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<title>街ネズミのブログ</title>
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<description>うちの子のちょっとしたお話を気の向くままにうちの子についてTwitter:街ネズミ(https://mobile.twitter.com/sousaku_nezumi)</description>
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<title>小さく強い意思</title>
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<![CDATA[ <br><br><br>―お主は、何故強くなりたいのか？<br><br><br><br><br>刀に付いた汚れを払い鞘に納める。今しがた、森を荒す不届き者を始末したところだ。正直なところあまり争い事は好きではないし、手荒なことも出来ればしたくないと思う。況してや破壊するために刀を振るいたいとは思わないのだ。そんなことを考えながらボーッと目の前に横たわる息絶えた其を眺める。<br>ガサガサと草木を揺らす音にゆっくりと後ろを振り返る。<br><br>｢う、うわあああぁぁ･･･！｣<br><br>数人の子どもの叫び声共に慌ただしくこの場を去る足音が聞こえた。<br><br>｢今のを見ておったのか･･･。｣<br><br>不届きも者とは言えど、姿かたちの有るものを惨たらしく切り捨てる様を見ていたのだ。さらにその遺体を眺める様など子ども達の目には、自分の方がよっぽど悪者に見えただろう。<br>小さく溜め息をつき、遺体の回収をしようと腰を落とす。血の海に横たわる其に手を伸ばしたその時だった、再び草木がガサガサと音を立て、自分の前に一人の人物が飛び出してきた。<br>燃えるような赤毛に新緑の瞳。先程の子ども達と年頃も変わらないであろう少年が自分の前に立ちはだかる。いかにも子どもらしい穢れを知らない瞳で真っ直ぐとこちらを見据える。手には太めの木の枝を握りしめている。頬に貼られた絆創膏からこの少年のやんちゃさが見てとれた。<br><br>｢おい、そこの天パ野郎･･･俺の仲間に手ぇ出してんじゃねーぞ？｣<br><br>飛び出してくるなり少年は捲し立てる。どうやらこの少年も自分のことを悪者であると勘違いしているようだった。小さな両手で木の枝を握りしめこちらを威嚇する。しかしそんな少年を無視して再び遺体に手をかける。<br><br>｢おい！無視してんじゃねーぞ！｣<br><br>その様子を見た少年がさらに捲し立ててくる。<br><br>｢坊主よ･･･そのような木の枝１つで、わしのような大人相手に何ができる？早くこの場を去るんじゃな。｣<br><br>そんな様子を一瞥し小さく息を吐くと、悪者であるということは否定せずに静かに呟く。<br><br>｢ダメだ！俺が逃げたらあいつらが危ねえ･･･！｣<br><br>あいつらと言われ考える。先程慌ただしくこの場を立ち去った子供たちの事だ。<br><br>｢あやつらは友か？仮にわしがあやつらに手を出したとしても、お主にそれを止める手立てはない。大人と子どもでは力の差が歴然じゃ。命が惜しければ大人しく去れ。｣<br><br><br>なかなか引こうとしない少年に、殺気を放ちながら刀に手をかける。もちろん抜く気はない。相手を牽制するためだ。しかし逆効果だったようだ。<br>少年の士気は高まり、先程にも増して鋭い目付きでこちらを睨む。小さな身体は私の放った殺気に怯んでいるようだったが、その足はその場に踏みとどまっていた。<br><br>｢俺は逃げねえ、後悔しない生き方をするって決めた。俺が逃げたことによってあいつらを失うことになるくらいだったら、例えお前に勝てる可能性がすげー少なくても、死んでも俺が絶対ここでお前を止める！｣<br><br><br>"後悔"という言葉に心が動く。<br><br>自己犠牲なんてエゴだ。<br>自分を犠牲にしてしまっては、後悔することさえも出来ない。<br>本当に守りたいモノは自分を犠牲にしても守ることは出来ない。<br>結局、力がなくては何も出来ない。<br>そんなことは嫌と言うほど感じてきた。数年、数十年、数百年と生きるうちに、何度失い、何度後悔し、何度強くなったことか･･･<br>それでも後悔は尽きない。いつまで経っても失う一方である。<br>まだ何も知らない少年はそんなことを簡単に口にする。まるでかつての自分を見ているようだった。<br><br><br><br>―――刀を抜く。<br><br><br><br>鞘から抜かれた刀は日の光を受け鋭く光る。ゆっくりとその刀身に映る自分と、目を合わせながら刀を構える。その様子を見て、この赤毛の少年は木の枝をぎゅっと握り直す。もちろん切るつもりはない。もしかしたら未だに見つけられないでいる答えをこの少年に求めたのかもしれない。この少年の剣を受け止めたいと思った。<br>刀に力を込める。まるでそれが合図になったかのように、少年が木の枝を振りかざし飛びかかってくる。<br><br>最初の一太刀目を軽く右に躱す。当たり前だが少年の振りは大きく、太刀筋が丸分かりである。<br>自分は刀を振るうまでもなく、次々と浴びせられる少年の斬撃を躱すことに徹した。<br>それでも少年は諦めることなくこちらに食い付き、攻撃を止めなかった。<br>やがて少年の小さな身体が息をあげ始める。その様子を見て再び刀を真っ直ぐ構え、ひたすらに少年を見据える。<br><br>｢坊主よ正面から来い。｣<br><br>その言葉に少年も上がっていた息を整えると、手に握る気の枝を握り直す。<br><br><br><br><br>｢お主は、何故立ち向かう？｣<br><br><br><br><br>｢さっきも言っただろ。大切なもんをこの手で守るためだ！｣<br><br><br><br><br>そう言うと少年は勢いよく振りかぶる。結果は言うまでもない、刀と木の枝、大人と子供では力の差は歴然である。<br>少年の斬撃を受け止めた私の剣の勢いに跳ね返され、少年の手から気の枝がこぼれ落ちる。それと同時に少年の身体は大きく後ろに反れそのまま勢いよく倒れる。<br>びちゃっと鈍い音を立て、少年の身体は大地に沈んだ。<br>どうやら先程始末した不届き者の傍らに倒れたらしい。<br><br>血の海に腰をつく少年を見て申し訳ないと思ったのも束の間、次の瞬間全身の血がカーーッと熱くなるのを感じた。<br><br>｢こんくらいでやられてたまるか。ぜってー負けねぇ･･･！｣<br><br><br>次の瞬間少年は血の海の傍らに放置されたままになっていた真剣を手に取る。小さな身体に余る大きな刀を振りかざし向かって来ようとする―――<br><br><br><br>｢それは人を守るための道具ではない！！｣<br><br><br><br>気付いたときには大きな声で叫び、そして構えられた少年の刀を力強く殴り払っていた。刀を強く握っていた少年もまた、そのまま刀と一緒に吹っ飛ぶ。やがて宙に浮いた少年の身体は近くの古木にぶつかると鈍い音をたてて崩れ落ちた。<br><br><br>やってしまった。<br><br><br><br>――――――――――<br><br>うわああああっ<br><br>近くで少年たちの悲鳴が聞こえる。あいつらは無事に逃げ切れただろうか？<br><br><br><br>｢うっ･･･｣<br><br>全身に鈍い痛みを感じ、ぼんやりとした意識の中から呼び起こされる。<br>ゆっくりと瞳を開くと、ゴツゴツとした岩肌が目に留まる。自分が身体を預ける背中もまた、少しボコボコしていてひんやりと冷たく、ここが洞窟の中であると分かった。<br><br>｢坊主よ、気が付いたのか？｣<br><br>突然かけられた声に驚き、首を左右にキョロキョロと振ると、洞窟の入り口に位置する場所に一匹の狼が佇んでいるのが見えた。<br><br>｢････狼？｣<br><br>よく見ると普通の狼よりも幾分か大きく、毛並みは美しく、淡く緑色に輝いていた。そもそも人の言葉を話している。俺は知っている、彼らは精霊と呼ばれるものの類いだ。<br><br>｢狼･･･とは少し違うな。｣<br><br>その言葉で確信に変わる。<br><br>｢じゃあ精霊ってわけだな。｣<br><br>｢ほう･･･精霊を知っておるのか龍の子よ？｣<br><br>なっ･･･そう言われ驚く。今は人の姿をしているし、人形(ヒトガタ)をとるのは苦手ではない。 <br><br>｢何年も生きておれば見破るなど容易いことだ。｣<br><br>口に出す前にこちらの表情を読んだ彼が答えた。そうか、と小さく息をつき肩を落とすと、ズキッと鈍い痛みが背中にかけて走った。<br><br>｢････ってぇ<br><br>｢まだ動かぬ方が良い。背中を強く打ち付けておる。しばらくは安静にしていなさい。｣<br><br>言われて先ほどまでの出来事を思い出す。<br><br>｢は！！あの天パ野郎は？！あいつらは無事に逃げ切れたのか？｣<br><br>そういうと目の前の狼はすうっと目を細めた。やがて一息つくと、ゆっくりとした調子で話し出す。<br><br>｢わしが駆け付けた時には倒れているお主以外は誰もいなかった。少年たちは無事じゃ。｣<br><br>そう言われるなり勢いよく立ち上がる。全身に刺すような痛みが走ったが、構わずそのまま入り口へ向かおうとする。<br><br>｢待ちなさい･･･！安静にしておれと言うたじゃろうが。｣<br><br>しかしすぐに彼が入り口をその身体で塞ぐ。<br><br>｢おい、どけよ！！｣<br><br>大きな声で叫ぶ。<br><br>｢何を急ぐ？少年たちは無事じゃと言うておるだろうが････。｣<br><br>｢何を根拠に無事だと言える？天パ野郎を取り逃がしてる時点であいつらの身は安全とは限らねえ･･･っ！｣<br><br>大きな声を出したためなのか、突然動いたためなのか、立っていられないほどに身体が痛み出す。たまらずその場に崩れ落ちてしまった。<br><br>そんな様子を見た彼はこちらに寄ってくると、俺の背中に軽く鼻を押し当てる。とんっと軽く押し出された感触を感じると、痛みが嘘のように引いていくのが分かった。<br><br>｢･･･っ<br><br>どうやら自分は思ったよりも強く身体を打ち付けたらしい。<br><br>｢お主のことを心配した子ども達が戻ってきた。わしはそやつらを安全な場所まで送り届けた。その場所を動かぬ限りは安全じゃ。何より････いや、違うな。お主は何故そうまでして守ることにこだわる？｣<br><br>こちらが口を開く前に彼に話しかけられる。<br><br>｢･･････俺の力が及ばずに大切なものを失うのはもう嫌だ。｣<br><br>本当は今すぐにでも走りだしたかったが、彼の言うように今の自分の身体ではそれは困難な事のようだ。そこで一旦は彼の言葉を信じ質問に答える。<br><br>｢失う悲しみや辛さを知っておるのか？大切なものとは何じゃ？それはお主一人の力で守りきれるものなのか？｣<br><br>｢友達も仲間もみんなだ。････今の俺じゃ無理だ。俺は弱え･･･だから強くなりてえ。｣<br><br>妙に詰め寄られる事に違和感を覚えつつも彼の質問に答える。<br><br>｢強くなったら仲間のためにどうする？目の前に憎い仇が現れたら？例えばわしがあの時の奴だと知ったらお前はどうする？｣<br><br>俺は放たれた凄まじい殺気に身を強ばらせた。<br><br>――――――<br><br><br>――仲間のためにわしを殺すのか？<br><br><br>そう、少年に問いかけながら地狼の姿を解き、ヒトガタへと戻る。少年は身体を強ばらせ驚いたように目を見開いていたが、すぐに強い視線でにらみ返してきた。<br><br>｢殺さねえよ。｣<br><br>少年はすぐに答えた。何故？そんな風に答えられるのは少年がまだ若いからである。少年はまだ世界を知らない、戦争を知らない、戦うことの意味を、武器を手にすることの意味を知らない。やはりこの少年に問いかけたところで答えなど出ないのだ。<br><br>｢それではダメなんじゃ、時に殺さねばならぬ時がある。すべての敵が殺さずとも追い詰めれば戦意を喪失する訳ではない。｣<br><br>｢おめえバカじゃねえのか？それじゃ意味ねーだろ？｣<br><br>続けて放たれる少年の言葉に、こちらが放とうとしていた言葉を飲み込む。<br><br>｢俺にとっておめーが敵であっても俺にお前の命を奪う権利はねーよ････どんな奴にも家族がいて、友がいて、大切なやつがいるんだよ･･･それを俺が奪っていい道理なんてねえよ。殺すための強さじゃねえ。｣<br><br>相変わらず強い口調であるが、少し俯きがちに少年はいい放った。<br>そうだ、少年の言う通りである。誰にも命を裁く権利などないのだ。"殺さずに守る"それが出来ればどれだけ素晴らしいことか。だからこそ後悔が尽きない。時に殺したことを後悔し、時に殺さぬことを後悔した。<br><br>｢相手を殺さず、仲間も傷付けさせないか？誰の命も奪われない世界････そんなのは理想じゃ。｣<br><br>本心だったと思う。特にここ最近はずっと考えていた事だ。これほどまでに長い時を生きようと答えを見つけられずにいることは山ほどあるのだ。殺さずに守ること等出来ないのだと諦めようとしていた。口に出すことで張り詰めていた何かが音を立てて崩れ去ろうとしていた。<br><br><br>｢るせえ！！！！！！！！｣<br><br>少年がこの洞窟の岩をも砕きそうな大きな声で叫ぶ。小さな身体から放たれた気に一瞬気圧され半歩後退した。<br><br><br>｢んなことは分かってんだよ。俺に力がねえことも、殺さずに守るってことが難しい事だってことも、俺が言ってることは理想なのかも知れねえ････<br>でもそれはおめーが決めた限界だろ？俺はまだ何もしてねえ、やってみないと分かんねえ･･･。例えこの後待ってる道が後悔や苦悩にまみれてようと、弱えままでいること以上の後悔はねえよ。自分の弱さに後悔する生き方だけはぜってーしねえ。｣<br><br><br>強い意思を持った少年の言葉にはっとする。自分が決めた限界･･･確かにこの問題には答えや正解、終わりなどはないのかもしれない。強さに限界はない、そのため争いもまた限界がないだろう。そこに意思を持つ生物が存在する限り、誰かが何かを守るために戦い、その中で失われる命もあるだろう。世界は広い。すべてをこの手で<br>守ることは恐らく、出来ない。しかし少年の言うように自分が強くなることをやめてしまったのであればきっと何も変わらない。危うく更なる後悔を重ねるところだった。<br><br>｢クッ･････ハッハッハッハ。｣<br><br>｢な、なんだよ？人が真面目に答えてやってるのに････！｣<br><br>よもやこんな少年に道を正される日が来ようとは･･･<br><br>｢少年よ、わしの元で修行をしてみる気はあるか？｣<br><br>刀を抜き、真っ直ぐと少年に突きつける。<br><br>｢････っ！｣<br><br>ごくりと少年が唾を飲む音が聞こえた。少年の肩が微かに震える。<br><br>｢震えておるのか？強くなりたいのじゃろう？わしも危うく忘れるところじゃったわい。己の弱さこそが一番の後悔じゃ。お主になら"これ"を教えてやっても良い。決めるのはお主じゃ。｣<br><br>そう言うと手にしている刀を寝かせ、鋭く光る刃に少年を映す。<br><br>｢････おめーはきっと悪い奴じゃねえ。｣<br><br>｢それを決めるのもお主じゃ。｣<br><br>｢あいつらが無事なのは本当なんだな？｣<br><br>小さく頷く。<br><br>｢疑って悪かった。それから手当てをしてくれて助かった。｣<br><br>そう言うと少年は腰を落とし膝をついた。真っ直ぐとこちらを見つめるとやがて深く頭を垂れる。<br><br>｢ものを頼むにはこれが流儀だ。強くなるために俺に修行をつけて欲しい。｣<br><br>見た目に似合わず義理深いところもあるものだ。<br><br>｢顔をあげなさい。この道は厳しい･･･きっとお主はこれからたくさんの後悔を重ねることになる。それでもやるか？｣<br><br>刀を鞘に納め、こちらも腰を落とすと少年の肩に手をかけ問いかける。<br><br>｢やる！さっきも言った通りだ。自分の弱さに後悔する生き方だけはぜってぇにしねえ！｣<br><br>即答する少年ににっこりと笑いかける。<br><br>｢そうか、ではさっそく身体が治ったら修行を始めよう。まずはゆっくりと療養しなさい。｣<br><br>身体を休めろと言う言葉に少し不機嫌な顔をしたが少年は黙って頷いた。<br><br>｢時に坊主よ、名は何と申す？｣<br><br>｢炎樂だ。｣<br><br>はっきりとした口調で少年が答える。<br><br>｢炎樂････強く燃える炎のような意思を持ったお主にはぴったりの名じゃな。｣<br><br>まだ少し危なっかしくもある若き小さな意思をただ素直に嬉しいと思った。<br><br><br>(完)<br><br>
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<pubDate>Sun, 24 Jan 2016 08:39:30 +0900</pubDate>
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<title>契り 3章 潜考</title>
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<![CDATA[ <br><br>ギシっと音を立てて重いドアが開こうとする。それに合わせてフォンが勢いよく扉を開く。ドアに全体重を預け、開こうとしていたであろう人物が支えを無くし転がるように部屋になだれ込む。<br><br>「ひゃあっ…！」<br><br>その人物は高級にあしらわれた朱金の絨毯の上に勢いよく顔面から突っ伏す形となった。<br><br>「イタタタ…<br><br>むくりと身体を起こし、先ほど打ち付けた顔を撫でているのはどうやら服装からしてこの宮廷の侍女のようだ。20代手前といったところか、自分とそう歳は変わらない。赤味がかった茶髪を綺麗に団子に束ね、黄色いリボンで結っている。見たところ武装の様子も無ければ敵意も見られなかった。<br><br>「これは…大変失礼いたしました。お怪我はございませんか？」<br><br>フォンもそのように判断したのか女性の前で腰を落とし手を取る。<br><br>「わああっ！ごめんなさい！私ったら昔から鈍臭くて…って…守龍さまぁ…っ？！ひゃあああ…っ！」<br><br>明るい声で話す彼女はよろよろと差し伸べられた手を掴み立ち上がろうとする。が、その手の主がフォンであることに気付くとパッと手を離してしまった。支えを失うと同時に、驚きで後ろに仰け反った彼女の身体は再び絨毯に沈むこととなった。明るいと言うよりは少し騒がしいだけなのかも知れない。<br><br>__________<br><br>「いや～本当にいろいろとすいませんでした…！エヘヘ…わっ、私はこの宮殿で給仕をしている紅花(ホンファ)です！何かご用はないかと伺いに来たところ、真剣なお話をされていたようでしたので入っていいのか迷っていたら突然扉が開いて……」<br><br>先ほどの状態に至る、というわけである。<br><br>フォンが静かに彼女を見つめる。<br><br>｢･･･え～っと、お取り込み中のようですし私はこれで失礼しますね！何かあればお呼び下さい。ヘヘッ｣<br><br>そんな沈黙に居心地の悪さを感じたのか、紅花は部屋を去ろうとする。<br><br>｢お待ちください。紅花さんはここでのお勤めが長いのですね？いくつかお伺いしたいことがあるのですが、少しお時間をいただいても？｣<br><br>フォンの言葉にドアを開けようとした手を止め不思議そうにふり返る。<br><br>｢あ、時間は大丈夫です･･･私で良ければお答えもします･･･あの、どうして私の職歴が長いと？｣<br><br>言われてみればそうだ。こんなに鈍臭い奴が職歴が長いとは思えない。何故フォンはその様なことを言うのか。<br><br>｢そちらの髪を結んでいるリボン･･･職位によって色が変えられているのですよね？黄色は勤めも長く、信頼のおける人に与えていると昔、先代の王より聞いたことがあります。確か、先代が考えられた制度だとか？｣<br><br><br>｢そ、そうなんです。いつも頑張ってる私に、と前国王様が下さって･･･親に捨てられた私を拾って下さりここまで面倒を見て下さり、まるで娘のように私に接して下さった国王様がお亡くなりになられたなんて、私信じられなくて････｣<br><br>フォンの言葉に彼女が小さく答える。<br><br>｢実は私も彼が突然病死しただなんて信じられないのです。今もその話をしていたところでした。｣<br><br>フォンはこのようなことに対して非常に器用である。優れた洞察力と巧みな話術と演技力で相手の心に取り入る。現に彼女は足を止め言葉を紡ぐ。まあ、今回に関して言えばフォンにとっても本心なのかもしれない。<br><br>｢国王様は病死ではないのですか････？｣<br><br>フォンの言葉に彼女は驚き青ざめた顔でこちらを見る。<br><br>｢まだ、分かりません。だから貴女にお話を････っ<br><br>フォンの言葉を遮り、すがるような眼差しで彼女が食らい付く。<br><br>｢私で良ろしければ協力しますっ･･･何でもお答えします････だからお願いです。真実を突き止めて･･･！もし、病死ではないとしたら･･･｣<br><br>彼女の言葉の先は言わなくとも分かる。病死や事故死以外で、これから先生きるはずであった命が奪われるということは、そこに人の意志が関わっているということになる。つまり誰かが国王を殺したということだ。<br>フォンの服を強く握り締め頭を垂れるように懇願する。微かに震える肩と声に、彼女にとって国王がどのような存在であったのかを考える。<br><br>―――――<br><br>同じ時、別の部屋でも二つの声が交わっていた。豪華絢爛にあしらわれた部屋の蝋燭は灯りを落とし、ほの暗く不気味に部屋の一角だけを照らし出す。そんな蝋燭の灯を見つめながら自分の後ろに控える人物に話しかける。<br><br>｢いよいよ明日だな。守備は？｣<br><br><br>｢え～問題なく。先日お話した通りでございます。｣<br><br>話しかけられた人物は薄ら笑いを浮かべながら問いかけてきた人物の背中に向かって答える。<br><br>｢そうか、まあお前に任せておけば間違いはないだろう･･･ところであの炎樂という者は･･･？｣<br><br>部屋は二人の話し声以外には物音ひとつ立てず、しんと静まり返っている。壁に照らし出された影だけが時折ゆらゆらと揺れ、不気味な雰囲気を醸し出している。<br><br>｢あ～･･･招かれざる客人ではありますが特に問題はないかと。｣<br><br>｢･･･と、言うと？｣<br><br>｢貴方さまが心配されるようなことは何もございませんと。｣<br><br>一瞬ピリッとした空気が張り詰め、それに合わせて蝋燭の火が揺らぐ。<br><br>｢くどいな、お前のそういう所は嫌いだ。はっきり言え。｣<br><br>｢ですから言葉の通りでございますヨ？。あの者は文字通りただの従者でしょう。彼からは魔力も何も感じませんでしたので。あ～、何なら排除しておきましょうか？｣<br><br>そう話す声は微かに先程より調子が良く、楽しんでいるようだった。そんな様子に少しの不気味さすら覚える。<br><br>｢いや、脅威にならないのであれば問題はない。それに今問題を起こして明日の式典が中止になっては元もこもないからな。お前が大丈夫と言うのであれば信じよう。｣<br><br>その人物は満足げに微笑むと顔をあげ、自分のすぐ横の壁に掛けられた写真を見つめる。十数枚の写真が見事な額に縁取られ静かに列を連ねている。端の物は色褪せ古びていて触ると今にも崩れそうである。いや、実際には崩れる訳が無いのだが、それほどに古く歴史有るものなのだ。そう、壁に掛けられているのは歴代の王の肖像である。左端からかつてこの国を治めた王達の顔が並ぶ。彼はその一番真新しい肖像に向かって微笑む。<br><br>｢やっとだよ、やっと。長かったね･･･父さん。｣<br><br>その様子を蛇は嬉しそうに眺めていた。<br><br><br>――――――<br><br>｢おい、起きろ。おい･･･｣<br><br>ゆさゆさと身体を揺らされる感覚と窓から差し込む光がまだ開かない瞳に突き刺さりイライラを募らせる。身体がまだ寝かせろと悲鳴をあげている。フォンの言葉に無視を決め込み布団に潜り込む。<br><br>｢体力だけが取り柄のバカが体力すら失ってどうする？ただの能無しだぞ。このくらいで体力を無くすなど、日頃の修行もまったく意味を為さないものだな。貴様がそんなに役立たずだとは思わなかっ･･･｣<br><br>｢ーーーーーだーーーーーーっ！うっせえな！起きるよ！起きりゃいーんだろ？？｣<br><br>フォンの言葉に思わず勢いよく身体を起こす。朝から最悪の目覚めである。相も変わらずよくもここまでペラペラと言葉が出てくるものだ。<br><br>｢早く支度をしろ。今日は昨夜も話した通り王族達による伝統ある神聖な式典だ。貴様も少しくらい身なりを整えるんだな｣<br><br>そういうフォンは既に正装を整え佇む。やっとのことで半身を起こす。大きな欠伸がひとつ、身体から逃げて行った。<br><br><br>――――――――<br><br>話は遡ること半刻ほど前。<br>フォンの提案を受け入れた紅花を交え、俺たちは再び話し合いをしていた。<br>紅花はベットの脇に置かれた小振りの椅子に腰掛ける。小降りとはいえ、王宮の一品ということもあり、背もたれには高級感漂う装飾があしらわれていた。<br>フォンはというと丁度その向い、部屋の中央に位置する柱に背を預け、腕を組み考え込むように話を聞いている。この柱もまた、汚れひとつなくこの王宮の出で立ちに相応しく、堂々と佇む。<br>俺はベットの上で胡座をかくように座り、二人の話を聞いていた。<br><br><br>｢では、次男の舜光様がお亡くなりになったときの状況はご存知で？｣<br><br>聞くところによると次男は隣国視察中に馬と共に崖から落ちるという事故死だったらしいが･･･<br><br>｢私も人伝に聞いた話なので実際のところどこまでが本当かわからないのですが、少し違和感はありました。｣<br><br>｢と、言うと？｣<br><br>フォンが促す。<br><br>｢舜光様は一族の中でも非常に運動神経の優れた方でございました。中でも乗馬の腕はお見事で、過去に類を見ないものと言われていたはずです･･･。私も何度か拝見したことがありますが、どんな馬でも乗りこなす名手という印象を受けました。｣<br><br>紅花は静かに、しかし、しっかりとした口調で言葉を話す。<br><br>｢なるほど、その舜光様が馬に股がった状態で共に崖から転落するのは考えにくいと？｣<br><br>紅花が小さく頷く。<br><br>｢周りに居た者の話では、馬が突然興奮し出したそうです。馬の興奮自体はよくあることですし、舜光さまも対処出来ないことではないはずです･･･。｣<br><br>紅花の言葉にフォンは少し考え込む。<br><br>｢馬の世話は舜光様が･･･？｣<br><br>｢いいえ。舜光様がされることもありますが、大抵は召し使いの者が当番制で行っております。｣<br><br>｢貴女や･･･拭さんも･･･？｣<br><br>｢たまに行います。他の召し使いの皆さんに比べると頻度は少ないですが･･･。特に拭様は上級召し使いですので滅多にされないです。｣<br><br>彼女の言葉にフォンが怪訝な顔をする。<br><br>｢彼はリボンをしていらっしゃらないように見えましたが？それにお勤めも私の知る範囲では最近のことかと思われます。少なくともこの５年以内･･･｣<br><br>今度は紅花がフォンの言葉に考え込む。<br><br>｢そういえば、いつからいらっしゃったのかしら？いくら皇子の付き人で、皇子の推薦だとしても位が上がるのが早いです･･･よね？｣<br><br>フォンの言わんとしている事を一つ一つ確認するように話す。王族のその辺りの仕組みは俺には分からないが、おかしいということだけは何となく分かる。<br><br>｢･････拭さんの能力は？｣<br><br>フォンが問う。<br><br>｢それは･･･優秀なものですよ。お仕事は全般問題なくこなされますし、外交なんかにもお詳しくその辺りの手助けも･･･。拭様が何かミスをされたりしているところは見たことがありません。｣<br><br>｢仕事全般と言うと、掃除や調理なんかも？･･･っ、質問ばかりして申し訳ありません。｣<br><br>気がつけば時計の針が一周しており、夜も深くなっていた。<br><br>｢いいえ、大丈夫です。掃除や調理もされます。といっても実際に行うというよりは指示をだすといったような形ですが････。｣<br><br>｢何か変わったことは？｣<br><br>｢特には･･･。拭様の考えられる献立は非常に栄養バランスも考えられており、城内の者はもちろん前国王様にも評判は良かったですし。｣<br><br>｢そうでしたか。ところで、外交というのは？｣<br><br>｢隣国との輸出入です。当国ではあまり見れらない植物の輸入をメインにされているようですね。なんでも割りの良い価格で仕入れることの出来る取引先をご存知だとか･･･。その植物は鑑賞用としてはもちろん、良い薬にもなるそうで貴族の皆様だけでなく、国民にも非常に喜ばれています。｣<br><br>｢その植物とは？｣<br><br>｢確か、アマチャと･･･。表向きは四男の舜永様の行いになっていますが、実際は殆んど拭さまが行っております。｣<br><br>紅花の言葉にフォンがしばらく考え込む。少しの沈黙が流れどこか落ち着かない。やがて何かを思い付いたように顔をあげ口を開きかける。が、一度言葉を飲み込み小さくため息をつく。少し間をおいてから今度は遠慮がちに紅花に問う。<br><br>｢････前国王様が亡くなられたときの様子は･･･ご病気のご容態は･･･？｣<br><br>前王を慕ってると言った紅花への気遣いだろう。彼女は一瞬ぴくりと動いたが相変わらず落ち着いた調子で答える。<br><br>｢先程は気が動転して、謀反の疑いなどを申し上げましたが、国王様に関しては間違いなくご病気だと思います･･･。毎日少しずつ、ほんの少しずつお弱りになっていかれましたので･･･。毎日、毎日お側についておりましたので間違いないかと･･･。｣<br><br>俯きがちに話す彼女は、落ち着いた様子ではあったが、先程よりも紡ぐ言葉ひとつひとつはゆっくりと、小さいものだった。<br><br>｢そいつはおめえにとって父ちゃんみたいな存在だったんだな。｣<br><br>そんな彼女の様子に思わず言葉が出る。<br>俺の言葉に彼女がはっとした表情でこちらを見上げる。その目からはたくさんの涙がこぼれ落ちる。何か言おうとするが言葉にならない。まずいことをした、フォンに咎められる！とフォンの方を見たが彼もまた悲しそうに、そんな彼女を見つめていた。<br><br>｢･･･っ。｣<br><br>俺が言葉を発しようとするのフォンが手で制止する。紅花の元へ歩みよりそっと肩に手をおく。<br><br>｢辛いお話をさせてしまい、もうしわけありません。｣<br><br>｢い、いえ･･･あの、私の方こそすいません。あの･･･｣<br><br>｢紅花さん、自分で呼び止めておいてこんなことを言うのも何ですが、今日はお部屋に帰ってお休みください。明日は昇冠式もありますので貴方も忙しくされることでしょう？長いお時間引き留めてしまい申し訳ありません。いろいろとお聞かせ下さりありがとうございました。｣<br><br>フォンが深く頭を下げる。<br><br>｢それから･･･<br><br><br>｢貴女にとって大切な国王様が守ろうとしていたこの国を、私も必ず守り抜いて見せます。｣<br><br>以前のフォンならそんなことは言わなかっただろう。これも心情の変化だろうか？それとも自分が知らないだけで元々フォンもそういう性格をしていたのだろうか？<br>そう呟くフォンの瞳には強い光が宿っていた。それが怒りであると理解することが出来たのは自分も同じ気持ちだからだろう。<br>卑劣なやり方で国民を傷つけ、国民から王を奪ったその人物に対する。<br><br><br>――――――<br><br>紅花を落ち着かせ見送った後、あらためて一息つく。<br><br>｢おめえはどう考えてんだよ？｣<br><br>俺は難しいことは苦手なので率直にフォンに訪ねる。<br><br>｢彼女はああ言っていたが、恐らく国王は病死ではないだろう。･･･私は確認すべきことがあるから少し出る。貴様は身体を休めておけ。｣<br><br>そう言いながらフォンはすでにマントを羽織りドアへと向かう。<br><br>｢あ、おい。待てよ！どこ行くんだよ？｣<br><br>フォンがドアノブへ手をかける。<br><br>｢貴様は･･･いい。明日は自分の思うように行動してくれ。それに、私がいない方がゆっくり眠れるだろう？｣<br><br>そう言ってフォンは出ていってしまった。<br><br><br>そして現在に至る。<br>昨夜結局フォンが帰ってきたのかどうかは分からない。<br><br>｢調べものはお目当てのもんが見つけられたのかよ？｣<br><br>ベッドから腰をあげ、服を着替えながらフォンに向かって話しかける。<br><br>｢まあな････。｣<br><br>そういうフォンの表情から察するにあまり朗報ではないらしい。<br><br>｢今日の式典、何事もなければいいがな･･･着替えたな？｣<br><br>フォンの催促され慌てて入り口へ向かう。ドアから出る前に一息つく。昨日の紅花のことが頭に思い浮かびドアノブにかける手に力が籠る。<br><br>｢ほんとに思うように行動して構わねえんだな？｣<br><br>フォンがあぁと小さく頷いた。深呼吸をすると気合いをいれてドアを開き、フォンとともに一歩を踏み出す。<br><br>｢行くぞ。｣<br><br>フォンの言葉とともに俺たちは大広間へと続く長い廊下をゆっくりと歩きだした。<br><br>&lt;続&gt;
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<link>https://ameblo.jp/cyuta000/entry-11992037343.html</link>
<pubDate>Thu, 19 Feb 2015 21:34:56 +0900</pubDate>
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<title>契り 2章 訪問</title>
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<![CDATA[ <br>「突然のお声掛けで申し訳ありませんね～。」<br><br>ガタガタの揺れる馬車の中で拭と名乗る男は言う。あの後、我々は門の脇に停めてある馬車へと案内された。王宮まではこれで連れて行ってくれるらしい。<br><br>「いえ…そちらこそ突然の皇帝の病死でいろいろと大変な時期でしょう？」<br><br>そう言うと窓から外の雑踏に目をやる。<br><br><br>＂国王様が突然の病死なんて…あんなに元気でいらしたのに…。"<br>"これで王位を告げるのは四男の舜永様だけらしいぞ？"<br>"舜永様が王位を継がれるなら安心だわ…！"<br>"しかし、国を任せるにはまだまだ若くないか…？"<br>"王家の人間で舜永様だけが元気だなんて本当は養子じゃないかって言われてるそうよ？"<br>"あら？王家にはもう一人いるでしょう？確か……"<br>"あぁ…娘か…しかし女の皇帝なんて聞いたことないぞ？国を任せるなんて…"<br><br>街の端では王の突然の病死に国民たちの噂話が絶えない。不安や戸惑いといった感情が渦を巻いている。<br><br>「いや～国民の皆様は噂好きで困りますね。」<br><br>そう言う彼の表情に困った様子は微塵も感じられない。むしろ現状を楽しんでいるかのようだ。あからさまに造られた笑顔を向ける。<br><br>「こんな状況です。国民達が不安がるのも当然ですよ。」<br><br>そんな彼の様子にこちらも笑顔で言葉を返す。<br><br>「それもそうですねぇ…まあ明日の式典で舜永様が即位され貴方とのご契約を交わされれば国民たちの不安も少しは解消されるでしょう………。」<br><br>そう、華の国では明日、第四皇子舜永の王位継承式が行われる。先代の突然の病死に遺言もない今、彼が王位を継がざるを得ない状況というわけだ。そして彼が王位を継承すると共に、私はこれからもこの国を守ることを新たな王の前で誓う約束になっている。<br><br>「それにしても…ワタクシ、守龍様というのには初めてお会いしましたが驚きですねえ。こんな風に人の姿をしておられるなんて…。」<br><br>黙っていると拭が口を開く。<br><br>「よく言われます。まあこの方がいろいろと都合がいいんですよ？」<br><br>まとわり付くような彼の喋り方に少しの警戒心を抱きつつも笑顔で話しをする。<br><br>「あ～それもそうですね～。」<br><br>龍のお姿だとこの馬車にも乗れませんねと言いながらケタケタと笑うこの男の目はやはり笑ってはいなかった。<br><br>__________________<br><br>拭とか言う男と話すフォンの声をうっすら聞きながら窓の外に目をやる。華の国には初めて来たがなかなか良い国のようだ。流通都市と言われるだけあり、広場には多くの出店が立ち並ぶ。多くの人が行き交い働いている。普段であれば活気溢れる街なのであろう…しかし現在は2人の言うように国王の急死により不安で溢れかえっている。<br><br>それにしても…毎度ながらこいつの演技っぷりは見事だと、拭と笑顔で話すフォンを見ながら思う。まったく…普段のこいつの姿を見せてやりたいもんだぜ…しかし口には出さない。どうせめんどくせーことを言われるに決まってる。<br><br>「ところで…そちらの方は？」<br><br>拭が俺に目を向け問う。<br><br>「この者は私の従者のような存在で名を炎樂と申します。」<br><br>フォンが笑顔で答える。<br><br>「なっ…！てめぇ誰が従っ……<br><br>フォンの言葉に噛み付くもすかさず口を覆われ残りの言葉を飲み込む。それでもなお反論しようとしたが口を覆う手に込められた力が増すと同時に殺気が背筋を刺す。恐る恐る横目でフォンを見ると「余計なことを言うな。」と顔に書いてあった。<br><br>「けっ！！」<br><br>フォンは無意味な嘘はつかない。おそらく何か考えがあっての事だろう。従者というところは気に食わないがここは一つ俺が大人になって言葉を飲み込む。<br><br>「威勢のいい従者さんですね～いやあワタクシとは大違いですね～」<br><br>そんな様子を拭は楽しそうに見ていた。<br><br>「大変失礼しました。」<br><br><br>「そんなに畏まらなくていいんですよ。ワタクシは仕える身分のモノですし。」<br><br>「それに、アナタのような人は嫌いじゃありませんよ？同じ仕える身のモノとして仲良くなれると嬉しいです。」<br><br>そう言って俺に笑顔を向ける。<br><br>「……そーかよ。」<br><br>ねっとりとまとわり付くような言葉使いと掴み所のない性格に俺はなんとなく苦手意識を覚え、曖昧な返事と共に目を反らす。<br><br>「申し訳ありません。この者はあまりこういった場に慣れておりませんもので…ところで舜永様にお変わりはなく？」<br><br>「あ～いいんですよ。舜永様はとても元気でいらっしゃいますよ。今も亡き先代に代わって忙しく働いておいでです。」<br><br>フォンの言う通り俺はこういう場は苦手だ。特にこの拭という男は話し辛く居心地が悪い。今回はフォンの社交力とやらに身を委ね俺は大人しく窓の外を流れる景色を見ていた。<br><br>＿＿＿＿＿＿＿<br><br>数十分ほどで馬車は宮殿の門へと到着した。馬車から降り宮殿を見上げる。国門と同じく大理石を基調に豪華な装飾の為された城壁は何百年も前から変わらない。壁のあちこちには立ち昇る龍が描かれている。この国は我々龍との付き合いが非常に根深い。横に目をやると炎樂も同じように城壁を見上げていた。<br><br>「大変お待たせ致しました、こちらへどうぞ～。」<br><br><br>拭に案内され城内へと通される。<br><br>「明日の継承式はこの奥の王の間にて開催されます。定刻には迎えのモノを遣わせますので…<br><br>「遠路遥々ご足労ありがとうございます。長旅は疲れましたでしょう？」<br><br>城内の説明を受けながら王広間へと繋がる広く仲長い廊下を進んでいると向こうから深い藍色の髪を金具で束ね優美な衣装をまとった男が現れた。華の国第四皇子の舜永である。<br><br>「あ～、舜永様…ワタクシが責任を持ってご案内致しますのでお部屋でお待ちくださいと申しあげましたのに。」<br><br>「守龍様が遠路はるばる足を運んで下さったのに部屋で待っている訳にはいかないよ？」<br><br>「お久しぶりにお目にかかります。華の国第四皇子の舜永でございます。10年ぶりぐらいでしょうか？」<br><br>間延びした拭の言葉にも笑顔で返すと此方へ向き直り丁寧な動作で両手を下に向けて合わせ挨拶をする。<br><br>「こちらこそお久しぶりでございます。私が最後に舜永様にお会いしたのは貴方様がまだ十の時ですので…もう15年ほどになりますね。」<br><br>こちらも華の国の作法にのっとり挨拶をする。<br><br>「15年…時が経つのは早いものですね。」<br><br>「そうですね…父上様のこと、お悔やみ申し上げます。」<br><br>先ほどよりも深く一礼する。<br><br>「お気遣いありがとうございます。父を亡くしたショックは大きいですが、今は父のためにも国の為にも頑張りたいと考えております。」<br><br>こちらも丁寧に頭を下げる。ゆっくりと顔をあげ真剣な眼差しでこちらを見据える。<br><br>「ところで、そちらの方は？」<br><br>舜永が炎樂を見て言う。<br><br>「この者は私の従者のようなもので…<br><br>「炎樂だ。」<br><br>先ほどと同じように紹介しようとすると炎樂が割って入る。帰ったらこいつに社交マナーを一から叩き込む必要があるなど考えながら炎樂を一瞥する。<br><br>「生意気な奴で申し訳ございません…。」<br><br>文句を言いたげな炎樂の頭を無理矢理掴み一礼させる。<br><br>「フフッ…私のところの拭とは正反対ですね？」<br><br>「舜永様それはどういう意味ですか～？」<br><br>「もちろんいい意味だよ。…っといけない、少し立ち話が過ぎましたね？お部屋をご用意いたしました。お疲れでしょうしゆっくりお休み下さい。拭、ご案内を。それから従者様の分のお部屋の用意も。」<br><br>「あ、いえ。この者は私と同じ部屋で結構ですよ？」<br><br>横で炎樂の絶叫が聞こえた。<br><br>＿＿＿＿＿＿＿＿<br><br>ありえねぇ！ありえねぇ！ありねぇ！！！<br>何が楽しくてこんな奴と同じ部屋で一泊もしなければならないのか…！しかし俺の必死の訴えも左腕に付けられた腕飾りを前に虚しく取り下げられる。<br><br>「そういうや、これ爆発すんだったな……くそっ！！んなもん付けなければ良かったぜ！」<br><br>あれから拭に案内され客間に通された。明日の継承式まではゆっくり休むように言い残し拭も部屋を去る。今は客間にこいつと二人きりというわけだ。<br><br>「おい、てめえ…話が違うじゃねーか？どこに敵がいんだよおい？？？？」<br><br>俺の気も知らずに奴は悠々とマントをたたみ始める。だいたいこいつも俺と同じ部屋なんか嫌がるはずだ。<br><br>「………50歳の今まで病気などなかった国王が1年を待たず突然病死すると思うか？」<br><br>「は？」<br><br>まただ。こいつはいつも質問の答えになってねえ意味のわかんねー難しいことを言い出す。<br><br>「運動神経抜群と言われていた青年が馬とともに崖から転落すると思うか？数年と経たず、その弟が病死すると思うか？」<br><br>まだこいつの言葉の意味が分からず頭を捻る。<br><br>「国王を失ったこの国は不安で満ち溢れている。すぐにでも国民を取りまとめる時期王が必要となってくる。」<br><br>「だーかーらーあの舜永とかいうスカした野郎が王になんだろ？」<br><br>フォンがこちらが言葉を理解したかを確認するかのらように一呼吸置く。<br><br>「本来、王位継承権とは長男から順番にある。舜永様は四男、継承権は4番目というわけだ。」<br><br>「つまりどういうことだ？ラッキーってことか…？」<br><br>フォンが呆れた顔でこちらを見る。<br>何かを言われる前にもう1度考える。<br><br>「………はぁ？おめーはあのスカし野郎がその王位なんとやらの為に家族殺したってのか…？」<br><br>「殺した…のであれば何か証拠があるはずだ。だが今回はあくまでも事故死と病死…その時の様子が詳しく分かればいいのだが……<br><br>「おめーそりゃ考え過ぎだろ？確かにあのスカし野郎はムカつく面してるけどよ、死んだオヤジの為に頑張りてえって言ってたじゃねーか！それにそんなドラマみてーな話……<br><br>突然会話を遮られる。フォンが手で静かにしろと合図をする。ギシッと床の軋む音が聞こえた。<br><br>「……ドアの前に誰かいるな。」<br><br>カチャとドアノブに手をかける小さな音がする。二人ともドアに神経を集中し身構える。<br><br>「今の話聞かれちゃまずいんじゃねーのかよ？」<br><br>「そうだな。その辺りはそこにいる奴に直接確認するとしよう。」<br><br>フォンの言葉と同時に扉が開いた。<br><br>&lt;続&gt;<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/cyuta000/entry-11932092001.html</link>
<pubDate>Mon, 29 Sep 2014 20:25:19 +0900</pubDate>
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<title>リグナの実 【読み切り】</title>
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<![CDATA[ <br><div><div>昔から周りの目が怖かった。どうやら僕は少し変わっているらしい。"烙龍"。神の失敗作とも呼ばれた。</div><div><br></div><div>本来守龍の一族は風、火、水、大地、この四つの属性から構成される。神はこれに第五の属性として雷の力を宿す龍を造ろうとした。しかしそれはとても難しいことで、僕は非常に不安定な失敗作としてこの世界に産み落とされた。</div><div><br></div><div>スカイブルーになるはずの瞳は片方だけ明るい金色に染まった。左頬には失敗作の烙印を刻まれた。自分だけが他の龍達と違う存在であるなんて幼き僕は知る由もなかった。</div><div><br></div><div>他の龍達は僕を忌み嫌った。かつてない力を宿す龍。片方だけ色の違う瞳。感情が高まると暴走する力。神に失敗作の烙印を刻まれた存在。僕のことを怖がる者もいれば、見下し馬鹿にする者もいた。同年代の龍達からは虐められたりなんかもした。</div><div><br></div><div>僕はやっと気付いた。自分がどのような存在であるのか。気づけば僕は独りぼっちだった。周りの人に瞳のことを言われるのが嫌で髪を伸ばし瞳を隠したりもした。辛くて辛くていつも一人で泣いていた…でもある日………</div><div><br></div><div>_______________</div><div><br></div><div><br></div><div>「おーい！！！雷砥！何してんだよ早く来いよ？」</div><div><br></div><div>炎樂に呼ばれハッと我に返る。雑踏の先で大きな声で手を振り僕を呼んでいる。</div><div>僕らは今、下界の西洋海沿岸に位置するパティシェン国で行われているグリュックヒール祭に来ている。聞くところによればこのグリュックヒール祭はこの1年の恩恵に感謝し、来年の国の恩恵と幸運を願う、この国で最も大きくめでたい祭事らしい。言うだけのことはあり、このケルセンの街だけでも街中の人々が祝いの旗を掲げ家先を煌びやかに花やら伝統品で飾り立てている。広場にはここぞとばかり商人たちが競い合うように自慢の商品を並べた出店が立ち並んでいる。街には昼夜を問わず音楽が流れ、人々は祭事用の豪華な服を身にまとい楽しそうに賑やかな街を行き交う。祭は7日に渡って開催され、この時期に合わせてこの国を訪れる観光客も多いようで異国の装束をまとった人々も時折見かける。街の人から見れば僕らも観光客に見えるだろう。</div><div><br></div><div>「ごめんごめん…すぐ行くよ。」</div><div><br></div><div>再度炎樂に呼ばれ短く返事をすれば少し足を早める。正直なところ人混みはあまり好きではない。昔ほど偏見や差別といった類のものは減ったとはいえ、僕の瞳は珍しいらしく時折行き交う人々が僕を振り返る。</div><div><br></div><div>人間の文化に触れるのは好きだが人間自体はあまり好きではない。これも幼少期の経験に起因する。瞳の色の違う僕を人々はやはり珍しがり捕えようとした。</div><div><br></div><div>「おい、迷子になるじゃねーぞ？それより見ろよ！これ！！」</div><div><br></div><div>ようやく炎樂の元へたどり着く。彼は一軒の出店の前にいた。嬉しそうに目を輝かせながら彼が指さす先には皿に盛られた木の実があった。真っ赤に色づく木の実からは甘い香りが漂い、一見木苺の様だが木苺に比べ一回りほど小さくその形はどちらかと言うと桃のようであった。</div><div><br></div><div>「これは…？」</div><div>「この地域の名産さ！ど～れ兄ちゃん達は特別だ。ほら、受け取れ。」</div><div>「何だ？タダでくれんのかよ！おめーいい奴だな！！」</div><div><br></div><div>炎樂と話していると、気さくな店主が会話に入ってくる。目を輝かせている炎樂を見ると、3粒ずつほどこちらにとってよこす。</div><div><br></div><div>「ありがとうございます…。」</div><div>「食ってみて気に入ったら買っていってくれよ～？」</div><div><br></div><div>店主言われ手のひらの木の実を見る。炎樂は早くも嬉しそうに口に含もうとしていた。自分も3粒ともまとめて一気に口に放り込む。</div><div><br></div><div>「…………………っ！！</div><div><br></div><div>「…………っ辛！！！！！！</div><div><br></div><div>口の中が焼ける様なあまりの辛さに言葉が出る。甘い見た目とは裏腹に口の中に広がる味は甘さなどとは程遠いものであった。舌には刺す様な痛みが走る。口を閉じていられない。しかし吐き出すのも申し訳ないので頑張って飲み込む。あまりの辛さに涙目になるほどだ。</div><div><br></div><div><br></div><div>「ブッ…ハッハッハッハ兄ちゃん良いリアクションしてくれるねえ？」</div><div>「クックックックッ…引っ掛かった引っ掛かった～！」</div><div>「なんだあ？赤髪の兄ちゃんの方は知ってたのかい？つまんないね～」</div><div><br></div><div>ハッハッハと高笑いをする店主に理解が追いつかずぽかんとしていると、したり顔の炎樂が口を開く。</div><div><br></div><div>「はあ～ほんとおめー良いリアクションするよな？これはリグナの実つってこの辺じゃ有名な激辛の木の実だ。」</div><div><br></div><div>「ハッハッハ！その通りだよ。元々はリューグナーの実って言ってな、ここらじゃもっぱらペテン師の実って言われてるよ！」</div><div><br></div><div>なるほど、リューグナーはこの地域の言葉で嘘つきという意味だったか…甘い香りで人を騙すその様はまさにペテン師と言うわけだ。</div><div><br></div><div>「まあ地元の人はみんな知ってるからね、こうやって祭の時に他の国からやって来た人を驚かすのが俺の商売ってわけだ。」</div><div><br></div><div>そして僕はまんまと引っ掛かったわけだが……</div><div><br></div><div>「炎樂知ってたんだ？」</div><div><br></div><div>まだヒリヒリとする口元を押さえながら炎樂をじとっと睨む。</div><div><br></div><div>「おいおい、怒んなよー。俺だって昔ひでぇ目にあったんだからな！」</div><div><br></div><div>「なるほどね～赤髪の兄ちゃんも昔こうやって誰かに騙されたわけだ？」</div><div><br></div><div>店主が楽しそうに笑う。</div><div><br></div><div>「そうなんだよ！しかも俺の場合こんな可愛いもんじゃねーぞ！俺なんか勧められるがままにコップ一杯分も一気に食ったんだからな？ありゃ口から火が出るかと思ったぜ…。」</div><div><br></div><div>「ブッハッハッハッハ！兄ちゃんそりゃ騙されすぎだよ。」</div><div><br></div><div>「しかもそれが俺の剣の師匠なんだぜ？これをたくさん食ったら強くなるとか言われてよ、可愛い弟子にひでぇ仕打ちだぜ……</div><div><br></div><div>炎樂と店主が楽しそうに話している。炎樂のこういう所は本当に凄いと思う。初めて会った人ともすぐに打ち解ける。種族も、年齢も、性別も、周りの目も、何一つ気にすることなく、分け隔てなく接する。周りの龍に嫌われ人間に追い回され、独りぼっちだった僕に手を差し伸べてくれたのも炎樂だった。</div><div><br></div><div><br></div><div>「じゃあ、赤髪の兄ちゃんはこの実のもう一つの秘密も知ってるってわけだ？」</div><div><br></div><div>「あたりめーだろ！だから早くくれよ？」</div><div><br></div><div>少し物思いにふけっていると炎樂の大きな声でまた現実に引き戻される。</div><div><br></div><div>「はいはいはい、まあ待ちな！すぐ用意するからよ？」</div><div><br></div><div>そう言うと店主は何やらゴソゴソと机の下を漁っている。炎樂はイタズラを目論む子どものごとくキラキラとした目をしている。嫌な予感しかしない。</div><div>店主はミキサーの様なものを取り出すとそこにたくさんのリグナの実を放り込み水を入れる。スイッチを入れると瞬く間に木の実は砕かれ水はクランベリーのような赤色に染まる。</div><div><br></div><div>「これがよ、ジュースにするとまたうめぇんだぜ？」</div><div><br></div><div>「もう騙されないよ？」</div><div><br></div><div>「まあ、そう警戒せずにとりあえず飲んでみろよな！」</div><div><br></div><div>そう言うと丁度店主がコップ注がれたジュースを手渡して来た。僕は恐る恐る受け取り、コップから立ち上る香りを嗅ぐ。やはり甘い香りがした。しかし中身はあの激辛木の実だ。もう一度炎樂をチラリと見る。その顔は相変わらずイタズラ坊主の顔だ。僕が飲むのが楽しみで仕方がないといった様子に僕は小さくため息をつくと思い切ってジュースを口に含む。</div><div><br></div><div><br></div><div>「………………！</div><div><br></div><div>「どうだよ？」</div><div><br></div><div>「…甘い…それから、凄く美味しい…」</div><div><br></div><div>「だろ？？？な！俺の言ったとおりじゃねーか！」</div><div><br></div><div>炎樂が得意げに笑う。炎樂の言うとおりジュースにすると辛さが嘘のように消え、果実の甘みが口いっぱいに広がり非常に美味しいかった。</div><div><br></div><div>「これがペテン師の実と言われるもう一つの由縁さ！」</div><div><br></div><div>店主もまた得意げに笑う。</div><div><br></div><div>「さっきはあんなに辛かったのに。」</div><div><br></div><div>「ハッハッハ！だろう？こいつは不思議なもんで、ミキサーみたいなもので激しくかき混ぜると辛味が飛んじまうのさ！甘いけど辛い。でもやっぱり甘い…まさに人を騙し惑わすペテン師だよ。そして俺の商売も成功ってわけだ。」</div><div><br></div><div>「？」</div><div><br></div><div>店主の言葉の意味が飲み込めず首を傾ける。</div><div><br></div><div>「兄ちゃんみたいなリアクションが嬉しいのさ！騙しがいがあるってもんだ。2度驚いてもらって最後にはまんまと引っ掛かったな～って笑顔で帰ってもらう。そしてこうやって赤髪の兄ちゃんのようにその人がまた誰かを連れて帰って来てくれる。また人々をあっと驚かす。商品は売らなくとも素敵な商売だと思わねえかい？」</div><div><br></div><div>店主が高らかに笑う。確かに店主の言うとおり、最初の辛さには驚きムッとしたもののなんだかんだで先ほどより祭りを楽しんでる自分がいることに気づく。これは店主の人柄のおかげだろうか？それとも楽しげな祭の空気に酔い少し気分が高揚しているのだろうか？</div><div><br></div><div>「そうですね。」</div><div><br></div><div>騙されたのに楽しいと思っている自分が可笑しくて思わず笑みがこぼれる。</div><div><br></div><div>「んじゃ、ちゃんと楽しませてもらったお代払わねーとな！おっさん、ジュースをボトルで2本と実の袋詰めを1つくれ。」</div><div><br></div><div>「ジュースはともかく、こんなたくさん実なんかどーすんだい？こいつの辛さは嫌という程体感しただろうがよ？」</div><div><br></div><div>「へっへっへ、食べさせたいやつがいんだよ。」</div><div><br></div><div>「プレゼントかい？ハッハッハ！そりゃもらった方はびっくりだろうよ！」</div><div><br></div><div>まさか…とは思ったが炎樂の考えてる事は手に取るようにわかる。</div><div><br></div><div>「これもって帰ってフォンに食わそうぜ？」</div><div><br></div><div>やっぱり。まずフォンは炎樂からの怪しげなプレゼントには口をつけないだろう。万が一食べた場合には炎樂はタダでは済まないだろう。</div><div><br></div><div>「あいつがこれ食って火吹くとこ想像しただけで笑えるぜ。」</div><div><br></div><div>しかし炎樂があまりにも楽しそうなので口に出すのは辞めた。もしフォンが食べてしまった時には、今の自分がそうしてもらったように自分がジュースにしてあげようなどと考える。</div><div><br></div><div>「はいよ！こいつはオマケだ。」</div><div><br></div><div>店主が袋に詰めたリグナの実と一緒に紙切れを渡す。開くとそれはリグナの実のジュースのレシピだった。</div><div><br></div><div>「これは…」</div><div><br></div><div>「いいんだ受け取ってくれ。兄ちゃん達には楽しませてもらったしな！」</div><div><br></div><div>「お、サンキューな！」</div><div><br></div><div>「赤髪の兄ちゃんのプレゼント相手にちゃんとジュースも紹介してやってくれよ？」</div><div><br></div><div>店主に耳打ちされ、先ほどの辛さを思い出し苦笑いする。</div><div><br></div><div>「そうですね。」</div><div><br></div><div>炎樂に聞こえないように小さく返事をする。</div><div><br></div><div>「じゃあ、おっさんいろいろと世話になったな！」</div><div><br></div><div>「おう！こちらこそ。毎度あり！よかったらまた来てくれ、兄ちゃん達にはサービスするぜ？」</div><div><br></div><div>「ありがとうございます。」</div><div><br></div><div>炎樂とともに小さく会釈をし店を後にしようとする。</div><div><br></div><div>「あ！兄ちゃん達はまだ祭まわんのかい？だったらここからまっすぐ500メートルほど行ったところに宝石屋があるんだが、ぜひ立ち寄ってくれ。俺の知り合いがやってるんだが、オススメだ！きっと楽しませてくれるぜ？丁度金髪の兄ちゃんの瞳みたいに綺麗な宝石も置いてるよ。」</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>店主の声に振り返る。</div><div>店主が二カッと歯を見せ笑う。</div><div><br></div><div><br></div><div>「綺麗な瞳だってよ？よかったな！」</div><div><br></div><div>炎樂が得意げに笑う。店主の言葉が胸に広がり熱くなる。僕は立ち止まり店主に向き直る。</div><div><br></div><div>「ありがとうございます…！！！」</div><div><br></div><div><br></div><div>大きな声でお礼を言い深くお辞儀をする。</div><div><br></div><div>「おう！！立ち寄ってみる！おっさん何から何までサンキューな！！！」</div><div><br></div><div>炎樂もまた大きな声で返事をし笑顔で手を振る。</div><div><br></div><div>「祭、楽しめよ～！」</div><div><br></div><div>店主に見送られ今度こそ店を後にする。</div><div><br></div><div><br></div><div>炎樂と共に賑わう雑踏をかき分け進む。</div><div>昔から周りの目が怖かった。だから人混みはあまり好きではない。</div><div><br></div><div>「お祭りもたまには悪くないね？」</div><div><br></div><div>炎樂と共にくる祭は初めての事ばかりで胸が高鳴る。炎樂を通して触れ合う暖かい人々。まだまだ人間のことは好きにはなれないが昔と今は少し違うのかもしれない。先ほどの店主の言葉を思い返す。</div><div><br></div><div>「あたりめーだろ！？今日は特別な日なんだからよ？」</div><div><br></div><div>特別な日か…炎樂に言われ行き交う人々に目を向ける。いつもは遠慮がちに向ける眼差しも今日は逸らさない…のは先ほどの店主の言葉のおかげだろうか？それとも楽しげなお祭りの雰囲気に酔い気分が高揚しているからだろうか？楽しげな空気を身体いっぱいに感じ取る。</div><div><br></div><div>「宝石屋さんってどんな人だろうね？」</div><div>「あのおっさんの知り合いだからぜってぇ変な人だぜ？」</div><div>「フフッ楽しみだね？」</div><div><br></div><div>宝石屋さんとは僕も頑張って話してみよう。そんなことを考えながら店主にもらったジュースを飲みながら、いつになくワクワクした足取りで賑やかな雑踏を進む。</div><div><br></div><div>今日は特別な日だ。</div><div><br></div><div>〈終〉</div><div><br></div></div>
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<link>https://ameblo.jp/cyuta000/entry-11902359495.html</link>
<pubDate>Wed, 30 Jul 2014 22:22:43 +0900</pubDate>
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<title>アンモビウム 2章</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>夢の中で記憶が駆け巡る。春風が語りかけるように遠くから彼女の声が聞こえる。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>「フォンは普段何をして過ごしているの？好きな食べ物はなあに？」</div><div><br></div><div>「ねえフォン、精霊って本当にいると思う？私はいると思うわ！」</div><div><br></div><div>「楽しいわよ？だって話を聞いてくれるのがフォンだから…！」</div><div><br></div><div>「おはよう、フ…ォ………</div><div><br></div><div><br></div><div>よく私の名前を呼ぶ人だった。私は彼女の名前を呼んだことがあっただろうか？</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>「ねえ！今日は砂漠の話を聞かせてちょうだい？本当に草木が全く生えていない大地なんて存在しているの？全く想像出来ないわ…！」</div><div><br></div><div>いつも通り湖の畔に根をはる大きな大木に背中を預け森を眺めていると後ろから声をかけられる。大きなバスケットのような物を持って立っている。</div><div><br></div><div><br></div><div>「またお前か…今日はやけに大荷物だな。」</div><div><br></div><div>ハァと溜息をつこうとしたが次の彼女の言葉に吐き出そうとした息をそのまま飲み込む。</div><div><br></div><div>「あら？嫌ならここに来なければいいのよ？」</div><div><br></div><div>そんなことを口にしながらも彼女は上機嫌な様子で私の横に腰を下ろす。</div><div><br></div><div>全くその通りだと思う。しかし私はここ数日毎日この森へ来ている。そう、あの日から………………</div><div><br></div><div><br></div><div>______________</div><div><br></div><div><br></div><div>「あ、やっぱり来てくれた…！」<br></div><div><br></div><div>嬉しそうな声は相変わらず自分の頭上から聞こえた。昨日はうっかり天界について話すなんて約束をしてしまったが、やはり気が進まず断ろうと森を訪れる。</div><div><br></div><div>「またそんなところにいるのか…。」</div><div><br></div><div>言いながら上を見上げる。木々の間から差し込む木漏れ日に思わず目を細める。彼女は昨日と同じ大木に腰掛けこちらを見下ろしていた。</div><div><br></div><div>「あら？言ったじゃない木登りは得意だって？」</div><div><br></div><div>そう言うと彼女は軽い身のこなしで腰掛けていた大木から降り立つ。今日はきちんと靴を履いている。</div><div><br></div><div>「それで…フォン、今日はどんな用でいらしたのかしら？」</div><div><br></div><div>突然名前を呼ばれ一瞬驚く。私の前にズイッと詰め寄り腕を後ろで組みながらニコニコと私の顔を覗き込む。</div><div><br></div><div>「何を言っている…お前が天界について話せと言うからこうして………」</div><div><br></div><div>ここまで言い終わり、しまったと思う。</div><div><br></div><div>「ウフフ、そう言えばそうだったわね！じゃあ早速話を聞かせてちょうだい…！」</div><div><br></div><div>「あ、いや……。」</div><div><br></div><div>それでもなお断ろうとするもすかさず彼女が言う。</div><div><br></div><div>「もちろんタダでとは言わないわ。来て…！」</div><div><br></div><div>そう言うと彼女は私の手をとって歩き出す。私はされるがままについて行く。少しヒヤリとする彼女の手のひらの体温を感じながら、木々を掻き分け進んでいく。木々をゴオッと揺らす風が正面から吹き付け、思わず顔を手で覆いながら目を閉じる。</div><div><br></div><div>「ここよ？」</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>彼女の言葉に目を開くとそこには見たこともないような美しい景色が広がっていた。</div><div>決して大きくはない湖の水は空の青を映したように透き通っており、太陽の光を受け反射し、まるで宝石を浮かべたかのようにキラキラと輝く。湖畔には樹齢200年を越えているであろう立派な大木が多く立ち並び湖を隠すように周りに根をはる。生い茂る葉は青々と色付きこれもまた太陽の光を受けほのかに輝いている。風が止み昼下がりの陽気で辺りがいっぱいになる。この空間だけがまるで別世界かのようであった。</div><div><br></div><div>「素敵でしょ？秘密の場所なの…この場所ね、入れる人と入れない人がいるみたい。チェルシーは入れたけどアン叔母様は入れなかったわ…。フォンなら入れると思った。」</div><div><br></div><div>あまりの美しさに見とれていると、彼女が得意げな表情でこちらを覗き込む。</div><div><br></div><div>「それは……</div><div><br></div><div>私が"龍であるから"だろう。しかし口には出さなかった。この場所は精霊に守られている。おそらく彼らの御眼鏡にかなわなければ入ることを許されない。彼女は彼らに受け入れられているということか。</div><div><br></div><div>「いや、何でもない。ここは美しい場所だな。この森は全体的に美しいがここは特に格別だ。」</div><div><br></div><div>そう言ってくれると思った…と彼女が嬉しそうに笑う。</div><div>私の一挙一動に喜ぶ彼女。変わった人間。自然や精霊に愛されている人。また少し彼女への興味が増す。</div><div><br></div><div><br></div><div>「……………この場所なら静かに話せそうだな……。」</div><div><br></div><div><br></div><div>「え？</div><div><br></div><div>彼女が驚いた表情でこちらを見る。</div><div><br></div><div>「いいえ、本当に話してくれるとは思わなかったから…この場所をフォンに見せれたらいいなって思っていたんだけど…ふふっ今日は素敵な日ね？」</div><div><br></div><div>そう言うとやはり彼女は嬉しそうに笑った。何故？たくさんの疑問は彼女と話をすることで明らかになるようなそんな気がした。曖昧な気持ちを抱えたまま私は答えを探すように毎日この場所に来ることになる。</div><div><br></div><div>________________</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>「はあ～羨ましいわ…！私も見てみたいわ…砂漠とかいろんな世界を………」</div><div><br></div><div>いつも通り彼女に話して聞かせる。彼女は目を輝かせながら私の話を聞く。時折目を閉じまだ見ぬ世界を思い浮かべる。</div><div><br></div><div>「砂漠ならここから2週間もあれば行けるぞ？」</div><div><br></div><div>「ダメよ…私は村から出ることが出来ないもの…。」</div><div><br></div><div>「何故…？」</div><div><br></div><div>「フォンが私に質問するなんて珍しいわね？」</div><div>「あ、いや…その……答えにくいことなら無理に答えなくてもいい…。」</div><div><br></div><div>「ふふ、大丈夫よ。……ん～簡単に言うと私がシャーマンだから。」</div><div><br></div><div>「シャーマン…特別な力を持って生まれる巫女とかの類いか………？」</div><div><br></div><div>「そうよ。私の村ではシーリーって言われてるわね。私の母もそのシーリーだったわ、精霊の声を聞く力があったの。精霊は教えてくれたわ、雨が降る時、日照りが続くこと、どこの大地だと作物がよく育つのか…ホーディン村は決して豊かな土地ではないから、そういう"声"に耳を傾け頼りにしながら作物を育てることでなんとか生計を立てているのよ？」</div><div><br></div><div>母の話をする彼女の横顔は少し寂しそうなしかしどこか懐かしむような表情をしていた。</div><div><br></div><div>「母が精霊に教えてもらう言葉は村の生計には必要不可欠。だから母は村に無くてはならない存在だったってわけ…！でもある日隣国の貴族から母にお呼びがかかったの……まあよく近隣の村や国にも出向いて精霊の声を届けて助けていたから今回もそうだろうって村人達はみな、母を笑顔で送り出したわ。母も正義感の強い人だったから隣国の力になってくるって張り切って出て行った………。でも……………。」</div><div><br></div><div>彼女は何かを思い出すように目を閉じる。</div><div><br></div><div><br></div><div>「母はその日以来帰って来なかったわ。村には噂が流れた。隣国の貴族が母を幽閉し、母の力を独り占めしてるんだって……噂が本当かはわからないわ…ただ、母が帰って来なかったことと、隣国が豊かになったというのは事実よ？母を取り戻そうと貴族のところに乗り込んでもみても、"ここにはいない。"もう帰った"の一点張り。挙句の果てには母を返せという村の人たちを反逆罪と言って取り締まり出した…幾つかの命が失われたとも聞いたわ。みなは母のことを諦めた。私もこの時は小さかったし、何が起きているのかよくわからなかったわ…やがて月日が流れたある日、その貴族は再び村にやってきた。母に親族がいないかとしつこく聞いていたわ……。」</div><div><br></div><div>彼女が目を開け悲しそうな表情でこちらを見る。</div><div><br></div><div>「……豊かさを手にいれてもなお、シャーマンの力を欲しているというのか？」</div><div><br></div><div>「流石フォンは察しがいいわね？シーリーの力に頼り過ぎた結果よ？自分たちで土地を潤わすことも忘れたの…。その人は言ったわ。母は死んだ。このままでは国が枯れてしまう。母の力を受け継いだ子どもがいるはずだ、子どもを出せってね……。」</div><div><br></div><div>彼女の話を聞いて、やはり人間とは傲慢で我儘な愚かな生き物だと思う。</div><div><br></div><div>「私の存在は隠されたわ。母のことがあったし、シーリーの力を失うことは村のみんなにとっても大きな損失だから。私は幼い時から村の外へ出ては行けないと教えられ育ってきた。何かあればこの森に隠れるように言われてた……。ふふっおかしな話よね？私には母のように精霊の声を聞くシーリーの力なんてないのに。」</div><div><br></div><div>「全くだ…お前を縛るものなど何もない。旅立てば良いだけだ…。」</div><div><br></div><div>「ふふっ、そうね？でもダメなの…母を失って一人ぼっちになってしまった私を育ててくれたのはこの村の人たちなの。母のために戦ってくれた人もこの村の人たち…何かあった時にいつも私のことを守ってくれるのもこの村の人たち………そんなみんなのことを私の我儘で突き放して傷つけたり出来ないわ？外の世界には憧れるけど、私はみんながいるこの土地が大好きなのよ？シーリーの力がなくてもそんなみんなの生活を、笑顔を守りたいの……。」</div><div><br></div><div>また……なぜ人間は自分のことしか考えていないくせに口では他人のためと言うのか…</div><div><br></div><div>「フォンは守龍の一族って言ってたわね？一国を守ってるフォンからしたらちっぽけかしら？」</div><div><br></div><div>「………守るとは何だ？何故守る？」</div><div><br></div><div>「フォンはどうして国を守っているの？国は、国民はどうあって欲しい？」</div><div><br></div><div>彼女は一瞬意外そうな表情で私を見たが、すぐに優しげな面持ちになり、逆に私に問う。なぜ国を守ってるいるかなど考えたこともない。守龍として生まれたからには当たり前のことであると思っている。理由など見出したことなどない。自分の守る国の理想の姿……。彼女に言われ考える。</div><div><br></div><div>「私はね、守るっていうのは誰かの幸せを願うことだと思うの。幸せであって欲しい人、笑顔でいて欲しい人、その人たちのために自分が出来ることが、何かを守るということだと思うわ。」</div><div><br></div><div>幸せを願う…国や国民に対してそんな感情を抱いたことがあるだろうか。昔友人が話していた"愛"の話を思い出す。相手をいつくしむこと。相手を大切にし守りたいと思う気持ち。相手の幸せを願う深く温かい心…彼女が言うものは愛だと言うのか？あんな経験をしても他人を思いやるというのか…私には理解出来ない話だった。</div><div><br></div><div>「私は………私には…わからない。」</div><div><br></div><div>言葉に詰まる。</div><div><br></div><div>「そうかしら？フォンもきっとそうだと思うわ。」</div><div><br></div><div>しかし彼女は得意げに笑う。</div><div><br></div><div>「今日は私の話ばかりになってしまったわね。ねえフォン…明日もここに来てくれる？」</div><div><br></div><div>彼女に言われ空を見上げるともう空が暗がり出していた。</div><div><br></div><div>「あ、あぁ…。」</div><div><br></div><div>また曖昧に返事をしてしまったのは、彼女の言葉について考えていたからだろう。</div><div><br></div><div>「よかった…！」</div><div><br></div><div>そういうと彼女は立ち上がり背を向け去ろうとする。私は腰を下ろしたまま俯き考える。数歩進んだところで彼女が足を止め後ろを振り返る。その音に顔を上げ彼女をみる。</div><div><br></div><div>「………私…この村から出来ることは出来ないけれど、こうして貴方と話すことが出来て外の世界を知ることが出来て幸せよ？明日も楽しみにしているわ…お休みなさい。」</div><div><br></div><div>彼女はふわりと笑うと今度は振り返ることなく村の方へと消えて行った。私はまた去りゆく彼女の背中を見つめていた。</div><div><br></div><div>＜続＞</div>
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<link>https://ameblo.jp/cyuta000/entry-11891363451.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2014 13:20:28 +0900</pubDate>
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<title>契り 1章 旅立ち</title>
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<![CDATA[ <br><div><br></div><div>世の中には私たち『龍の力』を独り占めしたり悪用しようとしたりする人間もいる。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>「宮廷からの召喚状って聞いたけど…？」</div><div><br></div><div>「あぁ…華の国の先代の皇帝が亡くなったのは知っているな？新しい皇帝の王位継承式と契りの儀式だ。」</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>薄暗い部屋で口元だけが照らされる。視線は先ほど届いた文書へと落としたまま、後ろから聞こえた声に答える。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>我々龍の一族はある一定の年齢に達したら一国の守龍を務めることが出来る。我々の持つ龍の息吹を国に分け与えることによりその国の自然の恵みと土地の豊かさを保証する。これが守龍の契りだ。</div><div>正確には、自然に恵みをもたらす精霊たちの命の源が龍の息吹であり、龍の息吹が存在する国には多くの精霊が集まり、彼らが大地を豊かにする。そのような大地には穀物が良く育ち国民の生活を豊かにする。そのため多くの国が守龍を求める。</div><div>しかし我々とこの契りを交わせるのは世界各国の王族の人間のみである。故に王族たちは龍の島へと渡り、自国の守龍になってくれる龍を探すことも一つの使命となる。龍たちはその者の性格や容姿、あるいはその国の土地柄など様々な理由から選別し、守護するかどうか決める。両者の気持ちが通じた時契りは交わされその国は守龍を迎えることとなる。龍は自らの息吹を分け与えた品を王家の人間に納める。これを代々継承させることにより以降国が滅びることになるまでその国を護り続ける。</div><div>今回のように王が変わった場合、王都へ赴き新な王と契りの継続を約束する必要がある。<br></div><div>私の場合第5代皇帝と契りを交わして以来250年近くこの国を護っている。今回王位を継ぐものが第11代皇帝となるわけだが、</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>「で？誰が王位を継いだのかしら？」</div><div>「第四皇子の舜永だ。」<br></div><div>「第四…？だったら上に兄が3人いるはずでしょ？何故？」</div><div><br></div><div>「長男は4年前に体調を崩して以来ずっと床に伏している。とても王位を継げる状態ではないな…。次男は2年前に隣国視察中に事故死、三男も1年前に病死した……そして先代の皇帝も病死…突然の病死に遺書もなく四男が王位を継がざるを得ない状況というわけだ。」</div><div>「ちょ、ちょっと待って、そんなに相次いで王家の人間の死が続くなんて……はっ、まさか……」</div><div>「……だろうな…。」</div><div>「だろうなって…分かってて行くなんてどうかしてるわ…！それにフォン…貴方の右腕はまだ…」</div><div>「………炎樂を連れて行く。それに先代の皇帝にはまだ娘が1人いる」</div><div>「娘……王位継承の資格を持つものがもう1人……………！！貴方の考えてることは分かったけど、そんなの賭けじゃない！らしくないわ…」</div><div>「その時はそれまでだ、しかるべき対処をとる…。それに私は皇女にはそれだけの器があると思っている。」</div><div>「そう………貴方がそう思うならいいけど、それにしてもよりによって炎樂だなんて…！こないだあんなことがあったのに…！付き添いなら私が…っ」</div><div>「ルリ、大丈夫だ。それに炎樂で構わない。奴なら…………</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>￣￣￣</div><div><br></div><div><br></div><div>「チッ！なんで俺がこんなめんどくせーことを…」</div><div><br></div><div>俺は今最も嫌いな奴と一緒に歩いている。何でも宮廷に用事があるらしくその付き添いというわけだ。着慣れない服が動き辛く、足を取られる砂漠はイライラを募らせる。</div><div><br></div><div><br></div><div>話は数日前に遡る。</div><div><br></div><div>「おい、炎樂はいるか？」</div><div><br></div><div>丁度雷砥と共にいつもの森に出掛けようとしていた矢先のことだ。あいつに関わるとろくなことがない。どうせめんどくさいことを押し付けられるに決まってる。</div><div><br></div><div>「おい！雷砥、早くいっ…！</div><div><br></div><div>捕まる前に出掛けようと強引に雷砥の腕を掴み、飛び出そうとしたが一足遅かった。</div><div><br></div><div>「雷砥…あいつを止めろ」</div><div><br></div><div>言われると同時に掴んだ腕は素早く後ろに捻られ俺の体は強い力で押さえつけられながら倒れ込み地に伏す状態になった。</div><div><br></div><div>「ーっ、てぇ！！！てめぇ！あいつの味方すんのかよ！！」</div><div>「ごめん炎樂…でも無視は良くないと思うよ……」</div><div><br></div><div>俺の背中を押さえつけた状態で申し訳なさそうに雷砥が言う。雷砥の方が体格が良く、いくらもがいても自分の身体は微動だにしなかった。</div><div><br></div><div>「そうだ。大切な話だ。逃げるな。今度ー</div><div>「ぜってぇ嫌だ。」</div><div>「……………………………。」</div><div>「私はまだ何も言っていないが？」</div><div>「嫌だ、行かねえ。どうせどっかに駆り出されるんだろ？」</div><div><br></div><div>ここからではよく表情が見えないが一瞬の沈黙が流れ、奴の怒りが高まったのを感じる。</div><div><br></div><div>「…ほう、貴様にしては良く頭が回るようになったじゃないか？その通りだ。」</div><div><br></div><div>相変わらずムカつく言い回しだ。</div><div><br></div><div>「あん？てめぇ馬鹿にしてんのかよ？ふざけんなっ！！とにかく俺は行かねえぞ！」</div><div><br></div><div>相変わらず背中を押さえつけられた状態で噛み付く。</div><div><br></div><div>「そうか…残念だ……。貴様の力ならあいつを倒せると思ったのだが、私の見込み違いだったようだな。」</div><div><br></div><div>そう言うと奴はくるりと踵を返し去ろうとする。</div><div><br></div><div>「待て、敵がいんのか？」</div><div><br></div><div>俺の言葉に奴が立ち止まる。</div><div><br></div><div>「………そうだ。しかし貴様は行かないんだろう？仕方が無いからルリに頼むー</div><div>「俺が行く！行ってやってもいいぜ？」</div><div><br></div><div>そう言うと奴は小さく振り向きこちらを見る。</div><div><br></div><div>「そうか、助かる。私は忙しくて行く暇がなくて困っていたのだ。出発は2日後だ、軽めの旅になる。必要な物を整えておけ。詳しくはまた伝える。」</div><div>「……雷砥すまない…もう大丈夫だ。」</div><div><br></div><div><br></div><div>そういうと奴は自室へと消えて行った。雷砥が申し訳なさそうに謝りながら俺を抑えていた腕と足をどけ、俺の身体はようやく解放された。</div><div><br></div><div>「炎樂……………いや、何でもない。」</div><div><br></div><div>「あんだよ？変な奴だな、っし！2日後ってことは今日は修行出来るし行くか！」</div><div><br></div><div>「うん…。」</div><div><br></div><div><br></div><div>￣￣</div><div><br></div><div>2日後、俺は用意を済ませ、シフ中央に位置する光道の前に立っていた。光道と言っても小さな泉のような場所で、ここで魔法陣を唱え異世界への入り口を開く。</div><div><br></div><div>「くっそ、あのヤロー詳しくはまた説明するとか言って…全然ねぇまま当日になっちまったじゃねえかよ！どういうつもりだよ！」</div><div><br></div><div>「そんな身なりで何処へ行く？山籠りにでも行くつもりか？」</div><div><br></div><div>ブツブツと文句を言っていると、いつの間にか奴が後ろに立っていた。やけにめかし込んでいて手には何か布のような物を持っている。</div><div><br></div><div>「おい！説明するとか言って全然ねーじゃねえかよ！それにいつもと変わんねー格好だろーブァッ</div><div><br></div><div>すかさず文句を述べていると、先ほど手に持っていた布を顔面に投げつけられ言葉を遮られる。</div><div><br></div><div>「それを着ろ。」</div><div><br></div><div>顔に張り付いた布を剥がし広げてみると、どうもチャイナドレスのようだ。深い青緑色に赤い刺繍が映えるシルク製の上質な物だ。</div><div><br></div><div>「なんだよ、これ？」</div><div>「今回の旅の目的地は華の国の王都だ。王都ともなれば其れなりの格好で無ければ入ることが出来ない。」</div><div>「あん？めんどくせえ…誰がこんなもん着るかよ。」</div><div><br></div><div>いかにも動きにくそうなデザインに渡された服を投げ捨てようとする</div><div><br></div><div>「…そう言えば言い忘れていたが、華の国では渡来人による窃盗事件が多発しているらしいな…そんな格好でいては渡来人に間違われて捕まることもあるだろうな。監獄に幽閉などされようものなら2年は出て来れないかもしれないな。お前の自由は奪われることになる。」</div><div><br></div><div>「ああああああああぁ…！めんどくせえ！わあったよ！着りゃあいいんだろ？着りゃ！！」</div><div><br></div><div>全くもって面倒臭い奴だ。よくもここまで舌が回ると思う。こんな状態に陥った時とき口であいつに勝てた試しがない。渋々渡された服へと着替える。</div><div><br></div><div>「これも付けておけ。」</div><div><br></div><div>丁度襟を留めた所で声をかけられる。奴は数珠のような腕飾りを放ってよこす。</div><div><br></div><div>「これは？」</div><div>「旅に必要な物だ。」</div><div><br></div><div>投げられた腕飾りを受け取り、左腕へと通す。すると少しゆとりのあった腕飾りがスーっと吸い付くように自分の腕にぴったりのサイズへと変化する。</div><div><br></div><div>「うおっ？！」</div><div><br></div><div>「それはお前の力を抑える為のモノだ。着替えも済んだし出発するか」</div><div><br></div><div>「は？」</div><div>「おいおい待て、俺の力を抑えるって…………あ？！今お前何て言った？出発？俺1人じゃねえのかよ？」</div><div><br></div><div>「誰が貴様1人に任せるものか…私に噛み付いている暇があるならささっと来い。」</div><div>「……ああ、それから…その腕飾りは私にしか外せない。無理に外そうとすれば爆発する。…そして貴様が来ないのなら二度とそれは外さん……。どうする？来ないのか？」</div><div><br></div><div>「～～～～～～っ…………！行くしかねえじゃねかよ！！！！！ふざけんな！！！！」</div><div><br></div><div>こうして俺はまんまと嵌められ、奴と二人華の国へと旅立つことになった。</div><div><br></div><div><br></div><div>￣￣</div><div><br></div><div>華の国より10キロほど南南東に位置するゴア砂漠。見渡す限り何もないこの砂漠に突如砂嵐が巻き起こり、その中心に人影が2つが現れる。</div><div><br></div><div>「おー？こりゃ砂漠じゃねえか？王都に用があるんじゃねえのかよ？」</div><div><br></div><div>文句ばかりを述べる炎樂を上手く説得し、なんとか連れてくることには成功したが、瞬間移動の魔法には失敗したようだ。目的地よりも幾分か外れた場所へと出る。</div><div><br></div><div><br></div><div>片腕が使えなかった分か、この程度でミスをするなど自分もまだまだ未熟であるなどと心の中で自嘲する。</div><div>私の右腕は数週間ほど前の炎樂との激闘で激しく損傷して以来まだ治っていない。有るようで無いようなものだ。しかし移動魔法の失敗は炎樂に腕を潰されたせいではない。結果はどうであれ己の未熟さが招いた戦いだ。<br></div><div><br></div><div>「……ふー。あんな、俺もてめぇも散歩が好きだ。だから別にちょっとくれぇ離れた場所から歩くことになっても問題ねーだろーが？」</div><div><br></div><div>しかし炎樂の方は気にしているのか、沈黙を続ける私の表情を伺いながら柄にもないことを口にする。</div><div><br></div><div>「……貴様に気を使われる日が来ようとはな。」</div><div><br></div><div>「るせぇ！気なんか使ってねーよ！」</div><div><br></div><div><br></div><div>本人にその気があったのかは定かではないがその戦いの最中、結果的に私はこいつに救われた。今もそうだ。以前はこいつの前向きさや気楽さを嫌っていたが、今にして思えば自分に無いものに嫉妬していただけなのかもしれない。今はこいつのおかけで私も少しずつ前を向くことが出来る。<br></div><div><br></div><div>「すまない、少し歩こう。」</div><div>「おめーが謝るなんて珍しいじゃねーかよ？改心でもしたかあ？そのつもりだって言ってんだろ！」</div><div><br></div><div>そういうと奴はづかづかと歩き出す。私も奴に続いて歩き…………</div><div><br></div><div>「……………おい。そっちは逆だ。宮廷を背にして歩いてどうする？そのくらい幼子でも分かることだぞ？」</div><div><br></div><div>「ーーーーーーーーーっ…！やっぱ改心なんかしてねえ！！！！！！」</div><div><br></div><div><br></div><div>そう言うとスタスタと宮殿へ向かって歩き出す。後ろから奴が噛み付いてくる声が聞こえるが無視だ。</div><div><br></div><div>＿＿</div><div><br></div><div><br></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「チッ！なんで俺がこんなめんどくせーことを…」</span><br></div><div><br></div><div>半時ほども歩くと炎樂が文句を言い出す。おそらく暑さと着慣れない服のためだろう。</div><div><br></div><div>「文句を言うな。後少しで華の国の入り口だ。さっさと歩け。」</div><div><br></div><div>とは言ったものの私でさえこの砂漠の道のりは体力を消耗する。とはいえ休んでいる時間もなく、ただお互い無言で砂漠の道を歩んだ。</div><div><br></div><div>さらに半刻ほど歩いたところでようやく華の国の門の前へと到着した。</div><div><br></div><div>「おお！すげえな！」</div><div><br></div><div>炎樂が感嘆の声を漏らす華の国の門は綺麗な白岩に金の龍の装飾をあしらった非常に素晴らしいものだ</div><div><br></div><div>「そうだな…。」</div><div><br></div><div>「我が国の自慢でございます。」</div><div><br></div><div>門を見上げていると突然話しかけられる。声のする方に目を向けると門の端に一人の男が立っていた。</div><div><br></div><div>「おい！てめぇーだれっっ</div><div>「貴方は…？」</div><div><br></div><div>喧嘩腰に突っかかる炎樂を制止して男に向かって尋ねる。</div><div><br></div><div>「これはこれは…、挨拶が遅れまして申し訳ありません。フォン様でいらっしゃいますね？わたくし舜永様に仕える"拭(シキ)"と申します。主の命により貴方様をお迎えにあがりました。」</div><div><br></div><div><br></div><div>【続く】</div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/cyuta000/entry-11778576002.html</link>
<pubDate>Thu, 12 Dec 2013 21:32:07 +0900</pubDate>
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<title>アンモビウム 1章</title>
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<![CDATA[ <br><div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">嫌だ…</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">やめろ………！</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">必死に抵抗する。私はこの夢の続きを知っている。<wbr>もう見たくない………。しかし、<wbr>そんな願いを嘲笑うかのように残酷な悪魔は私をまた深い眠りの底<wbr>に落とす……………</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">心地良い風を全身に感じながら歩を進める。<wbr>踏みしめる大地は柔らかで、掻き分けた草木は青々しく繁る。<wbr>花々は暖かい太陽の光を浴びて輝く。<wbr>触れた大木からは大地の底から水を吸い上げる生命(いのち)<wbr>の音がする。鳥が空を通い動物達が森を駆ける。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">豊かな土地なのだな……</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">ポツリと呟く。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「あら？またいらしたの？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">突然降り注いだ軽快な声に驚き、辺りを見渡す。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「こっちよ？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">聞き覚えのある声は自分の頭上、大きな大木の上からだった。<wbr>昨日(さくじつ)この森で出会った娘、エーフィアだ。<wbr>どういう訳か太く大きく広がる枝の一つに腰掛けている。<wbr>そんな私の疑問を察したかのように彼女が口を開く。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「少し村の人とかくれんぼしていただけよ…？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">なるほど。昨日のことといい、<wbr>この森に彼女が来ることはあまり望ましくないことらしい。<wbr>しかし相変わらず彼女に悪びれる素振りはない。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「…また村を抜け出して来たのか…？村人(オニ)<wbr>に見つからないといいな…？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">皮肉を込めた口調にも彼女は笑顔を崩さない</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「大丈夫よ…！私かくれんぼで負けたことないもの？<wbr>でも貴方には察しが良過ぎて勝てる気がしないわね」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">クスクスと笑いながらこちらを見下ろしている</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「…どうだろうな……<wbr>私も流石に女性が木の上にいるなんて思わない……」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">自分の背丈の倍以上もの高さにある枝に腰掛けている彼女を見上げ<wbr>る</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「あら？木登りが得意な女性だっているわよ…。あ、そうだわ…！<wbr>丁度よかった！ここまで登ったのはいいんだけど、<wbr>さっき靴を落としちゃって…降りられなくて困っていたの。」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">言われて視線を足元に落とすと木の根元に履き潰した布靴が転がっ<wbr>ていた。はぁ…と小さく溜め息をつき、靴を拾おうと身を屈める。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「ねえ、今から飛び降りるから受け止めて下さる？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「は？ー・・・ &nbsp; &nbsp; &nbsp; &nbsp;&nbsp;</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">突如発せられた突飛な提案に思わず驚きの声を漏らし靴を拾うこと<wbr>をやめ上を見上げる………が、遅かった。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">既に彼女は大きく手を広げ宙に飛び出し私の真上に迫っていた。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「く…っ…！</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">咄嗟の事に上手く受け身がとれずバランスを崩しながらも落ちてく<wbr>る彼女に手を伸ばす。<wbr>彼女を受け止めながらドサッと鈍い音を立ててその場に倒れこんだ<wbr>。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「うっ…</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">彼女を抱きとめる形で後ろに倒れたためにぶつけた頭の痛みとボヤ<wbr>ける視界の中なんとか身を起こそうとする。<wbr>しかしそれより先に彼女が私に覆いかぶさるように起き上がる。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「イタタ………ごめんなさい…怪我は無い？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">言われて私も半分身体を起こす。<wbr>彼女が上に乗ったままなのでこれ以上身体を起こすことが出来ない<wbr>からだ。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">口を開こうとするより早く彼女の手が伸びてくる。<wbr>優しく私の頭に触れると髪を掻き分け後頭部へと手をまわす。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「よかった…何ともないみたい」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">安堵の表情と共に胸を撫で下ろす彼女をまっすぐ見つめる。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「わあ…綺麗な銀髪…！太陽の光を浴びてキラキラ輝いているわ！<wbr>…そういえば初めて貴方を見た時の龍の姿もとっても綺麗だった。<wbr>」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">突然の事で驚く。今までそんなことを言われたことがないからだ。自分の髪に触れる彼女の手からは柔らかい温もりが伝わる</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「………………………………お前は変わってるな……。<wbr>なんというか、自由過ぎる、まるで風みたいに……<wbr>お前は私のことを察しが良いと言ったが私には全くお前のことが読<wbr>めない……。」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">何だか落ち着かない。たいていのことは知っているつもりだし、<wbr>相手がどんな人物であるか読み取ることなど私には造作もないこと<wbr>だ。<wbr>ましてや人間の心理や行動パターンというのは恐ろしいほどに簡単<wbr>なモノだ。人間はいつだって自分が一番で、<wbr>他人の事など考えているふりをしているだけで全く考えていない、<wbr>傲慢で醜い生き物だ。そうやって教わってきたし、<wbr>そう思って人間(ヒト)を見下して生きてきた。<wbr>彼女に話しかけたのだって本当に気まぐれだ。<wbr>しかし目の前のソレは全く違うように思えた。<wbr>相手を全く警戒しない。周りの目を気にしない行動。<wbr>いとも簡単に他人の領域へと踏み込んで来る。<wbr>しかし何故だか嫌な感じはしなかった。<wbr>それは彼女が私へと向ける感情に相手を見分しようとか探ろうとい<wbr>ったものが全くないからだろう。もっと綺麗な純粋な興味なのだ。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">しばらく目を丸くして私を見ていた彼女だがやがて嬉しいそうにい<wbr>たずらな笑みを浮かべる。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「変わり者ですって？この上ない褒め言葉ね！うふふ、<wbr>私のことが分からない？……そうね、私はエーフィア。<wbr>この森を抜けた所にあるボーディン村に住んでる。<wbr>家族はいないわ。<wbr>孤児院のような所で同じような子供達と一緒におばさまのお世話に<wbr>なりながら暮らしている。この森とこの地に吹く風が大好き。<wbr>最近の趣味は読書と散歩。<wbr>そして昨日いつも通りこの森を散歩していたら貴方に出会った。」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">言い終えると彼女は得意げな表情を浮かべる。そして促す、<wbr>次は私の番だと。どうして私まで…？と文句を言おうとしたが、<wbr>こちらだけ名乗らないのは失礼だと言う彼女の言葉に先を越される<wbr>。彼女にじぃっと見つめられ、やがて反論を諦め口を開く。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「……私の名前はフォン。此処より遥か上空、天界に住んでいる…<wbr>家族はいない。趣味は………特にない。」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">私が喋ってる間彼女は、名前は知ってるわ？<wbr>とわざとらしく言ってみたり、天界という言葉に目を輝かせたり、<wbr>貴方も家族がいないのね、と少し悲しげな表情を見せたりもした。<wbr>そして言い終わると、<wbr>貴方こそ今の話じゃ貴方のこと全然わからないわ…！<wbr>と頬を膨らませた。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「あぁ…そういえば一つ言い忘れていたな。……<wbr>この地を偵察中に変わった女性に出会った。<wbr>今日はいきなりその女性が空から降ってきた。…………<wbr>そろそろ其処をどいてもらえると嬉しいのだが…？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">依然私の腰の上に跨ったままの彼女に対して皮肉を込めて言う。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">これには流石の彼女もあっ…<wbr>っと罰の悪そうな顔をすれば素直に立ち上がる。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「靴ならそこだ……」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">キョロキョロと辺りを見渡す彼女に告げる。思った通り。<wbr>彼女は嬉しそうな笑みをこちらに向け、靴を履く。<wbr>自分も身体を起こし服に着いた草や土を払う。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「服……汚れちゃったかしら…？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">いや、そんなに汚れていない…と言ったが彼女は来て…<wbr>と私の手をとって歩き出した。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">青々と茂る草をかき分けて少し進むと大きく拓けた場所に出る。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">水だ。サワサワと揺れる草木の音に混ざって水が流れる音がする。<wbr>見れば目の前に小さな小川が流れていた。<wbr>屈んで除きこんでみると、川の底がくっきりと透けて見える。<wbr>それくらい水が澄んでいるのだ。<wbr>そっと水に触れるとひんやりと冷たい感覚が指先に広がる。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「綺麗な川でしょ？水も、<wbr>土も綺麗だからここには多くの生き物が暮らしているのよ？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">そう言う彼女はいつのまに用意したのか小さな布を手にしている。<wbr>それを静かに川の水に浸せば絞り、こちらに向きなおる。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「後ろ向いて…？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「服なら大丈夫………</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">ダメ、引き下がりそうにない彼女の態度に今度は早々に諦めて背中を預け<wbr>る。彼女は手際よく私の服の汚れを落としていく。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「ねえ、天界って…？どんなところなの？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">ぼーっと辺りを見回していると後ろから彼女が話しかける。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);">「天界は……</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto; background-color: rgba(255, 255, 255, 0);"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">言われて空を見上げる。吹き付ける風が少しだけ冷たくなり日も傾きかけている。時期に彼女を呼ぶ声も聞こえるだろう。</span></div></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">「今日はもう遅い…そろそろ村人(オニ)も来る頃なんじゃないか？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">私の服を拭き終わった彼女も同じように空を見上げあっと声を漏らす。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">「話は明日だ…今日はもう帰れ」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">自分の後ろに立っている彼女の方を振り返り伝える。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">「………それは明日もここに来るということ？明日も会って下さるということ…？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">少し驚いたように彼女がこちらを見る。彼女に言われて初めて自分自身、彼女の言うように明日もここに来て彼女と話す前提で話をしていることに気付く。自分の言ったことに驚き言葉に詰まっていると彼女が嬉しいそうに目を輝かせながら私の服の裾を掴む。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">「言ったわね？約束よ？」</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">断る理由も言葉も見つけることが出来ずに曖昧に頷く。</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">エーフィア～！</span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;"><br></span></div><div><span style="-webkit-text-size-adjust: auto;">遠くで彼女が呼ぶ声が聞こえてくる。</span>その声にわざとらしくため息をつく。</div><div><br></div><div>「貴方の言う通り今日はもう帰らなくちゃいけないみたい…明日楽しみにしてるわね」</div><div><br></div><div>そう言うと彼女は背中を向け駆け出した。</div><div><br></div><div>結局断ることが出来なかった。自分でも分からない。明日もここに来るつもりだったのか？…なぜ？答えの出ない問いを抱えながら背を向け歩き出そうとする</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>フォーンっ！</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>呼ぶ声に驚き振り返ると彼女がこちらを見ている。</div><div><br></div><div>「………………って呼んでもいい？」</div><div><br></div><div><br></div><div>少し首を傾けながらこちらを見ている。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>一瞬答えが見えたような気がした。<br></div><div><br></div><div><br></div><div>サワサワと草木が揺れる。</div><div><br></div><div><br></div><div>「…………………好きにしろ…」</div><div><br></div><div>ゴオッと吹き付けた風が私の声を掻き消す。風はなおも駆け抜け彼女のその白い長い髪を揺らす。彼女に届いたかは分からない。しかし彼女は満足そうに微笑むと再び背を向け駆けて行った。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>＜続＞</div>
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<pubDate>Tue, 03 Dec 2013 17:04:30 +0900</pubDate>
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<title>アンモビウム   〜風の巡り合わせ〜</title>
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<![CDATA[ <br><br><br>懐かしい夢を見る…………….。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>風が吹いている………<br>身体を柔らかに包む優しい風が……………。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>風に揺れる白い髪は美しく、そこに佇む彼女は儚げだった。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>彼は何気なしに降り立った。日の光に反射してきらめく銀色の大きな身体は瞬く間に小さな人間(ヒト)の形を作る。<br><br><br>「まあ…！珍しいお客様ね…？」<br><br>聞こえた声に振り返ると1人の少女がそこにいた。木の影から綺麗な空色の瞳がこちらを興味深そうに見つめる。<br>人になる瞬間を見られただろうか？黙っているとさらに口を開く、<br><br>「そんなに警戒なさらないで？龍の一族の方だなんて滅多にお会い出来ないから少し胸が高鳴っただけよ？」<br><br>少女は微笑む。<br><br>「龍の一族を知っているのか……？」<br>「書物の中でだけね、実際にお目にかかるのは初めてよ？ウフフ…そんな風に人の姿をしていたんじゃお会いしていたとしてもわからないわ…！」<br><br>彼女は楽しそうに笑う。大地を揺らした風になびく彼女の白い髪はとても綺麗で、その笑顔はとても美しかった。<br><br><br>無意識に口から言葉が出る。<br><br>「…………当たり前だ…。人間に自分が龍であることはバレてはならない……。」<br>「あら？じゃあこれってまずいってことかしら？私のこと口封じのために殺す？…それとも記憶を改ざん出来る魔法でも使えるのかしら？」<br><br>彼女は相変わらず楽しそうに話している。<br><br>「………………殺されるかもしれないと思いながら何故そんなに楽しそうにする？」<br><br>もしかしたらこの時すでに彼女に興味を持っていたのかもしれない。<br><br>「貴方は私のことを殺さない。そう思うのよ？<br>でも貴方みたいに綺麗な人……じゃなかった…ウフフ、龍神様って言えばいいのかしら？に殺されるっていうのも悪くないわね…？」<br><br>また、風が彼女の髪を揺らす。<br><br><br>「…………………………………………龍にも名はある………。私の名はフォン…。風を司る龍だ。……」<br><br>彼女は少し驚いたような表情を見せる。<br><br>「……フォン？珍しい名前ね？この辺りでは聞かない名だわ…！私はエーフィア。この近くの村に住んでいるのよ？」<br><br>「エーフィア……西欧の言葉で生命を与える…だったか？……大層な名だな…。」<br><br>思わず言葉が出てしまったが、彼女は気に留める様子もなく笑っている。<br><br>「博識なのね？私もそう思うわ…大層な名だなって…！でも気に入ってるの。貴方の名にはどんな意味があるの…？」<br><br><br>好奇心で溢れた眼差しを向けられる。<br><br>「…………風。」<br><br>その言葉に反応するかのように風が大地を揺らす。<br><br>「この地に吹く風はとても心地よいな。」<br><br>思わず空を仰ぎながら優しく吹き付ける風に身体を預ける。<br><br>「フフッ…私もこの風が大好きなの…！」<br><br>彼女も同じように空を仰ぐ。<br><br>「ここは風の都ヴィント…。の西の外れに位置するホーディン村。を取り巻く小さな森の中よ？そんな辺境の地に風龍様が一体何の用かしら…？」<br><br>彼女はイタズラっぽく笑う。<br>彼女が笑うとそれに呼応するかのように大地が動く(わらう)。風が草花を揺らし、優しく人々を包む。<br><br><br>なるほど、生命を与えるという名も案外相応しいのかもしれない。しかしそのためだろうか？彼女自身はとても儚く見えた。<br><br>「用などない。たまたまこの地に降り立っただけのことだ…。」<br><br><br><br>……ィア…！…………ーフィア…！……エーフィア！<br><br>どこからともなく彼女を呼ぶ声が聞こえる。<br><br>「まあ、大変…！村の外に出たことがバレてしまったみたいだわ…！」<br><br>言葉とは裏腹に彼女に悪びれる様子は全くない。<br><br>「そろそろ帰らなくちゃいけないみたいね？<br>…フォン様！今日はお話し出来てとっても楽しかったわ！ありがとう。私はこれで失礼しますね。では。」<br><br>彼女は向き直り綺麗にお辞儀をして見せた後、小走りで森の外へと駆けて行った。<br><br>星のようにキラキラと輝く綺麗な髪を揺らしながら駆ける彼女の背中を<br><br>………ただ、ずっと…彼女が見えなくなるまでずっと、見ていた。<br><br><br><br><br>〈続〉<br>
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<pubDate>Mon, 23 Sep 2013 02:42:54 +0900</pubDate>
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