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<title>小説　『メタル・ディガー』</title>
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<description>新たなエネルギー源である『ルナ鉱石』。そのルナを求めてピータービルト型のトレーラーを駆り、全国を飛び回る『メタル・ディガー（お宝ハンター）』のアランとその仲間たち。それに加わったロナンという少年の物語です。</description>
<language>ja</language>
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<title>プロローグ</title>
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<![CDATA[ 　新暦2168年、地球に巨大な彗星が接近。そのまま横断するかに思われたその彗星は、天体観測を楽しむ間も無く突如四方に破裂、一部が隕石として地球に降り注ぎ、その特異な磁場と熱源を持つ石は各地に甚大な被害をもたらす。<br>　その隕石群に呼応するかのように、自然界の蓄積した鬱憤が爆発。大規模地震、同時火山噴火、温暖と寒波を繰り返す異常気象、津波、干ばつ…古来より恐れられていたあらゆる自然災害が一斉に襲い生物の３分の２が死滅、ある国は滅び、またある国は沈み、自然界が平穏を取り戻し始めたあとも個人、部族、国家間で限られた食料、燃料を巡り激しい戦争が繰り広げられる。<br><br>　新暦2169年、甚大な被害を受けた北部の工業大国、ロンド連邦より大量の難民が南の肥沃かつ隕石の被害が比較的少なかった農業国家ムーランに押し寄せる。<br>　初めは友好的、戦略的に難民を受け入れてたムーラン政府も増えすぎる難民や各地で起こる現地人や移民間に生じる摩擦に苦慮し、三年後に国境を封鎖。<br><br>　新暦2173年、ムーラン北部のロンド移民の安全、保護を名目にロンド軍はムーラン北部に侵攻。同時にロンド・ムーラン戦争勃発。<br><br>　新暦2175年、ロンド軍ムーラン中部を制圧。この年、ロンド連邦の科学者ロットナー博士により《悪魔の石》と揶揄された隕石を新たなエネルギー源として使う用法が確立され、それ以後《悪魔の石》と厄介物にされていた隕石は、月からの贈り物として<ruby><rb />学術名<rp><font size="1">《</font></rp><rt><font size="1">ルナジウム</font></rt><rp><font size="1">》</font></rp></ruby>として正式に命名される。<br>各地では政府、民間企業、独立系ハンターによりルナジウムの回収が始まる。<br>後に人々は彼らを総じて《メタルディガー（マイナーメタルを採掘する人）》と呼ぶことになる。<br><br>　新暦2177年、ロンド・ムーラン戦争が終結。終戦協定によりロンド軍はムーラン中部より撤退。代わりにムーラン北部を割譲、以後北ムーラン自治共和国（すでに住民の9割がロンド人）として名目上独立。<br><br>　新暦2199年、ロットナー博士失踪（暗殺、亡命、ジュールによる拉致などいろいろな仮説があるが真相は今も不明）<br><br>　新暦2201年、ロンド連邦の首都、イルザ中心部で大規模爆発が発生。<br>　ロンド連邦政府報道官により、爆発は国家主義ジュール国の支援を受けたルーン半島の小国、キンドレア王国によるテロと断定。キンドレアと敵対関係にあるサバス王国支援を表明。即座にキンドレアに対する軍事制裁を発動する。<br><br>　新暦2202年、多国籍軍の支援を受けたサバス王国がキンドレアを制圧。キンドレア王は東方のシェンヤンに亡命、キンドレア王国崩壊。<br>　翌年、サバス王国がルーン半島を統一。<br><br>　それから12年後の新暦2214年……<br>
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<pubDate>Tue, 13 Jan 2015 18:58:22 +0900</pubDate>
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<title>第一章　⑤ロナンの旅立ち</title>
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<![CDATA[ 　一行はミリーのペーサーをコンテナに積み込み、教会へ向かった。<br>　教会に着くと、ロナンが待ちわびていたかのように目をきらきらさせていた。<br>　二十メートルはあろう巨大なトレーラーも、田舎の少年には刺激的なようだった。<br>　アランがまず車を降り、ミリー、クマロと続いた。<br>　子供たちはクマロの大きな姿に、はじめはまるで怪獣でも見たかのような驚きの表情を浮かべていたが、やがてクマロの見た目とは違って、優しい表情にきづいたのか、おそるおそる近寄って行く。<br>　アランがロナンに向かって言った。<br><br>「ロナン、さっそくだがおまえさん、俺らと一緒にこないか？　表向きは運送屋だが、実を言うとルナ鉱石を集めてる、お宝ハンターが本業さ。世間じゃメタルディガーなんて呼んでるけどな。」<br><br>　ロナンはあまりに唐突な申し出に驚いて言葉がでなかった。<br>　たしかによそ者のアランに興味は持っていたが、いきなりの一方的な言葉に当惑した。<br>　アランが続ける。<br><br>「お前さん、いつまでもここにいるわけにも行かないだろう。どうだ？　深く考えずに、まずは見習いって形で。俺らについてくりゃ、ジルドにだって行けるし、ユーラとかいう兄貴にも会いにいけるぞ。武術に興味があるのなら（親指でミリーを指し)ここにいるミリーに習えばいい、勉強がしたけりゃ地元に超がつくほどの天才がいるんだ。そいつに教わればいい。なあに、全国を飛び回ってんだ。ここにゃいつでも帰ってこれるさ」<br><br>　ロナンの心は幾分揺れ動いたが、やはりあまりにも急な事なので、返答に困っていた。<br>　ロナンがシスターを見ると、あなたの好きになさい、という顔で優しく微笑んでいる。<br>　子供たちを見ると、何人かがクマロの腕にぶらさがりながら、無邪気に遊んでいた。<br><br>　高齢なシスターだけで子供たちを守れるだろうか？肉や魚の調達は誰が？野犬が襲ってきたら……<br>　そう考えたら、好奇心がすっかり消え去り、不安ばかりが頭をよぎる。<br>　その姿を察して、ジレット爺さんが言った。<br><br>「子供たちのことなら心配いらんよ。わしもちょこちょこ様子を見に来るし……」<br><br>　『子供たち』という言葉にアランがはっとした。<br><br>「そうそう、大事に事を忘れてたわ。たぶん俺の勘が正しければ……」<br>　そういうとクマロの元へ行き、耳元でなにやら、ごにょごにょ言っている。<br>　クマロはうなづくと、子供たちを丁寧に降ろして、コンテナからつるはしを持ってきた。<br><br>「ちょっとみんな来てくれ」<br><br>　アランはそう言い残すと、クマロと共に教会の中へ入っていった。<br>　みんなその後を着いて行く。<br>　二人が女神像の前に立つと、なにがはじまるんだろうかと思う間もなく、クマロが女神像に向かってつるはしを思いっきり振り下ろした。<br>　砕ける女神像。驚く一同。シスターはわなわなと震えている。<br><br>「な、なにするんですか！？」とロナンが声を張り上げるのと同時に、クマロが今度は残された台座に向かって、つるはしを振り下ろす。<br>　すると砕けた台座の隙間から、溢れんばかりの金貨がこぼれ落ちた。<br><br>「こ、これは！？」<br>「なあに、シスターから前の神父が亡くなる寸前に『めがみ』と言っていたってのを聞いてな。少し気になっていたんだ。おおかた、いざというときのために貯めていたんだろう。たぶん、亡くなる前にこの事を伝えたかったんじゃないかな」<br>「神父様！」と、シスターが感慨深げに涙を浮かべる。<br><br>　ミリーがまたアランを睨みつけた。<br><br>「何も出てこなかったら、どうしたつもりだ？」<br>「６割がたは自信あったさ。まあ残りの４割だったら……」アランは少し冷や汗がでた。<br><br>　ロナンを見ると、表情に明るさが戻っている。<br><br>「これでおまえさんの心配の種も解消したろう？　これだけありゃ教会の修繕だって、獣から守る柵だって作れるぞ。なんならいっそ、衛星テレビや通信器も揃えりゃいいさ。そうすりゃいつだってここの様子がわかるぞ」<br><br>　こうして[ハイエナ・トランスポート]にロナンが加わる事になった。<br>　急な旅立ちに子供たちは悲しげな表情を浮かべていたが、ロナンがいつでも会いにこれることを告げると、少し安心したようだった。<br><br>「じゃあ、そろそろ出発しよう。ロナン、持って行くものはあるか？」<br><br>　ロナンは家屋から何枚かの下着類が入った風呂敷と、右手に例の八角棒を携えてきた。<br><br>「やっぱりそれ持って行くのか。どれ、その長さじゃキャビンには入りきらねぇ。コンテナに積むんでよこしな」<br>　アランがロナンか八角棒を受け取る。想像してた以上の重さに前につんのめりそうになる。<br><br>（なんだこの重さは。鉄でも詰めてんのか、こりゃ。こんな重いのを振り回してたのか）<br>　一瞬驚きつつも、こいつならありるな、と少し納得した。<br>　クマロとミリーがキャビンに乗り込む。続いてアランが運転席へ。<br>　ロナンは生まれて初めて乗る巨大なトレーラーに胸が躍った。<br>　子供たちは名残惜しそうにロナンを見ている。<br><br>「ヒゲのおっさん、ロナンを頼むぞ！」<br>「今度はいつ来る？」<br>「おみやげ忘れないでね」<br>　ロナンが手を振って答える。<br><br>「じゃあ爺さん、世話になったな。シスター、近くに来たらまたよらせいてもらうぜ」<br><br>　アランはシスターとジレットじいさんに最後の挨拶をすませ、トレーラーをハンドルを右に切り、ルート56の本線へと向かった。。<br><br>　またもやその一部始終を教会の裏山から遠目で眺めるインチキン、出っ歯、赤鼻の三人組。<br><br>「おかしら、なんだかあの生意気なくそがき、拉致られちまったみたいですぜ」<br>「おうよ、おそろく一番労働力になりそうなのを選んだんだろうよ……気の毒にな」<br>「でもおかしら、拉致られたのがあの生意気なくそがきってのは、少しいい気味ですね」<br>「まあな、大人にたてつくとどうなるか、一度怖い目に見りゃいいんだ」<br>　インチキンはおでこの古傷をかきながら、そう言った。<br><br>　トレーラーの助手席でロナンは落ち着かない様子で目をきょろきょろさせている。<br>「どうだ？　はじめて乗った感想は」<br>「すごいです！　乗り物といえば牛馬かジレット爺さんのスクーターしか乗った記憶がないので」<br><br>　ロナンの鼓動が自分にも伝わるようで、アランは少し満足げになった。<br><br>「しっかし、見事に誰も通らなかったな」<br>「ああ、奴ら以外はな」奥からミリーが顔を出す。<br>「やつら？　そうだ！　なあロナン、きこりのインチキ……とか言うやつのこと知ってるか？」<br>「木こり？　インチキ？……」ロナンが下を向いて考え込む。<br>「なんだ、知らんのか。この道で会った三人組なんだがな。そいつらに教会の場所をおしえてもらったんだ」<br>　（三人組？もしかしたら……）<br>「そういえば、一年ぐらい前に裏山で、僕が落とした獲物を横取りしようとしてた三人組がいたんで、こらしてめてやったんです」<br>　と、ロナンは左で石を投げるポーズを取りながら、無邪気に笑って見せた。<br>「それからは僕の顔を見たら逃げてしまうんで話したことはないです。ちゃんと話してくれたら鳥ぐらいいつでも譲ったのに……」<br><br>　あいつら食うにも困ってるのか、とアランには貧しそうな三人組が、少し気の毒に思えてきた。<br>　そしてラジオのスイッチをONにする。<br>　ラジオからはまた雑音交じりのニュースが聞こえてくる。<br><br>　『……スポンサー問題に揺れる【セノイア・サーモンズ】ですが、【オム・ネ・ポロリン社】の最高責任者ニップリー・ポロリン氏は、改めて明日の正午過ぎに選手会、サポーターズクラブと説明会合を開く事で合意し、一部移籍をほのめかしている選手……ザー…』
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<link>https://ameblo.jp/junkuromi/entry-11975344111.html</link>
<pubDate>Sat, 10 Jan 2015 06:51:06 +0900</pubDate>
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<title>第一章　④アランの過去</title>
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<![CDATA[ 　新暦2202年、当時16歳だったアランはイネス王国を支援する多国籍軍のひとつ、北ムーラン自治政府軍の学徒として、崩壊間近のキンドレア国内に派兵されていた。学徒であるゆえ前線には行かず、あくまで制圧地域の治安維持や後方支援が主な任務であったが、たびたび行われる散発的な銃撃戦や自爆テロなどで、若い学徒も度々命を落とした。そんな中、アランが片目失う出来事が起こる。<br>　いつものように治安維持の任務についていると検問所を強引に突破してくる一台のトラックがあった。<br>　周りからは『敵だ！』『うてー！』と怒号が響き渡る。<br>　アランはとっさにライフルを構えると、正面から突進してくるトラックの運転席の男に照準をあわす。幼いころから射撃の名手であったアランには命中させるのはたやすかった。が、人を殺したことのない16歳の彼には引き金を引くことができない。躊躇している内に、トラックは横からの一斉射撃で直進性を失い、右にそれて、アランの左側に停まっている装甲車に激しく激突した。<br>　その衝撃で爆発炎上するトラックと装甲車。その爆風でアランは激しく吹き飛ばされたと同時に,左目に激痛が走る。そこからの記憶は途切れ、気がつくと野戦病院で横たわっていた。左目には包帯が巻かれていて、記憶をたどる限り、左目を失ったことに気づいた。アランはそのまま戦地より戻ることとなった。<br>　ロナンの腕に刻まれた紋章、それそのものが何を意味するかはわからないが、かの地キンドレアで、腕にその紋章が刻まれた現地の人々を度々見かけたことがある。<br><br>「けっこう大きな傷でしょ？」ロナンがアランの顔を覗き込みながら言った。<br>　彼自身はその紋章についてはあまり気に留めていないようだった。<br><br>　一時間ほどするとミリーがスクーターに乗った一人の老人を連れて戻ってきた。<br>　老人はスクーターから降りると荷台から大きな麻袋を取り出し、肩にのせた。<br><br>「よいしょ、おーいシスター！　ついでじゃから小麦持ってきたぞ。そろそろ切れるとこじゃろ？」<br>「あらあら、いつもすいませんねぇ。ジレットさん」<br>「おお、ロナン。しばらく見んうちにまた背が伸びたんじゃないか？」<br>　ロナンが、へへっと笑う。<br><br>「さてトレーラーはどこじゃな？　一応解体の山からそれっぽいのを持ってきたんじゃが」<br>　アランとミリーがペーサーに乗り、そのあとをジレットじいさんが続く。<br><br>「ロナン、またあとでな！」<br>　車の窓からアランが叫ぶ。<br>　ロナンは手を振った。<br><br>　トレーラーに戻ると、クマロはすっかり目が覚めたようで、なまった体をほぐすためか、鉄製の大きなつるはしを振り回している。<br><br>「よう！　待たせたなクマロ」<br>　その言葉にクマロは、無言でフン！とボディビルダーのようなポーズをして見せた。<br><br>「さてさて、ではちょいと見てみるかのう」<br>　ジレット爺さんはそう言うと、重たそうに車体によじ登り、エンジンルームに顔を突っ込んだ。<br><br>「まあどうにかなりそうかの。もっともあくまでも応急処置程度じゃが」<br>　アランに安堵の表情が浮かぶ。<br><br>「ところで、これはまた随分珍しい機械をつんでおるのう。これはたしか……」<br>「ルナ圧縮機さ。今のところ民間で搭載してるのは自分ぐらいですぜ」アランが得意げに語る。<br>「結構したじゃろ？」<br>「ずばり、三億ギニー！　小型の試作品が二台作られて、一台が博物館に……もう一台がオークションで出品されるのを聞いて、有り金全部はたいて落札したんですわ。おかげで今じゃすっからかんでさあ」<br><br>　となりでミリーがじろりと睨み付ける。<br><br>「二千万スタートの物にいきなり三億の値をつけることはないだろう。順当にビッドすればもっと安く落札できたはず……」<br>「そういうなって、ミリー。こういうのは景気よく一気に張れば、競合相手も戦意を消失するってもんさ」<br><br>　また始まったミリーの小言に、アランはうんざりした顔をした。<br>　ジレット爺さんは苦笑いしながら、作業を続ける。<br><br>「話はかわるが、お前さん随分ロナンと仲良くなったみたいだのう」<br>「ああ、なんていうか面白いというか、見所があるというか……ほかの子とは違う何かをもってるような」<br>「もともと一歳ぐらいでここにきたからのう。外の世界を知らない分、吸収力が早いんじゃろ」<br>「親はいないんですかい？」<br>「はて？　あれは父親かのう。ルーン半島で大規模な戦争が起こった年に、今のお前さんと同じぐらいの年の男とふらりと教会にやってきての。次の日には子供だけ残して男の姿はもうなかったそうな。亡くなった神父さんなら何か知ってるとは思うんじゃが……よし、終わったぞ。エンジンをかけて見てもらえんか？」<br><br>　アランは車内に乗り込み、キーをONにする。<br>　すると補助エンジンが作動しはじめ、車内に明かりがともる。<br><br>「よっしゃー！　復活した」<br>「あくまで応急処置にすぎんからの。帰ったらしっかり整備するんじゃぞ。でないとまたいつ故障するやもしれん」<br>「まあそのへんは心配後無用。地元に戻りゃ、機械に関しては天才的な奴がいるんでね。いづれはそいつに頼んで、ルナだけですべてを賄えるように改造する予定で……あ、そうそういくらだい？」<br>「ああ、お代は結構じゃよ。もともとスクラップの山から拾ってきたもんだし、教会にも用事があったんでな」<br><br>　アランがそういうわけにはいかない、という顔をしてみせるとジレット爺さんは、思いついたようにいった。<br><br>「お代のかわりといったらなんじゃが、良かったらロナンを連れ出してくれんかのう？　はじめは邪魔かもしれんが、そのうちなんかの役にも立つじゃろ？」<br><br>　その言葉にアランは別段驚きはしなかった。<br>　心のどこかにこれと同じことを考えていたのかも知れない。<br><br>「じいさん、こんなどこの馬の骨かもわからん男に預けて、心配とかないんですかい？　それにロナンってのはいずれ兄貴のいるジルドの高校に通うつもりみてえだし」<br><br>　アランは心の中とはうらはらに、そう答えた。<br><br>「ジルドの高校の件はたぶん……無理じゃよ。いくらロナンが勉強をがんばったにしろ」<br>　その答えがアランにはすぐにわかった。<br>「あの紋章ですかい？」<br>　紋章という言葉にジレット爺さんの顔が険しくなる。<br>「知っておったか……なら、なおさら連れ出してもらわんとな。こんな片田舎で出会ったんじゃ、これもなんかの運命じゃろ」<br>　と、ジレット爺さんが満足げに笑った。<br><br>　アランは少し考え込み、となりにいたミリーに目をやる。<br>　ミリーはじろりと睨みかえし、<br>「私は別に構わんぞ」<br>　と一言だけいった。<br><br>
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<pubDate>Sat, 10 Jan 2015 06:50:01 +0900</pubDate>
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<title>第一章　③教会と少年</title>
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<![CDATA[ 　衛星通信で仲間と連絡を取るはずのミリーがまた車外に出てきた。<br><br>「アラン、残念ながら衛星障害だ」<br>「何？　こんな時に障害とはどこまでついてねぇんだ。ってまあ、半世紀前の衛星じゃ、しょうがないってか……はてさて、どうしたものか」<br><br>　ふとミリーに目をやると、先ほどの三人組が退散していった方角を無言で見つめている。<br><br>「そうか、さっきの連中にでも借りりゃいいのか。えーと、どれどれ……」<br><br>　そういいながら、ミリーと同じ方角に目をやる。<br>　すると一瞬アランの右目は、はるか上空の鷹が獲物のウサギに狙いを定めるかのように、鋭くなった。　遠くの茂みの影に潜む三人組を発見したようだ。<br><br>「おお、いたいた。よし、いなくなるまえに借りにいこう。おい、クマロ！　いつまでも眠そうにしてないで、ちょっとコンテナから電動バイク出してくれ」<br><br>　そう言われたクマロは、また大きなあくびをし、眠たそうにコンテナの後方に向かって行った。そしてコンテナ後方の扉を開け、ラダーには見向きもせずに、中からオフロード型の電動バイクを両腕で軽々と持ち上げたかと思うと、丁寧に地上に降ろした。どうやら100キロぐらいのものなら、わざわざラダーを使わずとも、こうやるほうが手っ取り早いらしい。<br><br>「じゃ、ちょっくら行ってくらあ」<br><br>　アランはそう言うと、バイクにまたがり、アクセルを握る。せっかちなのか、車体が安定しない状態から、フルスロットルで三人組の潜む茂みのほうへ、かっ飛ばして行った。<br><br>　茂みの中からはなおも三人組が、よほど暇でほかにやることもないのだろう、遠目でアランたちの様子を伺っていた。<br><br>「おかしら、やつらまだいますね」出っ歯が言う。<br>「まあ故障らしいからな」インチキンが答える。<br>「ん？おかしら何かこっちに向かってきますぜ」<br><br>　双眼鏡を覗き込んでいたアカハナが、猛スピードで向かってくるアランに気づいた。<br><br>「なにー？」インチキンが慌ててアカハナから双眼鏡を奪い取る。<br>「げ！　なんでこの場所がわかるんだ？」<br>「ど、どうしましょう、おかしら！　急いでアジトへ……」<br>「ばっきゃろー！　アジトなんぞばれてみろ……」と、インチキンの脳裏にある想像がよぎった。<br><br>　－－占領されたアジトで両足を投げ出しくつろぐ片目のハイエナ。その横に控える巨漢と冷血女。小間使いのように動きまわされる三人組－－<br><br>「とにかくだ！　ここは俺様にまかせろ。　いいか、絶対にお前らは一言も口を開くんじゃねえぞ」<br><br>　しばらくしてアランが三人組がいる茂みの前に到着する。<br>　固唾を呑む三人組。インチキンが様子を伺うように口を開く。<br><br>「だ、だんな。　どうかしたんですかい？」<br><br>　アランが答える。<br><br>「いやあ、悪い悪い。　通信関係が全部だめになっちまってな。そこでちょっくらお前さん方に電話かなんかを借りようかと思ってな」<br>「電話……ですかい？　（インチキンは慎重に言葉を選びながら）すいやせん、あっしら電話は持ち合わせてないんでげすよ」<br><br>　あたりが一瞬凍りついた。<br><br>「な、なにー無い？」アランの目が鋭く光る。<br><br>　その睨むようなアランの表情に三人組みはびくっとなる。<br><br>「ほんとにすいやせん、だんな。お役に立てないで……」<br><br>　二人の子分は、おかしらのその間違った返答の仕方に生きた心地がしない。<br>　とっさにインチキンにあるひらめきが浮かんだ。<br><br>「そ、そうだ！　旦那！　こ、ここから西のほうへ二キロほど道なりに進むと、古びた教会があるんでさあ。そこならおそらく電話ぐらいあるかもしれませんぜ」<br>「ほう、教会ねえ。そこに行くしかねぇか……ふぅ」アランは気が抜けたように頭を掻く。<br>　アランを見守る三人組。<br>「あんがとよ。仕事中に邪魔して悪かったな」とバイクの向きを変えた。<br><br>　ネガティブな三人組はその【仕事】という単語すら嘘を見破られた気がして、インチキンは去り際またアランの背中に向かって不用意な事を言う。<br><br>「いえいえ、ちょうどあっしらも天気が悪くなってきたんで、今日は作業をお開きにしようかと思ってたところなんでですよ、へへ」<br><br>　二人の子分は、雲ひとつ無い快晴な空を見上げながら、しばしあきれた。<br><br>「おかしら、どうにかまいたようですが、大丈夫ですかねえ？　教会のこと言っちまって……」<br>　出っ歯が不安そうに、おかしらの顔を覗き込んだ。<br><br>「まあ、いくらやつらでも女子供にまで手はかけんだろ……」<br>　インチキンは自分を納得させるかのようにつぶやいた。<br><br>　アランはトレーラーに戻ると、ミリーとクマロに教会のことを告げ、そのまま西のほうへ向かった。三人組が言ったように２キロほど進むと、コンクリート製のルート56から左側に、一本の舗装されていない脇道がそれている。バイクのハンドルを左にきり、その脇道を突き進む。すると山陰に隠れて、古びた教会と家屋が見えた。<br>　家屋の前では７～８人の子供の姿があり、犬やアヒルなどの家畜と元気に戯れている。アランはバイクを降りて近づく。するとみんな一斉にアランの方を見た。<br><br>「なんだなんだ、お前はだれだ？」<br>　よほど来客がめずらしいのであろう、男の子の一人が叫ぶ。<br><br>「おじさんわるもんか？」<br>「いやいや、いい人、いい人！　それにおじさんじゃないよ。まだ二十代だし……」<br>「嘘付け、お前は悪人顔だぞ。さては人さらいだな！」子供たちは一斉に敵対心をむき出す。<br><br>　（ふぅ～、がきんちょはめんどくさくて苦手だ……）<br><br>「いや、ほんとだって。だれか大人の人はいるかい？」アランは苦笑いをうかべた。<br>「シスターならいるよ。」一人の女の子が答える。<br>「そうかい。じゃあお譲ちゃん、そのシスターを呼んできてくれないか？」<br>　アランは味方にできそうなその女の子を使うことにした。<br>「うん、いいよ」と女の子は家屋に入って行く。<br><br>　残されたアランは敵意むき出しのこどもたちの視線に辟易しながら、早く大人が到着してくれることを願った。<br>　しばらくして、先ほどの女の子がシスターらしき人物の手をひいて、家屋の外に出てきた。白髪で年は結構いってるようだが、どこか凛としていた。<br><br>「これこれ、いったい何事ですか？」<br>　シスターは子供たちにそういうと、視線の先に見知らぬ男が立っているのにきづいた。<br>「あら、どちらさまですか？」<br><br>　シスターの姿にアランはやっとほっとする。<br><br>「いやなに、近くを通りかかった運送屋なんですがね。車が故障しちまって、それで修理を呼ぶにも通信手段が無くて途方に暮れてたところ、こちらに来れば電話を貸してもらえるんじゃないかと聞いたもので、ちょいと寄らせてもらったんですよ」<br>「電話……ですか？　申し訳ございませんが、こちらに電話はありませんよ」<br><br>　その言葉にアランはがっくりと肩を落とす。そうなりながらも、教会のたたずまいを見た瞬間に、こういう結末はある程度予想していたので、ショックは少なかった。<br><br>　意気消沈気味のアランにシスターは<br>「まあ外でというのもなんですので、とりあえずこちらへ」と小さな教会のほうへ向かって歩き始める。<br><br>　アランがシスターについて行くと、ふと教会の裏山のはるか先、上空での異変にきづいた。<br>　群れをなして飛んでいる鳥の集団の一羽が、まっさかさまに落下していく。続けざまにもう一羽、山の中から飛んできた何かにぶつかり、また落下していく。<br><br>　（なんだ、ありゃ？石……）<br>　アランはその不思議な光景に一瞬足をとめたあと、教会に入って行った。<br><br>　 こじんまりとした教会の中は、古びてはいるが手入れは行き届いてるようだ。<br>　ただ本来イコンらしきものが飾られていた場所には何もなく、代わりに木製の台座の上に小さな女神像があった。<br><br>「すいません、何も無いところで……なにぶん、人里離れた場所にあるものですから……」<br>「いえいえ、まあでも子供らは敏感なんでしょうね。いきなり胡散くせえやつが来て、こっちも悪かったっす」<br><br>　シスターが続ける。<br>「外から人が来るなんてめったにないものですから。慣れればいい子たちなんですよ」<br>「するってーと、やっぱり子供たちってーのは……」<br>「はい、みんな身寄りの無い子供たちです。下は三歳から上は十歳まで、八人ほどこちらで生活しています。これでも戦争があった頃は三十人近くいましたのよ」とくすりと笑う。<br>「へえ、みんなシスターが面倒を……」<br><br>　シスターが首を振る。<br>「いえ、前の神父様です。初めに戦争孤児を引き取ったのが始まりです。それ以来、身寄りの無い子供をすべて引き受けるようになって……それからは何不自由させまいと私財を投げ打って、子供たちに面倒をみました。敬虔な方で毎日この女神像に向かっては、子供たちが幸せになれるようお祈りされてました」<br><br>「神父さんは今どこへ？」<br>「……去年亡くなられました」シスターが遠くを見つめる。<br>「もうかなりお年を召していらしたので……ただ最後まで子供達のことが気がかりだったのでしょう。亡くなる間際でさえ、しきりにうわごとの様に女神、女神とうなされていました」<br><br>　（ふーん、女神ねぇ……）アランは台座の上の女神像に目をやった。<br><br>　シスターが遠くを見つめながらなおも続けた。<br>「本当に素敵な方でした。背は高く、お顔はりりしく……それでも私は一生を神にささげた身です。いけないとはわかってはいましたけれど……当時まだ若かった私は、ある日ついにその事を神父様につたえたんです。そんな私を神父様は何も言わずにそっと優しく……」シスターの頬がそまる。<br><br>「ばあさん…いや、シスター。そ、そっちの方の話はいいや……」<br><br>　シスターは、ここからがいいとこなのに……と言わんばかりに、残念そうな顔をした。そして「ですから、私が神父様の遺志を継いで、子供たちを立派に育てる覚悟ですわ」と元気よく言った。<br><br>　すると教会の外が騒がしくなった。<br>　その騒ぎにシスターは、うっかりした、という表情を浮べた。<br>「そうそう、忘れてました。実は子供たちのほかにもう一人いるんですよ」<br>　二人は教会の外へ出る。<br><br>　そこには子供たちに囲まれた一人の少年が立っている。年は13～15ぐらいだろうか。<br>　顔は端正だが、どことなく垢抜けない。まだ華奢な体つきだが、都会の子とは違う野性的な逞しさがある。右手には三羽の鳥がぶら下がっている。<br><br>　(あれ、あの鳥はさっきの……)<br><br>　アランが記憶を蘇らせていると、シスターが話し始めた。<br><br>「驚きましたでしょう？　ここではほとんど自給自足なんですの。これロナン、ちょっとこちらにきなさい。えーと、こちらは……」<br>「ああ、すいません。まだ名前言ってませんでしたね。アランです」<br>「この子はロナン。うちの年長者で大黒柱。野菜以外の食料はほとんどこの子が調達してくるんです」<br>「へえ、じゃあこの鳥も君が取って来たのかい？」<br>　ロナンは照れくさそうに笑った。<br>「はい。でも今日はたまたま調子が良かったんです」<br>（やっぱりさっき見たのはこの鳥か）<br>「で、どうやってとるんだい？よかったら教えてくれないか？」<br><br>　ロナンはそんなの簡単さ、といわんばかりに地面を見渡し、手ごろな石を拾った。そしてその石を左手に持ちかえると、渡り鳥が飛ぶ空に向かって勢いよく投げつける。その弾丸のようなスピードにアランは一瞬、あっけにとられた。上空では渡り鳥の隊列が大きく乱れた。　<br><br>「へへ、やっぱりちょっと遠かった」ロナンは鼻のすすりながら、照れくさそうに笑った。<br><br>　驚いた表情のアランを見て、うしろで見ていた子供たちが得意げにしゃべりはじめた。<br><br>「ロナンはもっとすごいんだぞ！」<br>「この前なんかねぇ、イノシシも捕まえてきたんだから」<br>「そうそう、サキが熊に襲われそうになったときも、棒術で熊を倒してくれたんだ」<br>　（棒術？）<br>　後ろでシスターがくすくす笑っている。<br><br>「だいぶ前にね、はるか東方の方角から来た旅人が、ここにしばらくの間滞在してましたの。その方が武術を心得ている方で……ほら、ここって何もないでしょう？　その方の棒術によほど興味が沸いたのか、見よう見まねで毎日棒切れを握っては……あまりにも熱心なので、その方が教えてくださったの。半年ぐらいかしら、彼がここを立ち去るときには驚くほど上達して、彼を打ち負かすぐらいにまで……」<br><br>　シスターが目くばせすると、ロナンは家屋の中から自分の背丈より高い八角棒らしきものを持ってきた。そしてその棒を両手でくるくると回し始める。ある程度の勢いがつくと今度は右手一本で持ち替えたり、舞うように自由自在に操る。<br>　アランはしばらくみとれていた。<br><br>「ほう、シェンヤンか……久しぶりに見たな」<br>　その言葉にアランが後ろを振り返ると、ミリーが立っていた。<br><br>「ミリー、お前知ってるのか？　って、お前いつからそこにいたんだ？」<br>「以前シェンヤンに行ったことがあってな。そこでその棒術を見たことがある」<br><br>　近くにミリーのペーサーが停まっていた。どうやら中々戻らないアランに痺れを切らして、様子を見に来たようだ。<br>　子供たちはアランの時とはうってかわって、ミリーの妖麗な雰囲気に見とれている。<br>　普段は喜怒哀楽をあらわさないミリーも、子供たちの視線ににこっと微笑み返す。<br><br>「そうそう、お車が故障されてたんでしたね。それなら……」とシスターが口を開いた。<br>「ここから先、さらに3キロほど進むと小さな村があります。そのはずれにジレットというお爺さんが住んでますので、私からと伝えればおそらく協力してくれるでしょう。電話もあるでしょうし、機械にもお詳しい方ですので」<br><br>　そう聞くとアランとミリーは顔を合わせ、早速ミリーがペーサーに乗り込む。<br>　アランはどうやらまだロナンと話がしたいようだ。<br><br>「お前さん、ロナンって言ったよな。見たところ色々特技があるみたいだが、ここを出たらどこか行くあてでもあるのかい？」<br>「はい。ジルドに行くつもりです。そこで高校に入る予定です」<br>「ほう、もう決まってるのかい？」と、アランが尋ねると横からシスターが口をはさむ。<br>「あくまで予定ですよ。というより本人の希望です。ユーラの影響で……」<br>「ユーラ？」<br>「ロナンが兄と慕ってた子です。ロナンより三つばかし年は上なんですが、非常に頭のいい子で一昨年に特待生としてジルド市内の高校に入ることができて、街の有志の方に引き取られていったんです。それからというもの自分も特待生になってジルドに行くんだと……でも勉強のほうはさっぱりなもので」<br><br>　シスターの一言にロナンはいたずらっ子ぽく笑った<br><br>「ところで、お前さん。その左に巻いてるそれはなんだ？」<br>　アランはすっと気になっていたロナンの左肩から肘にかけて巻かれた布について聞いた。<br><br>「ああ、これは傷というか手術跡というか……」そう言いながらロナンが布をほどくと、銃弾でも浴びたようなおおきな傷があり、目を凝らして見ると、その傷にまぎれて五センチほどの蛇の紋章のような入れ墨が顔をのぞかせた。<br>（ん？この紋章は……）<br>　アランの顔が険しくなる。<br>　そして忘れることのないある記憶がよみがえる。<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/junkuromi/entry-11975343434.html</link>
<pubDate>Sat, 10 Jan 2015 06:43:44 +0900</pubDate>
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<title>第一章　②インチキン盗賊団</title>
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<![CDATA[ <p>　そんなやり取りをしている二人の背後、200メートルほど離れた荒野の岩陰に、三つの怪しい黒い影が現れる。一目で、悪漢とわかる風貌の三人組。真ん中のボスらしき人物が、双眼鏡を手に持ち、アランとミリーの様子を伺っている。続けて双眼鏡をずらしながら、コンテナに書かれた文字を読む。<br><br>「【ハイエナ・トランスポート】……運送屋に間違いなさそうだな」<br>「へい、おかしら！　隕石の落下地点の方角から来たんで、間違いなく荷台には大量のルナ鉱石を積んでるはずですぜ」<br>　出っ歯の子分がニヤニヤしながら答える。<br>　 　<br>「苦節10年、ついに俺たち【インチキン盗賊団】にも運が向いてきたな。もっとも……やつらにとっちゃ災難だがな、ガッハッハ！」<br>　そう言うと、おかしららしき人物は、スキッパだらけの大きな口を開けながら、下品に笑った。<br>　 　<br>「でもおかしら、見たところトラックは故障してるみたいで、お宝をぶんどったあと、どうやって運び出すんでさあ？」<br>　アカハナの子分が心配そうに聞く。<br><br>「なあに、やつらをきっちり締め上げたあとに、運ばせりゃいいさ。見たところ、野郎が一匹に女が一人か。おめーら！　久々の獲物だ、ぬかるんじゃねーぞ」<br><br>　三人組の盗賊団は、腰に巻いた古式の銃に手をかけ、のっそのっそとトラックの方へ向かい始めた。<br>　そんなやり取りが近くで行われているとは知る由もないアランとミリー。<br><br>「うーむ……困ったぞ。予備の部品はないし、ビブルを呼ぶにしては遠すぎる……かと言って、修理を呼ぶにしてもこんな田舎じゃ電話は圏外。そもそも見渡す限り、街らしき街もねぇときた」<br>　アランは腕を組み思案にふける。<br><br>「とりあえず衛星電話で、ビブルに連絡取ってみたらどうだ？」<br>　ミリーがそう言うと同時に、先ほどの三人組みの盗賊団が、二人の背後に忍び寄った。<br><br>「おい！おめーら！災難だったな！」<br><br>　無人の荒野でまさかの来客。アランとミリーは、突然放たれた大声に反応すると、三人組の方へ振りかえる。そこには、小汚い格好の男が三人、へらへらしながらこっちを凝視している。お互いに一瞬、沈黙が落ちる。<br>　盗賊団のかしらは、先に冷血そうな女をにらみ付け、そのまま目線を片目の男のほうへ向ける。<br><br>（ん？隻眼？・・・片目、ハイエナ・・・）<br>　かしらの頭に何かがよぎる。<br>　 　<br>　すると、二人だけかと思われたトレイラーヘッドのキャビン側から、大きな男が窮屈そうにドアを開け出てきた。2メートルを越す巨漢。タンクトップ一枚の上半身からは樽のような腕をのぞかせている。<br>　三人組の盗賊団は、そのあまりの大きさにあっけにとられ、少し後ずさりした。<br>　巨漢は「ふぁ～」っと、大きなあくびをしながら、腰を伸ばす。そして寝ぼけ眼を擦りながら、たどたどしい言葉でアランに話しかけた。<br><br>「アラン……つ……いたか？」<br><br>（アラン？……片目、ハイエナ……巨漢……ま、間違いねぇ！　こ、こいつらは……）<br>　おかしらの頭によぎった何かが確信に変わった。<br><br>「クマロ、もう昼過ぎだぞ。いつまで寝てやがる」<br><br>　そう答えると、アランはまた、視線を三人組に向けた。<br><br>「で、お前さんがたは、いったい何者なんだ？」<br><br>　思ってもいなかった巨漢の登場に、あっけに取られていた出っ歯の子分は、その言葉にはっと我に返り、あらかじめ頭に用意されていた決まり文句を読み始めた。<br><br>「おっ、おめーら！ここにいる方を誰と心得る。泣く子もだまるインチキンとうぞ……ぐ、むぐぅ……」<br><br>　三人組のかしらが、慌てて出っ歯の口をふさぎ、先ほどの形相とはうってかわって、気味の悪い笑みを浮かべながら、口を開く。<br>　目は笑っていない。<br><br>「いやいや、あっしらは向こうの山のほうで、林業を営む者でして、あっしは木こりのインチキンと言いますです。こ、こいつらは見習いでさあ……すいやせん、口の利き方もわからん田舎もんで……ちょうど近くを通りかかったら、だんな方がおったもんで、何かお困りのことでもあったのかと……」<br><br>　アランとミリーは、その不気味な笑みと不自然な饒舌っぷりに、ぽかーんとしている。<br>　眠気が覚めない巨漢のクマロはボーっとしている。<br><br>「いやぁ、部品が焼き付いちまってな。立ち往生してるんだわ」<br>「それはそれは、まことに災難でしたなぁ、だんな。ここら辺も、何かと物騒ですからねぇ。（と、無人の荒野を見渡しながら）おっといけねぇ！　午後の作業時間だ。おめーら、休憩は終わりだ。急いでアジト……いや、作業場に戻るぞ。ではだんな、木こりごときに手伝えることもなさそうなんで、あっしらはこれで……」と、一方的に喋ったかと思うと、くるりと背中を向け、走り去ろうとする。<br><br>　豹変したおかしらの態度に、何が起こってるのか事態がつかめないまま、子分たちも時折後ろを振り返りながら、おかしらのあとを追う。<br><br>「なんでぇ、変な連中だな」とアランが一言。<br>「あ、そうだ。ミリー、急いでGPSでビブルに連絡を取ってくれ」<br><br>　ミリーが再びキャビンに戻った。<br>　クマロはまだボーっとしている。<br><br>「待ってくだせぇ、おかしら！　いったいどうしたんですかい？　……ハァハァ」<br>「いいから、黙って走りやがれ！　あいつは【片目のハイエナ・アラン】じゃねえか！」<br>「片目のハイエナ？　何なんです？　そいつは……」<br>「と、とにかくだ……ハァハァ。命がおしけりゃ、やつらに見えない場所までずらかるぞ。よし、あそこの茂に隠れろ」<br><br>　三人組は草木の中に身を潜めた。<br><br>「ふぅ……ここまでくりゃ大丈夫だろ」<br>「で、おかしら。その【片目のハイエナ】ってやつは、一体何者なんです？」<br>「ああ、前に引退したディガーに聞いた話なんだがな。その【片目のハイエナ】ってのは、隕石が落ちるあらやる場所に現れては、根こそぎ分捕っていっちまうっていう悪党だ。ルナだけじゃねぇ、金だのコバルトだの、はたまた鉄くずまで換金できそうなものは何でも分捕っちまうって話だ」<br>「分捕る？　いったいどうやって？　ディガーの中には野蛮で危険なやつらも多いですぜ？」<br>「そ、そんなもんはあいつの取り巻きを見りゃわかるだろ。となりにいた冷血そうな女。あいつの目は確実に人を殺したことのある危険な目だ。それにあとから来た熊のような大男。銃を向けようもんなら、次にはやつの張り手で首の骨をへし折られるところだったぞ。数々の修羅場をくぐってきた俺様が言うんだ、間違いねぇ……や、やつらはデンジャーだ」<br>「へぇ、そんな危険なやつらだったんすねぇ。でもおかしら、片目のハイエナってやつは、それほど怖くは見えなかったですぜ？」<br>「ば、ばっきゃろー！　真の大悪党ってもんは、一見普通に見えるもんさ」<br><br></p>
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<link>https://ameblo.jp/junkuromi/entry-11971177347.html</link>
<pubDate>Wed, 31 Dec 2014 08:46:00 +0900</pubDate>
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<title>第一章　①アランとミリー</title>
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<![CDATA[ <font size="2"><p>　ロンド連邦の首都ジルドより遥か東、わずかな田園と果てしなく広がる荒野を、一台のピータービルト型のトレーラーが西の方角へ向かっている。決して綺麗に舗装されているとは言えない、コンクリートを張り合わせて作られたルート56。その繋ぎ目に生じるわずかな段差を通過するたび、車体は大きく跳ね上がる。車内にはロードノイズが響き渡り、雑音交じりの短波ラジオからはかすかにニュースが聞き取れる。<br><br>『ザザー……市の財政難で存続が危ぶまれている、地元ライジングボールチーム【セノイア・サーモンズ】のメインスポンサーに、大手セクシームービー会社【オム・ネ・ポロリン社】が名乗りを上げ、それに反対する一部のサポーターが、スタジアムに隣接する事務所に詰め掛け……さわぎに……ザッザー……』<br><br>　長い沈黙の中、左目に黒い眼帯を巻く隻眼の男が、ハンドルを握りながらため息まじりの声を発する。<br><br>「はあ、こんな田舎くんだりまで来て回収ゼロか……政府のやつらに先を越されるとは……くっそー！ついてねぇぜ、まったく！」<br><br>　隻眼の男は無精ひげをはやした口元を、への字に曲げた。<br>　となりの助手席側に座る、銀髪の女が無表情に答える。<br><br>「だから陸路では間に合わないと言ったろう。アラン、お前の悪い癖だ。なんでも見切り発車で事を進め過ぎる」<br><br>　透き通るような白い肌と妖麗な顔立ち。その綺麗さに誰もが目をとめるだろうが、喜怒哀楽を失ったような表情は近寄りがたいオーラをかもしだしている。　<br>　会話のやり取りから、二人が恋人のような関係ではないのがわかる。<br>　それ以上の説教は聞き飽きたとばかりに、アランが答える。<br><br>「まあ、今回は新しく搭載したルナの試運転も兼ねてだから、そっちが無事ならOKって事……で……ん？ミリー、なんか変な音がしねぇか？ウィーーンって……」<br>「確かにエンジンルームの音色が変わったな。モニターで確認してみる」<br><br>　銀髪のミリーはそう言うと、車内からトレーラーヘッド後方のキャビンに移動する。<br><br>「ミリー、ルナか？」<br>「いや、ルナは正常値だ」<br><br>　隻眼のアランは安堵の表情を浮かべた。<br><br>「電圧が急激に下がってるな。バッテリーかもしくは……」<br>　モニターを見ながらミリーが言う。<br>「うっ！コゲくせえ」<br>「オルタネーターが怪しいな。アラン、すぐに車を止めろ」<br><br>　荒野の中心に停車する、不自然な一台のトレーラー。<br>　アランとミリーは、ボンネットを開け、中を覗き込む。<br><br>「あっちゃー！見事に焼きついてるな。気づくのが遅れたら、他までダメージがいくとこだったわ」<br>「ベルトもちぎれかけてる。完全に整備不良だぞ。ルナ圧縮機以外は、いつスクラップにしても……」<br>「まあそう言うなってミリー、こいつにはかなり稼がせてもらってるしな。愛着もひとしお、帰ったらビブルに徹底的に整備してもらう予定さ」<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20141231/07/junkuromi/09/94/j/o0500026413175206245.jpg"><img border="0" alt="" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20141231/07/junkuromi/09/94/j/t02200116_0500026413175206245.jpg" width="220" height="116"></a> <br></p><br></font>
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<link>https://ameblo.jp/junkuromi/entry-11971153436.html</link>
<pubDate>Wed, 31 Dec 2014 07:05:47 +0900</pubDate>
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