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<title>Under_the_Glorious_Heavens</title>
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<description>永遠の少女の、妄想の辿り着いた場所。</description>
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<title>少女未満97</title>
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<![CDATA[ <p>　使ってるコインロッカーは、大体いつも同じところなんだろうか。<br>　いっくんは、ナンバーを探すことなく、すぐに見つけた。<br>　2124。<br>　ということは、渋谷駅には2124個以上のコインロッカーがあるということ？<br>　数えようと思ったことはない。<br>　これからも、数えることはないだろう。<br>　「ここ？」<br>　「うん」<br>　鍵を差し込む。<br>　当たり前だけど、簡単に開いた。<br>　どうでもいいけれど、コインロッカーのコインが気になった。<br>　「スーパーのとかは、使ってもお金、返してくれるじゃん？」<br>　「あー。そうだね」<br>　「でも、此処のは、そうじゃないよね」<br>　「お金を呑み込んだままだ」<br>　ぼくのどうでもいいじゃ話に、いっくんは付き合ってくれる。<br>　「吐き出させる？」<br>　「そういう意味じゃない」<br>　慌てる。<br>　いっくんなら、やりかねない。<br>　しかも、それは犯罪だ。<br>　「ただ、此処のコインロッカーは、優しくない」<br>　「しょうがないんじゃない？それで生活してるんだ」<br>　「生活？」<br>　コインロッカーが？<br>　「うん。お金、稼いでんの」<br>　コインロッカーの一つ一つが。<br>　丁度良く、手が届きやすいところにいるヒトの方が、いっぱい使ってもらえて稼げるのかな。<br>　一日どころか、一週間も使ってもらえないヒトもいるのかな。<br>　商売あがったり、かな。<br>　生活、大変だろうな。<br>　そんなことを考えたら、ぼくはつい、外れを使ってしまいたくなった。<br>　自分で使ったこと、そんなにたくさんはないけれど。<br>　「スーパーのは、其処で買い物してくれた人の荷物だから」<br>　と、いっくん。<br>　「ロッカーくらい、サービスで使ってもらって構わないってことじゃないの」<br>　現実は、そうなんだろう。<br>　でも、ロッカー目線で考えた話、ぼくは嫌いじゃない。<br>　「駅のだって、鉄道を利用してくれた人じゃないの？」<br>　基本的に、そうだと思う。<br>　わざわざ駅に用事がないのに、コインロッカーだけ使いに来る人なんているだろうか？<br>　「･･････いる、けど」<br>　それが、ぼくたちだ。<br>　「一応、電車乗ってないわけじゃないし」<br>　遠方からの、遠方への旅客じゃないけど。<br>　そんな大したもの、預けてないけど。<br>　「中、何？」<br>　いっくんが取り出したのは、『Altena』の袋に入った何かだった。<br>　「中華鍋」<br>　と、いっくんは笑いもせずに答える。<br>　「中華鍋？」<br>　そんなもの、いっくんはどうするのだろう？<br>　本格中華に目覚めたの？<br>　将来の夢は、中華な料理人？<br>　そういえば、作ってくれたのは、美味しい炒飯だった･･････。<br>　「嘘」<br>　「嘘なんだ」<br>　ちょっとしたボケだろう。<br>　立花兄弟は、時々思いついたように漫才に走る。<br>　役も、何となく決まってて。<br>　ツッコミ担当が、まぁくんと奏多だったりする。<br>　あとは、全員がボケ。<br>　ツッコミの二人は、相当疲れるらしい。<br>　特に、最大の不思議ミステリィのゆきちゃん。<br>　彼が何を突っ込んでほしいのか、分からない。<br>　というか、ボケてんのか地なのか、それさえもう。<br>　「伝説の剣」<br>　「コインロッカーから、手に入れるの？」<br>　凄い緩い感じだ。<br>　きっと、ラスボスは右利きの人が無理くり左手で書いたような線の、鳥だろう。<br>　画伯が描いたという、鳥だろう。<br>　フォルムからして、ダチョウか何かかと思いきや、実は鳩だったりするアレだ。<br>　「冗談」<br>　「冗談なんだ」<br>　そう思った。<br>　てか、本気だったらどうしたらいいのか。<br>　いっくんは、その伝説の剣で一体誰を倒すの？<br>　事務所の社長？<br>　それとも、心花に群がった汚くて悪い大人たち全員？<br>　この世界を狂わせるもの？<br>　「人体」<br>　「えっ･･････」<br>　それは、一番困る。<br>　事件だ。<br>　死体遺棄事件。<br>　奏多が殺したの？<br>　「樂夜」<br>　「入れない」<br>　がっくんは、縦に大きいから。<br>　兄弟で一番、長身だった筈。<br>　「折り畳んで」<br>　「折り畳んだ時点で、もう息がないよね？」<br>　人体は、折り畳み傘とは違うのだ。<br>　そんな方向に、関節は曲がらない。<br>　「小分けにして」<br>　「え･･････血みどろ？」<br>　そういう話は得意じゃない。<br>　早めに切り上げる。<br>　「奏多に頼んでたものって、ぼくの服でしょ」<br>　あっさりネタバレ。<br>　もうちょっと引っ張ってほしかった？<br>　ごめんね、限界。<br>　スプラッターは怖いし気持ち悪くなるから、駄目なんだ。<br>　流血が苦手なの。　<br>　「マルコのトイレで、ちょっと着替えてくる」<br>　流石に、此処では拙い。<br>　だって、誰かに下に着てるセクニャン衣装が見られちゃう。<br>　それは、非常に恥ずかしい。<br>　「行ってくる」<br>　「うん。行ってらっしゃい」<br>　いっくんと一旦別れ、ぼくはマルコのトイレに駆け込む。<br>　用を足したいわけではないが、行ける時に行っておく。<br>　これでも、その辺でするわけにはいかないので仕方がない。<br>　いっくんの紫パーカーを脱ぐ。<br>　次にセクニャン衣装だ。<br>　一緒にして、『Altena』の袋に入れる。<br>　代わりに、中から着替えの服を出す。<br>　まだ、確認してなかった。<br>　奏多が何処からか調達してきたみたいだけど。<br>　まさか、今日買ってきた？<br>　『Altena』は十代半ばまで女子向けのブランドだ。<br>　普段の奏多が、行くとは思えない。<br>　いや、奏多は可愛いから、普通にしてれば女の子に見える。<br>　何食わぬ顔で、これを買ってきたんだろう。<br>　ぼくの好みを知っているんだろうか。<br>　何気にリサーチ済みだったんだろうか。<br>　ぼくの好みど真ん中なワンピースが一着、それとトップスとボトムスが二着ずつ、靴が一足、下着類が三枚、入っていた。<br>　それと、日常生活を送るにあたって必要なもの。<br>　髪を結ぶゴムとか、髪を梳かすブラシとか。<br>　「･･････」<br>　気が利く、とは思う。<br>　いっくんでは、多分用意が出来な方だろう。<br>　彼が女の子の下着とか、買えるわけがない。<br>　奏多なら、女の子のふりが出来る。<br>　たとえ女の子に見えなくても、何食わぬ顔でいるだろう。<br>　服とかを女の子に贈る意味とか分かってて、くれるんだろう。<br>　此処だけの話、ぼくはセクニャン衣装の下は何も着てなかった。<br>　だって、いきなり拉致だから、そんなの換えがあるわけがない。<br>　だからって、同じのを繰り返し穿けるわけがない。<br>　着てたものは、洗濯中だ。<br>　下着までもらえたのは、本当に助かる。<br>　でも反面、ぼくは、奏多のそういうところが怖い。<br>　気が付き過ぎなのだ。<br>　そういう小学生の男子って、どうなんだ？<br>　「！」<br>　個室の外で、人の声がする。<br>　声と話し方からして、女子高生か。<br>　数人、入って来た。<br>　メイクでも直しに来たんだろう。<br>　彼女たちは、本当に連れションが好きだ。<br>　絶対にひとりじゃ、入ってこない。<br>　だから、一気に賑やかになる。<br>　これ以上、ゆっくりもしていられないか。<br>　黒いリボンにピンクのトップスと、黒いミニスカートを選び、ちゃんと下着もつけて、ぼくはトイレの個室を出た。<br>　敢えて明記しなかったが、当然水は流してある。<br>　新しい靴は、ちょっと厚底だ。<br>　今までより、目線が高い。<br>　とはいっても、元が元だから悲しいものがある。<br>　女子高生三人組と、目が合った。<br>　瞬時に品定めされる。<br>　ぼく、女子のこういうところ、嫌い。<br>　すぐに順位を決めたがる。<br>　自分とどちらが上か。<br>　どっちでもいい。<br>　ああ、きみの方が男子にはモテるよ。<br>　その身軽なお尻を振ってれば、ホイホイついてくるだろうから。<br>　なんて思うぼくも、相当性格に難がある。<br>　何度も言うが、ぼくは好きでもない人に好かれたってめんどくさい。<br>　ぼくが好きな人に好きになってほしいだけなのだ。<br>　じゃないと、意味がないもの。<br>　手を洗いながら、今の自分の姿を確認。<br>　ちょっと、髪が乱れてる。<br>　折角だから、ブラシで梳かそう。<br>　パウダールームの方へ移動する。<br>　別の女子高生たちがいた。<br>　やっぱり、目が合う。<br>　気にすることなく彼女たちは話し続ける。<br>　『ガリューク』の話をしている。<br>　やっぱり、彼女たちくらいの女子は、『ガリューク』が好きなのだ。<br>　ぼくは、いっくんに似てるという理由で、アカリがちょっと気になってる。<br>　でも、本物のいっくんの方が、ずっといい。<br>　だって、アカリは凄くかっこいいけど。<br>　ぼくの頭を、ぽんぽんしてくれない。<br>　ぼくが泣いちゃっても、心配してくれない。<br>　ずっと遠くの人だもの。<br>　ぼくは、一番近くにいてくれる人がいいもの。<br>　トイレを出る。<br>　いっくんが、待っていた。<br>　「あ。ごめん」<br>　時間がかかり過ぎただろうか。<br>　いっくんを待たせてたのに、のんびりしてたかも。<br>　「いや、そういうことじゃない」<br>　と、いっくん。<br>　「俺だって、トイレくらいは行くし」<br>　人間だから。<br>　猫型ロボットじゃないから、食べればちゃんと排泄がある。<br>　「だから、ちっとも待ってない」<br>　ちょっと向きになって言うところが、･･････いっくんは可愛いのだ。<br>　「ホント、待ってないから！」<br>　「うん。分かった」<br>　そういうのだから、そう言うことにしておこう。<br>　こんなことで揉めるつもりはない。<br>　「･･････」<br>　ふと、いっくんの視線に気づく。<br>　ぼくを、上から下までじーっと見てる。<br>　「は、恥ずかしいんから、あんまし･･････見るとかしないで」<br>　声が震える。<br>　「あ。･･････ごめん」<br>　謝りながらも、まだ見てる。<br>　多分、半分はぼくの言ってること、耳に入ってない。<br>　「奏多の用意した服･･････」<br>　「うん」<br>　サイズは、ぴったりだ。<br>　採寸された覚えはないが、多分いつだったか触られた時に感覚で把握されたんだろう。<br>　てか、一番小さいのを買えば問題ない。<br>　ぼくは、まるでお人形みたいに、小さく出来てるから。<br>　「似合うと思う」<br>　「！」<br>　其処に触れられるとは、思ってなかった。<br>　何か、言ってくれるとか。<br>　普通に流されると思ってたのに。<br>　「可愛いし･･････」<br>　言いながら、もう頬が赤い。<br>　いっくんって、本当に照屋さんだなぁ。<br>　女の子を褒めるとか、そういうスキルはなかった筈だけど。<br>　奏多から特訓でもされたかな？<br>　「うん･･････可愛い」<br>　「･･････」<br>　繰り返されるとか。<br>　ぼくまで、恥ずかしい。<br>　可愛いと言ってる、いっくんにキュンキュンする。<br>　「スカートが短すぎるけど」<br>　「うん」<br>　それは、ぼくも思ってた。<br>　そういうデザインだ。<br>　つんつるてんじゃない。<br>　「うーん･･････セコムに入りたい」<br>　だけど、それは実際不可能だ。<br>　「でも、奏多に選んでもらって良かった」<br>　奏多の女子力、半端ない。<br>　「俺だと、ジャージとかになるし」<br>　「うん･･････」</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12372278383.html</link>
<pubDate>Mon, 30 Apr 2018 07:00:22 +0900</pubDate>
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<title>少女未満96</title>
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<![CDATA[ <p>　「マリアに頼まれたからぁ～～～！？」<br>　事情を聴いた奏多は、周りに危うく聞かれるほどの大声をあげた。<br>　その声には、怒りが籠っていた。<br>　「マリアに頼まれたってだけで？心結ちゃんを拉致したの？」<br>　「あ。別に心花は、ここを拉致しろとか言ってない」<br>　「あったりまえだよ！」<br>　そんなんして、何が楽しいの。<br>　心花にとって、何が得？<br>　「実の妹だけど」<br>　「うん」<br>　「それをヤらせて、いい気になるような人じゃないでしょ。マリアって」<br>　「流石にな」<br>　いっくんが頷く。<br>　「流石に？じゃあ、他のことならやりそうってこと？」<br>　「いや、それはない」<br>　あったら堪らない。<br>　ぼくの体がもちません。<br>　「マリアの願いを叶えるには、マリアの体を自由にするのと、『明けの暁星』と『宵の暁星』のオリジナルが必要ってことでしょ」<br>　話せば長くなるが、掻い摘んで話したところ、奏多はすぐに理解してくれた。<br>　そう。<br>　いっくんがぼくにしたことを話さなければ、奏多もそれほど頭に血が上らないらしい。<br>　いや、話さなくても、もう事実を知っている。<br>　生々しいのは兄弟で嫌だからと言っていた通りに、もう訊かないつもりなのだろう。<br>　こんなところで、こんな時にする話じゃない。<br>　「マリアの体を自由にするには、事務所の社長のあのジジイに、解放させるしかない」<br>　解放しなければ、マリアの実の妹が、もっと酷いことをされて死ぬ。<br>　「オリジナル楽曲を手に入れるには、ナギサさんにもらうしかない」<br>　拒否するのなら、彼の可愛い可愛い娘は、二度と帰らない。<br>　だけど、事務所の社長は、要求を無視した。<br>　あんなＭＡＲＩＡの偽動画まで作って、正当性を主張した。<br>　「ナギサさんは？何か言ってこないの？」<br>　「まだ、何も」<br>　父からは、何も言ってこない。<br>　事務所を通じてコメントもしない。<br>　成海ナギサとしては、やっぱり言うことは聞けないということなのだろうか。<br>　それとも、何か別の理由が。<br>　「おかしくない？それって」<br>　と、奏多が言う。<br>　「ナギサさんが、まさか心結ちゃんを見殺しにするとかないよね？」<br>　「ないと思う」<br>　ないと信じたい。<br>　「娘より大事な原曲って、何？」<br>　渡したくないとか、意味わからない。<br>　命には変えられない筈なのに。<br>　「それとも、マリアの時みたいに･･････」<br>　諦めたの？<br>　ぼくのことを諦めたの？<br>　父に限って、と思うぼくが間違ってたの？<br>　世の中、甘く見過ぎですか？<br>　愛されてると思い込んでただけですか？<br>　そんな価値、ぼくにはありませんでしたか？<br>　「･･････」<br>　下を向いてしまう。<br>　「ああ、もう･･････」<br>　奏多の指が、ぼくの目元を拭う。<br>　「泣かないで」<br>　「･･････うん」<br>　解ってる。<br>　そんな弱虫にならないよ。<br>　大丈夫だ。<br>　ぼくには、いっくんがいる。<br>　いっくんの為だから、まだ頑張れるんだ。<br>　絶対に、泣き崩れたりしない。<br>　ちゃんと、立っていられる。<br>　「そっちは、どんな感じ？」<br>　と、いっくんが尋ねる。<br>　そっちというのは、<br>　「兄さんたち？」<br>　「そう」<br>　それと、周りの大人たちの反応だ。<br>　父とか立花さんとか。<br>　「兄さんたちは･･････言うまでもないと思うけど」<br>　だって、ＷＡＶＥで話したから。<br>　「会ったわけじゃないから、実際はどうなのかが分からない」<br>　「まあね」<br>　いっくんの言う通りだ。<br>　本当の姿を簡単には明かさない。<br>　立花兄弟には、そういうダークというかブラックというかディープな部分がある。<br>　ただの馬鹿や痛い人やオタクや狂人や中二病や甘えたさんじゃないんだ。<br>　時々、その真実の片鱗が見える。<br>　ぼくだって、気付いている。<br>　その立場であるいっくんが分からないわけがない。<br>　何か裏で交錯している、と思うのが普通だ。<br>　「僕が見た限りだと、･･････やっぱり、絃護兄さんのことを心配してたかな」<br>　大それたことをしてしまって。<br>　世間の知るところになった。<br>　もう、悪ふざけの域を超えてしまっている。<br>　大人を巻き込んだ時点で。<br>　まだ中学生で、引き籠るような心に闇を抱えた少年だから、で幾分かは納得してもらえるだろう。<br>　だからって、無罪放免にはならない。<br>　だから、心配なのだ。<br>　「ナギサさんのことは、全然分からないよ。会ってないし」<br>　成海ナギサをするのに、忙しいのだ。<br>　ただでさえ、超絶の人気を誇るアイドルなのに。<br>　娘が拉致監禁されているとなると。<br>　ワイドショー的なものと週刊誌的なものが放っておかない。<br>　事務所は、マスコミの類は完全にシャットアウトだろう。<br>　自由行動の時間なんて、あるわけがない。<br>　誰かに会う余裕もない。<br>　まして、それが加害者の家族相手ともなれば。<br>　「父さんはねぇ･･････めっちゃくちゃ謝ってたよ。ナギサさんに」<br>　親友としてではない。<br>　加害者の親として。<br>　自分の実の子が、まさか親友の娘にあんな酷いことをするなんて。<br>　「もう、お嫁に行けない体になっちゃったって思っただろうし」<br>　「･･････」<br>　真面目な人だから、否定できない。<br>　本当に腹切りでもしそうだ。<br>　女の子が、女の子にとって一番辛い目に遭わされた代償としてはまだ足りない、と。<br>　「絃護兄さん、家に帰ったら父さんに殴られるだけじゃ済まないね」<br>　「分かってる」<br>　それも覚悟の上だ。<br>　それでも、必要だと判断した。<br>　冗談じゃない。<br>　本気だった。<br>　そうするしかないと思った。<br>　たった一人で、戦いをするには。<br>　正しい判断なんて、分からない。<br>　ただ、思ったままに行動するだけだ。<br>　「母さんに、切られるかも」<br>　「･･････それは、本当に死ぬ」<br>　でも、ある意味本望かも。<br>　いっそ、そうしてくれた方が楽だ。<br>　「ここで僕が手を貸したってバレたら、僕も同罪になるんだろうなぁ」<br>　「ごめん」<br>　「いいよ。僕がそうしたいんだし」<br>　馬鹿かもしれない。<br>　だけど、このままでいい筈がない。<br>　助けを求められたのに、聞かなかったことになんて出来ない。<br>　自分を犠牲にしてでも、マリアを助けようとしている兄を嫌いではない。<br>　やっぱり、誰よりも優しい、いっくんなんだ。<br>　「じゃあ、はいこれ」<br>　と、奏多がいっくんの手に何かを載せた。<br>　「いつものとこ。場所も同じにしといた」<br>　「ああ。ありがとう」<br>　ぎゅっと、それを握りしめる。<br>　何かは、ぼくからは見えない。<br>　でも、いつものとこだって言ってた。<br>　それが、あのＷＡＶＥで言っていたものに繋がるんだろう。<br>　「それと･･････」<br>　奏多はそう言った後、僅かに目を伏せた。<br>　そして、台詞の続きが出て来ない。<br>　「どうしたの」<br>　らしくない。<br>　いつもはもっと、ストレートに来る筈なのに。<br>　何を迷っているんだろう？<br>　そう、続きを口に出すのを迷っているんだ。<br>　「奏多？」<br>　目を上げてこない。<br>　下を見たままなんて、どういうこと？<br>　奏多は、そういう人じゃない。<br>　「言いかけでやめるとか」<br>　「ごめん」<br>　今度は、奏多が謝っている。<br>　「･･････言っていいのかどうか、解らないことがある」<br>　「何、それ」<br>　どういう意味で、言っていいのかを迷うのだ？<br>　「本人が、何も言わない」<br>　「うん」<br>　「それって、やっぱり言っちゃいけないことなんじゃないの？」<br>　「どうだろ」<br>　そもそも、何が言いたいのかが分からない。<br>　奏多が迷うのも、本人とは誰かというのも。<br>　まだ、解らない。<br>　「ＭＡＲＩＡってさ･･････マリアじゃないかもしれない」<br>　「ん？」<br>　どういうこと？<br>　確かに、実際、神威心花であった少女に演じさせていた。<br>　彼女の写真に手を加えて、絶世の美女であり女神のようなアイドル・モデルＭＡＲＩＡを創作していった。<br>　最早、心花の部分なんてほんの僅か。<br>　大部分が、人口で作り上げたもの。<br>　人ですらない。<br>　バーチャルの中にしか、存在しない。<br>　現実には、そんな人いない。<br>　ＭＡＲＩＡは、向こう側にいる、皆の女神様だ。<br>　「今更？」<br>　と、いっくん。<br>　「もう、分かってるけど」<br>　立花兄弟が知っているのも、いっくんが会ったのも、神威心花だ。<br>　ＭＡＲＩＡじゃない。<br>　「心花は、マリアだよ」<br>　「うん」<br>　おかしくなる前は、実際に生放送で演じていたのは彼女だった。<br>　ＭＡＲＩＡの歌う歌も、心花が歌ったものだった。<br>　「でも、ＭＡＲＩＡじゃない」<br>　「心花だからね、本当は」<br>　「そういうことじゃない」<br>　「ん？」<br>　じゃ、どういうこと？<br>　「父さんに聞いたんだけどさ」<br>　「うん」<br>　「ＭＡＲＩＡって、ナギサさんだったみたいだよ」<br>　「え？」<br>　「あ？」<br>　奏多の投下したのはまるで爆弾だ<br>　ぼくといっくんは、顔を見合わせる。<br>　「父は、成海ナギサだよ？」<br>　ずっと、ぼくが生まれる前から。<br>　アイドル神帝・成海ナギサを続けていた。<br>　ＭＡＲＩＡだったことなんて、一度もないだろう。<br>　「それとも、あれは心花と父とを合成したっていうの？」<br>　「似てるけど」<br>　と、いっくん。<br>　「確かに、ＭＡＲＩＡってナギサさんにも似てるけど」<br>　「･･････」<br>　男女の違いは大きい。<br>　だから、誰も考えなかったけれど。<br>　成海ナギサの髪を長くして、女性の体に変えて、綺麗なドレスでも着せて、メイクをしっかりさせれば。<br>　似てる･･････かもしれない。<br>　心花が演じてる時は、そうじゃなかった。<br>　心花が演じられなくなってからのＭＡＲＩＡは･･････。<br>　「そうじゃなくて」<br>　「ん？」<br>　ＭＡＲＩＡのベースになったということではなく。<br>　「･･････ＭＡＲＩＡっていう美少女を演じていたの。昔の、ナギサさん」<br>　「そうなの？」<br>　初耳だ。<br>　成海ナギサになる前。<br>　「あまりに綺麗だったから、事務所の社長のジジイが、美少女アイドルということにしようとしたらしいよ」<br>　「へー」<br>　父のボディラインなら、女の子でも十分通用するし。<br>　可愛かっただろうな。<br>　昔の写真の父とか、マジ天使だし。<br>　「だけど、本人が嫌がったのと、『ＭＩＳＴ』に欠員が出たから、結局そっちに回されて、美少女アイドルＭＡＲＩＡをしなくて良くなったって」<br>　爆誕を免れたというわけだ。<br>　父にとっては、それで良かったんだろう。<br>　『ＭＩＳＴ』時代のことは、本当に嬉しそうに振り返るから。<br>　父は、きっと『ＭＩＳＴ』の解散はしたくなかったんだろうな。<br>　因みに、『ＭＩＳＴ』というのは、父が昔所属していたアイドルグループ名だ。<br>　立花さんも、其処にいた。<br>　美男子ばかりのクオリティ高いアイドルたちだった。<br>　が、やはり年齢はどうしようもなかった。<br>　父は最年少だったし、立花さんも年下側だったから、解散した時はまだ若かったけれど。<br>　主要メンバーは、もう三十代半ばだったからしょうがなかった、と。<br>　三十歳の父は、まだ現役アイドルだけど。<br>　そろそろ、アイドルをやめるつもりでいることは、何となく気づいてる。<br>　生足へそ出しが、最近辛いとか。<br>　似合うけど。<br>　中身は、もうアイドルじゃない。<br>　王子さまは、永遠じゃないのだ。<br>　「ねぇ･･････何か、引っかかるんだ」<br>　と、奏多は言う。<br>　「ナギサさんがＭＡＲＩＡだったって話聞いて、さ」<br>　昔存在したかもしれない、美少女アイドルＭＡＲＩＡ。<br>　現在のアイドル・モデルＭＡＲＩＡが、それを原型にしたものだったとしたら。<br>　「何か、とんでもない間違い犯してるんじゃないかなって･･････」<br>　アイドルのＭＡＲＩＡになる筈だった神威凪砂。<br>　アイドル・モデルＭＡＲＩＡを演じていたのは、その娘である神威心花。<br>　偶然か？<br>　そんなわけない。<br>　社長は、頓挫した計画を、心花で実行したかったんだとしたら。<br>　それが、一時は大成功したんだとしたら。<br>　それは、もしかして･･････。<br>　「僕の考えすぎならいいけど」<br>　「うん」<br>　と、いっくんが頷く。<br>　「奏多、考えすぎ。気にしすぎ。そんなわけ、ないじゃん」<br>　台詞だけ聞いていると、そんなことないってぼくも思えただろう。<br>　だけど、その時のいっくんは、実はそんなことちっとも信じてなくて。<br>　奏多の予感が間違いじゃないって、気付いているようだった、<br>　一つの道を見つけつつある。<br>　それが真実へ続く道だ。<br>　最悪のシナリオだ。<br>　本当にぼくたちがすることは、それを如何にして回避するかを考えることではないのか。<br>　「変なこと言って、ごめんね」<br>　「ううん。気にしないで」<br>　情報として持っておいた方がよさそうだ。<br>　シナリオ通りの結末にするわけにはいかなかったから。<br>　奏多には、感謝している。<br>　「･･････じゃあ、僕、もうそろそろ行くね」<br>　「え？もう？」<br>　エテ公前で、何かを授受して、少し話しただけだ。<br>　もっと、話したいのに。<br>　「長居は危険だよ」<br>　と、奏多。<br>　「目立つのは、駄目だ」<br>　いっくんも言う。<br>　「奏多は、凄く目立つから」<br>　「それ、そのまま絃護兄さんに返すね」<br>　お互い様な気がする。<br>　改めて見ると、いっくんと奏多は、美少年すぎる兄弟だ。<br>　さっきは、いっくんだけで注目を集めてたのに。<br>　奏多が増えたから、何だか周りが騒然としてる。<br>　幸い、話の内容は誰にも分からないだろう。<br>　ぼくたちの声よりも、騒音が大きい。<br>　此処まで近づかないと、まず相手の声が聞こえない。<br>　「･･････ガリュークのアカリとウルウみたい」<br>　ぼくは、気付いた。<br>　さっき、通り過がりのよっきゅんとマッチンが言っていた。<br>　いっくんは、ガリュークのベーシストのアカリに似てるけど。<br>　奏多は、ガリュークのウルウの雰囲気がある。<br>　そう言えば、彼らも兄弟という話だった。<br>　プライベートは謎だけど、一応仲のいい兄弟という姿が公開されている。<br>　総て、後から調べた情報、だけど。<br>　「似てるかなぁ？」<br>　と、奏多。<br>　「絃護兄さんが似てるのは、分かるけど」<br>　「そうかな」<br>　いっくんは、あまり認めたがらない。<br>　芸能人に似てるなんて、恥ずかしい以外の何物でもないからだ。<br>　他人に注目されるのが苦手ないっくんだから、尚のこと。<br>　「僕は、あんなにわざとらしくないでしょ」<br>　「･･････」<br>　ノーコメントで。<br>　「僕の方が可愛いんじゃない？」<br>　そう、其処だ。<br>　そういうところが、そっくりなんだ。<br>　まさに、キャラ被り。<br>　同じ属性だ。<br>　「年齢的に、間違えられはしないだろうけど」<br>　確か、アカリが十八歳で、ウルウが十五歳だった筈。<br>　明らかに、いっくんと奏多の方が、若い。<br>　てか、年下･･････まだ子供だ。<br>　「変に足止めされたくないしね」<br>　最近の女子は、非常に積極的だ。<br>　妙な声を懸けられたら、間に合わなくなる。<br>　時間は永遠ではないのだ。<br>　いつか、必ず終わりの時が来るから。<br>　「勝手に盛り上がられても、面倒だし」<br>　「そうそう」<br>　彼らの結論は、用が済めばさっさと帰る、だった。<br>　「じゃあ、また」<br>　奏多が小さく手を振る。<br>　きっと、聞きたいことをたくさん仕込んで来ただろうに。<br>　またの、機会に。<br>　あるといいけどね。<br>　「わざわざ渋谷まで、ありがとう」<br>　「いいって」<br>　最高の笑顔だ。<br>　奏多は、<br>　「丁度デートが渋谷待ち合わせだし」<br>　「え、そうなの？」<br>　てか、こんな時に？<br>　「まさか」<br>　と、笑う。<br>　「冗談」<br>　「そっか」<br>　じゃあ、やっぱりわざわざ来てくれたんだ。<br>　「これ、貸しね」<br>　「分かってる」<br>　いっくんが頷く。<br>　「ちゃんと返してもらうから」<br>　「うん」<br>　「だから･･････負けんなよ！」<br>　そう告げると、奏多が一気に駆けだした。<br>　肉眼で見えるか見えないかギリギリのところで、一度止まった。<br>　こっちを、振り返る。<br>　ぶんぶん、と手を振りまくった。<br>　「うん。頑張る」<br>　ぼくは、それに応える。<br>　同じように、思い切り手を振った。<br>　奏多の姿が、本当に見えなくなるまで。<br>　何、やってるんだろう。<br>　だけど、頑張らなきゃ。<br>　勇気をもらった。<br>　きっと、またすぐに、会える。<br>　信じているから。<br>　「･･････ここ」<br>　いっくんの声がする。<br>　一瞬、こんなぼくの行動を、彼がどんな気持ちで見ていたのか、を考えたけれど。<br>　確かめることも尋ねることも出来ないので、やめた。<br>　知ったところで、切ないだけだ。<br>　「何？いっくん？」<br>　何も分からない無邪気なふりで、ぼくは彼を振り向く。<br>　ぼくは彼を、信じているんだ。<br>　「俺、もう行くけど」<br>　「うん」<br>　奏多との待ち合わせは、済んだ。<br>　このままエテ公をじっくり見るという選択肢がないわけではない。<br>　けれど、個人的にはあまり好きではない。<br>　エテ公は、実はちっとも可愛くない。<br>　犬の像とかなら良かったけれど、猿だ。<br>　何だか、人間を子馬鹿にしたような表情の猿だ。<br>　誰が作ったかは知らないが、好感の持てる代物ではない。<br>　何故、こんなところにこんなものを。<br>　ぼく以外で、そう思う人はいないのだろうか。<br>　ただただ有名だから、今更撤去するわけにもいかず。<br>　五十年近く、エテ公は渋谷駅前にいるのだった。<br>　「ここは、どうする？」<br>　「どうするって？」<br>　初め、何を訊かれているのかが分からなかった。<br>　質問の意図が不明だ。<br>　てか、その必要、ある？<br>　「一緒に来る？」<br>　「一緒に行かない方がいいの？」<br>　じゃあ、ぼくは一人で帰る？<br>　いっくんの隠れ家に？<br>　拉致監禁被害者が、そんなことする？<br>　「いっくんが放置するのなら、ぼくは自分の家に帰っちゃうけど？」<br>　帰っていいなら、そうする。<br>　だって、色々不便だし。<br>　ぼくはまだ、子供だから平気だけど。<br>　女の子には月のものもある。<br>　だから、ぼくがそれを迎える前に、帰してもらいたいと思う。<br>　てか、そんなに何年も、時間をかけるつもりはない。<br>　心花には、そんなに時間が残されていない。<br>　早く体を自由にしてあげないと。<br>　本当に壊れてしまうから。<br>　心がもう、持たないんじゃないかと、ぼくは思っている。<br>　「あ。それは駄目」<br>　やっぱり。<br>　いっくんに、ぼくを解放する気はないようだ。<br>　相変わらず、ぼくは囚われの身。<br>　だけど、全然嫌ではないのだ。<br>　あまり被害者意識もない。<br>　だって、ぼくは共犯者だ。<br>　「奏多からもらったの、取りに行くんだけど」<br>　「うん」<br>　そう言えば、さっき、何かを手に乗せられていた。<br>　いっくんが握ったままの掌に、それはある。<br>　「･･････鍵？」<br>　鍵のようだ、<br>　鍵にしか見えない。<br>　それを見て、飴玉や煙草と間違える人はいない筈。<br>　もしいたら、それは単なるボーッとした人だ。<br>　「･･････」<br>　何の鍵だろう。<br>　隠れ家のは、いっくんのデニムのポケットの中だ。<br>　自宅の鍵と一緒に繋がれてる。<br>　番号がある。<br>　プラスティックのプレートに、数字が刻まれてる。<br>　2124とある。<br>　黄色いプレートに黒い字で。<br>　「コインロッカーのカギ？」<br>　「正解」<br>　駅が近いから、コインロッカーならたくさんある。<br>　利用者も少なくない。<br>　これは、その何れかの鍵なのだ。<br>　「その中に、奏多がくれたものが入ってる？」<br>　「そういうこと」<br>　直接手渡しも出来た。<br>　でも、流石に目に留まる。<br>　理由？<br>　手に持っていたら変だから？<br>　「それ取ってくる間、此処で待っててもいいっていう意味だったんだけど」<br>　「そっか」<br>　勝手に何処かへ行っていいわけじゃなかった。<br>　当たり前だ。<br>　はぐれたら、地獄だ。<br>　「一緒に行動した方がいいよ」<br>　探す手間が省ける。<br>　ただ、見つかりやすくなる。<br>　どっちを選ぶか、だ。<br>　「ここがそう言うなら」<br>　と、頷いて。<br>　「行こう。あっちだから」<br>　当たり前のように。<br>　いっくんが、ぼくに手を差し出すんだ。<br>　「･･････」<br>　ぼくは、差し出されてる手を見つめる。<br>　ぼくの、好きな人。<br>　大好きな人。<br>　ねぇ、こうやって手を差し出される度、ぼくは考えてしまうんだ。<br>　駄目なのに、期待してしまうんだ。<br>　欲張りになってしまうんだ。<br>　これって、どういう意味なの？<br>　ぼくを好きになってくれるの？<br>　何処へ連れて行ってくれるの？<br>　ぼくは、きみと何処までいけるの？<br>　「･･････うん」<br>　掌を重ねる。<br>　ギュッと、握り合う。<br>　今は、こうしていても兄妹にしか見えない。<br>　でも、いつか。<br>　そうじゃなくなる時が来れば、いいのにな･･････。<br>　夢見るように、思ってしまうんだ。<br>　当たり前に、願ってしまうんだ。<br>　二人でずっとずっと、いられること。<br>　二人のままで、ずっとずっと。<br>　こんな風に、想い続けられたなら。りましたか？</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12371513676.html</link>
<pubDate>Fri, 27 Apr 2018 06:53:46 +0900</pubDate>
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<title>少女未満95</title>
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<![CDATA[ <p>　「ヤってねぇし」<br>　「いやいやいや？」<br>　何もかも分かってます、と言わんばかりに。<br>　「隠さなくていいよ。僕には、分かるもん」<br>　「いや、解ってないから」<br>　してないから。<br>　･･････いや、してないとは言えないかもしれないけど。<br>　非処女じゃないから。<br>　まだ、だから。<br>　って、ぼくは何を言いそうになっているんだろう。<br>　「元気そうでよかった」<br>　ぼくのことをじっと見つめる奏多。<br>　何だか、しみじみしてる。<br>　ついこないだ会ったばかりだけど。<br>　確かに、感慨深いような。<br>　何故だろう。<br>　「うん」<br>　ぼくは頷く。<br>　「ぼくは、元気だよ」<br>　病気になった覚えはない。<br>　体の調子がおかしいわけじゃない。<br>　ただ、あの違和感はまだ残っているけど。<br>　あんなんでこんなだから、一体実際はどうなってしまうんだろう。<br>　怖い。<br>　「絃護兄さんにヤられちゃったのに？」<br>　ニヨニヨ笑い。<br>　「ヤってねぇし」<br>　いっくんは不機嫌だ。<br>　「何度言わせんだよ。解ってて言ってんの」<br>　「まぁね」<br>　「何で」<br>　「絃護兄さんが悪いよ」<br>　奏多が腕組みをする。<br>　「心結ちゃんは、僕たち皆の心結ちゃんだって知ってて、あれはないでしょ」<br>　あれとは、アレだ。<br>　「･･････」<br>　無理無理な要求だ。<br>　大人たちを中学生の少年一人で動かすのだ。<br>　ただお願いしても、叶えてもらえる筈がない。<br>　ただの中二病だと思われても困る。<br>　世の中のすべてに反抗したいお年頃で、こんなことをしているのではないのだ。<br>　何もかもが気に入らなくて、むしゃくしゃして、幼気な幼女を攫ってきたんじゃない。<br>　本気なのだ。<br>　どうしても要求を呑んでもらわなくてはいけない。<br>　この願いが叶えられれば、あとはもうどうだっていいから。<br>　要求に応じない場合は、この子を殺すのだ。<br>　単なる脅しじゃない。<br>　それをすることに、躊躇はない。<br>　そう主張する為に。<br>　敢えて、酷いことをしたのだ。<br>　そういう風に見えるよう、映像を撮った。<br>　手を加えようがない、生放送まで行った。<br>　「皆のって、おかしくない？」<br>　と、いっくん。<br>　「おかしくないよ」<br>　と、奏多。<br>　「ずっと、そうだったじゃない」<br>　「今までは、な」<br>　意味深だ。<br>　「でも、それをいつまで続けるの？」<br>　「えっ？」<br>　思いがけない質問に、奏多が息を止める。<br>　「俺たち兄弟は、一体いつまで兄弟ごっこを続けられるの？」<br>　兄弟ごっこ。<br>　いっくんの言葉が厳しい。<br>　立花兄弟がこれまで築き上げてきたものを、兄弟ごっこと言ってしまう。<br>　「兄弟ごっこだなんて、･･････そんな」<br>　奏多は、困っている。<br>　その兄弟ごっこが、奏多にはとても大事だったんだ。<br>　馬鹿だとか痛いだとかドルオタだとか狂人だとか中二病だとか言いながら。<br>　兄として、にぃたちのことを慕う奏多だ。<br>　彼らの弟としていられることが、一番大事。<br>　要らない子なんて言われるのが、一番辛い。<br>　我儘で甘え上手な末っ子でいさせてほしい。<br>　切り捨てないでほしい。<br>　たとえ死んでしまったなら、もう誰も兄弟なんて思ってもらえない。<br>　誰も、知らない。<br>　体の一部を切り取って鑑定してもらっても、兄弟と認めてもらえない。<br>　だって、本当は赤の他人だから。<br>　「でも、だって僕たち、兄弟だよね？」<br>　兄弟でなくなる時が来るとか、想定してない。<br>　たとえ会わなくなっても。<br>　別に自分だけの家族が出来たとしても。<br>　兄弟であることは、変わらない。<br>　その絆に、ずっと縋って生きて来たのに。<br>　「俺が言ってるのは、こことのこと」<br>　「へ？」<br>　「あ？ぼく？？」<br>　奏多と二人して、首を傾げた。<br>　確かに、ぼくも交えて兄妹みたいに過ごしてきた。<br>　当たり前のように、立花家でご飯を食べたり。<br>　立花家のお風呂に一緒に入ったり。<br>　立花家には、ぼくの寝る部屋もちゃんとあったりして。<br>　夏祭りには毎年、にぃたちの誰かと一緒に行ったりして。<br>　海で花火をしたりもした。<br>　立花兄弟と言う時、ぼくは自分を抜かしたにぃたちのことだけど。<br>　にぃたちにとっては、ぼくも含めた立花兄弟だったのかもしれない。<br>　「お前は、ここを妹だって思えるの？」<br>　いっくんは、更に尋ねる。<br>　「妹に抱く感情？それって」<br>　「･･････」<br>　奏多は答えない。<br>　きっと、答えられない。<br>　「俺は、全然違うよ」<br>　きっぱりと宣言。<br>　「最初から、俺は全然違った。だから、ずっと戸惑ってた」<br>　だから、ずっと不自然だった。<br>　妹扱いされたことは、一度もない。<br>　絶対に踏み込んでこないし、距離を一定に保ったままだった。<br>　その代わり、自分のことも絶対に全部見せない。<br>　本当の姿を見せない。<br>　それは、赤の他人だから。<br>　従兄妹とは言っても、義理の関係でしかないから。<br>　本当の自分を見せたくない。<br>　それが怖くて仕方がない。<br>　だけど、離れていかれもしない。<br>　離れたいわけじゃないから。<br>　多分、傍にいたいから。<br>　でもそれは、妹想いの兄の気持ちではなくて。<br>　「結局、俺たち･･････てか、兄さんたちは、ここで続きをしたいだけなんじゃないの」<br>　「！････････････」<br>　今まで、考えなかったわけではないだろう、<br>　ただ、誰も言い出さなかった。<br>　言い出せなかった。<br>　きっと、関係が壊れてしまうから。<br>　この優しくて心地のいい関係を、失くしたい筈なんて、ないから。　<br>　「いなくなった心花の代わりにしてるだけなんじゃないの」<br>　「ぼ、僕には･･････分からないよ」<br>　奏多には、そうとしか言いようがなかった。<br>　心花への想いは、それほどないのだ。<br>　認識するまでもなく、遠く離れた。<br>　でも、にぃたちには。<br>　とてもとても、心花の存在は大きい。<br>　ぼくの知らないところで。<br>　ぼくの生まれる前から。<br>　ぼくだって、気が付いてないわけがなかった。<br>　解ってた。<br>　でも、いいんだ。<br>　にぃたちなら。<br>　でも、嫌なんだ。<br>　いっくんでは。<br>　いっくんだけは、ぼくをぼくだって見てほしい。<br>　だから、いっくんがぼくを拉致した時。<br>　ぼくを監禁した時。<br>　いっくんの手で解かれながら、ぼくは恐怖を感じていながらも。<br>　これでいいんだって思う自分も存在したんだ。<br>　ぼくは、これでいい。<br>　だって、こうなってしまったら、もう二度といっくんの「妹」には戻れないから。<br>　「妹」にこんなことする人はいないから。<br>　痛いのは嫌だけど、我慢できないわけじゃない。<br>　いっくんがそうしたいのなら、そうしていいって思っていた。<br>　ぼくは、悪い子。<br>　本当は、天使なんかじゃない。<br>　「絃護兄さんは、そんなことを考えていたんだ」<br>　奏多の目が細められる。<br>　可愛い末っ子の顔が、今消える。<br>　「いつから？･･････最初から、だよね？」<br>　「･･････」<br>　「分かってたよ」<br>　ふぅ、と息をつく。<br>　「分からないわけないじゃん」<br>　その仕種に、ドキッとなる。<br>　奏多って、いつもあんなに可愛いのに。<br>　「心結ちゃんを見る絃護兄さんのこと、僕はずっと見て来たからね」<br>　他の兄たちよりも、距離が近かったから。<br>　いっくんが引き籠った後も、唯一同じ部屋にいることを許された奏多だったから。<br>　「引き籠りしてた二年間。絃護兄さんは、片時も心結ちゃんを忘れたりしなかったよね」<br>　「え？」<br>　奏多から語られた。<br>　ぼくに知らない、いっくんの二年間。<br>　「心結ちゃんの存在なしにはいられなかったよね」<br>　それって、どういう？<br>　「僕から聞きたがったよね。心結ちゃんのこと、ずっと気にしてた」<br>　会いたい。<br>　離れたくはなかった。<br>　でも、会えない。<br>　自分が怖いから。<br>　自分の中にあるものを、恐れたから。<br>　「だから、驚いたんだ」<br>　一体いつまで、それを続けるの？<br>　もう、一歩たりとも踏み出さないの？<br>　歩かないの？<br>　凍り付いたままでいるの？<br>　「キラキラ生放送を見た時。嘘だろ、って思った」<br>　妙に男っぽい言い方に、ドキッとした。<br>　そうなんだ。<br>　奏多だって、男の子なんだ。<br>　奏多だって、本当の自分をぼくには見せてない。<br>　ぼくに合わせて、自分を使い分けてる。<br>　演じている。<br>　一番仲良しな従兄の役を。<br>　従兄だから、仲良しだから。<br>　「毎日僕が、どんな気持ちで抑えてると思ってるんだよ。人の苦労を、何だって思ってんだよ」<br>　押し殺してきたものがあるのに。<br>　「このやろー、全部台無しにしやがって。フッザケンナ、って思った」<br>　「ああ･･････何かごめん」<br>　と、いっくん。<br>　「今謝る？」<br>　苛立った、奏多の声。<br>　「うん」<br>　いっくんは頷く。<br>　「ごめんね、奏多」<br>　「･･････」<br>　あまりに素直なので。<br>　腹を立てる方が、馬鹿馬鹿しい。<br>　奏多は、そう思ったんだろう。<br>　それに、今はそんなことしてる場合じゃない。<br>　「どうして、あんなに大事にしてた心結ちゃんを、って想いが強かったよ」<br>　さいごに、それだけを告げる。<br>　「幾ら絃護兄さんが中二病だからって、心結ちゃんをヤっちゃうとかないでしょ･･････とか」<br>　「ヤってないし」<br>　「指、入ってた」<br>　「･･････」<br>　よく見てる。<br>　其処まで、見えてた？<br>　いや。<br>　「放送録画して、後で何度も見たから」<br>　「怖いよ」<br>　奏多、怖い。<br>　想像してみる。<br>　映像を巻き戻したり、一時停止させたり、拡大表示させる。<br>　そんなの、嫌だ。<br>　嫌すぎる。<br>　だって、凄いガン見だったってことだ。<br>　「絃護兄さんなりの、優しさ？」<br>　奏多が尋ねた。<br>　「え？何が？」<br>　途中でやめたこと？<br>　最後まで映さなかったこと？<br>　それとも。<br>　「アナ･･････」<br>　「穴？」<br>　穴がどうかしたのだろうか。<br>　「･･････ううん。訊かない」<br>　その勇気がないのだろう。<br>　其処まで突っ込むのも、逆に兄弟同士で嫌だった。<br>　妙に生々しいから。<br>　兄弟のそういうのは、知りたいようで知りたくない。<br>　「ねぇ、どうして？」<br>　代わりに尋ねる。<br>　「心結ちゃんを拉致して、監禁して、ああいうことしたの」<br>　「･･････話せば、長くなる」<br>　まず、トウマにぃと心花のことから話さないといけない。<br>　トウマにぃに、ＭＡＲＩＡの非公式ファンサイトの管理人を押し付けられ。<br>　ＭＡＲＩＡの話を聞いて、心が壊れそうだった彼女を慰め。<br>　心花の希望で、九里浜海岸を訪れ。<br>　彼女の願いを、叶える約束をした。<br>　ただ、それだけのことだ。<br>　だけど、いっくんにとって、それは短い時間の話ではない。<br>　とても長い時間だった筈だ。<br>　そしてそれは、きっと今も続いてる。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12369251702.html</link>
<pubDate>Wed, 18 Apr 2018 08:47:22 +0900</pubDate>
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<title>少女未満94</title>
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<![CDATA[ <p>　場所は、渋谷。<br>　エテ公前。<br>　待ち合わせの定番だ。<br>　今日も、例日通り人々でごった返している。<br>　此処に人が一人もいないことなんてあるんだろうか。<br>　天変地異が起きない限り、誰かしら此処に立っている気がする。<br>　待ち人を待って。<br>　探して。<br>　「奏多、来るかなぁ」<br>　信じてないわけじゃない。<br>　彼なら、本当に来るだろう。<br>　だけど、来てしまっていいんだろうか？<br>　いっくんとぼくの計画に、奏多を巻き込むことになる。<br>　たとえ本人がそれを望んでいたとしても、犯罪は犯罪だ。<br>　「来るよ」<br>　いっくんは、前を向いたまま答えた。<br>　「来ない理由がないし」<br>　「そうだけど」<br>　気になっているのは、いっくんと奏多が言っていた「いつものあれ」だ。<br>　「いつものあれ」とは、何だろう。<br><br>　いち『いつもの』<br>　いち『あれでお願い』<br>　かなた『りょーかい』<br><br>　というやり取りをしていた。<br>　待ち合わせの目印だろうか。<br>　ただ、二人は兄弟で、顔が分からないというわけではないから、それが必要不可欠というわけではない筈だ。<br>　人が多すぎて、探すのは苦労するけれど。<br>　「･･････」<br>　奏多を待つ、いっくんを見る。<br>　目が合ったら恥ずかしいので、こっそり盗み見る。<br>　綺麗だ。<br>　一言で言うと、綺麗なのだ。<br>　男子に綺麗って変だけど、綺麗。<br>　兄弟で一番、よしのさんに似ているというから、危うく国を傾けるところだったというのは、冗談でもないのだろう。<br>　いっくんが、男の子でよかった。<br>　よしのさんみたいに、たくさんの男の人に利用されてしまうのは、可哀想だから。<br>　「･･････何？」<br>　いっくんがこっちを見る。<br>　「う、ううんっ！」<br>　見てるのバレた。<br>　恥ずかしい。<br>　ぼくは、首を振って誤魔化す。<br>　変な奴だ、と思われただろう。<br>　人の顔を凝視とか。<br>　気持ち悪い以外の、何物でもない。<br>　「･･････何か、ごめん」<br>　「何で謝るの」<br>　「ぼく、凄く目立ってるよね･･････」<br>　さっきから、周囲の人たちがこっちを注目してるみたいだ。<br>　自意識過剰、かと思った。<br>　そんな、ただの普通の女の子を見てる人なんていやしない。<br>　可愛い子役タレントじゃあるまいし。<br>　ぼくを見て嬉しい人なんていないのに。<br>　でも、明らかにこっちを見られてる。<br>　こそこそと、何かを話してる。<br>　ぼくはそれを、ぼくが目立ってるからだと判断した。<br>　美人だから目立ってるんじゃない。<br>　服装があれだからだ。<br>　パープルのパーカー。<br>　橘印が大きくお腹についたパーカー。<br>　汐里さんから立花兄弟全員に与えられたという装備（笑）。<br>　制服は破れてしまって。<br>　セーラー服は、汚れてしまって。<br>　もう、着られるものが、これだけだったという。<br>　多分、いっくんもぼくを拉致る前までにそこまで用意が出来なかったのだ。<br>　事前に綿密に計画を練って犯行に及んだのではなく。<br>　殆ど衝動的だったのだろう。<br>　急け件に飛び交っている、アイドル・モデルＭＡＲＩＡに関する嘘八百の報道。<br>　事務所がひた隠しにするＭＡＲＩＡの真実。<br>　人々は勝手にＭＡＲＩＡを悲劇のヒロインにしたり、嘘つきペテン師呼ばわりしたり。<br>　あまりの仕打ちに、きっと頭に血が上ったのだ。<br>　彼の知っているマリアは、決してそんな人じゃなかったから。<br>　更に、マリア本人からの欲求が、彼を追い込んだ。<br>　わたしを助けて。<br>　わたしの願いを叶えて。<br>　わたしを永遠にして。<br>　一度にすべてを叶えるには。<br>　大人たちに要求するには。<br>　ただの中学生に過ぎない自分が訴えるには、こうするしかないと思ったんだろう。<br>　中二病を拗らせて、彼は、もう。<br>　冷静に考えれば、とても難しいことなのに。<br>　どんなに喚いたって、騒いだって、きっと消されてしまうのに。<br>　それでも、懸命だった。<br>　だって、それを願われてしまったから。<br>　振り切れるような冷たさが、彼にあるわけがなかった。<br>　いっくんは、優しいから。<br>　何だって、許してくれる･･････。<br>　無謀な計画だ。<br>　だけどもう、戦いを始めてしまった。<br>　運命の輪は回り続ける。<br>　引き返せない。<br>　幼気な幼女を暴行してる映像を、生公開してしまった時から。<br>　いっくんは、もう戻れないのだ。<br>　自分の殻に閉じ籠って、部屋の隅に膝を抱えて座っているだけの毎日へは。<br>　バーチャルの世界に逃げることも、もう出来ない。<br>　戦うのだ、リアルで。<br>　彼の敵は、この現実の世界に存在する。<br>　「･･････パーカー脱いだ方がいい？」<br>　視線に堪え切れず、ぼくは尋ねた。<br>　「いいの？」<br>　いっくんが訊き返す。<br>　「下、何着てるの？」<br>　「･･････セクニャン」<br>　セクシーにゃんこ。<br>　略して、セクニャン。<br>　大人な業界で、今人気のセクシー女優さんだ。<br>　映像作品の出演に留まらず、彼女は写真集も出している。<br>　テレビにも、進出している。<br>　とっても可愛くて、物凄くエロイのだ。<br>　ぼくは今、彼女の定番衣装を着ている。<br>　セパレーツタイプのもこもこ衣装。<br>　流石に、グローブと靴下と猫耳は外してる。<br>　でも、セパレーツは着てる。<br>　うんとセクシーだ。<br>　幾ら子供でも、子供だから、これは外に出せない。<br>　「無理でしょ」<br>　「無理だよ」<br>　解ってる。<br>　訊いたぼくが、愚かだった。<br>　「思うほど、おかしくないよ」<br>　と、いっくんは言う。<br>　「ダサいけどね」<br>　「･･････」<br>　イケてない格好で、渋谷にいるのは辛い。<br>　早く着替えたい。<br>　せめて普通になりたい。<br>　「あ、あの子」<br>　「うわー」<br>　すぐ傍を、二人組の女の子が通った。<br>　中学生くらいだろうか。<br>　制服姿だ。<br>　ぼくたちの前を通り過ぎ、でも、相変わらずこっちを見ている。<br>　「･･････」<br>　ぼくのパープルパーカーに注目して･･････は、ない。<br>　彼女たちの視線の先は、ぼくに向いてはいない。<br>　「ねーねー、よっきゅん」<br>　片方が、もう片方を呼ぶ。<br>　「あの子、めっちゃカッコよくない？」<br>　「うんうん。アカリくんみたいだよぉー」<br>　そんな会話が聞こえた。<br>　「アカリくん？」<br>　って、誰？<br>　彼女たちが騒ぐくらいだから、それなりの人なんだろう。<br>　イケメン系？<br>　いっくんが似てるって意味、だよね？<br>　「ガリューク」<br>　と、いっくんが言った。<br>　勿論、彼女たちに聞こえないように。<br>　「ガリューク？」<br>　『イチゴ１０００％』を歌っている人だ。<br>　正確には、グループだけど。<br>　今、凄い人気の音楽バンドだとか。<br>　若者なら、知らない人はいないと思う。<br>　中年以上の人たちにも、人気度は高いと思う。<br>　ぼくは、バンドの存在も曲も知っているけれど、中の人たちについては詳しくなかった。<br>　「アカリっていうのは、ベーシストでいつも･･････」<br>　「あ」<br>　分かった。<br>　思い出した。<br>　確かに、いた。<br>　「あの人」<br>　目元に赤のラインを入れてて、特徴的なメイクをしてる。<br>　メイクをしてても、女装してるわけじゃない。<br>　ああいう感じのバンドって、多少なりともメイクしてることがほとんどだ。<br>　すっぴん状態のメンバーは、いなかった筈。<br>　外見的に一番「普通」のイズミも、そこそこしてた気がする。<br>　そんなじろじろ見たことはないけど。<br>　ファンというほどじゃないし。<br>　「いっくん、似てる？」<br>　ぼくは、ステージ上の彼しか記憶にないから。<br>　アカリはメイクしてるから。<br>　今のいっくんは、当たり前だけどしてないし。<br>　「･･････前に、アカリがウィスパーで、風呂上がりの写真出したことがある」<br>　「え、そんなの公開しちゃってるの？」<br>　ちょっと、恥ずかしい。<br>　ぼくは、無理だ。<br>　そりゃ、変なスイッチ入って、セクニャンのいろんな写真、撮っちゃったけど。<br>　にぃたちに見られちゃったけど。<br>　全世界に公開してはいない。<br>　でも、ウィスパーは全世界と繋がってる。<br>　「いや、全身写ってはいないから」<br>　それは犯罪だ。<br>　「体の上半分くらいだけ」<br>　「そっか」<br>　なら、大丈夫だろう。<br>　「つまり、それですっぴんを皆が知ってるということなんだね」<br>　「うん」<br>　それが、いっくんと似てるって言うんだろう。<br>　いっくんは風呂上りじゃないけど。<br>　「で、本当に似てるの？」<br>　本人に訊くのはどうかと思う。<br>　けど、訊いてみた。<br>　答える方は、勇気がいる。<br>　似てるなんて言ったら、どんだけなんだ。<br>　自分に自信があり過ぎ。<br>　「分からない」<br>　と、いっくんは言う。<br>　「奏多は似てるって言うな」<br>　「うん」<br>　ぼくも、そんな気がする。<br>　奏多は、先日のいっくんが大変身した姿を知っている。<br>　プロフェッショナルの手で、滅茶苦茶イケメンになったいっくんを。<br>　あれは、間違いなく似てた筈。<br>　「理希兄さんは、そうでもないって言う」<br>　引き籠り状態のいっくんなら、きっと似てないんだろう。<br>　でも、もう髪は切ったし、服だってだらしなくない。<br>　外に出るからだろう。<br>　いっくんは、奏多が買ってくれた服を着ている。<br>　渋谷に出られる服なんて、それしか持っていないのかもしれない。<br>　髪をちょっと切って、服を変えるだけで見ず知らずの人に、一流芸能人に似てると言われるのだ。<br>　本当に似てるんだろう。<br>　「･･････目立ってるの、俺か」<br>　「みたいだね」<br>　しかも、隣には紫パーカーだけを見た幼女。<br>　どういう二人なんだ、と思われる。<br>　「ねーねー、声かけてきなよぉ。よっきゅん」<br>　「やーだー！恥ずかしいよぉ、マッチン」<br>　よっきゅんとマッチンが顔を見合わせて、もじもじしてる。<br>　まだ、立ち去っていなかったようだ。<br>　多分、なかなか諦められない。<br>　見てるだけで幸せとかいう？<br>　いっくんは決して、アカリ本人じゃない。<br>　アカリとは違うのに。<br>　「いやー、ないわ」<br>　と、いっくん。<br>　「用が済んだら、即行いかないと」<br>　目立ってしょうがない。<br>　人に紛れる筈が、見つかってる。<br>　いっくんが綺麗だから。<br>　「あ、ごっめーん(⋈◍＞◡＜◍)。✧♡」<br>　それから、五分後。<br>　漸く奏多が到着したのだ。<br>　とはいっても、遅刻ではない。<br>　ぼくたちが早かっただけ。<br>　「待ったぁ？」<br>　「･･････いや」<br>　首を振る。<br>　「それほどでも」<br>　早く来すぎて、時間通りの人を怒るわけにはいかない。<br>　「奏多･･････」<br>　久々に逢う奏多だった。<br>　拉致されてからは、初めて。<br>　当たり前だけど。<br>　何だろう、妙な感慨が。<br>　「心結ちゃん、元気そうでよかった」<br>　と、微笑む。<br>　やっぱり、いちいち可愛い。<br>　「絃護兄さんにヤられちゃったけど、それ以外は、今まで通りの心結ちゃんだね」<br>　「･･････！？」<br>　なんて、とんでもない発言をサラッと。<br>　しれっと。<br>　「何、それ」<br>　と、いっくん。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12368487526.html</link>
<pubDate>Sun, 15 Apr 2018 08:50:25 +0900</pubDate>
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<title>少女未満93</title>
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<![CDATA[ <p>　いきなり？<br>　今のこの状況で？<br>　有り得ない。<br>　ＷＡＶＥの最中だ。<br>　幾ら、精神を病んでしまっているとは言っても。<br>　急すぎる。<br>　散歩に行きたくなったから、行くのか？<br>　そうじゃないだろう。<br>　「社長だ」<br>　いっくんの意見に、賛成だ。<br>　「社長が、散歩でもしようとか言ったんだろうね」<br>　「断れないの？」<br>　「断れない」<br>　心花はまともじゃない。<br>　頭がおかしい人。<br>　訪問者の伯父は、外の世界の人。<br>　まともな人。<br>　そんな構図になっている。<br>　どっちの言うことに従う？<br>　心花の意思を尊重してくれない。<br>　彼女が、連れて行かれてしまう。<br><br>　いち『スマホ』<br>　いち『隠し持って行って』<br>　いち『何かあってもなくても、』<br>　いち『俺たちにメッセージ頂戴』<br>　いち『ずっと、気にしてるから』<br>　いち『待ってる』<br><br>　でも、彼女からの返信はなかった。<br>　既読になってるから、読んではいるのだろう。<br>　「大丈夫かな･･････」<br>　結局、神戸にいるらしいこと以外、何も分からず仕舞いだった。<br>　山奥の施設。<br>　それだけじゃ、行けない。<br>　「メッセージくれるのを、待つしかない」<br>　と、いっくん。<br>　良かった。<br>　今すぐ行く、とか言わなくて。<br>　そんなの無理だって、理解したのだろう。<br>　そう。<br>　マリアの次のメッセージ待つしかない。<br>　きっと、大丈夫。<br>　単に様子を見に来ただけ。<br>　世間が騒いでいる以上、出来るだけ早くＭＡＲＩＡを生番組に出演させなきゃならないからってだけ。<br>　マリアをやらせるのにあとどれくらいで復帰できるのか、確かめに来ただけ。<br>　だって、社長にとって心花は、必要不可欠。<br>　バーチャルでは幾らでもＭＡＲＩＡを作れる。<br>　けれど、リアルには、心花一人だけ。<br>　心花が必要だから、彼女を父から取り上げた。<br>　無理やり引き取って、ＭＡＲＩＡとして作り上げたのだ。<br>　たとえどんな風に変わってしまっても。<br>　一人しかいない。<br>　アイドル・モデルＭＡＲＩＡとしても。<br>　孫娘の心花としても。<br>　代わりなんていない。<br>　誰も代わりをできない。<br>　大丈夫。<br>　大丈夫だ。<br>　「･･････心花」<br>　彼女の本当の名前を呼んでみる。<br>　勿論、返事はない。<br>　「ちょっとだけ、分かった気がした」<br>　「ん？」<br>　いっくんがぼくを、見下ろす。<br>　「心花のこと、分かったの」<br>　「うん」<br>　ぼくの話を聞いてくれる。<br>　ぼくの言葉を待っていてくれる。<br>　「今までは、分からないことだらけだった」<br>　分かることもあったけれど。<br>　それはぼくの、想像でしかなかった。<br>　何故なら、本当の心花を全然知らなかったから。<br>　でも、ＷＡＶＥの中だけど、言葉を交わしてみて。<br>　彼女がどういう人なのか、理解したのだ。<br>　「どう思った？」<br>　いっくんは、ぼくの気持ちを知りたがる。<br>　ぼくが心花に対して、何を思っているのか。<br>　どうして？<br>　それは、彼女に特別な感情を持っているから？<br>　それとも、ぼくを･･････。<br>　「普通に感じられる」<br>　思っていたほど、頭がおかしくなってるということはなかった。<br>　ただ、確かに病んでいた。<br>　それは、彼女の環境では仕方のないことかもしれない。<br>　生まれる前のことですら、彼女を苦しめてきたのだ。<br>　母親の罪を、彼女が引き継いでいる。<br>　母親の代わりに、罰を与えられているみたいに。<br>　彼女のせいじゃない。<br>　本当に悪いのは、彼女の母親なのに。<br>　その人は、とうの昔に逃げてしまった。<br>　そんな風に、心花も逃げてしまえれば良かったけれど。<br>　無責任にはなれなくて。<br>　結局、病んでしまったのだから意味なかったけれど。<br>　「こんなことがなければ、話すこともなかったかな」<br>　多分。<br>　もっと大人になってからなら、違う話も出来ただろう。<br>　でも、今は、あまり話すことはない。<br>　というより、ぼくに彼女を慰めるのは無理だ。<br>　ぼくじゃ、支えられない。<br>　彼女のすべてを引き受けられない。<br>　心花はそれを、望んでいるのに。<br>　誰かに、全身を支えらされ、守られたいのに。<br>　分かるけど。<br>　それをいっくんに求めるのは、やめて。<br>　「トウマにぃが、するべきなんだよ」<br>　だって、実際心花は彼のことを話した。<br>　トウマにぃとの昔話をした。<br>　「会いたいんだろうな･･････」<br>　ぼくに話してしまう位。<br>　「会いに来てほしいんだろうな･･････」<br>　本当は、ずっと待っている。<br>　早く助けに来てほしい。<br>　ぼくなんかが、行くんじゃなくて。<br>　いっくんが代わりになるんじゃなくて。<br>　ねぇ、お願い。<br>　このままじゃ、悪い人に殺されてしまう。<br>　その前に、迎えに来てね。<br>　そのメッセージを、心花はトウマにぃに届けたいんだ。<br>　トウマにぃだって、解ってるくせに。<br>　どうして、あそこまで逃げるの？<br>　身を躱して、逃げてしまうの？<br>　「無責任だよ･･････」<br>　思わず、心の声が漏れた。<br>　いっくんは、少し考えた後に。<br>　「･･････そうかもね」<br>　と呟く。<br>　「最初は、俺もそう思った」<br>　「？」<br>　ぼくの予想とは違う言葉が続いたので。<br>　いっくんを振り返った。<br>　トウマにぃを庇うの？<br>　珍しい。<br>　「何処までも逃げられたら、それでいいよ」<br>　恋しい人と、何処までも一緒に行けたのなら。<br>　誰にも邪魔されない、ずっと傍にいられる場所があるのなら。<br>　世界に二人だけなら。<br>　二人のことだけを考えていられるなら。<br>　「でも、そうじゃなかった」<br>　大人になればなるほど、気付く。<br>　自分たちを取り巻く人々の存在に。<br>　断ち切れない繋がりがあって、その為に彼らさえも不幸にしてしまうんだ。<br>　自分たちの行いで、傷つき苦しむ人たちがいる。<br>　それなのに、果たして逃避行が続けられる？<br>　「出来ないのに、それを認めないままの方が、ずっと無責任じゃないのかなって、俺は思う」<br>　「いっくん･･････」<br>　いっくんは、大人だね。<br>　そうだよね。<br>　ずっといろんなことを考えてるんだよね。<br>　いっくんは、優しいから。<br>　皆のことを考えちゃう。<br>　何をされたって、許してしまう。<br>　トウマにぃに、何を押し付けられたって。<br>　代わりになっちゃう。<br>　それで、束の間の幸せを手にする人がいるのなら。<br>　優しくて、綺麗ないっくん。<br>　ねぇ、ぼくは、きみが好き。<br>　大好きです。<br>　「･･････」<br>　言葉には出来ないけど。<br>　ぼくは、黙って目を閉じた。<br>　想いが溢れそうだ。<br>　目を開けていたら、涙が零れそうだ。<br>　「･･････」<br>　いっくんが何も言わずに、ぼくの手を握ってくれる。<br>　何故か、耳元に息を掠めて。<br>　体が痺れた。<br>　甘く熱く、痺れたんだ。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12367496999.html</link>
<pubDate>Wed, 11 Apr 2018 10:14:17 +0900</pubDate>
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<title>少女未満92</title>
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<![CDATA[ <p><br>　現実は、理想とかけ離れているものだけど。<br>　リアルの世界で、決着しなければ意味がないんだ。<br>　いつまでも、夢だけを見ていてはいけないよ。<br>　逃げ込んではいけないよ。<br>　ちゃんと、真っ直ぐに顔をあげて。<br>　ねぇ、何が見えてるの？<br><br>　マリア『心結ちゃんは、狡い』<br>　ここ『え』<br>　ここ『狡くないよ』<br>　マリア『うん、解ってるわ』<br>　マリア『狡くない』<br>　ここ『え』<br>　ここ『何？』<br>　マリア『わたしを、助けてね』<br>　マリア『自由にするのは、難しいかもしれない』<br>　マリア『わたしの体』<br>　マリア『きっと、ずっと囚われたまま』<br>　マリア『もう、駄目かもしれない』<br>　ここ『何でそんなこと言うの？』<br>　ここ『ぼくが、自由にするよ』<br>　ここ『助けに行くよ』<br>　ここ『お姉ちゃん』<br>　マリア『ほら、狡い』<br>　マリア『お姉ちゃんて呼びかけられると』<br>　マリア『心が潰れそうだわ』<br>　マリア『わたしも、心結ちゃんと姉妹になりたかった』<br>　マリア『なればよかった』<br>　ここ『姉妹だよ』<br>　ここ『遅くなんてないよ』<br>　ここ『助けたいよ』<br>　ここ『何処にいるの？』<br>　ここ『心花』<br><br>　何度も、何度も居場所を尋ねた。<br>　でも、明確な答えは返らない。<br>　彼女も、自分が何処にいるのかを知らないのだろう。<br>　何処かの病院？<br>　それとも、隔離施設？<br>　きっと、街から遠く離れているのだ。<br>　簡単に辿り着けない、助けに行けない場所にいるの？<br><br>　いち『神戸？』<br>　<br>　「え？」<br>　リアルのいっくんを、ぼくは見た。<br>　「いるの、神戸かもしれない」<br>　誰がって？<br>　心花が、だ。<br>　「情報をもらった。GlassHeartroomに書き込まれた」<br>　提供してくれたのは、神戸の療養施設の職員をしているという女性だった。<br>　極秘扱いで入所している少女の元に、とある老齢の紳士が面会に訪れているのだが、それが先日テレビで見たＭＡＲＩＡの所属事務所の社長にそっくりだという。<br>　あの少女こそが、マリアなのではないか？<br>　雑誌等で見る印象とは全然違うけれど、言われてみるとそうとしか思えない。<br>　年齢はぴったり一致する。<br>　本物のＭＡＲＩＡなんじゃないか。<br>　だとしたら、今起きている妹の誘拐事件（？）に関するインタビューを受けたのは、彼女ではないことになる。<br>　あれは、誰？<br>　マリアじゃないの？<br>　犯人に呼びかけていたのは、偽物？<br>　本物は？<br>　事件すら知らされず、此処に閉じ込められているの？<br>　「神戸だ」<br>　「神戸･･････」<br>　それって、遠い。<br>　今から行こう、という距離ではないのだ。<br>　歩いて行くわけにもいかない。<br><br>　いち『神戸だ』<br>　マリア『分からないわ』<br>　マリア『そうかもしれない』<br>　いち『行く』<br>　いち『行くから、待ってて』<br><br>　「･･････」<br>　行くのは、簡単じゃないのに。<br>　どうやって行くの？<br>　いっくん。<br>　いっくんは、誘拐犯だよ。<br>　隠れてなきゃ駄目なのに。<br>　今から、神戸に行くの？<br>　「奏多と約束したよ？」<br>　渋谷のエテ公前。<br>　行かないの？<br>　「行くけど」<br>　マリアの体を自由にすること。<br>　マリアを永遠にすること。<br>　その両方を叶えなければ意味はない。<br>　その両方が、彼女の願いなのだ。<br>　まずは、心花を助けてからにする？<br>　だったら、奏多に言わないと。<br>　行けなくなったと伝えなくちゃ。<br>　「無理だよ」<br>　意地悪で言ってるんじゃない。<br>　ちゃんと考えて、ぼくはそう結論を出したんだ。<br>　「どうやって行くの？見つかっちゃうよ？」<br>　神戸に行くなら、鉄道を使わなきゃ。<br>　或いは、バスに乗り込む？<br>　でも、警察は神威心結誘拐事件の捜査中だ。<br>　当然、駅とかから他所へ移動する人のことを見張ってる。<br>　「本当は、エテ公前だって危ないのに･･････」<br>　長距離を移動するなら、猶更だ。<br>　「あいつが、マリアを解放しないっていうなら、しょうがない」<br>　と、いっくんは言う。<br>　「本当は、マリアをを解放すると思っていたけど･･････」<br>　ぼくを見殺しにする筈がないと。<br>　いっくんは、あの人が人間であることを信じた。<br>　が、違った。<br>　ぼくを見捨て、マリアを自由にしなかった。<br>　あの人にとって、ぼくの命がどうでもいいのだ。<br>　世間が何と思おうと、マリアが解放されたがっていないことを主張すればいいのだと判断した。<br>　だから、いっくんは心花の願いをすべて叶える為に。<br>　心花の体をあの人から解き放つ為に、直接彼女の幽閉されている場所まで行かなきゃならなくなったんだ。<br>　<br>　マリア『うん』<br>　マリア『来て』<br>　マリア『わたしを、ここから連れ出して』<br>　マリア『絃護くん』<br>　マリア『助けて』<br><br>　「･･････」<br>　心花。<br>　狡いのは、お姉ちゃんの方だ。<br>　そんなこと言われたら、いっくんが拒める筈ない。<br>　ぼくの言葉なんて、全部弾き返されちゃう。<br>　心花の願いに、従ってしまう。<br>　だって、約束だから。<br>　心花が解放され、永遠になるまで。<br>　いっくんの最優先事項は、それなんだ。<br>　「行っちゃ、駄目」<br>　ぼくは、いっくんに縋りつく。<br>　「行くのは、危ない」<br>　本能で感じている。<br>　今、心花のところに行くのは拙い。<br>　きっと、もう帰ってこられなくなる。<br>　いっくんがすべてを犠牲にして構わなくても。<br>　ぼくは、嫌だ。<br>　だから、行かせたくない。<br>　行かせない。<br>　「行かないで」<br>　いっくん。<br>　「行っちゃ、ヤダ」<br>　我儘だ。<br>　でも、ぼくは譲れない。<br>　譲りたくない。<br>　こんなことで、いっくんを失くしたくはないの。<br>　いっくんは、心花のじゃない。<br>　ぼくの、いっくん。<br>　「ここ･･････」<br>　いっくんの手が、ぼくの髪を撫でる。<br>　「泣かないで」<br>　「泣いてない」<br>　ぼくは、強がる。<br>　「泣いてるよ」<br>　「泣いてないもん」<br>　嘘。<br>　本当は、もう涙でぐずぐずだ。<br>　めそめそしてばかり。<br>　「強情だなぁ」<br>　呆れた声。<br>　何だっていい。<br>　どんなことをしたって、止めるから。<br><br>　ここ『分かった』<br>　ここ『お姉ちゃんは、ぼくが助けるから』<br>　ここ『今いる場所の手がかりになりそうなものとか』<br>　ここ『見つからない？』<br>　ここ『窓の外に、何が見えるとか』<br>　マリア『森』<br>　ここ『森？』<br>　マリア『ずっとずっと、深い森だわ』<br><br>　森ということは、其処は山奥なんだろうか。<br>　神戸だというから、勝手に港の近くとか想像してた。<br>　「山奥だとすると、探すのは大変だけど」<br>　まず、どの山なの？<br>　山のどの辺り？<br>　深いって、どれくらい深い森なの？<br>　療養施設を深い森が取り囲んでいるのだろうか。<br>　だとすると、見つけるのは骨が折れる。<br>　全身の骨が折れる。<br><br>　マリア『外の世界を拒絶してる』<br>　マリア『きっと、誰も入れないんだわ』<br>　ここ『そんなこと』<br><br>　ないだろう。<br>　現に、社長がいつもやって来るのだろう？<br>　施設に物資を届ける業者みたいな人とかも、頻繁に訪れる。<br>　だから、外の世界の人がが入れないわけではないのだ。<br>　ただ、隔離されているだけで。<br>　<br>　マリア『まるで、迷路の中心にいる気分だわ』<br>　ここ『迷路？』<br>　マリア『入口はあるのね』<br>　マリア『でも、出口はないわ』<br>　マリア『わたしは、此処にいるわ』<br>　マリア『ずっと、此処にいるの』<br>　ここ『出られるよ』<br>　ここ『ぼくは、助けに行くから』<br><br>　心花にとっては、トウマにぃが行くのが一番のハッピーエンドなんだろうけど。<br>　ぼくじゃない、誰かの方が物語としてはいいんだろうけど。<br>　お姫様を深い森の迷宮から救うのは、王子様と決まっている。<br>　ぼくじゃ、心花の王子様になれない。<br>　王子様じゃない。<br>　でも、その役をいっくんにはさせないから。<br>　<br>　ここ『何か、思い出さない？』<br>　ここ『其処に行くまでに、見たものとかでもいいよ』<br>　ここ『通りかかった場所でもいい』<br>　ここ『何かないかな』<br>　ここ『お姉ちゃん？』<br>　マリア『面会』<br>　ここ『え？』<br>　マリア『親戚の人が来たって』<br>　ここ『親戚？』<br><br>　「多分、今、施設の職員が部屋に来たんだ」<br>　と、いっくん。<br>　「マリアに、面会者がいるって。親戚の人間だって、言ってる」<br>　「え。でも･･････」<br>　誰も、心花の居場所を知らされてない。<br>　大体、親戚って誰？<br>　ぼくも、いっくんも此処にいる。<br>　父も、立花兄弟も皆、東京だ。<br>　神戸に行った人はいない。<br><br>　マリア『お父様のお兄様です、だって』<br>　マリア『通していいかって』<br>　ここ『え』<br>　マリア『わたし、知らないわ』<br>　ここ『うん』<br>　<br>　心当たりがないというのだろう。<br>　あるわけがない<br>　そんな親戚、いないから。<br>　「父は、兄なんていない」<br>　いるのかもしれないけど、ぼくは会ったことがない。<br>　そんな薄い関係の人だ。<br>　面会に来るなんておかしい。<br>　「嫌な予感がする」<br>　嘘をついて、心花に会いに来る。<br>　本当のことを隠してる。<br>　何故？<br>　「･･････」<br>　心臓がバクバクしてる。<br>　「心花･･････駄目だ」<br><br>　いち『マリア』<br>　いち『断った方がいい』<br>　いち『会えないって』<br>　いち『言って』<br>　いち『マリア？』<br>　マリア『社長』<br>　いち『社長？』<br>　ここ『え？』<br>　ここ『社長なの？』<br><br>　面会者？<br>　身分を偽って、やって来たのは事務所の社長？<br>　このタイミングで、いきなり社長と発言するわけない。<br>　室内に、その当人が入って来たと考えるのが妥当だ。<br>　施設職員は、心花に断りなく、訪問者を中に入れたということか。<br>　その手の施設では、身分証の類いを提示すれば、入所者の許可は必要ないのか。<br>　「どうして、今なんだ？」<br>　いっくんが呟く。<br>　「マリアは、回復したわけじゃない」<br>　「･･････うん」<br>　「ＭＡＲＩＡを演じられるようになったわけじゃない」<br>　彼女の心が治ったわけではない。<br>　治るわけがない。<br>　あんなこと続けてる限り、彼女は壊れるばかりなのだ。<br>　彼女は、もうマリアには戻れない。<br>　彼女は、心花。<br>　ただの女の子なんだ。<br>　「普通に面会？」<br>　仕事以外の時は、ずっと自分の家に閉じ込めていたくらいだ。<br>　いつでも傍に置いておきたいのだろう。<br>　しかし、それでは身分を偽る理由の説明がつかない。<br>　事務所の社長で、心花の祖父の訪問を誰にも知られたくない。<br>　形跡を残したくないのだ。<br>　だから、実際存在しない（ことになっている）伯父のふりをしているんだ。<br>　「駄目だ。嫌だと言って、追い出して」<br>　ぼくは、声をあげてしまった。<br>　音声は繋がってないから、彼女には聞こえないのに。<br>　「心花」<br>　危ない。<br>　そう感じたから。<br><br>　マリア『ごめんなさい』<br>　マリア『お散歩』<br>　ここ『え？』<br>　ここ『お散歩って？』<br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12366528845.html</link>
<pubDate>Sat, 07 Apr 2018 15:35:30 +0900</pubDate>
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<title>少女未満91</title>
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<![CDATA[ <p>　マリア『もう嫌だな』<br>　マリア『神威心花でいられなくなるなんて、嫌だな』<br>　マリア『あんな人のところで暮らすの嫌だな』<br>　マリア『母にも会いたくない』<br>　マリア『ずっとずっと、思っていたわ』<br>　マリア『でも、わたしが祖父のところに行かないと』<br>　マリア『ナギサさんのところには』<br>　マリア『もう、わたしはいられなかった』<br>　マリア『大好きだった皆も、お別れ』<br>　マリア『さよならを、言いに行ったの』<br>　ここ『皆？』<br>　ここ『にぃたちのこと？』<br>　マリア『明日から、もう二度と逢えない』<br>　マリア『そう言って泣いたら、トウマが』<br>　マリア『泣くくらい嫌なら、行くなって』<br>　マリア『行くところがないなら、俺と一緒に行こうって』<br>　マリア『わたしを連れて、祖父から一緒に逃げてくれたの』<br><br>　「ええええっ？」<br>　それ、本当にトウマにぃ？<br>　別の人じゃないの？<br>　ぼくは、いっくんを見上げた。<br>　「･･････透真兄さん、青春ラブアドベンチャー映画かなんかの主人公？」<br>　尤もなツッコミを入れていた。<br>　「ないわー」<br>　笑いまで堪えている。<br>　「マジ、ないわー」<br>　想像がつかない。<br>　そんなこと、本当にあの人が言うとか。<br>　「透真兄さんも、青かったね」<br>　いや、待って。<br>　それ。<br>　似たようなこと、いっくんも今、やってるから。<br>　ぼくを拉致して、父とあの男に、要求とかしちゃってるから。<br><br>　マリア『結局、失敗したけれど』<br>　マリア『あの時間が、一番幸せだったわ』<br><br>　「うん･･････」<br>　ぼくは、頷いていた。<br>　「･･････うん」<br>　分かるよ。<br>　この世で一番好きな人と、二人きり。<br>　キラキラしてて、空が落っこちてきそうで、不思議な感覚。<br>　本当に、世界が二人だけになればいいのに。<br>　あとは何も、要らないから。<br><br>　マリア『あの海を、あの夜空を、あの星々を』<br>　マリア『トウマは、憶えているかしら？』<br>　マリア『わたしがまだ、あなたが好きって言ったら、どんな顔をするのかしら？』<br><br>　ごめん。<br>　心花。<br>　ぼくは、お姉ちゃんに優しい回答を返せないよ。<br>　今のトウマにぃを、見せたくないよ。<br>　夢を見たままの方がいい。<br>　幻滅させたくない。<br>　だって、一度も会いに行かなかった。<br>　それで、もう分かるでしょ？<br>　トウマにぃの中には、もうあの頃の彼はいないんだ。<br>　その海も、その夜空も、その星々も。<br>　記憶になんてないんだ。<br>　忘れてしまったんだ。<br><br>　マリア『あのまま、ずっと一緒に何処までも逃げたかったな』<br>　マリア『それが出来ないんなら』<br>　マリア『わたしなんて、生まれてこない方がよかったわ』<br>　マリア『だって、辛すぎる』<br>　マリア『そうよね』<br>　マリア『生まれる前に、殺すことだってできたわ』<br>　マリア『それで良かった』<br>　ここ『お姉ちゃん』<br><br>　ぼくは、呼びかける。<br>　遠く離れたこの場所から、メッセージを送り続ける。<br><br>　ここ『そんなこと、言ったら駄目だよ』<br>　ここ『父に、出来たわけがない』<br>　ここ『だって、もう生きていたんだよ？』<br>　ここ『心花は、生きていたんだ』<br>　ここ『それを殺すことなんて、出来る筈ないよ』<br>　ここ『父は、命の尊さを本当によく知ってる人だから』<br><br>　生きているってことは、奇跡なんだ。<br>　くさい台詞かもしれないけれど。<br>　生きているってだけで、素晴らしい。<br>　だって、生きたくても生きられなかった人が、たくさんいるの。<br>　ぼくは、そっといっくんに手を伸ばした。<br>　気が付いて、いっくんが自分からぼくを引っ張ってくれる。<br>　ぼくが生きている今は、誰かが生きたかった未来なんだ。<br>　ぼくが諦めそうになっている今日は、誰かが諦めたくなかった明日なんだ。<br>　だから、ぼくはどんなに苦しくても辛くても、死んじゃったりしない。<br>　いっくんのことも、諦めない。<br>　ねぇ、ぼくは此処にいるよ？<br>　ねぇ、ぼくと生きてくれる？<br>　本当に死んじゃう前に。<br><br>　ここ『それに、生まれてこなければ』<br>　ここ『トウマにぃに会うこともなかったんだよ？』<br>　ここ『お姉ちゃんは、それで良かったの？』　<br><br>　心花に、何があったのかは、分からない。<br>　マリアになってからの七年間に、彼女がどのように生きて来たのかなんて。<br>　きっと、口に出せないようなことも、たくさん起きたんだろう。<br>　悲しくて辛いことばかりが、あったんだろう。<br>　心が壊れてしまって当然だってことが。<br>　ぼくが偉そうに言えることなんてない。<br>　ぼくは、ＭＡＲＩＡじゃないから。<br>　でも、心花もぼくじゃない。<br>　ぼくの本当のことなんて、知らないでしょう？<br><br>　ここ『お姉ちゃんは、知らない』<br>　ここ『本当に、生まれることなく死んでいった命が、どんな想いで散らされていったのか』<br>　ここ『その人たちの最後の叫びを、聞いたことがないでしょう？』<br>　ここ『だから、簡単に言えるんだよ』<br>　ここ『生まれてこなければよかった、なんて』<br><br>　喧嘩がしたいわけじゃない。<br>　心花に腹が立ってるわけでもない。<br>　ただ、ぼくは悲しかった。<br>　彼女がそう言ってしまえることが。<br>　気づいてほしかった。<br>　この世には、生まれたくても生まれられなかった命が、あるんだって。<br>　それを知っていたのなら、簡単に生きていたくないとか、死んでしまいたいとか、言えない筈。<br>　願いがすべて叶う世界じゃない。<br>　世界は優しくないし、美しくもない。<br>　残酷なことばかりが起こる世界だ。<br>　それでも、生まれることが出来て、生きることが出来るのは奇跡だ。<br>　<br>　ここ『あのね』<br>　ここ『ただ生まれるってだけでも、凄いことなんだよ』<br>　ここ『だって、死んじゃわないように、お母さんが一所懸命に護って』<br>　ここ『気を付けて』<br>　ここ『命を懸けて生むんだよ』<br>　ここ『生まれる方だって』<br>　ここ『苦しくて、痛くて、辛いけど』<br>　ここ『生まれたくて、生まれてくるんだ』<br>　ここ『この世界が、どんなに汚くて残酷だったとしても』<br>　ここ『生まれてほしくて、生まれたくて、生まれてくるんだ』<br>　ここ『ぼくはそうだったし』<br>　ここ『心花だって、そうなんだよ』<br><br>　十二歳も上の姉に向かって言うなんて。<br>　ぼくは、生意気で嫌な子だろう。<br>　後で、幾らでも謝る。<br>　だから、今は聞いていて。<br>　ぼくの言葉を、聞き分けて。<br><br>　ここ『トウマにぃとのこと、なかったことにしないで』<br>　ここ『失くさないで、想いを』<br>　ここ『そうしたら、本当の願いが叶うかもしれない』<br><br>　もう二度と逢えない。<br>　そんなこと、もう理解してる。<br>　今更、みっともなく泣き叫んだりはしない。<br>　でも、だからって諦めたりしないで。<br>　本当の願いを叶えて。<br>　ぼくは、自分のことのように必死だった。<br>　思いつく限りの言葉で、語り掛ける。<br>　彼女に届くといい。<br>　「･･････ここ」<br>　だけど、心花よりも先に。<br>　「そうだと、いいな」<br>　いっくんが、呟く。<br>　「俺も、そうだったらいいと思うよ」<br>　「･･････」<br>　ぼくの言葉は、いっくんにも届いたんだ。<br>　母親の愛情を知らない人が、此処にもう一人。<br>　いっくんは、お母さんを知らない。<br>　彼を産んですぐに、亡くなったから。<br>　いっくんは、お母さんが自分の命と引き換えに産んだ子だから。<br>　詳しい事情は、分からない。<br>　でも、いっくんを産んだら死ぬって解っていて、彼の母親のよしのさんは、彼を産んだ。<br>　いっくんは、一度も生きている母親の姿を見ていない。<br>　目が開いた時、既に彼女は息絶えていた。<br>　いっくんは、よしのさんと会っていない。<br>　声も知らない。<br>　抱かれたこともない。<br>　もう、この世にはいない。<br>　尋ねたくても、尋ねられない。<br>　確かめたくても、確かめられない。<br>　ただ、悲しくて。<br>　辛くて。<br>　逃げだしそうになるの。<br>　もう、生きてなんていたくないの。<br>　どうして、僕にはお母さんがいないの？<br>　どうして、お母さんは僕を産んだの？<br>　生まれなきゃよかった、僕なんて。<br>　死んじゃえ。<br>　兄さんたちから、お母さんを奪ってしまった。<br>　悪い僕なんて、死んじゃえばいい。<br>　「･･････いっくん」<br>　いっくんの心が、ぼくに伝わってくるの。<br>　幼い頃のいっくんの嘆く声が聞こえる。<br>　こんな悲しいものを抱えて、生きて来たんだね。<br>　辛かったね。<br>　嫌だったよね。<br>　苦しかったよね。<br>　でも、そんなもすべて隠してしまって。<br>　ぼくに優しくしてくれていたよね。<br>　いっくんはいつだって、いっくんのままだったんだ。<br>　ぼくの、大好きないっくん。<br>　これからも、変わらずいっくんのままでいて。<br>　「････････････」<br>　いっくんの体にしがみつく。<br>　言葉に出来ない。<br>　どう言っていいのか、分からないから。<br>　そんな勇気は、持てないから。<br>　思うだけで、伝えきれればいいのに。<br>　「･･････そんな表情、しないで」<br>　と、いっくんが言うのだ。<br>　「泣かないでよ」<br>　「泣いてない」<br>　ごめん。<br>　嘘。<br>　強がってる。<br>　でも、弱い子にしないで。<br>　無敵にならせて。<br>　　<br>　マリア『あの人に、そんな気持ちはないわ』<br>　マリア『ナギサさんを逃がさない為に、わたしを生んだってだけ』<br>　マリア『わたしを愛していたわけじゃない』<br>　ここ『そうかもしれないけど』<br>　ここ『でも、生まれてきてくれて嬉しかった筈だよ』<br>　ここ『だって、父は心花と一緒にいたでしょう？』<br>　ここ『引き離されるまで、父娘だったでしょう？』<br>　ここ『社長に連れて行かれなければ、今でもそうだった筈でしょう？』<br>　ここ『トウマにぃだって、きっと』<br><br>　愛されていなかったなんて、絶対ない。<br>　あの頃の彼女は、確かに愛されていた。<br>　何とかして、引き留めようとした。<br>　離れずに済む方法を考えた。<br>　でも、どうしても認めてもらえなかった。<br>　ふざけた気持ちで、連れて逃げたわけじゃない。<br>　本当に、何処までも行けたらよかった。<br>　映画のラストシーンみたいに。<br>　攫ったまま、エンドロールを迎えたかった。<br>　現実だから綺麗に終われなかった。<br>　でも、いい意味でも現実なのだ。<br>　映画じゃない。<br>　物語じゃない。<br>　リアルの世界。<br>　それは、まだまだ続いてる。<br>　心花が生きている限り。<br>　<br>　ここ『ぼくが、お姉ちゃんを解放するよ』<br>　ここ『自由にする』<br>　ここ『そうなったら、心花が会いに来て』<br>　ここ『話がしたい』<br>　ここ『それから、自分で決めて』<br>　ここ『父に会う？』<br>　ここ『会わない？』<br>　ここ『トウマにぃに会う？』<br>　ここ『会わない？』<br>　ここ『心花が決めてよ』</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12365416776.html</link>
<pubDate>Tue, 03 Apr 2018 08:46:02 +0900</pubDate>
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<title>少女未満90</title>
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<![CDATA[ <p><br>　ちょっと、恥ずかしい。<br>　何だって思われてるかな。<br>　だって二人でいるって。<br>　<br>　ここ『ねぇ･･････』<br>　ここ『その』<br><br>　どうしよう。<br>　訊いてもいいかな？<br>　ぼくは、リアルのいっくんを見つめる。<br>　「いいよ」<br>　と、答えてくれる。<br>　「確かめたいなら、言ってみればいいよ」<br>　「あい」<br>　何を訊かれたって、教えてくれる。<br>　マリアは、話したいのだ。<br>　出来るだけたくさん、ぼくは訊かなきゃいけない。<br>　それを求められているからだ。<br><br>　ここ『相手って』<br>　ここ『･･････ぼくの、知ってる人？』<br><br>　ちょっと、白々しいかな。<br>　本当は、解ってるくせに。<br><br>　マリア『トウマ』<br>　ここ『Σ(ﾟДﾟ)』<br>　ここ『え』<br>　ここ『あ』<br>　ここ『本当に？』<br><br>　九里浜海岸のこと？<br>　それとも、別？<br>　てか、<br>　「何があったの？」<br>　トウマにぃとマリア。<br>　「気になるんだけど！？」<br>　十五歳と十二歳。<br>　やってること、半端なくない？<br>　「その辺りは」<br>　ぼくの視線を真横で浴びながら、いっくんが言う。<br>　「透真兄さんだから」<br>　「･･････」<br>　それで、納得しろってことなの？<br>　「ここが、知ってる筈ないけど」<br>　「うん」<br>　それは、ぼくが生まれる前の話だ。<br>　「透真兄さんって、今のクズなの想像しない方がいいよ」<br>　「え」<br>　トウマにぃの代名詞、クズを否定するの？<br>　「普通の中学生じゃ、なかったから」<br>　いっくんがそれを言うとか。<br>　十分、いっくんも普通じゃない中学生だけど。<br>　それ以上？<br>　「ここが知らないだけで、実はうちの兄さんたち、結構ヤバかったし」<br>　「･･････兄さんたち？」<br>　複数形、ということは。<br>　ヤバかったのは、トウマにぃだけじゃないってこと。<br>　「えと･･････いっくんの兄、ということは」<br>　てか、兄弟で奏多以外は皆、いっくんのお兄さんだ。<br>　トウマにぃ。<br>　がっくん。<br>　まぁくん。<br>　ゆきちゃん。<br>　四人の兄がいる。<br>　「ここが見てるのって、本来の兄さんたちじゃない」<br>　「･･････」<br>　いっくんが言うのだから、本当なのだろう。<br>　そんな嘘をついて、いっくんに得はない。<br>　「兄さんたちは、ここに、昔の自分を見せないようにしてる」<br>　「え･･････どうして？」<br>　確かに、全部を明かしてほしいと思うのは、図々しい。<br>　ぼくだって、彼らに全部は見せてないのだから。<br>　でも、敢えて隠すのには、理由がある筈だ。<br>　見られては、都合がよくないってことだ。<br>　もっと言えば、酷い過去があるっていうこと。<br>　「･･････俺も、例外じゃないけど」<br>　「いっくん･･････」<br>　でも、ぼくはいっくんの全部を知りたい。<br>　ぼくの好きな人だから。<br>　きっと、そんなことじゃ嫌いにならないよ。<br>　ぼくの想いは、なくならないよ。<br>　「そんな透真兄さんが、マリア連れて逃げたんだ」<br>　それを、彼女は駆け落ちと言っている。<br>　駆け落ち。<br>　壮絶だ。<br><br>　マリア『始まりは、わたしの母が心の病気になったことから』<br>　マリア『心結ちゃんは知らないかもしれないけど』<br>　マリア『わたしの母は、自分勝手な人なの』<br>　マリア『勝手に成海ナギサっていう男の子を好きになって』<br>　マリア『十歳以上も歳下の男の子なのに』<br>　マリア『好きになって』<br>　マリア『薬を使って、わたしを妊娠したの』<br>　ここ『そうなんだ』<br><br>　話は、其処から。<br>　複雑な気持ちだ。<br>　だって、まさかぼくの父とマリアの母親との話だなんて。<br>　子供って、親のそういう話は絶対聞きたくないの。<br>　考えたくもないの。<br>　だって、その結果が、自分が生まれたことだもの。<br>　「･･････薬？」<br>　と、呟いたのはいっくんだ。<br>　「俺も初耳だ」<br>　「そうなの？」<br>　先に、マリアから聞いてもいなかったのか。<br>　「妊娠できる薬って、あるの？」<br>　「いや･･････俺に訊かれても」<br>　いっくんを困らせるだけだ。<br>　中二男子に、それはきつい。<br>　妊娠菌というのは、以前聞いたことがあるけれど。<br>　薬とは。<br>　「避妊薬の逆？」<br>　「だから、俺に･･････って、何でここがそんなの知ってるの」<br>　「何でだろう？」<br>　知識として？<br>　やっぱり、父の影響だろう。<br>　最近は、父のファンの中にも、そういう相談を寄せてくる人が少なくないのだ。<br>　アイドルにそんなこと聞くのはどうかと思う。<br>　が、父は本気で迷える少年少女の味方なのだ。<br>　可能な限り、対応を惜しまないようだ、<br>　でも、父はとても忙しい。<br>　そこで、代わりを務めるのが、ぼくなのだ。<br>　父の回答を、代わりに彼らに送る。<br>　ただそれだけだ。<br>　しかし、ただそれだけで、ぼくはいろんなことを知るようになった。<br>　勿論、彼らが相手がぼくとは知らない。<br>　父がちゃんと彼らの為に考えた答えを、ぼくが書いているのだから、詐欺っているわけじゃない。<br>　何処のアイドルも、そんなもの。<br>　サインが代筆の人だって、いるとかいないとか。<br><br>　マリア『成海ナギサさんは、全然、訳が分からなかったと思う』<br>　マリア『でも、分からないなりに、とんでもないことになったということだけは理解したの』<br>　マリア『そうなってしまった責任を感じたのね』<br>　マリア『生まれてくる子供の父になることを決めたの』<br>　<br>　まだ、小学生だった。<br>　十一歳だった。<br>　だからって、知らんぷりは出来ない。<br>　相手は、所属事務所社長の娘だ。<br>　無下には出来ない。<br>　「結婚は出来ないけど」<br>　てか、そもそも子供が出来るのかって話だ。<br>　ぼくは、いっくんに訊いてみた。<br>　「ねぇ、いっくん･･････？」<br>　「分からない」<br>　と、いっくんが答えた。<br>　「個人差があるんじゃない？そういうの」<br>　それは、そうだろう。<br>　人間だもの。<br>　「いっくんは？」<br>　「ん？」<br>　「いっくんの時は、どうだった？」<br>　いっくんは、もう当時の父の年齢を超えた。<br>　なら、答えられるだろう。<br>　「･･････子供が出来たかってこと？」<br>　「うん」<br>　「答えなきゃ、駄目？」<br>　滅茶苦茶、嫌そうだ。<br>　目も合わせてくれない。<br>　「うん」<br>　ぼくには分からないから、教えてほしい。<br>　どうしても嫌だっていうなら、仕方がない。<br>　「無理」<br>　小さな声で、そう言った。<br>　「俺に、そういう機能は目覚めてなかった」<br>　「そっか」<br>　だから、薬だったのかもしれない。<br>　不可能な人を、可能にさせる薬。<br>　そんなものが本当にあるなら、不妊治療中の人には朗報だろう。<br>　が、未だ製品化に至っていない。<br>　其処には、きっと何か問題があるのだ。　<br><br>　マリア『彼女は、それで満足すればよかったのよ』<br>　マリア『でも、そうはならなかった』<br>　マリア『誰にも、成海ナギサさんを渡したくなかった』<br>　マリア『ファンにも嫉妬して刃傷沙汰を何度も起こした』<br>　マリア『いつしか、ずっかり心を病んでしまったわ』<br>　マリア『祖父は、彼女を隔離したわ』<br>　マリア『わたしは、生まれてから十二歳でアイドルになるまでは、ナギサさんと暮らしたわ。父娘として』<br>　ここ『うん』<br>　ここ『聞いてる』<br><br>　それは、とても短い時間だった。<br>　あっという間の十二年間だった。<br>　もう二度と戻れない。<br>　寂しくて泣いてしまいそうなのを、ぐっと堪えて見送った。<br><br>　マリア『わたし、アイドルになりたかったわけじゃない』<br>　マリア『でも、嫌って言えなかった』<br>　ここ『分かるよ』<br>　ここ『あの人に逆らうとか、無理』<br>　マリア『ナギサさんには、新しい家族が出来るからって』<br>　マリア『お前は捨てられたんだから』<br>　マリア『他に行くところなんかないだろう』<br>　マリア『そう言われたら、従うしかないのよ』<br>　ここ『そんなこと、言うの？』<br>　ここ『嫌な奴』<br><br>　やっぱり、ぼくは大嫌いだ。<br>　自分の祖父だけど、大嫌い。<br><br>　ここ『父は、マリアを捨てたりしてないよ』<br>　ここ『ただ、マリアを守れなかったのは事実』<br>　ここ『ごめんなさい』<br><br>　ぼくが謝ったって、意味はない。<br>　本当は、ちゃんと父が言えばよかったんだよね。<br>　心花は、言ってほしかったよね。<br>　きみは僕の娘だから、何処にも行かなくていいんだよって。<br>　ずっと此処にいていいんだよって。<br>　直接、伝えられれば良かったけれど。<br>　あの頃の父には、それが出来なかった。<br>　そうさせてもらえなかった。<br>　心花を手放すか。<br>　それとも、･･････ママを諦めるか。<br>　二択だった。<br><br>　マリア『唱さんが、いたのよね』<br>　マリア『ナギサさんは、唱さんが好きだったんだもの』<br>　マリア『わたしをこのまま育て続けるということは』<br>　マリア『すっかり頭のおかしくなってしまった、わたしの母もついて回るってことだもの』<br>　マリア『一生、迷惑をかけられ続けるの？』<br>　マリア『自分に、あんな酷いいことをした女と、その娘に縛られ続けるの？』<br>　マリア『心から愛する人を諦めて、することなの？』<br>　ここ『マリア･･････』<br>　ここ『お姉ちゃん』<br>　ここ『そんな風に、言わないで』<br><br>　悲しいから。<br>　そんなに自分を追い込まないで。<br>　責めないで。<br>　心花は、悪くない。<br>　まるで、生まれたこと自体が罪みたいに言わないで。<br><br>　マリア『ねぇ』<br>　マリア『わたしって何だったのかしら？』<br>　ここ『え？』<br>　マリア『生きて来たけれど』<br>　マリア『生きて来た意味なんて、あるのかしら？』<br>　マリア『わたしを生んだ人は、生んだだけで、あとは全部、ナギサさんに押し付けたわ』<br>　マリア『ナギサさんは、わたしを育ててくれたけど』<br>　マリア『わたしに利用価値があると思った祖父に、無理に引き離されて』<br>　マリア『別の人間として作り替えられた』<br>　マリア『そして、その人間を演じられなくなった今』<br>　マリア『わたしは、捨てられた』<br>　マリア『わたしは、ただ一つの願いを叶えることさえ、許されなかったわ』<br>　ここ『お姉ちゃんの願いって、何？』<br>　マリア『心花として、生きること』<br>　マリア『心花という人間を続けること』<br>　マリア『ＭＡＲＩＡから解放され、心花に戻ること』<br>　マリア『それが願いだわ』<br>　ここ『永遠になるというのは？』<br>　ここ『それも願いだって、聞いた』<br>　マリア『わたしがいなくなっても、わたしのことを覚えていてほしいの』<br>　ここ『いなくなる？』<br>　ここ『ＭＡＲＩＡから心花に戻ること？』<br><br>　マリアは、その質問には答えなかった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12364080044.html</link>
<pubDate>Thu, 29 Mar 2018 08:50:32 +0900</pubDate>
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<title>少女未満89</title>
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<![CDATA[ <p>　ここ『てか、何話していいのか分かんない』<br>　いち『だね』<br>　いち『直接話せばいいと思う』<br>　いち『目の前に居るし』<br><br>　「うん、そうする」<br>　ＷＡＶＥは、逢えない時に。<br>　「えへへへへ」<br>　嬉しくて、にやける。<br>　「そんなに嬉しがるとか」<br>　「だって」<br>　「しょーがないなぁ」<br>　猫にするみたく、なでなでしてくれる。<br>　ぼくも猫みたく、スリスリする。<br>　ああ、幸せ。<br>　こんな風な時間が、ずっと続けばいいのに。<br>　「･･････あれ？」<br>　ちょっと、待って？<br>　それより、何か大事なことを忘れているような。<br>　「マリアからの、メッセージ！」<br>　だった。<br>　ぼくが、つまらないやきもち妬くから、すっかり忘れてた。<br>　大事なメッセージが流れるとこだった。<br>　既読スルーするとこだった。<br>　「マリア、何だって？」<br>　ぼくが聞いちゃいけないけど。<br>　気になるし。<br>　だって、こんな時に送ってくるメッセージだもん。<br>　十中八九、事件に関することだろう。<br>　事務所が作った、偽物からのメッセージなら見た。<br>　加工されて合成されて、最早マリアじゃないマリアが勝手に喋ってた。<br>　でも、このＷＡＶＥのマリアは。<br>　心花だ。<br>　いっくんが会っていたマリア。<br>　立花兄弟の女神さまのマリア。<br>　ぼくのお姉ちゃんの心花だ。<br>　「ちょっと、待って」<br>　いっくんが、ＷＡＶＥを操作する。<br><br>　いち『マリア』<br>　いち『此処に、今ここがいるんだけど』<br>　いち『入れていい？』<br>　いち『俺だけに話したいのなら、そう言って』<br>　マリア『心結ちゃん？』<br>　マリア『いいよ』<br>　マリア『わたしの話を、聞いてほしい』<br>　マリア『トウマは、いないの？』<br>　いち『ごめん』<br>　いち『今は、いない』<br>　いち『呼ぶ？』<br>　<br>　「トウマにぃ、呼べるの？」<br>　だって、もうずっとマリアのこと避けてきたのに。<br>　さっきだって、いつの間にか話を社長が変態だって風に摩り替えてたし。<br>　肝心なところで、躱してしまうんだ。<br>　逃げていってしまうんだ。<br>　「･･････さっき話した時に、分かったんだけど」<br>　「ん？」<br>　トウマにぃのメッセージ。<br>　字面だけ見てても、絶対に解らないけど。<br>　もしも、あれらを全部、トウマにぃが台詞として喋ったんだとしたら。<br>　声に出して、言ったなら。<br>　トウマにぃの声は、どんなだった？<br>　本当に、十二歳のマリアを連れて、遠くへ逃げようとしてたんだとしたら。<br>　その過去を、昔話のように何事もなく普通に語っていたんだとしたら。<br>　でも、それは本当の彼なんだろうか。<br>　「ただ心花が可愛くて、ヤりたくて遠くに連れ出したんじゃなくて」<br>　本当に助けてあげたいって思って、連れて逃げたんだって信じたらいけない？<br>　ぼくに、信じさせてあげることは出来ないだろうか。<br>　マリアにとって、それは唯一の心の拠所。<br>　綺麗な思い出。<br>　今のトウマにぃを見せて、彼女を傷つけたくはないの。<br>　ああ、でも･･････もう。<br>　「いない･･････？」<br>　「返事は、ない」<br>　と、いっくん。<br>　「気づいてないのか」<br>　それとも、<br>　「スルーしてるのか」<br>　既読スルーは、ついてない。<br>　「バイトの時間？」<br>　「かもね」<br>　トウマにぃのバイトは、時間が不定だ。<br>　お客さん次第。<br>　「全く、こんな時に、何やってんの･･････トウマにぃ」<br>　今、マリアと繋がってるのに。<br><br>　いち『ごめん』<br>　いち『マリア』<br>　いち『透真兄さんは、今無理みたい』<br>　マリア『そう』<br>　マリア『いつも通りね』<br>　マリア『いいわ』<br>　マリア『心結ちゃん』<br>　マリア『お話ししましょう』<br>　ここ『こんにちは』<br>　マリア『こんにちは』<br>　ここ『元気ですか』<br><br>　メッセージを送ってすぐ、後悔した。<br>　マリアは、精神的に病んでしまって、自殺未遂を起こして入院してるのだ。<br>　そういう人に、元気かなんて普通訊かない。<br><br>　マリア『少し、元気になった』<br>　マリア『心結ちゃんは、絃護くんと一緒にいるのね、今』<br>　ここ『う、うん』<br>　マリア『仲がいいのね。知らなかった』<br>　ここ『うん』<br><br>　それは、嘘だ。<br>　ぼくがいっくんのこと、好きだって多分知ってる。<br>　知ってて、知らないふりしてるの。<br>　どうして？<br>　ぼくが気まずくなるから？<br>　いっくんに内緒にしてるから、言わないでいてくれてるの？<br>　「マリアは、ぼくの事件のこと、知らないのかな」<br>　暢気にお話ししましょう、なんて言ってるんだもん。<br>　いっくんと一緒なのも、単に仲がいいからだと思ってるみたいだし。<br>　「知らないと思う」<br>　いっくんが言う。<br>　「多分、外界と遮断されたところにいるんだ」<br>　其処が、彼女の転院先ってことか。<br>　<br>　ここ『マリア』<br>　ここ『何処にいるの？』<br>　ここ『ぼく、ずっと探してたんだよ』<br>　マリア『どうして？』<br>　ここ『マリアが助けてって言ったから』　<br>　ここ『だから、ぼく、助けたくて』<br>　ここ『マリアの妹、だから』<br>　マリア『そうね』<br>　マリア『わたしと、心結ちゃんは姉妹よね』<br>　マリア『会ったことないけど』<br>　マリア『写真で、顔知ってるわ』<br><br>　「･･････」<br>　マリアは、見ていた。<br>　誰かがネット上に公開した、ぼくの写真。<br>　神威心結の写真を。<br>　それを巡って、大騒ぎになったことも、ちゃんと知ってる。<br>　マリアの一番の脅威となる美少女。<br>　実の妹。<br><br>　ここ『ごめんなさい』<br>　マリア『どうして謝るの？』<br>　ここ『迷惑をかけた』<br>　マリア『そんなことないわ』<br>　マリア『ただ、どんな子なのか気になって』<br>　マリア『ちょっと、調べちゃったけど』<br><br>　調べるうちに、ぼくのいっくんに対する想いを知ったんだ。<br>　同じように、恋する少女だもん。<br>　恋心には敏感だ。<br>　まるで運命であるかのように。<br>　従兄に恋をして。<br>　苦しい恋をして。<br>　いつも、泣いてしまうんだ。<br>　マリアも、ずっとトウマにぃのことが好きだったんだよね。<br>　離れたくなんて、なかったんだ。<br>　苦しかったよね。<br>　苦しすぎて、辛くて。<br>　好きで、好きで。<br>　もう死んじゃいたいくらいだったんだ。<br>　だけど、死ねなくて。<br><br>　ここ『マリア、無事なの？』<br>　ここ『ねぇ、何処にいるの？』<br><br>　ぼくは、呼びかける。<br>　マリアからの返事を待つ。<br><br>　マリア『生きてるわ』<br>　マリア『何処かは、わたしも分からないの』<br>　ここ『どういうこと？』<br>　ここ『マネージャーの釘宮さんに訊いても』<br>　ここ『釘宮さんも、聞かされてないって』<br>　ここ『その釘宮さんも、行方不明なの』<br><br>　ただ、事務所の命令で、姿を隠したというだけならいい。<br>　もし、彼女までが強制的に、外界と隔離されてしまっているんだとしたら。<br>　心配なのだ。<br>　マリアが。<br>　だって、釘宮さんだけがマリアの味方だった筈なのに。<br><br>　マリア『釘宮さんが？』<br>　マリア『昨日、会いに来てくれたわ』<br>　ここ『え』<br>　ここ『そうなの？』<br><br>　それじゃあ、彼女は行方不明ではない？<br>　ちゃんと、いるの？<br><br>　いち『事務所の命令か』<br>　いち『そうじゃないなら、自分の判断で』<br>　いち『行方を晦ましたってことになるけど』<br>　ここ『どうして？』<br>　いち『そこまでは』<br>　いち『でも、多分』<br>　いち『マリアの為だ』<br><br>　釘宮さんは、本当にマリアのことを心配してた。<br>　助けてほしいって、泣いていた。<br>　「うん･･････助けたいな」<br>　ぼくは、呟く。<br>　「ぼく、マリアを･･････助けたいよ」<br>　ぼくに出来る限りのことを、してあげたい。<br>　一度は、いっくんを取られたくなくて、醜い感情を持ってしまったけれど。<br>　「汚くて、酷いこと考えちゃったけど」<br>　姉妹なのに、憎んでしまいそうだったけど。<br>　「ぼく、嫌な子になりかけてたけど」<br>　実際に、姉妹として、接してみると。<br>　おんなじだ、って気づいた。<br>　ぼくと同じ。<br>　マリア。<br>　心花。<br>　恋しい人に、愛されたいだけの女の子なんだ。<br>　「ごめんね」<br>　この声は、届かない。<br>　マリアには、聞こえない。<br>　体は、離れているから。<br>　「お姉ちゃん、ごめんなさい」<br>　本人に向かっては、どうしても呼べない。<br>　お姉ちゃんって。<br>　呼んであげればよかった。<br>　もっと早く。<br>　ぼくから会いに行けばよかった。<br>　お姉ちゃん。<br>　ぼくのお姉ちゃんなのに。<br>　にぃたちの妹になることで、気持ちを誤魔化してた。<br>　「お姉ちゃん･･････」<br>　またぼくは、めそめそ泣いた。<br>　「ここは」<br>　いっくんが、ぼくの手に触れた。<br>　そして、ぼくのことを真っ直ぐに見た。<br>　「ここは、嫌な子なんかじゃない」<br>　ギュッと、握った。<br>　痛いくらいに、強く。<br>　「そんな風に、俺は思ったこと一度もない」<br>　いっくんは、優しいから。<br>　いつだって、ぼくを庇ってくれるの。<br>　二年前の夏だって。<br>　あの事件が起きた時だって、ずっとぼくのこと、守ってくれていた。<br>　本当は、いっくんだって怖かった筈なのに。<br>　ぼくの耳を塞いでいてくれた。<br>　あの怪物の声が、聞こえないように。<br>　ぼくのことを、抱きしめていてくれた。<br>　怖いものなんか、何一つ見えないように。<br>　今だって、そう。<br>　ぼくに、言い聞かせてくれるの。<br>　「ここは、いい子だよ」<br>　いっくんに言われると、ぼくは安心するんだ。<br>　いい子になれるって、信じてしまう。<br>　「うん･･････」<br>　いい子になりたいよ。<br>　そして、いっくんに好きになってほしいよ。<br>　ぼくは、いっくんが好きだよ。<br><br>　マリア『そうね』<br>　マリア『釘宮さんは、いい人ね』<br>　マリア『わたし、いろんな話したの』<br>　ここ『釘宮さんと？』<br>　マリア『そう』<br>　マリア『何でも話せる人よ』<br>　マリア『トウマのことも、話したわ』<br>　ここ『そうなんだ･･････』<br>　ここ『じゃあ、昔のことも知ってるの？』<br>　マリア『そうね』<br>　マリア『心結ちゃん』<br>　ここ『うん』<br>　マリア『信じられないでしょうけど』<br>　マリア『わたし、昔、駆け落ちしたの』<br><br>　「ぶっ！」<br>　噴いてしまった。<br>　まさか、ストレート過ぎる。<br>　そのままズバリを言ってくるとは、思わなかった。<br>　「マリアが、自分から話すなんて･･････」<br>　妹のぼくに、そんな過去を。<br>　「聞いてほしいみたいだから、聞いてあげたら」<br>　いっくんが言う。<br>　「俺は、もう知ってる」<br>　「聞いたの？」<br>　「うん」<br>　頷いて、少し頬を赤く染めた。<br>　「相当ディープなところまで」<br>　「！！］<br>　それはちょっと、聞くのは怖い。<br>　だって、ぼくはまだ、六歳ですけど。<br>　いいの？<br>　聞いてしまって。<br>　いや、そもそも普通の六歳が駆け落ちって何か知ってるわけない。<br><br>　マリア『聞いて』<br>　ここ『うん』<br>　ここ『いいよ』<br>　マリア『ありがとう』<br>　いち『俺は、いない方がいい？』<br>　いち『なら、出てくけど』<br>　マリア『いて』<br>　マリア『お願い』<br>　いち『分かった』<br>　いち『どうせ、ここの隣に居るし』<br>　マリア『そうね』<br>　マリア『二人でいるのよね』</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12363030555.html</link>
<pubDate>Sun, 25 Mar 2018 09:55:46 +0900</pubDate>
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<title>少女未満88</title>
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<![CDATA[ <p>　きっと、何も考えてないだろう。<br>　可愛いから、全員御揃いにしてみたんだと思う。<br>　幼稚園児とかなら可愛いけど。<br>　二十歳前後の野郎には、きつい。<br>　「俺が持ってても、着ないんだ」<br>　いっくんじゃなくても、きっと着ない。<br>　「理希兄さんと幸望兄さんは、普段に着てるけど」<br>　「着てるんだ･･････」<br>　「あの二人は、あまり服に気を遣わないから」<br>　いっくんに言われちゃうくらい。<br>　基本がもうダサいまぁくんと。<br>　幸望という別ジャンルなゆきちゃん。<br>　服なんて、着られればいいのかもしれない。<br>　「てか、あの二人はお揃いに抵抗はないよ」<br>　だって、物心ついた時にはもう、周りが勝手にお揃いを着せていた。<br>　本物の双子だから。<br>　二人の幼い頃の写真は、とても可愛い。<br>　ちっちゃな頃から、二人はいつも一緒だった。<br>　どの写真も、二人引っ付いていた。<br>　正確には、まぁくんにゆきちゃんが抱きついているのだ。<br>　はにかむまぁくんの隣で、いつでも満面の笑みのゆきちゃん。<br>　今でも、その印象が強い。<br>　「まぁくんが着てるから、ゆきちゃんも着てるとかかな？」<br>　「だと思う」<br>　やっぱり、双子って単なる兄弟とは違うのかな。<br>　同じ年の兄弟。<br>　全く同じ顔の兄弟。<br>　鏡を見てるみたいに、そっくり。<br>　幼い写真の二人も、表情でどっちがどっちか分かるけど。<br>　笑ってない時のゆきちゃんって、あんま見たことないから想像つかないけど。<br>　話は違うけど。<br>　小さな時から、あの二人は口に特徴があった。<br>　への字なまぁくん。<br>　開いてるゆきちゃん。<br>　だから、全く同じ顔でも、間違えられたことはないんだって言ってた。<br>　あと、これは気づいてる人といない人がいるけど。<br>　まぁくんの黒目は、ゆきちゃんより小さい。<br>　兄弟で一番、小さい。<br>　本人はそれを気にしてるから、あまり言わないようにしてる。<br>　だから、ちょっと目つきが悪く見えるんだ。<br>　よく見なきゃ分からない程度だけど。<br>　「透真兄さんと樂夜兄さんは、家にいる時限定。絶対外に出ない時限定」<br>　例のパーカーの話だ。<br>　「奏多は、絶対に着ない。捨ててはないだろうけど」<br>　「･･････」<br>　奏多らしい。<br>　普段から、あんなにお洒落してるんだもん。<br>　ピンクの橘プリントピンクパーカーは、きつい。<br>　「そんなわけで、寒いから着ていいよ」<br>　「うん」<br>　頭から被った。<br>　当たり前だけど、大きかった。<br>　「パーカーを着たセクニャン」<br>　それはもう、セクニャンではない。<br>　ただのにゃんこ少女だ。<br>　「･･････ねぇ、いっくん」<br>　呼んでみた。<br>　「ん？」<br>　こっち向いた。<br>　「作業の手、止めなくていいよ」<br>　邪魔したいわけじゃないから。<br>　「さっきの写真、見せて」<br>　「え」<br>　「昨日撮ったのも、さっきのも全部」<br>　いっくんが嫌がるのは、解ってた。<br>　でも、見てみたかった。<br>　だって、あれはぼくだ。<br>　ぼくが表現したかった姿が映ってる？<br>　ちゃんと役を演じられてる？<br>　確かめたい。<br>　「どんな風でも、ぼくだから」<br>　いっくんのこと、怒ったりしないよ。<br>　ぼくが自分で、セクニャンをやったんだもん。<br>　「見せるのは、いいけど･･････」<br>　と、いっくん。<br>　「驚いて気絶しないでよ」<br>　「･･････うん」<br>　そういう写真だらけなのだ。<br>　大丈夫、覚悟はしてるし。<br>　自覚してる。<br>　いっくんには言わないけど。<br>　そういうぼくも、見てほしかった。<br>　ぼくは、純粋無垢な天使じゃないよ。<br>　本当は、悪い子なんだ。<br>　「これ」<br>　スマホを手渡してくれる。<br>　「見ていいよ」<br>　「うん」<br>　ぼくが写真を見てる間。いっくんはずっと傍にいた。<br>　表情が変わるぼくを見て、何だか嬉しそうだった。<br>　「いっくん･･････写真撮るの、上手過ぎ」<br>　全部を確認し終わって、ぼくはそう呟いていた。<br>　どの写真も、迫力があった。<br>　スマホのカメラで撮ったものとは思えない。<br>　トウマにぃが、ハメてるみたいと言った理由も分かった。<br>　本物のセクニャンの写真集のと、遜色ないくらいに撮れていた。<br>　モデルの色気の無さを、カバーしちゃえる雰囲気で魅せていた。　<br>　「そんなことない」<br>　いっくんは明らかに照れていた。<br>　「でも、そう思えるとしたら、それはここのお陰だ」<br>　「ぼくの？」<br>　「うん」<br>　いっくんは頷いて、ぼくの頬を指で擦った。<br>　「ここが、凄く･･････綺麗だから」<br>　「･･････」<br>　綺麗とか。<br>　そういうの、困るよ。<br>　言わないで。<br>　泣いちゃうから。<br>　「ちょ、泣くとか！」<br>　ぼくがめそめそしてるのに気づいて、いっくんが声をあげる。<br>　「何で泣くの」<br>　頬を擦っていた指が、ぼくの涙を拭う。<br>　「泣かないでよ」<br>　「うん･･････」<br>　解ってる。<br>　泣く必要なんてない。<br>　でも、止まらなくなってしまった。<br>　「･･････ごめんなさい」<br>　「謝らなくていいよ」<br>　そう言って、いっくんがぼくのことをいい子いい子してくれる。<br>　本当にぼくの涙が、引っ込むまで。<br>　ぼくの傍にいてくれたんだ。<br>　一時間くらい、そうしていたんだろうか。<br>　すっかり不細工になってしまったぼくの顔を覗き込んで。<br>　「ぷっ」<br>　いきなり笑った。<br>　「何か、今のここ、目が真っ赤でウサギみたいだ」<br>　「見ないでほしーのに」<br>　顔を背けても、頬を手で挟まれて向けられちゃう。<br>　「可愛いし」<br>　「･･････」<br>　さらりと、言うんだもん。<br>　本人無自覚で。<br>　誑し？<br>　ねぇ、誑しなの？<br>　いっくんみたいな人に、それ言われちゃうと。<br>　皆、勘違いしてしまうよ。<br>　女の子なら、ときめいちゃうよ。<br>　好きになっちゃう。<br>　ぼくの場合、もう手遅れだ。<br>　ぼくは、いっくんが、好き。<br>　「そうだ･･････ねぇ、ここ」<br>　「ん、なぁに？」<br>　ぼくは、泣きすぎて真っ赤になった目を見られたくなくて。<br>　いっくんの胸に顔を押し付ける。<br>　いっくんの匂いが、いっぱいに広がる。<br>　ストロベリーキャンディーの甘い甘い味だ。<br>　口を開くだけで、空気がもう。<br>　「マリアの願いを叶えたら、父さんの実家に行かない？」<br>　「立花さんの実家？」<br>　「うん。田舎だけど」<br>　田舎と言えば、ぼくの父の実家も凄まじい田舎だった。<br>　超ローカル線の超ローカル駅から車を使って、幾つも山を越えて、漸く辿り着くような田舎。<br>　バス？<br>　そんなの通ってない。<br>　そもそも、道は舗装されてない。<br>　土と砂利が剝き出しの道しかない。<br>　町ではなく、村というよりは集落。<br>　地図にも乗らないほどの奥地。<br>　まさに秘境。<br>　ぼくは、それを想像した。<br>　いっくんも、同じことを考えたんだろう。<br>　「神威の本家があるとこほどじゃないから。行くのは、電車だけで行けるから」<br>　それなら、良かった。<br>　「俺、去年、行ったんだ」<br>　「一人で？」<br>　「うん」<br>　「凄いね」<br>　去年ってことは、いっくんは中学一年生だった。<br>　「立花家の男子は、満年齢十三になる年、つまり中学一年になったら、夏休みの一月間を立花の本家で過ごすのが決まりらしい」<br>　「そうなんだ」<br>　神威の家も似たようなものだ。<br>　ぼくも、神威家に生まれた者として、二年前、本家に連れて行かれた。<br>　あの時は、いっくんと奏多と三人で行った。<br>　最寄りの超ローカル駅まで、ずっと神威家の御爺様に仕えてるっていう松造っておじいさんが迎えに来てくれた。<br>　電車より、車での移動に疲れて、三人とも途中からずっと寝てしまった。<br>　だから、自力であそこに行くことは出来ない。<br>　道が分からない。<br>　もしかしたら、子供たちに道を覚えさせない為に、したことかもしれないと最近思う。<br>　あそこに置き去りにしてきたものを、ぼくたちが取り返しに来ないようにと･･････。<br>　「じゃ、来年は奏多も行くんだね」<br>　「うん」<br>　「トウマにぃたちは？行った？」<br>　「いや。兄さんたちは、･･････違うから」<br>　「あ、そっか」<br>　立花家の血を引くのは、いっくんと奏多だけなんだ。<br>　トウマにぃたちは、お父さんが別にいるもの。<br>　「じいちゃん、すっごくここに逢いたがってるし」<br>　「ぼくに？」<br>　去年、いっくんはぼくの話をしたんだろうか。<br>　何か恥ずかしい。<br>　「神威本家の星祭の時の写真、見せたの。そしたら、逢いたいって」<br>　「えー･･････どうしてだろ」<br>　そんなに興味深い姿かたちじゃないっと思うけど。<br>　天然記念物でもないし。<br>　「あー･･････理由は分かるけど、内緒」<br>　「え？」<br>　教えてくれないの？<br>　狡くない？<br>　ぼくは、首を傾げた。<br>　いっくんには通じない。<br>　諦めて、<br>　「･･････行く」<br>　「うん」<br>　どうせ、こんな騒ぎが起きてしまったのだ。<br>　暫くは、まともに学校へも行けない。<br>　色々五月蠅そうだし、静かなところにいたいから、いいかも。<br>　いっくんとふたりなら、何処へだって行く。<br>　「いっくん･･････」<br>　何となく、言いたくなった。<br>　今、ちゃんと言いたかった。<br>　言えないままだと、もう何時言えるか分からないかもって。<br>　「あのね」<br>　ぼくはね、いっくんが。<br>　「～～～♪」<br>　『イチゴ１０００％』だ。<br>　いっくんのスマホの着信音。<br>　「また、奏多？」<br>　「いや」<br>　首を振る。<br>　いっくん、緊張してる。<br>　スマホを持つ手が、少し震えてる。<br>　「･･････誰から？」<br>　「マリア」<br>　「マリア！」<br>　マリア、って。<br>　「メール？」<br>　「ＷＡＶＥ」<br>　ＷＡＶＥ。<br>　いっくん、マリアとも繋がってるんだ。<br>　ぼくとは繋がってないのに。<br>　てか、ぼく、いっくんの連絡先、実家しか知らないよ。<br>　メアドも知らない。<br>　ＷＡＶＥも繋がってない。<br>　そしたら、悲しくなった。<br>　「また泣く･･････」<br>　いっくんが、背中をぽんぽんした。<br>　「だって･･････」<br>　泣きたくないけど。<br>　「こんなことになったのに、繋がってない･･････」<br>　「こんなことって、何？」<br>　意味深すぎて。<br>　いや、ある意味本当に、こんなこと、だ。<br>　結構凄いことだろう。<br>　お互いに、色々やらかしてる。<br>　指の先が･･････とか。<br>　「ああ･･････もう」<br>　いっくんの深い溜息。<br>　めんどくさいって思われた？<br>　恐る恐る、いっくんを見てみる。<br>　困ったように、スマホを操作してる。<br>　で、すぐにこっちを見た。<br>　「･･････QRL」<br>　と、いっくん。<br>　「読み込んで。それで繋がるから」<br>　「･･････うん！」<br>　嬉しいって、声に出た。<br>　態度に出た。<br>　分かりやすいな、ぼくって。<br>　いっくんとＷＡＶＥで繋がっただけで。<br>　こんなに喜んじゃう。<br>　「キラキラでもフォローしたし、ピクシルでもマイピクしといたから」<br>　ほら、何処でもいつでも一緒だ、と。<br>　半分やけになってない？<br>　もう何でも繋がってやれ、的な。<br>　いいけど。<br>　嬉しいけど。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanato-sigsawa/entry-12362250264.html</link>
<pubDate>Thu, 22 Mar 2018 09:23:19 +0900</pubDate>
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