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<title>黒歴史の廃棄処理場</title>
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<description>かつて、一人の男が作り続けていた黒歴史の墓場。一部１５禁程度の描写があるので、(整理はしたが)閲覧注意。そうでなくても、公開しているのは黒歴史。帰るなら左上。それでも、と言う方はごゆっくりどうぞ。</description>
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<title>庇護と忌避</title>
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<![CDATA[ <p>エンドブレイカー！TRPGの創作です。</p><p>身内宅でセッションする毎にフィーリングをもらって、こっちで自キャラの設定を深めたくなる。</p><p>いつも通り、並行してるヤツの方は筆が進まない。</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>中世の面影を感じる街並み。日差しが歩道のレンガを照りつける、昼下がり。<br>少しだけ人々の賑わいから離れた郊外を、短く切り込んだ髪の男が歩いていた。<br>この都市の気候は特別寒冷であるわけでもなく、季節も冬ではないのだが、男の服装は厚着と呼べるものだ。<br>頑丈そうな生地で作られた、体型を隠すようなローブと、ケープのように身に着けた頭巾。<br>腰部分を紐で止め、そこに安物そうなロザリオが掛けられている。<br>彼が身に着けているは、修道士と呼ばれる者の服装だった。</p><p><br>男の名はケトルス・ボイル。身形に違わず、彼は信仰と禁欲に生きる修道士だった。<br>しかし彼は普通の修道士と違い、修道院に入る生活を送ってはいなかった。<br>性質としては、修道士よりも聖職者の方が近いかもしれない。<br>ケトルスは、誓願を守りながら世界各地を旅し、修道士としての修行の傍ら、迷える人々に教えを説いていた。<br>また、理不尽な終焉を迎える者へ救いの手を差し伸べることも、旅の中での大きな目的の一つだ。</p><p><br>ケトルスの両親は、百姓だった。<br>彼はどこにでもいる少年で、才能、容貌、或いは出自等、特に恵まれることもない少年だった。<br>両親からの愛情には恵まれていた少年は、週末にはいつも親と共に教会へ足を運んでいた。<br>そしてある日、親に倣って祈りを捧げていたケトルスは、神の声を聞く。<br>ケトルスは、人々の理不尽な終焉をその瞳に見る事が出来る力を授かり、神の声に従い、人々を救うための旅に出ることを決意する。終焉を観測する能力を持つ人物は、普通に生活する人々には信じられていないかったが、確かに存在していた。そしてケトルスも、天啓を受けたその日から、その一人だった。<br>熱心な宗教家であった彼の両親は、寂しさの反面、彼の決意を大いに喜んだ。神に誓願し、ケトルスは修道士として暫くは修道院に入るものの、神の教えに従い、院長と掛け合い修道院を出ることになる。修道士は俗世と離れ修行的生活を行うものだが、ケトルスの場合は救いの旅に出ることが修行であっただけの事だ。<br>世界各地の教会や修道院に宿を取り、俗世に触れながらも禁欲を守り、ケトルスは今も旅をしている。少年の頃より変わった事といえば、救いには肉体と精神の両方を要し、そのために拳法を嗜んでいることぐらいだ。<br>今も、神を敬う心と人々を救いたいという正義感は昔から変わらない。</p><p><br>辺りの風景は、石レンガの歩道こそ変わらないものの、店舗よりも住宅が多くなってきた。<br>どこか不自然な違和感を覚えたケトルスが辺りを見回すと、路地裏で何やら争う二人の男の姿があった。片方は小型の刃物を振り回し、もう片方が杖を使って応戦している。<br>異常だったのは、男たちの顔には同じ白い仮面がつけられていたことだ。<br>切迫して見えた争いも、見ていると一方的で、気が付けば片方の男は血を流して動かなくなっている。<br>しかし、立っている男は刃物を用いていなかった。地面に伏した男に纏わりつくように、どこからか音もなく悪魔が現れる。傍から見れば、悪魔が遺体を貪っているような光景だ。<br>一方で、そこに立っている男の顔には、既に仮面はつけられていなかったが、男の白髪と白い肌は、白い仮面を髣髴とさせた。<br>ケトルスは物怖じする事もなく路地裏へと入っていく。<br>互いの距離が縮まる前に、男の方が声を掛けてきた。</p><p><br>「あ？・・・フン、聖人サマか。人殺しは見過ごせない、ってか？」<br>「それもあります。」<br>「あんたの住む世界とは関係の無いことだ。割り切って、さっさと帰れ。」</p><p><br>怯むことなく、ケトルスは言い放つ。</p><p><br>「先ずは私の話を聞きなさい。そしてその後、質問に答えなさい。」<br>「オイ、随分と一方的だな。」<br>「貴方は、悪魔と手を結んでいますね。」</p><p><br>男の傍らで遺体を貪る悪魔は、白髪の男に危害を加えようとする様子は無い。<br>一方で、ケトルスの方にも見向きこそすれど、相手にしていないようだった。</p><p><br>「そんなに珍しいものかァ？」<br>「いいえ、確かに貴方のような方も居ます。ですが、貴方はその悪魔に飽き足らず、別の物も抱えています。違いますか？」<br>「あんたも、観える人間ってワケか。全く、面倒くせェ。」<br>「その物を、その力を見て、黙って見過ごす訳にはいきません。」<br>「人殺しは良いのかよ、聖人サマ？」<br>「悪魔を討つ上で、やむを得ないこともあります。その時は、神は赦してくれます。」<br>「ハッ、面白い冗談だ。」<br>「それに貴方は・・・」</p><p><br>ケトルスは白髪の男の姿を再確認する。<br>ボタンの沢山付いた、カソックと呼ばれる黒いコート。首から提げられた銀のロザリオ。ケープのように首に巻いた大きな頭巾は、カソックと合わせても違和感のない色合いだ。手にはシンプルな形状の杖を持っているのみだ。</p><p><br>「貴方の姿は、信徒の姿です。先の争いでも、刃物を用いていない。・・・貴方は神を信じる者ですか？」<br>「さぁな。」<br>「信仰の深さは、行いのみで決められるものではありません。恥ずる必要はありませんよ。」<br>「ガタガタうるせぇな。テメェの目的は何だ？」</p><p><br>ケトルスは少し考えた後、しっかりとした声で言った。</p><p><br>「貴方に信仰があるのであれば、貴方を悪魔から救い出すことです。」<br>「折角だ、もう一つの“もし”も聞いておいてやる。」<br>「そうでなければ、信者を騙る悪魔を討つ事です。敬虔な信徒になりすます非道な悪魔を、許す訳には行きません。」</p><p><br>一足で男のもとへ踏み込むと、ケトルスは大きく地を踏みつけ“気”を放ち攻撃する。<br>男は後方に軽く飛ぶことで回避するが、追い討ちを掛けるように、ケトルスは真っ直ぐに拳を突き出す。<br>いかにもぶっきらぼうに男がケトルスの拳を払う。<br>拳法の型から繰り出される拳を受け流す白髪の男は、構えからはそうは見えないが、武術の心得があるのかもしれない。<br>杖術だろうか、とケトルスは男の攻撃を観察してみるも、その様子も見られなかった。<br>ケトルスは体勢を思い切り低くし、全身をくまなく使った動きで、相手の足元を薙ぐ。<br>その動作の目的は撹乱であり、順調に回避されたところに右の手の平を突き出し、気を放出する。<br>これには回避動作が追いつかなかったのか、男は攻撃を受け止め、勢いのまま後ろに飛び退くがダメージがあったようには見えない。<br>ケトルスは両手を突き出し、気を練った光弾を打ち出した。<br>この攻撃に対し、白髪の男は仕込み杖を抜き放ち、光弾を振り払った。</p><p>歩行補助の用品と思われていた杖には、反りのない刃が仕込まれていた。</p><br><p>「・・・やむを得ないようですね。」</p><br><p>ケトルスは力を込めて踏み出すが、男の方は背中を向けて走り出した。</p><br><p>「面倒なヤツだなァ、全くよぉ！諦めてくれればいいものを、仕方ないからこっちが折れるぞ！」<br>「待ちなさい！」<br>「テメェを黙らせた所で、何も得しないからなァ。ずらかるぞ、デモン！」</p><br><p>男は一目散に駆け出すが、急に踵を返したかと思うとケトルスの脇をすり抜け、先の男の遺体を抱えて、またしても走り出した。<br>成人男性を抱えながら全力疾走しているのだから、すぐに速度を緩めるであろうと思っていたが、そうも行かないようだった。<br>見た目の割りに持久力があるのだなと感心しながらケトルスは男を追う。<br>追っているうちに、ケトルスは男の姿を見失ってしまった。<br>遺体を抱えながらの逃走であるため、遠くに逃げたと考えるよりは隠れたと思われる。<br>ケトルスは暫く辺りを探してみたが、しかし男はおろか彼の抱えていた遺体すら見つからなかった。<br>やがて、路地裏の隅に咲く、一輪の白い薔薇の花を見つける。<br>花弁は小さく、色も悪く、それは決して美しいと言えるような薔薇ではなかったが、そもそもこんな所に咲いていることが珍しかった。<br>屈み込んで薔薇の花を見つめ、ケトルスは深呼吸する。</p><p><br>「私としたことが、取り乱してしまいました。・・・しかし珍しいものだ。強い花なのだな、お前は。」</p><p><br>ケトルスは立ち上がると、路地裏の出口の方へと歩を進めた。</p><p><br>「今回は、この薔薇に免じて見逃しましょう。説教は、次に会った時に取っておく事にします。」</p><p><br>ケトルスの感情の中に、悪魔の手先と思われる男に対する憎悪は無かった。<br>神に背くものに教えを説き、心を改めさせる。<br>ケトルスの心は、使命感に燃えていた。</p><p><br>――次に会うときは、必ず。</p><br><p><br>***</p><br><p><br>「面倒なヤツだなァ、全くよぉ！諦めてくれればいいものを、仕方ないからこっちが折れるぞ！」<br>「待ちなさい！」<br>「テメェを黙らせた所で、何も得しないからなァ。ずらかるぞ、デモン！」</p><p><br>これ以上消耗させられるのは御免だ、と背中を向けて駆け出す。<br>だがすぐに、先ほど“処理”した男のことが思い出された。</p><p><br>「処分する身にもなれってェの。」</p><p><br>デモンの力により向上した身体能力で急制動をかけ、遺体を抱え、一目散に逃げ出す。<br>追手を撒くための道順を考えつつ、人気の無い方向を選びながら、隠れる場所を探した。<br>曲がり角を曲がると同時に、日当たりの悪い物影に飛び込み、息を潜める。<br>修道士は、その動きにくそうな服装から考えられぬ速度で、目の前を走り抜けて行った。<br>その背中を見送ってから、遺体を地面に寝かせる。<br>祈るような格好で1分程念じ続けると、遺体は煙のように消え、石レンガの隙間から一輪の白い薔薇が生えた。</p><p><br>「さて、行くとしますか。一応、今回のお仕事はこれで終わりだな。」</p><p><br>影から影へと移るように、男は何処かへと消えていった。<br>男は修道士に対して、さほど強い憎悪は抱いていなかった。<br>修道士のしつこさに対する疲労感と、二度と会いたくないと言う倦怠感を強く感じていた。</p><p><br>次に会ったら――なんて、考えたくもなかった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12157740677.html</link>
<pubDate>Sat, 07 May 2016 02:22:15 +0900</pubDate>
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<title>日常の裏側で</title>
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<![CDATA[ <p>エンドブレイカー！TRPGのリプレイ小説です。</p><p>リアル卓の補完創作なので、ゲームマスターによる表現や描写、プレイヤーのロールプレイを含めて、ある程度は実際の会話に忠実に書いております。記録を取っていたわけではないので、頼りにしたのはうろ覚えの記憶のみですが。</p><p>今回はプレイヤーとして参加したため、私のキャラの言動が（意識していないのに）強調されています。えこひいきってやつですね。</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>酒の匂いと煙草の煙の残滓が鼻を擽る、薄暗い酒場。<br>辺りは既に夜の帳が降りているにも関わらず、酒場にはさほど人は入っていなかった。<br>また今夜は人が少ないだけでなく、客も異質だった。<br>カウンターに座る、二人の客。<br>それぞれ端に位置して座っている二人は、共に未成年だった。<br>現在、都市国家アマツカグラでは未成年の飲酒は認められていない。</p><p><br>かたや、こんな時間に出歩いているのは危険なのではないかと言うような少女だ。<br>そんな少女が夜の酒場でショートケーキをつつく様は、異様と表現するより他ないであろう。<br>風貌からすればティーンエイジャーにも満たない彼女は、おおよそ十と四年生きている。<br>クロと名乗るその少女は、可愛らしい風貌に似合わぬ斧槍を背負っていた。<br>エンドブレイカーである彼女は、重度の方向音痴を抱えながらも各地を彷徨う内にこの地に着いたらしい。<br>件の闘技大会から暫く経ち、現在に至る。<br>怪物退治の特別報酬こそ貰ったものの、相変わらずの貧乏道中だった。</p><p><br>一方で、カウンターの反対側で、酒場の主人に蜂蜜ミルクを注文しながら魔道書に目を通す少年。<br>最近では、オルギア・ルクスーシャと言う偽名を名乗っていた彼もまた、先日の闘技大会に出場してはいたものの、少女とは知り合っていない。<br>あの時とは違い、カソックと呼ばれるフードの無い黒いコートを纏い、首にロザリオを提げているこの少年もまたエンドブレイカーだった。<br>デモンと契りを交わし、その力を行使するに飽き足らず、彼はマスカレイドの源であるソーンをも扱うデモニスタの一種だ。<br>一部では、ソーンイーターと呼ばれる能力。当然、デモニスタのように人々に忌み嫌われるだけでなく、時としてエンドブレイカーにすら疎まれる。<br>生まれた時からデモンと交信していた彼は、また生まれた時から孤独であった。<br>そんな彼だが、彼もまたクロと同じ様に旅をしている。<br>膝を突き、地に伏したときに現れた赤い少女。邪なる者と戦い続けることを誓い、「待っている」と言う言葉のために歩み続けてきた。<br>世界に蔓延る理不尽に立ち向う、と言う目的においてはクロと同じだ。<br>・・・尤も、彼の場合は特定の住所を持つことの出来ない浮浪者なのだが。</p><p><br>徐に酒場の扉が開く。<br>あまり混雑していない所為か扉の音は二人の耳にも届き、二人は扉の方へ振り返った。<br>オルギアは誰に聞かせるでもなく一人で「ばぁん」と呟く。<br>男を見た二人には、その目の奥に彼の終焉が見えていた。<br>満月の夜の竹林、何者かに一瞬で首を切り落とされる男の姿。<br>あまりに短く、あまりに不鮮明なエンディングはそれ以上は何も教えてくれなかった。<br>しかし、二人にはすぐに思い当たる物があった。</p><p><br>決して豊かとは言えない彼らは、彼らなりの金策が必要だった。<br>巷では、首切り北斎と呼ばれる何者かが噂となっている。<br>ここ数日の間に、竹林で遺体が次々に発見され、そのどれもが頭部と胴体が綺麗に切断されており、紆余曲折を経て首切り北斎と言う噂を形作っているらしい。<br>しかし、被害は噂では済まないほど拡大しており、アマツカグラの城塞騎士も手をこまねいていた。<br>彼らの手にも負えないのか、姿も分からぬ北斎には多額の懸賞金が懸けられている。<br>腕に覚えのある二人としては、願ってもない収入だ。そしてその手掛かりが、正すべき理不尽と共に現れたのだ。<br>この機を逃す理由がなかった。<br>・・・因みに、その噂を聞いたときオルギアは「北斎って何だよ、抜刀斎じゃないのかよ。」と突っ込みを入れたが、物語に関係の無い話である。</p><p><br>扉を開けた男は、二人を気に留める様子もなくカウンターの真ん中へと座った。<br>水を頼もうとしている男の横合いから、立ち上がったオルギアが店主にウィスキーを頼む。</p><p><br>「しかし、あんた。」<br>「俺じゃない。こっちの男に、だ。それで・・・」</p><p><br>自然な動作で男の隣に座ろうとしたオルギアに、割って入るようにクロは男の隣に入り込む。<br>上から見下す形でクロを眺めるオルギア。<br>それを必死に上から睨み返そうとするクロだったが、オルギアは付き合わずにクロの隣に座った。<br>そんな二人を意にも介さない男の様子は、何か切羽詰った事情でもあるように思われる。<br>クロはショートケーキを、オルギアはグラーキ黙示録と呼ばれる魔道書を片手に、男と店主の会話に聞き耳を立てる。<br>どうやら彼は、雀の涙の報酬で捜索依頼を出しているようだ。行方知れずの兄を探しているらしい。<br>手短に話を済ませると、男はウィスキーも飲まずに脚早に立ち去ろうとする。<br>オルギアは勢いよく立ち上がると、席を立った男の胸倉を掴んで、顔を寄せて男に言いつけた。</p><p><br>「あんた、近々死ぬぜ。俺が助けてやろうか？」<br>「な、何を言ってるんだ？」<br>「まぁ、あんたがあの店主に依頼したのは正解だったなァ。聞いてた誰かがやってくれるかもしれないからな。・・・俺はやらないけど。」<br>「あ、あんた、もしかして・・・」<br>「知るか、興味ないし。じゃあな。」</p><p><br>一方的に会話を押し付け、返事を待たずにオルギアは酒場を後にする。<br>暫くまごついた後、我に返ったように男も酒場を後にした。<br>一人取り残されたクロは、先の男について店主に訪ねる。</p><p><br>「あいつ行っちゃったから、私が受けるわ。それでその人、どんな人？」<br>「大して詳しく聞いてないから、何とも言えないな。・・・だが、ナイフの扱いが恐ろしく上手いらしいな。今出て行ったあいつも、そう遠くへは行ってないだろう。追ってみたら、追いつくんじゃないか？だが嬢ちゃん、大して報酬がある訳でもないぞ？雀の涙程度だな。」<br>「雀の涙でもいいわ。ショートケーキの代金すら払えないほどお金に困ってるから。」<br>「そ、そうか。」</p><p><br>足が付かない椅子から飛び降り、運動神経を生かして着地した所でクロは駆け出す。</p><br><p><br>***</p><br><p><br>やがて、クロは首切り北斎が噂となっている竹林へ辿り着いていた。<br>絶望的な方向音痴が彼女を竹林へ導いたのだが、彼女自身は敵の本拠地へやって来れたと満足げにしていたところである。<br>得意げになっているクロに、何者かが気配を消して近づく。<br>クロの背後から迫る何者かは、カソックをクロの頭から被せ、首の辺りを掴み地面に引きずり倒した。</p><p><br>「おい、こんな所で何してんだ？」<br>「北斎の本拠地へ来た。」<br>「ふーん。あぁ、そうだ。あいつの兄さんだか何だかの情報って聞き出せたか？」<br>「んー・・・ナイフの扱いが得意らしい。」</p><p><br>オルギアはもがいているクロからコートを剥ぎ取り、袖を通す。<br>そうこうして騒いでいる内に、二人の耳には雑草を踏みしめる音が聞こえてきた。<br>徐に、オルギアが口を開く。</p><p><br>「ナイフで首って斬れるのかなァ？」</p><p><br>二人の背後からやって来た人物が口を開いた。<br>オルギアの牽制は、特に効力はなかったらしい。</p><p><br>「貴方がた、こんな時間にここで何を？」</p><p><br>先ほど、酒場で店主に依頼をしていた男だ。<br>名をハンゾウと言うが、最後まで二人は名前を訊ねなかったため、彼がこの名で呼ばれることはなかった。</p><p><br>「何だテメェは、こんなところにノコノコと現れやがって。」<br>「ここは危険です、貴方がたも噂は聞いた事あるでしょう？」<br>「だから言っただろ、あんた死ぬぞってな。」</p><p><br>雲の隙間から、竹林に月の光が差し込む。<br>今夜は、綺麗な満月だった。<br>月明かりに照らされ、辺りの様子がより鮮明に窺える。<br>気が付くと、彼らの方に何かが向かって来ていた。<br>あっと言う間に彼らの目の前に立ち塞がったそれは、3mを超えるほどの身長を持つ巨人のような生物だった。<br>手にはその巨大な身の丈と同じほどの野太刀を握っており、身体にはマスカレイドの白い仮面も確認できる。<br>この怪物こそ、恐らくは件の首切り北斎であろう。</p><p><br>「ったく・・・オラ、下がってろ。」<br>「あんたこそ下がった方が良いんじゃないの、おっさん。」<br>「あ？背中に重り背負ってるようなヤツが戦えるのか？」<br>「武器も持ってないやつに言われたくない。」</p><p><br>ハンゾウが騒ぎの外へ離れると同時に、戦闘行為が開始される。<br>踏み込むのが最も速かったのは北斎だった。<br>居合いの構えから、オルギアの首元目掛けて抜刀術の要領で攻撃する。<br>刀の長さ、そこから予想出来る重量を物ともせず、北斎は凄まじい速さで刀を薙ぐ。<br>オルギアの胸元に傷が刻まれ、小さくはない傷口からは鮮血が滴っていた。<br>胸を押さえながらも、カウンター気味に血塗れのオルギアの手から棘の弾が撃ち出される。<br>北斎の肩の辺りを捉えた棘は、呪いのような紋章を展開するが、身体へのダメージはあまり無いようだ。<br>背負った斧槍の重さに出遅れたクロだが、詠唱を終えたのか黒い猫型の星霊を召喚する。</p><p><br>「どっかで見たなァ、そのネコ。さーて、どこだったかな・・・」</p><p><br>アマツカグラに存在する役職である神楽巫女たちが使役するのが、かの黒猫のような星霊、バルカンだった。<br>もっとも、クロは神楽巫女ではない。神楽巫女は、ランスブルグで言う星霊術士にあたるらしい。<br>バルカンの放った火球が、北斎の巨大な体を捉える。<br>人のそれよりも頑丈そうな皮膚は、多少は焦げたものの致命傷には至らないようだ。<br>北斎は雄たけびをあげる。<br>すると、どこからともなく二人組の屍武者が現れた。どうみても、仲良くしましょうと言う雰囲気では無い。<br>屍武者たちが動き出す前に、オルギアが2体を牽制する。<br>オルギアが血塗れの手で胸元の十字架を握り締めると、十字の衝撃波が2体の屍武者を巻き込むように放たれた。<br>クロは大型の敵にしか興味がないのか、変わらず北斎へ攻撃を続ける。<br>黒猫の炎は、北斎を更に攻め立てる。ジリジリと北斎もダメージを蓄積させているようだった。<br>クロの詠唱の隙を狙って屍武者たちが襲い掛かるも、クロのあまりの小柄さゆえか屍武者たちは攻撃を外した。<br>更には、屍武者の後から追撃を加えようとした北斎の一太刀も、クロの身体の小ささの所為で空を斬る結果となった。<br>いくつもの斬撃を避けたクロだったが、次の瞬間にはオルギアに突き飛ばされる。</p><p><br>「下がってろ、邪魔だ！」<br>「ぐぬぬ、何を・・・！」<br>「ほーら、相手してやるよ。掛かって来いオラァ！」</p><p><br>オルギアはクロの一歩前に出て、北斎たちを挑発するように声を浴びせかける。<br>無理に前に出ようとせず、クロはその場で攻撃態勢に入った。<br>クロに呼び出された黒猫のバルカンが、きりもみ回転しながら北斎へと体当たりする。<br>バルカンの攻撃を受けた北斎は、身体を仰け反らせる。<br>突進の軌道の傍にいたオルギアも身を翻す。</p><p><br>「チッ、最近は炎運がねぇなァ、オイ・・・」</p><p><br>巨大な身体をぐらりとよろめかせた北斎だったが、しかしまだ倒れなかった。<br>だが、あろうことか北斎が次にとった行動は、屍武者への攻撃だった。<br>2体の屍武者の首を切り落とし、北斎は嬉しそうに雄叫びをあげる。</p><p><br>「クク・・・名前を知るだけで身体を乗っ取られる神性だって？面白いな、オイ。」</p><p><br>魔道書を読み耽り一人笑っていたオルギアは、不意に気が付いたように北斎に向けてソーンの棘を撃ち出す。<br>棘は、北斎の眉間に深々と突き刺さり、傷口からはおぞましい量の血液が流れ出ていた。<br>オルギアは、ダメ押しで棘を蹴りつけて、より深く突き立てる。<br>少し間を置いて、北斎の眉間に埋まった棘から、北斎の顔の裏側を抉るように根が広がった。<br>やがて、幾重にも別れて広がった根は、殻を破るように北斎の内側から突き出す。<br>北斎を苗床として絡みつくようにバラの根が全身に行き渡ると、北斎は既に動かなくなっていた。<br>呆気にとられていたハンゾウが、我に返ったように二人の下へ駆け寄る。</p><p><br>「あ、あの！有難う御座います、助かりました。」<br>「逃げろよ。あんな化け物を倒した怪物だぞ、俺は。」<br>「いえ、でも・・・」<br>「ハッ、次はテメェにも牙を剥くかもしれんぞ？」<br>「あのね、あいつ黒いノートとか持ってる人だから・・・」<br>「は、はぁ。」</p><p><br>ハンゾウは懐から、小さな革袋を取り出した。<br>オルギアとクロのそれぞれに、ハンゾウは革袋を押し付ける。</p><p><br>「私の全財産ですが、こんなものでよければ・・・」</p><p><br>クロはなけなしの報酬を懐にしまうが、オルギアはそうはしなかった。<br>僅かながら、しかししっかりと重量感を感じられる硬貨袋をハンゾウに向けて投げつける。<br>ぶっきらぼうに報酬を投げ返すと、相手の言葉も待たずにオルギアは踵を返した。</p><p><br>***</p><p><br>その後、二人には城塞騎士たちから正式に報酬が支払われた。<br>それなりの金額で、これから旅路を歩むのにも、装備を新調する分にも十分な額だ。<br>それぞれの道を歩む二人。<br>次に彼らが出会うのは何時、何の因果をもってするのだろうか。</p><p><br>***</p><p><br>とある階層都市。<br>街の明かりはとうの間に消え、真夜中の静寂だけが辺りを包んでいた。<br>住宅地、一際大きな塔型の建造物の頂点に、シラヌイは立っていた。<br>冷たい夜風が、頬を撫でる。<br>寒さゆえか、或いは別の理由か、シラヌイはくしゃみをした。</p><p><br>「誰かに捜索されている気がするな・・・」</p><p><br>しかし、そんなことはシラヌイにとっては些細な事だった。</p><p><br>「マスカレイド殺すべし、慈悲は無い。」</p><p><br>一陣の風が吹き抜けたとき、そこには既にシラヌイの姿は無かった。<br>闇夜に消え入るように、シラヌイは次の“任務”へと向かうのだった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12152996397.html</link>
<pubDate>Sat, 23 Apr 2016 01:04:57 +0900</pubDate>
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<title>悪魔に花束を</title>
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<![CDATA[ <p>リプレイ小説の方の筆が進まないので、勢いで書いた。</p><p>エンドブレイカー！の創作です。一応。</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>水神祭都アクエリオ。<br>巨大な水瓶のオブジェを中心に、水路が張り巡らされた階層都市。<br>石造りの家々、運河を流れる観光客向けのボートなど趣ある景観は、見る者の心に感動をもたらすこと受けあいだ。</p><p><br>下層の村の小さな家に、とある少年が居た。<br>母親譲りの白髪が美しい少年だったが、彼は人々のみならず両親からも忌み嫌われていた。<br>生まれつき、特異な性質を持っていたからだ。<br>少年は、デモンの姿を捉えられ、またデモンと会話をすることが出来た。<br>デモンの力の凶悪さから、こう言った者たちは概して他人の理解を得られないことが多い。<br>殊に、ソーンの脅威から解放されたとされるアクエリオでは、忌まわしきものとされたのかもしれない。<br>また生まれた時からなのか、或いは心の傷が力を与えたのか、少年は他者の理不尽な終焉を観ることが出来た。<br>所謂、エンドブレイカーと呼ばれる者たちの力である。<br>そのことすら不吉とされ、悪魔の子とすら呼ばれた少年は、やがて棄てられることとなった。</p><p><br>生きる術を探す少年に道を与えたのは、衰弱したデモンだった。<br>デモンにとってアクエリオの空気は毒素そのものであり、食物もない場所だった。<br>飢餓状態にあったデモンは、自らも生きるために少年を唆す。<br>契約を結び、自らの力を少年に貸し与え、行動を共にする。<br>とにもかくにも、デモンはアクエリオを出る必要があった。<br>しかし、衰弱しきった身体では自由に動く事もままならず、誰かの手を借りる必要があったのだ。<br>エンドブレイカーの力を用い、デモニスタとして終焉を終焉させるため、との大義名分の下、アクエリオを背に旅に出た。<br>アクエリオを後にすると、デモンは空腹でこそあったものの、すぐに調子を取り戻す。<br>体調を回復させたデモンは、空っぽの器に対して、時には生き延びるための助言を与えた。<br>また、ある時には敵を打ち砕くための力を与えた。<br>そして、人々から忌避される孤独を与えた。<br>少年は、デモンを恨むことはなかった。人々を妬むこともなかった。</p><p><br>アクエリオを出た少年は、旅を続けている。<br>安住の地に根を張ることをなく、浮浪し続けている。<br>少年は故郷を出て以来、帰郷することはなかった。<br>少年の出会ったデモンは、ソーンを喰らうと言う特異な性質を持っていた。<br>そのため、少年はデモニスタの中でも、ソーンイーターと呼ばれる異質な存在だった。<br>ソーンに侵されぬ清浄なアクエリオの空気は、デモンにとっては瘴気にも等しい物だった。<br>アクエリオに近づくだけでも苦しみ始めるデモン。ソーンをも操る力から、都市を守る衛兵に入国を拒まれる。<br>それ故に、少年が故郷に帰ることはなかった。<br>特定の場所に留まる事が出来ない彼を、多くの者は記憶に止めなかった。<br>誰かと関われば、その分だけ誰かに嫌われる。<br>誰かに優しくされれば、裏切られたときの傷が深くなる。<br>影から影へ渡るように生きた少年は、やがて光を避けるようになった。<br>人を信じるということを恐れて。</p><p><br>デモンと通ずる少年だが、ランスブルグでは比較的理解を得られているのか、有名氏族の下、仕事をすることがある。<br>浮浪者と言う身軽さ、その力の凶悪さから、離反者（多くはマスカレイド）の始末などを依頼されることが多々あった。<br>国王軍直轄の天槍騎士団や、領主に雇われる城塞騎士団では対処できない場合の“始末”が主な仕事だ。<br>ランスブルグでは珍しい“紋章”を持たぬ無名の騎士として、公の場に出ることもあった。<br>尤も、仕事の内容自体は正規軍に任せられないような代物だが。</p><p><br>そして現在、少年は花屋へと足を運んでいた。<br>店内に飾られていた白い薔薇の花を指差し、花束にしてくれるよう店員に依頼する。<br>白い薔薇のブーケを受け取ると、少年は街中の小さな花屋を後にする。<br>人気の無い路地裏へ入り、少年はデモンを喚び出すと、ぶっきらぼうに花束を差し出した。</p><p><br>「日頃の感謝ってヤツだ、黙って受け取れ。」</p><p><br>彼の振るう力は、彼自身の力ではなく、デモンとの契約によって与えられた力だ。<br>それにきっと、デモンに出会わなければ、ロクでもない人生だった。</p><p><br>「・・・俺の人生くらい、テメェにくれてやる。」</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12148256551.html</link>
<pubDate>Sat, 09 Apr 2016 00:25:49 +0900</pubDate>
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<title>神の炎と荒ぶる武神と　おまけ</title>
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<![CDATA[ <p><a href="http://ameblo.jp/klmk9e/entry-12133182699.html">こちら</a> のおまけです。</p><p>本編はリプレイですが、こちらは創作パートとなっています。</p><p>次回のリプレイの前に、（何も伏線を回収しない）補間をしておこうかと。</p><p>ロクに考えもしないで書いたものだから、文が荒いかも？</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>「おい、お主。」</p><p><br>通りすがる白いコートの男に、酒を飲みながらも巫女は声を掛けた。</p><p><br>「主じゃよ、お主。」<br>「あー、俺か？」<br>「いかにも。」<br>「・・・。」</p><p><br>話を聞かずに立ち去ろうとする男を、椅子から立ち上がった巫女は半ば強引に座らせた。</p><p><br>「良いから良いから、近う寄れ。」<br>「あんたに用は無いんだがな。」<br>「わしは用があるのじゃ。」<br>「・・・一応、未成年だから酒は飲まんぞ。」<br>「気にする事は無い、縛っているのは法律だけじゃ。」<br>「気にしろよ。」</p><p><br>酔いが回っているのか、巫女は上機嫌そうに笑う。<br>逃げられないと観念したのか、ウェイターに蜂蜜ミルクを頼むと、男は話を聞く体勢に入った。</p><p><br>「この大会が終わったら、わしは旅に出ようかと思うのじゃ。」<br>「それを俺に言ってどうする。」<br>「この国の外に出るのじゃが、如何せんこんな格好で出るわけにも行かんじゃろう？」<br>「・・・回りくどいな、用件を言え。」<br>「お主、見たところこの国の者じゃないじゃろ？それに、年も近いと見受けられる。そこで、デートをしようと言う訳じゃ。」</p><p><br>男は飲みかけのグラスを置いて、椅子から立ち上がった。</p><p><br>「じゃあな、あんたに用は無いから。」<br>「ちょ、待つんじゃ！冗談じゃ、冗談！」</p><p><br>溜息を一つ吐くと、男は着席しグラスを呷る。</p><p><br>「まぁ、その、何じゃ・・・服選びだとか、出発の準備を手伝って貰おうと思っての。」<br>「面倒だな。」<br>「知り合いに頼むわけには行かんのじゃ。わしが出て行くことがばれてしまうからの。」<br>「逃げたいのか？」<br>「そんなところじゃな。父上にも兄上にも、半ば呆れておったところじゃ。」<br>「ふむ？」<br>「わしは女だから、神主にはなれぬ。精々、巫女止まりじゃ。彼奴等より素養はある心算じゃがな。」<br>「・・・まぁ色々と素養はありそうだな。」</p><p><br>戦闘においては特に、と男は心の中で補足をする。</p><p><br>「じゃが彼奴等の頭は凝り固まっておる。もはや、ああなっては信仰の本来の意味など持たない。・・・それに、わしは父上に好かれておらんからの。」<br>「何で？」<br>「神の声など、聞こえる筈が無いそうじゃ。それでいてこの力、不気味なんじゃろうて。」</p><p><br>男は話を聞いているうちに、自らの境遇と照らし合わせていた。<br>誰にも聞こえないデモンの声。<br>人々に不気味がられるデモンの力、ソーンの力。</p><p><br>「そんなある日、神様は言ったんじゃ。その力で、人々を救う旅に出るのだ、っての。」</p><p><br>自分がブーステッドと呼ばれる所以。<br>戦いに倒れたとき、自分に啓示を与えた、赤い少女。<br>いつしか男は、違うようで似ている境遇の巫女に、同情の念を抱いていたのかもしれない。</p><p><br>「お主はしがらみが無く、自由そうじゃからの。どうじゃ、付き合ってはくれぬか？」<br>「旅に出ると言った所で、独りって言うのは思っているほど楽なものじゃないぞ。」<br>「構わん。元より、楽な道などと思っておらんからのう。・・・出発の準備、付き合ってくれるんじゃな。」</p><p><br>グラスの蜂蜜ミルクを飲み干すと、仕方ないと言った様子で男は頷いた。</p><p><br>「そうと決まれば、服でも見に行こうかの。巫女服は流石に目立ちすぎる。」</p><p><br>ほれ行くぞ、と巫女は立ち上がると男の腕を引っ張って外へ向かった。</p><br><p><br>***</p><br><br><p>お世辞にもお洒落とは程遠いジャージに、鮮やかな水色のパーカー。<br>男物とも女物ともつかぬそれは、本人の意向で動きやすい物を選んでいた。<br>長く美しい黒髪だけが浮いているが、猫型の星霊を抱えるさまは普通の若者にしか見えなかった。</p><p><br>「もう少し、女性的な選択もあっただろ。」<br>「良いんじゃ。長旅になるゆえ、動きやすい方がよい。今後買うものの基準にもなるからの。」<br>「・・・まぁ、巫女服よりマシか。」</p><p><br>巫女は、男を真似るようにパーカーのフードを深く被って見せる。</p><p><br>「それに、お主を参考にしたのじゃ。女性的な服になる筈がなかろう？」<br>「そこは自分の意思を尊重しろよ。」</p><p><br>それまでの雑談とは打って変わって、巫女は真剣な表情で話を切り出した。</p><p><br>「実は、準備を口実に、お主のことを監視しておった。」<br>「あっそ、どうでもいいけどな。」<br>「お主の力は、どうにも禍々しい物を感じてのぉ。」<br>「・・・いつだって、そう言われて来たさ。」<br>「じゃが、わしの杞憂だったの。お主はマスカレイドに近しいが、同一ではないようじゃ。」<br>「・・・。」<br>「毒を以て毒を制す、と言ったところかの。ともあれ、謝らせてくれんか。」<br>「気にするな、もう慣れてる。」<br>「そうか。」</p><p><br>あまり軽いとは言い難い空気を変えるため、巫女は必要以上に明るく言った。</p><p><br>「それでじゃなー、強いて言えばもう一着欲しい服があったのじゃ。」<br>「賞金はまだあるんだろ？」<br>「ならば、幾らで売る？」</p><p><br>何のことだ、と男は首を傾げる。</p><p><br>「お主のコートじゃ。それが欲しいの～。」</p><p><br>白地に紫のラインの入ったコート。<br>裾の端々が焦げ付いており、あまり外観が整った物でもない。</p><p><br>「こんなのが欲しいのか？」<br>「うむ。」</p><p><br>男は羽織っていたコートを脱ぐと、巫女の頭から被せた。</p><p><br>「くれてやる、別に価値のある物でもない。」<br>「よいのか？」<br>「しつこいな。」<br>「本当によいのか、感謝するぞ！」</p><p><br>嬉しそうにコートを羽織って、見せびらかすように回ってみせる巫女。<br>そんな様子を見ながら、男は苦虫を噛み潰すような表情で言った。</p><p><br>「用が済んだら、とっとと失せろ。」<br>「そうか。では、そうするかの。」</p><p><br>巫女は、軽い足取りで走り出した。<br>振り返りながら、上機嫌な明るい声で言う。</p><br><p>「また会おうぞ、我が友よ！」</p><br><p>その言葉に、男は舌打ちをする。<br>孤独に苛まれた男の光に対する不快感ゆえか、或いは孤独を忘れ光を得る事への戸惑いゆえか。<br>それとも、やっと見つけた小さな光を失う事への恐怖だろうか。</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12143869231.html</link>
<pubDate>Sun, 27 Mar 2016 22:43:13 +0900</pubDate>
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<title>そーなうひーいっと。外伝10</title>
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<![CDATA[ <p>先端が切り落とされた枝を投げ捨てながら、ラフトは訊ねる。</p><p><br>「どうだ、まだ続けるか？」</p><p><br>しかし、レンは返事をしない。<br>蜥蜴のような声で、威嚇するように鳴いている。<br>その様子を窺った所で、ラフトは改めて周囲に警戒網を張り巡らせる。</p><p><br>「覚えてるぞ、このニオイ。」</p><p><br>レンの手足からは、鎧の隙間から零れるように炎が溢れていた。<br>二人に存在を察知されている事を気付いてか、気配の主が姿を表す。</p><p><br>「これはこれは、レンじゃないですか。全く、こんな所に居たとは。」<br>「・・・おい。」<br>「いやぁ、どうも。お初にお目にかかります。」</p><p><br>如何にも研究者然とした風貌の怪物。<br>背中には蝙蝠のような翼が生え、頭には山羊の角を持っている異形。</p><p><br>「おい、一つ答えろ。」</p><p><br>ラフトの問いかけに、魔物は飄々とした様子で答える。</p><p><br>「はいはい？」<br>「あんたらも、白衣とか着るのか？」<br>「えぇ、ご覧のとおり。」</p><p><br>真っ白で裾の長いコートを見せるように両腕を広げる。</p><p><br>「そうか、興味深いな。」<br>「・・・貴方、お茶を濁している心算ですか？」<br>「師匠、どけ！そいつは私が斬る！」</p><p><br>どうぞ、と言わんばかりにラフトは一歩退く。<br>すぐさま、レンは刀を振り上げて異形に飛び掛った。<br>振り下ろされる刃を、白衣をなびかせひらりと避ける。</p><p><br>「おぉっと、怖い怖い。」</p><p><br>ちょっとした修羅場を、胡坐を掻いて眺めながら、ラフトは問いかける。</p><p><br>「一応聞いておくが、あんたは何者だ？」<br>「魔王軍実験部（非公認）です。貴方に関わる部分だと、レンの産みの親ってところでしょうかね。」<br>「用件は？」<br>「次の実験の参考資料の捕縛ですよ。」</p><p><br>そうかそうか、投げやりな返事と共にラフトは立ち上がる。</p><p><br>「そうと分かれば話は早い。・・・おい、レン。」<br>「師匠、私は師匠の下を離れる心算はないからな！」<br>「邪魔、退いて。」</p><p><br>いつになくどすの聞いた声に、レンは僅かにたじろぐ。<br>まごつくレンを無視して、ラフトは二人の間に割って入った。</p><p><br>「帰れって言ったら、帰るのか？」<br>「一度帰ったところで、大勢で襲撃するかもしれませんよ？」<br>「あぁそう、じゃあ帰れ。」</p><p><br>怪物は、不気味な表情を崩すように笑った。</p><p><br>「えぇ、でしたら帰ります。あくまで参考資料、命と天秤に掛けるまでもないですからね。」<br>「清々しいまでに小賢しい意見だが、嫌いじゃないな。」<br>「ですが・・・人間如きが、我々の軍勢に勝てると思ってらっしゃるのですか？」<br>「さぁな。試しに今から応援を要請したらどうだ？」<br>「随分と余裕ですね。如何せん、私は戦闘は専門じゃないのですが・・・例え貴方が、幾ら腕に自信があったとしても、多勢に無勢では辛いでしょう。」<br>「良いから、さっさと呼べよ。」</p><p><br>魔術師の方が、返って歪な笑みを浮かべる。</p><p><br>「久々に遊んでくれるって言うのに、あんまり焦らすなよ。」<br>「むむ・・・仕方ないですね、どうあっても大人しく引き下がってはくれませんか。」<br>「こっちの台詞だ。」<br>「では、その虚勢を壊さなくてはなりませんね。後になって自らの死を悔やんでも遅いですよ。」</p><p><br>不意に、ラフトは残念そうな声で、独り言のように言う。</p><p><br>「だが、魔王を経由しない招集で、どの位の連中が動くんだろうなぁ？あんまり楽しくなさそうだな。」<br>「非公認、とは言いましたが・・・」<br>「非公認どころか、あんたらの事を快く思ってない。潰されるのも時間の問題じゃないのか？」<br>「人間のクセに、よく知っていますね。」<br>「あんたら、或いは人間の言う魔王なんて友達みたいなもんだからな。」<br>「・・・貴方は一体？」</p><p><br>ラフトは魔物の胴を小突く。</p><p><br>「ほら、増援はまだか？」</p><p><br>異形は勢いよく後ろに飛ぶと、そのまま翼をはためかせて一目散に逃げ出した。<br>しかし飛び上がって間もなく、翼が石のように動かなくなり、次の瞬間には重力加速度以上の速度を乗せて地面に叩きつけられる。<br>ラフトはレンの手から曲刀を掠め取ると、異形の尻尾目掛けて振り下ろす。<br>肉の繊維が千切れる音と共に切断面から鮮血が飛び散り、切り落とされた尻尾は飛び跳ねるように蠢いた。<br>間髪いれず、ラフトは怪物の脇腹につま先を突き刺す。<br>口から血塊を吐き出しながら魔物は吹き飛び、何度も地面を転がった。</p><p><br>「どこぞの蜥蜴は痛い痛いって騒いでたなぁ。」</p><p><br>魔物は両腕に力を入れて立ち上がろうとするも、痛みの所為か朦朧とした意識の所為か上手く行かないようだ。<br>動かない脚を引きずり、這いずるように逃げようとする。<br>その様子を見ながら、ラフトは言葉と共にレンに刀を返す。</p><p><br>「殺しまではしない、やるならてめぇでやれ。」</p><p><br>暫し自らの手と握った刃を眺めた後、レンは言った。</p><p><br>「いや、もう十分だ。師匠の虐め方を見てると、もう良いって思えた。」</p><p>「一方的だからな。」</p><br><p>ラフトは、地面を這いずる異形に言い放つ。</p><br><p>「ほーら、お赦しが出たぞ。こいつの気が変わらないうちに、さっさと帰れよ。」</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12138775194.html</link>
<pubDate>Sun, 13 Mar 2016 22:02:34 +0900</pubDate>
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<title>そーなうひーいっと。外伝9</title>
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<![CDATA[ <p>「こう見えて、白兵戦くらいこなせるもんだ。」</p><p><br>左手の杖で地面を突きながら、ラフトは重いローブをなびかせて外へ出る。<br>レンは金属鎧をがちゃがちゃと鳴らしながら、美しい刀身の曲刀を鞘から抜く。<br>対して、ラフトが持っているのは歩行補助用らしき杖だけだ。<br>魔力を練るような禍々しい杖ではなく、Ｔ字型の至って普通の杖。<br>形状が中々に美しい、漆塗りの木製の杖で、多少は手荒に扱っても折れないものではある。</p><p><br>「師匠。そんな杖、斬っちまうぞ。」</p><p><br>しかし、レンがまじまじと杖を眺めている中、ラフトは杖を宙に放り出した。<br>杖は自由落下を始める前に虚空へと消える。<br>ラフトは手を振れずにその辺にある木の枝を手繰り寄せると、まるで杖の代わりのように土を突いた。</p><p><br>「あれはとっておき。あんたの稽古くらい、これで十分だ。ほら、掛かって来な。」</p><p><br>ラフトは枝をくるくると回しながら不適に笑う。<br>当然の如く、レンは抗議した。</p><p><br>「師匠、こっちは真剣を使うんだぞ！そんな枝じゃ、簡単に斬れるぞ！」<br>「ほう、やってみな？」</p><p><br>おう、と元気よく返事をすると、彼女は性格を表すかのような真っ直ぐな突進でラフトに向かった。<br>勢いのまま突きを繰り出すも、刀身の横に枝切れが当てられると、真っ直ぐな枝切れでありながら、絡めるように刀身を受け流される。<br>鉄を打った刀身の頑丈さ故か、加えられた応力で折れることは無かったものの、刀に持っていかれる形でレンは地面に投げられた。</p><p><br>「どうした、こんな枝くらい切ってみろよ？」<br>「ぐぬぬ、この剣なら斬れると思ったのに・・・！」</p><p><br>回避を想定するように芝生の上を横転し、起き上がりざまにレンは足を薙ぐように刀を振るう。<br>しかしこれも、横向きの刀身を地面に押さえつけるように、枝の先端が突き立てられることで止められた。</p><p><br>「攻撃魔法も使ってないのに、師匠って強いんだな！」<br>「攻撃以外の魔法は使ってるんだがな。」<br>「じゃあそろそろ私を攻撃するんだ！受け流すだけじゃ、稽古になんないぞ！」<br>「あー？そんなに鳩尾を蹴られたいか？」</p><p><br>言いながら、ラフトは掬い上げるように、つま先でレンの脇腹を蹴り上げる。<br>宣言したとおり鳩尾に靴が食い込んだらしく、酷く咽ながらレンはよろよろと立ち上がった。<br>弟子のそんな様子を、ラフトは笑顔で眺める。</p><p><br>「師匠、普通の人間だったら痛いじゃすまないぞ・・・」<br>「そうだな、痛いじゃなくて苦しいだろうな。」<br>「私は普通の人より早く動けるはずなのに、全然見えなかったぞ。」<br>「無駄口を叩いてる余裕があるのか？」<br>「おう、もう大丈夫だ！行くぞ！」</p><p><br>レンが刀を振り、ラフトが器用に枝で受け流す。魔法使いと弟子は、真剣と枝切れでちゃんばらを繰り返した。<br>やがてレンの太刀筋に雑な部分が現れてきたところで、ラフトはレンの脛に打ち付けるように枝を振るった。<br>甲高く心地良い音が響き、慣性の働くままに、レンの脛に切り落とされた枝の先端がぶつかる。<br>人間のものとも、蜥蜴のものとも、魔物のものともつかない絶叫に、驚いた小動物が草叢から飛び出して逃げていく。</p><p><br>「師匠ぉっ！！」<br>「あ？俺の所為か？」<br>「だって、枝が切れるなんて聞いてないぞ！！」<br>「冗談きついって。こんな枝切れを真剣と打ち合わせて切れない訳ないだろ。」</p><p><br>枝は、先端から数センチ短くなっており、断面には小さいながらも美しい輪が見られた。</p><p><br>「刃で受け止めたのはあんただろ？」<br>「そこはァッ！師匠が！未知のパワーで何とかするんだろ！」</p><p><br>脛を強く打ちつけ、目に涙を溜めるレン。<br>骨が折れる、等と言った傷は恐らく無いであろうが、すごく痛そうだ。</p><p><br>「あー・・・まぁ、よく切ったな。いや、よく受け止めたな、か。」<br>「受け止めたのにすっごく痛かったけどな！」<br>「次は、もう少し加減の仕方を考えておくか。」<br>「レベルアップ、だな！」</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12138591571.html</link>
<pubDate>Sun, 13 Mar 2016 04:13:40 +0900</pubDate>
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<title>そーなうひーいっと。外伝8</title>
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<![CDATA[ <p>「随分と勉強熱心な事だな。」</p><p><br>朝から本を読んでいる弟子に、ラフトは声を掛ける。</p><p><br>「ちゃんと寝たか？睡眠削ると、頭が覚えないぞ。あんたの場合、どうせ人より時間あるんだろうし。」<br>「時間？確かに、私はお仕事してないからな。」<br>「それはそうだが、その事じゃないな。・・・家事以外に、働いてくれても良いんだが？」<br>「師匠がやれって言うなら、私は何だってやるぞ。あ、畑でも耕すか？」<br>「好きにしろ。一日の時間じゃなくて、一生の時間の話な。」</p><p><br>レンは首を傾げる。</p><p><br>「・・・私は長生きなのか？」<br>「必ずしもそうとは言い切れない。前例を見てきた訳じゃないし、俺はあんたの生みの親でもないからな。」<br>「私の聞き方が悪かったか？師匠って回りくどいよな。」<br>「辛辣だな。だけど、魔物が兵器として生み出したなら、相応に寿命も必要だろ。ただのラット紛いだったとしても、人間の寿命じゃ使い物になるまい。」<br>「そう言うものなのか？」</p><br><p>言っていて、しかし確証を持てないラフト。</p><p><br>「いや、ハツカネズミって言うくらいだから短命だよな・・・」<br>「んんー？よくわかんないけど、私は生まれた時からずーっとこの姿だぞ。人間みたいに、背が伸びたりしてないんだよ。」<br>「まぁ良い。もしもあんたが望むなら、その時は・・・」<br>「その時は？」<br>「・・・相当、退屈な毎日になるけどな。」</p><p><br>レンは更に首の傾角を大きくする。</p><p><br>「師匠が何を言いたいのか、全部はわかんないけどな、私は師匠とずっと一緒に居たいだけだぞ。退屈だって、師匠と一緒なら平気だからな。」<br>「・・・考えておく。」</p><p><br>レンの顔が元の角度に戻る。</p><p><br>「難しい話はもう良い！それより師匠、稽古つけてくれ！」<br>「考えるより体を動かす方が好きか。」<br>「うん！」</p><p><br>早く早く、と急かすようにレンは扉を開けて外へ出た。<br>午前中の青空の下では小鳥が囀っている。生きている今を謳歌するように。</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12137898589.html</link>
<pubDate>Sat, 12 Mar 2016 02:40:37 +0900</pubDate>
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<title>そーなうひーいっと。外伝7</title>
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<![CDATA[ <p>タグ分けました。</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>石の階段を下りて行く内に、扉が見えてくる。<br>先に立っていたラフトが扉を開けるものの、部屋の中は真っ暗で何も見えなかった。</p><p><br>「師匠、何も見えないぞー！」</p><p><br>言いながらレンが部屋を覗き込むと、独りでに燭台の蝋燭に明かりが灯る。<br>幾つもの灯火が部屋の中を照らす。</p><p><br>「んん、何の部屋だ？」</p><p><br>石のテーブルのような物、鉄の炉。<br>レンにとっては見慣れないものばかりだった。</p><p><br>「この部屋に入るの、久しぶりだな。どこもかしこも埃を被ってるな。」</p><p><br>石の床はひんやりと冷たく、空気は埃っぽい。<br>どこか無機質な雰囲気をかもし出しているのは、木製のテーブルが煤で黒くなっているからだろうか。<br>ラフトが部屋の様子を眺めていると、突然レンが騒ぎ出した。</p><p><br>「師匠！何でこれ、こんなに沢山あるんだ？」</p><p><br>レンがどこかはしゃいだ声で指差す。<br>円筒型の箱の中に、何本もの刃物の刀身と思われる物が無造作に入っていた。<br>柄の取り付けられていない、細長く僅かに反った曲刀。<br>街の衛兵が持っていた物にもよく似ている。</p><p><br>「あー、それは影打だ。」<br>「かげうち？」<br>「要するになまくらってこと。」<br>「なまくら？」<br>「失敗作と言ったところだが、前に衛兵に支給されてたものよりはよっぽどマシな物でね。一度、あんたにも触らせただろ。」<br>「師匠が作ったのか？」<br>「作って、衛兵相手に売った。だから、今では衛兵にはそれと似たような物が支給されてる。」<br>「えっ、師匠って魔術師じゃなくて鍛冶屋だったのか！？」<br>「最初は、何故魔法で再現できないのかって言うのを調べるためにやってたんだよ。今となっては、時間だけはいくらでもあるからな。」</p><p><br>ラフトの発言に、レンは疑問を抱く。</p><p><br>「・・・あれ、師匠って人間じゃないのか？」<br>「人間だよ。昔は、ね。」<br>「ふ、ふぅん。」<br>「その話は今度な。」</p><p><br>ラフトが施設を指を差しながら説明する。</p><p><br>「そっちの金床周りが鍛造用の設備で、そこの砂とか炉とかは鋳造に使う設備。」<br>「こんなでっかい装置どうやって用意したんだ？そもそも師匠、どうやって作ってるんだ？」<br>「分からない事があったら“とりあえず魔法”って思っておけばいい。」</p><p><br>あながち嘘でもない、とラフトは呟くが、レンは笑っていた。</p><p><br>「火の扱いには慣れてるだろうし、ここは自由に使っていいぞ。」<br>「そんなこと言ったって、使い方わかんないぞ！」<br>「上に参考資料・・・取り扱い説明書から材料工学、加工学の教科書まであるから、勝手に読んでいいからな。」<br>「わかった！でも自信ないぞ。師匠、教えてくれよ！」<br>「その内な。」<br>「手取り足取り、な！」</p><p><br>適当に返事しつつ、ラフトは部屋の外の方へ向かう。</p><p><br>「あー、その辺の剣は勝手に貰っていっても構わんからな。」<br>「良いのか！？・・・あ、そう言えば師匠。これ、失敗作って言ってたな。」<br>「言ったねぇ。」<br>「成功したのは無いのか？」<br>「あるよ。」<br>「しまってあるのか？」<br>「さぁ、ねぇ？」</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>このシリーズ、会話分が多くて読みにくいかも？</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12137889704.html</link>
<pubDate>Fri, 11 Mar 2016 01:57:53 +0900</pubDate>
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<title>そーなうひーいっと。268.5_3</title>
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<![CDATA[ <p>金属製の鎧を纏うレン。</p><p>魔法使いの塒には似合わないほど、鎧はぴかぴかに輝いていた。</p><br><p>「・・・で、それが一番お気に入りな訳で？」</p><p>「おう！カッコイイじゃん！」</p><br><p>嬉しそうに、レンは腕を広げてみせる。</p><p>あまりにも女の子らしくないレンの言動にラフトは苦笑した。</p><br><p>「それ、普段着てるやつらはそんなに軽々と着こなせないんだけど。」</p><br><p>レンの場合は、細かな関節を保護する防具や無駄な装飾、その他取り付けに不便なものは本人の意向で着けていなかった。</p><p>しかしながら、街の衛兵が装備した場合では、これほど軽々と体を動かせるものではない。少しでも生存性を求め、鎧の重さは相当のものとなっている。普通の人間には、あまり過度な運動が出来るようなものではない。</p><p>しかし、</p><br><p>「ひゃっほー！」</p><p>「ひゃっほう、ってなぁ・・・」</p><br><p>狭い魔法使いの住処を、所狭しとレンは動いて回る。腕を振り回し、飛び跳ね、挙句の果てには側転からバク宙まで披露する。</p><p>手足をぶつけ、燭台を壊したものの、ラフトの魔法があっと言う間に修復したため、さほど叱られはしなかった。</p><br><p>「ホント、あんた規格外だな。衛兵になれば、相当給料いいと思うんだがな。普通、そんなもん着てアクロバットするやついねぇよ。」</p><p>「ハッハッハ、ならば私がここを守ってやろう。」</p><p>「・・・しかしまぁ、よく譲ってくれたもんだ。」</p><br><p>鎧は、呉服屋で購入したものではなく、衛兵の所から貰ってきたものだった。</p><p>予備のものであるが、レンが目を輝かせていると“日頃の感謝”と言うことで貰ったのだった。</p><p>尤も衛兵曰く、ラフトが日頃もたらしてくれるものに比べれば大した価値は無いとのことだ。</p><br><p>「師匠！日頃の感謝って、普段師匠は何してるんだ？」</p><p>「見たいか？」</p><br><p>ラフトは笑う。サプライズプレゼントを用意する、仕掛け人のような表情だ。</p><br><p>「鎧を簡単にくれるくらい凄いことだろ？勿論、気になるぞ！」</p><br><p>レンの返事を確認し、ラフトは空中に紋を描くように何かを操作する。</p><p>突然本棚が動き、本棚のあった場所には地下へ続く階段があった。</p><br><p>「丁度いい機会だ。可愛い弟子に、魔法以外のものも少し触らせてやるか。」</p><p>「魔法じゃないのか！？ますます気になるぞ・・・！」</p><br><p>二人は、あまり広いとは言えない階段を下っていく。</p><p>金属鎧が振動で擦れる音が、妙に響いて騒々しい。</p><br><p>「・・・あんた、買ってきた服の方を着ろよ。」</p><p>「これが一番カッコイイだろ！」</p><p>「普段着にはならんだろ・・・」</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12137532545.html</link>
<pubDate>Thu, 10 Mar 2016 00:54:03 +0900</pubDate>
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<title>そーなうひーいっと。268.5_2</title>
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<![CDATA[ <p>市街を囲む塀の門の前にやって来る。<br>塀で囲うほどの仰々しい市街、とは言ったものの人口は多くなく、村と言った方が近いかもしれない。<br>金属鎧の衛兵に軽く挨拶をし、門をくぐろうとするがラフトは引きとめられる。<br>引きとめたのは衛兵ではなく、弟子のレンだ。</p><p><br>「あれ？兵士さん、ちょっとその剣見ても良いか？」<br>「これか？構わないが・・・」</p><p><br>腰に下げた剣をレンに手渡す衛兵。<br>自ら丸腰になっていいのか、とラフトは苦笑する。<br>レンは鞘から剣を抜く。<br>刀身は細く、僅かに反っており波模様が入っている。<br>柄はよく見られる一般のもので、鞘も剣に合わせて作られたと見て取れるが、刀身の方は普通の剣とは違っているようだ。<br>そして、レンには見覚えがあった。</p><p><br>「これって、貴重なんじゃないのか？」<br>「ん？あぁ、そうか。確かに、珍しいかもな。だけど・・・」</p><p><br>衛兵が説明する前に、ラフトが口を挟む。</p><p><br>「別に、特別な製法があってそれが貴重ってだけで、武器は貴重でもないだろ。」<br>「それって武器も貴重じゃないか？」<br>「作れる奴がいるんだよ。」<br>「おお！じゃあ、その人を見つければ私も買えるのか！？」<br>「・・・まぁ、模倣品を作って売ってる奴はいるかもな。」</p><p><br>衛兵に剣を返すと、不思議な師弟は街へと入っていった。<br>後姿を見送りながら衛兵は何か呟いていたようだが、二人には聞こえていなかった。<br>忘れていたように、ラフトはレンにフードを被せる。</p><p><br>「一応、身形は隠しておけ。石ころ投げられても知らんぞ。」<br>「お、おう！」<br>「俺も最初はあまり良い目で見られなかったからな。」<br>「そうなのか？」<br>「まぁこんな身形だしな。魔術師でもなければ、こんな埃臭くて重いローブ着ねぇよ。」<br>「じゃあ何で着るんだ？」<br>「見た目以上に頑丈だし、これ1着で外套から部屋着までこなしてくれるからな。」</p><p><br>話しているうちに、衣服を売る店に辿りつく。<br>扉を開けると、扉の上部に取り付けられている鈴の音がなった。<br>店主がこちらへ目を向ける。</p><p><br>「お！よう、旦那。・・・って、今日は連れがいるのか。」<br>「こいつの服を探しにな。」</p><p><br>店主が、ラフトよりも背の低い、フードを深く被りこんだ人物に目を向ける。</p><p><br>「見事に、見てくれだけじゃ何も分からない状態だな。体型も、そいつの持つ雰囲気もわからねぇ。」<br>「まぁ、ワケアリでな。」<br>「おう、ワケアリだぞ！」<br>「そうかい。まぁ、旦那の連れだからな。」<br>「なんでまぁ、ある物から選ぶからこっちに任せてくれ。」<br>「オーダーメイドも出来るぞ？」<br>「採寸取るだろ？」<br>「・・・そうかい。」</p><br><br><p>-----</p><br><br><p>いつか雑な伏線を拾いきるのだ！（希望的観測）</p>
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<link>https://ameblo.jp/klmk9e/entry-12136462384.html</link>
<pubDate>Sun, 06 Mar 2016 21:12:25 +0900</pubDate>
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