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<title>愛されたいと願った（、憎まれても仕方ないけど）</title>
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<description>此処は、雛向の自己満足ブログです。別名、創作部屋とも呼びます。主に小説・詩を書いていたり。</description>
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<title>プールダイバー・ダイブ</title>
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<![CDATA[ <br>　こぽこぽこぽ……・。<br>　気持ちの良い水音がする。誰かが潜っているのだろう。深い深いプールの中を。<br>　今日は清清しいほど快晴で、誰しも海水浴がしたいと唸る暑さであった。そんな中、一人でプールを独占している少女がいる。彼女は長い金色の髪を掻き分け、色っぽくサングラスをし寝そべっていた。謂わば、彼女はお金持ちでプライベートルームを所持しているのだ。水がもともと好きだった彼女は、大規模なプールを両親に作って貰った。夏になると毎日のように飛び込み、そのまま二時間は水の中に潜んでいる。<br>　彼女はぱちんと親指と中指を弾いた。すると、家臣達がどこからともなく現れ、ジュースのようなものを持ってきた。<br>「あら、ご苦労様」<br>　当たり前と言う風に呟く彼女。だが、家臣達は厭そうな顔ひとつせず「有難う御座います」と囁き、またさっと消えてしまった。艶やかな横顔に年相応ではない水着。彼女は元々大人のような凛々しい顔立ちをしているが、実はまだ十四歳の若造なのだ。だがしかし、その風貌に騙される男性は少なくない。二十歳くらいに見えたりして、老爺にワルツに誘われたことだってあるし、何回も大人の男性に告白をされた。勿論、成人してると見てだろう。そして、実年齢を知ると血相を変えて逃げていく。そんな男性ばかりを、彼女は見てきた。<br>　彼女はグラスを傾け、それに映る自分を見つめる。昔のように輝いた瞳ではない。寧ろ、穢れている。この世の全てを軽蔑しているようなそんな瞳をしていた。そして、また彼女は金色の髪を掻き分ける。まるで涙を隠すようにうつむきながら……。<br><br>　がさごそ、何か音がする。彼女ははっとし、涙を止め即座に拭き「誰だっ」と大きな声を張り上げる。家臣達ではないのは確かであった。何故かと言うと草葉に隠れる家臣達はいない。恐らく、迷い込んでしまった子猫だろうと思い、彼女はそおっと歩き出した。子猫だったら飼ってやろうという考えが生まれる。すると、青年二人の囁き声が聞こえた。<br>「や、やばいぞ……」<br>「に……逃げられないよな」<br>「謝るか」<br>　彼女はその声が聞こえたので一瞬足を止めたが、行き成り怒りが込み上げてきたので、咳払いをひとつし声のトーンを低くして怒鳴った。<br>「其処にいるのは誰だ！　早く出てこないかっ。そうしないと、警備員を呼ぶぞ」<br>　勿論、脅しで警備員を呼ぶことなんて出来るわけがない。すると、其れが利いたのか、男二人はすっと手を上げてゆっくりと立ち上がってきた。顔立ちは普通で恐らくその服装からしても一般市民であろう。彼女はニヤリと笑うと息を吸い込もうとした。すると、一人の男がさっと動き彼女の口を塞いだ。<br>「すまん、お嬢。すこうし黙っててくれないか」<br>「そうそう。俺達は此処に遊びにきただけなんだよ」<br>　彼女は足をばたつかせ彼の掌を振り払おうと、必死に抵抗している。しかし、男の力には敵わなく、其の儘両腕を拘束されてしまった。余り痛くないのは彼らなりの配慮であろう。男二人は何事もなかったように水を掛け合っている。彼女が思ったのはただひとつ、暑苦しい。<br><br>「お、お前らっ！　もう一時間は過ぎている。早く帰れ」<br>「そう言われても……。んじゃ、約束してくれよ」<br>　一人の男が「よいしょ」と呟きながら這いあがってくる。彼女は一歩後退りをして簸たと精一杯にらみつけた。其れにあわせるようにもう一人の男も這い上がってくる。<br>「また此処に来ていいか？　次は一緒に遊ぼうぜ」<br>　純粋無垢な彼らの表情。恐らく、年端は二十歳を過ぎているだろう。しかし、その瞳の輝きは今の彼女よりも輝きを放っており、荒んでなどいなかった。「嫌だ」といったら、勿論、素直に引き返してくれるかもしれない。だが、彼女は何故か寂しく思えた。<br>「い、いいわ。それより先に縄を解いてよ」<br>「ああ、それね。ちょっと手を動かせばすぐに解ける。だからいいだろ」<br>「俺達だってめいっぱい遊びたいんだよ」<br>　彼女は言う通り少し手を動かした。すると、容易く縄は解けた。彼女は立ち上がり、髪を掻き分けて、サングラスを外す。可憐で美しい顔立ちが露になり彼らの頬は真っ赤に染められた。ふふっと彼女は笑って腰に手を当てた。<br><br>「いいわ。私の名前は大道寺エミリ。あなた達は？」<br>「お、俺はマサト」<br>　ちょび髭が生えており、もう一人の男よりも体つきは良い。髪形は彼女と同じ金髪だ。しかし、染め上げており、不良という二つ名が似合う男だ。だが、性格はとても気遣いがよく優しく無邪気である。<br>「俺はケンジ」<br>　少し背が低く頼りなさを感じる顔をしている。だがしかし、物凄く太い眉毛が特徴的で愛らしくも見える。嵌ると面白いというのはこの男だろう。<br>「マサトとケンジ……」<br>　そして、彼女の瞳には輝きが少しだけ蘇った。<br><br>　こぽこぽこぽ……。<br>　やっと見つけた。水の中以外の、素敵な私のタカラモノ。<br><br>fin<br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10114593768.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2008 22:13:54 +0900</pubDate>
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<title>ともだちになれない季節</title>
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<![CDATA[ 　<br>　夏、というのはひとつの恋物語が出来上がる。と何処かで聞いたことがある。といっても、私は其れは信じることはない。誰かが言っていたことなんて大抵は嘘で作り上げられているのだ。本当のことなんてまったく無いといっても過言ではないほどだ。こんなことを言えるのは、遥か昔の夏に淡い恋をしたからである。とても哀しい夏の出来事だった。<br><br>．<br><br>　確か、私が中学生のころだったと思う。あの頃は流行っていた可愛らしい三つ網をしていた。けれど、幾ら髪型が可愛くてもその人の顔立ちなどを変えることなどないのだ。私は不細工で男子に告白されたことも、碌な女友達もいなかった。性格も大してよくないし、顔なんて酷いものだ。大きな鼻と小さな瞳に、大きく見せるための眼鏡。大きな鱈子唇に、肌は物凄いがさがさだ。当時の呼び名は「怪獣」だ。嗚呼、なんて哀しいのだろうか。その頃は、心もなにもない状態だったような気がする。私に対して優しくしてくれる人なんていないんだ、と思ってた頃だった。けれど、その期待はいい意味で裏切られたのである。<br><br>　いつものように過ごす日々。神々しいほどの青い空。だだっ広い背中にシャープペンシルを突っつかれると、私は授業だということを忘れて「ひえっ」という奇妙な声を出した。周りから冷たい視線が集まる。顔を赤らめて辱めを受けていると、もう一度シャープペンシルを突っつかれた。酷い悪戯だ。なので、私は静かに涙を流すことにしたと決意した直後、やさしい声で誰かが名前を呼んだ。<br>「春日さん」<br>　教師ではない。聞いたこと無い声。やさしく澄んだ男の子の声だ。思わず後ろを振り返る。すると、無邪気な笑みを浮かべてる見たことの無い男子生徒がいた。この人はまだ私を見たことが無いから分からないのだ。しかし、その笑みは揺るがなく、とても天使のような顔立ちをしていた。私の顔を見ても平気だと言うのだ。<br>「ねえねえ、この問題分からないから教えてくれない？」<br>「な、なんで私……？」<br>「春日さん、頭いいって評判だから」<br>　少年のようなあどけなさの残る笑顔。癒される、というのはこういうことなんだろう。私の少しの黒いものが浄化されていった気がした。周りから見ると、美少年と野獣といった感じだろう。その男子生徒は本当に容姿端麗で一見、チャラ男に見えるが実は誠実な男子だった。名前は折笠君というらしい。下の名前は教えてくれなかったけど、いつか分かることだ。そういえば、こんな人いたっけ。などという疑問もちらほら頭を過ぎったが、気にしないことにした。そして、いつからか恋心を抱くようになった。<br><br>　友達といるよりもその人といる方が楽しくて、面白くて、お弁当の時間も休み時間も折笠君とばかり話していた。友達からは「どうしたの」なんて聞かれたりしたけれど、普通にはぐらかす。<br>「折笠君と話したいの」<br>　なんて言ったら訝しげな表情をされて、その日話してくれなくなる。その瞳はおかしな人を見るような目つきで、背筋を震わせた。<br>　そして、「春日さん可愛くなったね」と言われ始めたのもその時期である。折笠君からもだけど、他の人達からも言われるようになった。だって、密かな努力をしているから。折笠君の為に、洗顔フォームで顔を洗うようになったし、コンタクトをつけるようにした。そしたら、肌はぴかぴかになったし、ほそっこい瞳も少しは大きく見えるようになった。唇や鼻は仕方ないとしても、瞳と肌を精一杯直した。すると、だいぶ変わった。友達も増えたし、男子生徒も近づいてきた。いつからか、折笠君と話す時間が少なくなっていった。<br><br>　夏休みが始まろうとする一日前。折笠君が「放課後話したいことがあるから」と、いつもと変わらないあの笑顔で告げてきた。けれど、声色は相当深刻なものを指していた。この誘いを断るわけにはいかない。私も、折笠君に伝えたいことが沢山沢山あるから。その日は授業時間が長く感じた。折笠君が話しかけてくれなかったのもあるし、放課後のことが気になって仕方がなくなったからである。先生の話も耳に通らなかった。ただ、動く時間だけを見ていた。それだけだった。そして、やっとのことで全校生徒が帰っていった。嗚呼、すがすがしい空気だけが教室を流れる。すると、黙っていた折笠君が急に口を開いた。<br><br>「ねえ、春日さん。僕が君の事を好きって言ったら、どうする？」<br>「どうする……って」<br>　私が期待していた言葉。なのに、何故か恐怖心を感じる。乾いた唇を舐めて、次の言葉をつむごうとした瞬間、折笠君が休まずに言葉を続けた。<br>「やっぱり、ともだちのままって……厭かな？」<br>「なんでそんなこと……」<br>「だって、春日さん。僕のこと好きなんでしょ？　いっつも聞くよ。君の友達から」<br>　怪しい笑み。どうしたのだろう、いつもの折笠君ではない。<br><br>「でも、御免ね。君みたいな人と恋人にはなれないんだ。期待させちゃって御免ね」<br>「え……？」<br>　何を言ってるんだろう、この人は。思考回路が一時停止に落ち込んだ。<br>「可愛くなろうとしても、全然可愛くないよ。この三つ網、引きちぎってやりたいくらい。あ、もう時間だ。じゃあね、春日さん」<br><br>　嗚呼、世界が滲む。周りの景色も全て何もかも。最初から怪しいとは思っていた。折笠君が稀に見せる、あの表情は幻影なんかじゃなくて、友達が稀に見せるあの怪しい笑みも、全て仕組まれていたことだったんだ。なんて私は莫迦だったんだろう。トイレに行って、鏡を見てみる。嗚呼、魔法は解けてしまったようで醜い顔をしている。私は酷く涙で顔を濡らした。<br>「折笠君……。ともだちじゃなくて……」<br>　嗚呼、可愛そうな娘。世界中がそういっているような気がして、酷く心が蝕まれた。<br><br>．<br><br>　だから、私はもう恋なんてしない。男友達も作らないし、恋人も作らない。結婚もしない。別に困ることは無いと思う。恋人にもともだちにもなれない季節なんて、要らない。夏なんてもう……要らない。<br><br><br>fin<br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10114593458.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2008 22:12:55 +0900</pubDate>
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<title>放課後天体観測</title>
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<![CDATA[ <br>「……よし、此処でいいか」<br>　一人の青年が望遠鏡を立てた。容姿はとても小柄で、顔つきはまるで小学生のようなあどけなさがある。しかし、この男はこの高校の生徒であり、一応生徒会長であったのだ。名は東真之介。サボリ魔、遅刻魔などで評されている、所謂、餓鬼大将である。生徒会長であるのにも関わらず、校則に則ろうとしないし、いつも悪さばかりを行っている。先生達からの目は勿論、悪役である。<br>　一人佇む一人の少年。今の時刻は凡そ六時で、星空が瞬き始めるのは七時くらいだろう。彼は、此処に天体観測する為にやってきた。勿論、屋上は入ってはいけない場所だし、最終下校時刻はとっくに過ぎているのだ。なのに、彼は不法侵入をし勝手に寝そべって今にも暗くなりそうな空を見つめている。<br><br>「あ、そいえばあいつと約束したなあ……」<br>　と彼が思いついたように呟くと、可愛らしい少女の声が聞こえてきた。<br>「しーんのすけっ！」<br>　溌剌とした発声のいい声。容姿も端麗でスタイル良し、真之介より遥かに高いその身長。だが、真之介は「うげっ」と苦虫をつぶしたような顔をした。そして、真之介は起き上がり異議を唱えた。<br>「な、なんでお前が此処にいるんだよっ！」<br>「なんでって……。勿論、みほの代わりに決まってるじゃない」<br>　真之介が一緒に見ようと約束したのは、ガールフレンドの鈴木みほであった。しかし、現れたのは天敵である三河佳代であった。小学生のころからの幼馴染でいつも顔を合わせば喧嘩ばかりである。だが、周りの人達からは何よりも楽しそうに見えるらしく、誤解を受けている。佳代は真之介の視線を遮って隣にちょこんと座った。<br><br>「ちょ、俺は許可してないぞ……」<br>「あ、真之介、みてみて。ホラ、すっごい綺麗よ」<br>　星空が瞬く時間が来てしまった。真之介は項垂れたが、すぐにその星空に視線をずらした。すると、顔が火照っていくのが判る。<br>　――嗚呼、どうせまた風邪か。<br>　星空の光にあたる佳代の顔をずっと見ていた。いつもは判らないが、とても綺麗な横顔で星空を見るのを忘れてしまうほどだった。それからだった。彼の人生の歯車が狂い始めたのは……。<br><br>．<br><br>「へー、先生にもそんなロマンティックな過去があったんですね」<br>「ああ。そうだぞ」<br><br>　木刀を持ち、真之介は自慢らしげに話していた。おそらく説教の途中だったのだろう。しかし、話は逸れてしまっていた。世間一般で言う、恋バナに花を咲かせてしまったのである。<br><br>「で、その佳代っていう人とはどうなったんですか？」<br>「いや。どうも。寧ろ、みほとうまくいったなぁ」<br>「はあ？」<br>「でも、星空は綺麗だったぞー。お前もどうだ、彼女と一緒にいくって言うのは……。あ、許されないな。うん」<br>「どっちですか……それでは、失礼致します」<br><br>　愛想を尽かれてしまった。生徒に愛想を尽かれるのは、教師の中で恐らく真之介くらいであろう。いつもは鬼と呼ばれている真之介も思い出話に花を咲かせると、態度は急変してしまう。みほや佳代の話になるとそれがすぐ手に取るように変わる。<br><br>「あ、ちょっと待てっ！　女と星空を見たらどうなるか教えてやるよっ！」<br>「はい？」<br>「ま、俺の場合は失敗したんだけどな……」<br><br>　――両思いに――<br><br> ．<br><br>「ね、真之介」<br>「あ？」<br>「これからもずっと友達として仲良くしてね」<br>「ああ。この星空にかけて誓ってやるよっ！」<br>「ふふふ。みほを幸せにしてやってねぇ」<br><br>　彼女の瞳からは大粒の涙が。彼の瞳には輝きが。嗚呼、まるで儚く切ない二人の想い。<br><br>fin<br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10114593174.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2008 22:12:29 +0900</pubDate>
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<title>アイスクリームトラップ</title>
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<![CDATA[ <p>　隣でアイスクリームを美味しそうに食べている彼女が、一人。勿論、払ったのは僕の方である。傲慢で強引で所謂、ツンツンしている彼女ははたから見れば最悪な人間であろう。しかし、僕にとってはたった一人の可愛らしい彼女なのである。彼女はベンチに座ってアイスクリームをやはり頬張っている。僕の熱い視線にも気づかずに、一生懸命に食べている。うっとりと眺めていたら、彼女は行き成り此方を向いた。無理矢理に一つ結びにした栗色の髪が少しだけ揺れ、先程まで美しく艶やかに細くなっていた瞳が途端に可愛らしく開く。僕は先程までとは違う胸の高鳴りを感じた。</p><br><p>「何見てるのよ」</p><p>　不機嫌そうなその表情。この熱帯だ。頬が赤く染まるのも仕方が無いし、額から汗を流すのも仕方の無いことだ。だがしかし、僕のこの胸の高鳴りはこの気温や気圧のせいではない。全ては彼女のトリップのせいだ。</p><p>「何でもないよ」</p><br><p>　僕は平然とそう答えた。しかし、彼女は納得いかないようで疑わしそうに僕を目を細くして見つめる。段々と顔が近づいていく。嗚呼、なんでこんなに彼女は意地悪なのだろう。しかし、彼女はそんな気は更々無いのだ。僕以上に鈍感で不器用で無愛想で意地悪でツンツンしている。なんて可愛らしいのだろう。じっと見詰め合っていると、いいムードになる。しかし、僕はアイスクリームを指差す。</p><p>「あ、アイスクリーム溶け始めてるよ」</p><br><p>　と、僕は滴り落ちるアイスクリームを掬ってその人差し指をそのまま口に運んだ。彼女の指を本当は舐めたかったが、そんなことをしたら殴られて終わるのがオチだ。そんなの、日ごろの経験で判っている。すると、彼女は焦って自分の指とアイスクリームを交互に舐め始めた。</p><p>　夢中に自分の指を舐めるその姿はとても可愛らしく、とても大人びていた。まるで、高校生の女子の表情ではない。僕はまた見惚れる。漸く、コーンにたどり着いた彼女はふっと一息をついてまた、僕を睨みつけるように見つめる。「何？」と僕は意地悪く言い放った。すると、彼女は「何でもない！」とそっぽを向いてしまった。また、髪が可憐に揺れる。振り向いたらすぐにコーンを口の中へ運ぶ。僕達の前では、子供たちがわいわいと水浴びをしている。</p><br><p>「あ、亜美ちゃん。水浴びしようよ。それ食べたら」</p><br><p>　振り向きも、口を開けようともしない。けれど、僕は答えを急かさない。だって、彼女の答えは絶対にイエスだと決まっているからだ。</p><br><p>「……。今度、海行こうって約束したじゃない」</p><p>「ああ、でも、今じゃなきゃ僕は厭なんだ」</p><p>「……判ったわよ、しょうがないわね」</p><br><p>　君はまたそんなこと言う。でも、最初っから水着をもって着ていた。なんて可愛らしいんだ、なんて弄り甲斐があるのだろう。一生涯、君を愛すると誓おう。だって、こんなに僕の心を揺り動かしてくれるのは、最愛の君しかいないのだから。</p><br><p>「あーみちゃん」</p><p>「何よ」</p><p>「僕がトラップに掛かったから、次は亜美ちゃんが掛かってね」</p><p>　意味が判らなさそうに首を傾げる。だから、周りとか世間体とか一般常識とか気にせずに頬に口付けをしてあげた。すると、彼女は魔法にかかったように頬を赤く染める。きりっとした瞳で僕を睨みつける。多分、殴ってくるつもりだろう。だけど、僕は振り上げられた手を制止して即座に唇にキスを落とす。すると、彼女はうっとりし始めた。瞳をとろんとさせて、そのまま僕の言いなり。けれど、トラップに掛かったのは彼女じゃなくて僕のほうかもしれない。だって、甘く切ないアイスクリームの味が漂ってきたのだから。</p><br><p>fin</p>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10114592539.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2008 22:11:01 +0900</pubDate>
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<title>正しい夏期講習の受け方</title>
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<![CDATA[ <p>　みーんみーんみーん。</p><p>　虚しい蝉の声。暑苦しい教室の中には汗水たらし勉学をしている生徒が数名いる。机にまで汗がおよび、配布されたプリントがぐしゃぐしゃになっている者もいたり、今にも倒れそうな者もいる。そんな彼等を監視しているのは竹刀を持っている、国語科の剣道部顧問。この学校で一番厳しいと噂されている。東真之介が彼のことである。寝ている者はいないか、また、サボっている者はいないかを巡回して警戒をしている。生徒達は、胸を高鳴らせながら机に向かっている。誰一人として口を開こうとする者はいない。</p><p>　緊迫した雰囲気の中、救世主が現れる。其れは、チャイムである。真之介はごほんと一つ咳払いをし大きな声を張り上げた。</p><br><p>「よし、後ろからプリントを集めて来い。迅速に、だぞ」</p><p>　竹刀を教卓に叩きつける。その気迫といったら恐ろしいもので、木で作られた教卓はすぐに軋んでしまう。彼等は一滴汗を流し、唾を飲み込む。後ろの者は顔を蒼褪めながら素早くプリントを回収する。真之介が言った一分後に、全てのプリントが回収されていた。彼は今日、初めて笑みを浮かべた。かと思いきや、また声を張り上げる。またもや、眉間に皺を寄せ、口をへの字に曲げているのだ。</p><br><p>「今日は一応、これにて解散っ、まだまだ勉強したい奴は座っていろ」</p><p>　席を立つ者は一人もいない。生徒達は物音一つ立てずに大人しく座っているのだ。真之介は満足そうに頷き、一旦教室から出て行った。おそらく、プリントを刷ってくるのだろう。生徒達は真之介が出て行った後、安堵の溜め息をついた後、一斉に生徒は彼の悪口を言い出した。教室中は一気に煩くなる。学級委員までもが一緒に真之介の悪口を言っている。誰も止めようとする人は全くいない。すると、一人の男子生徒がいきなり声を張り上げた。</p><p>「東先生がもうすぐ来るぞっ！」</p><p>　此処まで大きな声を出すと、真之介に丸聞こえになるのは百も承知であった。なので、その男子生徒はわざとらしく「先生」を強調して注意をする演技をした。生徒達は一気に静かになり、教室はまた落ち着きを取り戻した。先程までの熱気が消えないのか、彼等の額にはまた一筋、汗が流れる。大人しく気を付けをしていると、ご機嫌な真之介が顔を出した。その腕の中には沢山の藁半紙、つまり、英語のプリントがどっさりと詰まれている。彼等は項垂れた。だが、この人を止められる者はいない。ので、とりあえずシャープペンシルを右手や左手に取り、真之介が配るのを待った。</p><br><p>「よし、お前らが大好きな英語のお勉強だぞっ」</p><p>　やけに上機嫌なので、生徒達は盛大に腹を抱えて笑いたくなった。中には噴出しそうな者もいて危ない場面をあったが、なんとか彼等は助け合い、終了まで大人しく漕ぎつける事ができたのであった。</p><br><p>．</p><br><p>「全く、あの先生はなんであんなに偉そうなのよ。いつもいつも」</p><br><p>　鞄を振り回しながら、不服そうに頬を膨らましながら歩く女生徒。その隣には薄らと笑みを浮かべ「しょうがないよ」と暢気に言っている男子生徒。一見、和やかな雰囲気を醸し出しているが、女生徒の言い分と来たらとても黒く怖いものである。勿論、先生というのは真之介のことである。</p><br><p>「しょうがなくないわよ。……あんな大人にはなりたくない」</p><p>「そーだね」</p><p>「あー、もうっ！　楽しく騒ぎながら受けるのが夏期講習ってもんでしょ？　根本的に間違ってるのよ、あの人は」</p><p>　男子生徒はその微笑を絶やさずに、何も言わずに静かに頷いている。女はショートカットの髪を棚引かせ、後ろを振り向く。そして、考える暇も与えずに頬を引っ張り、抓る。</p><p>「あ、ん、た、も、ねっ」</p><p>「な、なにがあ？」</p><br><p>　みーんみーんみーん。</p><p>　虚しい蝉の声が、彼等の耳に届く。二人の夏期講習はまだまだ始ったばかりである。</p><br><p>fin</p>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10114592325.html</link>
<pubDate>Wed, 09 Jul 2008 22:09:25 +0900</pubDate>
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<title>企画：薇式シガレット提出作品</title>
<description>
<![CDATA[ <p><font color="#cccccc"><br></font></p><p>　僕はあの子のこと、忘れない。<br>　トマトのような真っ赤で今でも潰れそうなほっぺをしたあの子のことを。<br>　僕達は、忘れない。</p><br><p><font size="5"><font color="#ff0000"><font size="7">ト</font>マトみたいな頬っぺをした子</font></font></p><br><p>　恐らく、僕が小学生の頃のことだった。白井悟、という子が転校してきたのである。真っ赤に頬を染めて恥ずかしそうに先生の影に隠れて、彼は現れた。勿論、周りから笑いものにされた。「弱虫」だの「貧弱」だの。白井は痩せ細っていて小柄であり、性格も泣き虫で臆病者であったので、男子からの反感を唯一買っていた。だが、女子からの人気は高かった。虐めてる男子を見かけたら直ぐに成敗といった行為を行っていた。<br>　しかし、段々と悪戯はエスカレートしていった。<br>　始めは本当に些細なことだった。いつものように、僕達が休み時間に白井をからかっていた時、あまり可愛くの無い恰幅の良い女子が割って入り込んできたのだ。そして、野太い声で「やめなさいよ」と低く唸ったのである。その顔はまるでゴアラのようだったので隣にいた僕の友達が突然噴出し、笑い出した。</p><p>「おい、こいつゴリラっぽいぞー」</p><p>　小学生の単なる意地悪。だが、相手も小学生で硝子のような心を持っているのである。幾ら強そうな女であっても傷つくには決まっている。彼女はわんさか大きな声で泣き出したのである。しかし、僕達の笑い声は絶えない。白井はあたふたと回りを見渡して助けを求めている。その度に僕等の心と言うのは燃え上がっていく。<br>　その時うぐいすのような小さいけれど芯のある、強い声が耳に届いてきた。</p><p>「やめなさいよっ」</p><p>　僕以外の男子は全員黙りこくった。彼女の名前は河上ともえといい、クラス一の美少女であった。責任感が強く学級委員も務めているほどで、先生や他児童の信頼は厚い。そして、この学校で一番チヤホヤされる存在である。しかし、僕は可愛い子だとは思っていたけれどそんなに好意は持てなかった。最近、彼女に関するよからぬ噂が多発しているからである。其れは、僕達小学生には到底判りようのない、複雑な問題で先生に問い詰めてもはぐらかせるだけであった。けれど、彼女は精神的に参っているらしく、溜め息が増えてきた……と友人が話をしていたのを思い出す。<br>　いつものように吊り上った瞳は代わり映えの無い、強気な彼女を思い出させる。恐らく長年のファンは彼女の少しの変化も気づいてあろう。だが、僕には到底理解出来ようの無い興味の無いことだった。<br>　不名誉な渾名がついたゴリラを庇っているその姿はなんとも凛々しかったらしく、数々の男子は軽く舌打ちをしたが、そのまま引き下がっていく。唖然としていた僕は友達に引っ張られ無理矢理に着席させられる。もうすぐでチャイムが鳴りそうであのゴリラは着席していた。白井と河上さんだけはその場に立って楽しそうに何かを話していた。口の形から言えば「ありがとう」「どういたしまして」そんな短い会話。なのに、あんなに二人とも楽しそうに話している。<br>　恐らく、僕以外の男子も見ていたに違いない。だから、白井に対しての悪戯は徐々にエスカレートしていった。<br>　なんとも可哀想で仕方が無くなった僕は引き下がった。友人たちに蔑まされても、また誘われても一向に僕は手を組もうとはしなかった。徐々に笑顔が少なくなっていく白井に話しかけようともせず見て見ぬフリをしている僕が、一番僕の中で赦せなかった。そして、河上さんも日に日に溜め息が増えて言ってるような気がする。<br>　見ていられなくなった僕は先生に相談することに決めた。しかし、先生の答えも一点張りで中々頑固であった。</p><p>「白井君とみんな、仲いいわよ」</p><p>　先生がいつも言っている氷山の一角、まさにこのことであった。クラスが皆仲がいいと思っている。そんなことは、ないのに。白井はただ怖くて無理矢理引き攣った笑いを浮かべているだけなのに。そして、僕のストレスも日に日に積もっていった。<br>　そんな学校生活が始って一年。白井は笑顔を浮かべることは無くなっていった。女子に助けられてもお礼の言葉さえ言おうとはしなかった。しかし、彼女達は寛大な心で受け止めてやっていた。「しょうがないわ」、「大丈夫、白井君。私達は貴女の味方よ」そう声をかける女子、全てが偽善に思えて着て仕様が無かった。大半の女子が変わらない中、河上さんは変わっていた。虐げられている者を見ても、そっぽを向いてみて見ぬフリ。まるで僕を見ているようだった。<br>　四年生になり、初めての夏休みが始ろうとした。その時大それた事件がおきてしまった。<br>　社会化見学で博物館に行く時のことだった。いきなり白井が腹痛を訴えた。先生たちはえんやわんやの大騒ぎ。虐げていた男子も今は心配そうに彼を見つめているだけだった。漸く、現地に到着したと思ったら今度は長い行列。白井の顔は段々青くなっていく。僕等は皆、白井を見て同じように冷や汗を掻いた。我慢できなくなった白井は抱っこしていた先生の耳元で何かを囁く。先生は大層驚いた様子だったが、すぐに森の奥に行かせた。還ってきた彼はさぞご満悦な表情であった。そんな顔を見た他の児童たちは口々にブーイングを唱え始めた。</p><p>「僕達も我慢できませーん」<br>「白井君だけずるいと思いまーす。頭良くて可愛いからっていって差別はいけないと思いまーす」</p><p>　段々と加勢していく声、其れに反対の意義を唱える女子と教師達。また、僕と河上さんは哀れみの目で見るしかなかった。<br>　白井を見ると彼はわなわなと体を震わせている。見るとアスファルトに点々がついていた。白井の表情を確かめようとした瞬間、彼は大きな声を出した。勿論、その声は震えており泣いているのが手にとって判った。</p><p>「なんでみんな、喧嘩するの？　僕が悪いんじゃん。僕が嫌いだったら僕だけを虐めればいいじゃんっ」</p><p>　言葉が纏まっていない。しかし、誰よりも正義感が強く友達思いの彼は溜まっていた思いを遂に出すことが出来た。あの、辛そうな笑顔も何もかも総て僕達のことを思っての行為だったのだ。それに気づかずにいた僕は一体なんだったのだろう。見てみぬフリをして、どうやって此処を回避しようと思ったのだろう。自分がとても醜く思えてくる。白井も誰とも関わりたくない、そんな僕の我儘で衝突させることになってしまったのだ。幼い彼等達を。<br>　先生たちは酷く仰天している。しかし、子供達は冷静だった。視線は一気に白井の方に集まる。すると、一人の男子が声を出した。</p><p>「……。白井、御免。俺達、たぶん妬いてたんだよ。お前に。な、お前等」</p><p>　後ろを振り向いて同意を求める彼に他の男子たちは大きく頷いた。そして、女子達も何故か謝っていた。先生達は呆気にとられて何もいえない。クラスの状況が把握できなかった自分らに失望しているのか、それとも意味が分からないのか。僕は瞳に涙を見ている白井を見つめてふうっと溜め息をついた。謝る気になれないのは何故だろう。しかし、白井の頬はトマト色に戻っていた。</p><p>「ね。戸部君」<br>「なんですか、河上さん」<br>「なによ、その言い方。久しぶりねーっていおうと思ってたのに」<br>「俺が避けてたんだよ。気づけ」</p><p>　　彼女の額に軽いチョップを食らわす。すると、彼女は上目遣いで僕を睨みつける。だが、ふっと彼女は笑って清清しい声で聡明に言った。</p><p>「これで一件落着ね。あー、なんで私、あんなに溜め息ついてたんだろー。全然、白井君のためになれなかったなー」<br>「なれてたろ。少なからず、お前は」</p><p>　進んでいく列に僕達は急いで前へ詰めていく。久しぶりに、河上さんの笑顔が見れたからそれはそれでよしとしてもいいのだが。<br>　あとでこっそり言ってやろう。白井に「実は河上さんはお前に惚れていたんだぜ」と。あの隠すような瞳は確実にそうだと言える。長年の付き合いだ、彼女の癖や総て知っている。なので、好意も興味も示せない。とっくにその時期なんて過ぎているのだから。</p><br><p>．</p><br><p>　また、僕達のクラスに衝撃が奔った。なんと、白井が転校してしまうというのである。しかも、急な話で今日のようだ。<br>　最近、クラスが纏まり始めてきて運動会も優勝しようと誓っていたのに、なんたる裏切り。僕達はがっくりと肩をうな垂れた。しかし、一番ショックを受けているはずの河上さんがやる気のなさそうにしている僕達に向かって手を叩き仕切り始めた。</p><p>「白井君の方がきっと悲しいはずよ。だから、私達は送り出すだけ」</p><p>　そう胸を張っていっていたら、席を外していた先生が白井を引き連れて還ってきた。彼の真っ赤な頬には幾度にも泣いた跡がついている。今にも泣き出しそうなその瞳は弱弱しいものが感じられた。あまり話したことのない僕だって涙を誘われた。なので、もっと関わってきた人達は大泣きしているに違いない。みんな、鼻水を啜っているらしくずるずるというだらしない効果音が耳に届く。僕と河上さん以外は泣いているようだ。<br>　先生も泣いていて何か喋ろうとするたびに癇癪を起こす。その場にしゃがみ込み泣き項垂れる姿は、駄々を捏ねた子供を連想させる。</p><p>「それでは……、もうお別れの時間ですね」</p><p>　此処まできて「せんせー、授業どうするんですかー」という空気が読めない奴はいない。みんな、その場を動こうとはしない。先生が促しても誰一人として動こうとはしなかった。勿論、白井も僕もその一人であった。しかし、机を叩く音が教室中に響いた。視線は一気にそこに注がれる。</p><p>「早く行かなきゃ。つらいのは判るけどこのまま動かなかったらもっと辛くなるだけ。ほら、みんな立って。いきましょ」</p><p>　河上さんの言葉はいつも心を打たれる。僕達は音で操られるマリオネットのように、河上さんの言葉に従っていた。<br>　ぞろぞろと校庭へ流れだすゾンビのような児童たち。みんな、口を開こうとはしなかった。勿論、白井もあの河上さんでさえ、誰一人として明るく振舞おうとする人物は現れなかった。<br>　名残惜しい別れというものはもうすぐ其処にあった。大きなトラックと白井の両親が門前にいた。白井は漸くみんなの前に立ちお別れの言葉を、声を震わせながら伝えた。</p><p>「いきなりで、御免なさい。いいこといえないけど、もっとみんなと遊びたかったです。……そして、河上さん。有難う御座いました」</p><p>　河上さんの方へ一礼しているらしい。やはり、僕の直感は当たっていたようだ。河上さんを探そうとすると、すぐ隣にいるのに驚く。彼女は酷く涙を溜めていた。しかし、泣こうとはしなかった。そして、僕の方へ寄り掛かり「御免ね」と呟く。白井か僕、どちらに向けていっているのだろうか。分からないけれど、僕は優しく彼女の頭を撫でた。すると、白井は泣きながら両親たちの方へ歩み寄る。トラックに乗り込むと同時に制止していた僕達は一気にトラックへ走り寄った。<br>　「さよなら」「御免ね」「有難う」色々な言葉を投げかける。その言葉が届いたのか、彼は最後まであの笑顔を浮かべていた。僕達、四年二組の生徒は暫くトラックを見守っていた。あの時、話していればよかったのに。なんて後悔も今では遅くて。けれど、また逢いたいっていうのは疑いようの無い真実で。今の僕達には、彼を思い出す術しかない。<br>　――有難う、白井。そして、また会おう</p><br><p>．</p><br><p>「とーべくんっ」<br>「……なに？白井からメールでもきたわけか？」</p><p>　ストローを加えながら僕は代わり映えのない彼女に問いかける。しかし、彼女は首を横に振り「別れた」なんて無邪気にいった。別段、僕は気がかりじゃないのでいつもの調子で冷淡に訊ねた。</p><p>「へー。で、なに？」<br>「白井君帰ってくるんだって」</p><p>　僕は頬に溜めていた牛乳をそのまま吐き出した。「はあ？」とキレ気味にいう僕に彼女は鎮めるために両手を開いている。</p><p>「でね、再会会しよーって話なんだけど……」<br>「行くよ。しゃーねーから」</p><p>　歓喜の声をあげて抱きついてきた彼女。<br>　其れは、あの頃から少し成長した、僕等が高校二年生の夏休み前の出来事だった。<br>　代わり映えの無い、僕は彼とまともに話が出来るだろうか。<br>　不安が募るが行くしかない。<br>　だって、待ち望んでいたトマトみたいな頬っぺをした子に逢えるのだから。<br>　僕達の世界を変えてくれた、あの子に……。</p><br><br><p><font 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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10105424022.html</link>
<pubDate>Wed, 11 Jun 2008 22:46:52 +0900</pubDate>
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<title>企画：さよならはまだ早いよ。そうでしょ？提出作品</title>
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<![CDATA[ 　もしもわたし達が出会わなかったら、こんな悲しいこと起きなかったのにね。誰も涙を流さずに幸せで平凡で暮らせていたのにね。そう、わたし達があの時に出会わなければよかったんだ。<br><br><br><font size="5" style="color: rgb(0, 255, 255);">も<font size="4">しもという仮定のナカで<br><br></font></font><br>　出会いというのは唐突で、決してロマンチックではなかった。小説のように突然すれ違って「すみません」といって恋が始る、や、同じクラスメイトの子と親睦を深めて恋が成立する等。けれど、現実はそんなに容易じゃなくて、綺麗な出会いばっかりじゃない。例えば、憧れが愛しくなったり、無性に会いたくなったりするものだ。<br>　他の人と話していると苛ついてきたり、その人と女子を引き離してしまいたい衝動に駆られる。自分だけが意地悪をして話をして仲良くして……そんな人間だから、わたしの周りには友達と言う友達は消え去っていた。寧ろ、その方がわたしも救われたし、他の人もわたしの存在を気にしなくなったので良かった。<br>　一般の人なら絶望の真っ只中だろうがわたしはそんなの気にしない。だって、自分の中では素敵な恋をしているつもりだからだ。わたしの視線の先にはいつも光り輝いている人がいて、独りの時でも貴女は少しだけこっちを向いて笑いかけてくれる。勇気を出して挨拶をするということは出来ないが、こうしてカーテンを開いて見ているだけでも充分だった。<br>　そんな放課後のことだった。わたしと彼の世界に部外者が入ってきたのは。<br>　真っ白な扉が不気味な音を立てて開く。一瞬、世界が壊されたような気がして開けた者をじっと睨み付けた。すると、其処には見た目は爽やかな好青年だが、中身はわたし以上に穢れている、プレイボーイと称されるナルシスト少年の姿があった。わたしは正直言うと気まずかった。なんと彼につい最近、告白されたからだ。わたしは何故か「うん」と頷いてしまい、微妙なお付き合いをするようになった。そのお付き合いは好きあってるとかそんなのじゃなくて、彼のただの空回りに過ぎなかった。だから、巷では自然消滅と噂されているほど、同じクラスなのに話していない。<br>　わたしが俯いていると彼は深い溜め息をついて、「忘れ物っ」と独り言を呟いた。まるで、わたしの存在を無視しているかのようだった。確かに、明るくもないただの美少女のわたしは彼にとってはもう不必要な存在なのかもしれない。でも、わたしは寂しかった。だから、他の人を見つめていた。ずっと、ずっと、彼のことが……。<br>「別れよう。しずく」<br>　本当の思いを伝える前に、彼からの衝撃的な一言。その彼の表情は今まで見たことがなく真剣そのものだった。近づきもせず離れもしないその目線。いつも、気づくのが遅いねって誰かに言われる。今は自分自身に言われた。涙が出てくるか、と思ったらそうでもなくただ喉が渇いて声が出ないだけだ。<br>「お、あったあった。じゃな、堀川」<br>　『堀川』。彼の呼び方が頭に木霊する。やはり、もうあの頃には戻れないない。そう直感した。<br>　だから、最後は最後だけは言わせて。わたしは大きな声を張り上げていた。<br>「じゃあね。岸邉君」<br>　そう、之で全ては解決された。彼の満面の笑みを見れただけで充分だ。わたしの瞳からは涙がとめどなくこぼれて、窓の外を見る気さえしない。<br>　いつもわたしは「若しも」という曖昧な考えで来ていた。若しも、彼と付き合わなかったら。出会わなかったならなんて思ってマイナスの方に引っ張っていった。今もそんな気持ちだが、彼とであったことで少しだけこの思いは晴れたような気がする。<br>　彼は、大好きや愛してるなどという格好いい言葉はわたしに与えてくれなかった。しかし、ただ、一言だけこう言ってくれた。<br><br>「お前を変えてやる」<br><br>　もしも、わたし達が出会ってなかったら、わたしは変わっていなかったね。有難う、有難う。<br>　そんな感謝の言葉が絶えず頭の中に駆け巡る。<br>　もしも、新しい恋をしたら応援して下さい。わたしも応援します。だから、わたしのことは忘れてください……。出会った事を揉み消すように、わたしはそう、強く願った。<br><br><font size="7" style="color: rgb(0, 255, 255);">　f<font size="6" style="color: rgb(102, 255, 204);">in　　</font></font><br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10077862983.html</link>
<pubDate>Thu, 06 Mar 2008 18:23:09 +0900</pubDate>
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<title>流星群に誓う（お題提供：笹様）</title>
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<![CDATA[ <br><br>   私の隣には生き生きとした彼の横顔があって、私と彼は原っぱに寝そべって星を指差して心地よく笑っていた。そして、「また見ようね」と耳元でくすっと二人で笑う。<br>   度々、そんな思い出がふと脳裏を過るのだ。しかし、両親に聞いても幼い頃親しかった男の子はいないと即答されたし、昔から都会暮らしで綺麗な原っぱなどない、などと強い指摘をされた。<br>   だが、その夢や思い出は鮮明でつい先程体験したかのような錯覚さえも起こしてしまう。だけれど、彼の顔や表情は全く見えない。髪は長くもないし、暗闇だといっても隣にいる彼の横顔は一瞬でも見えるだろう。そんな疑問を抱えながら、私は毎日を過ごしていた。<br><br>   部屋を掃除しているとふとアルバムが目に入ってきた。ごちゃごちゃで片付けられていない本棚は何が入っているのかさえ分からなかったが、派手に塗装されており、私の性格を配慮した作りとなっていた。<br>   「一旦休憩」と一人で呟き、椅子に勢い良く座った。表紙を捲ると、泥んこで遊んでいる私の姿や、誕生会の時にケーキを貪り食って頬などに生クリームがある姿など、一人の写真が多かった。というのも、昔から体が弱く虚弱で少しのことで風邪を引いたりする為、つい最近まで外出許可を医師から貰わなければ出来なかった。小学校の勉強は全て家庭教師に教えてもらったほどだ。他の子供達とは思い出はずれているかもしれないが、どれもこれも楽しい思い出だ。<br>   微笑んで見ていると一枚の写真が微風に靡き床に静かに落っこちた。何かと思い捲ると、其処には一人の男の子と私の姿が写っており、隣の彼は困惑しており私はべそを掻いていたようだ。<br>   そうだ、思い出した。私は一日だけ親しい男の子が出来たんだ。そして、その男の子の両親にこの写真を……。私は瞳を瞑り、その時の情景を頭に思い浮かべた。<br>  久し振りに外出許可が出され、私達家族は一泊の旅行へ行った。場所は親戚の別荘であった。当時六歳だった私は、父とボール遊びをして遊んでいた。其れは私と同年代の子が遊ぶようなものではなく、運動と分類されるかも分からない程度の遊びだった。しかし、其の頃の私にとっては楽しいことでもあり体力的に辛いことでもあった。<br>   静かに遊んでいると、私がボールを取り損ね、庭の垣根から出て行ってしまった。父が取りに行こうとしたが、其の時の私は「とってくる」と無邪気にいい去り、ころころと転がるボールを全速力で追いかけた。父は何を思ったか追いかけてはこなかった。ただ一言。<br> 「危ないからやめなさい」<br>   と、微笑みながら言ったのだ。この後母にこっ酷く説教されただろうが終始笑顔だったに違いない。<br>   そんなことも露知らず、私は実感したことのない透き通る心地よい風を体感しまさに其処は天国といった感じだった。<br>   ボールにやっとのことで追いつくと、其処は知らない場所。つまり、当時の私にとっては恐ろしくて堪らない場所だった。私は無差別に泣き叫んでしまい、父と母を連呼していた。すると、一人の少年が小柄で泣き叫んでいる私に嫌な表情一つせず、手を差し伸べて、優しく微笑んでくれて、ゆっくりとした口調で話しかけてきた。<br> 「如何したの。こんなところで」<br>   年端は十歳くらいだろう。私とは四歳くらいしか変わらないのだが、彼は別次元の世界の人のような気がした。大人のような冷静さは持ち合わせていたが、子供の無邪気な瞳はまだ持ち続けている。<br>    私はその大きな手を取り、半日だけ其の家にお世話になることになったのだ。彼の家族も彼の如し優しく直ぐに笑ってくれた。<br>    今思うと知らない人なので警戒しなければいけないのだが、小さい頃だったので危ないは危なかった。しかし、何をされることもない。ただ、笑顔で歓迎されるだけだった。<br>    そして私は、夕飯を共にすることになった。豪華で色取り取りの料理はとても見栄えが良く香りも良くて、体が弱いくせに食欲は旺盛だった私は直ぐにいただきますと言い呑み込んでしまった。彼の母親は「あらあら」といって上品に笑っており、父親は「もっと食え」と促していたに違いない。<br>    時刻が七時に回っても私は食べ続けており、隣にいた彼から声がかかった。<br> 「そういえば、君は何処から来たの。お名前は？」<br> 「あっちから来たの。名前はあまね。菅間あまね」<br>    と逆方向を指差し名前を溌剌と言った。けれど、右手で握り締められているフォークは口に運ばれていった。すると、彼の母親はまたもや上品な声を出しマイペースに言った。<br> 「菅間さんって言うと、昔知り合いだったわ。確かデパートのアルバイトで」<br> 「そうなの。お母さんね、あまねがもーっと小さい時にお仕事してたの」<br>   なんて暢気なことを言っていたような気がする。知り合いだと聞いて一安心した私達は今夜限りのメインイベントを見ようとしていた。しかし、彼の両親は仕事や何やらで見れないらしく、私と彼が見ることになったのである。<br>  靴を履き中庭に出ると、其処は満点の星が見えるところだった。しかも、ふわふわの原っぱもあり其処は世界一の観測所だった。<br>   私と少年は其処に寝転がり、星の名前を順々に教えてもらった。夏だったので色々輝いていた。教えてもらったのにもかかわらず、其の頃の私はお馬鹿さんで全然理解出来ていなかった。なので、今も覚えておらずだが、真剣に話してくれたことだけは覚えている。<br> 「あっ、あまね、見て。星の奇跡だよ」<br>    といい、彼は起き上がって興奮したように話し出した。綺麗で壮大でこれ以上素敵なものはないようだ。其れは俗に言う流れ星であり、流星群だった。小さい頃の私には衝撃的で頬を真っ赤に染めてしまうほどだった。<br> 「明日帰っちゃうかもしれないけど、また見ようね」<br> 「うん。約束」<br>   私達は小さな小指と小指を絡めてくすっと笑った。<br>   翌日。昨日とは打って変わって一点曇り空だった。其の前の晩、電話してくれたらしく両親は駆けつけてくれた。怒られもせずはたかれもせず何も言わずに抱きついてくれた。<br>   彼との別れは嫌だった。そして、泣き叫んだ。彼は困惑したように私を慰めたが、涙は止まることなく流れていく。そこで写真のシャッターは切られてしまった。が、続きがあるのだ。<br>  彼は私の耳元で甘くこう囁いたのだ。<br> 「また此処に来るんだよ。もっともっと、色んなこと教えてあげるからね」<br>    ウインクした彼は誰よりも格好よくまさしく私の初恋だった。<br>    手は振らなかった。けど、瞳で合図した。「また会おうね」って。<br><br>    私の瞳からはとめどない涙が溢れた。悲しくて蓋をしてしまった記憶が、今度は大好きな思い出として蘇ってきた。その写真をくしゃくしゃになるまで抱き締めて、私は夜になるまで起きないと誓った。<br>    そして、夜になった。窓を開けると、其処には色々な星達が光り輝いていた。<br>    ――今度の夏休み、お母さんに頼んでみよう<br>    そんな思いが私の心の中を駆け巡った。<br>    あの頃から七年経った今、彼は小さな私のことを覚えてくれているだろうか。それとも私のことがまだ好きか。それは分からない。ただ、彼にあってまた教えてもらいたい。<br>   そう、流星群に誓ったのだから。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10077158234.html</link>
<pubDate>Mon, 03 Mar 2008 21:59:09 +0900</pubDate>
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<title>第五章</title>
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<![CDATA[ <br>　その場の雰囲気はたちまち凍りついた。泉は未だに体を震わせ、翔は目を見開いている。しかし、エレナはと言うと冷静を装い一言も口を開かずに一階を押し、彼女の乗り込みを促した。一歩も動こうとはしない泉に困り果てたエレナは深い溜め息をついて、手を伸ばし力の限り引っ張った。小柄な為、宙に浮いてしまうような気さえしたが、翔に肩がぶつかっただけでその他には何も支障は無かった。<br>　泉が乗った瞬間、エレベーターは閉まり不気味な音に乗せて動き出した。其の中はとても静かで一人ずつ意味深な表情を浮かべていた。来る時よりも早く一階につき、三人は次々と降りた。エレナが最後に降りた瞬間、大理石の床は抜けて暗闇の中に三人は放り出された。<br><br>　重い目蓋を開けると、其処は牢屋のような暗闇の中だった。手足は拘束されていず、頬には煤がついている。泉の他はまだ目を覚ましていないらしい。あんなところから落ちたというのに、頭痛は伴っていないし、何も体には別状は無い。ぼうっと目の前の光景を見ていたら人影が見えた。その人影は徐々にはっきりとしてくる。長身で青い髪に綺麗な顔立ち、其れはまるで女性のようだったが、声のトーンは低く唸っているようだった。<br><br>「誰だ。というか、何故此処に辿り着いた」<br><br>　わざと低くしているような声質。普通にしていれば其の声も高いだろう。切れ長の瞳は泉をじっと見下し、睨みつけていた。恐怖に怯えていると目の前の人物には劣るが勇者が泉の前に立ち塞がった。<br><br>「お前こそ名乗れよ」<br><br>　其の人は間違いなく翔だった。汗が薄らとにじみ出ていたが、瞳はしっかりと目の前の人物を見つめており、大きく広げた手はぴんと張っていた。エレナは泉を抱きかかえながら耳元で「大丈夫よ」と呪文のように囁き繰り返す。<br>　そんな緊張感の中、笑い声が暗闇に響いた。翔は手を緩めその場にしゃがみこみ、エレナは眉間に皺を寄せおり、泉は何が起こっているかさっぱりのようだ。すると、男は手を伸ばし電気をつけた。周りは殺風景で、床も鉄で出来ており、窓なんて一切無い。木製の扉が一つあるだけだ。想像していたよりもこの部屋は小ぢんまりとしていた。彼は瞳に精一杯の涙をためながら、声を震わせて話し始めた。<br><br>「すまんすまん。ちょっとばかり上から落ちてきたものだから、スペクルト氏と同じく意地悪したくなってな。僕の名前はジョイン・アスカ。世間一般では研究者と呼ばれているのだが……まだ君たちには分からないか」<br><br>　手の甲で涙を拭きながら、今度は微笑を浮かべて彼等を子供扱いするような言葉を放った。エレナは其れが気に食わなかったらしく、ぽかんとしている翔を押し退けてジョインの元へずかずかと歩み寄った。「あのね」と力強く言った瞬間、彼女の周りには淡いオーラが醸し出されていた。<br>　彼はとても不思議がっており、翔は訝しげな表情をしていた。其れは「またか」といった呆れた感じでもあった。<br><br>「楠田エレナ。歳はぴちぴちの十八歳で乙女座。趣味は手芸と料理で特技は貝殻集めですっ」<br><br>　瞳をきらきらと輝かせながら嘘っぱちをこいている。ジョインはあからさまに困惑しており、成す術が見つからない。腰を抜かしていた翔はふうっと溜め息をつき「よいしょ」という掛け声とともに起き上がる。エレナはまだ恋する乙女の表情で一方的に話している。其れは早口で誰でも聞き取れないであろう。<br>　翔の軽い鉄拳が、エレナの頭を襲う。彼女のスイッチは途端に切れ、「私は誰、此処は何処」状態になる。初めて見る泉とジョインは思わず噴出してしまったほどである。<br>　落ち着きを取り戻した泉は立ち上がり自己紹介をしようと歩み出た。ジョインの近くに来ると、すっと右手を差し出し握手を求める。<br><br>「私の名前は三浦泉です。年齢は十五歳です。宜しくお願いします」<br><br>　その微笑みは先程まで震えていた人物とは大違いだった。翔は少しだけそんな二人にむっとした。そうして、同じように手を差し出したが、其の口調は生意気そのものだ。<br><br>「楠田翔。エレナとは幼馴染だ。年齢は十六歳。宜しく」<br><br>　ジョインはそんな彼の態度も動じず、同じようににっこりと微笑み、握手を交わす。翔は好青年な彼を認めたくないのか、無愛想に手を引っ込めた。そんな態度にエレナは苛ついたらしく、気づかれないように側に行き、その足を踏んづけた。彼は「いってぇ」と叫びその場にしゃがみこんだ。エレナはつんとした表情で彼を見下ろしている。そんな二人に、またもやジョインと泉ははにかんだ。<br>　そんな和やかなムードの中、ジョインは言葉を濁し俯きながら呟いた。<br><br>「ところで、イズミは……何処から来たのだ」<br><br>　言葉は厳しいものだったが、口調はとても柔らかいものだった。<br>　三人は一刻も早く答えなきゃと思っていたが、誰も口に出すものはいなかった。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10074787396.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Feb 2008 13:05:15 +0900</pubDate>
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<title>第四章</title>
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<![CDATA[ <br>　高層ビルが必死に走っている三人を嘲笑い見下ろすように聳え立っている。太陽が翔とエレナを照らしつけており、二人は体中汗を流して頬を紅潮させながら機械から逃げるように走っている。この時間枠でも冬なのだが、日差しが強く走っているだけでも汗が流れてくる。涼しい風がたまに流れ込んでくるだけで、外は地獄と言っても過言ではないだろう。<br>　泉は流れ行く景色を見ながら必死に考えていた。この立派なビルは誰か建てたのだろう、と。この世界にはたった五人しかいないのに、こんな立派で輝いている高層ビルなぞ使う人は殆どいないだろう。こんな戦時中だし機械だって内部に入り込んでくることも可能性としては低いが有り得る。必死に考えていると、エレナの「ついたわよ」という声が聞こえた。其の声は全てを出し切ったといった感じで、息だけで呟いたといった感じだろう。泉は驚き目を見開いた。なんと、其処は立派な高層ビルであり、この地区で一番豪奢で首が圧し折るほど見上げないと、最上階まで見えないほどだ。<br>　エレナは得意げに鼻を鳴らしてまるで自分が作ったかのように二人を招待した。翔もエレナとは従姉弟関係だったが、知らなかったらしく泉以上に目を大きく開けて驚いている。<br>　彼等が一歩近づくと、扉は奇妙に開き強風が彼等を襲う。小柄な泉はひっくり返ってしまいそうなくらいだったが、後ろにいた翔がフォローしてくれたので何とかなった。先程までとは違い、エレナは真剣な表情をしていた。其れは怯えているようにも見えた。<br>　エレベーターで最上階まで行く。なんと、このビルは千階まであるのだ。泉は倒壊しないのかなと不安に思ったが、言うと笑われそうなのでじっと其の言葉を呑み込んだ。エレベーターは予想以上に早く着き、降りた瞬間、黒く大きな扉が現れた。エレナは数秒ほど前を見つめていたが、すうっと深呼吸をし後ろにいた二人に笑顔で振り返った。<br><br>「おっそろしい人だから暴言とかは絶対吐かない事。後は騒がない方がいいわ。余計な質問もしちゃ駄目ね」<br><br>　と、泉と翔を交互に見つつゆっくりと説明をする。「いくわよ」という号令が掛かった。取っ手がない扉が開く。すると、其処にはソファやらテレビやらデスクやらが沢山あり散らかっているといった方が適切な場所だった。<br>　人の気配はしないがエレナが「スペクルトさーん」と叫ぶと素っ頓狂な返事がした。エレナは恐ろしい人のように語ったが、現れた男性はとても優しい顔立ちをしていて、背も高くて手足がすらっと長い。他の人だろうと、二人は疑ったが他に人はいないようだった。<br>　エレナは二人に目配せをする。先程の言動は控えるように、と言いたいのだろう。困ったような笑っているような訳の分からない表情をしている、スペクルトと呼ばれた青年は三人にソファに腰掛けるよう要望した。透明な机には既にコーヒーが用意されており御持て成しは最高だった。<br><br>「あ、エレナは甘い方がよかったんだね。砂糖とミルク用意してるから」<br>「有難う」<br><br>　無愛想に一言だけお礼を言い、エレナは深く堂々とソファに腰掛けた。まるで、いつも座っているような態度で二人は驚いたが早くとせかす彼女の言うがままになっていた。<br>　翔は泉の隣に腰掛け、エレナの手首を掴み尋ねた。<br><br>「お前って甘いもの大丈夫じゃなかったけか」<br>「甘い人、がきらいっていったのよ、私は」<br><br>　と言いながら砂糖一袋を余裕の表情で真っ黒いコーヒーに入れている。ミルクは渦を巻いていた。翔は不思議そうに首を傾げたが、平然と其れを啜っているエレナを見て安堵した。そうして、きょろきょろしている泉に視線を移す。<br><br>「そんなキョロキョロして、怖いのか？」<br>「ううん。なんか、テレビドラマで見る警部補みたいな部屋で」<br>「驚いたってことかい」<br><br>　エレナの隣に座りながらにこにこ笑っているスペクルト。その笑みはどす黒く、企んでいるかのようで泉の背筋は震えた。エレナはふうっと溜め息をつき立ち上がりながら、スペクルトに問いかける。その瞳は睨めつけているような冷たい視線を浴びせていた。<br>　しかし、彼は動揺せずにまだ細い目をもっと細くして笑っている。その顔は確かに頼りなさげだが、どちらかというと格好良く好青年を物語っていた。黙っていれば本当に好青年のように見えるが、其のいやらしい表情を見るとふざけているようにしか見えないのである。<br><br>「あと二人は何処にいるのですか。人類の生き残りは」<br>「其の人たちがいなければ、この世界を救えないとでも言いたいのか？」<br>「貴女が協力すれば済む問題なんだけどね」<br><br>　エレナは精一杯皮肉を浴びせたが、彼には全く通用しないようでへらへらと軟弱な笑みを浮かべているだけだ。彼女ははっとした表情になり、自分の頬を軽く叩く。落ち着きを取り戻し、ソファにまた腰を下ろして「教えて下さい」と俯きながら懇願した。<br>　何時もとはまったく違う彼女を見て、翔は不気味に思ったが、スペクルトの笑みはそれ以上にもっと不気味でまるで悪魔のようだった。隣の泉を見ると体を震わせているので自分の上着を一枚脱ぎ、彼女に着させてやった。「有難う」と囁く横顔は青褪めていた。<br><br>「ヒントをいうと、僕が生き残りって可能性は低い。場所は自分達で考えた方が分かると思う」<br><br>　三人とも疑問を覚えたが、誰かが質問をする前にエレナは早急に「分かりました」と答え立ち上がった。さようなら、や失礼しました、の言葉もなくエレナは部屋を去っていく。翔も急いでその後を追いかけ、泉一人が取り残された。立ち上がろうとしても足が思うように動かなくそのまま静止していた。すると、前からスペクルトの声がする。<br><br>「エレナは本当に怒りん坊なんだよな」<br><br>　泉の足は動くようになり、急いで二人の後を追いかけた。部屋には彼がただ一人、残された。<br>　彼女が二人に追いつくと、エレナは神妙な顔つきでエレベーターのボタンを押していた。<br><br>「どういう意味だったんだ、あれ」<br>「さあ。あの人の言うことは分からないの、私でも」<br><br>　ちーんという虚しい音が鳴り響く。翔はふーんという相槌を打ちそのまま乗り込んだ。しかし、泉は乗り込もうとはせず、上着の裾を必死に掴み冷や汗を流していた。「どうした」と翔が言うと、彼女は震えている唇を必死に動かしこう呟いた。<br><br>「あの人、見たことがあるの」<br><br>　彼等は地下一階という階にまだ気づいていない。<br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/hinamukai/entry-10073624430.html</link>
<pubDate>Mon, 18 Feb 2008 17:51:27 +0900</pubDate>
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