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<title>曇り硝子戸の中</title>
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<description>私、夏目ひな子の個人的なブログです。思いつたことなど、書いてみます。</description>
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<title>『夜』</title>
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<![CDATA[ <p>&nbsp;</p><p>夜の九時を周ろうとしていた。</p><p>病気を患い、入院している妻の元へ行くと、個室の病室はまだ灯が灯っていた。</p><p>「ごめんね、呼び出して。最近残業続いてたのに。」</p><p>「いいや、明日は休みを貰ってたから。むしろ、良いタイミングだったよ。</p><p>&nbsp;&nbsp;気分はどう？」</p><p>「それがね、なぜだか分からないんだけど、良いのよ。」</p><p>彼女は大きく深呼吸をして、ベッドのリクライニングを上げた。</p><p>僕は、開けっ放しになっていた病室の窓のカーテンを閉めようと窓辺に行った。窓から見える国道のテールランプが、光の川の様に美しかった。</p><p>病室は静かだった。</p><p>聞こえるのは、加湿器の音と廊下を行き来する看護師の足音くらいだ。</p><p>「今日ね、久し振りにヘクトーの夢を見たの…父とヘクトーとお散歩する夢。」</p><p>窓際から妻に向き直ると、彼女は純真な少女のような表情で微笑んでいた。</p><p>「ヘクトーって、確か…君が昔飼ってた犬の名前だっけ？」</p><p>彼女は頷いた。</p><p>「ヘクトーって変わった名前だよね、ふふ…でも…。」</p><p>微笑んでいる彼女の目に、涙が浮かんだ。僕は彼女のそばに行き、椅子に座った。</p><p>僕が彼女の左手を握ると、彼女の左頬に、涙が一筋流れた。</p><p>「不思議なくらいね、ヘクトーが、本当に会いに来てくれたみたいだったの。</p><p>&nbsp;&nbsp;匂いまでしたのよ？…ああ、懐かしいなぁ。」</p><p>&nbsp;また、涙が彼女の頬を伝った。彼女の表情は、天井を見たまま微笑んでいた。</p><p>「私…もうすぐ…ヘクトーの所へ、行くのかなぁ…。」</p><p>握った手と手を重ねた。彼女の握力は殆どなく、弱々しい。</p><p>僕は、彼女の心の動きを感じ取った。</p><p>「…夜が怖いんだね？」</p><p>僕の一言に、彼女は苦笑いをした。</p><p>「ふふ、あなたは本当に、私の本音をすぐ当てるんだね。」</p><p>彼女は、決まりが悪そうに笑い、</p><p>「あーあ、情け無い」と、独り言のように呟いた。</p><p>「当たり前だろ、もう何年君と付き合ってると思う？」</p><p>「ごめんね。」</p><p>「謝ることじゃないよ。」</p><p>「うん…。」</p><p>&nbsp;彼女の声は弱々しく、まだ不安気だった。</p><p>「真暗な部屋で、お薬が効いてきて、意識が遠くなると…</p><p>&nbsp;&nbsp;もう二度と、目が覚めないかもしれないって思っちゃうの。</p><p>&nbsp;&nbsp;すうっと、吸い込まれるみたいに、『無』がやってくるから…。</p><p>&nbsp;&nbsp;私、それがとても怖くて…このまま眠ってしまったら、</p><p>『私』が、『無』になってしまうって…。」</p><p>「うん…。」</p><p>&nbsp;僕には、頷くくらいしか、返事が出来なかった。</p><p>「今夜は、ここに居るよ。</p><p>&nbsp;&nbsp;一晩中、そばに居るよ…。」</p><p>彼女の手が、僕の手をそっと握り返した。</p><p>「ありがとう…」</p><p>そう言うと、彼女の頬は次々と涙が溢れ始めた。</p><p>彼女の心は、震えている様だった。</p><p>そして僕を見て、</p><p>「私ね、幸せなの。あなたが私を選んでくれて、こうして一緒に居られるのが…</p><p>&nbsp;&nbsp;本当に、ありがとう…」</p><p>彼女の涙が止まらない。</p><p>僕は、彼女を笑わせたい気持ちになった。</p><p>「おいおい、いくら僕らが新婚だからって、言わなくてもそんなの知ってるよ。</p><p>&nbsp;これからずっと一緒に、白髪だらけの爺さん婆さんになる約束したじゃないか。</p><p>&nbsp;ほら、結納の時に、僕が知らなかった伝統的な品々を用意させたのだって、君だろ？</p><p>&nbsp;確か、白髪以外にあったのは…海老も有ったかな？でも、僕らはまだ腰だって曲がってないし」</p><p>&nbsp;彼女はクスクス笑い始め、僕を見て、微笑んだ。</p><p>「とにかく、僕はここにいる。ずっと、手を握ってあげるから。」</p><p>彼女は頷いた。</p><p>「一緒に眠ろう。ベッド、シェアしてくれるかい？」</p><p>彼女は微笑みながら、また頷いた。</p><p>「明日は晴れるらしいよ。楽しい朝になるさ、きっと。」</p><p>「うん…」</p><p>&nbsp;僕は彼女のベッドに入った。広めのシングルベッドは、二人で眠るのにも不自由はなかった。</p><p>「あなたの匂いがする…。」</p><p>「ヘクトーより臭い？」</p><p>&nbsp;彼女はクスクス笑った。</p><p>「どっちも、なんだか安心するわ…でも、あなたの匂いって、暖かいな…」</p><p>「心が暖かいからね。知らなかった？」</p><p>彼女のクスクス笑う声は、明るかった。</p><p>「今夜は灯を付けておこうか？」</p><p>「ううん、もう大丈夫だから、消して」</p><p>「了解」</p><p>ベッドサイドのリモコンを使って灯を消すと、僕は彼女をそっと抱き寄せた。</p><p>目を閉じて、彼女の鼓動を感じた。</p><p>そして、彼女は程なく、柔らかな寝息を立てた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/insidetheglasswindow/entry-12640942758.html</link>
<pubDate>Sun, 29 Nov 2020 13:56:24 +0900</pubDate>
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