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<title>瓶詰め少年</title>
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<description>バンビーノ！オマケ的ページ。思いつくままにつらつらと笛！（真田受け）・テニプリ（仁王受け）などを書くトコロ。感想・批判などはレスでもサイトの拍手からでもお好きなように。</description>
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<title>COLORS：赤</title>
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<![CDATA[ <p>竦む青、泣く黄。</p><p>そして、嘘つきの赤。 </p><br><br><br><p>COLORS：赤 </p><br><br><br><br><p>其処に通うために、諦めたものがいくつかある。</p><p>例えば練習後の自主練習。今では夜中にやっていることだ。</p><p>例えば部室でのギターの調律。今では彼に会いに行くための電車の中でやっている。</p><br><p>今まで当たり前のようにしてきた生活を、たった一人の人のために変えるとは思わなかった。</p><p>ましてや、自分が其処まで人に執着するとは思っても見なかった。</p><p>そしてそれが、こんなにも嬉しい事だとは知らなかった。 </p><p>もう少し、もう少しであの目障りな金色が見えて、その影から幾度と無く待ち焦がれた黒髪が現れる。そうしたら、いつもと同じように名前を呼んで、彼の驚いた顔を見て微笑もう。</p><p>そうすれば、彼もいつもと同じように僕の名前を呼んでくれるだろう。</p><p>いつもと同じを繰り返す事が、こんなにも楽しいと感じるなんて。</p><p>極彩色の世界に目が眩みそうになる。 </p><br><br><br><br><br><p>▼</p><br><br><br><br><br><p> 「此処だと目立つんで、部室の方に……。」 </p><br><p>その言葉の続きを言わないことで、僕に選択肢を与えているのだろうか。</p><p>そんなものは必要ないというのに。</p><p>君のために捨てるものが幾らあろうと、君を手放す事など絶対に有り得ないのに。</p><br><p> 「ありがとう。」 </p><br><p>僕のその言葉でホッとしたように微笑む君が見たいから、あえてその言葉を選ぶ。</p><p>他の言葉でも、君と少しでも長く居られる手段はあるというのに。 </p><p>筧の隣について、部室に向かうとき背中に視線を感じたけど無視をした。</p><p>お前は、僕以上にいつも筧と一緒に居られるんだろう？大人気ないというなら言えば良い。ただ、お前のその視線のせいで、筧が顔を曇らせる事が気に食わない。</p><br><p> 「（ほら、また）…疲れた顔をしている。」</p><p>「そう、ですか…？」 </p><br><p>そんな言い方をしないでくれ。</p><p>僕が君に関することで見落とす事など有りはしないのだから。</p><br><p> 「あぁ、君の事で、僕にわからないことがあるとでも？」 </p><br><p>不意に驚いたように目を見開くから今まで以上に愛しくなる。</p><p>これ以上、どうやって君を愛せば良いのかが僕にはわからない。</p><br><p> 「………そういう言い方」 </p><br><p>知ってるよ。素直に嫌いといえない君の癖。 </p><br><p>「「好きじゃない」？」 </p><br><p>ふわりと微笑んで言ってやれば酷く悔しそうな顔を見せる。</p><p>そんな顔まで愛しいと感じてしまうのだから始末が悪い。</p><p> 常に取り乱さない冷静さを現したようなきりっとした眉。真っ直ぐに見つめるアクアブルーの美しい瞳。理知的に結ばれた口。</p><p>横目でちらりと見るのが好きだ。</p><p>僕の言葉に反応して表情を崩す筧は勿論だけど、こんな風に前だけを見つめて歩く筧を見るのも好きだ。 </p><br><p>つまるところ、僕は筧駿という男ならどんな事をしていても愛しく感じてしまうのだろう。</p><p>それは、一種の病気のように僕の中に巣食い、内側からどんどんと侵していく。</p><p>きっと、死んでも治る事のない不治の病。</p><br><br><br><br><br><p> ▼ </p><br><br><br><br><br><p>いつものように部室に案内されて、コーヒーを入れようとする筧の思っている以上に細い背中を見る。</p><p>戸棚の上に手を伸ばす度に持ち上がるシャツの裾からちらりと覗く日に焼けていない白い素肌。</p><p>流れるようなしなやかなラインの腹筋や細い腰が薄暗い部室の中で白く発光しているように目に付いた。</p><p>引き付けられた目が、離せなくなる。</p><p>ざわりと、背筋を何かが駆け上った。 </p><p>カップを持った骨ばった手にその輪郭をなぞるようにして手を沿わせれば驚いた筧の肩が大きく揺れた。</p><p>可愛らしい反応に思わず笑みが漏れる。</p><br><p> 「別に要らないよ。」</p><p>「いや、でも…」 </p><br><p>なおも言いよどむ筧に言い聞かせるようにその手の内のカップを奪い、元の場所に戻しながら言葉を続けた。</p><br><p> 「いいって言ってるだろ…。」 </p><br><p>骨の浮き上がった首筋や艶やかに青く光る黒髪から、汗と洗髪剤の混じった酷く扇情的な匂いが鼻腔に広がる。</p><p>香水などつけない、そのままの筧の匂いに眩暈がしそうだった。</p><br><p> 「筧……」 </p><br><p>何も考えずとも手が勝手に動いた。細くしなやかな腰に腕を回せばぴくりと反応を返してくる。</p><p>きっと、君は僕から身を離そうとするのだろう。無意識なのを知っているだけに愛しくて、そして心配になる。</p><p>この腕に閉じ込めたまま、一生を共に生きていきたいとさえ思ってしまう。</p><p> 逃げようと引かれた足にあわせて腰に回した腕に力を込めて引き寄せれば、意図も簡単にバランスを崩して机に寄りかかる筧。</p><p>その上に圧し掛かるように近づき、滑らかな頬をなでるように触れる。</p><p>青い目が、しっかりとコチラを見つめてくるものだから、思わずその眼球に口付けしたくなる衝動をどうにか抑えて、反射的に閉ざされた瞼に唇を落とした。</p><p>小さく震える瞼の裏で、眼球が揺れるのを感じて、舌をその隙間に押し入れ、眼球を嘗めてしまいそうになる。 </p><p>其れを誤魔化すように一度離れた頬にもう一度触れ、その薄い唇に自分の其れを押し付けた。</p><p>冷たかった其れが、だんだんと熱を持ってくるのが嬉しくてうっすらと目を開いて筧の顔を盗み見る。 </p><p>きつく閉ざされた目元が真っ赤に染まっていて、愛らしい。</p><p>思わず顔がほころぶ。 </p><br><p>キラリ……。 </p><br><p>薄く開いたカーテンの隙間から、太陽の光とは又違う光が、飛び込んできた。</p><p>そちらを見れば、驚いたように目を見開き、怒ったように口をきつく結んだあいつの顔。</p><p>そこに居る事に対する驚きと、いつかはこうなっただろうと言う諦めにも似た冷静さが頭の中を回った。</p><p> 目線を合わせてみれば、慌てたように踵を返して走り去っていたアイツに、筧は気付いていない。</p><p>冷静だと思っていたが、赤く染まった筧の顔を見た瞬間に急に激しい苛立ちに襲われた。 </p><p>その苛立ちを何処へ逃がせばいいのか判らずに、ただからだが動くままに筧を求めた。 </p><p>少しかさついた下唇を嘗められると思わず口を開けて細く息を吐き出す癖。</p><p>そしてその隙間がどれほど小さく、そして優しいかも。</p><p>押し開くようにして舌をねじ込めばつるりと柔らかく、濡れた内壁。綺麗に並んだ歯の一本一本を丁寧に表から裏へと歯茎を掠めながら嘗めてやればあわせた唇の端から鼻にかかったような甘く掠れた声が漏れる。</p><p>その声に煽られるようにしてより深く、舌を差し込めばひくりと奥に縮こまった筧のそれに舌先が触れた。</p><p>それに講義するように「んんっ…！」と溢れ出る声も無視して舌を引き吊り出すようにして無理やり絡める。</p><p>初めは薄くあいていただけの口を、僕に呼応するように大きく開いて快感を受け止める筧の姿に、ゾワリと腰の当たりを何かが這い、中心が熱を持った気がした。 </p><br><p>「（そろそろ…、ヤバイかな……）」 </p><br><p>まだ足りない、もっと欲しいと体は勝手に動くけれど、そろそろ止めておかなければ歯止めがきかなくなりそうだった。</p><p>舌と一緒に流し込んだ唾液をわざと鳴らしてやればくちりと小さく可愛げな音が響き、流し込んだときに溢れて零れた滴の跡を伝って、顎から喉へと流れて服の影に消えた。</p><p>其れを眼で追いながら止めるタイミングを計る。</p><p>欲のままに、このまま貪り、中心の熱をさらに高ぶらせて開放してやりたいとは思うが、それは流石に筧に怒られるだろう。</p><p>それに、此処は部室だ。</p><p>いつ誰がアイツのように中を覗くか判らない。</p><p>そして、其れを知ったら傷つくのは筧だ。僕は、筧を傷つける全てを許しはしない。 </p><p>ちゅ、と名残惜しく筧の舌を吸ってから自分の其れを引き出し、バードキスのように軽い音を立てて終わらせた。</p><p>息苦しさと快楽の熱とで細められ、潤んだ瞳で荒い息を繰り返す筧。</p><p>互いの混ざり合った唾液で濡れた唇が薄暗い部室で艶めいて卑猥だった。</p><br><p> 「大丈夫か？」</p><br><p> 流石に苦しかっただろうと心配になって問いかければ、無意識のうちに口元が緩んでいたのか筧は無理に鋭い目を作ってコチラを見た。</p><p>そんな姿が手負いの獣を連想させて、さらに笑みが深くなるのを感じる。</p><p>きっと、筧は気を悪くするのに。ふい、と不自然に筧の視線が横へと逸らされた。</p><p> 筧の視界から、僕が消える事が怖かった。</p><br><p> 「…ごめん。少し、調子にのったかな…」</p><p>「あ、いや、……あ」</p><br><p> 少しでも気を引きたくて肩を落として悲しそうに言えば、優しい筧は慌てたように僕をその視界に入れ、手を伸ばす。そして、その手を僕が取ったところでやっと気付く。</p><p>また、騙されたのだと。そして仕様が無いと言いたげに眉が下がる。</p><p>その姿にちくりと、罪悪感が刺激される。 </p><br><p>「ありがとう。筧、好きだよ（誰よりも君が。）。」 </p><br><p>だけど其れを謝れるほど僕は大人じゃないし、其れを言う事で筧に呆れられる事が、嫌われる事が怖かった。僕には、筧しか居ないのだから。 </p><br><p>「あぁ、もう。…そうですか。」</p><br><p> ぐったりとしたように御座なりな返事が返ってくる。</p><p> 視界が、一瞬で暗くなるようだった。</p><p> 気がつけば自分よりも背の高い筧を無理やり抱き寄せて、離れてしまわないようにきつく閉じ込めていた。</p><p>シャツのボタンに驚いた筧の歯が当たったような音がしたが、気にならなかった。</p><br><p> 「筧、ごめん、ごめん…だから、そんな風に言わないで、頼む…。僕には、筧しか居ないんだ…頼むよ…筧、筧…（君に嫌われたら僕は、きっと何も考えられなくなる。）」 </p><p>「赤羽さん」</p><br><p> 筧が何を言っているのかも判らない。</p><p>ただ、嫌われる事が怖い。誰よりも、筧に嫌われる事が怖くてたまらない。 </p><br><p>「赤羽さん、ごめんなさい…俺、」 </p><br><p>ごめんなさい、なんて、拒絶の言葉にしか聞こえないんだ。</p><p>だから、止めてくれ。君がそんな言葉を使わないでくれ。</p><br><p> 「筧…？どうしたんだ？なんで筧が謝るんだ…？やめてくれ、筧、僕は君さえ居てくれればそれで良いんだ…。だから、そんな事言わないでくれ…、頼むよ…筧…。（きっと何も出来なくなる。）」 </p><br><p>身じろぐように首を動かした筧に、離れていってしまうのではないかと思わず反射的に力が篭る。</p><p>ぎしり、と鈍い大きな音が上がって苦しそうな筧の声が上がった。 </p><br><p>「っ筧！お願いだから僕から離れていかないでくれ…！」 </p><br><p>行くと言うのなら、いっそ、この手で―――――</p><br><p> 「く…、あ…赤羽、さん…！」 </p><br><p>不意に浮かんだ恐ろしい考えに、寒気がした。 </p><br><p>「筧…、ごめん、ごめん…だから…」</p><p>「…俺は、貴方を見捨てられませんよ…。」 </p><br><p>悲しそうに、筧が言った。「大丈夫」や「絶対」なんて言わない筧。</p><p>でも、きっと言われても僕は信じられない。</p><p>きっと、その言葉を発した君を傷つけてしまうから。</p><br><p> 「（ありがとう………）」 </p><br><p>僕は、君に縋る事でしか、生き方が判らなくなったんだ。 </p><br><br><br><br><br><br><br><p>―――――無き笑う赤に攫めるものが青ならば。</p><br><br><br><br><br><br><br><p> 2006/2/24 </p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10052808630.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Oct 2007 19:04:42 +0900</pubDate>
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<title>COLORS：青</title>
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<![CDATA[ <p>沈む黄、虚弱な赤。そして、偽善の青。</p><br><br><p>COLORS：青</p><br><p><br>右足を出すときに息を吸う。<br>左足を出すときは反対に吐き出す。<br>其れが走るときの水町のくせだった。<br>多分其れを知っているのはクールダウンのペース配分が殆ど同じ自分だけだと思う。</p><p>そして、隣を走る水町の息遣いで自分達のペースを測ることが出来るようになっていた。</p><p>「（また、ペースが落ちた。コレじゃ余計に疲れるってのに…。）」</p><p>普段なら俺の数歩前を走る水町の背中が、だんだんと近づいてくる。走りにくい。<br>此処のところ、いつもそうだ。それほど長くは無い学校まわりを走っていて、半分をいくとだんだんとペースが落ちてくる。<br>まるでこの先に行きたくはないと言いたいかのように。<br>一体何だと言うのか。この先には正門がある以外に何も無いはずなのに。</p><p>「正門」と考えて一人思い当たる人物が居た。<br>あぁ、そういえば、と思い出して納得する。</p><p>水町はあの人が苦手だと言っていた。だからだろうかと勝手に憶測をつけてそれ以上考える事をやめた。<br>そろそろ。あの人が俺を呼ぶ頃だからだ。</p><p>「筧！」</p><p>ほら、いつもと同じタイミング。<br>いつもと同じ明確な発音。<br>いつもと同じ心地よく響く声。</p><p>声の方を振り返れば口元を緩めてサングラス越しにコチラを見ている赤羽さんがいた。<br>思わず笑みが零れそうになったが、反射的に驚いた顔を作っていた。コレも、いつもの事。<br>きっと赤羽さんは気付いているのだろう。一瞬笑いかけて顔が引きつった事に。</p><p>だから俺は、いつもと同じセリフを繰り返す。</p><p>「あ、赤羽さん…？！」</p><p>そうすれば赤羽さんも同じ言葉を返してくれる。それは、確信にも似た期待。</p><p>「まだ、練習？」<br>「あ、いえ、後はグラウンドの整備だけですけど…（だから、もう少し…）」<br>「そうか、じゃぁ此処で待ってる。一緒に帰らないか。」</p><p>絶対に、俺が断らない事をわかっていて飽く迄疑問系の形を崩さないのだから、結構人が悪いのかもしれない。</p><p>「あ、はい…。此処だと目立つんで、部室の方に……。（もう少しだけ…）」<br>「ありがとう。」</p><p>その言葉のお陰で、何度安堵をした事か。<br>その言葉のお陰で、俺はこの人を部室まで案内する事が出来る。</p><p>水町が、コチラを見ていることには気付いている。まるで、捨て犬を見捨てる気分になるが、それでも、俺は水町を背にしてこの人と歩き出す。</p><p>何故なのか、それはきっと、赤羽隼人という男が、俺にとって特別であるから。</p><br><p>「…疲れた顔をしている。」<br>「そう、ですか…？」<br>「あぁ、君の事で、僕にわからないことがあるとでも？」</p><p>どこから出てくるのかこの自信は。なんの実証も確証もないと言うのに。<br>しかし、何故だかこの人の言葉は確かな重みを、真実味をもって俺の中に沈殿する。<br>それが、真実であると疑いながらも確信してしまいそうになる。</p><p>「………そう言う言い方、「好きじゃない？」……ハイ…。」</p><p>まるで、全てを掌握しているかのように彼は言った。<br>そんな風に言われては、決してそんなはずは無いのに、そうだと錯覚してしまいそうになる。</p><p>言い当てられた気恥ずかしさともなんとも言えない歯痒さで何も言えなくなってしまう。<br>この無言の空気に慣れてきたころ、部室が見えてきた。<br>少しだけの安堵とは比べように無いほど残念な思いがあった。</p><p>部室の扉を開いて赤羽さんを中へと招き入れてから戸を締めた。<br>ぱたん、と静かな音が室内に溶けたように消える。<br>普段他の部員たちの声で騒がしい部屋も、その部員が外に出払っていてはまるで雰囲気が違う。<br>活気に溢れたような部室が、寂れ果てたように静かになって、室内に居る者を飲み込んでしまいそうだった。</p><p>いつものように部室にいつの間にやら備え付けられたいつかの忘れ形見の簡易コンロに水を汲んだやかんを乗せて火をつける。<br>結構長い事部室に置きっぱなしのそれは、時たまに使うこともあってかガスが少なくなってきているようで、火のつきが悪い。何度か捻りなおしてやっと火がついた。</p><p>水が沸騰する間に簡素な戸棚からコーヒーカップを一つソーサーとセットで取り出す。<br>すると、隣から手が伸びてきてカップを持った手に沿う様に触れた。<br>驚きとくすぐったさにびくりと肩を揺らせばくすりと忍び笑いが聞こえた。思わず頬に血が集まる。</p><p>「別に要らないよ。」<br>「いや、でも…」<br>「いいって言ってるだろ…。」</p><p>するりと簡単に俺の手からカップを抜き取り、元の場所へ戻してしまう。<br>其れを目で追うことしか出来ず、戸棚の前で動けずに居た。</p><p>「筧……」</p><p>そっと、まるで割れ物でも扱うかのようにやんわりと腰を抱かれ、思わずぴくりと身じろぐ。<br>反射的に身を離そうと足を一歩引くと、まるで予測していたかのように腰に回された腕に力が入り、バランスが崩れた。</p><p>ガタリと机に手を着いて体を支えれば、圧し掛かる様にして赤羽さんが近づいてくる。<br>あ、しまったな、と思う頃にはすでに逃げ場はなくなっていた。<br>やんわりと頬を撫でる様に触れられ、ゾワリと背筋を何かが這い上がる感触に鳥肌が立つ。<br>ふわりと香る薄いシトラスの香水が、鼻腔を擽るほど近くに赤羽さんの顔がある。<br>赤い目が、コチラを見据える、その赤から、目が離せない。</p><p>そっと、優しく瞼に口を寄せられ、思わず目を閉じる。<br>すると、またふわり、薄く上品にシトラスが香り、赤羽さんが少し離れた事を告げた。<br>また頬を撫でられてきつく目を閉じれば今度は唇へ柔らかな感触。</p><p>うっすらと湿った唇が自分の其れと重ねられていることに気付き、顔中に血が集まるのを感じた。<br>きつく手を握り、拳を作る。それは、防波堤。与えられる快感のままに、自分を取りこぼさない為の、留め金。</p><p>暫く合わされたままだったが、濡れた舌で下唇をなでられ思わずふ、と口を薄く開けて息を吐き出した。<br>すると、器用にもその小さな隙間から尖らせた舌が入り込んでくる。<br>生暖かく、湿った異物感にゾワリとまた背筋が淡く色めき立つ。<br>思わず「う…」と声が漏れる。<br>掌に爪が食い込んでギリギリと痛む。即席の防波堤が、壊れてしまいそうだった。</p><p>ちゅくりと小さな水音が耳に残る。<br>はぁ、と生暖かい息が顎に伝ったどちらのものとも知れない唾液を冷やして消える。<br>歯茎から天井へとを撫でられ、声が漏れる。<br>気がつけば口のはしから溢れ出た唾液は喉まで伝っていた。<br>息苦しさに逃げ出したくとも体が言う事を聞かない。<br>頭では押し戻そうとしているのに、体はより快感を求めてさらに深く誘おうと口を開き、舌を動かす。<br>声までも、思い通りに出せなくなってしまったようだった。</p><p>わざと音を立たせて離れていった唇が、ふ、と笑みの形を取る。</p><p>「大丈夫か？」<br>「……」</p><p>何も答えずにただ視線だけを返す。<br>やっぱりというか、赤羽さんは口元で笑っていた。<br>まるで馬鹿にされているように思えて口の端を拭いながら合わせたばかりの視線を横に逸らした。<br>目を合わせていたら、そのまま流されてしまいそうだった。</p><p>「…ごめん。少し、調子にのったかな…」<br>「あ、いや、……あ」</p><p>悲しそうに言うものだから、思わず手を伸ばしてしまった。<br>その手を握られて、墓穴を掘ったことに気付く。あぁ、また、この人の常套手段だと言うのに。</p><p>「ありがとう。筧、好きだよ。」<br>「あぁ、もう。…そうですか。」</p><p>またも騙された自分に嫌気が差す。<br>御座なりに返事をすれば握られた手を強く引かれて前に倒れこむ。<br>どうやら機嫌を損ねてしまったようだった。</p><p>「筧、ごめん、ごめん…だから、そんな風に言わないで、頼む…。僕には、筧しか居ないんだ…頼むよ…筧、筧…」<br>「赤羽さん…」</p><p>きつく抱きしめられ、呼吸が止まりそうになった。<br>きっと、それは強い力のせいだけじゃなくて、その言葉のせい。</p><p>「赤羽さん、ごめんなさい…俺、」<br>「筧…？どうしたんだ？なんで筧が謝るんだ…？やめてくれ、筧、僕は君さえ居てくれればそれで良いんだ…。だから、そんな事言わないでくれ…、頼むよ…筧…。」</p><p>なら、なんて言えば、貴方はこの気持ちをわかってくれるんだ？<br>どんな言葉を使っても、表せないだろうこの気持ちを。<br>俺はその言葉以上に近い言葉を伝える術を知らないというのに。</p><p>少し顔の向きを変えようとしたら、ぎしりと抱きしめられた首の骨が軋んだ。</p><p>「っ筧！お願いだから僕から離れて行かないでくれ…！」</p><p>呼吸が、止まりそうだった。</p><p>「く…、あ…赤羽、さん…！」<br>「筧…、ごめん、ごめん…だから…」<br>「…俺は、貴方を見捨てられませんよ…。」</p><p>「大丈夫」や「絶対」なんて、重い言葉は使えなかった。<br>そんな不確かで重たい言葉など、この人に言えるはずが無い。</p><p>俺は、この手を振り払えるだけの力も、冷徹さも持ち合わせては居ないだけ。</p><br><br><br><br><p><br>―――――立ち竦む青に差し出された手が赤ならば。</p><br><br><br><br><br><p><br>2006/2/20<br></p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10052808333.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Oct 2007 19:04:02 +0900</pubDate>
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<title>COLORS：黄</title>
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<![CDATA[ <p>笑う赤と、戸惑う青。そして、耐える黄。</p><br><br><p><br>COLORS：黄<br></p><br><br><br><p>静かに、ただ静かに彼は俺を置いていく。</p><p>そう、静かに俺から離れて行くんだ。<br></p><br><p>「筧！」<br><br>クールダウンに校舎周りを軽く走っていると、正門近くに差し掛かったところで俺の隣を走っていた筧を呼ぶ声がした。<br>この声を、最近良く聞いている気がする。<br>そう、いつも一緒に居る筧の声以上に、この人の声が耳に残って、いつも声を聞いている気がする。<br><br>「あ、赤羽さん…？！」<br>「まだ、練習？」<br>「あ、いえ、後はグラウンドの整備だけですけど…」<br>「そうか、じゃぁ、此処で待ってる。一緒に帰らないか。」<br><br>問いかける形で言われたそれには、否定できる隙などまるで感じられない。<br>隣で聞いているだけの俺がそう感じたのだから、実際に言われている筧は俺以上に感じているだろう。<br><br>「あ、はい…。此処だと目立つんで、部室の方に……。」<br>「ありがとう。」<br><br>ホラ、ちょっと戸惑ったように筧は赤羽サン（一応先輩らしーから。）を部室へ案内する。<br>これ、何度目だよ。<br><br>赤羽サンが来るたびに筧はクールダウンを途中でやめて、赤羽サンを部室に案内してからグラウンドの整備を始める。<br>そして、一緒にクールダウンしてた俺はいつもそこに置き去りにされる。<br>ねぇ、筧。<br>そいつさぁ、何回此処に来てんだよ？ふつーに１０回以上だぜ？いい加減道案内なんていらねーじゃん。<br>なぁ筧。<br>いつからお前は俺を置き去りにしてしまうようになった？そいつが来るようになってからじゃん。つまんねー。<br>なぁ、筧。<br><br>やっぱりソレは赤羽が本物のアイシールド21だから？<br><br><br><br>そんなん、ズッコイ。<br></p><br><br><br><br><p>▼<br></p><br><br><br><br><p>―――――…カタンッ</p><p><br>小さな音。気をつけないと聞き取れないような、極々小さな音が、部室から上がった。<br>多分聞いたのは部室の隣にある倉庫にボールを片付けてる俺だけ。一緒に片付けてる大西は部室には特に注意を払っていないようだったから、多分聞いたのは俺だけ。<br><br>部室には、赤羽と、筧が居る。<br>気になった。気にならないほうが可笑しいだろう？と自分に言い聞かせるように思い、部室の窓の前を通るとき、うっすらと開いたカーテンから中の様子をちらりと伺った。<br><br><br>細い手首。<br>固く握られた拳。<br>細長い指が、真っ白に染まり、小さく震えている事まで見えた。<br>うっすらと汗の滲んだ綺麗な項。<br>赤く染まった耳と首。<br>そして、光の加減で青く見える黒髪にくっつく真っ赤な髪。<br>息を潜めれば、中の息遣いまで聞こえてきそうなほど、俺は部室の中の、その光景を見つめていた。<br><br>すらり、と切れ長の赤い瞳がコチラを見た。<br>目が、合った……？<br><br>俺は自分でも良くわからないけれど、慌てて目を逸らし、グラウンドへ走った。逃げた。<br><br><br>いったい、どれほどの時間俺はあの光景に見入っていたのだろう…？<br>それすらも判らないほど、俺はその光景に見入っていたらしかった。<br><br>あぁ、イライラが止まらない。<br>また、置いていかれた気がした。<br>また、離れていった。<br><br>静かに、ただ静かに筧は俺を置いていく。<br>そう、静かに俺から離れて行くんだ。<br>何も言わずに。<br>何も伝えられないままの俺から離れていく。<br></p><br><br><br><br><br><p>▼</p><br><br><br><br><br><p>「じゃぁな、水町。」<br>「ん、また明日。」<br><br>いつもと同じ言葉。<br>いつもと同じ態度。<br>いつもと同じ二人。<br><br>俺は赤羽サンに軽く会釈して二人と別れた。<br>一緒に居る事がこんなにも辛く感じるなんて、初めてだった。<br>いつもなら隠せるはずのこの苛立ちが、今だけは隠せない。笑い方を、忘れてしまったようだった。</p><p><br>早くこの場を離れたくて、いつもより大きいコンパスで足を早く運んだ。<br>後ろで、筧と赤羽サンの声が聞こえた。何を話しているのかは聞こえなかったけど、俺には関係がないと言い聞かせて無理やり足を動かし続けた。<br><br>きつく目を閉じる。<br>すると先ほどの光景が瞼に焼きついたかのように鮮明に浮かんできた。<br>気分が、悪くなりそうだ。<br><br><br>「水町！」<br><br>思わず肩が揺れ動いた。<br>筧の大声なんて久しぶりに聞いたかも。しかも俺のこと呼んだ。<br><br>驚きとちょっとした感動で動きが酷く怠慢になるけど、どうにか上半身を捻って振り返った。<br>すると意外と近くに居た筧が俺の手を掴んで何か小さなものを幾つか握らせた。なんだ？<br><br>「お前、大丈夫か？コレ食って、よく休めよ？」<br>「え、あ、うん…？何コレ？」<br>「飴。疲れたときには甘いものが良い。お前は人一倍練習してっから。じゃぁな。」<br><br>ちゃんと休めよ、とそれだけ言って筧は小走りに赤羽のところへ戻っていった。<br>赤羽は筧の荷物を預かっているようで、真っ直ぐに立ったまま重そうな荷物を肩に担ぎ、コチラを見据えていた。<br></p><p><br>単純に、嬉しかった。<br><br>置いてかれた、けど、戻ってきてくれた。<br>それが、其れだけが、嬉しいんだ。<br></p><br><br><br><br><br><p>―――――俯く黄に降り注ぐ夕日が青ならば。</p><br><br><br><br><br><p><br>2006/2/16</p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10052807460.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Oct 2007 18:55:59 +0900</pubDate>
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<title>アンチセオリー02</title>
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<![CDATA[ <p><br>ルールを破れば待つのは地獄。<br>囚人はもちろん、<br>看守も同じ。</p><br><br><p><strong>アンチセオリー<br></strong>02</p><br><br><p>南塔の自身の房に戻る途中、後ろを歩く須釜に「おい」と声をかければ、須釜は待ってましたとばかりに「何でしょう？」とにこやかに返した。</p><br><p>「三上の話、最初から知ってたな？」<br>「はい。」<br>「何故言わなかった。」<br>「言ったじゃないですか。一馬くんの敵は僕の敵。誰が相手だろうとその手を煩わせはしない、と。」<br>「だとしても言え！」</p><br><p>ガンッ、と真田の手が柱を叩き、鈍い音が響いた。<br>雑居房に残っていた囚人たちのヒッ、と息を呑む音が聞こえ、その後見知った声が「さァーなだ、なぁに怒ってんだよォー？」と囃すように投げかけられる。</p><br><p>「すみません。じゃぁ僕が知ってることを全部お話しますから、それで許してください。」<br>「・・・西の奴らに三上からの連絡を伝えてからだ。」<br>「はい。でも藤村君のところに行っている間に自由時間が終わりそうですね。」</p><br><p>くるりと身を翻し中央塔へと戻る。<br>全ての塔は真ん中の中央塔へ繋がっており、格塔へも中央塔からしかいけない様になっているため、移動が些か面倒なところがある。<br>しかしそれも中央塔にある監視室から全ての房を見渡すためと考えれば仕方が無いのか、と思える。<br>最も監視するにはこの刑務所に職員の数は少なすぎるが。</p><br><p>「馬鹿。夜抜け出して来い。」<br>「僕、次見つかると反省房行きなんですけどねぇ…」<br>「見つかったら俺の名前を出せば良いだろ。」<br>「嫌ですよ。僕のせいで一馬くんが渋沢さんの所に呼ばれるのなんて見たくありませんから。」<br>「呼ばれるもんか。」</p><br><p>強気に言う真田に「何か策でも？」と尋ねれば真田はにやりと笑い「所詮は渋沢も人の子ってことさ」というだけだった。</p><br><br><br><p><br>******</p><br><br><br><p><br>所長室と書かれた表札のかかる部屋の扉をノックすれば中から「どうぞ」と人当たりの良い穏やかな低い声が聞こえて若菜は知らず貼っていた緊張の糸を少し緩めた。</p><br><p>「失礼します。」</p><br><p>部屋に入り、びし、と敬礼をすれば敬服に身を包んだ長身の男が「やぁ」と人好きのする笑顔で迎えた。</p><br><p>「本日付でコチラに勤務することとなりました。若菜結人です。よろしくお願いします。」<br>「あぁ、話は聞いている。ご苦労だったな。」<br>「いえ」<br>「ここのことは向こうでも聞いていると思うが、噂と真実は違うことが多い。<br>　なので向こうで聞いた噂は忘れて、こっちのルールを覚えてくれよ。」<br>「はい。」</p><br><p>朗らかに言う渋沢にほ、と息をつきながら返事をした。</p><br><p>「郭」<br>「はい。」</p><br><p>若菜が入ってきたのとは違う出入り口から郭と呼ばれた男が入ってくる。<br>ストイックな雰囲気の男だ、と思いながら見ているとちらり、と郭が若菜を見てすぐに渋沢へと視線を戻した。<br>その様子に少し気を悪くした若菜だったが渋沢に呼ばれ、すぐに忘れた。</p><br><p>「若菜、こっちは郭。お前の教育係だ。わからないことは郭に聞いてくれ。」<br>「はい。」<br>「郭、頼んだぞ。」<br>「はい。それじゃ、若菜？施設の案内をするよ。」<br>「あ、よろしくお願いします。」</p><br><p>失礼します、と渋沢に頭を下げて郭と若菜は施設内へと続くドアへと消えた。<br>鳴笛少年刑務所は高い塀が取り囲むレンガ造りの建物で、その出入り口は少し他のものとは違う。<br>刑務所内への入り口からは渋沢が24時間詰めている所長室にしか繋がっておらず、その所長室にあるもう一つの扉は他の職員のデスクと仮眠室、休憩室があり、そこからまた指紋認証で開く扉がある。<br>そこからしか5つの塔に繋がる通路へは踏み込めないようになっているのである。</p><br><br><br><p>「指紋の登録はまた後でやるからとりあえず俺の後についてきて。」<br>「はい。」</p><br><p>ピピッ、と高い電子音が響き囚人たちの住む塔への扉が開かれる。<br>生暖かく生臭い風が若菜の頬をなでた。引いたはずの冷や汗がまた背筋を伝った。</p><br><p>「俺を見失ったら、アウトだよ。」<br>「え・・・」</p><br><br><br><br><p>******</p><br><br><br><br><p>「かぁーずまぁぁぁぁぁ」<br>「ユン、重い。」</p><br><p>のし、と真田の背後から抱きつきへらへらと笑う潤慶。<br>その手首にはリストカットの跡が深々と幾重にも重なっており、焦点の定まらない目で真田を見やる。</p><br><p>「ねぇーかずまぁー」<br>「何だよ。俺はお前じゃなくて藤村に用があンの！」<br>「やぁだ、かずまぁ、挿れさせてえ？」<br>「い・や・だ！って何度言わせりゃわかんだよテメーはよ。」<br>「あはっ、ふっ、ははっ・・・じゃーあぁ、僕に挿れてもイイよーお？」</p><br><p>けらけらと笑いながら真田の首に腕を絡めてく、と絞める。<br>眉を顰めて潤慶の腕を剥がそうと手を伸ばせば真田の腰にそそり勃った自身をぐいぐいと押し当ててくる。<br>刑務所に入る前からの知人だった真田と潤慶だが、先に刑務所に入った潤慶は再び再会したときにはすでにこうなっていた。<br>知っていたはずの人間がまったく知らない人間になっていた恐怖に、人の寄り付かない図書室の隅で泣いた真田を慰めたのは須釜ではなく、偶々図書室で本を読んでいた三上だった。<br>読書家でも知られている三上は北塔の彼の房に居なければ十中八九図書室で本を読んでいるというのが彼を少しでも知る人間の暗黙の了解で、その当時まだ入ったばかりの真田の知らないことであった。</p><br><p>「あーもう、藤村ァ！」<br>「何やの、南の囚人頭がうちのユンちゃん引っ付けて？」<br>「殴り込みに来たんか？」</p><br><p>西塔の藤村が居る雑居房を見つけると真田はその名を少し大きい声で怒気を含ませて呼んだ。<br>すると房の中からは藤村ともう一人、西の副塔主である吉田のケラケラとした笑いを含んだ声がした。<br>囚人頭、というのは看守たちの使う言葉で塔主と同じ意味を持つ。<br>他の塔主をそんな風に呼ぶのは囚人の中では藤村だけだった。</p><br><p>「お前、見えてんならコイツ剥がせ。」<br>「はいはい、っと。まったく人使いが荒いやっちゃなぁ。<br>　ユンちゃーん、ちょおこっち来てノリックの相手したりやー」<br>「えぇぇぇぇーぼくはかずまがイイぃー」<br>「我侭ゆうなや。南のカワイ子ちゃんは俺に用事なんやから、お前ら二人ともそこはいっとれや。」</p><br><p>そう言いながら真田にべったりとくっついていた潤慶を剥がすと藤村の後ろに居た吉田にぽい、と預け房の鉄格子を手荒に閉めた。<br>そしてそのまま真田の肩を抱くと中央塔へと歩き出す。</p><br><p>「珍しいな、須釜連れとらんの」<br>「あいつ居るとユンが暴れるからな。」<br>「ははっ、そらしゃーないわ。あいつは真田んことダイスキやしな。」<br>「俺は、あんなユンは知らない。」</p><br><p>ふ、と零せば藤村は鼻で笑い、真田の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。</p><br><p>「お前が知らんでも俺は知ってる。<br>　アイツが来た時も、なんでああなってしもうたんかも。」<br>「でもそれを俺に教える気が無いんだろ？」<br>「当たり前や。そんなん聞いたかてあいつはもう元には戻らん。<br>　それならこの西で同じような奴に囲まれてた方がええ。」<br>「・・そう、だな・・・・・。」</p><br><p>ぽつり、とどこか寂しそうに俯いて言う真田にしまった、と顔に書いて藤村はまたその黒髪をぐしゃりと撫でた。</p><br><p>「そんで？わざわざ俺に何の用や？」<br>「あ、あぁ、そうだ。俺も三上から聞いた話なんだけど…」</p><br><br><br><p>説明を聞く藤村は真面目ぶった顔をしていてどこか安心を誘うが、それこそが罠だとすでに真田は知っている。<br>気を引き締めながら他に聞こえないよう声を潜めて話す。<br>その間も西塔の雑居房からは藤村と真田の二人に野次や笑い声が降りかかる。</p><br><br><p>西塔は、精神異常者の集まりだ、と三上に教えられ、須釜には藤村以外とは二人で会うな、と口をすっぱくして言われた事を真田は思い出していた。</p><br><br><br><br><p><font size="7"><br></font></p><p><font size="7">痛みをしらない子</font></p><p><br><font size="1">2007/07/31</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10041732917.html</link>
<pubDate>Tue, 31 Jul 2007 22:55:32 +0900</pubDate>
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<title>アンチセオリー01</title>
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<![CDATA[ <p><br>ルールは簡単。<br>格塔の塔主及び副塔主に逆らわないこと。<br>それさえ守れば、ここは楽園だ。</p><br><p><br><strong>アンチセオリー</strong><br>01</p><br><br><p>鳴笛少年刑務所、と書かれた大きく重々しい鉄板の表札を掲げたレンガ造りの大きな門。<br>西洋の文化を取り込んだそこは一見すると洋館のようにも、要塞のようにも見える。<br>黒く、ところどころさび付いた重い門の前に立つ門番に身分証を見せれば「お疲れ様です」と敬礼をされ、若菜は敬礼を返した。<br>ゆっくりと開かれる門の中に一歩踏み込めば、まるでそこは今まで居た世界とは別の次元のような、異世界に思えた。<br>刑務所とはどこも異世界のような気がしていたが、ここは今まで以上に嫌な感じがするな、と背中を冷や汗が流れるのを感じながら若菜は建物の入り口へと足場を確かめるようにゆっくりと近づいた。</p><br><p><br>*****</p><br><br><p>中央塔談話室の隅のソファにだらしなく座る人物は南塔を掌握する少年で、いつもなら人で賑わう談話室が彼の周りだけぽっかりと円状に空いていた。<br>少年は特に気にした風も無く図書室から持ってきた小さな本を読むともなしに眺めている、すると大きな影が本の上に落ちてその影が少年の名前を呼んだ。</p><br><p>「一馬君」</p><br><p>南塔の住人たちから畏怖と尊敬の念で「真田」と呼ばれることはあるが、明るくにこやかな響きで名前を呼ぶ人物は真田が知る中で二人しか居らず、そのうちの一人は呼びかける前にスキンシップを取ってくることから、今呼んだのは同じ南塔で気付けば副塔主と呼ばれる自分の補佐的地位に居る男だろうと予測をつけ真田は顔を上げた。<br>思ったとおりの人物がにこにことこの場に似つかわしくない人当たりの良い笑顔で腰をかがめ立っていた。</p><br><p>「須釜、何？」<br>「聞きました？新しい職員さんが来るそうですよ。」<br>「へぇ・・。西塔の奴らがはしゃぎそうだな。」<br>「えぇ、すでに北塔の藤代くんは見に行ったみたいですよ。」</p><br><p>相変わらず何処から仕入れてくるのか他塔の幹部情報をにこやかに話すさまはとてもじゃないが犯罪を犯したようには見えない。<br>しかし、彼も立派な犯罪者であることを真田はよく知っている。<br>それはまだ真田がここへ来たばかりの頃、女の居ない刑務所内でその上そういった年頃の少年たちが己の欲を満たすためにそちらの道に走ることは当たり前で、14歳という歳のわりに細い身体と挑戦的な大きなつり目をした真田はそういった対象として姦されかけたところをその当時南塔塔主だった須釜に助けられたのだった。<br>その後、須釜の気紛れか塔主の座を真田に明け渡し、須釜自身はその下に着いた。<br>もちろんそんなことで納得するほど大人しい連中ではなかったが、ここに連れてこられるまで警察からの暴力でついた傷は須釜に匿われている間に癒えたし、もともと喧嘩には強かった真田はその座を奪おうと躍起になって襲い掛かる南塔の住人たちを相手に圧倒的な力で勝っていった。<br>その甲斐あってか今では南塔の住人はもちろん他の塔の幹部・住人を含めた刑務所内の少年たち誰もが認める南塔塔主に納まったのである。</p><br><p>「ふうん・・。まぁ、どんな奴が来ても俺には関係無い。」<br>「そうですね、一馬くんの敵は僕の敵ですから。<br>　手を煩わせるまでも無く僕が排除しますよ。」</p><br><p>任せてください、と微笑む須釜にそれじゃ俺がつまらない、と文句を言おうとしたがそれよりも早くぱちぱちとお座成りな拍手が聞こえ、今までさわさわと小声で話していた談話室の少年たちが談話室の扉に寄りかかる少年を見て口をつぐんだ。</p><br><p>「大した忠誠心だ。さすがは須釜。」<br>「三上・・・。」<br>「そう睨むなよ。今日は話し合いに来ただけだぜ？」<br>「前科のある貴方の言葉は信じられない、それだけのことです。」<br>「真田ァ、犬の躾はきちんとするもんだぜ。」<br>「そこに居る笠井みたいに、か？そんな須釜は気持ち悪いから要らないね。」<br>「ハハッ、そりゃそうだ！」<br>「酷いですよ、一馬くん・・・。」</p><br><p>笠井を引き連れ二人の前まで歩いてきた三上が真田を見下ろす。<br>負けじと座ったまま三上を睨み上げる真田に気を良くしたのかフッ、と笑って向かいのソファに腰を下ろした。<br>そのソファの後ろに笠井は立ったまま後ろにいる他の囚人たちを牽制する。</p><br><p>「で？何の話？」<br>「最近、東と北で塔主の座を狙う動きが出てきた。」<br>「それで？」</p><br><p>ぴくり、と片眉を動かし真田は続きを促した。<br>興味深い、とその大きなつり目が言う。</p><br><p>「椎名のとこの黒川とうちの笠井の調べではそいつらは東西南北の塔を越えてチームを作っている。」</p><br><p>笠井、と三上が言えば呼ばれた笠井は「はい」と古ぼけた紙切れを差し出してきた。<br>刑務所内では紙や鉛筆すらも監視員に言わなければ手に入らない。</p><p>最も、その目を盗んで手に入れることはそのルートを持つものには簡単なのだが。</p><p><br></p><p>几帳面な文字で書かれたそれは笠井たちが調べてきたことが書かれており、真田はそれを受け取ると須釜にも見えるようにして読む。<br>こうして須釜にも読ませるということは真田が暗に「覚えておけ」と言っていることをすでに知っている須釜はざっと目を通しその内容を頭にインプットする。<br>そしてそれが終わるとふ、とその紙から顔を上げる。それを合図に真田は紙を三上へと向ける。<br>三上は囚人服から隠し持っていたライターを取り出しそれに火をつけた。<br>燃えて黒い炭になったそれを床に落としダンッ、と踏みつけ、真田は立ち上がった。</p><br><p>「西には俺から伝えておく。」<br>「頼む。あぁ、あとそれから」<br>「まだ何か用か？」<br>「今日この後俺のトコ来ないか？」</p><br><p>にやり、と笑みを浮かべて言う三上にその意味を理解して真田はジロリと睨みつける。<br>須釜もいつもの温厚な顔から一変して彼の犯罪の一片を覗かせる鋭い目で三上を睨む。<br>余裕の笑みを浮かべたままの三上の後ろで笠井が俄かに緊張した気配がしたが3人とも態度は変えなかった。</p><br><p>「俺の代わりにうちの連中から好きな奴を選ばせてやるよ。」</p><br><p>ハッ、と鼻で笑い南塔の住人の顔を思い出した。<br>その面々を知っている三上は「げー」と嫌そうに顔を歪めて首を振った。</p><br><p>「お前んトコはお前以外みんなイッちまってんじゃねぇか。」</p><br><p>そんな奴相手にすんのはごめんだ、と三上も立ち上がる。</p><br><p>「失礼だな。あいつらはまだましだ。西にくらべりゃな。」<br>「あれは比べちゃまずいだろ。比較になんねぇよ。」<br>「そんなこと言ってると狙われるぜ、後ろ。」<br>「おぇ。冗談でもやめてくれ。」</p><br><p>ケラケラと笑いながら二人は須釜と笠井を引き連れて談話室を後にした。</p><p><br><br><br></p><br><p><br></p><p><right /><font size="7">むこうのこっちがわ</font></p><p><font size="1">2007/07/31</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10041688765.html</link>
<pubDate>Tue, 31 Jul 2007 16:13:21 +0900</pubDate>
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<title>アンチセオリー設定</title>
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<![CDATA[ <p>少年刑務所パラレル。</p><p>好き勝手やります。</p><p>わかり難いかと思いますが、自分用のメモなので特に気にしないで下さい。</p><p>少年刑務所パラレルで18禁要素が含まれることだけご理解頂ければそれで十分です。</p><p>※シリアスに見せかけたギャグです。（ぇ）しかも下ネタ系。（えぇっ）</p><br><p>東塔…椎名翼・黒川柾輝</p><br><p>西塔…藤村成樹・吉田光徳・李潤慶</p><br><p>南塔…真田一馬・須釜寿樹</p><br><p>北塔…三上亮・藤代誠二・笠井竹巳</p><br><p>中央塔…監視室・食堂・図書館・談話室</p><br><p>職員…渋沢克郎・郭英士・若菜結人・水野竜也・不破大地</p><br><p>みしゃな・スガ→サナ・藤真・翼黒・（渋笠）など</p><p>基本真田はスレ。Sッ気あり。でも受け。</p><br><p>建物は旧長崎刑務所をイメージ。（もう取り壊されますが…泣）</p><br><br>ちまちま増えたり減ったり変わったりします。
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10041674193.html</link>
<pubDate>Tue, 31 Jul 2007 12:38:47 +0900</pubDate>
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<title>ロマンシング（亜久津）</title>
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<![CDATA[ <br><p><strong>ロマンシング</strong></p><br><br><p><br>沢山の言葉で誤魔化してくれれば良い。<br>言ってしまったものはもう元には戻らないのだから、<br>他の言葉で埋めて固めて。<br>もう二度と、間違っても漏れることの無いように。<br>大丈夫、今ならまだ、誤魔化して隠すことも、<br>聞こえなかったフリも出来るから、<br>だから、あと5秒で今の言葉を否定して。<br>それ以上は、もう誤魔化しもフリも、<br>出来なくなってしまうから。</p><p>「……」</p><p>もう口を開かないで。<br>何を言うつもりかは知らないけど、<br>あと3秒で全てがモノクロになってしまう俺の世界に、<br>お前が残す極彩色の足跡は一つきりで十分なんだ。<br>だから、もう、何も言わないで。</p><p>「…仁王」</p><p>やめろ。<br>もう時間が無いから、その続きを俺は、<br>聞きたくないんだ。<br>お前の口からこぼれ落とされる声が全て、<br>俺の世界を引き裂く刃物になる前に、<br>俺が否定をしなければ。</p><p>「…なん？今、なんか言いよった？」</p><p>大丈夫、ギリギリセーフ。<br>まだ、誤魔化しも、下手な芝居も通用する時間内。<br>だから、もう、何も言わずに諦めて。<br>俺は、お前に返す言葉を持っていないのだから。<br>お前がそれを言ってしまったら、<br>俺の世界は一気に色を失うだろう。<br>モノクロの未来で、お前の残した足跡は強烈過ぎて、<br>俺を引き裂くだろうから、<br>足跡は、一つきりでとどめておいて。</p><p>「……友達じゃ、我慢できねぇ」</p><p>モノクロの世界が広まる瞬間。</p><br><br><br><p><br>――――――――――――――――――――<br>如何してお前は、俺を殺そうとするんだ。</p><br><br><p>2006/7/28</p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10041525510.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Jul 2007 02:37:31 +0900</pubDate>
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<title>ロマンシング（千石）</title>
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<![CDATA[ <p><strong><br></strong></p><p><strong>ロマンシング</strong></p><p><strong><br></strong></p><br><p><br>お前は賢いから、きっと気付いているんだろう。<br>俺が気付いていることを、お前は知っている。<br>でも、二人とも狡賢いから、何も言わない。<br>だから、まだ俺たちは始まらない。<br>なんて、滑稽で醜いエゴイズム。<br>「仁王くん？何考えてるの？」<br>「何でもなか。お前さんには関係無いけん気にすんな。」<br>「えー、気になるなぁ…。」<br>「しつこい男は嫌われるぞ。」<br>「大丈夫、俺ナンパ上手だし&amp;#9829;」<br>「その割にゃお前さん女見る目ないのお。」<br>「ひど！俺じゃないよ、女の子たちが見る目無いの！」<br>「責任転嫁か。」<br>「ていうか俺がナンパした子皆して仁王クンに流れてっちゃうんだけど？」<br>横目でじろりと見られ、内心苦笑しつつ表情だけは余裕のある薄い笑みで言った。<br>ていうか俺のせいにされても困る。<br>「其れこそ俺のせいやなかと。お前さんに魅力が無いか、女に見る目があるかじゃ。」<br>「酷い暴言だ。もう少しフォローしてくれても良いじゃないかー…。」<br>猫なで声で背後から抱きついてくる千石。<br>クーラーの効いた部屋でもそんなことされたら暑くて叶わない。<br>「暑苦しい。抱きつくな。」<br>「仁王くんは淡白なんだからー。」<br>「阿呆か。俺は普通じゃ。」<br>「えー？！」<br>「お前さんが粘着質なんだよ。」<br>「…他にもっと言い方ない？」<br>「ない。」<br>他愛も無い言葉遊び。<br>ただその端々に、嘘が見え隠れする。<br>そんなものに気付きたくないのに、気付かれたくないのに、<br>目ざとい自分が何と憎いことだろう。<br>「ちょっとキヨ傷付いちゃうなぁ……。」<br>「阿呆め。冗談も対外にし。」<br>「……冗談じゃないよ。」<br>「嘘こけ。」<br>そんな言い訳はいらないから。<br>「嘘じゃないってば。信用ないなぁ…」<br>真綿で首を絞めないで。<br>「俺は、仁王クンのこと」<br>潔く、斬り捨てて。<br>「愛してるのに」</p><p>お願い早く致命傷を与えて。<br>この想いを断ち切って。</p><br><br><br><br><p>――――――――――――――――<br>フィクションの言葉で惑わさないで。</p><br><br><p>2006/7/26</p>
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<pubDate>Mon, 30 Jul 2007 02:36:01 +0900</pubDate>
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<title>ロマンシング（千歳）</title>
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<![CDATA[ <br><p><strong>ロマンシング</strong></p><br><br><p><br>俺の言うことを何でも鵜呑みにするなよ。<br>そんな風に無条件に俺を信じるなよ。<br>「ニオ、大丈夫か？」<br>「何が。」<br>「おまん暑いん苦手ばい。」<br>「うっさいわボケ。暑いゆうな。余計暑くなる」<br>「うん、ごめん。」<br>そんな簡単に謝るなよ馬鹿。<br>「ばーか。」<br>「馬鹿はひどか。」<br>「んじゃ阿呆じゃ。ちぃの阿呆」<br>「うん。そん方がマシたい。」<br>「ホントの阿呆じゃコイツ。」<br>「ニオが言うごちたるば信じるけん。」<br>「………」<br>前言撤回。コイツは馬鹿だ。<br>とんでもない馬鹿だ。<br>とんでもなく、愛しい馬鹿だ。<br>あぁ、涙が出る。<br>夏でも冷たい両手で目元を覆えばじとりとすぐに蒸れて気持ち悪い。<br>でも、この涙が乾くまではこのままで。</p><p>「ニオ？どげんしたと？」<br>「何でもなか。前向かんとコケるぞ。」<br>「何でもなくなかばい。ニオば泣いとる。」<br>「泣いとらん。」<br>涙が、乾いたのに千歳が俯いた俺の顔を覗き込むから手が離せない。<br>馬鹿。お前はデカいんだから、屈んで俺を見ようとすんな。<br>テニスしてないときのお前は本当にどんくさいんだから、<br>身を屈めながら後ろ歩きなんてしたら本当にコケてしまうぞ。<br>なんて、思っている間に千歳の下駄がガコ、と音を立てて<br>続けざまに聞こえた音で千歳がコケたことを知った。<br>本当に馬鹿。「コケた」なんて笑いながら報告すんなよ。<br>しかも何も無かったように話を戻して勝手に進めるな。<br>「うん、泣くな。」<br>コケた奴にそんなこと言われたくない。<br>「泣いとらんちゅーとる。」<br>「ニオ、泣くな。」<br>「しつこいぞお前。」<br>「ニオに泣かれよっとどがんこつしてよかか分からんくなっとお。」<br>「何もすな。」<br>何にもしなくて良いから、もう少しだけ、ほんの少しの間、<br>まだこのままで居て。</p><br><br><br><br><p>――――――――――――――――<br>もう乾いた涙に、騙されていて。</p><br><br><p><br></p><p>2006/7/25</p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10041525310.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Jul 2007 02:33:12 +0900</pubDate>
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<title>ロマンシング（跡部）</title>
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<![CDATA[ <br><p><strong>ロマンシング</strong></p><br><p><br>「好きだ。」といわれた。<br>いつも優しく、甘い視線で俺を見ていた跡部の目が、餓えた獣のように鋭く、冷たくて、<br>俺は怖くなってなんの冗談だとその場の空気を誤魔化して逃げた。<br>あの青い目が、慣れ親しんだはずの青い目が、まるで他人のようで酷く恐ろしかった。<br>何故、幼いころのままで居させてくれないのか、と嘆きたい気持ちでいっぱいだった。<br>如何して、俺らは成長してしまうんだ。<br>成長などしなければ、幼い心のままで居られれば、<br>きっと跡部はあんな目で俺を見て、あんなことを言わなかった筈なのに。<br>酷く、悲しい。<br>何故、俺は跡部に俺も好きだ、と返してやれないのだろう。</p><p>「待てよ。」<br>逃げ損ねた。<br>腕を掴まれて引き寄せられた。<br>振り解くことはできなくとも、跡部から逃げることぐらい俺には簡単なのに。<br>あぁ、俺は如何してこんなにも、跡部に甘い。<br>「何逃げてんだよ。」<br>「逃げとらん。」<br>「嘘ついてんじゃねぇ。」<br>「嘘じゃなか。」<br>「嘘だ。」<br>なんて子供っぽい言い争い。<br>このまま、このままで良いのに。<br>あぁ、何故・・・<br>「しつけぇ。」<br>お前は成長しようとする。<br>「逃げてねぇならなんで誤魔化そうとする。なんで答えねぇ。」<br>やめてやめてやめて。<br>その目は、やめて。<br>いつものように、暖かく、包んで。優しく甘い視線で、俺を見て。<br>その目で見られたら、涙が出そうになる。<br>「オイ、聞いてんのか。オイ仁王！」<br>「うっさいボケ！」<br>強い口調で言えば跡部はピクリと肩を揺らした。<br>きっとその形のいい眉を寄せているんだろう。<br>容易に想像ができてしまうほど、俺はお前を知っているのに。<br>「その目で言うな！その目で見んな！その目を、すんな…！！」<br>その目は、俺の知らない目だから、やめて。<br>何故、いつものように暖かく包むように俺を見ない。<br>如何してそんな目で言う。<br>いつものように、見てくれたなら、<br>「俺も好き」<br>簡単に言えたのに。</p><br><br><br><p><br>―――――――――――――――――<br>その目は、「嫌い」のときにして。</p><br><br><p>2006/7/24</p>
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<link>https://ameblo.jp/bordeaux-00/entry-10041525274.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Jul 2007 02:32:11 +0900</pubDate>
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