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<title>kazのブログ</title>
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<description>日記代わりにオリジナルのお話をＵＰしています。趣味性の強い内容なので、閲覧はご注意を。</description>
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<title>「舌先２ミリの境界事情」　プロローグ④　吉原縁条（よしはらえんじょう）・後編</title>
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<![CDATA[ <p>「僕は、公佳が好きなんです」<br><br>“代理人”としての仕事のあと、<br>僕は縁条さんに誘われるままに、駅のコンコース内にある喫茶店にいた。<br>ここは生バウムクーヘンを食べることができる縁条さんお気に入りの場所だ。<br><br>向かい合い、縁条さんがソワソワとお茶が運ばれてくるのを待っているわずかな間に、<br>僕は今日の仕事が終わったら聞いてみようと心に決めていた質問を<br>前置きも無く口にした。<br>「ほう」と、突然であったにもかかわらず、<br>縁条さんは会話の開始をつつがなく受け入れてくれる。<br>しかしタイミング悪くお茶とバウムクーヘンが運ばれてきて、<br>僕は質問開始のきっかけをもう一度計らなくてはならなくなった。<br><br>「―――で、五日野公佳のことでしたっけ」<br><br>バウムクーヘンを半分ほど食べ、ホイップクリームの追加をオーダーしたところで、<br>今日は機嫌がいいのか、質問の再開を促してくれたのは縁条さんからだった。<br><br>「なんです？　さっきのストーカーの言い分に、<br>　なにか触発されるところでもありましたか？」<br><br>「ヒドイ人だとは思いましたけど、<br>　彼のコンプレックスみたいなのは、わかるところがあるかなって」<br><br>「それは危険思想ですね」<br><br>「フム」と縁条さんが首を傾げたとき、追加のホイップクリームが運ばれてくる。<br>けれど今度はタイミングが僕に味方してくれたのか、<br>会話の流れが遮断されることはなかった。<br><br>「僕といないとき―――<br>　彼女は、僕が公佳を思うほど僕のことは思っていないでしょう。<br>　それが悲しくて……そういうときに僕は、<br>　好きという気持ちの対価を求めたがるんです。さっきのストーカーみたいに」<br><br>「ふーん。<br>　君は見かけによらず、随分独占欲の強い男なんですね」<br><br>「……え？」<br><br>「コンプレックスじみたことを言って予防線を張っているけれど、<br>　それはつまり、五日野を自分だけのものにしておきたいということでしょう？」<br><br>愛でるようにしてバウムクーヘンをフォークですくい、<br>縁条さんは会話の息継ぎのついでとも言わんばかりのリズミカルなタイミングで、<br>それを小さな口に運んだ。<br><br>「君は五日野が誰とも関わらない寂しい人間にしたいのですか？<br>　常に最優先に考えて欲しい。常に心の第一位に置いて欲しい。<br>　それはわかります。<br>　けれど、たとえば君は親を超えることができると思いますか？」<br><br>「僕は、なにもそこまで……」<br><br>「じゃあもうわかってるんじゃないですか。<br>　君が与えられない何かを与えてくれる人以上に、<br>　そのジャンルにおいて、五日野が誰よりも君をありがたがることなんて無理です。<br>　つまり―――<br>　君は君だけが与えられるものを見つければいい、そして誇ればいい。<br>　もしそれが無いと言うなら人間関係として失格です。<br>　恋人としてならなおさらです」<br><br>「僕が……公佳に与えられるもの……？」<br><br>「勘違いしちゃいけません。それを判断するのは君じゃなくて、五日野自身です。<br>　でも、だからと言って僕は与えられているのか、なんてことを聞いてもいけません。<br>　交渉人として、これは教えてあげます。<br>　恋愛関係において自分への評価を尋ねたくなるときは多いとは思いますが、<br>　好意的な答えが帰ってくると思うとき以外は、決して聞いちゃいけません。<br>　否定的な答えが帰ってくると思って聞くときは、大抵それがわかってて、<br>　否定的ではない答えを返してくれるかどうかを試しているときなんですから。<br>　それは相手の思いやりに甘えようとしているときで―――<br>　今の君は、まさしくそれなんじゃないですか？」<br><br>「でも……<br>　好意的な答えが帰ってくると思っても、否定的だったりすることはありますよね？」<br><br>「それは価値観自体がズレてるってことです。<br>　縁がないと思う方がいいです」<br><br>「そんな……」<br><br>「いいですか？<br>　本当に相手の気持ちを求めるなら、<br>　自分に対しても相手に対しても真摯にならなくちゃ駄目です。<br>　相手が本音をぶつけられる存在にならなきゃ、<br>　相手の気持ちなんていつまでもわからないのですから」<br><br>「…………」<br><br>「自分を信じてください。<br>　これは、君がいい男だから安心しろと言ってるんじゃありません。<br>　自分を信じ、理解している男でないと人を愛することなんてするなと言いたいのです。<br>　さっきのストーカーみたいに虚勢をはったり、今の君みたいに卑屈なったりせず、<br>　正真正銘の自分自身を理解して、誇りをもって人を愛してください。<br>　相手の気持ちに応えるというのは、きっとそういうことなんですから」<br><br>縁条さんは―――<br>なんとそれだけの語りを続けながらも、バウムクーヘンを綺麗に片付けてしまった。<br>それはつまり、僕の質問に対する彼女の回答が終わったことを意味している。<br>交渉以外の場面において、縁条さんが語りだけに徹することはありえないからだ。<br><br>僕が慌てて紅茶を飲むのを待ってくれてから、<br>目の前のまさしく「女教師」然としたその人は、伝票を持って立ち上がった。<br><br>「あ、ここは僕が……」<br><br>「ちがいますよ、浅尾末輝（あさおまつてる）。<br>　いまここで君に求められているのは、こんなささやかな金銭じゃありません。<br>　―――よく考えて」<br><br>縁条さんは人差し指を立てて、そして僕の言葉を待つ。<br><br>求められていること……ここで考えるべき、相手の気持ち……<br><br>「……ごちそうさまでした、縁条さん」<br><br>縁条さんが、ニッコリと笑う。<br><br>「そう。君に求められているのは、<br>　大抵いつも、素直で正直な、人間関係を信じる気持ちなんですよ」</p><br><p><br><br><br>（プロローグ、了。次回、第１章「群青日和：１」に、つづく） </p>
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<link>https://ameblo.jp/kaz-ota/entry-11432833124.html</link>
<pubDate>Sun, 23 Dec 2012 02:36:31 +0900</pubDate>
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<title>「舌先２ミリの境界事情」　プロローグ③　吉原縁条（よしはらえんじょう）・前編</title>
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<![CDATA[ 夜空に回路かなにかのように瞬くサンシャインビルの灯りを向こうに見て、<br>４階建てくらいじゃ辺りを見渡すこともできない屋上で、<br>“代理人”である吉原縁条（よしはらえんじょう）さんは<br>交渉相手と対していた。<br><br>「つまり、juagguさんに対するネット上での書き込み、<br>　およびＯＦＦ会での粘着行為を、<br>　今後は遠慮していただきたいというそういうお話なのですが」<br><br>真っ白い開襟シャツと、すらりと伸びた細い足を包む紺色のタイトスカート。<br>縁条さんの出で立ちは、その丁寧な口調も似合う女教師風だった。<br>ただ長い髪をまとめ上げている巨大なカンザシが、<br>独特の個性を放ちまくっている。<br><br>縁条さんは、sista OSCAに出入りする女装さんの中でも特に目立つ存在で、<br>国家１種を持ってるとか伝説のバンドのボーカルだったとか有名作家のゴーストライターだったとか、<br>その正体にまつわる噂は都市伝説じみていて、真相がわからないところもまた都市伝説だった。<br><br>決して愛想が良いわけでもないのになぜか人に頼られることが多く、<br>いつからか“代理人”とあだ名され、<br>何かとトラブルに巻き込まれることの多いその道の仲間たちに代わって、<br>揉め事を解決する役まわりを自然と引き受けるようになったらしい。<br>知り合いの女装さんが主催する懐ゲーのＯＦＦ会で知り合って、<br>ツボなゲームが同じだったことから親しくなり、<br>それ以来、時間さえ合えば僕は縁条さんの“仕事”を手伝うこともあった。<br><br>「僕は純粋にjuaちゃんが好きなんだ。どうしてそれがいけない。<br>　どうしてそれが問題になる？<br>　好きだから少しでも一緒に居たいという気持ちがどうして犯罪にされるんだ？<br>　偏見だろ、それ。<br>　僕がもういい歳だからって……僕の見た目がキモイからって……！」<br><br>交渉相手の上ずった声を、僕は唯一屋上につながる出入り口のドアにもたれながら聞いている。<br>追い詰められた相手を逃亡させないように。<br>メンドくさい邪魔が入らないように。<br>このドアを守ることが、今の僕に与えられた仕事だった。<br><br>「あなたの年齢や見た目は別に問題じゃありません。<br>　真に純粋な恋愛なら、そんな要素はガンプラの余剰パーツくらい、現状にまったく必要のないものです。<br>　問題は、あなたの上から目線です。<br>　女装される方は多かれ少なかれ、どこか引け目のようなものを感じて生きている方が多いのです。<br>　あなたは無意識かもしれませんが―――だからこそ余計にたちが悪いのですが、<br>　あなたの言動は、常にそこに付け込んだ<br>　お手軽なプライド充足欲に満ち満ちているのです」<br><br>縁条さんの言葉は、限られた時間の中で決着を着けることを義務付けられたドラマの探偵のごとく、<br>容赦なく、切れ味鋭く、簡潔だった。<br>交渉相手は反論する隙さえ与えられない。<br>嫌な流れだな、と、ちょっと僕は思っていた。<br><br>「相手をどれだけ傷つけたかなんて<br>　今のあなたにはまだわからないでしょうけれど、<br>　せめて事実を知ってください。<br>　あなたは誰かを傷つけた。<br>　森羅万象公序良俗天地天命それは罪です。<br>　反省してくださいリスクを負ってください傷ついてください」<br><br>そこで縁条さんは一度言葉を切った。<br>……あ、来るぞ。<br><br>「―――身の程を知れ、この低俗」<br><br>ジャッジメントタイム。縁条さんの決めセリフ（バルス）が炸裂した。<br><br>交渉相手は悲鳴のような声を上げて、縁条さんに飛び掛ってきた。<br>体格的に見ても決して腕っぷしが自慢できそうに無い相手だったけれど、<br>壮年の域を少し越えたように見えるとはいえ相手は男。<br>縁条さんは線の細い……まぁやはり男ではあるのだけれど。<br>事情を知らないはた目には、立派なピンチと言えた。<br><br>けれど、縁条さんは慌てるでもなく優雅に立ち尽くしている。<br>僕も縁条さんのもとに駆けつけるようなことはせず、ひたすら入り口の扉を押さえている。<br><br>交渉相手が、見よう見まねであろうポーズで拳を振りかぶり、<br>縁条さんに襲い掛かる。<br>だが縁条さんの体は最小限の動きを見せただけでそれをかわし、<br>よくあるマンガなら当て身でも食らわせそうなそのシーンで、<br>女教師風の麗人はそっと相手の背中に手を置いた。<br><br>叩きつけたのではない、まさに置いただけ。<br><br>すると次の瞬間、手が接触した部分から青白い炎が上がった。<br>それは瞬間的だったけれど、炎のビジュアルが消えうせたあと、<br>相手のくたびれた白シャツは見る見るうちに焦げて行き、<br>あっと言う間に節くれだった背中があらわになった。<br>火傷はしていないように見えたが、それでもショッキングな出来事であるには変わらず、<br>炎を放たれた相手は混乱と恐怖の、今度は紛うことなき悲鳴を轟かせた。<br><br>縁条さんは、別に発火装置を隠し持っていたわけではない。<br>薬品が化学反応を起こしたわけでもない。<br><br>―――触れたものを発火させる。<br><br>それが、彼女の“ボーダー”としての力だったのだ。<br><br><br><br><br><br>（プロローグ④「吉原縁条（よしはらえんじょう）・後編に、つづく）
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<link>https://ameblo.jp/kaz-ota/entry-11429096240.html</link>
<pubDate>Mon, 17 Dec 2012 18:14:41 +0900</pubDate>
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<title>「舌先２ミリの境界事情」　プロローグ②　城ヶ崎ペグ（じょうがさきぺぐ）</title>
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<![CDATA[ <p>「ヘンなクスリ？」</p><p>「……ん」</p><br><p>向かい合う黒縁メガネのオトコノコは、少し深刻ぶった声を出した僕に、<br>それでも無感動で平坦な声を返してくるだけだった。</p><br><p>そんなやり取りが、もうかれこれ１時間以上続いてる。</p><br><p>雑居ビルの建ち並ぶ盛り場の裏通り。<br>昼なおうす暗い喫茶店の中で、<br>僕は、コミュで約束したとおり城ヶ崎ペグ（じょうがさきぺぐ）さんと初めて対面した。</p><br><p>喫茶店「sista OSCA」は、<br>僕みたいな男や女装さん、もしくは女装さん同士をめぐり合わせてくれる場所だ。<br></p><p>けれど、そこに明確なルールは存在しない。<br>僕らが出入りするＳＮＳにはOSKAのコミュがあり、<br>そこで当人同士が当人同士なりの取り決めを作って、この場所を使わせてもらっているに過ぎないのだ。</p><br><p>僕はよく知らないが、人気のあるイケメン声優に似ていると噂の店長の原磯（はらいそ）さんは、<br>一部では「黒執事」と呼ばれ、オトコノコたちには特に人気がある。<br>興味本位でコミュを覗いただけでやって来た勘違い男を鮮やかな体術で撃退し、<br>かと思えば普段は常に物静かで、いろんな形の出会いを求める僕らを見守ってくれる。<br></p><p>年齢は不肖だが文句の付けようのない“大人”の姿を見せてくれるそんな原磯さんは、<br>純男の僕さえ憧れるリアルダンディだった。</p><br><p>「でもヘンなクスリって……」</p><p>「……ん？」</p><br><p>城ヶ崎ペグさん、通称Ｊペグさんは、<br>さっきから「ん」の一文字をイントネーションだけ使い分けて会話している。</p><br><p>ゴスっぽいモノトーンの服に、多分ウィッグなどではない天然の綺麗なおかっぱ。<br>細すぎず、それなりに肉感的な体つきはＳＮＳにＵＰされていた写真どおりだったのだけれど、<br>この口数少ないテンションの低さは想定外だった。<br>ＳＮＳ内のメッセージのやり取りでは、あんなにテンションが高かったのに……</p><br><p>「最近よく言われてるなんとかハーブってヤツなんでしょ？」</p><p>「んんん」</p><br><p>「ん」を連続させて首を振るＪペグさん。<br>僕の言葉を否定しているのだろけど、やはりこちらの目を見てくれることはなく、<br>視線は、ひざに置いた高そうな一眼レフに落ちている。</p><br><p>「じゃあマジなクスリなんですか？　それはマズイんじゃ……」</p><p>「んー…………」</p><br><p>考え込むＪペグさん。<br>どうやら僕の言葉は、まだ正確には的を射ていないらしい。</p><br><p>僕が今日ここでＪペグさんにあった理由。<br>それはある日メッセージで……<br></p><p>『知ってる（♯▼皿▼）？　“力”が得られるクスリのウワサ ｍ(＿ ＿；)ｍ』</p><p>というのがいきなり届いたせいだった。<br>ちなみに、Ｊペグさんの顔文字の使い方はどこかおかしい。</p><br><p>Ｊペグさんの言う“力”とは、<br>公佳が持っているような、味覚で人の気持ちがわかるという、<br>あのちょっとした超能力のようなもののことだ。</p><br><p>Ｊペグさんとコミュで知り合い、何度かのメッセージを交わしているうちに、<br>僕は公佳の“力”のことを、彼女に相談するようになっていた。</p><br><p>それは、他でもないＪペグさん自身も“力”を持っていることがわかったからだ。</p><br><p>Ｊペグさんは、視覚で捉えたものを決して忘れないでいられる。<br>そしてそのイメージを、デジタルデータに落とし込むことさえ出来るのだ。</p><br><p>今ひざに抱えているデジタル一眼もそのためのアイテムで、<br>つまりＪペグさんは、記憶を念写することができるのだ。</p><p>しかもデジタルで。<br>持ち運びが便利だからとデジカメを使ってはいるが、<br>パソコンとペイントソフト（なぜかこれは必要らしい）さえあれば、<br>Ｊペグさんの脳内イメージの再現は可能らしい。</p><br><p>Ｊペグさんに公佳とのこと（主に感情的な起伏へ対応）について相談しているうちに、<br>やがては“力”の話になり、そして“力”を持っている人間は“ボーダー”と呼ばれ、<br>実はかなりの数のボーダーが、日常社会で生活していることを、僕は聞かされた。</p><br><p>まるっきりＳＦ小説の世界観だけれど、<br>他でもない公佳を知っているからこそ、僕はＪペグさんをより近くに感じるようなった。</p><br><p>そしてそんなＪペグさんが突然警告めいた「クスリのウワサ」をメッセージでよこすものだから、<br>なにか深刻なものを感じずにはおれず、今日の対面となったわけだ。</p><br><p>「クスリっぽいもの効能でボーダーの力を得られる、なんて……</p><p>　詐欺か、もしかしたら人体実験……？」</p><br><p>「ん」</p><br><p>「そんなのが、この街に広まってるって言うんですか……？」</p><br><p>「…………」</p><br><p>最後は「ん」の一文字もなく、けれどそのときになってやっと目を合わせてくれて、<br>Ｊペグさんは頷いた。</p><br><p><br>実際。<br>僕ごときがかかわってどうにかなるような問題じゃないのかも知れないけれど。<br></p><p>そこには、なにか陰謀めいたものが見え隠れしているような気がした。</p><br><p>それに他でもないボーダーと呼ばれる公佳のような人間の力にかかわることならば……</p><p>やはり、僕は見過ごすことは出来ない。</p><br><br><p>僕が探偵の真似事のようなことを始めるようになったきっかけは―――<br>つまりは、これだったのだ。</p><br><br><br><p>（プロローグ③「吉原縁条（よしはらえんじょう）・前編に、つづく）</p>
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<link>https://ameblo.jp/kaz-ota/entry-11369166406.html</link>
<pubDate>Tue, 02 Oct 2012 04:34:24 +0900</pubDate>
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<title>「舌先２ミリの境界事情」　プロローグ①　五日野公佳（いつかのきみか）</title>
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<![CDATA[ <p><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20120921/09/kaz-ota/f0/6b/j/o0601082812198430442.jpg"><img border="0" alt="kazのブログ" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20120921/09/kaz-ota/f0/6b/j/t02200303_0601082812198430442.jpg"></a> </p><br><p>僕は物語の主人公じゃない。<br>彼女を見ていると、いつもそう思う。</p><br><p>物語を語るに値する選ばれた一品につくり上げるのはとにもかくにも主人公で、<br>物語を読み進めるというのは、彼、もしくは彼女に恋する行為に似ている。<br>……まぁそれは限定ではなく、友情や同情であってもいいんだけれど。</p><br><p>主人公は、魅力的でなくてはならない。<br>主人公は、目が離せない危うさを持ってなくてはいけない。<br>主人公は、言いたいこと、言えなかったこと、思いもしなかったことを<br>言ってくれなきゃいけない。</p><br><p>そういう意味で、彼女はまったく主人公だった。</p><p>だから僕は、彼女に恋する感情を持っている。</p><p><br>名前は、五日野公佳（いつかのきみか）。<br></p><p>多分、本名なんかじゃない。<br>僕が最近足を踏み入れたちょっと特殊なＳＮＳで彼女が掲げているだけのＩＤみたいなものだ。</p><br><p>そして公佳は、本当は彼女でもない。<br>ＳＮＳ上では彼女だが、社会的や肉体的や倫理的には彼であり、公佳は男だ。<br>その事実は、彼女が公佳であること知っている人間は誰でも知っている。<br>けれど、公佳であることを知らないリアルの彼しか知らない人間は、決して知ることはない。</p><p>つまり公佳が息づくＳＮＳとは、そういう場所だった。</p><br><p><br>「嘘をつくとね、人間はしょっぱくなるんだよ」</p><br><p>ＳＮＳで何回かのメッセージをかわし、その後リアルで会った公佳は、<br>まったくかみ合わない会話に戸惑う僕を完全放置でそんなことをつぶやいた。<br>流れでしてしまったさっきのキスのことを言われたのかと思って、思わず口を隠す僕だ。</p><br><p>さらにそのあとの告白で知ったのだけれど、<br>公佳は、味覚で他人の感情がわかるのだそうだ。</p><br><p>「しょっぱい＝嘘」という大まかなものから、<br>「可愛さ余って憎さ百倍、殺したいほど君が好き」といった具体的なものまで。</p><p>体調や状況にかなり左右されるとのことだったが、<br>公佳の舌には特殊能力が宿っていて、彼女がひと舐めすれば、<br>誰もが心をまる裸にされてしまうということらしい。</p><br><p>すぐには信用できなかった。<br>女の勘みたいなものが鋭いことを言いたいのだと僕は解釈したが、<br>けれど指を舐められ、耳をあま噛みされ、そしてもう一度キスをしたあとは、<br>僕は彼女の告白を信じないわけにはいかなくなっていた。</p><br><p>まさしく、僕の心……下心はまる裸にされてしまったのだ。<br>それも、ちょっとフェチに偏った嗜好のほどまで、かなり具体的に。</p><br><p>赤面を越えて顔を青くした僕だったが、公佳は「慣れてるから」とにっこり微笑んでくれた。</p><br><p>その顔が本当に可愛くて、<br>それも特殊能力かと思うくらい僕の中から焦る気持ちが消えてゆくのを感じたのだけれど、<br>同時にじめっとした、あまり爽やかじゃない感覚があったのも見過ごせなかった。</p><br><p>隠している他人の本心がわかって、嬉しいことなどあるわけがない。<br>それは、よくある超能力者の悲哀。<br>ほぼジャンプやサンデーのみで構成された僕のボキャブラリーで表現すると<br>つまりはそういうことなのかもしれない。</p><br><p>「同情するなら愛をくれ」</p><br><p>憐れむような顔が出ていたのだろうか、僕がしばらく黙ってしまったそのとき、<br>公佳は両手を差し出してそう言った。</p><br><p>そして、今度は快活に笑った。</p><br><p>いいんだよ、こういう力もこれはこれで。<br>これも私をかたどってる重要なワンピースなんだから。<br>特殊能力もワンピース。<br>女の子の格好するのもワンピース。<br>その上で、私は私の理想形を追いかけてみたいんだよ。</p><br><p>そう言った彼女は、魅力的だった。<br>悲哀を乗り越えた健気さなどでは決してなく、<br>それは、隠し切れない強さの現われだったからこそ、そう見えたのだと思う。</p><br><p>　なりたいものになるよね<br></p><p>　ガンバルひとがいいよね<br></p><p>　涙もたまにあるよね<br></p><p>　だけどピッと凛々しく</p><br><p>好きだったというアニメのエンディングを彼女は口ずさむ。<br>鼻唄だったけれど、その声は僕の中にいつまでも響くようだった。</p><br><br><p>再認識。</p><br><p>僕は、彼女に恋する感情を持っている。</p><p><br></p><br><br><p>（プロローグ②　城ヶ崎ペグ（じょうがさきぺぐ）に、つづく）</p>
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<pubDate>Fri, 21 Sep 2012 08:59:09 +0900</pubDate>
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