<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>デコと金魚とベースボール</title>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/bs71059/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>日常生活(主に愛するオリックスバファローズ)などなどを、ユルくつづるブログです。めったに熱くなりませんが、シーズン中は高温注意報発令です！</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>図書館戦争？④</title>
<description>
<![CDATA[ (これは…何か始まるのか？)<br><br>無表情な川端と、常ににこやかな東明。何も知らなければ、ただ愛想の悪い司書と愛想の良い学生が向かい合っているだけなのだが…<br><br>「川端さん。この本、すごく参考になりました！ありがとうございました～。<br>やはり、学校図書館の事は川端さんにお聴きするのがベストですね」<br><br>変わらず無表情のまま本を受け取ると、川端はバーコードをピッと通した。<br><br>「僕が知りたかった事がピンポイントで載ってるページを教えていただいて、時間の節約にもなるから助かります。<br>今月中に報告書の原稿仕上げないといけないんで、またこちらに入り浸りますね！<br>あと、先日の…」<br>東明が言い終わる前に、川端はA4の用紙をカウンターに置いた。<br><br>「ありがとうございます！さすが川端さん。短時間で全部調べていただいたんですね～」<br><br>見ると、そこには本のタイトルと棚番号、おそらく東明が読みたいであろう内容の記されたページと行が書き込まれている。全て考古学関係の書籍だ。受け取った東明は、また砂を撒き散らしながら書架の列へと消えて行った。<br><br>「東明くんは川端さんを検索パソコン代わりにしてるんですよ。<br>そもそもは、東明くんに尋ねられた書籍をまだチェックし切れてなくて、何気なく『知らないんですか～』と言われたのが始まりなんですよ…」<br><br>かなり悔しかったのだろう。川端はそれ以降、考古学関係の書籍に関しては念入りに内容をチェックするようになった。すると、東明はそれを感謝し、以来川端を全面的に信頼して図書館にやって来る様になったという。<br><br>「川端さんは更に本に詳しくなり、東明くんもさらに研究に励める。<br>それって、お互いにとってプラスじゃ…」<br>比嘉の質問に、原は黙って首を振った。<br><br>「戦争の被害を被るのは我々なんです！ほら…」<br><br>見ると、カウンターからは川端の姿が消えている。原が事務所を指差すので、そっと近づくと、何やらコツ、コツっという音がする。恐る恐る覗くと…<br><br>「…何やってるんですか、川端さん？」<br><br>川端は、無心にけん玉をしていた。<br><br>「川端さん、昔小学校でけん玉チャンピオンになるくらいすごかったんですよ。<br>今も、イライラするとけん玉で落ち着かせてるんです。あれがあと1時間は続きますから…<br>その間は、何があっても一切仕事しないんです。<br>本当は東明くんと仲良くしたいのに、川端さんの中の何かがそれを認めないんでしょうね。館内汚すし煩いけど、研究者の卵としては非常に優秀な彼を認めたい。けど、自分の理想とするものからはかけ離れてるから認めたくない。でも彼は自分を慕って来る…<br>そのジレンマでどうしようもなくなったら、ああやって気分転換するんですよ」<br><br>邪魔したら怖いから、と原に促され、比嘉はカウンターに戻った。東明は席に座り、川端が探してくれたであろう本をめくり、何やら熱心にノートに書き留めている。にこやかな表情は変わらないが、真剣な眼差しだ。<br><br>「この状況を全て上手く仕切ってくれてたのが土谷さんなんですよ。<br>比嘉さんにいきなりとは言いませんけど、まぁ、慣れて下さい…」<br><br>「はぁ…」<br><br>とりあえず、しばらく川端に声をかけてはいけない、ということだけ理解はできた。<br><br>それからしばらく、比嘉も原も日常業務に戻り、川端の事も東明の事も忘れていた。突然、着メロらしきものがけたたましく鳴った。<br><br>「？」<br><br>東明がカバンの中を探っているが、中がくちゃくちゃなのだろう。なかなか出てこない。<br>しかも音楽はかなり賑やかなリズムなので、館内に響き渡っている。<br>どうしたものかと比嘉が立とうとすると、奥からサッと川端が現れ、東明の横に立った。<br>ちょうどスマホが見つかり、ホッとした表情で東明はボタンを押した。<br><br>「…音」<br>川端がポツリとつぶやいた。<br><br>「あ～すいません。千代崎市の文化財課の海田さんからのメールで…」<br><br>東明はニコニコしながら画面をスクロールしていたが、すぐに指が止まると表情もそのまま固まり、しばらく静止した後、<br><br>「しまった…」<br><br>と叫び、そのまま机に突っ伏した。<br><br>続く<br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11999527815.html</link>
<pubDate>Mon, 09 Mar 2015 22:24:21 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>図書館戦争③</title>
<description>
<![CDATA[ 「せ、戦争って…？」<br><br>事務所に戻り、お茶を一口飲んで戻って来た原は、川端から見えない位置に比嘉を連れて行った。<br><br>「川端さんには、天敵とも言える学生がいるんです。<br>彼は院生で、考古学の専攻だから現場の発掘作業に行くことが多くて学内に居ないことも多いんですけど、どうやら、春休みが終わって帰って来たらしい…」<br><br>原の話が終わるか終わらないかの内に、自動ドアが開いた。<br>ゆっくりと入って来たのは、ごく普通の見た目の男子学生だった。どちらかというと、穏やかで人の良さそうな感じを受ける。<br><br>「来た…」<br><br>原は静かに彼の行動を見つめている。こんな感じの良い学生が何故？と比嘉が原にこっそり聴こうと思った時、学生の持っていたリュックサックの開きっぱなしのチャックから本が雪崩れ落ちた。<br><br>「大丈夫かい？」<br><br>オタオタするでもなく、ゆっくり本を拾う学生を見兼ねた比嘉がカウンターを出て駆け寄り、本や書類を拾った。<br><br>「いや～すいません…」<br><br>頭を掻きながら学生は比嘉にニコニコと謝罪した。元々目は細めのようだが、笑うと更に細くなり親しみがわく表情になった。彼に対して全く嫌な感じは受けない。よく見ると、そのリュック以外にも大きなトートバッグを持っていたおり、そちらにも本が満杯だった。<br><br>「かなり勉強してるんだね～」<br><br>原の話を一瞬忘れ、比嘉は感心して思わず話しかけた。<br><br>「いや、本から得られるものはわずかです。現場に勝るものは何もありませんよ。<br>僕にとっては、現場で得たものを確認するのに使うだけですよ」<br><br>しっかりした学生じゃないか、と感心した比嘉がカウンターを振り返ると、そこには無表情で立っている川端と、早く戻れ、とジェスチャーで合図を送る原がいた。<br>学生はそのままカウンターを通過し、奥のテーブルにリュックとバッグをドサっと置くと、さっさと書架の方へと消えて行った。<br>その様子をじっと見ていた川端の表情は、不気味な程無表情だった。<br><br>「比嘉さん、こっち！」<br><br>比嘉は原に袖を引っ張られ、奥に引き込まれた。<br><br>「ヤバいですよ…彼は川端さんにとって、本と図書館を侮辱する存在なんですよ！」<br>「え？どういう…」<br><br>まずはこれ、と原はほうきとちりとりを比嘉に手渡した。<br>「かれの通った後は砂だらけ。まだこの時期はましだが、梅雨になるとそれが泥になる…<br>さ、川端さんがカウンターから出る前に掃いて下さい！」<br><br>背中を押されるまま閲覧室に戻ると、確かに学生の通った後は砂や草が混じった物が点々と落ちている。それは、一旦荷物を置いたテーブルのまえで止まり、そのまま彼が消えて行った書架の辺りまで続いている。書架の列を覗くと、確かに彼が本を探して立っていた。<br>(ヘンゼルとグレーテルみたいだなぁ…)<br>原の怖れとは逆に、比嘉は何だかこの学生に興味が湧き、面白くなってきた。<br><br>「靴、かなり汚れてるみたいだね～」<br><br>学生は振り向き、人懐っこい笑顔で頭を下げた。<br>「現場に行ってた靴なもんで。すみませんいつも…」<br><br>自分が汚している事は気づいているようだ。しかし、それと行いを正すことは別だと考えているようだ。<br><br>あらかた砂を掃除し終わり、カウンターを見ると川端がパソコンの前に座って作業をしていた。が、目はずっと学生を見据えている。<br><br>「あれが川端さんの臨戦態勢なんですよ。<br>彼…東明くんて言うんですが、ご覧の通り、場所取るわ散らかすわ汚すわで、川端さんが最も大切にしている図書館の静けさと清潔さを一瞬にして破壊してしまうんですよ。<br>本人はまるでその事に気づいてないんですけどね…」<br>いつの間にか隣にいた原が語った。<br><br>「しかも、聞いたように彼は本から得る知識をそう重要視していない。<br>これも川端さんの逆鱗に触れるところなんです。<br>まだ学部生の頃、その事で川端さんと言い合いをしたんですよ。<br>まぁ、言い合いと言っても川端さん1割、東明くん9割くらいの発言でしたけどね」<br><br>本の中にはどれだけ未知の世界が広がっているか君にはわからないのか、と主張する川端と、僕の学問は現場に出ないと意味がありません、と言い張る東明。<br>ただ、端で聴くと、川端はほぼ黙っているし東明も穏やかに話すので、言い合いだと気づき、ドキドキしていたのは原1人だけだったと言う。<br><br>「しかもタチが悪い事に東明くんは学科でも3本の指に入る程の成績優秀な学生でね…<br>川端さんも、それに関しては何も言えないみたいなんですよね」<br><br>それは納得だった。先ほど垣間見た、書架で本を探す東明の眼差しは、学問を追求する青年のそれだった。<br><br>(ただ、価値観が違うだけで、どちらも真摯な物を持っているのになぁ～)<br><br>残念だなぁ、と思いながらカウンターを見ると、いつの間にか川端と東明が対峙していた。<br><br><br>つづく<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11997074928.html</link>
<pubDate>Tue, 03 Mar 2015 23:50:41 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>図書館戦争？②</title>
<description>
<![CDATA[ 「朝の図書館、清々しいと思いませんか」<br><br>驚いたままの比嘉の方へ向き直った川端は、ほんの少し微笑んでいた。まだカーテンを締め切っているが、漏れ入っている朝の光の中を背にしているため逆光だったが、その表情ははっきり見て取れた。<br><br>「僕はね、学校の図書館というのはその学校の中で最も神聖な場所だと思っている。<br>中でも大学は格別だ。昼間は学問に勤しむ学生達の熱気に溢れている。そして、閉館後は水を打ったように静まり返っている。こうやって毎朝、1日で積もった勉学に励む学生達の汗やほこりを拭き清め、毎日新たな気持ちで臨んでもらうのが、我々学校図書館の司書の役割だと僕は考えているんですよ」<br><br>抑揚のない話し方だが、何故か誇らし気に聞こえる。<br><br>「比嘉さん。前職は県立図書館でしたね？」<br><br>大学を出た後、比嘉は長年県立図書館に勤めていた。途中で指定管理者制度が採用され民間企業の経営となり、比嘉もそのまま残っていたのだが、営利第一主義の上司の方針に馴染めず退職したのだった。結婚したばかりで悩んだ末だったが、比嘉に負けず劣らずのんびり屋の妻に<br>「あなたが良いようにしたら～？」<br>と背中を押された。ちょうどその頃Bs大学の図書館で正規職員の採用試験があると知り、応募したのだった。<br><br>「あなたの志望動機。大学図書館という、学問に勤しむために学生が集う場所で、これからの日本を担うであろう若者の助けになりたい、という言葉。あれに僕は感激したんですよ」<br><br>初めて、川端が笑った。<br><br>「うちは給料もそんなに良くない。正職も3人だから業務も多く決して楽とは言えない。ですが、そんなところでも志を持って来てくれたあなたと、是非仕事がしたいと思いましたよ。<br>よろしくお願いしますよ」<br><br>そこまで話すと、川端はさっさと事務所へと戻っていった。<br><br>比嘉は感激した。面接の時、果たして自分に関心を持ってくれているのか、と疑問に思い、原にも扱いにくいと散々聞かされていた川端がこんなに自分を買ってくれていたとは、意外だった。志望動機はある程度は本心だが、そこまで大袈裟に考えていなかった。しかし、川端にそう受け取られている以上、学生達が使いやすい、素晴らしい図書館を作りたいと心から思った。<br><br>図書館も開館し、大学の一講目が始まった。今日は今学期最初の講義の日なので比較的出席率は良いが、図書館にくる学生はそう多くない。翌週に各学科のオリエンテーリングがあり、その時に院生が中心となって新入生を案内してくるため、新入生がやってくるのはそれ以降が多くなるとの事だった。<br><br>(まだ少しは仕事に慣れる時間がありそうだなぁ～)<br><br>カウンターに座り、新規購入した書籍の整理をしようとしたその時だった。<br>玄関の自動ドアが空くと同時に、息せき切った原がつんのめりそうになりながら駆け込んできた。<br><br>「原さん～、どうしたんですか？」<br><br>常に賑やかだが、川端の影響もあって閲覧室では静かに振る舞う原のただならない様子に、比嘉は驚いた。<br><br>「か、川端さんは今日1日館内業務ですよね？」<br><br>川端はたまに会議で校舎の方に行くことがあるが、今日の予定はなにもなかった。<br><br>「あぁ～！新学期始まってこんなに早く奴が戻ってくるとは…比嘉さんにもまだ説明してなかったのに～」<br><br>「一体、何事ですか？」<br><br>川端は事務所内でパソコンを叩いている。午前中はカウンターには出てこない予定だった。そっと事務所をのぞき、普段と変わらない川端の様子を確認した原は、深呼吸を何度か繰り返すと<br><br>「比嘉さん。<br>今日から、ここで戦争がはじまりますからね」<br><br>いつもなら茶化して話しそうなのに、一切笑っていない原の目が、比嘉に底知れぬ恐ろしさを感じさせた。<br><br>続く<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11994178816.html</link>
<pubDate>Sat, 21 Feb 2015 11:11:29 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>図書館戦争？①</title>
<description>
<![CDATA[ と言うわけで、スピンオフ小説の始まりです～<br><br>～～～～～～～～～～～～～～～～<br>彼はその日、早く目覚めたためかなり朝早く出勤することができた。この4月から正規採用の司書としてBs大学図書館にやって来た比嘉幹貴は、1番乗りだと思って図書館通用口の鍵を開けようとした時、既に出勤している者が居ることに気づいた。<br>沖縄出身で、何事にものんびり構えている彼だが、流石に今日は少し残念に感じた。<br><br>(ま、仕方ないさ～)<br><br>ロッカーと事務所には誰も居なかったので、閲覧室に行くと1人の男が受付カウンターで目を閉じて立っていた。<br><br>「川端課長、おはようございます」<br><br>比嘉の声に振り向いた川端は、にこりともせず、<br>「川端で良い。おはよう」<br><br>とだけ言うと、手に持っていた雑巾でカウンターを丁寧に拭き始めた。<br><br>「あ…川端さん、僕がやりますから」<br><br>決しててきぱきとした動作ではないが、彼なりに慌てて雑巾を事務所から持ってくると、閲覧テーブルを拭き始めた。<br>「川端さんいつもこんな早いんですか～」<br><br>後ろ姿の川端が少しうなずいた様に見えた。<br><br>(しかし、本当に喋らない人だなぁ～)<br><br>面接の際も終始無言で、ただ手元の職務経歴書と比嘉を見比べるだけだった。採用が決まり、事務手続きに大学を訪れ、挨拶した時も川端は一言「よろしく」と言ってさっさと業務に戻ってしまい、比嘉を少し不安にさせた。<br>その不安を一掃してくれたのが、もう一人の正規職員である原だった。<br>「俺、歳は比嘉さんより下ですけど、ここのキャリアは長いから何でも聴いて下さいよ！」<br>そう言って、早速その夜に歓迎会と称して呑みに誘ってくれた。<br><br>「いやぁ…土谷さんの後任が早く決まって良かった！」<br><br>比嘉の前任者である土谷は、大分の祖母の具合が悪くなったため、実家に帰って世話をしたいとの理由で、年度末で退職したのだった。<br><br>「ま、ホントはそれだけの理由じゃないみたいだったけど、突っ込むこともないかな～と思って、それ以上は聞いてないんですけどね」<br><br>呑む前もかなり饒舌だったが、酒が入ると更に舌が滑らかになるようだった。<br>「川端さん、びっくりするくらい喋らないし感情も出さない人だけど、慣れたら分かり易い人だから安心してくださいね。<br>ちなみに、比嘉さんの事は気に入ったみたいですよ。<br>気に入らなかったら、まず声を発しないからなぁ…」<br><br>俺の時は、初め一ヶ月間喋ってくれなかったからなぁ～と、懐かしむかのように原は語った。<br><br>「でもね、川端さんの本に対する知識と愛はすごい！偏屈な人だけどあれだけは俺も尊敬してる。だから大学側もあの人に図書館の事は一任してるんですよ。<br>土谷さんて、引き継ぎで会ったら分かると思うけど、川端さんに欠けている学生とのコミュニケーション能力が高い人でね、ザ・良い人って感じなんですよ。あの人がいるから何とかうちの図書館も平和だったのになぁ…」<br><br>そう言って、追加のビールを注文した。<br><br>「川端さん、学生とはまず話すことは無い。カウンターに居ても相手をすることは1年に一度あるか無いかだしね。普通とは違うコミュニケーションを取れる例外が何人かいるけど…<br>アルバイトとも稀にしか会話しない。そのアルバイトと川端さんの間を取り持っていたのも土谷さん。ホント完璧な人だったのになぁ…残念！<br>まぁ、川端さんの扱いは実際勤務が始まったら慣れるから徐々に覚えて下さいね！」<br>そう言うと運ばれてきたビールをぐいっと呑み、比嘉の背中を思いっきり叩いた。<br><br>原が少し口は軽いものの親しみ易い人物とわかったのと同時に、川端と上手くやっていけるのだろうかというなんとも言えない不安感が比嘉の中で大きくなっていた。<br><br>翌日から勤務が始まった。3日間ほど前任者の土谷から引き継ぎを受け、それが終わる頃には、新学期の始まった学生達が図書館に大勢やってくるので、それまでに大体の業務は把握するように、との事だった。<br>原の言うとおり、土谷は良い人を絵に描いたような人物だった。のんびり屋の比嘉がたまにやらかすミスを責めることなく指導に当たってくれ、合間にはちょこちょこやってくる学生の相手、喋らない川端と学生の通訳、アルバイト学生の指導、原の雑談相手…<br>常に穏やかで笑みを絶やさず、まるで…<br><br>(悟りを開いた人みたいだなぁ～)<br><br>もう辞めるからなのか、一切の感情を笑顔で隠し、逆にそれで誰にも退職について切り出させないようにしている様に比嘉には感じられた。<br><br>「土谷さんは、実家に戻られたら次のお仕事って決まってるんですか？」<br><br>最終日の昼休み、思い切って尋ねた時も、いつもの笑顔で<br><br>「友だちが親の会社を継いだところで、手助けをして欲しいって言われてるんですよ。業種は違っても事務なら問題から。<br>祖母の面倒も見れるし、思い切って退職させてもらうことになったんですよ」<br><br>今日で学食も最後なのが寂しいですけどね、とカレーを食べながら言った。学生の昼休みを避けて昼食を取っているので、周囲は割と閑散としていた。しかし、土谷は笑顔とは裏腹に誰かを探しているような目線をあちこちに送っていた。<br>「失礼、ちょっと用があるので先に行かせてもらいますね」<br>立ち上がった土谷は、ちょうど入口から入ってきた男性の元へ駆け寄り、何やら話している。最後に深々と頭を下げると、そのまま土谷は出て行った。<br>その後ろ姿を見送っていた男性は、いかにも紳士といった様子の、おそらく教授クラスの教員なのだろうが、傍目にもわかるくらいに寂しげな様子だった。<br><br>「そっか…森脇先生にまだ挨拶してなかったんだ」<br>振り向くと原が定食を載せたトレーを持って立っていた。<br><br>「あの方は史学科の森脇先生。うちで1番人気のある先生なんですよ。ルックスも良いしお話も面白い。<br>土谷さん、先生からの信任が厚くて、よく資料探しを頼まれてたんですよ。<br>あと…これ、比嘉さんも知ってると思うけど」<br>急に声をひそめ、続けた。<br>「2年くらい前にあった傷害事件の被害者があの先生。<br>先生と愛人関係にあった女子学生と、学生課の男性職員が先生を巡って三角関係になって、それで起きた事件だったんですよ～」<br>その話は当時新聞や雑誌で目にしたことがあった。一週間程はセンセーショナルに報じられたが、今ではすっかり忘れ去られている。<br>「…その女子学生、土谷さんとも親しくて。多分その子の事好きだったんじゃないかと俺は踏んでるんですよ。<br>きれいな子でね。よく図書館にも来てた。土谷さん、あんな性格だから先生に遠慮して何も言えなかったんじゃないかなぁ、ってね」<br>「その子はその後どうしたんですかね～？」<br><br>周りを見回した原は、比嘉に近寄ると更に声をひそめ、<br>「事件以来見なくなったんですよ。卒業はできたらしいけど、どうしてるんだか…」<br><br>この事はタブーらしい。既に食べ終えた比嘉は、原に断ると先に食堂を後にした。<br><br>そんなやり取りがあったのが昨日の事だった。川端への不安が増大している中のこの状況に、比嘉はひたすら原が早く出勤してくれる事を祈っていた。<br><br>「比嘉さん」<br><br>突然、川端が掃除の手を止め比嘉の名を呼んだ。驚いた比嘉は、とっさには返事ができなかった。<br><br>続く<br><br><br><br><br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11991691329.html</link>
<pubDate>Tue, 17 Feb 2015 18:45:09 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>あとがきのようなもの③</title>
<description>
<![CDATA[ 前とちょっと間隔が空いてしまい、なんとなく書き上げた気持ちになってましたが、締めがまだです…すみません。<br><br><br>初めはもっとコミカルな感じにしようと考えていました。その方が読みやすいですしね。<br>でも、私自身があまり面白くない性格なのと、読む小説もシリアスなものがほとんどなので、どんどん内容がシリアスになっていってしまいました。<br><br>ただ、今回楽だったのは実在の人物がモデルなので、キャラクターがしっかりしてたため、設定やらなにを喋らせるか、どんな行動をとらせるかは割とすんなりと決まりました。<br><br>あ、このブログは基本オリックスファンの方々が読んで下さってる前提なので、そうでない方で興味もたれた方は、チームのHPのぞいていただいたら登場人物の顔はすぐに出て来ますよ。<br><br>小説としてはちと物足りないかもと思ったのが、人物の姿の描写が極端に少なかった事ですかね。これも、ファン方が読んで下さってる前提で進めたためです。あまり描写しすぎたら自分が照れてどうしようもなくなるのであえて控えました。<br>なので、知らない方は光がすごい美人、としか書かれてないのでどんな美人なんやろ、と思われたかもしれませんね。是非、本物を見て下さい～(^^)<br><br>もうひとつ、残念なのが是非登場させたかった人を使えなかった事です。<br>なので、その人物比嘉ちゃん登場のスピンオフを、シーズン開始まで少し書こうと思ってます！<br><br>比嘉ちゃん以外は…なかなか濃いキャラ設定になった人々の人間模様を、こちらはコミカルに書く予定です。いつ開始かは、気長にお待ち下さい～。<br><br><br>さて、そんな訳であとがきがとりとめなくなってきたのですが、<br>何かのために、悪い事とわかっていてもそれを選択せざるを得ない事って、大人になれば誰しも経験したことがあると思います。それが何かは人それぞれですが、大切な物を守るためってのがほとんどかなぁと思います。<br>そうやって、グレーな部分を許容しながらみんな大人になるのかな、とアラフォーにして思っています。<br>逆に、小学生の娘はあかん事はあかん、良いことは良い、と気持ち良いくらいはっきりしてます。親の私が叱られますからね…。<br>羨ましいなぁ～と思いながらも、色々経験して、そのうちグレーな事も容認できる人になるんだよ～と思ったりもしています。<br><br>勝手に西君がそういうタイプかなと思ってるので、今回もそういうポジションで登場してもらいました。かなりひいき目ですがね。もう彼も大人やし、そんな真っ直ぐ君ではないとは思いますが。<br>ただ、彼は良いことと悪いことは、例えファンの方にでも臆することなく言えるというエピソードはよく耳にするので、私のイメージもあながちひいき目でもないな、と思っています。<br><br>ま、いずれにせよ今季はホント、キミにかかってるんだよ～！と現実的なエールを送るところであとがきを終わりたいと思います。<br><br><br>ありがとうございました( ´ ▽ ` )ﾉ<br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11989961991.html</link>
<pubDate>Sat, 14 Feb 2015 22:41:54 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>あとがきのようなもの②</title>
<description>
<![CDATA[ さて、これを書くにあたって1番悩んだのが、<br><br>ちーちゃん、あなたは何処へ行くの？<br><br>ということでした。アメリカ行くんなら留学させて終わるか…国内で移籍なら、あーどうしよう！と初めの頃悩んでたのですが、ご存知の通り残留がめでたく決まりましたので、特にその辺りは考慮しなくても大丈夫となり、一安心でした。<br><br>その次に悩んだのが、人は死なないとして、黒幕？的な敵役をどうしようかな、ということでした。<br>これは、散々悩んだ挙句、私と歳も近くて地元も近い谷選手にお願いすることにしました。実際の彼はすごく良い方だともきくので、ギャップもあって良いかなぁ、と。その上勝手に奥様まで登場してもらいました。架空の世界とは言えありがとうございました。<br><br>あと、実はこだわったのがミッツこと現中日ドラゴンズの三ツ俣選手の登場です。<br>私は結構ミッツ推しだったので、あのトレードは、今も中日ドラゴンズと書いても涙が出そうなくらい悲しかったんですよね…。幸いドラゴンズのファンの方や選手コーチの皆さんに可愛がってもらってるようなので安心してるんですけどね。<br>なので、今回は駿太の友だち役として登場してもらいました。リストバンド、巻いて試合出てたのホンマですしね。<br>今年、いえ、ミッツの事はずっと応援するよ、というオマージュとして登場してもらいました。<br><br>で、代わりに来てくれたプリンスをあの扱いかい！って突っ込まれそうですが、馴染んでくれた証拠なのでお許し下さい…<br><br>西＆松葉の2人や、平野くん、ダッチとグッチ、マモさんはキャラそのまま転用させてもらいました。私の大学にもイケメンの学生課の職員さんが居てて、卒業式の日一緒に写真撮ってもらった思い出があります。馬原くんタイプというより、マモさんタイプでしたかね…。<br><br>キャラ作り過ぎた感があるのが、川端くんと東明くんです。個人的には気に入ってたんですが、いかがなもんでしょう？<br><br>前田くんと吉田くんは、私の中で勝手に賢いイメージがあるのでこういう役をしてもらいました。前田くんはガチで賢いですからね！<br><br>刑事…さとたつと宮崎くん、どんなもんでしょう？コンビとしてなかなかハマってたんじゃないかな～と思ってるんですがね。宮崎くんはもちょいキャラ活かせることができたらなあ…とやや心残りです。<br><br>あと、1番ごめんなさいなのが光かもしれませんね。性転換もさせてしまいましたし。でも、連載中に本物の光みてもあまりごめんなさいな感じがなかったので、私の中では別人格と完全に割り切れていたみたいです。泣き虫なトコは踏襲させてもらいましたが。<br><br>おかざえもんに関してはステマか！ってくらいポイントで登場してもらいましたが、個人的にはひこにゃんやくまモンのような正統派カワイイのが好きです。<br><br>あと、Tくんにもごめんなさいですね。でも、いつも盗撮してるからいけないのよ～、と開き直ったりしています。<br><br>ここまでは割と本物と創作を割り切って書けたのですが、ドキドキしてしまったのが監督です。今でもお見かけしたら照れます\(//∇//)\<br>あきませんね…年齢的に近いから？いや、そういう意味では光やら西くんとも年齢差は似たようなものなんですよ。<br>やはり、昭和を知ってるか否か、ですかね…顔の好みは栗山監督なんですけどねぇ。<br>いやいや、それは別で今季もしっかり指揮をしていただかないと！<br><br>ちなみに私の大学の時の担当教授はご高齢の方で、卒論指導が間に合わないので学外でということになり、阪急三番街でご飯ご馳走になりながら指導していただいた事がありましたね～。<br><br><br>次回、まとめのあとがきを書いて締めとさせてもらいます。<br><br><br><br><br><br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11988208252.html</link>
<pubDate>Tue, 10 Feb 2015 18:21:43 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>あとがきのようなもの…①</title>
<description>
<![CDATA[ 本編、完結しました。<br><br>ここまで読んでくださったみなさん、本当にありがとうございます( ´ ▽ ` )ﾉ<br><br>残念ながら一銭にもならないのですが、書き上げた満足感と、完成できた安心感と、終わった事による燃え尽き感でいっぱいです…<br><br>あとがき的な事を書きたいのですが、何から書こかなぁ～とまとまってないので、まずはストーリーについて書いてみようと思います。<br><br><br>ツイッター上で金子千尋ミステリーというタグが流行ったので、簡単に学園ミステリー的なものを考えたのがそもそもの始まりでした。適当に選手を配役に当てはめてみると面白くなってきて、それならブログで連載してみるか、というところから始まりました。<br><br>タイトルに殺人事件とあるので、いつ誰が死ぬんやろ、え？死ねへんのかい！と突っ込まれた方も多いと思います。理由は至極簡単で、<br><br>やはり、実在の選手を架空でも死なせるのはどうかなぁ…と思ったからです。好きなチームのコ達だし。かといって他チームの選手をそれ用で使うのも違うしな、と逡巡した結果、誰も死なないミステリーとなりました。<br><br>最初はちょこちょこメモ書きなどでストーリー展開考えてたのですか、書いてると登場人物が勝手に動いてしまい、西君がファイルを持ち出したあたりからはぶっつけで書いていました。<br><br>大まかな結末は初めから考えてはいましたが、思いの外シリアスな感じになってしまいました。初めは、ちーちゃんと馬原くんのミスコン対決とかさせよかな、と思ってたんですよ。<br>でも、西君がファイル持ち出したおかげで一気にシリアス路線に突き進んでしまいました。<br><br>それにしても我ながら気の毒なキャスティングになったのがプリンス。イケメン過ぎるからあかんのよ～と思いながら、馬原くんとのからみは楽しんで書きました。ごめんなさいホンマ…<br><br>ちなみに登場した中で私がキャラとして好きなのは土谷さんでした。彼の場合は登録名ではなく苗字で登場してもらったので、比較的抵抗なく書けましたね。<br><br>続きはまた次回。登場人物への思いを書きたいと思います～。<br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11987786943.html</link>
<pubDate>Mon, 09 Feb 2015 17:19:43 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Bs大学殺人事件51 エピローグ</title>
<description>
<![CDATA[ 最終回です。<br><br>～～～～～～～～～～～～～～～～<br><br>その日、岡田はJR岡崎駅の改札外にいた。<br>しきりに携帯を気にしているが、決して自分からメールを送ったり、電話をかけるそぶりはない。<br><br>あの日からちょうど1年。昨日、光にメールを送った。<br><br>"明日岡崎駅の改札の外で待ってる。朝から待ってる。時間はいつでも良い＂<br><br>岡田は言葉通り朝9時頃からずっと立っていた。初めのうちは改札の駅員もチラチラ見ていたが、もう慣れたようで、全くこちらを見なくなった。時計を見るともうお昼前になっている。どこからか肉を焼くような匂いが漂って来た途端、それに呼応するかのようにグーっとお腹が鳴った。<br><br>(そういや、朝マトモに食べなかったからなぁ…)<br><br>緊張のあまり、食事があまり喉を通らないまま家を出たのだ。<br><br>光と別れて1年。1日も彼女の事を忘れる事はなかった。<br>大学は何事もなかったかのように森脇を受け入れ、日常があっという間に戻ってきた。<br>違ったのは、馬原と光がいなくなった事だけだった。<br>卒業式の日も光を探したがやはり来ることはなかった。単位は足りており、卒論も自力で仕上げて提出したので卒業はできたのだが…。<br><br>卒業式の日、研究室に森脇が1人になったのを見計らって岡田は伝えた。<br><br>「もう少ししたら、光を迎えに行きます」<br><br>後ろを向いたまま、森脇は黙って頷いていた。<br><br><br>もうどのくらい待っただろう。お腹も空きすぎて感覚がなくなってきた。メールの返信も電話もない。このまま待ち続けていて大丈夫なのだろうか、と不安になった時だった。<br><br>「やっぱりJRだったんだ」<br><br>「光…来てくれたんだ」<br><br>1年経ち、髪だけ少し伸びているが、事件前と変わらない勝気な様子の光が少しムッとしながら立っていた。<br><br>「岡崎駅って２つあるのよ。JRと愛環の。先に愛環の方探したわよ。それぐらい調べといて。<br>それに、私の最寄り駅ここじゃないの。うちは名鉄沿線なのよ。<br>岡崎だから岡崎駅だなんて短絡的ね」<br><br>やや目を吊り上げて矢継ぎ早にまくし立てる様子が、懐かしかった。<br><br>「それに、今日は朝からバイトだったのよ。こっちの都合も聞かずに一方的に待ってるから、だなんて…<br>岡田くんの事だから、こうって決めたら譲らないでしょ？だから返信せずに<br>無理言って午前でバイト変わってもらって、何とか飛んできたのよ」<br><br>「変わらないね。と言うか、元の光に戻った。良かったよ」<br><br>言いたい事を全部だし尽くした光も、その言葉で微笑んだ。<br><br>「ありがとう。待たせたわね…」<br><br>どちらから言うともなく駅を出て歩き始めた。じめっとした空気が2人を包んでいるが、岡田の気持ちは晴れやかだった。<br><br>「今、バイトって何やってんの？」<br><br>「コンビニ。こっちの友だちの親が経営してる所。そこなら、親も構わないって言ったから」<br><br>帰ってから大変だったのよ、と光は続けた。<br><br>「父にものすごく叱られたわ。当たり前だけどね…<br>謹慎しろ、って言われて、帰ってから半年間、家から出してもらえなかったのよ。<br>卒論も母に大学まで持って行ってもらったわ」<br><br>それでも年内は卒論の仕上げと言う目的があったから良かったが、年が明けてからは魂が抜けたようにぼーっとする毎日を送っていたという。<br><br>「ただ、年明けから母が連絡を取ってくれて、こっちに残ってた部活の友だちが遊びに来てくれるようになったの。それで少しずつ、元に戻ってきたかなぁ」<br><br>お母さんには頭上がらないわ…それに、長く会ってなくても友だちってありがたいわね、とぽつっとつぶやいた。<br>そのうちの1人の父親がコンビニを経営しており、アルバイトとして働けるようになったという。<br><br>「そっちは…どう？あのバカ2人組やグッチさんは元気？」<br><br>「卒業してからはメールだけだけど、元気そうだよ。<br>西も松葉も今新入社員研修で忙しいし、<br>グッチさんも、今年は博士論文出す気みたい。<br>それから…先生も、後遺症もなくお元気だよ」<br><br>「そう」<br><br>光は無理に平静を装ったが、少しホッとしているのが岡田にはわかった。<br>それから、2人の間には何とも言えない沈黙が続いた。<br>雰囲気を変えようと岡田が何か言おうとしたその時、お腹の音がグーっと響いた。<br><br>「もしかして、何も食べてなかったの？」<br><br>目を丸くした光が、突然腹を抱えて笑い始めた。<br><br>「食べるタイミングがさ…そんなに笑うなよ」<br><br>「ああ、ごめんなさい…。<br>そんなに、お腹減らしてまで待っててくれたのね」<br><br>顔を覆い、涙まで流して笑っている。さすがにそこまで笑うなよ、と怒ろうかと思って光の顔を見たが、<br><br>(え、泣いてるのか？)<br><br>隠しているので目は見えないが、口許はもう笑っていなかった。<br><br>「光…」<br><br>慌てて岡田が差し出したハンカチで涙を拭いながら、光はしゃくりあげていた。<br><br>「バカね…あの2人組よりバカよ。私なんかのこと、そんなに待ってくれるなんて。<br>1年って…そんなすぐに先生の事完全に忘れるわけないじゃない！<br>もちろんもう会わないし未練もないけど、忘れるのってそんな簡単じゃないのよ…<br>なのに、どうしてこんな私をそこまで…」<br><br>バカね、バカねと泣きながら岡田の胸を光は何度も何度も叩いた。<br><br>「でも、それが光じゃないか」<br><br>そう言うと、岡田は自分を叩き続ける光の手をつかみ、抱き寄せた。<br><br>「君が、そんなすぐに忘れて、次の恋にさっさと進める軽い人間だとは思っていない。<br>そりゃ、本音を言うとさっさと忘れて欲しい。<br>でも、それも含めて、光の全部を迎えに来たんだよ」<br><br>まだしゃくりあげながら、光は<br><br>「でも…私、大阪へは戻れない。怖いのよ。<br>事件を思い出すのもだけど、<br>せっかく忘れかけてる先生の近くに行くことも…」<br><br>「そうか、そうだよな…」<br><br>道ゆく人々がなるべく見ないふりをしながら通り過ぎている。じめっとした空気は更に湿り気を含み、雨が間も無く降ってきそうだった。<br>黙って光の髪を撫でていた岡田は、光の嗚咽がおさまるのを待って、<br><br>「もう一つ、バカって言われるかも知れない事がある」<br><br>顔を上げた光の頬を両手で挟むと、<br><br>「今、豊田に住んでるんだ」<br><br>驚きのあまり、光は何も言えなかった。<br><br>「俺が入った会社、豊田にも支店があってね。<br>去年の内定式の後、人事にお願いしてこっちの採用にしてもらった。<br>ちょうどこっちの採用の学生で内定辞退した人がいたらしくて、助かったって感謝されたよ」<br><br>「え…」<br><br>「だから、大阪には行かない。豊田から迎えに来た。<br>今日豊田に行く必要もない。いつでも、俺が会いに来る。<br>…ご両親にも、お会いしないといけないしな」<br><br>「…本当のバカね、岡田くん」<br><br>「ああ、そうだよ。<br>自分でもイヤになるよ。人生左右しちまってるしな…。<br>でも、そんなバカで良かったら、受け入れて欲しい」<br><br>うつむいていた光は、意を決したように岡田を突き放し、駅に向かって歩き出した。何が何やらわからず、その場で立ち尽くしたままの岡田の方を振り向くと、<br><br>「何してんの？行くわよ」<br><br>「え？」<br><br>「うちの家、電車乗らないと行けない距離なのよ。駅からも歩くし、早く行かないと雨だって降って来るわよ」<br><br>足早に戻って来た光は、岡田の手を取り、<br><br>「うちの父、かなり怖いけど大丈夫？<br>そうね…2、3発は覚悟してね」<br><br>そう言って、手を強く握った。<br><br>「…少しくらい殴られるのは平気さ」<br><br>更に強く、岡田は手を握り返した。<br><br>「痛いわよ…」<br>「あ、ごめん」<br><br>ぎゅっと反対に強く握り返した光は、<br><br>「心の準備はできた？」<br><br>いたずらっぽく笑うと、駅に向かって、岡田を引っ張るように走り出した。<br><br><br>駅の傍の飲食店に、あの気持ち悪いキャラクターのボスターが貼ってあった。今日も、光のジーンズのポケットからはこいつのストラップが顔を出していた。<br>こっちに来てからは目にする機会が多くなり、だんだん慣れてきていた。<br><br>「どうしたの？おかざえもんのグッズ欲しいの？」<br><br>何故か光の目が生き生きしている。<br><br>「あ、いや…そうだな、欲しいかな」<br><br>「じゃ、明日買っとくわ。今度渡すね」<br><br>さぁ行くわよ、と駅の階段を軽快に光は上がって行く。<br>慣れたとは言え、グッズを持つのはまだ抵抗がある。しかし、それが光からの初めてのプレゼントになるのなら…<br><br>(お前の事、好きになるよ)<br><br>ポスターのおかざえもんが、すこし笑ったような気がした。<br><br>「早く来なさいよー！」<br><br>階上からの光のやや怒ったような声でハッとした岡田は、慌てて階段を駆け上がった。<br><br><br>2人が駅に入るのを待つかのように、雨がしとしと降って来た。<br><br>「あれ、明るい…？」<br><br>駅のホームで空を見上げた光は、まだ夏には程遠い灰色の空の向こうに、自分の名前と同じ光を、その時確かに見つけた。<br><br><br>                           完<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11987420215.html</link>
<pubDate>Sat, 07 Feb 2015 21:25:56 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Bs大学殺人事件50 空</title>
<description>
<![CDATA[ 今回と次回(最終回)は、前書きなしでお送りします。<br>～～～～～～～～～～～～～～～～～<br><br>その老女は、ポツンと庭先のベンチにに腰掛け、隅に咲く紫陽花を見ていた。<br><br>「隣、良いですか？」<br><br>「あら…孝浩、久しぶりねぇ」<br><br>「すいません、僕は孝浩さんではないですよ」<br><br>そう言って静かに老女の隣にかけたのは金子だった。<br><br>「ごめんなさい。あの子の母親はよく来てくれたのに、孫はあまり来なくて…仕事が忙しいのかしらね」<br><br>優しそうな女性だ。しかし、話しながらも彼女の目の焦点は合っていない。まるで、この世のものではない何かを見つめているかのように。<br>しかし、しゃんと背筋を伸ばして座っている姿は品もあり、若い頃はかなりの美貌だったのではないかという面影が見て取れた。<br><br>「お孫さん、可愛いですか？」<br><br>「もちろんよ。まぁ、産まれた時の事情が事情だけにねぇ…」<br><br>「産まれた時？」<br><br>「あの子の母親は、許されない人の子どもを産んでね…主人が縁を切るって言うから私は逆らえなかったんだけど、赤ちゃんは本当に可愛かったわ…」<br><br>空が少し暗くなって来た。<br><br>「うちは旧家だし、表立って可愛がる事は出来なかったけど、ね」<br><br>そう言うと、老女は手に持っていたハンドバッグから古い写真を出した。<br><br>「ほら、可愛いでしょう。本当は、この子をいっぱい抱きしめてあげたかったわ…」<br><br>金子は写真を受け取った。いつも持ち歩いていたのだろうか、幼い馬原の写真は角が擦り切れている。<br>こんな可愛い子があんな事件を起こすとは、などと感傷的な事を金子は感じなかった。<br><br>「でもね、きちんと可愛がってあげなかったのに私の面倒は見てくれてね…ここも、あの子が世話をしてくれたのよ」<br><br>黙って、金子は写真を返却した。<br><br>「でも、その後来るのは母親ばかりでね。いえ、娘も自慢の娘だから嬉しいんだけどね、孫は特別よ…」<br><br>馬原さん、中に入りますよ～と職員が老女を連れにやって来、金子に丁寧に一礼すると、そのまま施設の中に戻っていった。<br><br>先日梅雨に入った空から、ポツポツと雨が降り始めた。<br>老女が施設に入るのを見届けてから、金子も中に入り、事務所を訪ねた。<br><br>「ありがとうございました。これで失礼します」<br><br>手前にいた事務員が顔を上げた。<br><br>「会話できました？馬原さん…」<br><br>「昔の事を聴きたかったんで。大丈夫でしたよ」<br><br>「そう。<br>まあ、認知症の方はたいていそうなんだけど、同じ話ばかり、それも昔話の繰り返しだからね。<br>私たちはもう慣れてるからどうってことないけど、新人の子や長い間介護されてるご家族の方はイライラすることも多いのよ」<br><br>少し年配のこの事務員は、かなり話し好きなようだ。<br><br>「馬原さんの場合は娘さんの自慢と、お孫さんの話。<br>でも面白いの。お孫さんの事を完全に娘さんと思っててね。来たら喜ぶのに、いつもキツい事ばっかり本人には言うのよね。<br>それでも、月に2回はお孫さん来てたんだけど…しばらく無理なようね」<br><br>もちろん、施設にも馬原の事件の件は知らされている。<br><br>「まぁ、馬原さんはあんな感じだから…お孫さんの事件もわかってないのよ。お孫さんと娘さんをずっと間違ってるしね」<br><br>「娘さんは、確か」<br><br>「随分昔に亡くなってるんですってね。あまり人に言えない亡くなり方だったって聞いたけど」<br><br>事務員の話は終わりそうにない。そろそろ帰ろうかと、金子は礼を述べ、施設を後にした。<br>傘を差し最寄り駅まで歩き始めると、見知った人物が歩いて来た。<br><br>「あ、マモル兄さん」<br><br>「金子。来てたのか」<br><br>岸田は、手に大学近くの和菓子屋の包みを持っていた。<br><br>金子が馬原の祖母が入所する特別養護老人ホームを訪ねたのは、岸田に馬原の身の上を聞いたからだった。<br>実の父や兄の名は語っていなかったが、自分がどのような事情で産まれ育ったか、馬原は岸田にだけは話していた。<br>逮捕後も岸田は度々馬原に面会に行っており、その際に祖母の事も頼まれているという。<br><br>「ああ、これお祖母さんの好物らしいんだ。月に2回で良いから差し入れて欲しいってあいつに頼まれててね」<br><br>「兄さん、どこまで面倒見良いんですか」<br><br>半ば呆れて、でも笑いながら金子が言った。<br><br>「お前たち学生には迷惑かけたが、俺はあいつがそんなに悪い奴とは思ってない。<br>まぁ、事件にはかなり衝撃受けたけどな…。<br>大学には戻れないだろうが、俺はあいつが帰って来るのを待ってやろうと思ってる」<br><br>雨が少しきつくなって来た。<br><br>「お祖母さんには愛された記憶はないけど、可愛い娘を奪ったのはある意味自分だから、その分世話はしたい、ってあいつ話しててね。<br>でも、俺が行くと馬原と間違って喜ぶんだよ」<br><br>「本当は可愛い孫だったようですね」<br><br>ザーザーと雨が音を立てて傘に打ち付けている。やや下を向いて話していた金子は、ふいに傘を投げ捨て、空を仰いだ。<br><br>「もっと早く、それを馬原さんに言ってやれば良かったのに…」<br><br>怪訝な顔でその行動を見つめていた岸田は、金子の目から雨ではない別の雫が流れているのに気づいた。<br>が、何も声はかけず、黙ったまま歩き始めた。<br><br>「梅雨、うっとおしいですね」<br><br>金子の声に、岸田は立ち止まった。<br><br>「ああ、でも、梅雨で雨が降らないと農作物が大変だからな」<br><br>「空がいつも灰色だ…。僕は元々嫌いじゃないが、空は晴れていないとと思う人間もいる。<br>羨ましい。曇りは嫌いだとはっきり言える純粋さがね。<br>しかし、曇りがあるから空の青が引き立つ」<br><br>振り向くと、びしょ濡れのままの金子は<br><br>「あとしばらくは灰色だが、イヤでも真っ青な空は戻ってくる。<br>灰色と青を、繰り返すもんなんですね」<br><br>そうつぶやくと、じゃあまた、と傘を持ち駅に向かって歩き出した。<br><br>しばらく金子の後ろ姿を見送っていた岸田は、西の方の空がやや明るくなっているのに気づいた。<br><br>(イヤでも真っ青な空は戻ってくる…)<br><br>何故か、西の笑顔が頭に浮かんだ。<br>あいつの笑顔はこっちが幸せになるなぁ、と思うと少し笑みがこぼれた。<br>時計を見るともう面会終了時間が迫っている。いけない。岸田は、足元が濡れるのも構わず走り出した。<br><br><br><br>梅雨が明けたある日、森脇が研究室に戻る日がやって来た。<br>集まったゼミ生は、先生をどう迎えたものかと誰が言うでもなくザワザワしていた。<br>もちろん光の姿はない。岡田は、ただ黙って座っている。<br>腕を組んで座っていた坂口は、何とも言えない雰囲気が我慢できなかったが、自分も何とも表現し難い感情の中にいた。<br><br>(しかし…ここは俺がやらないといけないな)<br><br>意を決して立ち上がると同時に、安達がドアを開けた。<br>「先生、良いかな？」<br><br>「はい」<br><br>学生達に向き直ると、<br><br>「もう何も言うな。先生をお迎えするぞ」<br><br>そう断言し、ドアを大きく開けた。<br><br>「先生、おかえりなさい！」<br><br>もう湿り気のない、夏の空気が一緒に入って来た。<br><br><br><br>続く<br><br><br><br><br><br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11986278549.html</link>
<pubDate>Thu, 05 Feb 2015 22:29:07 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Bs大学殺人事件49 約束</title>
<description>
<![CDATA[ 月曜日の放送だったのですが、<br>赤かぶ検事の最新シリーズを見ました。<br>実は中村梅雀さんの大ファンなので、赤かぶ検事があってるかどうかは別にして、楽しみに見ました♪<br><br>梅雀さん、ものすごい悪人からめちゃ良い人まで演技の幅が広く、しかも音楽もされてて…なんて素敵なおじ様なんでしょう( ´ ▽ ` )ﾉ<br>旅番組とかで職場に来てくれないかなぁーと密かに願っています。<br>そんな事になったら1日仕事になりませんがね…<br><br>～～～～～～～～～～～～～～～～～<br>駅に着いた岡田は、先に着いていた光を見つけた。<br><br>「光…」<br><br>母は切符を買いに窓口に行っていた。1人ポツンと立っていた光は、その声に振り向いた。<br><br>「岡田くん、ゴメンね。<br>あなたがどうとか、そう言うわけじゃないのよ。<br>今、帰らないと、帰る場所が無くなるのは、本当だと思うの」<br><br>そう言うと、そっと岡田の側に寄った。<br>「ありがとう。あなたがいなければ私どうなってたか…」<br><br>「…俺は諦めない。いつまでも待ってるよ」<br><br>切符を買った光の母が戻って来た。<br><br>「迎えに行きたい。いつなら良い？」<br><br>2人が話しているのに気づいたが、母は声をかけることなく時計と時刻表を見ている。<br><br>「わかんない」<br>「じゃあ、俺が決める。そうだな…1年後の今日はどうだ？その日に、岡崎まで行くよ」<br><br>時間よ、と母に声をかけられ、光は無言で改札に向かった。<br><br>「良いな！もし、俺を受け入れてくれるなら、駅まで来てくれ。ダメなら来なくていいよ」<br><br>一瞬立ち止まったが、母に切符を渡され、改札を通るとそのままホームへの階段を登っていった。<br>姿が見えなくなっても、しばらく岡田はその場に立ち尽くしていた。やっとてに入れたかと思えた愛する人が、去って行く…<br><br>(1年…それまで待っていてくれるだろうか)<br>自分は今まで散々待った。1年くらいどうってことはない。<br>(いいや、考えるのはよそう。それまでに俺がやらなければいけないことは、たくさんある)<br><br>もう光の乗った電車はとうに出発していた。駅に背を向けると、岡田は振り向かず歩き始めた。<br><br><br>その頃、千代崎市の教育委員会では、前田がありがたい報告を受けていた。<br><br>「本当ですか！バイト1人採用できるんですね」<br><br>市史編さん室にアルバイト採用の予算がついたらしい。今年度は無理だと思っていたので驚いたが、これで彼も吉田もかなり助かる。<br><br>「ああ、なんでも谷議員が押してくれたらしい。前に後援会の案内したからじゃないか？」<br><br>「ですかね？それくらいいくらでもやりますよ！」<br><br>良かった。面倒な人と思って申し訳なかった、と前田はこの時心から感謝した。<br>早く吉田にも伝えよう。なんなら、大学の後輩で良い子を選び始めてもらわないと、と市史編さん室に喜び勇んで戻った。<br>市史編さん室の前に、ちょうど谷議員がいた。<br><br>「あ、谷議員。ありがとうございます。おかげでアルバイト予算が」<br><br>「いえ、先日のお礼よ。我が市の歴史を市民のみなさんにわかりやすく伝えるのは非常に意義のあることですしね。頑張ってくださいね」<br><br>ありがとうございます、と一礼して部屋に入ろうとした時だった。<br><br>「それから…ICレコーダーの件は忘れてちょうだいね」<br><br>えっ？と思い谷議員の顔を見た。ニコッと笑うと、谷議員はヒールの音を高く鳴らしながら去って行った。<br><br>(あの件…事件の事だよな)<br>馬原が逮捕されたが、何だかよくわからない理由が動機だと聞いた。じゃあ、あのレコーダーに録音された会話は何だったんだろう、と吉田とも話していたところだった。<br>(谷議員がそんな事言うということは、谷先生が絡んでるのか？でも、どうして…)<br><br>部屋に入ると、吉田が大量の原稿を入力している最中だった。アルバイトなのに、これ以上ないくらいよく働いてくれている。頼もしい相棒だが、これからは卒論などで彼も忙しくなる。市史編さん室に縛り付けてはいられない。<br>(真実に目をつぶるべきか否か、それくらい俺にもわかる…でも)<br>説明はいずれしよう。まずは、吉田を喜ばせよう。<br><br>「あのな、吉田」<br><br>こちらを向いた吉田の目は、朝からパソコンに向かっていた事もあり、充血していた。<br>大きく深呼吸して、前田はやや無理に笑顔を作った。<br><br><br>電車が動き始め、光はずっと窓の外を見ていた。帰省の際見慣れた風景だが、何故かもう見ることがないような気がしていた。<br>喫茶店で母と岡田のやり取りを聞きながら、光の頭の中に馬原の言葉がはっきりと蘇ってきた。帰る場所をなくした彼の母親、居場所がなかった馬原…。<br>(私は違う。あなたのお母さんとは違うわ)<br>そう思うと、自然と実家に帰らねばならない気持ちになった。<br><br>馬原の語った事件の真相は真っ赤な嘘だ。だが、光が真相を話したところで誰のためになるのだろう。<br>(一生黙っていよう。先生も話してないなら、私も絶対喋らない)<br>それが、もう会うことのない森脇との唯一の繋がりであるような気もした。<br><br>「お母さん」<br>本を読んでいた母が顔を上げた。<br>「なあに？」<br><br>老眼鏡をかけている姿を初めて見た。家を出て3年余り経つ。歳なんだなぁ、と寂しい気持ちになった。<br><br>「もし、仮の話だけど。<br>私が、父親のいない子を産んだら、どうする？<br>あ、出来てないからね」<br><br>眼鏡を外した母は、しばらく光を見つめたが<br><br>「そうね…あなたのしたことは許せないけど、孫は可愛いから、うんと可愛がるわ！」<br>「え？そうなの？」<br><br>ふっと母は笑った。<br>「おばあちゃん見てごらんなさい。あなたが産まれた瞬間に、私そっちのけであなたを溺愛してるじゃない。<br>実は、お父さんのことあまり気に入って無かったんだけど、それとこれとは別みたいよ」<br><br>祖母はまだ健在だ。今回の事知ってるのかな、と不安になったが、<br>「おばあちゃんには言ってないわよ。帰って落ち着いたら、顔見せてあげなさい」<br><br>心の中を見透かしたように母が言った。<br><br>(私は、大丈夫だわ)<br><br>間も無く乗り換え駅に着く。光は、荷物を自分で持つと<br><br>「お母さん、急ごう！」<br><br>その日、初めて母に笑顔を見せた。<br><br><br><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/bs71059/entry-11985342289.html</link>
<pubDate>Tue, 03 Feb 2015 12:25:34 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
