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<title>脳味噌ﾊﾟｸﾞ犬</title>
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<description>いるこまの主に文章的なﾓﾉを置いておくところです。</description>
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<title>お品書き</title>
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<![CDATA[ <div style="text-align: right;"><br><br><br>お品書きです。</div><div style="text-align: right;">簡単な説明とﾀﾞｲﾚｸﾄﾘﾝｸをば。<br><br><br></div><div style="text-align: right;"><br><br><span style="font-size: 8px; ">※ｱﾒﾝﾊﾞ-限定公開のﾓﾉは題名に(!)がついています。</span><br></div><span><span style="font-weight: bold; font-size: 16px; ">【長編】　</span><font size="1"><span style="line-height: 15px;">- &nbsp;1話のみの未完作品ばかりです。<br></span></font><br><br></span>　<span style="font-size: 14px; ">『檸檬』リメイク企画　題名未定　→　<a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354910.html">part1</a></span><br>　　<span style="font-size: 10px; line-height: 12px;">梶井基次郎『檸檬』のリメイク企画にお誘い頂いて。</span><br><span style="line-height: 21px; "><span style="font-size: 14px;"><br>　キスミービッグフィッシュ　→　&nbsp;<a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354743.html">#1</a></span><span style="font-size: 10px;"><br>　　連作短編の予定です。ﾋﾞｯｸﾞﾌｨｯｼｭはﾃｨﾑ･ﾊﾞｰﾄﾝの作品から。</span><br><span style="font-size: 14px;"><br>　ツメノアト　→　&nbsp;<a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124353206.html">第一話</a></span><br><span style="font-size: 10px; ">　　</span><span style="font-size: 10px;">商売ｵﾝﾅとEDｵﾄｺ。そんなﾓﾝが書きたくて。<br></span><span style="font-size: 14px;"><br>　無題(!)　→　<a href="http://secret.ameba.jp/illkoma2/amemberentry-11124353719.html">プロローグと第一話<br></a></span><br><span style="font-size: 10px;">　　昔々に書いたｵﾊﾅｼ。出来が悪いのでｱﾒﾝﾊﾞ-限定です。<br></span></span><br><br><span style="font-size: 16px; line-height: 24px;"><b>【短編】</b></span><span style="font-weight: bold; font-size: 16px; ">　</span><span style="font-size: x-small;">- &nbsp;夜長の暇つぶしにでもどうぞ。<br></span><br><span style="line-height: 21px; "><span style="font-size: 14px;">　<br></span><a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354374.html" style="font-size: 14px; ">レナ</a><span style="font-size: 14px;"><br></span><span style="font-size: 10px;">　　女の子って分からない。<br></span><span style="font-size: 14px;">　<br></span><a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354008.html" style="font-size: 14px; ">器用、不器用</a><br><span style="font-size: 10px;"><span style="font-size: 10px; ">　　友達って大事。ｵﾄﾅになるってことは、みたいな。<br></span></span><span style="font-size: 14px;">　<br></span><a href="http://secret.ameba.jp/illkoma2/amemberentry-11124354237.html" style="font-size: 14px; ">笑えない喜劇(!)</a><br><span style="font-size: 10px;">　　娘と父親。親子って時々ﾑﾂｶｼｲ。あんまり好きじゃないので限定。<br></span><span style="font-size: 14px;">　<br><a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354113.html">永遠が馬鹿らしい</a><br></span><span style="font-size: 10px; ">　　不思議な距離感。こういうｶﾀﾁのない恋愛って意外とﾔﾊﾞい。</span><br><br><br><font size="3"><b>【ZAKKI IN MY HEAD】</b></font></span><span style="font-weight: bold; font-size: 16px; ">　</span><span style="font-size: x-small;">- &nbsp;詩の出来損ないとか五七五七七とか。</span><br><br><br><span style="line-height: 21px; ">　<a href="http://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124355342.html" style="font-size: 14px; ">TANKA&nbsp;IN&nbsp;MY&nbsp;HEAD</a><span style="font-size: 14px; "><br></span><span style="font-size: 10px; ">　　季語がないからどっちかっつ-と狂歌ですが。五七五七七。<br><br></span>　<a href="http://secret.ameba.jp/illkoma2/amemberentry-11124355186.html" style="font-size: 14px; ">すいか(!)</a><br><span style="font-size: 10px; ">　　言葉遊び、みたいな。詩、みたいな。限定です。<br><br></span>　<a href="http://secret.ameba.jp/illkoma2/amemberentry-11124355106.html" style="font-size: 14px; ">MOSS(!)</a><br><span style="font-size: 10px; ">　　苔。花言葉は母性愛。詩、みたいな。限定。</span></span>&nbsp;<br><br><br><div style="text-align: right;"><span style="line-height: 21px; "><br><br>ごゆっくりどうぞ。<br><br><br><br><br></span></div>
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 07:15:43 +0900</pubDate>
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<title>TANKA IN MY HEAD</title>
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<![CDATA[ <div>"ぶっ飛ばす" 結んだ口と 震える手 笑わない目が 優しい証拠</div><div><br></div><div>流れ星 消えるまでなど 間に合わぬ ぐちぐち言いつつ 眺め待つ彼</div><div><br></div><div>ごめんなさい 彼女はいて座 俺さそり 生まれた日から 勝ちえぬｻﾀﾞﾒ</div><div><br></div><div>ふつかよい 覗いた鏡に ﾌﾟﾚﾃﾞﾀ- 慌てて潜る 冷たい湯舟</div><div><br></div><div>几帳面 完璧主義者の 彼女なら 右脳と左脳も ｼﾝﾒﾄﾘ-かも</div><div><br></div><div>ﾃﾞｽﾋﾞ-ﾑ 撃ち合うｱｲﾂも ﾊﾀﾁ前 数える俺だけ ひとり老けたか</div><div><br></div><div>もう少し 前向きにほら 釈迦先生 一切皆苦は ﾈｶﾞﾃｨｳﾞ過ぎます</div><div><br></div><div>扁平足 土踏まずのない 俺は今 ぺったんぺったん 怪獣気分</div><div><br></div><div>午前２時 考え抜いて ｱﾝﾁﾉﾐ- うるせえｶﾝﾄ 俺の問題</div><div><br></div><div>柔らかい 陽が射す秋の 並木道 冬になったら また来ますから</div><br>
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:30:59 +0900</pubDate>
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<title>すいか</title>
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アメンバー限定公開記事です。
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:29:54 +0900</pubDate>
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<title>MOSS</title>
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アメンバー限定公開記事です。
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:28:23 +0900</pubDate>
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<title>part1</title>
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<![CDATA[ <div>たとえば風呂場の戸の下の五センチ近い隙間だとか、鍵のついていないトイレだとか、そういう隙を狙って部屋中を機械油みたいにさらさらと絡みつく空気が占拠していた。各セクションを分ける障壁がどうしようもなく甘い。</div><div>思い出したかのように壁際の暖房がぶおーんと間延びした音を立てる。ラブホテル。午前五時。</div><div>カーテンの向こう側をさらにステンレスの分厚い雨戸が覆っているせいで、日が昇っているのかどうかは分からない。</div><div>内部は限りなくすかすかなくせに、外部とは明らかに隔絶された場所。</div><div>部屋に入ったとき、ドアの鍵ががちゃりと盛大に音を立てたのを思い出す。</div><div>ここは檻。僕とかユカリさんを捕らえるためじゃなく、部屋を充満する気体で出来た化け物を逃がさないための檻。そして中央にある風呂場の緑がかった照明が多分この怪物の目玉。ゲルニカみたくバカでかいベッド脇のすりガラス越しに、じっとり部屋全体をねめつけているから、いよいよもって逃げ場がない。</div><div>そんなあやふやな敵におびえて散々そこら中うろうろした挙げ句、最終的にベッドの対面にあるソファーに落ち着いた。</div><div>安い部屋のソファーはほとんど板張りみたいにかたい。そのおかげで尾てい骨を痛いくらいに圧迫する座面を起点に、自分の輪郭を明確にしていくことができた。足の爪の先からつむじまで、慎重に意識を行き渡らせてゆく。そうやってからようやく外の世界に思いを馳せる。そろそろ日が昇り始めているといいんだけど。</div><div>タバコに火を点けた。</div><div>明け方に吸うタバコが好きだ。</div><div>明け方はお酒、雰囲気、時間、そういう色々なものによる酔いが醒めはじめる時間。身体はだるく動かないくせに、頭が味気なく白けていくものだから、存在がぺらっぺらに薄くなってしまう気がした。</div><div>そんなときの外の世界は、まだ夜の淫靡な渇きを少し引きずってねっとりと青い。</div><div>だからその残滓みたいなものを舐められるごく短い時間に、ぐっと縮こまってタバコを吸うのだった。じわじわ煙が身体に染み込んで、血管が収縮して、血の巡りが途端に悪くなって、頭のてっぺんまでずっしり重たくなっていく。そうやって僕は体重を取り戻す。</div><div>ふわふわ宙を漂っている僕の魂みたいなものも、不健康な重力に引っ張られて、シガレットをつまむ二本の指の間くらいまでは帰ってくる気がした。</div><div>少しでも動けば、全部ただの錯覚であることには気付いてしまうから、だから胸にぴったりくっつけた太ももが離れてしまわないよう必死だった。</div><div>たとえマヤカシだって、次の日起きてからユカリさんと別れるまで笑顔で話す分くらいの気力は得られるのだ。</div><div><br></div><div><br></div><div>ユカリさんとの会話の半分はいつも他愛ない。</div><div>職場のいけ好かない先輩がミスっていい気味だったと笑ったり。垂れ流し状態のニュースを眺めながら、外国のテロ報道に｢こわいねー｣って丸っきり他人事な感慨をつぶやいたり。</div><div>そしてちらりと映った某国の皇太子を見てげらげら笑う。</div><div>｢何このブタ野郎。｣</div><div>どこまでも非生産的で非建設的な会話。工場で淡々と作業する機械の動きを言語化したような、とかそういう会話。</div><div>話す一言一言にひとかけだって意味がない気がした。何が楽しいのかだって分からない。それでも何となく嫌いじゃなかった。無意味な応酬の一切れ一切れが流れる時間からも意味を引っぺがしてゆくからに違いない。何もかもすぐに過ぎ去ってくれる気がした。</div><div>そしてあと半分の話題はユカリさんの彼氏について。</div><div>ユカリさんは東京に彼氏がいる。いわゆる遠距離恋愛だ。</div><div>一度だけ写真を見せてもらった。真面目さと堅実さを煮こごらせた、新入社員のテンプレートみたいな真新しいスーツ姿。髪型は学生気分をまだ少し引きずったような短髪で、子供っぽく歪んだ垢抜けない笑顔がぴったりだった。</div><div>ユカリさんはそんな家畜みたいに優しそうな彼の不満ばかり言う。｢向こうが仕事で全然会えない｣だの、｢せっかく泊まりに行ったのに帰りが遅い｣だの、｢興味がない話ばっかり永遠続ける｣だの。</div><div>そして枕詞のように｢まあ、あたしトーキョーでは猫かぶってるけどね｣と添えた。ユカリさんがトーキョーと言うときの蓮っ葉で平坦な発音は好きだ。</div><div>僕は愚痴を聞くたびにやんわりと彼氏さんの味方についた。そうやって会ったこともない彼をスケープゴートにする。そうやって僕が負うべきあらゆる責任をユカリさんに転嫁する。</div><div><br></div><div><br></div><div>ぐしゃりとタバコを灰皿に押し付けてのろのろベッドに戻った。潜り込んだ布団の中はユカリさんの体温でじんわりあたたかい。</div><div>背を向けて横になると、後ろから腕が絡んできた。熱源が予想よりもしっかり熱くてちょっと嫌になる。</div><div>散々オトコについて乾いた物言いをするくせに、毎度毎度ユカリさんは床につくと蜂蜜をガムシロップで割ったみたいな具合になった。胸焼けがするくらい甘ったるい。正直好きじゃない。でもころころ顔が変わるのはのっぺらぼうみたいで、少し気味が悪くって、何だかちょうど好い気がした。</div><div>寝返りをうって向かい合うように体勢を変える。ユカリさんがぐっと顔を胸に寄せて一言、「タバコくさい」と不平を言った。</div><br>
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<link>https://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354910.html</link>
<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:27:19 +0900</pubDate>
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<title>#1 クラウンキャップスペクタクルズ</title>
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<![CDATA[ <div><div>金属製の非常用階段をかんかんとのぼった。</div><div>びりびりひびく靴音が地上のはりつめた空気にひびを入れてくれるのを知っている。</div><div>一歩一歩意識して、親指の付け根に溜めた力で滑り止めのついた鉄板を貫き犯してゆく。</div><div>クリーム色の塗装が剥がれたところから腐ったラズベリーみたいな鉄サビがのぞいていた。</div><div>濃紺のピーコートのポケットに突っ込んでいる手がアーミーナイフに触れた。</div><div>指先でもてあそぶ。</div><div>そう遠くないうちに、亀裂だらけになった気詰まりな空間は自身の緊張に耐えかねてぶっ壊れるに違いない。</div><div>土の上に帰るころには新しい世界が出来ているんだ。</div><div><br></div><div><br></div><div>四階まで一息に駆け上がって、下界に広がる住宅街に目を向ける。</div><div>転落防止用の檻みたいな柵の向こう側にある町並みは、階段の内側よりもよっぽどせまっくるしい。</div><div>接触が悪くてチカチカしている三丁目の街灯の下を、お隣のイシヅカさんが犬を連れてゆっくりと走っていた。</div><div>いつも通りの銀色のサウナスーツが派手にきらめく。</div><div>この辺りは再開発区域にぎりぎり入り損ねて、周りの変化に置いていかれた無人島みたいな一角だから、そこら中やけに生々しい生活色に満たされている。</div><div>とことん黒に近付けたさまざまな暖色を、ただただ水で薄めてそこら中に塗りたくったような町並み。</div><div>寒色は空にだけあった。</div><div>でも屋根が低い家ばかりの町で見上げる空はやけに遠い。</div><div>イシヅカさんはそんな町の色彩的秩序をめちゃくちゃにするダイナマイトだった。</div><div>地下水路みたいな細い生活道を走り抜ける鋭利な金属色が、一晩の間だけ焦げた木の色をインダストリアルに切り裂いていく。</div><div>本人はきっとそんなつもりないんだろうけど。</div><div>やけに肌のなまっちろい、年齢不詳の顔が浮かんだ。</div><div>おしゃべりなイシヅカさんがご近所のマダム仲間に、僕のことを「ちゃんと目を見て話せるいい子」だなんて言いふらすおかげで、僕はこの辺りで覚えがめでたい。</div><div>もちろん、実際のところは僕が「いい子」な訳じゃない。</div><div>宇宙人みたいな格好のイシヅカさんは、目の大きさも宇宙人みたいだから、朝挨拶をかわすときも黒目ばかり目につくのだ。</div><div>ぎらつく後ろ姿が公園のところを角に曲がっていく。</div><div>線路沿いの暗がりの中にイシヅカさんがすっかり溶け込んでしまうのを見送って、残りの階段をのぼった。</div><div><br></div><div><br></div><div>廃ビルの屋上はほこりっぽい。</div><div>でもそれはあくまで視覚的なもので、空気の方は外の町並みよりも断然澄んでいる。</div><div>今日は誰もいない。</div><div>てっちゃんも、レノンも、イダさんも。</div><div>あんなに広かった空間がひどくちっぽけに見えた。</div><div>西にある階段の反対側の東南の角、まだらな汚いグレーの貯水槽の前に丸めた小さい背中がない。</div><div>いつも檻の中の猿みたいに、フェンスを掴んでずっと向こう側を見ているまんまるい眼鏡がいない。</div><div>真っ黒いパーカーのフードをかぶって、ひたすら暗闇に溶け込もうとしているひょろ長い人影がない。</div><div>月明かりの下、縮こまった三人の男によって歪められた遠近感覚には、あんなにも遠かった一角が今日は堪えられないくらいに近い。</div><div>もしかすると誰かいるかもしれない、なんていう持ちたくもない淡い期待が急速に色を失っていく。</div><div>洗いざらして色落ちしたみたいな白が無気力を引きずり出す絶好の引き金になるのを知っているから、だからわざわざ頭をぶんぶん振った。</div><div><br></div><div><br></div><div>ひどく小さく見えた屋上をわざとゆっくり横断する。</div><div>雨ざらしで粉っぽく汚れたコンクリートに腰を下ろした。</div><div>レノンの指定席。</div><div>フェンスの網目越しの世界は意外と普通だった。</div><div>レノンは向こう側に何を見ていたのだろう。</div><div>何を見たくなくて、ああも頑なに向こう側を見ていたのだろう。</div><div>風に軋んだフェンスを座ったまま思いっきり蹴飛ばした。</div><div>後ろに転がりそうになって慌ててついた左手が何かに触れる。</div><div>気の抜けるような軽い金属の音、見覚えのあるビンのふた、王冠。</div><div>白地に赤の紋章、白抜きのStella Artoisの文字。</div><div>全然働いているように見えないくせに、レノンはなぜかいつも外国のビールを飲んでいた。</div><div>その中でも一番多かった緑のビンのベルギービール、ステラアルトワ。</div><div>「今までに飲んだビールの王冠は全て残してあるんだ。」</div><div>めちゃくちゃな嘘吐きだったから本当かどうかなんてわかりゃしないけど。</div><div>あのご面相で案外と几帳面なところがあるから。</div><div>ナイフを取り出して靴ひもを少し切った。</div><div>目の前のフェンスの、ちょうどレノンがいつも見つめていた辺りに忘れものをくくりつけた。</div><div>きっとレノンは取りに来る。</div><div>そのときにまた忘れてしまわないように。</div><div>あのまんまる眼鏡が見逃したりしないように。</div><div><br></div><div><br></div><div>もう少しだけゆっくりして、下におりよう。</div><div>また、ナイフをもてあそびながらそう思った。</div></div><br>
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<link>https://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354743.html</link>
<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:23:23 +0900</pubDate>
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<title>レナ</title>
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<![CDATA[ <div>「すっぴんが好き。」と言うと、レナは決まって歯の詰め物の具合がよくないみたいな、微量の苛立ちを含んだ困った顔をする。そして大体の場合数秒の逡巡のあと、「わからへんわ。」と顔を背けた。</div><div>僕はそのたびに覗く白いうなじにどきりとする。ヘアゴムからもれたほつれ毛が少女みたいに色っぽいのだ。それを見るたびにいけないことをしたような後悔が込み上げる。些細な背徳感を伴って。</div><div><br></div><div>化粧をした顔があまり好きじゃない。化粧水、乳液、化粧下地まではいいとして、ファンデーションからもう駄目だった。ペースト状の肌色が頬から順に生き物の質感を奪っていく。ちょうど油彩がキャンバスから布である要素を奪っていくように。</div><div>例えばキャンバスが絵画に変わってしまうように、人も何か別の生き物に変わってしまうような気がした。</div><div>そういった主張をする僕は、ピンヒールで街を闊歩する一部の女の子達にとって“女子の努力を踏みにじる鼻持ちならない奴”であり、レナは正にそういう種類の“女子”だった。</div><div>ケサランパサランのリキッドファンデーション、shu uemuraのアイシャドー、天を向いた百円均一のつけまつげ。そしてレナの重武装は親に買ってもらったコーチのバックに一応完結する。</div><div>化粧と一緒にありったけの虚勢が塗り込められている気がした。柔らかい色使いのバックにはステータスシンボルとしての鋭利な棘が無数に生えているように見えた。砂に潜ったやまあらし。</div><div><br></div><div style="text-align: left;">つまり僕とレナの間には価値観の相違という、彼氏彼女のカンケイには決定的過ぎる溝が深々と刻まれていた訳で。そこから無数に広がる大小様々なクラックにいつもいつも二人してつまづいていたのだった。</div><br>
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:22:42 +0900</pubDate>
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<title>笑えない喜劇</title>
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アメンバー限定公開記事です。
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:21:26 +0900</pubDate>
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<title>永遠が馬鹿らしい</title>
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<![CDATA[ <div>永遠がバカらしい。</div><div>全ては一瞬で過ぎていくのだ。</div><div>人がどこに余情を感じようと、両の手を力いっぱいに張り詰めてとおせんぼしようと。</div><div>そんなことを言ったとき、誰かが寂しいと言ったのを覚えている。</div><div>誰だったかは思い出せない。</div><div>そういうものだ。</div><div><br></div><div><br></div><div>「いいよいいよ、あとはあたしがやっとくから」と、洗い物の任をとかれたタクヤは今や遅しとこたつに逃げ込んだ。</div><div>半袖にジャージという出で立ちは寒い冬にそぐわない。</div><div>手近なクッションを抱き寄せた。</div><div>もっとも、タクヤを台所から追い出したカオリにいたってはバンドＴにホットパンツという有様なのだが。</div><div>テレビの薄っぺらい液晶の中で、黒人歌手が甘ったるい声で甘ったるいバラードを歌っていた。</div><div>サテン地のあざやかなグレーブルーのシャツが肌の色に映える。</div><div>最近めっきりＲ＆Ｂに熱をあげている女友達一押しのアーティストだった。</div><div>なるほど綺麗な曲だ。自分が聞くにはもったいない。</div><div>体勢を変えようと身をよじると、さっき食べたホットケーキが喉の奥まで駆け上がった。</div><div><br></div><div><br></div><div>片付けの終わったカオリが早足であらわれる。</div><div>手首だけ使ってちょいちょいとタクヤを端に寄らせると、一気にこたつの奥まで体を差し入れた。</div><div>狭い部屋をふてぶてしく占領する正方形のこたつは、それでも二人並んで入るには小さい。</div><div>こたつの足が左の太ももにめり込むのを感じながら、毛布の水玉模様の数を何となく数えていた。</div><div>その内に模様のひとつひとつがはじけてこの部屋を淡いライトブルーで塗り固めてしまえばいい。</div><div>それがきっとこの左足のソリッドな感触と、右足に触れる体温の中間色に違いない。</div><div>最後のサビをむかえて目をつむった黒人が機械みたいに左手を広げるのを、ただひたすら画面越しに見ていた。</div><div>と、いきなりＴシャツの中に冷たいものが滑り込んできて、タクヤはどうしようもなく情けない声をあげた。</div><div>小さくて指の細い、いつも作り物の人形のように見えるカオリの手。</div><div>冷たい水でこごえた手を温めようという算段らしい。</div><div>あのなあ、と顔をしかめてみせた。が、それ以上は何もしない。</div><div>いつものことだ。</div><div>カオリは目を細めて、無い眉を上げた。</div><div>相変わらずにくらしい顔だった。</div><div><br></div><div><br></div><div>曲が最近流行りの日本人アーティストに変わる。</div><div>一瞬でカオリが思いっきり白けた。</div><div>「あー、疲れた。」</div><div>言いながらタクヤが抱えていたクッションを奪いとって背を向ける。</div><div>ツーブロックのボブが流れて、根元の刈り上げがのぞいた。</div><div>「いや、待てよ。」</div><div>「うるさい。」</div><div>「いや、それオレの。」</div><div>「そっちにもあるやろ。」</div><div>不機嫌そうな声をすれば、それだけカオリはくすくすと笑うようなくすぐったい声に変わる。</div><div>カオリが引き下がったりしないことをタクヤは知っている。</div><div>またタクヤが本気で取り返しにくる気がないことをカオリは知っている。</div><div>お決まりの三文芝居のような、出来の悪い曲芸のような、白々しいやり取り。</div><div>余人が見れば鼻をつまむことうけあいの、クサくてしかたのない空気。</div><div>そういうバカらしい吐き気のするような出来事の積み重ねで、二人の時間は出来ている。</div><div>すさまじく近い距離にいて、でも実際のところとてつもなく遠い。</div><div>寄り添ってこたつに入っても、決してくっついたりはしない。</div><div>いつまでももどかしいほど遠くて、息が詰まるほど近いのだ。</div><div>離れるにはお互いのことを知りすぎている。</div><div>近付くための体力はもう使い果たしている。</div><div>「つきあおっか」と言うと、「いらんわ」とカオリは笑う。</div><div>そういう意味のない問答を不定期に繰り返して成り立ってゆく嘘くさい時間にぶら下がって生きていく。</div><div>全部冗談に出来るくらいにフィクションなのが丁度好い。</div><div><br></div><div><br></div><div>でもさ、と関東の大学に行くことが決まってほどないある日、カオリは言った。</div><div>「遠くに離れて当分それぞれに生活することになるやん。んで、帰ってきた頃にばったり会ったりしてさ。」</div><div>案外意気投合して結婚とかあるんちゃう。</div><div>アホくさ、と気のない声を出すと、カオリは少しだけ語気を強めた。</div><div>「あるってそういうこと。そういうもんやて、世の中さ。」</div><div><br></div><div><br></div><div>もぞもぞとカオリが寝返りをうった。</div><div>はく息が額にかかる距離。</div><div>何度も見た寝顔がまぶたの裏に浮かんだ。</div><div>――まあ、期待なんかせえへんて。</div><div>知らず知らずくっついていた足先をひいた。</div><div>肌で感じられる体温、それ以上に信じられるものって何だろう。</div><div>またホットケーキが喉の奥まで駆け上がってくる気がした。</div><div><br></div><div><br></div><div style="text-align: left;">明日のことを約束出来るヤツなんて、気が触れているに決まっているのだ。</div><br>
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<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:20:13 +0900</pubDate>
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<title>器用、不器用</title>
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<![CDATA[ <div>「で、結局どうなったのよ。お前。」</div><div>「無期停学。」</div><div>サトウちゃんは横で思いっきり吹き出した。</div><div>歩く速度がだんだん遅くなってついに止まる。腹を押さえて本格的に笑い出す。</div><div>止まらない笑いに言いたい言葉も押し流されていくようで、サトウちゃんはとことん陽気な顔のまま死にかけの金魚みたいに口をパクパクした。</div><div>しばらくかかってようやく落ち着いてきたようだが、未だひーひー言っている。</div><div>「アホやろ。」</div><div>「うるさい。」</div><div>言いながら耐え切れずにはにかんだ。サトウちゃんももう一回控えめに笑った。</div><div>脇の道路は工事中で、ドライバーに注意をうながすたくさんの赤いLEDが目にしみる。</div><div>昼間交通整理をしていた警備員のおっちゃんの姿が目に浮かんだ。</div><div><br></div><div><br></div><div>現在、二人が歩いている道を真っ直ぐに戻って橋を一つ渡ったところに、オレの通う”高校”がある。</div><div>オレはそこでついさきほど無期停学を言い渡され、”日記”と称した反省文を書くための用紙を十四枚持ち、一文にもならないちっぽけな後悔を腹に抱えて帰るところだった。</div><div>そしてサトウちゃんはというと、親が来るのを待つために話し合いが一時中断し、暇を持て余していた頃に運悪くもオレに連絡をしてしまったのだ。</div><div>呼び出してしばらく話をしたのち、いきおい決着をつけるまで表で待っていてもらうことになった。</div><div>五分くらいで片付くから、と言っておきながら結局一時間とちょっと待たせてしまう結果になっていた。それでもサトウちゃんは嫌な顔ひとつしない。</div><div>もっとも三時間待たせたところでこっちにおつりがくるくらい、サトウちゃんは万年遅刻大魔人なのだが。</div><div><br></div><div><br></div><div>「で、単位はどうなのよ。」</div><div>口元だけ相変わらず笑っていた。</div><div>無期停学とはいっても問題がなければ二週間でとけるらしい。そしてその二週間っていうのが単位を落とさずに済むギリギリの期間なのだそうだ。</div><div>そう言うと、サトウちゃんは「そうか」と街路樹に目をやった。</div><div>罪悪感が頭をもたげる。</div><div>地元のツレには散々レポートを手伝ってもらった、というかほとんどやってもらった。</div><div>もう一年ダブッたところで決して糾弾したりはしないに違いないが、心配をかけている自覚はあった。</div><div>もやもやと乳臭いグレーが腹の中に浮かぶ。タバコの煙のようにふわふわと、タバコの煙よりも粘っこく。</div><div>急に重くなった頭を上げると、サトウちゃんと目が合った。</div><div>にやにやと口の端が上がっていく。目が意地悪く歪む。サトウちゃんの悪い癖が出るサイン。</div><div>「で、何で無期停になったんやっけ。」</div><div>「壁殴って穴開けたから。」</div><div>「お前今いくつよ。」</div><div>「今年で十九。」</div><div>堪えきれずに笑い出す。また腹を押さえて動かなくなった。</div><div>少しムカついた。</div><div>「いや、あの女の教師さ。関東の方から来たんかしらんけど、標準語でねちねち怒られると余計腹立つねんて。」</div><div>「ちょ、タンマ。」</div><div>「事務員の人にも言うたけど、そら分からんでもないけどな言うとったで。」</div><div>笑い上戸が加速した。</div><div>サトウちゃんは最早苦しそうな息遣いになっている。ざまあみろ。</div><div>あの目をしたとき、サトウちゃんはほとんど必ず相手の痛いとこをつっついて笑う。</div><div>それはそれは執拗で、ともすれば相手がキレる寸前までつっつく訳だが、如何せん笑い出すと嫌味っぽいとこが全部抜け落ちてしまうのだ。</div><div>あまりにも楽しそうに笑うのでなかなか怒れない。</div><div>ごくたまにあの目でおどろくほど腹黒いことを言うので、流石に「こいつ大丈夫か」と思うこともないではないが。</div><div>得なヤツだよな、と思う。</div><div>思わず笑った。もう落ち着いていたサトウちゃんも訳が分からんとばかりに一瞬中途半端な顔になったが結局笑った。</div><div><br></div><div><br></div><div>アスファルトに落ちていた枯葉が風に飛ばされて車道に消えた。</div><div>頭が芯の方から冷たくなってゆく。</div><div>湿布みたいにぺたりと脳裏に張り付いた何かのせいで、融通が効かなくなる感覚。</div><div>二人の笑いが凪いだ。</div><div>「まあ、好い加減ガキくさいこともしてられんわなあ。」</div><div>サトウちゃんが答えるのに一拍あいた。――せやなあ。</div><div>大学生になったヤツ。就職したヤツ。</div><div>遊ぶときに車を使うようになって、日をまたいでしまうことも増えた。</div><div>多分これから今度は日をまたいでしまうことが減ってゆく。</div><div>まあ、と一緒に黙り込んでいたサトウちゃんが口を開いた。</div><div>「流石にオレはそない小学生みたいなことはせんけどな。」</div><div>とびっきりガキっぽい、得意気な顔。</div><div>――中学でブチギレて体育館の壁に穴開けたヤツがよく言う。</div><div>思ったが言わなかった。</div><div>足元でかさりと落ち葉を踏んだ音がした。</div><div><br></div><div><br></div><div>田んぼの合間を縫うように走る道を抜けて、住宅街に入る。</div><div>すっかり涼しくなって虫が減ったせいか、街灯がえらく寂しげな色に見えた。</div><div>見慣れた町には独特の生活感があふれている。食器を洗う音。シャンプーの匂い。</div><div>オレの家が近い。</div><div>「ほんならな。」</div><div>いつものＴ字路でサトウちゃんが言った。</div><div>ここを曲がった先のどん詰まりに我が家がある。</div><div>ほんならな、とオウム返しに答えて背を向けた。</div><div>「お前、ちゃんと日記書いてから寝ろよ。」</div><div>少し歩いてから響く声。</div><div>手をひらひら振った。</div><div>どんな顔してるかは見なくとも分かる、楽しげな声。</div><div style="text-align: left;">階段をとんとんと駆け上がって玄関に手をかけたとき、あの女教師の顔がちらついた。苛立って、それから笑った。</div><br>
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<link>https://ameblo.jp/illkoma2/entry-11124354008.html</link>
<pubDate>Mon, 02 Jan 2012 05:17:25 +0900</pubDate>
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