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<title>特殊清掃「戦う男たち」</title>
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<description>自殺・孤独死・事故死・殺人・焼死・溺死・ 飛び込み・・・遺体処置から特殊清掃・撤去・遺品処理・整理まで施行する男たち</description>
<language>ja</language>
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<title>行く道</title>
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<![CDATA[ <p>私は、一ヶ月半から二か月毎に床屋に行っている。</p><p>元来、流行やオシャレに関心はなく、「安ければいい」というスタンス。</p><p>で、通っている床屋は、カットのみで￥1,300（十数年前になるが￥500-の時代もあった）。</p><p>しかも、はやい。</p><p>タイミングが悪いと長く待たされることもあるが、カット時間だけだと15分くらい。</p><p>スタッフと社交辞令的な雑談をする必要もなく、人間的な煩わしさもなし。</p><p>財布も気も楽に済む。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、難点がないわけではない。</p><p>切り方はかなり雑で、最初に希望を伝えるのだが、まずもってその通りになることはない。</p><p>あるスタッフは、直接 髪に触れることなく、クシで髪を浮かせてそのままハサミでカットする手法で、ほとんど“乱切り”“散切り”。</p><p>そうは言っても、細かな注文はつけにくい。黙って辛抱する。</p><p>「だったら、普通の床屋に行けばいいだろ！」と内心で言い返されるだけだろうから。</p><p>こういうところでも、自分の小心ぶりが発揮されている。</p><p>&nbsp;</p><p>難点はもう一つ。</p><p>それは、自分の姿。</p><p>普段、自分の顔をマジマジと見ることはない私だが、床屋では、デッカイ鏡の前に座らされるわけで、イヤでも自分の顔を見ることになる。</p><p>「随分と歳とったなぁ・・・」</p><p>「随分くたびれてきたなぁ・・・」</p><p>老朽化していく自分を、どうしても蔑んでしまう。</p><p>そして、鏡の向こうの自分と目が合うと、</p><p>「“若い”と思ってるのはお前だけ」</p><p>「あとはダメになっていくだけ」</p><p>と呟き、淋しいような、切ないような・・・少し惨めなような気分に苛まれるのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「管理物件で起こったことじゃないんで、正規の仕事とは言えないんですけど・・・」</p><p>ある日の夕方、取引関係にある不動管理会社、互いに知った間柄の担当者から電話が入った。</p><p>話の概要はこう。</p><p>「お客であるアパートのオーナーが自宅で足にケガをした」</p><p>「かなりの出血で救急搬送された」</p><p>「家が血だらけになっているらしい」</p><p>「オーナーから“きれいにしてほしい”と相談を受けた」</p><p>「取引のある工事業者関係すべてに当たったが、どこからも断られた」</p><p>というもの。</p><p>この管理会社は割と大きな会社で、外注業者や下請業者をたくさん抱えているのだが、どのツテを辿ってもダメだったよう。</p><p>そこで思い当たったのが当社。</p><p>「人は亡くなってないんですけど・・・そういう所をやってもらうことできますか？」</p><p>と、ちょっと言いにくそうに訊いてきた。</p><p>&nbsp;</p><p>どうも、担当者は、“ヒューマンケアは、人が死んだ現場じゃないと仕事をしない”と勘違いしているよう。</p><p>しかし、もう他にアテはなく、“ダメもと”で連絡してきたよう。</p><p>私は、“人が死んでないと仕事しないって変態かよ！”と自虐しながら、</p><p>「いや・・・亡くなっていない現場でもフツーにやりますよ」</p><p>と笑いを堪えて返答した。</p><p>&nbsp;</p><p>担当者にとって男性は大事なお客。</p><p>グループの建築会社でアパートを建ててくれ、募集契約から管理業務まですべて任せてくれているわけで、仕事の上でその関係は大切にしなければならなかった。</p><p>そんな男性を相手に余程のプレッシャーを感じていたのか、担当者は、</p><p>「ホントですか？　やってもらえるんですか？　助かります！」</p><p>と大いに喜んでくれ、</p><p>「いつ行けます？」</p><p>と矢継早にまくし立ててきた。</p><p>「かなりのおじいさんで、コミュニケーションにコツが要りまして・・・」</p><p>とのことで、私の訪問日時は担当者が調整してくれ、出血事故があった翌々日の午前中に出向くことになった。</p><p>&nbsp;</p><p>春光の時季、約束の時刻は11:00。</p><p>しかし、遅刻が大嫌いで早々に出発した私は10:40頃に到着。</p><p>相手はコミュニケーションが容易ではないくらいの高齢者。</p><p>無闇に外出することは考えにくく、在宅しているだろう”と玄関のインターフォンを押した。</p><p>しかし、応答はなし。</p><p>担当者から「かなりのおじいさん」と、老い衰えが著しい印象を持たざるを得ない説明を受けてきていた私は、“そんなに素早くは動けなか・・・”と、しばし待機。</p><p>そして、２～３分してから再びインターフォンを押した。</p><p>家の中で電子音が鳴っているのは聞こえてきたが、またしても応答はなし。</p><p>&nbsp;</p><p>「ちょっと待っててぇ～」</p><p>携帯電話番号を聞いていたので、“かけてみようかな・・・”と思い悩んでいると、中から細いが聞こえてきた。</p><p>そして、少しすると、玄関ガラス戸の向こうに動く人影が映った。</p><p>そして、中からゆっくりと戸が開き、一人の老人が姿を現した。</p><p>まるで昔話に出てくるような・・・お爺さんらしいお爺さん。</p><p>外はポカポカ陽気なのに家の中は肌寒く、男性は真冬のように厚着。</p><p>季節柄、その装いに不自然さはなかったが、違和感が一つ。</p><p>下半身に難があったのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>「すいません・・・トイレに入ってたものだから・・・」</p><p>パンツは正規の位置にあったものの、スウェットズボンや肌着が太腿まで下りた状態で、それを引き上げようとしていた。</p><p>暦は春でも、朝晩はまだ冷える。</p><p>パンツの上はズボン一枚ではなく、その間に２～3枚の肌着（ラクダ？ももひき？ヒートテック的じゃないヤツ）を重ね着しているものだから、それを一枚一枚引き上げるのに かなり手間取っていた。</p><p>“業者を待たせたら悪い”と思って、男性は中途半端なところでトイレを飛び出してきたのかも。</p><p>約束通り、私が11：00ピッタリに訪問すれば、こんなことにはならなかったかも。</p><p>私は、“タイミングが悪かった！”恥をかかせてしまったかな・・・俺が悪い！”と猛省した。</p><p>&nbsp;</p><p>男性の両耳には補聴器が入っており、耳が遠いのは一目瞭然。</p><p>私は、声を大きくゆっくり話すことを心掛け、質問を投げかけた。</p><p>そして、男性のことを「〇〇さん」と名前呼びではなく、「おとうさん」と呼ばせてもらった。</p><p>また、敬語をベースにしながらも、時々はタメ口も混ぜさせてもらった。</p><p>“初対面のクセに馴れ馴れしい？”</p><p>“年下のクセに生意気？”</p><p>“高齢者をバカにしてる？”</p><p>そんな憂いが頭をもたげてこなくはなかったが、老い衰えた身体に不自由しながらも、一人で懸命に生活している姿に同士的感情と親しみを覚えたからそうしたのだ。</p><p>あと、実父と重なったことも大きかった。</p><p>&nbsp;</p><p>玄関フロア・居間・台所、血痕は三室に渡って広がっていた。</p><p>出血時の男性の動線が血で描かれており、パニックになった男性が室内を右往左往した様を物語っていた</p><p>出血の原因はケガではなくイボ。</p><p>足にできたイボがずっと気に障っていて、軽い気持ちでそれをむしり取ってしまった。</p><p>（たまに爪の脇にでてくる細いヤツが微妙に痛くて、引き抜こうとしたらもっと痛い目をみるのに似てる？）</p><p>その途端、そこから“ピューッ”と糸のように血が噴き出てきた。</p><p>男性は傷口を抑えて止血を試みたが、一向に止まる気配はなし。</p><p>あまりの出血量に恐怖した男性は１１９番、そのまま救急搬送されたのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>病院では傷口を縫合し薬利を塗布。</p><p>そして絆創膏を貼って処置は終了、その日のうちに帰宅。</p><p>入院の覚悟だけではなく失血死の覚悟をも持って救急車に乗り込んだ男性だったので、すぐに戻って来れたことを喜びつつも、呆気なくも思っているようだった。</p><p>ただ、自宅の血痕はかなりインパクトあるもので、一つ間違えれば失血死してもおかしくないレベルに思えた。</p><p>&nbsp;</p><p>男性宅、古さからくる建材の劣化は見受けられたが、荒廃した雰囲気はなし。</p><p>外周にガラクタが放置されているようなこともなし。</p><p>荒れていても仕方がない庭もきれい。</p><p>高齢男性の一人暮らしの割には、極端に汚れていたり散らかっていたりしておらず、老人宅にありがちなアンモニア臭（尿臭）もなし。</p><p>歳相応に、思考力や理解力が低下している感は否めなかったが、矛盾や事実錯誤のない男性の言葉に認知症を感じさせるものはなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、身動きは超ゆっくり。</p><p>歩行はできても、かなりゆっくりで、ほとんど摺り足。</p><p>ｃｍどころかｍｍの段差でも躓（つまず）いてしまいそうでヒヤヒヤ。</p><p>言葉のキャッチボールも超スローボールの投げ合い。</p><p>大きな声で同じセリフを繰り返し、返事がくるまで一呼吸も二呼吸も待つ。</p><p>ただ、会話のコツを掴むと、コミュニケーションは円滑にできるようになった。</p><p>&nbsp;</p><p>一年半前に妻が先立ち、それからは一人暮らし。</p><p>時々、家事援助のヘルパーが来ており、色々世話を焼いてくれているよう。</p><p>食品などの日用品はスーパーのデリバリーを利用。</p><p>料理をすることはほとんどなく、食事の多くは出来合いのもので済ませているそう。</p><p>出身は同市。</p><p>この家にも地域にも、並々ならぬ愛着と想い出があるよう。</p><p>息子（以後「子息」）が一人いるが住まいは離れた他県、かつ仕事が超多忙。</p><p>何かと気にかけてくれるものの、顔を合わせる機会は滅多になかった。</p><p>日がな一日、男性は居間で、寒いときはコタツで、そうでないときはダイニングテーブルの椅子に腰かけ、TVもあまり観ず一人静かに過ごしているそう。</p><p>話を聞けば聞くほど、男性の身体機能を目の当たりにすればするほど、私には、男性の一人暮らしが限界にきているように思えた。</p><p>&nbsp;</p><p>そんな男性に歳を訊くと、</p><p>「九十！・・・この秋で九十一！」</p><p>と、目を輝かせた。</p><p>そして、自分にも同年代で自活している父親がいるから、男性を他人のように思えないことを伝えると、</p><p>「そうか、そうか」と、孤独から解放されたような笑顔を見せてくれた。</p><p>円滑なコミュニケーションが図れず、ぎこちない感じになっていた雰囲気が、それで一気に和やかなものになった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「老いた父親を放ったらかしにしてる」</p><p>子息に対しては、そういう斜め見ができるかもしれない</p><p>が、子息には子息の生活があり仕事があり、その両肩には義務や責任を背負っているはず。</p><p>本当は、口も手も出したいのに、手も足も出せない現実を抱えているかもしれず・・・</p><p>父親の老い先について、他人にはわからない苦悩を抱えているかもしれず・・・</p><p>私は、そんな子息のことを“無責任”とか“薄情”だとかは思わなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>ひょっとしたら、施設の入ること父親にすすめたかもしれない。</p><p>男性は家もアパートも持っており経済的な問題ななさそうで、お金を払って施設に入れば、表向きは平和な生活が送れる。</p><p>悩みを解決するには、それが手っ取り早い。</p><p>しかし、男性は、ただの生き物ではない。</p><p>悩み考え、意志を持つ一人の人間、夢と希望で人生の物語を描ける人間。</p><p>愛着ある土地、想い出のある家、“最後までここにいたい”“最期はここで終わりたい”と思うのは自然なことだった。</p><p>&nbsp;</p><p>老い衰えると、思い通りにならなくなることが増える。</p><p>とりわけ、体力や脳力については。</p><p>もちろん、見た目、外見も変わる。</p><p>「みっともない」「カッコ悪い」、自分でそんな風に思い、他人からそんな風に思われることもある。</p><p>“若優老劣”“若美老醜“の風潮・価値観は根強く、私自身、過去も現在も身に覚えがある。</p><p>そして、加齢を仇のように思い、企業のアンチエイジング商法の乗っかって痛々しいまでの若づくりを試みる人も少なくない。</p><p>しかし、“老い”は自然摂理の祝福、命そのまま、恥や罰ではない。</p><p>喜ばしいこと、めでたいことなのである。</p><p>&nbsp;</p><p>「子供を叱るな 我が来た道、老いを笑うな 我が行く道」</p><p>浄土真宗門徒によるものとされる古い言葉である。</p><p>&nbsp;</p><p>最終章で盛り上がっていくドラマや、終盤にクライマックスを迎える映画は多い。</p><p>人生に置き換えると、その局面は“老い”とその先。</p><p>くたびれていく自分をネガティブに捉えてしまう私だが、</p><p>「九十！・・・この秋で九十一！」</p><p>と応えた男性の誇らしげな顔に、人が老いることの神髄というか真理を見たような気がした。</p><p>そして、“自分の行く道もそうであってほしい”と願ったのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>→※現地画像<a href="https://www.humancare.jp/case/case_58/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">「ヒューマンケアの事例紹介（行く道）」</a></p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12939409543.html</link>
<pubDate>Sat, 25 Oct 2025 06:18:49 +0900</pubDate>
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<title>薄情者</title>
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<![CDATA[ <p>先月末、私は、高齢男性が孤独死し腐敗した現場に出向いた。</p><p>1DKの老朽アパートで、トイレからDKにかけて重汚染が発生しており、その特殊清掃をするためだった。</p><p>アパートは、古い家が軒を連ねる袋小路の最奥にぼんやり建っていた。</p><p>普段、その袋小路に立ち入ってくるのは、郵便配達や宅配、公共料金の検針員など、一目みれば素性のわかる人達ばかり。</p><p>しかし、私の風体は“何屋”なのかわからない。</p><p>わかるのは、“くたびれた中年男”であること、“何かしらの肉体労働者”であることくらいだった。</p><p>&nbsp;</p><p>その日は割と涼しく、アパートの隣々宅の玄関先に近所のおばあさんが三人集まって井戸端会議をしていた。</p><p>一人のおばあさんが、目と鼻の先にいる私に「おにいさん、何の用？」と訊いてきた。</p><p>「そこでちょいと腐乱死体が出て、その掃除にきたんです」なんて言えるわけはなく、とりあえず、「ちょっと、奥のアパートに用があって・・・」と返答。</p><p>すると、「〇号室？」「〇〇さんのとこ？」と興味深げに訊いてきた。</p><p>そこで孤独死が発生したことは、とっくに周知の事実になっているらしかった。</p><p>&nbsp;</p><p>あとは、「お風呂で亡くなってたんでしょ？（実際はトイレ）」「これから何をするの？」「一人でやるの？」等と質問攻め。</p><p>近所の人を敵に回すと 以降の仕事がやりにくくなるので、とりあえず、個人情報に配慮しつつ愛想よく回答。</p><p>また、「お兄さん」と呼ばれたことに気を良くしたことも手伝って、“特掃の達人”であることもＰＲ。</p><p>すると、何を思ったか、一人のおばあさんが、私に向かって手を合わせて拝みはじめた。</p><p>つられて、他のおばあさん達も合掌。</p><p>その意味は、“偉い仕事だね”“ご苦労様”といった労いか、もしくは、“くわばら くわばら”“自分の身には降りかからないように”といった畏れか・・・</p><p>どちらかというと後者のように思えたが、私は、あえて前者を選択。</p><p>今更、蔑まれたり気味悪がられたりしてもビクともしないけど、“情に厚い人達”と思った方が自分に利がある。</p><p>人の薄情はメンタルをパワーダウンさせ、人の情はメンタルをパワーアップしてくれるから。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>付き合いのある不動産管理会社から問い合わせが入った。</p><p>「管理しているアパートで孤独死が発生」</p><p>「発見が遅れて、一部、骨が見えていたそう」</p><p>「見て来て画像を送ってほしい」</p><p>といった内容。</p><p>「鍵は玄関ドアのKeyboxで番号は〇〇〇〇」</p><p>「外に異臭が漏れているかもしれないので、早めに行ってもらえるとありがたい」</p><p>「ついでに、玄関ドアに目張りをお願いしたい」</p><p>と、緊急性の高い状況を伝えられた。</p><p>&nbsp;</p><p>現地調査は、その翌日に設定。</p><p>午前中は動かせない予定が入っていたが、午後は私の都合で動かせる予定だった。</p><p>私は、午後の予定を変更して現場に出向くことに。</p><p>管理会社には、</p><p>「明日の午後、前の用が済み次第行く」</p><p>と伝えて、初動の電話を終えた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>調査の日。</p><p>私は、午前中の用を急いで済ませて現地へ。</p><p>現場は、23区から離れた郊外。</p><p>カーナビが示す位置にそれらしきアパートを見つけると、壁にあるアパート名を目視。</p><p>現場建物に間違いないことを確認すると、車を敷地内の空スペースに駐車。</p><p>車を降り、天を仰ぐように両腕を上げて背筋を伸ばしながら、「いっちょ見てくるか・・・」と心の中でつぶやいた。</p><p>遺体の骨が見えていたくらいの重症現場だったのに、悲壮感も緊張感もまるでなし。</p><p>それどころか、快晴の青空と涼やかな微風を気持ちよく感じるくらい。</p><p>誰も来ない単独での調査なので、隙だらけのお気楽な心持ちだった。</p><p>&nbsp;</p><p>そんな中、私が、各部屋番を横目で流しながら目的の部屋に向かって歩を進めていると、後方から「すいませ～ん！」と声が。</p><p>「ん？俺？」と思って振り向くと、</p><p>一人の女性が、「〇号室に来た業者さんですか？」と言いながら、慌てたように こちらに駆け寄ってきた。</p><p>怪訝に思いながら「そう・・・ですけど・・・」と応えると、</p><p>女性は、「今日の午後に業者さんが来るって聞いたものですから・・・」「亡くなった者の身内です」とのこと。</p><p>どうも、私（業者）の訪問を管理会社から聞いてやって来たらしかった。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、私が管理会社に伝えていた訪問予定は「明日の午後」とだけ。</p><p>一般的な仕事で「午後」とされるのは13:00～17:00頃、長めにみると12:00～18:00頃か。</p><p>4～6時間も幅がある中、女性は私を待っていたよう。</p><p>しかし、私の到着が夕方近くになる可能性もあったわけで、おそらく、女性は昼頃には来ていただろうに、私が現れるまで ひたすら待つつもりだったのか・・・</p><p>もともと、私は、時間にうるさい方。</p><p>とりわけ、約束の時間に遅れることや、人を待たせることが大嫌い。</p><p>自分が待つことになってもいいから、何事においても早め早めに行動する。</p><p>そんな性分だから、約束に遅れたわけでもないのに、女性を待たせてしまったことにストレスを感じた。</p><p>それでも、昼休憩をとらない習性が役に立ち、私は13:30頃に到着。</p><p>結果的に、女性を何時間も待たせずに済んだようで、それだけは何よりだった。</p><p>&nbsp;</p><p>とは言え、遺族が来ることを聞いていなかった私は、少々困惑。</p><p>大家や管理会社なら ざっくばらんに話して大丈夫なことが多いけど、遺族となると、そういうわけにはいかない。</p><p>相手の傷心や悲哀の具合によっては、“ご愁傷様です”といった神妙な表情や悲壮感を要することもある。</p><p>つまり、「空気に合わせて芝居する」ということ。</p><p>私が、女性の心情と意図を探るように、</p><p>「“どなたもお見えにならない”って聞いてたものですから・・・」</p><p>「お越しになるのを知ってたら、時間をお約束したんですけど・・・」</p><p>と言うと、女性は、</p><p>「とんでもない・・・私が勝手に来ただけですから・・・」</p><p>「もう、居ても立っても居られなくて・・・」</p><p>と、落ち着かない様子でペコペコ。</p><p>そして、ことの発端から、ここに来た理由を話してくれた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>亡くなったのは女性の叔母で、歳は80代後半。</p><p>発見されたのは、死亡から二週間余り後のこと。</p><p>キッカケは、外部への異臭漏洩と窓に映るハエの影。</p><p>妙なことに関わりたくなかったのだろう、玄関付近で異臭が感じられるようになっても他住人はしばらくスルー。</p><p>しかし、日毎に異臭は強くなる一方で、ある時から、無数のハエが窓に映るように。</p><p>そこまでいくと、素人でも察しがつく。</p><p>同じく、通報を受けた管理会社も すぐに“ピン”ときた。</p><p>スペアキーを持って現場に向かうと同時に警察にも通報。</p><p>駆けつけてきた警察によって、故人は、自分らしくない姿で発見された。</p><p>&nbsp;</p><p>その知らせを女性に入れてきたのは管理会社。</p><p>衝撃の出来事に女性は仰天し、アパートに急行。</p><p>しかし、到着した部屋は、警察が現場検証中。</p><p>遺体は著しく損壊していたようで、「見ない方がいい」言われたため外で待機。</p><p>そのうちに、頭の先から足の先までスッポリと納体袋に収まった故人が部屋から運び出され、専用運搬車の荷室へ。</p><p>女性は、警察署に向かって出て行く運搬車を、手を合わせながら見送ることしかできなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>女性が予告なくやって来たのは、室内を確認するため。</p><p>「後々のことを考えると、先に写真を撮っておいた方がいいと思いまして・・・」</p><p>と、遺族にしては ちょっと妙なことを言った。</p><p>ただ、女性は部屋の鍵を持っていたので、部屋に入ろうと思えば入れたはず。</p><p>なのに、私が来るまで待機。</p><p>“ま、腐乱死体現場に一人では入りたくないか・・・”</p><p>女性の心細さと、そこそこ頼りにされてることに有難味を感じた私は、</p><p>「先に入っていただいててもよかったんですけどね・・・」</p><p>なんて意地悪なことは言わず、</p><p>「私が先に入って、様子を見てきてもいいですけど・・・」</p><p>と、善人気分を味わうための偽厚情を表に出した。</p><p>&nbsp;</p><p>玄関前には低異臭が漂っていた。</p><p>窓には太ったハエの影・影・影・・・</p><p>とりあえず、玄関は女性が開錠。</p><p>それから女性は二・三歩下がり、私が前へ。</p><p>「じゃ、開けますね」</p><p>と、女性に心の準備をしてもらうため前置き。</p><p>それから、そ～っとドアを引いた。</p><p>すると、いつもの濃い異臭が噴出。</p><p>それは、背後にいる女性のところにまで及ぶくらいの威力。</p><p>私は、女性がたじろぐ様を背中に感じながら、</p><p>「ちょっと見てきますね」</p><p>と、室内に身体を滑り込ませ、素早くドアを閉めた。</p><p>&nbsp;</p><p>間取りは２DK。</p><p>遺体汚染はDK、玄関を入ってすぐのところにあった。</p><p>想定通りの重汚染、もちろん重異臭も充満。</p><p>そんなところでのんびりやっている場合ではない。</p><p>私は、汚染部位とその周辺を、そそくさと観察。</p><p>ものの２～３分で見分を済ませ、素早く外へ脱出した。</p><p>&nbsp;</p><p>私は、心配そうな顔をしている女性に、汚染の状況を説明。</p><p>必要のない身振り手振りを交え、選びようのない言葉を選び、「ドロドロ」「グチャグチャ」「ベタベタ」等の擬態語を控えながら。</p><p>しかし、そんな工夫も虚しく、私の口から出た言葉を組み立てると、結局、超グロテスクなことに。</p><p>すると、女性は、そのまま卒倒してしまうのではないかと思われるくらいに激しく動揺。</p><p>顔を強張らせ、息を荒くした。</p><p>&nbsp;</p><p>女性がそうなるには理由があった。</p><p>それは、女性がアパート賃貸借契約の連帯保証人になっているという事実。</p><p>連帯保証人は、当人（故人）の権利義務をそのまま引き継ぐわけで、原則として、日常生活では生じ得ない汚損について原状回復義務や補償義務を負う。</p><p>孤独死現場の場合、家財の始末はもちろん、特殊清掃・消臭消毒をはじめ、内装・設備の改修もその責任において実施することが求められる。</p><p>お祓いや その後の家賃補償を求められることも珍しくない。</p><p>往々にして、少額では済まないことになり、極端な場合、裁判沙汰になることもあるのである。</p><p>&nbsp;</p><p>女性が管理会社から伝えられたのは、</p><p>「専門業者に見に行かせる」</p><p>「それにかかる費用は負担してもらうことになる」</p><p>「その後のことについては話し合いによる」</p><p>とだけ。</p><p>結局は金で片付くことだし、金で片付けるしかないのだが、金額によっては人生プランを大きく棄損する。</p><p>資力によっては、借金しないと賄えないケースもあるだろう。</p><p>そんな不安を抱えた女性が、平常心でいられるわけはなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>「このアパートに入るとき、叔母から頼まれまして・・・」</p><p>「“他の甥姪には断られた”“他に頼める人がいない”って・・・」</p><p>「断ることもできたんですけど、さすがに薄情に思えて・・・」</p><p>「子供の頃、よく可愛がってもらって、大好きな叔母でしたし・・・」</p><p>女性は、悔いるでもなく、諦めるでもなく、何かに抗いたそうな苦悶の表情。</p><p>気のせいか、目に薄っすらと涙を浮べているようにも見えた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>家賃滞納、事故や孤独死など、今の時世、独居老人に部屋を貸すことがハイリスクになっている。</p><p>一般的に、不動産賃借において保証人を立てられない人は、その任を保証会社に依頼するのが常。</p><p>しかし、故人の場合は資力が問題視されたのか、それも叶わず。</p><p>結局、誰かが連帯保証人にならざるを得ず、親戚中に断られた故人は、女性の厚情にすがるしかなかったのだろう。</p><p>女性にしたって、血の繋がった叔母を一人ぼっちで路頭に迷わせるわけにはいかない。</p><p>孤独死に対する不安がないわけではなかったが、血縁の義理を捨てきれず その任を引き受けたものと思われた。</p><p>&nbsp;</p><p>一方で、「保証人にはなるな！」というのが、ある種の常識でもある。</p><p>それを証するかのように、保証人になって大失敗した風説が流れてくることは少なくない。</p><p>だから、連帯保証人になることに対し、女性の夫もいい顔をしなかったそう。</p><p>また、女性も、遺体が腐乱することや、それに伴って生じる事象にまでは考えが及んでおらず。</p><p>夫は当然のように不機嫌になり、「だから反対したんだ！」「俺が前面に立つ筋合いのものではない！」と一蹴。</p><p>故人と縁のある従姉弟達に「話だけでも・・・」と相談しても、皆、火の粉を払うかのように取り合ってくれず。</p><p>女性は、これまでに味わったことのない類の淋しさと虚しさに打ちのめされたようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>窮地に陥ったとき、人の本性は現れやすい。</p><p>良好だったはずの間柄でも、助けてくれる人、露骨に手の平を返す人、静かに去る人、様々な“人となり”が現れる。</p><p>そして、そこで、はじめて気づかされる。</p><p>人の温かさと冷たさを、人の厚情と薄情を。</p><p>そして、「自分だったら助ける？　それとも離れる？」という自問に対する自答を。</p><p>女性に、自己を顧みる余裕はなかったはずだが、義理堅い性分の故だろうか、周囲の人間を非難するようなことは言わず。</p><p>ただただ、叔母に対する厚情が裏返ってきたことに、呑み込みきれない不条理を感じているようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>頼れる人がいない中で、頼みの綱はネット情報。</p><p>ただ、そこには、多くの不利情報と少しの有利情報が混在。</p><p>まるで、ネットに脅迫されているような状況。</p><p>また、自分のケースには、どの情報が当てはまるのか取捨選択ができず。</p><p>頭は悲観に傾き、目はネガティブ情報にばかり向き、気持ちは沈むばかり。</p><p>「不安で夜も眠れない」</p><p>「食事も喉を通らない」</p><p>と、苦悩の心情を吐露した。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「連帯保証人になっている」と聞いただけで 私の胸には“ズシリ！”とくるものがあった。</p><p>それが並大抵の重さではないことは、法的な理屈としても実体験としても充分に理解できていたから。</p><p>それに加えて、女性が抱える事情や心情を聞いたものだから、それは余計に重くなった。</p><p>薄情者だからこそ、人の厚情は心に滲みる。</p><p>例え、それが自分に対してのものでなくても。</p><p>だからこそ、私は、薄情な仕事（商売）を前提としながらも 少しでも役に立つ方策はないかと考えを巡らせた。</p><p>&nbsp;</p><p>孤独死で遺体が腐敗した場合、遺族は、どうしても罪悪感や羞恥心みたいなものを抱いてしまう。</p><p>そして、「主張できる権利はない」と思い込んだり、権利はあるのに主張を躊躇ったりする。</p><p>そんなときに必要なのは、机上の一般論ではなく、ケースに則した実地のアドバイス。</p><p>「特殊清掃と消臭消毒をしっかりやれば、負担をかなり軽くすることができる」</p><p>「十数年も居住しているわけだから、内装設備の大半を“通常損耗”や“経年劣化”とすることもできるはず」</p><p>「自殺で亡くなったわけではないから、将来的な家賃補償も堂々と協議すればいい」</p><p>「紳士的な管理会社なので、その辺のところは法や裁判例に基づいて公正に判断してくれるはず」</p><p>と、私は、事実は事実として偽りなく伝えた。</p><p>すると、女性は、藁をも掴むような涙目で私を正視し、</p><p>「そうですか・・・」</p><p>「そうなればいいんですけど・・・」</p><p>と、落としていた肩を少しだけ上げ、わずかに表情を緩めた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>父母や兄妹姉妹は亡くなり 夫や子もいない故人の遺産については、代襲相続というカタチの相続権が女性を含めた甥や姪（女性の従姉弟）に生じる。</p><p>ただ、年金と預貯金の取り崩しで細々と暮らしていた故人にまとまった財産はなし。</p><p>同じ権限を持つ従姉弟達は、女性に配慮してか、塁が及ぶのを恐れてか、旨味の少ない額のためか、早々と相続放棄の意思を表示。</p><p>結局、遺産は女性一人が相続することに。</p><p>そして、それは、あれこれかき集めれば100万円余程になりそうに。</p><p>葬送一式、うちにかかる費用、内装改修費の一部に充てるとほとんど消えてしまう額、もしくは、少し足りないくらいの額だったが、全額自己負担することを考えるとゼロみたいなもの。</p><p>まるで、故人が、女性のためを想い、精一杯の勘定で置いて逝ったような遺産だった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>不幸中の幸いで、DKの床材は耐水性が高いクッションフロア（CF）。</p><p>だから、見た目をきれいにする自信はあった。</p><p>事実、言われなければわからないくらいに復旧させることができた。</p><p>問題は、全室の内装建材に染み着いたニオイ。</p><p>ニオイがきれいにとれれば、女性は、ほとんどの内装工事費を免れることができる。</p><p>ただ、そこまでの消臭を実現するには、相応の技術・装備・期間が必要。</p><p>私は、「成果保証はできませんけど、精一杯やることは約束します」と告げて、作業に尽力。</p><p>培ってきたノウハウを結集し、努力と労力を惜しまず作業に勤しんだ。</p><p>&nbsp;</p><p>その目的は、もちろん金（売上）。</p><p>ただ、「女性の期待に応えたい」という、「責任感」「使命感」や「同情心」「善意」にも括り切れない、理屈では説明のつかない意志もあった。</p><p>「情けは人の為ならず、巡り巡って己が為」</p><p>“きれいごと”を吐くようだが、自分が為したことで人が喜んでくれると 自分の心も喜ぶ。</p><p>私の心は、喜びを味わいたかったのだろうと思う。</p><p>つまるところ、女性のためではなく自分のため。</p><p>“自分のため”が“人のため”になることがあるなんて、なかなかの旨味である。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、私は、薄情者。</p><p>人の不幸に密の味を感じ、人の幸せを妬む。</p><p>痩身で腹は出ていないが、その中は真っ黒。</p><p>それでも、私は、図々しく生きてきた。厚かましく生きている。したたかに生きていく。</p><p>くたびれた身体を引きずり、品のないドヤ顔を頼りにしてくれる人々に向けながら。</p><p>誰のためでもなく、自分のために。</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href="https://www.humancare.jp/case/case_57/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">高齢女性の孤独死 特殊清掃事例57</a></p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12937691616.html</link>
<pubDate>Wed, 15 Oct 2025 06:48:13 +0900</pubDate>
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<title>しくじり</title>
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<![CDATA[ <p>やっと十月。</p><p>酷暑の夏も一段落がついた感がある。</p><p>ただ、例年通り、今夏も水の事故が多かった。</p><p>遭遇者の多くは、子供や若者。</p><p>高揚した楽しさと根拠のない安全感覚（過信）が、慎重さや危機感を奪うのだろう。</p><p>事故に至るキッカケは、往々にして些細なこと。</p><p>だから、尚更、その死が傷ましく思える。</p><p>&nbsp;</p><p>30年近く前になるだろうか、海水浴中に溺死した中年男性の頭を洗ったことがあった。</p><p>全身 砂だらけで、髪の間に入り込んだ砂をきれいに洗い落とすのに難儀した。</p><p>その傍らには、現実を受け止めきれずに茫然としている故人の妻がいた。</p><p>若輩で経験が浅かったせいか、その時の私は、目に見えている悲しみにしか心が及ばなかった。</p><p>が、今は、</p><p>「悲しくもあり痛ましくもあるけど、仕方のないことではないか・・・」</p><p>「当人の“しくじり”ではなく、生まれてくる前から定められていた“運命”“宿命”なのではないか・・・」</p><p>と、諦めとも達観ともつかないような想いで受け止めるようになっている。</p><p>&nbsp;</p><p>だからと言って、そう簡単に受け入れられるものではない。</p><p>理屈をこねても、悲しみや痛みが消えるわけでもない。</p><p>一生かかっても消化できない家族も多いだろう。</p><p>ただ、“いい”“わるい”、“好む”“好まざる”は別にして、それでまた、その人の人生がドラマチックに展開していく。</p><p>そして、何かが育まれ、何かが実る。</p><p>それが自分にでなくても、周囲に、次代に。</p><p>命から命が生まれ続けるように。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「管理しているマンションで孤独死が発生」</p><p>「異臭が外に漏れて苦情がきてる」</p><p>「警察から立入許可は得ている」</p><p>「ただ、遺族の確認がとれていない」</p><p>「できる異臭対策はないか？」</p><p>とある不動産管理会社から、そんな相談が入った。</p><p>&nbsp;</p><p>現場は、東京郊外。</p><p>都心からは結構な距離があったが、都内に通勤している人が多くいるエリア。</p><p>問題となっていたのは、そんな地域に建つ五階建の中規模マンション。</p><p>築年数は50年近く、エレベーターもついておらず、公営団地のような設計。</p><p>螺旋状階段の両脇に一世帯ずつ配置、つまり、一つの階段を各階二世帯が共用する構造。</p><p>大規模修繕をしてきた跡はあったが、古びた感は否めず。</p><p>それを裏付けるかのように、暮している人のほとんどは高齢者。</p><p>老夫婦で暮らしている人や、どちらかが先に逝って一人暮らしになっている人が多いようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>住人の大半は、新築時からの入居者。</p><p>しかし、故人は、新築から数年後の入居で、“転校生”みたいな感じだった。</p><p>しかも、ファミリー世帯が圧倒的に多い中で、故人は独り身。</p><p>性格も内向的で、外で出会って挨拶すれば返してはきたが、故人の方から挨拶をしてくることはなかったそう。</p><p>それでも、故人は、他住民との間でトラブルを起こしたこともなく、共用部やゴミ出し等、マンションのルールも遵守。</p><p>問題視することがあるとしたら、敷地清掃などの奉仕活動に非協力的だったことくらい。</p><p>それでも、特段、周囲から嫌われていたり、敬遠されたりもしていたわけでもなく、空気みたいな存在だった。</p><p>そのため、“マンションの生き字引”みたいな永年住人が多い中でも、故人のプライベートをよく知る人はいなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>そんな故人が自宅で孤独死。</p><p>ただ、存在感がなかったものだから、姿が見えなくなっても誰も気に留めず。</p><p>発見のキッカケは玄関からの異臭漏洩。</p><p>玄関前に異臭が漂うようになって初めて気が留まるように。</p><p>故人の部屋は３Fで、同じ階段を利用する３・４・５Fの住人は、日常的に故人宅前を通る。</p><p>「なんか変なニオイしない？」からはじまり、それが「するよね？」となり、日に日に濃くなっていく中で、「やっぱクサいよね！？」となり、いよいよになって「何か変じゃない！？」ということに。</p><p>それで、管理会社に連絡が入ったのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>とりあえず消防が来て、程なくして警察が来た。</p><p>通報を受けた以上、消防は、一応、救出を試みる体で来るのだが、状況を聞いただけで“手遅れ”とわかってやってくる。</p><p>ニオイを嗅いだら尚更で、すぐさま警察にバトンタッチ。</p><p>隣室のベランダから故人宅のベランダに入り、ガラスを割って鍵を開け、中へ。</p><p>すると、人間のカタチをしたものが、リビングのソファーから崩れ落ちていたそうだった。</p><p>&nbsp;</p><p>遺体の変容も相当のもののようだったが、玄関から外に漏れ出している異臭もかなりの濃度。</p><p>問題の３Fはもちろん、共用階段を通じて拡散しており、２Fでも４Fでも感じられるレベル。</p><p>これで苦情が来ないわけはなかった。</p><p>とりわけ、同じ３Fで、玄関が近接して向かい合っている隣室住人の被害は深刻。</p><p>それはそうだ。</p><p>故人宅の玄関ドアと自宅玄関ドアの間は、わずか3ｍ程度。</p><p>自宅を一歩出る度に異臭が感じられるし、油断していると家の中にまで入り込んでくる。</p><p>それが、ただのゴミ臭とかではなく腐乱死体臭なのだから、嗅がされる方はたまったものではない。</p><p>そこにも高齢の夫妻が暮らしており、ご主人から聞いたところ、奥さんはノイローゼ気味になっているそうだった。</p><p>&nbsp;</p><p>とにもかくにも、そんなことになっている現場は、すみやかに特殊清掃を行うことが肝要。</p><p>しかし、それができず。</p><p>理由は法律、相続人の存在。</p><p>故人は、このマンションに暮らし始めたときから単身。</p><p>妻子はなく、近しい血縁者は姉だけ。</p><p>しかし、姉とその家族（以後「遺族」）は、現場から1000km以上も離れた遠方に暮らし、そもそも故人とは何十年も関わりを持たず。</p><p>ただ、そんな姉でも法定相続人。</p><p>どんな状態であろうが、部屋と部屋にあるものは故人の所有物で、つまり、相続が成立すれば相続人のもの。</p><p>承諾なく他人が勝手に手を出すことは許されない状況だった。</p><p>&nbsp;</p><p>とは言え、悠長なことを言っていられるような事態ではない。</p><p>管理会社は、遺族に連絡をとり、早急に対処するよう要請。</p><p>しかし、遺族は、「相続するかどうか思案中」「すぐには承諾できない」とのこと。</p><p>腐乱死体現場の実状が想像できないのはやむを得ないものの、現場と遺族の間には著しい温度差があった。</p><p>&nbsp;</p><p>このマンションは そこそこの老朽物件だったが、それでも、市場価格は700～800万円。</p><p>事故物件である事実と 大規模を要する内装設備改修費用を差し引いても半額にまでは落ちないはず。</p><p>また、故人には預貯金などあるかもしれないし、表面的には、相続した方が得と思われた。</p><p>しかし、相続には「陰の負債」「秘密の借金」という落し穴がある。</p><p>遺族は、その辺のところを警戒し、のらりくらりと慎重な構えをみせているものと思われた。</p><p>&nbsp;</p><p>この場合、他の多くの遺族も同じように考えるだろう。</p><p>金勘定に走る気持ちはわかるし、皮算用してしまう欲も理解できるし、結局のところ、相続するかどうかは遺産の±次第。</p><p>プラスなら相続するだろうし、マイナスなら放棄する。</p><p>しかし、仮に、遺族が相続を放棄した場合、現場を処理する権限を持つ者がいなくなるわけで、自ずと部屋は放置となる。</p><p>つまるところ、マンションは不気味な爆弾を抱えたままとなるわけ。</p><p>数カ月から一年も経てば、ウジ・ハエも尽き、遺体液は別の虫が食いつくし、その跡は木屑のような喰いカスに覆われて、異臭もかなり収まるのだが、それで“一件落着”となるわけはない。</p><p>不衛生な状態は維持されたままで、周囲への悪影響は予測不能。</p><p>また、故人宅は“幽霊屋敷”と目され、精神衛生上もよろしくないことに。</p><p>ハード（建物）もソフト（住民感情）も、相応の被害を受けることは明らかだった。</p><p>&nbsp;</p><p>マンション側には、このまま遺族の出方を待っている余裕はなし。</p><p>住人達に せっつかれっぱなしの管理会社は何度も遺族に折衝。</p><p>遺族も、「遺産を把握するにはマンションや遺品を確認する必要がある」と思ったのだろう、結局、重い腰を上げて現場に来ることに。</p><p>そして、それに合わせて私も現地に呼ばれた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>その当日。</p><p>マンションの集会室には、話が始まる前から重苦しい空気が漂っていた。</p><p>ここで展開される人間模様を想像すると、緊張感も増し加わった。</p><p>集まったのは、故人の姉夫妻、管理会社の担当者、管理組合の役員４名、そして私。</p><p>遺族については、「打算的」「自分本位」「非協力的」等々、そんなマイナスイメージしかなかったが、会ってみると、至って普通の老夫婦。</p><p>相続するかどう迷っているのは事実だったが、マンション側に協力する姿勢はみせていた。</p><p>非協力的に見えていたのは、遺品に下手に手を出すと、イザというとき相続放棄できない可能性がでてくるため。</p><p>後で大きな借金でも見つかったら、自分たちの老後生活が脅かされる。</p><p>遺族は、マンション側の苦境も理解していたが、自分達の生活も守らなければならなかった。</p><p>つまり、苦悩していたのはマンション側だけでなく、遺族も同じだったわけで、その辺の心情が共有されると、途端に、その場の空気は平和的になった。</p><p>&nbsp;</p><p>遺族の慎重姿勢は間違ったことではなかった。</p><p>原則として、故人の所有物に手をつけた場合、相続は放棄できないとされる。</p><p>しかし、実際は、モノによる。</p><p>無価値であることが明らかなものに手をつけただけでは相続を承認したことにはならない。</p><p>したがって、特殊清掃で排出される汚物や不衛生物が問題になる可能性は極めて低い。</p><p>作業内容の記録と処分品の画像を残しておけば充分。</p><p>処分品の目録をつくれば尚よし。</p><p>特殊清掃をしたくらいでは“相続or放棄”に抵触しないことを実例にもとづいて説明すると、遺族も住民側も納得できたようで、安堵の表情を浮かべた。</p><p>&nbsp;</p><p>その上で、私は、これまで対処してきた無数の類似案件を頭でセレクトし、後始末をするにあたっての参考事例として紹介。</p><p>何かの講義でも聴くように、皆、真剣な面持ちで耳を傾けてくれた。</p><p>ただ、聞く側にとって、それは未知の世界。</p><p>好奇心や野次馬根性が刺激されたのだろう、私の話にいちいち反応。</p><p>そのリアクションが大きいものだから、気をよくした私の口は滑らかに。</p><p>エピソードの一部を書き抜いたこのblogでさえ700編を越えているのだから、話すネタが尽きるはずもなく、独演会みたいなことになりかけた。</p><p>が、さすがに、そこまでやったら本末転倒。</p><p>テキトーなところで“特掃講談”を締め、話の向きを協議の方へ戻した。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>私の経験談を聞いて恐れおののいたのか、入室するつもりでいた遺族は その場で断念。</p><p>管理組合の役員も、気マズそうにお互いの顔を見合わせたり、視線を宙に泳がせたり。</p><p>結局、管理会社の担当者と管理組合の理事長が、私に同行することに。</p><p>そうして、我々三人は、前人未踏の地に赴く探検家のように集会室から送り出された。</p><p>&nbsp;</p><p>鍵も持っていないのに、何故か私が先頭。</p><p>故人の部屋は3Fだったが、２Fに上がった時点で早々と異臭を感知。</p><p>外空間の階段にも関わらず。</p><p>私は、「もう、ここで臭いますね・・・」とポツリ。</p><p>二人も、「ですね・・・」とコクリ。</p><p>私は、“ここでこれだけ臭うということは、部屋の中は相当なことになってるな・・・”と憂いながら、３Fに向かって、一段一段 脚を上げた。</p><p>&nbsp;</p><p>勇ましく集会室を出た担当者と理事長だったが、端から一緒に入るつもりはなかったよう。</p><p>皆と一緒に集会室に待機することを肩書が邪魔したのだろうけど、故人宅前に着くと、漂う異臭に顔をしかめながら、しれっと鍵を私に差し出した。</p><p>私は、「“はじめてのおつかい”じゃあるまいし、わざわざ付き添ってもらう必要はなかったのにな」と思いながら、それを受け取った。</p><p>そして、バツが悪そうに下に降りて行く二人を横目に開錠。</p><p>引いたドアの向こうから噴出してきた強烈な悪臭に向かって、「想定内、想定内」と余裕をかまして足を前に出した。</p><p>&nbsp;</p><p>目の前に表れた故人宅は3LDK。</p><p>警察情報の通り、遺体汚染は そのリビングにあった。</p><p>ソファーに腰かけ、亡くなって腐敗が進むにつれ床に崩れた落ちた模様。</p><p>ソファーには薄い皮膚の一部が貼りつき、フローリングも重度に腐食。</p><p>腐敗遺体液に呑まれた面積は、およそ畳二畳分。</p><p>ウジが展開した部分も含めれば、その約二倍。</p><p>更に、ドロドロの腐敗体液には頭髪や爪も混入。</p><p>足の指だろうか、小さな骨も汚物にまみれて転がっていた。</p><p>&nbsp;</p><p>汚染異臭もさることながら、故人の遺産も重要ポイント。</p><p>それを量るヒントが台所にあった。</p><p>それは、プレミアムビールと その空缶。</p><p>ビールは箱買いされ、多めにストック。</p><p>空缶は不燃物のゴミ袋に入れられており、それが何袋もあった。</p><p>週一でゴミを出していたとすれば、一日に何本も飲んでいた様子。</p><p>節約生活を強いられていたら、そこまでは飲めないはずだし、飲むにしても発泡酒や第三のビールにするはず。</p><p>誰に気兼ねすることなく、好きなビールを飲みながら悠々自適にやっていた故人が目に浮かんだ私は、ちょっとほのぼのとした気分に。</p><p>と、同時に、「相続放棄はないな」といった勘が頭を過った。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「どうでした？」</p><p>立派な”ウ〇コ男”に仕上がって帰還してきた私に、遺族が不安げな表情で訊いてきた。</p><p>他の人は好奇心丸出しの表情。</p><p>「わかりやすく言うと、大量のコールタールをぶちまけたみたいになってます」</p><p>「あと、頭髪や爪、警察が拾い損ねた小さな骨も残ってます」</p><p>「ニオイについては、玄関前の何倍・何十倍のレベルです」</p><p>と、事務的に説明。</p><p>すると、皆の顔が硬直。</p><p>「そんなことになっちゃうんだ・・・」</p><p>知らない世界を垣間見た驚きと、起こってほしくない現実が身近にある嘆きと、どうしようもない摂理に対する屈服感が複雑に混ざり合ったような、そんな表情だった。</p><p>&nbsp;</p><p>ここは高齢者の多いマンション。</p><p>独居老人も増えていくばかりで減ることはなさそう。</p><p>時期が来たら堰を切ったように孤独死が発生することも考えられる。</p><p>「〇〇さん（故人）がわざとやったわけでも、しくじったわけでもないんですから・・・」</p><p>「“お互い様”の精神も大切だと思いますよ」</p><p>蛇足かもしれなかったが、そう人生の先輩方を諭すと、皆、神妙な面持ちに。</p><p>そして、“そりゃそうだ”という顔で何度も頷いてくれた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>死は、自然の摂理。</p><p>孤独死は、しくじりではない。</p><p>不意打ちを喰らっただけのこと。</p><p>肉体が朽ちるのも然り。</p><p>悪意の仕業ではない。</p><p>骨肉が自然に還ろうとしているだけのこと。</p><p>孤独死跡も腐乱死体痕も、真は悍ましいものではない。</p><p>&nbsp;</p><p>後日、故人と私、一対一で特殊清掃を実施。</p><p>足の指の骨だろうか、小さな骨が四柱、腐敗物にまみれて残されていた。</p><p>私は、それらを手のひらに拾い集めた。</p><p>それは、故人が生まれてから亡くなるまでの七十年余、数々の泣き笑いと共に故人の一部として生きてきた骨。</p><p>汚らしいゴミにしかみえない骨だけど、ジッと見つめていると、「お疲れ様でした」といった想いが自然と込み上げてきた。</p><p>&nbsp;</p><p>外は大騒ぎ、凄惨な現場での過酷な作業であっても、そこは、平安にも似た穏やかな空気に包まれていた。</p><p>その静けさの中に身を置いていると、</p><p>「“命はいつか終わり、肉体は朽ち消える”という、皆がわかっているつもりでわかっていないことを、日々、俺はわからせてもらってるんだな・・・」</p><p>と、しみじみ。</p><p>何だか、誰かの宝物を譲ってもらったような、ありがたい気持ちが滲み出てきたのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href="https://www.humancare.jp/case/case_56/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">一人暮らしの孤独死 特殊清掃事例56</a></p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12935934972.html</link>
<pubDate>Sun, 05 Oct 2025 06:58:00 +0900</pubDate>
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<title>革命</title>
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<![CDATA[ <p>“彼”から最後に連絡が入ったのは４年前の梅雨時期だった。</p><p>「彼」というのは、仕事の依頼者。</p><p>ちょっとした縁が続いた人だった。</p><p>&nbsp;</p><p>私の仕事における個人の依頼者は、ほとんど“一見のお客”。</p><p>当該の案件が終われば、縁は切れる。</p><p>不動産会社や工事会社等、法人客の場合は縁が続くことはあるけど、個人客のほとんどは、一度きりで終わる（終わった方がいい）。</p><p>しかし、稀に、リピートする個人客がいる。</p><p>&nbsp;</p><p>彼は、その珍しいリピート客の一人。</p><p>それも、一度のリピートに留まらず、初回を合わせると９年に渡って９回も。</p><p>案件の中身はゴミ部屋。</p><p>彼は、いわゆる“ゴミ部屋の主”で、日常生活でゴミを片づけることができない人だった。</p><p>&nbsp;</p><p>最初の連絡も、ゴミ部屋の始末についての相談だった。</p><p>出向いてみると、１Kの部屋はゴミだらけ。</p><p>酒瓶・空缶・ペットボトル・レジ袋・雑誌・日用品・タバコ吸殻等々・・・</p><p>床はまったく見えておらず、多少の高低はありながらも、平均すると膝くらいまで堆積。</p><p>見慣れない人がみたらドン引きするような光景。</p><p>“ミドル級”のゴミ部屋だった。</p><p>&nbsp;</p><p>ひと口に「ゴミ部屋」と言っても、食品や飲料、弁当容器や残飯、水気の多いモノなど、腐ったりカビがきたりしそうなものがあるかどうかによって、衛生状況は大きく変わってくる。</p><p>“腐りモノ”が混ざっていると、異臭や害虫・害獣が発生するだけではなく、床や壁などの内装建材を汚損腐食させる。</p><p>そんな状態を掃除でどうこうできるわけもなく、改修工事が必須となる。</p><p>重症の場合は、内装はもちろん、建具や設備も全解体して新築しなければならないこともある。</p><p>「ゴミを片づけて掃除すれが部屋は元通りになる」と勘違いしている人が多い中、現実は そう甘くないのである。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、彼の部屋は、そこまでのことにはなっておらず。</p><p>水廻りの汚れは酷かったが不衛生度は低く、内装や建具も無事。</p><p>ゴミを撤去し、相応に掃除すればフツーの部屋に戻るレベル。</p><p>“腐りモノ”が混ざっていなかったことが幸いしていた。</p><p>&nbsp;</p><p>特に目立ったのが、ウイスキーの空瓶、ロックアイスの容器や袋、タバコの空箱、キッチンシンクに器用に山積みされた吸殻。</p><p>酒とタバコをこよなく愛しているようで、やみつきの状態。</p><p>酒はウイスキー、すべてＳ社のオールド。</p><p>これが、一番口に合うそう。</p><p>それを、水割でもハイボールでもなくロックでやる。</p><p>週に700ｍｌ瓶を二本くらい空けるそう。</p><p>タバコは、最低でも、一日一箱は吸うそう。</p><p>&nbsp;</p><p>私も酒好きで、ウイスキーも大好物。</p><p>そして、かつては、私もロックで飲んでいた。</p><p>毎晩、何杯も。</p><p>だから、彼の嗜好には大いに賛同できた。</p><p>ただ、それだと、アルコールの接種量が多過ぎることに気づいて、その後、我慢してハイボールに替えた（初めの頃は、味や風味が薄くて不味く感じていた）。</p><p>&nbsp;</p><p>同じ“蟒蛇”でも、肴を好むタイプと、逆に、肴を好まないタイプに分かれる。</p><p>私は前者で、酒豪だった私の父親は後者（今も健在だが酒はやめている）。</p><p>「空きっ腹に浸み込む感じがいいんだ」</p><p>「食べると腹が膨れて酒の味が落ちる」</p><p>と言って、ビール・日本酒・焼酎・ウイスキー・ブランデー、酒類を問わずなんでも美味そうに飲んでいた。</p><p>彼も、後者。</p><p>肴は少しあれば充分で、事実上、タバコを肴に酒を飲んでいるようなものだった。</p><p>&nbsp;</p><p>ゴミ部屋にしてしまう人は、片付けても片付けても、またゴミ部屋にしてしまうように思う。</p><p>全体的にだらしない人もいるだろうけど、「他のことはキチンとできるのにゴミの始末だけはできない」という人もいるように思う。</p><p>こういう人は、「障害」というほどではないものの、脳（精神？）に何らかの不具合があることが少なくないそう。</p><p>彼も、仕事をはじめとした外での社会生活はキチンとできているよう。</p><p>ただ、ゴミの始末や掃除だけはできないのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>彼は、転勤を機にこのアパートで暮らし始めた。</p><p>それまでは実家から通っていたのだが、転勤先は遠く、とても通勤できる距離ではなかった。</p><p>そうして、生まれて初めての一人暮らしが始まった。</p><p>ゴミは溜まり始めたのは、一人暮らし一年目から。</p><p>私が彼の部屋に初めて行ったのは、それから約二年後。</p><p>つまり、部屋には、二～三年分のゴミが溜まっていたというわけだった。</p><p>&nbsp;</p><p>それでも、作業が終わる頃には、思いの外 きれいな部屋が姿を現してきた。</p><p>引き揚げる際には、“これに懲りて、もうゴミを溜めないようにね”という気持ちで、</p><p>「またゴミが溜まってきたら、早めに連絡してください」</p><p>「内装を傷めてしまうと、違う問題がでてきますから」</p><p>「今日の状況から考えると、年に一回くらい呼んでもらえれば、重すぎもせず軽すぎもせず、ちょうどいいかもしれませんね」</p><p>（重すぎると内装を傷めてしまう恐れがある。軽すぎるとコスパが悪い。）</p><p>と、半分冗談のつもりでそう言った。</p><p>すると彼も、</p><p>「そうなったらお願いします」</p><p>と、半分本気みたいな真顔でそう言った。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>約一年後、それは冗談ではなくなった。</p><p>「またお願いします」と、彼は本当に電話を入れてきた。</p><p>彼のことは完全に忘れていた私だったが、状況を聞いてすぐに思い出した。</p><p>彼にとっては喜ばしいことではなかったけど、頼りにされてるようで、ちょっと嬉しい気がした。</p><p>&nbsp;</p><p>二度目のことだから話ははやい。</p><p>ゴミの量は前回より少ないはずなので、作業も軽易なものになるはず。</p><p>「どれだけ安くなるかわからないけど、少なくとも前回より安くなるはず」</p><p>と説明し、現地調査も見積もせず、その場で契約。</p><p>実際に出向いてみると、想像通り、前回よりゴミの量は少なく軽症。</p><p>費用も大幅に低減。</p><p>それで、滞りなく作業を実施した。</p><p>&nbsp;</p><p>以降、まるでそれは季節の風物詩のように。</p><p>暑くなると虫や異臭が涌きやすくなって不衛生なので、その前に片付けるというのが彼のルーティンに。</p><p>次の年も、また次の年も、それ以降も、毎年５月～6月になると彼から連絡が。</p><p>そこまでになると、もう細かい打合せは無用。</p><p>ゴミ部屋の状態は毎年ほぼ同じなので料金も定額化、作業も定型化。</p><p>打ち合わせるのは施工の日時のみ。</p><p>もはや、“勝手知ったる他人の家”。</p><p>到着すると、彼は、「いつも通りで」と、常連だけが口にできる決まり文句に「終わる頃に電話ください」を付け加えて外出。</p><p>作業の間は、床屋に行ったり、ランチをしたり、買い物をしたり、外で時間を潰してくるのが常だった。</p><p>&nbsp;</p><p>キッチンシンク・風呂・トイレ・洗面台は、かなりの汚れようだった。</p><p>で、ある年から掃除してあげるように。</p><p>うちは、“ポイント”があるわけではないけど、無料のサービスで。</p><p>（うちのサービスで“ポイント”があったらマズイような気がする。）</p><p>数年来の汚れがあった一度目のときは特掃に近い作業になったけど、次年からの汚れは一年分のみ。</p><p>普通の家と比べたらかなり汚いけど、特掃隊長にとっては“ライト級”。</p><p>難なく掃除できるようになっていた。</p><p>その厚意を彼は喜んでくれ、私としてもそれが嬉しく、お互いに“味を占めた”かたちでその慣例は続いていった。</p><p>&nbsp;</p><p>会社の健康診断で芳しくない数値がでたそうで、ある年からは、ゴミの中に肝臓系サプリメントの瓶や袋が混ざるように。</p><p>「酒はやめられない」「だけど健康も気になる」</p><p>どうも、苦肉の策として、酒を減らす代わりにサプリを導入したよう。</p><p>効果があるのかないのかわからないけど、その弱々しくも逞しい人間味に、私は親しみをもった。</p><p>&nbsp;</p><p>彼は、私より10才若く、初めて会ったときは30代前半</p><p>大手企業の工場に勤務。</p><p>転勤はあったものの、新卒で入ってからずっと同じ会社に勤めているようで、生計も安定しているよう。</p><p>人柄はソフトで、よく言えば謙虚、悪く言えば野暮ったい感じ。</p><p>訊いたわけじゃないからわからないけど、彼女は・・・いなそう。</p><p>でも、酒とタバコだらけのゴミ部屋は、ある種、彼がそれなりに楽しく暮していることを物語っており、それはそれで“あり”な気がした。</p><p>&nbsp;</p><p>作業費、私は もらう側だから何の問題もないけど、払う側からすると決して安い金額ではない。</p><p>汗水流して得た給料の中から捻出するわけで、趣味・レジャー・貯蓄等、もっと為になる使い方があるはず。</p><p>しかし、もはや、彼にとっては家賃や水道光熱費と同じような感覚か。</p><p>「毎年〇円かければゴミ部屋の始末に悩まされることはない」</p><p>「気心知れた業者で不安はないし、呼べば嫌がらずやってくるし、気楽に頼める」</p><p>と、メンタルの平和を守るには見合った金額だったのだろうと思う。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>そんな月日が流れる中、ある年の梅雨前、また彼から電話がかかってきた。</p><p>年に一回とはいえ、十年近くも毎年会ってきたわけで、友達ではないけど、充分な顔見知り。</p><p>もはや、お互い「客と業者」という空気はなし。</p><p>彼からの着信をみて、「お！？、今年も、もうその季節かぁ」と、まるで友達からの電話にでるようなノリで電話をとった。</p><p>そして、敬語は使うものの、かなりフランクな雰囲気で挨拶。</p><p>同時に、頭の中にカレンダーを掲げ、「作業はいつできるかな・・・」と勝手に思案。</p><p>しかし、彼の口から出た言葉は意外なものだった。</p><p>&nbsp;</p><p>「仕事のお願いじゃないんですけど・・・」</p><p>彼が、少し言いにくそうに用件を話し始めた。</p><p>「実は、自分でやってみたらできたんです！」</p><p>何がキッケカになったのか、彼は、自分でゴミを片づけることができるようになったそう。</p><p>「やればできました！やればできることがわかりました！」</p><p>と、とても嬉しそう。ちょっと誇らしげでもあった。</p><p>だから、もう部屋にゴミは溜まっていないそう。</p><p>一方、仕事の依頼と信じ切っていた私は、やや困惑。</p><p>しかし、ゴミ溜め癖が直ったのはよいことに決まっている。</p><p>“不快に思ってはいけない”という理性が何とか働いて、</p><p>「それはよかったじゃないですか！」</p><p>と、とりあえず、共に喜ぶフリをした。</p><p>&nbsp;</p><p>では、何故、彼は私に電話してきたのか。</p><p>用件は、</p><p>「小バエが出てきて気持ち悪い」</p><p>「駆除する方法を教えてほしい」</p><p>というもの。</p><p>もともと、彼は虫が大の苦手で、他に気軽に相談できる相手がおらず私に電話してきたようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、私が応えられるのは、ネットでも検索できる程度のありきたりの処置対策。</p><p>とは言え、せっかく頼ってきてくれたのに、</p><p>「ネットで調べればでてきますよ」</p><p>としては、あまりにも味気ない。</p><p>私は、頭にある一通りの知識を並べ、最後に、</p><p>「ネットに出てる程度のことでスイマセン・・・」</p><p>と、無難過ぎる自分の回答をフォロー。</p><p>それでも、彼は、“いいことを聞いた”みたいなフリ？をしてくれ、</p><p>「やってみます」</p><p>と、愛想のいい返事をくれた。</p><p>&nbsp;</p><p>結局、彼とのコンタクトはそれが最後となった。</p><p>1Rの軽症ゴミ部屋、しかも年に一回。</p><p>会社の年商ベースでは、それが占める売上利益は極めて軽微。</p><p>依頼がなくなったとしても、商売上のマイナスはゼロに等しい。</p><p>ただ、十年近くも付き合いがあった人と縁が切れるのは、何とも寂しい気がした。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>あれから４年余が経ち、彼は40代後半になっている。</p><p>あの感じからすると、独身男のままだろう。</p><p>そして、まだ同じアパートに暮らし同じ会社に勤めていると思う。</p><p>やめたくてもやめられないのか、やめるつもりもないのか、酒もタバコも続けているだろう。</p><p>加熱式が主流になっているタバコも、好みを頑なに貫き、葉煙草のままのような気がする。</p><p>歳をとれば例外なく身体は衰えるので、サプリメントの量は増えたかも。</p><p>ただ、連絡がないところをみると、ゴミ出しは習慣化できているだろう。</p><p>だから、もう二度と会うことはないだろう・・・</p><p>・・・と思いつつも、人生、何があるかわからない。</p><p>・・・再会する可能性はゼロではない。</p><p>彼が、自室を再びゴミ部屋にしてしまうことを望んでいるわけではないが、そうなる可能性がないわけではない。</p><p>しかし、仮にそうなったとしても、それはそれでOK。</p><p>愚かで弱いのが人間、それを補い支え合うことができるのも また人間なのだから。</p><p>&nbsp;</p><p>それにしても、十余年も続けたゴミ部屋生活から抜け出すのは、容易なことではなかったと思う。</p><p>何が彼を変えたのか、どうやって自分を変えることができたのか・・・</p><p>自分を過小評価し過ぎなのか、問題を過大に捉え過ぎなのか、「やってみたら簡単だった」「思ってたほど難しくなかった」ということはよくある。</p><p>この類のことは大小を問わず、誰しも心当たりがあるのではないだろうか。</p><p>大切なのは、少しの勇気と、少しの行動力、そして、失敗しても自分を責めない懐の深さと、それを気にしない図々しさ。</p><p>そうして、彼は、ゴミ部屋から脱することができたものと思う。</p><p>他人からすると取るに足らないことだけど、彼にとっては大革命。</p><p>その経験は、彼の心持ちと暮らしを健やかにし、人間力を大きく高めたに違いなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>ゴミのない部屋で飲む酒、吸うタバコの味は格別だろう。</p><p>業者ではなく、自分で片付けた部屋だったら尚更。</p><p>そんな部屋で彼がタバコを肴に酒を飲んでいる姿を想像すると・・・</p><p>小さなドラマを繰り返しながら営まれている彼らしい暮らし、ささやかな幸せを味わいながら過ぎている彼なりの人生が垣間見え・・・</p><p>平凡な人間の平凡な人生でも、一人の人間の中では、すべてが特別であることがジンワリと沁みてきた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>人生の道程には、たくさんの“トリックアート”がある。</p><p>立ちはだかる崖の高さも、恐ろしい谷の深さも、自分が勝手につくり出す。</p><p>動いてみれば何てことないのに、その前に自分の力を疑い、非力を恐れる。</p><p>そして、悪い予感の中で、自分を否定する。</p><p>誰かと比べて消える自尊心や、無理だと諦めている自己変革も似たようなもの。</p><p>少しの勇気と、少しの行動力で、意外と簡単に手に入るものかもしれない。</p><p>&nbsp;</p><p>たまには、自分の志向と行動をちょっと変えて、自分を褒めてやろう。</p><p>普段はなかなかありつけない自己肯定感を、自分に味わわせてやろう。</p><p>それは、低い崖を登っても、浅い谷を渡っても手に入るもの・・・</p><p>自分が生きて存在していることに、やみつきになるくらいの爽快感を与えてくれるものなのだから。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href="https://www.humancare.jp/case/case_55/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">ゴミ部屋の片づけ事例55</a></p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12931086297.html</link>
<pubDate>Thu, 25 Sep 2025 06:32:41 +0900</pubDate>
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<title>天秤</title>
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<![CDATA[ <p>目の前の経済性や快適性と 先を見通した地球温暖化対策、どちらが大切か。</p><p>問われた人は、口を揃えて「地球温暖化対策の方が大切」と言う。</p><p>しかし、その天秤は、完全に“経済性・快適性”の方に傾いているように見える。</p><p>私個人をとってみてもそう。</p><p>日常生活では「暑い！暑い！」と愚痴るばかりで、地球温暖化を気にすることはほぼない。やっていることと言えば、せいぜい、スーパーでエコバッグを使っていることくらい。</p><p>他に何をやればいいのか、何ができるのかもわからず、二酸化炭素を吐き続けている。</p><p>そのせいもあってかどうか、この夏の暑さは尋常ではなかった（過去形にするのは時期尚早か）。</p><p>とりわけ、先月下旬から今月初旬の猛暑は激烈に感じられた。</p><p>&nbsp;</p><p>そんな、先月のこと、</p><p>「孤独死が発生した部屋がある」</p><p>「ネット上には何十社もでてくる中、そちらを選ばせてもらった」</p><p>「一度、見に来てもらえないだろうか」</p><p>マンション管理組合の役員をしているという男性から、そんな問い合わせが入った。</p><p>リアルタイムに進行中の案件だから詳細は控えるけど、重症の腐乱死体現場。</p><p>結局、その処理は、約一ヶ月の工期を設けて当社が特殊清掃・消臭消毒を施工し、次の18日（木）に完了＆引渡す予定となっている。</p><p>&nbsp;</p><p>今は、「特殊清掃」で検索すれば数百社もでてくる時代。</p><p>しかし、「特殊清掃」という自製語を当社しか使っていなかった昔、「孤独死や腐乱死体現場の処理等に関するWordで検索して出てくる専門業者はヒューマンケア㈱だけ」という時代があった。</p><p>厳密にいうと、埼玉に「撤去」という言葉を前面に使う一社があったのだが、そこはネット戦略をとっておらず。</p><p>事実上、当社一社の独占状態。</p><p>あの頃の刺激と労苦と疲弊は、今でもよく覚えている。</p><p>&nbsp;</p><p>当初は、特殊清掃業初のホームページを作ってくれた会社も、</p><p>「よくもこんなこと考えたもんだ」</p><p>「“作れ”って言うなら作るけど、こんなニーズあるのか？」</p><p>と、半信半疑どころか呆れ気味。</p><p>心の中ではバカにしていたそう。</p><p>ところが、フタを開けてみると・・・</p><p>反響の大きさに、ただただ驚かされるばかりだったよう。</p><p>&nbsp;</p><p>需要に対して供給が追いついておらず、下品な言葉を使うと“入れ食い”の状態。</p><p>予約は一週間先までビッシリで、一日の予定がやっと終わると また新たな一日の予約が入り、一週間が埋まりっぱなしの状態が延々と続いた。</p><p>毎日毎日、朝から晩まで、やってもやっても“終わり”が見えずクタクタ。</p><p>売上・利益は欲しかったけど、新たな依頼にウンザリすることも度々あった。</p><p>&nbsp;</p><p>専門的に施工できる業者は当社しかないから、事実上、自由市場の競争原理は働いていなかった。</p><p>法外な料金を吹っかけたつもりはないけど、今に比べて見積が強気だったのも事実。</p><p>忙し過ぎてクタクタで、「やるんだったらこのくらいの金額はもらわないと合わない」といった心理が働いており、「納得できなければ頼んでもらわなくていい」くらいに思っていた。</p><p>（今は、「納得できなければ頼んでもらえなくても仕方がない」と微妙に変化している。）</p><p>しかし、今に比べたら装備も技術も未熟で、金額に見合うほどのクオリティーは提供できていなかった。</p><p>当時は当時で精一杯やっていたのだけど、思い返すと、笑えるほど下手クソ過ぎた。</p><p>&nbsp;</p><p>でも、ま、それはそれで仕方がなかった。</p><p>「“学ぶ”は“真似る”から始まる」と言われるが、マネをする元がなく、一から編み出すしかなかったのだから。</p><p>暗中模索・試行錯誤、ない頭をフル回転させ、</p><p>七転八倒、四苦八苦、凄惨な汚れと悪臭に対峙し、</p><p>七転び八起き、一つの失敗を一つのノウハウに変えながら、一件一件の仕事をこなしていった。</p><p>&nbsp;</p><p>それには「若さ」も一役買っていた。</p><p>やっぱり、今に比べると頭も身体もよく動いていた。</p><p>今、同じような状況に置かれたらどうだろうか・・・</p><p>同じ仕事量をこなせるかどうかわからない。</p><p>けど、もっとうまくやれることは間違いない。</p><p>装備が充実し、技術が高まり、合理的・効率的にやれるようになっている分、ひょっとしたら、ポンコツ親父でも同じくらいの仕事量をこなせるかもしれない。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、どんな業種業界・商売商品でも、マネする者は出てくるもの。</p><p>その後、数年のうちに類似業者が爆発的に増加。</p><p>「独居老人・孤独死・自殺者の増加」といった時代背景や、「特殊な仕事だから儲かる」「人が嫌がる仕事だから競争がない」といった誤った思い込みや期待が、“金儲けがしたい”“厳しい現実から抜け出したい”といった人達の背中を押したのだろう。</p><p>異業種の会社や個人事業主が、どんどん参入（転職）してきた。</p><p>そしてまた、それで失敗した話やトラブルもよく耳にするようになった。</p><p>&nbsp;</p><p>東北の個人事業主だったか、</p><p>「FC風のグループに加盟したけど、金を取られるばかりで仕事がない」</p><p>といった相談を受けたこともあった。</p><p>“ウハウハ”になれると皮算用したのだろう、赤字続きの商売から転業したよう。</p><p>高額の研修を受け、機材・道具・マニュアルを買わされ、HP製作・パンフレット等の営業ツールまで指定購入させられ、挙句、月々の会費まで払わされているという。</p><p>しかし、仕事は自力で獲らなければならず。</p><p>「何かいいアドバイスをもらえるかも」「助けてもらえるかも」と、藁をも掴むような思いで連絡してきたのだろうけど、当社はその立場になく、できることは愚痴を聞くことと退会を促すことくらい。</p><p>「店を開けば、お客は自然にやってくる」と本部にうまいこと言われたのか、欲に目が眩んで先走ったのか・・・</p><p>自らの勉強不足・判断の誤り、そして不運・・・冷たいようだが、「自業自得」としか言いようがなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>また、四国の零細企業だったか、</p><p>「その仕事をしたいので教えてほしい」</p><p>と頼まれたことがあった。</p><p>現業に限界が見えてきているようで、旨味のある新規事業を探しているようだった。</p><p>金さえあれば、事務所も、車両も、物品装備も、消耗備品も、何だって簡単に揃えられる。</p><p>やる気と教示者があれば技術は得られる。</p><p>しかし、最も肝心で 最も難しいのは、仕事を施工することではなく仕事を獲ること。</p><p>“仕事を教えてほしい”という意思の裏側には、“手っ取り早く儲かる仕事がしたい”という現実逃避的な期待感（妄想）と、“儲けさせてほしい”という、他力本願的な願望（欲望）が透けて見えたので、</p><p>「その商圏でイケる？」「検証・リサーチは充分？」</p><p>と問いただし、</p><p>「最も難しいのは、仕事を獲ること」「そこまでの面倒はみれない」</p><p>と、ほぼ一蹴した。</p><p>&nbsp;</p><p>逆に、「FC展開しない？」といった誘いもあった。</p><p>ただ、もともと興味もなかったうえ、類似のことをやって失敗したりトラブルを招いたりした他社の事例を知っていたので、「そういう仕事じゃない」と相手にしなかった。</p><p>ノウハウ料やコンサル料を取るだけ取って（盗るだけ盗って）、「加盟者が食っていけようがいけまいが、あとは知ったこっちゃない」では道義がなさすぎるから。</p><p>ちなみに、ここまで広まれば名誉なことなのかもしれないけど、「“特殊清掃”で商標をとっておくべきだった」と、今でも悔やむことがある。</p><p>なんせ、器の小さい人間なものだから、我が物顔で使われると、何となくおもしろくないのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>中年とおぼしき男性から特殊清掃の相談が入った。</p><p>「父親が自宅で孤独死」</p><p>「発見が遅れ汚染異臭発生」</p><p>「三社から見積をとる予定」</p><p>といった内容だった。</p><p>&nbsp;</p><p>この仕事にかぎらず、価格や製品・サービスを比較検討するのは当り前のこと。</p><p>「特殊清掃」なんていう、相場観も適正価格もつかめないものは尚更。</p><p>「適正価格」は“ない”に等しいけど、少しでも費用を抑えたいなら相見積しか方法はない。</p><p>私は、三社見積でも一向に構わなかったが、ただ、依頼者に協力してもらいたいところもあった。</p><p>それは、三社を同じ日時に重ねないこと。</p><p>で、「できたら、同時に呼ぶのはやめてほしい」と伝えた。</p><p>その辺の機微は、男性も充分にわかるようで、“言われるまでもない”といった感じで「もちろん」と応じてくれた。</p><p>そうして、お互いの都合と他社来訪の予定を考慮して日時を調整。</p><p>幸い、男性の第一希望に合わせることができ、調査日時はそこに決まった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>ちなみに、依頼者の中には、そんな気遣いなく平気で複数社を同時に呼ぶ人もいる。</p><p>同日、時間をずらすこともせず。</p><p>二社にとどまらず、三社以上というケースもある。</p><p>タイパを考えると、同時に呼んだ方がいいに決まっているけど、どの会社も調査見積は無料のはず。</p><p>商売上の打算があるとは言え、そこには、厚意や善意もある。</p><p>「他社と重ねないくらいの配慮はしてほしい」とモヤモヤするは、当社だけではないだろう。</p><p>正直なところ、依頼者がそういうマインドの人の場合、調査見積に行く前からやる気は半減する。</p><p>相手に対して基本的な心遣いや気遣いができない人とは、気持ちよく仕事ができないから。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>冒頭に書いたような時代は“今は昔”。</p><p>昨今では、“相見積”をとられるのは、ほぼ当り前。</p><p>そんな中で、当方には何も言わず他社からも見積をとる人もいれば、この依頼者のように事前に知らせてくれる人もいる。</p><p>どちらかと言うと、業者としては、コソコソやられるより事前に知らせてもらった方がやりやすい。</p><p>それが見積金額に影響することはほとんどないけど、気持ちは違う。</p><p>「フェア」というか「風通しがいい」というか、信頼関係を醸成しやすい相手であることが感じられて正面から向き合える。</p><p>&nbsp;</p><p>また、相見積の事前通知は、依頼者側にもメリットがあると思う。</p><p>最初から、「他社からも見積をとるから、最初から駆け引きなしの安値を出せよ」というメッセージが伝わるため、各社、いつも以上に金額を抑えようと努める。</p><p>そうすると、依頼者は、各社といちいち交渉する手間が省けるし、心的ストレスも少なくて済む。</p><p>どうせ相見積をとるなら、オープンにやった方が楽ではないかと思う。</p><p>&nbsp;</p><p>基本的に、当社が価格競争に加わるのは“一回戦”のみ。</p><p>価格競争とは一定の距離を置いている。</p><p>もちろん、契約をとるために値引きすることはあるけど、天秤にかけられた場合、一度しか乗らない。</p><p>銭金だけでは量れない付加価値があると自負しており、原則として、二度目の値引交渉には応じない。</p><p>そもそも、何度も値引きすると「最初の値段は何だったの？」「始めからその値段にしとけよ！」と、不審に思われかねない。</p><p>だから、当社が最安値にならないこともフツーにある。</p><p>それでも、発注してくれる人はいる。</p><p>色々とやりとりする中で、値段を越える価値を見出してくれるのだろう。</p><p>結局のところは“縁”。</p><p>“縁”があれば契約になるし、なければそれでお終いになるだけのこと。</p><p>そんなスタンスでも、こうして長く続けてこられているのだから、商売の仕方を間違えているわけではないのだろうと思っている。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>訪れた現場は、郊外の住宅地に建つ老朽家屋。</p><p>男性の第一希望に訪問日時を合わせた当社が一番手。</p><p>他社は、男性との都合が合わず、後日の予定になっているそう。</p><p>30分や１時間刻みで他社を予約し、早めに来た他社と鉢合わせになるケースもあるため、それがわかっているだけでも気持ちに余裕が持てた。</p><p>&nbsp;</p><p>遺体汚染は１Ｆの台所。</p><p>汚染レベルは“ミドル級”。</p><p>ただ、それに対する異臭の濃度はやけに高く、</p><p>「クサくて、遺品整理もままならない」</p><p>「誰も住まないボロ家だから、余計な金をかけたくない」</p><p>「完全に消えなくてもいい、ある程度軽くなればいい」</p><p>との要望だった。</p><p>&nbsp;</p><p>台所の床材は耐水性の高いクッションフロア。</p><p>見た目だけは、掃除でほぼ復旧できるはずだった。</p><p>問題は、ニオイ。</p><p>男性は、費用対効果がもっともいい作業を希望。</p><p>本格的な作業は費用がかかるからダメ、簡易的な作業は効果が低いからダメ。</p><p>その間の、痒いところにだけ手が届くような、いい塩梅のところに着地する必要あった。</p><p>それは、男性とのコミュニケーションの中で見えてくるものなので、作業には直接的に関係のない話題を交えながら、私は、男性の求めるものを探っていった。</p><p>すると、そこからは、少しイレギュラーな家族関係が見えてきた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>故人は母親の再婚相手で、男性は故人の血の繋がった息子ではなかった。</p><p>しかも、再婚時、男性は既に社会人になっており、この家に暮らしたこともなし。</p><p>「父親」という感覚はまるでなく、「母の知人」みたいな感じだった。</p><p>その母も数年前に亡くなり、それを機に、関係は自然と疎遠に。</p><p>「仲がいい」とか「仲が悪い」とかいう以前に、お互い、付き合う必要がなかった。</p><p>そうして、音信不通のまま月日は流れていった。</p><p>&nbsp;</p><p>そんな中で発生した“父親”の孤独死。</p><p>警察からの連絡は寝耳に水で、当初は「何で自分に連絡が？」と思ったくらい。</p><p>しかし、戸籍上、男性は息子。</p><p>しかも、法定相続人は他におらず。</p><p>結果的に、故人の後始末が、男性の肩に圧し掛かってきた。</p><p>&nbsp;</p><p>大切なものがしまわれていた引き出しには遺言書もあったそう。</p><p>自筆の遺言書（自筆証書遺言）で、男性の母親（故人の妻）が亡くなってすぐ書いたもののよう。</p><p>その内容は、「財産の全てを“息子”（男性）に譲る」というもの。</p><p>わざわざそんなもの残さなくても、他に相続人はいないのだから、遺産は自ずと男性のものとなる。</p><p>ただ、故人と男性は、仲が悪かったわけではないながらも、ほとんど他人同士。</p><p>故人は、男性と血が繋がっていないことで「ひょっとしたら遺産は“息子”に渡らないかも」と危惧していたのかもしれなかった。</p><p>その辺の義理や情愛を察してか、男性は、神妙な面持ち。</p><p>もともと、男性は、故人の財産に興味もなければ、遺産をどうこうする立場ではないと自覚しており、“ありがたさ”と“ありがた迷惑”の間を行ったり来たりしているようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>「“だったら、もっとたくさん残しといてくれよ！”ってことですよね」</p><p>少し照れくさそうだった。</p><p>「そしたら、喜んで相続するのに」</p><p>ジョークをとばすように言った。</p><p>「実際は、この家と多少の預貯金があるくらいでね・・・」</p><p>故人を責めるつもりもなく苦笑った。</p><p>&nbsp;</p><p>家は、かなりの老朽家屋。</p><p>急峻な傾斜地に建ち、接地しているのは道路ではなく階段。</p><p>建築基準法の接道義務を果たしておらず、原則として建替えは不可能。</p><p>車が通れる道路に出るには、神社仏閣の長い石段のようなコンクリート階段を数十メートル上るか下るかしか方法はなし。</p><p>階段脇に設けられたスロープも急傾斜で、電動アシスト自転車でも歯が立たないくらい。</p><p>歴史に上書きされるほどの豪雨や、近い将来にくるとされている大地震などを考えると、「居住リスクは低い」とは言えず。</p><p>更に、家の中には処分しなければならない家財が大量にあり、それだけでも結構な費用がかかることが見込め、更に更に、事故物件。</p><p>不動産価値にとってプラスとなる材料はなく、底知れず下がるばかり。</p><p>そんな状況で、男性は色々と思い悩んでいた。</p><p>&nbsp;</p><p>遺産は、この家と多少の預貯金くらい。</p><p>金銭的な±だけでなく、後始末にかかる労力や心労を考えると、相続を放棄することも一手。</p><p>「相続放棄したら、この家はどうなるんでしょうか」</p><p>「手続き上は国庫に納まりますけど、事実上は放置でしょうね」</p><p>「そうすると、近隣に迷惑かかりますよね」</p><p>「それはまぁ・・・すぐに崩れるようなことはないでしょうけど、人のいない家が廃墟になるのは早いですから・・・」</p><p>「ですよね・・・」</p><p>「先々、何らかのかたちで税金が投入されれば、近隣だけでなく、広く社会一般に負担を掛けることにもなりますし・・・」</p><p>「さすがに、それは申し訳ないなぁ・・・世間にも、この人（故人）にも」</p><p>「まぁ、この類のことは、社会問題にもなってますけどね」</p><p>金銭上の損得・遺言の恩義・義息子の道義・母親への義理・自分の負担・・・</p><p>男性の頭の中にある天秤は、不安定に揺れ動いているようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>その心情を察した私は、</p><p>「相続手続きの期限までには、まだ日数がある」</p><p>「売れるのか売れないのか、金になるとしたらいくらくらいになるのか、まずは不動産会社に相談した方がいい」</p><p>「道義や義理を重んじるのは大いに賛同できるけど、無理に重荷を背負おうとするのはやめた方がいい」</p><p>「自分が潰れては元も子もないし、そうなることは故人も亡母も望んでないと思うし」</p><p>と、ほんのちょっとだけ仕事を忘れ、男性の迷い道に道標を立てた。</p><p>&nbsp;</p><p>そうして後、肝心の仕事の話へ。</p><p>男性は、</p><p>「だいたいでいいので、いくらくらいかかりそうですか？」</p><p>と訊いてきた。</p><p>「ん～・・・〇万円くらいですかね・・・」</p><p>口頭で概算費用を伝え、</p><p>「後日、他社さんも来られるようですし、正式な見積書は会社からメールします」</p><p>と案内。</p><p>すると、男性は、</p><p>「そう・・・それくらいで済むなら、頼んじゃおうかな・・・」</p><p>と意外な反応。</p><p>それを“チャンス”とみた私は我に返り、</p><p>「じゃ、ここで見積書をつくりましょうか？」</p><p>と、念のために持っていた手書きの見積用紙にいそいそと書き込み、それを男性に見せながら作業内容と費用の内訳を説明した。</p><p>もともと十万を超えるような仕事ではなし、男性は、“わざわざ相見積をとっても価格差はたかがしれてる”と思ったのか、はたまた、色々聞きたがる野次馬に厚情を感じてくれたのか、</p><p>「お願いします　他社は断ります」</p><p>と、畳みかけるつもり丸出しだった私に、そのまま仕事を発注してくれた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>その後、男性の天秤は、相続する方に傾いただろう。</p><p>二束三文だったかもしれないけど、何とか家も売却できただろう。</p><p>それで、遺産が少しでも手元に残ったなら何より。</p><p>そして、すべてが片付いてから、故人と母親の墓に参り、事の顛末を報告したかもしれない。</p><p>「ホント大変だったよ！　でも、まぁ、ありがとう」等と、ホッと微笑みながら。</p><p>&nbsp;</p><p>この案件で天秤にかけられずに済んだ私は、人の人生を勝手に天秤にかけ、自分の気が済むような“ハッピーエンド”で幕を引き 悦に入ったのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href="https://www.humancare.jp/case/case_54/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">老朽家屋で孤独死 特殊清掃事例54</a></p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12928796347.html</link>
<pubDate>Mon, 15 Sep 2025 07:00:00 +0900</pubDate>
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<title>石頭</title>
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<![CDATA[ <p>記録的な酷暑だった八月が過ぎ、やっと九月。</p><p>例年、九月に入れば、秋涼の前味が感じられるようになるのだけど、今年はちょっと・・・</p><p>十月までは「残酷暑」と言われる程の暑さが続くらしい。</p><p>秋らしい秋が感じられるようになるのは十一月に入ってからか。</p><p>それでも、朝晩の空気が変わってきていることは、わずかながらも肌身に感じられるようになってきている。</p><p>そして、今年はまだお目にかかっていないけど、毎年、K社のビール「秋味」のCMも “秋“を感じさせてくれる。</p><p>紅黄の季節と塩焼きの秋刀魚を肴に、冷えたそれをゴクゴクやる・・・想像しただけで頬が緩む。</p><p>&nbsp;</p><p>猛烈な暑さに見舞われた今夏でも、私は、エアコンをあまり使わなかった。</p><p>仕事ばかりして、日中、自宅にいることが「まったく」と言っていい程なかったせいもあるけど、夕方（夜）帰宅しても窓開と扇風機だけで過ごすことが多かった。</p><p>遡ってみると、今夏、エアコンを初めて使ったのは6月17日で六月はその日だけ。</p><p>以降、七月は４回、八月は一気に増えて15回。</p><p>八月は第二週と第四週から第五週にかけて猛暑日が続き、まったく陽のない就寝時でも室内温度は31℃～33℃くらい。</p><p>さすがに、その温度では扇風機も温風で役に立たず。</p><p>とても眠れたものではないので、横になるときは いそいそとエアコンをつけた。</p><p>&nbsp;</p><p>自己分析すると、私は、就寝時の室内温度が30℃以上だとエアコンを使うことが多いよう。</p><p>ただ、一晩中使うことはなく、タイマーで３時間だけ動かす。</p><p>だからと言って、やせ我慢をしているわけでも、電気代をケチっているわけでもない。</p><p>酷暑の現場仕事で鍛錬されているのか、単に身体が必要としないだけ。</p><p>ちなみに、「何で使用歴がわかるの？」というと、自分の暑さ耐性に興味があって、使用日をカレンダーにつけているから（大オタク）。</p><p>&nbsp;</p><p>高齢になると温感が鈍くなるそうで、高齢者がエアコンを使わず熱中症で亡くなるニュースも少なくない。</p><p>「若い」と思っているのは自分だけ？</p><p>身体は、ほぼ老人？</p><p>そんなだから、会社の冷房も「清涼」ではなく「寒冷」に感じることが多い。</p><p>酷暑の現場と寒冷の会社、熱く作業をしている私にとってその温度差は心温にも通じるものがある。</p><p>&nbsp;</p><p>“会社”というのは、言わずと知れた？「ヒューマンケア株式会社」。</p><p>多少の物販事業もしているけど、大きく営まれている事業は二つ。</p><p>一つは、葬送儀式としての遺体処置（納棺式など）を行っている「エンゼルケア事業」。</p><p>もう一つは、特別汚損の処理や遺品整理などを行っている「ライフケア事業」。</p><p>これは、遺体やゴミに関係のない特掃や消臭・消毒にも対応している。</p><p>言うまでもなく、特掃隊長はライフケア事業部所属。</p><p>&nbsp;</p><p>ただ、33年前、私の死体業の入口はエンゼルケア（湯灌・納棺）だった。</p><p>今となっては懐かしいばかりだけど、初期の頃は「死体洗い」と揶揄されたこともあった。</p><p>特殊清掃は、それから十年余り後に派生した仕事で、研鑽を重ねながら今日に至っている。</p><p>二つの事業部は、人手が足りないときや、現場の状況によってスタッフが行き来する。</p><p>で、年に数回のことだけど、私もエンゼルケアに従事することがある。</p><p>特殊清掃では生の遺体に触ることはないので、これはこれで新鮮な？感覚がある。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「そちらで働きたいんだけど」「いつから勤められる？」</p><p>この仕事が世間に知られ始めた頃、時々、そんな電話が入ることがあった。</p><p>求人募集をかけていないにも関わらず、一方的に。</p><p>多くの者は、</p><p>「人の嫌がる仕事だから人手が足りていないはず」「人の嫌がる仕事だから稼げるはず」</p><p>と勝手に勘違い。</p><p>「どのくらい稼げんの？」「働いてやってもいいよ」</p><p>といった無礼な物腰。</p><p>礼儀もマナーもあったものではなく、</p><p>「ケンカ売ってんのか！？」「一昨日きやがれ！」</p><p>と怒鳴りたくなるくらい。</p><p>それでも我慢して、</p><p>「人手は足りている」「募集していない」</p><p>と言うと、</p><p>「なんで？」「どうして？」</p><p>と、何が腑に落ちないのか、訳のわからない事を言う者もいたりして、中には、</p><p>「募集している会社を知らない？」「募集している会社を教えてくれ」</p><p>と、図々しいことを言う者もいた。</p><p>まったく、非常識にも程がある！</p><p>仮に、求人募集をかけていたとしても、そんな輩を採用するわけがない！</p><p>&nbsp;</p><p>「募集してますか？」「してたら働かせていただきたいんですけど」</p><p>と、またある時、“女性”から電話が入った。</p><p>女性スタッフばかりの“エンゼルケア事業部”だったらいざ知らず、その“女性”は、特殊清掃を志望。</p><p>ただ、“ライフケア事業部”は基本的に男手。</p><p>現場によっては女性スタッフが加わることもあるけど、彼女達の本来の所属は“エンゼルケア事業部”で“ライフケア事業部”の専属ではない。</p><p>遺品整理や女性宅の片づけ等、仕事の内容や依頼者のニーズによって、“女性の力”が必要になることがあり、そういうときに手伝ってもらっているわけ。</p><p>&nbsp;</p><p>熱意や誠意は伝わってきたけど、</p><p>「今、募集はかけてませんし・・・」「どちらにしろ、女性はちょっと・・・」</p><p>と、“貴女に限らず、今は誰も採用するつもりがない”ということを伝えた。</p><p>すると、</p><p>「こんな声なんで、よく間違われるんですけど・・・」「私、男なんです・・・」</p><p>と、一瞬、脳が“？？？”と停止するような言葉が返って来た。</p><p>&nbsp;</p><p>声は完全に女性、しかも美声・・・</p><p>私は、完全に女性だと思っていた。</p><p>しかし、実際は男性・・・</p><p>自分が失礼なことを言ったのかどうかもわからないまま、私は、</p><p>「え！？　あの・・・スイマセン、失礼しました・・・」</p><p>と、まごまご謝罪。</p><p>他に言うべき言葉を見つけられないまま、会話の終着地点を探った。</p><p>&nbsp;</p><p>声で性別を間違われるのは日常茶飯事なのだろう。</p><p>男性は、私の、しくじりも意に介してない様子。</p><p>それよりも、この仕事に就くことが諦めきれないようで、</p><p>「では、求人募集を掛ける際に連絡をもらうことはできませんか？」</p><p>と、しぶとく訊いてきた。</p><p>テキトーに「わかりました」と言えば丸くおさまったのだろうけど、嘘に気を持たせるのは至極失礼。</p><p>「スミマセン・・・予定がないので約束できません」</p><p>と、乾いた返答をせざるを得ず、それで男性との電話は終わった。</p><p>なお、何とも言えない後味の悪さに、しばらく、気持ちがザラついたままになったのは言うまでもない。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>また別のケース。</p><p>ある日、ゴミ部屋の始末についての相談が入った。</p><p>電話の主は“男性”で、仕事の都合で、近々 引っ越すことになったそう。</p><p>しかし、部屋はゴミだらけ。</p><p>依頼の内容は、「ゴミを片づけて、その痕をできるかぎり掃除してほしい」とのことだった。</p><p>&nbsp;</p><p>訊くところによると、管理会社にバレているわけではなさそう。</p><p>しかし、退去引渡の日は迫っている。</p><p>また、部屋の内装が無事である可能性が低いことも想定。</p><p>“男性”は焦っているようで、まずは、現地調査を早めに行うことに。</p><p>お互いの都合を合わせて、その日時を約した。</p><p>&nbsp;</p><p>訪れたのは都心の賃貸マンション。</p><p>１Fエントランスでインターフォンを鳴らすと、“男性”はすぐに応答しオートロックを開錠。目的の部屋の玄関で、再びインターフォンを押した。</p><p>すると、すぐさま内側から玄関ドアが開いた。</p><p>出迎えてくれたのは、40代くらいのスラっとした女性。</p><p>「こんにちは、ヒューマンケアの〇〇です」</p><p>と、営業スマイルで挨拶。</p><p><a name="_Hlk206581600">ゴミ部屋にカップルで暮らしているケースは珍しいけど、“この女性は依頼者のパートナーだろう”と思った私は、続けて、</a></p><p>「○○さん（依頼者）はいらっしゃいますか？」</p><p>と訊ねようと口を開きかけた・・・</p><p>と、その瞬間、</p><p>「よろしくお願いします」</p><p>と、先に女性が口を開いた。</p><p>&nbsp;</p><p>“ドキリ！”</p><p>一瞬、私はその声にたじろいだ。</p><p>それは依頼者との電話と同じく、重低音のきいた男の声。</p><p>私の頭は、そのことが瞬時に呑み込めず、“？？？”と一時停止。</p><p>数秒して、ようやく この女性と依頼者の“男性”が同一人物であることを認識。</p><p>私が表情を変えたことに女性は気づいたはずだったが、神経をゴミ部屋の方に戻すかのように、</p><p>「恥ずかしいことになってまして・・・」</p><p>と言い、微妙な空気を払いのけた。</p><p>&nbsp;</p><p>私は、依頼者は男とばかり思っていた。</p><p>聞いていた名前も、男性名として認識。</p><p>ただ、世の中には、男女が共に使っても違和感のない名前はたくさんある。</p><p>その時の私は、声による固定観念で そのことに気づいておらず。</p><p>女性が先に声を発したから事なきを得たものの、そうでなかったら、</p><p>「○○さん（依頼者）いらっしゃいますか？」と、問いかけるところだった。</p><p>そうすると、当然、「私ですが・・・」となる。</p><p>そこで更に驚いた表情でも浮かべようものならアウト！</p><p>女性は、先に表情を変えたときに私の腹の中を見通したはずで、それに上乗せして目を丸くしようものなら・・・</p><p>慣れていることとはいえ、不快な（悲しい）思いをするに違いなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>その後、現地調査・見積提出・契約・施工と、作業はテンポよく進んだ。</p><p>現場は女性の部屋だったので、作業には女性スタッフも含めた複数人を動員。</p><p>女性が不快な思いをしないよう、“声”のことは事前に言い含めたうえで。</p><p>ただ、ゴミがなくなった後の部屋には、相応の汚れや傷みが残った。</p><p>汚れはかなり消すことができたけど、傷みは簡易的な修繕しかできず。</p><p>あとは、不動産会社の査定を待つしかなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>「通常損耗」「経年劣化」で凌げるかどうか微妙なところだった。</p><p>ただ、それでも、ゴミ部屋だったことが察知される程ではなかったので、</p><p>「原状回復に関する借主・貸主、双方の権利・義務は不動産会社も心得ているはず」</p><p>「余計なことは言わないで、堂々としていればいい」</p><p>「水廻とか汚したまま退去する人もフツーにいる中、できるだけの掃除をした誠意は伝わるはずだから」</p><p>と、女性にアドバイス。</p><p>女性も、その説明を理解し、不安げにしていた表情を少し和らげてくれた。</p><p>&nbsp;</p><p>退去・引き渡しは、その数日後に行われた。</p><p>居住年数が十年近い長期だったこともあってだろう、色々と指摘を受けながらも、補償はほとんど請求されず。</p><p>「敷金に少しの修繕費を上乗せした金額で切り抜けることができました！」</p><p>と、変わらぬ声で嬉しい報告が来たのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>「トランスジェンダー」「ジェンダーレス」「ジェンダーフリー」といった言葉が耳に馴染むようになって久しい。</p><p>“心と身体の性が一致しない人”は、一般に認知されつつある。</p><p>しかし、「個性の一つ」「気にしなければいい」と簡単に片付けられているのか、“声と性が一致していない人”は、あまり認知されていないと思う。</p><p>軽はずみに他人の人生を憂いてはいけないけど、</p><p>時には、性転換した人のように誤解されることもあるのではないか・・・</p><p>好奇の目を向けられること、からかいの的にされることもあるのではないか・・・</p><p>いつの間にか人の前では寡黙になり、社交的に生きたいのに内向的になってしまうこともあるのではないか・・・</p><p>勝手ながら、悔しさ・悲しさ・怒り・孤独など、二人とも、人にはわからない苦悩を抱えていることが想像され、「どんな個性も、皆が柔らかく受け止め合える世の中になればいいのにな・・・」と、柄にもなく大局に想いが向いた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>またまた別件。</p><p>中年とおぼしき男性から特殊清掃の相談が入った。</p><p>「父親が自宅の台所で孤独死し、発見が遅れた」</p><p>「母親と遺品整理をしかけたのだけど、臭くてとても家の中にはいられない」</p><p>「掃除と消臭をお願いしたい」</p><p>とのこと。</p><p>「母親」とは故人の妻で、フツーに考えると同居していたはずだから、野次馬は、「発見が遅れた」というところに合点がいかず。</p><p>訊くと、“犬も食わぬ訳”があって両親は別居中で、父親の死は、そんな中で起こった不意の出来事のようだった。</p><p>&nbsp;</p><p>例によって、まずは現地調査を案内。</p><p>それから見積書を作り、作業内容や費用に疑義がなければ契約となり、それから施工に入る旨を説明。</p><p>その段取りを理解した男性と、早速、現地調査の日時を調整。</p><p>その後、見積作成・契約、そして施工と、特殊清掃・消臭消毒はテンポよく進み、約三週間がかりの作業は最終日を迎えた。</p><p>&nbsp;</p><p>どこの現場もそうだが、原則、最終日は依頼者にも来てもらう。</p><p>その目的は、汚染部の清掃具合と臭気を確認してもらうこと。</p><p>窓を開けたりニオイのする薬剤を撒いたりすると客観的な臭気観察ができなくなるので、そういったことは一切せず、家の中の空気はあえて滞留させる。</p><p>消臭に成功したから“作業完了＆引渡し”になるわけなので問題はないのだけど、ニオイの感じ方は個人差があるし、“メンタル臭”も侮れない。</p><p>依頼者に嗅いでもらうまで油断はできない。</p><p>だから、消臭現場の最終確認は、何気に緊張するものなのである。</p><p>&nbsp;</p><p>その日、現場には依頼者の男性と“男性の母親”らしき女性がやって来た。</p><p>我々は、玄関を開け、ニオイを気にしながら揃って中へ。</p><p>以前が強い異臭が漂っていたのだが、もうそれは感知せず。</p><p>リビングにつながる台所へ向かう途中も同様。</p><p>問題は、遺体汚染のあった台所。</p><p>我々は、汚染があったところに近づき鼻をクンクン。</p><p>遺体臭が消えているかどうかを三者三様に確認した。</p><p>&nbsp;</p><p>“消臭成功”と思っていた私は、男性に、</p><p>「ニオイ、どうです？」「“御遺体臭は消せた”と判断してるんですけど」</p><p>と、「問題ない」と言ってもらえる自信をもって訊いた。</p><p>すると男性は、</p><p>「そうですね」「大丈夫ですね」</p><p>と、納得したように同意。</p><p>それに気をよくした私は女性にも、</p><p>「お母さんはどうですか？」「気になるところはありませんか？」</p><p>と、気さくに訊いてみた。</p><p>&nbsp;</p><p>すると、女性は“？？？”の表情。</p><p>その顔を見た私も“？？？”。</p><p>そして、一瞬の沈黙の後、男性が、</p><p>「いや・・・これは母親じゃなく嫁です・・・」</p><p>と、ボソッと呟いた。</p><p>&nbsp;</p><p>街で二人を見かけたら、多分、夫婦に見えただろうに・・・。</p><p>男性の「母親と遺品整理をしたい」という話、</p><p>「義父の腐乱死体現場に嫁は来ないだろう」という先入観、</p><p>年齢を選ばない服装に、化粧っけのない顔、</p><p>それによって、私は、女性は男性の母親だと完全に思い込んでいた。</p><p>&nbsp;</p><p>“え！？嫁！？・・・ってことは妻！？・・・ってことは、まだそんなに年取ってない！？”</p><p>“俺、やっちまった！？”</p><p>“マ、マズイ！やっちまった！”</p><p>男性は複雑な表情を浮かべ、女性の顔は引きつり・・・</p><p>私の頭は真っ白に、顔からは血の気が引いた。</p><p>せっかく異臭が消えたのに、部屋には気マズイ空気が一気に充満。</p><p>そして、それが、フリーズドライのように凍りながら乾いていくのが肌身に感じられた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>“女”という生き物は、いくつになっても年齢に敏感。</p><p>同年代と競うかのごとく、アンチエイジングに躍起になり、若づくりに必死になる。</p><p>お世辞・詭弁とわかっていても、若く見られると大喜び。</p><p>女性の間では、「大人になってからの知り合いには自分の年齢を明かさず、また、人の年齢も訊かない」といった暗黙のマナーがあるように聞いたこともある。</p><p>&nbsp;</p><p>TVでよくみる一般市民へのインタビューもそう。</p><p>中高年者に年齢を訊くとき、「必ず」と言っていいほど「失礼ですが・・・」と前置きする。</p><p>若くない人に歳を訊くことは、そんなに失礼なことなのか。</p><p>歳を重ねるのは、恥ずかしいこと？</p><p>老いるのは、みっともないこと？</p><p>人の齢には、その齢なりの価値があるはずなのに。</p><p>その辺のところを掘り下げてみると、論文が書けそうなくらいのことになるかもしれない。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>それまでにも、夫婦を兄妹に、姉弟を夫婦に間違ったことは何度かあった。</p><p>が、それは、歳を見誤ったわけではなく、まったく“おゆるし”のことだった。</p><p>しかし、今回は、夫婦を親子に間違ってしまった。</p><p>言われてみれば、二人は同年代の夫婦に見えるのに。</p><p>しかも、よりによって妻を母親に、“おばさん”を“おばあさん”に見立てたわけで・・・</p><p>それはもう、「だいぶ老けて見えますねぇ」と、言葉の刃で女心を突き刺したようなものだった。</p><p>&nbsp;</p><p>もはや、言い訳の“い”の字も思いつかず。</p><p>下手に謝ったところで、藪蛇になり、火に油を注ぎ、傷口に塩を塗ることにもなりかねず。</p><p>そもそも謝り方もわからず。</p><p>結局、私は、男性に「母親じゃなくて嫁」と言われた後、地蔵に。</p><p>女性は女性で、事がデリケート過ぎて、怒るわけにも文句を言う訳にもいかず。</p><p>男性もまた然り。</p><p>三者三様、何事もなかったかのようにスルーして、ひたすら、凍りついた空気が少しでも溶け、乾いた空気が少しでも潤うのを待つしかなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p><a name="_Hlk206650181">「固定観念」「先入観」「思い込み」</a></p><p>日常生活で、自分のそれを客観的に考察することは少ない。</p><p>まずもって、自分では自分を疑わないから。</p><p>しかし、時に、それは人をしくじらせる。</p><p>意外なところで意外な失敗をさせる。</p><p>自分が誰かを害するだけでなく、自分が害されることもある。</p><p>増えるばかりの特殊詐欺も、そういった人間の盲点をうまく突いているのだろう。</p><p>&nbsp;</p><p>多くの人間は、「自分は常識人」だと思っている。</p><p>しかし、「常識」なんてものは、人の数だけある。</p><p>そして、曖昧で脆いものであることを内に秘めている。</p><p>「固定観念」「先入観」「思い込み」は、そんな“常識”でできている。</p><p>時に、それは危うい妄信となることがある。</p><p>&nbsp;</p><p>しかるに、</p><p>「ま、そうは言っても、その辺のところがわかっている俺は常識人だわ」</p><p>と、己は、まったく聞く耳を持たない。</p><p>それが人間というものなのかもしれないが、ただただ、それが私、それで私、そのまま私・・・</p><p>何度しくじっても懲りない石頭なのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href="https://www.humancare.jp/case/case_53/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">女性のゴミ部屋事例53</a></p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12925849913.html</link>
<pubDate>Fri, 05 Sep 2025 07:00:00 +0900</pubDate>
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<title>天の上の力持ち</title>
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<![CDATA[ <p>“Ｋ子さん”が亡くなってから四年半が経つ・・・</p><p>&nbsp;</p><p>彼女が、はじめて連絡してきたのは2020年12月3日。</p><p>「末期癌で余命二ヶ月の宣告を受けた」</p><p>衝撃的な告白に戸惑いを覚えた。</p><p>「できる準備はしておきたいので」</p><p>相談の内容は、自身の遺品整理についてだった。</p><p>「できたら特掃隊長に担当してほしい」</p><p>彼女は、このBlogの愛読者だった。</p><p>&nbsp;</p><p>詳しくは、2021年1月26日・30日、2月3日、2022年3月2日「残された時間（四篇）」に書いた通り・・・</p><p>初めて会ったのは2020年12月13日、</p><p>音信が途絶えたのは翌2021年2月9日、</p><p>そして、2月18日に入院し3月2日に亡くなった。</p><p>私が、それを知ったのは、死去から一週間が過ぎた3月9日。</p><p>遺言により、彼女の友人が知らせてくれた。</p><p>癌は脳にまで広がり、連絡を取り合っていた頃の終盤には、「薬が効かなくなってきた」「意識が朦朧・混濁する」といったメッセージが増え、誤字乱文や誤変換、変換しきれていない平仮名から、“その日”が近づいてきていることがヒシヒシと伝わってきていた。</p><p>そんな状況だったから、入院したときは、もう 自分も何も ほとんどわからない状態だったそう。</p><p>訃報を受けたのは現場から現場への車中だったのだが、「悲しい」とか「淋しい」とか、言葉では簡単に表せない切なさで心が深く沈み込んだのを覚えている。</p><p>&nbsp;</p><p>かつて、彼女は、最期の局面ではないときにリアルな臨死を体験したことがあった。</p><p>その記憶が強烈に残り、「死後も現世と似たような世界がある」と、死も恐れていなかった。</p><p>また、「心の力」とでも言うか、人の“祈り”の力や、人の間に行き交う“以心伝心”の力も信じていた。</p><p>私も、“第六感”の類をどこかで信じている。</p><p>そんな私は、そんな彼女に、あるお願いをした。</p><p>それは、</p><p>「何か合図みたいなものを送ってください」</p><p>「不可解な現象があったらＫ子さんだと思いますから」</p><p>「スマホの画像に写り込んでもいいですよ！」</p><p>というもの。</p><p>死後における“コンタクト”を試みることだった。</p><p>そんな突拍子もない“頼みごと”でも、彼女は、ジョークを交えて快諾してくれた。</p><p>「死を間近に迎えようとしている人に、よくもまあ、そんなことが頼めたもんだ」</p><p>と呆れる人がいるかもしれないけど、当時の関係性（本音本心の対話）では不自然（不躾）なことではなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>で、実際はどうか・・・</p><p>話の流れからすると、「何かが起こった」「何かを感じた」とするのが“お決まり”なのだろうけど、それが・・・何もない。</p><p>私の意識の中では何もないのである。</p><p>また、幸か不幸か、私は、自覚的な霊感もない。</p><p>ただ、特に、何があったわけでもないのに、ここ一～二か月前くらいからやけに彼女のことが頭に浮かぶようになっている。</p><p>だから、この“異変“については、「自分が知覚できないところで自分の心が“Ｋ子さんの合図”に反応しているのかも？」とも思って、ちょっと新鮮な感じがしている。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>特殊清掃は、ほとんど単独作業。</p><p>楽なライト級はもちろん、得意の（？）ヘビー級でも同じ。</p><p>「特殊清掃」なんて仰々しく言っても、賃貸物件の入居者入れ替えの際に行われるような全面的なルーム（ハウス）クリーニングほどの頭数は要らない。</p><p>大の男（女）が寄ってたかってやるようなことではない。</p><p>しかし、外部の人からは「一人でやるの！？」と驚かれることが少なくない。</p><p>つい10日前も、孤独死マンションで管理組合の女性理事長に「一人！？ 大丈夫なの！？」と目を丸くされた。</p><p>過酷な作業を想像してのことと思うけど、それ以外に、“死”というものを忌み嫌う本能と、故人（霊魂）に対して“畏れ”のようなものを感じているせいもあると思う。</p><p>&nbsp;</p><p>しかし、故人は、自分が汚したものを掃除してくれる人間に悪意を抱くだろうか・・・</p><p>仮に、マイナスの感情を抱かれるとしても、せいぜい、自分が大切にしてきた物（遺品）が雑に扱われることを不快に思うとか、あとは、「それ、ちょっと高くない？」と、料金に不満を持たれるくらいではないだろうか。</p><p>感謝されるかどうかは別としても、“自分の味方”くらいには思ってもらえると思う。</p><p>そんな風に思うから、私の内には、霊魂や霊力を恐れる感情は湧いてこない。</p><p>&nbsp;</p><p>この仕事、自慢はできないけど自負はある。</p><p>前の「熱中症」で記したように、“ゾーン”に入ってハイパフォーマンスを展開することも日常茶飯事。</p><p>しかし、この身体が加齢や病で衰えてきているのは明らか。</p><p>更に、そのスピードは速まるばかり。</p><p>自分自身でよくわかる。</p><p>なのに、パフォーマンスはそれほど下がっていない。</p><p>逆に、上がっているところがあるかもしれない。</p><p>“力”から“技”へ自然とスイッチされてきているせいもあるだろうけど、ここにきて、私は、それだけではないような気がしている。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>特殊清掃の相談が入った。</p><p>時季は真夏、その日も朝から悪夢の30℃超え。</p><p>早朝から現場に出ていた私は、ヘビー級腐乱死体アパートの駐車場で特殊清掃を始める準備をしていた。</p><p>そんな中、会社から連絡が。</p><p>「新規の問い合わせが入ったので、すみやかに応答するように」との指示。</p><p>このアパートで特掃をジックリやるつもりだった私は、“軽症なら俺が行かずに済むかも・・・”“もっとも、軽症想定なら俺に指示は来ないか・・・”等と思いながら、伝えられた連絡先に電話をかけた。</p><p>&nbsp;</p><p>電話に出た声は中年の男性。</p><p>「高齢の母親が自宅で孤独死」</p><p>「警察の見立てでは死後二週間余り」</p><p>「現場は市営住宅で近隣住民から管理会社に異臭のクレームが入っているよう」</p><p>「今日の午後、現場に行くから、それに合わせてきてもらえないか」</p><p>といった相談。</p><p>“真夏の二週間”“近隣苦情”</p><p>それだけでヘビー級かどうかまでは定められないものの、ライト級ではないことは ほぼ間違いなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>男性は、自分にも仕事がある中で故人の死後手続きなどに追われているようで、都合を訊くと、</p><p>「早くても14:30頃の到着で、遅くとも15:30には現場を離れたい」</p><p>と、限られた時間帯を指定。</p><p>それを受けた私は、その時間に行くことを前提に、その日の時間割を再考した。</p><p>&nbsp;</p><p>アパートから現場まで、想定される移動時間は一時間半から二時間。</p><p>つまり、アパートにいられるのは13:00まで、渋滞などを考えて少し余裕をみるとタイムリミットは12:30。</p><p>その日は、そのアパートで気が済むまで特掃をやって、終わったら帰社する予定でいた私。</p><p>しかし、ヘビー級が想定されたから私に指示が来たわけ。</p><p>行かないわけにはいかない。</p><p>私は、男性と「14：30頃」と約束し、「12:30迄、できるところまでやろう！」と、そそくさとアパートに入った。</p><p>&nbsp;</p><p>そこは、長い工期で請け負った現場。</p><p>“急がば回れ”、何事も焦り急ぐとロクなことがない。</p><p>「できなかったところは日をあらためてやればいい」</p><p>私は、そうラフに考えて、部屋に置いてあった故人の置時計に目をやりながら、頭の中で予め組んでおいた段取り通りに作業を進めた。</p><p>自分の手際のよさを褒めながらも、結局、当初の予定の七割くらいのところでタイムアップ。</p><p>中途半端感は否めなかったが、それでも作業の山場を越し、異臭が減退していく過程まで持っていくことができた。</p><p>そして、私は、「近いうちに また来ます」と、姿なき こっちの故人に一声かけ、あっちの故人宅に向かってそそくさとアパートを出たのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>訪れた現場は、東京隣県の市営住宅。</p><p>依頼者の男性も約束の時間に現われた。</p><p>私と男性は、それぞれ、団地の利用者だけしか通らない建物前の道路に車をとめ、一緒に故人の部屋へ。</p><p>「近隣からクレームは来ている」と聞いていたので、それなりの異臭が漏れていることを想像（覚悟）しながら。</p><p>で、玄関前に着いた我々は、まず臭気確認。</p><p>しかし、私の鼻は異臭を感知せず。</p><p>男性も、同じで「？？？」と怪訝顔を傾げた。</p><p>ただ、やはり、そこは“真夏の二週間”。</p><p>玄関を開けると異臭がプ～ン。</p><p>男性を外に置き去りにしなければならない程の異臭ではなかったものの、外とは違う世界となっていた。</p><p>&nbsp;</p><p>間取りは広めの２DK。</p><p>故人は、片方の和室のベッドで死去。</p><p>布団には人型の汚染がクッキリ残り、片足がベッドから垂れていたようで、敷かれたカーペットの一部も汚染。</p><p>それをめくってみると、下の畳にも脂が浸みていた。</p><p>また、多くのハエも湧いて、一部はベランダ側の窓に貼りつき、一部は死骸となって窓際に転がっていた。</p><p>&nbsp;</p><p>汚染異臭は決して軽症ではなかったけれど、それを除けば、部屋はとてもきれいな状態。</p><p>家具・家電・日用品、すべて秩序よく置かれ、部屋や水廻りの清掃はキチンとされており、物は少なくないのにスッキリ感は充分。</p><p>孤独死って、急に亡くなるわけだから、仮に整理整頓や清掃がキチンとできていても、雑然とした生活の匂いがそれなりに残っていることが多い。</p><p>しかし、ここは生活感がありながらも、長い間の留守に備えて片付けたかのように整然としていた。</p><p>「まるで準備して逝かれたような感じですね・・・」</p><p>そう言うと、男性は、</p><p>「“いつ逝ってもいいようにしておかないと”とよく言ってましたから」</p><p>と、故人の真面目な気質を、幾分 誇らしげに語った。</p><p>&nbsp;</p><p>ここは公営住宅。</p><p>原状回復の責任については、民間の賃貸物件に比べると緩い。</p><p>しかも、内装建材への直接的な汚染はなく、要する作業は、「特殊清掃」と言うより「汚染物撤去」。</p><p>更に、故人の死にかかわらず、経年劣化した内装は改修するはずなので、消臭消毒については安価な簡易消臭でも通るのではないかと思われた。</p><p>しかし、男性は、私に費用を訊いたうえで、「そのくらいで済むなら」とシッカリした消臭を要望。</p><p>それは、貸主や他住人への体面を気にしてのことではなく、几帳面できれい好きだった母親の想いを汲んでのことと思われた。</p><p>&nbsp;</p><p>解せなかったのは、「近隣からクレームが来ている」ということ。</p><p>発見のキッカケも近隣からの通報だったそう。</p><p>しかし、外部への異臭漏洩はなし。</p><p>「遺体搬出で異臭漏洩が止まった？」と考えられなくもなかったが、外でも感じられるくらいの重異臭が発生しているとなると、遺体は重腐敗、周辺は重汚染のはず。</p><p>遺体を搬出したところで、部屋には重汚染や腐敗不衛生物が残るわけで、そのくらいでニオイが収まるとは思えず。</p><p>ただ、クレームを出している住人を探し出して問い正すことなんてできるわけもなく、結局、その辺のカラクリはわからずじまいだった。</p><p>&nbsp;</p><p>想像の範囲で・・・</p><p>長くここに暮らしていた故人は、近所付き合いもうまくやっていたはず</p><p>そんな故人の姿が急に見かけられなくなったことを、近隣住人は不審に思うように</p><p>気にしてみると、夜になっても明りも灯らず、生活の気配もなく、インターフォンに応答もなし</p><p>それで、隣人がベランダの隔て板越しに故人宅を覗いてみると、窓には無数のハエが</p><p>そうしてやってきた警察の遺体搬出作業を野次馬見物</p><p>その際に漂ってきた遺体臭を嗅ぎ、それがメンタルにこびりついてしまった</p><p>それで、実際は臭っていなくても「臭う」と苦情を言っているのではないか</p><p>・・・といったストーリーを創って語った。</p><p>&nbsp;</p><p>すると、男性は「なるほど・・・多分、そんなところでしょうね」と大いに納得。</p><p>更に、「さすがですね！」と感心してくれた。</p><p>そして、それに気をよくした私は、</p><p>「何か言われたら、“専門業者にキチンと処理させましたから”と言って下さい」</p><p>「場合によったら私のことを伝えてもらってもいいので」</p><p>と、大人げないドヤ顔で、らしくない侠気をみせた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>男性は私と同年代で、故人も私の母親と同年代。</p><p>そのせいか、この事案が他人事のようには思えず。</p><p>そして、私の母親も几帳面できれい好き。</p><p>その家事負担は老体には重荷だけど、きれいにしていないと気が済まないそう。</p><p>「いつ死んでもいいように」と備えていた故人も、“死”は受け入れることができても、自らの身体が部屋を汚してしまうのは我慢ならないのではないか・・・</p><p>この惨状をみたら自己嫌悪に陥るのではないか・・・</p><p>それは避けた方がいいはず・・・</p><p>「そうでしょ？おかあさん」</p><p>そんな風に想うと、耳に聞こえない“返事”が来るような気がして、作業の手に自然と力が入っていった。</p><p>&nbsp;</p><p>汚染はヘビー級でも、内装建材が直接やられていなかったのが幸いだった。</p><p>寝具・ベッド・敷物・畳一枚を撤去すれば汚物は皆無に。</p><p>もともと重異臭が残留していたわけでもないし、長めの工期をもらったお陰もあって消臭は成功。</p><p>強力な消臭をかけた後に残りがちな作業臭も残らず。</p><p>畳一枚がポッカリ抜けた跡から独特の寂しさが滲み出ていたものの、ニオイも含めて、故人の部屋は何事もなかったかのような落ち着きを取り戻したのだった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>いつのことだか、どこかで誰かが、私のことを「縁の下の力持ち」と評してくれたことがあった。</p><p>「力持ち」かどうかはわからないけど、「縁の下」というのはシックリくる言葉だった。</p><p>私は、社会の陰、しかも誰も入れないような隙間に生きているから。</p><p>極めて狭い世界で、細々と生きているから。</p><p>それでも、必要としてくれ頼りにしてくれる人がいる。</p><p>不安を拭えて安堵し、平安を取り戻せて感謝してくれる人がいる。</p><p>誰かの支えになれているとすれば、まったく、ありがたいことだ。</p><p>&nbsp;</p><p>自分本位の感情移入は、もともとの“主義”じゃない。</p><p>一人よがりの感傷には充分な警戒が必要（どの口が言う？）。</p><p>だけど、この仕事を長くやり過ぎて頭がイッてきてるせいか、はたまた、短い先において“散り菊”になっても 尚 粘って燃えようとしているせいか、このところは、一件一件の故人に対する構えも変わってきているように思う。</p><p>&nbsp;</p><p>汚物に対する嫌悪感はあるけど、故人に対する嫌悪感はない。</p><p>死に対する恐怖心はあるけど、死体に対する恐怖心はない。</p><p>作業に対する不安はあるけど、霊魂に対する不安はない。</p><p>身体はキツいんだけど、気持ちは意外に穏やか。</p><p>イザとなったら、誰かが力添えしてくれそうな安心感がある。</p><p>「肩肘張らず故人と向き合うことで力が増し加わる」と言うか、故人との間で不思議な一体感を覚えるようになっている。</p><p>&nbsp;</p><p>生前の“K子さん”は、やたらと私を応援してくれていた。</p><p>今でも、どこかで応援してくれているのだろうか・・・私にはわからない。</p><p>だけど、今も、その想いに励まされ、その記憶が励みになっているのは間違いない。</p><p>それに気づくと、彼女が、ひたむきに、私のあの時の”頼みごと”を聞いてくれていることがわかってくる。</p><p>そして、知らず知らずのうちに、それが新たな力を宿してくれる。</p><p>&nbsp;</p><p>晩夏とは思えないほどの猛暑の中、</p><p>「天の上の皆さん、ありがとうございます」</p><p>と、一人ぼっちでも一人ぼっちじゃないポンコツ男は、今日もどこかの“縁の下”で大汗をかいているのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href=" https://www.humancare.jp/case/case_2-52/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">死後推定2週間の特殊清掃事例52</a></p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12923531716.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Aug 2025 07:00:15 +0900</pubDate>
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<title>熱中症</title>
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<![CDATA[ <p>これまでの高温記録が更新されている通り、今年の夏は、一段と暑いらしい。</p><p>「らしい」というのは、例年に比べて特段の実感がないから。</p><p>“汚い！””クサい！”“キツい！”は毎夏同じことで、気温が記録的に高いからといっても私にとっては大差ない。</p><p>また、現場の凄惨さから言えば、昨年の方が酷かったような気がする。</p><p>もちろん、特掃隊長が「今年は、ちょっと物足りねぇなぁ・・・」と不満に感じているわけではないと思うけど。</p><p>仮に、“彼”が「物足りない」って感じているとなると、自分が強くなっていることを喜ぶべきか、変態的になっていることを危ぶむべきか悩むところだ。</p><p>&nbsp;</p><p>そんな夏の今時分、夏休みをとっている人も多いよう。</p><p>恐れ多いことに、世の中には、8月9日（土）～8月17日（日）九連休の人もいるらしい。</p><p>そんな人達は、旅行や帰省、遊興や飲食、自宅でのんびり、それぞれに暑い（熱い）夏を過ごしているのだろう。</p><p>ちなみに、今月、私は8日（金）に休みをとり、次は18日（月）の予定で、月内にあと一日くらいはとれるかも。</p><p>それも、たまった私用でアッと言う間に終わる。</p><p>半分、好きでやっているようなところもあるけど、年を追うごとに気温は上がり、年を負うごとに身体は衰え、更に、休みは前述の通り。</p><p>このトリプルパンチを受けて疲弊しないわけはなく、私は、逆ギレする力も失くし、夕方、退社する頃には“抜け殻”のようになる。</p><p>そして、朝、出社する頃に、再び“身”を入れていくのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>私の仕事は屋内作業が多い。</p><p>屋外は、飛び降り自殺とか、動物死骸とか、遺品の運搬とか、それくらい。</p><p>しかし、屋内といっても、エアコンを利いた涼しいところはほぼなく、外の方がよっぽど涼しい現場も多々。</p><p>エアコンは動かせず、窓も開けられず、熱気に近い重異臭が充満する中で、ハエが飛び回り、ウジが這い回り、逝った人が置いていった汚物が広がっている・・・</p><p>スゴ～く！不衛生で、スゴ～く！クサいサウナに入っているようなもの。</p><p>サウナが苦手な（怖い）私は、本物のサウナに入ったことはないのだが、この“蒸腐呂（むしぶろ）”には何度も入ったことがある（こっちもまあまあ怖いけど）。</p><p>本物のサウナで味わえるのは快感、<a name="_Hlk205356323">“蒸腐呂”</a>で味わわされるのは怪感。</p><p>本物のサウナは心身が整うそうだが、“蒸腐呂”は心身が乱れる。</p><p>玉のように噴き出してくるのは快汗ではなく冷汗か脂汗。</p><p>どう見ても心身には悪そうだ。</p><p>&nbsp;</p><p>当社の夏季ユニフォームは、上は半袖のポロシャツ、下は作業用パンツ。</p><p>シャツの色は、男は黒、女は赤。</p><p>作業時は、全身がビショビショになるくらいに汗をかく。</p><p>作業が終わると、それが徐々に乾いていくわけだが、黒いシャツだと、身体が塩を吹いた様がよくわかる（襟や袖口に白塩が浮き出る）。</p><p>「人間の身体には、本当に塩が入ってんだな・・・」と感心するやら、</p><p>「ここまで働いて、何になるのか・・・」とジッと手をみるやら、</p><p>達成感・充実感と疲労感・虚無感が交錯する中、そう遠くはない”限界”が見え隠れしている。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>元来の私は、“熱しにくく冷めやすい”性格。</p><p>「冷めたヤツ」</p><p>高校時代は、周囲から特にそう言われていた。</p><p>事実、何かに熱くなることはなく、冷ややかでいることがほとんど。</p><p>自分の壁とは安易に妥協するのに周囲に対して妥協するのはヨシとせず、</p><p>自分の弱さには簡単に迎合するのに周囲に迎合するのは敗北と捉え、</p><p>協調性がないことを孤高と勘違い。</p><p>部活は“帰宅部”、学校やクラスのイベントにも非協力的。</p><p>体育祭は三年間とも当日バックレ。</p><p><a name="_Hlk203143197">「バカバカしくてやってられるか！」</a></p><p>そんな気分だった。</p><p>&nbsp;</p><p>その頃に比べ、今は、少しは“体温”を帯びてきているように思うが、それでも、その後遺症はある。</p><p>「冷めている」というのとはちょっと違って「心が硬直している」といった方がシックリくるかも。</p><p>死を迎えた身体が硬直するように、心が死んでいるからそうなのかもしれない。</p><p>若者に多い文化なのかもしれないけど、今どきの人は、中高年でも“推し”を持っているのが珍しくないそうだが、私は、そんなもの持っていない。</p><p>好きなもの、応援しているもの、夢中になっていること、熱中していること等、心を熱くするようなことは何にもない。</p><p>&nbsp;</p><p>しいて言えば・・・</p><p>私が没頭しやすいのは“特殊清掃”。</p><p>決して、好きでやっているわけではないのだが。</p><p>「他に引き受けてくれる人（業者）がいない」といったHelp！系のヤツは特にそう。</p><p>しかし、初見の現地調査の段階では、「やりたくない」と「やるしかない」と、気持ちは半々。</p><p>至極凄惨な汚損を相手にするわけだから、やむを得ない。</p><p>その後、正式に依頼（契約）を受けると、「やるしかない」という状況に追い込まれる。</p><p>同時に、「やりたくない」という気持ちは隅に追いやらなければならない。</p><p>代わってやってくれる者がいるはずもなく、逃げ場は完全になくなる。</p><p>ただ、その時点ではまだ、「だったら俺がやってやる！」といった漢気は影も形もないのである。</p><p>&nbsp;</p><p>作業日は、依頼者の要望と私の都合を調整して事前に決めるわけだが、それが決まると、そこからカウントダウンが始まる。</p><p>「いよいよ明日か・・・」</p><p>前の晩になると憂鬱さが増してくる。</p><p>で、不眠症患者の悪癖か、夜中、半分眠りながらも作業の手順を考えてしまう。</p><p>合理的・効果的な作業を思案することは、少しでも、自分が傷つかないように、自分を傷つけないようにするためのものでもあるから。</p><p>&nbsp;</p><p>現地調査時から作業時、日数があいたりすると、汚染が乾燥したりカビが生じたりして変容していることはあるけど、根本的な汚さにおいて変化はなし。</p><p>初見の調査時に強いインパクト（ショック）を受けるのはやむを得ないのだが、作業時は既にそれを知って行くわけだから、少しは心の重荷が軽くなるかと思いきや、そんなことはない。</p><p>自然に改善するわけもないのに、「やっぱ、アノ時（調査時）のままか・・・」とガッカリするのが常。</p><p>そして、「始めるか・・・」と、憂鬱な気分で作業を始めるのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>トイレ掃除について相談が入った。</p><p>電話をしてきたのは、内装設備の工事会社。</p><p>現場は東京隣県、やや遠い某市。</p><p>内容は、</p><p>「知り合いが持っているアパートの一室がゴミ部屋になっている」</p><p>「ゴミを片づけてくれる業者は地元で見つけたがトイレの清掃は拒否された」</p><p>というもの。</p><p>「きれいにできる？」という問いと、「きれいしてほしい」という要望が相談の要旨だった。</p><p>&nbsp;</p><p>事情は理解できたが、作業の可否は現地を見てみないと判断できない。</p><p>施工不能という結果も充分にあり得る。</p><p>無料の現地調査で無駄足を踏みたくない私は、</p><p>「画像があれば送ってほしい」と返したが、</p><p>「画像はない」「自分のスマホで撮りたくない」とのこと。</p><p>そんな画像ばかりのスマホを持つ私でも、その気持ちは理解。</p><p>相手も“冷やかし”のつもりではないようだったので、とりあえず、現地調査には出向くことにした。</p><p>&nbsp;</p><p>訪れた現場は、区画整理のされていない古い住宅地に建つ老朽アパート。</p><p>そこに暮らしていたのは高齢の女性</p><p>その女性、歳には勝てず、独居生活が困難になり高齢者施設へ転居。</p><p>部屋からは限られたものしか持ち出せず、また、施設にも限られたものしか持ち込めず、ほとんどの家財生活用品は不用品として部屋に残置。</p><p>そして、その後片付けは大家がやらなければならないことに。</p><p>女性は長くそこに暮らしており、家賃滞納や近隣トラブルもない“善良な居住者”だった・・・はずだった。</p><p>しかし、蓋を開けてみると、部屋はヒドい有様に。</p><p>「自分ではどうすることもできない」と判断した大家は、知り合いの工事業者に始末を依頼。</p><p>しかし、工事業者は内装・設備の改修・修繕が本業。</p><p>色々あたって、ゴミの始末を引き受けてくれる地元業者を見つけたものの、トイレ掃除までやってくれる業者に巡り会うことはできなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>汚いところの特掃は散々やってきていたから「こんなヒドイの見たことない！」というようなことはなかったものの、これまでの施工実績にもとづいた“汚手洗ランキング”でいうとトップクラスであることは間違いなかった。</p><p>女性は、何かを詰まらせて流せなくなった状態でも用を足し続けたよう。</p><p>で、便器内は糞便尿がタップリ。</p><p>このままやり続けるといずれ満杯になり、糞便尿が便器から溢れ出る・・・</p><p>それを阻止するため糞便尿をすくい出そうと試みたのだろう、便器には大きめの御椀が差し込まれていた（仮に、すくい出せたとしても、どこに捨てるつもりだった？）。</p><p>しかし、残念なことに、椀は“特命”を果たすことなく、そのまま糞便尿に吞み込まれていた（捨てる先がないことに気づいてやめた？）。</p><p>「椀は、こんなことに使われるために生まれてきたんじゃないはず・・・」</p><p>「本来の役目は、食べ物を盛り付けてもらうことなのに・・・」</p><p>「それが、“食べ物だったもの”を喰わされるハメになるなんて・・・」</p><p>「その上、無残に見捨てられて・・・」</p><p>私は、正体不明になるくらいにまで糞便尿と同化した椀が自分と重なり、何だか可哀想になってしまった。</p><p>&nbsp;</p><p>便器の中だけでなく、外側も便座も床も重症。</p><p>「まったく、もお・・・」</p><p>と愚痴りたくなるくらいの状態。</p><p>「どうやったらこうなんの？」</p><p>という疑問さえ浮かんでこないくらい。</p><p>代わりに浮かんだのは、</p><p>「うわぁ～・・・これ、やりたくねぇなぁ・・・」</p><p>というもの。</p><p>まだ、見積も出さず、正式に契約したわけでのないのに、嘆きに近い拒否感が早々と私の頭を巡った。</p><p>&nbsp;</p><p>このトイレを含んだユニットバス、交換すると50～70万円もかかる。</p><p>老朽アパートにつき、大家は、新しいものに交換するのはかなりの抵抗があるよう。</p><p>そうは言っても空室のまま放置するつもりはなく、最低限の修繕をして、再び入居者を募集したいそう。</p><p>特掃の費用は、交換工事にかかる費用の一割～二割程度。</p><p>コスパは、こっちの方が圧倒的にいい。</p><p>その代わり、原状回復できるかどうかはやってみないとわからない。</p><p>請負契約にも「成果保証なし」「原状回復保証なし」といった条件を付けざるを得ない。</p><p>それでも、依頼者側は、「やってみる価値あり」と判断。</p><p>契約は正式に成立し、施工する運びとなった。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>取り掛かりは、糞便尿の掻き出し。</p><p>便器の内部は流線形で奥に向かって狭くなっている。</p><p>更に、相手は粘土状。</p><p>だから、それを掻き出すには、融通のきかない道具より意のままに動いてくれる手の方が適している。</p><p>自分に猶予を与えると躊躇うばかり、勢いが失われていくばかり。</p><p>こういう時は、自分に余計なことは考えさせず、テンポよくリズミカルに進めるにかぎる。</p><p>私は、手を使う方が合理的と考え、ラテックスグローブの上にビニール手袋を装着。</p><p>便器の中に手を突っ込む覚悟を決めた・・・</p><p>ところが、不用意にも、私の無意識が、タップリとすくい上げた“ブツ”の触感・質感・重量感をイメージ。</p><p>自ずと、頭には、強烈な気持ち悪さと気味悪さが出現。</p><p>すると、脳が「<a name="_Hlk205792763">Ｎｏ！</a>Ｎｏ！Ｎｏ！Ｎｏ！Ｎｏ！」と急ブレーキ。</p><p>防衛本能が働いたのか、動きかけていた身体も直感的にＳｔｏｐ！</p><p>結局、最終的には手を直に使わざるを得ないことがわかりながらも、とりあえずはスコップ等を使って脳を慣れさせ、併せて身体をウォーミングアップさせていくことにした。</p><p>&nbsp;</p><p>凄まじい臭さの中、道具ですくえるだけの糞便尿を掻き出した後は、いよいよ手の登場。</p><p>行儀よくカレーを食べるように便器の内側を指で掻き、できるかぎり除去。</p><p>最奥の排水穴が露わになったところで手指を“イカ”のように細め、奥にググっと突っ込めるだけ突っ込んでみた。</p><p>すると指先に、何か異物に触れているような感覚が。</p><p>ただ、厚手のビニール手袋を通してでは、手指の感覚は鈍く“気のせい？”ととれなくもなし。</p><p>素手でやれば、もう少し奥に入るし、触れている物の正体が掴めそうなものだったが、さすがの特掃隊長でもそれはできず（できるわけない）。</p><p>しばし思案の末、上のビニール手袋だけ外し、ラテックスグローブ一枚だけつけて再チャレンジすることにした。</p><p>&nbsp;</p><p>当社で常用しているラテックスグローブは薄手。</p><p>その分、素手に近い触感が得られ手指を細かく使える。</p><p>ただ、安物を使っているわけではないのだけど、強度はほどほど。</p><p>並の使い方で破れることはないのだが、いらぬ力が加わったり、鋭利なものに触れたりすると、わりと簡単に破れる。</p><p>で、作業中や作業後、「気づいたら破れてた(-_-;)」といったこともたまにある。</p><p>「守られている」と思っていた地肌が、「実は守られていなかった」ということが判明したときの怒りと悔しさ、悲しみといったらもう・・・察してもらえるか。</p><p>素手に比べたら間違いなく安心だけど、これ一枚をつけただけで重汚物に触れるのは ちょっとしたスリルがあって 何気に勇気がいるのである。</p><p>&nbsp;</p><p>“ラテックスグローブ一枚作戦”は功を奏し、異物が指先に引っかかった。</p><p>私は、「逃してなるものか！」と、人差指と中指を“イカゲソ”から“箸”に変身させ、</p><p>手がつりそうになるくらいの力を指先に込めて“獲物”を挟み、</p><p>「離してなるものか！」と手前へ数ｃｍ引いた。</p><p>そして、姿の一片を現したそいつを、今度は五本の指でガッチリ掴み、先の読めない重量感と引き換えに“グッ、ググッ“っと手前へ引き寄せた。</p><p>&nbsp;</p><p>そうして現れたのはビニール・・・正体は45ℓのゴミ袋だった。</p><p>ただ、“ただのゴミ袋”にあらず。</p><p>クサくて汚いドロドロを纏ったシワクチャ状態で、“生前”の面影はまるでなし。</p><p>「ゴミ袋は、こんなことに使われるために生まれてきたんじゃないはず・・・」</p><p>「本来の役目は、汚物を入れることなのに・・・」</p><p>「それが、汚物に入れられるハメになるなんて・・・」</p><p>「更に、奥に突っ込まれて埋められて・・・」</p><p>椀と似たような境遇のゴミ袋だったのに、今度は、同情心は湧いてこず。</p><p>私の意識は、便器の詰りを解消させた高揚感に占有され、大物を揚げた釣人のように「ヨッシャ！」とガッツポーズ。</p><p>誰も見てないからいいけど、もう、バカ丸出し！だった。</p><p>&nbsp;</p><p>便器の詰りを解消したことで、作業の一山は越えた。</p><p>しかし、糞便尿を取り除いたくらいで白い便器が戻ってくるわけはない。</p><p>固形化した糞便や石化した尿酸、その他 正体不明の汚れがビッシリ。</p><p>そいつらを、一つ一つ始末していかなければならない。</p><p>特に「色白が好み」というわけではないけど、とにかく、“白”を目指し、ペットを可愛がるように何度も便器を撫でまわした。</p><p>根性はともかく、それは根気も手間と時間もかかる作業。</p><p>だけど、便器が何事もなかったかのような無垢に仕上がったときは、労苦が報われたような気がして悪くない気分に。</p><p>結果、依頼者側も「ここまできれいになるとは・・・期待以上！」と大満足してくれた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>大したことやってるわけでもないのに達成感を覚える。</p><p>汚くクサい身体になるからこその爽快感がある。</p><p>くっだらないでしょ？</p><p>けったいなヤツでしょ？</p><p>でも、私は、こんなことに熱中してしまう。</p><p>誰のためでもなく、自分のためでもなく、熱中してしまう。</p><p>&nbsp;</p><p>「バカ丸出し」は「無邪気」と解くこともできる。</p><p>「熱中」は「夢中」と展じることもできる。</p><p>実は、無意識の奥底で、特掃隊長の心は喜んでいるのかもしれない。</p><p>頭と身体は萎えていても、心は癒えているのかもしれない。</p><p>どういう理屈でそうなるのか、自分でもわからないけど、その感覚はある。</p><p>&nbsp;</p><p>もともと冷めているはずの私は、バカバカしくてやってられないはずの汚仕事に熱くなる自分の不可解さを、白旗を上げるように悟り知りつつある。</p><p>そして、「こういうのも、生き甲斐の一つなのかな・・・」と、まんざらでもない笑みを くたびれた顔の右に浮かべているのである。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>本件詳細は⇒<a href="https://www.humancare.jp/case/case_51/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">トイレの特殊清掃事例５１</a></p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12921545385.html</link>
<pubDate>Fri, 15 Aug 2025 07:00:00 +0900</pubDate>
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<title>胡散のニオイ</title>
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<![CDATA[ <div>今、PCや携帯電話を持っている人で迷惑メールが来ない人はいないだろう。</div><div>ＳＮＳを一切やらない私のスマホにさえ、一日、数十通、日によっては百を超える迷惑メールが届く。</div><div>ほとんどは自動的に「迷惑メールフォルダ」に弾かれるのだが、一部はそのまま受信。</div><div>3～4通だけど、毎日、夜中や早朝にも毎日のように入ってくる。</div><div>そして、スマホは枕元にあり、受信したときは着信音が鳴る。</div><div>それが、浅い眠りを更に浅くする。</div><div>「着信音を消しとけば？」</div><div>そう思うだろうけど、仕事の電話は24時間365日入ってくる可能性があるため、そうもいかない（メールの受信音だけ消せる機能があるのかな？）。</div><div>&nbsp;</div><div>時々は電話もかかってくる。</div><div>仕事柄、登録のない番号からかかってくることも日常茶飯事なので、知らない番号でもとる（さすがに“0800”はとらないけど）。</div><div>気持ち悪いのは、第一声で「〇〇さんですか？」と私の名前がでてきたとき。</div><div>個人情報保護法はどこへやら、個人情報がダダ漏れになっている実状は百も承知だけど、名前まで知られていると虫酸が走る。</div><div>ただ、仕事の依頼者やその関係者かもしれないから、とりあえず、「・・・はい」と応える。</div><div>先に、「ご用件は？」と訊き返したところで、もう本人であること認めているようなものなので、仕方なく「はい・・・」と応える。</div><div>その後、相手が名乗って仕事関係でないことがわかっても後の祭り。</div><div>“チッ”と、聞こえない舌打ちして、とりあえず用件を聞く。</div><div>ほとんど、投資・通信・光熱関係など、ありきたりの営業勧誘。</div><div>変わったところでは、地方の物産品の販売営業もあった。</div><div>とにかく、どれもこれも興味も必要もないから、さっさと片付ける。</div><div>中にはマトモな会社やマトモな商品もあるのかもしれないけど、当事者の承諾なく入手した個人情報をもとに連絡してきた者を相手にして「詳しい話を聞いてみようかな」といった気分になるわけはない。</div><div>不正に入手した個人情報をもとに、一方的に電話を入れてくる・・・</div><div>違っていたら申し訳ないのだが、特殊詐欺の“かけ子”と重なって、胡散臭さが拭えない。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>「部屋の異臭が消えなくて困っている」</div><div>春先のある日、そんな相談が入った。</div><div>電話の声は高齢の女性。</div><div>込み入った事情があるのか、頭が整理できていない様子。</div><div>何からどう話せばいいのか考えあぐねているようだったので、一つ一つ私から質問をし、女性がそれに応えるかたちで話を進めていった。</div><div>&nbsp;</div><div>概要はこう・・・</div><div>前年の秋、実弟が孤独死</div><div>発見はかなり遅れ、遺体は腐敗</div><div>凄惨な汚れと異臭が発生</div><div>現場は故人所有のマンション</div><div>間取りは３LDK、遺体があったのは故人が寝室として使っていた一室</div><div>故人は、そこのベッドに横たわっていた</div><div>発見のキッカケは、共用通路側の窓に群がる異常なまでのハエの影</div><div>管理会社や近隣を巻き込んでちょっとした騒ぎに</div><div>特殊清掃・消臭消毒は、マンションの管理会社ではなく、女性が暮らす街にある不動産会社に紹介された業者が施工</div><div>遺体汚染はきれいに掃除されている</div><div>しかし、ニオイが消えていない</div><div>業者にクレームを入れたが「これ以上の消臭は無理」「内装を解体するしかない」「最初からそう説明したはず」言われ取り合ってくれず</div><div>結局、部屋はクサいまま</div><div>・・・というものだった。</div><div>&nbsp;</div><div>特殊清掃や消臭消毒において、他社の“尻ぬぐい”に参じることは珍しいことではない。</div><div>ただ、だからといって、軽率に他社の施工が間違っていたと断じることはできない。</div><div>当社を含め、専門業者とはいえ万能ではないから。</div><div>他業者が、できる限りの仕事をしたことが伺える現場もあるし、当社が施工しても似たような成果しかだせなさそうな現場もある。</div><div>業者の説明不足と依頼者の理解力の限界、業者が想定する成果と依頼者の期待値の乖離、</div><div>事後に起こるトラブルの原因は主にそういったもの。</div><div>&nbsp;</div><div>原因になりやすいことがもう一つある。</div><div>それは、“メンタル臭”。</div><div>やはり、腐乱死体臭は強烈なインパクトがある。</div><div>同じ悪臭でも、生ゴミや肉・魚が腐ったものとは成分が違うし、何より精神的なダメージが天地ほど違う。</div><div>だから、消臭作業が完了した後の現場において、第三者が「臭わない」としても、メンタルをやられていると「まだ臭うような気がする」となる。</div><div>“後遺症”が重いと、「あのニオイが鼻に付いてとれない」「どこにいても、あのニオイがする」となる。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>ちょっと脱線・・・</div><div>“似臭”として感じることが多いのは食べ物。</div><div>本来なら食欲をそそられるはずの美味臭がそう感じられてしまうことがあるのだ。</div><div>私自身も腐るほど経験があるから、その感覚はよくわかる。</div><div>私の場合、後遺症ではなく単なる職業病だから、それで食欲が減退するようなことはないのだが、それでも、</div><div>「ん！？ これ、あのニオイに似てるな・・・」</div><div>と、一時停止してしまう。</div><div>&nbsp;</div><div>もう30年くらい前のことになるか、大学時代の友人と連れ立って入った飲食店で出てきた割と高めなチーズが、そのニオイにそっくりだったことがある。</div><div>そっくり過ぎるくらいそっくりで、“本物”には驚かない私でも その“偽物”にはビックリしてしまった。</div><div>記憶が定かではないけど、直径10cm高さ３㎝くらいの円筒木箱に薄紙に包まれた状態で入っていて、その紙は指が濡れるくらい水気を帯びていた。</div><div>特掃隊長ジャッジの“似臭ランキング”だと、それが間違いなく一位！</div><div>あれから随分の時が流れ、色んな“似臭”を嗅いできているけど、それを上回るものは未だ現れていない（現れなくていいけど）。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>話を戻す・・・</div><div>前業者は、「これ以上の消臭は無理」「内装を解体するしかない」「最初からそう説明したはず」と言ったそう。</div><div>確かに、遺体臭をきれいに消すために内装解体を要するケースは少なくない。</div><div>だから、業者の言い分も理解できたし、私が出向いたところで「結果は同じ」ということも充分にあり得る。</div><div>とにかく、専門業者が やれるだけやった後なのだから、残留しているとしても軽異臭・微異臭のはず。</div><div>また、女性固有の“メンタル臭”である可能性も否定できない。</div><div>となると、事実上、このケースは、原則無料で出向く“一次調査”ではなく、費用が発生する場合がある“二次調査”にあたる。</div><div>現場を視に行くだけのことでも、移動交通費や半日分の人件費などコストはかかる。</div><div>そのため、私の頭には、「かかる経費分くらいは負担してもらわないと割に合わない」といった考えが浮かんでいた。</div><div>&nbsp;</div><div>そんなところに、女性は、</div><div>「息子が色々調べてくれて、“そちらの会社がいい”と勧めてきまして」</div><div>「今、お話ししただけでも、ちゃんとした仕事をなさっている方だとわかりますし」</div><div>「間違いのない方に視ていただきたいものですから」</div><div>等々、耳触りのいい言葉を羅列。</div><div>煽てるつもりはなかったのだろうけど、それは、承認欲求の強い私の“急所”をグサリ！</div><div>結局、私は、女性の“ヨイショ”に自ら“ヨイショ”と乗っかって、無料で現地調査に出向くことにした。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>調査の日。</div><div>訪れた現場は、東京隣県に建つ大規模マンション。</div><div>長閑なところだったが、都心まで片道一時間～一時間半くらいの通勤圏内。</div><div>しかも、駅が至近の好立地。</div><div>建物は、「高級」という程ではないものの、1Fエントランスにはソファーセット等が置かれた談話スペースもあり、その空間は天井が吹き抜けたようなデザイン。</div><div>「コンセルジュ」はいなかったものの、管理人室の前にはホテルのようなカウンターが設けられていた。</div><div>ただ、高級感が漂っているのは1Fエントランスだけ。</div><div>他は、地味なデザイン＆シンプルな構造。</div><div>庶民が憧れを抱きつつも、売却価格は富裕層でなくても手が届くよう工夫されたマンションだった。</div><div>&nbsp;</div><div>現地に現われたのは、二人の老齢女性。</div><div>一人は電話で話した依頼者の女性、もう一人はその妹。</div><div>事の経緯は、既に電話で聞いていたし、あらためて訊くと長い話になりそうだったので、あえて触れず。</div><div>その代わりに「こんちには」ではなく、「お疲れ様です」と、ちょっと気さくに挨拶。</div><div>すると二人は、弟の孤独死腐乱を指してか、前業者の仕事ぶりを指してか、</div><div>“ホント、とんでもない目に遭ってあってしまったわ”</div><div>と言わんばかりの愚痴っぽい愛想笑いを浮かべ、</div><div>「わざわざありがとうございます」</div><div>「頼りにしてます」</div><div>と、足労をねぎらいつつ、再び“急所”を突いてきた。</div><div>&nbsp;</div><div>玄関の鍵は女性が開錠。</div><div>そして、「どうぞ」と、私にドアを引くよう促した。</div><div>“あっても微異臭、もしかしたらメンタル臭？”と思いながら参上した私。</div><div>油断しまくりの無防備状態。</div><div>ところが！、玄関を開けると、いきなり異臭パンチが炸裂！</div><div>強烈な異臭が私の鼻と意表を同時に突いてきた。</div><div>もう、「何となく臭う」とか「臭うような気がする」といった生易しいものではなく、完全に臭っている。</div><div>故人がいた寝室は特に深刻で、私は思わず、</div><div>「（消臭作業）本当にやりました！？」</div><div>「これじゃ、何もやってないのと同じですよ！」</div><div>と、声高に。</div><div>女性を責める筋合いはないのに、責めるようにテンションを上げてしまった。</div><div>&nbsp;</div><div>一方の女性も“責められている”みたいに感じたのだろう</div><div>「“とにかく、早く何とかしないといけない！”と慌てていて・・・」</div><div>「知り合いの不動産屋さんの紹介だったから間違いないと思って・・・」</div><div>と、言い訳をするように説明。</div><div>その業者が、特殊清掃と消臭を施工したそうだったが、結局、異臭はそのまま残留。</div><div>「業者も当初はそんなつもりはなかったんでしょうけど、結果的には、騙されたと同じですね・・・」</div><div>と、テンションが下がり切っていなかった私は、冷たいコメントを配慮なく返した。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>施工した業者について訊いてみると・・・</div><div>やってきたのは、40代くらいの男性で、礼儀正しく特段の胡散臭さは感じず。</div><div>知人からの紹介ということもあり、はじめから正規の業者だと信じていた。</div><div>また、「早く何とかしてほしい！」といった気持ちが強くて、他の選択肢はまったく頭に浮かばず。</div><div>受けた説明は具体的に覚えておらず。</div><div>ただ、「部屋は元通りになる」といった類の言葉に大きく気持ちが傾いたのは覚えていた。</div><div>&nbsp;</div><div>業者が置いていったものを見せてもらうと・・・</div><div>名刺はPC自作。</div><div>個人名の他に会社っぽい名称が記載されていたが法人ではなさそう。</div><div>ネット検索しても出てこず。</div><div>見積書も市販汎用品。</div><div>書いてあることを見ても、とても作業内容が読めるようなものではなく、“何屋”なのかハッキリせず。</div><div>想像するに、特殊清掃業ではなく、不動産会社や工事会社の下請けでやっている個人事業のハウスクリーニング業者ではないかと思われた。</div><div>&nbsp;</div><div>重異臭が残留しているということは重汚染もあったはず。</div><div>しかし、寝室の床に目立った汚染痕はなし。</div><div>フローリング材の継目（溝）部分をよく見れば、わずかに遺体系汚物か生活上のものか判別できないくらいの汚れが確認できるくらい。</div><div>フローリングの濃ブラウン色が汚染痕を目立たなくしているとも考えられたが、遺体液の大半は寝具やベッドマットが吸収したはずで、もともと汚れていなかった、もしくは、汚れていても軽微なものだった可能性の方が高かった。</div><div>つまり、「業者の清掃技術が高かったから床がきれいなのではない」ということ。</div><div>それに対して異臭は重症。</div><div>消臭について、実状は「やらなかった」のではなく「できなかった」。</div><div>経験も知識も技術も装備も何もない中で、業者は、考えつく作業を試みたはず。</div><div>しかし、考えついたのは粗悪な誇大広告消臭剤をネットで買ってふり撒くくらいのことだったと思われた。</div><div>&nbsp;</div><div>あまりにお粗末・・・の割に、料金は高額。</div><div>業者は女性を侮り、女性は業者に侮られ・・・</div><div>紹介者との人間関係もあるし、揉め事も避けたいし、結局、女性は泣き寝入るしかなく・・・</div><div>そそくさと、業者は消えていき・・・</div><div>女性の胸中と部屋に残った不快なニオイは、もはやどうすることもできない状況になっていた。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>故人（二人の弟）には妻子がおらず、このマンションを含めた遺産は 女性姉妹が相続。</div><div>部屋は空になっているし、内装設備はきれいだし、遺体汚染痕はないに等しいし、問題はニオイだけ。</div><div>ただ、仮にニオイが消えても、孤独死・腐乱があった事実は消えない。</div><div>どちらにしろ「事故物件」とされてしまう。</div><div>だったら、このまま売却するのもあり。</div><div>そうすれば、これ以上、二人はストレスを抱えずに済む。</div><div>しかし、二人は、ニオイが残っていることをどうしても受け入れられないようだった。</div><div>&nbsp;</div><div>異臭の有無が部屋の査定額にどれだけ影響するものかは定かではなかったけど、少なくとも、買い手の心象には影響するはずだった。</div><div>ただ、二人は、ニオイを消して少しでも高く売ろうと欲をかいているのではなかった。</div><div>それは、故人の名誉を考えてのこと。</div><div>故人が悪事を犯したように捉えられるのは耐えられない・・・</div><div>亡くなり方の悲惨さや部屋の凄惨さばかり強調されるのは悔しい・・・</div><div>事故物件とされるのは仕方がないにせよ、無闇に、他人にネガティブな心象を抱かれたくない・・・</div><div>二人にとっては、ニオイを除去することと故人（弟）の名誉を守ることが重なっているようだった。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>“息子推薦”であっても、二人は、当社（私）のことをいきなりは信用せず。</div><div>細かすぎる質問、繰り返される質問から、それが感じ取れた。</div><div>ただ、それで不愉快な気分にはならず。</div><div>信用できないのは前業者にダマされたから、探ってくるのは信用の材料を集めようとしているから。</div><div>協議は長々としたものになったが、私は、どんな質疑にもキチンと応答。</div><div>この仕事、自慢はできないけど自負はある。</div><div>二人の信用を得るための材料は豊富にあった。</div><div>その結果、あらためて当社が消臭作業を施工することに。</div><div>そして、相応の手間と時間と費用を要しながらも、故人が残したニオイと女性姉妹の憂慮は消えていったのだった。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>「職業に貴賤はない」と言われるが、それは一つの見方。</div><div>違う側面から見れば貴賤はある。</div><div>卑下しているわけでも 僻んでいるわけでも 拗ねているわけでもなく、事実は事実として、そう思う。</div><div>で、言うまでもなく私の仕事は“賤”の方に入る。</div><div>特殊清掃業者・遺品整理業者が数えきれないほど涌いている近年では薄らいできていると思うけど、従事している者が“わけあり”“ヤバい奴”等の印象を持たれやすい実状もある。</div><div>私のことを「胡散臭いヤツ」と感じる人は、自分が思っているほど少なくないかもしれない。</div><div>&nbsp;</div><div>事実、私はクサい男。</div><div>汗脂臭・腐乱臭・ゴミ臭・糞尿臭・動物臭・・・年柄年中、悪臭にまみれているので。</div><div>おまけに、ここ数年は、厄介な加齢臭まで。</div><div>更に、「吐く（書く）セリフ（文章）もクサい」ときてる。</div><div>この仕事、この齢、この性分だから仕方がない。</div><div>&nbsp;</div><div>ただ、それらの異臭だけでなく、時々は、自分に浸みついた胡散臭を省みて、消臭を試みてもいいかもしれない。</div><div>そしたら、意外と自分の芳香がわかるかも。</div><div>更に、それが“素の自分”だったりしたら めっけもん。</div><div>&nbsp;</div><div>自分の芳香を探さず、自分の芳香に気づかず・・・</div><div>自分を嫌い、自分を軽んじ、自分を蔑んでばかりじゃ、人生がもったいない。</div><div>何より、自分の“命”が可哀想。</div><div>だから、今日も、私は“クサい”ことばかり考えては 一人頷いているのである。</div><div>&nbsp;</div><div><a href="https://www.humancare.jp/case/case_16846/" rel="noopener noreferrer" target="_blank">他社施工後の消臭作業事例㊿</a></div>
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<link>https://ameblo.jp/clean110/entry-12920006292.html</link>
<pubDate>Tue, 05 Aug 2025 04:02:10 +0900</pubDate>
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<title>ガリガリ君</title>
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<![CDATA[ <div>いつの頃からそうするようになったのか・・・現在の私は、一日二食が基本。</div><div>ま、意図的に「一日一食」や「一日二食」にしている現代人は少なくないようだから、特に珍しいスタイルではないだろう。</div><div>私の場合、食事は朝と晩だけ、昼食をとることはほとんどない。</div><div>まぁ、昼を食べていた頃でもバナナ一本とか、その程度。</div><div>店に入って定食をガッツリ食べたり、弁当を買ったりすることはなかった。</div><div>12:00～13:00キチンと昼休憩がとれる仕事でもなく、昼食に時間をとられるのもイヤだし、頭や身体を使うのも面倒臭い。</div><div>腹が減らないわけではないけど、食べなければ身体は重くならないし、晩飯が美味しく食べられるという利点もある。</div><div>&nbsp;</div><div>しかし、そう“舐めたマネ”ばかりしてるわけにはいかないときもある。</div><div>夏場は特にそう。</div><div>孤独死現場で孤独死？</div><div>ほとんどの特殊清掃は単独作業なので、一人でブッ倒れたらシャレにならない。</div><div>水分はもちろん、エネルギーもキチンと摂取しておかないと身が危ない。</div><div>なので、作業がハードになりそうなときは、パンとか、傷みにくく 運転中でもサクッと食べられるものを用意することを心掛けている。</div><div>&nbsp;</div><div>夏の昼食代わりとして登場するのは、やはりアイス菓子。</div><div>頻繁に買うわけではないのだけど、現場間の移動時や作業後の帰り道など、やけに欲するときがある。</div><div>パン同様に、食べる手間が少なく済むうえ、運転中でも食べられるといった利点がある。</div><div>中学からの好物は「P〇ｎ〇」。</div><div>だけど、これを運転中に食べるのは難があるし、やはり真夏は氷系の方が口に合う。</div><div>氷系も色んな商品があるけど、「運転中でも食べられる」といえば、やはり、片手で持ってかじれ、しかも安価な「Ａ乳業のＧ君」。</div><div>やっぱ、これ。</div><div>&nbsp;</div><div>何年か前の夏、暑さと疲労に負けそうになったとき、それを貪ったことがあった。</div><div>すると、食べ終わる頃になって、バーに「１本当り」の刻印が出現。</div><div>予期せぬ出来事に、年甲斐もなく私のテンションは爆上がり。</div><div>疲れが一気に吹き飛ぶくらいの喜びを感じた。</div><div>&nbsp;</div><div>ただ、それはそれ。</div><div>私は、どこかのレジで“当り棒”を出せるほど強いメンタルは持ち合わせていない。</div><div>子供の頃は何の恥ずかしさもなく、ハッピーな気分のみで引き換えていたのだが、さすがに、中年になってそれはできない。</div><div>￥80に このストレスは合わない。</div><div>「ラッキーはラッキーだけど、俺には、これを引き換える度胸はないわ・・・」</div><div>と、恩恵にあずかることは早々に断念。</div><div>ただ、それを捨てるのは幸運を自ら手放すのも同然のような気がして、とりあえず、家まで持ち帰った。</div><div>そして、“縁起物”として、しばらくそのまま置いておいた（後に廃棄）。</div><div>&nbsp;</div><div>これは、懸賞に当たったと同じこと。</div><div>該当商品に換えることに何の問題もない。</div><div>では、何が障害になるのか。</div><div>それは、外聞・世間体・人の目、虚栄心・羞恥心等々。</div><div>いい歳したオッサンが、「みっともない」というか「恥ずかしい」というか、とにかくカッコ悪い。</div><div>対応する店員も、腹の中でバカにするだろう。</div><div>ましてや、汚いオヤジが、まさに“舐めたマネ”した棒なわけで、バックヤードで大悪口を叩かれること必至。</div><div>もう、それを想像しただけで背筋に悪寒が走って凍りつきそうだ。</div><div>&nbsp;</div><div>“当り棒”を使うか（使えるか）どうか、年齢が一つの区切りになるのは私だけではないだろう。</div><div>「アイスの当り棒、何歳までなら平気で使える？」</div><div>私の場合・・・</div><div>小学生だと余裕でいける。</div><div>中学生でも何とか大丈夫そう。</div><div>ん～・・・ギリ、高校生までか・・・やっぱ、キツいか。</div><div>大学生になると、もう無理かな。</div><div>友達とふざけながらだとできそうだけど、やっぱ、一人だと無理。</div><div>酒でも煽って気持ちをデカくしてからでないとできそうにない。</div><div>この感覚は社会一般に合っているのか、それとも私の性格はおかしいのか、興味がある。</div><div>「何歳までなら使える？」</div><div>よかったら、コメント欄に投稿を。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>夏の足音がきこえ始めた晩春のある日、相談の電話が入った。</div><div>「暑くなる前に壊れたエアコンを交換したい」</div><div>「今のままでは工事業者が入れない」</div><div>声の主は弱々しい口調が印象的な男性、年齢は30～40代か。</div><div>どうも、自宅をゴミ部屋にしてしまっているよう。</div><div>基本的な質疑応答を繰り返して後、私は、事前の現地調査と見積作成を提案。</div><div>男性も、その趣旨を理解。</div><div>「自宅にはずっといるから」</div><div>「あまり先だと困るけど、都合のいいときに来てくれればいい」</div><div>とのこと。</div><div>私は、その言葉に甘えて、自分の都合で日時を設定させてもらった。</div><div>&nbsp;</div><div>訪れたのは、高層建のマンション。</div><div>郊外ながらも駅前の好立地。</div><div>周囲も賑やかで、日常の買い物や飲食は徒歩圏内で充分済ませられるようなエリア。</div><div>「いいところに住んでんなぁ・・・」</div><div>私は、そう思いながら、建物の下から男性に電話。</div><div>下に着いたらインターフォンではなく電話をする約束だった。</div><div>&nbsp;</div><div>男性は、すぐに電話にでた。</div><div>そして、「２～３分してからインターフォンを鳴らして」と指示。</div><div>私は、妙な指示を怪訝に思いながら1F入口に移動。</div><div>2分ほど待機してからインターフォンを鳴らした。</div><div>すると、今度は、「４～５分してから来て」「鍵は開けておくから勝手に開けて入って」との指示。</div><div>怪訝さが増し加わった私だったが、とりあえず、開錠されたオートロックをくぐって男性の部屋がある上階へ昇った。</div><div>&nbsp;</div><div>「勝手に入っていい」と言われていながらも、「これから入りますよ」の合図のつもりで、一応、玄関前でインターフォンを押した。</div><div>それから、「失礼しま～す」と、やや声を大きくして、ゆっくりドアを引いた。</div><div>すると、目の前には立派なゴミ部屋が出現。</div><div>ゴミ達は、家主がなすがまま床を覆い尽くし、更に、家主に逆らうこともせず堆積。</div><div>先の電話でだいたいの状況を聞いていたので驚きはしなかったけど、少しはマシな状態であることを期待していたので ちょっとガッカリ。</div><div>そんな心持ちを知ってか知らずか、湿気と異臭を帯びた不快な空気が、悪気のない悪気で“ムワァ～ッ”と私を出迎えてくれた。</div><div>&nbsp;</div><div>季節は晩春。</div><div>陽によっては夏の前味が感じられるくらい。</div><div>ゴミをはじめ、湿気や異臭が気分や身体に障ったのはもちろんのこと、その蒸し暑さにも閉口。</div><div>上階につき、ベランダの窓と玄関ドアを同時に開ければ心地よい風が吹き抜けそうなものだったが、物やゴミに阻まれてベランダ窓は開けられず。</div><div>結局、私は、ゴミと異臭と蒸し暑さに耐えながら（萎えながら）、男性と向かい合うしかなかった。</div><div>&nbsp;</div><div>男性は、奥の部屋の椅子に寄りかかるように座っていた。</div><div>そこが、昼間の大半を過ごす定位置のようだった。</div><div>上は肌着Ｔシャツ・下はトランクス、つまり下着姿。</div><div>しかも、シャツもパンツもかなりの汚れよう。</div><div>エアコンも使えず、窓も開けられず、暑いからその成りをしているのだろうけど、冷静に見るとかなり振り切ったファッション。</div><div>ただ、当の男性は、人目もカッコも まったく気にしてない様子。</div><div>恥ずかしそうな素振りも、気マズそうな雰囲気もまるでなし。</div><div>確固たる信念があるのか 俗世を達観しているのか、人の目ばかり気にしてしまう私にとっては、その潔いまでの不格好は、ある意味でカッコよく見えるものでもあった。</div><div>また、エアコン工事については、実際に、工事業者を呼んで相談したそう。</div><div>特掃屋の私ならともかく、この部屋に一般の人を呼ぶとは、何ともたくましい。</div><div>小心者の私にとってそのタフさは、感心を通り越して憧れを抱くくらいのものだった。</div><div>&nbsp;</div><div>インパクトのある恰好に奪われていた視線を男性の身体に向けてみるとガリガリの痩身。</div><div>また、頭髪は少なく白髪混じり、無精髭も目立っていた。</div><div>肌艶はよくなく、垢なのか何なのか、皮膚はだいぶ荒れていた。</div><div>パッと見は老人にも見えるくらいの風采。</div><div>しかし、実年齢は40代前半。</div><div>私より一回りも若いのに、その身体機能は、立ち上がるにも時間を要し、歩くこともままならないくらい低下。</div><div>どう考えても、身体に重い障害がある、あるいは厄介な病気を患っているようにしか見えず。</div><div>しかし、家事援助のヘルパーが入っているような形跡はなし。</div><div>そもそも、部屋がこの状態では入れないし、入っていたらこんなことにはなっていない。</div><div>男性が、普段、どのように暮らしているのか、自然と興味を惹かれるものがあった。</div><div>&nbsp;</div><div>いつも男性がいる椅子から壁にあるインターフォン操作パネルまでは、ほんの２～３ｍ、玄関までは４～５ｍ。</div><div>健常なら、インターフォンが鳴れば“秒”で対応できる距離。</div><div>しかし、機敏に動けない男性は“分”かかる。</div><div>「マンションの下に着いたらまず電話」</div><div>「２～３分してからインターフォン」</div><div>「４～５分したら玄関を開けて勝手に入って」</div><div>当初の不可解な指示は、思うように身体が動かせない事情があってのことだった。</div><div>&nbsp;</div><div>このマンションは、いわゆる投資用マンション。</div><div>他室の多くは居住者（借主）とオーナー（貸主）が別。</div><div>しかし、男性は、自分が住むために購入。</div><div>自己所有なので、専有部分がゴミ部屋で汚くなっていても原則として問題はない。</div><div>とは言え、他住人に不快感や不安を与えるようなことをするのは御法度。</div><div>何より、自分に害がある。</div><div>「エアコンが壊れてよかったのかも」</div><div>「部屋をきれいにするチャンス」</div><div>と、男性は、弱々しい口調に反して前向きな言葉を口にした。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>聞いて理解できるはずもなかったから詳しくは訊かなかったけど、職業はＩＴ系の技術職。</div><div>在宅ワークのようで、関係していそうなPC機器がたくさんあった。</div><div>風貌はともかく高い技能をもっているのだろう、収入も悪くなさそう。</div><div>このマンションも安くはなかったはずだし、宅配や通販もバンバン利用しているようだし、私が出した安くない見積も二つ返事で承諾したし、経済的に困っている風ではなかった。</div><div>&nbsp;</div><div>普段、外に出ることはなし（身体的に外出はほぼ不可能）。</div><div>食料や日用品は、近所のスーパーやコンビニの宅配サービスを利用。</div><div>外食も自炊もできないので、食事のほとんどは中食。</div><div>ただ、たいして食欲があるわけではなく、必要最低限のカロリーを接種している程度。</div><div>それを物語るように、食品系のゴミは“一般的なゴミ部屋”に比べてかなり少な目だった。</div><div>&nbsp;</div><div>意外なことに、酒は飲むよう。</div><div>事実、部屋には焼酎の大ボトルとロックアイスの容器がゴロゴロ。</div><div>私は、自分のことを棚に上げて、</div><div>「酒なんか飲んでる場合じゃないんじゃないか？」</div><div>と、心配に。</div><div>また、タバコも嗜好。</div><div>我慢できないのか我慢するつもりがないのか、私がいる前でも自由にプカプカ。</div><div>「身体によくないだろうに・・・」</div><div>と、受動喫煙を不快に思う前に、心配の方に輪が掛かった。</div><div>&nbsp;</div><div>衣類は、決まったものがあれば充分。</div><div>私と同じで、ファッションやオシャレへの興味は皆無。</div><div>そもそも、外出しないから外着は不要。</div><div>楽な家着、晩春～初秋は下着があれば充分。</div><div>洗濯はしない。</div><div>徹底的に着倒して、雑巾のようになったら捨てる。部屋に。</div><div>そして、新しい物はネット通販で買う。この繰り返し。</div><div>&nbsp;</div><div>風呂もかなり汚い状態で、日常生活ではほとんど使っていないよう。</div><div>「風呂が汚れているから入りたくない」のではなく「入りたくても入れない」というのが実情。</div><div>寝たきりの高齢者や重度の身体障害者が利用するような訪問入浴サービスを利用しているはずもなく、つまるところ、風呂に入らないで生活しているということ。</div><div>肌が荒れ皮膚が傷むのは仕方がないことだった。</div><div>&nbsp;</div><div>トイレは日常で使用。</div><div>ゴミ部屋では、ビニール袋やオムツに糞便をし、ペットボトルや瓶に尿を溜めるケースも少なくない中、幸い、ここではそういうことはなかった。</div><div>ただ、その汚れ方はハンパなし。</div><div>足元は黄茶色のゴミだらけで、糞便は便器だけでなく便座にまで付着。</div><div>弱い身体機能が故に、トイレへの移動・便座への着座と排尿・排便のタイミングが合わせられていないことが想像された。</div><div>&nbsp;</div><div>男性が身体的に問題を抱えているのは明らか。</div><div>しかし、その辺のところは一切口にせず。</div><div>誰しも、人に話したくないことの一つや二つはあるもの。</div><div>男性は、相当の事情を抱えて苦悩、もしくは、それ自体考えたくないのかもしれず。</div><div>だから、その他のことはざっくばらんに訊きながらも、その辺のところには触れずにおいた。</div><div>&nbsp;</div><div>私は、男性には経済力があるのだから、家事支援等、少しでも生活が快適になりそうなサービスを受けることを助言しようかと思った。</div><div>ゴミ出しや掃除・洗濯をしてくれる人がいるだけでも生活は随分と改善するはず。</div><div>けど、やめておいた。</div><div>男性との会話や男性が話す理屈におかしなところはなし。</div><div>高い技能を要する仕事もしているわけで、頭はシッカリしている。</div><div>自分のことは自分でキチンと考えることができるはず。</div><div>その上で、男性は男性なりの生活を送っている。</div><div>「それを尊重する善意は必要でも、水を差す独善は不要」</div><div>助言をやめたのは、私なりに、そんな風に考えたからだった。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>他人の目には、不自由そうに見える男性。</div><div>だけど、それを理由に誰かに迷惑を掛けているわけでもないし、誰かを害しているわけでもない。</div><div>勤労に励み、納税の義務をはじめ、社会的責任もキチンと果たしているはず。</div><div>その上で、メンツに縛られない。</div><div>身体は不自由でも、心は自由を謳歌しているようにも見えた。</div><div>&nbsp;</div><div>実害のない外聞、誰も気に留めない世間体、過剰な自意識、疲れるだけの虚栄心、つまらないプライド・・・</div><div>そんなものに囚われて、一体、私は、どれだけの自由を不意にして、どれだけの不自由を甘受してきたのだろう。</div><div>&nbsp;</div><div>一本と一人の“ガリガリ君”は、それらの本質を教えてくれているような気がするのである。</div><div>&nbsp;</div><div><a href="https://www.humancare.jp/case/case_16789/">ゴミ部屋の片づけ事例【障害者】㊾</a></div>
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<pubDate>Fri, 25 Jul 2025 07:00:00 +0900</pubDate>
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