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<title>今だから出来る恋</title>
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<description>フィクション</description>
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<title>⑰暑い夏に暖かい気持ち</title>
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<![CDATA[ コンクールへの参加者の控え室は緊張の空気が漂っていた。<br>私は仁君に貰った指輪をこっそりネックレスに通し、シャツの下に身につけていた。<br>きっと大丈夫、自分らしく弾ける。<br>とにかく集中出来るように、今までの練習の事を考えていた。<br>本番、不思議と手は震えず舞台からの景色に怖じ気づく事もなく、<br>まるで学校の練習室で一人、練習している様な感覚に襲われた。<br>第一次予選、通過。<br>翌日の二次予選も冷静に演奏が出来、無事に本選に進む事になった。<br>本選は一ヶ月後。<br>その間にいかに練習出来るかが大事だと奥山さんに言われた。<br>奥山さんはこの大会で優勝経験があるので、色々とアドバイスをしてもらえたけれど、<br>推薦入試の前で奥山さんも練習と勉強が忙しかった。<br>仁君からは、週に一度だけ電話が必ずあった。<br>私の練習の邪魔をしたくないから、といつもすぐに切られちゃうけど、声が聞けただけで嬉しかった。<br>椿ちゃんと海君は夏を利用して海外ロケにあちこち出かけていて、<br>殆ど会う事がなかった。<br>蝉の声が耳につく暑い夏を、チェロのケースを抱えて学校へ通い、部活と個人の練習に励んだ。<br>時々加奈っちと図書館で宿題をして、息抜きにアイスを食べるのが楽しみだった。<br>何となく、まだ加奈っちには仁君の事が言えずに居た。<br>「ねぇ、松岡君、今頃何してるんだろうね？」<br>「寝てるんじゃない？もう向こうは真夜中過ぎてるよ。」<br>「さっすが奈々っち。ちゃんと時差まで調べているとは。」<br>「ううん、私も知らなかったんだけど、前に電話で仁君から聞いたんだ。」<br>「え？電話してくれたの？凄いじゃん！！これは脈ありじゃない？？」<br>「う、うん。。。あのね、加奈っち、実は、、」<br>加奈っちに大まかな話をしたら、加奈っちは興奮気味に立ち上がっていきなり叫んだ。<br>「もぉ～！！！！！！！！！！！！早く言ってよ！！！！！！！！良かったねぇ、奈々っちぃ～！！」<br>そう言って私に抱きついて来た加奈っちは、涙ぐんだ目で自分の事のように喜んでくれた。<br>「ありがとう、、でも、まだ信じられないんだ。」<br>「そっかぁ、そうだよね、そんな事があってもう翌日から会えて無いんだもんね。。なんか、切ないね。」<br>「うん、でもいいの。多分、私達は今人生できっと凄く大切な時期に居て、今会える状況にいたら、私は仁君の存在に甘えてしまうと思う。今はこの距離がお互いにとって、大事なんだと思う。」<br>「ふっふっふ。そんな大人な事を言うなんて、愛されている余裕から出る台詞だね。奈々っち～！」<br>「そ、そかな？」<br>「そーだよ！あ～、高二の二度と戻らぬ夏、恋人は遠く異国の地、でも二人の心は一番近い所にある。な～んか、すっごいドラマ！現実にこんな事あるなんて、さいこー！」<br>加奈っちは満面の笑みでベンチの登り、そこから思いっきりジャンプした。<br>「あ、奈々っち、奥山さんの事はどうなったの？」<br>「それが、、」<br>実は、奥山さんにはコンクール予選が終わった後に話していた。彼女のふり、もう出来ないって。<br>奥山さんは凄く喜んでくれたし、私の事は人に聞かれたら誤解の無いように話してくれると約束してくれた。<br>私は自分で申し出たのに、中途半端な事をしてしまった自分に落ち込んでいたけど、<br>奥山さんはその場をふりで楽に誤摩化そうとした自分が悪いからと、言って笑った。<br>そして、約束通りレッスンはしてくれると言うので、お断りしたけれど、結局お願いする事になった。<br>「奥山さんって、凄い大人だね。何か、私達と一年しか違わないのに。私達も後一年したらそんな感じになるのかなぁ？」<br>「う～ん、奥山さんみたいには、私はきっとずっとなれない気がする。」<br>本当にそう思った。見習いたいなって思うけど、私は小さな事で動揺したり、<br>怖じ気づいたり傷ついたり、きっとこういう所って中々変われない気がする。<br><br>その夜仁君から電話があった。<br>「仁君、昨日は何処か行った？」<br>「うん、ホストファミリーと市立図書館行って、その後公園でその友達とバスケしたよ。」<br>「そっかぁ、アメリカの高校生ってやっぱり大きいの？背とか」<br>「う～ん、人によるけど平均的に皆背は高いかな。」<br>「何だか不思議、私の知らない仁君が私の知らない国で知らない人と生活してるって。」<br>「ん、でも何も変わらない。変わろうともがいでも、そこにいるのはいつもの自分で、結局何処にいっても自分からは逃げられないというか。」<br>「仁君は変わる必要ないじゃない、そのままが一番かっこいいんだもん」<br>「ありがとう、でもそういう事じゃないんだ。もっと、自分の人生の先が見たい、もっと自分の力で何か動かしたい。」<br>「私達、二人とも苦戦中だね。」<br>「だな。でも、こういのって絶対通る道なんだろうし、逃げないでやるだけの事はやりたい。」<br>「うん、私も仁君に負けない位頑張るよ。仁君が帰って来たとき、すっごく成長してて、私だけ今のままじゃ釣り合わなくなっちゃうし。そうでなくても、釣り合ってないのに。」<br>「釣り合ってないってどういうこと？」<br>「だって、仁君は学校一人気の男子で、私はぱっとしないドジでしょ？」<br>「他の人がどう俺や奈々子の事を思っているかって、そんなに大事？」<br>「そんな事ないけど、、」<br>「俺は奈々子が好きで、奈々子は俺を好きで居てくれる。それでいいと思う。釣り合うとか合わないとか、周りの指針が基準になるような浅はかな気持ちで俺は奈々子と付き合いたくはない。」<br>「ごめん、仁君。。。私、何か自信なくて、、」<br>「ごめん、きつい言い方して。でも、俺は奈々子が自信がない理由が分からない。俺にとって奈々子が一番、ってだけじゃ駄目かな？」<br>「ううん、仁君にそう言ってもらったら、世界一の無敵女子になった気分。ふふふ。ありがとう。」<br><br>仁君からの電話を切ると、体の真ん中が凄く熱く感じられた。<br>仁君が私を想ってくれる気持ち、それだけでこんなに全てがキラキラして見えるなんて、本当凄い。<br>寝る前に、仁君の気持ちがわかる切っ掛けになった写真を取り出してみた。<br>あれ以来、何となくお守りのようにそっと閉まっておいた写真。<br>二人とも小さくて、幼くて、純粋で楽しそう。<br>裏を見ると下手な字で、仁君のお嫁さんになれますようにと書いてある、そのすぐ下に小さく新しい文が加わっていた。<br>奈々子とずっと一緒にいられますように。仁。<br>枕に顔を押し付けて叫び声を押し殺しながら、足をじたばたさせた。<br>高二の夏は、仁君と一緒にいられないのに最高に輝いていて、勉強も練習も今までにないぐらい集中して出来た。<br>気がついたら夏休みも終わり、新学期。コンクールの本選が迫っていた。<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11498575415.html</link>
<pubDate>Tue, 26 Mar 2013 00:18:30 +0900</pubDate>
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<title>⑯お互いの旅立ち</title>
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<![CDATA[ 仁君の出発前日、また家族で集まる事になった。<br>久々に家で集まる事になり、前日は練習に明け暮れていたので夜は私の部屋の掃除で朝はまた寝坊した。<br>仁君のお母さんは料理が上手で、椿ちゃんの両親は凄く美味しいケータリングを知っていて、<br>家は食べきれない程の食べ物で溢れかえっていた。<br>大人達は昼からダイニングで大宴会、子供達はリビングで食べたり話したり、映画を見たり。<br>仁君も、椿ちゃんも、海君も、ちびちゃん達も、私も誰も仁君の旅立ちに着いてふれなかった。<br>何だか、話したら本当になっちゃう気がして、誰も言い出せなかった。<br>一年だと分かってるのに、大げさかも知れない。<br>でも、１７歳の一年は、とても長く感じられた。<br>「ごめん、仁君。私、今日３時から仕事だからもう行かないと。」<br>椿ちゃんがそう言うと、椿ちゃんのお母さんが言った。<br>「椿、ちゃんとさよならの挨拶しなさいよ」<br>何となく皆の間に重い空気が流れた。<br>「はぁ、やっぱりね。仁君、このまま普通にバイバイした方がいいと思ったんだけどなぁ。寂しくなるから、最後のハグだけして行くね。時々メールとか頂戴ね。」<br>「ん。ありがとう。」<br>椿ちゃんが仁君にハグをしながら、耳元で何かつぶやいた。<br>「分かった。ありがとう。」<br>仁君がそういうと、椿ちゃんは小さくガッツポーズをして皆に投げキスをして家を出て行った。<br>海君も仕事だからと出て行く時、泣き出してしまい大変だった。<br>ちび達がテレビでアニメを見始めて、大人が出来上がってるのに更に盛り上がって来た頃、<br>私達は何となく何も話せずに居た。<br>「奈々、本なんかない？今日何も持って来てないから。」<br>「あ、私の部屋にあるよ。見に来る？」<br>仁君が私の部屋に最後に来たのは泊まりに来たあの夜、海君の侵入を泥棒と間違えて私の部屋にきた時以来。凄く顔が近くにきて、ドキドキした気持ちが急に思い出されて何だかそわそわした。<br>「枕元にある本、どれでもいいよ。もう全部読んでるから。あ、でも仁君好きな本、あるかなぁ。」<br>「適当に見るよ、ありがとう。」<br>仁君が本を選んでいる間、私は机に向かって何となく座って、ぼーっとカレンダーを眺めていた。<br>明日、仁君はアメリカで、明後日、私はコンクール。<br>「奈々、これ、、、」<br>仁君の言葉に振り返ると、仁君の手には『我が輩は猫である』と一枚の写真。<br>「何？何だっけ、それ？」<br>見るとそれは仁君と私の小さいときの写真で、後ろには。。<br>「あーーー！！！違うの、それは！違うの！見、見、見た？見てない？」<br>「ごめん、見た。」<br>ぎゃーーーーーー！！！！！一気に顔が完熟トマトより真っ赤になるのが分かった。<br>この写真、大事に閉まっていたの、最近忙しくてすっかり忘れてた。しかも、写真の裏には仁君のお嫁さんになれますように、と書いてあった。<br>「違うの！これ、ほら、小さい時に、だから、、」<br>「今は違う、って事？」<br>「いや、違う訳じゃないけど、でも、、、」<br>どうしたらいいの？こんなダイレクトなもの見つかったら、私はもう一巻の終わり。。。<br>「違わないってことは、今もそう思ってるって事？」<br>「う、、、仁君、それ以上聞くの辞めて。。。」<br>「どうして？」<br>「だって、私、どうしたらいいの。」<br>「質問に答えてくれたらいいんじゃない？」<br>「それは出来ない。絶対無理。わ、私達可愛かったね～」<br>「で、今もそう思ってる？」<br>「仁君、、、、乙女心が通じない人なのね。。。」<br>「で？」<br>「、、、はい、ご、ごめんね」<br>「思ってるって事？」<br>「う、、、うん。」<br>急に恥ずかしさの余り耳が燃えそうに暑くなるのを感じて、涙が出てきそうだった。<br>「いつから？」<br>「え？そこまで言わないと駄目？」<br>「うん。いつから？」<br>「ごめんなさい。。。。３歳から。。。」<br>「３歳のいつから？」<br>「本当に勘弁して、、、、。か、仮面ライダーショウの時からです。ごめんなさい。」<br>「俺の勝ち。」<br>え？顔を上げると仁君が私を抱きしめていた。ぎゅっと強く、力一杯。<br>「俺は、その２週間前、奈々子に初めて会った時からずっと好きだった。」<br>「え？何言ってるの？じ、仁君、わ、わ、、」<br>「奈々子の事ずっと好きだった。１４年間ずっと。」<br>信じられない状況に何を言ったら良いのか分からなくて頭が真っ白になった。<br>仁君が、私の事を好きだったって、しかも３歳から？私みたいに？<br>「ど、ど、どうして今まで言ってくれなかったの？」<br>「情けないけど、自信がなかった。言って駄目だった時、奈々子と会えなくなる気がして言えなかった。ごめん。」<br>「ほ、本当にごめんじゃ済まされない！私、ずっと片思いで、勝手に片思いで、、」<br>嬉しさと安心と幸福感から涙がぼろぼろこぼれ落ちた。<br>「奈々子、ごめん、泣くなよ。」<br>私のぼろぼろの顔をTシャツを捲し上げてふいてくれた仁君を、改めて見た。<br>私の事をずっと好きでいてくれた仁君を。<br>「仁君、本当に、ほんとに。。」<br>「うん、本当に本当に。今までも好きだったし、これからもずっと好きだよ。」<br>こんなに泣いたの生まれて初めてかもしれないというぐらい涙が止まらなかった。<br>仁君は困った顔をしながら、優しく私を抱き寄せてただ涙を拭いてくれた。<br>出発前夜、仁君の両親が帰ると言った時には、私のぼろぼろの顔もそこそこに戻り、<br>その代わり仁君のTシャツは妙によれていて、ちょっと可笑しかった。<br>私は階段から玄関を出て行く仁君を見送った。空港には行かない約束をした。<br>メールもするし、手紙も電話もしてくれる約束をした。<br>そして、部屋を出る前に今度は凄く優しい、長いキスをした。<br>全ての事が浮き足立つ夢の出来事のようで、寝て起きたら嘘でしたってなりそうで怖かった。<br>でも、起きた次の日の朝、ポストに入っていた手紙で急に現実だと信じられた。<br>手紙には小さな指輪と短い手紙。<br>仁君からだった。指輪はピンキーリング。可愛い指輪。大好き！<br>大好き、仁君。大好き、全部全部大好き！<br>空に掛かる飛行機雲を見て、仁君に叫びたい気持ちになった。大好き！って。<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11498148313.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 23:31:46 +0900</pubDate>
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<title>⑮コンクールと試合と</title>
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<![CDATA[ 仁君達のバスケ部は地区優勝をした。<br>若高は奥山さん一人で得点を決めていたけど、<br>決勝戦で海君と、特に仁君の凄い当たりで惨敗に近い形で終わった。<br>奥山さんは、終わって清々しい気持ちだと言っていたけど、<br>仁君達のプレーの荒々しさには驚いた様子だった。<br>私達の吹奏楽部はオケ部門で金賞を飾り、先輩達を送り出し、<br>二年の私達が後輩を引っ張って行く番となった。<br>でも、私は７月の初コンクールに向けて昼休みも、休み時間の10分も練習室を借りて必死に練習していた。<br>奥山さんとは相変わらず金曜日にチェロの話をしながら帰り、<br>週末も学校の練習室を借りてとにかく練習した。<br>こんなにチェロに向き合ったのは初めてだったからかな、凄く充実していて<br>時間があっという間に過ぎて行った。<br>気がついたらコンクール前日。気がついたら仁君達が全国で優勝をしていた。<br>試合も見ていなければ、仁君には会っていなかった。<br>今年から夏の大会に移行になり、暑い中バスケをしていた部員達はクラスでは凄く疲れて見えた。<br>仁君も、きっと疲れてる。でも頑張ってる。<br>私はそれを、勝手に原動力に変えて練習に励んできた。でも、怖かった。<br>前日の夜、雲が少し掛かった満月を部屋からぼーっと眺めていた。眠れない。<br>何だかムキになて練習して来たけど、本当に通用する程上達したのかな。<br>第一次予選、どうか通りますように。８月にある全日コンクールに向けて、このコンクールの結果で自信につなげたい。怖いけど、怖さより何か綺麗な紙に包まれたプレゼントを、<br>目の前にした時の気持ちに似た感情が心を支配していた。<br><br>ーーーーーー第一次予選<br>緊張で震える手を押さえるのが大変だった。<br>両親には見に来ないでと頼み込み、一人で来ていた。<br>あ～、次の次だ。どうしよう。。皆、凄く上手い。<br>ハンカチが手放せなくて、震えていると奥山さんが楽屋に入って来た。<br>楽屋が一瞬ざわめいた。皆、チェロ奏者だから知ってるんだ。<br>「奈々子ちゃん、どう？緊張してるでしょ？」<br>「は、はい。どうしよう、震えが止まらなくて。」<br>情けない顔をする私に奥山さんが耳打ちをした。<br>「さっき、会場を裏から見たけど、多分、奈々子ちゃんが今一番チェロを聴いて欲しい相手が一人で一番遠くの席に座ってる。」<br>「え？じ、仁君？」<br>私が聞き返すと奥山さんは優しく微笑んで頷き、私の肩をぽんと叩いて言った。<br>「その人の事を想って、その人の心に届く音を出せたら、結果はどうでも成功だと思う。」<br>ずっと会ってなかった仁君、私は試合も見に行ってないのに、私のコンクールには来てくれてる。<br>しかも一人で、私のチェロを聴きに。<br>急に緊張の糸が解けたような気がした。<br>舞台に上がると客席は薄暗いのに、仁君はすぐに見つけられた。急に家にいるような気持ちになった。<br>仁君、私も頑張ってるから、留学頑張って来てね。<br>心の中で仁君の明るいキラキラした未来を思い描きながら弾いた。気がついたら拍手を貰っていて、<br>自分が演奏を終えた事に気がついた。<br>「奈々子ちゃん、鳥肌たった。完璧に届いてたと思う。」<br>予選結果は同日すぐに発表され、第二次予選、そして本選へと進んだ。<br>本選でも奥山さんから仁君が来ている事を知らされた。第二次予選も来てくれていた。<br>でも、仁君に会うとコンクールの事は何も言われなかった。<br>本選の結果が出た夕方、私は第二位に入選した。第一位は有名な先生の第一教え子。凄く上手かった。<br>私は優勝しなかったけど、結果に凄く満足していた。<br>奥山さんにもとても褒められて、嬉しかった。仁君に結果を教えようかな、どうしよう。<br>迷っていたら久々の三家族夕食会があって、私の両親が誇らしげに皆に話した。<br>皆喜んでくれて、仁君も本を読んでいたけど嬉しそうな顔をしているのが分かって、嬉しかった。<br>そして８月、全日本コンクール前日に、仁君が渡米すると仁君の両親が話していた。<br>これでいい、１７歳の私達はまだ恋以上に大切な未来への舵取りに必死で、<br>器用に両方こなせる程成熟した精神を持ち合わせていないのだから。<br>「ねぇ、皆で成田に行かない？第一だったらお店も結構あるし、私空港って好きなんだぁ♪」<br>椿ちゃんが提案するとすぐに仁君は言った。<br>「いいよ、俺一人で行くって決めてるから。」<br>「えぇ、仁兄つれない。あ、でもおじさん達は行くの？」<br>「いや、仁が一人で行くって言うから。ちび達も空港行きたがってるんだけどね。」<br>「兄ちゃんは冷たいんだ。せっかく見送ってやるって言ってるのに。」<br>一番ちびの康太が言った。この兄妹の中で康太が一番口が立った。<br>「いいよ、一年で帰って来るし。静かな方がいい。」<br>「兄ちゃん、ちゅばきと奈々姉の事は心配するな。ちゅばきは康太が嫁にもらって、奈々姉は健太が嫁にもらってやるから。な？」<br>「ありがとね、健太君。早く大きくなってね。」<br>「おう、10歳の年の差なんて今時珍しくないから安心しろ。億万長者になって楽な生活させてやるよ！」<br>「何だ康太、奈々姉にはもう彼氏がいるの、知らないのか？」<br>そう言ったのは健太の双子の弟、颯太だった。<br>「え？奈々子、あんたお付き合いしている人いるの？」<br>お、親の前でなんてことを。。<br>「いない、いない、全然いない！何を言ってるのよ、颯太。そんな話こんな所で。」<br>「そうよね、この子を嫁にもらいたがってくれるのは健太君ぐらいなものよね。」<br>私の両親は私のドジを知っているので、いつも早く健太君大きくならないかしらねぇ、と冗談を言っていたけど、私は今それどころじゃない人生の岐路に立っていて、こんな事で嫌な気持ちをしたくない。しかも、仁君の前で。<br>「あ、そうだ、もうそろそろケーキでも食べよっか？」<br>慌てて地下の冷蔵庫にケーキを取りに行った。あぁ、キッチンの冷蔵庫に入りきらなくて良かった。<br>多分、今、私の顔は真っ赤だ。<br>「手伝うよ。」<br>入って来たのは仁君だった。<br>「ありがとう。」<br>ケーキの箱を出そうとした時、仁君の指先に手が触れてそこから体中を血が巡って行くのを感じた。<br>「ご、ごめん。」<br>慌てて引っ込めようとした私の手を取って、仁君は冷蔵庫の扉を閉めた。地下の部屋は急に暗くなり、<br>階段から漏れる光が仁君の背中を照らしてシルエットだけがはっきりと見えた。<br>表情が見えない。怒ってる？<br>「奈々子、本当に奥山と付き合ってるの？」<br>「え？」<br>「いや、別にいいんだけど」<br>「あ、あのね、実はね、違うの。付き合ってないの。本当は。」<br>「どういう事？」<br>「うん、実はね。。。」<br>仁君に事の成り行きを話した。ちゃんと話せたか分からないけど、最後までちゃんと話を黙って聞いてくれた。<br>「馬鹿みたいよね、でも、奥山さんは凄くいい人だし、私も面倒見てもらうだけじゃ申し訳ないし。誰が傷つく訳でもないし。。。」<br>「本当、馬鹿みたいだな。」<br>「うん、馬鹿みたい。。。」<br>急に何だか泣けて来た。仁君に話していたら、本当馬鹿みたいに思えて来た。好きでもない人と恋人のふりして、馬鹿みたい。でも、奥山さんには本当に助けられているから、お返しが出来てるならそれでいいと思った。<br>「でも、奈々子らしいかも。」<br>そう言って私の頭をすっぽりと腕の中に包み込み、ぎゅっと抱きしめられた。<br>「誰も傷つく訳じゃない、ってのは事実じゃない。俺は、結構傷ついた。」<br>「え？」<br>「でもいい。何か奈々子が真剣に音楽に向き合えたのは、実際にあの人のおかげだろうし。奈々子は凄い頑張ってるし。」<br>「頑張れてるのは、奥山さんのおかげ、だけでもないんだけど。」<br>「ん？」<br>私をゆっくりと胸から離して、暗闇の中私の目をじっと見つめる仁君の視線を感じた。<br>今言わなかったら、きっとずっと言えない。仁君の事、ずっと好きだったって。仁君の為に弾いたって。<br>「あの、、」<br>言いかけた時、人が下りて来る気配がしてすぐに私達は離れてドアの方を向いた。<br>「仁兄？奈々子？手伝おうか？」<br>やっぱし海君。タイミングが。。。<br>この夜、仁君と二人きりになる事はなかったけど、仁君は終始穏やかな表情で、<br>何だか話せた事で私もすっきりとした。<br>蒸し暑い７月の終わりの夜だった。<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11498116167.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 22:24:41 +0900</pubDate>
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<title>⑭別れと決意</title>
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<![CDATA[ 金曜日は校門付近に若高のみならず、近辺の他校の女子生徒までちらほら集まっていた。<br>加奈っちには真相を話してあるのだけど、結局ふり、にせもの、でも他の人の目からは<br>私と奥山さんは付き合っている事になっている。<br>「奈々子ちゃん、こっち。部活、おつかれ。」<br>校門の外で立っていたのは奥山さん、約束通り律儀に迎えに来てくれた。<br>「すみません、遅くなっちゃって。」<br>「ううん、それよりごめんね、何か思ったより大事になってるみたいで。」<br>奥山さんは周りを見て、私の耳の側でそこっと言った。<br>「松岡君、大丈夫だった？」<br>「え、いや、それはもう気にしないで下さい。」<br>「え？」<br>初めて二人で付き合っているカップルのように帰る道のり、<br>にせものカップルの私達が話したのは、皮肉にも私の大失恋話だった。<br>「、、、そっか。ごめんね、奈々子ちゃん。僕がこんな事頼まなければ、もしかしたら」<br>「いいえ、それは違います。こういう事がなくちゃ、きっと私ずっと仁君を好きで、勝手に盛り上がったり傷ついたり、馬鹿みたいに一人で思い悩む日々が続いていただけだと思うから、逆に良かったって思うんです。吹っ切れた、というか。」<br>「それは嘘だよ、奈々子ちゃん。今でも本当は好きでしょ？」<br>「、、、はい。でも、変に希望は抱かなくなったというか、現実を受け入れて前に進めるというか。」<br>「好きって気持ちがあるのは、そこに必ず希望を見いだしているから、って僕は思うけど。でも、失恋とかそういうのって、芸術に昇華させるにはいい材料だって思う。ちょっと羨ましいな。」<br>「え？失恋が羨ましいって、奥山さん、今イケメン発言ですね？」<br>「いや、本当、そういう意味じゃなくて。僕、奈々子ちゃんみたいに誰かをそこまで想った事って、まだ無いから。しいて言うなら、今の所全ての感情が音楽に向いてて、心にその余裕がないからね。」<br>「それはそれで、かっこいいなぁ。私もそうなりたい。」<br>「そ？恋と芸術は切っても切り話せない関係にあると思うから、経験出来るなら両方同時進行の方がこの先いい気がするけど。」<br>「奥山さんがそういうと、失恋でも凄い素敵な感じに響きますね。」<br>「だって、実際凄い事だと思うよ、心に大きな波が立つ程の相手への想い、芸術は必ず誰かに向けて作られていて、それが誰かの心の琴線に触れる。違う種類の波でも、誰かの心に触れるって事は、全て深いって思う。」<br>奥山さんはなんだか凄く大人な事を言う。<br>「私、今はただ仁君に胸を張って今私はこれをしているって言える未来を描きたい、って思ってるんです。」<br>「奈々子ちゃん、本当に松岡君の事好きなんだね。」<br>「でも大人から見たら、恋ごっこに見えるのかな。いつか、あれは恋に恋してたんだな、って思うのかな。」<br>「いいと思う、それでも。今だから、高校生で未熟で経験がないから、そんな僕達だからこそ出来る恋って、あると思うし、それはそれで大切な事だと思うよ。」<br>奥山さんは、にせものの彼氏にはもったいないぐらい、本当に優しくて懐が深くて素敵な人。<br>何だか申し訳ない気がしてきた。<br>「奥山さん、私達のこの契約期間、本当に好きな人が現れたらびしっと私をふって下さいね。」<br>「ははは、奈々子ちゃって面白いね。でもありがとう。ま、そんな事ないと思うよ、本当今はそんな時間ないから。」<br>奥山さんとは駅で別れて帰る道のり、吹奏楽部の大会の事を思った。<br>最高のオケメンバーで、先輩を送り出したい。<br>７月、仁君が旅立つ前に初めて参加するチェロのコンクールで、ベストを尽くしたい。<br>仁君が見に来てくれなくても、仁君の事を想って弾きたい。<br>雲一つない夜空に浮かぶ三日月が、妙に優しく見えた。<br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11498053538.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 21:50:30 +0900</pubDate>
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<title>⑬妄想と現実の違い</title>
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<![CDATA[ 奥山さんとの取引について日曜日一杯考えていた。<br>音楽と本気で向き合う。<br>頭を抱えてうずくまりたくなる位怖い事に感じられた。<br>けど、同時に胸の奥に言い表せない感情がさざ波のように押し寄せては消え、<br>また押し寄せ。<br>今まで皆と同じ電車に乗り、同じ方向へただ流れて来たのが、<br>突如、自分の人生、将来という駅に一人で降り立った気分だった。<br>私には私の人生がある。仁君や椿ちゃん、加奈っちも奥山さんもそれぞれにある人生。<br>私が今考えないといけないのは、仁君の事？私の事？<br>仁君は自分で決めて、ニューヨークへ行く。それはきっと人生を考えているから。<br>それに比べて私は、仁君が遠くへ行くのが嫌とか、今日の宿題、明日の授業や部活でその先を見ていなかった。<br>奥山さんの取引、先生がつけられない私にはこれ以上にないチャンスかも知れない。<br>もし、仁君がふりだと知らずに私と奥山さんが付き合うという事を知って、<br>何もアクションがなければ、決定的な失恋で、私は落ち込むだろうけど、<br>失恋をしても、私には未来がある。<br>誰にも頼らない、頼れない、自分だけの人生。<br>仁君への想いはきっとずっと消えないと思うけど、仁君が歩き出そうとしている未来に<br>恥じない様な未来を私も描きたい。<br>そう思ったら、迷いは無くなった。<br><br>「もしもし、奥山さん？奈々子です。」<br>「あ、奈々子ちゃん、昨日は変な事お願いしてごめんね。あれ、考えたけど取引なくても、、」<br>「いいえ、取引成立でお願いします。冬までに腕磨く努力します。ご指導。お願いします。」<br>「え？いいの？本当に？松岡君には言わなくて平気？」<br>「はい、私からちゃんと話します。」<br>「そっか、じゃ、宜しく。しばらくは見せかけだけでも、彼女って事で。」<br>「はは、見せかけ。本当、モテる男子も意外に苦労するんですね。」<br>「いや、そんな事無いけど。あ、もし嫌じゃなかったら、毎週金曜日、学校へ迎えに行っても良い？」<br>「え？」<br>「いや、定期的に一緒に帰る位しないと、信憑性ないかな、と思って。」<br>「あ、そっか。そうですね。じゃ、金曜日に。」<br>「うん、ありがとうね、奈々子ちゃん。お互い、頑張ろう。」<br>「はい。」<br>奥山さんの見せかけ彼女、見せかけでもお付き合いするのは初めて。<br>何か妙に緊張して来ちゃった。奥山さんが恥ずかしくないように、ちゃんとしないとなぁ。<br><br>月曜日は何故かまだ誰も知らないのに、妙に誰かに先に奥山さんの事知られる気がして、<br>気が焦って仕方なかった。<br>仁君には私の口からちゃんと話したい。<br>「奈々子ちゃん！何だか久しぶりな感じ！元気だった？」<br>椿ちゃんだった。ここの所モデルの仕事が忙しくて、学校終わると直帰が多くて、<br>週末も仕事だから、殆ど会ってなかったなぁ。<br>「元気だよ、椿ちゃん、この前のヴォーグ、凄い素敵だったよ♪」<br>「ありがとう♪あれ、私も気に入ってるの。海には詐欺だって言われたけど。」<br>「ははは、それ私にも言ってたよ。」<br>「ねぇ、それより仁君の事、聞いた？私昨夜両親から聞いてびっくりして。」<br>「うん、聞いた。もうすぐだね。」<br>「うん、何か小さい時から皆ずっと一緒だったから、変な感じ。」<br>「うん。。。ねぇ、今日仁君は？」<br>「あ、さっき体育館に女子に連れて行かれていたよ。モテ男がいなくなるって知ったら、あの子達悲しむだろうねぇ。罪ね～。ふふふ。」<br>椿ちゃんは年の割に大人っぽい仕草で笑って、また本を読み出した。<br>私は仁君を捜しに体育館へ行くと、泣いている女子、慰める女子が見えたので、<br>見つからないようそっと別の所から体育館へ入ると、中で仁君が一人バスケをしていた。<br>「仁君。」<br>「ん？何？」<br>凄い不機嫌。女子に告白されるのを、極度にいやがる仁君は恐らく、ごめん、という一言を言う度に、本人も傷ついていて、それを消化しきれず不機嫌になってしまう、不器用なところがあった。<br>「ちょっといいかな。話したい事があるんだけど。」<br>「今じゃないと駄目？」<br>「うん、駄目。」<br>「分かった。何？」<br>ボールを抱えて近づいて来る仁君は、やっぱり凄くキラキラしていた。<br>「あのね、私、将来の事を考えてて。色々と。」<br>「うん。音楽の道に進む事にした。だろ？」<br>「え？そ、そう。。。よく分かったね。」<br>「誰でも分かるよ、奈々の音楽好きは。で？」<br>「うん。で、先生をお願いする事になったの、お、奥山さんに。」<br>「ふ～ん、良かったんじゃない？あの人、有名らしいからね。」<br>少しぐらい焼きもちやくのかと思いきや、落ち着いた顔をして私を見る仁君に、ちょっとがっかり。<br>「それで、その変わりに、、」<br>言いかけた時に凄い勢いで体育館の扉が開き、走って来たのは海君だった。<br>「奈々子！奈々子、お前本当なのか？若高の奥山と！」<br>「え、今仁君に調度それを」<br>「何慌ててるんだよ、海。あの人が先生になってくれるって海の耳に入る程噂になる事？」<br>「違う、何言ってるんだよ、仁兄！先生どころか、それ以上だ！」<br>「はぁ？」<br>いや、まさか海君、、<br>「奥山と奈々子は付き合ってるんだって、さっき聞いたんだ。嘘だろ、奈々子？」<br>「え？」<br>やっぱり、、、言うと思った。タイミングの悪さも昔から変わらない海君。。<br>「いや、違うの。あのね、」<br>「違うって、付き合ってないってこと？」<br>「うん、え～と、付き合ってる、、、のかなぁ。でも色々あって」<br>「ほら！やっぱり！何だあいつ！あんなのの何処がいいんだ？何を血迷ったんだ、奈々子？」<br>「だから、違うの、ちょっと説明しないと、誤解が」<br>「誤解も糞もないだろ？奈々子が、ずっと一緒に育って来た奈々子が見知らぬ男と付き合いだすなんて、俺は認めない！だろ、仁兄？」<br>「、、、奈々子が決めた事に、認めるも認めないもない。」<br>仁君、あっさり認めちゃうんだ。。。やっぱり、あのキスは意味のないものだったの？<br>「何言ってるんだよ、仁兄！あんな見ず知らずの男に」<br>「くだらない。そんな話してるなら、俺は帰る。」<br>「ちょ、ちょっと待って仁君、私まだ話が」<br>「俺は話す事無いから」<br>そう言ってボールを思いっきり遠くの壁に投げつけ、仁君は体育館を出て行った。<br>ボールのはじけるばーん、という音だけが虚しく体育館に響いた。<br>「奈々子ぉ、、何で奥山なんかと、、」<br>海君の質問に答える気力はなかった。<br>私の１４年の片思いは、あっさりとはっきりとした答えを出した。<br>仁君は、私のこと好きじゃなかった。私と奥山さんのこと、くだらないと言って出て行った仁君、<br>興味が無いんだ。私の事。<br>キスされて勘違いしそうになってた自分が妙に虚しくて、泣けて来た。<br>自分に対する怒りと虚しさと、やり場の無い気持ちにトイレでしばらく泣いて、<br>普通の顔して教室に戻ったら、もう噂を嗅ぎ付けたクラスメイトに取り囲まれ、<br>一週間質問攻めだった。<br>仁君は、私に話しかける事は一度もなかった。朝会っても、挨拶どころか目も合わせてくれなかった。<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11497940021.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 19:07:52 +0900</pubDate>
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<title>⑫不安と希望　後半</title>
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<![CDATA[ 土曜日。<br>ラフな括弧をして奥山さんと待ち合わせの駅に行くと、何だかお洒落な美男子が立っていた。<br>「お、奥山さん？？何か、制服とイメージが違う！」<br>「奈々子ちゃん、おはよう。これ、変だった？」<br>「いえ、凄くかっこいいです。」<br>「良かった。じゃ、行こっか？」<br>そう言って奥山さんは当たり前のように私の手を握った。焦って前髪を払う振りをして手をほどいた。<br>「あ、ごめん。つい癖で。変な意味ないから、気を悪くしないで。」<br>「え？いや、全然。私こそなんか、ごめんなさい。」<br>何か変に意識した自分が恥ずかしい。仁君に何だか悪い気がして。付き合ってもないのに。<br>「そうだ、松岡君だっけ？彼は奈々子ちゃんの彼氏？」<br>「い、いえ、幼なじみです。」<br>はいって、言いたい所だけど、キスされても告白されてないし。<br>「そ、何か松岡君、試合中に奈々子ちゃんの方ばっかり見てた気がしたから。」<br>「え？仁君が？いやいや、それは無いです。私ずっと見てたけど、目なんて一度も合ってないし、、あ！」<br>「あ～、そういう事？奈々子ちゃんは恋心を寄せてる訳なんだ？」<br>「いえ、そうじゃなくて、ただ、その。。」<br>「いいよ、別に僕誰にも言わないし。言う相手もいないしね。上手く行くといいね。」<br>「あ、はい。。。」<br>奥山さん、凄いフレンドリー過ぎて、話し過ぎてしまいそうで怖い。<br><br>奥山さんのお家は凄い広くて、奥山さんの練習部屋は防音がしっかりしてあるプロ使用だった。<br>「すっごい！！こんなの初めて見た～！」<br>「うん、これは僕も両親に感謝してる。じゃ、早速いきますか？」<br>奥山さんの選曲を何曲か弾き終えると、奥山さんが凄く音の透る拍手をしてくれた。<br>「やっぱり思った通り。奈々子ちゃん、才能あるよ。鳥肌たった。」<br>「いや、奥山さん、大げさ過ぎる。でもありがとうございます、最近の中で一番気持ち良く弾けました。」<br>「うん、音が直接ここに来た。」<br>そう言って胸をとんとんとした奥山さんの後ろの扉が開くと、<br>お母さんらしき人が入って来た。<br>「あ、初めまして、お邪魔しています。山野奈々子と申します。」<br>「あら？お友達が来ていたのね。こんにちは、剛の母です。」<br>そう言ってお母さんが手を差し伸べたのは、私からは随分遠い場所だったので、<br>焦って握手をしに走った。<br>「あ、ごめん、奈々子ちゃん。僕の母さん、目が見えないんだ。」<br>「え？」<br>「あら、ごめんなさいね、変な所で手を出しちゃった？」<br>「い、いいえ。そんなことないです。」<br>「そう？あなたもチェロ弾くのね。」<br>「え？あ、聴いていたんですか？」<br>「ううん、でも手を触ると分かるの。目が見えないと他の事に神経が使えるから、ちょっと便利よ。」<br>そう言って奥山さんのお母さんは綺麗な笑みを浮かべた。<br>本当に綺麗な人。<br>「じゃ、ごゆっくりね。」<br>「ありがとうございます。」<br>「始めに話した方が良かったね。母さんの事。」<br>「いえ、別にそんなことないです。」<br>「さっき手をつなごうとしたの、これで分かったでしょ？」<br>「あ、、あ、そう、ですよね。ごめんなさい、私、何だか」<br>「ううん、あれが正常な女子の反応、だと思うけど？でも、僕が音楽に拘るのは母さんの為、というか、そう言って結局全ては自分がしたいから、なんだけど。」<br>「お母さん、音楽お好きなんですね。」<br>「うん、凄く。音楽を聴いている時は目が見えない事の不自由さを感じないから、自由な体に魂が宿って世界中を見て回っている気分になる、って言ってた。」<br>「その気持ち、少し分かります。」<br>「うん。だから、何か才能があって音楽を本当に好きな人が、音楽の道をちゃんと目指さないの、何だか見てられない。奈々子ちゃんみたいに。」<br>「え？」<br>「奈々子ちゃんの気持ちは分かるよ、音楽で食べて行ける人なんて本当に一握り。それに人生掛けていいかって迷うのは当然だと思う。でも、奈々子ちゃんと７年前に話した時、本気で悩んでいる姿を見て、本物だと思った。でもその時の僕も子供だから確信ではなくて、今また出会って聴いてみて、本当に思う。もし、奈々子ちゃんが少しでも音楽の道を考えているなら、嬉しいなって。」<br>「私、迷ってます、正直。特に著名な先生についてレッスンしている訳でもないし、自信がないんです。」<br>「僕は今年推薦枠で受験をする予定で、もし受かったら、冬から家に練習しに来ない？」<br>「え？でも、私、その、、」<br>「先生は、僕。じゃ申し訳ないけど。しかも無料で、お茶つき。どう？」<br>「え、でもそれはさすがに申し訳ないです。」<br>「申し訳ない、って思うなら一つ条件つけていい？」<br>「あ、お料理以外なら何でも出来ますけど。」<br>「僕が高校生の間、つまり後１０ヶ月間、付き合っているふり、してもらえるかな？」<br>「え、え～！！！！そ、それはちょっと」<br>「無理かな？松岡君に怒られちゃうかな？」<br>「いや、それはないけど、付き合っている訳じゃないし、でも、、」<br>「振りでも僕が相手じゃ不服、かな？」<br>「いえ、むしろ私がお相手じゃ申し訳ないですし、あのファンクラブ女子が何と言うか、、」<br>「だから、ふりして欲しいんだ。余りにしつこく追われて本当に疲れて、辞めて欲しいって言ったら、彼女が出来たら辞めてくれるって約束してくれたんだ。でも、僕は今そんな事を考えている時間ももったいない。だから、ふりをしてくれる相手がいてくれるだけで、凄く助かるんだけど。」<br>「いや、でもやっぱり、、、」<br>「分かった、じゃ、松岡君には僕から話しておくから。それでいい？」<br>「いや、それはおかしくないですか？だって、そんな事したら仁君、何で俺にいちいちそんな事話にくるんだって言うかも知れないし、そしたら私の気持ちがばれちゃうかもしれないし、、、」<br>「う～ん、そっかぁ。じゃー、無理かなぁ？」<br>「う～ん、少し考えさせて下さい。」<br>「うん、時間はあるからじっくり考えて。」<br><br>奥山さんの家から帰る途中、余暇ならぬ事が頭をよぎった。<br>もしかしたら、これがいい切っ掛けになるかもしれない。<br>私が奥山さんに付き合って欲しいと言われたと言ったら、仁君が私に駄目だー、奈々子は俺のものだ～、なんて言い出すかも？<br>う～ん、悪くないわ。しかも、コンクールで優勝している、しかもあの凄い腕前の先生が無料でつくなんて、普通じゃ考えられないし。<br>音楽は、誰も差別しない。皆が自由で平等。<br>何だか心がざわついてきた。仁君、なんていうかな。<br>私、真剣に将来に向かって一歩、進めるのかな。あ～、木漏れ日でちらつく視界に音楽と仁君と見え隠れして、何だかクラクラする。<br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11497554930.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 06:39:44 +0900</pubDate>
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<title>⑪不安と希望　前半</title>
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<![CDATA[ 仁君とキスをしてから、一度も仁君からデートの誘いはなく、<br>会っても今まで通りで、本当にキスされたのか自信がなくなって来てしまった。<br>もしかしたら、私の妄想がなせる技で、実はあれは現実には起きてないんじゃないのかな、と。<br>だから加奈っちにも話せずに、モヤモヤした気持ちを抱えたまま只管部活に異常な力を入れていた。<br>６月で先輩達が引退をする。<br>それもあって部活の終わりは８時、９時は当たり前となっていた。<br>「加奈っち～、私もう燃え尽きてしまいそう。。」<br>「奈々っち～、私も宿題がたまって、先生に呼び出された～。」<br>８時に３分休憩を貰いトイレに駆け込む波の中、加奈っちと廊下の窓から電気のついている体育館を眺めていた。どこの部活も最近は遅くまで練習しているから、仁君と帰りがばったりってなりそうなものだけど。<br>「あ～、なんか良い事ないかなぁ～」<br>加奈っちの口癖。でも本当、毎日何だか必死で、ふと気が抜けるとそう思っちゃう。<br>「あ～、仁君、もうすぐ居なくなっちゃうんだ。。。」<br>思わず口からぽろりと出てしまった。<br>「え？何？どうしたの？転校でもするの？」<br>「あ、違う。何でもない、というか聞かなかった事に。」<br>「駄目！絶対駄目！私達の間に隠し事はなしでしょ？言え～！吐け～！吐くんだ、奈々っち～！」<br>休憩が終わったので何とか逃れたけど、その後もずっと聞かれ続け、<br>とうとう話してしまった。<br>「え？！本当？１年も？どうするの、奈々っち？あっちに金髪ガールフレンドとか出来ちゃうかもよ？アメリカ女は強引だからね～」<br>「え？そうなの？そんな事ある？」<br>「あるに決まってるじゃん。やつらの押しの強さは半端ないよ、絶対。奈々っちみたいに１４年も黙って片思い、なんて乙女心はきっと通用しないというか、存在しなそう。」<br>「それ、偏見じゃない？それに仁君だってそんな、外人さんに言い寄られたからって。。」<br>「いや、ああいうタイプは押しに弱いかも。うん、自分の感情を余り表さない人って押されたらそれ受け入れちゃいそう。きゃーーー、松岡君とパツキン美女、絵になるかも～」<br>「加奈っち、私の味方じゃないの？」<br>「あ、ごめん、冗談冗談。でも、８月なんて気末終わったらすぐだよ？冗談抜きに、どうするの？」<br>「分かんない。仁君と３歳から今までそんな離れた事無いから。」<br>「そっかぁ、何か実感湧かない感じってやつだね。」<br>「うん、全く。」<br>１年、でも１７歳の１年はとても貴重で長い物に感じられる。帰って来た頃には私、１８歳だよ。<br>「奈々子～！久しぶりに会ったね～」<br>走って来たのは海君だった。確かに家へしのびこんだ件以来、椿の仕事先でスカウトされて、モデルの仕事をし始めた海君は、他の学校からも見学人がくる程人気者となっていた。<br>「海君、今日は部活出たのね？」<br>「うん、久々に運動したら気持ち良かったけど、凄いぴりぴりしてて、ちょっとおっかなかった。奈々子はいつもこんな時間まで練習してるの？」<br>「うん、大会近いし。頑張らないと。」<br>「そっかぁ、見に行きたいけど、俺その日仕事だからなぁ。」<br>「仕事、楽しいんだね。良かった。椿ちゃんも一緒なの？」<br>「仕事はまぁまぁ。椿と一緒になることなんて、殆どないけど大抵待ち合わせして一緒に帰ってる。」<br>「そっかぁ、椿ちゃん、この前ヴォーグの表紙になっててびっくりしちゃった。凄い大人な感じで綺麗だった♪」<br>「あれ、詐欺だよね。だって、椿は弟の俺の大事に取っておいたアイスを食べる、食いしん坊の姉なのに。」<br>本当、海君っていつも笑わしてくれる。椿ちゃんはもの凄い細いのに、昔からアイスが大好きなんだよね。<br>「今晩は。奈々子ちゃん」<br>声の主は若高の主将、奥山さんだった。<br>「あ！奥山さん、お久しぶりです！練習帰り、ですか？」<br>「いや、奈々子ちゃんに会いに。連絡全然くれないから、来てしまいました。」<br>「ごめんなさい！すっかり忘れてた！！」<br>「ははは、素直だね、奈々子ちゃん。忘れられちゃってたかぁ。」<br>「いや、そういう意味じゃなくて。あの、ごめんなさい。」<br>「ううん、いいんだよ。ただ、もし良かったら少し話出来ないかな？」<br>「あ、はい。」<br>「俺も参加していいの？」<br>「出来たら二人が良いんだけど、いいかな？神川君。」<br>海君はぶすっとしてその場を立ち去ったけど、加奈っちは主将に見とれて話を聞いていなかった。<br>「加奈っち、また明日、でいいかな？」<br>「あ、あぁ、そうだよね、うん、またね。さようなら、奥山さん。」<br>「さようなら、加奈ちゃん。」<br>こちらをちらちら見ながら去る加奈ちゃんを見送った後、奥山さんに着いて近くのスタバに入った。<br>スタバに来ると仁君を思い出す。コーヒー好きだからなぁ、仁君。<br>私はオレンジジュースを御馳走してもらい、奥山さんとチェロの話をし始めたら、<br>７年の時がばっと過ぎ去ったように沢山話が出来た。不思議な感じがした。<br>「奈々子ちゃん、やっぱり一度聞かせて欲しいから、家へ来てもらえるかな？」<br>「え？でも、それは図々しい気が。」<br>「いや、頼んでいる僕の方が図々しいよね。ごめん。しかも何様だって感じだよね。でも、奈々子ちゃんと僕は何となく目指している物が一緒な気がするから、やっぱり聴いてみたい。」<br>「いや、私芸大行ける程能力ないし、おつむも無いし。。。」<br>「そんなのやってみないと分からない。じゃ、今週の土曜日。駅で待ち合わせ。チェロは持って来なくていいよ、僕のを使えばいいから。重たいしね、あれ。」<br>気がついたら10時半を過ぎていた。<br>「あ！！ごっめん！こんな遅くまで付き合わせて！ご両親に電話した？僕、誤りの電話した方がいいよね？」<br>「あ～、大丈夫です。部活で遅くなるって言ってあるから。帰れば大丈夫です。」<br>「じゃ、家までは送らせてよ。暗いし、さすがに女の子一人で返す訳にいかないし。」<br>「いえ、家までの道のり本当に安全だし、絶対大丈夫です。ありがとうございます。」<br>最後まで送って行くときかなかった奥山さんを何とか説き伏せて、いつもの桜並木をとぼとぼ歩く。<br>チェロの世界、未来、プロ、作曲、か。。。<br>得体の知れない不安に突然襲われて身震いがした。<br>「奈々！」<br>凄い怖い顔をして立っていたのは仁君だった。パーカーを羽織って、ランニングでもしていたかのような格好をしていた。<br>「仁君。こんな時間に走ってたの？」<br>「え？あ、あぁ。てか、こんな時間まで練習ってありえんの？」<br>「あ、練習は８時半に終わったけど、奥山さんが来て、話してたら遅くなっちゃった。」<br>「奥山、、、若高の？」<br>「うん、あの人ね、７年前に溝口さんのライブで会っていてね、先月７年ぶりに再開して、それで」<br>「へぇ。いいから、帰るぞ。」<br>急にむっとした顔をして私の手首をつかみ、ずいずい歩き出した仁君。<br>数週間前に手をつないだ感じや、ましてやキスをした相手とは思えない程、いつもの幼なじみの仁君だった。<br>「待って、ちょっと早い、仁君。私の歩幅じゃ追いつけない！」<br>仁君は突然止まって振り返ると、私の事をじっと見つめた。あの優しい瞳で、じっと。<br>「こんな時間まで帰らなかったら、誰だって心配する。人に心配かける様な事するの、奈々子らしくない。」<br>「え？ご、ごめん。。。」<br>「帰ろう。ご両親が心配してるから。」<br>「あ、親から電話とかあったりしたの、もしかして？」<br>「別に。でもまだ帰ってないって言ってたから。きっと心配してる。」<br>もしかして、私が帰ってないのを知って探しに来てくれていたの？<br>「仁君、、ありがとう。」<br>「ん。」<br>「私、仁君いなくなっちゃったら、迷子の子猫だね」<br>「変な犬のお巡りに着いて行くなよ。俺は１年で帰って来るから。そしたら毎日、、」<br>「毎日？」<br>「何でも無い。ほら、着いたから、俺も帰るよ。」<br>「あ、ありがとう！気をつけて帰ってね！」<br>「ん。あ、奥山と、どうしたの、結局？」<br>「え？あぁ～っと、今週の土曜日、チェロ聴かせて欲しいって言うから、お邪魔する事になってるんだけど。。」<br>「あ、そ。じゃ、お休み。」<br>「お、お休みなさい。ほんと、気をつけてね。」<br>「だから、何度も言うけど、こう見えても男だから」<br>分かってる、足の先から頭のてっぺんまで、しっかり男の人だよ、仁君。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11497548067.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 05:37:08 +0900</pubDate>
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<title>⑩二人の週末　後半</title>
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<![CDATA[ デザートも味が分からない位何故かそわそわして、お店を後にした。<br>仁君は少しうつむいたまま私の先を歩いていた。<br>ひゅっと風が頬を滑り髪が靡いた。生暖かい湿った香り。雨が降るのかな？<br>「奈々、池の方行こうか。」<br>「うん。」<br>この池は、小さい頃子供同士で映画を見に来た後、必ずよって遊んだ公園があって、<br>よく池にきていた鳥に、椿ちゃんと名前をつけては仁君達に呆れられてたっけ。<br>「幸子、まだいるかなぁ～？」<br>「もう幸子の孫とか玄孫とかだろ？」<br>あ、そうね。もうそんなに来てないんだっけ。<br>「座る？」<br>「うん。」<br>促されるまま池の前のベンチに座ると仁君が私の真横に座った。<br>こんなに近くに座られたら、通る人は私達の事恋人だって思うかな？<br>「奈々子、、」<br>仁君が奈々子って呼ぶの、小学生以来。小学生の時クラスの男の子達が私を奈々おと呼び出して、<br>唯一私を奈々子と呼んでいた仁君は、男の子達にからかわれて、それから私を奈々と呼ぶようになったんだっけ。何か、急にちゃんと名前で呼ばれると、くすぐったい。<br>「何？仁君。」<br>「親からその内聞くと思うけど、その前に話しておこうと思って。」<br>「何を？何？改まってどうしたの？」<br>何だか怖くなって来た、病気だとか言わないでしょうね？<br>「俺、今学期で学校しばらく休むんだ。」<br>「え？何それ？どういう事？休むって？休んでどうするの？」<br>「８月から１年間、学校の交換留学制度でニューヨーク行く事になった。」<br>「え？入浴？なんて。。って！アメリカ？しかもあんな遠く？」<br>びっくりして立ち上がってしまった。だって、アメリカ？しかも東海岸で遠い方？<br>「うん。でも１年で帰って来る予定だけど。」<br>「１年って、でも仁君誕生日が１０月なんだよ？み、皆で一緒にお祝い出来ないの？」<br>「うん、出来ない。でも、一年だから。」<br>「一年だからって、だって。。」<br>スイート１７よ？私、さっき勝手にもうこのスイート１７はスイートになるのかもって妄想し始めちゃったのに、１年も会えないの？<br>「奈々子には一番始めに話しておこうと思ってたから。」<br>そう言って仁君は仁王立ちしてる私の前に立って、私の目をまっすぐに見つめた。<br>二人の間の空気が止まった気がした。<br>「あ、雨？」<br>額に一滴感じた瞬間に凄い勢いで雨が降って来た。<br>「ひゃー！傘持って来てない～！」<br>「奈々子、こっち。」<br>そう言って私の手を取って仁君は大きな木下に私を引っ張って行った。雨は降るけど、木下は意外にも屋根があるように雨がしのげた。少し濡れちゃった。<br>「髪、濡れてる。」<br>仁君が鞄から大きなタオルを取り出し、私の頭にふわっとかぶせて少しくしゃっと髪を拭いてくれた。<br>「ありがとう、仁君。。。あ！！」<br>雨の湿気で頑張ってアイロン掛けた髪の毛はくるくるに戻ってしまっていた。<br>「あ～ぁ、椿ちゃん風ヘアがぁ。。。」<br>「奈々子はそのくせ毛が可愛いよ。」<br>可愛い、、って、仁君の口から初めて聞いた？私、今褒められてる？<br>「ほ、ほんと？？」<br>つい聞き返してしまった。だって、仁君が可愛いって。<br>「ほんと。奈々子は、そのままが一番いい。」<br>あの目眩がする程優しくてかっこいい笑顔で、まっすぐと澄んだ瞳で私を見つめてそう言った。<br>口をついて、好き！！！って言ってしまいそうになった。<br>でも変わりに何とか言えたのは一言。<br>「じ、仁君も。」<br>「ありがと。」<br>仁君は私の頭にあったタオルを突然二人の頭にばさっと掛けて、そっと私にキスをした。<br>ファーストキス。しかも、仁君と。<br>一瞬の出来事に私は目をつぶる事もなく、じっと仁君を見つめたまま。<br>仁君も優しく私にキスをした後、私の目を黙ってじっと見つめていた。<br>無言のまま、時間が止まったようだった。<br>はっと気がついたら雨も止み、仁君の頬を夕日が照らしていた。<br>「伯父さん達、帰って来てるだろうから、帰ろっか？」<br>「う、うん。」<br>どうやって家に帰ったのか、どうやって仁君とさよならしたのか、全く思い出せない。<br>ただただ、仁君がタオルの中で私にした凄く小さな、優しいキスの事だけが<br>頭の中を駆け巡っていた。<br>仁君、私の事、好きなの？<br>キスしてくれたけど、好きとか付き合って欲しいとか言われてない事に気がついた。<br>そしてもっと大きな事に気がついた。仁君、アメリカに行ってしまうんだ。<br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11497537620.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Mar 2013 05:10:48 +0900</pubDate>
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<title>⑨二人の週末　前半</title>
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<![CDATA[ 次の日の朝。<br>案の定寝坊をしてしまい、起きたら９時を過ぎていた。<br>海君は椿の仕事に着いて行く約束で朝８時にしぶしぶ先に帰ったって仁君が言った。<br>「海君、何で突然来たんだろう？しかもこそこそしないで普通にインターホンおして来たら良かったのに。」<br>「そういう年頃なんだろ。」<br>「どういう年頃よ、それ？」<br>聞き返すと仁君は優しく微笑みながら返事をせず、私に朝食を作ってくれていた。<br>「あ、ごめん。。。結局朝ご飯まで仁君に作らせちゃったね。」<br>「暇だったからいいよ。ほら、食べよ。」<br>仁君の作ってくれたエッグベネディクトはまた究極に美味しかった。これは最近叔母さまがこってよく作っているらしく、作っているのを見て覚えたとか。<br>「奈々、今日どうせ暇だろ？映画見に行く？」<br>「え？映画？仁君と私？ふ、二人で？」<br>「、、、嫌ならいいけど。」<br>「とんでもないです！お願いします！」<br>慌てて立ち上がり頭を深々下げると、仁君は笑った。<br>わ～い♪仁君と二人で映画♪何の映画でもいい♪こんなの初めて♪しかも仁君が誘ってくれた♪<br>ーーーーー<br>「まだ～？」<br>仁君が下で待っている間、私は未だに洋服と顔と髪の毛のチェックを入念にしていた。<br>だって、初デートだし。恋人同士でなくても二人でお出かけってことはデートだし。<br>椿ちゃんがモデルをしているので、時々お洋服やバッグをくれるのだけど、<br>全く使用するシチュエーションがなかったから、今日はそれを総動員してお出かけ♪<br>少しヒールのあるバレリーナシューズにぴたっとしたジーンズ、上は白の爽やかなシャツ。<br>中には可愛いキャミをきてちらリズム。うっふっふ。<br>髪の毛はいつもの通りじゃ何だから、１時間掛けてアイロンで伸ばしてストレートにして、前髪以外下ろしてみた。お化粧はまだ出来ないけど、椿ちゃんに貰ったリップグロスを少しつけてみた。仁君、何て言うかな？<br>「ごめん、お待たせ～♪」<br>浮き足立って下りて行くと玄関で不機嫌そうな顔をした仁君が私を見て止まった。<br>「どう？どう？少しは女子力あるでしょ？」<br>仁君は何言わずに私をじーっとというかぼーっとというか眺めて、はっとしたように言った。<br>「ん。映画始まるから、行こ。」<br>それだけ？今日は凄く可愛いね、とか、何か無いの？<br>「せっかくお洒落したのに～。仁君、つれない。」<br>バレリーナシューズを履きながら口を尖らせる私に一言。<br>「何か、ちょっと椿っぽいな。」<br>「本と～？？ヤッター！ありがとう♪」<br>椿ちゃんっぽいってことは、私にとって凄い褒め言葉♪嬉しい♪<br>映画館は隣の駅で、そこまで仁君の後を何となく落ち着かない気持ちで着いて行った。<br>映画は調度始まる５分前で、何だか分からずにとにかく着いて行った。<br>きっと、ロマンチックな映画で、最後は感動してそのまま雰囲気に呑まれて手をつないだり、<br>と妄想に火がつき始めた途端、始まった映画は色気のなさそうなアクション映画だった。<br>く。。。初めて二人で見た映画がアクション映画って。<br>と思ったけど、凄いハラハラドキドキ、凄く怖くて面白くて楽しい！！<br>大きな爆発音に弱い私は気がつかない内に（本当に）仁君の手を握っていた。<br>映画が終わり、エンディングの曲が流れて人が立ちだした頃、<br>私は映画の余韻に浸っていたら、仁君の手を握っていた事に気がついた。<br>「あ！！ご、ごめんね。。。」<br>手を慌てて離すと、仁君が私の手をぱっと取り直し言った。<br>「お腹空いたから、何か食べいく？」<br>「ふん。。。」<br>変に気の抜けた返事をしてしまったのは、仁君が私の手を握っているから。しかも仁君から私の手を取った。<br>仁君が私の手を握ってずいずい歩いてる。<br>仁君の手は大きくて、凄くしっかりしていて、昨夜頬に触れた手先の感触を思い出し、胸のドキドキが止まらなかった。<br>今まで片思いの私は、若干幼なじみの仁君と恋心を抱いている仁君を別にして見ていて、<br>普段家族で会ったりする時、男の人って意識しないでいたけど、<br>幼なじみの仁君も、私が恋する仁君も同一人物で、生々しく私の前に存在していて、<br>そして凄く男の人らしく私の手をしっかり握って歩いていた。<br>急に恥ずかしくなって来て、顔が火照って来るのが分かった。<br>どうしよう、今顔見られたくない。。。<br>「奈々、ごめん、暑かった？」<br>仁君がぱっと私の手を離した。私が耳まで赤いのを、暑いからだと思ったらしい。<br>う～、手はつないでいたいけど、このままつないでいたら、私は勘違いに火がついて、<br>ついでに顔は夏の夕焼け並に真っ赤になってしまう。。。<br>「お、お腹空いたね。何食べる？」<br>恥ずかしさを隠す為に言ったら、仁君が少しうつむき加減に答えた。<br>「奈々が好きなマクロビの店、行く？」<br>「え？いいの？前はあんな女子ばっかりの所って言ってたのに？」<br>「行くの？行かないの？」<br>「い、行きます！」<br>このカフェ、大好物で月に一度は必ず行ってるんだ♪<br>マクロビのカフェ、商店街にある小さなお店を女性が一人で切り盛りしていて、<br>加奈っちと椿ちゃんも常連さん。<br>「こんにちは～。」<br>お店に入ると意外にもカップルばかりだった。<br>「こんにちは、奈々子ちゃん。お？イケメンの彼氏？初めまして。」<br>「いや、彼氏なんて仁君に悪いよ、幼なじみです。」<br>仁君は表情を変えずに会釈をした。<br>「そっか。席調度中庭向きの二席空いてるからそちらにどうぞ。」<br>このお店は中庭にハーブやお花が綺麗に植えられていて、メルヘンな感じで大好き。<br>「ねぇ、仁君、このお庭素敵だと思わない？何か、妖精が出てきそうじゃ無い？」<br>「ん。」<br>何だかちょっとご機嫌斜め？<br>ランチセットを二人で食べている間も、私が一方的に話して、仁君はうんとか、ああとか返事が上の空。<br>「仁君、コーヒーでしょ？ケーキは苺とチーズ、どっちがいい？どっちも美味しそうだね～♪」<br>「じゃ、両方頼んで二つ奈々が食べたら良いよ。俺はコーヒーだけでいい。」<br>「え？いいの？ラッキ～♪」<br>仁君、甘いものそんなに得意じゃないんだったなぁ。ここのお店のはそんな甘くないけど、お言葉に甘えて頂いてしまおう。ふっふっふ。<br>「おっいし～♪♪幸せ～♪一口いる？」<br>あ～ん、何てね～。出来たらいいけど、間接キッスになっちゃうし、って考え過ぎ？<br>「うん。」<br>え？うんって言った？いるの？<br>「あ、じゃ、どーぞ。」<br>若干震える手で一切れケーキを切り、仁君の口に運んだ。手の震えが目に見えて分かる。恥ずかしい。。<br>「奈々、別に俺は奈々の手を食べる訳じゃないんだから。」<br>そう言ってフォークを持っている私の手をぎゅっとにぎって、そのままケーキを口に入れた。<br>「うん、美味しい。」<br>私、何だか夢の中に居るみたい。仁君が私の食べたフォークでケーキを食べて、美味しいって言って、<br>私の手をまだ握ってる。<br>「奈々、、」<br>「ん？な、何？仁君」<br>「食べ終わったら少し散歩する？」<br>「あ、うん。」<br>私の手を離しコーヒーを飲む仁君。もしかしたら、もしかするのかも？<br>昨日の失恋は実は夢で、今日のこれが現実、いやもしかしたら、それ、逆かも？<br>まだ寝てるのかな、私。あり得る、私だし。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11497276582.html</link>
<pubDate>Sun, 24 Mar 2013 20:42:03 +0900</pubDate>
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<title>⑧親の留守に。。。ーパート２−</title>
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<![CDATA[ もう11時、宿題も終わったし、寝よっかな。<br>「仁君、私もう寝よっかな？」<br>「あ、そ。おやすみ。」<br>あっさり。。。別に何も期待してないし、慎吾ちゃんみたいに、良い夢見ろよ的発言で笑わせてくれるキャラじゃないけど、何かなぁ。<br>「仁君、和室にお布団敷いてあるからね。寒かったら毛布押し入れにあるし。」<br>「大丈夫、何処に何があるかは昔から来てるから大体分かる。」<br>「そ、だよね。じゃ、お休み。」<br>はぁ、、緊張した。<br>自分の部屋に戻ったら何だか気が抜けちゃった。仁君、パジャマになってもかっこ良い。<br>眼鏡をかけてもかっこ良い。かっこいい人を好きになるって、私みたいな人が一番やっちゃいけない過ちなのかも。でも、仁君がこんなに究極美男子に成長するなんて３歳の私には分からなかったし。<br>くだらない事考えちゃうから早く寝ないと。<br>ーーーカチ、カチ、カチ<br>時計の秒針がもの凄く騒々しく聞こえ、眠れない。<br>仁君、もう寝たかな？もう12時過ぎてるしね、寝たよね。<br>ガタガタ、がシャーン<br>外から物音がしてすぐに部屋の扉が開いた。<br>「きゃっ！」<br>びっくりして短い悲鳴を上げたら私の背中にさっと手を回し私の顔の真横に顔をつけ、口に人差し指をあてたのは仁君だった。<br>「しっ。誰か外にいる。俺見て来るから、奈々はここから絶対出るなよ。」<br>仁君が余りにも近くてドキドキして心臓が喉の奥でどくどくなってるのが感じられた。<br>「でも、仁君、危な。。」<br>私が言いかけると仁君がすぐに私の顔の真っ正面に顔を近づけて言った。<br>「奈々、こう見えても俺は男だから。奈々に何かあったら俺は困る」<br>「え？」<br>「奈々の両親にどう説明するんだ？奈々は動くなよ、絶対。」<br>そう言う事ね。外で確かに誰かが動いている気配がして、ドキドキ以上に緊張し始めてトイレに行きたくなって来た。<br>気配を消しながら下へ下りて行った仁君、後ろ姿が本当に男の人になっていた。<br>がた、がちゃがちゃ。<br>玄関のドアの鍵が開く音がした。仁君が外に出たのか外から入ったのか、私には分からない。<br>と思った瞬間に仁君の声と情けない男の声が聞こえた。<br>「誰だ！」<br>「痛いっ！仁兄！！お、俺だよ！海！」<br>え？海君？<br>「え？海？？？何やってんだ、お前！こんな時間に人の家にしかも玄関から忍び込んで！鍵どうして持ってんだ？」<br>「椿の部屋から拝借して来たんだよ。イッテーなー、仁兄本気で腕折ろうとしなかった？」<br>「それはお前が泥棒まがいのことするから、てか、何で来たんだ？」<br>「親が話してるの聞いて。仁兄が奈々子の家に泊まってるって。だから、、」<br>「馬鹿か、お前。。。」<br>二階から慌てて下りて来ると、二人が玄関に座って若干笑っていた。<br>「海君？何で？何してるの？こんな時間にこんな所で？」<br>「こいつ、本当に馬鹿。」<br>「うるさい！全ては仁兄が悪い！」<br>「何の話？何でしかも笑ってるの二人して？」<br>「ぶっ、だって海が。。。ぶぶぶ」<br>「ぶぶぶ、仁兄が笑うなよ。ぶぶ、ははははは」<br>何故か笑い合う二人にパジャマで呆然と立ち尽くす私。この二人、時々理解が出来ない。<br>「海君、こんな時間にお家でてきてご両親心配するわよ？」<br>「あ、大丈夫、出てくる時ちゃんと行き先も言ってるし。」<br>「え？家に来るって言ったの？ご両親、それでいいって言ったの？」<br>「うん、パジャマパーティって言ったら、楽しんでいらっしゃーい、だって。」<br>パジャマ、、、小学生以来そんな事してないのに、何てお気楽な親。<br>「じゃー、仁君と一緒に寝てね。お布団、今出すから。」<br>「え？俺、奈々子の部屋じゃないの？」<br>「ばーか、お前何歳のつもりなんだよ、全く。」<br>仁君がそういうと海君の頭をどついた。何だかちょっと焼きもち焼いてくれてるみたいで嬉しい。<br>「もう遅いから、二人とも早く寝なさいね。」<br>「奈々子、お母さんみたい。」<br>「私、こんなに大きな息子が居る程老けてないわよ。」<br>二人は何だか楽しそうに話しながら寝室に戻って行った。<br>私は何だか少し緊張が解けて、突然仁君が私の部屋に来た時の事を思い出し、しばらく眠れなかった。<br>仁君の息が近くで感じられた瞬間、仁君の目が私の目の奥をしっかりと見つめていた瞬間、<br>仁君の男の人っぽい指先が私の顔に触れた瞬間、思い出しては一人で布団の中でじたばたした。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/dailydrama/entry-11497272551.html</link>
<pubDate>Sun, 24 Mar 2013 19:41:39 +0900</pubDate>
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