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<title>CRIS0302のブログ</title>
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<description>昔書いたやつをちょっとずつ直して、アップさせていただいています。</description>
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<title>街の章 (19)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (19)<br><br>「ククッ… ハハハ! いいな、お前! 気に入ったぜ!」<br>男が低い声で大笑いをしながら、大剣を菊斗の頭上から取り収めた。それに合わせ、菊斗も木刀を収め、何歩か後退した。二人はしばらく、お互いの様子を探った。男はニコニコしていたが、菊斗はまだ警戒を怠らなかった。<br><br>「お、お兄ちゃん、外…!」<br>その時、愛桃が菊斗の後ろにある玄関ドアを指差しながら、話しかけた。ガラス張りになっているドアの向こうには、「彼ら」の群れが近づいていた。数はおよそ20以上はあるようだった。<br><br>くそっ!<br>菊斗は、男との戦いに夢中で、音が広がるのを気づけなかった。建物からかなり響いた音が、彼らを招いたのだった。<br><br>「ハッ! じゃ、ここは共同戦線といくか。おい、少年!」<br>男は振り向いた菊斗に何かを投げた。それは腕輪だった。<br>腕輪は腕にはめる部分と、紐でできた指にはめる五つの穴が付いている部分があった。まるで指はめグローブを、太い紐で作ったような形だった。<br>手のひらに当たる部分には、爪一つくらいの大きさの石が付いていて、かなり鋭く尖っていた。腕輪をつけると、石はちょうど手のひらの真ん中に位置する。<br>菊斗が受け取ってから怪しいという視線をやめなかったので、男は説明をした。<br><br>「まぁ、役に立つもんだから身に着けておけ。使用するにはな…こうして…握る!」<br>男は腕輪を付けた菊斗の手を拳を握らせるように、自分の手でぎゅっと握った。<br><br>くっ!<br>チクッとした痛みと共に、血が少しにじみ出た。腕輪の石が手のひらに刺さったのだ。菊斗は疑いのめで男を睨んだが、男はかまわず説明をつづけた。<br><br>「まぁ、最後まで聞け。イメージしてみろ。今の木刀でもいい。頭に武器をイメージするんだ」<br>菊斗は男が何を言っているか全く理解できなかったが、彼の真剣な眼差しに説得され、まずは言うとおりにやってみた。<br><br>その瞬間、石が光った。そして、石を持っていた手には、木刀と全く同じ形の刀が握り締められていた。色は透明な薄めの青がかかっていて、まるでガラスのようだったが、先は鋭く、刃の面からは木刀とは全く違う殺傷力を見せていた。<br><br>はぁ! はぁ!<br>だが、その刀の出現と同時に、菊斗の息が大きく乱れた。まるで体の気力が吸い取られた気分だった。<br><br>「おぉ! 期待通りだな! どうだ、すごいだろ?」<br>菊斗の疲れた形跡には構わず、男がドヤッとした顔で自信満々に話した。菊斗は、頭から疑問が噴水のように湧き出ていた。<br>だがその顔を見た男は、彼らに叩かれている玄関ドアを示しながら、背中に収めた大剣を取り出した。<br><br>「詳しい話は後だな。まずは、あれをどうにかする必要があるな」<br><br>菊斗もそこには同意した。二人は、今すぐにでも割れそうなガラスドアに向かった。<br><br><center> * </center><br>菊斗はあんな多数の彼らを相手にしたことがなかった。しかし、戦いはスムーズに終わった。<br>菊斗に新しくできた武器も一役を買っていたが、何よりも男の強さがすべてを一瞬で終わらせたのだった。<br><br>はぁ… はぁ…<br>菊斗はロビーで仰向けになり、荒くなった息を整っていた。戦いが終わると、さっき出てきた刀は粉々に割れ、なくなってしまった。<br><br>「お兄ちゃん! 大丈夫!?」<br>「ワン!」<br>愛桃とジーンが心配そうに駆けつけてきた。菊斗は、自分の顔をじっと見ている愛桃の頭を、ニコっと微笑みながら軽く撫でた。<br><br>「よう、もう大丈夫か? 付いて来な。上にある休憩室だと、一晩くらいは安心して寝れるぜ」<br>疲れた形跡を微塵も見せていない男が、菊斗に左手を差し出した。彼の左手には、螺旋の形をした、大きな刺青が入っていた。<br><br>菊斗は男の手を握り、立ち上がった。そして、床に落ちている木刀を拾い上げ、愛桃と一緒に非常口に向かう男の後を付いていった。<br><br>「あー、そうだ。俺の名はヴェインだ。ヴェイン・ウルフ。まぁ、自己紹介は後でもいいな。まずは色々聞きたい事がたくさんあるだろうからな」<br>ヴェインは、ニコッと笑いながら、非常口の階段を上がった。菊斗たちも、彼に続いて非常口に入った。<br><br>「ポカン」<br>その時、菊斗の手にあった木刀が、真っ二つにされ、床に落ちた。両断面がきれいなことから、ヴェインの大剣によって切られたに違いなかった。さっき、菊斗が彼の顎を狙った際、すでに木刀は真っ二つにされていたのだ。<br>さっき彼らは相手していた動きから考えると、きっと、菊斗の時は手加減をしたに違いなかった。<br><br>はぁ。<br>菊斗はため息をして、木刀をロビーに置いたまま、階段を上った。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11993323498.html</link>
<pubDate>Sun, 22 Feb 2015 22:19:55 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (18)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (18)<br><br>近づく音に耳を立てながら、非常口の隣に立っていた。<br><br>「カン…カン… …」<br>しかし、音は菊斗とあと一歩のところで、ピタッと止まった。<br><br>足音じゃなかったのか…？<br>菊斗は非常口のほうに身を出し、階段のほうを確認した。<br><br>「ドン!」<br>非常口に身を出した途端、菊斗の胸にデカい足が飛んできた。<br><br>ぐあっ!<br>菊斗は蹴りの衝撃でロビーの真ん中にまで吹き飛ばされた。激痛でそのまま倒れて痛い気分だったが、歯を食いしばり、かろうじて体制を整った。<br><br>しばらくすると、非常口から蹴りの持ち主が現れた。<br>図体のかなり大きい、男だった。最初は、その大きさから以前あった「彼ら」ではないかと思うくらいだった。<br>男は40代中盤くらいで、茶色の髪とヒゲをしていた。背中には、およそ愛桃の慎重に近いくらいの、大剣を背負っていて、結構年季の入っているゴツい服装を着ていた。<br><br>「お兄ちゃんー!!」<br>「ワン! グルルゥ…」<br>愛桃とジーンが菊斗のそばに駆けつけた。ジーンはすぐに正体不明の男に牙を向けた。<br><br>「あれ…? 何だ、機関の連中じゃないのか? まぁ、いいや。どうせ確認は必要…だしな!」<br>男は菊斗たちを見て、若干戸惑う顔を見せたが、すぐに表情を元通りにし、背中の大剣を取り出して菊斗にかかってきた。<br><br>くっ…<br>戦いの予想はしていたが、あの大剣を木刀で立ち向かえるのか? だが、とりあえずやって見るしかなかった。<br><br><center> * </center><br>「はあああっ!」<br>男は、大剣をを軽々しく振り回した。菊斗はそれをやっとの差でかわすのが限界だった。大剣はそのままロビーの床に打ち込まれ、破片を飛ばした。ロビーには、すでに大剣の跡がいくつもできていた。<br><br>「ハッ! よく避けてるな! まぁ、ここまで来ているから、それくらいはやってもらわないと!」<br>男はまるで菊斗を試しているかのように、楽しそうに剣を振るい続けた。菊斗はどうしようもなく、避け続けるしかなかった。<br><br>「ハハッ! いいね、その動き! どれ、もう少し速度を上げてみ…あぁ?」<br>男の動きが急に止まった。彼は、自分の足元に目をやった。<br>「グルゥゥゥ…」<br>ジーンが彼の右足に噛み付き、うなっていた。<br>「おい、こら! 何をする! 離せ!…」<br>男は足を軽く振ったが、ジーンはなかなか離れなかった。彼は困った顔にどんどん変わっていた。<br><br>しかし、これはチャンスだった。<br>菊斗は、木刀をぎゅっと握り締めて、男に向かって全速で走り出した。<br><br>「離さないか! くっ!」<br>男はさっきより強く足を左右に振り、ジーンを振り払った。ジーンは軽く飛ばされたが、すぐにまた起き上がり男に向かって吠えていた。<br><br>はぁぁぁっ!<br>男の目の前にまで迫った菊斗は、木刀を突き出した。<br>それに気づいた男は、素早く姿勢を整え、大剣を振り下ろそうとしたが、その大剣は菊斗の頭上にてビッタリ止まってしまった。<br>菊斗の木刀が、男の顎下をすぐにでも突き上げられるように、待機していたからだ。<br><br>二人は、睨み合ったまま止まっていた。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11993320151.html</link>
<pubDate>Sun, 22 Feb 2015 22:17:08 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (17)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (17)<br><br>菊斗たちは、今、北東にあるトンネルゲート前のベンチに座っていた。<br>いつもはしゃいでいる愛桃も、ジーンと一緒にやけに静かに座っていた。菊斗は、どこかぐったりした感じで、<br>呆然と空を見上げていた。<br><br>北東のトンネルは、完全に陥没されていた。このトンネルは、山を貫いてかなりの長さがあるため、トンネル外の<br>回り道などは一切できなかった。例え山を越える選択をするとしても、南のゲートのようにまた戻されるかも知れなかった。<br><br>はぁ…<br>菊斗は深いため息をついた。これからどうすればいいだろうか。<br><br>「ねぇ… お兄ちゃんのお母さんとお父さんはどこにいるの？」<br>愛桃が心配そうに菊斗を見つめながら、聞いてきた。菊斗は、自分があまりにも深刻な顔をしていたせいで、<br>彼女に変な気遣いをさせてしまったと思い、少しバツが悪くなった。<br>菊斗は表情を和らげ、自分の両親はすでにいなくなっていると答えた。<br><br>「あ、私と同じだ…」<br>菊斗は、愛桃の驚く顔を予想したが、それとは逆に愛桃は淡々とした口調で言い返した。<br>菊斗は彼女に初めて出会ったとき、両親が研究所で働いていると聞いていたので、何か自分が間違っているかと思った。<br><br>「ううん。お母さんとお父さんはいるよ。でも、本当は違うの」<br>愛桃は、今の両親が義理の親だと言った。子供のごろ、養子として迎えられたらしい。<br>しかし、養子になる前の彼女の記憶は、ほとんど残っていないということだった。<br><br>「あ、でもね、愛桃がそれを知っているだけで、愛桃のことすごく愛してくれているんだよ。<br>お父さんは私が眠れないときはいつも本読んでくれるし、お母さんは毎日すごく忙しいのに、お弁当も作ってくれるし。本当においしいんだよ、お母さんの弁当。お兄ちゃんにも食べてほしいなー えへへ」<br><br>菊斗が無言で彼女を見つめると、愛桃がわざとらしく言ってきた。でも、彼女の顔は、今すぐにでも両親に会ったような、ほんわかした顔をしていた。<br><br>愛桃を家に送ってあげよう。<br>菊斗は、次の目標を決めた。もうこの街から出られるかどうか分からなくなってしまったが、この子をこんな顔にさせる両親の元に届けてあげるのが、菊斗にできる今の精一杯だった。<br>そして、愛桃の両親に出会ったら、最初に彼女を迎えにきた黒い軍服の男たちについても、何か手がかりが掴められるかも知れない。<br><br>菊斗はそう考えるだけで、希望が沸いてきた。<br>そして愛桃の頭の上に、撫でるようにポンと手を置いた。愛桃は最初ちょっぴり驚いたが、すぐ菊斗の顔を見て、ニコっと笑ってくれた。<br>その時、愛桃を撫でる手の上に、オレンジ色の光が当てられた。<br>街路灯が点灯したのだった。<br><br>くそっ、もうこんな時間になっていたのか！？<br>菊斗はあまりもの絶望に、周囲がまったく見えなくっていたので、すでに日が暮れかかっていることに気が付かなかった。<br>このまま外にいたら、すぐに「彼ら」に出くわしてしまうはずだ。<br><br>菊斗は愛桃とジーンを連れ、ベンチの向こう側にある街路樹の後ろに身を隠した。このまま道を沿ってしばらく行けば、河南市に電力を供給する発電事務所が出る。<br>やっぱり安全第一を優先する会社のこともあって、たぶん一晩を過ごすには適切な場所のはずだった。<br><br>菊斗は愛桃に、ジーンが余計に吠えないように見てほしいと伝え、道を明けるために先頭に立った。<br><br>街路灯を中心に群れを作っている彼らの目を避けながら、菊斗たちは静かに動いた。<br><br><center> * </center><br>しばらく道を進んだら、電力会社が見えてきた。<br>幸いにも正面玄関は開いていた。いや、開いているというより、鍵を無理やりこじ開けられているほうが正しかった。<br><br>菊斗たちは床に散らばっているガラスの破片を踏まないように、注意しながらロビーに入った。もし音が響いたりでもしたら、外の彼らに気づかれるかも知れなかったからだ。それくらい、ロビーは静かだった。<br><br>「カン、カン、カン…」<br>ロビーの奥側から、小さな音が聞こえてきた。菊斗は耳を立て、音を拾った。<br><br>案内デスクの左にある、開いた非常口から、階段を下りてくるような足音した。その音は、だんだんと菊斗を向かって近づいていた。<br><br>誰だ。人か？彼らか？<br>だが、どちらでも選択肢はまず一つだった。<br>菊斗は非常口の隣で、取り出した木刀を握り閉めた。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11992557662.html</link>
<pubDate>Sat, 21 Feb 2015 01:50:57 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (16)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (16)<br><br>コンビニを出た二人と一匹は、南のゲートに向かった。<br><br>夜の間うろうろしていた「彼ら」は、すでにその姿を隠していた。どうやら彼らは、夜のほうに動き回る夜行性みたいなものだと、菊斗は思った。<br><br>「へへっ。早く来て、お兄ちゃん・ジーン!」<br>「ワン!」<br>愛桃が走り出すと、子犬がその後を次いだ。愛桃は子犬の名前を「ジンジャー」と名づけた。以前みた生姜の花がとても綺麗だったので付けたそうだ。普段は縮めてジーンと呼ぶことにしたらしい。<br><br>菊斗は二人が遠くにまで行かないか心配はしたが、元気がないよりはこっちのほうがいいと思いながら、歩き出した。<br><br><center> * </center><br>菊斗たちは南のゲートに前に到着した。<br>ゲートといっても、特にどデカい門が構えているとかじゃなく、ただ「ようこそ河南へ!」が書かれている大型の道路標示版があるだけだった。<br><br>ゲートの前には、北西の都心出口と同じく事故に遭った車が多数散乱していた。<br>数はそれほど多くなかったので普通に歩いてくぐることができたが、菊斗は昨日の記憶がよみがえり、かなり不安になってきた。しかも、車の通ったところからは、また深い霧で遮られていて、不安はもっと加速された。<br><br>「うぅ…」<br>さっきまではしゃいでいた愛桃が、菊斗の上着の裾をぎゅっと握り閉めた。<br>菊斗たちは、霧の中に重い一歩を踏み出した。<br><br><center> * </center><br>菊斗はまた穴がないか、足元に気をつけながら一歩一歩を踏み出した。幸い、10分くらいを歩いたが穴などはなかった。<br><br>霧の中は、何の痕跡もなくきれいな状態だった。ただ、両脇に鬱そうな木々で囲まれている一本道のだけだった。<br><br>このまま行くと、街の外に出られる。<br>菊斗は希望と期待に満ちていた。それにつれ、足も少しずつ速くなっていた。20分近く歩いた頃、やっと霧が薄くなり、前方に何かが見えてきた。<br><br>車だった。<br>菊斗は、やっと街を出られたと思ったが、それに近づくに連れ、違和感を覚え始めた。<br>車の形がはっきり見えてきて、菊斗はその違和感が何かを、分かった。<br><br>さっきと同じ場所だ。<br>菊斗が街を出られたと思ったその場所は、さっき霧の中に入っていった南ゲートだった。<br><br>くそっ、道にでも迷ったのか？<br>しかし、ゲートからの道は一本道。迷うはずがない。<br>それとも、方向感覚がおかしくでもなったのか？<br><br>菊斗は、愛桃とジーンにしばらくゲートの前にいるように行った後、また霧の中に入っていた。<br><br><center> * </center><br>はぁ、はぁ。<br>菊斗は霧の中を全力で走っていた。<br>さっきはかなり恐る恐る歩いていたので、20分近くかかったが、今の菊斗の全力なら5分もかからない距離だった。<br>しかも、ひたすら直進で疾走することで、方向感覚を失うこともない。<br><br>霧の中に入って、4分くらいが過ぎたころ、霧は薄くなり、また車が見えてきた。<br>しかし、霧の先にあるのは、また南のゲートだった。<br><br>くっ…<br>胸に重りでも乗せられたように、気持ちがどんと重くなってきた。菊斗は訳が分からなかったが、とにかく霧を抜け出るしかなかった。<br><br>「ふえぇぇん! どこ行ってたのよー! お兄ちゃん!」<br>菊斗が霧を出た途端、愛桃が涙目でジーンを抱っこして走ってきた。彼女の顔は、怒りと安心がごちゃ混ぜになっていた。<br><br>泣き声ではっきりとは分からなかったが、どうやら菊斗は霧の中に入って3時間くらい経ってしまい、もう戻らなくなってしまったんじゃないかと、愛桃は心配したらしい。<br><br>菊斗は何を馬鹿な…と、最初は思ったが、愛桃の後ろに見える町並みは、すでに夕日で黄色くなりかかっていた。確かに南のゲートに着いたのは、昼前だったはず…<br><br>何だ、これは…<br>もう驚く力もなくなった菊斗は、泣いている愛桃をあやしながら、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11990363830.html</link>
<pubDate>Sun, 15 Feb 2015 21:47:49 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (15)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (15)<br><br>はぁー はぁー<br>荒い息が静かな住宅地に広がった。<br>菊斗の服は全身ぼろぼろで、破れたところからは血がにじみ出ていた。しかし、目の前の「彼」は、まったく疲れた形跡が見えなかった。<br><br>菊斗は、弱点だと思った心臓を狙ったが、そこは弱点ではなかった。その後、何度も彼に立ち向かい、弱点を探った。最初に遭遇した警備員との接戦の経験からすると、弱点に触れたら何かの反応が必ずあるはずだったからだ。<br><br>「グアアァー!!」<br>初めて、彼の苦しい悲鳴が聞こえてきた。それは、菊斗が彼の後ろに回り、首筋を軽く打った時だった。<br><br>弱点だ。<br>菊斗は確信した。さっき心臓を狙った時よりは強くないはずなのに、彼はかなり苦しんでいたからだ。<br><br>菊斗は木刀を建て直し、走った。最初に振ってくる彼の右側の腕を交わし、後ろからまた首筋を狙うためだった。しかし、木刀は首筋までには当たらなかった。<br><br>「ドン!」<br>いままで使ったことがない、彼の左側の腕が菊斗の体に命中した。彼は菊斗に振った最初の一撃の回転を利用し、体制を立て直すことなく左腕を振ってきたのだ。それは自分の弱点を守ろうとする、本能からの行動だった。<br><br>ぐああっ!<br>菊斗はあまりの苦痛に、その場でひざまずいてしまった。まるで内臓がひっくり返ったような吐き気が出てきた。<br><br>だけど、かろうじて立ち直った菊斗は、また走る準備をした。このまま突っ込んでも難しいとは思ったが、長期戦になるのは菊斗に不利になるだけだった。菊斗にはもう後一発くらいの力しか残ってなかったからだ。<br><br>菊斗は走り出した。<br>最初の右腕からの一発を微かの間合いでかわし、「彼」の後ろに回った。彼はまたさっきと同じ方法で、左腕を菊斗に繰り出す体制をした。<br><br>くそっ!<br>このままでは、さっきと同じように飛ばされる。しかし、今度は起き上がれない気がした。<br><br>「ワン! ワン! グルルゥ…」<br>左腕を繰り出す前に、路地の向こうから犬の吠え声が聞こえてきた。多分、声からしてそんなに大きい犬ではなかった。<br>「彼」は、突然の出来事に左腕を若干止めてしまった。本の0.1秒にもならない一瞬だったが、菊斗にはそれで充分だった。<br>菊斗は自分の出せる全ての力で、木刀を彼の首筋に刺した。<br><br>「グアァァァァ―!!」<br>彼は悲鳴と一緒に前に倒れた。菊斗は、倒れた彼の背中に乗り、首筋を何度もめり込んだ。<br>数回刺したら、血肉の破片が飛び始めた。<br>首筋の肌が少し剥がれると、その隙から微かな光が見えてきた。菊斗は、無我夢中でその光を向けて木刀を繰り出した。<br><br>「ギエェェッ!!」<br>彼の短い悲鳴と一緒に、光が消えた。そして、他の「彼ら」と同じように、徐々に体が崩れ、煙になっていった。<br>その煙はすぐに菊斗の体の中に入り込んできた。<br><br>くあっ!<br>その一連の流れはいつもと一緒だったが、今度は耐えられない苦痛が襲ってきた。まるで、心臓を丸ごと誰かに掴まれているような感じだった。<br>菊斗はそのまま倒れ、腰を捻じ曲げながら、苦痛に耐えた。<br><br>はぁーはぁー<br>しばらくすると、普通に戻った。そして、まるで嘘のように、先ほどの疲れや苦痛は、吹っ飛んでいた。<br><br>菊斗はまだ寝ている愛桃を起こし、近所のコンビニへ向かった。<br><br><center> * </center><br>コンビニは、若干荒らされた感じはあったが、品も充分残っていたし、ドアの閉まりもきっちりできる安全な場所だった。<br>菊斗は、愛桃が物を取る度に、レジのほうに金を投げていた。そのコンビニの店主がまだ生きているかは不明だったが。<br><br>「ねぇ、これ食べる? へへっ」<br>隅っこでパンを食べていた愛桃が独り言をぶつぶつ言っていたので、菊斗はどうやらあやしいと思い、そっと近づいた。<br>愛桃は彼が近づいていることに気が付かず、独り言を続いていたが、菊斗はその理由をすぐに分かった。<br><br>「ワン!」<br>子犬だった。必死に隠そうとする愛桃に聞くところ、コンビニに来る途中、いつの間にか彼女の後ろ付いてきたらしい。愛桃は、連れて行きたいという眼差しで菊斗を見た。<br><br>菊斗はコントロールが難しい動物を連れて回るのは最初危険だと思ったが、さっきの「彼」との戦いで手助けをしてもらったことを思い出し、連れていくことにした。(この子犬がさっきの吠え声をしたかは分からなかったが)<br><br>「本当に!? やったね! ワンちゃん!」<br>「ワン!」<br>愛桃は大喜びしながら犬の両足を掴め、遊び始めた。<br>そして、しばらくしたら眠りに入ってしまった。<br><br>それを見た菊斗も、一緒に眠りの誘いに身を委ねた。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11989940860.html</link>
<pubDate>Sat, 14 Feb 2015 22:18:25 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (14)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (14)<br><br>菊斗は愛桃を探し、走っていた。<br>彼がいる住宅地は、企画構成された新市街地で、町並みが囲碁版みたいにきれいに整頓されていた。しかし、今回だけは役に立たない。暗くなってしまった今は、どこも似た感じで、方向感覚をつかめなかったからだ。菊斗は、ただ彼女の声と、自分の鋭くなった感覚を信じるしかなかった。<br><br><center> * </center><br>何分間走り回った挙句、菊斗はオレンジ色の街路灯の下で寝ている愛桃を見つけた。すぐに駆けつけ様子を確認したが、ただ気を失っているだけだった。<br>菊斗は一安心し、愛桃を連れて帰ろうとしたが、後ろから二人を覆うような黒い影が近づいていることに気が付いた。<br><br>「ドン!」<br>重い衝突音がした。それと同時に、菊斗は自分のいた場所から、数メートル飛んでいってしまった。<br><br>くっ!<br>菊斗は、後ろから振り回されたでかい腕をできるだけ防御したが、やっぱり衝撃はすごかった。<br>菊斗はかろうじて立ち上がり、正面を向けた。<br><br>最初、それを大きめの熊か何かと思った。だが、街路灯に照らされたその姿は、全身黒い毛で覆われている人間だということが分かった。その人から感じられる気配は、彼らと同じ感じだったが、ほぼ3ｍに近い大きさや、今菊斗が受けた力から見ると、ゲームのボスキャラに値する存在に違いなかった。<br><br>「ゴン! ゴン!」<br>彼が動き出した。一歩を踏み出す度に、地面が揺れる感じがした。菊斗は、木刀を握り直した。<br><br>だが、勝算はどれくらいだろうか。今の状態では、彼との力の格差は、明確だった。ならば、菊斗は自分の知っている彼らの「弱点」を突くしかなかった。<br>幸い、彼の動きは鈍いほうだった。昨日から何度もやってきたように、一度だけでも隙を狙い心臓を突けば、勝つかも知れない。<br><br>菊斗と彼の距離があと数歩に縮まった。菊斗が出る準備もする前に、彼の長い腕が先に飛び出てきた。菊斗は、かろうじてそれを避けた。<br><br>隙だ。<br>鈍い動きから、その腕を振り回す動作に戻るには時間がかかった。菊斗は、右手の平を木刀の底を強く支え上げながら、彼の心臓を突いた。<br><br>「ドッ」<br>鈍い音がした。<br><br>くそっ!<br>失敗だ。木刀の先は彼の皮膚に当たったまま、全然先に進まない。彼の胸の板はかなり分厚く、硬かったのだ。<br>菊斗が木刀を刺している間、彼の腕はすでに準備態勢を整えた。<br>そして、その腕はすぐに菊斗の腹に命中した。<br><br>ぐあっ!!<br>思わず吐き出しそうな、強烈な痛みが腹から伝わってきた。菊斗はそのまま空中を飛び、地面にめりこまれた。<br><br>菊斗は木刀を杖のように支え、やっと起き上がった。今すぐにでも何もかもやめたい気分だったが、それは、彼の向こうに眠っている愛桃を見捨てることになってしまう。<br><br>はぁ、はぁ…<br>菊斗の息がだんだん荒くなってきた。それと同時に、また地面の揺れ始めた。彼が、菊斗に向かって動き出したのだ。<br><br>菊斗はまた、木刀を強く握り直すしかなかった。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11988750635.html</link>
<pubDate>Thu, 12 Feb 2015 01:13:38 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (13)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (13)<br><br>菊斗と愛桃は、河南大通りを歩いていた。<br><br>さっき寄った北西の都心への出口は、もうあきらめるしかない。それなら、次に近い出口は、南にある地方ゲートのほうだった。南の地方ゲートは、北西の出入り口からは大通りを沿って、市役所を通ったほうが速かった。<br><br>河南市は外部の地域と繋がる出口が3つある。さきほどの北西の都心出入り口と、南の地方ゲート、あと北東のトンネルゲートがそれだ。結構人口密度のある街にしては、外部との通路が少なかったが、それは河南市が山に囲まれているためだ。さっき上った上り坂も、山を削って道を作ったため、できたものだった。<br><br>街はそろそろ日が沈むごろになり、オレンジ色に変わりつつあった。菊斗は、暗い街の中を歩くのは危険だと思い、大通りの交差点付近のコンビニで一晩を過ごすことにした。あそこなら、食料もあるし、外部からの進入を防ぐ壁もある。<br><br>「ねぇ、早くいこう~♪」<br>もうすぐ夕飯ができるということで、愛桃はうきうきしていた。そういえば、二人とも昼から何も食べていない。<br><br>「♪~ …? お兄ちゃん…?」<br>菊斗の先を歩いていた愛桃が急に止まった。コンビニの手前にある路地の角から、人の影のようなものが見えてきたからだ。<br><br>くっ、敵か?<br>菊斗は彼らかも知れないと思い、木刀を取り出した。だが、その影はすぐに姿を表さず、こちらの様子を伺うように動き、とっさに路地の奥に入ってしまった。<br><br>人だ。<br>今まで彼らにあんな動きはなかった。人に違いない。たぶん、この二人以外にも生き残りがいる。もしくは、昼間の男たちのように、何かの施設から派遣された者かも知れない。<br>菊斗は、愛桃にここにじっとしていろと伝え、路地のほうに走り出した。そして、素早い動きで角を曲がった。<br><br>しかし、誰もいなかった。<br>見間違いか? いや、あれは二人も確かに見ているし、人の影に違いなかった。<br>いったいどういうことだ…<br><br>「きゃああー!!! お兄ちゃんー!!」<br>愛桃の叫び声が聞こえた。菊斗はすぐに引き返し、彼女の声の方向へと向かった。<br>愛桃は、「彼ら」の一人に背負われ、連れて行かれていた。彼が向かっている方向は、新市街の住宅地に繋がる路地だった。<br><br>一体どういうことだ!<br>拉致? 彼らにか? 今まで一切知能など見せなかった彼らに、そんな真似ができるのか? <br>菊斗は色々な疑問が脳裏に浮かび上がったが、今は考える時間がなかった。とにかく、愛桃の声を追うんだ。<br><br>街はすっかり暗くなってしまい、菊斗は彼女の声を頼りに前進するしかなかった。
]]>
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11988739557.html</link>
<pubDate>Thu, 12 Feb 2015 00:40:10 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (12)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (12)<br><br>彼らとの戦いは、意外と簡単に進んだ。<br><br>まず後ろから一人目を急襲し、心臓を一突きで倒した。倒れた彼は、また昨日と同じく煙状態に変化し、菊斗の中に入り込んできた。<br>そのあとは、戦いがもっとし易くなった。彼らを倒せば倒すほど、どんどん力が増し、自信も付いてきた。<br><br>３体目を相手にしたら、遠くからまた彼らの近づくような気配がしたため、菊斗は一旦女の子の手を握り、予定通りの道に向かって走り出した。<br><br>「ちょ、ちょっと、お兄ちゃん、待って、はぁ…はぁ…」<br>何分間、全力で疾走すると、女の子にはかなりつらかったらしく、息が荒くなってきた。<br>菊斗は走りを止めて後ろの様子を伺い、しばらく休むことにした。<br><br><center> * </center><br><br>二人は休みを終え、都心への出入り口に向かって歩き出した。この辺りは若干上り坂になっていて、この峠さえ越えれば、すぐに出入り口が見えるはずだった。<br><br>「それでねぇ、私昨日引っ越してきたんだよ」<br>女の子は自分が安心できる環境になると、色々しゃべってくれた。<br><br>まず名前は、「荻日 愛桃(おぎび あいな)」というらしい。彼女は自分の苗字が呼びにくいから、名前で呼んでほしいと言った。<br><br>愛桃は、先ほどバスが走ってきた方向にある、住宅地に引っ越してきたといった。両親は何かの研究をする人で、朝起きたら黒い服を着た男が二人が、両親のところに連れて行ってあげるとバスに乗せたらしかった。<br>最初は彼女をうちに戻してあげようかなとも思ったが、交差点をまた通る必要があったので、それはあきらめた。まだ彼らがうろうろしている可能性が高いからだ。<br><br>しかし無防備すぎるな…<br>自分だったら、知らない人に連れて行かれる時点で、怪しむはずだった。<br>でもまぁ、小学校4年生の考え方って、こういうものかなと、納得した。しかも愛桃は人をよく信じそうな感じだったからだ。<br><br>「違うもん! 私6年生だよ!」<br>愛桃がプンプンしながら叫んだ。菊斗は、考えを思わず口に出してしまったらしい。<br><br><center> * </center><br><br>あれこれやり取りをしているうちに、上り坂は終わっていた。<br>後は、先に続く下り坂を追って行けば、都心に繋がる出口を通れる。<br><br>しばらく進むと、深くなる霧と一緒に、少しずつ止まっている車が見え始めた。最初は数台くらいだったが、すぐに十数台になっていた。<br>しかしその数が増えるにつれ、車の列がどんどん乱れ始めた。やっと車同士の間をくぐって、行ける位に、散らばっていた。<br><br>菊斗は、車の隣を通るたびに中を確認したが、人の姿は見えなかった。ただつぶれた車体と、ところどころ見える血の跡、割れたガラスの破片くらいが全部だった。<br><br>車の列の乱れと一緒に、菊斗の心臓の音もだんだん乱れ始めた。分けのわからない不安感が彼を襲ってきたからだ。いや、菊斗は頭の隅で、すでにその「分け」を気づいていたかも知れない。<br><br>「お、お兄ちゃん…? 大丈夫なの?」<br>菊斗の足がますます速くなり、愛桃が心配そうに聞いた。彼の顔は、かなり険しい表情になっていた。もう菊斗は車の中など確認していない。前を見て、ただ走るように歩いていただけだった。愛桃は菊斗の上着の裾を掴み、必死に追いつけていた。<br><br>違う、違う、違う…<br>菊斗はつぶやきながら、前進した。その時、<br>「お兄ちゃん!! ダメ!」<br>愛桃は菊斗の裾を力いっぱい引っ張り、彼の足を止めた。<br><br>菊斗ははっと気づいた。霧の隙を通し、自分の足元を確認した。<br>足の真っ先には何もなかった。ただ、黒い穴のような、崖が見えるだけだった。崖の向こうがどれくらいの距離があるかも分からないくらい、離れているっぽかった。左右をみたら、まるで包丁とかで地面が切られているように、地面が終わっていた。<br><br>たぶんここにある車は、最初ここを通るために集まったが、前列は落ちてしまい、後列はその前列に衝突してしまったんだろう。<br>そして、菊斗もあと一歩で落ちるところだったのだ。<br><br>「お兄ちゃん!」<br>菊斗の体から、一瞬で力が全部抜かれた。<br>彼は、その場に座りこむしかなかった。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11988312412.html</link>
<pubDate>Wed, 11 Feb 2015 00:17:42 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (11)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (11)<br><br>バスから降りてきた女の子は、赤めの茶色の髪に、ピンクのワンピースを着ていた。<br>パッと見て、小学校4~5年生くらいに見える身長だった。<br><br>「お、おじさん…?」<br>女の子はおどおどした一言をすると、倒れている男たちと彼らを見つけた。<br><br>彼女は、何がなんだかまったく分からなかったが、とにかく目頭に涙がにじみ始めた。<br>結局、大きく泣き出してしまった。<br><br>「ふえぇぇんー!」<br>女の子の泣き声は、すぐに彼らを呼び寄せるきっかけとなった。彼らは、男たちから目を離せ、女の子のほうに近づいてきた。<br><br>くっ! どうしようもないじゃないか…<br>菊斗は、どうしても動けなった。<br>さっきの男たちは見捨てて、女の子は助けるのか? そんな偽善者っぷり、自分にはできない… しかし、人を助けるのに善とか悪とかがあるのか？<br><br>「わぁぁぁ!!」<br>その時、女の子は不安に絶えず、菊斗との逆方向に走り出した。彼らはそれを追うように、目が彼女のほうに移った。<br><br>今なら、バスの後ろを回って、交差点を抜けられる…<br><br>「ドン!」<br>走っていた女の子が、遠くまでは行けず、転んでしまった。そして、もっと大きな声で泣き始めた。<br><br>「ひっく、ふぇぇん… お母さん!」<br>女の子は、目の前にまで迫ってきた彼らを見ながら、泣き叫んだ。<br><br>それを聞いた菊斗は、思い出した。<br>その女の子と同じく、自分もまったく同じように叫んでいたからだ。<br>まただ。子供の頃の、交通事故の現場がまた浮かびあがった。<br><br>くそっ!<br>菊斗は、自分も知らないうちに血が出るほど、拳をぎゅっと握りしめていた。<br>そして、背負っていた木刀を取り出し、彼らに駆けつけた。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11987925151.html</link>
<pubDate>Mon, 09 Feb 2015 23:50:45 +0900</pubDate>
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<title>街の章 (10)</title>
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<![CDATA[ 街の章 (10)<br><br>翌朝、菊斗は簡単に荷物をまとめ、家を出た。<br>北にある、都心に一番近い河南市の出入り口に向かうためだった。<br><br>霧はだいぶなくなっていた。視野が確保されると、今まで見えなかったいろんなものが目に入ってきた。<br>電柱にぶつかっている車や、割れた窓ガラスの破片、ところどころ見える引きずったような血の跡など、昨日の様子をよく説明してくれていた。しかし、昨日の警備員の「彼」みたいな姿だけは、見当たらなかった。<br><br>菊斗がまず向かっているのは河南市の旧市街の交差点だった。<br><br>河南市は、北西から南東を貫く大通りを基準に、南部を旧市街、北部を新市街と分けて呼んでいる。(菊斗の家は、旧市街の下部分にある)<br>新市街の町並みは、企画されたきれいな形をしているが、旧市街は道や建物の配置とかもかなりバラバラで、細い小道も多かった。<br>だけど、この辺りに詳しい菊斗には、むしろ旧市街は小道を隠れ場として使うために好都合だった。<br><br>「パン! キィィィィッー!」 <br>交差点が見え始めた頃、交差点の左角を曲がったところから、何かが割れる音と一緒に車の急ブレーキを踏む、鋭い音が聞こえてきた。<br>菊斗はとっさに身を隠し、様子を見た。<br><br>「ドン!」<br>車が交差点に現れ、止まった。右後ろのタイヤはボロボロになった、中型のバスだった。<br>しばらく見ていると、プシュッという音と一緒にドアが開いた。<br><br>バスから降りたのは、黒い軍服のような服装をした、二人の男だった。<br>菊斗は最初、彼らになってしまったんじゃなかいかと疑ったが、それは違った。二人がしゃべり出し始めたからだ。<br><br>「くそっ! 何で急に…」<br>「うわぁー派手に割れちまったな」<br>降りてきた男が首を触りながら愚痴をいうと、もう一人のほうが割れたタイヤを確認しながらつぶやいた。<br><br>「とりあえず機関に連絡だ。ちっ、面倒なことになったな…」<br>首を触った男はそういうと、再びバスの中に戻ろうとした。しかし、彼がバスの階段に足を置く途端、横から受けた衝撃で、短い悲鳴と一緒に倒れてしまった。<br><br>「ぐあっ!」<br>「な、何だ! 何で昼間っから飛び出てくるんだよ、くそっ!」<br>彼らだった。いつの間にかバスの周りに群れを作り、近づいてきている。<br>すでに先頭立っていた一人が、男を倒し、もう一方に襲い掛かろうとしていた。<br><br>「バン!」<br>何かが弾き飛ぶ音が、旧市街の交差点に広がった。<br>残った男が、彼らに向かい拳銃で応戦したのだ。一つの銃声と一緒に、彼らの一人が倒れた。しかし、それは逆効果だった。彼らのすべての視線が、男に集中されたからだ。<br><br>「バン! バン! バン!」<br>男は必死で銃を撃ったが、数には勝てなかった。結局、半分くらいに数は減らしたものの、残りの男も倒れてしまった。<br><br>待つんだ。<br>事が終わるのを待てば、交差点を通ることができる。菊斗の隠れている場所は、絶対彼らに見つかるはずがないから。<br><br>くそっ、なんて無力だ…<br>最初から菊斗も一緒に戦うという選択肢もあったが、菊斗には彼らと立ち向かえる勇気などない。<br>人が傷つくことはいやだ。だけど、傷つけるのはもっといやだった。<br>菊斗はただ待つことしかできなかった。<br><br>「トントン…」<br>その時、バスのドアのほうから、足音が聞こえた。<br>もう一人、バスの中に人がいたのだ。<br><br>男たちの仲間だろうか。…いや、それにしては足音が小さすぎる。<br><br>バスのドアから恐る恐る姿を現したのは、小さな女の子だった。
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<link>https://ameblo.jp/cris0302/entry-11987501800.html</link>
<pubDate>Mon, 09 Feb 2015 00:35:40 +0900</pubDate>
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