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<title>hon　～コメディな小説をば～</title>
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<description>小説「ミイラ取りをミイラに」執筆中です。</description>
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<title>28</title>
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<![CDATA[ <p>「ブラックのショート」<br>「アイスのキャラメルマキアート、ショート」<br>「え！マジですか？」僕は思わず聞き返した。<br>「あぁ。爪が割れたときは甘いものが効くんだよ」<br>「勘弁してくださいよー」</p><br><p>僕たちは、北新地からほど近い丸ビル下のスターバックスに居た。<br>いつもブラックコーヒーしか飲まない岸本さんが、キャラメルマキアートなんか頼むんでびっくりしたのだ。<br>僕たちは店外のオープンスペースを陣取った。酒で火照った身体に風が心地よい。<br>「それじゃ、説明してくださいよ！」<br>「何をだ？」<br>「色々です！」僕は問い詰めずにはいられなかった。<br>「まあ、大沢のおかげでうまくいったんだからいいじゃないか」<br>「誤魔化さないでください！どうして1億勝負なんか吹っ掛けたんですか！最初の話と違うじゃないですか！そんなことしだすから、僕がテンパって、テンパって……」<br>「わかった、わかったよ」岸本さんはイタズラな表情を浮かべながら、仕方ないなと説明しだした。仕方ないってなんだ！<br>「清田の上限は5000万ということはわかってた」<br>「なんで！」僕は重力が許す限りの前のめりで聞いた。<br>「前にも説明した通り、奴は闇スロの借金で首が回らない状態だった。清田が自由に動かせる金など知れてる。もし奴が大博打を打つとすれば、人から借りるしかない」<br>「それからそれから！」<br>「大沢、近い」<br>おっと、思わず興奮して鼻息がかかるほど岸本さんに顔を近づけていてしまった。<br>「清田と出会ったのは偶然だった。と言ってもネタ探しで、よく芸能人や財界人なんかが隠れて利用する小料理屋があってな。そこで隣合わせた。清田とおそらく野球関係者だったんだろう、清田の引退後の話をしてたよ」<br>岸本さんはブラックコーヒーを口にするように、クールにキャラメルマキアートを飲んだ。意外な一面だ。って言うか話の続き！<br>「そいつは清田に店を出すことを勧めてた。資金はタニマチ筋の社長が、清田になら5000万までキャッシュで貸す。という内容だったよ」<br>「その話を信じて？」<br>「いや、話半分で聞いてたんだがな。そしたら喋る喋る。そのタニマチがどこの社長で趣味が何かまでわかったよ。あとで裏を取ったら、その社長は大の野球好きで通っててな、何人もの選手に同じようなことをしていたことがわかった」<br>「それでこれは仕事になる、と？」<br>「いや、俺がおもしろいと思ったのは金の話だけじゃないんだ」<br>「どういうことですか？」<br>「こんな話を回りの目も気にせず大声で話す、清田という人間性に付け込む隙があるんじゃないかと思ってな」<br>普通なら聞き流してしまうような引退話し、その状況。それを見逃さず仕事に結びつけることができるセンス。それがこの岸本さんだ。<br>「奴は金に困ってる。こんな確実に拾えるような金なら、無理してでも現金を用意するだろう」<br>「5000万までなら？」<br>「そういうことだ」<br>「あ、それからジュラルミンケースの100万円！あれはどういうことなんですか？」<br>確かに僕が用意したときは、ケースの上部右角に本当の100万円の札束を置き、残りはダミーだった。にもかかわらず、清田が手に取ろうとした下部左角の札束、あれも本当の100万円だった。<br>「置き換えたんだよ」<br>「……え？それだけ？」<br>「それだけ。悪いなミステリーになってなくて」と、岸本さんは過剰にクールに言い放った。きぃ～！<br>「いつですか！？」<br>「キタノザウルス」<br>あ！そういえばあのとき、確かめてくると岸本さんはトイレに行った。あのときか……<br>「でもなんで教えてくれなかったんですか！おかげで慌てちゃったじゃないですか」<br>「いててててて」岸本さんはわざとらしく、怪我した手を痛がった。<br>「ちょっと！」<br>「敵を欺くにはまず味方から。やっぱり大沢を連れて行って正解だったよ。あの慌てようは演技ではできない」<br>岸本さんはあらかじめ、こうなることを想定していたんだ。<br>「爪を割られたのは想定外だったがな」<br>「すいません……」<br>「いや、謝る必要はない。どっちみち右手は怪我をする予定だったからな」<br>「予定？」<br>「あぁ。怪我をしないと俺が清田のキャッチボールの相手をするはめになる」<br>そうだ。清田の相手は岸本さんじゃない。<br>岸本さんは帰り際さりげなく「申し訳ないがこの指ではボールは投げられない。他の者に相手させるよ」と言って清田から了解を取ってある。<br>岸本さんがキャラメルマキアートのカップに手をかけたとき、岸本さんの携帯が鳴った。<br>「三井か」<br>岸本さんは三井さんからの報告を一方的に聞いていた。<br>「わかった。一度集まろう」そういうと電話を切り、カップに口をつけた。<br>「何かあったんですか？」<br>「あぁ。立会人を用意できなくなった」<br>「えぇ！」三井さんはプロ野球のOB選手に近づいていた。<br>「まずいな……」<br>「まずいですか？」<br>「あぁ。思ってた以上に、甘いんだなキャラメルマキアート」<br>「そっち！？」<br>「俺、だいぶ酔ってるな」そういうと岸本さんは立ち上がり、帰るぞと僕に促した。<br>「大丈夫なんですか、立会人」<br>「あぁ。なんとかなるだろう」そういうと、クルっと振り向き真剣な表情で僕にこう言った。<br>「ところで大沢、『ふぇ～』ってあれなんだ？」</p><br><p>きぃ～！この酔っ払いめ！</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10398849924.html</link>
<pubDate>Sat, 28 Nov 2009 18:04:01 +0900</pubDate>
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<title>27</title>
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<![CDATA[ <p>やばい。岸本さんの目が据わりきっている。てっきり役者で酔ったふりをしてると思ってたが、もしかして・・・マジ？<br>じゃないと、あの岸本さんが1億円もの勝負を提案するわけがない。<br>「取れない仕事はやらない」それが岸本さんのポリシーであり、僕たちのポリシーでもある。<br>一体どういうことなんだ？次第によっては僕が止めに入るしかない。すべてが水泡に帰しても・・・。</p><br><p>1億円を目の前にして、清田はロックのウイスキーを一気にあおった。<br>フゥー。深いため息とも深呼吸ともとれる息を吐き、口を開く。<br>「わかりました受けましょう。社長さんがここまで意気を見せてくださった。これで受けなきゃ男とちゃうでしょう」<br>まずい！清田が受けてしまった。そこには先ほどまでの陽気な男ではなく、勝負師、真剣師の男の顔があった。今にも飛びかかってきそうな獣のようでもあった。<br>ここは僕が止めるしかない！<br>「ちょっと待ってください、社長。これは会社のお金です、それはやっぱまずいですよ！」<br>「うるさい。お前は席をはずしておけ」<br>「でも・・・」ダメだ。いつもの岸本さんじゃない。かくなる上は強硬手段しかないか！<br>「確かめさせてもらってもいいですか？」<br>まずい。100個の札束のうち98個がダミーだ。見た目にはわからないが手に取ればすぐバレる。しかもひとつは取り出してテーブルの上。本物の札束はケースの右上にひとつだけ。他のを手に取られたら終わりだ！いや待てよ。むしろここでバレた方がいいんじゃないか？それでこのギャンブルを御破算にできるのではないか？そうだ。この後もめるかもしれないが、そんなこと1億に比べれば大したことはない。きっと岸本さんも「あれは大沢のファインプレーだったな」と言ってくれるはずだ。そうだ。きっとそうだ！<br>そのとき不意に「ご自由に」と、岸本さんがまさかの言葉を吐いた。何で！？<br>清田の手がジュラルミンケース左底の札束に伸びる。</p><br><p>「ふぇ～！」</p><br><p>しまった！思わず「ふぇ～」って言ってしまった！<br>「あぁ、これは違うんです違うんです！」何が違うっていうんだよ僕は！<br>とにかく清田にダミーの札束を触らすわけにはいかない！僕は勢いよくジュラルミンケースを閉じた。</p><br><p>「あぁ！」</p><br><p>岸本さんが顔を歪めながら叫んだ。<br>・・・しまった。<br>岸本さんは右手を押さえながら、身体を縮こませた。<br>「うぅ・・・」<br>咄嗟にジュラルミンケースを閉じようとして、岸本さんの右手がケースの縁にかかっていたのに気づかなかった・・・。よくは見えなかったが岸本さんの指が何本か血でにじんでいるようだった。<br>「社長さん大丈夫ですか！？」ホステスが慌てておしぼりを差し出す。僕は声をかけることができなかった。<br>「大丈夫・・・。それより清田くん確かめたまえ」<br>岸本さんは気丈にも、振り絞るように声を出し、ジュラルミンケースをまた大きく開いた。そして清田が手を伸ばした札束を取り、僕が挟んだ反対の手で放り投げた。<br>札束を受け取った清田は、パラパラマンガを見るように確認する。<br>「確かに。それより大丈夫ですか？」<br>「なあに。アルコールが回ってるせいか大した痛みではないよ」<br>岸本さんの右手薬指の爪が割れていた。他の指も血がにじむ。<br>僕はバカだ。やはり付いてくるんじゃなかった。岸本さんの足を引っ張ってしまった。今回の仕事は終わりだ・・・。ん？あれ？何かがひっかかる。<br>それが何なのかわからないまま、岸本さんから清田に提案が出た。<br>「ひとつ条件がある。1億。確かにこの金は私の金であって私の金でない。お互い非常にリスクの高い金額だ。そこで君にも1億キャッシュで用意してもらいたい。博打の世界にローン払いなんて聞いたことないからね」<br>清田の表情が一気に曇った。<br>「ちょっと待ってください、1億なんて金すぐには用意できませんよ」<br>そりゃそうだ。清田は闇金から相当つまんで借金で首が回らない。そんな金があるわけがない。<br>「そうか。残念だがこの話は忘れてくれ」そういうと岸本さんはジュラルミンケースに札束を直し始めた。<br>「ちょっと待ってください」清田が、岸本さんの手を止めるかのように声をかけた。<br>「5000万なら用意できます」</p><br><p>そのとき僕は気が付いた。いつのまにか岸本さんのペースだったことに。</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10392031742.html</link>
<pubDate>Thu, 19 Nov 2009 18:00:45 +0900</pubDate>
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<title>26</title>
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<![CDATA[ <p>ボトルが空いた。<br>こんなに飲んでる岸本さんを初めて見た。軽くロレツが回ってないように見える。<br>それ以上のペースで飲んでる清田はケロっとしている。さすがだ。<br>新たなボトルが僕たちのテーブルに運ばれてきたと同時に、</p><br><p>「キャッチボールがしたい！」</p><br><p>岸本さんは唐突に切り出した。<br>唐突にと言ったが回りはそうは思わないだろう。酔った不動産屋の社長が、酒の勢いを借りて大ファンの選手におねだりをしてる。そう写ったであろう。<br>唐突と思ったのは僕だ。キャッチボール――。<br>そう、僕たちは今夜、清田にキャッチボール＜ギャンブル＞を誘いに来たのだ。<br>「ははは！ボールもグラブもないじゃないっすか。おしぼり丸めてやりますか？」清田は酔っ払いの戯言にこう返した。<br>「いや、ちゃんとしたボールとグローブで君とキャッチボールがしたい。それが私の夢なんだ！」岸本さんは一歩も引かなかった。<br>「まいったなあ」と、頭をかく清田。<br>そこへママも「社長さん、清田さんも困ってらっしゃいますよ」と助け舟を出す。酔っ払いをたしなめる空気の中、場は次の話題へと流れようとしていた。岸本さんは手元に置かれた、新たに作られた水割りをクイっと喉の奥へとやると一層目を座らせこう言い放った。<br>「ただとは言わん」</p><p>岸本さんは僕からジュラルミンケースを奪い取り、無造作に中から100万円の束を取り出しテーブルに、ポンっと投げ置いた。<br>「100万。キャッチボール1回100万円。悪くない話だろう」<br>場が凍りつく。100万円のキャッチーボール。その法外な提案と金満ぶりに皆は嫌気がさした。<br>「社長さん、またまた悪いご冗談を。酔ってらっしゃいますよ」と取り繕うママ。<br>「100万じゃ足りないっていうのか？」<br>「そういうことじゃなくて…」ママもついに閉口してしまう。<br>「じゃ、いくらだったらやってくれるんだ、清田くん」<br>清田もしぶしぶ「僕たちはプロです。お金をもらってキャッチボールすることはできないです。もし本当にお望みでしたら球団イベントに来てもらえればいくらでもお相手しますよ」と100点の回答で返す。<br>「ほう。私とはキャッチボールできないってわけだな」<br>ここで酔っ払いの常套句が飛び出す。「俺の酒が飲めないのか！」は良く聞くが「俺とキャッチボールできないのか！」は聞いたことがない。<br>「そうじゃありませんよ。さあ、飲みましょう！」</p><p>飲みかけの水割りを勧める清田に対し、取り付く島なく岸本さんは切り返す。</p><p>「わかった。じゃ、ゲームをしよう。キャッチボールをして相手のボールを取り損ねたら100万円っていうのはどうかね？」<br>一瞬、清田の眉が吊り上った。<br>「すいません、勘弁してください」<br>「清田くんはギャンブル好きだと聞いていたが、こんな簡単なギャンブルでは物足りないかね。それとも素人相手に野球でおじけづいてしまったかな？」と、笑う岸本さん。<br>明らかに清田の表情が変わる。岸本さんの挑発に怒ったのではなく、むしろその逆。子供が欲しがっていたオモチャを買ってもらえるかのような表情に見えた。<br>「こんなことが世間にばれたら、いろんな方にご迷惑がかかりますので」<br>まだ話しに乗ってこない清田。<br>「それなら大丈夫。秘密裏で行こうじゃないか。もしキャッチボールしてるところを見られても、まさかこんなことに金がかかってるとは思うまい。私も君の親会社と取引がある以上、おかしなことはせんよ。それでも信用ならんのであれば立会人もつけよう」<br>岸本さんの提案にも清田は「社長さん、ホント勘弁してください」<br>「1000万。1000万ならどうだ」<br>清田の動きが止まった。チーターが、動きの鈍った獲物に襲い掛かるように岸本さんが畳み掛ける。<br>「じゃ、2000万ならどうだ」<br>岸本さんの言葉にその場にいる全員が止まった。どれくらい止まっていただろう。瞬きする音さえ聞こえてきそうな静寂の中、清田だけがゆっくりと動き出した。テーブルに置かれたマイルドセブンから煙草を1本取り出し、流れるように慣れた手つきで火をつけ、ゆっくりとくゆらせる。まるでCMのように。そしてやおら口を開いた。</p><p>「そんなギャンブル、マスコミに知れたらとんでもないことになりますよ。警察も黙っちゃいない」<br>「ギャンブルにリスクは付き物じゃないかな？」<br>清田はフっと笑ったかと思うと「その通りですね。リスクがないとギャンブルじゃない。バレたら僕も引退でしょう」<br>「どうだい？」ゆっくりと、なおかつ押し付けがましくなく岸本さんは返答を求めた。</p><p>すると清田は煙草を灰皿にやり、両手で自分の顔をピシャリと叩いたかと思うと「すいません。2000万で引退は賭けれないですわ」。さわやかな笑顔で断った。<br>「そうだな。天下の清田正和が2000万ぽっちで引退じゃ、あまりにも寂しすぎる」</p><br><p>ドンっ！</p><br><p>岸本さんがジュラルミンケースをテーブルに放り出した。そしてケースを開き中身を清田へとさらけ出す。<br>「1億ある。1億のキャッチボールならどうかな？」</p><br><p>えぇー！？5000万って言ったじゃん！1億勝負なんて、き、き、聞いてないよ～！</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10391698157.html</link>
<pubDate>Wed, 18 Nov 2009 04:53:16 +0900</pubDate>
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<title>25</title>
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<![CDATA[ <p>でかい。と言うより太い。腕が、足が、首が、指が、背中が太い。<br>資料によれば９０kgということになっているが、実際はもっとあるのではなかろうか？<br>一見して何かを極めた身体つきとオーラを身に纏っている。<br>夜にもかかわらず清田は濃い目のサングラスをかけ、迷うことなく定位置であろう奥のテーブル席に座った。<br>ママも清田の注文を聞くでもなく、ボトルとフルーツ盛り合わせを用意する。<br>そんな清田の姿をなぜか岸本さんは一瞥もくれない。<br>僕らのテーブルに新たに付いた若いホステスと、岸本さんは動くそぶりもなく話し始めた。</p><br><p>30分経ったであろうか――。<br>動きはない。相変わらず二人はくだらないことを話してる。なんでそんなにインクが消せるボールペンの話しで盛り上がれるんだ！<br>「簡単なことさ、金は金を呼ぶんだよ」<br>今度はどうすれば金持ちになれるかという話だ。<br>「どれくらいお金を持ってれば呼べるんですか？」<br>「１ゲーム。私たちの世界ではそう呼んでいる」<br>「どういうことですか？」<br>「野球のスコアボードを見たことあるかな？」<br>「1回から9回まで数字が並んでる、あれですよね？」<br>「そう。スコアボードに並ぶ9つの数字のような、9桁の数字」<br>そういうと岸田さんは僕に鞄を渡すよう促し、通帳を取りだした。<br>「億だよ」<br>ホステスの目の色が変わった。「すごーい！」<br>「1億使って、1億儲ける。私たち不動産屋はそういう仕事なんだよ」<br>僕が用意した通帳を見てホステスは、キャーキャー言いながら目を丸くしている。<br>さすが岸本さんだ。<br>僕が感心したのはホステスを騙しこんだ役者ぶりではない。その様子を何気なく清田が伺っていたからだ。清田に直接、通帳を見せるより何倍も効果があることだろう。<br>そしてついに清田が食いついた。<br>ママに何か耳打ちをし、二、三言葉を交わすとママが動く。<br>「社長、前にもお話ししたことがあると思いますが、あちらにお見えのお客様が清田さんです」<br>「おぉ、これはこれは」と大げさに立ち上がり、名刺を持って清田に近づく岸本さん。<br>「実は前にもこの店で清田選手をお見受け致しまして、ママに機会があれば紹介して欲しいと頼んでいたんですよ」<br>「そうですか」<br>「はじめまして、私、不動産業を営んでおります安藤と申します」そういうと岸本さんは偽名の名刺を渡した。<br>「清田です。すいません、職業柄、名刺を持ち合わせておりませんで」<br>「いえいえ。プロ野球選手はお顔が名刺のようなものですから」<br>「そう言っていただけると。ありがとうございます」<br>「私ども、清田選手の球団親会社様ともお取引させていただいております」<br>「そうでしたか」<br>「プロ野球OBの方にも、テナント物件のご紹介などさせていただいております。もし、お店などを開かれる場合はご相談させてください」<br>「その折は是非」<br>「あと、もしよろしければ、ご一緒させていただけませんか？実は私、清田選手の大ファンなんです」はにかんだ中学生のように岸本さんが言った。<br>「ええ、是非とも」<br>ようやく清田に接近することができた！</p><br><p>それから岸本さんは、いかに自分が清田選手のファンであるかをアピールしまくった。よくもまあ、そこまで調べたな、と言うようなエピソードまで交えて。<br>清田も噂通りの男気のある豪快な飲みっぷりで場を盛り上げた。人気があるのもうなづける。<br>そんないい雰囲気の中、岸本さんの質問が清田の空気を変えた。<br>「清田選手が今までで一番印象に残ってるプレーは何ですか？」<br>一瞬、清田が眉間にしわを寄せたように見えた。が、すぐさまその人懐っこい顔で<br>「セ・リーグに移籍して1年目の日本シリーズですかね」<br>「3打席連続ホームラン！」<br>「そうですね」清田は伏し目がちに答えた。<br>「あの試合はすごかった。ピンポン玉みたいにボールが飛んでいったもんなあ。あれだけ絶好調だったのに日本一にはなれなくて、さぞ残念でしたでしょう？」<br>「・・・勝負の世界ですから」</p><p><br>僕にはなぜか清田が何かを隠しているように見えた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10387933110.html</link>
<pubDate>Sat, 14 Nov 2009 04:48:25 +0900</pubDate>
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<title>24</title>
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<![CDATA[ <p>北新地――。<br>大阪市北区曽根崎新地にある大阪最大級の高級飲食店街。<br>料亭、クラブ、ラウンジ、スナック、バーなどを中心と、梅田や難波、心斎橋とは一線を引く大人の街。<br>しばしば接待などで利用されることが多く、有名芸能人やスポーツ選手なども多い。<br>「新地で飲めるようになれば一人前」そう言わしめることができる、大阪唯一の街。</p><br><p>僕にはこの街は敷居が高すぎる。こうして歩いているだけでも緊張する。隣に岸本さんがいてくれることがなんと心強いことか。三井さんじゃないけど、十三の方がよっぽど落ち着く。ま、十三は十三で違う緊張感が漂ってはいるが。<br>一度、十三の「やまもと」にねぎ焼きを食べに行ったとき、強面の方とぶつかりそうになり冷や汗をかいたことがある。その時は間一髪避けることができ、事なきを得た。肩が当りそうになった瞬間、ものすごい勢いで右足を軸にして体を半回転させたのだ。端から見たらまるで、バスケットボールのピポッドターンだ。もしくは人間コンパス。我ながらＮＢＡ選手級のターンスピードだったと思う。<br>でももしあの時、肩と肩が当たっていたらどうなっていただろうか？<br>「あたたたた。どこ見て歩いとんのじゃワレ！アカン、わし鎖骨イってもたわ。兄ちゃん、ちょっと事務所まで顔出してもらおうか」となっていたに違いない。</p><p>僕の想像がＶシネマの域を脱してないのはご了承いただきたい。</p><br><p>その店は、北新地本通り西側の商業ビルの5階にあった。店の名前はラウンジ「き志ゑ」。<br>岸本さんはこの一ヶ月、週二のペースで通っていたらしく、清田とも2回遭遇したとのこと。</p><p>それとなく店の人間に、清田が今日飲みに来ると聞き出していたようだ。<br>僕達が店に到着した時には、ママと3人のホステスさん。まだ時間も早く他に客は居なかった。<br>一番奥のテーブル席に着こうとしたら断られた。予約席だそうだ。――清田だ。<br>清田がいつもあの席に座ることを知ってて、岸本さんはわざとあの席にしてくれと言ったに違いない。今晩、清田はやってくる。<br>僕達はその予約席からひとつ挟んだテーブル席に案内され、紅萬子似のママが僕らに付いた。<br>僕が北新地に来るのは初めてだというと、ママは嬉々として洗練された「北新地あるある」を披露してくれた。「仕事帰りに、三菱タクシーを使うホステスは、まだまだひよっこ」あるあるは、秀逸だ。</p><br><p>店に入って1時間。<br>清田はまだ来ない。確証が取れたと思ったがなんだか心配になってきた。<br>ママに席をはずしてもらい、岸本さんに問う。<br>「清田は来ますかねえ？」<br>「たぶんな」<br>「もし来なかったら？」<br>「そのときは、また二人で出直しだ」<br>「また二人でねえ・・・」<br>来て欲しいような、来て欲しくないような・・・あぁ、複雑。って、悲劇のヒロインかっ！<br>「まあ、そんな顔するなよ。あの大選手に会えるんだから」<br>できることなら別の形で会いたかった・・・。だから悲劇のヒロインかって！話を変えよう。<br>「ところで、三井さんの方はどうなんですか？」<br>「例の『枠』を作ってるそうだ」<br>「あの人見かけによらず器用ですからね」<br>「それより、ＯＢに近付く方に手を焼いてるみたいだけどな」<br>「大丈夫ですかね？」<br>「あいつは意外と人懐っこいから、きっかけさえあれば大丈夫だろう。日時さえ合えば呼んでくれるさ」<br>岸本さんがそう言うんだったら、大丈夫なんだろうと思えてしまう。不思議な人だ。<br>ふいに華やかな女性達の「いらっしゃいませ」という声が僕達の会話を遮った。<br>僕は岸本さんと視線を合わせた。<br>「大沢、いよいよだ」<br>ゴクリ。岸本さんにバレないように生唾を飲む。<br>来た。それは紛れもなく清田正和、その人だった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10204504087.html</link>
<pubDate>Sat, 07 Feb 2009 17:19:11 +0900</pubDate>
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<title>23</title>
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<![CDATA[ <p>あれから一ヶ月経った。<br>僕は今、ＪＲ北新地駅横にある「キタノザウルス」前で岸本さんを待っている。<br>キタノザウルスとは恐竜のオブジェで、首が長い恐竜がちょこんと座って誰かを待っているポーズをしている。<br>「あなたを首をなが～くして待っています」ということらしい。<br>このあたりでは待ち合わせのメッカになっている。<br>でもなんでここで待ち合わせなんだろう？ＯＬか。あぁ、気恥ずかしい。<br>そんな軽い羞恥プレイまでして、なぜここで岸本さんを待っているのか？<br>それはこれから僕が、岸本さんと一緒に清田と接触することになったからだ。<br>なぜ？<br>経緯はこうだ――。</p><br><p>僕は岸本さんの指示通りに、現金と通帳を用意することになった。<br>その額、ジュラルミンケースいっぱいの1億円！・・・といっても実際はダミーだけど。<br>100万円の札束が100個で一億。<br>そのうちの二つが本物で、残り98個は裏表1万円ずつだけ付けた100万円のダミー。<br>古い手だが、切羽詰った状況ではこれでも十分役に立つそうだ。<br>この「なんちゃって1億円」を作るのにも396万円かかっている。<br>冗談で岸本さんに「持ち逃げしないでくださいよ」と言うと「じゃ、お前も付いてこいよ」と返された。<br>で、現在に至る。</p><br><p>岸本さんから作戦を聞かされたときは、確かにおもしろいと思った。<br>うまく清田をギャンブルに誘い出せれば5000万も夢じゃない。<br>しかし、この山で一番重要なのは、この誘い出しではなかろうか？<br>そんな重要な場面に僕も同席するなんて・・・。あぁ、気が重い。<br>首をなが～くして待つこともなく、約束の時間前に岸本さんはやってきた。<br>「よう」<br>「ちょっと、なんでこんな場所なんですか」<br>「分かりやすいだろ？」<br>「分かりやすいですけど・・・、人目が多いし気恥ずかしいじゃないですか」<br>「それは、お前に何かやましい気持ちがあるからじゃないのか？」<br>あんたが言うか！　・・・と、心の中では思ったが口にはしなかった。<br>逆に安心した。いきなり岸本さんのペースに持っていかれたからだ。「役者」はこうでなくっちゃ。<br>「用意してくれたか？」<br>「指示通り、二つが本物で残りはダミーです。本物は右上の角二つです。こっちが通帳」<br>「ご苦労さん」<br>「あのう・・・」<br>「なんだ？」<br>「やっぱり僕も行くんですよね？」<br>「ああ。お前が来ないと俺はこいつを持ち逃げするからなあ」<br>「ちょっと勘弁してくださいよ」<br>「きっとお前が役に立つと思うんだよ。確認してくる」<br>と言い残すと、岸本さんはトイレへ一億円を確認しに行った。<br>あの人、意外と根に持つタイプだな。<br>役に立つって、一体僕に何をやらせるつもりだろう？役者なんて絶対できないぞ。<br>自慢じゃないが、文化祭でやった劇でも草の役しかやらせてもらえなかった僕だぞ？<br>しかも、ただの草なのに緊張しちゃって、王子と姫のいい場面で「ふぇ～！」とかなぜか言っちゃって、望まれていない爆笑を作り出し、しこたま怒られた僕だぞ？<br>しかも、これは小学生の時じゃなくて高校生の時の話しの僕だぞ？<br>あー、ヤバい。緊張してきた。ゲェー吐きそうだ。<br>僕がミスって5000万、パーになったらどうしよう？<br>三井さん怒るだろうなあ。「お前がプロ野球選手になって5000万円よこせ」とか訳分からないこと言いそうだ。<br>これは絶対ミスれない。清田の前で「ふぇ～！」とか絶対言っちゃいけない。「ふぇ～！」って言ったら、プロ野球選手になって一生、三井さんの奴隷決定だ。<br>・・・あぁ、もう思考回路がダメな方にリンクしてきた。<br>リラックスせねば。ようし、深呼吸。そしてストレッチだ。<br>腕を伸ばそう。足を伸ばそう。わき腹も伸ばしておこう。首もこう伸ばして・・・。</p><p><br>「大沢、なんだモノマネか？」<br>「え？」<br>「それ」</p><p>岸本さんが指差した方向には、首をなが～くしたキタノザウルスがこっちを見てた。<br>「ちがいますよ！」<br>あぁ、もうどうにでもなれ！<br>「じゃ、行こうか。今から俺は不動産屋の社長。大沢は鞄持ちだ。じゃ、よろしく」<br>そう言うと、岸本さんは持ってた鞄とジュラルミンケースを僕に投げ出した。<br>「で、僕は何をしたらいいんですか？」<br>「特に」<br>「・・・特に？」<br>「ああ、鞄持ってりゃいいよ。何か問題があれば臨機応変に頼むよ」<br>それが出来たら役者だって！っていうかマジで！？</p><p><br>・・・・・オェ――っ！</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10202709333.html</link>
<pubDate>Wed, 04 Feb 2009 03:37:35 +0900</pubDate>
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<title>22</title>
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<![CDATA[ <p>「プハァ～っ！」</p><br><p>三井さんが生ビールをベタに飲む。<br>きっとこの後はこうだ「この一杯のために生きてる」</p><br><p>「この一杯のために生きてるなあ」</p><br><p>ほら。三井さんはホントわかりやすい人だ。<br>最初は、こんな人と一緒に仕事なんて出来るのだろうかと疑った。<br>岸本さんにも「あの人は、人を騙すなんてできませんよ」と進言もした。<br>すると岸本さんに「だからいいんじゃないか。誰もあいつに騙されてるなんて思わない」と返された。<br>確かにそうだ。それこそ先入観、固定観念かもしれない。<br>僕たちの仕事はまさにそこを突くことではないか。<br>実際仕事をしてみると、三井さんのそのキャラに精神的に救われることも多かった。</p><br><p>「ほら、大沢、大沢、・・・サンタ！」<br>三井さんが生ビールの泡を鼻の下につけての、いつものギャグだ。とりあえず無視。<br>「ほら、大沢、大沢、・・・老人！」<br>噛み砕いてきた。新しいパターンだ。サンタが老人だってことぐらい誰でも知ってるって！</p><p>「ほら、大沢、大沢！」<br>・・・やばい、目が輝きすぎている。リアクションしないと、いつまでもこのギャグ地獄は続くだろう。<br>「・・・おもしろいですね」<br>「だろ？」<br>救われたと思ったことを撤回したい。<br>「そんなことより、仕事の話しようぜ」<br>あんたが言うか！・・・気を取り直そう。<br>「何からはじめるんですか？」<br>「まずは、清田に接触する」<br>「どこで？」三井さんがししゃもを、お腹から食べながら聞いた。<br>「北新地の飲み屋だ。あれから調べてみたら、他にも何軒か行きつけの店があった。俺も馴染みになって、それとなくママにでも紹介してもらうよう持って行く」<br>「実際は、どうやって取るつもりなんですか？」<br>「ギャンブルだ」<br>「そんなの乗ってくるかあ？」三井さんが口からししゃもの頭を出しながら言った。ちょっとエイリアンぽい。<br>「任せろ。うまく乗せる」<br>「何か材料があるんですか？」<br>「あぁ。どうやら清田は相当借金があるようなんだ」<br>「えー、この人、大金持ちじゃないの？」今度は三井さんの口からゲソが出てる。忙しい人だ。<br>「家族にも言えない借金だよ」<br>「・・・ギャンブル？」<br>「そうだ。リハビリがうまくいってないらしくてな、ストレス解消のつもりでミナミの闇スロットに出入りして、ハマったらしい」<br>「でも目立つでしょー、有名人だったら」<br>いや、口からゲソ出してるあんたの方がよっぽど目立つって。<br>「サングラスかけて通ってるみたいだ。しかもその闇スロットは、ご丁寧に闇金も経営してるらしくてな、そこのヤクザから相当摘んでるらしい」<br>「バカだねー」<br>ゲソを口から出したり引っ込めたりしながら、三井さんが言い放った。もう見ないことにしよう。<br>「大沢には金を用意してほしい。できればキャッシュと羽振りのいい通帳を」<br>「わかりました」<br>「その見せ金を持って清田に近づき、ギャンブルを提案する」<br>「でも、こっちの話に乗ってきますかね？」<br>「清田は基本的にギャンブル好きだが、額が大きいと慎重になるかもな」<br>「いくら狙ってるの？」<br>「5000万だ」<br>「5000万！？」僕も三井さんも額を聞いて、目を白黒させた。<br>「おい、本当に9割の確率で取れるのかよ、そんな大金？」<br>「俺、そんなこと言ったっけ？」珍しく岸本さんがおどけてみせた。<br>「勘弁しろよー」三井さんの口からゲソが消えた。<br>「よほど奴に有利なギャンブルでないと、乗ってこないだろうとは思う」<br>「で、どんなギャンブルを仕掛けるんだよ」<br>「素人がプロに挑戦するようなものを考えてる」<br>「・・・野球ですか？」<br>「あぁ。キャッチボールでいこうと思う」</p><br><p>ゾゾゾゾゾゾゾっ。</p><br><p>一瞬にして全身に鳥肌が立った。<br>口角をきゅっとあげて答える、岸本さんの表情に曇りは全くなかった。<br>僕はいつも、岸本さんから仕事の話を聞くと興奮する。だが今回のそれは、今までのどれよりも比較にならないほどの興奮であった。<br>あの誰しもが知っているプロ野球選手に、野球で、しかもキャッチボールでギャンブルを仕掛けるだなんて・・・。<br>普通に考えればこちらに勝ち目などない。岸本さんは一体何を？<br>そして、岸本さんは口を開いた。</p><br><p>「聞いてくれ、作戦はこうだ」</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10158547570.html</link>
<pubDate>Fri, 31 Oct 2008 15:17:19 +0900</pubDate>
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<title>21</title>
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<![CDATA[ <p>僕たちはペテン集団である――。</p><p><br>とは言うものの、そのへんの犯罪者とは一緒にしてほしくない。少なからずポリシーもある。<br>僕たちは絶対、善良な一般市民には手を出さない。<br>僕たちが落とすのは、悪党や金持ちからだと決めている。<br>だからと言って、自分たちのことを『平成のねずみ小僧』だとは、これっぽちも思っていない。<br>だって、奪ったお金は自分たちで戴くから。<br>自分の分け前を困った人に渡してるとか、そんな気前のいい奴は僕たちの中にはいないと思うし。<br>それに悪党を相手にしてると、向こうも叩けば埃が出まくる連中ばっかりだから警察にも駆け込めない。一石二鳥だ。<br>だから、世間は僕たちの存在すら気付かない、騒がない。そこがいい。<br>チーム名は特にない。<br>一度、岸本さんに提案したが「なくていいだろ。むしろない方が何かと都合がいい」と却下された。<br>なるほど。名前があれば、名前が売れてしまうかもしれない。結局は仕事がしにくくなる。<br>そんなことはわかってるのだが、やはり名前がほしい。だって、テンションが変わってくるじゃないか。<br>だから僕は、このチームを『ミイラ取り』と名付けた。ま、こう呼んでるのは僕だけなんだが。<br>岸本さんが使う符丁の『ミイラ』から取った。<br>昔は本当にミイラ取りという職業があった。盗掘師だ。<br>僕らのやってることは、まさに盗掘みたいなものだ。<br>人知れず私腹を肥やした悪党の墓を暴いてるようなものだ。<br>悪くない。僕はこのもうひとつの仕事を気に入っている。本当の意味で命をかけてる、かかっている。生きている実感がハンパない。<br>ミイラ取りが裏の顔だとすると、みんなそれぞれ表の顔も持っている。<br>僕の表の顔は銀行員だ。<br>毎日毎日、金勘定。こんな毎日を送っていると、そんじょそこらの大金を見てもなんとも思わない。マネーＥＤだ。<br>しかし、裏仕事の金はドキドキする。金は魔物だ。<br>仕事柄、何人も金の魔力に憑り付かれた人間を見てきた。使い方、使われ方で色んな表情を見せる。それが金の本性だと思っている。<br>僕のこのチームでの役割、裏の顔は金だ。<br>資金調達から、裏帳簿の作成、ヤバい金のクリーニング、両替に至るまで、金に関することは何でもする。憑り付かれないように慎重に。<br>三井さんは、リサイクル店を経営している。<br>豊中の幹線道路近くにそこそこ大きい店を持っている。<br>家具や、電化製品、日用雑貨、たいていの物は三井さんの店で揃う。<br>中古品はもちろんのこと、新古品や、倒産店舗の処分品、ありとあらゆる訳有り商品が三井さんの店に集まってくる。<br>店頭には趣味の悪い『三井くん人形』が置かれている。表情がやけにリアルでトラウマになりそうになった。<br>一度、近所の子供が三井くん人形に、本気でドロップキックしてるのを目撃して爆笑してしまった。地域の皆さんに愛されてるな～、三井さん。<br>そんな三井さんの裏の顔は、商品調達だ。<br>商売柄、いろんな業界に顔の利く三井さんに調達できないものはない。<br>ブラジャーからミサイルまで何でも揃える、『特攻野郎Ａチーム』もびっくりの仕事っぷりだ。<br>岸本さんは医者だ。<br>市内で内科の開業医をしている。<br>僕も一度診てもらったことがあるが、腕は確かだ。ま、ただの風邪だったが。<br>医者で、切れ者で、絵になる男。それが僕の岸本さんの印象だ。<br>さぞかし、女性にももてることだろう。<br>しかし岸本さんはプライベートな話は一切しない。すぐに上手くはぐらかす。<br>それに引き換え、三井さんは何でもしゃべる。こっちが聞いてないのに、今日のパンツの色まで教えてくれる。世の中で、どーでもいいランキング上位の情報だ。<br>そして岸本さんの裏の顔は、チームのリーダーであり役者だ。<br>仕事の計画は岸本さんが組み、そして実際にペテンにかけるのも岸本さんだ。<br>岸本さんの役者っぷりは見事の一言である。<br>岸本さんにかかれば、その辺に落ちてる葉っぱでも何十万で売ってしまうんじゃないかとさえ思う。<br>何が一番の武器かといえば、巧みな話術もさることながら、何より胡散臭くないのがいい。<br>岸本さんは、ペテン師とは全く真逆の空気感を携えている。「この人が嘘をつくはずなんかない」と相手に思わせる空気感だ。<br>先入観、固定観念、人の思い込みほど、やっかいなものはない。<br>だから、一旦、思い込ませれば人は簡単に騙される。</p><br><p>そして僕たちのチームにはもう一人、福良さんという人が居る。<br>福良さんは僕たちと根本的に違った。<br>表の顔もアウトローなのだ。スリ師だ。<br>一度、福良さんに「なぜ、スリ師になったのか？」と聞いてみたことがあった。<br>本当かどうかはわからないが、落語がきっかけだったそうだ。<br>スリが登場する『一文笛』という桂米朝の落語を聞いて、福良少年はいたく感動したらしい。そして感動しすぎてスリ師になったらしい。普通は落語家になるだろう。とにかく謎が多い変わった人だ。<br>裏の世界にどっぷり浸かっている福良さんは、チームでは主に情報収集を担当している。<br>僕たちの仕事が成功するか否かは、情報の有無だと言っても過言ではない。重要なポジションだ。</p><br><p>僕たちはいいチームだと思う。<br>失敗する気がしない。</p><br><p>もし仕事が失敗したとき――<br>そのときがこのチームの終わりのときだろう。<br></p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10158182305.html</link>
<pubDate>Thu, 30 Oct 2008 18:20:45 +0900</pubDate>
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<title>20</title>
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<![CDATA[ <p>【清田正和】<br>190cm、90kg。右投げ右打ち。大阪府出身。36歳。<br>『球界の番長』と呼ばれる人気プロ野球選手。<br>高校時代は怪物と言われたスラッガー。甲子園出場はなし。<br>意中の球団からのドラフト指名ではなかったが、パ・リーグ球団に入団、プロの道へ進む。<br>1年目でレギュラー三塁手となり新人王に。</p><p>以後10年間で本塁打王4回に輝き、リーグ優勝3回に貢献。<br>FA取得後は、念願のセ・リーグ在京球団に移籍。当時最高額の6年20億円の大型契約を結ぶ。<br>移籍後1年目は本塁打王に輝きリーグ優勝に貢献するも日本一は逃す。<br>2年目オフに左膝じん帯損傷。以後は怪我に悩まされ主だった活躍はできず、6年契約終了年、シーズン終了を待たず戦力外通告を受ける。<br>パ・リーグ在阪球団に拾われる形で、2年2億円で移籍。<br>移籍後はDHで活躍するも、怪我の再発によりリーグ途中で手術、リハビリ。<br>移籍2年目は進退をかけ、1軍復帰を目指しリハビリに励む――。</p><br><p>岸本さんが調べた資料には、こう書いてあった。<br>他にも年度別の成績表なども見せてもらった。<br>「この人は、なかなかすごいの？」<br>「ああ、すごいな」<br>「ふーん」<br>スポーツ音痴の三井さんには、清田のすごさは伝わっていないようだ。</p><br><p>清田の魅力と言えば、ホームランだ。<br>その豪快なフルスイングで観客を魅了し、エースピッチャーとの真っ向勝負で数々の名場面を生んだ。<br>その美しい放物線を描くホームランから、ファンの間では『浪花のホームランアーティスト』と名高い。<br>そして、生粋の大阪人である清田は、キャラクターも一際目立ち、話題に事欠かなかった。<br>数々の豪快なエピソードは、もはや都市伝説のようで、テレビやインタビューでも引っ張りだこであった。<br>怪我で満足な働きができなくても、誰もが気になる存在。それが清田正和だ。</p><br><p>「他にも、こんな資料があるんだ」<br>岸本さんがもうひとつ資料を取り出した。<br>そこには、得点圏打率や、長打率、決勝打点、犠飛成功率、盗塁成功率、併殺率、失策率、など一般的な選手成績には表記されていない事細かな成績が書かれてあった。<br>「便利なもんだよインターネットは。世の中にはこんなことまで調べてるファンがいるんだよ」<br>「暇なんだな」<br>三井さんが身も蓋もない一言でぶった切る。三井さんに掛かれば、ノーベル賞を取った学者の研究もきっと「暇なんだな」で片付けられるだろう。それぐらい自分の興味ないことには無関心な人だ。関心があることと言えばプロレスぐらいか。<br>「清田がすごいのはわかったけど、これと今回の件と関係あるんですか？」僕は素朴な疑問を岸本さんへぶつけた。<br>「あぁ」と、岸本さんは簡単に答えながら資料の何箇所かに丸をつけだした。<br>「このへんの数字が参考になるかな」<br>丸がつけられたのは、三振、四球、得点圏打率、失策率、そしてDHという言葉。<br>「まだもうちょっと調べないとだめだがな」<br>僕にはこの丸の意味がわからなかったが、不安はなかった。</p><p>むしろ今回の『ミイラ』が、なぜ、あの清田正和なのか？そこが知りたかった。<br>「でも、何で清田なんですか？」<br>「実は偶然、2週間ほど前に出会わせたんだよ、清田と」<br>「どこで？」<br>「北新地の飲み屋でな」<br>「くぅー、やっぱ医者は違うねえ、新地なんかに飲みに行っちゃってさ。俺らなんかもっぱら十三だよ、十三。なぁ、大沢」<br>三井さんが僕に同意を求めてきた。確かに北新地には行かないが、三井さんと一緒にされるのは何かいやだ。</p><p>「世界の盗塁王の福本豊だっけ？あれに似てるらしい大将のいる焼き鳥屋だよ。なぁ、大沢」</p><p>ホントどうでもいい。そんな情報。</p><p>「なぁ？なぁ、なぁ？」</p><p>「・・・」</p><p>「なぁ？なぁ、なぁ？なぁ、なぁ、なぁ、なぁ？」<br>「・・・はい」<br>しかも同意するまで許してくれない。<br>「付き合いだよ」岸本さんは軽く受け流す。<br>「でもやっぱ、プロ野球選手と、やしきたかじんは新地に飲みに行くんだな」と、なぜか納得気な三井さん。どんな常識だ。<br>「で、清田とは接触したんですか？」<br>「いや。たまたま隣の席だったから聞き耳立ててたら、いいこと聞けてな。どうやら清田は相当なギャンブル好きみたいなんだよ」<br>「そこで、われらが岸本様がひらめいた！と」<br>「まあな」<br>三井さんがおどけて言うのに対し、岸本さんはクールに返す。<br>ウーロンハイを傾けながら、岸本さんが続けて「9割の確率で取れるだろう」と言った。<br>僕は岸本さんが言う『取れる』という言葉を聞く度に鳥肌が立つ。いつものことだ。<br>『取れる』とは『落とせる』ということ。<br>つまり、これから僕たちが『清田正和を落とす』ということ。<br>すなわち、清田正和から大金をブン取るってことだ。</p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10157734895.html</link>
<pubDate>Wed, 29 Oct 2008 17:23:57 +0900</pubDate>
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<title>19　第２章「ミイラ取り」</title>
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<![CDATA[ <p>ケータイが鳴った。<br>デレク・アンド・ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」だ。メールの着信音にしている。<br>なぜ、この曲を着信音にしているかと言うと、この曲のイントロは何かが始まりそうな感じがしてテンションがあがるからだ。</p><br><p>「ミイラを見つけた。　T9P」</p><br><p>いつものメールだ。用件はこれだけでわかる。問題ないので返信はしない。<br>ミイラは獲物、T9Pは本日午後9時を意味する僕たちの符丁だ。<br>符丁といっても、コナンや金田一くんの手にかかれば2秒でバレてしまうほどのお粗末なものだが、雰囲気は出てると思う。<br>いつも連絡は当日に来る。<br>待ち合わせをするのだから、1週間ぐらい前に連絡してくれればいいのだが、岸本さん曰く「時間が空けば何があるかわからない」と言う理由で、できるだけ当日ゲリラ的に集合するということにしている。<br>岸本さんは皆の生活を把握してるようで、不思議と集合に行けないということはなかった。</p><br><p>おっと、あと10分で昼休みが終わってしまう。<br>僕は急いでサンドウィッチの残りを頬張り、コーヒーを流し込んで走り出した。<br>職場に戻り午後の業務に取り掛かる。<br>銀行と言う職場は、午後3時以降は比較的ゆったりとしたイメージがあるかもしれないが、内情は違う。<br>もし1円でも収支が合わなければ、ゴミ箱全部ひっくり返して調べ上げる、そんな現場だ。<br>ま、そんな修羅場は年に数回しかない。<br>本日もいつものよう平穏な時間が過ぎていき、残業を1時間ほどこなして退社した。<br>待ち合わせの時間まではだいぶとあったので、マンガ喫茶で時間を潰す。<br>僕たちの待ち合わせ場所は、チェーン店の居酒屋だ。<br>この店はいつ行っても騒がしく、酔っ払いだらけだ。当たり前か。世の中みんな何かを抱えて生きている。そう実感する場所だ。そしていい歳した野郎どもが集まるには不自然ではない場所でもあった。<br>午後９時前に着くと、そこにはもう一人の男がいた。岸本さんだ。<br>いつものように岸本さんは、しゃれたスーツ姿だった。<br>スーツにはこだわりがあるらしく、タイトにフィットするサイズを着こなしている。ボタンを留めると前身頃にＸ字にシワが入る。これをイタリアでは『ジャッカ・ストラッパート』と呼ぶらしい。いつだったか、岸本さんに語られた薀蓄だ。<br>「よう」<br>岸本さんは、すでにウーロンハイで始めていた。<br>「大沢に土産があるんだ。これ」と言って、生のうどんをもらった。<br>「そういえば、四国に行くって言ってましたよね。どうでした？」<br>「よかったよ。温泉にも浸かったし、うまいうどんも食えたし」<br>「観光で行ったんじゃないんでしょ？」<br>「まあな。成果はあったよ」と、口角をきゅっと上げて笑いながら、岸本さんはウーロンハイのグラスを傾けた。絵になる人だ。<br>そこへ「悪い悪い、お待たせ」と三井さんもやってきた。9時きっかりなのに、腰が低い。<br>三井さんもいつものように、チェックのシャツにジーパンといった予備校生みたいなスタイルだ。<br>岸本さんは皆の分のお土産を用意しており、三井さんにもうどんを渡した。<br>「俺、うどん大好物！あれ、岸本にそんな話したっけ？」<br>「知らなかったが、そうだと思ってうどんにした」<br>「やっぱ、岸本はやるなー！」<br>あいかわらず、岸本さんは三井さんに対してはテキトーだ。<br>「よし、全員そろったな」<br>「あれ、福ちゃんは？」と三井さん。<br>「あいつは、この山には噛まない。どうやら単独で別の仕事をしてるみたいなんだ」<br>「別の仕事って何？」とまた三井さん。基本、三井さんは福良さんのことが好きなのだ。<br>「聞いても教えてくれなかったよ。あいつは本業も裏だから突っ込みすぎるのも野暮だと思って、それ以上は聞かなかったよ」<br>「ふーん」ちょっと、三井さんが寂しそうだ。<br>三井さんは身長180cmを越えるノッポ。反対に福良さんは160cmもないチビ。ふたりが一緒に行動すると目立つので止めてほしいのだが、どうやら馬が合うらしく二人はよく行動を共にしていた。<br>「で、今回のミイラは？」<br>「こいつだ」<br>岸本さんが鞄からスポーツ新聞を取り出した。<br>「・・・だれ？」<br>スポーツに疎い、三井さんが尋ねる。<br>「清田だよ」</p><br><p>それは、人気プロ野球選手・清田正和だった。<br></p>
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<link>https://ameblo.jp/comedy-novel/entry-10154791197.html</link>
<pubDate>Wed, 22 Oct 2008 18:04:35 +0900</pubDate>
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