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<title>食べたり考えたり ーー タイとか日本とか</title>
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<description>タイの思い出や日々の食事や暮らしの中で感じたことを、気負わず書いています。料理の話が多めですが、だいたいは雑文です。</description>
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<title>タイ食紀行　第3話　酸味・発酵・匂い ― ナムプラーとカピの世界</title>
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タイ料理を初めて食べた人が、言葉に詰まる瞬間がある。「これは……何の匂いだろう」。それはしばしば、ナムプラーやカピに向けられる違和感だ。辛さや甘さは説明できても、匂いは説明しづらい。だが、英語やタイ語の食文化史を読み進めると、こここそがタイの食事の最深部だと分かってくる。ナムプラー（魚醤）やカピ（発酵エビペースト）は、料理を“完成させるため”に生まれた調味料ではない。それらはまず、保存のための技術だった。チャオプラヤ川流域や沿岸部では、魚や小エビは豊富に獲れる。だが、獲れた瞬間から腐敗が始まる。
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<dc:date>2026-08-05T15:41:03+09:00</dc:date>
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<title>ロティ・サイマイ ― 綿菓子を包むという発想</title>
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ロティ・サイマイは、初めて見ると少し戸惑う甘味だと思う。薄く焼いたロティの上に、色とりどりの綿菓子のようなものがのっている。見た目だけなら、子ども向けのおやつに見えるかもしれない。でも、実際に食べると、これはかなり完成度の高い甘味だと気づく。ロティ・サイマイは、アユタヤ周辺を中心に発展した菓子として知られている。サイマイと呼ばれる砂糖菓子は、糸のように引き伸ばした砂糖を束ねたもので、東南アジアや中東の砂糖加工文化とも地続きだ。それをロティで包んで食べるという発想が、タイらしい。甘さをただ足すので
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<dc:date>2026-07-31T13:25:43+09:00</dc:date>
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<title>カオニャオ・マムアン ― 甘さを主役にした、季節の料理</title>
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 カオニャオ・マムアンは、タイ料理の中では少し不思議な立ち位置にある。辛さも酸味もなく、香草も使わない。それなのに、これは間違いなくタイ料理だと感じさせる力を持っている。理由は、味そのものよりも「甘さの扱い方」にある。この料理の基本は、もち米、完熟マンゴー、そしてココナッツミルクだけだ。材料は驚くほど少ない。だが、もち米は蒸して粘りを最大限に引き出され、ココナッツミルクは塩気を含ませて温かいまま吸わせる。甘いのに、だらしなくならない。ここが重要だ。タイの甘さは、砂糖だけで完結しない。必ず塩気や脂
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<dc:date>2026-07-24T13:12:40+09:00</dc:date>
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<title>ロティ</title>
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 ロティは、タイ料理の中でも最も間口が広い甘味だと思う。辛さも香草もなく、説明しなくても誰でも理解できる。薄く伸ばした生地を鉄板で焼き、砂糖や練乳をかける。それだけで、子どもも大人も同じように笑顔になる。ただし、ロティは「タイの伝統菓子」と言い切れる存在ではない。起点はインドや中東のフラットブレッド文化にあり、ムスリム系の人々を通じてタイに根付いたものだと言われている。もともとは甘いものではなく、食事用のパンだった。それがタイに入った途端、油をたっぷり使い、砂糖と練乳をかける方向に振り切られた。
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<dc:date>2026-07-17T13:24:03+09:00</dc:date>
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<title>トートマン・クン ― カリっと、ぷりっと、タイが作ったエビの正解</title>
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 トートマン・クンは、初めて食べた瞬間に「わかりやすく美味しい」と感じる数少ないタイ料理だと思う。辛さも酸味も前に出ず、香りも強すぎない。それなのに、印象はしっかり残る。理由は単純で、この料理は食感を中心に組み立てられている。エビを細かく叩き、調味をして油で揚げる。説明だけ聞くと、どこの国にもありそうな料理に見えるが、実際の仕上がりはかなりタイ的だ。衣で包むのではなく、すり身そのものを直接揚げることで、表面はカリッと、中は弾力のあるぷりっとした食感になる。この「弾く感じ」が、トートマン・クンの核
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<dc:date>2026-07-10T13:09:11+09:00</dc:date>
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<title>プーパッポンカリー ― タイが「濃厚」を肯定した料理</title>
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 プーパッポンカリーは、タイ料理の中では少し異質な存在だと思う。辛さが前に出るわけでもなく、酸味が支配するわけでもない。それなのに、ひと口食べると強烈に記憶に残る。理由ははっきりしていて、この料理はタイ料理の中でも珍しく「濃厚さ」を真正面から肯定している。料理の起点は、中国系の影響が色濃い。カレー粉という存在自体がタイの伝統的なペースト文化とは別の文脈にあり、炒めて香りを出し、卵でまとめるという構造も中華料理に近い。ただし、そこに魚醤、砂糖、そして大量の油が加わった瞬間、味は完全にタイへと振り切
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<dc:date>2026-07-03T13:04:14+09:00</dc:date>
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<title>タイ食紀行　第2話　辛さはどこから来たのか ― 唐辛子は“外来種”だった</title>
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 タイ料理を語るとき、ほぼ必ず出てくる言葉がある。「辛い」。だが、英語やタイ語の文献をたどると、この“当たり前”が実はかなり新しい発明であることが見えてくる。唐辛子は、タイの在来植物ではない。原産地は中南米。つまり、タイ料理の象徴とされる辛さは、地球の反対側からやって来た。この事実を知ったからといって、タイ料理が“借り物”だと言いたいわけではない。むしろ逆だ。唐辛子の受け入れ方こそ、タイの食事がどれほど柔軟で、環境適応的だったかを示している。英語文献では、唐辛子がアジアに入ってきた時期は16世紀
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<dc:date>2026-07-01T15:21:33+09:00</dc:date>
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<title>ガパオ ― 強さを日常に落とし込んだ料理</title>
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 ガパオは、タイ料理の中でも特に説明が難しい料理だと思う。見た目は単純で、肉を炒めてバジルを入れ、唐辛子とにんにくで仕上げるだけ。観光客向けには「バジル炒め」と紹介されることが多いが、それではどうしても本質が抜け落ちる。そもそもガパオの香りの核にあるのは、スイートバジルではなくホーラパーでもなく、ガパオ（ホーリーバジル）だ。この葉は甘くない。青く、辛く、どこか薬草のような匂いを持つ。加熱すると香りが一気に立ち上がり、料理全体を強引にまとめてしまう。ガパオ炒めは肉料理というより、香りの料理だ。歴史
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<dc:date>2026-06-26T13:01:40+09:00</dc:date>
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<title>カオトムグイ　タイ版・居酒屋という完成形</title>
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  カオトムグイを、「お粥の店」だと思うと、だいたい見誤る。ここは、タイの居酒屋だ。静かで、派手じゃなくて、でも、ちゃんと酒の匂いがする。白いカオトムがどん、と置かれ、その周りに小さな皿が並ぶ。貝の炒め物。内臓感のある魚。ナムプリックパオの重たい甘辛。ヤム。パットプリック。どれも、一口で終わる量。でも、味はどれも強い。日本の居酒屋と構造はよく似ている。刺身。焼き物。煮物。つまみ。ただし、中心にあるのが白飯ではなく、白いお粥だというだけだ。この白さが、酒場としてのバランスを取っている。強い料理を一
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<title>タイスキ ― タイが受け入れて、タイの味になった鍋料理</title>
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タイスキは、名前だけ聞くと「タイ風すき焼き」だと思われがちだが、実際の姿はかなり違う。甘辛い割り下で煮る日本のすき焼きとも、澄んだスープを味わう鍋とも異なり、タイスキの中心にあるのはスープではなく、タレだ。もともとタイスキは、中国系移民が持ち込んだ鍋料理を起点としていると言われている。肉や魚介、野菜をさっと煮て食べるという形式自体は中華圏の火鍋や涮羊肉に近いが、それがタイに入った瞬間、決定的に変わったのが「味の付け方」だった。具材はほとんど味付けをせず、そのまま鍋で火を通し、食べる直前に甘く、に
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