<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>升　真手九郎</title>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/dr-r2888/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>物語を不定期で投稿します。</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>小説「妖怪道路」　大妖祭前譚　場面④、⑤</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　</p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: center;"><span style="font-size:1.96em;">四</span></p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>　結局キリは学校で昼休みを終えた後くらいに体調を崩して早退した。せい太はというと、今朝のことが気にかかり過ぎて授業に集中できないのはもちろん、昼食を残すほどであった。確かに、とちおじさんの家の奥に、白髪が肩くらいまであって、目は赤色、肌はとても色白な少女が悲しそうな眼をして空を仰いでいるのを見たのだ。はっきりと見たわけではなかったので詳細は疑わしいが、そこに誰かがいたのは絶対的な事実であると結論付ることができるとせい太考えた。その時の妖怪道路はせい太たち以外誰もいなかった。誰一人として歩いていなかった。それもまず不思議なことなのだ。朝である。出かけるために誰か一人でも外に出てくる家があるのが自然である。また、あの苔道の奥だけ妙に暗かった。日の光の具合と鬱蒼としている林のせいだろうと思われるであろうが、それは夜に入る夕方のような暗さだった。そう考えると、せい太は非現実的なことを考えざるを得ないとも思った。もしも自分が気疲れやその他疲労と朝の衝撃により、意識がもうろうとすることがあったとしても、一万歩譲ってそのような事態が偶然にも三人同時に起こってしまったとしても、せい太とマサに似たような症状が出たというのはあまりにも非科学的すぎる考察であった。そもそも、せい太は今朝聞かされたことは、身体に異常が出てしまうほど考え悩むことではなかった。ただ、衝撃はあった。それについて、キリの心配も思ってはいた。それでも、自身の感覚器官と脳が狂ってしまうほどのものではないとは、確実にわかっていた。</p><p>　学校では噂が噂を呼ぶ事態になっていた。学校ほど安全な場所はないと思っていたがそれは勘違いだったようだ。「あれだよ、あれ、細霧さん、今年の大妖祭の祭りの儀式を担当する人」「へー」とか、「またあの祭りでまたなんかあって学校来なくなったりして」「そうしてまたカウンセラーが学校に来たりして」といったようなことがキリと廊下を一緒に歩いて教室に向かっている時に割とはっきりと聞こえた。そこまではっきりと本人に聞こえるように言うならば、はっきりと面と向かって言えばいい。それができないということは結局、だれかと一緒に居なければ悪口じみたことを言う勇気さえないということなのだろう。この学校には町に住んでいない子供が半分くらい来ている。せい太たちが住んでいる町といえばあの祭りが主役になってしまっているので、そこの子供たちには何かと不名誉なレッテルが貼られていて、学校内では自然と町の子供とそれ以外の子供たちでグループができている。そして互いのグループは互いに交流することを避けているように見えた。（全員が全員そうであるわけではない。こんなようなことは現実世界でもよくあることであろう。どういう理由かわからないが、設定された舞台上だけで同じような演技をする役者もいれば、臨機応変に様々な演技を自分の信念に基づいてする役者がいるのと同じようなものである。）この学校に入ると自動的にそういうグループ分けをされて、無意識の内にお互いに相反するような感覚を植え付けられる。それは子供たちに限った話でもなかった。教師たちもまた、これは子供たち以上に大きな偏見を持っている人もいた。もちろん全員ではない。そんな偏見を持っていない先生のほうが多い。それでも、せい太が知っている範囲では、体躯教師がそのいい例だった。明らかに町の子供たちとそれ以外への対応または授業内での待遇が違っていた。たとえば、授業のノートの提出が遅れてしまった子に対して、町の子には成績を大幅に下げるなどの厳しい措置がなされたが、それ以外の子に対しては軽い説教で終わっていた。それだけではない。自らが遅らせた授業に関して、それがゆえに片づけるのが遅くなったりすると、町の子に対してだけ厳しいトレーニングを課したりすることもあった。ある町の子なのだが、この子は大変ひどかった。町の子の中でも体育のやつの気に食わなかったようで、その子が執拗にいじめられた。そのことで大変悩んだその子は担任に相談を持ち掛けたが拒否された。偶然かわからないがその担任もそっち派の人間だったのだ。その子はもともと寡黙な男子であったから他に、つまり担任以外の先生とは大した関りを持たなかったので他に相談できる相手がいなかったのである。その子は突然学校に来なくなった。最後にせい太がその子を見た時の悲しそうな表情は今でも覚えている。その子が学校に来なくなった理由はなぜか学校の見解だけではなく、校内の認識として彼は精神的な問題で転校せざるを得なかったということになってしまった。そう片付けられてしまった。</p><p>　どうしてあの時あんな風に思ってしまったのであろうか。祭りの中止を知った時にどうして学校でこうなることを考えなかったのであろう。廊下を歩くキリの表情はだいぶ青くなって、眉間にしわも寄っていた。町のグループの友達たちはキリのことをだいぶ気遣ってくれて、祭りの中止に関して特に言及してこなかったが、それはこの学校にいる限り無駄なことであった。キリはせい太に対して、もともと朝から気分が良くなかったといって帰って行ったが、せい太はキリは学校に来るべきではなかったのではないかと思った。そう考えるとどうして、朝にキリが玄関から飛び出してきたときにそういった気を利かせなかったのであろうかと自分がとても嫌いになる。</p><p>　キリは町の人間であるということも先述の理由の一つであると思われるのだが、あの整った端正な顔つきと小動物のような体格、そして誰にでも優しいとかいう集団的認識により複数の男子たちからの熱視線を浴びていたことで、何人かの女子の嫌がらせにあっていることをせい太は知っていた。自分は薄情な人間だと思った。それを知っていることをキリに知られているかもしれないのに、いつも何にも困っていない表情を作っているキリに甘えてしまっているのだから。信頼における友人として親友の悩み事をうまく解決できるような対策をかけなければならないのに、それが怖くてできないのだ。具体的に言えば、その解決法として第一に掲げられることは、キリに対して嫌がらせを行っている女子たちに接触して、止めさせられるように仕掛ければいいのである。せい太は気が弱かった。そういう時にマサのような勢いを持っていたら何も怖いものはないのであろうと、マサが持っているものを妬む。そんな風に悩みを逆に持っているせい太とは反対に、自分がそのような嫌がらせを受けていても、町以外の生徒とも交友関係を持っていたキリは学校に来るのを楽しんでいた。そんなキリでも今日の学校での扱いは我慢できなかったのであろう。おそらく自分の身を守ろうとする生物的な反応だったような気もする。</p><p>　それにしても今朝のあの出来事がどうしても、何をしていても引っかかる。あの集団感染症にでも瞬間的に三人で感染したような出来事、そしてせい太が見たあの少女である。町の中であんな感じの少女がいたかどう考えてみてもどうしても思い浮かばない。そもそもせい太は妖怪道路周辺の家に住んでいる人たちはだいたい知っていたから、そんな少女がいるはずない、いわばどうしようもなくストレンジャーなことをか分かっていた。それでも、日本人の特徴ともまるで違う少女がいたことを、また、あのような現象に巻き込まれたことを、怪異的な現象だったとして処理したくはなかった。</p><p>そうして昼休み、机に突っ伏して寝たふりをしているとクラスメートの龍介が背中を軽く叩いて話しかけてきた。</p><p>　「なんか今日お前あんまりしゃべんないじゃん、どうしたん？」</p><p>　龍介は妖怪道路に沿った家屋列の一つの家の息子である。せい太にとってクラスで一番気軽に話すことができる相手であった。龍介は今朝あの少女を見かけていたのではないか、そう思うと今朝体験したことについて洗いざらい話してみたくなった。</p><p>　「今朝さ、龍介の家らへんに女の子いなかった？外国人っぽい美少女」</p><p>　「・・っお前、彼女いないからってそんな妄想してるのか」</p><p>　鼻で笑われた。こいつには何を言っても逆にいいような気がした。せい太は続けた。</p><p>　「いいから、見ていないの？」</p><p>　「みてねぇよ、そんな子がいたら話しかけてるわ」</p><p>　「あっそ、それと今朝、あの道路でなんかおかしなことなかったか？」</p><p>　今度は眉間に少ししわの寄った変な、疑うような表情をされた。</p><p>　「お前、大丈夫か、今日なんかちょっと変だぞ。なんかあんまりしゃべんないし、まあ、細霧さんのことがあるからか。悩むのも仕方ないよな、てか、お前のそばには結構な美少女いるじゃねえか、そんな外国人の夢を見るんじゃなくて現実のほうをちゃんと見てやれば」</p><p>　今度は笑顔でそう言われた。だいたい言いたいことはわかった。こいつは何かにつけそういった話にしたがる。見た目に対して少女漫画とかを学校で読んでいることからもこいつの思考はよくわかる。それでも今回はそれが目的でもなかったみたいで、今度は多少真面目な顔になった。龍介は友人が困難を抱えている時にふざけるようなタイプではなかった。そういうところがせい太も好きだった。龍介は龍介なりに気を使ってくれているようであった。だからこそ、話題を変えようとしてくれていたのだろう。</p><p>　「まあ、だいじょうぶよ、もし何か言いたいことがあったら何でも言ってくれよ」</p><p>　龍介はイケメンでこそなかったものの、せい太にはいつも映画の主人公のように見えていた。龍介は笑顔で教室から購買へ向かった。</p><p>　龍介は今朝の妖怪道路の異常について何も知らないのであろう。龍介の気遣いとは裏腹にせい太の不安は増えていった。せい太自身もこの学校にいることが憂鬱な気分を引き起こす原因になっているようにも思われた。</p><p>　ここまでで学校内や町以外の人間たちは、町の大妖祭についてあまりよろしくない印象を抱いているという風な書き方をしてしまったが、前述にもある通り、全員が全員そうであるわけではない。儀式やしきたりなんかを除いてしまえばにぎやかな祭りである。割と自由で、参加者は仮装なんかをしている人が多い。それは妖怪道路という名前が故だろう。妖怪道路がまるで畏怖されるような存在であると勘違いしてしまった読者もいるであろうが、ただ気味悪がられて避けられるような場所でもない。心霊スポットというよりはパワースポットとして観光客が来たりもする。（その中にふざけたりする若者も少ないがいる。そういう輩がたどる末路はだいたいわかるであろう。）そして昼間は子供たちの遊び場として人気な場所でもあり、町の外からも子連れが来て遊んでいる。学校でも大妖祭自体を嫌っている生徒もいるがほとんどは儀式を気味悪がっているのみである。だから大妖祭では仮装をしたり屋台で遊んだりしている中学生がかなりいる。これは筆者のこじつけに近い考えなのだが、どこかの共産国も、危険な思想をしているのは実は政府だけであって、実際その国民は平和主義、非戦闘主義者が多いのである。でもその国の中にも歪んだ考えを持つ者だっていて、それは割合だけで考えれば着眼大局してもマイノリティーであるが、集団の力というものはこの地球の重力よりも強いもので、目につくほど浮かび上がってくるのである。この感覚は読者も私も人類共通の認識として持っているであろうと筆者思う。つまり、この物語でも畢竟、人間の思考の状況というものはそういう感じである。読者はこの先の展開をそういう目で追ってくれればいい。</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p align="center"><b style="font-weight:bold;"><span style="font-size:1.96em;">五</span></b></p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>　せい太はぱっとしない気分のまま放課後の学校を後にした。美術部に所属していたが、出席が緩いこともあって初めて無断欠席をした。あの道路を通らなくてもよいように変える方法がないものかと考えながら歩いた。</p><p>　帰り道というのは何を考えていなくても、また、夢中になるような妄想をしていたとしても、無意識の内に足はいつもの道をたどるものでせい太は白昼夢を見ながら気づけばあの道路に差し掛かっていた。見覚えのある電柱のヘアサロンの広告に気付いて立ち止まった。やばい、どうしようと思った。ここまで来てしまっては進むしかなかった。戻ればよいと感じたが、ここは公共施設が多いこともあってかこの時間は人が多かった。立ち止まった。そうしたらわけのわからない汗が全身から出てきた。周りの人間が全員自分を見ているような錯覚を覚えた。冷静になれ。せい太は自分に言い聞かせた。まずは顔を上げることにした。顔を上げると目の前にあの大通りがある。ただそこには人がたくさん歩いていて、右側にあるショッピングセンターからぞろぞろ人が出てきていた。せい太の影は妖怪道路に入っていた。この瞬間はせい太にとって今日の中で一番安心した瞬間であった。スーパーから出てきた人の中には顔見知りが何人かいて、そのうちの一人である美代ちゃんが幼稚園に入ったばかりの息子を連れながら、せい太に気付いたらしく声をかけてきた。美代ちゃんと面と向かうにあたって自分が今までじめじめしていたことが妙に気になった。そうして不思議なことだが、今までのとんでもなく大きな不安が今はどうだっていいこととしてせい太の中で瞬間的に処理された。</p><p>　美代ちゃんは息子の美玉を授かった後すぐに男と別れていた。この町に父親の転勤で引っ越してきてから十年ほどが経っていると言うが、町の端っこのほうに住んでいるためか、美代ちゃんとは一昨年までせい太が出会うことがなかった。彼女はせい太の中では大人の中で最大の理解者であり信頼における気の置けない友人以上の存在であった。彼女は齢十八歳で子供を授かったため、まだとても若い。どうして相手と分かれたのか、何らかの深い事情があるのであろうが、そんなことを聞くことができる勇気などせい太にあるはずがなく、彼の中で考察するにとどまっている。町内の交流会で仲良くなってからというもの、せい太は時々浮いたような表情をする彼女のことがとても気にかかっていた。それはとても大きな興味とでも言うべきなのであろうか、彼女が笑顔でこちらに合図をする姿を見るとせい太はとても安心するのであった。それは彼女の年齢が近いから、あのように感じるのであろうか。せい太には彼女に対する自分の薄い仮面の中に感情ともいうことができない何かがあるように感じていた。</p><p>　「どうしたの、今日はずいぶんと早いじゃん」</p><p>　この人はあまりアクティブでないほうに分類されるのであろうせい太に対して、直角方向にベクトルを伸ばしているような人である。そうであるけれども、せい太がこの<ruby>女<rp>(</rp><rt>ひと</rt><rp>)</rp></ruby>に対して距離を感じることはなかった。いや、もしかするとそうなるように無意識化で臥薪嘗胆してきたのかもしれない。さっき出てきた汗と比べて塩気がましたやつが出てきた。そんなせい太の不思議な様子をこのうちでただ一人、美玉だけが理解していた。</p><p>　「なんか部活やる気なくてサボった、なんか疲れちゃって」</p><p>　「私よりも十も若いやつが何を言っているの、しかもあんた文化部じゃない、疲れる要素は全くないように思うけど」</p><p>　美代ちゃんは重そうな買い物バッグを肩にさながら男子高校生のように手を逆さにして掛けた。そうした瞬間に汗が飛んだ。この時は今まで気にならなかったアブラゼミの音が消えてほしいと思った。なんでそう思ったのかとせい太が考える暇を彼の脳は与えなかった。工場で働いてきて疲れているのだろう、そうして「んー」と犬が背を伸ばすようにのけぞって大きな欠伸した。この瞬間に脇の中から見えた下着の紐や、肌を滑らかに滑る太陽に反射されてキラキラと光っていた汗を認識したことが、せい太の思考を止める起爆剤となった。顔が熱くなった。さっきにもまして汗の量が増えた気もした。でもそれは今朝感じたようなとてつもない不快感を無理やり与えてくるものではなかった。それよりも自分のそういう体の反応自体にどうしようもない失望を覚えた。それはせい太自身が感じるこの状況でなければそのように感じることはなかったであろう。</p><p>　「・・・まあ」</p><p>　「それと、いつも一緒に帰ってきていたあの子がいないじゃない。まさか置いてきちゃったの？」</p><p>　「キリのこと？」</p><p>　「そうそう、あのうらやましいくらいの美少女」</p><p>　そういう人はかなり多いが、せい太はそのように感じたことは今まで一切なかった。確かに彼女は端正な顔つきをしている。それがゆえに人を引き寄せてもいるのであろう。それでもせい太が彼女に対して自分の分身のような感情を抱いていた。だから彼女が言ったことに対してなぜかあまり気分はよくなかった。アブラゼミの音が多少気にならなくなった。</p><p>　「キリは早退したよ。ちょっと朝から気分が良くなかったみたいでさ。まあたぶん大丈夫でしょう。また明日はうるさく家のインターフォンを押して俺の名前を叫ぶんだろう。」</p><p>　「そう。そんな感じなのね。あ、そういえば今日・・・・」</p><p>　「んねえ。あついぃ、」</p><p>　美玉は暑さに我慢できなくなったらしく美代の足元でぐずり始めた。</p><p>　「あー、ごめんごめん、帰ろうかね」</p><p>　美代は彼の頭を中腰になりながら撫でて目を少し細めて言った。</p><p>　「じゃ、行くね」「あ、もしよかったら後で家に来なよ、結構うまいパウンドケーキ作ったからさ」</p><p>　彼女は手を振りながら後ろを向いて言った。彼女が歩き始めてからせい太は「うん」とさっきとトーンは同じだが少し低い声で言って手を胸のあたりで手を振った。二人が妖怪道路を、手をつなぎながら歩いて行く。時折、美代が美玉に何回か話しかけながら首を下方に移しているのをせい太はしばらくの間見ていた。そうして何とも説明できない不思議な気分のまま歩き始めて、その気分から覚めると妖怪道路などとっくに抜けて家のある通りまで来ていた。セミがほかのセミなどいない電柱でわけもなく騒いでいる。せい太は一瞬立ち止まったがその音を認識するとゆっくりと歩き始めた。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/entry-12823831475.html</link>
<pubDate>Mon, 09 Oct 2023 16:52:25 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>小説　「妖怪道路」　大妖祭前譚　場面③</title>
<description>
<![CDATA[ <p align="center"><span style="font-size:2.74em;">三</span></p><p>&nbsp;</p><p>　外に出るとキリもちょうど出発するところだったらしくせい太が横開きのドアをガラガラと開けたのとほぼ同時に、隣の家からバタンと扉の閉まる音がした。茶色がかった髪の毛が宙を軽やかに待っていた。整っている顔立ちのせいか、玄関を飛び出して目の前の庭を駆け抜けていたその一瞬は、何かの美術作品のようで、白く透き通った肌に角射する太陽光が輪郭を光り輝く線によって描き出していた。彼女の体系とは不釣り合いな大きなバッグは、鑑賞者に不安を覚えさせるような美術品における技巧とも見える。それでいて彼女の優美さを際立たせている細く白い足は軽やかな足取りで、赤い靴が対照的であった。彼女はせい太が乱暴に音を立てた扉に気付いて太陽光を反射させていた横顔を、笑みを浮かべながらこちらに向けた。そうして快活に駆け寄って生きたかと思えば下を向いて顔を濁らせた。せい太には彼女が第一に発するべき、そのこと自体に言及するならば、この場に提示されるであろう話題をなんとなく察した。せい太自身も今、彼女が置かされた状況に関してこの場で彼女にかける言葉を探していた。そうであったのだが、せい太は乱暴に羽織ったままのシャツを直し、細い学校指定のネクタイのようなものをつけながらズボンのベルトを締め、二人は何とも言わず、顔も合わせずに隣り合って学校に向けて足を速めた。こういう時、ふつうは気まずさが勝ってどちらかがなんとなく話題を振りに走るのだがせい太はこの沈黙と足音が心地いいと感じていた。彼女が持っている火薬を燃やさぬままマッチをそっとしまっておくようなこの状況を。だけれども、そうしてぬるま湯につかったままでいることを良しとはしないやつもいた。速足で学校へ急ぐ二人に、二人の二倍ほどの早いリズムが勢いよく近づいているのが聞こえた。それは軽い音で歩いている二人とは違ったとても力強い足音だ。後ろを振り返ってみると長身のシルエットが太陽のもとに揺れて大きな影になって見えた。それは二人がとてもよく知っている雰囲気で二人のもとにあるべきはずの者だったのでとてもふわふわした感情をお互いに抱いた。そうしてマサは二人を追い越して満面の笑みを太陽の反射によって二人のもとに映し出した。　</p><p>　「よっ、おはよ」</p><p>&nbsp;</p><p>　マサは太陽に対して憂鬱さを感じていないようであった。せい太はこの状況にマサが来てくれたことを大変うれしく思ったと同時にキリに対し余計な不安を思った。その不安というものはある意味では的中したけれど、後々、的を大きく外れたようにも考えられた。</p><p>　「聞いたか、祭りの延期のこと」</p><p>　「聞かないはずないだろう、町中の家の朝の話題だろう、寝起きが良くなかったよ。」</p><p>　「・・・・・」</p><p>　「延期っつってもいつに延期になるんだろうな、町内会のやつらだろう決定したのって」</p><p>　「やつらって・・・」</p><p>　「・・・・・」</p><p>　</p><p>　マサは部活動の物がたくさん入った重そうなエナメルバッグを軽く振り回しながら、なおも速足で歩くせい太とキリの前に後ろ歩きをしながら怪訝な顔をした。キリは下に向けていた顔を上にあげて、奥に揺れる林を見ていた。マサはキリのほうを見て何かを言おうとしたが、キリの視線の先にあるものを察したのか唇を閉じて、エナメルバッグを肩にかけながら二人の後ろに回った。十数秒間ほどまた太陽のもとに沈黙の時間が続いた。すでに三人は家から三度ほど角を曲がり、信号を渡っていた。そうすると否が応でもあの林が大きくなり、大きなドーム状の図書館の上から大樹のうち一本が姿を現し始める。心なしかキリの早歩きの速度が小さくなったようにせい太は感じた。そんな時だマサによって沈黙というその場限りの結界を破る銃弾が放たれたのは。</p><p>「妖使いの仕事は・・・どうなるんだろうな」</p><p>『‼・・・・』</p><p>「・・・・・・」</p><p>&nbsp;</p><p>　なんとなく聞いてはいけないことを聞いたように感じたのか、マサは口を開けたままにしていた。マサによって放たれた銃弾を直撃したかのように顔が硬直していたキリは一瞬口を閉じたかと思ったが、唇をかんだ後、口を開いた。</p><p>　「わからない、さっき朝早くにとちさんが家に来て、延期を伝えられたの、だからそれ以外は、何も・・・」</p><p>　「とちさん、こっちに今朝来たんだ。てゆうかなんで朝になんだろうな、夜もすがら会議でもしたのか(笑)」</p><p>　</p><p>　それもそうだとせい太は思った。キリの家に伝えに来たついでにうちにも寄ってその旨を伝えたのだろう。しかも祭りは明日行われるのだ。妖使いやその儀式は祭りの中核をなすイベントなので、祭りの延期のことをその関係者に対して早めに連絡しておくべきことだろう。特に妖使いに任命された子と、その家族には。妖使いに任命させられたキリが、一昨年のことも相まって大きな不安を抱えることになっているのはせい太としても大変心苦しいことであった。</p><p>　</p><p>　妖使いとは毎年祭りの時期が近付くと選ばれる子供のことで、たいていは中学生である。妖使いに選ばれた子供の役割は、儀式において自らの体の一部と血液を大樹に奉納することである。体の一部といっても、いつも髪の毛と爪である。儀式は各家の代表が大樹に対し、お経のようなものを読んだ後、この町に伝わる舞踊を妖使いが踊る。そうしてその最中に妖使いは自らの体の一部を奉納した後、針で手を刺し、二三滴を真ん中の大樹に擦り付ける。この儀式は町のよく育った子供を大樹に対して半ば生贄として捧げるといった体で行われる。その昔は体の一部として四肢の一部を捧げることを強要されたらしいが、現代ではそれは社会的に不可なものなので、いつの間にか髪の毛と爪と血液に変わったらしい。いつ頃変わったのかはよくわかっていない。今では妖使いは、大妖祭といった年中行事の一角となった祭りの主体を成しているが、前述の一昨年の件や妖使いの歴史的経緯を見てもわかるように、妖使いは決して好まれる役職ではない。もちろん何事もなく祭りが一通り終わってしまえばそれはそれだが、何度かあまりよろしくないことが起こっていることも事実なため、妖使いに任命された子供とその親の心情は祭りが無事終わるまで色が見えない。その妖使いにキリが任命されたため、せい太はもちろんマサの心も、あんなことを聞かされたから余計穏やかではいられなかった。そういう意味でマサはそういう心情を我慢できるような性質でもなかったから、どうにかしようと多少我武者羅に、それでも虚気平心に言葉を選んだつもりでの発言なのだろう。けれどもマサの煩悶に対してキリはまた顔を下へ向けてしまった。</p><p>こういう時どういう風に言えばいいのだろうか、たとえ本人に直接でなくとも、また、決して励ましの意を込めなくても、この不安と雰囲気を一時的にでも取り払うことのできる言葉があるなら教えてほしかった。それは別に言葉でなくてもいい。一時的にでもこの状態から抜け出す手法があるならばどんな手でも使うだろう。せい太は、そうでもしなければこの一時が一生のように続いていくのではないのだろうかと感じるほど、背中が重く感じた。さらにそれは過干渉すぎるのではないかと考えると余計に鬱さが増した。</p><p>&nbsp;</p><p>　いくら逃げたいと思っても学校へ行く足は三人とも余計に早くなっていた。三人の足が統一した頭脳のもとに動いているのではないだろうかと感じるほど、それは一定した早さだった。マサはこの際このまま早く学校に着いてしまえばいいと思った。クラスメートや、同年代でありこの町の事情を理解している人たちがたくさんいる学校は、こんな三人を守ってくれるバリアのようにもこの時は感じた。</p><p>&nbsp;</p><p>　それでも学校に行くためにはあの道路を横切らなければならない。だからどんどん林は大きくなる、近くなる。そのたびに三人は比例して心臓の音と足が速くなっているように感じていた。その中でキリの息遣いは大変なものになっていった。目の端から汗なのか、涙なのかわからないような液体が、キリから流れた。はじめのうちは息が荒いくらいの感じだったが、あの道に近づくにつれそのリズムは崩れていった。呼気と吸気が交互の周期が薄く乱れると同時に、唾液なのか汗なのかわからない液体が口から垂れた。はじめのうちは、二人はそれに気づかなかった、というより気付けるような状態でもなかった。三人とも自身とその空間の異変に気付くことのないまま、ただ単調に下を向きながら早歩きをしていた。次の角で道に差し掛かる。そんな時だった。そんな時、光が捻じ曲げられたのかというほどに、これから起こる一瞬は、普段人間が感じている時間間隔と比べて明らかに長いものであった。アブラゼミが耳に張り付くような陰鬱な、不快で耳にまとわりつくような音を発していた。</p><p>&nbsp;</p><p>キリが妖怪道路に足を踏み入れた・・・・・</p><p>&nbsp;</p><p>　キリの呼吸はもはや意味を成していなくなってきた。そんな異常状態のでせい太とマサは、何かどろどろとしたものが局所的に脳内に流し込まれているのかというほどの、鬱とも言えない何かが襲ってきて足を止めた。止められた。</p><p>電柱にいたセミが今飛び立とうと羽を広げて、足を延ばした。</p><p>&nbsp;</p><p>それでもキリは、前へ、前へ、前へ・・・・</p><p>&nbsp;</p><p>二人の鬱が今度はとてつもない頭痛の形で襲ってきた。刀鍛冶が死後の世界で永遠と鉄を売っているような。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>セミは乱暴に羽を動かし始めた。完全に飛び立つまで、あと前足だけである。</p><p>&nbsp;</p><p>この時やっとせい太がその異変に気付いた。</p><p>&nbsp;</p><p>それでも、前へ、前へ、前へ・・・・足を出した。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>キリの顔は青ざめた。それでも単調に前へ。マサは頭を抱えた。</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>キリの呼吸のような非規則なリズムが止まった。止まった。</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>　セミが前足を電柱から完全に離し、飛び立つ前に電柱の周りを左右した。</p><p>&nbsp;</p><p>　角に差し掛かったところでせい太はキリの腕を強くつかんで引き寄せた後、左腕でマサを囲い込んだ。この時、せい太は何かをはっきりと目撃した、知覚した、せい太のすべての感覚器官はそれを確かなことと認識できた。そうしてやっとよくわからない形でこの異変は止まり、マサとキリはしばらくの間せい太の腕の中でお互いの顔を見た。乱暴に飛ぼうとしていた不快なアブラゼミはどこかへ消えていた。</p><p>　「大丈夫だったか、なんか三人して変だったよな」</p><p>　「え、あ、うん、俺も最初キリが変な感じになっているから声をかけなきゃいけねえと思ったんだけどなんか、そのあと自分が自分じゃないみたいになって・・・・って、頭いてぇ」</p><p>　</p><p>　そう言ってせい太の腕から抜け出て苦しそうに頭を抱えた。せい太もそれは理解できた。頭の中で寺の鐘が鳴るが如く、まとわりつくような痛みが周期的に繰り返していた。キリは全力疾走したかの如く息が切れていたが、やっと落ち着きを取り戻したようであった。</p><p>　「ねぇあたしたち今どこにいるの、あたし、マサが馬鹿みたいに後ろから勢いよく走ってきたところまでは覚えているんだけど・・・・、ねぇぇ、せい太？」</p><p>　</p><p>　この時せい太はとちおじさんの家の向こうをにらみつけるように見ていた。その目は確かにそこに異変の一端があったことを認識していた。脳がそう理解したとたんせい太の腕に力が入った。せい太の胸に多少背伸びになったキリの頭が抱えられた。せい太はくすぐるような長い髪の毛がその腕に絡みついていたのを理解してキリから腕を離した。</p><p>　「いったたたた、引っ張んないでよばか・・。」</p><p>　「あ・・・あ」</p><p>　</p><p>　おそらく過呼吸のせいであろう。この時キリの顔が赤くなったのは。何か恥ずかしそうにしながら髪を整えてキリは言った。</p><p>　「ごめんね、余計な心配させちゃって。なんか調子が変だったけど多分大丈夫よ」</p><p>　「・・・あ、あぁそれならよかった。それよりさ・・・」</p><p>&nbsp;</p><p>　せい太が困惑した声を出したがマサがそれをかき消した。</p><p>　「おいおーい、今の何だったんだよっ、俺たちに何が起こったんだ、この道路やっぱやばいんじゃね。」</p><p>　</p><p>　マサが半笑いしながら言った。せい太は自分が目撃したようなものを二人に言うべきか迷った。それほど、脳の理解が電気信号的に行われないほど、それは理解とは遠くの出来事と、せい太の脳は考えた。</p><p>　「っ、あのさ・・・・」</p><p>　</p><p>　またマサがかき消した</p><p>　「ははっ、まあそんな非科学的なことあるわけないけどな。キリの心配をしすぎていたんだよ、俺たちは。キリも大丈夫だよ、</p><p>祭りはなんだかんだ言ってちゃんと執り行われて、何事もなく終わるよ。心配ねぇよ。」</p><p>　「それもそうかもね、思いつめすぎていたのかもね。」</p><p>　キリはいつもの調子を取り戻したことを確認するように二人の顔を見て言った。</p><p>二人が日常と変わらない何かを取り戻していた中、せい太は何か怪訝な顔を崩せないでいた。自分が見たと思われるその現象はあまりにも不可解なものだったからそれを二人に確認するのがひどくためらわれた。というより、その異変を二人が気付いていれば、このせい太の混乱と煩悶による二重苦は来なかったであろう。せい太は、なんで二人がその異変を知覚できなかったのかということに関して疑問さえ浮かんでいた。前髪が短い顔なのにおでこから眼下にかけて影が落ちていた。キリとマサはせい太が状況にふさわしくない顔をしていることが分かってせい太の顔を同時に覗いた。</p><p>　「せい太、どうしたの、まだ何か変、いったん家へ帰ったら？」</p><p>　キリの滑らかな髪の毛が青空に泳いだ。</p><p>　「それよりも、キリは大丈夫なのかよ、キリのほうが家へ帰ったほうがいいんじゃないの？」</p><p>　「なんだか、今はすごく気分がいいのよ。なんだかね。」</p><p>　キリとマサの会話の横でせい太は自分が知覚したことが、彼自身の脳の認識が確かだったことをようやく理解して、そのことを言葉にして発する用意ができたように感じた。そうしてその顔で太陽光を反射しながらようやくはっきりと口を開いた。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>　「苔道の始まりのところにさ、女の子みたいのが立っていたんだよね・・」</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/entry-12821891181.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Sep 2023 12:08:57 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>小説　「妖怪道路」　大妖祭前譚　場面②</title>
<description>
<![CDATA[ <p align="center"><u style="text-decoration:underline;"><span style="font-size:2.74em;">「妖怪道路」（続き）</span></u></p><p align="center">&nbsp;</p><p align="center"><u style="text-decoration:underline;"><span style="font-size:2.74em;">大妖祭前譚</span></u></p><p align="center">&nbsp;</p><p align="center">&nbsp;</p><p align="center"><span style="font-size:2.74em;">②</span></p><p align="center">&nbsp;</p><p align="center">&nbsp;</p><p>　あまりにも不可思議なことを起き抜けに聞いたものだから、朝食が不思議な味だった。いつもは思わないことなのに、目玉焼きの黄身のふちがオレンジがっているのも、この時はとても不思議に思ってしまった。せい太は自分の背中にできた汗疹を掻きむしりながらととさんを探したが、すでに会社へ出かけてしまっていた。</p><p>　「ほら、私も早く仕事に行かなきゃならないんだから、急いで食べてよね。全くあの人が急いで出かけるときはただでさえ大変なんだから」</p><p>　せわしなく動く背中と鳴らされる急かすリズムでせい太ははっとさせられた。そうして急いで食事を済ませてしまおうと顔を勢いよく上げるが、突き刺すような日差しが目を攻撃する。それはまるで再び惰眠を貪ろうと画策している脳みそをたたかれるようであった。逃げるようにして顔を目玉焼きに移したとき、黄身にオレンジ色が侵食してきているという嫌なことに気付いた。朝ご飯というものは体に朝を伝達し、あたかも一日が素晴らしいものであるかのように錯覚させるものであると世間では認識されているが、眼前にある焼き鮭と白飯とみそ汁と漬物が、脳みそに対して朝というものの憂鬱さを認識させるような気もした。だからこそ朝食をとるというのが面倒くさいという認識を取る人も少なからずいるのではないかと思われるが、朝というものに希望を見出さなくなった現代人には相応の考え方なのだろう。再び逃げるようにして、天気予報をやっているテレビに目を向けた。お天気お姉さんと呼ばれている人が、先が丸くなっている棒とパネルを持って、白肌にかみつくような晴天の下で台風が上陸することを説明していた。</p><p>　「台風が来るからみたいよ」</p><p>　ははさんがそう言った時、お天気お姉さんは日本列島半分を覆い隠すくらい大きい予報円を指さしていた。どうやら勢力がとても大きい上、進路の予想も困難であるということらしい。</p><p>　「何が？」</p><p>　「何がってそれは祭りが延期されることに決まっているじゃない」</p><p>　鮭の身をほぐす箸が止まってしまった。よくわからないが、そのよくわからないもので頭の中に空白が来てしまった気がした。箸を持ち直して再び鮭の脆い身をほぐして口に運ぼうとしたが、この種の食べ物を食べるとき最もイライラする骨ばかりが箸についてきてしまって箸を止めてしまった。</p><p>　</p><p>　禁忌のことについて、とちおじさんやその周りの大人たちは権幕を立てるようにして子供たちに理解させるように言っていた。　「この禁忌は何年も何年も我々のご先祖様がどうにかしてでも守ってきたものなのだよ、いいか、ご先祖様に報いるためにもそのことを肝に銘じておかなければいけないよ。」と。</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>　</p><p>　こうまで一生懸命になっていたのに、どうして延期するなんていう決断ができたのだろうか。それもただ台風だというだけで。去年こそは晴れていたが、一昨年はひどかった。台風ではないものの激しい風雨と雷の中でも祭りを行ったのだ。とは言っても祭りの儀式だけを。そうしてまで祭りを、強いてはその儀式を、その日に開催することを町民誰もが当然のように思っていた。その年の「妖使い」に任命された女の子はそんな天気の中儀式に、禁忌は侵してはならぬという理由で無理やり参加させられ、風邪を引いた。もともと具合がよくない状態であったため風邪をひどくこじらせて肺炎になり、入院したが彼女が学校に帰ってくることはなかったのである。そうまでして祭り（儀式）を遂行したことに町内会は達成感すら感じているように見えた。またその子はしばらくもっぱらの噂だった。かわいそうにとか気の毒にとか涙を流す人もいた。けれどもその中にもそういう行いについて異を唱える者はせい太を含め一人もいなかった。ただ、儀式を遂行するために致し方ない犠牲だと感じていたのだ。このように書くといかにも非人道的なようにみえてしまうから補足しておくと、この町の町民にとっては本当に致し方ないことだと感じているのだ。例えるなら学校においてやりたくもない係をやらざるを得ないような感覚だ。そう書くとそれはさらに非人道的であると感じてしまうかもしれないが、要するにああいったことを仕方ないとするのはこの町民の統合した感覚なのだ。学校にいる自分を想像してみてほしい。誰もが不条理に決められた約束や係という役職に疑問を持つものなどいないだろう。それが当然だと、学校という一種の閉鎖空間で、集団統合的な<ruby>融通<rp>(</rp><rt>わがまま</rt><rp>)</rp></ruby>という名の認識を無意識のうちに持っているからだ。</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>　そこまでして祭りを、儀式だけでも行ってきたというあの町内会が、八月十一日の禁忌を台風という理由で延期にするという行為自体にせい太の脳みそは驚きを通り越してしまっていた。目の前のオレンジがかった目玉焼きがまだあることが一瞬の憂鬱になった。それでも時計は始業の三十分前を指していることに気付いたので、目玉焼きと白飯を勢いよくかけこんで席を立った。</p><p>「ごちそさま」と言ってご飯粒が二三残った茶碗を置いた。</p><p>　「あら、まだ鮭が残っているじゃない、なんで、食べたものも片づけないし」</p><p>　「ごめん急ぐから」</p><p>　「あんたいつもそれしか言わないじゃない」</p><p>　強く叫ぶように言われながらせい太は荷物を取りに階段を駆け上がった。こういう時、時計は意地を悪くするようで先ほど見た時より三分進んでいた。乱暴に教科書を鞄に入れて、ベルトを締めないままズボンを履き、ワイシャツを上被って鞄を持ってははさんの強い言葉を後ろに家を出た。</p><p>　「あなた、さっき言い忘れたけど、帰ったら自分の部屋くらい掃除しなさいよね、まったく、何もしないんだから」</p><p>　</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p>&nbsp;</p><p><span style="color:#009944;"><span style="font-size:2.74em;">作者からの連絡</span></span></p><p><font color="#000000"><span style="font-size: 22.4px;">　何度もしつこく書いてしまいますが不定期で小説を連載します。作品を読んでいて感じていただけたかと思いますがまだ冒頭です。（つまり長編になりそうです。）最初の投稿にも書かせていただきましたが、勉学を最優先に努力しなければならない身であるので続きの投稿が遅くなる時もあると思います。そこはご了承ください。</span></font></p><p><font color="#000000"><span style="font-size: 22.4px;">　最初の場面①は見てくれる人はいないだろうと予想していたのですが、以外にも何人かに読んでいただいていて、とてもうれしかったです。少しでもこの作品が（まだ冒頭ですが）面白いと感じたり、感想があったりしたらコメントしていただけると、作者としてこれ以上うれしいことはありません。</span></font></p><p><font color="#000000"><span style="font-size: 22.4px;">　そういうわけでこれから、いつ終了するのかわからないけれども、連載していきたいと思います。</span></font></p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: right;">&nbsp;</p><p style="text-align: right;"><font color="#000000"><span style="font-size: 22.4px;">升　真手九郎</span></font></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/entry-12820959445.html</link>
<pubDate>Mon, 18 Sep 2023 15:25:51 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>小説　「妖怪道路」　大妖祭前譚　場面①</title>
<description>
<![CDATA[ <p style="text-align: center;"><span style="font-size:2.74em;">妖怪道路</span></p><p style="text-align: right;"><span style="font-size:1.4em;">作者　升　真手九郎</span></p><p style="text-align: center;"><span style="font-size:2.74em;">大妖祭前譚</span></p><p style="text-align: center;"><span style="font-size:2.74em;">①</span></p><p style="text-align: center;">&nbsp;</p><p>　祭りが延期されるらしいことを、ははさんの口からきいたとき、せい太はとても不思議に思った。それは、大妖祭といわれるこの祭りは伝統的に八月十一日が絶対と決まっていたからである。そのことを近所に住む、とちさん（と子供たちから呼ばれている、この前定年退職したばかりのおじさん）から幼いころ、祭りの日にちを変えることは禁忌であると強く教えられた。町の人たちもその感覚を認識していた。なんでもその禁忌が侵された時、町全体が暗闇で包まれるという何とも漠然とした伝説があった。なんだか漠然としすぎている迷信であるから、せい太はよく、その暗闇とは何なのか、あの道路と何か関係があるのかとよく、ととさんに聞いたものだった。祭りの時期が近付くと町の子供たちの話題はいつもその話だった。それでもせい太が聞く話はいつも、「我々のご先祖様が子孫である我々に怖い思いをさせまいと、伝えられていることなのだよ」とか、そんなようなことと、ご託宣のようなことを語られるだけだ。だけれども、この町ではどのうちでも祭りとその禁忌のことを子供にしつこく話す習慣がある。町としてもそのしきたりを大事にしているらしく学校でもそれを教えられる。そんなわけで中学二年生になる今までせい太にはその迷信ともとれる禁忌の感覚が、あの道路の終わりに生えている三本の大樹とともに組み込まれていた。</p><p>　</p><p>　この町には妖怪道路と呼ばれている道路がある。この道路の名前の由来はわからないが、この道路に入口はあるが出口はない。つまり行き止まりである。約六百メートルの道路で始まりこそ家屋が並んでいるが、半分を過ぎたくらいで土瀝青が消え、道は広くなるが周りが林になっている。全く整備していないのに、地面には薄い苔が生え、道として広がっている。また奥に行くほど道は徐々に広くなっていた。苔の下は石のように硬かった。だけどそれがゆえに歩いていて気持ちもよかった。そうして道の最後には大樹が三本、一本はまっすぐと、他二本は真ん中の一番大きいやつの根元を中心として両脇にちょうど組体操の扇のように、多少斜めに悠々と立っているのだ。昼間は町の子供たちの共通の遊び場として共有されているだけでなく、町の大人たちや、町外の人との交流の場としての機能も果たしていた。そういう風に見ると、道というより、大きな広場みたいな感じだった。だけれども、道路の半分以降は街灯が全くなく、夜は林の影響でとても暗く不気味である。それでも子供たちがわるふざけで肝試しをするのが時々ある。そういう時は決まって町内会の人間に、親ともども叱責をもらっていた。町内会はそういうお遊びを何としてでも止めたいような感じだった。だからそれは普通の叱責ではなかったから、それを受けた家はだいたい次の日には噂になっていた。噂になるのはだいたいこの町に来た新たな入居者が多かった。そういうわけで、肝試しどころか夜に妖怪道路を歩く人はほとんどいなかったし、それが故にこの街を嫌う人がいるが、この道路は町の信仰の対象にもなっていた。引っ越しで初めてこの街に住んだ人たちは気味悪がって町のコミュニテイーには入っていなかった。また、それが理由ですぐに出ていくのもあった。だけど町全体はその妖怪道路を考えなければ、すべての人が血のつながった家族であるかのように明るかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　妖怪道路の名前の由来は不明といったが、妖怪道路にまつわる逸話はそれぞれの家によって違う。すべての家がわが家の逸話が正しいと主張するが、結局のところ定まらないから由来は不明としてあるのだ。ひと昔前はそれが理由で家同士のいざこざに発展したそうだが、今となってはそんなことに力を費やしている暇のある家はほとんどないらしい。</p><p>　せい太の家の逸話では、かつて妖怪というものがこの大地に来た時に初めて足をついたのが妖怪道路のある土地であり、最初の妖怪から後続の妖怪たちが大地に降り立つ時この土地を踏んだ結果、何百万かの妖怪たちに踏み均されてできたのが妖怪道路だというのだ。そして、妖怪たちは世間に散らばっていった。せい太の家では妖怪というものがこの道路の名前の由来であり、それらは台地にはもとより存在しないものであったというのだ。せい太の幼馴染であり親友の一人であるキリは隣に住む同級生の少女なのだが、彼女の家の逸話は次のようなものである。かつては人間と共生していた妖怪たちが人間によって憎悪されるようになってしまい、行き場を失ったある一匹の妖怪がたどり着いた土地が妖怪道路のある土地だという。そうして同じように何匹も何匹もこの土地に集まるようになった結果、何百万という妖怪の大集合になってしまい、次第に踏み均された土地は妖怪道路となった。どちらの逸話にも最後にはあの大樹たちが関係していた。せい太の家では、これから後に続いて降りてくる妖怪たちのために、道しるべとして天狗によって三本の大樹が植えられたというもので、キリの家では行き場を失った何百万もの妖怪たちは大天狗によって三本の大樹として封印されたというのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　この話の不思議な点として、せい太の家以外の家はすべて後者の終わり方なのだ。せい太はそのことについて学校でよく噂された。せい太のもう一人の幼馴染であり、キリとは反対側のせい太の家のお隣さんであり、活発な男子中学生のマサは逸話好きであるので、よくせい太の家の独立した逸話について興奮して聞いてくる。それを最も知りたがっているのはせい太自身なのである。だけれども家の当主であるととさんと、じじさんにいくら聞いてもわからないというのだから仕方がない。</p><p>&nbsp;</p><p>　妖怪道路の土瀝青と苔の道との間に位置している大きな家がある。それがとちおじさんの家である。とちさんは、とち餅を売っているからそう呼ばれるようになった。とちさんは妖怪道路についての各家の逸話についてよく知っていて、彼のそういったはなしは面白いと有名だが、なぜそんなによく知っているのかと怪しい意味で噂されていたこともあった。家が位置している場所が場所であるのと、とちさんの家の人はなぜかいつも町内会の役員であることが一つの原因であろうか。この町の町内会の役員は前の町内会の役員の推薦によって決まる。それによって不条理が起こったことは今まで一度もなかったから、この町ではそれが勝手に定着していた。だがそれゆえにとちさんの家は噂された。そのことをとちさんがよく理解していることを、彼と幼い時から交流があった三人はわかっていた。だけどとちさんにそのことを尋ねようとは思わなかった。</p><p>　</p><p>　大妖祭はそんな妖怪道路にて毎年八月十一日に絶対開催される祭りなのだ。すべての家の逸話で共通にあるのがこの大妖祭で、開催日は絶対であり、日にちを変えることが禁忌であると語り継がれているのである。だからせい太は、朝ご飯の時にははさんから延期のことを聞いたとき大変驚いたし、町内の新聞で流れたその情報を受け取った各家の反応はだいたい想像できるだろう。それを決定したのは町内会である。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/entry-12820356226.html</link>
<pubDate>Thu, 14 Sep 2023 12:00:00 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>小説の連載投稿について</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　「はじめまして」の文章にも書きましたが、これから不定期で小説を連載させていただきます。小説の制作も、その投稿も私の自己満足ではあるけれども、私の小説を面白いと思っていただきたいし、実現するかはわからないけれども、多くの人に読んでもらって感想もいただきたいと思っています。そうして私の妄想癖の具現化ともいえるような物語を楽しんでいただき、私の感情と読者感情のうまい交流が行えればいいと思います。</p><p>　さて、第一の連載となる物語は、もうすでに構想が私の中で動いていて、冒頭の文章が出来上がってきました。（とは言ってもまだ冒頭だが）その題名は今ここで発表しようと思います。</p><p>&nbsp;</p><p style="text-align: center;">　　<span style="font-size:2.74em;">「妖怪道路」</span></p><p style="text-align: left;">これを題名とします。</p><p style="text-align: left;">　何回か小説的なことは書いてきましたが、このように世間の目に触れるようにするの初めての経験でなんとなくふわふわした気分でいます。私は勉学を第一に努力しなければならない立場であるので、続きをいつに投稿できるのかは不透明です。そこはご了承ください。</p><p style="text-align: left;">　さきほども申し上げましたが冒頭は出来上がりが近いので、最初の投稿は今週中にできると思います。</p><p style="text-align: left;">　いきなりブログに突入して、よくわからないやつが小説を投稿するといっても誰も注目はしないでしょうが、楽しみにしていただけると嬉しいです。</p><p style="text-align: left;">&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/entry-12820195609.html</link>
<pubDate>Tue, 12 Sep 2023 20:53:36 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>初めまして</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　今まで私はZ世代という、いわば最近の若者というものに世間的に属ぜられている身でありながら、インターネットで何らかの活動を行うということをしてこなかった人間であるが、この投稿を機にインターネットという世界と私の感情を触れさせてみようと思う。</p><p>今やツイッター（Xというのか？）において簡単に個々の感情をさらけ出すことができるようになっているが、それは結局、個々自らの自信を喪失するようなことにつながっているのではないのだろうか。SNSに対して抱いている過度の期待が結局注目されるのは一部の人間であるという多少残酷ともとれる事実に押しつぶされてしまうことも一つの要因ではないのだろうか。自分の激情をぶちまけることができるのかと思えば、畢竟、顔の見えない相手のことを考える（どのようにしたら注目されるのか、とか）人がほとんどだろう。もちろんそうではない人たちも一部いることはこの投稿を読んでくれた読者も理解できるだろう。そうして失敗している人がいることを。</p><p>　また、激情とまではいかなくとも、感情を出している人たちはいる。全員が全員とまではいかなくても、感情を出すことで、自分と境遇や環境が似た人たちと顔の見えない交流をすることで、フラストレーションを解消しようとするのが動機であろうと考えられる。そういった場合にしても、やはり反対の考えを持った人間はいるわけで、そういうグループとの衝突はSNS上では免れないのではないだろうか。そうして結局、当初描いていたSNSへの理想は崩される。SNSは否応なしに自信を写す鏡のような存在、いや、鏡より嘘をつく存在になっていくのではないのだろうか。そうして逆に、気付かぬうちにSNSがフラストレーションの源泉の一端を担っているのではないかと考える。</p><p>　ここまで、持論を展開してしまったが、私のSNSやインターネットに抱く感情はだいたいこんなものである。</p><p>　私は物語を創造することが好きなので、物語を描くという形で自分の感情をインターネットに触れさせてみようと思う。ここまで長々とくだらないことを描いたが、これからの投稿は（すべてではないが）私が考えた結構面白いと思われる物語を連載という形で投稿しようと思うので、斜め読みでもいいので、私の妄想ともいえるような物語を読んで感想などを描いてほしい。そういった交流がここでできたらいいと思う。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/dr-r2888/entry-12820142261.html</link>
<pubDate>Tue, 12 Sep 2023 13:17:02 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
