<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>狩るねーじのライブステージ</title>
<link>https://ameblo.jp/carnage-pri/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/carnage-pri/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>プリパラファンフィクション『ザ・ハート・オブ・ザ・ワールド』のライブシーンを投稿します</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>最終話『アイドルになってみよう』</title>
<description>
<![CDATA[ <p>「……二回戦、間に合わなかったがお……」</p><p>　疲れと落胆が、彼女の体から力を奪っていく。走り通した筋肉は、疲弊し切って微動だにしない。世界の音が、遠い。</p><p>（まだ、三回戦があるから、いかなきゃ……でも、足が動かないな……ここで、間に合わないまま、終わっちゃうのかな……）</p><p>　座り込んでうつむく晶子。疲れが、克服したはずの不安を呼び起こす。</p><p>　もしこのまま三回戦にも間に合わなかったら？</p><p>　二人が、行けなかったあたしに愛想をつかしてしまったら？</p><p>とらこちゃんも、ぱんてらちゃんも、プリパラからいなくなったら？　</p><p>　あたしの気持ちが、誰にも届かなかったら？</p><p>　プリパラが楽しくないままだったら？</p><p>「ねえ、あなた、大丈夫？」</p><p>　不意にかけられた声に顔をあげると、見知らぬアイドルが晶子を覗き込んでいた。</p><p>「こんなところで、一人でどうしたの？　あ、ひょっとして迷子とか？　どこに行くの？　連れて行ってあげようか？」</p><p>　その子は、薄紫色の髪を大きなツインテールにしていた。きれいな緑色の瞳は、心配そうに晶子を見ていた。</p><p>「う……」</p><p>　涙が溢れそうになる。心も体も弱ったところに親切な言葉をかけてもらって、初対面で事情も知らないであろうその子に、言葉が口をついてでる。</p><p>「あたしは……チームメイトが、あたしのために歌ってて、待ってて……だから走ってここまで来て、でももう走れなくて、足が動かなくて……」</p><p>　喋っているうちに、大粒の涙がぼろぼろとこぼれだし、地面に染みをつくっていく。しゃくりあげ、両手で涙を拭いながら、晶子は言葉を止めることができない。</p><p>「間に合わないかもしれないって、思ったら……行かなきゃいけないのに……あたしは、強くもかしこくもないし、ずっと二人に支えられてばっかりだったから……二人の迷惑になるのも、二人と離れるのも、嫌なのに……自分から、チームをやめるなんて言っちゃって……だから、謝らなきゃなのに……ありがとうって言わなきゃなのに……！」</p><p>　飛び飛びに前後し、文章の体を成していないそれを、その女の子は優しく聞いてくれていた。</p><p>　遠くから、狩るねーじのライブの始まりを告げる、イントロが聞こえてくる。静かなピアノの旋律だ。</p><p>『好きな歌、歌うとき　思い出しちゃうことはなぁに？』</p><p>　聞こえてきた曲にあわせて、その女の子は歌った。</p><p>「え……」　</p><p>『「トモダチ」ってキーワード　いつも浮かんできちゃう』</p><p>　曲は、『<font face="Century">Growin</font>’&nbsp;Jewel!<font face="ＭＳ 明朝">』。まだライブで披露したことはなかったが、狩るねーじの新しい持ち歌のひとつだ。モニター越し紗雪と虎姫の声も、聞こえてくる。</font></p><p>　二人と、目の前の女の子の声を聞いていると、晶子は自分の中に強い力が湧いてくるのを感じた。晶子も、あわせて歌う。</p><p>『あつまるといつだって　嬉しくってしかたない』</p><p>　三人で集まると、いつだってほんとうに嬉しくて、楽しかった。晶子の大きな瞳に、輝きが戻っていく。　</p><p>『いちばん近くで憧れるアイドル！』</p><p>　そう歌う、紗雪と虎姫の声が、晶子の耳にしっかりと届いた。晶子は、涙で枯れた声でいっしょに歌って、気づいた。</p><p>　いちばん近くで、憧れるアイドル。あたしにとって、二人がそうだった。</p><p>「あなた、プリパラは好き？」</p><p>　晶子は頷いた。</p><p>「二人のことが、大好き？」</p><p>　もう一度、強く頷く。</p><p>「じゃあ、大丈夫！　二人に届くように、世界中に届くように、思いっきり歌うんだよ！　きっと、二人も同じ気持ちだよ。だって、この歌……とっても、キラキラしてるもの！」</p><p>　涙をごしごしと拭って、両足に力をこめて、晶子は、再び走り出す。底をついたと思っていた力が、どんどん湧いてくる。</p><p>「だんだんね。あたし、元気出た！　あたしは、ライオンさん！　にくしょくけいアイドルの、『狩るねーじ』のライオンさん！　ライ子って呼んで。あなたも、こんどライブ見に来てね！」</p><p>　倒れる前よりも確かな足取りで、走っていく晶子。走りながら、音程を外しながら、歌い続ける。</p><p>&nbsp;</p><p>「絶対見に行くよ、の、かしこま！」</p><p>　横ピースを作って、晶子を見送った彼女のもとに、</p><p>「もう、急に走り出して、どうしたぷり？」</p><p>「ぷしゅ～。二人とも、まってぇ～」</p><p>　彼女のチームメイトの二人が集まってきた。</p><p>「迷ってる子を見つけたから、お話聞いてたんだ。きっとあたしがいなくても、大丈夫だったと思うけど」</p><p>　二人の手をとって、彼女は言う。</p><p>「あの子も、チームのメンバーに恵まれたみたいだからね。あたしみたいに！」</p><p>「……そっか。よかったわね♪」</p><p>「よくわからないけど、改めて言われると照れるぷり……でも、早く記念ライブのリハに行かないと、マネージャーにどやされるぷりよ～」</p><p>　繋いだ手を引っ張る金髪のチームメイトに、</p><p>「もうちょっとだけ……グランプリ、見ていこうよ！　あの子がちゃんと間に合ったか、気になるんだ。お願い！　今の子のライブも見たいし！」</p><p>　手をあわせて頭をさげる。グランプリの行われているドリームシアターは、彼女たちにとっても思い出の場所だ。</p><p>「私も、今の子たちのライブ、見てみたいなぁ」</p><p>　赤いロングのチームメイトがそれに賛同する。　</p><p>「確かに今のアイドルのライブをチェックすれば、チームのパフォーマンスもアップすると計算で出ているぷり。……しょうがないぷりね、マネージャーには連絡しておくぷり。あと……二人とも、『今の子』って言い方、おばさんくさいからやめるぷり……」</p><p>　金髪のアイドルがため息をついた。</p><p>「はぁーい」</p><p>「かしこま！」</p><p>　三人は、グランプリの会場に向かう。彼女たちの輝きを受け継ぐアイドルたちのライブを、その目で見るために。</p><p>&nbsp;</p><p>　サイリウムの海が、眼下できらめく。体の奥底から絞り出す全力の歌が、ステージに響く。紗雪と虎姫は、グランプリ本戦のステージで歌っていた。</p><p>『好きな歌、歌うとき　思い出しちゃうことはなぁに？』</p><p>　紗雪の低い声が、やさしく語りかける。</p><p>『「トモダチ」ってキーワード　いつも浮かんできちゃう』</p><p>　虎姫の甘い声が、それに応える。</p><p>　一回戦の時とは違い、この『<font face="Century">Growin</font>’&nbsp;Jewel!<font face="ＭＳ 明朝">』は、先ほどのインターバルの間にパート分けをしなおし、二人での掛け合いを多くした。ゆきみから連絡があったからだ。晶子が、プリパラに来たと。二人のライブを見て、走ってこちらに向かっていると。</font></p><p>「走って、か……ギリギリだね。計算上、ここから目いっぱい遅らせても、三回戦までのインターバル中か、よくて二回戦の曲の最中に着く」</p><p>「だったら……今度は、『がんばれ』『待ってるよ』『そばにいるよ』って、伝えなきゃ。きっと、一人で走り続けるのは、辛いだろうから」</p><p>　虎姫は拳を握りしめた。</p><p>「そうだね。きっと走り通して、二回戦のどこかで来てくれるよ。私たちはそれまで、ライ子がいつ来てもいいように、歌い続けよう！」</p><p>『あつまるといつだって　嬉しくってしかたない』</p><p>腕の一振り、足の一蹴り、そのすべてに想いを込める。</p><p>普段は余裕にあふれ、ゆったりとした印象を与える虎姫の声が、切迫感を増した反面、一段力強く響いている。</p><p>どこか一歩引いて、後ろから他の二人を支えていた紗雪の歌が、ここにいない晶子の大きな声を補うように、今日は強く主張して前に出ている。</p><p>『いちばん近くで憧れるアイドル！』</p><p>（そうだ。私たちをここまで導いてくれたのは、ライ子ちゃんなんだ）</p><p>（キラキラして、まっすぐで。あたしは、彼女に憧れていた）</p><p>　観客たちにも、二人の強い思いが伝わったようだ。</p><p>　一回戦では、「えー、なんか変なダンス」「コーデも普通だし」「もっとすごい演出してよー」「期待してたんだけどなあ」</p><p>　と、落胆した声も多かった。予選での活躍から期待が高かっただけに、それは当然のことだ。</p><p>しかし、それでも、二人は続けた。普段よりずっと強い思いの込められたパフォーマンスに、観客の反応も、だんだん変わってきていた。</p><p>「どうしたんだろ、普通のライブなのに」「なんか、目が離せないよね」「きっと、待ってるんだよ、もう一人を」「応援したくなってくる！」</p><p>　二人の中に生まれた『星』が、会場の磁場をひきつけはじめていた。</p><p>『自分のことを』</p><p>『そばでみてて』</p><p>　歌うたび、踊るたびに、会場に自分たちの想いが伝わっていくのを感じる。</p><p>『自分以上に』</p><p>『応援してくれる』</p><p>　きっと、あの子も今頃、走りながら歌っているのだろうと、なぜかわかる。遠くで、調子はずれなメロディが聞こえてくる気さえした。</p><p>『笑って、泣いた<font face="Century">Memories</font><font face="ＭＳ 明朝">』</font></p><p>『お互いのハート磨いてくれるんだね』</p><p>　紗雪は、虎姫の方を見た。虎姫は必死に、大きな声を張り上げて歌っていた。最初のライブからでは、考えられない変化だ。虎姫も、紗雪のほうに目線を向けていた。彼女もきっと、同じことを思っているのだろう。</p><p>一回戦とのインターバルの間に、「だからもっと……強くなりたい。どこまでも声が届くぐらい強く、二人を守れるぐらい強く」と、彼女はそう言っていた。</p><p>　そしてここからは、彼女のソロパートだ。</p><p>みてて、ライ子ちゃん、ぱんてらちゃん。虎姫の口が動いた。</p><p>「プリパラ、チェーンジッ！！」</p><p>　虎姫の体を、光が包む。会場がざわついた。紗雪も驚愕して、思わずマイクを取り落しそうになる。</p><p>「ステージ上でプリパラチェンジ？！」「すごーい！」「そんなことできるの？！」「レギュレーション違反では？！」</p><p>　観客たちも、目の前で繰り広げられる、見たことのない光景に釘づけになった。</p><p>『み～んないっしょ！思い出イッパイ　ずっとギュッと抱きしめたなら』</p><p>　空間にばらまかれた、無数のキラキラを抱きしめるように手を広げ、目を閉じて、自らの体を抱きしめる虎姫。彼女の体が一回り成長し、高校生ぐらいの身長にまで伸びる。</p><p>同時に、かわいらしくツインハーフアップにまとめていた髪がほどかれ、光の粒をまとって長く伸びた。後頭部でシニヨンが作られ、ふわりと広がった髪が腰のあたりまでゆるやかに流れた。</p><p>「きゃー！　とらこちゃん、カワイイ！」「プリンセスだわ！」</p><p>　観客たちの声援に答えるように、目を開いた虎姫。</p><p>『胸に　キラキラって光っちゃう<font face="Century">Jewel</font><font face="ＭＳ 明朝">』</font></p><p>　元の姿より幾分膨らんだ胸に手をあて、そしてスポットライトにかざす。</p><p>『いつかきっと！って想いをパキりあって』</p><p>　もう片方の手を、紗雪のほうに伸ばす。紗雪はその手をつかんで、同じように反対の手を掲げた。スポットライトの中心は、熱い。</p><p>『できた未来…』</p><p>　紗雪は、並んでみてはじめて、虎姫が今ここでチェンジできた理由がわかった。</p><p>『それがね、プリパラ！』</p><p>　虎姫にはじめて、『なりたい自分』ができたのだ。</p><p>　プリパラチェンジは、『なりたい自分になれる』機能。それは常にオンになっていた。そこに、ついに具体的なビジョンが結びついたのだ。</p><p>　大きな声で、プリパラの中の紗雪と並べるぐらい大人で、二人を守れるぐらい強い、そんな自分になりたい。その願いに、システムが応えた結果ともいえる。</p><p>　間奏にあわせて踊りながら、成長した虎姫に紗雪は、ぐっと拳を突き出した。</p><p>「カッコイイじゃん、とらこ」</p><p>「ふふ、ありがと♪　ちゃんとあたしについてきてよね、ぱんてら！」</p><p>　ばちん、と拳どうしをぶつけ合う二人。ステップを踏みながら、視線を交わす。</p><p>「ナマイキ言って！　年上の意地、見せてあげるよ！」</p><p>　紗雪は、どこかで聞いたワープ航法の話を思い出していた。強力な重力によって空間を捻じ曲げることで、瞬間で遠くまで移動するのだという、<font face="Century">SF</font><font face="ＭＳ 明朝">の話だ。</font></p><p>（もし、私の中に『星』があるなら。ありったけの重力で、空間を超えてみせる。ライ子に、この想いを、届けてみせる！）</p><p>　二人は、ステージの上で魂を燃やす。きっとここに来る、彼女を抱きとめるために。</p><p>&nbsp;</p><p>　晶子は走る。疲れた体をなんとか動かして、二人の待つステージにむかって走る。</p><p>『言えちゃうよ、なんだって　ケンカして、褒めあって』</p><p>『「キミ」と競い合って　ガンバってこれたんだよ』</p><p>　モニターの中では、虎姫と紗雪が向かい合って歌っていた。走りながら、彼女がプリパラチェンジする姿を、晶子も見ていた。</p><p>「とらこちゃん、すごいがお……！」</p><p>　虎姫の決意を、晶子も感じていた。彼女の声は甘いだけでなく、今は優しく、それでいて意志に満ちた響きだった。</p><p>　『がんばれ』『待ってるよ』『そばにいるよ』、虎姫と紗雪のそんな思いが、胸に流れ込んでくる。それが、晶子の足を動かす力になる。</p><p>「あたしも、やりきらなきゃ！　行くって、決めたんだ！」</p><p>『おもうようにいかなくて、落ち込んじゃうときだって』</p><p>　晶子も、彼女たちに応えるように、声を張り上げる。自分が今、そこに向かっていると。絶対にたどり着くと。その気持ちが届くように、叫ぶように歌う。</p><p>『「ワタシ」を笑顔にしてくれるアイドル』</p><p>（二人は、やっぱりアイドルだ）</p><p>　晶子は息を切らし、天を仰ぎながら、なおも走る。</p><p>（とらこちゃんは、かわいくて、お姫様みたいで、強くて、あたしだったらへこたれちゃうような時でも、がんばれる子。ぱんてらちゃんは、頭が良くて、かっこよくて、でもちょっと子供っぽいところもあって。突っ走っちゃうあたしを助けてくれる。二人とも、あたしのアイドルなんだ）</p><p>（あたしも、二人みたいになれるかな？　ううん、なれないだろうな）</p><p>　横目で映し出されるライブを見ながら、なおも晶子は駆ける。</p><p>　アイドルになれない。何者にもなれない。いつからか晶子に重くのしかかっていた言葉。せぃなにも、ゆきみにも言われた言葉。晶子はその言葉が、なんとなく嫌いだった。</p><p>（でも、今ならわかる。あたしは、アイドルにはなれない。なれなくてもいい！）</p><p>『知らなかったよ』</p><p>『だれかのこと』</p><p>　ライブ会場の二人が、カメラに向かって手を伸ばし、懸命に歌っている。</p><p>『出会うまでは』</p><p>『応援できるって』</p><p>（二人に応援してもらって、だからここまでこれたんだ。きっと、これからも辛い事も苦しいこともある。でも、二人となら超えていける。超えてみせる！）</p><p>　晶子も、空に向かって手を伸ばす。そうすれば、空間さえも超えて、二人の手を握れる気がした。三人で、声をそろえて、歌う。</p><p>『とびっきりのPresent　贈りあったんだ、きれいな宝石を』</p><p>　――あたしも。</p><p>　――私も。</p><p>　――ライ子ちゃんにもらったよ。たくさんのキラキラを。</p><p>　二人の声が聞こえた。気のせいだったのかもしれないが、晶子は確かにその言葉を聞いた。</p><p>（そっか……。ほんとに、二人も同じ気持ちなんだ！）</p><p>　足が痛い。関節が悲鳴をあげる。汗が止まらず、呼吸は苦しい。今にも倒れそうだ。なのに、笑ってしまう。うれしくて、うれしくて、泣きながら笑ってしまう。</p><p>（それなら、あたし、どこまででも走れる！　あたしのアイドルが、あたしを待ってる！）</p><p>『いろんなエピソード！思い出そうね　チョットずつ進んできたんだ』</p><p>　二人と過ごした思い出が、晶子の背中を押す。</p><p>ドリームシアターステージは、もうすぐそこまで来ていた。</p><p>『だから　前に　夢に近づいたって言える』</p><p>（あたしの夢に、あたしのアイドルに……！）</p><p>　最後の階段を駆け上り、建物の中を走り抜け、ステージへと続くドアに手をかけようとした。</p><p>「ひゃっ」</p><p>　足がもつれ、晶子は派手に転んでしまった。もんどりうって、ドアの前にうつぶせに倒れ込む。膝をぶつけた。腕をすりむいた。晶子のコーデはしわだらけになって、よく揺れる尻尾がとれかかっていた。</p><p>　なんとか体を起こして、ドアに手を伸ばしながら、晶子の中で、過去の光景がよみがえる。</p><p>（予選の二回戦のとき、サイリウムチェンジのところで転んじゃって、二人に助けてもらったっけ）</p><p>『いつかきっと！って想いをパキりあった』</p><p>　気持ちだけでめちゃくちゃに疾走してきたからか、本当に足が動かない。腕の力で、上半身だけを起こして、なんとかドアノブをつかむ。</p><p>（その後も、せぃなちゃんに言われて泣いちゃったあたしのかわりに、二人が怒ってくれた。あたしは、支えられてばっかりだった……）</p><p>『ワタシたちと…叶えよう、これから！』</p><p>　会場から、二人の声が聞こえる。あそこに、行きたいんだ。キラキラに輝く、二人の真ん中に。だから、自分で立ち上がらなきゃ！</p><p>「アイドルに、なれないとか、関係ない……！　二人が、あたしを待ってる……！」</p><p>　クローゼットのようにも見える、重厚なステージのドア。すがりつくように、ぼろぼろの体を引き起こして、晶子は吼えた。</p><p>「あたしも、二人が大好きだに……離したくない、離れたくない、もっといっしょにいたい！　二人とだから、二人のためなら！　辛いことも乗り越えられる！」</p><p>　晶子の瞳に星が灯る。</p><p>「だから、あたしは、ここにいる！」</p><p>　扉を、開け放つ。</p><p>　サイリウムと、スポットライトと、全てのまぶしい光が、晶子を照らす。</p><p>ありったけの声で、歌う。</p><p>「み～んながちがうカラーでがんばって輝いたから」</p><p>　伴奏が消える。観客席から、ステージじゅうに声を響かせる。マイクがなくたって、ぜんぜんへいきだ。ここには、『狩るねーじ』の三人が揃っているんだから。</p><p>虎姫が、口元を両手で押さえ、涙をこらえていた。紗雪はその隣で、にっかり笑って晶子にサムズアップした。</p><p>「今日が…宝石箱になったんだ！」</p><p>　いくよ、とらこ。紗雪の口が動くと、虎姫が頷いた。二人が声を合わせて、宣言する。</p><p>「メイキングドラマ、スイッチオン！」</p><p>&nbsp;</p><p>　その瞬間、世界が銀色の光に満ちた。</p><p>　眩しくて目を閉じた晶子の眼前には、広大な空が一面に広がっていた。正確には、地面に薄く水が張って、空をきれいに反射していたのだ。</p><p>　ステージの上だけでなく、観客たちのいる場所までも、すべてがメイキングドラマ空間に取り込まれていた。</p><p>「きれい！」「こんなメイキングドラマ初めて！」</p><p>『うわぁ、すっごいがお！』</p><p>　観客たちと同様、晶子も思わず念話で驚くと、遠くから紗雪と虎姫が飛んできた。薄い金色の羽を生やし、空中を飛び回る二人。</p><p>『さぁ、ライ子！』</p><p>『ライ子ちゃんも、飛んで！』</p><p>　見渡すかぎり広大で、キラキラした空間に、晶子は助走をつけて、飛び出す。</p><p>　彼女にも同じように大きな羽が生え、空に浮かび上がった。</p><p>『来たよ！　あたし、来たよ！　ぱんてらちゃん、とらこちゃん！』</p><p>　そのままの勢いで、晶子は二人に抱きつく。</p><p>『二人の声が聞こえたがお！　だから、ここまでこれたがお！』</p><p>　涙の粒を空中にこぼしながら、二人に抱きとめられる晶子。</p><p>『ほんとに……泣き虫なんだから……♪』</p><p>　晶子を抱きしめる虎姫の姿は、いつのまにかチェンジする前の幼い姿に戻っていた。</p><p>『ライ子ちゃんのやりたがってたメイキングドラマ、作ってみたんだ。ここならできると思って……どうかな？』</p><p>　紗雪は晶子の髪を撫で、手で示して銀色の大空間を見せた。晶子は何度も頷いて、</p><p>『うん、すっごく素敵がお……あたし、また二人にありがとうって言わなきゃいけないことが増えちゃったがお』</p><p>　目の端についた涙をぬぐった。紗雪と虎姫は、晶子の両側から手をさしのべる。</p><p>『私たちもだよ。ライ子……いっぱい、ありがとうって。ごめんねって言いたくて』</p><p>　二人の手をとって、晶子は三人で空に舞い上がる。白銀の空間を自由に飛び回り、笑う。</p><p>『あの時、チームを抜けるなんて言って……ごめんね。あたしは……自分のやりたいことから、逃げてたの』</p><p>『あの時、解散するって言ったライ子ちゃんを引き止められなかった。私の、覚悟のなさが……ライ子ちゃんを傷つけることになった。ごめんね』</p><p>　二人の言葉に首を横に振って、晶子は答える。</p><p>『ううん、いいの……いいがお！　あたしも、あの時……プリパラが楽しくなくなっちゃって、自分がわからなくなってた。でも、今はわかった、自分がやりたいことが！』</p><p>　キラキラを振りまきながら、空へと駆け上がる。</p><p>『あたしは、大好きな二人と……あたしのアイドルと、いっしょにいたいがお！　自分がアイドルになれなくたって……』</p><p>『それは違うよ』</p><p>　紗雪は、晶子の言葉を遮った。</p><p>『うん、ライ子ちゃんは……なんにもわかってない』</p><p>『がお？』</p><p>　くすくす笑いながら、二人は晶子を再び抱きしめた。</p><p>『まあ、わかってなかったのは、お互い様なんだけどね』</p><p>『そうね……♪　三人だから、全力以上が出せる。最高に楽しい……ライブができる』</p><p>『私だけじゃ、結果以外のものに誇りを見つけることができなかった。自分の楽しいって気持ちにも、ちゃんと向き合えなかった』　</p><p>『あたしだけじゃ、自分の気持ちに……ずっと、蓋をしたままだった。自分の……いろんな部分を受け入れて、全力で楽しむことも……できなかった』</p><p>　二人は、今まで口にしなかった思いを語る。変わったこと、変えられたこと、変えてもらったこと。全て、三人でなければできなかったことだ。</p><p>『びっくりするぐらいまっすぐで、笑っちゃうほどキラキラして』</p><p>『純粋で、一途で、ちょっと突っ走っちゃうけど、何をやっても楽しそうで』</p><p>『そんなあなたに』</p><p>『私は憧れたんだ』</p><p>　そうか、あたしは……あたしも。</p><p>　晶子は息を飲む。</p><p>『君は』</p><p>『あなたは』</p><p>　二人の声が揃う。</p><p>『私たちのアイドルなんだ！』</p><p>　メイキングドラマのナビゲーションが、舞い上がるように示している。高い空を、どこまでも。</p><p>「さぁ、羽ばたいて♪」</p><p>「私たちの、アイドル！」</p><p>　光の射す方へ、晶子はぐんぐんと高度をあげていく。風を切る感触が気持ちいい。二人も、晶子のあとを追って上昇していく。</p><p>（二人の、アイドル。みんなのアイドルにはなれなくても、二人のアイドルには、なれてたのかな。うれしいな、うれしいな！）</p><p>　雲を抜け、空間を上昇しきると、そこは満点の星空だった。昼から夜への場面転換が行われたのだ。その下でポーズを決めて、メイキングドラマは終了となる。</p><p>　晶子は空中で体をひねり、観客席とカメラに向かってポーズを決めようとした。</p><p>　ぐらり、と、突然視界が傾く。</p><p>見えない足場を踏み外したように、晶子の体勢が崩れる。落ちていく。</p><p>『ライ子ちゃんっ！』</p><p>　虎姫の伸ばした手も空を切る。高くまで飛び上がっていた分、落下する時のスピードも速い。晶子は体勢を立て直せない。人間は、空を飛ぶようにはできていないのだ。気が動転してしまえば、再び飛び上がるのは容易なことではない。ましてや、晶子の疲れ切った体では。</p><p>（やだ、落ちる、怖い！　どうしよ、どうしよ！）</p><p>　このままいけば、地面にぶつかる。せっかく、チームがもとにもどったのに。地面にぶつかったら痛いかな。死んじゃうかな。いやだな。</p><p>　混乱する思考の中で、変に冷静な部分が、そんなことを考えていた。仰向けで、空を見上げたまま、落ちていく……晶子の意識が遠のく。</p><p>「諦めないで！」</p><p>　力が抜けて閉じかけた目が、下からの声で見開かれた。それは、晶子のよく知った声。こんなところにいるはずのない人の声。</p><p>「お、おかーさん？！」</p><p>　仰向けのまま落ちていく晶子に、下の様子は見えない。しかし、その声を聴き間違えるはずもなかった。</p><p>　ふわりと、晶子の落下が止まる。観客たちまであと三十センチというところだった。ステージの安全装置が働いた結果だが、晶子には母の声が自分を受け止めてくれたように思えた。</p><p>なんとか心を落ち着け、母の声の聞こえた先を見ようと、空中で体をひねる。下にはたくさんのアイドルが晶子を見上げていて、誰の声かはわからなかった。</p><p>（やっぱり気のせいかな。おかーさんがここにいるはずないもの）</p><p>　再び上昇しようと、上を向いた、その時。</p><p>「行きなさい。あなたは、なんにでもなれる！」</p><p>　今度ははっきりと、晶子の耳にその声が届いた。そして晶子が振り向く前に、手に何枚かのプリチケを握らせ、背中を押した。暖かな、小さな手だった。</p><p>「……うんっ！」</p><p>　晶子は力強く応えた。もう何も、彼女を縛るものはない。どこまでも飛んで行けそうな気がする。</p><p>　雲を突き抜け、星空の彼方へ。落ちていくときよりも、ずっと速く、空中を駆ける。</p><p>『ぱんてらちゃん、とらこちゃん、これ！』</p><p>　渡されたプリチケを、紗雪と虎姫に渡した。</p><p>『見たことないコーデね』</p><p>『でも、素敵……♪　どうしたの、これ？』</p><p>　晶子は照れくさそうに、自分の分のものを二人に見せて言った。</p><p>『あたしが、つくったがお！　三人で、お揃いのコーデを着るのが、夢だったから……今ここで着れないかな？』</p><p>　虎姫と晶子が、紗雪を見る。紗雪は、にやりと笑って、頷いた。</p><p>『……任せなさい！』</p><p>　彼女が空間に指を滑らせると、『デバッグモード』と書かれたウィンドウが表示される。同時に、グランプリのレギュレーションに違反する旨の警告も表示されたが、紗雪はそれを目にもとめずに消した。</p><p>『ま、スコアが記録されなくなっちゃうけど、いいよね』</p><p>　そのウィンドウを弄ると、空間にチケットの読み取り口が現れる。</p><p>「さぁ、いくよ！　コーデチェンジ、スタート！」</p><p>　三人は、現れた読み取り口にプリチケをかざし、コーデを身にまとう。</p><p>「メイキングドラマ中に、コーデチェンジ？！」「はじめて見たー！」「コーデかっこいいー！」「レギュレーション違反では？！」</p><p>　観客たちの歓声を受けながら、狩るねーじは新しいコーデに着替えた。今回ばかりは、本当にレギュレーション違反なのだが。</p><p>『うん、やっぱり、二人とも似合ってるがお！』</p><p>　晶子の作ってきた『狩るねーじハンターコーデ』は、お腹を大胆に露出したチューブトップに、短いジャケット、ボトムスはスカートで、全体にアニマル柄があしらわれていた。ヘアアクセには、晶子のトレードマークの猫耳。紗雪は白と水色、虎姫はピンクと黒、そして晶子は茶色と黒をそれぞれ基調にした、狩るねーじらしいアグレッシブで野性的なコーデだ。</p><p>『これ……とっても素敵……♪』</p><p>『みんなで、おそろいのコーデが着れて……あたし、うれしいがお！』</p><p>『誰かの借り物じゃない、オリジナルのコーデだね。かっこいい！』</p><p>　三人は、メイキングドラマの締めに向けて、雲の上の星空を飛ぶ。晶子が体勢を崩した高さまで。そして、揃いのコーデの裾をひらめかせ、声をそろえる。</p><p>「羽ばたけ！」</p><p>　カメラの前に、紗雪と虎姫がカットインする。二人とハイタッチしながら、晶子がその間を飛んでいく。</p><p>「世界の中心へ！」</p><p>　星空をバックに、くるりと反転した晶子が、二人の間に戻ってくる。視線をあわせ、三人で満面の笑顔になった。</p><p>「アンチェイン・マイ・ハート！」</p><p>　そろってカメラに手を伸ばせば、観客から一層大きな歓声があがった。</p><p>「ライ子ちゃん素敵！」「とらこちゃんサイコー！」「ぱんてらお姉さまー！！」「狩るねーじ、ずっと待ってたよ！」</p><p>　消えるメイキングドラマ空間にあわせて、ステージに戻ってきた三人は、並んでサイリウムチェンジする。エールを送る観客たちの動きが、サイリウムの海をうねらせる。</p><p>（この景色が、また三人で見られて、よかった）</p><p>　紗雪は思う。</p><p>（この三人で、また並んでライブができて、うれしい）</p><p>　虎姫は思う。</p><p>（この二人となら、なんだってできる！）</p><p>　晶子は思う。きっと、全員が同じ気持ちなんだ。</p><p>『いろんなエピソード！思い出イッパイ』</p><p>　中心の晶子が、両隣の二人と手をつなぐ。汗が、スポットライトを受けてキラキラと反射した。</p><p>『ぜんぶギュッと抱きしめたなら』</p><p>　虎姫は、彼女の手を握り返す。虎姫をここまで引っ張ってくれた、晶子の手。</p><p>『キミと』</p><p>『胸に』</p><p>『ワタシ』</p><p>　ステージの中央に向かって、三人で向かい合う。互いに手を差し伸べ、自らの胸に手をあてる。</p><p>『光る虹色の<font face="Century">Jewel</font>』</p><p>　クライマックスに向けて、せり上がっていくステージの上で、晶子は全力で踊る。</p><p>　右を見れば、紗雪がいる。目が合うと、ウィンクしてくれた。</p><p>　左を見れば、虎姫がいる。歌うのが、とっても楽しそう。</p><p>　そして、その二人の中心に、自分がいる。</p><p>（ああ、あたしは、この瞬間のために……！）</p><p>『いつかきっと！って想いをパキりあって　つくる未来』　</p><p>　曲が終わる。次が最後のフレーズだ。紗雪と虎姫が、晶子を見つめている。</p><p>「いっしょにいくんだ！」</p><p>　この『<font face="Century">Growin</font>’&nbsp;Jewel!<font face="ＭＳ 明朝">』の最後のフレーズは、歌ってきたアイドルによって違っている。ここに、決まった歌詞はないのだ。</font></p><p>　そこで歌う言葉は、晶子の中ではもうとっくに決まっていた。</p><p>　ずっとずっと、言いたかったこと。</p><p>&nbsp;</p><p>「ありがとう！　プリパラ！！」</p><p>&nbsp;</p><p>　三つの星が、ステージの中心で、いつまでも輝いていた。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/carnage-pri/entry-12276299591.html</link>
<pubDate>Sat, 20 May 2017 11:29:25 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>狩るねーじ　ライブシーン②</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　鰍沢せぃなは、チームの二人をつれて観客席に来ていた。</p><p>「あ、せぃなちゃん！　トモチケパキって！」「レイナちゃん、マイナちゃんもすごかった！」「ライブかっこよかったよ！」「もう優勝確定じゃない？」「ウチもミステリーレアほしいわぁ」</p><p>　観客の反応が、彼女たちのライブの出来を物語っていた。完璧に近いパフォーマンスに、今では珍しいモノクロの高レアリティ、ミステリーレアのコーデ。話題性は十分だった。</p><p>「せぃなさん、次はあの子たちの番ですね」</p><p>　メンバーがせぃなに声をかけた。彼女たち、レイナとマイナは、せぃなの元の学校の後輩であり、小学校のころからのプリパラ仲間であった。中学でも、三人でプリパラをやっているが、転校によりプリパラの外ではあえなくなってしまった。</p><p>せぃなが憮然とした面持ちでステージを眺めていると、狩るねーじの名前が呼ばれた。</p><p>「あー、あのチェンジ失敗した子たち？」「ちょっと残念だったよね」「私はけっこう好きだけど」「次は大丈夫かしら？」「あたしもう帰ろうかな」</p><p>　観客は、年端もいかない女の子たちだ。期待の低下が、露骨に感じられる。せぃなは鼻を鳴らした。もっと、見どころのある子だったら良かったのに。</p><p>彼女たちが登場するであろう、ステージ袖を見ていると、突然照明が落ちた。</p><p>　せぃなは少し驚いた。ステージの構成を変えてきたというのか。ここから良いスコアを取るための、苦肉の策といったところだろうか。しかし彼女の予想は、ここから覆されることとなる。</p><p>&nbsp;</p><p>『目一杯の<font face="Century">Smiling!&nbsp;</font><font face="ＭＳ 明朝">精一杯に</font><font face="Century">Shining!</font><font face="ＭＳ 明朝">　</font>どんなキミでも　それだけでスター』</p><p>　真っ暗な中、とらこが無音の中サビの一節を歌い上げた。会場が息を飲んだ。一瞬で空気が変わった。</p><p>『最大級の<font face="Century">Dreaming!&nbsp;</font>最高のメイキングドラマ　始めよう<font face="Century">Welcome&nbsp;to&nbsp;New&nbsp;World&nbsp;</font><font face="ＭＳ 明朝">プリパラ！</font>』</p><p>　余韻の後、とらこが指を鳴らすと、イントロが始まった。観客がどよめく。</p><p>「曲が違う？！」「そんなのアリだっけ？」</p><p>　途中で曲目を変えるのはレギュレーション違反だ。別の曲が始まれば驚くのも当然だろう。だが、せぃなはわかっていた。</p><p>　これは、アレンジが違うのだ。メロディラインは『<font face="Century">Brand&nbsp;</font>New&nbsp;Dreamer<font face="ＭＳ 明朝">』</font>のままだが、別の曲とミックスされてダンスミュージック調になっている。せぃなは訝しんだ。</p><p>（まさか、新しくミックスしたの？　この短時間で？）</p><p>　チームメイトの音楽担当、マイナが何かに気づいたように、彼女に耳打ちした。</p><p>「せぃなちゃん、これきっとリアルタイムアレンジよ。作曲AI<font face="ＭＳ 明朝">にその場で指示出して、ステージ上でアレンジを変えるの。すごいわねぇ、誰がやってるのかしら」</font></p><p>　驚いているうちに、曲の盛り上がりに合わせて照明がステージを照らし、狩るねーじの三人の姿が映し出される。その衣装に、会場は驚きに包まれた。</p><p>「何、あのコーデ？！」「なんで、あのコーデをあの子たちが？！」</p><p>　そのコーデを知らぬ者はそのきらびやかなゴールドの輝きに、知る者はあるはずのない物がここにあることに、声をあげた。</p><p>「レイナちゃん、あれって……」</p><p>　マイナが、困惑気味に衣装担当のレイナに聞いた。</p><p>「……左側のとらこが着ているのが、『スーパーサイリウムふわりコーデ』」</p><p>　とらこの体を覆う豪奢なコーデは、装飾過剰でありながらナチュラルさを纏う、『神アイドルの世代』の傑作コーデ。その名前に刻まれたアイドルの、専用のコーデだったはずだ。</p><p>おそらくレプリカだろうが、それが生産されたことは一度しかない。このコーデを着たアイドルのチームであるトリコロール、その結成十周年記念式典だ。チームのリーダーであるアイドルの意向によって、ごく一部のセレブたちに配られたもの。現代では莫大なプレミア価格がついている。</p><p>「じゃあ、あのぱんてらとかいう子が着ているのは、『スーパーサイリウムひびきコーデ』？！」</p><p>とらこの反対側、ぱんてらが着ているのは、とらこのものと同じくトリコロールのスーパーサイリウムコーデのレプリカだ。こちらのほうが生産数が少なく、コレクターの間で人気が高いため、とらこのもの以上の価格がついている。</p><p>　滅多に見られないコーデの登場に、会場は驚愕と、同時にブーイングも巻き起こった。</p><p>「それはひびき様のコーデよ！」「ふわりちゃんのコーデ、なんで着てるの？」</p><p>　当然だ。せぃなは思う。レアリティの高いコーデは、ただ着ればよいというものではない。それも特定のアイドルと結びついたコーデは、そのアイドルのファンを敵に回しやすい。</p><p>「無謀だわ、私たち『<font face="Century">Rugged&nbsp;Girls</font><font face="ＭＳ 明朝">』</font>だって、このコーデを中心に演出して、やっとミステリーレアに『着られる』状態から脱出できたのに」</p><p>「どっからあれを仕入れたか知らないけど、逆効果ですねこれは……リスクが高すぎる」</p><p>　せぃなのチームメイト二人は、観客たちと同様、冷ややかにステージを見ていた。</p><p>　狩るねーじは、そんな声をよそに、イントロにあわせて踊っている。とらことぱんてらを前に、先程失敗したライオンさん……獅子吼晶子を後ろに下げていた。</p><p>（ステージの構成を変えたのはこのためかしら）</p><p>　せぃなは僅かに失望して、観客の様子をさぐろうと周囲を見回す。</p><p>　すると、曲が進むにつれて、少しずつ反応が変わっているのに気がつく。</p><p>「ねえ、あのコーデ、よく見ると似合ってない？」「ひびき様のやつと違うのかな」「不思議！　なんだか、あの二人のためのコーデみたい！」</p><p>　慌ててステージに視線を戻す。とらことぱんてら、二人の動きに。レイナとマイナも同じようにしていた。</p><p>『ぐーんと　背伸びの今日　ちょっとつまんない　昨日は　扉　開けばアップデート！』</p><p>　歌いながら、ステージに手をふる虎姫。観客たちもサイリウムを振り返している。</p><p>「確かに……特に、とらこの方。あの所作、たたずまい、あのコーデの『別側面』を引き出しています」</p><p>　しげしげととらこの動きをたどるレイナ。</p><p>「どういうこと？」</p><p>「あのコーデの持ち主だったアイドル……緑風ふわり。彼女とそのコーデの魅力は、清楚さと力強さ。ダンスは比較的動きが多く、活力あふれるものでした。対して、とらこの動きは、それとは真逆です」</p><p>「まるでお姫様ね」マイナがうっとりと見つめた。</p><p>「そう、お姫様のように控えめで美しい動作。それをごく自然にダンスの中で行っている……そういえば、元はふわりも、『プリンセス候補』と呼ばれたことがあった……」</p><p>「またレイナちゃんのプリパラオタク話が始まったわぁ」</p><p>　マイナに長広舌をたしなめられると、熱中していたレイナは、喋り足りなそうな顔で要約した。</p><p>「ええっと、要は……とらこちゃんは、あのコーデの魅力を、『お姫様風なのにナチュラル』という形でなく、『ナチュラルにお姫様』という形で表現しているってことです。これはかなり上級テクニックですよ。天性の才能ってやつかなあ……」</p><p>せぃなの目の前のステージで、とらこは伝説のコーデ自分のために作られたもののように着こなしていた。</p><p>「ていうか、ナチュラルにお姫様みたいに振る舞えるって、あの子は一体……」</p><p>　このチームのことを、侮っていたかもしれない。ぞくり、とせぃなの背筋が疼いた。</p><p>『ずっと夢見た世界　ちょっとふわふわしちゃうくらい胸が　高鳴ってる』</p><p>　曲はぱんてらの歌唱パートに移った。</p><p>　驚くべきことに、彼女もまた、身の丈に合わないはずのスーパーサイリウムコーデを、着こなしていた。レイナは首をひねる。</p><p>「うーん、着こなしているなあ。そんな簡単にモノにできるはずはないんですけど……悔しいなあ、どんな手を使ったのか……」</p><p>　ぱんてらのボーイッシュな髪型と、コーデの王子様のような雰囲気はたしかに合っている。しかし、天性の才能がなければ、堂々とあのコーデを着こなすことは難しいはずだ。</p><p>　きびきびとステップを踏むぱんてらを観察していたせぃな。ステージ上のぱんてらが彼女の方を向き、目があった。</p><p>　瞬間、彼女は気づき、思わず声をあげた。チームメイトの二人が彼女のほうを向く。</p><p>「あのコーデ、違和感があったんだ。彼女は、あのコーデを着崩している」</p><p>「コーデを、着崩す？！」</p><p>　ぱんてらはジャケットの前のボタンを開け、シャツをはだけていた。コーデの着崩すという、発想の飛躍。</p><p>「胸のボタンを開けただけで、あの伝説のアイドルのコーデが、あの子のためにあつらえたコーデみたいに見えるわぁ、大発見ね」</p><p>　マイナは驚きに頬に両手をあてる。</p><p>　はだけた胸元が、かっちりとしたコーデの印象を、倒錯的な色気すらあるものに書き換える。最初以上の黄色い歓声が上がった。</p><p>「そんな方法があったとは……盲点でした。とらこちゃんが才能で着こなすなら、ぱんてらちゃんは工夫で着こなすということですかねぇ」</p><p>　プリパラオタクと呼ばれたレイナですらも舌を巻いている。いつのまにか、狩るねーじのステージから目が離せないでいる。</p><p>　コーデとダンスで観客の視線を集めたとらことぱんてら。並んでいた二人が、すっと両側に身を引いた。</p><p>『手と手　繋いだら　始まるこんなストーリー』</p><p>　せぃなの視界に、晶子が飛び込んできた。歌詞にあわせるように二人に手をさしのべられて、間からスポットライトのもとに躍り出たのだ。彼女は他の二人をさしおいて、センターに立った。</p><p>「あ、あ、あのコーデはっ……？！」</p><p>　レイナが声を裏返らせた。</p><p>　のびやかに踊る彼女の肢体を彩るのは、小麦色の肌に映える白と金。幾重にも重なった純白の生地と、エキゾチックな金の装飾。そこにあざやかな緑色の宝石がちりばめられたコーデ。</p><p>「まさか、『エメラルドエデンコーデ』……？　『プリパラの女神ジュリィ』がアイドルとしてライブをする時に着たという、設定上にしか存在しないと言われていたコーデ……実在していたの？！」</p><p>　全身を躍動させる彼女。曲の抑揚にあわせて、あるいは曲を動きに合わさせ、手の先から、脚の先から、瞳から、キラキラした何かを振りまいて。</p><p>「すっごいキラキラしてる！」「あんなの見たことない！」「狩るねーじ、なんかスゴくない？」</p><p>　構成の変更。アレンジの変更。その上、高レアリティコーデを着こなしてみせた。</p><p>（あの子たちに、狩るねーじにそれほどのポテンシャルがあったとは）</p><p>　先程の失敗ライブを見た全ての観客が、驚愕の連続を味わっていた。狩るねーじは、空気を完全に喰らいつつあった。</p><p>　ステージ上の三人のうち、とらことぱんてらは従来の振り付けをなぞりながら、そしてセンターの晶子は、自由に、大胆に、ステージの上を跳ね回る。アドリブだろう。正確ではないが、見るものを引きつける動きだ。歓喜する動物の求愛の舞のような。</p><p>「ステージに立つことの、喜び……」</p><p>　せぃなは口走っていた。その純粋な喜びが、彼女のダンスから感じられた。</p><p>「そ、それだ、それです！」</p><p>　目を奪われていたレイナが、せぃなのつぶやきで何かを思い出したように叫んだ。</p><p>「うちの母は、『ジュリィのライブを見た』って言うんです。小さい頃から何度も聞いて、与太話だと思ってたんですが……そのライブで、ジュリィは言ったんですよ」</p><p>「……なんて？」</p><p>　興奮気味でまくしたてるレイナに、せぃなは尋ねる。</p><p>「『アイドルって、楽しい！』って……言ったんです！　あのコーデを着て！」</p><p>『もっともっと高く高く　せーのっでジャンプ！』</p><p>　晶子は、全身からキラキラを振りまいていた。喜びを振りまいていた。それがせぃなにもわかった。</p><p>　あの田舎者の、野暮ったい女の子が。今、確実に自分たちよりも、注目を集めていた。</p><p>「全てを侮ってた。あの子のポテンシャルも、それを最大に引き出す他の二人も、すごい」</p><p>　周到な計算だ。構成もこの登場シーンのために。とらことぱんてらのコーデは、単にレアさで目を引くためでなく、晶子にこのコーデを着せたときに、自分たちが釣り合うようにと、選ばれたものだったのだ。</p><p>『最大級の挑戦　最高の神アイドルへ　叶えよう　夢の続き　Brand&nbsp;New&nbsp;Dreamer』</p><p>　曲が佳境に入る。歩き始めた三人がランウェイを踏みしめるたび、光の粒子が舞い上がる。とらこが、ぱんてらが、観客に視線を向けるたびに、歓声が上がる。晶子のスキップにあわせて、サイリウムの海が揺れる。</p><p>　その後はメイキングドラマだ。今回も、『がるがるガールズトーク』はつつがなく成功した。ここからが、本番。</p><p>ドラマの終わりを告げる、銀色の光の幕。それが終われば、立ち上がってサイリウムチェンジだ。前回のライブで失敗したところであり、せぃな達を含む観客は固唾をのんでその行方を見守っていた。</p><p>その光の帳をくぐって、一人の女の子がステージに立った。晶子だ。女神のような出で立ち。通常現れるはずのないタイミングでの登場。後光のように射す銀幕の光。輝きとともに、一人で歌い上げる意志のこもった強い瞳。大きく息を吸い、マイクを構えた。</p><p>『限界なんてありえない！』</p><p>力強い声が会場をふるわせ、観客たちの目線を奪った瞬間、銀色の光が晴れた。そこにとらことぱんてらはおらず、ステージには晶子一人。同時に奥から二筋の光が放たれた。</p><p>『超えていくよ』</p><p>　はじけ飛んだ光の行く先、ステージの外。スポットライトを動かしているめが姉ぇの横。もう一方のスポットライトに照らされて、そこにぱんてらがいた。</p><p>『きっと　どこまでも』</p><p>　そしてもう一方にはとらこが。ステージの外から、晶子と視線を合わせながら歌っている。今まで見たことのない演出に、観客の興奮は最高潮に達した。</p><p>「すごい！」「あの一瞬であそこに移動を？！」「カッコイイ！」「ステージの外で歌っていいの？！」　「レギュレーション違反では？！」</p><p>すかさず、ステージのほうから、ぱぁん、とクラッカーのような破裂音。光の紙ふぶきが舞った。</p><p>音につられて観客たちが再びステージのほうを見ると、三人そろった狩るねーじがポーズを決めている。サイリウムチェンジの構えだ。</p><p>『サイリウムチェーンジッ！』</p><p>　完璧なタイミングでマイクを掲げる。スーパーサイリウムコーデを着た二人は、外観はそのままに金の光を発し、晶子の『エメラルドエデンコーデ』は、だれもが映像でしか見たことのない『神コーデ』へと変化した。純白のドレスのようなそれは、三人の中でもひときわ輝きを放っていた。</p><p>『繫いできた&nbsp;Friendship&nbsp;<font face="ＭＳ 明朝">続いていくよ　</font><font face="Century">Dreaming</font>』</p><p>『もっと高く高くトップ目指して』</p><p>　踊る三人にあわせて、ステージがせりあがっていく。すでに、会場の空気は完全に狩るねーじのものだ。とらこの甘い声に、ぱんてらの凛とした声に、晶子の力強い声に、観客たちは熱狂していた。</p><p>『「パキンと半分こ」から始めよう』</p><p>『Brand&nbsp;New&nbsp;World&nbsp;きらめく世界へ！！』</p><p>　腕を掲げ、ぐっと握る。三人で並んで、ステップを踏む。</p><p>『最大級のDreaming!&nbsp;最高のメイキングドラマ』</p><p>『始めようWelcome&nbsp;to&nbsp;New&nbsp;World&nbsp;プリパラ！』</p><p>　サビを歌い上げ、曲が終わる。ポーズを決める三人。割れんばかりの拍手と歓声が、会場を埋め尽くす。</p><p>　すべてを忘れてステージに見入っていたせぃなもそうだ。自然と手をたたき、声をあげ、そうしている自分に気が付くと、ぎりっと歯噛みした。</p><p>　舞台上では、狩るねーじの三人が抱き合っていた。</p><p>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/carnage-pri/entry-12241785006.html</link>
<pubDate>Thu, 26 Jan 2017 21:38:33 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>狩るねーじ　ライブシーン①</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　イントロ、メンバーアピール、ダンス、ランウェイ、メイキングドラマ、サイリウムチェンジ。プリパラにおけるライブを構成する要素を、卒なくひとつずつこなした狩るねーじの三人は、グランプリ予選第一回戦でまずまずの成績を収めた。</p><p>「目立ったミスなし、振り付けも正確、メイキングドラマも好評。うむうむ、上首尾であろう」</p><p>　と紗雪がにんまりする。二回戦までのインターバルで、自分たちのライブの映像を見返しながら、三人は控室で休憩していた。</p><p>「おっきなステージでのライブ、すっごく楽しかったがお！　スポットライトのめが姉ぇさんまでしっかり見えたがお」</p><p>　晶子はまだ興奮さめやらぬようで、コーデの尻尾をゆらしながら虎姫にまとわりついている。その虎姫はといえば、ステージ上での堂々としたふるまいに対して、ここではいくぶん難しい顔をしていた。</p><p>「……ねえ、ほんとに、これでよかったのかしら……」</p><p>　どういうこと、と紗雪が聞き返す。練習を重ね、他のアイドルたちのステージを見て、彼女なりに思うところがあったのだろうか。</p><p>「……あたし、まだ『全力』を……出してないわ……」</p><p>「あのねえ、とらこ。前も言ったけど、『全部つっこむ』ことが必ずしも『全力でやる』ってことじゃないでしょ？」</p><p>　紗雪はそう彼女を諌めながら、しかし一方で少し反省もしていた。</p><p>『全力で勝つ楽しみを教えてやる』と豪語したわりに、グランプリ予選のライブ構成は、三人横並びのダンスを基本としたごくありきたりなもので、それゆえに虎姫に、他の二人に足並みを合わせることを要求したのだ。</p><p>　もちろん、練習期間の短さや、グランプリ予選の倍率を考えると、無難な構成でとりあえず本戦へのチケットを獲得するという紗雪の方針は決して間違ってはいないのだが。</p><p>「とらこ、私はあんたの才能とガッツを買ってるの。だから、あんたの『全力』を出す場所は、グランプリ本戦だと私は思う。だからここは、ちょっとだけ、私たちにあわせてくれるかな」</p><p>　普段は軽口や憎まれ口を叩きあう二人だが、こと勝負事において紗雪が真剣なのは虎姫もよく知っていたし、このライブの構成は三人で相談して決めたものだ。虎姫としても、そこに異論は無かった。</p><p>「まあ……好き勝手に歌うより……楽しかったから……いいけど」</p><p>　そしてそれも、偽らざる本心である。</p><p>「やっぱり？　とらこちゃんも楽しかった？　あたしも！　はやくあたしたちの番にならないかなあ」</p><p>　うきうきを隠せない晶子に紗雪と虎姫が苦笑していると、アナウンスが入った。</p><p>「次の出場者、狩るねーじのみなさんは、準備してくださーい」</p><p>　紗雪は端末を、虎姫は食べていたお菓子をしまい、控室を出る。廊下を抜け、舞台袖につくと、三人は声をひそめながら、円陣を組んだ。</p><p>「二人とも、一回戦はすごくいい感じだったよ。次も、この調子で」</p><p>「もちろんがお！」</p><p>「……まかせて♪」</p><p>　三つの手が重なり、小さく声をあわせる。紗雪は二人の目を見た。一週間前には他人同士だった三人。よくここまで形になったものだ。晶子と虎姫が、視線に気づいてうなずいた。</p><p>「狩るねーじ、ファイト、がおー」</p><p>「がおー！」</p><p>「……がおー」</p><p>　前の組が終わったようだ。司会のめが姉ぇが、狩るねーじの名前を告げる。</p><p>「続いてのチームは、なんと結成一週間！　肉食系アイドル三人のチーム、『狩るねーじ』です！　曲は、デビューして間もない彼女たちにぴったりの『<font face="Century">Brand&nbsp;</font>New&nbsp;Dreamer<font face="ＭＳ 明朝">』</font>！　では、はりきってどうぞ！」</p><p>ステージに躍り出た狩るねーじを、歓声が迎えた。</p><p>「始めて見るチーム、どんなライブするのかな？」「狩るねーじ、待ってたよ！」「ライ子ちゃんカワイイ！」「とらこちゃん素敵ー！」「なにあのお姉さま、超カッコイイ！」</p><p>評判は上々、観客受けも悪くないようだ。</p><p>コーデは、晶子が普段と同じ、黄緑色に尻尾のついたジャングルキングコーデ。紗雪と虎姫は、晶子の両脇に並んだときに見栄えがするので、色違いのヒョウ柄のコーデにしてある。紗雪はデニムの水色、虎姫はミルキーなピンク色だ。</p><p>三人が並んで、ポーズをとると一瞬の静寂ののち、イントロが流れ出す。</p><p>　紗雪は、空気が変わるのを感じた。この広い会場の全ての視線が、自分たち三人に集まっている。その感覚が皮膚に突き刺さり、しびれるような興奮がある。</p><p>『ぐーんと　背伸びの今日　ちょっとつまんない　昨日は　扉　開けばアップデート！』</p><p>　まずはそれぞれのソロパートから、メンバーアピールだ。虎姫の甘い声がステージに響き渡る。ステップも軽やかだ。ダンスは彼女の苦手分野だったが、なんとか克服したようだ。</p><p>人差し指を唇にあてて、小首をかしげてポーズをきめれば、歓声が上がる。このあたりは、さすが虎姫というところだ。</p><p>『ずっと夢見た世界　ちょっとふわふわしちゃうくらい胸が　高鳴ってる』</p><p>　晶子は相変わらず楽しそうだ。小さな体をめいっぱいに使って、跳ねるようにステップを踏んでいる。</p><p>紗雪は出会って以来、彼女のアイドルに夢中な姿に励まされてきた。彼女と虎姫が選んだ曲が、この『<font face="Century">Brand&nbsp;</font>New&nbsp;Dreamer<font face="ＭＳ 明朝">』</font>で、やけに納得したのを紗雪は覚えている。両手をかかげて、がおーとツメをつくってアピールする晶子。</p><p>『手と手　繋いだら　始まるこんなストーリー』</p><p>　紗雪は自分の体の軽さを感じる。練習したとおりに動く。声もよく出ている。オールグリーンだ。何も問題はない。なにより、三人で歌うと、楽しい。</p><p>紗雪もきりっとポーズを決め、黄色い声があがった。</p><p>『もっともっと高く高く　せーのっでジャンプ！』</p><p>チームランウェイが始める。手を振りながらランウェイを歩く三人。晶子は先頭に立ってスキップしている。全員がその先のステージにたどり着くと、紗雪の合図とともにメイキングドラマが展開される。</p><p>全員でつくって、何度も練習したメイキングドラマだ。今では念話もなしに、全員がしっかりと枕を投げ、枕に当たる。</p><p>「おやすみなさーい……」</p><p>　最後は床に寝っ転がってメイキングドラマが終わった。ここからサイリウムチェンジだ。コーデを華々しく光らせる、見せ場の一つ。寝転がった終了時の状態から体を起こす様子は、メイキングドラマ空間が終わるときの銀色の光にかき消される、はずだった。</p><p>「ひゃっ」</p><p>　声とともに、何かをぶつけたような、嫌な音がした。</p><p>　晶子が起き上がるのに失敗して、尻もちをついている。</p><p>まずい。</p><p>あわてて起こそうとする紗雪と虎姫。銀色の光が晴れる。次はサイリウムチェンジだ。定位置につかなければ。間に合わない。待て。なぜ助け起こしに行っている？これでは三人とも間に合わない。体が勝手に動いた。今はそんなことを考えている場合じゃない。晶子と紗雪の目が合った。泣きそうな目をしていた。照明が変わる。これにあわせてマイクを掲げ、チェンジをしなければならない。全員の反応が、一拍おくれた。まずい。サイリウムチェンジができなくなる！</p><p>　なんとか晶子も体勢を直し、三人で並んでマイクを掲げたものの、出遅れてしまいう。</p><p>　サイリウムチェンジは、規定の時間マイクを掲げなければならない。三人のコーデが変わらないままになってしまった。</p><p>　虎姫はつとめて平静に戻っていたが、晶子の表情は大きく動揺していた。</p><p>「あーあ、失敗かあ」「おしかったね」「ドンマイ！」「普通ここで失敗しないでしょ」</p><p>観客たちの声が、やけにはっきりと耳に届く気がする。紗雪は身震いした。</p><p>『まだ、終わってない！』</p><p>　その声をかき消すように、念話で他の二人によびかけ、目線をあわせる。二人はうなずくと、なんとかパフォーマンスを再開した。</p><p>　結果として最後まで踊りきったものの、観客の反応は一回戦に比べて芳しいものではなく、ステージから退場する足取りは重かった。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/carnage-pri/entry-12241784378.html</link>
<pubDate>Thu, 26 Jan 2017 21:36:43 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
