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<title>higashi410のブログ</title>
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<title>秋日小景　33</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">　鬼ごっこをしている恵理と光多が近づいてきた。鬼の光多は懸命に恵理を追いかけているが、二人の距離は少しも縮まらない。恵理がうまく調整しているので、距離が開くこともない。光多よりも恵理のほうが楽しんでいるようだ。</font></div><div><font size="2">「光多君と遊んでいるときの恵理って、本当に幸せそうね」</font></div><div><font size="2">　貴子が二人を目で追いながらいった。「ねえ、洋行さん。もし私たちにも子供ができなかったとしたら、洋行さんは簡単に諦められる?」</font></div><div><font size="2">「たぶん無理だと思う。貴子さんも同じだろう?」</font></div><div><font size="2">「もちろんよ。育てるのは大変だと思うけど、子供はいたほうがいいもの」</font></div><div><font size="2">「結婚したら、早く子供を作ろう」</font></div><div><font size="2">「それがいいわね」</font></div><div><font size="2">　そういって、貴子は梅畑を見渡した。「来年の春になったら、ここに家を建てるのね」</font></div><div><font size="2">「そして、秋には結婚」</font></div><div><font size="2">「来年は人生の一大イベントが続くわ」</font></div><div><font size="2">「いまから楽しみだ」</font></div><div><font size="2">「ついでだから、家が完成したらここで</font><font size="2">新築祝いもやりましょうよ」</font></div><div><font size="2">「僕は構わないけど、だれを招待するの?」</font></div><div><font size="2">「洋行さんの両親に、恵理と恵理の旦那さんと光多君。それに、私の兄と義姉さん。それぐらいかな」</font></div><div>「大事な人を忘れていないか?」</div><div>「だれ?」</div><div>「貴子さんのご両親」</div><div>「いけない。一番大事な人を忘れていたわ」</div><div>　貴子は舌を出しておどけてみせた。</div><div>&nbsp;</div><div>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　完</div><div>&nbsp;</div><div>　　　　　　　　　　　　　　　　　　最後まで読んでいただき、誠に感謝です。</div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404457.html</link>
<pubDate>Tue, 26 Feb 2013 16:14:49 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　32</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">「洋行さん、私ね」</font></div><div><font size="2">　貴子はしんみりとした口調に変えていった。「</font><font size="2">義姉さんと話しているうちに、両親を許そうという気になったの」</font></div><div><font size="2">「それはいいことだけど、でもどうして?」</font></div><div><font size="2">「だって、義理の娘がひどい仕打ちを許したのに、実の娘がいつまでも怒っているわけにいかないでしょう」</font></div><div><font size="2">「確かにね」</font></div><div><font size="2">「それで、今度の土曜日、紅葉狩りに行くのをやめて実家に行こうと思うの。いいかしら?」</font></div><div><font size="2">「もちろんいいさ」</font></div><div><font size="2">「悪いわね」</font></div><div><font size="2">「いや。紅葉狩りよりもそっちのほうが大事だ。僕もいっしょに行って貴子さんの両親に挨拶するよ」</font></div><div><font size="2">「ありがとう」</font></div><div><font size="2">　貴子は少し泣きそうになった。「これでなんのわだかまりもなく洋行さんと結婚できるわ」</font></div><div><font size="2">「そうだね」</font></div><div><font size="2">　洋行はうなずいていった。「ところで、貴子さんの義姉さんはいつごろ人工受精をするんだろう?</font><font size="2">」</font></div><div><font size="2">「さっき聞いた話だと、近いうちにやるらしいわ」</font></div><div><font size="2">「成功するといいな」</font></div><div><font size="2">「ええ。でも、失敗することが多いみたい。義姉さん、『もしも子供ができなかったら、貴子さんの子供を養子にもらいたい』って笑いながらいっていたわ。本気なのか冗談なのか分からなくて、私、返事に困ってしまったわ」</font></div><div><font size="2">「本気かもしれないよ」</font></div><div><font size="2">「一人目か二人目が産まれたあと、『次に産まれる子供を養子にほしい』っていわれたら、洋行さんはどうする?」</font></div><div><font size="2">「僕はそのときになってみないと分からないけど、僕の両親はきっと反対するだろうな」</font></div><div><font size="2">「そうね」</font></div><div><font size="2">「貴子さんの両親はどうかな?」</font></div><div><font size="2">「私が産んだ子供なら、血のつながりがあるから歓迎すると思うわ」</font></div><div><font size="2">「そうか。で、貴子さんは?」</font></div><div><font size="2">「私?　私は……」</font></div><div><font size="2">　貴子は少しのあいだ考え込んだ。「兄と義姉さんにどうしてもって頼まれたら断り切れないと思う」</font></div><div><font size="2">「自分の子供を手放すのは辛いけど、子供のいない夫婦の寂しさを考えると、僕も断り切れないかもしれないな」</font></div><div><font size="2">「洋行さんならそういってくれると思ったわ。でも私、いったん約束したあとで、自分のおなかの中でだんだん大きくなっていく子供がいとしくなって、手放したくなくなったりしたらどうしましょう」</font></div><div><font size="2">「義姉そんに子供ができないと決まったわけじゃないし、そんなことを心配するのはまだ早いよ」</font></div><div><font size="2">「それもそうね」</font></div><div><font size="2">「いまは人工受精がうまくいくように祈っていようよ」</font></div><div><font size="2">「ええ。私、一生懸命に祈るわ」</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</font></div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404449.html</link>
<pubDate>Sun, 24 Feb 2013 16:29:18 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　31</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">「チョキン。チョキン」という、和夫が剪定鋏を使う小さな音が聞こえてきた。</font><font size="2">恵理と光多はまた、鬼ごっこを始めた。キャーキャーと騒ぎながら逃げる光多を、恵理が楽しそうに追いかけている。</font><font size="2">貴子はまだ同じ場所で携帯電話を使っている。自分が話すよりも義姉の話を聞いているほうが多いようだ。洋行は悪いことばかり想像し、</font><font size="2">取り返しのつかないことが起こっていなければいいが、と願っていた。</font></div><div><font size="2">　義姉との話を終えた貴子が戻ってきた。</font><font size="2">思いのほか明るい顔をしている。</font><font size="2">実家にトラブルが起こったのではなさそうだ。</font><font size="2">洋行はそう思い、とりあえずほっとした。</font></div><div><font size="2">「義姉さんの話、なんだったの?」</font></div><div><font size="2">「またちょっと、いざこざがあったんですって」</font></div><div><font size="2">「いざこざ?」</font></div><div><font size="2">　洋行は腑に落ちなかった。</font></div><div><font size="2">「ええ。でも、そのおかげで問題が解決したそうよ」</font></div><div><font size="2">「どういうことなんだ?」</font></div><div><font size="2">「昨日、兄夫婦の話をしたでしょう」</font></div><div><font size="2">「ああ。子供ができないので、ドナーの精子を使って人工受精をするとかしないとかという、あの話ね」</font></div><div><font size="2">「そう。それで、義姉さんははっきりとはいわなかったけど、兄が洋行さんにあることを頼もうとしていたようなの」</font></div><div><font size="2">「僕に精子の提供者になってくれということか?」</font></div><div><font size="2">「結果的にはそういうことになるけど、私の両親が人工授精に反対しているので、兄は義姉さんと相談してそういう医学的な方法ではなく、直接に……」</font></div><div><font size="2">　洋行は貴子のいいたいことを察した。</font></div><div><font size="2">「まさか」</font></div><div><font size="2">「そのまさかなのよ。兄夫婦は、人工授精をせずに子供が生まれた、と両親に思わせたかったようなの。それで、近くに適当な人がいなくて洋行さんの名前が出たらしいわ」</font></div><div><font size="2">「なるほどね」</font></div><div><font size="2">「こんなことを頼めるのは義理の弟になる洋行君しかいない、と兄は思ったようだけど、やはりどうしても頼めなかったのよ。まあ、当然といえば当然だけど」</font></div><div><font size="2">「人間、切羽詰るとなにを考えるか分からないね。で、いざこざというのは?」</font></div><div><font size="2">「洋行さんに頼むのを諦めた兄が、一昨日の夜、改めて両親に人工授精の話をしたらしいの。そのとき、母は反対しただけだったけど、父は反対した上に、『これで我が家の血筋は絶えてしまう』と不平を漏らしたそうなの。</font><font size="2">それが原因で兄と父が口論になって、『子供が産まれないのは俺のせいだ。人工授精のどこが悪い。この世の中には血のつながりよりも大事なものだってあるんだ。あくまでも反対するつもりなら、俺は女房を連れてこの家から出ていく。よそで子供を作って育てる』と兄が怒鳴ったんですって。そうしたら、</font><font size="2">母はもちろん父もその剣幕に驚いて人工</font><font size="2">受精に反対するのをやめ、</font><font size="2">兄夫婦に対してももとのとおり優しくなったというのよ。</font><font size="2">『昨日報告しようかと思ったけど、一日様子を見てからのほうがいいと思い返して今日電話をしたの』と義姉さんが嬉しそうにいうから、『私の両親を許したの?』と訊いたら、『もちろんよ』と答えたわ。それにしても、兄も思い切ったことをいったものね。私、兄を見直したわ」</font></div><div><font size="2">「僕も貴子さんのお兄さんを見直したよ」</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく　　　　</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404443.html</link>
<pubDate>Sun, 24 Feb 2013 15:11:58 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　30</title>
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<![CDATA[ <div>　剪定に難儀している洋行のところに、<font size="2">「一休みしよう」と和夫がいいに来た。</font><font size="2">洋行はやれやれという思いで剪定を中断すると、</font><font size="2">梅の枝を片づけている貴子に声をかけ、&nbsp;そのあと鬼ごっこをしている</font><font size="2">恵理と光多に声をかけた。</font></div><div><font size="2">　休憩小屋の前に集まり、みんなで缶コーヒーや缶ジュースを飲んでいると、洋行の車の中から携帯電話の着信メロディーが聞こえてきた。</font></div><div><font size="2">「あれは貴子さんの携帯だな」</font></div><div><font size="2">　洋行が耳を澄ましていった。</font></div><div><font size="2">「そうね。私のだわ」</font></div><div><font size="2">　貴子も耳を澄ましていった。「だれからかしら?」</font></div><div><font size="2">「きっと東京にいる彼氏からよ」</font></div><div><font size="2">　恵理がからかった。</font></div><div><font size="2">「違うわよ。たぶん会社の友達からよ」</font></div><div><font size="2">　そういうと、貴子は洋行の車に近づき、助手席側のドアを開けた。</font></div><div><font size="2">「兄さん、電話の相手がだれだか気になるでしょう」</font></div><div><font size="2">　恵理は今度は洋行をからかった。</font></div><div><font size="2">「別に気にならないよ」　</font></div><div><font size="2">　そういいながらも、洋行は少しばかり気になり、貴子の様子を窺った。</font></div><div><font size="2">　貴子は携帯電話で話し始めるとすぐ、畏まった態度で</font><font size="2">見えない</font><font size="2">相手に頭を下げた。</font>その丁重な応対ぶりから、<font size="2">会社の友達からではなさそうだな、と洋行は思った。</font><font size="2">貴子は携帯電話</font><font size="2">を持ったまま</font><font size="2">戻ってきて、「義姉さんからよ」と洋行にいうと、</font><font size="2">その場から離れていった。実家でまたなにかトラブルが起こったのに違いない。</font><font size="2">洋行はそう思い、心配になった。</font><font size="2">恵理も顔を曇らせている。</font></div><div><font size="2">「貴子さんの義姉さん、なにかあったのか?」</font></div><div>　事情を知らない和夫が怪訝そうに訊いた。</div><div>　どこまで話していいか分からず、洋行は黙っていた。恵理も戸惑い気味に黙っている。光多が貴子のいるほうに駆けていった。「駄目よ」と叫んで、恵理があとを追いかけていった。洋行が見るとはなしに見ていると、光多に追いついた恵理はしゃがんでなにやら話し始めた。二人の向こうには貴子がいる。新居の建設地近くで携帯電話を使っている。遠くてはっきり分からないが、貴子の表情は深刻そうだ。</div><div>「まあ、いろいろあるんだろう。貴子さんが戻ってくるまで、洋行はここで待っていてやりなさい」</div><div>　そういうと、和夫は剪定中の梅の木に向かった。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;</div><div>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</div><div>&nbsp;</div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404436.html</link>
<pubDate>Sat, 16 Feb 2013 16:01:14 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　29</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">「それはそうと兄さん」</font></div><div><font size="2">　恵理が話を続けた。「切る枝を決めるのにずいぶん時間がかかるわね」</font></div><div><font size="2">「昨日始めたばかりなんだから、そんなに手際良くはできないよ」</font></div><div><font size="2">「それにしても時間がかかりすぎるわ」</font></div><div><font size="2">「剪定はだれにでもできるというもんじゃない、といったのは恵理だよ。それだけ難しいんだ」</font></div><div><font size="2">「私、そんなことをいってないわよ」</font></div><div><font size="2">「いや。昨日、確かにいった」</font></div><div><font size="2">「覚えてないわ」</font></div><div><font size="2">「覚えてないのなら、それでもいい。文句があるならお手本を見せてみろ」</font></div><div><font size="2">　そういって、洋行は剪定鋏を差し出した。</font></div><div><font size="2">　恵理はそれを無視して、洋行が剪定している梅の木を眺めた。切る枝を探しているようだ。</font><font size="2">恵理なんかに切る枝と残す枝の区別がつくわけはない。洋行は腹の中でそうせせら笑った。</font></div><div><font size="2">「縦に伸びているあの枝も切ったほうがいいわね」</font></div><div><font size="2">　恵理が一本の直立した枝を指差していった。それはさっき、洋行が切るか切らないか迷った末、結局切らずにおいた枝だ。</font></div><div><font size="2">「どうしてあの枝を切るんだ?」</font></div><div><font size="2">「だって、お父さんが剪定した梅の木には、ああいう枝は一本もないわよ」</font></div><div><font size="2">　恵理にそういわれてみると、確かにそんな気もした。</font><font size="2">恵理ものんびり遊んでいるだけじゃないんだな</font><font size="2">と思いながら、</font><font size="2">洋行は恵理が指摘した枝を選定鋏で切り落とした。枝を一本切っただけなのに、梅の木全体がすっきりしたように感じられた。</font></div><div><font size="2">「恵理のおかげで見栄えが良くなった。礼をいうよ」</font></div><div><font size="2">「お礼なんかよりも、兄さん」</font></div><div><font size="2">「なんだ?」</font></div><div><font size="2">「剪定の仕方をしっかり覚えてね」</font></div><div><font size="2">「生意気なことをいうな」</font></div><div><font size="2">「あら、怒られちゃったわ」</font></div><div><font size="2">　恵理は陽気にいった。</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　*　*　*</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</font></div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404430.html</link>
<pubDate>Fri, 15 Feb 2013 16:44:29 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　28</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">　昨日貴子に虎刈りなどといわれたので、</font><font size="2">洋行は心機一転し、</font><font size="2">今日は切る枝を慎重に見極めて</font><font size="2">剪定している。</font><font size="2">貴子は地面に散乱している梅の枝を剪定鋏で短く切り揃えている。ときどきなにかいいたそうに洋行のほうを見るが、あえてなにもいわない。</font></div><div><font size="2">　恵理は呑気に光多と遊んでいる。二人はさっきまで大声を出しながら鬼ごっこをしていたが、いまは梅畑の隅でおとなしくしている。そこにはコスモスの小さな群生地がある。光多はコスモスを珍しがっているだけのようだが、恵理のほうはコスモスの美しさに見入っているようだ。恵理もやはり女性なんだな、</font><font size="2">と洋行はつくづく感心した。</font></div><div><font size="2">　しばらくすると、コスモスに飽きた光多が、細長い梅の枝を拾って振り回し始めた。</font><font size="2">恵理が慌てて光多から離れ、「こら</font><font size="2">」と叱りつけた。</font><font size="2">光多は梅の枝を放り投げて逃げていった。一人になった恵理は、退屈そうな顔で</font><font size="2">洋行と貴子がいるほうに歩いてきた。</font></div><div><font size="2">「二人ともご苦労さんね」</font></div><div><font size="2">「恵理はいつも気楽そうでいいわね」</font></div><div><font size="2">　貴子が手を休め、苦笑まじりにいった。「少しぐらい手伝ったらどうなの」</font></div><div><font size="2">「恵理が手伝うわけないよ」</font></div><div><font size="2">　洋行が剪定をしながらいった。</font></div><div><font size="2">「兄さんはよく分かっているじゃないの。どうせこの梅畑は兄さんと貴子のものになるんだから、二人が働けばいいのよ。ね、兄さん、そうでしょう?」</font></div><div><font size="2">　洋行は</font><font size="2">返事をする代わりににやにやと笑った。</font></div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく　</font></div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404423.html</link>
<pubDate>Wed, 13 Feb 2013 17:12:28 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　27</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">　洋行は二人と同じ気持ちだったが、</font><font size="2">恵理はそういう話には興味さえないようだった。</font><font size="2">毎日光多に手を焼いているからだろう。</font><font size="2">和夫が話を続けようとすると、恵理はそれを遮るように口を開いた。</font></div><div><font size="2">「そんな話よりもお父さん、梅の木をよく六本も切ったわね」</font></div><div><font size="2">「ああ。あれか」</font></div><div><font size="2">　そういって、和夫は新居の建設地のほうを一瞥した。「あれはまあ、貴子さんへの感謝の気持ちだ。それに、貴子さんにはここで快適に暮らしてもらいたいからな」</font></div><div><font size="2">「貴子はいいわね」</font></div><div><font size="2">　恵理はあてつけがましくいった。「でもお父さん、私にもこの梅畑を相続する権利があるんじゃないの?」</font></div><div><font size="2">「恵理もここに住みたかったら、家を建てて住めばいい。梅の木なら何本でも切るよ」</font></div><div><font size="2">「できればいますぐそうしたいけど、私の旦那は東京に仕事があるから、ここに住むのは老後のお楽しみということになりそうだわ」</font></div><div><font size="2">「それなら、当分は東京にいるしかないな」</font></div><div><font size="2">「私と旦那が老後を迎えるまで、ここの管理は兄さんと貴子に任せるわ」</font></div><div><font size="2">「うるさい小姑がいるから、僕と結婚する貴子さんはいろいろと大変だ」</font></div><div><font size="2">　洋行が洗車の手を休めていった。</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　*　*　*</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404418.html</link>
<pubDate>Wed, 13 Feb 2013 14:28:54 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　26</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">　いくぶん疲れた様子の和夫が光多を連れて戻ってきた。</font><font size="2">光多は栗が山盛りに入った和夫の作業帽子を両手で抱えるようにして持っている。</font><font size="2">梅畑に隣接した雑木林で栗拾いをしてきたのだろう。</font><font size="2">光多はその作業帽子を古椅子の上にそっと置いた。</font></div><div><font size="2">「ずいぶん拾ったわね」</font></div><div><font size="2">　貴子が珍しそうに栗を見ながらいった。</font></div><div><font size="2">　光多は誇らしそうに栗をひとつつかみ、それを貴子のほうに差し出した。</font></div><div><font size="2">「これ、やる」</font></div><div><font size="2">「ありがとう」</font></div><div><font size="2">貴子は栗を受け取ると、光多の後ろにいる和夫に目を向けた。「これは生でも食べられますか?」</font></div><div><font size="2">「食べようと思えば食べられますが、この山栗は茹でて食べたほうが甘くておいしいですよ」</font></div><div><font size="2">「そうですか。それにしても、たくさん落ちているんですね」</font></div><div><font size="2">「昔は近所の子供たちがよく拾いに来ましたが、いまはほとんど来ませんから、たくさん落ちています」</font></div><div><font size="2">「里山で遊ぶ子供たちが減ったということですか?」</font></div><div><font size="2">「減ったというより、いなくなったといったほうがいいかもしれません」</font></div><div><font size="2">「寂しい話ですね」</font></div><div><font size="2">「ええ。寂しい話です」</font></div><div><font size="2">　そういうと、和夫は少し間を置いて話を続けた。「昔、私がまだ若かったころは、会社が休みの日に当時健在だった私の両親とここで畑仕事をしていると、</font><font size="2">どこからともなく子供たちの声が</font><font size="2">聞こえてきたものです。</font><font size="2">あのときはまたなにか悪さをしていると腹を立てたものでしたが、</font><font size="2">こうして子供たちの声が聞こえなくなってみると、</font><font size="2">少しぐらい悪さをしてもいいから子供たちの声が聞きたいと思います。</font><font size="2">子供たちの元気な声というのは、社会の財産なのかもしれません」</font></div><div><font size="2">「里山に子供たちの元気な声が戻ってくるといいですね」</font></div><div><font size="2">「私もその日を心待ちにしています」</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</font></div>
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<link>https://ameblo.jp/higashi410/entry-12503404410.html</link>
<pubDate>Wed, 13 Feb 2013 11:53:09 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　25</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">「どうやら貴子にはもう少し時間が必要なようね」</font></div><div><font size="2">　そういうと、恵理は表情を和らげた。</font><font size="2">「話は変わるけど、貴子、ここでうまくやっていけそう?」</font></div><div><font size="2">「それは大丈夫よ」</font></div><div><font size="2">　貴子は明るい口調に変えていった。「洋行さんの両親は優しいし、畑仕事も楽しいから」</font></div><div><font size="2">「その話、聞いたわよ。貴子、兄さんに会いに来るたびに畑仕事を手伝うそうね。お父さんもお母さんも喜んでいたわよ。私も兄さんと結婚してくれるだけでも御の字なのに、畑仕事まで手伝ってくれるなんて嬉しいわ」</font></div><div><font size="2">「私、ここで暮らすようになったら、本格的に野菜を作るつもりなの」</font></div><div><font size="2">「そうなの。でも、農業は貴子が思っている以上に大変な仕事よ」</font></div><div><font size="2">「大変なのはどの仕事もみんな同じ。問題はその大変なことを楽しいと思えるかどうかよ。会社の仕事は少しも楽しいとは思えないけど、畑仕事は楽しいと思えるわ。恵理、私ね、季節屋になるの」</font></div><div><font size="2">「季節屋?」</font></div><div><font size="2">「ええ。季節に合わせて野菜をたくさん作って、それを売るの」</font></div><div><font size="2">　恵理は不可解そうな顔をした。</font></div><div><font size="2">「貴子、なんでそんなに畑仕事が好きになったの?　昔の貴子からはとても想像できないわ」</font></div><div><font size="2">「だから、さっきいったでしょう。楽しいからよ」</font></div><div><font size="2">「それだけなの?」</font></div><div><font size="2">「正直にいえば、洋行さんの両親に気に入られたいから、&nbsp;という理由もあるわね」</font></div><div><font size="2">「そういう素直な気持ちになれる貴子が羨ましいわ」</font></div><div><font size="2">「私は恵理が羨ましいわ。あんな素敵な両親がいて」</font></div><div><font size="2">「義理とはいえ、その素敵な両親の娘になるんだから、責任重大よ」</font></div><div><font size="2">「そうね。これからもがんばるわ」</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</font></div>
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<pubDate>Tue, 12 Feb 2013 17:08:59 +0900</pubDate>
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<title>秋日小景　24</title>
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<![CDATA[ <div><font size="2">　光多に連れられていったまま、和夫がなかなか戻ってこないので、洋行は洗車をすることにした。恵理と貴子はさっきから、休憩小屋の前にある古椅子に腰かけて話をしている。</font></div><div><font size="2">「ところで、夕べの話なんだけど」</font></div><div><font size="2">　会話が途切れたところで、恵理がいった。</font></div><div><font size="2">　洋行にはなんの話かすぐに分かった。</font><font size="2">昨夜恵理は、和夫と直子が早めに寝たあと、洋行を実家に連れていくよう貴子に勧めた</font><font size="2">(貴子が両親との不和から洋行を実家に連れていかないのを知っていて、恵理もずっとそのことを気にかけていたのだ)。</font><font size="2">すると貴子は、</font><font size="2">「私もその気になりかけていたけど、実家に行くのは当分見合わせることにしたの」といって、義妹から聞いた話を伝えた。兄の無精子症と兄夫婦に対する両親の態度の変化についてだ。話を聞き終えた恵理は、困惑した表情を浮かべ、「そんなことがあったの。貴子の両親をけなすようで悪いけど、ずいぶんひどい話ね」というと、それからは洋行を実家に連れていくことを勧めなくなったのだった。</font></div><div><font size="2">「私、布団に入ってから、いろいろ考えてみたの」</font></div><div><font size="2">　恵理が続けていった。「貴子の兄さん夫婦には申し訳ないけど、いまが両親との関係を改善する一番いい時期だと思うわ。両親に腹を立ててばかりいないで、貴子のほうも折れてうちの兄を実家に連れていきなさいよ。そうすれば、改善の兆しぐらいは見えてくると思うわよ」</font></div><div><font size="2">　恵理のいうとおりかもしれない。洋行は洗車をしながらそう思い、貴子の様子を窺った。貴子はうつむいて思案している。</font></div><div><font size="2">「恵理のいいたいことは分かるけど、兄さんと義妹さんのことを考えると……」</font></div><div><font size="2">「兄さん夫婦のほうは、貴子がそんなに心配しなくても、たぶん大丈夫よ。ドナーの精子を使って子供が産まれれば、貴子の両親だって血のつながりなんて気にせずにかわいがると思うし、そうなれば兄さん夫婦と両親の関係も元に戻るに違いないわ」</font></div><div><font size="2">「そうかしら?」</font></div><div><font size="2">「きっとそうよ。兄さん夫婦のことを思いやる貴子の気持ちも分かるけど、いまは自分が幸せになることを第一に考えるべきよ。そのためにはいつまでも両親を憎んでいては駄目。両親を憎み続けて幸せになった人なんて一人もいないのよ」</font></div><div><font size="2">「それは分かっているけど……」</font></div><div><font size="2">「貴子、あまり深く考えすぎないで」</font></div><div><font size="2">「そうね。でも……」</font></div><div><font size="2">　&nbsp;貴子は踏ん切りがつかないようだった。</font></div><div><font size="2"></font>&nbsp;</div><div><font size="2">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく</font>&nbsp;</div>
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<pubDate>Mon, 11 Feb 2013 14:08:15 +0900</pubDate>
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