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<title>狐の戯言</title>
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<description>他サイトから創作垢のお引越をしました。医療系大人女子でアニメ、ゲーム等が好きです。自作小説（ライトノベル）やイラストを投稿しています。別名の日常垢でエッセイも書いています。</description>
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<title>新年明けましておめでとうございます　by銀狐</title>
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<![CDATA[ <div>&nbsp;明けましておめでとうございます。</div><div>銀狐です。</div><div><br></div><div>　年末にお伝えしていた通り、ブログサイトの引越に伴い、データ移転の際に欠損している作品群が発見されたため、再掲を試みようということで、リマスター版を計画しています。</div><div>　リマスターという言葉は、本来は音楽や映像に関して、（必要な場合に限り一部改変するとしても）基本的に元の作品に沿って新しくするという意味で、比喩的に文学作品等にも使われる、とされています。</div><div>　また、ゲームのキャラクターの強さやポテンシャル等をレベルに応じて並べる階層表、すなわちTier表もまた比喩的に用いられるとされているので、うろ覚えながら、自分的にお勧めできる、または、読んでもらいたいと思える作品をまとめてみました。</div><div>　実際にこのサイトを遡って、またはURLを辿って、読むことができるものと、欠損したためにこのサイトには存在せず、前サイトも消滅しているため、バックアップデータから復元が必要なものがあります。存在していれば、URLを示すだけで読むことは可能ですが、消滅したものについてはそのままでは読めないからです。比較的最近のものはほとんどが完全に残っていますが、一番大事な初期作品はほとんど全てが消滅していたりもします。</div><div><br></div><div>　いざ復元となるとそれはそれで結構大変なので、すぐにもというわけにはいきませんが、折をみて少しずつ進めていけたらなと思っています。</div><div><br></div><div>　Tier表には、発表年月とタイトル、本数と簡単なメモをつけていますが、内容のネタバレしたくないものもあり、またうろ覚えなので、読んだらメモのイメージと違う場合もあるかもしれません。</div><div>とはいうものの、世の中で発表される小説や漫画、映画、ゲームでも「触れ込みと違うじゃないか」みたいなことはあると思うので、「騙された」と取るか、「見解の相違」と取るかは読まれた方次第にはなるかと思います。</div><div><br></div><div>　Excelで作ったリスト表をコピペしたものをベースに、少し手直ししたTier表を以下に掲げますが、基本的に、自分として黒歴史に近い、もう消えててもOKなものはあらかじめリストには加えていません。（「作品はイマイチだが挿絵だけは惜しい」というものは、別途挿絵だけで再掲したいと思っています。）</div><div>　また、表には入れたものの、「別になくてもいいなぁ」というもの（✕など）や、多少迷って一応残したものもあるので、正味SS〜Sランク、ギリギリAランクまでが基本的にリマスターの対象ですが、Bランクの中には現実のモデルがあるものや、リクエストにお応えしたものがあったり、C、Dランクには単発ながら思い入れがあるもの（△）や、実験的に試行した意欲作もあったりはするので、必ずしもランク通りではありません。</div><div>　小説とイラストのリマスター版の投稿は、おいおいやって行こうと思いますが、実現はいつになるか、お約束はできません。長〜〜〜〜〜〜〜い目で見てやっていただけるとありがたいです。</div><div><br></div><div>　今年もよろしくお願いします。</div><div>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　銀狐</div><div><font size="5">自作小説過去作品リマスター候補</font></div><div>&nbsp;<b>Tier表</b></div><div>&nbsp;<font size="2">単発（一部例外あり）、ポエム等小説以外を除く</font></div><div><b>&nbsp;<i>【SSランク】</i></b></div><div>&nbsp;2012.4~2012.11「&nbsp;<b>三狐神様シリーズ外伝『三狐神様のお告げ』スピンオフ」</b>　狐神への献身的な巫女の愛を描く物語　17本</div><div>&nbsp;2012.11~2013.2 「<b>白狐神伝奇 Foxes Saga」 </b>なまなり（鬼）と巫（かんなぎ）、双子の狐神と犬神との因縁　11本</div><div>&nbsp;2014.1 「<b>Killer Queen</b>&nbsp;」一卵性+二卵性の三つ子と女王の物語　9本</div><div>&nbsp;<b><i>【Sランク】</i></b></div><div>&nbsp;2012.4~2012.11 「<b>三狐神様のお告げシリーズ」&nbsp;</b>参拝者に神のお告げを授ける巫女のモノローグ（心理学的アプローチ）19本</div><div>&nbsp;2012.7<b> 「Other World」 </b>精神科医師を想うカウンセラーの片恋23本</div><div>&nbsp;2014.4<b> 「Another World」</b>Other Worldの続編（後日談）4本</div><div>&nbsp;2012.7<b> 「吸血鬼〜Blood sucker〜」&nbsp;</b>魔女の歪んだ愛に運命を狂わされる男女の物語　8本</div><div>&nbsp;2012.8<b>&nbsp;「黒衣の花嫁―Bride in［black］wedding dress」&nbsp;</b>婚約者を失った女性と、記憶を失った婚約者の双子の弟の物語 4本</div><div>&nbsp;2014.9<b> 「Dearest/mother✕female」</b>『黒衣の花嫁』の続編（後日談）7本</div><div>&nbsp;2012.10<b> 「Rein(ライン)」&nbsp;</b>異国の王子と娼館に売られてきた田舎娘との幼い愛と破綻　11本</div><div>&nbsp;2013.2~2013.3<b> 「desire 傾国妖狐伝説」</b>戦国の世で両性具有の主人公を拾った武将を取り巻く人間模様　12本</div><div>&nbsp;2013.4<b> 「三都物語」</b>&nbsp;希死念慮を抱えた主人公と女医の破滅的な愛　7本</div><div>&nbsp;2013.5<b>&nbsp;「琥珀―Elektra― 」</b>最愛の父親に瓜二つの異母弟に惹かれるヒロインの破滅　5本</div><div>&nbsp;2013.6<b> 「破壊天使堕転ー三屋郷怨霊伝説異聞ー」</b>最愛の夫に裏切られ怨霊と化す妻の物語　5本</div><div>&nbsp;2013.9<b>&nbsp;「2/1ーいちぶんのにー」</b>&nbsp;運命に弄ばれる奇跡的な男女の一卵性双生児　4本</div><div>&nbsp;2014.11<b>&nbsp;「卵（らん）ー神の理（ことわり）に背きしものー」</b>&nbsp;惑星外生命体に狙われた女性科学者とその息子　3本</div><div>&nbsp;2015.1<b> 「魂の恋人」</b>&nbsp;ソウルメイトの記憶を反芻する主人公の回想　4本</div><div>&nbsp;2015.1<b> 「鬼姫転生」</b>人間の男性に裏切られた鬼の姫が転生して復讐する物語　4本</div><div>&nbsp;2015.5<b> 「乳兄弟」</b>乳兄弟の男性を愛しながら運命に翻弄される姫の物語　4本</div><div>&nbsp;<b><i>【Aランク】</i></b></div><div>&nbsp;2013.9~2013.10<b> 「Punishmentー疑わしきは罰せよー」</b> 父を失った姉妹が仲間とともに戦う　8本</div><div>&nbsp;2013.11~2013.12 <b>「Todesengel 死神」</b>大天使の兄と堕天使の弟の歪んだ愛　4本</div><div>&nbsp;2014.3<b> 「女郎花（おみなえし）」</b>&nbsp;片恋に破れた女性の末路　5本</div><div>&nbsp;2014.4<b>&nbsp;「契（ちぎり）ー狐御前と陰陽師ー」</b>&nbsp;高貴な女性に取り憑いた妖狐に惹かれてしまう陰陽師　3本</div><div>&nbsp;2015.5 <b>「紫陽花」</b>壮絶な過去を捨てた宗教者が娼婦に惹かれる4本</div><div>&nbsp;2021.1<b>&nbsp;「聖母の子供たち」</b>12人の少年少女の秘密を握る科学者　2本</div><div>&nbsp;2022.4 <b>「Thanatos&nbsp;」</b>魔法学校の同期男女3人の過酷な運命　3本</div><div><i>&nbsp;<b>【Bランク】</b></i></div><div>&nbsp;2012.5 <b>「三葉の写真&nbsp;」</b>古い三葉の写真から祖母の思い出を母が娘に語り聞かせる　3本</div><div>&nbsp;2013.7 <b>「ユグドラシルの妖精　銀毛のラタトスク」</b>登場人物の性別を変更した並行世界の全ての組合せ11本</div><div>&nbsp;2013.7<b> 「Arcadia 理想郷」</b>&nbsp;異世界を救うために召喚された主人公が戦う物語　3本</div><div>&nbsp;2013.8 <b>「Tragedyー死に至るメルヒェンー」</b>有名なおとぎ話のヒロインたちの悲劇　5本</div><div>&nbsp;2014.8<b> 「Spielkarteー魔女は3度嗤うー」</b>魔法で3度転生した女性の選択と後悔　5本</div><div>&nbsp;2018.4<b> 「約束&nbsp;」</b>※現実世界の友人のリクエストにより実際の事件をヒントに書いた　2本</div><div>&nbsp;2018.7<b> 「昔話『絵姿女房』のアレンジ」</b>※現実世界の友人のリクエストにより昔話の自己流改変を試みた　1本</div><div>&nbsp;2021.5<b> 「蛇」</b>※現実世界の友人のリクエストにより実際の事件をヒントに書いた　2本</div><div>&nbsp;2022.1<b> 「芙蓉に似た花」&nbsp;</b>歴史上の人物をモチーフに信仰と愛を描いた　2本</div><div>&nbsp;2022.11 <b>「Bitter Sweet Memories」</b>記憶を失った不老の主人公と恋人との再会とすれ違い　4本</div><div>&nbsp;2023.5<b>「R/G・B」&nbsp;</b>新選組がモデルのマルチエンディング　22本</div><div>&nbsp;2023.10<b> 「カテーナ・ヒストリア　歴史の鎖」</b>王位を争う兄弟と生贄となった女性、その子孫へと繋がる物語　4本</div><div>&nbsp;2023.10<b>&nbsp;「A bunch of fives 5人は仲間ーカテーナ・ヒストリア外伝ー」</b>5種類の民族出身の若者の友情を引き裂く戦い　3本</div><div>&nbsp;2025.3<b> 「女神の贈物」</b>悲しい運命を背負った女性を愛してしまった主人公の葛藤　4本</div><div>&nbsp;<b><i>【Cランク】</i></b></div><div>&nbsp;2012.9 <b>「Taminal station」</b>かつての片恋相手への女性の揺れる思い　6本</div><div>&nbsp;2013.6<b> 「涙壺」</b>モラハラ夫に悩まされる妻　3本</div><div>&nbsp;2013.6<b> 「星宿（ほしのやどり&nbsp;」</b>男女4人の交差する思い　3本</div><div>&nbsp;2013.10~2013.11<b> 「ぐっど・ばい3連作」</b>　心を病んだ主人公を立ち直らせようと支える女性　3本</div><div>&nbsp;2015.7<b>&nbsp;「天国への階段」</b>夫に苦しめられる妻が犯した犯罪　4本</div><div>&nbsp;2017.7<b> 「Fade out」</b>孤独な老人などと触れ合うヒロインの心象風景　8本</div><div>&nbsp;2020.1<b> 「人形の家」</b>&nbsp;人形使いの男性が操る生き人形に対する人間の所業　4本</div><div>&nbsp;2025.12 <b>「ファムファタル　運命の女（ひと）」</b>娼婦と昔馴染の男性の再会から始まる物語　2本</div><div><b><i>&nbsp;【Dランク】</i></b></div><div>&nbsp;2012.4~2012.11<b> 「三狐神様のお告げシリーズ（その他）関連単発」</b>（✕内容の記憶がない）<b>　</b>3本</div><div>&nbsp;2015.4<b> 「月光」</b>&nbsp;（△単発）　妖でありながら陰で妖から人間を守るヒーローと彼を支える女性　1本</div><div>&nbsp;2015.12 <b>「夢幻灯」</b>（✕人間とは別の理に生きる妖に取り憑かれ衰弱する男）　2本</div><div>&nbsp;2020.9<b> 「習作『あなたとあたし』」</b>（△単発）　モノローグ仕立ての短い作品 　1本</div><div>&nbsp;2021.4<b>「&nbsp;紅牡丹と白百合」</b>&nbsp;（△単発）一人の小説家を愛した正反対の女性小説家のたまご二人　1本</div><div><br></div><div></div><div></div><div><br></div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12952206019.html</link>
<pubDate>Sat, 03 Jan 2026 15:30:18 +0900</pubDate>
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<title>よもや！まさか！衝撃の事実発覚!!</title>
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<![CDATA[ <p>　皆さんおつかれさまです。銀狐です。</p><p>先日最新作前後編とあとがき解説を投稿し、</p><p>「年末年始の間に、バックアップリストのリンク張替え作業をする」</p><p>と宣言していましたが、あまりにも現実世界が面白くなく、現実逃避のため、前倒しで作業していました。</p><p>&nbsp;</p><p>　今秋に前ブログサイト閉鎖に伴うブログの引越をしたのですが、当然ながら、前サイトで投稿したブログのURLは使い物にならず、いつか読み返したり、再掲したりする時のために作っていたリンク集のバックアップを全面的に現サイト・アメブロでのURLに変更する必要がありました。</p><p>「新しいサイトで、過去の作品をご紹介して、読んで頂けたらいいな」</p><p>という思いもあって、頑張っていましたが、何と、初期の作品に欠損しているデータが見つかりました。</p><p>　データ引越時に、</p><p>「一部データが正常に転送されないかもしれない」</p><p>とは知っていましたが、勿論、全部が消えたわけではないので、「一部」といえば「一部」ですが、結構な割合で抜け落ちています。しかも、連作の最初だけとか最後だけ、または真ん中だけとか、抜けてるところと残っているところが交互になってたり、作品によっては、主要部分がごっそりない、というのもありました。要はランダムですね。</p><p>&nbsp;</p><p>　ブログ開始後、一時的にPCが故障で使えなくて携帯(ガラケー)で入力していたことがあったので、一つ一つの作品の文字数が少なく、画像も少ないし描き込み具合もそれほど密ではなかったものは、全編残ってたりするのに、お気に入りの作品が章ごとごっそり消えてたりするのは、</p><p>「文字数多いとか画像が細かいとか、データ容量食いそうなものなのかな？」</p><p>とも思いますが、たまたまそう見えるだけで関係ないかもしれません。</p><p>　消えてくれていても全然OK、寧ろ、もうURL残しとかなくてもいいくらいのに限って残ってるのが逆に悔しいような…。</p><p>「何でよりによって残ってるのがお前やねん…。」</p><p>みたいな感じです。</p><p>　勿論、Wordなどでバックアップは取ってUSBに保存しているので、完全に失われたわけではないのですが、データで置いてる限り、消えることはあるので、100%安心はできませんね。最初は紙に印刷してファイルしていたのですが、大量になってきて、現実の住居の引越時に全部処分してしまいました。</p><p>&nbsp;</p><p>　復元したい気持ちもありながら、想定外に失われた量が多くて、今はまだ手を付ける気になれません。欠損データが存在するのは2012年4月のブログ開始から2014年1月までで、それ以降は残っているとは言うものの、2015年以降は絶対数が激減、2016年は活動休止していたので、比率から言ったら、圧倒的な差があります。</p><p>&nbsp;</p><p>　とはいえ、嘆いていてもしかたないので、気持ちを切り替えて、「過去のオススメ作品をご紹介したい」という企画を活かして、必要な部分を復元しつつ再掲することで補完していけばいいと思うことにしました。　また、初期のイラストや挿絵をまとめてあげていたこともあったようで、「○○ギャラリー」と題した投稿もいくつか見られました。過去絵は原画がほぼ現存しているので（一部画像データしかないものもありますが）、それもまた公開していけたらいいかもしれないと考えています。</p><p>　果たして企画通りに実現できるのか、出来るとしたらいつ頃になるかはまだわかりませんが、長～～～～～～い目でみていただけたらと思います。よろしくお願いします。</p><p>&nbsp;</p><p>　クリスマスプレゼントがわりに過去絵の一部を貼っておきますね。画像データによると、2013年11月の作品です。PRG「ファイナルファンタジー」の人気キャラクター＆モンスターのぬいぐるみの画像を描いた記憶があります。</p><p>メリークリスマス！＆ハッピーニューイヤー！よいお年をお迎えください。</p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/99/90/j/o0240032015733106972.jpg"><img alt="" height="293" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/99/90/j/o0240032015733106972.jpg" width="220"></a><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/57/f6/j/o0240032015733106940.jpg"><img alt="" height="320" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/57/f6/j/o0240032015733106940.jpg" width="240"></a></p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/d9/8b/j/o0240032015733107004.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="293" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/d9/8b/j/o0240032015733107004.jpg" width="220"></a><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/a9/54/j/o0240032015733107069.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="293" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251223/17/gin-gitsu-ne/a9/54/j/o0240032015733107069.jpg" width="220"></a></p><p>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12951014692.html</link>
<pubDate>Tue, 23 Dec 2025 17:29:39 +0900</pubDate>
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<title>ファムファタル　運命の女（ひと）　あとがき解説</title>
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<![CDATA[ <p>　自作小説最新作「ファムファタル　運命の女（ひと）」前後編を投稿しました。</p><p>前サイト時代からの恒例、あとがき解説です。</p><p>&nbsp;</p><p>　序章の原案の下書きをメモアプリに描き始めたのが10月半ば頃でしたが、実際に執筆を開始したのは11月中旬頃でした。構想は大分前からあったのですが、現実生活で創作活動に没頭できるのはその時期まで無理だったからです。</p><p>&nbsp;</p><p>　今回の作品の原案のヒントになったのは、家族との雑談の中で</p><p>「水瓶座はクールでドライで、心がないアンドロイドみたいだ」</p><p>「水瓶座は頭の中でたくさんの自分の分身がいて、喧々諤々常に議論している」</p><p>みたいな、以前にも生活垢のエッセイに書いたことがある話が出たことでした。</p><p>勿論、（一般的な水瓶座全体がそうかどうかは別として、）私と同じ水瓶座の家族からそんな個人的意見が出た、ということなのですが、それから、「脳と体が別の生体アンドロイド」という発想が生まれました。</p><p>&nbsp;</p><p>　序章冒頭の『滅転墜（メテオ)』や、舞台となる場所の一つ『セヴンズヘヴン』、通貨の単位『ギル』は、人気RPG「FFⅦ」(ファイナルファンタジー）が元ネタであることは、ファンの方には一目瞭然かと思います。男性主人公の名も、同ゲームキャラクターの『ヴィンセント・ヴァレンタイン』からつけたものです。マッドサイエンティストのトウドウ博士は『宝条博士』をイメージしていますし、依頼者の『ジョニー』も限りなくモブに近いネームドキャラからつけました。因みに『モーヴ』という姓は完全に「モブ」からですね。</p><p>　『ヴィンセント』といえば、個人的には『Pandra Hearts』の『ヴィンセント』が推しだったので、愛称の『ヴィンス』はそこからとっています。悪役(?)の名前に『ギルバート』を使ったり、主人公のコードネームを『レイヴン』としたのもパンドラハーツが由来ですね。因みにギルバートの姓の『ディオン』は、FF16のキャラクターからです。盟友の『ランデル議員』は『ガンダムSEED DESTINY』の『ギルバート・デュランダル』のもじりですね。現首相と前首相の名前ももじりなのですが、これはゲームや漫画、アニメとかからではありません。お分かりになるでしょうか。</p><p>　ヒロインは最近見た映画『チェンソーマン』のレゼが大人になったような雰囲気の女性をイメージしていますが、名前の『イヴ』は「人の造りし人に非ざるもの」、エヴァンゲリオンと同じで「人造人間」だからです。『ノヴァ』は「スーパーノヴァ」という必殺技の名前もありますが、それよりも音とか語呂とかで決めました。姓の『グレイス』は優雅で気品のあるイメージからつけたものです。</p><p>&nbsp;</p><p>　FF7の「天からの厄災」やエヴァンゲリオンの「ファーストインパクト」、映画「君の名は」のような巨大隕石の落下衝突によって巨大な陥没孔(クレーター）が出来た冒頭の場面や、「脳だけが存在しているノヴァと、作り物の身体に宿らせた人造の（AI イヴの)それぞれの心とは」を描くために、災害に遭って脳だけ生き残ったという設定を考えたのですが、「災害関係」とか「性的表現」とかは非常にセンシティブなのではないかと、最近のご時世やコンプラを考えるとちょっと心配になってきまして、性的な場面は従来の作品に比べて相当マイルドというか、アメリカンコーヒー以上に濃度を薄めた上で最初に「おことわり」を入れました。従来も(特に十数年前のブログ開始初期は）「この作品はフィクションであり、実在の人物等とは関係ありません。」という文言は入れていましたが、TV番組の「これから○○場面が流れます。視聴にご注意ください。」的な注意書きは必要かと思いました。</p><p>&nbsp;</p><p>　奇抜なSF的な世界観を描きつつも、主題として表現したかったものは、「男女の恋愛感情(あるいはその表現の仕方）の違いや、女性心理の複雑さ」でした。恋人同士でも、その気持ちは微妙にすれ違っていることはあると思いますし、相性の良し悪しに関わらず、性差によって完全には分かり合えない部分もあるでしょう。まして、男女ともに一癖も二癖もあるような、特殊な事情を抱えていたらなおさらです。過去の経験が心に影を落としているとか、こじらせた性格をしているとか、というような、本編主人公とヒロインのような場合は、更に難しいかもしれません。作者は女性なので、男性の心理については取材(?)をもとに想像するしかないですし、作者自身が変わり者(友人から「変態」と呼ばれている）で、一般的な女性の感覚とは多少(?)ずれているかもしれないので、ごく一般的な男女ではないキャラクター設定をしました。</p><p>&nbsp;</p><p>　「心と体が別人」</p><p>「脳内に複数の自分が居る」</p><p>「人の心がない」</p><p>というところから発想したヒロインのノヴァは、人間時代もちょっとこじらせていて、</p><p>「自己価値が極端に低い」</p><p>「人に嫌われるのが怖くて、相手に合わせて演技してしまう」</p><p>「愛というものがどんなものかわかっていない」</p><p>という人物です。</p><p>愛を求める気持ちはあるのですが、それは、</p><p>「ハグしてほしい」</p><p>「会話して心を通わせたい」</p><p>という幼女のままの感覚でしかなく、肉体的に成熟して、好きな相手との行為で性的な快感を覚えたとしても、彼女にとっては「それじゃない感」があるわけです。相手がそれで満足して幸せになってくれるのは嬉しいけど、自分が求めている愛はそればかりじゃない。行為は(それが仕事だから）愛のない相手とでも出来るけど、好きな人とは身体でなく心でつながりたい。でも、それを望むと相手に嫌われるかもしれないのが怖いのです。</p><p>　また、彼女はもめ事や面倒事は避けたい性格です。出来るだけ相手を不機嫌にさせたり、怒らせたり、悲しませたりはしたくない。だから、例えば、再会までの間にヴィンテントがどんな人生を歩んで来たのかとか、元カノのこととか、気になることがあったとしても訊けません。そして自分に自信がない裏返しで、相手を信じきれません。相手は本当に自分を愛してくれているのか、自分にそんな価値があるのか、自信が持てないのです。そんな部分を客観視する存在として、AI イヴを設定しました。心はノヴァ、身体はイヴのものでありながら、ノヴァを理解してノヴァと同化しようとしても、人間にはなりきれない存在がイヴなのです。</p><p>&nbsp;</p><p>　ヴィンセントは、スパイとかアサシンのようなことをやっていたという経歴の持ち主です。</p><p>一般人とは違う非日常を日常的に経験してきた人物なので、心に闇を抱えています。作者自身もヴィンセントの心の闇や本心は、実はよくわかりません。多分、言葉通りにノヴァを愛してくれているんだろうな、と思う反面、本当にそうなのか、完全に信じきれません。おそらく、ノヴァが好きであることは嘘ではないとしても、結局身体目的なんじゃないかとか、ノヴァの気持ちに気づけてないのか、気づけてても結局自分優先なんじゃないかとか、いろいろ疑ってしまいます。なので、イヴが彼を理解できないのは、作者自身の投影となっています。</p><p>&nbsp;</p><p>　ノヴァがちゃんと自分の気持ちを言わないからヴィンセントに伝わらないのではありますが、彼自身の本音も読み切れないところがあります。そして、おそらく彼が「言わなきゃわからないから、自分から言ってね」とノヴァに言ったとしても、（多分本編に描かれていない場面で、そんなやりとりもあったと思いますが、）「うん、そうするね」とノヴァが言ったとしても、実際にはノヴァは絶対に言えないと思います。ある意味ノヴァは作者の分身みたいなものなので、頭ではそうした方が良いとわかっていても、実際にするとなるときっとできないだろうな、というのはわかります。</p><p>&nbsp;</p><p>　近年の作品の傾向として、作者自身未だ答えに辿り着いていない問題を描いて、「後はご自身でよしなにお考え下さい」</p><p>と読者に投げかけるスタイルになっています。初期の作品は、作者の幼少期の経験などに根差したテーマだったり、心理学的なモチーフを設定して書いたものであったり、オマージュした複数の元ネタ作品があったりしたのですが、それなりに自分の中では答えらしきものがあったり、着地点が見えていたりしていたのですが、クライマックス手前までしかアイデアがない状態で見切り発車して、後は流れで何処へ行きつくか、自分でもわからなくなっています。ある意味、その答えを探すために書いているのかもしれません。</p><p>&nbsp;</p><p>　最後に、ボツ挿絵を載せておきます。ノヴァの再会シーンですね。何か納得いかずに描き直したのが本編の挿絵です。</p><p>また、本編挿絵は二枚とも「黒子」を描き忘れいて、描き加えて貼り直したという経緯もありました。</p><p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251207/19/gin-gitsu-ne/60/57/j/o0778108015727626068.jpg"><img alt="" height="583" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251207/19/gin-gitsu-ne/60/57/j/o0778108015727626068.jpg" width="420"></a></p><p>　まもなくクリスマスとお正月がやってきますが、幸か不幸か今年は本業の仕事納めが早いので、年末年始の休みの間に、過去作品のご紹介の準備をしようと思っています。ご案内の準備が整いましたら、興味を持ってもらえるなら、読んで頂けたら幸いです。</p><p>　今後ともよろしくお願いします。　</p><p>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　2025.12.21　銀狐</p><p>&nbsp;</p>
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<pubDate>Sun, 21 Dec 2025 15:01:04 +0900</pubDate>
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<title>ファムファタル　運命の女（ひと）　後編</title>
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<![CDATA[ <p>【おことわり】</p><p>この小説は架空の物語であり、実在の人物等や現実の出来事等とは一切関係ありません。</p><p>なお、物語の構成上、「天災」「災害」「被災者」等の表現や、少々セクシーな描写があります。それらの表現・描写等を好まれない方はご注意ください。</p><p>&nbsp;</p><p>(前編　第4章からの続き）</p><p>&nbsp;</p><p>第5章　Dr.トウドウ</p><p>&nbsp;</p><p>　トウドウ博士は国が最高機密の一つとして秘匿している極秘研究機関の主任研究員である。国はかねてより秘密裏に生体アンドロイドを利用した死者蘇生の研究の第一人者であるトウドウ博士の研究を支援していた。肉体が死を迎えても、脳が完全に死滅していないならば、その脳に新たな肉体を与えることで、そのまま放置すればただ死滅するのみの脳を活かして再生することができるとしたら、優れた知能や才能を持つ者が不死の存在として生き続けることが出来るのではないかという理論である。しかし、その学説は机上の空論と学会では相手にされず、倫理上の問題もあり、実証不可能とされていた。</p><p>　そんな時に偶然起こった滅転墜災害は、トウドウ博士にとっては千載一遇の好機であった。もし被災者の中から被験者を得られれば、当人は死亡したに等しく、縁者も存在しなければ、異議を唱える者もない。だが、実際には、被験者となり得るような個体はなかなか見つけられなかった。即死した者も多く、一命はとりとめても、脳の損傷が激しくて、仮に被験者としても、望むような研究データを得ることはできそうになかった。半ば諦めかけたとき、ノヴァが発見された。トウドウ博士の望む条件に適合する、理想的な被験者である。事前に裁量許可をとりつけていたトウドウ博士は、周囲の反対を押し切ってノヴァを接収した。そして、彼女の脳を摘出し、EVEと名付けられたAIと接続してその活動を補完させ、器となる生体アンドロイドに収めることに成功したのである。アンドロイドはノヴァの脳の記憶データその他の資料から生前のノヴァに似せて作られ、神経を接続して普通の人間と同様の言動を自然に行えるようリハビリテーションを行った。そして、ノヴァの記憶を一部改竄して、滅転墜災害による後遺症の治療研究のために保護され、定期的な検査が必要であると信じ込ませ、違和感や混乱があるとしても、それは災害時に受けた脳への負荷の後遺症であると信じさせることで、ノヴァが生身の生存被災者ではなく被験者として実験的に蘇生された事実を隠匿していたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　（すごい！すごいぞ！わたしの仮説は間違っていなかった！）</p><p>トウドウ博士は、想定以上の成果に興奮していた。イヴと名付けた人造人間は、普通の人間の女性として、生活していけることが証明された。最初は、人造人間ではあるが人間らしく食事や睡眠が取れることだけでも素晴らしい成果であり、更にAIが学習することで、だんだんと表情や仕草が人間らしくなり、事情を知らない者なら、普通の人間だと認識するであろうレベルに達すると、いよいよ初期段階での実験成功を確信した。ただ、このままイヴを一般社会に放つことは、いつ何時不測の事態に遭遇するとも限らず、そのときに適切な対応ができるかについては疑問が残ったため、限定された範囲の中での生活に留めおく必要があった。彼女を管理するために合理的な方法として、公娼館に所属させ、マイクロチップを埋設させるという方法をとることにしたのである。</p><p>　同時に、トウドウ博士は、人間としての本能的欲求のうち、食欲、睡眠欲求、排泄欲求と並ぶ、性的欲求についての研究を進めたいと考えていた。人造人間の身体に繋がれた脳が、正常に性的な興奮を覚えるのかどうか、人間の男女の営みを、違和感なく正常に行えるのかどうか、それを知るにも、娼婦という職業に従事させることはちょうど良かった。そして、イヴは娼婦としての才能を開花させ、管理上の理由での特別待遇は、彼女自身の人気と実績に裏打ちされることとなったのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　イヴが娼婦としての手練手管に習熟し、客からの評価が上がり、名実ともにセヴンズヘヴンNo.1の高級娼婦となったのは、トウドウ博士が、私的興味に駆られて、イヴの居室の監視カメラを覗き見たり、本来非常事態を想定して装備されているコマンドを発動してイヴを遠隔操作したりして介入したりをするようになってからである。実際には定期検査の終了前に、トウドウ博士が意識のない彼女の肉体を直接蹂躙するだけでなく、客の男との行為を見ることで興奮を得たいというトウドウ博士自身の個人的な欲望を満たそうとしていたのが主な目的ではあったが、ときにイヴが大胆になるのは、トウドウ博士の遠隔操作によるものであった。しかし、皮肉なことに、清楚なイヴのイメージと、ベッドでの大胆な行動やなまめかしい雌の表情とのギャップから、彼女の魅力の沼に嵌り、虜となった客は少なくなかった。</p><p>&nbsp;</p><p>　そして、イヴがノヴァと旧知の仲であったヴィンセントから求愛を受けるに至り、愛のない行為から、恋人同士の睦愛へと移行することになったのだが、AIであるイヴは混乱し始めていた。情報不足でヴィンセントに関する解析も進まず、その対応に苦慮しており、「オリジナルのノヴァならどうするだろうか」という問題に、どんな解答を導き出しても、正解の可能性はそれほど高いものとは算定されなかった。</p><p>　トウドウ博士にとっては、ヴィンセントの存在は、イヴを更に輝かせ、新しい側面を引き出してくれるスパイスであり、起爆剤であった。客との愛のない行為とは違う、進化した愛の形。それを見せてくれるのは、ヴィンセントの存在があってこそであった。自らの所有物のようでもあり、愛玩動物のようでもあり、そしてある意味自身の分身のようでもあるイヴを、自身とは別のアプローチで花開かせてくれるのは、大変興味深かった。</p><p>　本来、人間ではないAIのイヴには感情がない。オリジナルのノヴァがどう感じるか、考えるかを予測して、それに合わせて感情を表現するだけだ。作り物の身体であっても、神経が繋がっている以上、ノヴァの脳は興奮し、快感を得て、それに反応をする。生身の女が感じて反応するのと変わりない。しかし、そこに介在するイヴは、その本能的な反応とは別のところで、情報を受け取り、ノヴァの脳に干渉して、解析と判断をし、ノヴァの脳にフィードバックして身体に命令を下させる仕組みなのに、ノヴァが何を思い、何を考えるのか、についていけていない。ノヴァ自身さえ、自分自身の気持ちがわかっていないとすれば、当然である。トウドウ博士は、この被験者の特異性に、学術的な興味を覚えた。普通の、という言葉で一括りには出来ないが、大多数の他の女性たちとは少し違った性格の脳の持ち主であったノヴァを選んだことで、想定外のデータが手に入りそうだ、とほくそ笑んだ。この状況をAIイヴはどう処理するのか。それは予測不可能な結果を生みそうでわくわくした。</p><p>&nbsp;</p><p>　ある日、研究所の前に黒塗りの高級車が停車した。車内から目つきの鋭い長身の男性が姿を現した。銀縁眼鏡の奥の灰色の瞳は氷のように冷たい。全く隙のない様子から、軍服ではなくスーツ姿ではあるが、恐らく軍人に違いない。</p><p>「トウドウ博士はいらっしゃいますか。」</p><p>男性が研究所の入口から奥に向かって声を掛けた。</p><p>トウドウ博士が姿を見せて言った。</p><p>「今日はアポイントメントをいただいていましたかな？ギルバート・ディオン少佐。」</p><p>男性は、口角を上げて形だけの笑みを浮かべると答えた。</p><p>「いいえ、トウドウ博士。お久しぶりですね。グラウンドゼロ解禁以来でしたか。私もその後昇進しましてね。今は大佐です。」</p><p>「それは失礼。では、ディオン大佐、とにかくお話を伺おう。こちらへ。」</p><p>ギルバート・ディオン大佐は、トウドウ博士に案内された部屋に入り、二人は向かい合って席に着いた。</p><p>「で、今日は何用ですかな？」</p><p>トウドウ博士が尋ねると、ギルバートはふっと口の端で笑ったように見えた。</p><p>「研究は順調に進行中と耳にしています。まずはおめでとうございます。」</p><p>トウドウ博士が</p><p>「そりゃ、どうも。しかし、そんな用件であなたがわざわざここに来るはずはない。そうでしょう？」</p><p>と言うと、ギルバートの目つきが鋭くなった。</p><p>「お話が早くて助かります。ご存知でしょうが、私の盟友、スチュアート・ランデル議員が国家安全対策室長に就任しましてね。私は彼の名代というわけです。滅転墜災害時に被災地であなたと共に働いたことがある私に、特務が命じられたということですよ。」</p><p>ギルバートは、くいっと眼鏡のフレームを直して、鋭い目つきでトウドウ博士を見た。</p><p>「あなたが作った生体アンドロイドのイヴが最近懇意にしている常連客の一人に、元特殊公務員の男がいます。コードネーム『レイヴン』。本名はヴィンセント・ヴィヴスです。」</p><p>トウドウ博士は「うっ」と言葉にならない声を漏らした。</p><p>「ご存知のように、旧来の国家安全対策室長のポストには、スチュアートとは敵対する、前首相サバーバン氏派の議員が歴任してきました。今回新しく就任したハイランド首相の意向で人事は一新され、敵対派閥は一掃されました。失脚した敵対派閥の命を受けて裏で暗躍していた特殊公務員も、口封じのため事故や病気を偽装して排除されようとしています。ヴィンセント・ヴィヴスは既に退職していますが、今もって監視対象であることに変わりはありません。そこで、あなたが試作して娼婦に偽装させた生体アンドロイドと、濃厚な接触を持っていると報告がありました。」</p><p>顔色も声色も、機械のように変えずに淡々とギルバートは語った。</p><p>「で、わたしにどうしろと？」</p><p>話の意図が読み切れず、トウドウ博士は尋ねた。</p><p>ギルバートはぐっと身を乗り出して、低い声で語り始めた。</p><p>「あなたに、更なる被験者を提供できるかもしれない、という提案ですよ。悪い話ではありますまい。私たちはレイヴンを始末したいわけではない。寧ろ、証拠隠滅を図って、敵対派閥が彼を亡き者にしようとする可能性がある。ただ、伝説の特殊公務員レイヴンは一筋縄でいく相手ではない。下手に手を出せば返り討ちに合うだろうから、うかつなことはできないだけです。私たちは彼の記憶データから、サバーバン氏派が命じた暗殺や諜報活動の証拠が欲しい。私の言いたいことは、お分かりいただけたでしょうか？」</p><p>「それは、まさか、彼を第二の被験者にする、という…。」</p><p>おそるおそるトウドウ博士が尋ねると、ギルバートは満足そうに冷たい微笑を浮かべた。</p><p>「さすが、トウドウ博士。ご理解が早くて助かります。正攻法でレイヴンを捕獲して、生涯明かしてはならない秘密を暴露させることは殆ど不可能でしょう。彼を襲撃したとしても、捕獲することは困難を極め、仮に捕獲できたとしても、拷問したところで、絶対に口を割ることはない。そういう訓練を受けていますからね。しかし、唯一彼が今心を許しているイヴを利用すれば、つけいる隙を見せるかもしれない。彼を捕獲し、その脳を摘出して、生体アンドロイドの試作二号機とすれば、我々は証拠を手に入れられるし、博士の研究にも寄与することができる。悪い話ではないと思いますが。」</p><p>トウドウ博士は動揺した。確かに、イヴとは性別の違う男性の被験者から試作二号機を作成することについて、学者としての興味はある。被験者というより愛玩動物のように扱っているイヴとは違って、男性の被験者に対しては単なる学術的興味に過ぎないが、もし、二体の人造人間が、愛し合う男女だったとしたら、その関係はどうなるのか、それは新たな研究対象になり得るだろう。ただ、イヴの場合は被験者が滅転墜災害の被災者で、瀕死の状態であり、縁者もなかったという背景があるが、ヴィンセント・ヴィヴスは、健康な成人男性であり、過去はともかく、現在は一般人として普通に生活している人間だ。故郷の縁者は全員死亡していたとしても、それ以外に繋がりをもっている人物が皆無ではないだろう。</p><p>「博士が気に病まれることはありません。後始末は我々の管轄です。」</p><p>ギルバートが、力強く言った。彼が言うように、軍や国家安全対策室が後ろについていれば、いかようにも処理や工作はできるのだろう。</p><p>「では、交渉成立ということでよろしいですね。具体的な計画内容のご相談については、改めて実務担当者からご連絡します。」</p><p>そう言うと、ギルバートは席を立ち、待たせていた車に乗り込んで去って行った。</p><p>トウドウ博士は、自分の鼓動が聞こえるくらいの動揺から解放され、ぐったりと椅子の背にもたれかかった。</p><p>動き出してしまった運命の歯車を止めることが出来ないのなら、このまま進むしかない。トウドウ博士はAIイヴを基に、男性版生体アンドロイドの身体と、ヴィンセントのための新しいAIを作らねばならなかった。</p><p>「新しいAIは、アダムと名付けよう。人の祖はアダムからイヴが生まれたとされているが、生成する順序が逆になってしまったな。」</p><p>（我ながら、何ともつまらない冗談だ）と思いながら、トウドウ博士は独り言ちた。</p><p>&nbsp;</p><p>第6章　運命の女</p><p>&nbsp;</p><p>　自分たちの知らないところで密かに悪魔のような計画が進んでいるとも知らず、イヴとヴィンセントは、逢瀬を重ねていた。どうにもならない未来には目を背け、今この瞬間だけは何も考えず、ただお互いを求め合う関係を続けられるならそれでよかった。</p><p>　イヴのベッドに並んで横たわり、ヴィンセントは言った。</p><p>「あの日グラウンドゼロで再会した時、僕は直感的に『運命の女（ひと）』だと思ったんだ。何故だかわからないが、『絶対にこの女を手離してはいけない』と思った。この世に神様が居るのなら、きっと神様の思し召しだね。運命の赤い糸に引き寄せられて、出会うべくして出会ったんだと、今も信じている。」</p><p>イヴははにかんだように微笑んで、</p><p>「嬉しい…。ありがとう。でも、こんなあたしでよかったのかしら。」</p><p>と答えた。ヴィンセントはイヴの髪を撫でながら、</p><p>「ノヴァだから、だよ。ノヴァだからいいんじゃないか。卑下することなんてない。僕にとっては、ノヴァこそが最高の女神なんだから。」</p><p>と優しい声で言った。</p><p>できることなら、このまま世界の時間（とき）を止めて、この部屋の中で二人だけでいつまでも過ごしたい。しかし、現実の世界は残酷に時間を刻み、二人に残された時間は刻一刻と削られて行く。</p><p>「もうそろそろだね。名残は尽きないけど。」</p><p>「あら、もうそんな時間？」</p><p>「うん、ごめん。仕事でしばらくは来られないかもしれない。できるだけ、携帯端末にメッセージは送るから。」</p><p>「そうなの、忙しいなら仕方ないよ。連絡待ってるから、お仕事頑張ってね。」</p><p>「ありがとう。僕も、早くノヴァに会いたいから、できるだけ早く仕事を片付けて、時間を作るからね。」</p><p>「嬉しいけど、無理しないでね。」</p><p>「大丈夫。待ってて。」</p><p>そんな会話を交わし、ヴィンセントはセヴンズヘヴンを後にした。</p><p>&nbsp;</p><p>　（ノヴァには心配させたくないが…。）</p><p>ヴィンセントは新しい仕事の依頼を訝しんでいた。一見何ということはない、普通の案件に見える。</p><p>だが、長年特殊公務員として諜報活動に従事してきた彼の直感がそれを否定する。巧妙に仕組まれた罠のにおいがする。そんな気がした。きっと、裏には元同業が絡んでいるに違いない。</p><p>　最近新しく就任した首相は、旧来の勢力とは真っ向から対立する立場だ。旧政権の闇を知る人間が、相次いで事故や病気で亡くなっているのは、決して偶然とは思えない。かつての仲間たちが次々消されている今、次の標的(ターゲット）が自分であったとしても、何の不思議もない。寧ろ彼らの手が自分の身辺に迫りくるのが、想定していたより遅いくらいだ。おそらく伝説の特殊公務員『レイヴン』の名に恐れをなし、慎重になっていたに違いない。</p><p>ならば、ここはその手に乗ってみるしかない。先方だって、レイヴンともあろうものが、そう簡単に騙されるとは思うまい。互いに策略を巡らす頭脳戦になるなら、望むところだ。職を退いて久しいとはいえ、そう簡単にやられてたまるか。</p><p>そう考えたヴィンセントは、敢えて敵の罠かもしれない依頼を受けることに決めていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　「お待たせしました。ヴィンセント・ヴィヴスです。早速ですが、ご依頼というのは？」</p><p>ヴィンセントは、小さな事務所兼自宅の応接室で、依頼主に向かって尋ねた。</p><p>「どうも、ジョニー・モーヴといいます。よろしくお願いします。」</p><p>（偽名だな。若手工作員か。）</p><p>ヴィンセントは鋭い眼光で相手を品定めしつつ、表面上は柔和な紳士を装い、笑顔で握手した。</p><p>「実は、私の兄がかつてグラウンドゼロの研究施設に勤めていまして、『あそこで怪しげな研究をしていた。でも決して口外するなと言われていた。』と口を滑らせたために、何者かに自殺に見せかけて殺されました。兄は自殺なんてするはずがないんです。きっと誰かに殺されたに違いありません。調査して頂けないでしょうか。勿論、報酬はかなりの金額になるでしょうが、何としてもお支払いしますので、何とか引き受けていただけませんか。」</p><p>いかにも胡散臭い依頼には違いないが、先方が何らかの意図をもって、この依頼内容を設定してきたのだとすれば、それが何なのか、見極める必要があるだろう、とヴィンセントは思った。</p><p>「そうでしたか。それはお気の毒に。わかりました。では、早速、知り得る範囲の情報をお伺いした上で、お引き受けすることにしましょう。報酬は前金で10000ギル。残りは、成果に応じて、経費と併せて請求させていただく、ということでよろしいですか。」</p><p>「あ、ありがとうございます。今日は5000ギルしか手持ちがないので、明日前金の残りは支払います。」</p><p>契約が成立し、ヴィンセントはジョニーと名乗る男から聞いた情報の裏を取ることにした。</p><p>ジョニーの兄だという研究所の職員は実在した。実際にその人物には弟も居たようだが、事務所に現れた依頼主と同一人物かどうかは、断定できなかった。工作員だとしたら、変装して当人に成りすますことはお手の物だから、情報の少ない一般人に化けているなら、よほど精査しなければ見破ることはできないが、その真偽を確定することに意味はなかった。彼が誰であろうと、依頼内容に関する情報だけさえ提供してもらえればそれでいい。寧ろ、大切なのは、その情報の真偽の方だからだ。</p><p>　依頼人からの情報の要点は、「研究所で非人道的な研究が行われていること」「滅転墜災害の被災者の後遺症に関する研究にも関係していること」という二点に集約された。依頼人の兄だという人物が、その研究について何らかの秘密を知ってしまい、うかつにもその守秘義務に背いて誰かにそのことを漏らしたか、漏らそうとしていたと疑われたために命を奪われた、と依頼人は主張した。</p><p>&nbsp;</p><p>　その研究所は、イヴが定期的に検査入院をするところであり、イヴも滅転墜災害の被災者の一人であることから、ヴィンセントは、何となく嫌な予感がした。こういう当たってほしくない予感ほど、当たることは、現役時代からいやというほど思い知らされてきた。もともとプライベートでは、仕事の話はしないが、特に今回の依頼については、絶対にイヴには知られてはならない。同時に、ヴィンセント自身、知りたいような知りたくないような、何とも嫌な感じが拭えなかったが、本当にイヴに関係があることだとすれば、依頼でなくとも知らずにはいられない。そして、この依頼が罠だったとしたら、なおのこと、渦中に身を投じる以外の選択肢はなかった。</p><p>　ヴィンセントは、当時の関係者を探し出して話を聞こうとしたが、探し当てたと同時に相手は始末され、本人から話を聞くことが出来なかった。家族や友人などその周囲の人物を尋ねても、殆どの関係者は守秘義務違反を恐れて、頑なに口を閉ざしていたようだ。</p><p>(外堀を埋めるのは無理…。だとしたら、直接当たるしか、方法はなさそうだ。誘導されているとしても、他に道はない。）</p><p>ついにヴィンセントは直接研究所を尋ねることにした。</p><p>&nbsp;</p><p>　「失礼、どなたかいらっしゃいますか？」</p><p>ヴィンセントは研究所の入口から声をかけた。中から白衣を着た初老の男性が姿を現した。</p><p>「どなたかな？」</p><p>「突然すみません。以前こちらで勤務されていたモーヴという男性のことで、お話を伺えませんか。モーヴ氏の弟さんから調査の依頼を受けて参りましたヴィンセント・ヴィヴスと申します。」</p><p>トウドウ博士は、意味ありげな笑みを浮かべて、</p><p>「なるほど。わたしは研究所長のトウドウです。研究の妨げにならない範囲ならご協力できるかもしれません。」</p><p>と右手を差し出してヴィンセントに握手を求めた。</p><p>「こちらへどうぞ。ちょうどわたしも休憩中でしてね。お茶でも淹れましょう。」</p><p>「いえ、お構いなく。すぐに失礼しますので。」</p><p>得体の知れない施設で、得体の知れない人物から出された飲み物を口にするほど間抜けではない。薬物が入れられていない保証はどこにもない。</p><p>(直に会うのは初めてだが、いつもセヴンズヘヴンの監視カメラやイヴとの感覚共有で見ているからな。）</p><p>トウドウ博士はそう思ってにやりと笑った。自分の玩具を貸してやっているような、妙な親近感があった。</p><p>「で、モーヴくんは元気ですか。ここでは真面目で良く働く青年でしたが。」</p><p>「実は、先日亡くなられて、弟さんから生前の兄についての調査の依頼がありまして、詳細は言えませんが、こちらにお勤めだったそうなので、何かわかればと。」</p><p>ヴィンセントがそう言うと、トウドウ博士は、腕組みをして、ううむ、としばし考えた後、</p><p>「いや、特に何もお話しするようなことはありませんな。」</p><p>と答えた。ヴィンセントは、少し踏み込んで、相手の出方を見ることにした。</p><p>「何でも、研究内容の秘密に関係がありそうだということだったので。差し支えない範囲で、教えていただくことはできませんか。」</p><p>「ほほう。」</p><p>トウドウ博士は、じっとヴィンセントの目を見つめながら言った。</p><p>「一般の方にはお話しできない決まりではありますが、事情が事情なので、可能な範囲でお話ししましょう。この研究所は、主に滅転墜災害の被災者の後遺症についての治療と研究をするための施設であることはご存知でしょう。調査と研究を重ねた結果、滅転墜による放射能汚染や未知のウイルス感染の影響は極めて限定的であるということが判明し、侵入制限は解除されましたが、その後も調査研究は続いていて、遅発性の障害や疾病を早期発見するために、被災者の健康管理も行いながら、後遺症の治療も継続しています。例えば、<u style="text-decoration:underline;">瓦礫に埋もれて頭部を強打または圧迫されたことに加えて、大きなショックとストレスの負荷を受けたために、軽微な記憶の混乱や反応の遅延を発症している症例では、定期的な検査入院を義務付けている例もあります。</u>」</p><p>（ノヴァ…。）</p><p>ヴィンセントは、トウドウ博士が例示した「症例」とはノヴァのことだと察しがついた。同じような人物が他にも居るとは考えにくい。トウドウ博士は自分と彼女の関係を知っていてわざと言ったのかも知れないと思うと、ヴィンセントは少し冷静さを欠いていた。</p><p>「実際に患者にどのような検査や治療を施しているかについては専門的な内容になりますし、機密事項に該当しますので、お話しすることはできませんが、わたし以外の者は殆ど関与していないので、少なくともモーヴくんは、直接かかわってはいなかったはずですがね。」</p><p>依頼者の兄の名を聞いてふと我に返ったヴィンセントは、答えた。</p><p>「そうでしたか。では、依頼者はなぜ彼の兄が何事かに関与していたと考えたのでしょうね。」</p><p>トウドウ博士は、苦笑しながら言った。</p><p>「当時在籍していた若い職員の間で、あたかもわたしが怪しげな危ない研究に手を染めているかのような、まことしやかな噂が流れて、一部にはそれを信じた者も居たようです。もしかしたらモーヴくんもその一人だったのかもしれませんね。」</p><p>「なるほど。そうかもしれません。お忙しいところ、お時間をいただいてありがとうございました。研究の邪魔になりますので、これで失礼します。」</p><p>ヴィンセントが立ち上がると、トウドウ博士は偽善的な笑顔で</p><p>「いえ、たいしてお役には立てませんでしたが、モーヴくんのご家族にはお悔やみを申し上げるとお伝えください。」</p><p>と言い、ヴィンセントも</p><p>「ええ、確かにお伝えします。」</p><p>と返した。</p><p>&nbsp;</p><p>終章　ファイナル カウントダウン</p><p>&nbsp;</p><p>　ヴィンセントは、明らかにトウドウ博士は嘘をついていると確信していた。そして、大きな秘密を隠していることも、その秘密がイヴに深く関係するものであることも、間違いない。それをわざわざ匂わせたのは、ヴィンセントを罠へと誘導する意図があるのだろう。官営の研究施設所属の博士が、独断で個人的な研究を出来るはずはないから、トウドウ博士の研究が、政治的或いは軍事的に利用価値があるからこそ、支援を受けていると考えるのが自然だ。だとすれば、そう簡単に秘密が漏れるようなことはない。やはりこの依頼はブラフ(虚偽）だ。モーヴという職員が存在したことも、彼に弟がいたことも、彼が亡くなり自殺と断定されたことも事実だが、依頼者のジョニーは偽物で、兄がトウドウ博士の研究の秘密を漏らそうとして謀殺されたというのも作り話だと思われる。全てはヴィンセントをあの研究施設に誘導するための巧妙な罠だ。それを知りながらも、ヴィンセントは、『イヴの秘密』という餌を鼻先にぶら下げられたようなもので、食いつけば釣り上げられるとしても、それを見過ごすことはできなかった。</p><p>　ヴィンセントは、罠であることを承知の上で、研究所の調査を続けた。以前のイヴとのメッセージのやり取りで、次の検査入院の日程を聞いていたので、次回の日程は特定できたから、その夜に研究所に潜入する計画を立てた。そしてついにその日がやってきたのである。</p><p>&nbsp;</p><p>　研究所に侵入して『関係者以外立入禁止』と標榜された研究室に潜み、監視していると、イヴがやって来た。イヴはいつもと同じようにトウドウ博士に迎え入れられ、トウドウ博士の前で身につけていたものをすべて脱いで、カプセルに入ると、カプセルに液体が満たされていき、イヴは目を閉じて、静かに液体の中に浸されていた。</p><p>トウドウ博士がカプセルの前のコンピューターを操作すると、イヴが液体の中で目を開けた。</p><p>「ダウンロードを開始する。」</p><p>トウドウ博士がそう言って、エンターキーを押すと、モニター画面にずらずらと文字列が流れ、データが転送されて来たのが確認できた。ダウンロードが終了すると、モニター画面にイヴの映像が映し出された。トウドウ博士がモニター画面のイヴに向かって語り掛けると、モニター画面のイヴの映像が答えた。短い会話を終えると、トウドウ博士が</p><p>「では、更新データのアップロードとマイクロチップのチェック、身体のメンテナンスを開始する。終了は明朝だ。」</p><p>といい、イヴが</p><p>「承知しました。」</p><p>と答えると、モニター画面のイヴが消えて、カプセル内のイヴが目を閉じ、モニター画面は再びずらずらと文字列が流れてデータが転送されている状況を表示していた。カプセル内のイヴの身体の表面からは細かな泡が出ていた。</p><p>　トウドウ博士が退室した後、ヴィンセントは、研究室に侵入した。元特殊公務員の彼にとって、密かに建物に侵入することは難しいことではなかったが、極秘研究を行っている研究施設にしてはあまりにもセキュリティが甘すぎる。明らかに罠だった。おそらくは、罠と知りつつヴィンセントが侵入を試みるであろうと想定した上で、わざと容易に侵入できる隙を作っているに違いない。</p><p>　しかし、しばらく会えていなかったイヴが、被験者として実験動物のように扱われているのを見ると切なくて、カプセルの中であっても、彼女の傍に行きたかった。</p><p>「ノヴァ…。こんなことをされていたのか…。一体これは何だ。何をされているんだ。」</p><p>ヴィンセントは切ない目でイヴを見つめた。眠ったように静かに目を閉じたまま、イヴはカプセル内で浮遊していた。</p><p>ヴィンセントが気を取り直して、周囲を捜索しようとすると、これ見よがしに、無造作に極秘資料のファイルが置かれていた。それには、イヴの秘密に関する「答え」が書かれていた。ヴィンセントは我が目を疑い、何度も資料の文面に目を走らせた。</p><p>（AI EVE…ノヴァの脳…生体アンドロイド…人造人間…。）</p><p>資料から視線を上げて、カプセル内のイヴをまじまじと見つめ直した。</p><p>（まさか、そんな…。）</p><p>ヴィンセントが愛した運命の女（ひと）、ノヴァ・グレイスは、幻だった。ノヴァの脳は今もそこで生きてはいるが、作り物の身体の中で、イヴというAIと共生しなければ生きていけない存在だった。何より、ヴィンセントが愛した女性は、実は大人になった昔馴染みのノヴァそのものではなく、ノヴァの記憶や性格を模したAIのイヴだったのだ。生体アンドロイドは生体組織、細胞の集合体という意味では生きているが、厳密には生き物ではない。それでも、イヴは、その心も体も、確かにヴィンセントの愛した女だった。その言動も愛情表現も、すべてが作り物で、ヴィンセントの希望を反映しただけであったとしても、彼女に対する愛は今も彼の胸に確かに存在していて、俄かにはその現実を受け入れることが出来なかった。気持ちを立て直すのに多少時間を要したが、ヴィンセントは夜を徹して調査を続けた。</p><p>&nbsp;</p><p>　夜明け前、まだ暗いうちにヴィンセントはその場を離れ、再び身を隠した。</p><p>早朝になり、イヴの身体メンテナンスが終了すると、カプセルを満たしていた液体は排出された。</p><p>トウドウ博士が現れ、まるで肉食獣が舌なめずりしてよだれを垂らしながら獲物を見るような表情が浮かべて、まだAIイヴとノヴァの脳が休眠状態のままのイヴの身体をカプセルから出すと、運び込んだストレッチャーに横たえた。まだ目覚めぬイヴの身体を蹂躙する姿に、怒りと興奮を覚えながらも、ヴィンセントは耐えるしかなかった。トウドウ博士は、既にヴィンセントが侵入して、事実を知って衝撃を受けたことも、今なお潜んでこの獣のような行為に憤りながらも、指をくわえて見ているしかない状況であることも、すべてわかった上で、わざと、いつものように自室のベッドにイヴを運ぶことなく、この研究室内でことに及んだのである。</p><p>しばらくして、充分にイヴの身体を堪能したあと、、何食わぬ顔で、イヴをカプセルに戻すとコンピューターを起動し、イヴを再起動した。</p><p>「おはよう、イヴ。調子はどうかね。」</p><p>「はい、トウドウ博士。再起動完了。問題ありません。」</p><p>何も知らないイヴがそう答えると、トウドウ博士は</p><p>「そうか。今回はこれで終了だ。」</p><p>「承知しました。」</p><p>イヴはカプセルから出て、衣服を身に着けた。トウドウ博士は身支度を整えて研究所を後にするイヴの後姿を見送りながら、満足げに笑みを浮かべた。いつもはヴィンセントとイヴの情事を遠隔で観賞し、検査入院の際には密かにイヴを抱いていたが、今は彼女を愛するヴィンセントに直接見せつけたのだと思うと、トウドウ博士は勝ち誇ったような達成感に満たされていた。これでヴィンセントの心を乱し、心を折れば、彼を第二被験者として手に入れることに繋がるだろうと考えたのだ。</p><p>&nbsp;</p><p>　「ヴィンセント、居るのだろう？出てきたまえ。すべてを知った感想を聞かせてくれないか。」</p><p>トウドウ博士は煽るように言った。胸の中に煮えたぎるような憤怒を抑えて、ヴィンセントは博士の眼前に姿を現した。</p><p>「いつもイヴを可愛がってくれてありがとう。わたしのイヴの味は最高だろう？イヴは生き人形。わたしの玩具であり、愛玩動物だ。君と出会ってから、彼女は輝きを増し、飛躍的に進化した。生身の女と比較しても遜色ない、いや、生身の女以上だ。君には礼を言わなければな。」</p><p>ヴィンセントは悔しさに歯噛みしながら博士の言葉を聞いていた。</p><p>「もうわかったろう？イヴは人形だ。外の世界で生きることも、君に添うこともできん。君がいかにイヴを深く愛したところで、わたしがイヴの記憶から君に関する記憶をすべて消去してしまえば、イヴは今までの君とのことはすべて忘れてしまう。実際に、昨夜わたしは君に関する記憶データをすっぽりと抜き取って別の場所に格納してある。今のイヴは君を知らない。だが、今ならまだ元に戻すことはできる。君がわたしに協力してくれるなら、元通りに戻すと約束しよう。だが、断るというなら、完全に消去する。どうかね？」</p><p>トウドウ博士は勝ち誇ったようにヴィンセントに言った。</p><p>「卑怯な真似を…。」</p><p>ヴィンセントは押し潰したような苦々しい声で呟いた。</p><p>「もし君もイヴと同じ世界で生きられるとしたら、素晴らしいことだと思わないか？そうなれば、彼女の記憶を戻して、君と番で飼ってあげるよ。いつもは遠隔で見ていたが、わたしの目の前で生で君たちが交尾する姿を見られる。」</p><p>「お前は、人間じゃない。獣にも劣る卑劣漢だ。」</p><p>ヴィンセントは吐き捨てるように言った。</p><p>「何を言う。国のために重要な研究に協力できるのだよ。名誉なことじゃないか。」</p><p>トウドウ博士がそういうと、ギルバート・ディオン大佐が差し向けた刺客たちが現れた。</p><p>「伝説の『レイヴン』もやきが回ったな。たかが女一人で、こんな失態をおかすとは。」</p><p>そう言った刺客の一人の男の腕の中に、人質として捕らえられたイヴが居た。目隠しとさるぐつわをされ、縛り上げられている。おそらく研究所を出てすぐに捕獲されたのだろう。</p><p>「イヴを傷つけたくなければ大人しくしてもらおう。それとも、イヴの真の姿を知って愛想を尽かしたかな？」</p><p>と、トウドウ博士がタブレットをもって身構えた。</p><p>「わたしの操作ひとつで、君に関する記憶は完全に消去される。更に、君が抵抗を続けるなら、すべての記憶を消去してAI EVEを初期化することもできる。生まれ変わった新しいEVEに、オリジナルの脳のデータを改竄させて、わたし好みの全くの別人になることが出来るか、試してみるのも面白い。わたしのことが好きで好きでたまらない従順な奴隷に作り替えてみるのも良いかも知れんな。それとも、君を憎い仇としてその手で殺せと命じようか。わたしは君の脳さえ無事に取り出せれば、君がどうなろうと構わない。」</p><p>&nbsp;</p><p>　ヴィンセントは敵に囲まれたが、イヴの身を案じて攻撃を躊躇した。その刹那、突然イヴが暴れ出し、男の腕を振りほどいて、トウドウ博士に体当たりした。体勢を崩して倒れたはずみで目隠しとさるぐつわがずれると、拘束されたままのイヴはヴィンセントに視線を向けて、叫んだ。</p><p>「ヴィンス、逃げて！あたしはどうなっても良い。あなたは逃げて！」</p><p>「そんなバカな…。彼に関する記憶は完全に消去したはずだ。」</p><p>トウドウ博士は唖然とした表情で、タブレットを引き寄せた。確かに記憶データは消去されている。なのに、イヴは、彼をいつもの愛称で呼んだ。</p><p>「ヴィンス！逃げて！」</p><p>イヴは繰り返し叫んだ。</p><p>「ノヴァ…？僕は君を置いて逃げるなんてできない！」</p><p>ヴィンセントは襲い掛かる敵を打ち倒しながら、イヴに駆け寄ろうとした。</p><p>「ダメッ！来ちゃダメ！ごめんね。あたしは、本当はあなたの知っているノヴァじゃなかったの。だから、もうあたしのことは忘れて！」</p><p>「ノヴァ！もうそんなことはどうでもいい。君を愛してる！」</p><p>イヴに駆け寄り、縄をほどいて助け起こそうとしたヴィンセントに、</p><p>「ごめんね。ヴィンス。」</p><p>と言いながら、イヴはヴィンセントを思い切り突き飛ばした。</p><p>「行って！おねがい。できるだけあたしから遠くに離れて！」</p><p>というと、</p><p>「コマンド発動。XXXX9999。」と唱えた。</p><p>イヴが万が一誰かに奪われたときに備えて、その秘密を守るために、イヴの体内には自爆装置が組み込まれている。本来遠隔操作により発動すべき非常用のコマンドとして設定されている自爆コマンドを、イヴは自ら発動したのだ。</p><p>「…5、4、3、2、1…」</p><p>カウントダウンの間にイヴは言った。</p><p>「あたしは、…ノヴァは、滅転墜で死んでいたはずだった。でも、あなたに会えて良かった。大好きよ。ヴィンス。」</p><p>その声がヴィンセントに届いたかどうか、ヴィンセントはギリギリのところで爆発から逃れ、命を繋いだ。</p><p>&nbsp;</p><p>　トウドウ博士と刺客の男たちは爆発に巻き込まれたが、ディオン大佐は、研究施設の事故と発表して、この事実を隠蔽した。イヴの死亡については滅転墜災害の後遺症が疑われる原因不明の突然死とされ、これもディオン大佐の情報操作によるものだった。トウドウ博士の死亡により、ヴィンセントを生体アンドロイドにするという、ディオン大佐の計画は実現不能となったが、レイヴンの捕獲や抹消を断念したとは思えず、ヴィンセントは常に監視され、いつ何時襲撃を受けるかわからない生活を続けていた。</p><p>&nbsp;</p><p>　イヴを失ってから1年後、ヴィンセントは、旧駐屯地にある、滅転墜災害により命を失ったグラウンドゼロの元住民のための慰霊塔に花束を捧げたあと、グラウンドゼロの陥没孔(クレーター)の淵に一人たたずんでいた。再会した日の、紅い夕陽に照らされていたイヴの姿を思い出していた。白い日傘と白いドレスのイヴが、小さく手を振りながらこちらに向かって歩いてきた姿が幻のように眼前の景色に重なる。</p><p>(もう一度、君に会いたいよ、ノヴァ。）</p><p>花束から一輪だけ抜き取った名も知らぬ白い花を懐から取り出すと、陥没孔を吹き抜ける風が、ヴィンセントの手から花を奪い去り、花は空中高く舞い上がると、白い花弁を散らしながら陥没孔へと落ちていった。</p><p>&nbsp;</p><p>（おわり）</p><p>&nbsp;</p>
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<pubDate>Sun, 21 Dec 2025 12:04:11 +0900</pubDate>
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<title>ファムファタル　運命の女（ひと）　前編</title>
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<![CDATA[ <p>【おことわり】</p><p>この小説は架空の物語であり、実在の人物等や現実の出来事等とは一切関係ありません。</p><p>なお、物語の構成上、「天災」「災害」「被災者」等の表現や、少々セクシーな描写があります。それらの表現・描写等を好まれない方はご注意ください。</p><div>&nbsp;</div><p>序章　再会</p><p style="text-align: left;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251220/23/gin-gitsu-ne/48/f7/j/o0788108015732180628.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="576" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251220/23/gin-gitsu-ne/48/f7/j/o0788108015732180628.jpg" width="420"></a></p><div>　かつて、『天空よりの厄災』（『滅転墜（メテオ）』）と呼ばれた巨大隕石により辺境の町が一つ消滅した。</div><div>その『グラウンドゼロ』となった町を故郷とする男が、ある日、一人でその地を訪れていた。男は当時、既に公務員の職を出て独立して実家を離れた後で、たまたまその町に居なかったことで難を逃れたが、その町の、家も、人も、全てのものが一瞬にして破壊され、紅蓮の焔に焼き尽くされ、未知のウイルスによる感染や放射性物質による汚染の危険があるとされて、長年その地は侵入禁止区域とされ、政府から派遣されている、防護服を身に着けた警備兵や研究員が交代で監視を続けていた。</div><div>　グラウンドゼロから少し離れた、警備兵たちの駐屯地に彼らの健康と安全を守るための診療施設や、研究員のための研究施設と共に、彼らの慰安を目的とする公娼の館があり、軍の派遣している警備兵や、政府が派遣している医師や看護師などの医療従事者たちと共に、政府の認定を受けた娼婦たちも常駐していた。近年の調査結果報告で、滅転墜による健康被害等の危険性は低く、人体への影響は問題のない範囲だと発表されたため、グラウンドゼロの封鎖は解かれ、警備兵たちや医療従事者たちが去った駐屯地の跡地には、滅転墜によって被災し、命を失ったグラウンドゼロの元住民のために慰霊塔が建てられ、鎮魂の祈りを捧げるために訪れる者や、グラウンドゼロをこの目で見てみたいと観光気分で訪れる者等を目当てに、宿泊施設や飲食店等を営む者たちが住み着き、一つの町を形成し始めていた。男は故郷の町を離れてからはずっと首都近郊で暮らして来たが、公務員の職を辞し、自由な時間を手に入れた今、厄災以前に故郷を離れてから、一度も訪れることのなかった町の現状を見るまでは、まだ故郷を失ったという実感がわかない気がして、目に見えない何ものかに導かれるように、ふと思い立って、ふらりと足を向けたのである。</div><div>&nbsp;</div><div>　巨大な半球状の陥没穴(クレーター)の縁に立ち、穴の内部を見てみたが、そこにはかつて自分が暮らしていた町の面影は何処にも見出せず、ただぽっかりと空洞があるだけだった。衝撃で粉微塵に破壊され、火災で全て焼き尽くされたために、人も家も何もかもが、まるで最初から何もなかったかのように、完全に空虚だった。</div><div>　ふと気配を感じて見ると、少し離れた場所に、人影が一つぽつんと立っている。日傘をさした女のようだ。白い日傘と白いドレスが夕陽に照らされて紅く染まっていた。その姿は、この世のものではないような、何ともいえない違和感をまとっているように見えた。<u style="text-decoration:underline;">仕事柄</u>、人を見て直感的に判断する術に長けている男は、それがおそらく元駐屯地の公娼館の娼婦だとわかった。娼婦は例え清楚な身なりをしていても、素人とは違う独特の雰囲気をまとっているので、すぐにわかる。女が傘を持ちかえたときに、今まで傘に隠れて見えなかった女の顔が見えて、男はその女の口元の印象的な黒子に見覚えがあることに気づいた。かつてこのグラウンドゼロにあった、同じ故郷の町の出身で、名前も顔も知っている女だ。その卵型の輪郭にも、扁桃形の眼にも、榛色の瞳にも、幼い頃の面影が残っていた。女も同時に男に気づいたのか、傘を持っていない方の手を振って微笑んでみせた。当時は特に親しい間柄でもなかったが、同郷の人々は大方亡くなってしまったので、お互いこうして生き残ってしまった者同士の、そこはかとない縁（えにし）を感じざるを得なかった。</div><div>&nbsp;</div><div>　「お久しぶりね。お元気そうで何より。」</div><div>そんなさり気ない言葉をかけながら、女は男に歩み寄った。</div><div>「無事だったんだな。」</div><div>男が言うと、女の笑顔は少し寂しそうに曇った。</div><div>「そうね。生き残ってしまったわ。」</div><div>その言葉には、災害からの生還者特有のいわれのない罪悪感が漂っていた。</div><div>男には、その女の少しひきつったような歪な笑顔が、妙に艶かしく見えて、自分では冷徹だと思っていた男の心の中に、突然現れた少年のようなときめきに戸惑いを隠せなかった。</div><div>「もう日が暮れるわ。町へ戻るけど、あなたは今日のお宿はどうするの？予約がないと多分どこも満室よ。」</div><div>記憶の中の印象とは違う、大人になった女に戸惑いながら、男は苦笑いして言った。</div><div>「それはまずい。何も考えてなかったな。」</div><div>「宿屋ではないけど、泊まれるところがないわけではないわ。あなたさえよかったら。」</div><div>女はまた艶かしい笑顔を向けて言った。</div><div>「お言葉に甘えて良いのかな。再会したばかりで。」</div><div>男が答えると、女は少女のようなあどけない笑顔で答えた。</div><div>「もちろんよ。同郷のよしみで。あたしについて来て。」</div><div>背を向けて歩き出した女を追いかけて、男は並んで歩き出した。</div><div>横目でちらっと男を見て、女は嬉しそうに笑った。男にはその笑顔が少女のように可愛らしく見えた。</div><div>昔とはすっかり印象が変わってしまったけれど、お互い長い年月の間にいろいろな人生を生きてきたのだから、それも当然のことだろう。他人の目にどう映るかはともかく、<u style="text-decoration:underline;">お互いに、その内容は違っても、他人には話せない、理解してもらえないような人生を、生きて来たのかもしれないのだから。</u></div><div>&nbsp;</div><div>　町の公娼館に二人で入ると、受付係が声をかけてきた。</div><div>「イヴさん、今日は外泊じゃなかったですか？」</div><div>「そうだけど、留守にするから、かわりにお客人をあたしの部屋に泊めてあげてくれないかしら。」</div><div>「良いんですか？」</div><div>「ええ、それで結構。」</div><div>女と受付係は小声で二言三言話していたが、男の耳には入らなかった。女は振り向くと男に向かって言った。</div><div>「ちょうど今日あたしの部屋が空いてるから、そこに泊まって行って。」</div><div>「悪いね。」</div><div>「ううん、どうせ空いてるんだから、気にしないで。じゃあ、ごゆっくり。」</div><div>そう言うと女は出て行って、男は受付係の案内で、女の部屋に通された。</div><div>「こちらです。お食事は後ほどお部屋にお持ちしますので、召し上がってください。お着替えなどは備え付けのものをご使用いただいて構いません。」</div><div>受付係がそう言って去ってからしばらくして、給仕係が食事を運んで来た。</div><div>　食事が目的の施設ではないのに、量も質も普通に飲食店でも出て来そうなくらいの、比較的きちんとした夕食だった。洗面室には部屋着があり、風呂も広くて綺麗だった。『あたしの部屋』と表現したということは、女はこの公娼館の娼婦たちの序列ではかなり上級に位する部屋付きの娼婦なのだろう。</div><div>下級の娼婦なら、共有の客室を交替で使用するだけで、生活するのは雑居部屋であり、個室を与えられてはいないはずだ。死角になる部屋の隅に鍵のかかった扉があったから、おそらくその中に女の私的な小部屋があるのだろう。客の居ない夜には一人では広すぎるベッドで眠り、掃除や洗濯は女中に任せて、今日のような外泊の日を除いて、毎日この部屋の中で暮らしているに違いない。高級娼婦は権力ある軍人や役人、資産家などの客に請われて外泊することもあるが、女がその客を気に入らなければ断ることもできるという。だとしたら、今頃女はそんな誰かに抱かれているのかもしれない。</div><div>　ぼんやりとそんなことを考えながら、広いベッドに心地よく身を沈め、男は微睡み始めた。今までは見たこともなかった、昔の故郷の夢を見て、そこには少女時代の女の姿があった。その頃の女は、真面目でおとなしそうな、目立たない女の子だった。それが突然今日出会ったときの姿へと変わり、妖艶な眼差しでこちらを見つめながら、手を振っていた。夢の中で男は激情に衝き動かされて女を抱きしめ、その肉体を貪った。リネンの香りの奥にかすかに混じる女の匂い（フェロモン）に誘われたのか、男は夢をみながら昂り、雷（いかづち）に全身を貫かれたような感覚と共に熱いものが迸り、果てた。男の部屋着をじんわりと温かいものが濡らした。</div><div>&nbsp;</div><div>　「おはよう。」</div><div>まだ夢の続きかと、ぼんやりまぶたを開けた男の目の前に、女の顔があった。</div><div>「着替える前に、お風呂どうぞ。もうすぐ朝ごはんが来るわ。」</div><div>言われるままに浴室に向かい、戻ると食事が運ばれて来ていた。汚した下着と部屋着の代わりに、洗濯済みの男の私服と新しい下着が準備されていて、朝食も、喫茶店よりは少し豪華だった。</div><div>「よく眠れた？」</div><div>女は微笑んで尋ねた。</div><div>「ああ、泊めてもらって助かった。あの…。」</div><div>男はちらっとベッドを見たが、女は男の言葉を遮るように言った。</div><div>「気にしないで。」</div><div>それは、「男の言わんとすることが何であろうと構わない」という意味に聞こえた。「泊めてもらったことに対して礼には及ばない」ということなのか、「部屋着などを汚してしまったことは気にしなくて良い」ということなのか、「どちらにしろ気にすることはない」、そういう風に聞こえた。</div><div>　二人で一緒に朝食を済ませ、男が身支度を整えると、女は扉を開けて、</div><div>「会えて嬉しかった。気をつけて帰ってね。」</div><div>と小さく手を振った。</div><div>「ありがとう。」</div><div>と男は軽く会釈して、長い廊下を一人で歩いて行った。</div><div>　男が受付の呼び鈴を鳴らすと、受付係が出て来た。</div><div>「宿泊の代金はいかほどですか。」</div><div>男の問いに、受付係は、</div><div>「今回はイヴさんのお客人なので、いただくわけにはまいりません。」</div><div>と答えた。</div><div>「でも、それでは彼女に申し訳ない。」</div><div>男がそういうと、受付係が少し下卑た笑いを口の端に浮かべて、</div><div>「ならば、次回は私的なお客人としてではなく、一般のお客様として通常のご利用でお越しいただければよろしいかと。」</div><div>と冷ややかに言った。女のような高級娼婦が相手ともなると、本来ならば、宿泊の代金も食事の代金もそれ相当に高かったろう。あのとき女と受付係が小声で何か言葉を交わしていたのは、女が「客人からは代金をいただかないように」と指示していたに違いない。女に全てを負わせてしまったことに、引け目を感じたことは、事実には違いないが、それよりも、男は金と時間を費やしてでも、再び女に会いたい、そして今度は夢の中ではなく、本物の女をこの腕に抱きたい、と思ったのである。現在の収入は不安定でも、幸い、公務員時代の貯えと、退職金として少々まとまった額の支給を受けたので、贅沢をしなければ生活には困らないくらいの余裕はある。ともあれ、一宿一飯の恩義に報いるために、客として再訪することは、理由として成り立つに違いない。男は「我ながらそんな発想は『らしくない』」と苦笑しつつも、身体の芯に滾る熱に衝き動かされるように、女を求める気持ちに歯止めがきかなくなっていた。</div><div>&nbsp;</div><div>　公娼館というのは、グラウンドゼロ侵入制限解除前に、『滅転墜落下地域周辺立入禁止区域特別警備隊員等対象公営慰安施設』とかいう正式名称に代えて使用されていた俗称であり、払い下げにより民営となった現在の名称は『セヴンズヘヴン』である。グラウンドゼロ解禁に伴い、建前上は民間委託されたが、実質的には半官半民のような形で管理運営されているため、公娼に関する規定も公にされていないものが多い。わざと一般人からは不明瞭にしておくことで、不都合な部分を曖昧にするのは、役人の得意とするところである。部署や仕事の内容が違っても、公務員の経験がある者ならば、自然とそういう役人気質が身に染みつくので、何となく透けて見えるようになる。昔、誰かが官僚組織を『伏魔殿』と表現していたことがあったが、言わんとするところは理解できなくもない。</div><div>　公娼館の娼婦の階級も、おそらくは出自や公娼館での実績など一定の基準を元に決められているのであろうし、客の料金や娼婦の報酬なども明確には示されていないが、算定方法などの決まりはあるはずだ。高級娼婦は客の指名を断ることもできるし、客の料金の一部を娼婦が肩代わりすることもできる。客と同伴外出も許されるというから、階級の高い娼婦には、ある程度の権限や裁量を与えられているのかもしれないが、その代償も定かではない。</div><div>&nbsp;</div><div>　男は女に再び会うため、公娼館に予約を入れようとした。人気の高い娼婦は高嶺の花だろうと思われるが、単純に料金が高いからか、意外に、高級娼婦ほど空きは多かった。態々「ただし、ご利用当日及び直前にキャンセルさせていただくこともございます。」と明言されているのは、要人や資産家の接待の需要があることを見越してのことだろう。そういう客の急な指名のために一般客が割を食うことも、娼婦が翻意して指名を断ることもありうるからだろうと推測できる。</div><div>　男は運良く携帯端末から翌日の予約を取り付けることに成功した。外出や外泊が許されることも、高級娼婦のみに許された特権のようで、低級娼婦は公娼館内で客を取る以外の選択肢がない。とはいえ、高級娼婦は、ペットの動物のようにマイクロチップを体に埋め込まれていて、必要があればGPSでその所在の追跡ができるようになっているので、どこへでも自由に行けたとしても、逃げ出すことはできないように管理されている。要人や資産家などを客として相手にするのだから、重要な秘密を漏らしたり、高価なものを盗んだりすることがないように、公娼館の外でも厳重に監視されているのだ。初回の予約は同伴外出となったが、果たして再会は実現するのか、男は祈るような気持ちで端末を閉じた。</div><div>&nbsp;</div><div>　翌日、男は余裕をもって予約時刻より早めに公娼館に着いて、受付で予約を確認し、外出の場合、事後の料金未払いを防止するために、保証金を現金で前払いすることになっている。女の支度が整うまで、ロビーで待つ男の前を、別の客が通り過ぎた。その客は、男に目をとめると軽く会釈をして、</div><div>「お久しぶりです。あなたは…。」</div><div>と挨拶しようとしたが、すぐに何かに気づいたように、</div><div>「失敬、人違いのようです。」</div><div>と一礼した。その客は一見してそこそこ高位の役人のようだ。もしかしたら、あの女の先客だったのかもしれない。女がその客に抱かれている姿を妄想して、男はまた身体の芯に熱を感じた。そこへ女が現れ、少し手前から小さく手を振りながら、</div><div>「お待たせ。じゃあ、行きましょうか。」</div><div>と声をかけてきた。男は我に返り、</div><div>「ああ、昼食には少し早めだけど、まずは食事に行こうか。」</div><div>と答えた。</div><div>外出の手続きをしている女に、受付係が次の客の予約に備えて帰館の時間の確認をしていた。</div><div>&nbsp;</div><div>　公娼館を出て、男はまず女を食事に誘った。同じ町の飲食店の一つに入り、二人は向かいあってテーブルに付き、ランチメニューをオーダーした。昼食には少し早めの時間帯だったからか、店内は空いていて、彼らのテーブルの周囲には他の客は居なかった。</div><div>「昨日はありがとう。助かったよ。…それと、いろいろ、済まなかったね。」</div><div>男が宿泊の礼と迷惑をかけた謝罪の言葉を口にすると、女は一瞬ぽかんとして、すぐに少女のような笑顔で言った。</div><div>「そんなの、気にしないで。困った時はお互い様よ。知らない仲じゃないんだし。あ、それと、これ、返すね。」</div><div>女は鞄から小さな包を取り出して、男に手渡した。</div><div>「綺麗に洗濯してあるから。でも、要らなかったら捨てて。」</div><div>男が汚した下着のかわりに、新しい下着を準備してくれていただけでなく、洗濯して保管してくれていたようだ。</div><div>男は頭を掻きながら、</div><div>「面目ない。重ね重ね、申し訳なかったね。」</div><div>と苦笑したが、女はまた一瞬ぽかんとしてから、</div><div>「何で？あなたが子供の頃にいじめられて青鼻垂らしながら大泣きしてたのも覚えてるし、あたしもあの頃はよくお漏らししたり、食べ物の好き嫌いを叱られて泣いてばかりだったわ。お互いそんな恥ずかしいところも知ってる仲じゃない。…でも、食事しながらする話でもないよね。」</div><div>と言って、いたずらっぽく笑った。</div><div>二人は子供の頃、同じ町で同じ学校に通っていた。同じクラスになったこともあるにはあったが、友達と呼べるほど親しい関係でもなく、男の記憶の中の女は真面目で地味という印象以外、特別なものはなかった。女にとっても、男はいじめられっ子の泣き虫という記憶しかないようだった。</div><div>　「ごめんね。被災した時の後遺症の影響で、あたし、時々記憶が混乱することがあるから、変なこと言うかもしれないけど、気にしないでね。」</div><div>と、唐突に女は言った。男は厄災前、既に町を離れていたが、女は当時まだ故郷に残っていて、被災したようだった。</div><div>「それは大変だったね。で、今はもう身体は大丈夫？」</div><div>男は女の身を案じて尋ねた。</div><div>「うん、救助された時に瓦礫に埋もれていたからみたいなの。今は身体は何ともないわ。被災して一気に大きなショックとストレスを受けたのもあって、ちょっと脳の機能に後遺症が残るけど、日常生活には影響ないらしくて。今でも定期的に検査で一晩入院する日があるから、昨日も、ちょうど検査入院で留守だったの。」</div><div>女の身を案じる気持ちに嘘はないが、昨日女が別の客に抱かれているのではと興奮と嫉妬の入り混じった妄想をしていたのに、実際には検査入院のための外泊だったと知って、男は不謹慎とは思いつつも、拍子抜けというのか、安堵の反面、複雑な気持ちになった。そんな男の表情を見て、女は、単に「自分の身を案じてくれているだけだ」と思ったのか、</div><div>「心配するようなものじゃないから、大丈夫よ。滅転墜災害の研究の一環で、あたしだけじゃなくて、生存被災者の健康チェックはみんなやってることだから。」</div><div>と言った。</div><div>「あなたは優しいのね。そんなに親しくもないし、長いこと会ってもなかったあたしのことを、自分のことのように親身になって心配してくれて、ありがとう。」</div><div>男は女との心の距離が一気に縮まった気がした。</div><div>&nbsp;</div><div>　女というものは、身体のつながりよりも心のつながりを優先する生きものだ。娼婦は、見知らぬ客にも身体を許すのが生業だが、本当のプロフェッショナルの娼婦は、ただ肉欲だけが目的の客が相手でも、『一夜妻』の言葉の通り、その時その場では、本当に妻や恋人のような存在になりきることができるものだという。心の伴わない上辺だけの行為は、どれほど卓越した技術を持っていたとしても、客には空虚な感覚が伝わるものだ。獣同然に己の欲望を満たしたいだけの客ならば、それでも良いのかもしれないが、敢えて高い金を積んででも高級娼婦を指名するような客はそんなものを求めてはいない。例えひとときであっても、愛情を込めて客に尽くせるのが、本物の娼婦である。だとすれば、この女は客ならば誰が相手であっても、相手を満足させられるのだろう。しかし、男が求めているのは、高級娼婦としての女ではなく、一人の生身の女そのものである。幼い時の陰気で堅い印象との落差が、謎めいた今の女の魅力を高めていた。意図して狙ったあざとさではなく、出自の良さを連想させる気品と、そこはかとない妖艶な色気を漂わせながら、少女のような可愛らしさも兼ね備えた女は、何とも魅力的で、男の心を鷲掴みにして、女の身も心もすべて、何もかも手に入れたくなる。まさに見えない運命の糸に操られて、出会うべくして出会った女だとしか思えなかった。</div><div>&nbsp;</div><div>　あの頃には殆ど言葉も交わしたことはなかったが、始めは共通の思い出話から始まり、趣味の小説や映画の話で盛り上がると、お互いに心を通わせるようになった。</div><div>「また会いたい、また話がしたい。」</div><div>そんな気持ちになったのは、彼だけではなかった。少なくとも、彼はそう信じていた。</div><div><br>　それから男は、携帯端末で女の客の予約状況を調べては、自分の都合が合う時間に空きがあれば予約を入れたが、たいていは短時間の外出予約しか確保できなかった。それでも、男は根気よくその関係を継続し、食事をするだけでも、会話を楽しむだけでも良いから女と一緒に時間を過ごしたかった。女もいつも男との会話を楽しんでいるように見えたし、男を『大切な友達』と思っているようだった。それはそれで、楽しいし嬉しいことだが、男はその先へ、もう一歩踏み込んだ関係を望んでいることを伝えても、女は静かに微笑むだけだった。それでも、携帯端末のアドレスを交換して、会えない時間は、ほぼ毎日、朝晩の挨拶から日常の何気ない話まで、幾度となく携帯端末上での会話を楽しむことで、常に精神的な繋がりを保とうとした。</div><div>　もしかしたら、女の中では、男と友達の範囲を超えて深い関係になることを躊躇していたのかもしれない。男は女の客であり、正規の料金も支払ってはいるが、女にとっては、娼婦ではない素の自分と対等な関係でいられる友達であってほしいと思っていたのかもしれない。お互いに、相手の知らない長い年月の間に、今まで生きて来た人生の中で、いろいろな経験をして今に至っているのだ。昔馴染みというだけで、そう簡単に気持ちを切り替えることに不安があるのかもしれない。寧ろ、見ず知らずの男が相手の方が、商売と割り切って客にできるのかもしれないが、身体だけの関係ではない精神的な繋がりを感じ始めてしまったが故に、単なる客の一人とは思えなくなってしまったのかもしれない。それでも既に女の虜となってしまっていた男は、頑なな女の気持ちが絆されるまで、諦めずに会話と逢瀬を重ね、ついにあの再会の日に宿泊した女の部屋での予約を取り付けることに成功したのだった。</div><div>&nbsp;</div><div>第1章　ヴィンセント・ヴィヴス</div><div>&nbsp;</div><div>　ヴィンセント・ヴィヴスは、ついに念願かなって、あの再会の日以来久しぶりに、セヴンズヘヴンの高級娼婦の中でもNo.1のイヴと、彼女の部屋で時を過ごすことができると思うと、少年のように、前夜から興奮して殆ど眠れなかった。いつもすぐ手の届くところに彼女が居るのに、手を伸ばしても届かないようなもどかしさを感じつつも、ひたすら彼女が心を開いて受け入れてくれるまで、無理強いすることなく、待った甲斐があった。</div><div>　早めに着いて受付で手続きを済ませていると、イヴが迎えに出て来てくれた。</div><div>「いらっしゃい。今日は来てくれてありがとう。」</div><div>親しげに声をかけ、以前泊めてくれた彼女の部屋へと誘われた。</div><div>&nbsp;</div><div>　「ノヴァ、会いたかった。大好きだよ。」</div><div>源氏名のイヴではなく、彼女の本名を呼んで、抱き寄せた。唇を重ね、ぎゅっと抱きしめると、彼女はヴィンセントの背中に回した両腕に力を込めてぎゅっと抱きしめ返して来た。</div><div>「うん、あたしもあなたが好き。」</div><div>「二人きりの時は、僕のことはヴィンスと呼んで。」</div><div>「うん、これからはそうするね、ヴィンス。」</div><div>&nbsp;</div><div>　再会の翌日から、ヴィンセントは客としてイヴを指名しつつも、外出して食事をしたり、会話を楽しみながら散策したりと、昔馴染みの友達のままの関係だった。おそらく、ノヴァは友達から恋人へと一歩踏み込んだ関係になることを躊躇っていたのだろう。ノヴァのことを大切に思うが故に、ヴィンセントは一切無理強いをすることなく、根気よく、身も心も一つに結ばれる日を、一日千秋の思いで待ち焦がれて来た。今度こそは、表向きはあくまでも娼婦と客の関係を貫くとはいえ、心の中では晴れて恋人になれたのだと思った。ついにノヴァがヴィンセントの思いを受け入れてくれたのだと、ヴィンセントは信じたかった。娼婦が客に媚びるための演技ではなく、今まで親しく育んで来た友愛が、強い絆で結ばれて恋慕の情として熟成されたに違いないと。</div><div>　ノヴァは再会の時は仕事中ではなかったし、今までは仕事中といっても単に外出だからかと思ったが、いつも娼婦らしくなく化粧も服装も地味だったのは、きっとノヴァは元来そういう女だからなのだろう。そういう上品で清楚に見えるのに、にじみ出る妖艶さとのギャップが「イヴ」の人気につながっているのかもしれない。</div><div>　巷の酒場で見かける欲求不満の塊みたいな人妻のようにやたらとボディタッチをするでもなく、並んで歩いていても、腕を組むどころか、こちらから手を差し出さないと手をつなごうとすることすらない。</div><div>　女優やモデルのような美形でもスタイル抜群でもないけれど、欲情をそそられるような、ふっくらとした、男好きのするほどよい肉付きと、実年齢よりかなり若く見える童顔で、大人の色気を裏に隠した少女のような可愛いらしさがある。</div><div>話をしていても、教養はあるのに、少し抜けているところもあり、次々といろいろな引き出しが開きそうで、興味深い。</div><div>ひとたび彼女を知れば、その魅力の虜となり、沼にはまって抜け出せなくなってしまう。知れば知るほど、もっと深く彼女を知りたくなるし、いろんな彼女の側面を見てみたくなる。イヴを指名する客に常連が多いのも理解できた。</div><div>&nbsp;</div><div>　ノヴァの身体を抱き締め、熱いキスを交わして、あの夜一人では無駄に広く感じたベッドに身を投じ、</div><div>「おいで。」</div><div>と声を掛けると、ノヴァはするりとヴィンセントの隣に滑り込み、子猫みたいにその厚い胸板に顔を埋めるようにして身体を密着させた。しっとりとした柔らかな肌の感触に癒されながら、長いキスを続けたまま、きめ細かな肌に指を滑らせる。敏感な部分に触れた時にぴくりと小さく震えるのは、まるで初めて男に抱かれた生娘のような反応だった。<div>うるうると潤い、滑らかで柔らかく温かかなノヴァの粘膜が、猛り立つヴィンセントをきゅっと包み込む。ノヴァの両脚がヴィンセントの腰を挟み込んで、二人の身体をしっかりと密着させるようにぐっと引き寄せた。</div></div><div>「可愛い…。」</div><div>ヴィンセントは思わず心の声を漏らした。</div><div>「ありがとう。嬉しい。」</div><div>ノヴァは恥ずかしそうに頬を赤らめてそう言った。誉め言葉なら嫌というほど聞き慣れているはずなのに、初めて聞いたかのような嬉しそうな笑顔を見ると、ヴィンセントは更にノヴァのことが愛おしく思えた。</div><div>そして、ヴィンセントの誘導するままに、ノヴァは猛り立つヴィンセントに唇を寄せ、熱い吐息と共にそっと口中に含んだまま、彼を見上げた。</div><div>「可愛い…。」</div><div>再びヴィンセントが呟くと、ノヴァは慈愛に満ちた微笑みを返した。</div><div>　限られた時間の許す限りノヴァの肉体を貪ったヴィンセントだったが、その感度や反応の良さは、男を満足させるに十分すぎるものだった。今まで幾多の男どもがこの体験をしたのかと思うと、何とも言えない嫉妬が沸き上がったが、自分は他の客とは違う素のノヴァを知っている、唯一の本当の恋人なのだという優越感に満たされてもいた。ヴィンセントが大人になった彼女と再会する以前に、「イヴ」の客としてこの素晴らしい肉体を堪能した男はたくさんいただろうが、「ノヴァ」の恋人として彼女を抱いたのは自分だけなのだ。イヴは客の誰にでも、愛のない相手に対しても、あたかも妻や恋人のように、身体を開き、受け入れて、自覚はなくとも、客の誰にでも、その場限りの、仮初の愛を与えることのできるプロフェッショナルの娼婦だ。だが、ヴィンセントが信頼関係を築き、培い育んだ愛情をもって接することで、ノヴァも同じように愛情をもって接してくれている。それは仮初ではなく、本物の愛なのだ。だとしたら、ノヴァをわがものとして手に入れた今、他の客には自分の愛する女を抱かせてやっているようなものだ。身体は許しても、ノヴァの心はヴィンセントだけのものだと、自信を持っていればこその余裕なのだ。</div><div>　その後もヴィンセントは足繁くセヴンズヘヴンに通いつめ、ノヴァと愛し合った。二人の絆は更に深く強く結び合わされていったが、ノヴァが娼婦であり続ける限り、この関係を超えることはできない。仮に、ヴィンセントがノヴァと共に暮らしたいと望んだとしても、それを実現することはほぼ不可能であった。</div><div>&nbsp;</div><div>第2章　ノヴァ・グレイス<br>&nbsp;</div><div>　ノヴァ・グレイスは滅転墜災害の生還被災者の一人であった。瓦礫の中に埋もれていたところを救出され、滅転墜災害による後遺症の研究目的で、今も定期的な検査を受けてはいるものの、普段の生活には何ら支障なく、「イヴ」という源氏名で、グラウンドゼロ警備兵駐屯地にある公娼館（後のセヴンズヘヴン）の娼婦となったが、その人気と評価が高く、瞬く間に軍人や高位の役人、資産家からの指名も受けるNo.1の高級娼婦となった。</div><div>&nbsp;</div><div>　検査入院のため外泊する予定だったある日、グラウンドゼロの陥没孔周辺で、偶然、かつて故郷で同じ学校に通っていたヴィンセント・ヴィヴスと再会した。ヴィンセントとは単なる顔見知り程度で、特に親しい仲でもなかったが、幼い頃に、いじめっ子にからかわれ、プライドが許さなかったのか、号泣しながらも必死に何かを訴えていた、昔の泣き虫の彼の姿が、胸板の厚いがっしりとした体格の大人になった彼に重なった。背筋をピンと伸ばす姿勢の良さや、ちょっと首を傾けて斜に相手を見る癖はそのままだった。かつての細い切れ長の目は、今では一見柔和に見えて瞳の奥に鋭い眼光を潜ませた、ぎょろりと大きな目に変わっていても、厚い唇にも、頬のふっくらとした縦長の楕円形の輪郭にも、少年時代の面影があった。ノヴァは目が合った瞬間、自然と手を振って歩み寄り、ヴィンセントに声を掛けた。</div><div>&nbsp;</div><div><div>　「お久しぶりね。お元気そうで何より。」</div><div>「無事だったんだな。」</div><div>ヴィンセントのその答えを聞くと、自分が数少ない滅転墜被災者の生き残りの一人であることに思いが至った。</div><div>「そうね。生き残ってしまったわ。」</div><div><u style="text-decoration:underline;">ヴィンセントには、その言葉には災害からの生還者特有のいわれのない罪悪感が漂っているように聞こえたことだろう。</u></div><div>夕陽が西へ傾き、二人を照らす光が紅く輝いていた。ふと、彼がこの地の住人でないことに気づいたノヴァは、</div><div>「もう日が暮れるわ。町へ戻るけど、あなたは今日のお宿はどうするの？予約がないと多分どこも満室よ。」</div><div>と言うと、ヴィンセントは苦笑いして言った。</div><div>「それはまずい。何も考えてなかったな。」</div><div>「宿屋ではないけど、泊まれるところがないわけではないわ。あなたさえよかったら。」</div><div>「お言葉に甘えて良いのかな。再会したばかりで。」</div><div>「もちろんよ。同郷のよしみで。あたしについて来て。」</div><div>そんな会話の後二人は並んで歩き出した。</div><div>&nbsp;</div><div>　セヴンズヘヴンに二人で入ると、受付係が声をかけてきた。</div><div><div>「イヴさん、今日は外泊じゃなかったですか？」</div><div>「そうだけど、留守にするから、かわりにお客人をあたしの部屋に泊めてあげてくれないかしら。」</div><div><div>ノヴァはヴィンセントには聞こえないように、小声で受付係に、</div><div>「あたしの大事なお客人だから、最高級のおもてなしをお願いね。そして請求はあたしに回して良いから、お客人からは頂かないようにして。」</div><div>と頼んだ。</div></div><div>「良いんですか？」</div><div>「ええ、それで結構。」</div><div>ノヴァは振り向いて、ヴィンセントに声をかけた。</div><div>「ちょうど今日あたしの部屋が空いてるから、そこに泊まって行って。」</div><div>「悪いね。」</div><div>というヴィンセントに、</div><div>「ううん、どうせ空いてるんだから、気にしないで。じゃあ、ごゆっくり。」</div><div>そう言うとセヴンズヘヴンを後にし、翌朝セヴンズヘヴンに戻って、ヴィンセントと一緒に朝食を摂り、彼を見送った。</div><div>&nbsp;</div><div>　翌日ヴィンセントはイヴを指名して予約を試みて来た。あいにく先約でかなり予定が埋まっていて、短時間の外出の枠しか空いてはいなかったが、ノヴァが昨夜の件をそれほど気にしていなくても、律儀で真面目な彼が恩を感じて申し込みをしようとしているのなら、それに応えなければ、と思った。早めの昼食に出かけ、思い出話に始まり、たまたま話の合った趣味の小説や映画の話題で盛り上がり、それを切欠にヴィンセントはたびたび予約を入れて会いに来てくれ、携帯端末のアドレスを交換して会えない間もメッセージのやり取りをするようになった。</div><div>その経過で、何度かヴィンセントから</div><div>「ノヴァを愛してしまった」</div><div>「客と娼婦としてではなく、一人の男と女として愛し合いたい」</div><div>と繰り返し伝えられて来たが、曖昧な返事しかできなかった。ノヴァは、体にマイクロチップを埋め込まれて管理され、見えない力で拘束された娼婦である。籠の中の鳥や、水槽の中の魚が、その籠や水槽から離れて生きることはできないのと同じように、セヴンズヘヴンという檻の中で美しい姿を見せていても、その檻から逃れることはできない運命なのだ。</div><div>　</div><div>　いや、それだけではない。ヴィンセントに対する微かな違和感を告げることも、些細な疑問を尋ねることも、ノヴァにはできなかった。もし何か気になることがあったとしても、それが彼にとって、どうにかできるものでないとしたら、それを告げることは彼を苦しめることにしかならないだろう。彼は多くを語らない。それはきっと彼が語りたくないことなのだろうと思うから、気になっても尋ねることができない。<u style="text-decoration:underline;">お互いに、その内容は違っても、</u><u>他人には話せない、理解してもらえないような人生を、生きて来たのかもしれないのだから、</u>きっとそれに触れられることは望まないであろう。</div><div>&nbsp;</div><div>　だが、その目に見えない小さな棘が刺さったような違和感は、いつもどこかしらに潜んでいて、決して消えることはなく、彼のすべてを受け入れることもできないし、信じたいと思いながらも、すべてを信じきることができない。人はどれほど愛し合っても、どれほど長い年月を共に過ごしても、互いにすべてを知り合うことも、わかり合うこともできないとわかってはいるけれど、どこまでなら許し、盲目的に愛すことが出来るのか、ノヴァにはわからなかった。</div><div>好きでもない相手に身を任せることを生業としているが故に、身体と心は同一でもないし、別々でもないとわかっている。ノヴァには、自分が本当にヴィンセントを愛しているのかがわからなかった。嫌いではない。むしろ友達としてなら好きであることには間違いない。ヴィンセントが自分を愛してくれているのはわかっているし、彼を信じたいとは思いつつも、いつか裏切られるのかもしれないという疑いは完全には消すことが出来ない。</div></div>　身体を重ねている時も、気づくと彼は、他の男たちとは違って、視線を外してどこかあらぬ方向を見ている。それを見たくなくて、ノヴァは常に目を閉じていることにした。ヴィンセントはおそらく、ずっとノヴァが目を閉じているのは、身体の感覚に集中するためだとでも思っていることだろう。すぐ隣に居ても、ふとした瞬間にどこか遠くを見ているような目をしていたり、ぞっとするような昏い目をしている時がある。すぐに我に返っていつも通りの優しい笑顔になるのだが、たびたびそんな瞬間を見てしまうと、目の前にいるヴィンセントが、本当は自分の知っている彼とは違う気がして、怖くなる。</div><div>　滅多に怒らないヴィンセントが、時折冷静を装いつつも、必死に怒りを抑えていることが、ありありとわかったりすると、もうこれ以上、彼について深く踏み込んで知るべきではないのだと思い知らされる。所詮ノヴァは一夜妻に過ぎず、外の世界で彼と共に暮らせるわけでもなく、それぞれが生きて来た人生が交差する時と場所で、たまたま互いに癒してくれる相手を求め合っただけに過ぎなかったのかもしれない。</div><div>　ならば、それは、その場限りの美しい夢と割り切って、ヴィンセントの求める愛を捧げれば良い。たとえそれが偽りであったとしても、愛してくれたことが嬉しかった。でも、それは、彼が愛してくれているから、彼を愛さなければならないという義務感から、彼の思いに応えようとしているだけではないのか。ノヴァには自分が本当にヴィンセントを愛しているのかさえ、わからなくなっていた。</div><div>&nbsp;</div><div>第3章　レイヴン</div><div>&nbsp;</div><div><div>　ヴィンセントとノヴァの再会の翌日、ヴィンセントは余裕をもって予約時刻より早めにセヴンズヘヴンに着いて、受付で予約を確認し、外出の場合の事後の料金未払いを防止するための保証金を現金で前払いしていた。ノヴァの支度が整うまで、ロビーで待つヴィンセントの前を、別の客が通り過ぎた。その客は、ヴィンセントに目をとめると軽く会釈をして、</div><div>「お久しぶりです。あなたは…。」</div><div>と挨拶しようとしたが、すぐに何かに気づいたように、</div><div>「失敬、人違いのようです。」</div><div>と一礼したその客は、この国の高官の一人で、お忍びでセヴンズヘヴンを利用していたのだった。</div></div><div>　(危ないところだった…。確かにあの男は「レイヴン」に違いないが、既に職を退いていたはずだ。うっかりと挨拶をしかけてしまったが、在職中は勿論、退職した後だとしても、彼の存在は国家機密級の極秘事項（トップシークレット）だ。万が一にも、その名で呼んではなるまい。それに、私がここに居たことも、彼は私には気づいていないようだったが、仮に気づいたとしても、それをみだりに口外するようなことはあるまい…。）</div><div>ヴィンセントに声をかけようとして思い止まった男は、心の中で呟いていた。</div><div><br>　「レイヴン」。そのコードネームを知る者は、極めて限られている。公にはその存在を非公開とされている、「特殊公務員」の一人であり、その素顔や本名を知る者もまた、極めて少ない。正式な国の軍隊とは別に、軍人又はその訓練生その他、優れた素質を有する若者を選んで集め、訓練を経て諜報活動などに当たらせる秘匿された少数精鋭の集団があった。身体能力や知力、戦闘力、その他のレベルが特に高い者は、それぞれが国の高官から極秘任務を与えられて、特殊工作員(スパイ)や暗殺者(アサシン)として暗躍し、裏から国を支えていた。特殊公務員の中でも、最も腕が良いと言われていたのが、コードネーム「レイヴン」と呼ばれる男だった。そして、表向きは普通の公務員を装っていた「レイヴン」こそ、ヴィンセント・ヴィヴスその人であった。</div><div>&nbsp;</div><div>　故郷の町を出て首都で軍の訓練生から抜擢されて特殊公務員の一員となった青年・ヴィンセントは、故郷の町が滅転墜災害で消滅する前から、そして消滅した後も、ただひたすら任務に追われ、非日常の毎日に疲れ果てていた。繰り返し訓練を重ねてきたとはいえ、最初はまだ若かったこともあり、人の生死にかかわる使命に体が震えたし、血生臭い現場には吐き気を催した。しかし、いつしか非日常が日常となり、感覚が麻痺して行った。人を殺す訓練をしていても、それはあくまでも訓練であり、それで優秀な成績を収めては得意になっていた自分が、いかに何も知らない子供だったのかを思い知らされた。殺伐とした日々の任務を淡々とこなしていくうちに、いつしか特殊公務員の中でもエリートと呼ばれる存在にのぼりつめ、任務の難易度も上がり、それをクリアするたびに、更にエスカレートして行った。それでも、自分の腕にこの国の存亡がかかっているというのなら、「やるしかないんだ」と自分に言い聞かせ、心を失った機械のように、日々任務に明け暮れていた。</div><div>　しかし、時は流れ、もう訳も分からず突っ走る若者ではなく、大人の分別をもてるようになると、徐々にそんな生活に疲れ果てている自分に気づいた。自分がやっていることが本当にこの国を救うことになるのか。ただ、時の権力者に忖度する役人どもの操り人形になっているだけではないのか。そんな疑問がふつふつと沸き上がって来た。救世主面をして、面識もない誰かを騙し欺いて情報を得て、或いは誰かの命を奪い、その家族や生活を破壊しているだけの自らの生活を、この先もずっと、続けていくのかと思うと、嫌気がさして来た。自分がやらなくても、他の誰かがやるだけのことで、何も問題が解決するわけではないけれど、だからといって自分はどうしたらいいのか、もう何も考えられないくらいに、ヴィンセントは疲弊していた。そんな彼が最後に出した結論は、職を辞すことだった。辞めたとしても、任務とはいえ今まで犯してきた罪が消えるわけでもなく、それを十字架として一生涯背負っていかなければいけないことはわかっていたし、一般人として市民生活を送るとしても、元特殊公務員だった過去が消えるわけでもなく、秘密を知り過ぎたヴィンセントは、いつ生命を狙われてもおかしくない状況は、死ぬまで続くのだ。</div><div>　それでもなお、ヴィンセントは自由を求めた。拍子抜けするくらい簡単に退職は認められたが、それは同時に</div><div>「いつでもお前の息の根は止められるのだぞ」</div><div>という言葉にならない重圧をかけられたまま、暮らして行くことになる、ということでもあった。</div><div>&nbsp;</div><div>　退職直後は、まるで魂が抜けたように、しばらくは何も出来ず放心状態で自宅にこもっていたヴィンセントだったが、やっと落ち着きを取り戻して身動きできるようになると、昔の人脈を生かして、ボディーガードや探偵など、何でもござれのいかにも怪しげな商売を始め、公務員時代の貯えと口止め料を含む規格外の退職金で、何とか生活は成り立っていた。やっと人間らしい生活を手に入れて、ほっと一息ついた時、たまたまグラウンドゼロの現在の姿を伝えるニュースを目にしたヴィンセントは、ふと、消滅した故郷の跡地をこの目で見てこようと思い立った。携帯端末やモニター画面の映像でしか見ないと、どこか現実味がなく、本当に故郷が消滅したのだという実感がなかった。もう長いこと訪れていなかったが、曲がりなりにも自分が生まれ、少年時代を過ごした故郷の現状を、たとえそれがどんなものであっても、確認するべきだと思った。</div><div>　そして、ヴィンセントはグラウンドゼロを訪れる決心をしたのである。そこで再会したノヴァに連れられて行ったセヴンズヘヴンを翌日に再訪した時、客として来ていた、偶然特殊公務員時代の彼「レイヴン」を知っていた高官が、うかつにも彼に声をかけようとしたが、高官はすぐ思い止まり、「人違いだった」と言ったのである。</div><div>&nbsp;</div><div>　ノヴァと愛し合うようになってからは、殺伐としたヴィンセントの人生に、癒しの時間を与えてくれる存在がノヴァだった。しかし、愛するノヴァと一緒にいても、レイヴンとして生きて来た過去は、ヴィンセントの人生に昏い影を落としていた。普段は柔和な笑顔で誰にでも優しい紳士然としているが、その心身に染みついた闇は決して消えず、ふとした瞬間にその闇に飲まれそうになる。ヴィンセント自身が望んだことではないが、その闇に手を染めたことは、揺るぎない事実なのである。愛するノヴァを抱いていても、自分の中に巣食う闇に喰われそうになる。自分のようなものが幸せになって良いのだろうか。こんな自分がノヴァを幸せにできるのだろうか。心の中の闇から目を逸らすように、時折ヴィンセントは虚空を見つめる。ノヴァが目を閉じるのは、そんなヴィンセントを見たくないから、見たら彼のことを信じられなくなりそうで、寂しくてたまらないからだとも知らずに。</div><div>&nbsp;</div><div>第4章　イヴ</div><div>&nbsp;</div><div><div>　「イヴさん、今日は外泊じゃなかったですか？」</div><div>「そうだけど、留守にするから、かわりにお客人をあたしの部屋に泊めてあげてくれないかしら。」</div><div><div>イヴはヴィンセントには聞こえないように、小声で受付係に、</div><div>「あたしの大事なお客人だから、最高級のおもてなしをお願いね。そして請求はあたしに回して良いから、お客人からは頂かないようにして。」</div><div>と頼んだ。</div></div><div>「良いんですか？」</div><div>「ええ、それで結構。」</div><div>イヴは振り向いて、ヴィンセントに声をかけた。</div><div>「ちょうど今日あたしの部屋が空いてるから、そこに泊まって行って。」</div><div>「悪いね。」</div><div>というヴィンセントに、</div><div>「ううん、どうせ空いてるんだから、気にしないで。じゃあ、ごゆっくり。」</div><div>そう言うとセヴンズヘヴンを後にして、滅転墜被災者の後遺症の定期検査のため、病院兼研究施設へと向かった。</div><div><div><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251220/23/gin-gitsu-ne/aa/f7/j/o0659108015732180629.jpg"><img alt="" height="688" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251220/23/gin-gitsu-ne/aa/f7/j/o0659108015732180629.jpg" width="420"></a></div><div>　「シリアルナンバーEVE2999-98998-01、イヴ。おかえり。」</div></div><div>研究員であろう白衣を着た初老の男性がイヴを迎えた。その男性の胸には、主任研究員　Dr.トウドウと書かれている。</div><div>「ただいま戻りました。」</div>「じゃあ、始めようか。」</div><div>トウドウ博士がそう言うと、イヴは身に着けていたものをすべて脱いで、一糸まとわぬ姿となって彼の前に立った。</div><div>「入りなさい。」</div><div>指し示された等身大のカプセルの中に足を踏み入れると、カプセルが閉じられて、カプセル内に液体が満たされて行った。</div><div>イヴは目を閉じて、静かに液体の中に浸されていた。</div><div>トウドウ博士がカプセルの前のコンピューターを操作すると、イヴが液体の中で目を開けた。</div><div>「ダウンロードを開始する。」</div><div>トウドウ博士がそう言って、エンターキーを押すと、モニター画面にずらずらと文字列が流れ、データが転送されて来たのが確認できた。ダウンロードが終了すると、モニター画面にイヴの映像が映し出された。</div><div>「イヴ。『オリジナル』の知人と遭遇したようだね。」</div><div>とトウドウ博士がモニター画面のイヴに向かって語り掛けると、モニター画面のイヴの映像が答えた。</div><div>「はい。記憶データと照合しました。問題ありません。」</div><div>トウドウ博士はモニター画面のイヴに向かって</div><div>「そうか。今後またそのような状況になった時は、『被災した時の後遺症の影響で、時々記憶が混乱することがあるから、変なことを言うかもしれない』と言えば良い。」</div><div>といい、イヴは</div><div>「承知しました。」</div><div>と答えた。トウドウ博士が、</div><div>「では、更新データのアップロードを開始する。マイクロチップのチェックも同時に行う。身体のメンテナンスはこのまま継続する。終了は明朝の予定だ。」</div><div>と言うと、イヴが再び</div><div>「承知しました。」</div><div>と答え、モニター画面のイヴが消えて、カプセル内のイヴが目を閉じ、モニター画面は再びずらずらと文字列が流れてデータが転送されている状況を表示していた。カプセル内のイヴの身体の表面からは細かな泡が出て来て、炭酸水の瓶に閉じ込められているような外観だった。</div><div>　そして、早朝になり、イヴの身体メンテナンスが終了すると、カプセルを満たしていた液体は排出されたが、トウドウ博士は、まだAIイヴとノヴァの脳が休眠状態のままのイヴの身体を抱き上げてカプセルから連れ出し、自室のベッドに運び、施錠した。しばらくして、再びイヴの身体をカプセルに戻すと、何食わぬ顔で、コンピューターを起動し、イヴを再起動した。</div><div>「おはよう、イヴ。ゆっくり休めたかね。」</div><div>「はい、トウドウ博士。再起動完了。問題ありません。」</div><div>何も知らないイヴがそう答えると、トウドウ博士はにやりと意味ありげな笑みを浮かべて言った。</div><div>「そうか。ならば結構。出ておいで。今回はこれで終了だ。」</div><div>「承知しました。」</div><div>イヴはカプセルから出て、衣服を身に着けた。身支度を整えて研究所を後にするイヴの後姿をじっと見つめるトウドウ博士の顔には、まるで肉食獣が、舌なめずりしてよだれを垂らしながら獲物を見送るような表情が浮かんでいた。</div><div>&nbsp;</div><div>　『シリアルナンバーEVE2999-98998-01、通称:イヴ　極秘資料』</div><div>というタイトルのファイルが、トウドウ博士が操作していたコンピューターの前に置かれていた。</div><div>その資料には、</div><div>『・EVE:Extra Vital Evolutinary android(進化型特別生体アンドロイド）。生命の維持に関わる進化型アンドロイド研究開発を目的に作成された試作品(プロトタイプ)。</div><div>・オリジナル（脳の本体）:全身を損傷しながら脳だけは奇跡的にほぼ無傷で生き残った被災者ノヴァ・グレイス。</div><div>・身体の損傷が極めて激しいものの、脳の損傷が奇跡的に軽微であった被災者を被験者(オリジナル）として、その脳そのものを人造人間の中に組み込み、オリジナルの記憶や思考を学習したAI（EVE）がアシストすることで、失われた肉体に代わり、生体アンドロイドとして、その生命の維持を図ることを目的に、試作するものとする。</div><div>・AI（EVE）での補完の限界を想定し、定期的にデータのバックアップ及び更新と、人造人間に使用された人工細胞・組織・器官等生体素材のメンテナンスのため、研究所にて定期検査を要する。</div><div>・関係者以外の接触、逃亡等の不測の事態に備え、行動範囲の制限を設け、所在地の追跡を可能とするためのマイクロチップ埋設を行い、GPSにより常時その行動を監視する。</div><div>・非常事態に備え、EVE及び接続されたオリジナルの脳と研究所の管理システムを連携し、その視覚・聴覚・触覚等の感覚共有及び指令実行コマンド発動時には遠隔操作によるコントロールを可能とする。』</div><div>という内容が書かれていた。</div><div>&nbsp;</div><div>　滅転墜被災者であったノヴァ・グレイスは、災害時に瓦礫に埋もれ、全身が修復不可能なレベルで損壊していた。救助隊が回収した無残な遺体（と思われていた）を、医療班が調べていた時、奇跡的に脳だけがほぼ無傷で残っていたことがわかった。しかし、身体を失って脳だけでは生きられるはずもなく、このまま死すしかないと思われていたその時、被災者の調査をしていた研究者の一人が</div><div>「特務権限を発動してノヴァ・グレイスの脳を接収する」</div><div>と言った。その人物こそがトウドウ博士であった。</div><div>「そんな非人道的なことは許されない」</div><div>「このまま静かに死なせてやった方が良い」</div><div>との周囲の反対を押し切って、ノヴァの脳はトウドウ博士により、開発中の生体アンドロイドの一部として使用されることとなった。保存した脳にAIを組み込んで、オリジナル(ノヴァ)の記憶や思考、性格などを学習させ、生前の姿に似せて作られた人造人間の身体に入れて、あたかもノヴァが生き返ったかのように、生体アンドロイドの試作品イヴとして新しく生まれ変わることが出来るかを研究することが目的だった。試作品でもあり、極秘事項でもあることから、マイクロチップを埋設してその所在を常に把握し、管理することになったが、その隠れ蓑として使われたのが、公娼館であった。</div><div>&nbsp;</div><div>　ノヴァの脳はイヴから与えられた情報操作により、「瓦礫に埋まっていたところを奇跡的に救助されたが、その精神的肉体的に過大な負荷の影響で、思考や記憶に混乱を生じているのだ」と信じ込まされている。あたかも寄生虫に侵入されて自らが操られていることに気づかない宿主の昆虫のように、ノヴァは自分自身の中に同化しているイヴと自己との区別が曖昧で、何か自分ではないもう一人の自分が居るような違和感を時折感じつつも、「すべてはきっと滅転墜災害のせい」と信じていた。</div><div>&nbsp;</div><div>　災害から生還したものの、すべてを失ったノヴァは、生来自分自身の意思が希薄で、周囲に流されるように生きて来た性格だったので、保護された医療施設から退院後は、警備兵や研究員のための慰安施設である公娼館に身を寄せ、そこで娼婦として働くこととなった。当時は官営であった公娼館は、お上から派遣された役人が形だけの館主となり、裏ではトウドウ博士を含む非公開の委員会が組織されており、その規定等は闇の中で決定されていた。どのような基準で娼婦の階級が決められていたかなどは明らかにはされず、娼婦たちはその待遇に不平不満を訴えることができない弱い立場であったため、ただ従うより他に生き抜く術がなかった。</div><div>　イヴという源氏名をつけられたノヴァは、高級娼婦として、警備に当たる軍の将校や、視察に来る政府の高官等の身元のしっかりとした客のみをあてがわれ、一般兵などは指名することができなかった。それはトウドウ博士が、まだ生まれたての赤子のような脆弱なEVEのシステムを守るために、制限をかけたのである。</div><div>&nbsp;</div><div>　時は流れ、AIイヴは成長し、ノヴァとの融合も進み、徐々に安定してきたころに、ちょうどグラウンドゼロの制限解除が発表され、公娼館は建前上民営化されて「セヴンズヘヴン」に生まれ変わった。しかし、実質的には完全に民営化されたわけではなく、役人が陰でその管理運営に携わっており、トウドウ博士も相変わらずイヴの研究目的で関与を継続していた。</div><div>　イヴがセヴンズヘヴンNo.1の高級娼婦として、ある程度の自立や裁量を認められるまでに成長したころ、偶然出会ったのが、昔馴染みのヴィンセント・ヴィヴスであった。イヴは、ノヴァの脳内の記憶データから少年時代の彼を確認したが、現在或いは青年期以降の彼について何も知らないまま、彼からの求愛を受けることになったのである。</div><div>&nbsp;</div><div>　ヴィンセントはノヴァを愛していると言った。イヴを指名する客の中には、いわゆる本来のノヴァの好みのタイプに近い常連客も居るには居たが、それは単なる疑似恋愛で、身体だけのつながりに過ぎず、ノヴァの脳はただ常にヴィンセントと心と心でつながりたいと願っていた。朝目覚めた時から、夜床に就くまで、折に触れ携帯端末で送り合うメッセージのやりとりや、会えた時に交わす他愛ない会話が、ノヴァの心を癒してくれていた。ノヴァはヴィンセントを失いたくないがために、身体で彼に応えようとしているだけ、抱き締め合いたいとは思っても、積極的に行為を望んでいるわけではない。他の客たちに与えているのはイヴの身体であり、ノヴァの脳はただヴィンセントの心だけを求めていた。</div><div>&nbsp;</div><div>　一方のヴィンセントはどうだろうか。ノヴァが好意に値することは間違いないとしても、身体よりも心が優位なのかどうか。『愛している』という言葉を疑うわけではないが、その熱量の向かう方向は、果たしてノヴァと同じなのだろうか。ヴィンセントが愛しているのは、ノヴァの心ではなく、イヴの身体ではないのか。ノヴァはヴィンセントが冗談めかして口にする受け入れ難い言葉に深く傷つけられることがあっても、それを否定することなく黙って耐えていた。ヴィンセントについてもっと深く知りたいことがあっても、彼がそれを訊かれたらどう思うかを慮るが故に、決してそれを尋ねる言葉を口にしなかった。身体を重ねながらでも、時にどこか遠くを見つめている昏い目や虚無の表情に、この人は本当に自分の知っているヴィンセントなのかと疑うほどの違和感と、幽かな恐怖、一抹の不安と、僅かな寂しさを覚えながらも、彼を傷つけ、彼を失うことを恐れて、ノヴァはそれを口にすることが出来なかった。</div><div>&nbsp;</div><div>　そもそも愛とは何なのか。AIであるイヴは莫大なデータからそれを推測をすることはできても、真実の愛がどんなものかはわからない。ヴィンセントは「愛している」という。彼はオリジナルのノヴァ（だと彼が信じているイヴ）を愛しているのだろう。それは理解できた。しかし、AIのイヴにとってはノヴァの心とイヴの身体がそれぞれ別々のことを望んでいるという矛盾を理解することができなかった。肉体的な快楽と精神的な安心感のどちらかだけでもなく、そのときどきにより優先されるべきであるのがそのどちらなのか、それは言葉にしない限りヴィンセントには伝わらないし、そもそもノヴァ自身にもそれがはっきりとは判別できていない。人間の感情とは何と複雑なのか、イヴは混乱するノヴァの本心に翻弄されていた。イヴの判断はノヴァの感情を正しく反映しているのか、そして正しかったとしても、それが適切な判断だったのか、その履歴を積み重ねて作り上げたノヴァはオリジナルのノヴァから逸脱していないか。それを評価するのもまたAIであるイヴ自身なのである。</div><div>&nbsp;</div><div>　イヴは、オリジナルのノヴァの記憶データから彼女の性格、思考回路、行動パターンなどを解析し、オリジナルのノヴァならどう考え、行動するかを推測することで、彼女の言動をアシストするようプログラムされているので、それに従わねばならなかった。その場その場で、ヴィンセントが望むオリジナルのノヴァを完璧に演じるために、彼がオリジナルのノヴァであると信じるに足ると思われる選択をすることに最善を尽くすことはできた。</div><div>　イヴには、オリジナルのノヴァ自身にとっての愛とイヴの選択が合致しているかどうかの正解はわからない。オリジナルのノヴァは、本当にヴィンセントを愛しているのか。ノヴァがヴィンセントを嫌いではなく、むしろ好きなことは間違いないとしても、それは本当に愛なのだろうか。膨大なデータを分析してみても、愛の形は人間の数だけ存在するとされていて、何が正解なのかはわからない。もしかしたら、オリジナルのノヴァ自身も、自分がヴィンセントを愛しているのかどうかさえわからないのかもしれないのだ。</div><div>&nbsp;</div><div>　オリジナルのノヴァ自身の性格は、自己価値の存在が希薄だったことが、記憶データから判明している。自分には価値がなく、そんな自分を求めてくれる相手には、相手に合わせて、可能な限り求められるそのままの自分を演じようとする。相手を怒らせることや失望させることで、見捨てられることを恐れる反面、友達や恋人に依存して裏切られるくらいなら、初めから他人との距離を置いて、深く親しい関係に陥ることを避ける傾向が見られた。ヴィンセントの知る少女時代のノヴァはまさにそうだった。</div><div>　ヴィンセントの知らない年月の間に、大人の女性になったノヴァならば、きっと成長して少しは変わっているはずだ。イヴは、実際には滅転墜被災当時から脳の時間が止まったままの、オリジナルのイヴの記憶データから、本質的なノヴァの性格を変えずに、その補正を加えるべきであると判断し、旧知のヴィンセントに違和感を抱かせない程度の自然な経時的変化を計算した。愛しい気持ちも恋しい気持ちも、ただヴィンセントがそれを望むから、反射的に合わせているに過ぎないのか、それとも、臆病で頑ななノヴァであっても、真実の愛に辿り着こうとしているのだろうか。</div><div>&nbsp;</div><div>　イヴはまたヴィンセントに対する解析にも苦慮していた。彼は今までイヴが相手にしてきたどの男たちとも違っていた。客の男たちを観察し、分析し、対応してきた方針に概ね間違いはなかった。少なくとも、その誤差が問題になるほどのことはなかった。だが、ヴィンセントは解析があまりにも困難だったのだ。<u style="text-decoration:underline;">ヴィンセントには他人には触れてほしくなさそうな秘密があり、自ら言及しない限り、尋ねることを拒否しているような無言の圧力を感じさせた。</u>逆にヴィンセントの語る言葉の真意の分析は複雑で、判定が困難だった。時を重ねることで、少しずつだがデータを蓄積できた部分もあるが、それは極めて僅かな収穫でしかなく、適切な対応の予測結果は不安定であった。</div><div>　ただ一度だけ、オリジナルのノヴァの幼少期の心の傷の記憶に対して我が事のように親身になり、涙を流して話を聞いてくれて、ノヴァの心の古傷に寄り添ってたことがあり、オリジナルのノヴァならば、少なくともそのことだけは、ヴィンセントの真意と信じたかっただろうが、イヴからすれば、それすらヴィンセントの演技かもしれないという可能性も、完全には否定できなかった。イヴには、ヴィンセントがいわゆる「人たらし」であるという疑念を拭いきれなかったからである。ヴィンセントを十分に把握するには、まだまだわからないことが多すぎる。もしイヴが人間ならば、パズルの正しいピースが見つからないような、何とももどかしい気持ちになったかもしれないが、正確にいうとイヴには感情がない。あるように見せているだけだ。生体アンドロイドという、本来心など持たない人形が、人間のふりをするために必要な、作りものの感情表現でしかない。人間なら悲しむのであろうと判断すれば、悲しそうな表情を浮かべ、嬉しいのだろうと判断すれば、笑顔を見せる。それは、イヴのアシストによりノヴァの脳が刺激され、神経接続された生体アンドロイドの身体に送られた信号の反応で、ノヴァ自身の反応として具現化されるからだ。ノヴァの脳は、本当に自分の目で見て、耳で聞いて、身体で触れて、その感情が生じたと錯覚しているだけだ。ノヴァの脳のデータをベースに、イヴが取り入れた情報から分析し計算した判断の結果をインプットし、ノヴァの脳にフィードバックしてアウトプットさせる。その速度があまりにも速いので、殆どタイムラグを感じさせないように作られている。それでも、少し処理に時間がかかるときがあるので、「滅転墜被災の後遺症で脳に負荷がかかる」ということにして、相手に不審がられないようにしていたが、ヴィンセントという旧知の人物の登場で、更に「後遺症で記憶が混乱することがある」ということにすれば、万が一判断を誤って適切な対応ができなかった場合に備えるようトウドウ博士から指示されていたのだった。</div><div>&nbsp;</div><div>(第5章に続く）</div>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12939097750.html</link>
<pubDate>Sun, 21 Dec 2025 12:02:57 +0900</pubDate>
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<title>完成目前！経過報告</title>
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<![CDATA[ <p>おつかれさまです。銀狐です。</p><p>執筆中の新作小説の入力と、鉛筆描きの挿絵が一応完成しました。</p><p>これか入力チェックと推敲に入りますが、年内完成という暫定目標は何とかクリアできそうです。</p><p>少し長くなったので、一本の投稿に入りきらず、前後編に分けました。</p><p>投稿後に、旧サイトで恒例だった「あとがき解説」をするつもりなので、多くは語りませんが、本来想定していた範囲は前編までした。全くのノープランから、よく勢いで一気に書き上げたものだと思います。</p><p>&nbsp;</p><p>現実世界も師走に入りあわただしくなってきました。</p><p>早めに完成して良かったです。</p><p>&nbsp;</p><p>偶然にも、現実世界の本業が、少し早めに年末年始休暇に入りますので、大掃除などもありますが、時間が取れる時に過去作品の整理をして、余裕があればオススメ作品のご紹介が出来たらいいなと思っていますし、さらに余裕があれば、イラストの過去作品もご紹介できたらいいなとおもっています。</p><p>&nbsp;</p><p>とりあえず最新作は、ブログサイトの引越後初の自作小説の投稿となります。</p><p>よろしくお願いします。</p>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12949335354.html</link>
<pubDate>Sun, 07 Dec 2025 21:28:54 +0900</pubDate>
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<title>経過報告　追記</title>
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<![CDATA[ <p>　もう昨日になってしまいましたが、経過報告の後、断続的に1日原稿執筆に勤しんだ結果、あらかじめ流れの決まっていた4章まではほぼ書き終えて、起承転結の転に当たる5章、更に6章冒頭まで入力が進みました。</p><p><br></p><p>　最初は単なるモブにするつもりだった人物に役割を与えることにした途端急に物語が予想外の方向に展開し始め、全く考えていなかった4章以降の物語が転がり始めて第5章が出来上がりました。まだ確定ではありませんが、しばらくこの流れに任せて行こうかなと思う反面、「この後どうするよ？」と困惑もしています。クライマックスや最終局面に入るべき次章の第6章をどうやってまとめて行こうかと悩ましいところです。これがそのまま最終章になるか、エンディングを分けて（例えば後日談みたいな形とか）になるかは全くの白紙です。</p><p><br></p><p>　一旦書き終えて下書き保存しようとしたところ、字数制限の上限を超えていたので、前編後編に分けて、5章以降を後編とすることにしました。話の流れ的にそこで区切るのが一番収まりが良いからです。推敲を重ねて完成するまでには、もう少し時間がかかるとは思いますが、何とか年内完成が現実味を帯びて来たように思えます。</p>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12949132348.html</link>
<pubDate>Sat, 06 Dec 2025 00:40:20 +0900</pubDate>
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<title>経過報告〜毎回懲りない〜</title>
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<![CDATA[ <p>　ご無沙汰しております。銀狐です。</p><p>約1ヶ月半くらい前から書きかけている新作小説ですが、既にプロットができていた範囲については殆ど執筆が終わっています。</p><p><br></p><p>　序章から第3章までは完成し、第4章の途中というところまで進んでいます。あとは終章に向けてどうつなげて行くのか、そもそも終章でどんな終わり方をするのかはまだはっきり決まっていません。</p><p><br></p><p>　いつものことですが、銀狐スタイルとしては、だいたいクライマックスの手前あたりまではある程度話が決まっていて、多少の変更はあるとしても（多少で済まないこともそこそこありますが）、想定されていた大筋の流れに沿って進めることになりますが、クライマックスあたりからは、アイデアやヒントがあるときもあるけれど、だいたいぶっつけ本番的なことになります。</p><p>そして、ラストが決まっているときもあれば、全く決まってなくて、流れに任せるうちに、当初漠然と考えていた物語とは違うものになってしまうこともあります。</p><p><br></p><p>　今回に限っていえば、主人公とヒロインの設定ありきで始まり、ざっくりいえばそれぞれの表と裏みたいな描き方で、序章を除いて4章構成までは決まっていましたが、それ以降はノープラン。正直どこへ行くのか今はまだ全然わかりません。登場人物たちが脳内で勝手に動き始め、自然と物語を紡いで行くのがいつものパターンなので、それを待っている感じです。設定からして、ハッピーエンドはおろか、現状からはどうにも抜け出せない、変わりようがないと思えるような状況から、どうやって盛り上げ、それをおさめるのか、今は筆者自身にもわかりません。</p><p><br></p><p>　というような状況ですので、師走に入り、現実世界でも慌ただしい時期ですので、年内完成は厳しいか、年末年始を超えるのか、何ともいえない感じです。筆がのったらあっという間に完成するかもしれないし、いろいろ悩んで全然進まないかもしれない。全ては小説の天使ウリエルの啓示が降臨するか否かにかかっています。</p><p>　今でも、夜中にベッドで突然ひらめいて、枕元のスマホを取り出し、ナイトモードでモノクロになったディスプレイに向かって、ひたすらメモアプリに打ち込むうちに夜が明けていた、というような、真夜中テンションが暴走することが時々ありますが、そういうときにはググっと創作が進む場合と、後で見直したら殆ど使いものにならない妄想で、全削除になる場合があります。</p><p><br></p><p>　また、作画力低下が著しいので、果たして納得できるレベルの挿絵が描けるのか、これもまた悩ましい問題です。登場人物のビジュアルは読者の想像にお任せすべきではありますが、頻繁に作品を量産して投稿していた十年くらい前には、そこそこ脳内の再現度の高い作画ができていましたが、最近は再現率は高くて20%もいかないことが増えました。普段描いていないのが原因なので、こればかりはどうにもなりません。長い間自転車に乗らなかったら、乗れなくはないけど何か怖いとか、何か不安定とかになるのと同じです。精進しなければいけないのに、できてないからですね。</p><p><br></p><p>　さて、最後に少し脱線。</p><p>ブログサイト引越してから、いつか過去の自薦傑作小説のご紹介をしたいと思っていたのですが、とても大事なことに気づいていませんでした。旧サイトでの過去作品のURLリストはバックアップしてあるのですが、引越した今となればそれはもう使えないのではないか、ということ。全ての作品のURLリストのバックアップを作り直すのは大変な作業になるので、それこそ普段はなかなかできないから、年末年始とか、ゆっくり時間の取れるときでないと無理みたいです。なので、またそれはおいおい。物語の内容の作画のクオリティのどちらか、または両方に筆者なりに満足できるものをお勧めしたいと思っていますが、果たしていつになるやら。</p><p><br></p><p>　とりあえず、制作中の新作の年内完成を目指して頑張ります。よろしくお願いします。</p><p><br></p><p><br></p>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12949050380.html</link>
<pubDate>Fri, 05 Dec 2025 09:40:12 +0900</pubDate>
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<title>経過報告と本日の作画リハビリ</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251109/20/gin-gitsu-ne/17/7c/j/o0810108015712672766.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251109/20/gin-gitsu-ne/17/7c/j/o0810108015712672766.jpg" alt="" width="810" height="1080"></a><div><br></div><div><br></div><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20251109/20/gin-gitsu-ne/c2/c2/j/o0810108015712672768.jpg"><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20251109/20/gin-gitsu-ne/c2/c2/j/o0810108015712672768.jpg" alt="" width="810" height="1080"></a><div>　今日現状世界での資格試験が終わったので、結果発表はまだ先だし、とりあえず下書き中断中断の序章の原稿はおいおい再開するとして、まだたまりにたまった用事を片づける気力もなく、いつも応援してくれる友人から</div><div>「自分へのご褒美で今日は美味しいもの食べて好きなことしてね」</div><div>と労いの言葉をもらったので、さっそく夕食はデリバリーにして、恒例次女の誕生祝封筒の作画をしました。</div><div>　前回予告の通り、チェンソーマンの早川アキを描いたのですが、あまりにも長いこと作画をしてなかったので、出来は激甘評価で20点、実質10点もいかないかもですが、これが現実なので、</div><div>『ありの〜ままの〜姿見せるのよ〜』</div><div>と某大ヒットアニメ映画の主題歌を口ずさみつつ、気に入るかどうかはわかりませんが、とりあえず次女に渡すこととします。（中身が用意できてから）</div><div><br></div><div>　次回は新作についてのご報告ができたら良いのですが、今日のところはこの辺で。</div><div>またお会いできるときまで、ごきげんよう。</div>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12944265173.html</link>
<pubDate>Sun, 09 Nov 2025 20:57:38 +0900</pubDate>
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<title>狐の巣篭もり〜近況報告〜</title>
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<![CDATA[ <p>お久しぶりです。</p><p>銀狐です。</p><p>椅子が走って喋る某有名アニメと響きがそっくりなタイトルで恐縮です。（笑）</p><p><br></p><p>　10月も明日で終わりですが、私は現実世界で11月の資格試験受験のため、明日から約10日間本業をお休みします。従来のシフト休み以外の日を有休消化の形で埋めて、家に籠ろうと思います。</p><p>たまたま有休消化の期限が来月末までと切迫していることと、インフルエンザやコロナなどの感染症の流行を見越して、万全を期すことと、単純に仕事と体調不良とで大分勉強が遅れてるのを取り戻すためでもあります。</p><p><br></p><p>　水面下で進行してきた下書き原稿は序章の入力が終わって、第1章冒頭あたりを考え中です。大筋の骨格はありつつ、流れに乗るのが狐流なので、まだどう流れて行くかはわかりません。晴れて受験が終わったら、本格的に？創作活動に向き合えるかなと楽しみにしてます。まさに鼻先に人参ぶら下げた状態ですね。また、恒例の家族用の封筒イラストは、次回来月分として、チェンソーマンの人気キャラクター・早川アキを描く予定です。作画力低下は懸念されるので、乞うご期待と言って良いのかどうか…。</p><p><br></p><p>　最近は、日常垢（jiromaru-kanami3『次郎丸かなみの有味湿潤な日常生活』）のエッセイで愚痴ばかりこぼしておりますが、勉強も大変とはいえ、本業の出勤しなくていいパラダイス状態に慣れてしまうと、休暇明けがコワイです。絶対戻りたくなくなるだろうなとは思うけど、働かざる者食うべからずなので、致し方ない。そんなことを考えたら暗くなるので、当分は本業のことは忘れることにします。職場復帰してからは、多分精神的に小説の中の『向こうの世界』に避難することで何とか乗り切っていけるかもしれません。</p><p><br></p><p>　では、ちょっとだけ予告（仮）。まだ企画段階なので変更あるかもしれませんが。</p><p>　宇宙から来た厄災『滅転墜（メテオ）』後の世界で久しぶりに単なる同郷の顔見知りだった男女が再会したことから始まる物語です。互いに何か秘密があるようで…。</p><p><br></p><p>　ではまた11月中旬創作活動再開した頃に、投稿しようと思いますのでよろしくお願いします。</p><p>ごきげんよう。</p>
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<link>https://ameblo.jp/gin-gitsu-ne/entry-12942017026.html</link>
<pubDate>Thu, 30 Oct 2025 13:18:32 +0900</pubDate>
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