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<title>小説ブログ</title>
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<description>まったりと創作小説を書いていこうと思います。忙しい人には短編を、暇な人には長編を読んでもらえればと思っています。</description>
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<title>長編小説「生きがい」＃５（最終話）</title>
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<![CDATA[ 長編小説「生きがい」＃５（最終話）<br><br><br><br><br><br>それから毎日岸谷凪のお見舞いへ行ったが、容態はどんどん悪化していった。そして彼もそのことが分かっているようで、だんだんと私に過去の話ばかりするようになってきた。<br><br>「あの時、楽しかったね」と言われるたび、胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。彼はいなくなるんだと。<br><br>私は常に勉強ばかりの人間で、友達があまりいなかった。初めての彼との出会いも、正直、彼が変な人で面倒だと思っていた。けれど、たくさん会って話して、人とのかかわりがこんなに楽しく、人との別れがこんなに苦しいと初めて知った。<br><br>「最後まで、傍にいてあげてください」<br><br>今日、医師から改めて話を聞かされ、今晩が山場という事を言われた。<br><br>落ち込まない顔をしないように、ひきつった笑顔で病室へ入る。<br><br>「……元気ないね」<br><br>当たり前だが、すぐに見透かされる。彼の父親が「そうか？」と笑った。<br><br>「うん」<br><br>「具合はどうだ？」<br><br>「今は大丈夫。なんか、俺よりもお父さんの方が具合が悪そう。寝れてないの？」<br><br>「あはは……まあな……」<br><br>「じゃあ、寝てきなよ、家帰って。せっかく仕事休んでるんだし」<br><br>「馬鹿、何のために休んでいると思ってるんだ」<br><br>「俺の為？」<br><br>「当たり前だろ」<br><br>「ふふん」<br><br>何故か彼は得意げに布団の中に潜り込んだ。<br><br>「……お母さんだって、霧島さんだって、お前の為にこうして来ているんだ。毎日、毎日」<br><br>「うん。……ありがとう」布団の中から声が聞こえてきた。<br><br>「礼はいらないから、早く……」<br><br>彼の父親は、言いかけて黙り込んだ。喉が詰まって声が出せない様子で、絞るように「早く、元気になれ」と言った。<br><br>「うん」<br><br>ひょっこりと顔を出した彼は寂しそうに笑った。<br><br>「いろいろ、お前に厳しくした面もあったが……」<br><br>「いや、それは俺が悪いって、解ってる。散々心配かけたのに心ない事を言ってごめん」<br><br>この間、私が帰った後、彼らはしっかり話をし、岸谷凪も自分の思いをしっかりと両親へ伝えたらしい。その話を聞いてから３人を見ると、以前よりも打ち解けてより家族らしかった。<br><br>「桜ちゃんも、こんなに毎日来て平気？」<br><br>彼の母親が心配するように言った。<br><br>「大丈夫です」<br><br>「そっか。無理しないでね」<br><br>「はい……」<br><br>「すみません、ちょっといいですか」突如、病室のドアが開き、後方から声が聞こえた。看護婦だった。<br><br>彼の両親が「あ、はい」と、声をそろえて反応し、顔を見合わせた。<br><br>「何か大切な話かな？行って来ていいよ」<br><br>彼は笑って言った。私も「残るんで、行って来てください」と両親を促す。<br><br>「ありがとうね」と両親が言って看護婦と共に廊下へ出て行った。<br><br>「好きにしても良いって言われたのに、結局最期も病院かあ」<br><br>２人がいなくなった途端、彼は溜息をつくように呟いた。<br><br>「最期」という彼の言葉には何か重みがあり、何も言い返せなかった。<br><br>「人生の８割を病院で過ごしたよ」<br><br>「そうですか……」<br><br>「あ、ごめん、最期とか言っちゃって……なんか、あの二人の前だと言いづらいから」<br><br>「いいんですよ、両親になら弱音吐いたって。自分たちよりも私を優先されたって、悲しみますよ」<br><br>「でも……やっぱり、なんか……何でもない」<br><br>「言いたくないことは言わなくてもいいけれど、弱音吐きたかったら言ってください」<br><br>「でも、なんか、一応男だし」<br><br>「男性は弱音を吐いてはいけないというルールがあるんですか」<br><br>「いや、ないけど……暗黙の了解ってやつだよ。昔から、男は」<br><br>「どこかに、それは正しかったって書いてありましたか？」<br><br>「書いてはないけど……」<br><br>「心の持ちように男女差なんてありませんから当たり前です。それに、あなたが泣いている姿も見ましたし、今更どんな弱音聞いても驚きませんよ」<br><br>初めは躊躇っていた彼も、私のこの言葉が心強かったのか、ぽつぽつと話し始めた。<br><br>「もう死ぬのは解ってる。でも、両親とか、霧島さんとかが励ましてくれるから、あんまり言えなくて……『もっと生きたい』も『またどこか行きたい』も全部、死ぬのを前提に話してるから、そうすると二人は悲しむし……霧島さんが悲しまないとか、そういう事じゃなくて」<br><br>「わかってます。大丈夫です。家族は、特別ですから苦しいです。誰よりも見てくれている存在だから」<br><br>自分でそう言って、胸が痛んだ。家族は、特別だから――私も、彼にそう言われるくらいの存在になりたかった。<br><br>「ありがとう、本当に」彼はぽたぽたと涙を零した。そこへ両親が戻ってきた。表情から察するに、きっといい話ではなかっただろう。<br><br>「おかえり」彼も同じように察していたようで、彼の両親に向けて涙を零しながら、笑顔を作った。<br><br>それから、他愛のない話をしている中で、小さな沈黙が出来た時、彼はふと「ありがとう」と一言呟いた。<br><br>「どうしたの、突然」私たちは不思議そうに彼を見た。彼は俯き加減に顔を引きつらせながら、続けた。<br><br>「いや、こうして、話聞いてくれて、看病してくれて、ありがとうって、思って。前にも言ったけれど……」<br><br>「お礼なんていらないわよ」と、彼の母親が泣きながら言った。本人の前では泣かないようにしていたみたいだが、我慢できなかったようだ。私の目からも涙がこぼれ出た。<br><br>夜８時くらいになり、私までもが夜中に付き添う事は出来ず、家に帰らされた。病室を出ようとしたところで、岸谷凪に「あ、霧島さん」と声をかけられ、立ちどまったが「やっぱりなんでもない」と言われてしまった。まあ明日詳しく訊こう、とただひたすらに彼に会えることを願っていたが、その日はついに訪れなかった。<br><br>「――今まで、本当にありがとうございました」<br><br>彼の両親が、わざわざ私の家に来てまで頭を下げた。<br><br>「いえいえ、ずっと家に居た娘も相当凪君が支えになってたみたいで、こちらこそ感謝しています。本当に……すみません、今、娘出てこれないみたいで」<br><br>そう沙希が対応している。覚悟はしていた。けれど、やはり期待の方が大きかった。これからも一緒に話せるんじゃないか、勉強できるんじゃないか、遊びに行けるんじゃないか。<br><br>昨日散々泣いたのに、未だに涙が出てきた。彼の存在は、私の中でこんなにも大きかったのだ。<br><br>その後リビングで彼女らは何やら世間話をしていたが、私の耳には届かなかった。やがて数分経ってから、沙希が私の部屋に来た。<br><br>「桜、凪君のご両親が来てたわよ」<br><br>「……うん」<br><br>「それで、これ……」<br><br>沙希はポケットを探り、一本のシャーペンを差し出した。それは紛れもなく私のもので、首をかしげる。<br><br>「何でお母さんが？」<br><br>「凪君のお母さんに渡されたの。あなた、忘れ物してたみたいよ」<br><br>「あ……そうだ、そう言えばそんなこと言われたかも……」<br><br>私が家を飛び出した日だ。あのまま忘れ物を受け取らず、そのまま連絡しなくなってしまったのだ。けれど、忘れ物した日から幾度も会っている。その時に渡せばよいのに、と不思議に思った。<br><br>「あと、なんか……忘れ物した時に書いてたみたい」沙希が付け足す。<br><br>「えっ、わざわざ何を？」<br><br>「でもこれは桜に見せるものじゃないかな」<br><br>沙希の手元を見ると、小さなノートの切れ端にあったメモだった。ただ、「霧島さんに返す」と書いてあった。<br><br>「ありがとう」<br><br>私はそれらを受け取って、筆箱にしまおうとすると、メモの裏に何か書いてある事に気がついた。<br><br>今度こそ遊ぶ。ちゃんと感謝を告げる（先生にも）。勉強をちゃんとする……と、いくつかの項目が箇条書きで書いてあった。<br><br>「こんなメモ取ってたんだ……相変わらずだなあ」<br><br>独り言のように呟く。そして、彼が返しに来た日のことを思い出し、その時の彼の言葉を頭の中で並べた。<br><br>「霧島さんに出会って、毎日が楽しくなってきた」<br><br>思えば、あれが彼なりの感謝を告げる方法だったのかもしれない。もう年頃の男子高校生だった彼も、「ありがとう」と直接は言い難かったのだろう。死ぬ直前にはそのことも忘れて涙までこぼしていたけれど。<br><br>そんな彼の必死の思いを察することなく音信不通にしてしまった事を悔やんだ。<br><br>「ごめんね」と素直に書くわけでもなく、私は一言そのメモに「私に見られちゃだめなやつでしょ」とふざけ半分で書こうと、彼が返してくれたシャーペンを手に取った。<br><br>「あ……シャーペンの芯が入ってない」<br><br>筆箱を探り、シャーペンの芯を取り出し、シャーペンの頭の部分を外す。すると、そこから丸めてあった紙が出てきた。<br><br>「えっ、何これ……」<br><br>取り出して紙を広げると、そこには、文字が書いてあった。<br><br>――やっぱり直接告げられそうにないから、ここで言うね。霧島さん、大好きです。（恥ずかしくて死にそうだから気付いてもらう頃には死んでいたい）<br><br>「ふふっ」と声が出てしまった。２度目の彼の「大好き」だ。１度目のメールの時にはもう余裕がなくて、恥ずかしい感情すら忘れていたのだろう。<br><br>「本当に死んじゃったじゃない……」<br><br>笑いながら言う目から、ぽろぽろと涙が溢れ出た。<br><br>おそらく、最期話した夜、引きとめられたのはこのシャーペンを渡そうとしていたのであって、渡せなかったのは、きっと恥ずかしさからだろう。彼の心情を想像し、思わず微笑むような愛おしさを覚えた。<br><br>「今更恥ずかしがったって……メールでもう告げられてるのにね」<br><br>想いを告げることはできなかったが、私もきっと、彼が大好きだった。<br><br>第一印象は最悪を極めた生徒だった。勉強している私の前で、勉強の意義を訊いて、勉強なんていらないと言い切る。けれど、彼の事情や思いを訊いて、先生にも頼まれて、放っておけなくなっていった。<br><br>彼が私に出会えてよかったと言ってくれたように、私も彼に出会えて勉強以外の事がどれだけ大切なものかを知ることが出来たのだ。<br><br>けれど、「ありがとう」も「ごめんね」も彼は何度も言ってくれて、何度も元気づけてくれたのに、私は彼に何もする事が出来なかった。<br><br>「あーあ……またつまらなくなっちゃうよ。今まで通り、勉強漬けだったら、こんなに苦しまなかったのかなあ」<br><br>溜息をつくように呟いたが、この言葉に答えるように、彼の言っていた言葉が頭をよぎった。<br><br>「生きがいがあることは、幸せな証拠」<br><br>今までの私の生きがいは、大人になってから苦労しないように、勉強することだけだった。けれど、いつの間にか自習室へ行く理由が変わっていって毎日が楽しくて、確かに私は幸せだった。<br><br>――死ぬのが恐いとは思わなかった。なんでだろう。<br><br>「会えるって信じているから」<br><br>彼の言葉を声に出した。彼の口から出るものは綺麗なものばかりだと改めて感じた。そうだ、彼が会えることを信じてくれているのだから、私もそのことを信じて精一杯生きなければいけない。それが私のこれからの生きがいなのだと感じた。<br><br>私は、芯を入れたシャーペンを手に取り、シャーペンから出てきた紙の裏にくっきりと、文字を残した。<br><br>「私も、あなたのことが大好きでした。今度は勉強を教えられるといいな」<br><br><br><br><br><br>終わり。<br><br><br>百人一首のある首（私の大好きな句）を大テーマにして、そこからちょこちょこ変えて作りました。<br><br><br>追記※誤字訂正＆一部言葉を変えました。
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12120453739.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Jan 2016 21:12:15 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「生きがい」＃４</title>
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<![CDATA[ 長編小説「生きがい」＃４<br><br><br><br>時間があるので最終話まで更新します！<br><br><br><br><br>旅行に行く前日、私は岸谷凪と最後に会って以来、初めてメールを開いた。「旅行行くから、返答できない」と送るためだ。<br><br>中身を見ると７件溜まっていて、古い方から順に見て行った。「明日は自習室来る？」から始まっていた。<br><br>「ごめん、何かしちゃったなら」<br><br>無視して２日が経った時のメールだ。それからは突然、「今日こんなことがあった」という日常の内容になった。<br><br>そして、最後７件目で息をのんだ。<br><br>「もう、読んでくれないかもしれないけど、霧島さんが大好きでした。最後にもう１度会って話したいけど、無理かな？ありがとう、ごめんね」<br><br>慌ててこれが届いた日付を確認した。昨晩のメールだった。<br><br>「出掛けてくる」<br><br>私は家族の返事を訊かずに家を飛び出した。<br><br>病院へこれまでにないくらい全力で駆けた。受付を済ませて病室を訪れた。<br><br>「……どなた？」<br><br>知らない男性と女性がいた。そして、彼らに見守られて、酸素マスクをして眠っている彼もいた。<br><br>「……もしかして、『霧島さん』？」<br><br>女性が私のことを不思議そうに見ながらそう言った。きっと彼の母親だろう。<br><br>「どうして、私の名を……」<br><br>「あなたの話、楽しそうにしていたからね。数日分しか訊いてないけど、覚えちゃった」<br><br>彼女はそう言って、初めて笑顔を見せた。疲れ切った笑顔だった。父親らしい男性の方も「ありがとう」と私に頭を下げた。<br><br>「いや……私は」<br><br>「……けれど、もう駄目かもしれない」<br><br>彼の父親は肩を落としながら言った。大人とは思えないくらい、背中が小さくなっていた。<br><br>「どういう事ですか……？」<br><br>「おととい、倒れて……その時は元気だったんだが、昨日の朝容態が急変してな……今みたいに昏睡におちいる最後まで携帯をいじっていたよ。叱ろうと思ったんだけど、泣きながら、震える手でいじってたから、何も言えなかった。君と連絡を取っていたのかな」<br><br>涙ぐみながら出た彼の父親の言葉が、一つずつ私の胸に刺さった。目に涙が溜まる。<br><br>「……もう、目を開けませんか」<br><br>「今は眠っているだけだから、しばらくしたら起きるだろうが……多分、それももう残り数回だと思う」<br><br>「死ぬ」と何度も言っていて、私はそれを何度も聞いてきた。それなのに、いざ目のまえに降りかかると、呼吸が出来ないくらい苦しかった。<br><br>それに、容態が急変したのも私のせいだろう。私が返事を返していたら、会ってあげていたら……泣きながらメールする彼の姿を想像し、私のしてきたことの無意味さと、単純さと、愚かさを誰かに責めてほしかった。きつく、怒鳴ってほしかった。<br><br>しかし、母親が私の思いを裏切るように言った。<br><br>「泣いてくれてありがとうね。本当に、凪は、幸せだと思う」<br><br>「……」<br><br>「……多分、もうすぐ起きると思うの。会ってあげて。私たちは、お医者さんの所にお話しを訊きに行ってくるわ」<br><br>２人は、重い足取りで出て行った。<br><br>彼が目を覚ましたら、なんて言おう。なんて謝ろう。どうしよう。どんな顔で会えるんだ。あんなひどいことをしておいて……今にも逃げ出したかった。けれど、逃げ出さなかったのは、彼が２人が出てすぐに目を覚ましたからだ。<br><br>「……霧島さん？」<br><br>弱々しい声が聞こえた。その声に、ぽろぽろと涙があふれる出てきた。<br><br>「ごめんなさい、ごめんなさい……」<br><br>何度も謝った。声がかれても、出なくても、何度も謝った。彼はずっとそれを黙って聞いていた。やがて、泣き崩れる私を見て「理由、訊いてもいい？」と優しい声で尋ねた。<br><br>「私のせいで、死ぬのが恐くなったらどうしよう、苦しんだらどうしよう、辛くなったらどうしよう、って……思って……」<br><br>「そっか」<br><br>「でも……私、馬鹿で……こんなになることが想像できなくて……」<br><br>「ごめんなさい」ともう一度言うと、彼はにっこり笑った。<br><br>「今、それ聞いてホッとしてるよ。俺、何かしたかな？嫌われたらどうしようって、ずっと思ってたから。そんな追い詰めてたんだね。ごめん」<br><br>「……どうして、あなたが謝るんですか？」<br><br>「俺も、無責任に、色々なこと言っちゃったから」<br><br>「私のせいで……私、本当に馬鹿でした……」<br><br>「俺より馬鹿な人間はいないって以前に言ったでしょ」<br><br>「……」<br><br>「お父さんとお母さんどこに居るか知ってる？」<br><br>「お医者さんの話を聞きに行きました……」<br><br>「そっか……」<br><br>すると、彼は酸素マスクを外して、起き上った。<br><br>「ちょ、駄目ですよ、はずしたら」<br><br>「ううん、いいよ、もう死ぬんだから」<br><br>寂しげにそう言った後、「あ、これは禁句だったね」と微笑した。<br><br>「……」<br><br>「ありがとうね、本当に。確かに、霧島さんに出会って、まだ生きたいって思ったよ。何で俺は死ぬのって。何で俺は皆と同じように、生きられないのって、神様を初めて恨んだ」<br><br>「ごめんなさい……」<br><br>「謝らないで。それでもね、神様を恨んでも、大切な思い出が作れて、その思い出と一緒に眠ることが出来るって、素敵だと思う。死ぬのが嫌だってことは、幸せな証拠。霧島さんに出会わなかったら、ただただ、産んでくれた両親に申し訳なく思いながら死んじゃってた。つまり……かっこよくいうと『生きがい』ってこと。それを与えてくれたのが、霧島さんだった」<br><br>優しい声だった。ぽたぽたと私の目から涙が落ちる。彼は、指先を私の顔にそっと近づけて、その涙を拭った。そして、恥ずかしそうに笑った。<br><br>「昨日ね、生きたい、もっと生きたいって、両親の前で泣いちゃった」<br><br>「……えっ」<br><br>「それで、２人にひどいこともいっぱい言った。何で俺だけこんなふうに産んだのって、それなら産まれて来なくても良かったって。そんなわけないんだけど、その時は気が動転しちゃって」<br><br>「……」<br><br>「まだ生きたい、助けて、助けてって……二人とも、俺以上に泣いてた。ずっとごめんねっていってた。それを言うべきは俺だったのに、俺はありがとうもごめんねも何も言わなかった。だから、２人が帰ってきたら謝らないと。そして、今まで看病してくれたことに感謝しないと」<br><br>彼の泣く姿が全く想像できなかった。私の中では、いつも困ったように笑っていて、人に気を使って、恐いもの知らずの男の子だ。<br><br>突然彼ががくんとベッドに手をついた。「横になって」と促すと、「ありがとう」と笑って横になり、続けた。<br><br>「それに、何度も『生きたい』とは思ったけど、『死ぬのが恐い』とは思わなかったよ」<br><br>「……どうして？」<br><br>「どうしてだろう、また会えるって思うからかな」<br><br>「会えますよ、絶対」私は強く頷いた。<br><br>「うん、そうだよね。ありがとう」<br><br>「私も、勉強ばかりで、いつしか人と関わることもなくなって……でも、あなたに会ってから、もっともっと大切なことが学べました」<br><br>「良かった」<br><br>「だから、産まれて来なくてもよかったなんて、もう絶対言わないでください。私は、あなたがいて良かった。あなたと出会えてよかった」<br><br>「ごめん」と、呟くような声が聞こえた。そして、その声は震えながら、「ありがとう」と言った。<br><br>さっきまで笑っていた彼の目から、雫が溢れた。一滴、もう一滴と、頬をしたたる。<br><br>私は、思わず彼の白く細い手を握った。<br><br>帰らねばいけない時間になり、彼の両親が私を車で送ると言ってくれた。始めは断ったが、「送らせて」というため、そうしてもらう事にした。<br><br>「俺、ちゃんと両親と話すね」<br><br>去り際に彼が私を寄せて、小さな声で言った。「頑張ってください」と応援し、外に出る。<br><br>「雪だわ……きれいねえ」<br><br>彼の母親が運転しながら呟いた。父親が万が一の為病院に居た。<br><br>「そうですね」<br><br>「あの子にも、見せてあげたかったわ」<br><br>「……見れますよ」<br><br>「そうかしら」<br><br>「雪が降るのは今日だけじゃないんですから」<br><br>「そうね……」前を向いているため彼女の表情は解らなかったが、涙声だった。「きっと、元気になったら見れるわね」<br><br>「はい」<br><br>「びっくりしたの。あの子がね、『生きたい』なんていうから。今まで一度も言ったことがなかったのよ。泣いたのも、赤ん坊の頃が最後だった」<br><br>「……そんなに生きたいと願っている人が、生きられないわけないじゃないですか」<br><br>「そうね。本当にありがとう。あの子に良い思い出を与えてくれて」<br><br>「私のしたことなんて大したことじゃないです」<br><br>「ううん、本当に感謝してるわ」<br><br>「……いえ、私は酷いことをしてしまいました」<br><br>私は、彼が倒れるまでの自分の行為を全て語った。語り終わった後に、何て言われるだろうと目を閉じた。きっと怒られるだろうと思っていたが、優しい声が聞こえてくる。<br><br>「気にしないで。あの子、あなたの顔を見て幸せそうだったから」<br><br>「……」<br><br>「こんなにあの子のことを考えてくれるお友達も初めてだから。ありがとう」<br><br>顔はそうでもなかったが、声や心に触れ、改めて彼女らは親子だと思った。<br><br>やがて、家に着くと、美紅が出迎えてくれた。<br><br>「……お父さんとお母さんは？」<br><br>「ママたち、お姉ちゃん探しに行ったよ」<br><br>「えっ」<br><br>「急に出て行くから」<br><br>すると、「桜っ」と後方から声が聞こえた。沙希が駆け寄ってくる。<br><br>「ごめん、急用が」<br><br>「ばか、私もお父さんもすっごい心配してたのよ。連絡するから――って……」<br><br>沙希は私の傍に居る女性を不思議そうに見た。<br><br>「友達のお母さん」<br><br>「送ってもらったの？まあ……このたびは本当に申し訳ありませんでした」<br><br>２人で頭を下げると、彼女は「いえいえ、こちらこそ」と言い、「また明日」と見送られて帰って行った。<br><br>そして、数分後に和博が戻ってくる。<br><br>「なにしてたんだ」<br><br>「ごめんなさい、友達の所に」<br><br>「何で急に」<br><br>私は中に入って事情を説明した。「そうだったの」と沙希が驚いた顔を見せる。<br><br>「じゃあ、明日も会ってあげないと」<br><br>「でも……」<br><br>「行ってあげなさい。旅行ならいつでも行ける」そう言ったのは和博だった。友達、しかも男の子と聞いて一番怒ると思ったが、そう言ったきり黙ってしまった。<br><br>「ありがとう」<br><br>頭を下げるが、その私の声にも何も答えなかった。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>続く<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12117556539.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Jan 2016 20:52:09 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「生きがい」＃３</title>
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<![CDATA[ 長編小説「生きがい」<br><br>３話連続投稿ですが、夜中あたりに最終話の＃５まで更新しようと思ってます。<br>今年は時間がないので、今年は始まったばかりですが、年内最後の話になるかもしれません。すみません。<br><br><br><br>「おい、なんだこれは」<br><br>部屋で勉強をしていると、和博が私の携帯電話を持ってきた。<br><br>「あ、落としてた？」<br><br>「落としてた、じゃない。お前、家族以外の名前があるじゃないか」<br><br>「なにみてるの？最低」<br><br>「親になんて口きいてるんだ」<br><br>平手打ちをされる。これは日常茶飯事で、無論慣れていた。叩かれない方法も知っている。けれど、これは口答えせざるを得なかった。<br><br>「人の携帯なのに」<br><br>「お前、誰かと遊んだりしたのか？」<br><br>「違う。ただ交換しただけ」<br><br>「男か、女か？」<br><br>「男だけど、何？」<br><br>「くだらない。消すぞ」<br><br>「ちょっと、やめてよ、勉強ならたくさんしてるじゃない」<br><br>「足りないんだ。学生時代を無駄にするな」<br><br>「遊んでないから、消さないでよ」<br><br>思っていたよりも和博の機嫌は悪く、何度も訴えても、最終的に無理矢理消されてしまった。いつもいつもこう。学生時代を全て勉強に費やすことが本当に合理的なのだろうか。最近になってそう考えるようになったのは、岸谷凪に出会ったからだ。<br><br>私はたまらず外へ飛び出した。すると、１０メートルくらい走ったところで誰かと衝突した。<br><br>どうしてだろう。こういう時に、必ず姿を現す。<br><br>「すみま……って、霧島さん？」<br><br>顔を上げると、岸谷凪がびっくりした表情で倒れかけた私の腕を掴んでいた。<br><br>「大丈夫？」<br><br>「……」<br><br>「……？どうし――」<br><br>彼はそう言いかけて、不思議そうな表情から、一気に目を見開いた。その顔を見て、私は、初めて自分の目から涙がこぼれている事に気がついた。<br><br>「……あっ、霧島さんっ」<br><br>彼の手をふりほどいて走る。すると、後ろから私を追う足音が耳に入ってきた。<br><br>「ついてこないでっ」<br><br>「待って、待って霧島さん」<br><br>いつも出している体力以上の気力を振り絞って追いかけて来ていた。おかげで、息も荒くなり、今にも倒れこみそうだった。<br><br>そんな彼の姿を後ろに、走り続けることなどできなかった。<br><br>「……霧島さん」<br><br>「死んじゃうじゃない、どうして追いかけてくるの？」<br><br>怒鳴るようにそう言った。けれど、彼は当然のごとくただ一言、「心配だったから」と告げた。<br><br>「……病院に居たのでは？」<br><br>「忘れ物してたから、届けに行こうと思って」<br><br>「動いて大丈夫なんですか？」<br><br>「会えるならいいよ、帰り道で倒れても」<br><br>「……馬鹿ですよ、あなた」<br><br>「知ってる知ってる。逆に、俺より馬鹿な人見たことないもん」<br><br>「……」<br><br>泣いてる理由は訊かれなかった。代わりに、ニコニコとしながら言った。<br><br>「なんか、霧島さんに出会って、楽しくなってきた」<br><br>「何がですか？」<br><br>「毎日が」<br><br>「まだ、出会って３日も経ってないですよ」<br><br>「俺には１年分だよ、誰かと遊ぶ約束したのも、こうして話したりしたのも。本当に、楽しい」<br><br>今までにも何度か彼の笑顔を見てきた。けれど、それは今以上幸せなものではなかった。本当にニコニコしている。私自身も、自分のことばかり考えていたため、人の役に立てて嬉しかった。<br><br>けれど、幸せそうな笑顔を眺めているうちに、以前彼が言ったセリフを思い出した。<br><br>――まあ、理解者がいて、生きたいって思ったら、死ぬことが怖くなっちゃうもんね。<br><br>途端に、不穏な思いが私の頭をよぎった。私が今、彼にしている事は、彼にとって「良いこと」なのだろうか。<br><br>「霧島さん？」<br><br>彼が私の名を呼ぶが、答えられなかった。<br><br>――先生の言う通りの、つまんない人生を送っている方がいいね。<br><br>「はーあ……皆こんな人生送ってるのかあ……それなら悪くないかもねえ」彼の声が追い打ちをかける。<br><br>「……すみません」<br><br>「何が？」<br><br>「私が、関わらない方がよかったですか？」<br><br>「何で？良かったあ、って思ってるよ。でも、ちょっと羨ましいなあ」<br><br>「……何がですか」<br><br>「みんなみんな。俺、今までずっと病院に居て、出ても皆に無視されて、つまらない人生送ってきたから、これなら２０歳と言わずにもっと早くてもいいのにって思ってたんだけど、ずっと何十年も生きる皆は、こんな幸せだから生きるんだね」<br><br>「……知らない方がよかった幸せですよね」<br><br>「ううん、知れて良かったよ。どうしたの？なんか変だけど」<br><br>急に、心が冷え切った。彼は優しい。私が出会ってきた人間の中でずば抜けて、優しい。それだからこそ、私は、自分が彼にしてしまったことに後悔しか得られなかった。<br><br>「……これからも生きたいですか」<br><br>突然過ぎた問いだったが、彼は動じずに、頷いた。<br><br>「うん、もっと、話したりしたいから。でも親も最近、学校さぼったりする俺に対してピリピリしてて、居づらかったんだよね。だから、霧島さんだけが頼りなんだけどね」<br><br>「……」<br><br>何故だかわからなかった。けれど、この時、確かに、彼が生きたいと思ったことが、彼の首を絞めると思い込んだ。<br><br>死にたいと思って死ぬ人や生きたいと思って生きる人が世の中に居る。<br><br>彼は、初めは前者だった。自分が望んでいるのなら、辛さや恐さなんてなかったと思う。後者の私だって、時々家や勉強のことで嫌になるけれど、常に将来の為に頑張ってきたのだ。それに、死ぬことを考えたら恐ろしく、長生きしたいと望んでいる。<br><br>そんな状況が「生きたいと思っているのに死んでしまう人」に変わってしまったとき、辛さは何倍になってしまうのだろうか。苦しさは、かなしさは、恐さは、どれくらいになってしまうのだろうか。<br><br>彼は本当に無意識だった。無意識に、純粋に、無責任に、「楽しい」と感じた。そして、私に、「楽しい」と言った。「生きたい」と言った。死ぬことを忘れた、無意識から言った。<br><br>無意識とは重い罪だ。<br><br>「……どうしたの？」<br><br>心配そうな声が聞こえる。思えば、私は黙り込んでしまっている状態だった。<br><br>「なんでもないです」<br><br>「そう？」<br><br>「もう、帰りますね」<br><br>「えっ？帰るの」<br><br>「はい。勉強しなきゃなので」<br><br>「そっか……頑張って」<br><br>私は、寂しそうに呟く彼を背に、振り向きもせず歩いた。<br><br>彼のこれからの期待や、不安や、恐怖のことを考えると、それらは背負うにはあまりにも重すぎた。<br><br>それから私は、彼に対し、連絡を控えた。急なことに驚いた彼は、メールではなく、電話を寄越したが、それも知らないふりをした。<br><br>無意識は罪だと言ったが、それ以上に私は重い罪だった。<br><br>人に中途半端に優しくして、期待させて、生きる希望を与えて、突き放す。場景だけを並べればこうなり、これを見たどこかの人々は、本当に酷い女だと思うだろう。それでも、こうするほか仕方がなかった。それは、笑顔を作るのが下手で、感情が見えやすい彼がどうしても、「良い人生が送れてよかった」と笑顔で目を閉じるとは思えなかったからだ。<br><br>「死にたくない」と嘆かれてしまったとき、私はどう反応したらよいのだろうか。<br><br>「お前、最近勉強に集中してるな」<br><br>ある日、和博が部屋へ入ってきてそう言った。<br><br>「うん」<br><br>「美紅も、幼稚園で賞をもらったんだ。今度、息抜きに旅行へ行かないか」<br><br>純粋に驚いた。今まで、旅行など一度も行ったことがなかったからだ。話を訊くと、沙希の提案らしい。和博は渋々了承した感じであったらしい。<br><br>今まで旅行はなかったが、和博のこういう面は何度かあった。厳しく叱りつつも、時々おにぎりを部屋へ持ってきてくれたり、参考書を買ってきてくれたりするのだ。<br><br>「うん、いいけど……」<br><br>「それと、この間は叩いて悪かった」<br><br>「それは大丈夫だよ」<br><br>「じゃ、そういう事だ。日付はあとで決める」<br><br>そう言って和博は出ていった。<br><br>旅行かあ……日帰りで遊ぶことはあったが、どこかに家族で泊るのは記憶上では初めてだ。<br><br>ワクワクしていると、携帯電話のライトが光った。おそらく、いつものように岸谷凪からだろう。連絡先を追加し直したものの、連絡しなくて１０日が経ち、罪悪感に見舞われていた。<br><br>けれど、こうして突き放すことが、お互いにとって良いと思っていた。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>続く<br><br>今すぐ連絡するんだあああああああ(´；ω；`)(´；ω；`)(´；ω；`)<br><br>と言ってしまいたくなるほど、（作者ですが）ドキドキします。
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12117541850.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Jan 2016 19:57:18 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「生きがい」＃２</title>
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<![CDATA[ 長編小説「生きがい」＃２<br><br><br><br><br><br>それから岸谷凪のことが頭から離れなかった。そして、もし自分だったらと考えた。<br><br>私は、将来のために、将来困らないために勉強をこんなにもがんばっている。それが、その将来がありませんと告げられたとき、私だったらどうするだろうか。<br><br>きっと、勉強なんてしないだろう。遊びふけって、何にも考えずに、残り少ない人生を歩むだろう。<br><br>私は、彼のことを何も考えずに説教をしてしまった。<br><br>次の日、自習室へ向かうと、知らない３年生に紛れた岸谷凪の姿があった。<br><br>「あっ、霧島さん」<br><br>そういわれ、ギクッとする。明らかに彼の声だった。<br><br>「……また自習しているんですか？」<br><br>自習している人もいるため、彼をドア付近に呼び寄せ、なるべく静かな声で話す。<br><br>「いや？霧島さんの事待ってた」<br><br>「何で私の名前を知ってるんですか？」<br><br>「先生から聞いたんだよ。ねえ、今日は勉強やめない？」<br><br>「……は？」<br><br>「俺、友達がいないから、霧島さんが話してくれて嬉しかった。ね、どっか遊びに行こうよ」<br><br>「嫌です。私はあなたの友達ではありません」<br><br>「でも、俺は霧島さんの友達だよ」<br><br>「それはおかしいです。そもそも私はあなたの友達ではないと言っているので、そこからすると、あなたも私の友達では――」<br><br>「あー、もうそういう胡散臭いことはいいよ。とにかくおねがい」<br><br>「あなたのその性格なら、友達すぐにできますよ」<br><br>「できないよ。俺、プールとか持久走とか休まなきゃだから、どうしても皆が嫌うものだから反感くらうんだよね」<br><br>「反感？」<br><br>「ずる休みだの、せこいだの。病気なら学校来るなだの。それとも、霧島さんもそう思う派？」<br><br>そう思う、と言えば散々私の勉強を邪魔した彼は、私の元から離れてゆくだろう。彼のせいで予定が狂ってしまっている。けれど、私は昨日の相田先生の言葉を思い出した。<br><br>――少しでも、声掛けてやれないか？<br><br>「……別に、そんなに細かったら激しい運動できないっていうのも、分かりますよ」<br><br>ため息交じりにそう呟くと、彼は目を輝かせた。<br><br>「本当？良かった。まあいいんだけどね、ずるいとか言われても、学校来るなとか言われても、本当にその通りだと思う」<br><br>「……そうやって納得するから反感をくらうのでは？」<br><br>「ううん、反論したよ。でも、無理だった。なんかもうみんな、俺のことが気に食わないんじゃなくて、気に食わない人間を無理矢理探し求めて、一致団結してそいつを輪から放り出したい感じ。分からなくはないけどね。まあ、どうせ死ぬから、俺のことを放りなげても――あ、どうせ死ぬから、はだめなんだ」<br><br>彼は終始笑顔で話していた。かなしくないのか、恐くないのか、幸せになりたくないのか、生きたくないのか、いろんな疑問が私の頭の中を駆け巡り、出てきた言葉は「すみません」だった。<br><br>「……え？何で？」彼は不思議そうに尋ねた。<br><br>「昨日は何も知らずに説教垂れてしまって」<br><br>「あー、いやいや、本当にその通りだなって思ったから」<br><br>「自分だったら、って考えると、あなたに対して言った言葉が申し訳なくなりました」<br><br>「気にしないで、俺、メンタルは誰よりも強い自信があるから」<br><br>「そうなんですか。よかったです」<br><br>「……あ、もう結構時間たっちゃったね。俺、帰るよ」<br><br>「え？」<br><br>てっきり遊びに行こうとしつこく誘われると思っていたが、意外にも諦めが早かった。<br><br>「勉強頑張って」<br><br>彼は、自習室に戻って、荷物を片づけて再び出てきた。<br><br>「じゃあ、また今度」<br><br>後ろを向いていて、そう告げる彼の表情は解らなかった。けれど、すれ違う背中がどこか頼りなく、寂しそうで、私は思わず腕を掴んだ。<br><br>「びっ……くりした。どうしたの？」本当に驚いたようで、目が丸い。私は勇気を振り絞った。<br><br>「あの……明日、なら……予定、あいてます」<br><br>「……えっ」<br><br>「明日は、学校自体閉まってるんです。だから……明日なら、遊べます」<br><br>彼はずっと目を見開いていた。慌てて掴んでいた手を放す。しかしあまり乱暴に扱うと折れてしまいそうなくらいの手で、慌てて私は謝った。<br><br>「あっ、す、すみません、大丈夫ですか？」<br><br>「……ありがとう」<br><br>切ない笑顔だった。思わず、口をつぐんでしまうくらい、かなしい笑顔だった。<br><br>誰よりもメンタルが強いと言っていたが、本当は誰よりも心がボロボロなのではないか。誰よりも、上面を着飾るのが上手なだけではないのか、そう思わざるを得なかった。<br><br>「じゃあ、明日、学校前にきてくれる？」<br><br>彼はいつもの調子を戻していった。<br><br>「はい」<br><br>「ありがとうね、俺から言ったんだけど、無理しなくていいからね」<br><br>「無理してません」<br><br>「そっか、よかった」<br><br>そう約束して、連絡先を交換して別れた。<br><br>けれど、次の日岸谷凪は学校前へ来なかった。代わりに１通のメールが届いていた。<br><br>「本当にごめんなさい、今、病院に居ます」<br><br>私は病院の場所を訊いてすぐに駆けつけた。まさか、何か悪いことが――。<br><br>話を訊くと、彼は朝突然発作を起こし、倒れたらしい。相当無理していたのかもしれない。<br><br>「ごめん、本当にごめんなさい。せっかく約束したのに」<br><br>私の姿を見て、そう何度も謝っていた。<br><br>「いいですよ、別に……こんなときくらい、自分の体のこと、心配してください」<br><br>「俺のことはどうでもいいから。霧島さん、両親に怒られたりしない？大丈夫？」<br><br>「何で人のことばっかり……」<br><br>そう呟かずには居られなかった。「俺のことはどうでもいい」なんて、まだまだ１７歳である彼が言うセリフではない。それどころか、私の心配ばかりしている。まだ出会って１日だというのに……。<br><br>「俺には将来がないからさ、霧島さんがこれから困ることがあっても、責任とりきれないから、なるべく迷惑かけないようにしなきゃ」<br><br>「……」<br><br>「はっ、将来がない、も禁句？」<br><br>「本当にないんですか？」<br><br>「え？」<br><br>「もしかしたら、生きられるかもしれないじゃないですか」<br><br>「それはないよ、好きにしてっていわれたんだもん」<br><br>「絶対なんて、あり得ないんです。もしかしたら、もしかしたら。くだらない言葉かもしれません。けれど、私はこの言葉にこれまで何度も救われました。『もしかしたら』って……唱えていたら、無責任かもしれませんが、本当に叶う日が来るかもしれないじゃないですか」<br><br>「……」<br><br>彼は少し黙った後「ふふっ」と吹き出した。<br><br>「な、何ですか？」<br><br>「俺たち、同い年なのに、何で敬語なの？」<br><br>「それは、たまたまですよ……」<br><br>「なんか、元気出た」<br><br>「今まで元気じゃなかったんですか」<br><br>「うん」と困ったように笑う彼の表情が胸に突き刺さった。<br><br>「……今度、暇な時、絶対遊びましょう」<br><br>そう言いきる。「平気なの？」と心配そうに尋ねられた。<br><br>「平気ですよ。かなしいじゃないですか、毎日元気じゃなかったなんて」<br><br>「……良い人だね。霧島さんなら、周りに人たくさん集まるね」<br><br>「いえ、私は固い人間ですし、集まるなら、テスト前くらいですかね。遊びを優先するのはごく稀なケースです」<br><br>「そうなんだ、ありがとうね」<br><br>彼は、にっこり笑った。それが、裏のない、純粋な笑顔だとすぐにわかった。<br><br>家に帰ると、珍しく和博が玄関に居た。機嫌が悪いのか、いつにもまして嫌な顔をしている。<br><br>「お前、どこに行ってたんだ」<br><br>「……学校」<br><br>「勉強したのか？」<br><br>「うん……」<br><br>「来年は受験だ。気を引き締めろ」<br><br>「わかってる」<br><br>私はそそくさと家の中に入った。人のせいにするのはよくないが、友達が出来ないのはこのせいであるとも思っている。私は、遊び呆けている人を見下したことはない。ただ、自分は将来に役立つから勉強を今するのだ、と思っているだけだ。けれど、少しだけ、友達というものが羨ましいと思う時もあった。<br><br><br><br><br><br>続く<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12116454673.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Jan 2016 19:48:57 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「生きがい」＃１</title>
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<![CDATA[ 長編小説「生きがい」＃１<br><br><br><br><br>岸谷凪との出会いは不思議なものだった。<br><br>１月５日、外に出ると鳥肌が立つような寒さを覚えた。それでも私は勉強をしに学校へ行かなければ行けない。<br><br>「お姉ちゃん、遊んでよお」<br><br>聞きなれた声に振り向くと、まだ５歳になったばかりの妹の美紅が外に出てきてまで私の服を引っ張った。<br><br>「もう、私は来年は３年なんだから、勉強しなきゃだめなの」<br><br>軽く叱ると、私の母である沙希が困った顔で家から出てきた。<br><br>「桜は忙しいんだから、よしなさい」<br><br>その声にやっと美紅は「はーい」と納得した。<br><br>足早に学校へ向かう。冬休みである今、朝の８時半から昼の１２時まで学校で勉強するのが日課だった。夕方は３年生が増え、教室が使えないのである。<br><br>今のうちから勉強を、と何度もいってくれたのは父の和博だった。おかげで成績は高校で常にトップ、いい大学への推薦枠も取れるということだ。<br><br>どれだけ成績がよくても、勉強だけは怠らない。そう思ってきた。<br><br>自習室を除くと、珍しく誰もいなかった。私は嬉しく思い、自習室へ入った。あいているなら、教室よりは断然自習室のほうが位置的にも部活動をしている生徒の声が届きづらく、勉強する環境が整っているのだ。<br><br>窓側の一番前の席で勉強道具を広げる。すると、１時間もしないうちに、バンッとドアが開いた。<br><br>「ここで反省して――あ、霧島」<br><br>生活指導担当の相田先生だった。あまりにびっくりして、あわててたずねる。<br><br>「ど、どうしたんですか？」<br><br>「お前、今日も勉強か。えらいな。それでさ、こいつも一緒に勉強していい？」<br><br>先生の指差す方向には、見覚えのない男子生徒がいた。<br><br>「おら、岸谷、何ボーっとしてんだよ」<br><br>彼に対し、随分と怒っているようだった。それに比べ、岸谷と呼ばれた生徒は無言のまま椅子に座り、勉強道具を開いた。<br><br>「俺がもう１回来るまでそこから出るなよ、わかったな？」<br><br>「……」<br><br>「返事しろ」<br><br>「……はい」<br><br>相田先生はピシャリとドアを閉めた。なんだったんだろう、と勉強に戻った。すると、男子生徒は開いた勉強道具を閉じ、私のほうへ寄ってきた。<br><br>「ねえ」<br><br>げっ、話しかけられた、と思いながら、「何ですか」と無愛想に訊く。あまり先生に怒られるような生徒とは関わりたくなかったのだ。<br><br>「何で勉強するの？」<br><br>初対面でしかも勉強中の私に、いきなり馴れ馴れしく話しかけてきて、私は少しの苛立ちさえ覚えた。<br><br>「将来に役立てるだめです」<br><br>ぶっきらぼうにそう言うと、彼は顔をぱあっと明るくさせた。<br><br>「だよね、だよね」<br><br>「……？」<br><br>「じゃあさ、俺と一緒に説得してくれないかな？先生に」<br><br>「は？何を？」<br><br>「勉強は将来に役立てるためにしてますって。君、学年トップの子だよね？君が言えば絶対通じると思うしっ」<br><br>突然キラキラした表情で話す彼。理解できそうでできない言葉。状況がいまいちつかめずにいたが、次の彼の言葉で、すべて話が繋がった。<br><br>「俺、２０歳まで生きられないんだ」<br><br>「……え？」<br><br>「持病で、小さいころに医者に言われた。小学生まではずーっと病院にいて、中学は入退院繰り返してたんだけど、１５のときに、治らないからもう好きにしなさいって言われた。だから俺はその辺遊びまわりたかったんだけど、成績だけはよかったから高校に入りなさいって親に言われてさ。ここの学校、出席日数とかあんま見てないから、受かって、今に至る」<br><br>「……」<br><br>「でも、先生が課題やりなさいだの、授業ちゃんと受けなさいだのうるさくて。だから、一緒に説得してくれない？」<br><br>いきなりの重い話に、彼の軽い口調が似合わなかった。それにしても、彼はまるで生きる希望を失っているようだ。死ぬと告げられたのなら当たり前かもしれないが、もう少し、生きたいって思ってもいいんじゃないかとこちらが考えてしまうくらい、死ぬことが当たり前のような振る舞いだ。<br><br>すると彼は、いたずらに笑った。<br><br>「あ、それなら退学すればって顔でしょ、それ。それがねえ、親に何度も言ってるんだけど、許してくれないんだよね。お父さんには殴られたし」<br><br>違ったが、彼の言葉に驚いて訊き返す。<br><br>「えっ？」<br><br>「どうせ死ぬんだから、いいでしょ、俺の好きで。勉強なんてしたくないよってずーっと言ってたらね。俺にはあの人が理解できないわ。たぶん、俺のこと嫌いだと思うし」<br><br>「……馬鹿ですか？あなた」<br><br>それまでのイライラもあり、思わず口が悪くなってしまった。彼は「へっ？」と変な声を出した。<br><br>「大好きだから、殴ったんじゃないですか」<br><br>「何それ」<br><br>「どうせ死ぬって言葉、最悪ですよ。あなたは入院中、家族に支えられてきたんじゃないんですか？家族はあなたを信じて、看病してきたんじゃないんですか？それなのに、そんな簡単に『死ぬ』なんて家族に言ったら、悲しみますよ。殴りもしますよ。もっと愛されてるって自覚持ってください」<br><br>自分で言ってはっとする。勉強をそっちのけで説教たれてしまった。彼は目を見開いて何も言わなかった。<br><br>慌ててペンを進めた。集中しなければ。１２時まで２時間くらいしかない。そう思っていると、ずっと黙っていた彼は突然笑った。<br><br>「そうだね、ごめん」<br><br>「……」<br><br>「でも、俺も気持ちもわかるよね？もう無理だから好きにしろって、１５で言われたんだよ」<br><br>「そうなんですか」<br><br>「……みんな、俺の気持ちはわかってくれないんだよね。興味ないって感じかなあ」<br><br>「初対面ですし」<br><br>「まあ、理解者がいて、生きたいって思ったら、死ぬことも怖くなっちゃうもんね。先生の言うとおりの、つまんない日々を送ってるほうがいいね」<br><br>彼はすたすたと歩いて勉強へと戻った。途中あくびが聞こえたり、顔を伏せたりしていたが、何とか次に先生が来るまで耐え切ったようだ。<br><br>「岸谷、お前、逃げずによくがんばったなあ」<br><br>相田先生も意外だったのか、笑いながら男子生徒の頭をたたく。普段悪い生徒に注意している中で、こんなにすんなり言うことを訊いたのも珍しいケースなのだろう。<br><br>「課題はまったく進んでないが。まあ、今回は居ただけでも許してやろう」<br><br>「じゃあ、帰ってもいいですか？」<br><br>「ああ」<br><br>「やったあ」と少年のように喜ぶ彼に、本当に病気なのかと疑った。明るく元気で、死にそうとは思えない。けれど、異常なまでにやせ細った体を見て、現実を突きつけられた気分になった。<br><br>「じゃあ、先生、また明日」<br><br>彼の笑顔に、いつも威厳を持ったきつい顔をしている先生も思わず頬を緩めていた。<br><br>「明日は悪さするなよー」<br><br>「はーい」の声とともに、彼は自習室を出た。<br><br>「ごめんな、霧島」<br><br>「彼が何か悪さしたんですか」<br><br>「ああ。まあな。たいしたことじゃないんだけど、学校で携帯ゲームをいじってたんだよな。ちょっと怒ったけど、あんだけ素直だと、甘くなるな」<br><br>「……」<br><br>「あいつ、学生時代なかったも同然だから、ふざけたいってのもわかるけどな。って、話しすぎたな」<br><br>「いえ、彼からもういろんな話聞いてるんで大丈夫です。なぜ勉強しているのか聞かれ、将来のためと答えたら、じゃあ自分は２０歳で死ぬから勉強しなくていいんだよね、というようなことを訊いてきました」<br><br>「そうか……」<br><br>「私は、そのことに関しては何も答えられませんでした」<br><br>そう言うと、相田先生は悩むように言った。<br><br>「先生も、なるべく力になってあげたいんだが、何だが、生きる事を望んでいるのはあいつの周りの人間だけな気がしてな。あいつ自身は、どうでもいいんだろうな……そこで、それで納得しちゃだめだが」<br><br>「そうですか……」<br><br>「お前も、あいつのことが気になるなら、少しでも声掛けてやれないか？同じ学年で、３組の岸谷凪だ。あいつも、誰にでもそういう話するわけではないだろうし、お前だからしたんだろう。最初は相成れないと思うが……」<br><br>「……暇があったら、施行してみます」<br><br>「よろしくな。勉強もがんばれ。期待してるからな」<br><br>先生はそう残して自習室を出た。<br><br><br><br><br><br>続く<br><br><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12116451544.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Jan 2016 19:44:34 +0900</pubDate>
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<title>短編小説「言葉」</title>
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<![CDATA[ 短編小説「言葉」<br>今回は詩に近いです。短編が続いてしまって申し訳ありません。<br><br>友達が最近何に関しても「死にたい」と連呼するのでメッセージを作りました。別段その友達が読んでる訳ではありませんが。<br><br>※不快な思いをする方もいるかもしれません。ご了承を。<br>※若干前々回の話と重なる部分があります。<br><br><br><br>――死にたい。<br><br>誰にでも、SNS上であれども、幾度となくそうやって言う人がいるけれど、じゃあ死んだらって思う僕はおかしいのでしょうか。<br><br>そういう人は大抵、言ってほしい言葉が決まっていて、望み通りにもらえなかったら縁を切ります。<br><br>正直に言って、面倒くさいのです。<br><br>リストカットしたと嘆く人や、飛び降りたいと願う人もいるけれど、その人が飛び降りる日が待ち遠しくて仕方の無い僕はきっと頭がおかしいのでしょう。<br><br>生きたくない。<br><br>でも死にたくない。<br><br>だから流される様に日々を過ごしてる。<br><br>それはもう、生きるの一択ではありませんか。<br><br>もともと「生きる」と答えが決まっているのではありませんか。<br><br>なぜ生きたくも死にたくもない人間は、<br><br>「僕が支えになるから、一緒に生きましょう」<br><br>と言うと、それを素直に受け入れるのに、<br><br>「僕も手伝うから、一緒に死にましょう」<br><br>と言うと、そうやって怒りだすのですか。<br><br>「私が求めているのはそういう言葉じゃない」<br><br>ほらね。初めから死にたくなんか無かったのです。<br><br>だって、本当に死にたい人間は、幾度も言わないんですよ。<br><br>「死にたい」なんて。<br><br>笑顔のまま、優しい顔をして、何も言わずに、死んでいってしまうのです。<br> <br>そういう人ほど、気づいてあげられなかった後悔が生まれるのです。<br><br>一度だけ、一度だけでよかった。<br><br>「助けて」<br><br>それだけで、僕はこの命を犠牲にしても、あなたに尽くしたのに。<br><br>何度も死にたいと言う人は、自分がどれだけ自分を好きかを知りません。<br><br>自己嫌悪に陥るフリをして、可哀想な自分が大好きです。<br><br>本当に死にたい人は自分がどれだけ必要とされているのかを知りません。<br><br>だから、迷惑をかけてしまうのでは、と恐れて誰かの助け舟を求める事なんて到底出来ません。<br><br>言葉がどれだけ人を困らせ、どれだけ人を助けるのか、僕にはわかりません。<br><br>ただ、ひとつ言いたいのは、何度も死にたいと言える人は、十分に幸せ者だと、僕は思います――<br><br><br>彼の誰宛でもなく残された手紙には、きれいな字でそう綴られていた。<br><br>彼の言う「あなた」は、彼が大好きだった、先月自らこの世を去った彼の彼女だ。そして彼もまた、ついこの間、この手紙を残し、自ら命を絶った。<br><br>こんなにも死ぬことについて語っているのに、自殺をしたのは、彼自身も自分は死んでも平気だと判断したからだろう。<br><br>俺は、手紙を静かに、ぐしゃぐしゃに握りしめた。<br><br>自分も大切な人が死ぬ体験をし、辛い思いをしたくせに、なぜ人に同じことが出来るのだろうか。<br><br>それでも、溢れ出そうな涙をぐっと堪えた。<br><br>彼の両親が、隣で棺にすがり付くようにして泣き崩れているからだ。<br><br>「ごめんなあ、お前の悩みに気づいてあげられなくて……ごめんなあ……」<br><br>ずっとそんなことを呟いている横で、せめて彼らにはバレないよう、俺はぐしゃぐしゃになった手紙をポケットに詰めた。<br><br>こんな手紙を残した上に、誰にも何も言わずに死を選ぶという事実は、彼の両親にとってあまりにも悲惨すぎる。<br><br>「人間って、自己中心的だよな。……お前も、お前の彼女も……迷惑とか、勝手に決めつけてさ……」<br><br>堪え切れなかった涙がぽたぽたとこぼれおちる。<br><br>けれど、十数年間、彼とは仲の良い友達として一緒に過ごしてきた。<br>だから、そんなにも過ごして一言もなかったのは、俺にも責任があったからなのかもしれない。<br><br>「俺も、お前がそういう相談できるくらい、しっかりしてなきゃいけなかったんだよな……ごめんな」<br><br>彼は手紙で、彼女を救えなかった後悔を語る反面、死にたいと軽々しく言う人に対して、死んでほしいと言葉を綴っていた。<br><br>たった少しの言葉の多さで、相手を不快な気持ちにさせ、死んでほしいとさえ思わせる。<br><br>けれど、たった少しのすれ違いと、言葉の足りなさで、毎日毎日誰かの命がなくなっている。<br><br>それがうまく調和して、それとなく日々を送っているのが、今こうして生きている俺達だ。<br><br>どうしたら皆がみな、うまく調和し、世界を回せるのだろうか。<br><br>どうしたら、お前は、もう少し生きることが出来たのだろうか。<br><br>俺は、そう問いかけるように、そっと目を閉じた。<br><br><br><br>終わり<br><br>次回はハッピーな話がかけるように頑張ります。<br><br>批判は出来るかぎり受け入れます。<br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12098383220.html</link>
<pubDate>Sun, 22 Nov 2015 17:04:54 +0900</pubDate>
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<title>短編小説「タンポポ」</title>
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<![CDATA[ 短編小説「タンポポ」<br><br><br>更新遅れてすみません(-ω-；)これからも遅れると思いますがよろしくお願いします。<br><br><br>「――笑ってる」<br><br>ふと、隣に居たナオちゃんが呟いた。<br><br>「何が？」<br><br>「あの子が、こんにちはって」<br><br>彼女の指さす方向を見ると、そこには一輪のタンポポが咲いていた。<br><br>「こんな冬に……？」<br><br>「３月だからチラホラと咲き始めるのよ。タンポポはね、鼓草ともいうんだよ。愛言葉は、愛の神託、真心の愛……私が大好きな花なんだ」<br><br>彼女は、そう言ってタンポポにそっと触り、笑った。<br><br>ナオちゃんは、いわゆる「変な」子だった。なんでも、生き物の心の声がしっかりと日本語として聞こえるらしい。<br><br>初めは信じる事が出来なかった。けれど、信じなければならない状況になった時、私は気味悪さを覚えた。<br><br>「――って、考えているでしょう」<br><br>ずばりと当てられた。私がなんて思っているのか解るのかと冗談めいた声で言うと、重々しい彼女の口から出た言葉と、私の心の中の言葉は見事に一致したのだ。<br><br>「……そ、そっか」<br><br>「どうしたらいいかな？」<br><br>ナオちゃんが不安そうに私を見つめる。<br><br>「別に……今まで通りで良いんじゃない？」<br><br>口ではそう告げたが、心の中では少しだけ嫌な感情を抱いてしまっていた。そうして、こういうものも全て見えてしまうのだろうか、と慌てて深呼吸した。<br><br>「……ありがとう、ユキちゃんにそう言ってもらえて、安心した」<br><br>ナオちゃんは微笑をもらし、そう言った。<br><br>――あの時、ナオちゃんは私の心の声を聞いたのだろうか。それは今になってもわからない。けれど、その後、彼女は私に「でも、ユキちゃんには使わないようにする」と告げた。<br><br>「……けほっ」<br><br>隣を歩いていたナオちゃんが、突然座り込んだ。<br><br>「大丈夫？」<br><br>「うん……薬飲む」<br><br>ナオちゃんは、肩に下げていたかばんから小さなポーチをとり出し、つぶ薬を３粒ほど手のひらに載せた。<br><br>「トイレに行く？」<br><br>「ううん、平気。水持ってるから」<br><br>薬を飲み、一段落する。すると、もう一度歩きに行こうとナオちゃんが言った。<br><br>「……もう病院戻った方がいいよ」<br><br>「戻ってもつまらないよ」<br><br>「でもおとなしくしてないと、いつまでたっても退院できないよ」<br><br>叱るように言うと、ナオちゃんは笑っただけだった。<br><br>ナオちゃんは幼いころから持病を持っていた。幼馴染みである私は、それに気を遣えと親に言われ、いつも彼女と一緒に居た。<br><br>そんな彼女が突然倒れたのは、もう高校生活も終わりを迎える頃だった。<br><br>初めは持病が悪化したものと思われたが、医者からは「それもそうだが、重度なストレスも関連している」と告げられた。<br><br>彼女の両親は、「ストレス？」と不思議そうに首をかしげたが、高校２年の時に例の事を告げられていた私は、すぐにその事関連だと思った。<br><br>私にはその力を使わないと誓われた日から、私にその話はあまりしなくなったけれど、きっとたくさんの人間の心の声を聞いてしまっているのだろう。ましてや現役の女子高生の心の声なんて、黒いものばかりに決まっている。<br><br>「聞かないように出来ないの？」<br><br>「みんな嘘ついてるんだって、わかった時から、聞かないと怖くなっちゃって……」<br><br>身に覚えがあり、彼女の主張がすぐに納得できた。喧嘩した時や、相手が無視する時、笑っている時、心の中を知りたいと思ってしまうものだ。<br><br>「直物は、正直で、強くて、逞しくて真っすぐで……」<br><br>彼女は外を眺めながらそう呟いた。<br><br>「ナオちゃんはタンポポみたいだよね」<br><br>ある日、私がぽつりとそう言うと、ナオちゃんは怪訝な顔をした。<br><br>「どうして？」<br><br>「可愛いし」<br><br>「かっ、かわ……？」<br><br>「結構男の子、ナオちゃんに注目してたんだよ。ナオちゃんは見向きもしてなかったけど」<br><br>「……人はちょっと、恐いな」<br><br>「そっか……」<br><br>羨ましいなあ――と思った。前々から思っていたけれど、ナオちゃんと私は正直、不釣り合いだ。いつでもニコニコしていて可愛いナオちゃんと、少し性格がきついと言われあまり好かれない私とでは……。<br><br>嫉妬しないわけがない。それでも、自由奔放で私の心配をよそに出掛け、自分を大切にしないナオちゃんに少しだけ腹が立っていた。<br><br>せっかく私がこうして忙しいナオちゃんの両親の代わりに毎日病院にきてるのに……。<br><br>そんな事を思っている途中で、ハッとした。ナオちゃんが私をじっと見ている。<br><br>「……えっ、あ」<br><br>そうだ、この子は人の声が聞こえるんだ、と思った。けれどナオちゃんは笑った。<br><br>「心配しないで。ユキちゃんとは正面から向かい合いたいから」<br><br>心の声なんて聞かず、焦っている私を見て判断したのか、それとも心の内を聞いたのか。どっちかは解らないが、自分にとって都合のいい方を信じることにした。<br><br>「……とにかくさ、安静にしてなよ」<br><br>「私は、植物と一緒なら――」<br><br>「死んだっていいの？」ナオちゃんの聞きなれた口癖に、あとに続く言葉を少しだけ口調を強めてとると、彼女は悲しそうに、そして少しだけ嬉しそうに、笑った。<br><br>「うん」<br><br>「でも、死んだら植物と一緒に過ごせないよ」<br><br>「そうだね」<br><br>「私の前で死ぬとか言わないで」<br><br>「……うん」<br><br>彼女は笑みをこぼした。その笑顔に嬉しさは見受けられなかった。<br><br>ナオちゃんが入院して２か月が経とうとしていた。３月となり、もうほとんどの生徒の進学、就職先が決まり、すっかり皆卒業気分だった。<br><br>ナオちゃんは大学へ行く気はさらさらないようで、勉強など全くしていなかった。<br><br>私も、最初は少しでもしなよ、治った時どうするのと説得していたが、曖昧に返事を返されるだけで、結局話は聞いてもらえなかったのだ。<br><br>「――奈央ちゃん、だっけ？卒業式も参加しないの？」<br><br>ある日、クラスメイトが私に尋ねた。<br><br>「えっ、うーん……どうだろう。そこまでには退院できると思うけど……」<br><br>話しかけられる事にあまり慣れていなかった私はしどろもどろに答えた。<br><br>「まあでも、あたし、あの子の事あんまわかんないんだよね。３年になってから一度も来てないし」<br><br>「まあ、そうだね……」<br><br>「それより、由紀ちゃんはさ、元気でしょ？」<br><br>「まあ……」<br><br>「じゃあ、今度の日曜遊ぼうよ。エミと、アスカと」<br><br>「えっ？」<br><br>予期しなかった言葉に、思わず目を見開く。<br><br>「卒業する前に、皆で遊ぼうってなったんだよ。由紀ちゃんもさ、あんまり放課後病院ばっかよってると、卒業式までずっとクラスで交流なしになっちゃうよ」<br><br>「……」<br><br>「まあもう終わるけどね、高校生活。とりあえず、日曜平気？」<br><br>「うん……」<br><br>「じゃあ決まりねっ」<br><br>戸惑いながらも、私の心の内にはじんわりと温かいものが広がった。<br><br>初めてだった。<br><br>誰かからこうして、遊ぼうと誘われるなんて、思ってもみなかった。<br><br>私は、ナオちゃんに連絡するのも忘れ、クラスの子達と日が暮れるまで遊んだ。<br><br>「由紀って意外と面白いねー」<br><br>「ほんとほんと。また遊ぼうね」<br><br>別れ際に皆が口を揃えていった。私は嬉しくなり、笑顔で「うん」と答えた。<br><br><br>次の日、病院を訪れると、ナオちゃんが珍しく病室でなにやら作業していた。そして、さらに珍しい事に机の上には参考書が開いてあった。<br><br>「勉強？」<br><br>声を出すと、彼女は、ピクッと肩を震わし、顔を上げた。<br><br>「ちょっとね」<br><br>「急にどうしたの。まさか、受験するの？」<br><br>「……今年はもう無理だけど、浪人して来年そうしようかなあって」<br><br>私は目を見開いた。<br><br>勉強していることにはもちろん、彼女が「来年」という言葉を使ったことに動揺と、嬉しさを覚えた。<br><br>「そういえば昨日、連絡出来なくてごめんね」<br><br>「平気だよ。今日は来てくれてありがとう」<br><br>「いえいえ。来年受験かあ」<br><br>ナオちゃんの言葉を繰り返す。確認のためだ。<br><br>ナオちゃんは迷いなしに「うん」と呟いた。<br><br>少しだけイラついたりもしたけれど、やっぱりナオちゃんの笑顔は好きで、ナオちゃんが生きようとしてくれることは純粋に嬉しかったし、生きたいという強い思いがあれば生きられる気がした。<br><br>けれど、現実はそううまくは作られていなかった。<br><br>ある日、2人で勉強をしていると、突然ナオちゃんが発作を起こし、その場に倒れたのだ。<br><br>すぐに看護婦を呼び、ナオちゃんは医師と看護婦にあっという間に囲まれ、処置を受けに連れていかれてしまった。<br><br>私がナオちゃんに会えたのはそれから２時間後だった。部屋を変えられたナオちゃんは酸素マスクをし、ベッドに横になっていた。<br><br>「ユキちゃん……」<br><br>ナオちゃんは弱々しい声で私の名前を呼んだ。<br><br>「ナオちゃん大丈夫？」<br><br>「とりあえず大丈夫だよ」<br><br>「……なにか欲しいものある？買ってくるよ」<br><br>「平気だよ。治ったら買う」<br><br>彼女はニッコリと笑った。<br><br>その笑顔になんとなく安心した。医師のありのままの声を私に伝えていないとこんなに穏やかな笑顔は作れないだろう。<br><br>日もくれた頃になり、私は別れを切り出した。<br><br>「じゃあ、また明日」<br><br>ナオちゃんは笑顔で「うん」と応えた。<br><br>その時、私は特に何の心配もしていなかった。ナオちゃんの身に何かあるなんて思わず、来年は本当に受験できるものだと思っていた。<br><br>しかし、再び彼女が倒れたのは、それから二日もあかない頃だった。<br><br>私が病院に到着する頃にはナオちゃんは目を覚ましており、彼女の両親も彼女の手を握りながら彼女と話していた。<br><br>「こんにちは」<br><br>ドアを開け、挨拶すると、彼女の両親はぺこりとお辞儀をした。<br><br>そうして、私が1歩も病室に足を入れないうちに、ナオちゃんの母親に「ちょっと」と廊下に出された。<br><br>「もう、奈央の命は長くないって、お医者さんに言われたわ」<br><br>私は、あまりの驚きに唖然としてしまった。<br><br>「手術はする。けれど、もう絶望的だって……だから、奈央との時間をどうか、沢山作ってあげて。奈央、あなたのことが1番大好きなのよ。私たちよりも……」<br><br>現実を受け止めきれないまま病室に入った。<br><br>どうして、前までは大丈夫だって言ってたのに……。<br><br>けれど、ナオちゃんの方を見ると、彼女は、穏やかな顔のままだった。<br><br>「大丈夫？」<br><br>そう尋ねると、ナオちゃんは「心配しないで」と笑った。<br><br>「お父さんとお母さん、ちょっと病室出てもらってもいい？」<br><br>ナオちゃんに命じられ、2人は了承して病室を出た。ナオちゃんと２人きりである。<br><br>「……大丈夫だよね？」<br><br>確認のため、もう一度問うと、今度は笑うだけだった。<br><br>「私は、大丈夫だって思ってるよ。絶対に大丈夫って。なんなら心の声を聞いてもいい。だけどね、無理に笑わないで欲しい。私たちはナオちゃんの心の声が聞こえない。だからね、口で言ってくれなきゃわからないの」<br><br>私は真剣な眼差しでそう告げた。すると、ナオちゃんの唇が震えはじめた。<br><br>「ナオちゃん、大丈夫？」<br><br>最後にもう一度だけ問うと、ずっと黙っていたナオちゃんは、静かに首を振った。<br><br>そして、ついに重い口を開いて語り始めた。<br><br>「……ずっと大丈夫じゃなかった。だって、もう無理だって声がそこらから聞こえるんだもん。私だって諦めたくなるよ」<br><br>ナオちゃんの目には今にも溢れ出そうな涙が溜まっていた。<br><br>「だから、あの時は本気で死んだっていいと思ってた。ユキちゃんは、私のことをタンポポみたいって言ってくれた。だから、精一杯この世を恨んで、大好きな人を、植物を愛して、タンポポの綿毛のようにふっと吹き飛ばされればよかった……」<br><br>「ナオちゃん……」<br><br>「でもね、ユキちゃんが病室にこなかった日、気づいたの。ユキちゃんは、いつまでも私のそばにいられるわけじゃないって。私よりも先に、私のそばから離れるかもしれないって……だから、みんなに負けないよう、精一杯生きようって思った。それに、ユキちゃんは私が生きる希望を持ってくれていたから。本当の、心の声はわからないけど、いつも私が生きるように言ってくれていたから……」<br><br>私は、ナオちゃんが本当に心の声を聞いていないことに驚いた。<br><br>ずっと、私と真っ向から向き合ってくれていたんだ……。<br><br>「でも、今日お母さんや、お父さんの声が聞こえた。大丈夫、は嘘だって思って聞いた。そしたら、案の定嘘だった。全然私は大丈夫じゃなかったのね。手術してもしなくても変わらないなら、私はしたくない。手術して、変わり果てた姿のまま死ぬなんて嫌だもの」<br><br>「……」<br><br>ナオちゃんは涙をこぼしながら続けた。<br><br>「ねえユキちゃん、タンポポの花言葉は真心の愛って言ったでしょう。実はね、もう一つ意味があるの」<br><br>「……なに？」<br><br>「タンポポの花言葉は、『別離』。やっぱり、私は空で、ユキちゃんは地上で別々に暮らす運命だったのかな。私はタンポポにそっくりだから」<br><br>ナオちゃんは、そう言ってタンポポのように笑った。<br><br>「タンポポのように綺麗に生きられたかな？タンポポのように綺麗に死ねるかな？」<br><br>涙ぐみながら問うナオちゃんに、私は笑った。<br><br>「ナオちゃん、それでもタンポポが大好きなの？」<br><br>「えっ？」<br><br>「知ってる？タンポポってね、死ぬ時、綿毛を飛ばすの。精一杯、たくさんの綿毛を飛ばすのよ。飛ばしたタンポポはよろしくって、綿毛に魂を受け継ぐのよ。だからタンポポは死なないの。飛んだ先で再びたくさんの道に分かれて生きるの。手術して変わり果てても、また綺麗になる道をいまナオちゃんは選んでいるの」<br><br>「……」<br><br>「私、ナオちゃんよりもタンポポ博士だよ。花言葉も知らなかったし、鼓草って言うのも知らなかったけど、タンポポの、一番大切なこと知ってるから」<br><br>声を絞り出すようにそういった。目から涙がポタポタと溢れ出る。<br><br>本当のタンポポのことなんて知らない。辞書で引いたらきっと違うことが出てくるだろう。けれど、私にとってナオちゃんのタンポポは特別だった。<br><br>ナオちゃんもまた涙をこぼしていた。<br><br>「私が生きるって信じてくれる？綿毛になっても、また綺麗になるまで待ってくれる？」<br><br>「うん、何なら心の声を聞いてよ」<br><br>けれどナオちゃんは首を振った。<br><br>「ユキちゃんには真っ向から向き合いたいから」<br><br>「そっか。ありがとう」<br><br>その後私達は二人で泣いた。そうして、今までの話やこれからの話を沢山した。<br><br>そして、看護婦に呼ばれたナオちゃんは、去り際に私に小さな声で言った。<br><br>「私、嘘ついてたんだけど、1回だけユキちゃんの心の声を聞いちゃったんだ」<br><br>「へっ？」<br><br>「受験するって言った時。みんなは頑張れっていいながらそこまでは生きられないだろうって思ってたけど、ユキちゃんは本当に心の中でも、喜んでくれてた。ユキちゃんは、嘘をつかなかった。不安だった心が一気に溶けた。ありがとう。心の声を聞かないって約束破ってごめんね」<br><br>「……」<br><br>「……頑張るね」<br><br>ナオちゃんは最後にそう一言告げて、別の部屋に連れていかれた。<br><br><br>「ねえ、これどうやって解くの？」<br><br>ナオちゃんが少しだけイライラしながら私に訊く。<br><br>「だからそれは代入するの」<br><br>「でも答えと一致しないよ」<br><br>「答え見ちゃダメじゃんっ、答え見ながらやっていいのは一回目だけって言ったじゃんもうっ」<br><br>「えへへ、ごめんなさあい」そう言っておちゃらけるナオちゃんに、私は呆れながら笑った。<br><br>誰もが絶望的だも思ったあの日、私だけはじっとナオちゃんは大丈夫だと思い続け、ただただ運命のドアが開くのを待っていた。<br><br>そして、医師の言葉に思わず涙が溢れた。<br><br>「奇跡です。手術は成功しましたよ」<br><br>みんなが絶望している中で生きるのは辛かっただろう。私のように、1人でもこうして信じてくれる子が欲しかったんだ。<br><br>確かに嘘を聞くのは怖いが、嘘をついてないとわかるのも心の声を聞けるナオちゃんの特権だ。その力がある方が良いのか、ない方が良いのかは私にはわからなかった。<br><br>手術が終わったナオちゃんはやせ細っていた。<br><br>けれど「これで受験ができる」と言った彼女には、旅をするタンポポの綿毛のように希望が詰まっていた。<br><br>「はい、ズルしたから問一からね」<br><br>私が参考書のページを戻すと、ナオちゃんは「はあい」と笑った。<br><br>「ここが終わったら、外に出ようね。もう春だから、タンポポもたくさん咲いているよ」<br><br>「そうだねえ。楽しみ」<br><br>ナオちゃんと私は、笑いあった。<br><br>これから、私たちの大好きな春が待っているんだ、と――。<br><br><br><br>終わり<br><br>「別離」だったんで男女の恋の話にしようと思ったんですけど、そういえば、男の子だけの話はいくつか書いたけど女の子だけの話は書いてないなあと思って女子ふたりの話にしただけでガールズラブではありません。
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12083651366.html</link>
<pubDate>Sat, 31 Oct 2015 19:32:28 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「おもいやり」＃１０（最終回）</title>
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<![CDATA[ 長編小説「おもいやり」＃１０（最終回）<br><br><br><br><br><br>「……お金がなくて、生活に困ってたから、近藤さんを殴ったんですか？」<br><br>近藤さんの父親の話を一通り聞き、僕はびっくりしながら言った。<br><br>「……恵美子と、お母さんと、今日離婚してきた。酒飲んで、毎日いがみ合って、喧嘩して……拓哉の事が目に見えていなかった。そうして、夜中になって反省するんだ。でもまた恵美子が嫌みを言うとそれに乗って、ループになっていった」<br><br>「……」<br><br>「もう無理だと、別れて、拓哉と２人で、一からやり直そうと思った。今までの事は、もう忘れて……」<br><br>「……忘れる？」<br><br>近藤さんが茫然としたように呟いた。僕も思わず近藤さんのフォローをする。<br><br>「ふざけないでください、簡単に忘れるなんて言わないでください。あなたが一からやり直したって、近藤さんの幼少時代は戻ってこないんですよ」<br><br>「解ってる。今、帰ってきて二人の会話が聞こえてきて、その後もずっと部屋の前で聞いてた。自分の考えがいかに浅はかだったって知った。けれど、俺にはもう、拓哉の望む通りの事しかできない。今まで、散々、二人の我儘を押しつけてしまったから……」<br><br>「……」<br><br>近藤さんは黙ったままだった。そりゃあ、そうだよなあ……いきなり、もうこれからは優しくしますって言われたって、信用出来るわけがない。<br><br>僕が口はさんだ方がいいのか悩んでいると、近藤さんの方から声を出した。<br><br>「望むことなんて……ないです。本当は、一緒にご飯食べて、一緒に話して、遊びたかった。皆と同じように、お父さん、お母さんって呼びたかった……でも、今更こんなこと、言われたって……もう、笑い方を忘れました」<br><br>「近藤さん……」<br><br>「俺、本当にダメな奴だった。見返せば、こんなにくだらない人生だったのに、皆の前では見栄張って……」<br><br>「笑ってましたよ」<br><br>「……え？」<br><br>「遊園地で、近藤さん、笑ってました。楽しそうに」<br><br>「……」<br><br>「きっと、これからも笑えますよ」<br><br>近藤さんは、僕を見た後、黙り込んでしまった。沈黙が続くが、やがて小さな声が聞こえた。<br><br>「……無理だよ。でも、……少しずつ、少しずつでいいから……信じれるようになりたい」<br><br>近藤さんの父親が、近藤さんの手を握った。そして「ごめんな」と呟いた。<br><br>父親目線からすると少し都合よすぎる気もしたが、近藤さんが満足ならと思った。<br><br>「……じゃあ、来週」<br><br>「いや、来週は２人で行くよ」近藤さんの父親が言った。<br><br>「話は聞いていた。拓哉と、しっかり話し合って、２人で行く。これまで、本当にありがとう」<br><br>「……近藤さん、平気ですか？」<br><br>不安になって訪ねると、近藤さんは「平気」と微笑した。<br><br><br>――中学校の、桜の木の下で、一人でボーっとする姿があった。<br><br>僕は、思わず話しかける。<br><br>「……近藤さん？」<br><br>「えっ？」<br><br>「何してるんですか」<br><br>「ああ、いや……もう高校生だなあって思って」<br><br>「そうですね」<br><br>僕らは今日、卒業式を迎えた。中学３年の間は、皆勉強に集中していたが、僕はたびたび龍の所へ行っていた。<br><br>そして、そこで、毎回のように近藤さん親子に出会っていた。<br><br>近藤さんは僕に向かって頭を下げた。<br><br>「……なんか、色々本当にありがとう。苦しかったよな。俺は、本当はこんなに幸せになっちゃいけないのに」<br><br>「感謝なんて要らないです。正直言うと、龍の為にやってたので……残酷ですが、そうやって、一生背負ってもらう事が、目的でした」<br><br>「そっか……じゃあ、もし、朝倉が俺に死んでほしいと遺書に書いてたら、俺の事殺してた？」<br><br>「……わかりません」<br><br>「そうだよな」<br><br>「けれど、死じゃ何の解決もしません」<br><br>「……殺さないってこと？」<br><br>「わかりません。何も解決しないのに、死に直結させるのが、闇を持つ人間ですので」<br><br>「……うん」<br><br>僕はその場に座った。こうして近藤さんと話すことは、最初の頃は予想もしていなかった。<br><br>けれど、届いたかな。<br><br>近藤さんや、龍の心に。<br><br>助けられなくてごめん。<br><br>伝えられなくてごめん。<br><br>夢、叶えさせてあげられなくてごめんね。<br><br>天国で、勉強の続きをしているのかな。……一緒に卒業したかったな。<br><br>「高校生だから、これからが頑張りどきですよね」<br><br>「……ああ」<br><br>「龍も、頑張ってるかな」<br><br>「……ああ」<br><br>僕は目をつぶった。楽しかった思い出を、必死に思い返した。<br><br>きっと龍が望んでいるのは、涙を流す僕じゃない。けれど、泣いていいよね。だって僕は龍の死を望んでいなかった。なのに龍は死んだ。<br><br>だから、僕だって龍が望まなくたって泣くよ。沢山泣くよ。<br><br>泣くほかに仕方がないんだ。<br><br>高校生活は少しだけ不安だった。もし同じような事があったらどうしよう。僕はまた躓くのかな。<br><br>けれど、どんな事があってもしっかりと言わなきゃダメなんだ。「生きてほしい」と。声に出さなきゃ、何にも伝わらない。<br><br>「龍、直人も６年生だよ。あんな小さかったのにね……龍のおかげで、直人も救われたんだよ」<br><br>返事はないけれど、なんとなく龍が笑っているような気がした。<br><br>「近藤さんも、クラスのみんなも……龍のおかげで、気付いたんだ」<br><br>――人を助けたい、と龍は言っていた。<br><br>医者になって、人を助けたいと。<br><br>もし、龍が今でもそう願っているのなら、僕は言ってあげたい。<br><br>「もう、立派な医者だよ」と。<br><br><br><br><br>終わり<br><br><br><br>ここだけのお話<br><br>近藤さんの下の名前を忘却し、＃１まで戻りました(・∀・)<br><br><br>そして、やはり笑って簡単にごまかせるものではなく、とても人々の心に関わるお話なので、追記としてしっかりとあとがきを書かせてもらいます。※重々しい話なので読まなくてもいいです※<br><br>今回のお話は、構成にも時間をかけましたが、何よりも「書く」か「書かない」かにとても迷いました。<br>私は＃１でも言いましたが、いじめた事もなければいじめられた事もなく、また虐待を受けていたわけでもありません。だから軽々しく見ていると思われるかなと、少し恐かったのです。けれど、いじめを機に死んでゆくたくさんの子供たちを見て、胸がつまる思いになりました。いつもこういうニュースを見ると、リアルに、本当に涙が出るんですよね……。<br>そうして、伝えたい事をこうして小説として書くことを決めました。<br><br>沢山の人が見るわけでもなく、また「物語」に載せるので伝わりにくいと思いますが、それでも、誰か一人の心の中に、こういう話があったと思い返してもらえれば幸いです。<br><br>ただ生きるだけでも気力や努力が必要です。ですから、苦しくて、辛くて、頑張れないのは甘えじゃありません。壊れてしまう前に、木陰で休みましょう( ´･ω･)⊃旦<br><br>批判は出来る限り受け止めようと思います。<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12075008140.html</link>
<pubDate>Sun, 20 Sep 2015 01:02:26 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「おもいやり」＃９</title>
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<![CDATA[ 長編小説「おもいやり」＃９<br><br><br><br>僕がチャイムを鳴らすと、龍の母親は少しだけ不安そうに顔を見せた。そして僕一人だと解った途端に、なんとなく安堵していた。<br><br>「こんにちは」ぎこちない笑顔で彼女は言った。<br><br>「こんにちは」<br><br>僕も同じような笑顔で答え、中に入れてもらった。<br><br>リビングに座らされ、僕は、龍の母親がキッチンでお茶を用意しているのを見ていた。<br><br>「今日、あの子は一緒じゃなかったんだね」<br><br>彼女が言う。あの子、とは近藤さんの事だろう。僕はただ「はい」と答えた。<br><br>「……まだ、あの子にあっても、私はどうしたらいいかわからないの。どうしても気持ちの整理が出来ない。あの子が一人で来たら、なにかしてしまうかもしれない」<br><br>「……」<br><br>「誠心誠意で謝っているのに、きっとたくさんの勇気を振り絞って土下座してくれたのに、同情なんて出来なかった。……気付けなかった私が一番悪いのにね」<br><br>「……それは、違います。龍が気付けないようにしていたんです。あなたは何も悪くないです」<br><br>そう言うと、彼女は目に涙を浮かばせた。<br><br>「……ありがとう、本当にいい子ね」<br><br>「……」<br><br>「立ち向かわないとダメなんだよね。親が、くよくよしてちゃ……」<br><br>「ゆっくりでいいと思います。近藤さんも、待ってほしいなら何週間でも待つし、来てほしいならすぐにいくと思います」<br><br>「……そうね」<br><br>「……なにか、力になれる事があったら言ってください」<br><br>「ありがとうね」<br><br>「……何もできなくて、すみませんでした」<br><br>「あなたが何もしてないわけないじゃない。本当に何もしてないのなら、遺書にあんなこと書かないでしょう。自分が無力だったと思わないで。あの子には届いているから」<br><br>「……」<br><br>僕は俯き、机の上のお茶を手にとった。その後は龍が生きてた頃の、他愛のない話をたくさんした。涙をにじませる彼女の手前、話すのは辛かったが、彼女が聞きたいと言うなら断る余地もなかった。<br><br>３時間くらい会話をし、僕は「そろそろかえります」と申し出た。<br><br>「ありがとうね」<br><br>「またきます」<br><br>そう言うと、龍の母親は、「ちょっとまって」と言い、深呼吸をした。<br><br>「来週の土曜日、また来てくれる？……近藤君と」<br><br>「……はい」<br><br>僕は手に力を入れ、頷いた。<br><br><br>家では、仕事が休みだった父親がリビングで新聞を読んでいた。<br><br>「……ただいま」<br><br>声をかけると、彼は新聞を机の上に置き、「おかえり」と答えた。<br><br>「今日早帰りなんだってな」<br><br>「うん」<br><br>「……解決したのか？」<br><br>「……人が死んでるんだ、解決なんてできないよ」<br><br>「そうか」<br><br>「でも、龍が望んでいるものにはできるかもしれない。少なくとも、じっと恨み続けるよりは」<br><br>「……頑張ったな」<br><br>父親のその言葉に、一気に涙腺が緩む。辛かった。龍が死んだことも、自分が力になれなかったことも、直人の件も、反省していなかった近藤さんの話を聞くのも、そして、直接、龍の母親から話を聞くのも……苦しくて、悲しかった。けれど、今、それらすべてが形になりつつあるのだ。<br><br>もう少し、もう少しで、一生になる。<br><br>「来週、また訪ねるよ、龍の家を。近藤さんと一緒に」<br><br>「……そうか」<br><br>「これで、多分、一旦、終りだとおもう……」<br><br>「龍君も喜んでるよ、お前の頑張りを見て」<br><br>「……そうかな、届いてるかな」<br><br>「ああ。届いてるさ」<br><br>「……ありがとう、僕、これから寄るところがあるから、行ってくるね」<br><br>「わかった。でももう夕方だから、すぐ帰ってくるか、遅くなりそうだったら連絡するんだぞ。晩御飯は作っておくよ」<br><br>「うん、ありがとう」<br><br>僕は家を出て、ある先へむかった。近藤さんの家だ。遊園地の帰り、近藤さんと家はそう離れていないと知り、場所は教えてもらっていた。<br><br>歩いていると、近藤さんの家の前で、見慣れた姿があった。<br><br>「近藤さん」<br><br>近藤さんは、僕の姿に驚いた様子を見せた。<br><br>「……え、どうした？」<br><br>「ちょっとお話があって」<br><br>「……ああ、そっか。……中入る？」<br><br>「いいんですか」<br><br>「今親いないし。帰ってきても俺の部屋なら問題ないはず」<br><br>「じゃあ、お邪魔します」<br><br>僕は近藤さんの家に足を運んだ。部屋まで案内される。<br><br>「飲み物いる？」<br><br>「いや、平気です。あんまり長くいるつもりじゃないので」<br><br>「そう。で、何？」<br><br>とりあえず、龍の家に行った事を話した。そして、来週来てほしいという旨を伝えた。<br><br>「わかりましたって言っちゃったんですが、なにか用事ありましたか？」<br><br>「……いや、あったけど行くよ。大した用じゃないし」<br><br>「すみません。用事次第では断りますけど……」<br><br>「俺にとっては今はその件が一番最優先だから」<br><br>「そうですか」<br><br>近藤さんへの用事はそれだけだったが、なんとなく帰る雰囲気ではなかった。少しだけ沈黙が続くと、近藤さんの方から口を開いた。<br><br>「……そろそろ、両親に言おうと思って」<br><br>「えっ」<br><br>「来週、休みなんだ。二人そろって。だから……その日に言おうかなって思って。今回の事、全部」<br><br>「……大丈夫なんですか？」<br><br>「多分、叩かれると思う。でも、自分がしたことだから」<br><br>そういう彼に、口を挟まずには居られなかった。<br><br>「それはちょっとおかしくないですか？散々自分らが息子をいじめて、突き放してきたくせに、正直に言った瞬間それは」<br><br>「……でも、仕方がないと思う」<br><br>「いや、おかしいですよ。普通に考えてください。別の人にそれ言って、殴られるならまだ納得が出来ます。でも、何で今になってそんな正当な親ヅラされなきゃいけないんですか」<br><br>「……」<br><br>「そう思わないんですか？」<br><br>「……けど」<br><br>近藤さんは中々僕の意見を認めなかった。けれど、批判の言葉が見つからないのか、黙ってしまった。僕自身も、自分は間違ってないと思ったため、当然の結果だと思った。<br><br>それでも、近藤さんが認めないのは、きっと理由があるからだ。そして、僕にはなんとなくそれが解っていた。<br><br>「……両親の事、嫌いとか言ってたけど、嘘ですよね」<br><br>「……」<br><br>「本当は、愛されたいだけなんですよね。龍の親が、龍の死をあんなに悲しんでいたように」<br><br>以前僕は、彼がいつかの直人に似ていると言った。それはこういうところだと思う。直人は、父親が家に居る間は本当にニコニコしていた。そして、父親が仕事で、僕も帰りが遅くなると言った日には必ず「なるべく早く帰ってきてね」と言っていた。<br><br>そういうのを重ねて行くうちに、『寂しい』という感情だけが、残っていってしまったんだ。そして、二人とも、その穴を埋めるためだけに、悲しい事件を起こしてしまった。<br><br>近藤さんは黙ったままだった。僕は続けた。<br><br>「けれど、間違っていると僕は思います。確かに、そうして、普通の親として、子供を叱るのは愛です。けれど近藤さんは、もうたくさん怒鳴られてきました。たくさん、見捨てられてきました。それなのに、それ以上親に苦しめられる必要はありますか？」<br><br>「……」<br><br>「もちろんいじめをしていたこと、全てを話すのは大事ですよ。むしろ、話さなきゃいけません。そうして、３人で龍の所へ行かなきゃいけないと思います。ただ、僕は、あなたの両親が頭ごなしにあなたを叱る権利がないと言っているんです」<br><br>「……じゃあ、俺はどうすればいいの？」<br><br>近藤さんは力なしに僕に尋ねた。<br><br>「打ち明けて、叩かれそうになったら僕が止めますよ」<br><br>「……そうしたら、お前、怪我するよ」<br><br>「いいですよ。叩いていいのは、その人を存分に愛した人だけです。それ以外の人が叩いたらそれはもう優しさじゃありません。ただの暴力です」<br><br>「お前が怪我する理由は何ひとつない。でも、俺は、多分、そもそも、生まれない方がよかったから……だから、いっぱい、叩かれるんだと思う」<br><br>近藤さんは俯いた。苦しそうに、息をしている。<br><br>「大丈夫です。大丈夫です。あなたが悪い子だから、今まで叩かれてきたわけじゃないです。あなたが間違っていたことは、人を傷つけてしまった事だけです。自分のすべてを否定しないでください」<br><br>そう言って背中をさすると、近藤さんは涙を零した。<br><br>「ありがとう……ごめん」<br><br>「……とりあえず、来週、龍の家に行った後、そのまま付き添いますよ」<br><br>近藤さんはもう一度「ありがとう」と頷いた。<br><br>すると、突然ドアが開いた。二人でドアの方を向くと、そこには大きな男の人が居た。<br><br>「……こんにちは」<br><br>おそらく近藤さんの父親だろうと思い、あいさつをする。返事はなかった。<br><br>近藤さんは彼の方を見て、怯えていた。どこまで会話を聞いていたんだろうか。<br><br>「……ずっと会話聞いてましたか？」<br><br>男の人は、何も言わなかった。多分聞いていただろう。そんな気がし、とりあえず怯える近藤さんを落ち着かせるためにいった。<br><br>「あなたの悪口を言っていたのは僕です。責めるなら僕を責めてください」<br><br>しかし、彼はずっと立ったままだった。そして、やがてその場に正座し、手をついた。<br><br>「ごめん」<br><br>「……えっ」<br><br>再び黙る。近藤さんも僕も目を見開いていたが、僕は口出しした。<br><br>「そんな、一言で言われたって……」<br><br>すると近藤さんが僕をとめた。<br><br>「いいよ、いいんだ。俺が、俺が悪いんです。すみません、すみません」<br><br>近藤さんは真っ青な顔で何度も謝った。多分、僕の前だからこうしているだけなのかもしれない。今までにも何度かそういう事があったのだろうか。<br><br>僕は疑いの目で彼の父親を見た。けれど、彼は一向に頭を上げなかった。<br><br>「とりあえず、話を聞かせてくれませんか？」<br><br>そう尋ねると、やっと彼は顔を上げ、重い口を開いた。<br><br><br><br><br><br><br><br><br>続く<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12074725310.html</link>
<pubDate>Sat, 19 Sep 2015 21:33:02 +0900</pubDate>
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<title>長編小説「おもいやり」＃８</title>
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<![CDATA[ 長編小説「おもいやり」＃８<br><br><br><br><br>短くてすみません。前回と同じ長さにしようと思うと、すんごいキリが悪くなってしまったのでｍ（－－）ｍ<br><br><br><br><br>「迷惑をかけてすみませんでした」<br><br>近藤さんを含む５人が、教室の前に立って謝罪をした。<br><br>クラス中がシンと静まり返る中で、先生が言う。<br><br>「いじめ、についてもう一度真剣に考え直しましょう。先生も浅はかでした。すみませんでした」<br><br>そんな言葉で龍の死を繕えるわけがない。けれど、確かに僕らは、そういうものを学ぶ機会がなかったのだ。<br><br>それなら、何のための学校なんだ、勉強を学ぶだけじゃないはずだ。勉強は、家ででもできる。じゃあ何故学校は義務教育なんだろう。<br><br>『道徳』の授業がなくなってしまったのはいつからだろう。<br><br>総合の時間、僕ら２学年は体育館に集められた。<br><br>「人が傷つくことをしない、もししてしまったら謝る、小学生の、いや、幼稚園の時に教わりましたね。それが、君たちからなくなったのはいつですか。人の事を考えて行動する、それを意識出来なくなってしまったのは何故ですか」<br><br>校長先生が、ステージに立ち、マイクを通し低い声で言う。<br><br>「それは、簡単なように見えて難しい事だからです。君たちには、一人ひとりの個性があり、プライドがあり、自論があり、それを人に押し付けようとします。そうして、自分に対しての不安を、誰かを見下すことによって、安心に変えますね、違いますか」<br><br>普段、少しはざわついている体育館が、今日は誰もいないように静まり返っていた。先生は演説を続けた。<br><br>「でもそれは間違っています。そのせいで、一人の生徒が命を落としました。残酷でしょうが、君たちはもう１４歳なのです。大人と同等に、逮捕されるのです。都合のいいことばかり真に受けて、自分の理にかなわないときはくだらないと突き放す。もうやめましょう。１対１のケンカをする子供の方が、はるかに大人です。命のはかなさ、大切さについて、もっと知りなさい。彼の人生は、君たちに左右されるものではなかった」<br><br>『命を落とした』と言う言葉が酷く胸に突き刺さった。抜け出したくなったが、じっとこらえ、校長先生の話を聞いた。<br><br>「君たちは今幸せですか？学校から一人の命がなくなって、幸せですか？苦しいですか？何とも思いませんか？大半の生徒は『何とも思わない』でしょう。自分は関わっていない、自分は関係ない、集会なんて面倒臭い、と思っているでしょう。構いません。関わっていないのなら、今回のいじめについて何も知らなかったのなら、集会が面倒だと思っても。ただ一つだけ、この学校には、確かに彼の人生があったという事だけは忘れないでください。一人の人間が、必死に生きようとしていたと言う事を、そうして、耐えきれずに、亡くなったことを。『日常』が、どれだけ大切なのかという事を考えてください。それが、彼が、必死につかもうとしていた『幸せ』なんです」<br><br>大抵の集会の場合、話が終わった途端に、ざわざわとしだすが、今回は誰ひとりと、話を始めなかった。先生の指示を待ち、皆静かに座っている。<br><br>数分してから、やっと指示が出たが、僕たちのクラスだけは、その場に残るように命じられた。きっとひどく怒られるのだろう。今まで放っておいたくせに、と正直思った。あとからならどうとでも言える。<br><br>残された僕らの前に、学年主任の先生が出た。そして、特別にいじめをしていた人だけに、というわけではなく、先生は、クラス皆に向けて言った。<br><br>「皮肉なものです。人が一人死ななきゃ、成長出来ないなんて。けれど、もう、そうするしかないんです。あなた方は、今回の件で、成長しなければならない」<br><br>泣いている生徒がいた。苦しそうに俯く生徒もいた。僕はそのどれの生徒にも当てはまらなかった。<br><br>ただ先生の話を、じっと聞いていた。そして、苦しむクラスメイトを、じっと見ていた。<br><br>本当におかしい。人が死なないと、何にも気付かないなんて。そんななら、この世からいじめをなくすために、何人が死に、何人の遺族が無意味に苦しめばいいのだろうか。<br><br>それは間違っている。なら、どうしたらこの現状を変えられる？それは解らない。でも、変えなきゃいけない。勉強と同じ位、いやそれ以上、この大きな建物の中で、学ばなきゃいけない事があるはずだ。<br><br>その後も校長先生と同じような事を再び言われ、集会が終わるころには皆の元気はなかった。隅っこに居るような女子のグループが、少しだけ会話しているくらいだった。皆、男子も女子も、自分もいじめにかかわっていたという自覚があるのだろう。<br><br>今日は、集会だけで僕らの学年だけ、早帰りとなった。１時間強しか学校に居なかったのに、酷く疲れていた。<br><br>ぼんやりと歩きながら、集会の１時間を思い返していると、後ろから声が聞こえた。<br><br>「慎」<br><br>振り返ると、３人のクラスメイトが居た。いつの日か、会話をした３人だ。<br><br>「何？」<br><br>尋ねると、１人のクラスメイトがおどおどとしながら、声を出した。<br><br>「あの、ごめんなさい……」<br><br>「……何が？」<br><br>「軽々しく、色んなこと言って……」<br><br>「……うん。龍には会った？」<br><br>「３人で、お線香あげにいった……」<br><br>「そっか。これからもたびたび会ってあげてね」<br><br>少しだけ笑う。僕には、彼らにどうこういう権利はない。龍もそれを望んでいない。<br><br>それでも、龍が居た証は残さなきゃいけない。『自分の事を忘れて、皆、幸せになってほしい』と龍はいったが、もし本当にクラスメイト全員が忘れ、集会も開かずに、誰も何も思わないまま生きたら、また誰かが、命を落とすかもしれないのだ。皮肉だが、人の死から何も学べないのなら、幸せを手に入れるのは程遠いだろう。<br><br>「難しいね」<br><br>そう呟くと、３人はそろって目を開いた。<br><br>「何が？」<br><br>「何でもない」<br><br>「……そっか」<br><br>「じゃあ、また明日」<br><br>僕は彼らの返事を聞かず、その場を離れた。そして、龍の家へと足先を向けた。<br><br><br><br><br><br>続く<br><br>私は小学５年生くらいから『道徳』がなくなった気がします（－－）<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/chiri26/entry-12073980085.html</link>
<pubDate>Wed, 16 Sep 2015 23:13:54 +0900</pubDate>
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