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<title>アンチヒーローショー</title>
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<title>ホームレス日和４</title>
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<![CDATA[ <br><br><br>｢‥‥太子！｣<br>｢うん？あ、妹っ‥‥ゴフォオー！なにこの挨拶信じられん！！｣<br>｢信じられないのはあんたですよ！このデニム！！｣<br>｢デニム！？｣<br><br>妹子の熱烈な飛び蹴が見事に決まり、太子は約１０mを滑るように吹っ飛んだ。<br>そんな、朝から騒がしい２人の間に割って入ったのは黒い髪に黒いブイネック、更には黒いデニムパンツという全身が黒という男だった。<br><br>｢はいはい、終了ーお疲れさまでーす｣<br>｢なんだ邪魔すんのか真のデニムめ｣<br>｢なんだよ真のデニムって！朝から痴話喧嘩は止めろっての！｣<br>｢これのどこが痴話喧嘩何ですか！！｣<br>｢あっ君が妹ちゃんかー！うん、良いねぇ青春って感じ｣<br><br>おそらく青春という言葉は若いからという理由で特に意味は無いようだ。結構適当なんだなと思うと同時に、この人の目が若干赤みがかっていることに気がついた。癖なのか、時々狐のような切れ目で人を見る。その時見える赤い瞳に、吸い込まれそうな感覚に陥った。<br><br>｢‥‥ん？ああ、目ね。これ生まれつきなんだよ、気持ち悪くてごめんね？｣<br>｢そんな、気持ち悪いなんて‥‥！ただ、｣<br>｢ただ？｣<br><br>これは一体、どういうことなんだろう。妹子にもわからないことがこの人にわかるはずはない。けれど、なんだか言いたくなって妹子は口を開いた。<br><br>｢どこかで、見たことがあるような気が‥‥したんです‥‥｣<br><br><br><br><br><br>｢ねえ太子、さっきの言葉、俺びっくりしちゃった｣<br>｢うん｣<br>｢もしかしたら妹ちゃん、自覚してないだけで実は記憶残ってるのかもね｣<br><br>妹子が着替えのため一旦小屋に戻ったことを確認し、黒い男、閻魔は言った。その様子はどことなく楽しそうにも見える。だが逆に、太子は見て分かるほど不快感を露にしていた。記憶が戻ることに不満がある、といった様子だった。昨日さ、と太子が重たい口を開く。<br><br>｢なんとなく"妹子"って呼んだんだ。そしたらあいつ、なんの迷いもなく私の名前を呼び当てたよ。‥‥一度もお互いの自己紹介していないのに｣<br><br>へえ、と閻魔が興味深そうに口元を歪ませる。太子はその様子を見たが、特に言うことなく目線をもとの位置に戻す。それから再び言葉を繋いだ。<br><br>｢記憶が戻ったら、きっと"あの日のこと"で自分を責めるだろうね。あいつはそういう奴なんだ、いつも自分を犠牲にする｣<br>｢けれど太子は、それを知ってて｣<br><br>閻魔の言葉の途中であー、うー、と突然唸りだした太子に驚いて、思わず声を止めてしまった。言わせない、とでもいうような行動だろう。閻魔の言葉を切り、ふっと太子が笑ったかと思えばまた新しい言葉を言った。 <br><br>｢ああ、でも、あの記憶だけは戻ってくれて良かったよ｣<br>｢え、なになに？｣<br><br>閻魔が興味深そうに聞いてくる。それから太子は少々自慢げに、こう言った。<br><br>｢妹子が作るカレーは美味いんだ｣<br><br><br><br><br>
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<pubDate>Fri, 25 May 2012 15:51:01 +0900</pubDate>
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<title>ホームレス日和３</title>
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<![CDATA[ <br><br>それから妹子は返事もしないまま、流れで太子の住む小屋に泊まった。<br>季節外れのこたつを退けて２枚並んで布団が敷いてある。ホームレスだからかなのか、布団は変な臭いがしたし、そういえば台所もかめむしの臭いがした。けれどどうしてか、その臭いが嫌では無かったし、なんだか懐かしい臭いだった。<br><br><br><br><br>カーテンの隙間から零れる光が朝を告げる。その日差しで起きた妹子は、枕の隣に置いていた腕時計を確認した。<br><br>(‥‥１０時！？)<br><br>一瞬見間違えたかと思ったが確かに短い針は１０を指しているし、太陽も既に高い位置まで昇っている。<br><br>(久々にこんなに寝たな‥‥)<br><br>妹子は生まれつき寝付きが悪く、その上最近では母親の愛人やら借金の取り立てやらがやってきてゆっくり眠ることが出来ず、結果１日４時間睡眠というのが普通になっていた。なんというか、凄く不本意だがこの布団が異様にしっくりくる。いや、臭いはもう少し無いほうが良いけれど。それに、<br><br>｢太子‥‥｣<br><br>そうだ。あの青いジャージのおっさんが隣にいるというだけで安心感があるのだ。強盗が来ても、何故か大丈夫だと思う程。<br>とここでようやく、妹子は気が付いた。<br><br>｢‥‥あれ？太子？｣<br><br>いるはずのオッサン‥‥もとい太子がいない。布団は敷いたままで、忽然と姿を消したようだった。<br>もしかしたら外に行っているのかもしれない、と普通はそこまで深刻にはならないのに、妹子の心臓は激しく鼓動している。<br>太子が、居なくなった‥‥？<br><br>妹子は外へ跳ねるように飛び出した。どうしよう、もし誰かに連れ去られていたら、そんな、まさか―――<br><br><br>ま た 、僕 の せ い で<br><br><br>｢――っわ！｣<br>無我夢中で走っていると、出会い頭に誰かとぶつかり、そこで妹子は目を覚ました。<br><br>｢ぇ、あっ‥‥す、すみません！｣<br>｢私は大丈夫だけど‥‥君、凄い汗だよ！？｣<br>｢‥‥あ、いえ、これは大丈夫です｣<br><br>妹子はその場に転んでいた男を支えて立ち上がらせる。自分より小さいか、同じくらいの身長だ。そんなことを考えていると、その男は突然妹子の額に掌をあてた。<br><br>｢うーん、熱は無いみたいだね｣<br>｢あの、本当に大丈夫なんで‥‥！｣<br>｢本当？なんだか心配だよ‥‥ん？｣<br><br>始めは妹子の物凄い汗を心配していたが、何かに気が付いたらしく、妹子をまじまじと見つめてくる。その視線に段々耐えられなくなった妹子は、遂に言葉を投げた。 <br><br>｢～～っ、な、何ですか！！｣<br>｢やっぱり！新入りの妹子君だね！｣<br>｢新‥‥え？｣<br>｢新しくここに越してきて、太子君と住んでるっていう話聞いたよー｣<br>｢き、聞いたって、誰からですか？｣<br>｢太子君｣<br><br>あのオッサン、勝手に‥‥！それから妹子は、松尾芭蕉と名乗る男から太子が今いるだろう場所を聞き、再び走りだした。<br><br><br><br><br>
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<pubDate>Fri, 25 May 2012 15:47:25 +0900</pubDate>
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<title>ホームレス日和２</title>
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<![CDATA[ <br><br><br>正直なところ、話の展開に僕の頭は完全に置いてきぼり状態だ。<br><br>妹子は小屋の中で片手におたまを持ち、鍋と睨めっこをしていた。ぐつぐつと食欲を掻き立てる音と共に、それ独特の香りが室内に充満している。<br>具は少ないけれど、これも立派なカレーだ。<br><br>簡単な話、海で入水心中をしようとした矢先、突然見知らぬ男から声をかけられしかも内容が カレー作れ  というなんとも漫画のような内容だった。あまりに飛び抜けた内容に思わず気が抜けてしまい、ずるずると男に引っ張られ小屋という自宅に入れられ今に至る、というわけだが、よく考えれば見知らぬ男に家に連れこまれるなどかなり危険な気がする。普段なら絶対付いて行かないのに、何故のこのこ付いて来てしまったのだろう。<br><br>(‥‥自殺を止められて、嬉しかったのか、僕は)<br><br>まだ生きていたかったのだろうか。自分自身が自覚しないだけで、僕は死にたくなかったのだろうか。<br>そうだとしたらかなり弱虫だな、と妹子は自嘲した。弱火で煮込み、十分にとろみがついた時、丁度いいタイミングで男が戻ってきた。<br><br>｢おー！これこれ！でかしたぞ妹子！｣<br>｢ぅわっ！！太子っ‥‥急にでかい声出さないでくださいよ！もうぅ～～｣<br><br>すぐ横で大きい声を出され思わず悲鳴をあげてしまった。そんな妹子を太子は気にせず、というかどこか自慢げに、ご飯の盛られた更を２枚妹子に渡した。<br><br>｢隣からご飯貰ってきたぞ。ほらほら、盛り付けるでおま｣<br>｢え、あの、ご飯２杯分食べるんですか？｣<br>｢何言ってんだ、お前のに決まってんだろ｣<br>｢僕のですか！？｣<br>｢うん｣<br><br>当たり前のように言われ、妹子は驚いた。まさかこの男と一緒にカレーを食べる事になろうとは思っていなったのだ。だが太子はそんな妹子に、前から聞いていたかのように問い質す。<br><br>｢妹子、お腹減ってるでしょ。昨日の夜から食べてないんじゃない？｣<br>｢なっ、何故それを‥‥！｣<br>｢あっ！当たった？いやー今のカンだったんだけどね｣<br>｢あ‥‥｣<br><br>畜生はめられた‥‥。<br>この男、一見人生負け組のジャージ野郎だと思っていたが意外にも頭の回転が速いというか、ずる賢いというか、とにかく妹子より一枚上手だということは理解できた。<br>カレーを盛り付け何故か異様な程あるスプーンの束から２本取り、そのうち１本を太子に渡す。それからやけにギシギシうるさい廊下を渡り２人同時に居間に移動した。いただきます、と手を合わせ温かいカレーを口に運ぶ。１日ぶりのご飯は美味しかったし、ふと今思えば誰かと夕食を共にするのはかなり久しぶりだ。妹子の作ったカレーは美味いとか言うもんだから、なんだかとても恥ずかしい気持ちになった。手作りの料理を誰かに食べてもらうこと自体初めてだったからだ。<br>だがそんな中、太子がとんでもないことを言うのである。<br><br>｢で、妹子。今日からお前もここに住むんだよな？｣<br>｢へ‥‥ぇ、え？｣<br><br>すみませんもう一回言ってくださいと言うような顔をすれば、太子は迷う事なく再び言った。<br><br>｢いやだから、今日から一緒に暮らすの。私と、妹子｣<br>｢いやいやいやいやいや！！！！な、何言ってんですか！！？一緒に住むってあんた‥‥！！！！｣<br>｢いやってお前‥‥そんなに否定しなくてもよくない！？｣<br>｢いや、だって太子‥‥急に言われても‥‥！｣<br><br>慌てふためく妹子の隣で、太子はやけに冷静だった。<br><br>｢間違ってたらごめん。なあ妹子、お前、自殺しようとしてただろ｣<br><br>ふっと。時間が止まる。<br>突然の言葉に妹子は思わず声を詰まらせた。なんて言えば良いのか、考えようにも頭が働かない。<br><br>｢まー深く聞こうとは思わないし。私も色々あったしー？｣<br>｢‥‥太子も、ですか？｣<br>｢そ。でもね、良いこと教えてあげる｣<br><br>再び先程と同じようにふにゃっとしたなんとも言えない笑顔を浮かべて、太子は口を開いた。<br><br>｢ホームレスにはね、過去なんていらないんだよ｣<br><br><br><br><br>
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<pubDate>Fri, 25 May 2012 15:46:27 +0900</pubDate>
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<title>ホームレス日和１</title>
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<![CDATA[ その日、僕の家庭は崩壊した。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>突き付けられた現実から、小野妹子は逃げていた。電車を何本も乗り換え、聞いたことのない駅すら通り越し、いつの間にか誰一人いない場所までやってきた。電車から降りると、生暖かい風が体を掠める。無人駅にただ一つ、申し訳なさそうにぶら下がる外灯がやけに存在を主張し、蝿が群がるようにその灯りに集っている。<br>よく耳をすますと、遠くから波の音が聞こえた。港が近くにあるのだろうか。腕時計を見ると針は９時をさしていたが、周囲は既に静寂に包まれている。ふと電車の時刻表が目に入り、見ればもう本日の便は無いらしい。都会では有り得ないことだったが、その事実はあの現実から逃げてきた事を十分に物語っていて、妹子はなんとなく安堵した。<br><br>(僕はもう戻らない。戻る場所も、ないんだ。)<br><br>自分にはもう戻る場所などない。母親は何処かの男と莫大な借金を残して逃げ、親戚がいない僕は推薦入学だった高校も中退したし、同級生に別れを告げないままここまでやってきた。掛け持ちのバイト先を無断で辞めてしまって、なんだが申し訳ないけれど。<br>だが、妹子に後悔はなかった。こんな人生などただ汚点でしかない。それから妹子は駅から出て、波の音の聞こえる方向へ歩きだした。<br>死に場所を求めて。<br><br><br><br><br><br><br>随分と歩いた気がする。その証拠に、先程より波の音が大きい。これから死ぬ者にとって、誰ともすれ違わなかったのは好都合だった。多分常に開放されているのだろう海門を通り、遂に浜辺へと辿り着いた。塩辛い海風が懐かしい、今思えば海など何年振りだろう。あの頃は父さんもちゃんと仕事してたし、母さんも優しかった。そんな夢のような日々が脳内を過り、同時に自分が今涙を流していることに気が付く。<br>‥‥いつからおかしくなったんだろう、父さんの会社が破綻してからか、母さんの不倫が発覚してからか‥‥けれど今更、妹子にはどうでも良かった。妹子は靴を脱ぎ、一歩、また一歩と海へ進む。波打ち引いていく波がまるで誘っているように見えた。<br>だがそれは、一つの声で阻まれたのだった。<br><br>｢あ、ねえねえ、ちょっと｣<br><br>突然背後から声をかけられ、妹子は思わず振り返ると、そこには青いジャージの男が立っている。前髪を上に束ね、妹子の顔をじっと見つめるその男は２０代後半から３０代前半といったところだろうか。なかなか整った顔立ちだが、気が抜けて眠そうな目がそれを打ち壊している。それから男は妹子に近付き、言った。<br><br>｢カレーの作り方、知らない？｣
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<pubDate>Thu, 24 May 2012 20:27:16 +0900</pubDate>
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<title>お詫びとお知らせ</title>
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<![CDATA[ <br>突然ですが諸事情で東京に行くので今日と明日のお題絵はお休みします。松尾芭しょんぼり<br><br><br>あと、自分の妄想から｢ホームレス日和｣を連載予定です。<br>主役は高校生の妹子、日和御三家中心に、色々出す予定です。<br>完全妄想なので、過去とか本当‥‥悲惨なのとかあります‥‥<br>妹子の場合、家庭崩壊してたり借金抱えたりしてますんで、そういうのに抵抗ある方は見ないようお気をつけ下さい‥‥！<br><br>あ、ちなみに太妹です。ﾃﾞｭﾌﾌ<br>他には曽芭も。天国組はホームレス日和の設定が設定なので‥‥と思わせつつ多分鬼閻です歪みねぇ<br><br>亀並更新で行きます。いやうんそこは揺るぎない信念というかジンクスというかはい嘘ですすみませんでした<br>
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<pubDate>Wed, 23 May 2012 17:35:43 +0900</pubDate>
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<title>７日目｢鬼男｣</title>
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<![CDATA[ ｢その吹き矢でたのみますよ、大王！｣<br><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120522/23/dio-zwei/b7/0f/j/o0480085411988136263.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20120522/23/dio-zwei/b7/0f/j/t02200391_0480085411988136263.jpg" alt="アンチヒーローショー-2012052223030001.jpg" width="220" height="391"></a>
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<pubDate>Tue, 22 May 2012 23:03:58 +0900</pubDate>
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<title>６日目｢閻魔大王｣</title>
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<![CDATA[ ｢つかれた‥‥生きるのに｣<br><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120521/19/dio-zwei/98/0e/j/o0480085411985856546.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20120521/19/dio-zwei/98/0e/j/t02200391_0480085411985856546.jpg" alt="アンチヒーローショー-2012052119560000.jpg" width="220" height="391"></a>
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<pubDate>Mon, 21 May 2012 19:58:14 +0900</pubDate>
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<title>鬼神</title>
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<![CDATA[ 物部討伐の話。<br>やけに暗い。長い。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br>人が鬼となる。<br><br>人を切り、村を焼き、雄叫びをあげ、血走った眼で獲物に食らう。<br>すっかり陽が落ちたというのに周囲は依然として肉眼ではっきり確認できる程明るかった。村の民家が燃えているのだ。ばちばちと鳴き声をあげて赤い炎に包まれる民家はやがて力尽きて崩壊する。だが周囲の兵士は全く気に留めることはなく、ただ物部守屋の首を欲していた。その様をぼんやりと見る影が１つ。<br>何故このような事態が起きているのだろう。ただ私は、仏教を信仰し仏の恩恵を受け平穏な日々を民と共に過ごしたかった。それだけだというのに、なぜ私は剣を手に持っているのだろう。私の中に潜み剣を持たせたのは何だ。今は亡き父上は、私を愚かだと笑うだろうか。<br><br>｢太子殿｣<br><br>２人の兵士が、その影、齢１４にしてこの物部討伐に参加した聖徳太子のもとへとやってくる。突然声をかけられ思わず剣を構えそうになった自分に情けなくなった。何を驚いているんだ、私は‥‥。と同時に、その表情から吉報ではないことは明らかで、太子は何かを察してしまった。<br>嫌な汗が背中を伝う。なんだ、と表情は冷静さを保っていたものの、どくんどくんと波打つ心臓がやけに大きく聞こえ、気を抜いたら足が震えだしそうになる。聞きたくない。けれど早く、早く言ってくれ。発狂しそうになる体を抑え唾を飲み込み次の言葉を待っていると、遂に兵士が口を開いた。<br><br>｢蘇我馬子様からの御伝令です、先程物部軍により、第三部隊及び第五部隊が全滅したと―――｣<br><br>人が死んだ。<br>全滅、という言葉にある悲惨さはあまりにも暗く、身体の中に水の様に染みていく。太子はその言葉を聞いた瞬間、自分の中にいた何かがその二文字に反応し徐々に肥大してゆくのを実感した。<br><br>嗚呼私は、なんて無力なんだ。<br>私がどうにかしなければ、<br>仇を、<br>仇を、<br><br>仇を！！！！<br><br>それからまもなく、どす黒くどろどろとしたそれは、いとも容易く太子の身体を支配した。<br><br><br>｢殺してやる｣<br><br><br><br><br><br>その荒れ果てた戦場には鬼がいた。右手に剣、左手に小太刀を携えた鬼は死体を踏み越え剣を振り、渇いた血の上にまた新しい鮮血を浴びる。その形相に恐れを抱き逃げ出す者もいたが、鬼は見逃さなかった。鎧の重さを微塵にも感じさせない身軽さと速さで一気に詰め寄り、脳天に振り下ろすとまもなく聞きがたい音が響き、兵士は苦しむ事なくその場に堕ちる。荒い呼吸を繰り返しながら、割れた頭からとめどなく流れだす血を暫く見た後、赤黒い夜空に向かって吠えた。<br>己の右手と剣が離れぬよう布できつく結ばれている様は、まさに刃と一心同体となった異形の存在だった。<br><br>まもなく駆け付けた馬子と数名の兵士は、目の前に広がる惨状に思わず足を止めて唸る。屍は折り重なる様に倒れ地面を覆い、炎が燃え上がり存在を主張している。様々なものが混ざった臭いは吐き気を催す程だ。だが馬子は足を必死に動かして、その者のもとへと急ぐ。<br><br>｢太子っ、太子！！｣<br>｢‥‥馬子、さ｣<br><br>その鬼――太子はゆっくりと馬子の方を見る。馬子は覚束ない足で何度も躓き転び、だがすぐに立ち上がり進む。そして太子のもとへ辿り着いた時、馬子は太子を、血の繋がらない我が子を力一杯抱き締めた。それにより正気を取り戻したらしい太子は泣き、嗚咽しながら言葉を繋げる。<br><br>｢っ馬子さん、わ、私‥‥｣<br>｢太子、これは正当防衛だ。殺さなければ殺される。お前は正しいことをした、それだけだ｣<br><br>ぼさぼさの髪、土と汗で汚れた顔、全身を覆う様な血、右手に繋がれた剣。だがその表情はまだ幼い子供だった。この少年が将来、この国の政治を統一するのである。体を離し、馬子はまっすぐ太子の目を見て言う。<br><br>｢太子、お前は鬼‥‥いや、鬼神だ。けれどそれ以前にお前は立派な人の子だということを忘れるな｣<br><br>お前の中に潜む鬼神が再び姿を現したときは、私の血と肉を与えよう。<br>馬子が言うと、太子は目を瞑って呼吸を落ち着かせ涙を拭い、暫くしてから言葉を紡ぐ。<br><br>｢‥‥いいえ、馬子さん。きっと貴方を食らう事は一生ありません｣<br><br>仇を討つことにばかり固執し過ぎて己を忘れてしまったのは、精神が未熟だった故であり、こうして馬子さんまで心配をかけてしまった。これは恥べきことだ。<br>それから太子は立ち上がり、そして言った。<br><br>｢さっきは己を忘れて取り乱してしまいました。けれど私はもう恐れません。鬼に支配されるのではない、鬼を支配し、私の力にしてみせましょう｣<br><br>なんと恐ろしい子供だろう。先程とはうって変わって、迷いがなく将来を見据える力強い瞳に馬子は思考を奪われた。<br>生まれながらにして神童であり、鬼神である。馬子はその事実を今身を持って思い知らされたのだった。<br><br>知らないから恐れを抱く。私の中にいる鬼に気が付かなかったから簡単に自分を見失ってしまったのだ。<br>だが。もうそれは恐るるにたらず。<br><br>鬼よ、私を食らってみよ。<br>私はお前を遥かに凌ぐ、鬼神だ。<br><br><br>｢我が名は上宮之厩戸豊聡耳命。太陽や月の如く民を照らす光となろう｣<br><br><br>夜が明ける。<br><br><br><br><br><br><br>------------------<br>聖徳太子には、「政治家は、太陽や月のように全ての国民を照らさなければいけない」という名言があります。<br><br><br>あと断髪済バージョンの武装太子。<br><br><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120521/18/dio-zwei/e9/6c/j/o0480085411985654686.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20120521/18/dio-zwei/e9/6c/j/t02200391_0480085411985654686.jpg" alt="アンチヒーローショー-2012052118150001.jpg" width="220" height="391"></a>
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<pubDate>Mon, 21 May 2012 18:19:31 +0900</pubDate>
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<title>５日目｢河合曽良｣</title>
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<![CDATA[ ｢最初の句のままでいいでしょう｣<br><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120520/22/dio-zwei/bd/7f/j/o0480085411984084394.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20120520/22/dio-zwei/bd/7f/j/t02200391_0480085411984084394.jpg" alt="アンチヒーローショー-2012052022030000.jpg" width="220" height="391"></a>
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<pubDate>Sun, 20 May 2012 22:07:09 +0900</pubDate>
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<title>４日目｢松尾芭蕉｣</title>
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<![CDATA[ ｢できた‥‥！曽良君！｣<br><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120519/23/dio-zwei/5e/1e/j/o0480085411982213006.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20120519/23/dio-zwei/5e/1e/j/t02200391_0480085411982213006.jpg" alt="アンチヒーローショー-2012051923330000.jpg" width="220" height="391"></a>
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<pubDate>Sat, 19 May 2012 23:36:41 +0900</pubDate>
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