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<title>華音の物語</title>
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<description>物語『魔の瞳の少女』主人公の篠原沙依（しのはら　さえ）が目に違和感を感じ、鏡を見ると、そこには鳥のシルエットが・・・！？望まない力と重い運命に立ち向かう、少女の話。</description>
<language>ja</language>
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<title>#25　凌ぐ</title>
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<![CDATA[ <p>カ「っかしーな・・・全然いねぇぞ。」<br>走りながら探したから、どこかですれ違ったのかもしれない。もう数メートル先の頂上にいなければ、その線は強そうだ。<br>まったく、出会った当初は従順な狐だと思ったが、その溢れんばかりの好奇心のせいか、勝手な行動も時々目にするようになった。まあ別に九尾だし、私よりも生命力は強いだろうから大丈夫だとは思うけどさ。とはいえ知らんぷりして見捨てられるわけがない。<br>カ「あ、いた！」<br>カサドルの声で前を向く。うん、確かに。ぱあっと開けた広い土地に、レアンはそこにいた。<br><span style="color:#0000ff;">「レアン！」</span><br>足がフラフラになりながらも、頂上にたどり着いた。レアンはルーチェの少し手前にいる。<br><span style="color:#0000ff;">「レアン、ここにいたの。ほら、濡れるといけないから帰るよ？」</span><br>そう言って近づく。しかし、カサドルに手を引かれ、それ以上先に進むのを止められた。<br><span style="color:#0000ff;">「どうして？」</span><br>小声で聞く。カサドルも小声で耳打ちしてきた。<br>カ「見りゃわかるだろ。あれは人が首を突っ込んでいい雰囲気じゃねえ。ルーチェと対等に話してるんだ。あの狐・・・ただもんじゃねえな？」<br><span style="color:#0000ff;">「・・・！」</span><br>私の背中の傷に気づいたカサドルのことだ。きっと、私よりもレアンのことを察しているんだろう。私はレアンのことを九尾で、そこそこ妖力が強いと思っているけど、カサドルの反応から察するに、もしかしたらそれ以上かもしれない。<br>レアンが何を言っているか、私にも分からない。何も話していないのか、きっとそうではないんだろう。カサドルの言うとおりグリフォンの言葉を話しているのかもしれない。<br>すると、ルーチェは突然レアンに背中を向け、奥の小屋へ入っていった。カサドル曰く、リージが作ったルーチェの家だそうだ。下の村よりもよっぽど立派に作られている。<br>レアンは慌てて走って後を追うが、ルーチェはばさっと羽を広げ、それを阻止した。<br>小さなレアンの背中に、雨が強く降り注いだ。<br><br>カ「で、本当はお前ら何者なんだ？もう言い逃れはできねえぞ？」<br>今度はレアンを連れてちゃんと村に戻ったあと、カサドルにきっちり説明するよう言われた。レアンはさっきの出来事のせいか、ずっとムスっとしている。<br>リ「無理にとは言わんが、村の危機は避けたいのぉ。」<br>おじいさんに困ったように言われたら、そりゃあもう言うしかないでしょう。<br>私は散々迷った挙句、「他の人には絶対に言わないこと」を約束して正体を明かした。<br><span style="color:#0000ff;">「私は生まれは冥界で、小さい頃はそこで母と暮らしていました。でも、母を亡くしてから色んなことがあって、人間界に逃げました。その時記憶は失っていたんですが、ちょっとした出来事から幼少期のことを思い出し、人間界に隠れ続けられるか心配になったのと、もしかしたら冥界で暮らすかもしれないということから、他の世界を覗いてみたいという気持ちもあって・・・魔界に来ました。」</span><br>我ながらむちゃくちゃな言葉を話しているな。本当にちゃんと伝わるだろうか。<br>カ「人間・・・」<br>リ「・・・そうか。どうりで神の気配も分からんわけか。」<br><span style="color:#0000ff;">「すみません。」</span><br>特に私は日本人だから、神様に対する信仰心なんて微塵もなんて言ったら罰当たりだけど、それくらいない。<br>リ「じゃあ、その宿している魔はなんなんじゃ。」<br>カ「え？それは背中の傷だろ、じいちゃん？」<br>もしかしたら、この老人は、リージは最初から私のことが分かっていたのかもしれない。分かっていた上で、あえて泳がせていたか。背中の傷なんて口実で、本当は最初から・・・。<br>リ「ルーチェがお前さんに怯えておった。カサドルの話を聞くに、狐に対してではないじゃろう。グリフォンを凌ぐ力が、お前さんにあるということじゃ。」<br>グリフォンを凌ぐ力？魔を宿してるって言ったらそりゃ瞳しかないけど、この瞳がグリフォンを凌ぐ？そんなわけある？<br><span style="color:#0000ff;">「私にはそんなに強い力・・・」</span><br>リ「なら自分で気づいておらんのじゃな。本当に、小さな力もないのか？」<br>リージが顔を覗き込む。それが、必然的に瞳を覗かれているように思えて。<br><span style="color:#0000ff;">さ「瞳、が・・・」</span><br>思わず口に出していた。<br>カ「瞳？」<br><span style="color:#0000ff;">「瞳が、宿っているんです。魔の瞳って呼ばれる、よく分からないものが・・・。」</span><br>リ「魔の瞳・・・」<br><span style="color:#0000ff;">「でも、そこまで強くはないし、ましてやグリフォンを凌ぐなんて・・・！」</span><br>私が必死なくらいに否定するが、リージはまだ冷静に分析を続けていた。<br>リ「・・・ルーチェがあの時大雨を降らせたのは、お前さんを遠ざけるためじゃと思っていたが、もしかしたらお前さんの視界を悪くするためじゃったかもしれんのぉ。」<br><span style="color:#0000ff;">「え？」</span><br>リ「見えるんじゃよ、その手の力が。ルーチェは神の使いじゃから、その見抜く力も強いじゃろう。お前さんの潜在能力は、お前さんが思うよりずっと、強いかもしれん。」<br>それを聞いて少し体が震えた。最近コントロール出来るようになってきたと思っていたが、もしかしたら私がコントロールされていたのかもしれない。<br>今度暴走したら・・・あの時よりはずっと力が強いから・・・本当に、何が起こるかわからない。<br>レアンは何とも言えない面持ちで、私を見つめていた。<br>その夜、私は久々に悪夢にうなされた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12363012012.html</link>
<pubDate>Sat, 31 Mar 2018 07:17:12 +0900</pubDate>
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<title>#24　嘘</title>
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<![CDATA[ <p><span style="color:#0000ff;">「私は・・・」</span><br>すると、バサバサという羽音が聞こえてきた。グリフォンが羽を振るわせている。<br>リ「どうしたんじゃ、ルーチェ。」<br><span style="color:#0000ff;">「ルーチェ？」</span><br>老人がそう言いながらグリフォンに近づいたのだから、おそらくグリフォンの名前だろう。<br>リ「・・・こりゃあ、一雨きそうじゃな。」<br>グリフォンの意図を察したのか、空を見て呟いた。おかしいな、さっきまで雲ひとつなかったのに、確かに風は怪しく変わっている。<br><span style="color:#0000ff;">「早く戻らないと危なくないですか？」</span><br>いくら神の土地だとは言っても、土砂崩れなどは起きかねない。レアンも、耳を立て、辺りを素早く見渡した。<br>リ「うむ、仕方ない。一旦戻ろう。」<br>そう言うと、老人は急いで山を下るよう、促した。ルーチェがバサバサと羽を鳴らしていた。<br><br>リ「すまないね、何もできないままで。」<br><span style="color:#0000ff;">「いえ・・・」</span><br>案の定、麓の村に着いた頃には雨がポツポツと降り出していた。<br>あのグリフォンがすごいのか、この老人がすごいのか。<br><span style="color:#0000ff;">「あ、そう言えば名前・・・」</span><br>今更にして、この老人の名を聞いていないこと、私も名乗っていないことを思い出した。<br>リ「ん？わしかね？わしはリージじゃよ。」<br><span style="color:#0000ff;">「リージさん。私はエスピリトです。」</span><br>リ「珍しい名前じゃな。お前さんの母親は、どこの者じゃ？」<br><span style="color:#0000ff;">「それが・・・」</span><br>今だ。言うなら今しかない。私は心臓の音を落ち着け、口に出した。<br><span style="color:#0000ff;">「私の母はまだ私が幼い頃に殺され、それからずっと、私は漂流していました。私たちはどこかの村や種族に属してなかったので、本当にずっとあてもなく彷徨っていて・・・」</span><br>リ「・・・そうか。」<br>リージは苦い顔をした。<br>リ「それでそんなに言いにくそうにしていたのか。酷なことを聞いたな。すまない。」<br><span style="color:#0000ff;">「いえ・・・。」</span><br>半分嘘をついているからこそ、私の心にも罪悪感が残る。<br><span style="color:#0000ff;">「色々なところを訪れ、中には私を歓迎しない人も多くて・・・背中の傷は、おそらくその時付いたんだと思います。」</span><br>完璧な嘘だ。見破られたら、信用を失うだろう。でも、まだ言えない。私には、そんな勇気がない。<br>リ「この村には、お前さんを迫害するような者はおらんじゃろう。どうじゃ？ここに住んではみんか？」<br>悪気なく、心の底から溢れる善意に胸を打たれる。<br><span style="color:#0000ff;">「でも・・・」</span><br>この村には住めない。私は一応、人間界で暮らしているから。<br>なんて言い訳する？また嘘に嘘を重ねる？<br>迷っていると、突然雨がザァーーーーっと降り出した。突然の音と勢いに、さっと外を見る。<br>リ「本格的に降ってきたな・・・」<br>すると、カサドルが中へ招き入れた。木を組み合わせた上に布を貼っただけの簡素な作りで、十分に雨を凌げるわけではないが、外にいるよりは随分ましだった。<br>カ「珍しいな、こんなに急に降ってくるのは。」<br>ユ「神様が怒ってるの？」<br>リ「大丈夫じゃよ、ユワ。すぐにおさまるわ。」<br>リージはまた歯を見せて笑いながら、ユワの頭をポンポンと撫でた。しかし、ユワは心配そうに外を見つめる。私もつられて外を見た。どんよりとした空気と静けさで、気分も自然と暗くなる。<br>すると、突然カサドルが口を開いた。<br>カ「あれ、お前、狐はどうした？」<br><span style="color:#0000ff;">「え？あれ、レアン？」</span><br>確かに、言われてみればいない。勝手にどこか行ったのだろうか。それとも迷子？<br>多分大丈夫だとは思うけれど、濡れたら風邪引きかねない。ん？妖って風邪引くのか？<br><span style="color:#0000ff;">「ちょっと行ってきます！」</span><br>そう言って走り出した。<br>カ「あ、おい！濡れるぞ！」<br>ユ「私も行くー！」<br>カ「バカ、ユワはここに居ろ！じいちゃん、ちょっと行ってくる。」<br>カサドルが後ろから追いかけてくるのがわかった。さすが森に住んでいるだけあって、足はすごく早い。あっという間に追いつかれると、一緒になってレアンと何度も叫んだ。しかし、どこにもレアンは見当たらなかった。<br><br><span style="color:#a68500;">「この雨、あなたが降らせたんですか？」</span><br>目の前にいるグリフォンは、何も反応しない。ただ、こっちをジッと見つめている。<br><span style="color:#a68500;">「分かってるんですよね？私が妖だって。」</span><br>尾は一つしか出していない。それでも、目の前の獣は私の本当の姿を見抜いている気がしてならない。口に出さない、力も使わない強さという点では相手の方が圧倒的に強いのかもしれない。<br><span style="color:#a68500;">「・・・っ」</span><br>止めていた息が漏れる。ダメだ、もっとしっかりしなきゃ。<br><span style="color:#a68500;">「私は・・・もっと強くなりたいんです。強くなって、天狐になりたいんです。私はまだただの九尾です。天狐になるためには修行が欠かせません。だから、今まで多くのことをやってきました。なのに・・・」</span><br>人の姿になれ、様々な言葉も話せ、妖力も高めた。様々な山に登り、旅をした。現に今、グリフォンにも通じる言葉で話している。それでも、私は九尾以上の位にはなれなかった。<br><span style="color:#a68500;">「導きください、私は一体どうすればいいのですか？あと私に足りないものはなんですか・・・？」</span><br>努力不足か。それとも、私には初めから才能なんてなかったのか。<br>そんなはずはない。幼い頃から私の妖力は飛び抜けていた。だから、周りの狐より早く修行に出たのだ。<br>努力すればなんでもできるはず。だから、私はここでは立ち止まれない。ここで立ち止まったら、あの人は・・・。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12363011150.html</link>
<pubDate>Sat, 24 Mar 2018 08:12:23 +0900</pubDate>
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<title>#23　グリフォン</title>
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<![CDATA[ <p><span style="color:#0000ff;">「おはようございます。」</span><br>ユ「おはよう！」<br>カ「良く眠れたか？」<br><span style="color:#0000ff;">「うん、ありがとう。」</span><br>昨日はカサドルたちの家に泊まらせてもらった。カサドル曰く、夜の森は本当に危険らしい。<br>カ「ちょっと背中見せてみろ。」<br><span style="color:#0000ff;">「わっ！」</span><br>そう言って服をめくられた。人の許可なしに、変態か。まあでも、医者に対して何も言えないのと同じように、カサドルに対しても何も言えなかった。当然だ。<br>カ「うん、だいぶ良くなってるな。傷も消えてきたし。」<br><span style="color:#0000ff;">「本当？ありがとう。」</span><br>カ「おう！」<br>カサドルは歯を見せてししっと笑った。似た笑い方するんだな、あいつと。<br>リ「カサドルにとって、初めての治療じゃからなぁ。」<br><span style="color:#0000ff;">「え？わっ！」</span><br>気づくと、背後に髭を生やした老人がいた。やせ細った体だが少し筋肉がついていて、健康的に見えた。<br>カ「じいちゃん、やめてよそういうの。」<br>カサドルはバツが悪そうに頭を掻いた。一方老人は口を大きく開けて笑っている。なるほど、この人が例のじいちゃんか。<br>ていうか、初めての治療って？大丈夫なのか？<br>リ「どれどれ、見してみぃ。」<br>問答無用に服をめくる。まあ、いいさ、別にもう。<br>リ「・・・お前さん、これ、どうしたんじゃ？」<br><span style="color:#0000ff;">「あ・・・えっと・・・」</span><br>言葉を濁す。カサドルはごまかせたが、老人相手にはそうはいかなかった。<br>リ「相当根付いておるな。ゆっくり時間をかけて、侵食する手のやつじゃ。早期発見できてよかったな。」<br>そう言ってはっはっはと笑った。華奢な体からよくそんなに大きな声が出るもんだ。<br>リ「で、お前さん。本当は何者じゃ。」<br>老人を見据える。瞳の鳥を出さないように、気をつけながら。視界の隅のレアンは、なおも狐を演じている。逃げる気も化ける気もないようだ。<br>リ「どこでこの傷をつけたか、言えぬか？」<br><span style="color:#0000ff;">「・・・はい。」</span><br>傷を治してくれた恩がある。感謝はしている。でもダメだ。言わない。言えない。<br>ユ「ね、今日は川の方行こ！」<br>突然聞こえた高い子供の声に、はっとする。<br>カ「こら、ユワ。家の中入ってろって。」<br>ユ「えーー？」<br>ユワは不満そうに頬を膨らませる。<br>カ「じいちゃん、朝飯用意しとくね。」<br>リ「ああ、ありがとう。」<br>しわをめいっぱい寄せて笑った。この人、きっと穏やかな性格なんだろうけど、見抜く力もある。侮れないというか・・・あの人に似ているというか。<br>リ「さて、行こうかね？」<br><span style="color:#0000ff;">「え？行くって、どこに？」</span><br>呆気にとられていると、老人はにっと白い歯を見せて笑った。<br>リ「とっておきのところじゃよ。」<br><br>案内されたのは、山道だった。ひたすら上へ目指して登る。軽くない道のりだからということで、ユワはお留守番だ。まあ確かに、滝もあるくらいだから案外この山高いんじゃ？その錯覚も、全部森の魔のせいなのかもしれない。<br>リ「この先じゃ。もうすぐ着くぞ。」<br>そう言われて約五分後、急に木々がなくなって視界が開けたところに着いた。レアンが耳をぴくりと動かす。<br>眼下に広がる深碧の木々に、風は冴え、光被する。<br>だが、驚いたのはその見晴らしの良さや美しい景色ではない。<br><span style="color:#0000ff;">「あれって・・・」</span><br>リ「ああ。グリフォンじゃ。」<br><span style="color:#0000ff;">「グリフォンって・・・神聖な魔物なんじゃ・・・」</span><br>神でも見ているかのようだった。九尾は妖怪で、お化けみたいなものだと思っていたから驚かなかった。いや、まあ驚いたけど、確かに驚いたけど、でもグリフォンなんて比にならない。<br>リ「グリフォンは神の使いで、黄金や財宝を守るんじゃよ。わしがこの地に来た時にはまだ小さかったものの、既にこの子がおった。この山は、神様がわしらに与えてくださった大事な土地なんじゃ。」<br>神様か。妖がいたくらいだから、きっといるんだろう。<br>なんだかワクワクしてきた。本当にいるんだ、想像上じゃなくて。<br>リ「神様の作った山じゃから、この森は魔に満ちておる。下手なものを近づけんようにな。それに、神の気配が分かる者は崇拝して絶対に立ち入らないんじゃ。」<br>遠くに居るグリフォンが、こっちをゆっくりと向く。太陽でもないのに、光り輝いて見えた。<br>リ「お前さんは神の気配が分からないから入ってきたんじゃろ？」<br><span style="color:#0000ff;">「はい、すみません。」</span><br>なんだか申し訳なくなった。いくら森でも不法侵入であったんだろう。<br>リ「神の気配が分からないのに、なぜ魔を宿しておるんじゃ。わしが気になっておるのはそこじゃよ。」<br>なるほど、確かに。神をそこまで信用していなかった私には、神の気配は分からなくて当然だ。でも、神を信用していないのに魔を信用しているなんておかしいもんな。<br>リ「危ない者だとは思っとらんよ。まだ幼い。じゃが、疑惑を晴らすためにも、本当のことを言ってはくれんかね？」<br>老人にお願いされ、私は葛藤の中でついに決断した。<br><span style="color:#0000ff;">「私は・・・</span></p>
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<pubDate>Sat, 17 Mar 2018 07:00:11 +0900</pubDate>
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<title>#22　清めの水</title>
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<![CDATA[ <p>カ「それよりお前、何かに取り憑かれてるぞ？」<br><span style="color:#0000ff;">「え？」</span><br>カ「何か、魔みたいなやつがある。」<br><span style="color:#0000ff;">「あ、それは・・・」</span><br>魔の瞳のことは、言わないほうがいいだろう。シナにも言われたし、あの村の書物や人の話にもあった。<br>しかし、カサドルが言っていたのはそのことではなかった。<br>カ「背中、誰かにやられたのか？」<br><span style="color:#0000ff;">「え？背中？」</span><br><br><span style="color:#0000ff;">「わあ、本当に村があったんだ。」</span><br>カ「おう。さ、俺んち早く行こう。」<br><span style="color:#0000ff;">「う、うん。」</span><br>遡ること数分前。<br>カサドル曰く、私の背中の傷が私の肉体や精神を蝕んでるらしい。背中の傷なんて身に覚えがないが、よくよく考えてみると、ゼグロスにやられたあれかもしれない。蝕んでると言われるほど最近は苦しんだこともないし、すっかり忘れていたくらいだし、気にしてもなかったので別にいいと断ったが、カサドルは治療させろの一点張りだった。まあ、医療の村だけあって、腕は確かだろう。でも、言うほど痛くないし、物理的な怪我ではないから治せないのでは？と思ったが、そうなったら最悪じいちゃんに頼むから、じいちゃんは村一の腕だから、と押され、ついに村まで来たわけだ。<br>ユ「おじいちゃーん！ただいまー！」<br>屋根もない、テントもない、ただ布を敷いただけのところに、ユワはかけていった。その奥は木やらなんやらで複雑になっており、見通すことはできない。<br>カ「さ、手当するぞ。そこ座って背中出せ。」<br><span style="color:#0000ff;">「えっ。」</span><br>いくら治療とは言え、初対面の年上の男の人に背中を見せるのはちょっと。<br>私がもじもじとしていると、レアンが鼻をぐっと押し付けてきた。<br><span style="color:#0000ff;">「あーよしよし、はいはい。」</span><br>レアンを可愛がるふりをして、脱ぐのを避けようとしたが、レアンの思惑はそっちではなかったようだった。鼻を服の裾に当ててぐいっとめくった。器用なんだか、なんなんだか。<br>カ「うわっ・・・」<br>人の背中無許可で見ておいてそれはないでしょ。いくら私でも多少傷つくよ。多少。<br>カ「お前、本当にこれやばいぞ。」<br><span style="color:#0000ff;">「え？そんなに？」</span><br>カ「魔があるのは分かってたけど、これは明らかに悪意を持って植えつけられてる。お前、本当に大丈夫なのか？」<br><span style="color:#0000ff;">「特に、何もないけど・・・」</span><br>そんな言い方されたら心配になるじゃんか。<br>カ「やべえな・・・どうすっか・・・」<br>それにしても、まじまじと見つめられるのは、だいぶ恥ずかしい。<br>カ「ちょっと待ってろ、薬草持ってくる。」<br>そう言ってカサドルは立ち上がった。そんな、悩んだまま治療していいのか？そんなに言うほどやばいんなら、早いこと“じいちゃん”に代わっていただきたいが。なんてことを思いながら、ふうっと短く息を吐いた。<br><br><span style="color:#0000ff;">「・・・で、いつまでそのままのつもりなの？」</span><br>カサドルがいなくなって、レアンに目を落とした。本当に他人の前では一切喋ろうとしない。妖であることを隠し、まるでただの狐のように振舞う。<br><span style="color:#a68500;">「私がオサキであること、そう簡単に他人に言えないんですよ。“妖狩り”もいますしね。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「妖狩り？」</span><br><span style="color:#a68500;">「妖の力を奪って自分のものにする人たちです。・・・私も一度、会ったことがあります。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「へ～？」</span><br>そんな人たちがいるんだ。物騒な世というのは、結局どこも同じらしい。<br><span style="color:#0000ff;">「私のことは疑ってないの？もしかしたら妖狩りかもよ？」</span><br>意地悪に笑ってみる。が、レアンはそれを上回る笑顔で返してきた。<br><span style="color:#a68500;">「ご主人様がそんな悪い人には見えませんよ。それに、わざわざ妖の力を借りるような人にも見えないし、そこまで頭は回りそうにないですしね。」</span><br>笑顔だ。きっと何の悪気もない。<br><span style="color:#0000ff;">「そ、そうだね。目、あるしね。」</span><br><br>そうこうしているうちに、カサドルが帰ってきた。手には、いろんな薬草を持っている。<br>カ「ちょっと待ってろよ。」<br>近くにあったすり鉢型の石を出し、薬草を全部入れてすりつぶし始めた。<br>カ「お前、誰にやられたとか覚えてるか？相当な恨みがあるみてえだけど。」<br>これは・・・言っていいのだろうか。ゼグロスと何かあったと言えば、私が瞳の持ち主だということ、最悪姫だということもバレかねない。<br><span style="color:#0000ff;">「ごめん、言えない。」</span><br><span style="color:#a68500;">「・・・・・・」</span><br>カ「そうか。悪いな、変なこと聞いて。」<br><span style="color:#0000ff;">「ううん。」</span><br>カサドルは優しくて、親切な人だと思う。最初は年上の男の人ということもあり、多少は怖かったけど、今ではそれもすっかりなくなった。<br>カ「最後に水を入れて・・・」<br><span style="color:#0000ff;">「水？」</span><br>カ「ああ。そこの川のやつだよ。水には清めの効果があってな、魔の治療には一番いいんだ。」<br>なんか、レアンも似たようなこと言っていたな。清めって本当なんだ。<br>カ「よし、出来た！背中出して。」<br><span style="color:#0000ff;">「ん。」</span><br>冷たいドロドロとしたものが、背中に塗られていく。少しひんやりとしたけれど、しみるとか痛いとかはなかった。まあ、擦り傷ではないしな。<br>カ「多分これで大丈夫。今までなんともなかったんなら、そんなに強いものじゃねえかもな。」<br><span style="color:#0000ff;">「ありがとう。」</span><br>カ「それはそうと、お前ら本当は何者だ？あの森に入れたんだから普通のやつじゃねえだろ？」<br><span style="color:#0000ff;">「え？」</span><br>カサドルは今までの笑顔を消し、疑い一色な声色で聞いてきた。<br><span style="color:#0000ff;">「あの森、何かあるの？」</span><br>カ「あそこの植物は全部普通じゃねえよ。魔を持ってるんだ。その魔は入ってきた者を惑わし、最終的に自身らの栄養にする。通称、“人食いの森”だ。森の外に住む妖や動物は、その魔を察知して絶対に近づかないってわけ。」<br>あれ？何か違和感。<br><span style="color:#0000ff;">「妖も近づかないの？」</span><br>カ「現に、森の中には何もいないだろ？」<br>じゃあ、どうしてレアンは・・・。<br>ちらとレアンの方を見たが、あくまでただの狐としての態度を貫くだけだった。</p>
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<pubDate>Sat, 10 Mar 2018 07:23:52 +0900</pubDate>
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<title>#21　薬草</title>
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<![CDATA[ <p>カ「俺はカサドル。ユワ、自己紹介して。」<br>ユ「私はユワ！この人は私のお兄ちゃんだよ。」<br>カサドルと名乗った男の人は私よりずっと年上で、人間で言うなら多分高校生くらいだろう。ユワは私より少し幼いくらい。兄弟とは思えないくらい年が離れている二人を前に、私も名前を言った。<br><span style="color:#0000ff;">「私はエスピリト。この森に迷い込んじゃって・・・。」</span><br>苦笑しながら言うと、ユワと名乗った少女が元気に叫んだ。<br>ユ「私、案内するよ！」<br><span style="color:#0000ff;">「ありがとう。二人はこの森に住んでるの？」</span><br>ユ「ううん。今日は、薬草を取りに来たの。」<br><span style="color:#0000ff;">「薬草？」</span><br>カ「この奥に村があって、俺たちはそこで暮らしてる。見ての通りこの森には珍しい植物がいっぱいだ。病気を治せるのもある。俺たち若いやつらは、薬草調達の役に回されるってわけ。」<br><span style="color:#0000ff;">「へぇ～。」</span><br>薬草か。これだけ大きな森だもんな。レアン曰く完成されている環境だそうだから、種類も豊富なんだろう。<br>ちなみにそのレアンはと言うと、今もまだ空気に化けたまま出てきていない。レアンの妖術から解かれた私からも、レアンの姿は見えない。いい加減出てくればいいのに。<br>カ「さっきからどうしたんだ？誰もいないところばっか見て。」<br><span style="color:#0000ff;">「えっ？・・・いや、何でもない。」</span><br>森に住んでいるだけあって、観察力はすごいんだろう。ほらレアン、バレるのも時間の問題だよ、出てきなよ、ほら。<br><span style="color:#a68500;">「コーン・・・」</span><br><span style="color:#0000ff;">「え。」</span><br>本当に出てきた。この子もあれか？シナと同じように心の中読める系なやつか？<br>ユ「なにこれ、かわいー！！」<br>カ「ユワ！待て！」<br>レアンに向かって駆け出すユワを、カサドルは慌てて引き止めた。当のレアンは尻尾を一つにし、ただの狐を演じている。もちろん、言葉も喋らない。<br>カ「なんだ、こいつ？」<br>カサドルは姿勢を低くし、レアンを見据える。レアンはか弱そうにカサドルを見上げる。本当、演じているのか化けているのか分からないようなクオリティだ。<br><span style="color:#0000ff;">「ごめん、この子は狐のレアン。ちょっと前から私についてきてて、ここにも入って来ちゃったみたい。」</span><br>ユ「狐ー！？」<br>動物のいない森だ。狐はおろか、人以外の動物を見たこともなかったんだろう。ユワはレアンに向かって走っていった。レアンはするりとかわし、私の後ろに隠れる。その滑らかな動きに垣間見える身体能力は、どう見てもか弱い狐ではない。<br>カ「本当に、森の外には不思議なものがいるんだな。」<br><span style="color:#0000ff;">「見たことないの？」</span><br>カ「だって、この森にはいないだろ？」<br>予想通りだ。<br><span style="color:#0000ff;">「ねえ、なんでこの村には動物がいないの？食料も豊富だろうし。」</span><br>ユ「不思議だよね！でも、私にとってはそういうのがいることのほうがびっくり。」<br>私より小さなユワという少女は、レアンにすっかり興味津々だ。私はそういう視点からものを見れないから分からないけど、そういうものなんだろうか。まあでも、私が初めて九尾を見たときのことを考えると、未知のものに遭遇したユワの気持ちに共感できる。<br>カ「それよりお前、何かに取り憑かれてるぞ？」<br><span style="color:#0000ff;">「え？」</span></p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12355348065.html</link>
<pubDate>Sat, 03 Mar 2018 07:04:51 +0900</pubDate>
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<title>#20　森の民</title>
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<![CDATA[ <p>ユ「トワの葉っぱと、アグサの実を混ぜて、あとは・・・」<br>おじいちゃんから教えてもらったレシピを口ずさむ。忘れないように、何度も。<br>ユ「リエの花びらと、オオツノグサの茎の皮と・・・」<br>今日も風が心地いい。誰もいない静かなこの森が、私は大好きだ。生まれた時から、おじいちゃんと、お兄ちゃんと、村の人と、この森に囲まれて生きてきた。だから、私にとってはこの森も家族だ。<br>まずはトワの木を探す。そんなに珍しくはないから、すぐ見つかるはずだ。<br>ユ（あった！）<br>案の定、少し遠くに見えた。問題は、そこまで登ることだ。トワの木は、上の方にしか葉を付けない。だから、トワの葉を取るために、高いところまで登らなければいけない。<br>ユ(まあでも、得意なんだけどね。）<br>得意げになり、一人でニヤっと笑う。<br>ユ「ちょっとごめんね、失礼します。」<br>トワに向かってそう言い、私は幹に手をかける。枝の少ない木でも、登ることは出来る。<br>私はすすす・・・と木を登って行き、最初の枝までわずか数秒でたどり着いた。そこからは簡単だ。枝の本数も増え、掴みやすくなるから。そして一番上までたどり着き、お日様に一番近い葉っぱを取れれば、ミッションクリアだ。<br>ユ（楽勝楽勝♪）<br>私はてっぺんの葉っぱを数枚もぎ取ると、すーっと滑るように木を降りた。この何とも言えない恐怖感が楽しい。<br>ユ（うん？）<br>何か違和感がある。普段は感じない、何か不気味な感じ。途中で止まり辺りを見渡すが、特に何も見えなかった。<br>ユ（気のせいかな？）<br>私はさっとそこから飛び降りた。<br><span style="color:#0000ff;">「わっ！」</span><br>女の人の叫び声が聞こえた。でも、姿はどこにも見えない。<br>ユ「誰かそこにいるのー？」<br>声の聞こえた方に近寄る。やはり、姿は見えない。<br>カ「人の縄張りに勝手に入ってきて、それはねえんじゃねえかなあ？」<br>ユ「あ、お兄ちゃん！」<br>別の木から飛び降りてきたお兄ちゃんが、声を張り上げる。お兄ちゃんは私よりずっと年上で、背も高い。私からしたらかっこいいけど、人によっては怖いだけかもしれない。よくいろんな木に登るから、筋肉もすごい。<br>カ「なあ、出てこいよ！迷っただけなんだろ？」<br>不気味な雰囲気は、まだ続いていた。そこにいるのに、見えない感じ。まるで違う世界にいるみたいな、透明な膜がかかっているみたいな。<br>すると、私がじっと見つめていたところが、もわんと歪んだ。<br>ユ「あ！」<br>カ「どこだユワ！」<br>ユ「あそこ、一瞬変に・・・」<br>指さした先に、お兄ちゃんはかけていった。するとその時、確かに風が吹いた。まるで誰かが私の横を走ったみたいな。<br>お兄ちゃんは私の反対側に居たから、お兄ちゃんの風じゃない。<br>ユ「やっぱり誰かいるんだ・・・！」<br>宝探しのように、目をキラキラさせた。<br>カ「捕まえた！」<br><span style="color:#0000ff;">「や、ちょっ・・・！」</span><br>カ「子供・・・？」<br>さ「放してって！」<br>ユ（女の人であってた～～～！！）<br>私は嬉しい気持ちを抑え、ぷるぷると震えた。あんまりうるさくすると、お兄ちゃんに怒られるから。<br>カ「おいお前、どこの者だ。どこから来た？」<br>お兄ちゃんは機嫌良さそうにニコニコしている。<br>カ「まだちっちぇー子供だし、迷い込んだんだろ。俺らが出口まで案内してやっから、な？」<br>女の人は私より少し年上だけど、お兄ちゃんからしたらまだ子供な感じだ。私も年上の妹が出来たみたいで嬉しかった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12355346850.html</link>
<pubDate>Sat, 24 Feb 2018 10:04:43 +0900</pubDate>
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<title>#19　気配</title>
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<![CDATA[ <p>奥へ行けば行くほど、その静けさが不気味だった。本当に、鳥の鳴き声一つも聞こえない。たまに小さな虫が飛んでいたりするが、せいぜいそれくらいだ。本当に不気味だった。<br><span style="color:#a68500;">「本当になんの気配もありませんね。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「うん。」</span><br>九尾が言うんだから間違いないだろう。まあもっとも、今は尻尾を一つ残して隠しているが。それもいわゆる化けるということなのかもしれない。<br><span style="color:#a68500;">「そう言えば、知りたいことについて知れましたか？」</span><br><span style="color:#0000ff;">「え？ああ、瞳のこと？うん、まあ、知れたよ。」</span><br>この時初めて、瞳の情報より、あの村で会った人々の方が大きい収穫だと思っていることに気がついた。あんなに人との関わりを避けていた自分が・・・なんて、魔界に来てから何度目だ。<br><span style="color:#0000ff;">「いつかもう一度行きたいな。」</span><br><span style="color:#a68500;">「では、また今度行きましょう。私もちゃんと中に入ってみたいです。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「ああ、ごめんごめん。」</span><br>むっとした顔で言う。今度は一緒に、と言うとすぐに笑顔になった。単純なやつだな。嫌いじゃないけど。<br><br>ピク、とレアンの耳が動いた。すっと顔を伸ばし、遠くを見つめている。やっぱり、同じ動物だけあって、ザオと動作が似ている。そして、その視線の先にはだいたい何かがあるのだ。私も注意深く遠くを見た。視力は自慢できるくらいいいみたいだし。<br>だが、何も見えない。目を凝らしてみても、ただ木があるだけだ。レアンはどこを見ているんだろう。どこから気配や音を感じたんだろう。まさか、意外と近くだったりして。<br><span style="color:#0000ff;">「ねえ、レアン。」</span><br>すると、思いも寄らないトーンで思いも寄らない言葉が返ってきた。<br><span style="color:#a68500;">「今から幻覚を見せます。この場に、ご主人様と私はいないという幻覚です。強いて言うなら空気に化ける感じです。これで近づきましょう。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「え？ちょ、どういうこと？」</span><br><span style="color:#a68500;">「この先に何かいます。でも、姿が見えない。だから、こちらも姿を消して伺うんです。どんなものがいるか分かりませんから。」</span><br>そんな簡単に。それってつまり、妖力を使うってことでしょ？私大丈夫なのか？<br><span style="color:#a68500;">「私の妖力は強いので、まず見えないでしょう。ですが、音を立ててはいけません。聴覚までどうこうするのは相当疲れるんです。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「はぁ。」</span><br><span style="color:#a68500;">「まあ、音さえ立てなければ普通の人には気づかれないでしょうね。ご主人様も気配くらい消せますよね？」</span><br>こういう訳のわからないことをつらつらと言われると、本当にこの子は妖力使いなんだと実感する。やっぱり、そう考えると私はまだ普通の人間か。<br><span style="color:#0000ff;">「呼吸を最小限小さくすればいいの？」</span><br><span style="color:#a68500;">「気配＝呼吸ではないので、一概にそうとは言い切れませんが・・・まあ、とりあえずはそれでいいと思います。」</span><br>後でちゃんと練習しとこう。ああ、本当に私は人間の道を踏み外してる。今に始まったことじゃないけどさ。<br><span style="color:#a68500;">「では、行きましょう。」</span><br>レアンは尻尾をゆらゆらと揺らし、炎を出した。いわゆる狐火と言われるやつなんだろう。<br>居心地の悪さに包まれて、私たちは姿を消した。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12351601478.html</link>
<pubDate>Sat, 17 Feb 2018 07:59:27 +0900</pubDate>
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<title>#18　水簾</title>
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<![CDATA[ <p><span style="color:#0000ff;">「ごめんレアン、お待たせ！」</span><br>泊まるなんて言ってなかったし、そんなつもりもなかったから心配させただろうか。餓死してないだろうか。まあでも一日だけだし、最悪九尾なら調達出来るだろうし。もしいなくなっていたら？それもありえる。大体、遊びたいという理由だけで付いてくるはずがなかった。騙されていた？否定はできない。でも何の被害もなかったし、別にそれでもいいか。<br>そんなことを延々と考えながら階段を登りきると、目の前には狐がいた。<br><span style="color:#a68500;">「お待ちしておりました、ご主人様！」</span><br>まるで犬のように尻尾を振りながら、笑顔で駆け寄ってきた。本当、真剣に考えていた自分が馬鹿みたいなほど。<br><span style="color:#0000ff;">「大丈夫？色々困らなかった？」</span><br><span style="color:#a68500;">「大丈夫ですよ。私九尾なので。」</span><br>そう言って尻尾をしゅるっと増やした。見たところ食べ物にも困った様子はないし、本当に大丈夫だったんならそれでよかった。<br><span style="color:#0000ff;">「さて、次はどこ行こうかな・・・」</span><span style="color:#a68500;">「私、ご主人様の行くところ、どこまでも付いていきます！」</span><span style="color:#0000ff;">「ありがとう、レアン。」</span><br>どこかくすぐったいような、恥ずかしいような。こんなに誰かに慕われることなんてないからな。せめて魔界にいるうちは、素直な自分でいよう。<br>レアンの頭を撫でると、くくっと喉を鳴らした。喜んでいるのだろうか。なんか、犬好きな人の理由が分かった気がする。まあ、狐だけど。九尾だけど。<br><span style="color:#a68500;">「次はどこに行くつもりですか？」</span><span style="color:#0000ff;">「そうだなぁ・・・」</span><br>瞳のことは知りたかった。そして、知れた。今はそこまで苦しめられてないし、急ぎで知りたいこともなくなった。<br><span style="color:#0000ff;">「適当に、ぶらぶらしてみる？」</span><span style="color:#a68500;">「はい！」</span><br>目的も計画もなく、ただ歩くことにした。こうしていると、小さい頃お母さんと一緒にしたいろんな体験が思い起こされる。私たちは村を出て、風上に向かって歩き出した。<br><br>少し歩くと、草が生い茂ってきた。少しと言いつつだいぶ歩いたのかもしれない。だんだん木々も生えてきて、たどり着いたそこは森のようだった。<br>ごおおという音がするから、きっと近くに滝でもあるんだろう。心なしか、火山で乾燥気味だった体に潤いが戻った気がする。<br><span style="color:#0000ff;">「すごいところだね。」</span><br>音を頼りにたどり着いたのは、やはり滝だった。ゴツゴツとした岩場に、何メートルもあるであろう高さだ。ここから落ちたらひとたまりもない。<br>川が近くにあるだけあって、近くの木々もいい緑色をしていた。種類も豊富で、人が立ち寄っていないみたいだ。<br>ぴちゃぴちゃ・・・という音のする方を向く。どうやら、レアンが川の水を飲んでいるようだった。<br><span style="color:#a68500;">「いい水ですよ、ご主人様もいかがでしょうか？」</span><br>レアンに勧められて水を掬って飲む。アノン川ほどとは言わないが、それでも水質はいい。なにより、疲れた体に染み渡る。<br><span style="color:#0000ff;">「美味しいね。」</span><span style="color:#a68500;">「よかったです。」</span><br>レアンはにこっと笑い、毛づくろいをしだした。綺麗な体毛から察するに、相当な綺麗好きかもしれない。<br><span style="color:#a68500;">「水は心も体も清めてくれます。妖力使いにとって、心の清さは必要不可欠です。妖力ばかりが暴走しては、ただの妖怪になってしまいますから。」</span><br>妖怪ってそういうものだったんだ。妖力があるから妖怪ってわけでもないんだな。<br><span style="color:#a68500;">「私が妖怪になったときは、すぐに逃げてくださいね。心の乱れや邪悪な気持ちは、誰でも簡単に祓えるわけではありません。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「分かった。」</span><br>なんだかんだ、妖力使いも大変なんだな。私と一緒かも知れない。<br><span style="color:#a68500;">「それにしてもすごく深い谷ですね。」</span><br>レアンは水の流れる先を見る。滝で落ちた水は谷底へ吸い込まれていた。<br><span style="color:#a68500;">「こんなに環境が完成されているところがあるなんて。」</span><br>環境が完成？難しいこと言うなぁ。でもまあ、ニュアンスはなんとなくわかる。<br><span style="color:#0000ff;">「森があって、滝があって、谷もあって・・・自然いっぱいってこと？」</span><br><span style="color:#a68500;">「まあ、だいたいそういうことです。」</span><br>よかった。まあ、環境に完成も未完成もあるのかと言いたくなるが、確かにこれは完成と言わざるを得ないような。<br><span style="color:#a68500;">（その割には・・・）</span><br><span style="color:#0000ff;">「こんなところに、人なんているのかな。」</span><br>見たところ集落もないし、人が歩けるような道もない。過ごしやすいかと言われれば、どうなんだろう。すると、レアンは緊張した面持ちで返した。<br><span style="color:#a68500;">「人だけではないです。この森、何の動物もいません。何の木々もないさっきの村だったらまだ分かりますが、こんなにたくさん食料があるのに鳥すらいないなんて・・・」</span><br>確かに。言われてみれば、全然会っていない。向こうが警戒しているからと思ったが、だとしても鳴き声一つ聞こえないのはおかしい。<br><span style="color:#a68500;">「この森、何かあるかもしれませんね。」</span><br>動物であり、妖力使いであるレアンが言うんだから間違いないだろう。そう言われてみれば、どこか不気味な気もしてきた。危険な目に遭う前に、さっさと抜けよう。この森を通らなくたって、遠回りすれば向こうに行けるはずだ。<br><span style="color:#a68500;">「ご主人様・・・」</span><br>レアンは震える声で言う。まずい、早速何かあったか？<br><span style="color:#a68500;">「ワクワクしますね・・・！」</span><br><span style="color:#0000ff;">「・・・」</span><br>キラッキラの笑顔で言われた。ああ、そうか。この子、好奇心の塊だった。そのせいで群れを追い出されるほどだった。<br>なら、どうせ森を避けて進むつもりはまっさらないんだろう。だったら仕方ない。この森を抜けるしかない。それに、私も少しワクワクしてきた。仕方ない、<br><span style="color:#0000ff;">「行こう。」</span><br><span style="color:#a68500;">「はい！」</span><br>一人と一匹改め、一人と一妖は心を躍らせながら奥へと進んだ。</p>
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<pubDate>Sat, 10 Feb 2018 07:37:37 +0900</pubDate>
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<title>#17　見覚え</title>
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<![CDATA[ <p><span style="color:#0000ff;">「色々と、お世話になりました。」</span><br><span style="color:#361b75;">「もう行くのか。もう少しゆっくりしておればいいのに。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「レアンも待たせてますし、色々知れたので。」</span><br><span style="color:#816f94;">「何かあったら、また来ればいいよ。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「うん、ありがとう、シャナ。ソーンにも、よろしくお伝えください。」</span><br>その日の夜、私は二人に別れを告げた。レアンを待たせていることに気付いたからだ。それに、この村にはまた来たいと思ったのも大きい。また来るなら、その時の楽しみをとっておきたい。本当、性格も変わったよなぁ。最近つくづく思う。<br><br><span style="color:#816f94;">「師匠、私、エスピリト見覚えある。」</span><br><span style="color:#361b75;">「・・・！」</span><br>突然村にやって来た少女が帰ったあと、私は師匠の家に残って夕飯の片付けをした。師匠はこの村の長で、幼い頃私を拾ってくれた恩人だ。なぜ師匠と呼んでいるかというと、まだ当時暴走していた私の瞳の力を、師匠が抑えてくれたからだ。正確には、コントロールの仕方を教えてくれた。なぜ持ち主でないのにそんなに詳しいのか聞いたこともあったが、この村には似たような子が多いから慣れているとしか教えてくれなかった。それも理由の一つだとは思うが、それが全てではないだろう。瞳は部外者がどうこう言えるほど、単純なものじゃない。<br>だから、あの少女があの年でコントロール出来ているのには驚いた。まあ、オーラから察するに、あれは限界に近かっただろうが。オーラと言っても曖昧で、暗い青を秘めている子だった。相当な苦しみや悲しみを経験したんだろう。それが瞳を持つことになった理由の一つであり、コントロール出来る理由でもあるかもしれないが。<br>でも、もっと驚いたのは既視感だ。エスピリトと聞いたとき、脳裏を何かが横切った。まあ、あいつが人間だということの方に気を取られ、その何かはもう今では分からない。でも一瞬見せたあの笑顔は、やはりどこか見覚えがあって、私の心がすっと暖かくなるのも感じた。<br><span style="color:#816f94;">「でも、やっぱり思い出せないな。」</span><br>洗った食器を拭きながら、呟く。私は他人との関わりをそこまで好まないから、あんなに既視感があるのならやはり忘れるわけはないのだが。<br><span style="color:#816f94;">「師匠は、エスピリト見覚えある？」</span><br>もし師匠も見覚えがあるんなら、あいつとはこの村で会ったということだ。もしそうじゃないのなら、私がこの村に来る前・・・お母さんと一緒に暮らしていた頃、会ったのだろう。<br><span style="color:#361b75;">「そうじゃな・・・・・・。じゃが、あの子は只者ではないんじゃろう。」</span><br>濁したような言い方。言いたくないことでもあるのだろうか。<br><span style="color:#361b75;">「ソーンに眠らされなかったらしいしな。」</span><br>そう言って師匠は笑った。そりゃそうだ。あれだけの力があって、ソーンに負けるはずがない。むしろ、なぜソーンが反撃にあわなかったのか、そっちの方が私からしたら不思議だ。あいつ、苦しみや悲しみの割に生ぬるいのか。<br><span style="color:#361b75;">「シャナ、そなたももう寝なさい。今日は瞳を酷使したじゃろう。」</span><span style="color:#816f94;">「分かった。お休みなさい。」</span><span style="color:#361b75;">「お休み。」</span><br>まだ余力があったとは言え、酷使したのは事実だ。普段あんなに私と張り合う人はいない。<br>また来て欲しい。また会いたい。そう思える、初めての人だった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12347787865.html</link>
<pubDate>Sat, 03 Feb 2018 07:39:49 +0900</pubDate>
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<title>#16　得るべくして得た</title>
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<![CDATA[ <p><span style="color:#816f94;">「お前、何しにここに来たんだ？聞きたいことがあるって。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「瞳についてだよ。」</span><br>シナの話をして以来、シャナは多少心を開いてくれたようだ。冷たい突き放すような言い方はしなくなった。<br><span style="color:#0000ff;">「人間界じゃさ、瞳の手がかりなんて皆無だったから。」</span><span style="color:#816f94;">「ふーん。」</span><br>人間に興味がある様子だったし、どうでもいいというようなトーンには聞こえなかった。<br><span style="color:#816f94;">「というか、人間にも宿ることあるんだな。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「さあ。同じ瞳の人間には、私も会ったことないよ。」</span><br>それに、私が純人間かどうかもよく分からない。<br><span style="color:#816f94;">「お前くらいになると、もうコントロール出来るんだろう？」</span><br><span style="color:#0000ff;">「まあ、最近やっとコツが掴めてきて。」</span><br><span style="color:#816f94;">「コツじゃないよ。瞳と一体化したってことだ。瞳と魂が合わないときは、一生かかってもコントロール出来ないどころか苦しめられるらしい。私もお前も、その瞳を得るべくして得たんだろうな。」</span><br><span style="color:#0000ff;">「私もって・・・シャナって何の瞳だったっけ？」</span><br>オーラの方に気を取られてあまり聞いてなかった。まったく覚えていない。<br><span style="color:#816f94;">「私は蛇だ。ちなみに、お母さんがメデューサ。」</span><br>そうだ。そういえばそうだった。<br><span style="color:#0000ff;">「メデューサ・・・」</span><br><span style="color:#816f94;">「だから、蛇ってのはまあ納得いくでしょ。」</span><br>そっか、確かに。瞳が宿った理由も色々あるだろうけど、どの瞳が宿るかにももしかしたら意味があるのかもしれない。<br><span style="color:#816f94;">「お前の母親は？」</span><br><span style="color:#0000ff;">「・・・！」</span><br>お母さんは・・・なんだろう。普通の冥界人だったように思う。鳥に関係あったかな？ライヤやシミヤの話はしたけれど、鳥の話はしたことがなかった。<br><span style="color:#0000ff;">「ううん、普通の人だよ。」</span><br><span style="color:#816f94;">「そうか・・・。」</span><br>もし仮にお母さんが瞳について知っていたとして、私にどうすることを望んだんだろう。誰でも彼でも傷つけるつもりはないけれど、暴走したらどうなるかわからない。お母さんは、どういう私を望んだの？<br><span style="color:#361b75;">「まだここにおったのか。そろそろ暗いし、部屋に戻ってきなさい。」</span><br>また考え事に耽っていると、老婆が書斎へ入ってきた。<br><span style="color:#816f94;">「師匠。」</span><span style="color:#361b75;">「ほお、シャナもおったのか。どうじゃ、今晩は３人で食べるとするか。」</span><span style="color:#816f94;">「うん。行こう、エスピリト。」</span><br>え？今、シャナが名前で呼んでくれた？エスピリトって、私の名前を？<br><span style="color:#0000ff;">「うん！」</span><br>思わず頬がほころんだ。久しぶりにこんなに嬉しい気持ちになった気がする。<br><span style="color:#361b75;">「エスピリト・・・？」</span><br>つい嬉しさで、老婆の言葉を聞いていなかった。<br><span style="color:#361b75;">「あの、エスピリトか・・・？」</span><br>シャナに名前を呼んでもらえた嬉しさが、視野を狭めてしまったらしい。<br>この老婆と自分の接点なんてたいしてないと思い込んでしまったのも、後から思うとこの時のせいかもしれないが、喜びに浸る今、そんなことは当然考えていない。</p>
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<link>https://ameblo.jp/kanon-charo/entry-12346167135.html</link>
<pubDate>Sat, 27 Jan 2018 07:01:12 +0900</pubDate>
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