず、死を実感せず生き方や何故生きるのかを問う人間や死にたくないと縋る人間達と何ら変わりはないのではないか？とまで考える僕は君を買い被っているんだろう。</div><div><br></div><div>残念な事に全ては単純なのに、あまりに綺麗な物が多すぎて僕は目が回る。</div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/azplanetazaz/entry-12087987409.html</link>
<pubDate>Sun, 25 Oct 2015 03:18:23 +0900</pubDate>
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