新作映画批評:映画無知 https://ameblo.jp/filmilliterate/ シンガー[私ソング]ライター:ふじのこーせい執筆の新作映画評 ja-jp セールスマン https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12290660675.html 監督:アスガー・ファルハディ 脚本:アスガー・ファルハディ “人の振り見て我が振り直せ”という諺は映画鑑賞にも有効で、登場人物の愚かな言動に対して、観客は嫌悪や違和感を抱いた果てに、自らの考え方や営みを省みることができる。しかし、そんな判断が簡単に割り切れないのが本作で、価値観が意図しない感覚で揺らいでしまう。劇団に所属する夫婦、転居先で何者かに襲われる妻、警察に被害届を出せず、犯人探しを始める夫…。前住人の秘密なども関わり、ミステリー調ではあるが、人間ドラマの心理面に重きを置いている。現代イラ 2017-07-08T23:30:59+09:00 ジェーン・ドウの解剖 https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12286670874.html 監督:アンドレ・ウーヴレダル 脚本:イアン・ゴールドバーグ/リチャード・ナイン 映画に限らず、楽曲でも文筆でも、作り手は様々な沢山のことを詰め込みたくなる。良くも悪くも、クリエイターは欲張り。ひとつの作品に情報が多いほど高得点!なのではなく、真に必要なものを見極め、余計な部分は削ぎ落とす作業が大切。つまり、足し算ではなく、引き算が巧妙な作品はセンスが良い。思い切った断捨離が作品の出来を左右する。ただし、必要・不必要の線引きは難しく、正解のない答えを探し出すようなもの。本作は、身元不明の女性遺体を 2017-06-24T23:30:59+09:00 美しい星 https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12283488262.html 監督:吉田大八 脚本:吉田大八/甲斐聖太郎 十人十色。百人百様。千差万別。本作を観て感じること、楽しみ方は究極の“人それぞれ”でしょう。作り手の意図を丁寧に勘繰るも良し、シュールな設定とコミカルな場面に笑うも良し、好きなキャストに見惚れるも良し。あるいは、三島由紀夫の原作を土台に好き勝手な脚色を施した吉田大八監督の“俺流の方程式”が意味不明で面白くないと思うも良し(苦笑) 賛否両論と言えば容易いが、そもそも、ジャンル不問で、明確な“答え”を提示しない作品なので、観賞きっかけは何でも構わず、とにか 2017-06-13T23:25:59+09:00 トンネル 闇に鎖された男 https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12280863498.html 監督:キム・ソンフン 脚本:キム・ソンフン なかなかの“いけずぅ~”な内容(勿論、褒め言葉)。崩落した巨大トンネルに車ごと閉じ込められた男の話で、パニック&サバイバル映画の様相を呈するも、過去の類似作品とは似て非なるテイスト。工夫して生き延び、なんとか脱出する術を画策する…そんな主人公の強さにスポットを当てた物語、とは言い切れないし、困難な状況下で、レスキュー隊が奮闘する救出劇を描く…感動優先のヒューマンドラマ、とも位置付けにくい。当然、そういった要素が無い訳ではないが、本作の印象的な特徴は、人 2017-06-04T23:55:59+09:00 スプリット https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12277913526.html 監督:M・ナイト・シャマラン 脚本:M・ナイト・シャマラン パート2やパート3など続編の場合、シリーズ未見でも充分に単体として楽しめる作品が望ましい。勿論、ある程度のストーリー連続性はあるので、前作鑑賞済の方がより一層楽しめる。本作は“続編”と銘打たれたものではないので、そもそも、話が繋がっているか否か?の心配は無用なのだが…。女子高生3人が拉致監禁される。犯人は多重人格者で、次々とキャラクターが変貌する。精神科医との面談、女子高生の幼少期の記憶、いろんな場面が意味深に構成され、ミステリーとして 2017-05-25T23:10:59+09:00 カフェ・ソサエティ https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12274732422.html 監督:ウディ・アレン 脚本:ウディ・アレン シェフ・ウディ爺さんの味が好きで、新しいメニューが出来ると必ず店に食べに行く。時にファンタジーだったり、殺人事件をトッピングしたりと、ひと工夫された調理もあるが、それより何より、いつもながらの“天邪鬼”テイストが利いた、ウディ爺さん流のシンプルな料理が美味しい…。『カフェ・ソサエティ』は定番の味付け。1930年代のハリウッドとニューヨークを舞台に、青年の夢と恋愛を描く。ブリッジ感覚で手短に紹介される主人公の家族エピソードが笑いを誘う。『アニー・ホール』 2017-05-14T23:35:59+09:00 フリー・ファイヤー https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12271401635.html 監督・脚本:ベン・ウィートリー 脚本:エイミー・ジャンプ 人間の身体は6割以上が水分で形成されているが、本作は6割以上が銃撃戦で構成されている。古びた倉庫に集う男女10人の悪党たち。銃取引、売る側と買う側。些細な原因で挑発される銃の乱れ撃ち。格好良いガンアクション映画なら、ご都合主義で展開して、痛快、爽快、カタルシス全開がセールスポイントだが、本作は違う。射撃の腕前が悪い者ばかり、肝心なところで弾切れ、傷は負っても決着はつかない…グダグダな銃撃戦が続く。心理戦で小洒落た会話劇が巧妙な起承転結をも 2017-05-03T23:50:59+09:00 おとなの事情 https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12268035651.html 監督・脚本:パオロ・ジェノヴェーゼ 脚本:F.ボローニャ/P.コステッラ/P.マミーニ/R.ラヴェッロ 我々は相手次第で自分を演じ分ける。配偶者、親友、同僚などは勿論、知人Aに見せる自分、知人Bに振る舞う自分も微妙に違う。誰に対しても同等ではいられない以上、大なり小なり秘密が生じる…と、こんな前置き不要なくらい、プライバシー満載の携帯電話を覗かれると困る!のは分かり易い案件。それを題材にしたアイデア映画で、イタリアのシチュエーション・コメディ。冗談や道化で笑わせる喜劇ではなく、棘のある人間ドラマ 2017-04-22T22:30:59+09:00 暗黒女子 https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12264771526.html 監督:耶雲哉治 脚本:岡田麿里 悪くない、悪くはないけど、声を大にして「面白~い!」と推せない、惜しい青春ミステリー。お嬢様学校で起きた転落死の真相は?文学サークルの部員たちがそれぞれの視点でエピソードを物語るが、事件に関する経緯も辻褄も全く異なり、事実と嘘の見分けがつかない。敢えて言うならば、黒澤明『羅生門』の平成版学園編(苦笑) 全貌が明らかになり、最終的に驚かされる展開は面白いが、いまひとつ物足りなく、決定打に欠ける。良く言えば、綺麗に整頓された分かり易い構成だが、悪く言えば、親切丁寧な描 2017-04-11T23:00:59+09:00 アシュラ https://ameblo.jp/filmilliterate/entry-12261740996.html 監督:キム・ソンス 脚本:キム・ソンス 「私のどこが好き?」「全部!」「ずるい、具体的に教えて~」みたいな男女の定番会話は愚問愚答に聞こえるが、でも、誰かに本作の見所を訊かれたら、迷わず「全部!」と言いたくなる(苦笑) 善と悪が簡単には割り切れぬ人間臭いドラマに、終始、目が釘付け。悪徳市長と、彼を逮捕したい検事、そして汚職刑事…三つ巴の攻防戦。市長側で裏仕事を担う刑事だが、検事に弱みを握られ、検察側に協力せざるを得なくなる。双方の間で揺れ動く刑事が、物語を面白く掻き乱していく。巧妙に立ち回って最 2017-04-01T22:58:59+09:00