<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>処女航海　暗夜航路</title>
<link>https://ameblo.jp/compartment/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/compartment/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>僕がここに在る理由を探して。道を失い、沖縄の離島に移住した元心理カウンセラーの日々のこと。</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>蒼い記憶　～誰にも言えなかったこと～</title>
<description>
<![CDATA[ 僕がまだ幼いころ、僕の家にだけ母親がいないことが、何故だが解らなかった。<br>父は仕事でいそがしく、事実上、姉が僕の保護者であった。小学校の入学式も当時中学生だった姉が付き添いだった。<br><br>小さい頃は、中学生も大人も見分けがつかなかったので、そのことに特に違和感はなかった。<br>僕自身が中学生になった時、当時の姉が大人に混じって、どんなに大変な思いをしていたかを知った。<br><br>僕は姉のおかげで、母親のいないハンデを感じることはなかったが、姉はどれだけの重圧の中で生きたのだろう。姉のことを想う時、忘れられない出来事がある。<br><br><br>ミエコねえさんは、姉の同級生で親友だ。<br>中学、高校と同じ学校に通い、同じバスケ部で競い合った仲だ。<br>ミエコねえさんは細身だが背が高く、身長は170ｃｍ以上あった。<br>姉も身長は高い方だったが、ミエコねえさんと並ぶには、背伸びが必要だった。<br><br>僕はミエコねえさんのことをずっと嫌っていたが、ある日を境にねえさんのことが好きになった。<br>それはミエコねえさんが「お母さんごっこ」をしてくれるからだ。<br><br>どうしてミエコねえさんが僕と「お母さんごっこ」をしてくれるのか。<br>その理由は僕には解らなかったし、知りたいとも考えたことはなかった。<br><br>姉はよく友達を家に連れてきて、週末には彼女たちが泊っていくこともしばしばあった。<br>特にミエコねえさんは常連だ。「お母さんごっこ」をしたあの日以来、ねえさんは僕に勉強を教えてくれるようになった。<br><br>ミエコねえさんは頭がよくて、なんでも解りやすく教えてくれる。<br>僕が問題を理解できると「ゆうくん、賢いね。」などと言って大げさに褒めてくれる。<br>ねえさんに褒められると、とても嬉しかった。<br><br>ある時から、ミエコねえさんは泊りの時、姉の目を盗んでこっそりと僕の部屋に来るようになった。<br>姉がお風呂の時などに、ねえさんはパジャマ姿で僕の部屋に入ってくる。<br>たいていは、僕はもうベッドに入って寝ているのだが、ミエコねえさんは突然僕の隣に入ってきて、<br>大きな腕で「ぎゅっ」としてくれる。<br><br>ミエコねえさんは優しくて、「ぎゅっ」としてもらうと、とても心地よかった。<br><br>それがいけないこととは、子供ごころにもなんとなく分ってはいた。<br>姉に見つかったら、びどく叱られるに違いない。<br><br>しかし、ミエコねえさんは賢い。<br>ねえさんが姉に見つかるようなヘマをしでかすとは考え難かったが、姉は勘がよいので油断できない。<br><br>はじめのうちは「お母さんごっこ」は姉の目を盗んだ短時間のものだった。<br>ところが、回を重ねるごとに、ミエコねえさんは大胆になってきた。<br>皆が寝静まった深夜に、ねえさんは僕の部屋を訪れるようになった。<br><br>その夜のミエコねえさんは、いつもと少し違っていた。<br>「お母さんごっこ」の最中、ねえさんがやたらと「ぎゅうぎゅう」をやってくる。<br>僕が寝付けないでいると、ミエコねえさんは耳元でささやいてきた。<br><br>「ゆうくん、キスしたことある？」<br><br>「ううん。」<br><br>「じゃあ、私が教えてあげる。」<br><br>「だめだよ。お姉ちゃんに怒られる。」<br><br>「ゆうくん、私のこと嫌い？お母さんごっこやめにする？」<br><br>「・・・だって・・」<br><br>「とっても気持ちいいんだよ。ほらこうして口をとがらせて。」<br><br>言われるままに僕が口をとがらせると、ミエコねえさんの唇は僕の口に押しつけられた。<br>僕はねえさんとのキスは嫌だったが、ねえさんのことが好きだったので我慢した。<br>ただ、姉に知られることが怖かった。<br><br>次の日の朝、僕は姉の顔をまともに見ることが出来なかった。<br><br>「ゆうくん、おはよう！」<br>ミエコねえさんは昨夜のことなど、まったく憶えてもいないような態度だ。<br><br><br>外が肌寒く感じ始めた季節のこと、その日はミエコねえさんだけが泊りに来た。<br>姉と一緒に勉強でもしているのだろうか、いつもの騒がしさはない。<br><br>深夜また、ねえさんは僕の部屋に来るのだろうか。<br>僕はだんだん「お母さんごっこ」が怖くなってきていた。<br><br>ミエコねえさんのことを嫌いになった訳ではない。<br>ただ姉に対する罪悪感がつのっていたのだろう。<br><br>やはり、夜になるとミエコねえさんはやってきた。<br>虫の知らせか、その夜、僕はなんとなく嫌な予感がしていた。<br>でもねえさんの身体に包まれると、いつものように腕の中で寝てしまった。<br><br>次の早朝、暗いうち、僕は姉の怒声で飛び起きた。<br><br>「ミエコっ！何してるのっ！！」<br><br>姉は見たことのないほど怖い顔で、ミエコねえさんを睨みつけている。<br>ベッドの上で、僕は思わず首をすくめた。<br><br>どうやらミエコねえさん、昨夜は疲れていたのだろう。<br>不覚にも僕を抱いたまま寝てしまったようだ。<br>悪いことに、姉に見つかった時、ねえさんは僕を抱き枕のように抱いたままだった。<br><br>さすがのねえさんも、ややばつが悪そうにしている。<br><br>「黙ってないで、答えなさいよ！」<br>姉の怒りがさらに増してきた。<br><br>しかし、さすがにミエコねえさんだ。あわてることなく身体を起こしながら、<br><br>「あれ、私・・夕べ寝ぼけてゆうくんの部屋に・・・・・」<br>ねえさんは図太くとぼけてみせたが、怒り心頭の姉に通用するはずもない。<br><br>「嘘つかないで。あなたの態度、最近おかしいと思っていたけど。」<br>やはり姉は恐ろしく勘が鋭い。<br><br>「ミエコねえさん、悪くないよ・・・」僕が口をはさむと、<br><br>「あんたは黙ってなさい！」姉の怒声で僕は再び首をすくめる。<br><br>「判った、じゃあ本当のこと言うわ。」<br>ついにねえさんも、誤魔化すことは諦めて開き直る。<br><br>ミエコねえさんは落ち着いたものだ。おもむろにベッドに座りなおし姿勢を正すと、<br>「ナオも座って。」、と姉に着席を促した。<br><br>姉はしばらく目を怒らせて立っていたが、怒気を納めて冷静になろうとしたのか、椅子に腰かけた。<br><br>「私ね、ゆうくんのお母さんになってあげたかったの。」<br>ミエコねえさんは切り出した。<br><br>「・・・」姉はミエコねえさんを睨んだまま、何も言わない。<br>ねえさんの言葉に、姉の怒りがさらに増幅しているようにも見える。<br><br>「ナオ、私に言ったじゃない。ゆうくんも本当はお母さんが欲しいのに、言えないんじゃないかって。」<br><br>「・・・」姉はなおも、唇を噛んだまま、おし黙っている。<br><br>「ゆうくんには、ナオと同じ思いをさせたくないとも言ったよね。」<br><br>ついに堪りかねたのか、姉が言葉の堰を切った。<br>「・・・だからって・・・、ミエコ、あんたアタマおかしいんじゃないの？」<br><br>姉は席を立った。<br><br>「ゆうはここに居なさい。」僕に命じると、<br>ミエコねえさんの手を引っ張って、引きずるように自分の部屋に連れて行った。<br><br>姉の部屋では、しばらく、二人の口論と沈黙が繰り返されている様子が伺えた。<br><br>僕はただどうなるのか怖かった。キスのことがばれたらどうしよう･･･布団をかぶって震えていた。<br><br>小一時間ほどで、姉とミエコねえさんとの確執は、とりあえずの終息を迎えたようだった。<br>二人とも、どこかムスっとしながらも普通の会話を交わし、僕も交えて３人で朝ご飯を食べた。<br>僕はいたたまれない気持ちで、小さくなっていた。<br><br>朝食後、しばらくするとミエコねえさんは帰って行った。<br><br>その日、姉はずっと悲しげな顔をしていた。<br>僕は、姉を悲しませたんだと思うと、辛くて辛くて、胸が苦しかった。<br><br><br>夜になった。<br>僕がベッドに入ってしばらくすると、姉が部屋に入ってきた。<br><br>「ゆう、今日は一緒に寝よっか。」<br><br>姉がベッドに入ってくる。嬉しくなって僕は姉に抱きついた。<br>柔らかなぬくもりと、心地よい匂いに包まれて、僕は幼い頃に戻ったようだった。<br><br>「ゆう･･･」姉は僕に何か聞こうとしたようだが、言葉をとぎらせた。<br>姉が何を聞こうとしたのか、僕にはよく分っていた。<br><br>「僕、お母さんなんていらない。だってお姉ちゃんがいるから。」<br><br>姉はもう何も聞かなかった。ただ強く僕を抱きしめてくれた。<br><br>その晩、姉はとても優しかった。<br>僕は二度と、姉を悲しませるようなことはするまいと心に誓った。<br><br>だからミエコねえさんにキスされたことは、姉には絶対に言えない。<br><br><br>それからも、ミエコねえさんは、しばしば家に泊りに来た。<br>姉との信頼関係が修復されたのかは僕には知る由もなかったが、表面上は以前と変わらない。<br>あの一件以来、かえって姉との仲は親しみを増したようにも見えた。<br><br>ミエコねえさんが僕の部屋に来ることは、二度となかった。<br><br><br><br><br>追伸　ミエコねえさん。最後にお会いしたのは姉の七回忌でしたから、もう10年以上も前になるのですね。<br><br>「ナオのゆうくんへの無償の愛情は、ナオの自己愛の裏返しに過ぎない。<br>ナオはもういない、亡霊なんかに縛られたらダメ。<br>だから、君はもう君自身を解放してあげたらいいの。<br>これは私の言葉じゃない。<br>私の中のナオが、君に伝えて欲しくて私に言わせた言葉なの。」<br><br>あの時、誤解を怖れずに言ってくれたミエコねえさんの言葉、僕はどれだけ救われたことか。<br>今、僕は沖縄の離島で元気にやっています。<br><br>当時よちよち歩きだった息子さんも、今では中学生でしょうか。<br>ミエコねえさん、いつまでもお幸せに。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10685487112.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Oct 2010 20:07:18 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>初めての経験</title>
<description>
<![CDATA[ 秋の訪れを感じる日、彼女は真新しいノースリーブのワンピースを着て、とても美しかった。<br><br>夏休みも終わり新学期を迎えた９月のこと。<br>その日、アキの両親は彼女の弟のサッカーの試合観戦で出かけていて留守だった。<br><br>お昼過ぎに小石川の植物園で待ち合わせ、彼女の家に向かう。<br>彼女の家に上がるのは、この時が初めてだ。<br><br>夏の初め、はじめてアキとキスを交わした日から、僕たちは会うたびにキスをした。<br>下校途中のとある雑居ビル、誰もいない屋上が僕たちの密会場所となった。<br>二人の交わすキスは、むさぼり合うように、次第に激しいものとなっていく。<br><br>彼女は中学から女子高だったので、僕と付き合うようになるまで男友達さえいなかった。<br>そんな箱入り娘で純真だった彼女を僕は大切にしたいと思っていたが、欲望はとどまることを知らない。<br><br>僕はもうキスだけでは我慢できなくなっていた。二人の関係は加速度的にどんどん進んでいった。<br>キスをしたまま、制服のブラウスの上から彼女の胸に触れる。<br>「あっ」アキは一瞬とまどい、身体を固くする。<br><br>恋は盲目。いつしか僕らは、お互いを激しく求めあうようになっていた。<br><br>彼女の家は、真新しいマンションの３階の角部屋で、居間からの眺めが気持ちよかった。<br>家の中は整然と片付いていて、家庭の厳格さが伝わってくる。<br>壁にはコピーのシャガールが掛かっている。父親の趣味らしい。<br><br>アキの部屋は東側に窓がある洋室で、６畳あまりのスペースは女の子らしく暖色系にまとめられていた。<br>部屋に漂う、彼女のいい匂いが心地よい。<br><br>僕たちはしばらくソファーに腰をおろして、彼女の中学の卒業アルバムを見ていた。<br>たった半年前の写真なのだが、アルバムの中のアキは今よりずっと幼く見える。<br><br>「アキは誰よりかわいいよ。」<br>「嘘、またうまいこと言って・・・」<br>「嘘じゃないよ・・・アキ、好きだよ、こっちこいよ。」<br><br>僕はアキを引きよせると、肩に手をまわした。<br><br>いつも以上に長いキスをした。<br>キスの後、お互いの視線を絡ませる。<br><br>僕はアキを抱き上げ、ベッドに下ろした。<br>再び向かい合って見つめ合う。<br><br>彼女は少し不安そうな表情をしたが、決心がついたのか、やがて静かに目を閉じた。<br>僕は彼女のことを、この上なく愛しく感じた。<br><br><br>それは僕にとっても、アキにとっても初めての経験だった。<br>初めてだったが、事前に調べた情報ほど大変なことではなく、全てはすんなりと運んだ。<br>その日、僕とアキは一つになった。<br><br>何もかも終わった後、彼女の瞳にはうっすらと光るものがあった。<br><br>僕は涙の訳を知りたかったが、聞かなかった。<br><br><br><br>その後、僕とアキは半年ほど付きあった。<br><br>３年になり部活が終わり、登校時間が変わると、僕たちの距離も少しずつ離れだした。<br>僕が受験勉強に本格的に打ち込みはじめた夏のはじめ頃、２人の関係は自然と終止符を打った。<br><br>彼女のことを嫌いになった訳ではない。<br>ただ高校時代の恋愛が突然終わってしまうように、僕たちもそれぞれの道を歩き始めた。<br><br>あの高２の秋の日から、どれくらい長い時が流れただろうか。<br>アキと過ごした一瞬の時間、あの輝きは今も褪せない。そっと僕の心の中にある。<br><br>彼女は僕の思い出の１ページとなった。<br><br><br><br>---------------------------------------------------------------------------------<br>今宵、宮古島の雨は上がり、西の空に星が輝きだした。<br>何万光年、遥か彼方から発せられた恒星の光は、永い時を経て今この地に流れ着く。<br>太古の記憶をよび醒ますかのように。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10682502886.html</link>
<pubDate>Wed, 20 Oct 2010 17:47:26 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>蒼い記憶</title>
<description>
<![CDATA[ 僕の家は大人のいない気楽さからか、よく友達が集まった。<br>学生時代の姉は何かにつけバスケ部の友達やら生徒会の友達やらを家に連れてきて、なんだか分からない集いをしばしば開いていた。<br>僕が早熟だったのは、そんなお姉さま達からの「英才教育」を受けたことと無関係ではない。<br><br>市ヶ谷の実家の僕の部屋は２階にあった。南側に大きな窓があって、いつも網戸になっている。<br>姉が友達を連れてくる日は、遠くからキャイキャイという女の子の騒がしい声が２階まで聞こえてきた。<br><br>姉の集いは、密やかな僕の楽しみでもあった。<br>なぜなら彼女たちはいつもケーキなどのデザートを持ってくる。僕もおこぼれにあずかれるのだ。<br>それに、ねえさんたちが集まると、とてもいい匂いがして、コドモながらに心地よかった。<br><br>しかし、ミエコねえさんだけは苦手だった。<br>彼女は姉の親友だったのだが、バスケをやっていて長身で威圧感があり、よく僕のことをからかってくる。<br>バスケの練習と称して、いつもイジワルばかりをされていた。<br><br>その日も、姉たちは数名でなんだか分からない集いを開いていて騒がしかった。<br>ミエコねえさんも来ているのが分ったので、僕は１階に下りずに自分の部屋にいた。<br><br>しばらくして静かになったので、皆帰ったのだろうと思い１階に下りた。<br><br>するとミエコねえさん一人が残っていた。<br>あわてて部屋に戻ろうとしたが、見つかり呼び止められた。<br><br>「ゆうくん、バスケ教えてあげるから、こっちおいでよ！」<br><br>またイジワルするつもりだ・・嫌だったが、子どもから見る高校生は大人と変わらない。<br>もちろん逆らえない。<br><br>「お姉ちゃん達は？」<br><br>「ナオ達はお菓子買いに行ってる。すぐに帰ってくるよ。」<br><br>しぶしぶ中庭に出て、ミエコねえさんとバスケをする。<br>いつものように、まったくボールに触らせてもらえない。コドモ相手に本当にイジワルだ。<br><br>しばらくしてミエコ姉さん、<br>「ゆうくん、ミルクセーキ作ってあげようか？」<br><br>ミエコねえさんはイジワルだが、ねえさんの作るミルクセーキは美味しい。<br><br>「本当？」<br><br>本当に作ってくれるまでは喜べない。なぜなら、ねえさんはイジワルだからだ。<br><br>ミエコねえさんは台所でミルクセーキを作り始めた。<br><br>どういうレシピで作っているのか知らないが、やはりミエコねえさんのミルクセーキは美味しい。<br>僕は姉たちが早く帰ってくるのを期待しながら、ミルクセーキを飲んでいた。<br><br>横からなんだか視線を感じる。ミエコねえさんの視線だ。<br><br>「ゆうくん、私のこと嫌いでしょ。」<br><br>唐突に、ねえさんが聞いてくる。<br><br>（嫌い）でもまさか、本当のことは言えない。<br>しかし小学生の僕にお追従を言えるほどの智恵はない。<br><br>「・・・」<br>僕が困った顔をしていると、ねえさんは意外なことを言ってきた。<br><br>「私、ゆうくんのような弟が欲しかったの。私、一人っ子だから・・・ナオがうらやましいよ。」<br><br>どうしたんだろう。いつもの意地悪なミエコねえさんではない。<br><br>「ゆうくん、お母さん欲しくない？私がお母さんになってあげようか？」<br><br>ミエコねえさん、何を言ってるのだろうか。<br>僕がぽかんとしていると、いきなりミエコねえさんが横から抱きついてきた。<br><br>僕がドキマギしていると、ねえさんの腕の力が強くなった。<br>少し苦しかったが、ねえさんの優しさが沁みたのか、怖くはなかった。<br><br>僕は動けなかった。<br>姉にも抱きしめられたことのない僕は、ミエコねえさんに抱かれて安らいだのかもしれない。<br><br>「お姉ちゃんたち、帰ってきちゃうよ。」<br><br>僕のつぶやきにミエコねえさんも醒めたのだろうか。僕の身体から腕をほどいた。<br><br>「さっきのことは、絶対誰にも言ったらだめ。分った？」<br>怖い顔をしてミエコねえさんが言う。<br><br>僕はこくりと肯いた。<br>ねえさんは優しく微笑んだ。<br><br><br>しばらくして、姉たちが騒がしく帰ってきた。ミエコねえさんは何事もなかったように振舞っている。<br><br>その日から僕はミエコねえさんのことを好きになった。<br>もちろん、女性としてではない。母のことを想ったのだろうか。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10680576494.html</link>
<pubDate>Mon, 18 Oct 2010 16:48:24 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>冷たいキス</title>
<description>
<![CDATA[ 多くの人にとって高校時代の夏休みは忘れられない思い出があると思う。<br>僕もまた、高校２年の夏休みことを忘れることが出来ない。<br>今でもあの頃を振り返るたび、あの甘酸っぱいような（安い表現ですが）記憶がよみがえる。<br><br>銀行員の父、元教師の母、彼女の家は厳格な家だった。<br>もちろん男女交際など許されるはずもない。<br><br>部活帰り、僕たちは秘密のデートを重ねた。<br>学校の近くに図書館があり、いつも人目をさけて待ち合わせをした。<br>夏服の白いブラウスが長身の彼女にとても似合う。<br><br>夏休みに入ってすぐ、平日の上野公園は夕暮れ時、人もまばら。<br>夕方というのにまだ暑さが残っていて湿気を感じる。<br><br>既に僕には心に期すものがある。<br><br>彼女も何か感じるものがあったと思う。<br><br>僕たちは人気のないベンチを探して、二人腰を下ろす。<br>そっと彼女の肩に腕をまわす。<br><br>しばらくの沈黙。<br>彼女の緊張が伝わってくる。<br><br>夕闇がせまる時、手を握って、彼女を立たせる。<br>恥じらいうつむく彼女を、きつく抱きしめた。<br>身体を固くした彼女の、張りつめた鼓動をしっかり受け止める。<br><br>彼女の髪のいい匂いがした。<br><br>しばらく抱きしめた後、彼女の肩に手をおき彼女の瞳をのぞき込む。<br>頬を染めた彼女の照れくさそうな表情が可愛く、愛しい。<br><br>彼女の首すじに手をあて、じっと彼女の目を見る。<br>彼女の表情から笑顔が消えると同時に、彼女が目を閉じる。<br><br>少し唇が震えている。<br><br>僕はそっと彼女の唇に口づけた。<br><br>儀式にすぎない。僕は醒めていた。<br>口づけしながら、僕はまるで観察でもするように彼女を見た。<br><br>目を閉じたままの彼女は、可愛い、愛おしい。<br>なのに僕の心の中は、なんとも冷たい白々しいものがわきあがる。<br><br>期せずして姉の顔が脳裏をよぎる。<br>こんな時にと、自分にいらつく。<br><br>キスのあと、焦燥感にかられるようにして彼女を強く抱きしめる。<br>「好きだよ。アキ・・」<br><br>彼女の熱い吐息を感じる。<br><br>宴は終わった。<br><br><br><br>長い時間に洗われたのだろう、思い出は浄化され美しい。<br>今宵、宮古島には上弦の半月。彼女も何処かでこの月を見るのだろうか。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10679734146.html</link>
<pubDate>Sun, 17 Oct 2010 19:10:15 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>姉のいた風景</title>
<description>
<![CDATA[ 彼女と付き合いだしてからはじめての期末テスト。<br>集中力が増したのか、これまでの僕の生涯を通じて会心の出来だった。<br><br>僕らの時代には受験地獄という言葉がよく使われたが、テスト勉強や成績のことなど今は憶えてもいない。<br>けれども、この時のテストが上出来だったことは、なぜだか記憶にあざやかだ。<br><br>自分で言うのも面はゆいが、高校に入るまで僕はそこそこ勉強は得意だと思っていた。<br>高校に入って状況は一変、僕には平平凡凡とした頭脳しかないことがよく判った。<br><br>子供のころから通信簿は姉の元へもっていく。僕は成績のことで、姉に叱られた経験は一度もない。<br>姉は結果が良ければ褒めてくれた。悪くても次に頑張れと励ましてくれて、決して怒ることはしなかった。<br><br>けれども僕はうすうす勘ずいていた。僕の成績が悪ければ、やはり親のいない子は駄目だという烙印を押されてしまうこと。<br>そのことをを誰よりも恐れていたのは姉であったこと、僕は子供ながらに敏感に感じ取っていた。<br>僕は姉を落胆させることを何より恐れた。だから僕は十人並みには勉強する子供だったと思う。<br><br>幼少時代より、姉は周りから神童と言われていた。<br>生まれついて賢かったのだろうが、姉が人知れず努力家であったことは、たぶん僕以外誰も（父も）知らない。<br>姉はいつも涼しい顔をしていて、外ではそんな努力のそぶりなど、おくびにも出さない。<br><br>中学時代は生徒会長。バスケ部ではキャプテンで４番をつけていた。<br>明るく外交的で自信家、友達も多く、男女を問わず人気者。そんな姉の周りにはいつも人が集まった。<br>ただ、正義感が強くやや独善的、言い出したら聞かない意固地さ、逆らいがたい凛とした雰囲気。<br>僕にとって姉は誇りでもあり、恐怖でもあった。<br><br><br>夏休み前の、三者面談の日のこと。<br>担任のＳ氏は独身の面白い先生で、僕は彼を嫌いではなかった。<br>面談前、教頭から卒業生である姉のことを聞いていたようで、冗談を言って絡んでくる。<br><br>Ｓ「ゆうじ、教頭先生から聞いたけどな～、お前の姉さん、別嬪さんなんだってなぁ～、俺のヨメになってくれない？」<br><br>僕「・・・俺、先生の弟だけは嫌です。」<br><br>Ｓ「・・・。」<br><br>姉はいつものように白っぽい服を着てやってきた。<br>僕はテストの手ごたえがよほどよかったので、内心かなりウキウキしていたと思う。<br><br>挨拶をして姉が席に着く、ピンと伸びた背筋、まっすぐに向けられる視線、姉のいる場には独特の緊張感が漂う。<br><br>期末テストの結果が示された。<br>７位、高校入学以来、初めての一桁だ。（これが最初で最後の快挙でしたが）<br>姉の横で僕はかなり自慢げだったと思うが、姉はテストの結果のことは特に触れず、僕の生活態度のことを質問しはじめた。<br><br>姉「弟の生活は先生の目から見て、どうご覧になりますか？この子、私には都合の悪いとこは見せないので。」<br><br>途端に不安になった。まさかＳが僕と彼女のことを知っている訳はないと思ったが、そこは情報通のＳのことである。（後で知ったが、Ｓは僕が彼女と一緒に登校していた情報は掴んでいたようだ。）<br>･･･チクられると後がやっかいだ。<br><br>ウチの高校は「立志・開拓・創作」を校是に掲げる自由な校風が伝統である。<br>そもそも恋愛など自由ではないか。開き直りつつ、内心はヒヤヒヤする。<br><br>Ｓ「ゆうじ君は友人にも恵まれ、学校行事や部活動にも熱心、高校生活を充分に楽しんでいるようです。」<br><br>僕（おっ、Ｓさん空気読めるじゃん）<br><br>姉「そうですか。安心しました。」<br><br>そう言いつつも、姉は唇を結んだ。<br>左頬に片えくぼができる。目が笑っていない。<br>姉が納得していない時のいつもの表情だ。<br><br>一呼吸おいて、姉はさらに難しい顔をし、僕の進路について切り出す。<br><br>姉「私がいたらないので、進路についても家ではなかなか話す機会がありません。この子に明確な進路希望があるなら聞いてあげたいのですが、今はまだないのなら時間を与えて選択肢を残してあげたいです。先生、客観的にこの子の適性をどう思われますか？私には身びいきもあり、冷静に判断できないので・・・」<br><br>僕（えっ、そんな話もするの？？）<br><br>テストの結果のことだけで面談は終わりと思っていた僕は戸惑った。<br><br>Ｓはしばらく考え、<br>「あくまで一般論ですが。」と前置きし、<br><br>Ｓ「ゆうじ君は理数系が得意なようなので得意分野をさらに伸ばしてですね、今回のテストでは文系科目も随分と習熟度が上がってきたようなので・・・中略・・・ご家庭の事情を考えれば東京近郊の国立理系を目指すのが適当かと思います。」<br><br>姉「先生すみません。私がいう適性というのは現在の学力の話ではなくて・・・中略・・・要するに、この子の能力、気質や性格を考えたとき、どのような学問領域が適性なのかを伺いたかったのです。」<br><br>どうも姉とＳの会話はかみ合わない。<br><br>進路を考える根拠について、その後も姉の質問は続いていく。<br>いくつか切り口を変えらがら、どれも単純な問いではない。<br>姉自身も熟考し、自問自答しながら準備してきた問いなのであろう。<br><br>Ｓはう～んと唸っては考え、時に腕組みをし、そして足を組み換えながら、持論を述べる。<br>しかし、いづれも姉の期待する答えに届いていないようだ。<br>面談時間はとっくに予定の１５分を過ぎていた。<br><br>なんともどんよりとした重い空気が漂う。疲れた空気だ。<br><br>場の雰囲気は完全に姉に支配されている。<br>気の毒に、Ｓは姉の気色に押されて青色吐息に見える。<br><br>僕はちらりと時計に目をやるが、時間のことはとても言い出せない。<br><br>目ざとく姉が気付き、下を向いて腕時計を見る。<br>どうやら時間が過ぎたことを確認したようだが、満足な回答が得られていないのであろう、再び姉は唇を結んだ。<br>左頬に片えくぼができる。目は笑っていない。<br><br>姉「先生、お時間ですよね。長々とすみません、ありがとうございました。」<br><br>姉が謝意を述べて席を立った。教室は長い緊張感から解放された。<br>僕にはＳの目が熱を帯びて、少しうるんでいるように見えた。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10678774138.html</link>
<pubDate>Sat, 16 Oct 2010 20:02:28 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>はじめての告白</title>
<description>
<![CDATA[ 僕らの高校時代は携帯なんてなかったから、恋愛するのにはとても不自由な時代でした。<br>でも、いろんな障害があったからこそ、恋はかがやきを増し、想いは深まったのかもしれない。<br>メールやミクシイ、便利な時代になった現在、僕はそう思います。<br><br>彼女に告白したのは、出会って1ヵ月ほどたった夏の初め、期末試験をすぐにひかえたころのことだった。<br>あの日から僕らは、約束するともなく同じ時間に待ち合わせ、登校途中のわずか5分ほどの時間を共有した。<br><br>彼女は僕の1つ年下、中高一貫の女子高の1年生、すらりと伸びた長身と色白のほわっとした雰囲気がとてもチャーミングな娘だ。<br>銀行員の父、元中学教師の母、２つ下の弟というごく一般的な家庭に育ち、おおよそ人を疑うことを知らない素直な性格だった。所属する高校のマーチングバンドではクラリネットを吹く音楽少女でもある。<br><br>知り合ってから日毎に、僕は彼女に魅かれていった。<br>しかし、彼女のことを好きになるごとに、不安もつきまとう。<br><br>僕には両親がいない。<br><br>そのことを彼女は気にしていないようだったが、本当にそんな僕を、普通の家庭で育った彼女が受け入れてくれるのだろうか。<br><br>僕には、それ以上に気がかりなことがある。<br>姉のことである。<br><br>父が亡くなってから、（実際にはその前からずっとであるが）僕は姉の自己犠牲の上に、あぐらをかいて生きてきた。<br>両親のいないことに対する、世間への負い目は、不思議と僕の中にはない。<br>それはひとえに、全ての負い目を、姉が背負ってきたからに他ならない。<br><br>そのことは痛いほどよく解っている。<br><br>小中、高校と（結果的には大学まで）僕は姉と同じ学校に通った。<br>学生時代の姉はよほど優秀だったのだろう、どこに行っても姉のことを知っている人がいて、僕を助けてくれた。<br>周りの大人はいつも僕のことを「彼女の弟」として見、そしてその大半の人は、僕に好意的だった。<br>僕はいつも「見えない姉」に護られていたのだ。<br><br>僕にガールフレンドが出来ても、姉はきっと祝福してくれるだろう。<br>今までもそうだった。これまで僕は気軽にガールフレンドを姉に紹介できたのだ。<br>どんな女の娘であっても、姉の不興を買ったことは、ただの一度もない。<br><br>けれど、今度は違う気がしている。<br>本気なのだ。<br>本気で彼女の事が好きなのだ。<br><br>姉はいつも忙しい。仕事に、家事に、自分の時間など、全くといっていいほどない。<br>一方、僕の時間は全て僕のものだ。勉強もサッカーもそして彼女のことを考える時間も全て自由だ。<br>姉の犠牲の上に、僕だけが幸福を享受してる。<br><br>悩んだ。それまでの人生悩まなかった分、悩んだ。<br>僕が手前勝手に苦しんでも、姉への負い目は消えない。そんなこと充分承知だが苦しまずにいられなかった。<br><br>その間も、僕の気持ちはどんどんと彼女に魅かれていく。<br><br><br>日曜の上野公園、梅雨前の曇り空、噴水の前だった。<br>他愛のないおしゃべりの後、少しの沈黙、そして彼女を真っ直ぐに見つめた。<br>彼女の表情が少しこわばる。<br><br>「俺、アキのことが好きだ。俺と付きあってほしい。」<br><br>「はい。」<br><br>僕の右手は彼女の左手を握った。彼女に直接触れたのは、意外にもこれがはじめてだった。<br>彼女の手に触れて不意に醒めた。姉の顔が脳裏をよぎる。<br><br>つないだ手を彼女は離そうとはしなかったが、僕は握り返すことができないままにいた。<br>横にいる彼女を見つめる。熱っぽい視線が返ってきた。<br>何も知らない彼女は、とても幸せそうに見える。<br><br>僕の心の中は、えもいわれぬ罪悪感でみたされていた。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10677669565.html</link>
<pubDate>Fri, 15 Oct 2010 18:20:52 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>続、はつ恋</title>
<description>
<![CDATA[ 次の日の朝はやけに早く目覚めた。<br>僕は朝は苦手なのだが、まだ薄暗いうちから目が覚めてしまって、じっとしていられない。<br><br>いつもは姉が起きて朝の準備を始めるのもまったく気がつかないでいる。<br>しかしその朝は、隣の姉の部屋で目覚まし時計が鳴り、しばらくして姉が一階に下りていく気配が感じられ、それにつられるように僕も起き上った。まだ5時半だった。<br><br>いつもは着ないjunのシャツなど着て、いそいそと支度する。早起きしたのにあっという間に7時になる。<br><br>ドキドキしていた。彼女に会ったらどうするかは、昨日から何度もシミュレーションしている。<br>僕はありったけの妄想を乗せて、自転車を走らせた。<br><br>昨日、彼女がうずくまっていた場所は・・当然のことながら誰もいない。<br>ひたすら彼女を探して前方を凝視する。<br>そして、あっという間に学校に着いた。<br>落胆と安堵が入り混じった複雑な感情。むやみにのぼせ上がった自分が腹立たしい。<br><br>次の日、また次の日、そのまた次の日。<br>駆け足で一週間が終わった。何もない。何もないのに、ただ徒労感だけが残る。<br>週末がやけに長い。<br><br>日曜日、横浜の叔母が訪ねてきて、思いがけなく小遣いを貰う。<br>なんだかついている、来週こそよい予感。<br><br><br>そして月曜の朝、気を取り直して家を出る。<br>いつも彼女を追い越す場所。<br><br>見つけた。前方に彼女の姿を確認する。<br>近づくにつれ、バクバクと心臓が高鳴るのが分る。<br><br>しかし、しかしだ。<br>なぜか友達らしき娘と一緒にいるではないか、今まで友達と連れだっていたことなんて一度もなかったのに。<br><br>一瞬思考回路が乱れ、落ち着こうと一旦自転車を降りる。<br><br>ここは芝居だ。<br><br>"人生は芝居のごとし。とかく人生あまり重く見ず、捨て身になって何事も一心に成すべし"<br>福沢諭吉の名言をやみくもにこころに念じた。<br>強引に自分を取り戻す。<br><br>「おはよう！」<br><br>僕は後ろから声を掛けて、自転車を下りた。<br><br>振り返る彼女。<br><br>一呼吸おいて<br>「おはようございます。先日はありがとうございました。」<br>予想外にいい反応。彼女の、はにかんだような笑顔が返ってきた。<br>とてもまぶしい、とびっきりの笑顔だ。<br><br>瞬間、勝った。と思った。<br>冴えていたのか、妄想を重ねたシミュレーションが的確だったのか。<br><br>自分の中では一瞬にして勝手なストーリーが成立する。<br>・・・どうやら僕の登校を待っていたようなタイミング、振り返った時のはにかんだ表情、カモフラージュぽく友達を連れていたこと、先週登校時に出会わなかったこと、etc・・・<br>僕の妄想の世界では、複数の点と点とがつながって線になった気がした。<br><br>そして、彼女も何かを期待していたに違いない、というトンデモナイ、しかし確信めいた思い込みが生じる。<br>なんの根拠もない自信がわいて、その自信はやがて余裕に変わった。<br><br>「あれから、大丈夫だった？」<br><br>「はい。本当にありがとうございました。」<br><br>「よかった。…朝いつも同じ時間だよね。」<br><br>「はい。部活の朝練で･･･」<br><br>「今日は友達と一緒？」<br><br>「･･･中学時代からの友達なんです。」<br><br>友達の娘は気を利かせたのだろう、買物があるからと言ってコンビニに入って行った。<br><br>白山通りを千石一丁目の交差点まで、話をしながら歩いた。<br>彼女のぎこちない受け答えが、とても新鮮だった。<br><br>「じゃあまた明日。」<br>交差点でわかれたが、彼女の瞳がとてもキラキラして見えて、ときめいた。<br><br>この頃の僕には、純粋ともいえる心が、まだ少しだけ残されていたのだと思う。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10676593379.html</link>
<pubDate>Thu, 14 Oct 2010 19:05:40 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>はつ恋</title>
<description>
<![CDATA[ 僕は生れ持っての気質か、それとも小さいころから姉の友達がよく家に遊びに来て、彼女たちにいつもからかわれていたからか、はたまたやんちゃな悪友に恵まれたせいか、ずいぶんとませた子供だったと思う。<br>子供時代にありがちな、ままごとのような恋愛ごっこは中学時代にもいくつかあった。<br>だが、これがはつ恋なのだと、確信した経験はこの時が初めてだっただろう。<br><br>何度も反復して思い出しているせいだろう。今でもその日のことはよく覚えている。<br><br>高校2年の春、庭の桜もすっかり散って街にも新緑がまぶしく目にしみる頃のこと。<br>僕がサッカー部の朝練で7時に家を出て学校へ向かう、自転車で15分ほどのいつもの通学路の途中での出来事。<br><br>その娘はもう半月も前、4月半ばから通学路の途中でよく見かけていた。<br>僕の学校は私服だったので、彼女のブレザーにチェックのスカートの制服がやけに眩しく、何処の学校の娘かなと気にはなっていた。<br>いつも自転車で追い越すので、後ろ姿と横顔しか伺えなかったところが、さらにまた僕の好奇心をそそっていた。<br><br>早朝から陽差しが強かったためか、その朝彼女は道の脇にへたり込んでいた。<br>バッグの他にいつものように楽器が入ったとおぼしきケースを持っていたので、遠くからでも彼女であることを認識できた。<br><br>最初は状況がよく判らなかったので、いつも通り、そのまま自転車で追い越したのだが、しばらくして打算が働いたのだろう、引き返してみることにした。<br>数分が経過していただろうが、はたして彼女はまだへたり込んだままだった。<br><br>僕が自転車を降りると、彼女ははじめは驚いたような、そしてすぐに警戒の眼差しが僕に刺さった。<br><br>「ねえ、君」<br>僕は初めて会う娘に声を掛けるときは、いつもそう呼びかけていたので、その時もそう呼びかけた。<br>彼女と面と向かうのはこれが初めてのことだ。<br>ぱっちりと大きな瞳、色白のほわっとした雰囲気がとても魅力的だ。<br><br>僕の作り笑顔に少し気持ちが緩んだのだろうか、彼女の瞳は困ったような、恥ずかしがるような色に変わった。<br><br>「どうしたの？大丈夫？？」<br>善人を装い、さも心配そうな表情を作ってみせる。<br><br>「目まいがして・・・貧血みたいです。少し座っていれば大丈夫です。」<br><br>案外彼女がしっかりした感じだったので、これは大事ないなとは思った。<br>そう思いながらも、僕はよい印象を与えたかったのだろう、<br>「誰か呼ぼうか？家？それとも病院？」と続けた。<br><br>「いえ、大丈夫です。」<br>彼女はいよいよ困ったような顔。<br><br>すでに何人かのおばさん達が近寄ってきていたので、ええかっこしいの僕は偽善者をきどったまま事情を話し、世話やきそうなおばさんの一人がタクシーを止めて彼女を送るのを、なんだか腹だたしげにながめながら、その場を立ち去った。<br><br><br>その日はずっとテンションが上がりっぱなしだった。<br>放課後の練習でもいつもはキツイはずのランニングが妙にものたりなく感じた。当時のポジションは今では死語となった右のスイーパーだったのだが、練習からガツガツいき過ぎて、仲間からも？？の反応。<br>練習後「いつもクレバー気取りのくせに、ゆうじ考え変えたの？」みたいに言われ、「俺、今日から本物のワルモノになるわ。」と僕も少し調子にのってみせた。<br><br>あまりにハイになったせいか、帰宅後、姉に言いつけられていた用事をすっかり忘れていて小言を言われ、よほど勘にさわったのだろう、今度はキレてひとり部屋でふてくされていた。<br><br>そんな時いつもなら完全無視をきめこむ姉が弟の不審をかぎつけたのか、<br>「ゆう、今日は晩ご飯お寿司でも食べに行こっか？」と唐突に薄気味悪いことを言う。<br><br>この姉だけには今朝のことを悟られたくない僕は、急にしおらしくなって「うん、行く。」と素直に部屋を出た。<br>姉は拍子抜けしたようだったがそれ以上の詮索はせず、僕も何事もなかったように平静をふるまった。<br><br>わが家で寿司といえば神楽坂の二葉、そしていつもの「ばらちらし」。<br>やはりなじみの味はいい。食べ終えるころは、すっかりいつもの自分に戻っていた。<br><br>帰り道、夜風が気持ちよかった。明日からの期待にこころがざわめいていた。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10675906009.html</link>
<pubDate>Wed, 13 Oct 2010 19:51:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>セピア色の写真</title>
<description>
<![CDATA[ 大学生活も独り暮らしにも当たり前になりはじめ、チョムスキーとテニスに没頭していた大学２年の初夏のだったか、おもいがけず姉の友人の男性の訪問を受けた。<br><br>姉の葬儀にあたっては、たくさんの姉の友人のご協力をいただいた。<br>その中でもとりわけ、その方はまとめ役的な存在だったと思う。<br>何度かお会いしたこともあり、わざわざ訪ねてくださったことにとても親近感を感じた。<br><br>姉の位牌に手を合わせ一通りの社交辞令の後、その方は姉との思い出を語って下さった。<br>お話の中で、彼は姉の大学時代の3つ上の先輩で姉が大学を辞めた後も、よいお付き合いがあったこと、現在は弁護士をされており、父の遺産の扱いなどについて姉の相談相手になってくれていたこと等々が伺われ、その方の話の端々から姉への好意が沁みて、親しさが増した。<br><br>語り終えると一通の手紙と一枚の写真を手渡され、僕に受け取ってほしいと仰った。<br>僕は少し躊躇したのだろう、しばらく促されて拝見すると、手紙は姉からのもの、写真はサークルの集合写真で姉が大学入学時ごろのものであることが見て取れた。<br><br>写真はともかく、手紙は姉からその方へ書かれたものなので、僕は受け取れない旨を伝えた。<br>それならばいっそ破棄してほしいとまで言われ、失礼して姉の書いた手紙を全部読む。<br>そこには彼から姉への恋文に対する、姉からの返答とおぼしき内容が綴られていた。<br><br>僕が推測するに、おそらく姉はその方に好意があったに違いない。<br><br>姉は、どこか儚げな風貌とは裏腹に、好嫌諾否をはっきりと意思表示する強い女性だった。<br>手紙ではそんな姉の文とは思われない、なんとも歯切れの悪い婉曲な表現で、彼の想いを拒絶している。<br>姉はヰタ・セクスアリスの一節を用いて、自らの気持ちを封じることを記していた。<br>しかし、ほのかに燈った感情の熱が、ひと肌のぬくもりのように彼に伝わったであろうことは、この文を読む限り、僕の想像にも難くない。<br><br>読み終わって、いくつかお聞きしたい思いが込み上げてきた。<br>僕は喉まで出かかっていたその方への問いを、飲み込んだ。<br>彼もそのことについて何も語らなかった。<br><br>その方は遠くを見るような目をして、しばらくの沈黙の後、静かに去ってゆかれた。<br>市ヶ谷でもセミの声が聞こえ出した。東京にまた夏が近づいていた。<br><br><br>追伸　晃一さま、益々ご清栄のことと存じます。お預かりした姉の手紙と写真は本日、宮古島の海に流しました。今の僕には姉の痕跡が身近にあることに耐えられません。頂いた写真の一部をスキャンしています。デジタルデータは僕たちの時代が終わって永い時間が流れても、この世に姉が確かに生きたことを証かしてくれるのかも知れません。<br>写真を撮られるのが苦手だった姉、仰っていた通り姉の笑顔の写真、本当に全くないのです。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20101011/20/compartment/17/4e/j/o0200003610795773408.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20101011/20/compartment/17/4e/j/t02000036_0200003610795773408.jpg" alt="$処女航海　暗夜航路" width="200" height="36" border="0"></a><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20101011/20/compartment/fb/2b/j/o0050007110795826415.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20101011/20/compartment/fb/2b/j/t00500071_0050007110795826415.jpg" alt="$処女航海　暗夜航路" width="50" height="71" border="0"></a><br>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10673748801.html</link>
<pubDate>Mon, 11 Oct 2010 20:51:48 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>姉の思い出</title>
<description>
<![CDATA[ それは高３の冬の始まりごろ、１２月のよく晴れた日のこと、<br>受験勉強も大詰めを迎え授業後の補習を受けていた時だった。<br><br>突然担任から呼ばれた僕は、そのままタクシーに乗せられて病院に向かった。<br>姉が自動車事故に巻き込まれたという。<br><br>状況の解らない僕は、ただ漠然とした不安を抱えて病院にたどり着いた。<br><br>案内されたのは病室ではなく、薄暗い霊安室だった。<br>そこには姉が眠るように横たわっていた。<br><br>「お姉さんですか」と聞かれたのだと思う。声が出ず、ただ肯いた気がする。<br>不思議と涙は出ず、静かな時が永遠のように流れた。<br><br>姉は目を閉じていて、白く美しかった。<br><br>そっと手を握った。まだ暖かさが残っている。<br>幼いころからよく手を引かれて、いろんなところに連れて行ってもらった手だ。<br>そして、母を知らない僕をここまで育ててくれた手。<br>子供の頃とても大きく強く感じた姉の手が、とても細く戸惑う。<br><br><br>別れはあっけないほどに、駆け足で過ぎて行った。<br>僕に残されたのは、ものごごろついたころからの姉との膨大な思い出と、<br>姉が僕の進学のためにと積み立ててくれたお金、僕が受取人となっていた姉の生命保険のお金だった。<br>自立するまでの蓄えとしては充分すぎるものであった。<br><br>受験を終えるまで僕は横浜の親戚の家で過ごした。<br>４月、僕はかつて姉が通った大学の門をくぐり、市ヶ谷の実家に戻った。<br>６年前、姉がかたずけていた心理学の教科書は、まだ書棚の奥にあった。<br>本を手に取ると、姉の夢が少し理解できたような気がして、なんだか嬉しかった。
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/compartment/entry-10673689761.html</link>
<pubDate>Mon, 11 Oct 2010 12:34:41 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
