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<title>上海春風</title>
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<description>上海で私たちは出会った</description>
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<title>「得不至的愛情」12</title>
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<![CDATA[ <p>うっすらとした朝もやの中、自分のベッドで私は眠りについた。</p><p>おそらく、恋の始まりと終わりの間で、もっとも幸せな一瞬にちがいない。</p><p>それ以上、男を欲しもせず、かといって欠乏感も無い満たされた至福の時間。</p><p>この時間は、もう、この恋の後にも先にも、やってはこない、1度の恋につき、1度きりの神様の贈り物。<br>このときに、恋を終わらせる勇気があれば、誰も失恋という感情を経験することはない。</p><p>2度目からが、すべての事を決定付ける。浮気の定義も同じ.。</p><p>夫が2度以上同じ相手と交わらなければ、妻の権利を侵したことにはならないらしい。</p><p>女は1度では、男に執着しない。たいていは、何度もベッドを共にすることで、欲と執着に支配される哀しい生き物。</p><p>なぜ男は逆で、寝た回数だけ執着がなくなっていくのだろう。</p><br><p>目が覚めて時計を見ると10時を回っている。今日は仕事の予定はなく、そのまま車で上海まで帰るだけだ。<br>昨日の夜の事が、幻のように思える。上海に戻れば、いつものような生活が待っている。</p><p>紗枝から頼まれているサンプルの選別にヨーロッパにも出かけなければならない。</p><p>レンを除く、様々なことを思いめぐらせてみた。</p><p>どんな感情にもまだ、自分は犯されていない。そのことが私を安堵させた。</p><p>「私は大丈夫。」<br>すべてを洗い流すように、シャワーを浴びた。<br>レンのくれた幸せは、今シャワールームの排水溝に流されていく。<br>これでいいんだ。<br>もう一度つぶやく。<br>これで終わり。一度きりで終わらせる恋。私はこの恋を写真のように切り取って、一生の思い出に生きていこう。聞いたことのあるような台詞が浮かんで馬鹿馬鹿しいような気もしたが、声に出すのが一番の気がして</p><p>声に出してみた。<br>シャワールームに取り付けられた鏡に向かって、笑って言う。「お、わ、り。」<br>なぜだろう、何かがこみ上げてきて悲しくなった。<br></p><p>シャワー横に取り付けられたサイドミラーには私の悲しそうな顔が映っていた。<br>それを見たら、もっと悲しくなってきて、今度は、「わー、わー。」と声を上げて泣いた。</p><p>泣いても泣いても、涙も、声もシャワーにかき消されて、泣いているのか、どうかもわからなくなる。</p><p>泣きすぎて、子供のときみたいに、涙でしゃっくりが止まらない。<br>私に、まだこんな子供のような泣き方が出来る事にも驚いて、いっそう私は泣き続けた。</p><br><br><p><br></p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10315095285.html</link>
<pubDate>Thu, 06 Aug 2009 09:21:46 +0900</pubDate>
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<title>得不至的愛情」11</title>
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<![CDATA[ <p><br>レンの半分乾いた巻き毛が私のあごに触れる。</p><p>私の胸元にレンの視線が移って、それからレンの唇がゆっくりと私の肌に触れる。</p><p>こんなことが以前にもあった気もする。多分夢にみたんだろう。</p><p>次第に私の身体の下の方へレンの唇が移動していく。</p><p>思わず私から抱きしめて、レンの動きを止めてしまいたい衝動に駆られた。それを、全身でレンは感じたのか、私の動きは彼の強い力で封じ込められてしまった。</p><p>私は身動きできない。その分だけ、私の体中の感覚が私の中で、暴れまわる。</p><p>髪の毛一本、一本の感じ方さえ識別できるほど研ぎ澄まされる私の感覚。<br>レンが欲しい。</p><p>そう思った瞬間、私の奥がレンのすべてで埋めつくされ,今まで感じたことのない感覚がつま先から、頭の先まで走って、出口のない私を追い詰めた。<br></p><p>目から涙があふれた。自分でも涙の意味がわからない。</p><p>レンを愛おしいという強い思いだけが私の全身を包む。同時にとてつもない怖さが私をおそった。<br></p><p>おそらく私が若ければ、感じなかった感情。一瞬ににして、先まで読み通せる知恵。</p><p>年齢とともに、付加される欲しくもない知恵が、私を恐怖させる。<br>この愛おしきものが、いつかは消えていく怖れ。</p><p>始めたら終わる。わかっていたはず。耳元で囁く私の分別。</p><p>今まで自分の中で蓄積された男に対する定義が一瞬に頭中を駆け巡る。</p><p>私の思いをさえぎるように、レンは子供を抱くように私を後ろから強く抱きしめた。</p><p>私は胎児のように丸まって「く」の字に曲げた彼の長いからだの中にすっぽりと納まる。</p><p>なんという安堵感と幸福。それと合わせ鏡のように付いてくる怖れ。</p><p>幸福感を「光」とするなら、怖れは「影」だろう。<br>気が付くと、1時間ほど眠ってしまったようだ。そのままの形で今度はレンが後ろから私の中に入ってきた。</p><p>ゆっくりと呼吸のように繰り返されるレンの動きに私の身体が再び目を覚ます。</p><p>私は押し寄せる「光」と「影」の狭間で、今度は幾度も泣いては果てた。<br></p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10314409340.html</link>
<pubDate>Wed, 05 Aug 2009 09:20:21 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」10</title>
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<![CDATA[ <p><br>私はレンの部屋で無口だった。</p><p>私の座っている小さなソファーに、スポットライトみたいに間接照明が当てられていて、一人芝居の女優のように、私はレンの部屋で浮かびあがっていた。</p><p>レンは結婚している。こういう切羽詰った場面になってから、ようやく、そんな世間的な事象が頭をよぎる。<br>でも、いまさら、そんな制約が私たちの何に役立ち、何の妨げになるのか？<br>大人に対して、不良にならないように説教するのにも似ている。</p><p>すべては己の自己責任。妻の権利を侵した罪で愛人の女性が妻から訴えられるが、それも、90歳の愛人と85歳の夫と80歳の妻の間でも適用されるんだろうか？</p><br><p>レンが何か言ってくれるか、何か行動をおこしてくれるか、泣き出したいような気持ちでレンがシャワー室から出てくるのをこうして、私は座って待っている。</p><p>こうなることはわかっていたようで、わかりたくなかったようで。<br>私の不安は中学生のように馬鹿げていて、顔をあげるとバスローブを着たレンは私にビールを差し出しながら微笑んで立っていた。<br>「さあ。」とういうと、ビールをテーブルに置いて、泣いてる子供をあやす父親のように、私を抱きしめた。</p><p>私のこめかみのあたりにレンの濡れた巻き毛がはりつく。</p><p>その髪から落ちた水の雫が私の頬を涙みたいに伝って落ちた。</p><p>「はぁ。」私は思わず、そんな声を発した。多分実際は声は出なかったのかもしれない。</p><p>なんと表現したら言いのだろうか。</p><p>今日ライブで聞いた演奏のように、大きな流れに飲み込まれたような、諦めにも似た無力な感覚、それでいて、もといたところに戻っていくような安心感か、そしてこの流れから、またはじき出されるかもしれないという怖れ。</p><p>レンは私にとっての大河だ。</p><p>共に流されていくことに、諦めが伴う。</p><p>でいて、そのことが誇らしくもある。</p><p>私は一瞬の内に、彼の腕の中でレンの一部になる錯覚を覚える。</p><p>いつか聞いた音楽が催眠のように頭の中を流れている。</p><p>「得不至的愛情」だった。<br></p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10314309713.html</link>
<pubDate>Wed, 05 Aug 2009 01:50:49 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」９</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">この一瞬のレンは私のものだ。</font></p><p><font size="3">誰も彼を見ることは出来ないし、彼も私以外を見ることは出来ない。</font></p><p><font size="3">レンと私の間に誰も割り込ませないかのように私達の腕がぴったりと合わさっていて、時折触れる指先にさえ、私は動揺が隠せない。</font></p><p><font size="3">「ワインのお代わりは？お姫様。」</font></p><p><font size="3">冗談めかして、言う時のレンの目が好きだ。</font></p><p><font size="3">左の眉を、やや上にあげて、小馬鹿にしたような顔で言う。</font></p><p><font size="3">「オーストラリアワインの白がいいわ。」言ってからレンを見た。</font></p><p><font size="3">レンは気付いてるだろうか、最初にレンと出合った時、皆で乾杯した時のことを。</font></p><p><font size="3">レンはあの時、こう言った。</font></p><p><font size="3">レンのかつての上司がワインの種類を選んでいる時だ。「僕はオーストラリアのホワイトワインを一緒に飲んだ人と恋に落ちてしまうんです。」レンの上司は、笑いながら、「今日の食事は、仕事が中心の集まりだから、恋に落ちられたら大変だ。今日は赤にしよう。」</font></p><p><font size="3">皆が一斉に笑った。<br>運ばれてきたワインは冷えていて、フルーティな味わいで飲みやすい。<br></font></p><p><font size="3">レンは恋に落ちてくれるのかしら。<br></font></p><p><font size="3">いっそこのまま、夜が終わらなければいいのに。</font></p><p><font size="3">恋の始まりに思うことは誰でもいつでも、使い古された同じ台詞の繰り返しだ。</font></p><p><font size="3">恋心も皆一様におなじなんだろう。<br>不幸はそれぞれに不幸だが、幸せは皆似通っている。</font></p><p><font size="3">同じように失恋は様々だろうけれど、恋の成就は一様に似通っているんだろう。<br>太古から受け継がれた人々の恋心。</font></p><p><font size="3">今その連鎖の中にレンと私が数珠繋ぎの途中に存在している。</font></p><p><font size="3">皆と同じであることが、これほど幸せに思えたことは、一度もなかった。</font></p><p><font size="3">きっと、若い時に今のような感覚を得たならば、その時に私は結婚して子供を産んでいたに違いない。皆と同じ連鎖の中にいる自分を誇れただろう。<br></font></p><p><font size="3">遅すぎると思う事さえも遅すぎて、コントのようにおかしくて、「ふふ。」思わず自虐の気持ちもあって笑ってしまった。</font></p><p><font size="3">レンが「どうしたの？」私の顔を覗き込む。</font></p><p><font size="3">もう、数センチで私とレンの唇は一つになりそうな距離だ。</font></p><p><font size="3">フルーティなワインの香りが白くレンから立ちのぼる。</font></p><p><font size="3">私が、ふとレンの唇に視線を移した瞬間、わずかだった明かりが、レンの顔にさえぎられ、彼の唇の柔らかさと白ワインの香りだけが私の知覚のすべてになった。<br></font></p><p><font size="3">私たちの受け継がれた遺伝子も太古にどこかで出会っているかもしれない。</font></p><p><font size="3">遺伝子達が、それを覚えていて、どうしようもなく一つになりたがるのかもしれない。<br></font></p><p><font size="3">彼の口付けを受けながらそんなことを思った。</font></p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10313780768.html</link>
<pubDate>Tue, 04 Aug 2009 11:03:30 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」8</title>
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<![CDATA[ <p><font size="3">レストランといっても、中国の古典楽器を中心にしたライブを行う無国籍料理の洒落た店で、明らかに外国人を顧客に設定した、静かで洗練された場所であった。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">レンの予約した席は、イタリアのオペラ風のシャンデリアがすぐ手の届きそうな、2階席で、ライブのステージを上から見下ろせる場所にあたる。</font></p><p><font size="3">小さな階段を何回も登った気がする。</font></p><p><font size="3">1階でも充分楽しめただろう。様々に嗜好を凝らした席が作られている。</font></p><p><font size="3">隠れ家的に完璧に照明を落としてある点も恋人向けに作られている。</font></p><p><font size="3">上に上がるとソファーがステージに向けられて配置されているものの、薄暗い中にキャンドルとほの暗いシャンデリアが唯一我々の顔を識別できる明るさを提供しているのみで、完全なプライベートの中で演奏が楽しめるようになっていた。<br></font></p><p><font size="3">私たちは最初はテーブルで、ステーキとワインを堪能し、途中でソファーの席に移る。</font></p><p><font size="3">9時から演奏が始まった。最初は横笛と二胡と琵琶のような楽器とシンセサイザーによる競演だ。次第に、個々の演奏へと移り、ソロの腕が披露される。演奏家は若く年長でも35才ぐらいか。</font></p><p><font size="3">そのうちに私たちは心地よい酔いと、まったりとした演奏の中で、二人の感覚が一つに解け合い、油壷の底に沈んでいくような錯覚を覚えた。</font></p><p><font size="3"><br></font></p><p><font size="3">古から受け継がれた楽器。その楽器を使って、古（いにしえ）の曲を今風にアレンジしながら、一層の斬新さをもって古代の悠久の流れを同時に与えてくれる演奏。</font></p><p><font size="3">自分が延々と続いていく歴史の中の1粒であるという感覚を教えられる。<br></font><font size="3">音と共存する心地よさとでもいうのだろうか。</font></p><p><font size="3">その心地よさに漂いながら、日本にもそんな音楽が存在するのか？ふと、考える。</font></p><p><font size="3">私には覚えがない。古きよきものは古きよきものとして残っている。</font></p><p><font size="3">しかし、このような形で今と溶け合って、さらにその古を感じさせながら、国境を超えて人々を楽しませる国楽は少ない気がする。</font></p><p><font size="3">そうしてみると、音楽一つをとってみても、中国と言う国は、西洋に対峙する東洋の代表であると認めざるを得ない。そう思うほかない。<br></font></p><p><font size="3">「お客様、ワインのお代わりは？」ウエイターが蘇州語で聞いてくる。<br>赤いキャンドルの光がレンのそぎ落とされたような頬を照らしている。</font></p><p><font size="3">「今日は1時までは飲みますからね。」いたずらっ子のような目でレンが言う。<br></font></p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10313399759.html</link>
<pubDate>Mon, 03 Aug 2009 20:28:01 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」7</title>
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<![CDATA[ <p>どうやら、紗枝は私とレンの出会いに、どうしても必要不可欠なファクターになっているようで、自分でそれを喜んでいるようにも見える。<br>「比呂さん、今回の蘇州の予定は？」レンが紗枝を横目で見ながら聞いてくる。</p><p>紗枝は間髪をいれずに「今日は、仕事の後会食がありますので、比呂さんは時間ありません。よろしく。お誘いしないでくださいよ。」と答える。<br>「はいはい。今日は私も時間が詰まっていて、あ、もう行かなくては。では比呂さん改めて連絡いたします。失礼。」そういって、レンは立ち上がると、大股であっという間にロビーの向こうへ消えていった。</p><p>「まったく、忙しい人なんだから。デザート取って来ます。比呂さんは、ヨーグルトか何かたべられますか？」</p><p>「じゃ、コーヒを。」私がそういうと、紗枝は奥のデザートが並べられている部屋に向かって行った。</p><p>「お皿をお下げしてもよろしいですか？」流暢な英語でテーブルの係りが聞いてくる。</p><p>「ええ、お願いします。」皿が持ち上げられた瞬間、テーブルの下に小さな紙切れが落ちた。</p><p>何かのメモらしい。手に取った瞬間、とっさにレンが書いたとわかった。</p><p>紗枝が手にいっぱい食べきれないほどのデザートを下げて戻ってきた。</p><p>私は、さりげなくポケットに、さっきのメモを入れて、コーヒを受け取った。</p><p>「ありがとう。」</p><p><br>部屋に戻って、さっきのメモを見る。明日の夜、二人で飲みたいと書かれてあった。</p><p>この蘇州にいる理由が、今、見つけられたような気がした。</p><p>次の日夕方5時ぐらいから、ホテルに戻った。高校生のように浮かれている自分が恥ずかしい。</p><p>紗枝達は、別の会社の展示会後に催されるパーティに出るようだ。本来なら参加しなければいけないけれど、</p><p>疲れていることを理由に断った。</p><p>今日の夜はレンとの特別な日になるかもしれない。</p><br><p>こうしてレンを思いながらシャワーを浴びていると</p><p>男の為にシャワーを浴びる感覚をとうに忘れていた自分に気が付く。</p><p>バスローブをまとって、化粧台の前に立つ。</p><p>お気に入りのヴェルサーチェのトワレを首筋に付ける。</p><p>その時電話が鳴った。</p><p>「レンです。」</p><p>「はい。私。」</p><p>「今日はライブの聴ける店を予約してあります。8時にロビーで。」</p><p>そういうと、あっさりと電話は切れた。</p><p>鏡の中の自分が、ライトが当てられたように瑞々しく映っている。</p><p>恋をしているんだ私。</p><p>恋とは、かくも女性を美しくするものなのだろうか。</p><p>思わず、鏡を見ながら自分の頬を人差し指でなぞってみる。</p><p>「きれい、だわ。」　自分でつぶやく。</p><p>念入りに化粧をしていると、時計はすでに8時近くになっていた。</p><p>ロビーに急ぐ。</p><p>ロビーの下のソファーにレンは横顔を見せて座っていた。</p><p>やはり、美しい男だ。</p><p>どの方向から見ても、その美しさに隙がない。</p><p>私に気が付くと「お姫様、行きましょうか。」</p><p>微笑みながらレンが立ち上がった。</p><p>ドアを出て行くカップルの一人がレンを見ている。</p><p>レンの知性の伴った美しさが、誇らしい。一方で誰にも見せたくない気持ちもある。</p><p>今、レンの視線は私から離れない。</p><p>自分以外の女性に彼の一瞥の視線も与えたくない。</p><p>そんな事を考えるだけで、気が遠くなる。</p><p>経験したことの無い感情。束縛？嫉妬？彼の存在自体から生じる対象のない嫉妬。</p><p>そんな感覚が存在することをはじめて知った。</p><p>ばかばかしい。言い聞かせるけれど、またその不安がこみ上げる。</p><p>なるほど、レンの妻を疲れさせているのは、この解明し難い己自身の感情に違いないと思った。</p><p>十年以上、こんな感覚に支配され続けたら、誰でも、実際よりも老けてしまうに違いない。</p><p>私は今、この瞬間だけを味わいつくそう。他にどうしようもない。</p><br><p>自分に、そう言い聞かせて、レンの腕をとった。</p><br>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10312763348.html</link>
<pubDate>Sun, 02 Aug 2009 21:24:52 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」6</title>
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<![CDATA[ <p>朝、目が覚めた瞬間、どこに自分がいるのかわからなかった。</p><p>うっすらと、木で作られたブラインドの隙間から、朝の日差しが差し込んでくる。</p><p>このシーツから漂う香りは、ホテル特有のものだ。私は蘇州に出張で来ていることをやっと思い出す。</p><p>時間をたしかめるのに、ベッドの横に目をやると、すぐに電話が鳴り出した。</p><p>「おはようございます。」受話器の向こうで紗枝が言った。</p><p>「比呂さん、おはようございます。よく眠れましたか？</p><p>私、もう用意が出来たんですけれど、朝ごはん、ご一緒にどうですか？」</p><p>「あ、紗枝さん、ホテルありがとう。スーペリアの角部屋に変更してれたんだ。ベッドが広すぎるのが、ちょっと複雑だけど、ゆったりと寝られた。」私は笑って言った。</p><p>「よかったら先にレストランの方に下りていってくれたら嬉しい。</p><p>軽くシャワーを浴びたら、すぐ降ります。」紗枝は「了解です。」と言うと電話をきった。 </p><p>蘇州のホテルはどこも、オリエンタル調に統一されていて、それでいて、西洋人好みに洗練された造りになっている。どろくさい上海とは一味違う。</p><p>私は蘇州の方が、好きだ。 </p><p>軽くシャワーを浴びて、支度を済ませ、階下に降りた。</p><p>バイキング形式のレストラン内を左に抜けるとしゃれた中庭に出ることが出来る。時折ウエディングパーティも催される場所のようだ。朝は中庭でも食事をとることができる。中央に設置されたテ</p><p>ーブルに談笑している二人の男女が見えた。こちらに背を向けて座っているのは間違いなくレンだった。</p><p>驚いた。私の好きな茶色い巻き毛は、彼の肩辺りで揺れている。</p><p>その左肩越しから、笑顔の紗枝がちらりと覗いた。私は、いたずらを見つけられたように、赤面する。</p><p>あとは、テーブルにつくしかない。</p><p>なんでもないような顔を作りながら、テーブルの方に歩いていく。</p><p>紗枝の表情から、レンは何かを読み取って、私の方へ振り向いた。</p><p>「あ、レンさんじゃありませんか？」自分の方から声をかけた。「先日はどうも。お久しぶりです。」</p><p>レンはナプキンで口をぬぐいながら、立ち上がり私の為に椅子を引いた。 </p><p>紗枝は、「おどろいたでしょう？私の仕掛けた悪戯じゃないのよ、比呂さん。</p><p>レンさん、ここで一人で、コーヒを飲んでた。だから、お食事を同じテーブルでって、薦めたの。」</p><p>そういって、クスクスと笑った。 </p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10307146570.html</link>
<pubDate>Sat, 25 Jul 2009 18:19:16 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」5</title>
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<![CDATA[ <p>紗枝が仕事の電話を受けて、席をはずしている間、窓際に4人の中国人ビジネスマンが入ってきて、大きな声で話しだした。</p><p>そちらに目をやると、彼らの席のウインドー越しに、整然と整地された道路が広がっているのが見える。</p><p>目に入るすべての建物はパビリオンのように生活感が感じられない。</p><p>レンと初めて二人きりで会った夜の光景が、その景色に重ねられ、私は自分の記憶へと意識を集中させる。そこは、東京のお台場でもみられるような打ちっ放しのコンクリートで出来た和食の店だった。</p><p>レンがよく来る店のようだ。カウンターに入っている店長と軽く挨拶をしている。何も言わずに、料理が出始める。私達は、この間会った時の盛り上がりとは、正反対に一言もしゃべらない。</p><p>不思議なのは、もう、何年もこうして、二人でいたような気がする。</p><p>突然、レンが「初めてじゃない気がしますね。こうしてるのが。」と言った。</p><p>私は、自分の心の中が読まれてるような気がして、言葉に詰まった。「ほんと。こんなに緊張もせずに、たった１回しか会ったことの無い方と、二人で飲んでることが信じられない。」</p><p>私は微笑んで言った。すぐ後で、まるで、媚びたように映ってないか、自己嫌悪する。</p><p>「比呂さん、日本酒頼みますか？」「いいですね。今日は寒いので熱燗にしますか？」</p><p>私は、今度は嬉しくなって笑って答えた。日本酒はいい。特に二人で飲むには。</p><p>たわいの無いことを話した。時計はすでに、夜中の1時を回っていた。</p><p>レンは一向に腰を上げる様子も無い。ただ、まったりとしたＢＧＭが私たちの間を行ったり来たりするだけの時間。一口飲んでから何かを話そうとするのだけれど、そうすることが、何か無意味な気がして、言葉は口からは出てこない。それでも、私とレンは、会話していたと思う。無言の会話。それが、お互いに解る気がした。ただ、どうやって、この時間に終止符を打てばよいのか解らなかった。</p><p>店の人間が、そろそろ弊店ですと申し訳なさそうに、言ってきた。すでに弊店の時間は、1時間を回っていた。</p><p>レンが言った。「僕の家で飲みなおしますか。ここで話してても、つきないから。」</p><p>私は、一瞬とまどった。私とレンが、今後どうなるのかそんなことはわからない。でも、わたしの中で何かがストップをかける。「いえ、それは、まずいと思います。」レンは、一瞬、飴を取り上げられた子供のような表情になって、すぐ、思い返したように、「そうですね。じゃ、帰りましょう。」と言って、席を立った。</p><p>わたしの中で、まだ、この甘い飴を噛み砕いて飲んでしまう気には、なれない。もっと、この香りを楽しみたい。</p><p>外は、客待ちのタクシー以外は車も走っていない。</p><p>気が付くとレンが、さっきまで飲んでいた日本酒の入った杯を手に持って笑いながら立っている。</p><p>一口飲んで、私に渡す。私も一口飲む。</p><p>レンは杯を再度受け取ると、</p><p>「なごりおしさに、乾杯。」と言って一口飲んだ。</p><p>彼は、うれしそうに見えた。</p><p>タクシーの中から彼を振り返りながら、私は、これから先彼を、もっと知りたいと、そう思った。 </p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10298443808.html</link>
<pubDate>Sun, 12 Jul 2009 17:10:25 +0900</pubDate>
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<title>「得不至的愛情」4</title>
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<![CDATA[ <p>それから、ひと月程たったころ、紗枝から私に仕事の依頼が来た。</p><p>蘇州の会社に出張し、フランス人と交渉に加わって欲しいということだった。英語と多少の中国語なら話せる紗枝に、実際私が必要なのかどうか、わからないが、紗枝がそう望むのなら、そうしよう。<br>ホテルに迎えに来たバンに乗り込んで、1時間半程ゆられながら蘇州に到着した。</p><p>蘇州には、上海と違って、こじんまりとしたしゃれたホテルが多い。私たちは、蘇州に会社を持つ香港人の社長の勧めで、湖畔の近くにある静かなホテルに泊まることになった。<br>今日は疲れた。ホテルにあるバイキングで、軽くディナーを済ませる事にしよう。</p><p>ビールよりはワインが飲みたい。</p><p>中国産ワインを頼むことにして、小姐（ｼｬｵｼﾞｪ）を呼んだ時、紗枝が思い出したように言った。</p><p>「そう、明日、レンさんも、みえるんですよ。おどろいた？」<br>私は、一瞬自分の胸の辺りが、揺れるのを感じた。悟られないように、息を呑む。</p><p>「え、そうなんだ。仕事で？」「レンさん、比呂さんが来る事知って、急いで出張の予定いれたんじゃないかしら？</p><p>もちろん、技術者も一緒に大連から来るって、いってたから、比呂さんと、会うことだけが目的じゃないとは思うけどね。」</p><p>ただの気まぐれの仕事の手伝いが、レンの登場によって、違った意味を持たせる。ただ、うれしいと言う気持ちとは違う。これから私はどこに向かっていくのか、空港の税関の前で、ただ指示を待つだけの外国人のように、レンに指示されるのを待つだけの自分。まあ、それも悪くない。</p><p>先月レンと初めて二人きりの食事をした後の、別れ難い夜を思い出しながら、目の前の牡蠣を食べる。</p><p>急にレンに無性に会いたくなった。その気持ちをかき消すように上品に配列されたバイキングとワインを堪能することに集中する。</p><p>一方でまだ見ぬ、レンの顔を思い浮かべていた。</p><p>私たちに、あの時とは違う夜が用意されている気がした。<br></p>
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<pubDate>Fri, 03 Jul 2009 02:08:14 +0900</pubDate>
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<title>得不至的愛情3</title>
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<![CDATA[ <p>真昼、若い友人達と食事している最中に、かかってきたレンの電話は、ひ</p><p>どく場違いな気がした。</p><p>「今日は、どうしたんですか？」</p><p>私は、レンに問いかける。</p><p>「いえ、今度一緒に食事でも、どうですか。よければ、今夜。」</p><p>やはり</p><p>、レンもそうか。仕事のできる自信家は、誰でも、その日の夜の食事を指</p><p>定してくる。</p><p>きっと、他のアポイントに穴が開いたからだろう。</p><p>私との会食のプリオリティは、さほど高くない。</p><p>「あ、今夜は用事が入っていてダメなんです。明日はどうでしょう。」</p><p>実際は、マッサージの予約しか入れてはいなかったが、たとえそれが、レンであっても、</p><p>穴の開いたアポイントに私の予定を使う気はない。</p><p>それは、私が若いときに得た教訓である。</p><p>自分の予定は、誰の予定よりも大切に扱う。</p><p>人のために、何かを裂いたからといって、見返りは、全くないと思って間違いない。</p><p>また、断ったからと言って、恨まれることもないのだ。</p><p>憎まれ口はたたかれるかもしれないが、本人は、大して、本気で怒っているわけではない。<br>レンは、明日、アパートまで車で迎えに行きますといって、電話を切った。<br>私は、すでに何かがひとりでに動き始めたことを感じた。<br>目の前に違う扉が開くのが見えた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/fengxinzi/entry-10289584246.html</link>
<pubDate>Mon, 29 Jun 2009 01:23:50 +0900</pubDate>
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