<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>裏帳簿･スキルアップで得が増す</title>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/itchy4/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>the author hopes to deliver this novel at least twice a week. as much as possible on schedule.</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>Chapter 27 綻び</title>
<description>
<![CDATA[ <p style="font-size: 18px;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20260626/16/itchy4/12/72/j/o0620046315796742981.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="463" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20260626/16/itchy4/12/72/j/o0620046315796742981.jpg" width="620"></a></p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">蕨の問いかけに南辺会計担当理事は笑顔を作り直した。&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「ああ、蕨さん、熱心ですね。次期の理事をお引き受けいただくだけでもありがたいのに。残高証明書なら、毎年の総会資料に添付したコピーの通りですよ。銀行から届いたものを、私が責任を持って保管しています」</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;喉の渇きを悟られまいと、南辺は一気に言葉をまくしたてた。</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;「そうですか。実は、今後の大規模修繕の計画を見直すにあたって、コピーではなく、直近数年分の原本を一度、理事会全員で確認させてほしいという声が住人から上がっていまして。次回の集まりの際に、お持ちいただけないでしょうか」</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;蕨の言葉は丁寧だったが、その奥にある拒絶を許さない響きに、南辺は硬直した。原本の提示。それだけは絶対に避けなければならない。手元にある原本は、何年も前に引き出されたきり、実際の残高が数百万円にまで目減りした本物の「破滅の記録」か、あるいは彼が精巧に作り上げた「偽物」しかないのだから。&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「原本ですか。大切な書類ですから、銀行の貸金庫や会社の安全な場所に分散して保管してあるんです。急にと言われても、取り出すのには少し時間がかかりますよ。木更さんも毎年の監査でしっかり原本を確認されていますし、これ以上の確認は二度手間になるかと」&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">南辺は、監査役の名前を出して防衛線を張った。実際には、会計監査役の木更は南辺が差し出した偽造コピーを、老眼鏡越しにろくに確認もせず「いつもご苦労様」と信頼しきって判子を押していただけだった。その住人たちの「無関心と信頼」こそが、南辺の最大の盾だった。&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「分かりました。では、次々回の理事会までで構いませんので、準備をお願いします」&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">蕨はそれ以上追及せず、軽く頭を下げて去っていった。しかし、南辺には分かっていた。猶予はあと数週間もない。銀行に確認が入れば、あるいは原本の提出を拒み続ければ、その瞬間にすべてが終わる。部屋に戻った南辺は、再びパソコンの前に座り、震える手でマウスを握った。もう、地道に株の回復を待つ時間はない。レバレッジを限界までかけ、残った数百万の組合資金をすべて突っ込んで、一発逆転のギャンブルに出るしかない。南辺の精神は、完全に臨界点を超えていた。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12970875679.html</link>
<pubDate>Tue, 30 Jun 2026 23:21:03 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 26 偽りの証明</title>
<description>
<![CDATA[ <p style="font-size: 18px;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20260626/17/itchy4/81/db/j/o0620041315796749113.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="413" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20260626/17/itchy4/81/db/j/o0620041315796749113.jpg" width="620"></a></p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">不動産仲介業者の松戸から「修繕積立金の横領の噂がある」と告げられて以来、蕨一太の日常は一変していた。自宅が売れない本当の理由が、まさか足元の管理組合に潜んでいるとは思いもしなかった。 蕨は、次年度の理事就任を控えているという立場を利用し、水面下で過去の会計報告書を集めていた。しかし、表面上の書類をいくら眺めても、数字は不自然なほど完璧に辻褄が合っていた。毎年の決算書には、銀行名義の「残高証明書」のコピーがしっかりと添付されており、木更会計監査役の判子も押されている。&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「本当は根も葉もない噂だったのか」&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">諦めかけた蕨だったが、ある日、船橋ホームズの松戸から連絡が入った。&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「蕨さん、例の噂ですが、他の仲介業者の間でも具体的に囁かれているようです。特に、金の移動頻度が不自然に高いという話が出ています。もし可能なら、コピーではなく、銀行が発行した残高証明書の原本を直接、理事会で確認できるように動けませんか」&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">原本の確認。それは自主管理を行っている我がマンションにおいて、最も触れてはいけない聖域に踏み込むことを意味していた。現在の会計は、長年信頼されている南辺会計担当理事が一手に引き受けている。彼に疑念の目を向けることは、これまでのマンションの平穏な人間関係を壊しかねないリスクがあった。 しかし、このまま無関心を決め込んでいれば、マンションの価値は暴落し、住人全員が泥舟とともに沈むことにもなる。蕨は意を決して、週末のロビーで南辺会計担当理事と待ち合わせることにした。</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;日曜日、エントランスに現れた南辺の顔色は、驚くほど土気色だった。声をかけると、南辺の肩が一瞬、不自然に跳ね上がったのが分かった。&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「南辺さん、お疲れ様です。実は次の理事会に向けて、自主管理の勉強をしていまして。過去の残高証明書について、少し教えていただきたいんです」</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;蕨が極めて穏やかに、しかし真っ直ぐに南辺の目を見つめて切り出すと、南辺の唇が微かに震えた。その一瞬の動揺を、蕨は見逃さなかった。噂は、単なる噂ではない。確信が、蕨の胸の中で冷たく弾けた。</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12970874988.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Jun 2026 23:50:15 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 25 臨界点</title>
<description>
<![CDATA[ <p><span style="font-size:1.4em;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20260624/19/itchy4/e7/7e/j/o0620046315796169965.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="463" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20260624/19/itchy4/e7/7e/j/o0620046315796169965.jpg" width="620"></a></span></p><p>&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「あと一回だけ、次の大勝負で全てが元通りになる」 &nbsp;&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">夜、静まり返ったリビングで、南辺はパソコンの画面に映る数字を血走った目で見つめていた。口座の残高は、彼がかつて誇りに思っていた几帳面な管理体制をあざ笑うかのように、歪な空洞を描いている。 最初は、ほんの十万円の「借り入れ」のはずだった。株で利益が出れば、すぐに何事もなかったかのように口座に戻す――その甘い見通しは、一度目の暴落であっけなく崩れ去った。&nbsp; 損失を取り戻そうと躍起になるたび、傷口は広がった。数十万が数百万円になり、気づけばパールマンション富士見の共益費と修繕積立金から引き出した総額は、数千万円という天文学的な数字に達していた。 これだけの巨額になれば、もはや「一時的な拝借」という言い訳は通用しない。自分がやっていることは、明白な犯罪だ。しかし、南辺の脳内はすでに尋常ではない自己正当化の論理に支配されていた。 &nbsp;&nbsp;&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">「俺はこれまで、自主管理のマンションのために無報酬で泥臭い会計仕事を一身に背負ってきたんだ。誰もやりたがらない面倒な帳簿付けを完璧にこなしてきた。これくらいの融通を利かせてもらう権利はあるはずだ。それに、次の取引で一発当てれば、全額をそっと口座に戻せる。そうなれば誰も傷つかない。俺はマンションを救うために、一時的に資金を運用しているだけなんだ」&nbsp;&nbsp;&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">心臓の鼓動が、耳の奥で不快な音を立てて響く。最近、背後に誰かの視線を感じることが増えた。理事会での茂原理事長や木更会計監査役の何気ない一言にも、過剰に身体がすくむ。彼らは何も気づいていないはずだ。残高証明書は、自宅のプリンターと画像編集ソフトを駆使して、一円の狂いもないよう精巧に偽造して提出してある。監査の目は節穴だ。 だが、南辺のスマートフォンの画面が不意に震えた。画面に表示された文字を見た瞬間、彼の指先が凍りついた。それは、銀行の担当者からではなく、マンションの住人である「蕨」からの、何気ない立ち話の誘いだった。 &nbsp;&nbsp;&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">&nbsp;</p><p style="font-size: 18px;">南辺さん、今度の日曜会計のことで少し教えてほしいことがあるんですが。ただの世間話か、それとも。南辺の背中に冷たい汗がどっと噴き出した。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12970680566.html</link>
<pubDate>Wed, 24 Jun 2026 19:40:18 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 24 反論の練磨</title>
<description>
<![CDATA[ <p><span style="font-size:1.4em;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241203/11/itchy4/03/12/j/o0629042015517196788.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241203/11/itchy4/03/12/j/o0629042015517196788.jpg" width="620"></a></span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">理事会が終わり、蕨は資料を持ち帰るとすぐにデスクに広げ、南辺の言葉と資料の矛盾をじっくりと見比べていた。彼は確かに修繕工事が行われたと言っていた。だが、住民の誰もその工事に気づいていない。それに、資料に記載された金額が異様に高すぎる。どこかがおかしいがピースが埋まらない。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">何度も報告書に目を通し、南辺の言葉を思い返した。彼の答えは確かに理路整然としていたが、焦りを感じた。言葉は表面的には合っているが、その裏にある不安が蕨には見えていた。何かを隠しているのは明らかだ。それも、修繕工事の規模や内容ではなく、もっと根本的な部分だ。</span></p><p><br><span style="font-size:1.4em;">だが、今のところ確実な証拠はない。ただの疑念に過ぎない。しかし、この疑念を解き明かすための手掛かりがあるはずだ。次の理事会までに、さらに掘り下げるべき情報がどこにあるかを考えた。</span></p><p><br><span style="font-size:1.4em;">明日は工事業者を調べてみる。もし本当に工事が行われていたなら、業者側にも記録が残っているはずだ。業者の名前を調べ、実際に連絡を取って確認することに決めた。さらに、住民の中で工事に気づいた人がいないかを直接聞き込みするつもりだ。南辺が何を隠しているのか、その全貌を突き止めるために動き出す必要がある。</span></p><p><br><span style="font-size:1.4em;">毎夜、南辺会計担当理事の心は落ち着かなかった。パソコンの前で新たな架空の取引を作り出し、工事の記録をさらに精密に整える。これまでに引き出した金額を他の口座に移し、監査が入っても残高が正確に見えるように計画を練った。絶対にミスはしない。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">だが、蕨の動きを完全に読み切ることができなかった。彼が何を次に仕掛けてくるのか、予測がつかない。それが一番の恐怖だった。理事会での質問はまだ序の口だ。次に彼がどこを突いてくるのか、そしてそれにどう対処するのか。南辺は焦りながらも、冷静さを失わないように自分に言い聞かせた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「奴に気づかれたら、すべてが終わる」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">一つのミスも許されない状況で、深夜まで次の工作を考え続けた。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12877277689.html</link>
<pubDate>Sun, 22 Dec 2024 00:40:55 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 23 隠鍛錬</title>
<description>
<![CDATA[ <p><span style="font-size:1.4em;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241203/09/itchy4/2b/b1/j/o1024068415517152007.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241203/09/itchy4/2b/b1/j/o1024068415517152007.jpg" width="620"></a></span></p><p dir="ltr">&nbsp;</p><p dir="ltr"><span style="font-size:1.4em;">理事会が終わっても、心の中のざわつきが止まらなかった。蕨の質問は予想以上に鋭く、明らかに何かを掴もうとしている。それが南辺の隠蔽した事実にどれほど近づいているのか、考えるだけで背中に冷や汗がにじむ。奴は確実に踏み込んできた。<br><br>会議の間中、南辺は気づかれまいと冷静を装ったが、内心では不安が膨らんでいくばかりだった。架空の工事や取引を仕立て上げたはずなのに、蕨はまるでその裏側を見透かしているようだった。部分的な修繕という言い訳でその場は切り抜けたが、次に何を仕掛けてくるかがわからない。<br><br>部屋に戻るとすぐに資料を確認した。架空取引の工事報告書や費用の明細。すべてを再確認して、抜け目のないようにしておく必要がある。もし次の理事会でさらに突っ込まれたら、その時こそ、全てが崩れる危険があった。<br><br>パソコンの画面に目を向け、南辺はさらに次の隠蔽工作を考え始めた。もはや一つの隙も許されない状況だ。これ以上、蕨に気づかれることは絶対に避けなければならない。架空取引の記録をさらに詳細にし整えておく。<br><br>彼は資料の山に埋もれながらキーを叩きまくる。蕨の発言を想定し、それを打ち崩す論理を幾度も組み立てては書き直す。「これでは甘い」と呟き、思考を深める。手元の時計が夜半を告げても止まらない。焦燥と闘志が交錯し、彼の瞳は鋭く輝いていた。次は必ず勝つ。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12877275903.html</link>
<pubDate>Mon, 16 Dec 2024 01:16:08 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 22 攻防</title>
<description>
<![CDATA[ <p><span style="font-size:1.4em;"><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241203/09/itchy4/2f/95/j/o0703046915517152001.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241203/09/itchy4/2f/95/j/o0703046915517152001.jpg" width="620"></a></span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">外壁修繕工事、いつの話だ。ティーパーティーの時から、ずっと引っかかっている。南辺会計担当理事がどこかぎこちなく感じるのは、ただの勘違いではない。会計報告を聞きながら、蕨は南辺の言葉一つ一つに集中していた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">彼は報告を淡々と続けるが、その表情の裏にあるものを見逃してはいけない。確かに資料は整っている。だが、あまりに整いすぎている。それが逆に不自然だ。どこかで彼の言葉のほころびが見えるはずだと思った。<br>蕨一太の発言は独り言のように始まった。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「南辺さん、その修繕工事って具体的にいつ行われたんですか」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺の顔が一瞬固まった。やはり、何か隠している。だが、彼はすぐに冷静を装い、当たり前のように返事をしてきた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「ええ、今月初めに業者と契約して修繕を行いました。大掛かりなものではないので、住民に影響を与えることはありませんでした」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">その言葉に蕨は違和感を感じた。外壁の修繕が行われたなら、少なくとも工事の気配くらいは感じ取れるはずだ。足場も何も組まれていなかったのに、どうしてそんなに費用がかかるのか。さらに問いを続ける。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「でも、大掛かりな足場が組まれていないのに、どうしてそんなに費用がかかるんでしょうか。住民たちも、特に工事の存在に気づいていないようですが」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">この瞬間、南辺の中で全てが真っ白になった。蕨の指摘が準備していたシナリオを一気に崩していくのがわかる。だが、ここで動揺を見せればすべてが終わる。南辺は必死に冷静を装いながら言い訳を紡いだ。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「それは部分的な修繕だったので…目立つ工事ではありませんでした。費用は必要最低限で済んでいますが、安全性を確保するためにはどうしても必要でした」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺は自分の発言ながらどこか言い訳じみた説明だと感じた。蕨の視線は鋭くまるで心の中を見透かしているようだ。茂原理事長が間に入ることで、会議は一旦収まったが蕨の存在が脅威に感じて仕方なかった。</span></p><p><br><span style="font-size:1.4em;">「こいつ、まだ何かを仕掛けてくる」</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12877267750.html</link>
<pubDate>Tue, 10 Dec 2024 00:27:23 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 21 交錯する視線</title>
<description>
<![CDATA[ <p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241017/13/itchy4/63/cc/j/o0719048015498961386.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241017/13/itchy4/63/cc/j/o0719048015498961386.jpg" width="620"></a><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">蕨一太は管理組合の会計報告書をさらに詳しく調べた。特に修繕積立金の動きが不自然な部分に注目し、防犯カメラの設置や外壁修繕の名目で大きな支出がされていることに気づいた。これらの工事が本当に行われたのか、彼は全く記憶になかった。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「住民として生活しているのに、そんな工事なんて見たことがない」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">蕨の疑念はますます強まり、次第に確信へと変わりつつあった。管理組合の要職にある理事が、横領を行いながら組織的に隠蔽している可能性が高い。だが、この疑いを持ちながらも、証拠はまだ手に入れていない。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「次の理事会で直接聞いてみるしかない」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">蕨はそう決意し、理事会に参加する準備を始めた。茂原、柏、木更 誰もが怪しいが、まずは会計担当の南辺に狙いを定めるつもりだった。<br>__________________________________________</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">数日後、南辺会計担当理事は理事会に出席するため、会議室に足を運んだ。理事はすでに集まり、蕨一太もその場にいた。蕨は特に目立つことなく席に座っていたが、彼の視線が自分に向けられていると感じた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「蕨は何かを掴んでいるのかもしれない」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">だが、動揺を見せるわけにはいかない。南辺はいつも通りの無口な表情を保ちながら、会議の議題に耳を傾けていた。南辺は自分の資料を机の上に並べながら、内心の焦りを押し殺そうとしていた。汗で掌がじっとりする。普段通りの淡々とした会計報告をこなすはずだったが、どうにも胸のざわめきが止まらない。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「蕨が何かを嗅ぎつけているのか、それともただの杞憂か。わからないが冷静を保つしかない。」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">彼の視線が刺さるように感じた。蕨一太が座っている位置から、ずっとこちらを見つめているような気がしてならない。</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「それでは南辺さん、会計報告をお願いします」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">茂原理事長が声をかけてきた。緊張感が一気に高まるが、外面だけはいつも通りだ。南辺は資料を手に取り、準備していた通りに報告を始めた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「今期の修繕費についてですが、防犯カメラの設置と外壁の修繕工事にかかる費用が増加しています。これらはマンションの安全を守るための必要な支出です」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">言葉が滞りなく出るように心がけたが、内心では蕨が次に何を言い出すのかが怖くてたまらなかった。茂原理事長も、木更会計監査役員も特に異議を挟まなかった。<br><br>これで安心できるかと南辺が思ったその時、蕨一太が静かに口を開いた。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12871603768.html</link>
<pubDate>Wed, 04 Dec 2024 00:40:39 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 20 迫られる南辺</title>
<description>
<![CDATA[ <p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241017/13/itchy4/b7/64/j/o0922061515498961383.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241017/13/itchy4/b7/64/j/o0922061515498961383.jpg" width="620"></a>　　<br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺会計担当理事はエントランスを通り抜け、いつも通りにマンションの会議室へと向かった。次の理事会が間近に迫っており、彼は再び会計報告を提出しなければならなかった。だが、最近の理事会の雰囲気に微妙な変化があったことに気づいていた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「誰かが動いている」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">そう感じながらも、彼は冷静を装っていた。南辺は普段から無口で目立たない性格だが、その外面を保つことで他者の疑念をかわしていた。しかし、今回ばかりは、心の中で広がる焦燥感を抑えることができなかった。<br><br>この数ヶ月、彼は巧妙に隠蔽工作を続けていた。電子データの改ざんを行い、複数の口座を開設して資金を分散させ、架空取引を計上して不正を隠蔽してきた。茂原理事長や木更会計監査役員とも、表向きは何の問題もなく業務を進めているように見えた。理事会の議事録や報告書は完璧に整えられ、住民たちも大きな関心を寄せていない。しかし、最近になって違和感が南辺の中に芽生えていた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺は少し前に開かれたティーパーティーを思い出した。９階の住民、蕨一太が何度か修繕積立金について話題にしていたが、その時は特に危険を感じなかった。だが柏副理事長との立ち話のあと、蕨の動きが気になり始めた。住民の一人がこれほどまでに修繕費や管理費に関心を寄せるのは珍しいことだ。普通の住民なら、会計報告書にさえ目を通さないのが一般的だろう。</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「蕨、あの男どこまで知っている」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺の胸に、じわじわと不安が広がる。彼が今まで隠し通してきたことが、蕨の目によって暴かれるかもしれない。だが、南辺はそれを絶対に許してはいけなかった。もし蕨が何かを掴んでいたとしても、彼を出し抜く方法を考えなければならない。<br><br>その夜、南辺はデスクに向かい、今までの報告書を見返しながら、次の隠蔽工作を考えた。蕨が理事会で何を質問してくるのかを予想し、その場で反論できるようにシナリオを準備していた。会計報告の資料を再度チェックし、どこに不自然さが残っているのかを徹底的に洗い出した。特に修繕積立金の動きについて、蕨が突いてくることは明白だった。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「修繕工事の詳細をもっと具体的に作り上げなければならない」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺は架空の工事業者を再び利用することにした。防犯カメラの設置や、外壁の補修などを詳細に記載し、その見積書を作成する。住民たちが細かい点まで確認しないことを見越して、南辺は巧妙に作り込んだ資料を完成させた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「隠し通せる」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">しかし、その言葉とは裏腹に、南辺の心の中は不安でいっぱいだった。会計報告書にミスはなく、数字は全て整っている。だが、もし蕨が事実を突き止めれば、その瞬間に全てが崩れる。南辺は次第に蕨を警戒し始めた。彼がこれまでに収集している情報がどれほどのものかは不明だが、いずれにせよ、彼を先回りして動かなくてはならないと感じていた。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12871589205.html</link>
<pubDate>Sun, 01 Dec 2024 01:16:34 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 19 工作を重ねる</title>
<description>
<![CDATA[ <p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241017/11/itchy4/df/ef/j/o1752117015498919478.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241017/11/itchy4/df/ef/j/o1752117015498919478.jpg" width="620"></a></p><p><br><span style="font-size:1.4em;">数字を操作することは、南辺にとっていつもの作業になりつつあった。机に向かうたび自分を切り離し、ただ淡々と手を動かす。前に進む以外は何の感情も伴わない作業で、違和感は消えていった。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">彼はパソコンの前に座り、次なる策を考えた。修繕積立金の動きが大きくなると、当然、目立つようになる。そこで彼は、もう一度架空取引を複数組み合わせることを計画した。修繕積立金を使った架空の「防犯強化工事」や「緊急修繕対応」を記録し、金額の増減が自然に見えるように仕立て上げるのだ。住民が求める透明性に応えるための偽装資料も準備し、次回の会計報告でそれを提出する計画を立てた。帳簿上は完璧に整えられているが、実際には何一つ行われていない取引ばかりだった。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺は、全てが順調に見える状況を維持するため、翌日も新しい資料作成に取り組んだ。さらに、これまでに引き出した資金を別の口座に移し、残高の変動をより隠しやすくするための調整も行った。口座の複数化と資金移動を続けることで、監査が行われても簡単に不正が露見しないように仕組んでいた。<br><br>「ここまでは完璧だ、誰にもバレやしない。少しは時間が稼げる。」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">しかし、心の奥底では、南辺は完全に安心することができなかった。柏や他の理事、さらには住民たちの目が自分に向けられ、次第に疑念が広がっていく可能性がある。自分が何かを隠していると気づかれた瞬間、全てが崩れるのではないかという恐怖が、彼を追い詰めていた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「引き返すことはできない。」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺は再び自分を奮い立たせ、さらなる工作を進める決意を固めた。彼の外面は、相変わらず完璧な理事会計担当を演じていたが、その裏では見えない歪みが彼の日常を蝕んでいった。</span><br>&nbsp;</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12871588447.html</link>
<pubDate>Fri, 29 Nov 2024 00:09:54 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>Chapter 18 疑惑の芽</title>
<description>
<![CDATA[ <p><a href="https://stat.ameba.jp/user_images/20241016/17/itchy4/89/7f/j/o1063070915498665260.jpg"><img alt="" contenteditable="inherit" height="414" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20241016/17/itchy4/89/7f/j/o1063070915498665260.jpg" width="620"></a><br><br><span style="font-size:1.4em;">南辺は会計報告を無事に終え、理事会を後にした。理事長との会話はなんとか切り抜けたものの、内心の不安はますます強まっていた。架空取引の計上はうまくいったが、少しの隙でも見せれば、全てが露見してしまう可能性がある。茂原理事長だけでなく、他の理事や住民からの視線も感じるようになっていた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「気を緩めるわけにはいかない」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">そう自分に言い聞かせる南辺だが、その不安は簡単には拭えなかった。次の隠蔽工作をどう進めるべきか考えていたところ、エントランスで副理事長の柏と顔を合わせた。柏はいつもフレンドリーな口調で、南辺に話しかけてくる。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「南辺さん最近どうです、会計の仕事、うまくいってますか」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">柏の何気ない問いかけに、南辺は少し驚いたが、すぐに微笑みを浮かべて返事をした。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「ええ、まあ順調です。特に大きな問題もなく、すべて予定通り進んでいます」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">柏はにこやかにうなずきながら、「それは良かった」と応じたが、ふと口調を変えて少し真面目な顔をした。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「でもね、最近住民の何人かが、修繕積立金のことを気にし始めているみたいですよ。次の大規模修繕のために、もう少し透明性が欲しいってね」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">南辺は心臓が跳ね上がるほど驚愕した。修繕積立金、それはまさに彼が多額の資金を引き出して隠蔽している部分だった。焦りを押し隠しながら、彼は普段の落ち着いた口調を崩さずに答えた。</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「そうですかまあ、住民の皆さんが気にするのは当然です。次回の会計報告では、もっと詳しく説明できるように準備しておきます」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">柏は軽く笑って肩を叩いた。</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">「頼りにしてますよ南辺さん。僕らも忙しいから、しっかり頼みましたよ」</span><br>&nbsp;</p><p><span style="font-size:1.4em;">柏との会話が終わり、南辺は再び不安に駆られた。修繕積立金に対する住民の関心が高まっている。これは危険な兆候だ。次の会計報告で少しでも不自然な点があれば、一気に疑念が広がる可能性がある。彼は焦燥感に襲われながら、さらに巧妙な隠蔽工作を考えなければならないと感じた。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/itchy4/entry-12871504669.html</link>
<pubDate>Tue, 26 Nov 2024 01:55:38 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
