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<title>細川の小説ブログ</title>
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<description>細川の情熱とリビドーとアンニュイ溢れるブログ兼小説置き場</description>
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<title>俺はラブライバー</title>
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<![CDATA[ <font size="3"><br>オッス！オララブライバー（にわか！<br><br>近頃はじめたスクフェス。その中でも心をわしづかまれた曲の作詞を勝手にしました。<br><br>完全に黒歴史でしかない気がしてるのですが、時には突き抜ける強さも必要だと自分に言い聞かせてここにあげときます。<br><br><br><font size="5"><font color="#00BFFF">Mermaid festa vol.1</font></font><br><iframe width="459" height="344" src="https://www.youtube.com/embed/y9cdszg6YvQ" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br><br>　３番歌詞<br><br>　「ねえ時間がないよ 夏が終わるよ」<br>　波音に声が消える<br>　変わる空色 沈む太陽<br>　恋はまるで蜃気楼<br><br>　人気の消えた 夜の海<br>　心が揺れてる ふたり<br>　さらわれた伝えたい言葉 わたしをつかまえて<br><br>　寄せては返す<br>　波のような こんな恋は 初めてだから<br>　胸に焼きつけて ほしいの<br>　君の顔 にじませた わたしの涙<br><br>　動揺してるの？緊張してるの？<br>　気づいてほしい 奪ってほしい<br>　あなたから 熱くなれ<br><br>自評<br><br>　この曲はスクフェスでプレイすると一番だけで、曲が終わる時に「さよなら」と言われるのですが、そこで不覚にもドキッとしてしまいドハマりした曲です。ハマりすぎて生まれて初めて作詞しました。<br><br>　とりあえず歌詞なので韻を踏むことと原曲を強く意識しつつ、夏の恋、海、そしてマーメイドというモチーフでやりました。マーメイドは悲恋のメタファーということらしいのを初めて知り勉強になりました（なんの？）。それでこういう曲調なわけですね。自分ではきれいにまとまったと思っていましたが、その後ベストアルバムを聞いていろんな曲のフレーズとカブっていることがわかり、自分のボキャブラりのなさに呆然としました。しかし冷静に考えても韻とモチーフを大事にするとこうなるんだよなあ。<br><br>　惹かれ合ってるけれども叶わない、そんなイメージで。脳内で3：00くらいにねじ込んでください。<br><br><br><font size="5"><font color="#9370DB">ダイヤモンドプリンセスの憂鬱</font></font><br><iframe width="459" height="344" src="https://www.youtube.com/embed/er0mS75oeFE" frameborder="0" allowfullscreen></iframe><br><br>　３番歌詞<br><br>　視線奪うあの子の（do you know?）<br>　その秘密君はわかる？（kira-kira）<br>　心つよく抑えても（I can't stop）<br>　惹かれていく princess heart<br><br>　なにもかもわかるというのなら<br>　隠してたわがままを今夜は許して<br><br>　君も知らない本当の私<br>　予想超える出来事求めてる<br>　怖い？　だけど叶えてよ<br>　朝に消えてしまう夢でも私かまわないの<br>　そんなことを望むのはいけないコト？<br>　秘めた願い　堕ちていきそう<br><br>自評<br>　<br>　かっこいい系のメロディーですね。難易度エクストリーム初挑戦で砕け散った曲です。ダイヤモンドだけにな（？）。<br><br>　この歌詞は僕の中のイメージ優先で韻とか全然考えてません。人気絶頂のアイドルたちの密かな願望というアダルトなイメージでやりました。背伸びしたい感じを出したかったのですが、やりすぎるとあくまでアイドルって感じを壊して（AV）しまうので、その塩梅に苦労しました。というか２番サビの中２っぷりはなんなのかだれか教えてください。<br>　「挑戦してよ？」に勝る挑発フレーズを真剣に考えたのですが、まったく勝てる気がしなかったので遠まわしに誘うフレーズにしました。「挑戦してよ？」って強すぎだろ。<br><br>　ステージの上の姿はすべて満たされているようだけど、実は物足りなさを感じてるってのは人気絶頂のアイドルだから許される憂鬱ですかね。変なのがスリルを求めてヘタすると坊主ですからね（具体例については触れてない）。脳内で2：45あたりにねじこんでください。<br><br>　こんなところです。なお、この記事は僕が死にたくなったら消します。以上。<br><br><br><br></font>
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<pubDate>Sat, 08 Mar 2014 03:13:38 +0900</pubDate>
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<title>近況</title>
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<![CDATA[ <br>生きてます。<br>日々の雑多なツイートの中にネタが埋もれないようにここに残しておきます。<br><br>2月11日<br>厳寒が続いていた中、この日はよく晴れて暖かく、ドライブがてら廃墟を探索しました。<br>スラムに住んでいる故、車を適当に走らせると廃墟をチラホラ見ることになります。今回はそのうちのひとつ。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/54/8a/j/o0800106612864256816.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/54/8a/j/o0800106612864256816.jpg"></a><br><br>雪に閉ざされて近寄れなかった廃墟。このトンネルは天井が低くてコンクリートが割れていて今にも崩れてきそうでした。足下には瓦礫が堆積していて、踏むとパキパキと音を立てます。潜入任務なら一発アウトの優れたセキュリティと言えるでしょう。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/02/71/j/o0800106612864261807.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/02/71/j/o0800106612864261807.jpg"></a><br><br>壁に空いた大穴。ここから入れよという声が聞こえてきそうですが無理です。こっち側雪が深いんです。なるべく入った形跡を残したくないので。足跡とか残すの嫌なんだよね(ウロウロしてたらがっつり残った<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/5a/de/j/o0800060012864264888.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/5a/de/j/o0800060012864264888.jpg"></a><br><br>全容です。恐らくここは何かの工場だったのではないでしょうか。センターにポツンと置かれた洗濯機が違和感ありまくりで、人が出入りしてる気配を感じさせて不気味でした。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/4f/b9/j/o0800060012864268971.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/4f/b9/j/o0800060012864268971.jpg"></a><br><br>トンネルは全部で五つほど。車の出入りに使ったのかもしれませんが、軽自動車でも通れないような大きさなので用途はわかりません。奥の階段から2階があったことがわかりますが、ご覧の通り屋根から崩落しているので、今は見る影もありません。青空と屋内の影のコントラストに魅了されます。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/c1/dd/j/o0800106612864274640.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/c1/dd/j/o0800106612864274640.jpg"></a><br><br>事務室か作業室だと思われます。目についたこの標語が見る者を郷愁と想像の世界へ誘います。ここで働いていた人びとは今どこで何をしていて、どうしてここを去ったのかと。恐らく答えることができる人はもういないでしょう。色々と偲ばれます。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/e3/8c/j/o0800106612864283156.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/e3/8c/j/o0800106612864283156.jpg"></a><br><br>作業場の最奥です。休憩室か何かだと思いました。割れた窓から猫かなにかが出入りしている形跡があります。<br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/e1/90/j/o0800106612864286282.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/e1/90/j/o0800106612864286282.jpg"></a><br><br>屋内にも関わらず雪が積もっています。屋根が剥がれて外と繋がっているからです。梁は折れて雪がひどくふればここも崩落しそうです。<br><br>センチな気分になった僕はポエマーとしてTwitterに詩を呟きました。ここにも載せときます。<br><br><br>二月の正午前<br>強い陽射しが雪を解かす<br><br>解け出した雪の滴が<br>木のあばらの隙間からしたたり落ちる<br><br>誰かの夢と記憶が<br>その骸をさらけ出す<br><br><br><a href="http://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/d6/c4/j/o0800106612864295881.jpg"><img width="400" border="0" src="https://stat.ameba.jp/user_images/20140303/22/kgmnlv/d6/c4/j/o0800106612864295881.jpg"></a><br><br>死体はその姿で物語る、といったところです。<br><br>
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<pubDate>Mon, 03 Mar 2014 22:36:00 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　31</title>
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<![CDATA[ <font size="5"><font color="#FA8072">OUTER OPS:奇妙な分隊</font></font><br><font size="3"><br><br><br>　孤独が恐ろしいのは、孤独そのもののためではなく、むしろその孤独の条件のためである。もし、あなたが孤独を恐れているなら、考えてみて欲しい。あなたも死を恐れるのは、それは死そのもののためではなく、その死の条件によってであるのと同じだということがわかるはずだ。<br><br><br><br><br><br>　風のない夜だった。波の揺れに体を任せ、漂っていた。俺はうとうととしながら、うすい意識の中でこれまでのことに囚われ続けていた。<br><br>　２週間前。忙しく動いていれば忘却してしまうような瑣末な出来事まで、未だに俺の頭のなかに強くこびりついているのは、それを落とそうとすればするほど、出来事のディテールが詳しく思い起こされ、本当は朧気になっている記憶と新しく浮かぶ推測とが相まって、新たな色を加えるからだろう。こうして、俺の中に黒く根の深い汚れが広がり続ける。忘れられるはずがないのだ。四六時中、こうして頭の中で、忘却することと正反対のことをしているのだから。<br><br>　２週間前――。<br><br>「今日はポテトとソーセージとサラダだよ。ホソカワは、パンよりもこっちのが好きだろ？　ほら、マヨネーズもこっそり借りてきたんだ。使ってよ。ロックフィッシュは見た目は怖いけど、本当はいいやつなんだ。ホソカワにもってくって言ったら、周りには内緒にしてくれたよ」　<br><br>　鉄格子の下から、トレーが差し出された。トレーには樹脂製の器と、木製のスプーンがのっていた。<br><br>「ごめん。あまり食べる気にならない」無愛想に返した。<br><br>「そう言わないでさ？　ホソカワが食べ終わるまで、僕はここを離れられないのは知ってるだろ」<br><br>「そんなに心配なら、おまえがずっと俺を見張ればいい。あの看守に言ってくれ、誰かに叱られて俺に八つ当たりしに来るなら、さっさと戦場に行って銃を撃ってくればいい。誰かの血を見て絶叫を聞いたら、さぞ爽快だろうなああいう奴は」<br><br>「ホソカワさ、また寝てないんだろ。顔色が悪いよ」<br><br>　俺は渋々トレーを受け取って、ベッドに戻った。とりあえずミルクを一口飲んだ。ミルクと言っても脱脂粉乳で、上澄みの下の溶け切らずに残ったダマが、あの独特のくさみを出していた。<br><br>「副司令も言ってたよ。一時の気の迷いがああいうことを引き起こすんだって。反省のために今は静かにしてもらってるって。他に罰は受けてないんだろ？」<br><br>「カズヒラが？」<br><br>　俺は手を置いて顔を上げた。<br><br>「この前珍しく食堂に来てさ。ちょっとね。あの作戦から凄く忙しいみたいだから」<br><br>「俺のことを、なんて言ってた」<br><br>「いや、それ以外はなにも」<br><br>　俺は食堂の様子を思い浮かべた。しかしそれはカズヒラとチコが仲良く席を並べている様子ではなく、むしろ名も知らないような隊員たちの姿で、その隊員たちが談笑している。話題に上がるのは、俺のことだ。<br><br>「いい反面教師だよな。他の奴らは喜んでるんだろ。あの日本人がやらかして牢屋に入れられていい気味だってな。俺は奴らにいい話題を提供してやれたよ」<br><br>「そんなこと、ないよ」<br><br>　なんとなく、チコの言い方に言いよどみが伺えた気がした。俺は神経質になっているようで、気がつけば貧乏ゆすりをしていた。この頃出てきた癖だ。<br><br>「さあ、早く食べちゃってよ。このあと訓練があるんだ。僕も早く使えるようにならないとね」<br><br>　スプーンをとって、ポテトをすくった。薄味だったが、よく噛めば素材の味を感じることができる気がした。それからソーセージに手をつけたが、皮が硬くてうまく切れず、弾みがついてトレーからこぼれていった。<br><br>「スプーンじゃ食べにくいよね。でもここにはフォークを持ってこれないから」<br><br>　俺はスプーンを見つめた。木製のスプーンは丸くて分厚かった。営巣にフォークを持ってこれないのは、マリオのように、凶器として使うやつがいるからだ。それもわからずに、あの日、俺はマリオに言われるがままにスパゲティを茹で、フォークと一緒に持ってきた。マリオは初めからこれが狙いだったのではないかと思うようになったのは、ここに入れられてからだ。自分の間抜けさに腹が立った。<br><br>「このスプーンだったら、なにができるかな」<br><br>　思ったことが口から出てきた。<br><br>「どういう意味？」<br><br>「スプーンじゃ自殺もできないよな」<br><br>「なにを言ってるの？」<br><br>「この器もそうだ。割って破片にできないようになってる。それが狙いだろ。このトレーだってそうだ」<br><br>「もうやめようよ」<br><br>　口から出た言葉は弾みがついたように、転がって大きくなっていくようだった。止められなかった。<br><br>「言えよ。俺はどうしたらいい？　このスプーンを飲み込んだらいいのか？　なぜおまえが食事を持ってくるんだ？　看守のクソ野郎にさせないのは同情を誘うためだろう。おまえも一度、仲間を売ったことがあるもんな。そうすれば俺が気を許して何かしゃべるだろって、そういう目的でつかわされてきてるんだろ」<br><br>「そんなことない！」<br><br>「副司令の考えそうなことだ。言えよ。飯が終わったら、そのクソ忙しいはずの副司令にこれを報告しに行くんだろ。今日はこんなことを喋ってました、この前はこんなことを喋ってました、それが他の隊員たちにもいくんだろ？　いい笑い者だ。それとももうなってるか？　どうせここだって、また盗聴されてるんだろが！　なあ、聴いてるんだろ！　俺はどうなるんだ！　いつまでつづく、こんなのはもうまっぴらだ！　早く俺に尋問するなり、なんなりするといい！　なあ、答えろよ！」<br><br>　気づけば立ち上がって、鉄格子のところまで来ていた。感情に任せて喚き散らしたが、俺は意識せずに対象をとっていたようで、チコに怒鳴りつける形になっていた。営巣の照明に照らされて、チコの表情はわからなかった。<br><br>「苦しいのはわかるよ。でも、本当にわからないんだ、何も」<br><br>　チコが押し殺したような声で、ようやと言った。鼻をすするような音が聞こえてきて、俺は我に返った。背筋が寒くなるのを感じた。<br><br>「自分を責めるのもわかるよ。でも知らないんだ。ごめん、これ、後で取りに来るから」<br><br>　チコが営巣を出て行った。俺はその姿を見ていた。トレーを蹴飛ばした。ポテトが砕けてミルクと一緒に俺の服と床とに散らばった。足元にはマヨネーズだけが取り残されていた。<br><br>　俺はなにをしているんだ、チコは本当に俺を気遣って来てくれたんじゃないか。それをこうした形で確認することになったのは、馬鹿が、年下相手に怒鳴りつけて。<br><br>　自分が惨めで情けなくて、俺は顔を覆うことしかできなかった。<br><br></font><br><font size="2">　つづく</font>
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<link>https://ameblo.jp/kgmnlv/entry-11668223268.html</link>
<pubDate>Mon, 04 Nov 2013 09:07:18 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　30</title>
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<![CDATA[ <font size="3"><br>　カズヒラを除き隊員は前方に三人、後方に一人。カズヒラが首を振って合図をすると、前方の隊員三人が銃を構えてにじり寄ってきた。銃口は俺に向けられて俺は両手を挙げていることしかできなかった。マリオは俺の背後でしゃがみこんでいて、やがて観念したのか、銃のスリングをゆっくりとした動作で肩から外した。<br><br>「勝手に動くな！」<br><br>　隊員が殺気立って大声を上げた。やめてくれと言いたくて、俺は声にならない声を漏らしてしまう。<br><br>「体が重いんだ。外させてくれてもいいだろ。もう撃ちやしないよ」<br><br>　マリオは大きな動作で、ぶら下がっていたM16を床に置いた。その声は弱々しく、いかにも降伏しているように見えた。隊員は慎重に隙を見せぬよう俺たちの方に近寄ってくる、一歩一歩に時間をかけながら。全ては着実に閉幕へと近づいているようだった。<br><br>　俺に銃口が突きつけられる。マリオから引き離され、身体検査をされ武器を持っていないのがわかると、壁に体の前面を押し付けられた。腕に痛みが走った。首を回してマリオの様子を伺うと、他の隊員二人が、動かなくなったマリオを立たせようとしているのが見えた。しかしマリオは身長２メートルに迫る大男で、体から力が抜けたマリオの体を起こすのは二人の男手でも苦労していた。マリオは麻酔薬が効いたようでぐったりと肩を前に落としていて、負傷した兵が運ばれるように腕を首にまわされ運ばれていく。<br><br>「手間をかけさせやがって」<br><br>　俺の腕に拘束具を取り付け終わると、隊員が言った。背中を銃で小突かれ、俺は歩きながら、運ばれていくマリオの背中と、近づいてくるカズヒラを交互に見ていた。カズヒラは腕を組みこちらを見ていた。サングラスの奥の彼の瞳には今、どんな表情が宿っているのだろう。恐れをなして俺は考えるのをやめ床に目を落とした。床には引きずられたような血痕が残されていた。<br><br>　この血痕はなんだ。目で元を辿ると、それはマリオの足元から続いていた。いつマリオはこんな傷を負ったのだろう。麻酔弾は麻酔薬の入った注射針を飛ばす代物で、このような出血が起こるようなことはないのだが。<br><br>「おいなんだ？　この血は」俺の後ろにいた隊員も、この血痕に気がついた様子で訝しがった。<br><br>　そして、マリオとカズヒラの距離がおよそ２メートルに迫った時だった。<br><br>　突如マリオが動き出した。左にいた隊員の喉仏に肘を食らわせ、右にいた隊員の目元目掛けて頭突きをすると、続けて蹴りを放った。俺と後ろにいた隊員は呆気にとられてしまった。<br><br>「まだ起きてます！」<br><br>　俺をどかせて隊員が声をあげて銃を向ける。しかし前方にはマリオとカズヒラが重なっていて、マリオを撃てばカズヒラにも危害が及ぶ危険性があった。マリオはそれを承知なのか、喉をやられうろたえていた隊員を壁際に蹴り飛ばすと、カズヒラに迫る。マリオの右袖は血に染まっていて、左手には血濡れた何かが握られている。それは金属的な光を反射させていた。<br><br>　それはフォークだった。マリオはフォークを自分の右腕に刺して気付けにしていた。<br>　<br>「貴様、正気か！」<br><br>　即座に腰の銃を抜いたカズヒラの顔を目掛けて、マリオは自分の血濡れた袖を振るった。鮮血がサングラスに張り付き、外れた弾が壁で跳ね返って天井に吸い込まれた。俺たちの目の前で、にわかに白兵戦が始まった。カズヒラはうろたえず、迫ってきたマリオとの距離を取り後ずさる。近ければ捨て身のマリオに銃を取られる可能性があった。しかし逃すまいとマリオも距離を詰める。再び発砲しようとしたカズヒラより一手早く、振るった右腕の拳がカズヒラの腕を捉えた。衝撃が顔まで及びサングラスが弾き飛ばされる。次弾はまたも外れ、壁に食い込んだ。カズヒラは転がって距離を取る。<br><br>「副司令！　そいつから離れてください！」<br><br>　マリオは巧みに射線上に自らの体とカズヒラを置き、二人は動き続けていて、援護射撃は許されなかった。マリオは素早く腰から抜いたベルトを右腕に巻きつけ、鞭のように振るうと、ついにカズヒラの銃を叩き落とした。マリオに拾われるのを避けるため、銃が蹴り飛ばされた。それが俺たちの方に転がってくる。<br><br>「来い！」<br><br>　カズヒラが胸元のボタンを開けた。銃を失ったのを勝機と見て、マリオが詰めに入ろうと飛びかかった。ベルトをふるい、それがさばかれると見ると、マリオは急速にカズヒラとの間合いを詰め、左手のフォークをフックのようにカズヒラの眼前に突き出す。さばいたベルトに右腕は奪われていて防御のしようがなく、カズヒラは攻撃を後方に交わすと思われたが、逆にさばいていたベルトを引き込み体勢を崩させて、自らマリオとの間合いを詰めた。その刹那、背を向けてマリオの左手を取り、体を沈めた。<br><br>「おお」<br><br>　隊員が声を漏らした。カズヒラは体を沈めると、取った左手を固めてマリオを床に投げつけた。一本背負いであった。リノリウムの床にマリオの背中が叩きつけられて、鈍い音とうめき声がした。マリオは息ができずに身をよじっていた。不意をつかれて受身を取れなかったのだろう。カズヒラはすかさずマリオの左手首を踏みつけた。フォークが床に音を立てた。<br><br>「ジャパニーズ・CQCだ。相手が悪かったな」<br><br>　隊員が半ば呆けながら駆けていき、マリオに銃口を向けた。マリオはしこたま咳き込んでいた。<br><br>「クソが、地獄に落ちやがれ」<br><br>　それがマリオの最後の言葉だった。隊員が再度麻酔弾を撃ち込む必要もなく、今度こそマリオは動かなくなった。<br><br>「動脈を刺したみたいだ。止血してやれ」<br><br>　指示をすると、カズヒラは床に転がったサングラスを拾い上げた。隊員はマリオを小突いたりして、安全を確かめていた。首からスカーフを抜き、顔とサングラスについた血を拭いながら、カズヒラは俺に近づいてきた。そして、目の前でサングラスをかけ直す。<br><br>　直後、俺は顔面を殴られた。思わず膝をつく。しかしすぐに胸ぐらを掴まれ、引き起こされた。<br><br>「おまえは、自分のしたことがわかっているのか」<br><br>　サングラスの奥の彼の瑠璃色の瞳が透けて見えた。俺はすぐに目をそらした。彼の瞳に宿っていたものを見たからだ。その俺の様子を見ると、彼は再び俺を殴った。そうしてから隊員を呼び寄せる。<br><br>「そのイタリア人は丁重に扱え。起きたら聞きたいことが山ほどある。それから」<br><br>　カズヒラは俺を突き放して背を向けた。<br><br>「この男も連れていけ」<br><br>　隊員が二人、俺の肩を掴んで引っ張った。俺は殴られた痛みのことで頭がいっぱいで、他に考えることがなかった。いや、気を逸らしていたと言うべきだろう。これから起こるであろうことを考えたくはなかった。そういった意味ではこの痛みがありがたかった。<br><br>「さっさと歩け」<br><br>　半ば突き落とされるようにして、俺は営倉がある階へと続く階段を下りる。そろそろ夕暮れなのだろう。室内に照明が灯るまでの遅延のせいで、下を覗くと階下にはただ闇があるばかりだった。俺はその暗闇へと続く階段を降りていった。<br><br></font><br><br><font size="2">　<font color="#FA8072">EXTRA OPS:129 了</font></font>
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<pubDate>Sun, 03 Nov 2013 00:55:23 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　29</title>
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<![CDATA[ <font size="3"><br>　俺は体を大きく揺さぶられたかと思うと、目の前で男が倒れた。それはMSFの隊員だった。何が起きたかを知るまでに時間がかかったが、やがて背後を取られたマリオが振り返り、発砲したのだと理解した。<br><br>　早業だった。動作の素早さと正確さもそうだが、それの躊躇のなさにも恐れ入った。しかし持っていた銃が仇となった。<br><br>「なんだこりゃあ！」<br><br>　MK.22麻酔銃は、その見た目こそオートマチックピストルだが、特殊麻酔弾を発射するための単発式になっており、連射ができなかった。すでに次のターゲットに狙いを定めていた彼だが、引き金を引いても弾が放たれることはなかった。<br><br>　MK.22を放って後ずさりしつつ、背後にあった小部屋に入ろうとしたが、その前に後ろからもMSFの隊員１人に囲まれ、いよいよ手詰まりだった。しかし、マリオは自ら投了を選ぶことはしなかった。俺を盾にして背のM16に持ち替え、発砲しようとした。<br><br>　その右手にビシッと音がして、針が打ち込まれた。麻酔弾だ。反射的にマリオは銃を手放した。銃が肩のスリングに引っかかっていて、ぶら下がった。<br><br>「無駄なあがきはやめろ。寿命を縮める」<br><br>　先ほど俺たちが曲がった角から、衛兵と共に男が出てきた。カズヒラだ。<br><br>「ふざけやがって」<br><br>　マリオが右手からするりと針を抜いて、足元に放った。<br><br>「見ての通りだ」<br><br>　手を後ろに回して、カズヒラが告げた。俺たちは完全に包囲された。俺たちの脱出は初めからばれていたとしか思えない。背後に男が加わった。先ほど俺たちの前を通りすがった管制官だ。<br><br>　不意に、首元がまさぐられた。マリオが俺の制服のカラーの裏から何かを取り出して見せた。それは制服と同じ生地に包まれた非常に小さなサイズの何かで、生地の下から薄く、赤色の明滅が透けていた。恐らく発信機か盗聴器か何かだろう。<br><br>「最初からお見通しってことか」<br><br>　今まで気がつかなかったが、少なくとも制服を着ている間は、俺の首元にはいつもこれがあったということか。俺は監視されていた。ふと、カズヒラに肩に手を置かれたときのことを思い出す。仕掛けたのはあの時だと直感した。寒気がした。<br><br>「するとこいつはスパイで、俺はクラウンってわけだ」<br><br>　マリオの声色にどことなく怒りが混ざっていた。違う、と俺は反論しようとしたが、声にならなかった。マリオはその「豆粒」をつまんで潰そうとしたが、手からこぼれ落ちた。麻酔薬が効き始めているのだ。<br><br>「俺たちにかまけてていいのかよ」<br><br>　マリオが腕を抑えながら俺の影に隠れた。この間に俺は逃げられたが、体が動かなかった。<br><br>「既に敵基地は我々が占領した。作戦は終了したんだ。ついさっきのことだがな」<br><br>　そういえば、ずっと聞こえていたサイレンが、もう聞こえないことに気がついた。カズヒラは余裕綽々といった感じで、「他に聞きたいことはあるか？」とでも言いたげに、腕を組んだ。<br><br>「ここまでか」<br><br>　マリオが呟いたのが聞こえた。俺は思い出して振り返った。マリオの口の中には自決用のカプセルがあるのだ。止めようとする間もなく、あっさりと、飴玉を噛み砕くような音がした。カズヒラたちはこのことを知らないのだろうか。なにも気に留める様子がない。<br><br>「無駄だ。それの中身はダミーの風邪薬だ。体にはいいかもな」<br><br>　カズヒラが言った。本当になにもかも、お見通しなんだな。すべて、筋書き通りというわけか。<br><br>「おまえは眠っていてわからなかったかもしれないが、連れてきた時に体を改めさせてもらった。いい加減、脱出ごっこは終わりにしよう。クランクアップだ」<br><br></font><br><br><font size="2">つづく</font>
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<pubDate>Sat, 12 Oct 2013 08:04:16 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　28</title>
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<![CDATA[ <font size="3">「本当に逃げられると思っているのか」<br><br>「実はやけくそだ」<br><br>　ぞっとして、マリオの表情を伺った。彼に表情はなくて、それが冗談なのか、本気なのかがわからなかった。それがまた俺の恐怖心を煽った。<br><br>「ここでの生活も悪いもんじゃないぞ。飯は気に入らないかもしれないが、みんな気のいいやつだ」<br><br>　はじかれたように、俺は喋ったが、それはマリオを説得しようと思ったのではなく、一種の罪滅ぼしのようなものだった。まるで子どもだ。ここにはいないMSFのだれかに弁解しているような、そんなばつの悪さを感じた。<br><br>「今のおまえがそういうことを喋れば喋るほど、自分の浅はかさを告白しているようなもんだ。黙ったほうがいいぜ」<br><br>　図星だった。結局のところ、俺はこういう状況になって初めて、自分がしたことの重大さに気がついただけなのだ。<br><br>　俺は、裏切り者だった。<br><br>「おまえが過ごした場所は、これからは別物になると思うんだな」<br><br>　それから俺たちは無言だった。廊下が非常に長く感じられた。向かっている階段の先から、今誰かが来たらどうなるだろう。そんなことばかり考えていた。銃撃戦になってマリオの盾にされるのがオチだ。万が一命が助かったとしても、俺はMSFの人間に、合わせる顔がない。<br><br>　考えてみると、逃げるということは、マリオはMSFの外部に仲間がいるのだろう。それに比べて、今の俺に仲間がいるとすれば、それは誰だろうか。こうなった以上、それはマリオではない、MSFでもない。マリオに促され歩を進めれば進めるほど、俺は孤独を深めていくような感覚を覚えた。かつていた場所から、遠く離れていくような感覚を。<br><br>　階段を上がり、居住エリアを抜け、デッキがあるフロアへ差し掛かった。その時、目の前をMSFのスタッフが通りかかった。<br><br>　息が詰まった。俺の右腕は締め上げられて、今まさに盾にされているのがわかった。マリオは俺の影で銃を握って、戦闘に備えていた。荒く深い息遣いと、廊下の奥の方から駐機しているヘリのローター音が聞こえてきた。<br><br>　スタッフはMSFの管制官で、チェックボードの書類に目を通しながら歩いてきた。俺はその一挙手一投足を瞳に焼き付けるように見ていた。俺の目の前を通り過ぎるとき、俺に目を合わせて会釈して、そのまま通り過ぎていき、突き当りのＴ字路を左に曲がっていった。<br><br>　俺たちはしばらくじっとしていた。だが待っても、何か来る様子はなかった。<br><br>「ただのマヌケだとは思えないな」<br><br>　マリオが意味深にポツリと呟いた。同感だった。マリオがそのまま足早に歩き出す。フロアの部屋から誰かが出てこないうちに急げと言わんばかりに。このまま脱出は成功するだろうか。デッキに出て出撃を待つ者たちの中へ紛れ込み、脱出できたとして、その後俺はどうなるだろうか。<br><br>　もはや、なるようにしかならないだろうと、半ば諦めの心が俺を支配していた。<br><br>「これが最後の会話かもな。なにか話すことはないか」<br><br>　マリオが俺と顔を合わせた。この場面で俺のことを心配しているのだろうか。そんな疑問が浮かんで、マリオの瞳を見つめた。もしかすると、マリオも同じような気持ちなのかもしれないと思った。<br><br>「おまえの目的はなんだ」<br><br>　鼻で笑って、マリオが俺の背を押す。馬鹿が、それをばらす馬鹿がどこにいる。冴えた言葉が出てこない自分に呆れてしまう。<br><br>　Ｔ字路に差し掛かる。壁から覗き込んだ。誰もいないのを確認して、俺たちは角を曲がった。廊下の先のデッキから吹き込む潮風が心地よかった。<br><br>「そこまでだな」<br><br>　声がしたが、驚きはしなかった。多分、予想はどこかでできていたんだろう。　</font><br><br><br>　つづく
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<link>https://ameblo.jp/kgmnlv/entry-11603944686.html</link>
<pubDate>Thu, 10 Oct 2013 00:00:00 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　27</title>
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<![CDATA[ <font size="3"><br>「そのままゆっくりこちらを向くんだ。いいか、ゆっくりだ。変なことは考えるなよ」<br><br>　俺の右手はハンドルを握っていて、腰のホルスターに手を伸ばす隙がなかった。頭の中を様々な出来事が駆け抜ける。かがみのこと、BOSSのこと、カズのこと、ホッグのこと。そして最後に、この男のこと。混乱する思考を抑えるように、ゆっくりと、手を上げて言われた通りに振り向いた。胸の鼓動が腹まで伝わっていた。<br><br>「はじめておまえと会った時、こんな感じだったよな。どうだ、言われる方になると、捉え方が変わるだろ」<br>　<br>　おどけた様子で、男は言った。<br><br>「どうやって牢を出たんだ？　衛兵はどうした」ゆっくり唾を飲み込んで、努めて声の調子を整えて、言った。<br><br>「あのひよっこなら俺の代わりに牢の中だ。縁があったら直接聞きな」<br><br>　完全に開けきらなかった扉の影にうまく巨体を隠して、マリオはいた。下の装備は衛兵が着ていたSMFの支給品に着替えていたが、上はサイズが合っておらず、袖から腕に描かれた囚人を示す橙色の太いペイントがはみ出ていた。手には衛兵が携えていたM16A1が握られていて、マリオは俺に向けた銃口を一旦は下げようとしたが、俺の顔をまじまじと見つめると、再び銃口を俺に向けた。<br><br>「ホソカワ、散々人を殺してきただろう。いい顔になったぜ。すぐに蜂の巣にされて死ぬだろうとばかり考えていたが、運は強いらしい。そのツキを分けてもらいたい」<br><br>「だったら銃を降ろせ」<br><br>　マリオは芝居じみた表情をして、ゆっくりと首を横に振った。しかしその猛禽類のような鋭い眼光は、標的を逃すまいと俺を見据えて離れなかった。表情はあれど、それはあくまで顔の肉がつくりだしたものであって、瞳に心が宿らない人間がいるが、マリオもそういう類の人間だ。目の奥に迷い込んだ光が、逃げ出せずに凍てついているような。<br><br>「がっかりだ。感動の再会だと思ったら、その相手の顔に協力できないと書いてあったもんでな」<br><br>　俺は言葉に詰まった。そもそも、協力する気ならばこの男は仲間ということで、こうも緊張することなどなかった。<br><br>　今朝出撃する前までは、この男に協力してもいいと、確かに思っていた。だが今はそれがわからない。この心の変わりようはなんだ。原因は、SMFと生死を共にしたことにあるのかもしれなかった。ともかく、俺の体はここに一人で来ていながら、心はどこかに置いてきたのだ。それが表情に出ていた。<br><br>「うまく手懐けられたもんだ。俺のことを奴らに喋ったか？」<br><br>　上下する銃口を、俺はひたすら見つめていた。マリオの口から出る言葉よりも、今はそれが真にものを語るように思われた。<br><br>「……いや」<br><br>　俺が銃口に意識を向けているように、マリオは言葉よりも俺の表情、瞳の動きだけを見ているようだった。顔中に刃を当てられているように、俺の表情は強ばっていた。<br><br>　嘘をついても無駄だとすぐにわかった。状況からすれば、取り繕って協力する姿を演じてみせるべきだろう。演じるべき言葉、振る舞いを自分の中に探してみた。しかしそのどれを使って想像してみても、彼の穿つような疑いの眼差しが変わることはなかった。<br><br>「わからないなホソカワ。協力する気もないのに、どうしてここに来た？　一人で。こうなることはわかっていたはずだぜ。俺が牢の中でじっとしていると思ったか」<br><br>　マリオが不審に思うのも当然だった。かがみを助けるためには、この男に協力することが必要なことはわかっているのに、俺の中に芽生えた隊への帰属意識に惑わされ、中途半端な行動をしているおかげで、俺はこんな愚かな状況に立たされているのだから。常軌を逸していた。<br><br>「これは何かの罠なのか」<br><br>　沈黙した俺を見て、マリオが近づいてきて、俺の胸に銃口を押し当てた。そして視線を俺の左腕に向け、銃の先で小突いた。<br><br>「アモのことは切り捨てたってことなのか」<br><br>　痛みが走った。<br><br>「どっちにしてもこれじゃ使えないか。道案内くらいはできるだろ」<br><br>　俺の後ろに回ると、銃を奪われた。マリオはM16を背中に下げて、俺の右腕をひねり上げた。<br><br>「エスコート頼むぜ」<br><br>「他のやつらはどうした」<br><br>「あいつらのことなんか知らんさ。囮にしようと思ったが、何をするかわからん烏合の衆だ」<br><br>「ここは海の上だ。船でも陸まで時間がかかる。どうやって逃げるつもりだ」<br><br>「それなら一緒に出撃させてもらうさ」<br><br><br></font><br><br>　つづく
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<link>https://ameblo.jp/kgmnlv/entry-11586943834.html</link>
<pubDate>Sat, 31 Aug 2013 18:04:54 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　26</title>
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<![CDATA[ <font size="3"><br>　マザーベースの中は独特の雰囲気に包まれていた。作戦時特有の緊張感、MSFの人間が動き回る気配の忙しさ。それを感じながらも、俺は疲れのせいか、それとも戦いから解き放たれたせいか、呆けたように廊下を進んでいた。医務室があるフロアは作戦時に使われるフロアと別になっているため、人通りはなかった。少し前まで生き残るために全力で働いていた俺の脳が、栄養不足を起こしているように、とりとめもないことがめまぐるしく頭の中を通り過ぎていき、考えがまとまらない。よく浮かんでくるのはかがみのことだった。<br><br>　なんのために俺はここにいるのか。左腕が完治するまで時間がかかることがわかり、その間俺は出撃することができないだろう。呑気にこの洋上のマザーベースの中で病人生活をすることになるわけだ。その間に何が起こるか。俺の身にじゃない、かがみにだ。俺は、かがみを助けるためにここで命を危険に晒しているんじゃないのか。それなのに。<br><br>　どうすることもできない気がした。今俺は焦っているのだ、そう自分に言い聞かせた。納得がいかなかった。窓の外には敵火口基地から帰投して補給を受け、再出撃しようとする味方のヘリが見えた。<br><br>　敵基地突入後は、基地の制圧が完了するまでマザーベースとの間をリレーするように、ヘリでの増員と補給が行われることになっていた。今や入隊間もない隊員を含め、MSFの戦闘員のほとんどがデッキ近くで出撃を待っている。MSFは持てる物資、人員の全てをこの作戦に傾けている。もともと、MSFはできたばかりの組織で、資源の余剰はない。もしかしたら、全力をもってしてもこの作戦に必要な力には足りていないのかもしれない。<br><br>　敵基地に向かうヘリに乗り込む新たな隊員が見える。不思議なことだ。俺にはそいつが羨ましく思えた。戦っている間は、生き残ることに嫌でも集中することになるのを体験したからかも知れなかった。その間はこういった苦悩から解き放たれることができる。苦悩するのは大抵、こうした空白の時間であるのは、経験的に誰もが知っていることだろう。<br><br>　感傷的な気持ちで外の様子を眺めていた。帰投するヘリ、再出撃するヘリが、空に列をなして去来した。撃墜されたブルーバード１のように、いつまで経っても補給に戻らなかったヘリもあったように思う。デッキの上の空気はピリピリと張り詰めていて、時折怒号が飛び交っているのがうかがえた。<br><br>　その後、俺は自分の部屋に帰ろうと宿舎があるフロアへ向かった。上の空で階段を降りるとうっかり一段踏み飛ばし、冷や汗をかいた。上着を羽織り直して降り、作戦のフロアに差し掛かった。廊下を覗くと、基地内のスタッフが駆けていき、角を曲がっていった。サイレンは依然鳴り止まなかった。戦況は今どうなっているのか、それを知りたかったが、今の戦えない俺を相手にしてくれる人間はいないように思えた。<br><br>　ぼうっとしていると、自分の宿舎があるフロアまで通り過ぎようとしていた。流石に物思いにふけるのを自重しようと思ったとき、階下から妙な雰囲気を感じた。階下は長い廊下を進んだ先に営倉があった。<br><br>　胸騒ぎを感じて、階段の踊り場まで降りた。自然と俺は忍び足になっていた。フロアの廊下は静けさに包まれていた。階上の喧騒と相反するこの階の静まり返った雰囲気が、実に嫌な感じだ。<br><br>　そういえば、マリオは今、どうしているのか。　<br><br>　予感がした。嫌な予感が。引き返すべきだと体の緊張が伝えていた。けれども俺の足は廊下を進んでいた。前述したように、この廊下は長く、それでいて監視や用途の都合上、一本道で見通しがよくなっている。それが今の俺には悪く働いた。このフロアに降りれば、廊下の先の営倉に続く二重のゲートの前に、衛兵が立っているのが見えるのが常なのだが、この時、ゲートの前には誰もいなかったのがすぐにわかった。戦闘に借り出されてしまったのか。普段では考えられない事態だった。<br><br>　この営巣には戦地から連れて来た、MSFに対して協力的でない、あるいは反抗的な人間が押し込められていた。前者が雑居房に入れられ、後者は独房に入れられている。牢自体は強固な造りで、簡単に破られるような代物ではないが、安心はできない。<br><br>　俺はゲートのハンドルに手をかけた。ガチャリ、と嫌な手応えがあって、強張りが背筋を覆った。さっきから嫌なことばかりな気がしてくる。というのも、ゲートがロックされていれば、このハンドルは下がらないのだ。いよいよ最悪かもしれない。俺は腰のホルスターを探った。ホルスターにはしっかりと銃が収まっていたが、MK.22麻酔銃だった。この場合頼もしい味方とは言い難い。片手ではやりにくかったが、なんとか遊底を引いて、慎重にホルスターに戻した。もしこの銃を使うことになれば、準備する時間は今しかない。<br><br>　ゲートを開ける。重厚な引き戸で、片手で綱引きのように体重をかけると、車輪がやかましい音を立てた。少しだけ開けて、扉の向こうの様子を覗き込んだ。二つ目のゲートは閉じている。そのゲートの先が今どうなっているか、それが問題だ。衛兵が営巣内を巡視しているだけであって欲しい。<br><br>　ゲートを全て開け放つ必要はなかった。人一人通れるだけ開けると、俺は中に入り込んで、二つ目のゲートのハンドルを握った。やはりこのゲートもロックされていない。そう思った時だった。<br><br>「意外だな。てっきりもう野垂れ死んだと思ってたんだが」<br><br>　後ろから、声がした。<br><br></font><br><br>　つづく
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<link>https://ameblo.jp/kgmnlv/entry-11547608485.html</link>
<pubDate>Mon, 05 Aug 2013 00:05:53 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　２５</title>
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<![CDATA[ <font size="3">　俺は目を覚ました。サイレンが鳴っている。上半身を起こして辺りを確かめた。背中と腹が湿っていて、額をぬるりとした脂汗が滑り落ちた。ここは、どこだ。<br><br>「気がついたか」<br><br>　白く厚めの生地のカーテンが揺れている。仕切りになっているカーテンを開けると、簡素な机の上に並んだファイルとカルテがあるのが見えた。部屋は清潔感にあふれており、数基の簡易式のベッドとベンチが並んでいた。窓から風が入ってきて、潮の香りがした。ベッドに固定された左腕には包帯が巻かれて、右腕に針が通っている。ここは、医務室か。俺はマザーベースに帰ってきたのか。<br><br>「随分うなされていたようだが、大丈夫かね。噂では兵士はみんな悪夢を見ると聞いているが」<br><br>　白衣を着て眼鏡をかけた壮年の――歳は６０くらいか――男が、カーテンから顔を覗かせた。俺の表情を観察し、目の様子を診察して、首の脈を確かめて左腕の様子を見た。そしてベッドの近くに椅子を持ってきて、腰掛けた。<br><br>「私はここで医者をやっているエニス・ブラウン。アメリカ人だ。君は、日本人か」<br><br>「ええ。ホソカワです」<br><br>　握手を交わす。動悸を落ち着けようと軽く深呼吸して、俺はベッドに寝直した。ベッドはビニール張りの上にシーツが被せられただけで硬かったが、今の俺にはとても心地よかった。<br><br>「これは一人の医師としての忠告だ。そう思って聞いて欲しい」<br><br>　エニスはひとつ咳払いをして、柔和だった表情を険しく整えた。<br><br>「君の腕のことだが、幸い、動脈は傷ついていなかった。だが消毒が不十分だった。それに結構な時間、血の流れを止めていただろう？　そのおかげで君の腕は今、感染症を起こしている。君の肘から先は腐る一歩寸前の状態だった。念のため聞いておくが、破傷風などの予防接種はしていたかね？」<br><br>「ここに配属された時に一通りやりました」<br><br>　そう言われれば、なんだか体が熱っぽくて、頭がぼうっとする。<br><br>「それならいい。抗生物質をたんまりと使ったから、これ以上症状がひどくなることはないだろう。少し副作用があるかも知れないが、命の心配はない。しかし命が助かれば、他はどうなってもいい、君はそう思うか？」<br><br>　エニスの言葉は様々な意味を含んでいるように思えた。俺は先ほど見た悪夢のことを少し思い出していた。そして考えをめぐらせてから、俺は答えた。<br><br>「いいえ」<br><br>「その通りだな。君は戦場では生き残ることに無我夢中で、思わず自分の体を危険に晒してしまったかもしれない。だが生きて帰っても、体に障害を残すのは私としては容認できない。君は右利きか？　考えてみたまえ。もし、君が左腕をなくしていたら、家族や友人と楽しい食事をするとき、えーと、ああ……」<br><br>　エニスは思い出すように、左手で何かを持ち、右手で食べ物を口に運ぶジェスチャーをした。それから思い出したように顔をはっとさせて、俺に向き直る。<br><br>「茶碗を持てなくなる」<br><br>　俺は吹き出しそうだった。例えは生活に肉薄した切実なものだったが、わざわざ茶碗という単語を思い出すために、あれこれと一生懸命考えている様子がなんだかおかしかった。俺は、このエニスという医者はいい医者なのだと思った。俺の体のことを自分のことのように考えてくれるからだ。<br><br>「君は運が良かった。君には十分な処置ができた。もうすぐすると、君のような負傷者が次々と運ばれてくるだろう。いずれここは、恐慌を起こしたウォール街のように人びとがごった返すことになる。さあ、ベッドを空けてもらおう。あとは自室で休むといい。薬はそこだ。痛むようだったら使うといい」<br><br>　エニスは俺の左腕の拘束を解いて、右腕の点滴針を抜き、俺に三角巾を装着した。俺は少しおぼつかない体を慎重に立ち上げて、靴を履いた。ベッドの脇にあった小さな机から、薬がはいった小袋を拾い上げる。<br><br>「ありがとうございました」<br><br>「それと、君の左腕だが」<br><br>　エニスは何か考え事をしたあと、俺に告げた。<br><br>「傷口に詰め物がしてある。君の筋肉の損傷は激しかった。見た目がもとどおりに回復するためにはかなり早く見積もっても三週間以上はかかる。それからリハビリテーションだから、戦場に復帰するにはそれ以上かかる」<br><br>　それを聞いて俺は焦った。考えてみれば当たり前だが、それでは三週間以上の間、かがみを探しに行くことができないではないか。<br><br>「もっと早くは治らないんですか」<br><br>　俺はエニスに詰め寄った。医者ならばできるはず、そう祈って。エニスは後ずさりもせず、表情も変えずに俺の目を見つめて冷静に言った。<br><br>「不可能だよ。仮に筋肉を移植して全部替えても、同じかそれ以上はかかる。治癒力に任せる他ないな」<br><br>　俺は脱力を覚えた。生きて帰ってきても、これでは意味がないように思えた。<br><br>「くれぐれも左腕は動かさんことだ。無理をすると、二度と元のようには戻らんぞ」<br><br>　エニスは俺に強く念をおした。俺はなかば放心したように、その声を背中に受けて、力なく医務室を後にした。<br><br></font><br><br><font size="2">つづく</font>
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<link>https://ameblo.jp/kgmnlv/entry-11474504256.html</link>
<pubDate>Wed, 20 Feb 2013 10:27:29 +0900</pubDate>
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<title>中米滞在記　24　</title>
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<![CDATA[ <font size="3">　俺は廃屋の中の椅子に腰掛けていた。埃が陽の光を反射して煌めいて漂っていた。あたりからは何も聞こえない。壊れた窓からは土の壁が見えた。俺はこの場所を知っている気がした。窓に近づけば土の壁の上に茂った木々が覗けるのが何故かわかっていた。そして、理由はわからないが、俺は窓には近づかなかった。近づけば、とても嫌なことがある気がした。俺は踵を返して廃屋の入口へと歩いた。入口へ近づくと黒々とした煙が一面を覆っているのがわかった。黒煙の中に熱気と音が渦巻いて、視界を塞いでいる。<br><br>　そうだ。ここは、戦場だ。<br><br>　それに気がつくと、世界に音が蘇った。サイレン、鳴り止まぬ銃声。突如、遠くの崖の上に爆発が起こる。衝撃と爆音に驚いて、俺はその場に伏せた。背中と腹に嫌な汗が吹き出した。心臓が激しく拍動し、肩が震えだした。恐る恐る顔を上げ、ここにいてはならぬと体が動き出す。後ろに恐ろしいものがいる気がして、廃屋を這いずり出て、逃げ場を探した。<br><br>　だが、そんなところはどこにもなかった。前にはただ黒煙があるだけで、時折乱暴に、俺の近くへ紅蓮の舌を伸ばした。この先には進めない。しかし背後には、確かに俺を狙う銃口があるのがわかった。そこから放たれた弾丸が、いつ俺の足を、背を、頭を撃ち抜くか、怖くて仕方がなかった。俺は途方に暮れて、恐怖に体を丸めることしかできなかった。震えて、歯を鳴らしながら固く目を閉じ、ただ恐怖が過ぎ去るのを祈った。<br><br>「立て」<br><br>　俺の肩に誰かが手をかけた。俺は驚いて、わけのわからない声を上げながら懸命にそれを振りほどこうとした。しかし、そこには誰もいなかった。気がつけば俺のそばには、狙撃銃が落ちていた。<br><br>「それでやつを倒せ」<br><br>　誰かが俺の耳元で囁いた気がした。<br><br>「無理だ！　俺にはできない！」<br><br>「やらなければ殺される」<br><br>　俺は、銃を手にとった。視野が狭窄する。銃は重みを失ったように軽く、自由自在に使いこなせる感覚があった。<br><br>「死にたくなければ、やるんだ」<br><br>　声と爆音に急かされ、俺は廃屋に戻った。廃屋の中は砕けたコンクリートの破片、ガラスの破片が散らばり、赤黒い血の跡が広がって様変わりしていた。錆び付いて壊れた窓枠が、俺を呼んでいるように思えた。<br><br>「どうしても、やるのか」<br><br>　声の主はなにも答えなかった。その代わりに背後に熱気を感じた。振り向くと、入口まで炎が燃え広がって近づいていた。直にこの廃屋は焼け落ちる、そう思った。逃げるならば、この窓しかない。しかし俺は一目散には逃げ出さず、不思議と窓に近づいて、狙撃銃を据え付けた。窓からは建物の上に、男が立っているのが見えた。その男が俺に殺意と銃口を向けている。そして俺に問いかけた。<br><br>「俺を殺すのか」<br><br>「あんたが俺を殺そうとするからだ」<br><br>「俺がお前を殺すのは、お前が俺を殺したからだ」<br><br>「うるさい！」<br><br>　俺は弾丸を放った。弾丸は男の腹部をえぐった。男の絶叫が、戦場の騒音をかき消すかの如く轟いた。飛沫をあげた鮮血と、絶叫が赤黒いとぐろを巻いて、じわり、じわりと、空へ滲んで広がっていく。<br><br>「いいぞ」<br><br>　また誰かが耳元で囁く。<br><br>「そのまま殺してしまえ」<br><br>　排莢して次の弾丸を装填する。男は苦しみながら、こちらへ機銃を撃ってきた。敵の弾丸が廃屋に穴を開ける。俺はこの状況に覚えがあることに気がつく。そうだ、この数秒後、俺の弾はあの男の頭を貫いて男を殺すのだ。そうすることで、俺はこの危機を切り抜けた。これはその再現なのか。<br><br>「お前は俺の苦しみを知らない」<br><br>　男が苦しみながら俺に語りかける。<br><br>「あんただって、俺のなにも知らない！」<br><br>　ならば、殺してもいいのか？　不意に、俺の心にそういう思いが芽生えた。<br><br>「お前の苦しみと俺の命は釣り合わない」<br><br>「うるさい！」<br><br>「やつの戯言を聞くな！」<br><br>　ふと、隣で声がした。ホッグだった。先からの声の主は彼だったのだ。俺は今にも泣き出しそうだった。このわけのわからない状況で、唯一、仲間ができたと思った。この重圧から解き放たれたのだと思った。俺は、銃から手を離そうとした。しかし、ホッグは俺の手を強く掴んでこう言った。<br><br>「あいつは俺を殺した。だから今度は、お前があいつを殺すんだ」<br><br>　俺は冷水を浴びせられた気持ちだった。俺は、殺さなくてはならないのか。彼の手に目をやると、血にまみれていた。その血が俺の腕を伝ってのぼり、ゆっくりと俺の服まで広がり始める。俺は、恐怖した。<br><br>「お前に俺の苦しみがわかるか。死の苦しみ、残した家族への心残り、やりのこしたこと、無念……」<br><br>「お前に俺の苦しみがわかるか。死の苦しみ、残した家族への心残り、やりのこしたこと、無念……」<br><br>　ホッグと男が俺に、同じことをそれぞれつぶやく。<br><br>「そんなの、わかるわけないだろ！」<br><br>「お前がそれを晴らすんだ。さあ、早く！」<br><br>　ホッグが俺の頭を掴んで照準を覗かせた。それはとてもこの世のものとは思えない力強さで、抗いようがなかった。照準には、正確に男の頭が捉えられている。血が滴って、ぬるりと俺の耳を伝った。<br><br>「あとは引き金を引くだけだ。さあ！」<br><br>　しかし、引き金は引きたくなかった。殺しはしたくなかった。こうしてる間にも、敵の機銃から銃弾が放たれる。そのいくつかがホッグに命中したが、彼はびくともしない。男の方を見ると、空に広がる禍々しい赤黒い渦の中に、見知らぬ子供の顔と、女の顔が浮かんでいた。誰かは知らないが、それは男の家族なのだと悟った。その家族が、泣き腫らして、侮蔑しきって、恨みのこもった眼差しで、俺を見つめている。目を背けずにはいられなかった。<br><br>「そんなの聞かされて、出来るわけないだろ！」<br><br>「やるんだ！」<br><br>　ホッグは怒って声を張り上げた。<br><br>「嫌だ！」<br><br>「お前が殺されてくれれば、すべて丸く収まるとは思わないか」と、男の声がはっきりと聞こえた。<br><br>　男の言葉は今の俺にはとても甘美なものに思えた。俺が死ねば、この悪夢は終わるのか？　俺の思考が男の言葉に絡め取られるようにして、収束していく。<br><br>「惑わされるな！　やれ！」<br><br>　ホッグが怒鳴りつけた。だが俺にはもう決心がついていた。照準に男を捉え直す。この数秒後、男は射撃の間隔を緩め始める、そう俺が思ったように男は射撃の間隔を緩めた。そして照準に俺を捉えるが、銃身が摩耗していたため、弾は外れるのだ。そう、ちょうど、外れて背後にあるあの鏡に当たる。<br><br>　そう思うと、俺はホッグの手を振りほどいて鏡へ駆け寄った。<br><br>「やめろ！」ホッグが叫ぶ。<br><br>　直後、胸に衝撃があった。胸から鮮血がほとばしり、鏡が血に染まった。撃たれたのだとわかった。俺は力をなくし、膝から崩れて顔が床に叩きつけられる。<br><br>　これでいい。これでいいんだ……。<br><br>　俺がつくる血だまりに、顔が濡れていくのがわかった。俺はこのまま、死ぬのだ。血に溺れながら、そう思って目を閉じた。ぼうっと、意識が薄れていくのを感じる。そうだ、このまま……。<br><br>　体が持ち上がるような感覚を覚えた。死ぬというのはこういう感じなのか。そんなことを思う。<br><br>　しかし、事切れるのがあまりに遅い。気がつけば、周りからは何も音がしない。匂いもなければ感触もない。俺の意識はなにもない空間を漂っているようだった。俺は、もう死んだのか。俺はどうなったんだ。こういう意識があるのは死んでいないからではないのか。俺はどうしても気になって、目を開けた。<br><br>目を開けて飛び込んできたのは、血まみれの腐敗して崩れた男の顔だった。<br><br>「お前は俺の仇を取るんじゃなかったのか！」<br></font><br><br><br><font size="2">つづく</font>
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<link>https://ameblo.jp/kgmnlv/entry-11474076297.html</link>
<pubDate>Tue, 19 Feb 2013 17:55:55 +0900</pubDate>
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