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<title>中途半端に生きてます。</title>
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<description>オカマのような、オナベのような、中途半端に生きている奴の、日常のあれこれ。</description>
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<title>転機。ー７－</title>
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<![CDATA[ <p>身体の関係を持ちたいのだろうか。</p><p>そう言った思いが去来した。</p><p>酔客とホステスの関係であることを、すっかり失念しているボクはそう思った。</p><p>「遊びに行ったら、どうなるの？」</p><p>「どうなるって・・・。どうもなりやしないさ。」</p><p>******************</p><p>・・・と、２ヶ月前に書きかけたまま放置してたら、何だか気が削がれて、むむむ・・・な感じですが、このまま続けてもいいのかな～と思いつつ、ブログタイトルにそぐわないかも知れないけど、やっぱり中途半端は気持ちが悪いので、続行します。（陳謝）</p><p>****************</p><br><p>考えた挙げ句、ボクは結局おっさんの住むマンションには一度も行かなかった。</p><p>見え隠れするおっさんの魂胆が、どうにも受け入れられず、急激に会うことに嫌気が差してきた。</p><p>しかし、何故これほどまでに固執するのか分からないが、おっさんはボクに執着した。</p><p>必ず店の帰りには迎えに来て、運転手よろしくボクをアパートまで送った。</p><p>すんなりとは帰してくれず、帰宅時間がどんどん遅くなり、終いには夜が明ける頃まで引っ張り回されるようになってしまっていた。</p><br><p>その日も、何時間も連れ回され、アパートの下まで送ってくれた。</p><p>見上げると、部屋には灯りが点っていて、ドアを開けてからのことを考えると、うんざりとしてしまった。</p><br><p>「あれ、明かりが点いてるじゃないか。誰か居るの？」</p><br><p>おっさんはそう言いながら、掌を自分の頭の横に水平に置くと、そこからずんと下げていって、腰の辺りで止めて首を傾げた。子供が居るのかと聞かれたのだと分かった。</p><p>普通、水商売に勤める者は、男の存在を隠すが、ボクはもう潮時だと思った。</p><p>首を振りながら、おっさんがしたように掌を頭からずずっと上に持って行った。ネクタイを締める真似もしてみた。</p><p>一瞬目を見張り、ボクを見つめて、そしてため息を吐いた。</p><br><p>「そうか・・・、そうだったのか。」</p><p>「うん。騙す積もりじゃなかったけど、ごめんね。」</p><p>「別に、騙されたとは思っていないさ。嘘は言ってないんだし。」</p><br><p>ボクには何となく後味の悪さが残ったが、世慣れたおっさんにはどうということもなかったのだろう。</p><p>その後もおっさんは最初のペースで店には来たが、それ以上迫ることはなかった。</p><p>結局、ボクは父の幻影を見ていただけで、男としては「パパ」のことを見ることが出来なかったと言うことがおっさんにも分かったのだろう。</p><br><p>そんなことの、ほとぼりが冷めた頃、ボクは懲りもせずに、また客の一人に熱を上げ始めた。<br><br></p>
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<pubDate>Thu, 28 Jan 2010 15:30:00 +0900</pubDate>
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<title>転機。ー６－</title>
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<![CDATA[ <p>ボクは自分でも父のような人に惹かれるが、ボクもまたそういう人を惹きつけるのかも知れない。</p><p>結局、パパと呼ぶようにした。</p><p>ボク達の親子ごっこは、始まった。</p><p>******************</p><br><p>足繁く通ってくるおっさんは、必ず看板まで居て、ボクを送って帰るようになった。</p><p>いくらパパと呼んでいても、アパートのすぐ下まで送ってもらうのは気が引けたし、何よりひょっこりケンゴウと鉢合わせでもしたら最悪だと思い、すぐ横を走る電車のガードを潜ったところまで送ってもらっていた。</p><p>ちょうど空き地になっていたので、そこに車を止めてひと時語り合っていた。</p><br><p>そのうちおっさんは、郊外まで車を走らせるようになった。</p><p>海や、山や、どちらにしても真っ暗な辺りで車を止めた。</p><p>おっさんは、車の中でボクの手をずっと握った。</p><p>手を握り、一度だけキスをした。</p><br><p>「パパ、親子はキスなんかしちゃいけないんだよ。」</p><p>「ああ、そうだな。」</p><br><p>そして、なかなかうちに帰らせてもらえなくなった。</p><p>もう帰りたいと言っても、もう少し、もう少しだけ、と言って何時間も束縛された。</p><p>ボクはだんだん嫌気が差してきた。</p><br><p>おっさんは結婚しているが、今は別居状態だという。</p><p>オフィスを兼ねるマンションの一室に、起居しているという。</p><br><p>「どうだ、一遍遊びに来ないか。」</p><br><p>パパと呼ばせたのは、ボクを子供のように思ってくれていた訳ではなかったのか。</p><p>身体の関係を持ちたいのだろうか。</p><p>そう言った思いが去来した。</p><p>酔客とホステスの関係であることを、すっかり失念しているボクはそう思った。</p><br><p>「遊びに行ったら、どうなるの？」</p><p>「どうなるって・・・。どうもなりやしないさ。」</p>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10397806280.html</link>
<pubDate>Fri, 27 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>転機。ー５－</title>
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<![CDATA[ <p>おっさんが、意外にも優しく頭を撫でてくれた。</p><p>ボクは、おっさんに身体を預けて、それでもおっさんに悪態を付きながら、泣いた。</p><p>おっさんとボクの、これが出逢いだった。</p><p>*************</p><br><p>結局おっさんは看板まで居て、ぐずぐずと泣くボクを宥めてくれた。</p><p>飲み過ぎはよくないぞ、とボクに声を掛け、閉店時刻になると、大人しく帰って行った。</p><p>店の男達に、そのあと散々叱られた。</p><p>当然のことだ。</p><p>大分酔いも醒めてきて、落ち着いたボクは悄然として謝った。</p><p>訳の分からない酔っぱらいになったことに、嫌気が差していた。</p><br><p>２、３日後、おっさんは店に来た。</p><p>ボクは、素直に謝った。</p><p>酒を飲んだ時の記憶など、なくなっていれば言うことはないのだが、どんなに酔っぱらっても記憶がなくなることはなかった。</p><p>おっさんは、まあ若気の至りだ、気にするな、と言ってくれて、別に気を悪くしている様子でもなかった。</p><p>それまでたまにしか来なかったおっさんは、どういう訳かしょっちゅう店を訪れるようになっていた。</p><p>いつも一人でふらりと来て、美しくて話題の豊富な他の女達を差し置き、なんの面白味もないボクと喋りながら、飲むようになった。</p><br><p>おっさんとの出逢いは最悪だったが、慣れてくると本当に父親のようで、一緒にいると安らいだ。</p><p>店が跳ねると、車で送ってもらうようになっていた。</p><p>アパートに帰る前に、人気のない場所に車を止めて、話しをした。</p><p>何処かに行くかと言われたが、仕事以外で酒など飲みたくなかったし、大抵は酔っぱらっていたので、静かな場所で語る方がずっとよかった。</p><p>おっさんのことを、最初はおっさんと詰ったが、店の上客でもあるからそれ以後は、社長と呼んでいた。</p><p>大分仲良くなった頃、おっさんが、その呼び方は気に入らないと言い出した。</p><br><p>「じゃあ、何て呼べばいいの？」</p><p>「おとうさんか、パパ。どうだ？」</p><p>「どうだって言われても。」</p><br><p>ボクは自分でも父のような人に惹かれるが、ボクもまたそういう人を惹きつけるのかも知れない。</p><p>結局、パパと呼ぶようにした。</p><p>ボク達の親子ごっこは、始まった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10397027360.html</link>
<pubDate>Thu, 26 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>転機。ー４－</title>
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<![CDATA[ <p>サパークラブを経営するその男を紹介されて、一応挨拶をした。</p><p>「こら、酔っぱらい。飲み過ぎだろう。」</p><p>いきなりそう言われて、ボクは客商売にもあるまじき反応をしてしまっていた。</p><p>「うるせー。偉そうに言うな、おっさん。」</p><p>****************</p><br><p>悪酔いして足元のふらつくボクは、カウンター越しにおっさんに絡んだ。</p><p>おっさんは父と同年代くらいに見える男だった。</p><p>グレーがかった髪は、父を彷彿とさせた。</p><p>ボクは、父を重ね合わせられる人にいつも弱かった。</p><br><p>ボクはドロドロに酔いながら、今度は泣き上戸になっていた。</p><p>酒を飲んで泣いたことなどなかったし、何も悲しいことなどなかったのに、おっさんの顔をまともに見据えた途端ぼろぼろと涙が溢れ、止まらなくなってしまった。</p><br><p>「くそっ、おっさんの顔がいけないんだ。おっさんの顔が・・・。」</p><br><p>支離滅裂なことを言いながら、あんあんと声を上げて泣いた。</p><p>マネージャーや店長も、こうなったボクを手が付けられないという顔で見守るだけだった。</p><p>おっさんはと言うと、じっとこちらを見ながら、それでも酒を飲んでいた。</p><p>別に叱る訳でもなく、ずっと声を上げて泣くボクを、見つめるだけだった。</p><br><p>「おい、そこで突っ立ってないで、こっち来て座れ。」</p><p>「何で。」</p><p>「他の客が、吃驚してるだろ。まあ、いいから、座れ。」</p><br><p>マネージャーも、ボクの背中を押した。</p><p>確かに品のいい店で、ボクの暴挙は問題有りだろう。</p><p>渋々ながら、と言っても、本当は酔いすぎて立っているのもやっとの状態だった。</p><p>よれよれになりながら、おっさんの隣になんとか座った。</p><p>座ったら、また声を上げて泣いた。</p><p>おっさんが、意外にも優しく頭を撫でてくれた。</p><p>ボクは、おっさんに身体を預けて、それでもおっさんに悪態を付きながら、泣いた。</p><br><p>おっさんとボクの、これが出逢いだった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10396276245.html</link>
<pubDate>Wed, 25 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>転機。ー３－</title>
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<![CDATA[ <p>「おまえもやっと成人だな。おめでとう。」</p><p>「はやく、大人にして、おにいさん。大人になりたい。」</p><p>自分のあられもない襦袢姿に、興奮しきっていた。</p><p>***********</p><br><p>ボクはその日限り、本当に店を辞めてしまった。</p><p>行為の後、ケンゴウにそう伝えたが、そうか、と言っただけだった。</p><p>ボクが何処に勤めようと、そんなことは全く気にも掛けていないのだろう。</p><br><p>夕方になり、初出勤した。</p><p>６時出勤なので、今までと大した違いはない。</p><p>何でも、会社組織になっているらしく、希望すれば保険にも入れると言われたが、それは辞退した。</p><p>店は新しいビルの２階で、内装も豪華だった。</p><p>今まで勤めていた、うらぶれた店とは比べものにならないほど、清潔で美しかった。</p><p>キッチンにはコックが二人も居たし、店長も居れば、社長やマネージャーも時々は顔を出す。</p><p>女達もたくさん居たが、男の従業員も居ることで、どろどろとした確執もないような気配で、その点は気楽だった。</p><br><p>二十歳になっていたので、夜の仕事をするにも、もう何も咎められることもない。</p><p>新人だし、店の中で最年少だったこともあり、好き勝手が許された。</p><p>一風変わった子、それがボクのポジションだった。</p><p>昨日までとは、がらりと変わってしまった周りに、ボクは浮かれていた。</p><br><p>セックスワーカーをしていた間、酒を飲むことは全くなかった。</p><p>もともと、消毒にも反応するアルコールアレルギーだし、独りで居る時に飲みたいと思うことなどなかった。</p><p>しかし、飲み屋に勤めて、いえ、飲めませんとは、ボクは言えなかったし、飲むものだとも思っていた。</p><p>飲めない酒を、久し振りに飲むことで、悪酔いもしょっちゅうだった。</p><br><p>ある日、閉店間近、他の客の前ですでにべろんべろんになっていたボクは、ある客の前に居るマネージャーに呼ばれて、ふらつきながら行った。</p><p>上得意らしいその客は、ボクは初対面だった。</p><p>サパークラブを経営するその男を紹介されて、一応挨拶をした。</p><br><p>「こら、酔っぱらい。飲み過ぎだろう。」</p><br><p>いきなりそう言われて、ボクは客商売にもあるまじき反応をしてしまっていた。</p><br><p>「うるせー。偉そうに言うな、おっさん。」</p><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10393264100.html</link>
<pubDate>Tue, 24 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>転機。ー２－</title>
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<![CDATA[ <p>振り袖姿ということもあり、店の人にも客にもちやほやされた。</p><p>燻っていた心も、酒の酔いも手伝いだんだんと晴れてきた。</p><p>店のマネージャーの、うちで働いてくれないかという世辞にも近い勧めに、ボクは乗っかった。</p><p>勤めることを、その日のうちに決めた。<br>***************</p><br><p>日付が変わる頃、アパートに帰った。</p><p>ケンゴウは、未だ帰っていなかった。</p><p>せっかく振り袖を着ているのに、ケンゴウに見せる前に脱ぐのは勿体なかった。</p><p>そのまま俯せになり、眠ってしまっていた。</p><br><p>朝方、ケンゴウが忍び足で帰ってきた。</p><p>何処に行っていたのかと聞いたことはないが、仕事でないことは確かだろう。</p><p>ボクが起きると、ケンゴウがただいまと言った。</p><br><p>「おにいさんが帰ってくるまで脱がずにいたんだからね。脱がせてよ。」</p><p>「悪かったな。どれ、どうやって脱がすんだ？」</p><br><p>綺麗に結っていた髪も解け、着物も着崩れていたが、四苦八苦しながらもケンゴウは脱がせていった。</p><p>何本も締め付けている腰ひもを、ひとつひとつ解かれると、ボクは襦袢だけになった。</p><p>着物は高価な物なので、さすがにそのまま交わるのは気が引けたが、襦袢ならそれもかまわないと思った。</p><br><p>ケンゴウも、ボクの気持ちを察したのか、襦袢は脱がさないまま、襟を割って乳房を露わにした。</p><p>脱ぎ散らかした振り袖や、金襴緞子の帯をさっと横に払うと、布団の上に寝かされた。</p><p>ケンゴウは襦袢の前を割ると、腰巻きの裾から手を滑り込ませてきた。</p><br><p>ボクは既に濡れていた。</p><p>襦袢の肩と裾をはだけて、腰ひもを締めたまま、愛撫を受けた。</p><p>母の選んだ上品な薄桃色の長襦袢に、淫らな行為は似合わなかったが、何かを汚しているという、はっきり言えば母を汚しているという気分は、興奮に繋がった。</p><p>脚を開いて突っ張ると、白足袋のコハゼが、ひとつふたつ外れた。</p><p>腰巻きの尻の部分に、喜びの汁が滴っていった。</p><br><p>「おまえもやっと成人だな。おめでとう。」</p><p>「はやく、大人にして、おにいさん。大人になりたい。」</p><br><p>自分のあられもない襦袢姿に、興奮しきっていた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10393263532.html</link>
<pubDate>Mon, 23 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>転機。ー１－</title>
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<![CDATA[ <p>昼間、父が眠りに就くと、ボクも父の横に並んで眠った。</p><p>疲れていた。</p><p>子供の頃、いつも父の膝に乗っていたことを想い出し、あの頃よりずっと痩せてしまった父が哀れだった。</p><p>しかし、父と一緒に眠ることは、この上なく幸せだった。</p><p>****************</p><br><p>程なくベッドに空きが出来たと、病院から連絡を受け、父の看病も一応終えることになった。</p><p>病院は、アパートからも近かったので、見舞いに行くにも便利になった。</p><p>徐々に回復に向かう父を見て、安心した。</p><br><p>年が変わり、ボクは二十歳になっていた。</p><p>相変わらず、セックスワーカーをしていたが、この仕事にも疲れ切っていた。嫌な客が相手だと、吐き気を催すようになり、続けていくことに不安が募った。</p><br><p>成人式の日を迎えた。</p><p>式典は、何と言うほどのこともなかった。感慨もなく、退屈だった。</p><p>その帰り、ボクは父のために振り袖を着て写真を撮った。</p><p>イサオに撮ってもらった。</p><p>久し振りに連絡したら、消息が分からず心配していたと言われたが、写真の件は快諾してくれていた。</p><p>普通なら何万かいるところだが、成人式の祝いだと言って、ただで取ってくれることになった。</p><p>別に金がどうとかではなく、イサオに撮って欲しかった。それ以外の人に頼むことは、微塵も考えていなかった。</p><br><p>スタジオは、以前イサオと住んでいたアパートのすぐ傍にある。</p><p>ほんの２、３年前のことなのに、アパートを見上げると懐かしさが込み上げてきた。</p><p>どん底だと思っていたあの頃も、今と比べたらずっとマシだったのかも知れないと思うと、一歩も前進していない自分が情けなかった。</p><p>成人式という晴れの日の気分は、急降下していった。<br>何ショットも取ってくれたが、ボクは最後まで上手く笑えなかった。</p><br><p>夕方、アパートに帰ると、ケンゴウは留守だった。</p><p>振り袖を着たまま、部屋にひとりぽつねんと居たが、無性に寂しくなり友人の勤めるスナックへ飲みに行った。</p><p>ミハレ繋がりで仲良くなったマリの勤める店だ。</p><p>割と高級感のある店で、女も７、８人居た。</p><p>振り袖姿ということもあり、店の人にも客にもちやほやされた。</p><p>燻っていた心も、酒の酔いも手伝いだんだんと晴れてきた。</p><p>店のマネージャーの、うちで働いてくれないかという世辞にも近い勧めに、ボクは乗っかった。</p>勤めることを、その日のうちに決めた。<br>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10393217510.html</link>
<pubDate>Sun, 22 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>掃き溜め。ー１５－</title>
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<![CDATA[ <p>曲がりなりにも、サラ金という正業に就いたケンゴウを、受け入れようとし始めてくれていた。</p><p>実家と二人のアパートを、お互いが行き来するようにもなっていた。</p><p>****************</p><p><br>成人式用にと、母は勝手に振り袖を作りボクにお仕着せたが、父はボクが欲しい物を買ってくれると言ってくれた。</p><p>迷わず、父にスーツを仕立てて欲しいと頼んだ。</p><p>テーラーを営む父の仕立てで、メンズのスーツが欲しかった。</p><p>小さな店だったが、仕立ての良さで普通なら来ないような上得意も持っていた。</p><p>しかし、いい職人だが人が良くて商売人ではなかった父の店は、儲かるどころかしばしば赤字に陥り、その穴を母の給料で補填していたので、家での主導権は常に母にあった。</p><p>虚弱な上、稼ぎのない父は、肩身が狭かっただろう。</p><p>だが、父はいつも優しかった。</p><p>ボクは、そんな父を尊敬していたし、愛していた。</p><p><br>以前から、何度か入退院を繰り返していた父は、また入院を余儀なくされたが、ベッドの空きがなく、暫く自宅療養をすることになった。</p><p>肺の悪い父は、息が苦しげだった。</p><p>かなり悪化しているにも拘わらず、自宅で寝ているしかなかったので、昼間はボクが実家に帰り、店に出る夕方まで看病をすることになった。</p><p>往復のタクシー代だけでもかなりな出費だったが、バスや電車はまどろっこしくて利用する気になれなかった。</p><p>昼過ぎに往診に来る医師が喀痰を促す注射をすると、その後は見るのも辛いほど咳き込むので、毎日が憂鬱だった。早く入院できないものかと気を揉んだ。</p><br><p>夜中まで仕事をして、翌朝サラリーマンの出勤時間には実家に行き、また夕方にはアパートに戻り支度をして店に出る、その繰り返しが続いた。</p><p>ケンゴウと顔を合わせる時間も、殆どなくなっていた。</p><p>ケンゴウは仕事をしても、数万円だけ渡されるだけで、後はケンゴウの小遣いになるだけなので、ボクは仕事を辞める訳にはいかなかった。</p><p>昼間、父が眠りに就くと、ボクも父の横に並んで眠った。</p><p>疲れていた。</p><p>子供の頃、いつも父の膝に乗っていたことを想い出し、あの頃よりずっと痩せてしまった父が哀れだった。</p><p>しかし、父と一緒に眠ることは、この上なく幸せだった。</p><p><br><br></p>
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<pubDate>Sat, 21 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>掃き溜め。ー１４－</title>
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<![CDATA[ <p>初めて見る箏曲の楽譜は、縦書きでしかも漢数字が音符の代わりだった。見慣れない楽譜に戸惑ったが、逆に言えば１３個しか音符がない訳で、慣れると覚えやすいかも知れないと思った。</p><p>ボクはのめり込んだ。</p><p>仕事そっちのけで、没頭した。</p><p>***************</p><br><p>出勤すると、部屋の片付けもそこそこに、道場へと行った。</p><p>最初は、普段正座などしない所為もあり、脚が痺れて参ったが、それも徐々に慣れていった。</p><p>琴の練習がしたいが為に、以前より真面目に出勤するようにもなっていた。</p><p>奥の道場に居ると、一見の指名客などを取らなくてよいと思っていたのに、その音に惹かれてふらふらと見に来る客も居たりして、変わり者のボクを変わり者の客が指名した。<br>皮肉なことに、琴を弾きたいと思うと客が来て、渋々案内した。</p><br><p>単純な曲から始まった練習だったが、何かに憑かれたように励んだ所為で、自分で言うのも烏滸がましいが、めきめきと上達した。</p><p>上達してくると、もっと練習したいと思うようになり、ママに頼んで借りた琴を自宅に持ち帰り、店に出るまでの時間も練習するようになった。もう、店には仕事をするよりも、琴を弾くために通っているようなものだった。</p><p>ママの勧めで、発表会の舞台に参加することが決まった。子供の頃のピアノの発表会や、高校の時ブラスバンドのコンクールに参加して以来のことで、胸が躍った</p><p>ママの師範でもある先生の元にも、合奏の練習のため参加した。</p><p>三絃や尺八も参加するそれは、初めて尽くしで楽しかった。</p><br><p>もうじき二十歳になろうとしていた。</p><p>母が勝手に作った振り袖は、発表会で何度も着ることになり、思いの外活躍した。</p><p>夜の仕事をしていることは知ってはいたが、まさか身体を売っているなどとは思ってもみなかっただろう。</p><p>両親揃って、発表会を見に来てくれた。</p><p>父の安堵したような顔に、胸がちくりと痛んだが、それでも父の顔が見られたことは嬉しかった。</p><br><p>ケンゴウとの関係は何の変化もなかったが、両親が段々と折れて、ふたりと実家の間柄は徐々に良いものへと変化していった。</p><p>曲がりなりにも、サラ金という正業に就いたケンゴウを、受け入れようとし始めてくれていた。</p><p>実家と二人のアパートを、お互いが行き来するようにもなっていた。</p><br>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10392489883.html</link>
<pubDate>Fri, 20 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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<title>掃き溜め。ー１３－</title>
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<![CDATA[ <p>タクシーに乗り込み走り出すのを待って、初めて振り返った。</p><p>きょろきょろとウィンドーから見えるデパートの中を見回したが、何も分かりはしなかった。</p><p>本当にそれっきりだった。</p><p>男がどうなったのか、ボクには知る術もなかった。</p><p>**************</p><br><p>タクシーの中でポケットを探ってみた。</p><p>１万円札が数枚入っていた。</p><p>別に金が欲しい訳ではなかった。</p><p>行きずりのボクに金を渡すとは、一体どんな気持ちだったのだろう。</p><p>きっとこれが、あの男にとって出来る精一杯なのだと思うと、男のこれからを思い気持ちが沈んでいった。</p><p>もっとちゃんと受け入れられる身体であったならと、今更ながら済まなく思った。</p><br><p>しかし、その後もボクの生活は、絶え間なく続いていく。</p><p>倦んで、疲れて、飽き飽きとしながらも。</p><br><p>店が暇でいつものように小説を読んでいた時、道場から何か楽器の音が聞こえてきた。数ヶ月勤めているが、初めてのことだった。</p><p>その音色に誘われるように行ってみると、ママが琴を弾いていた。</p><p>店のママは、意外なことに琴の師範だったのだ。</p><p>それからは、時折奏でる琴の音に誘われて、居合の男達が来ない日も覗きに行くようになった。</p><br><p>「マドカちゃん、興味あるの？」</p><p>「え、ええ。和楽器なんて間近で見たことがなかったから、珍しくて。それに、何だかいいなあって。」</p><p>「興味あるなら、やってみる？」</p><p>「え・・・、いいんですか？でも、できるかなあ。」</p><p>「出来るわよ。何か、楽器はやったことある？」</p><p>「下手ですけど、中学までピアノを。高校では、クラリネットを。」</p><p>「あら、それなら大丈夫よ。やってみなさいよ。琴は古いのがあるから、貸してあげるわよ。」</p><br><p>最初は、童謡のような単音で弾ける易しい曲の教本を与えられて、基本的なことのほんの触りだけ教えてくれると、自由に弾かせてくれた。</p><p>初めて見る箏曲の楽譜は、縦書きでしかも漢数字が音符の代わりだった。見慣れない楽譜に戸惑ったが、逆に言えば１３個しか音符がない訳で、慣れると覚えやすいかも知れないと思った。</p><br><p>ボクはのめり込んだ。</p><p>仕事そっちのけで、没頭した。</p><br>
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<link>https://ameblo.jp/knight-guy/entry-10391759068.html</link>
<pubDate>Thu, 19 Nov 2009 12:00:00 +0900</pubDate>
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