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<title>人はなぜ生きようとするのか？</title>
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<description>人は〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇ために生きているこれを否定する答えが、３０年以上見つからん(--;)</description>
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<title>⑬一筋の涙</title>
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<![CDATA[ <p>「心肺停止……」<br>電話の向こうから告げられたのは、妻の心臓が止まったという知らせだった。<br>その後の詳しい内容は、もうはっきりとは覚えていない。<br>覚悟はしていたはずだった。<br><br>私は急いでお風呂から上がり、まず妻の両親へ電話をかけた。<br>自分の親にはすぐには連絡しなかった。<br>万が一、蘇生する可能性があるのなら、一度様子を見てからのほうがいいのではないか……そんな淡い期待と混乱が頭の中を巡っていたのだ。<br>しかし、病院へと向かう車に乗り込んでしばらくすると、やはり伝えておくべきだと思い直し、自分の父親にも電話を入れた。<br><br>心肺停止の連絡を受けてから、30分程度で病室に到着した。<br>そこには、絶え間なく心臓マッサージを受け続けている妻の姿があった。<br>おそらく、私が病院に駆けつけるまでのこの30分間、医師たちは休むことなく彼女の胸を圧迫し、必死に命を繋ぎ止めようとしてくれていたのだろう。<br><br>担当医は、私に対してとても言いにくそうに状況を説明してくれた。<br>過酷な治療に耐え、限界まで闘い抜いた彼女の体。<br>私はこれ以上、彼女を苦しめたくなかった。<br><br>「もう、大丈夫です」<br><br>私は静かにそう伝えた。<br>心臓マッサージはもうしなくていい。<br>彼女を休ませてあげてほしい。<br>私のその言葉を聞くと、担当医や看護師の方々は、酸素を送る機器やたくさんの医療器具を速やかに病室から運び出し、最後に妻と私だけの時間を作ってくれた。<br><br>慌ただしい機械の音が消え、静まり返った病室。二人きりになって、改めてベッドで眠る妻の顔を見つめた。<br>すると、彼女の閉じた目から、<br>一筋の涙がこぼれ落ちていた。<br><br>人が亡くなった後も、しばらくは脳の活動が続いていると聞いたことがある。<br>今の彼女にはまだ、私の声が届いているのかもしれない。<br>私はその頬の涙を見つめながら、語りかけた。<br>「よく頑張ったね。これでもう大丈夫だよ。家に帰ろうね。ママは、ほんと可愛いよ……」<br>ただひたすらに、労いと愛おしさを込めて、しばらくの間そう話しかけ続けた。<br><br>やがて、妻の母親とお兄さんが病院に到着した。<br>無菌室の分厚いガラスの向こう側、廊下に立つお義母さんの姿が見えた。<br>その分厚い窓越しに、声など聞こえるはずがないのに。<br>その時、お義母さんの「もう、だめ〜？」という悲痛な声が、私の耳にはっきりと届いた。<br>私はただ、静かにうなずくことしかできなかった。<br><br>その後のことは、実はあまりよく覚えていない。<br>ただ、葬儀社の方がすぐに手配をしてくれ、私たちは車に乗って、妻をようやく自分たちの「家」へと連れて帰ったのだった。</p>
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<pubDate>Thu, 07 May 2026 03:39:23 +0900</pubDate>
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<title>⑫このために生まれてきたのかもしれない</title>
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<![CDATA[ <p _ngcontent-ng-c4272622971="">朝、いつものように病室を訪ねると、</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">この日の彼女は、ひどく辛そうだった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">自力で寝返りを打つことさえ叶わないほどに衰弱していた。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">体勢を整えてあげようと、私は彼女の小さくなった体を優しく抱きかかえた。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">その瞬間だった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">彼女は、マスクをしている私の唇に、マスク越しにそっと口づけをした。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">そして、消え入りそうな声で囁いた。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">「パパ、マジで愛してる」</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">妻は普段、「マジで」なんて言葉を使うような人ではなかった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">きっと、「すごく愛している」や「本当に愛している」といった綺麗で整った言葉では、心の底の愛情を表現するには、足りなかったのだろう。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">自分の命が尽きようとしているとき、私への思いを伝えるために彼女の中で一番強い言葉が「マジで」だったのだろう。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">その言葉が耳に届いたとき、</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">「ああ、今、私は彼女の真実の愛を手に入れたのだ」と、魂の底から実感した。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">それは人生におけるどんな成功よりも、どんなものよりも価値のある瞬間だった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">「人生の最終的な目標を達成した」――そう断言できるほどの、これ以上ない幸福と達成感が、悲しみを超えて私の心を満たした。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">私は、このために生まれてきたのかもしれないとさえ思った。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">昼を過ぎる頃から、彼女の呼吸は目に見えて荒くなっていった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">数値上の酸素濃度に大きな乱れはなくても、彼女の体は激しく波打ち、ひどく苦しそうだ。意識があるのかも定かではない。ただ、時折、何かに導かれるようにゆっくりと手を宙に上げることがあった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">そのたびに私は顔を寄せ、「手を挙げていたら疲れちゃうよ」と静かに語りかけたが、返事はなく、ただ荒い呼吸の音だけが病室に響いていた。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">酸素の量を調整し、落ち着いてはまた上げる。そんな繰り返しの中で、時間は無情に過ぎていった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">自宅では義母が子供たちの面倒を見てくれている。私が帰らなければ義母も休めない。後ろ髪を引かれる思いだったが、酸素濃度が安定したのを見計らい、夜の11時半を過ぎた頃、私は帰路につくことにした。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">家に着くと、義母と入れ替わりでようやく一息ついた。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">遅い夕食を済ませ、冷え切った体を温めようとお風呂に入った。湯船に浸かり、張り詰めていた緊張がほんの少しだけ解けた、その時だった。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">静まり返った浴室に、電話のベルが鳴り響いた。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">&nbsp;</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">その音が何を意味するのか、私は瞬時に悟った。</p><p _ngcontent-ng-c4272622971="">それが決して、良い知らせではないということを。</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12621003210.html</link>
<pubDate>Wed, 29 Apr 2026 00:00:49 +0900</pubDate>
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<title>⑪最後の楽しいひと時</title>
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<![CDATA[ <p>1月末になると、妻はもうほとんどの時間を眠って過ごすようになっていた。<br>目を覚ます時間は日に日に短くなっていたが、私は変わらず、毎日彼女のそばに座り続けていた。<br><br>その日も、妻は一日中ほとんど目を覚ますことなく、私たちはお互いに言葉を交わすこともなかった。<br>夜の12時を回り、モニターの酸素濃度も安定しているのを確認して、そろそろ家に帰ろうと立ち上がった時のことだ。<br><br>ふと見ると、妻が目を閉じたまま、何やら楽しそうにぶつぶつと呟いている。<br>どうしたのだろうと顔を近づけ、そっと耳を傾けてみた。すると、妻は夢の中で誰かと話しているのか、とても楽しそうな弾んだ声でこう言ったのだ。<br><br>「面白い～～？？ ……面白い～～？？」<br><br>私は思わず微笑んで、夢の中の彼女にそっと相槌を打った。<br>「そっか、面白いんだ～～」<br><br>すると妻は、目を閉じたまま少しだけ口をとがらせて、ふざけるように言い返してきた。<br>「面白くな～～い」<br><br>「え～～？？ 面白くないの？？」<br>私がわざと驚いたように返すと、彼女は笑いながら、言い返してきた<br><br>「面白い〜、面白い〜」<br><br>ずっと目を閉じたままの、本当に他愛のないやり取りだったけれど、その表情は心の底から楽しそうだった。<br>彼女は今、病気の痛みや恐怖のない、楽しくて穏やかな夢の世界にいるのだとわかった。<br><br>しばらくすると、妻は満足したのか、また静かで深い眠りへと沈んでいった。<br>その穏やかな寝顔を見届けて、私はこの日、病院を後にすることにした。<br><br>過酷な闘病が続いてからというもの、あんなに無邪気で楽しそうな妻の姿を見るのは、本当に久しぶりだった。<br>たとえそれが夢の中の出来事だったとしても、彼女が笑ってくれている。<br>あんなに楽しそうな顔を見られたことが、私はただただ、涙が出るほどうれしかった。</p>
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<pubDate>Wed, 22 Apr 2026 00:00:55 +0900</pubDate>
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<title>⑩僕も一緒に逝く</title>
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<![CDATA[ <p>1月20日を過ぎると、妻の命の灯火はさらに小さく、弱くなっていた。<br><br>DVDを見る気力も、絵を描く力も失われ、LINEの通知すら無くなっていった。<br>そして、モルヒネの量は、徐々に増えていった。<br><br>そんなある深夜のことだった。私の携帯電話が鳴った。<br>電話に出ると、向こうからかすれ、消え入りそうな妻の声が耳に届いた。<br><br>「部屋を、出た……。迎えに来て」<br><br>その言葉に、正直慌てた。今の妻は、菌やウイルスに対する抵抗力がほぼゼロの状態だ。<br>完全に管理された無菌室から一歩でも外に出れば、健康な人間には無害な菌でさえ、彼女の命を即座に奪ってしまう。<br><br>私はすぐに車を飛ばし、夜の病院へと駆け込んだ。<br>慌てて無菌室エリアへ入るための防護服とマスクを身につけ、念入りに手を消毒し、エアーシャワーを浴びて、無菌室の手前にある前室へと飛び込む。</p><p><br>そこは様々な医療器具が置かれた無機質な空間だった。<br>そこも無菌状態に近いとはいえ、絶対ではない。<br><br>そしてその空間に、妻は立っていた。<br>自力で歩くことすらほぼ困難なくらい弱っていた彼女が、ふらふらの状態になりながらも、ただ一人で立っていたのだ。<br>すぐに駆け寄り、妻を抱きかかえると、妻はか弱くかすれた声で言った。<br><br>「もう、帰る……」<br><br>どう言葉を返していいのかわからなかった。<br>必死に現実をつなぎ止めようと、<br>「家に帰るには、家も無菌状態にしないといけないし、酸素マスクもいるよ」と、あえて事務的な説得を試みる。<br>しかし妻は、か弱くかすれた声で<br><br>「もう帰って……それでおしまい……」<br><br>その言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に、病院の『屋上』の風景がフラッシュバックした。<br>ただただ、妻と一緒にいたい、<br>私にあるのは、その思いだけだった。<br><br>「〇〇が逝くなら、僕も一緒に逝く。〇〇とずっと一緒に居る」<br><br>そう答えた。<br>私のその言葉に妻はしばらくの間、少し黙っていたが、<br>やがて彼女は、<br><br>「…………それは、よく考えないとね」<br><br>少しだけ妻は安心したのか、その言葉には不思議な響きがあった。<br>妻は本当に「死」を覚悟していたのだと思う。<br><br>これまでの過酷な治療、徐々に弱っていく妻、そして生存確率0％という現実。<br>もう「生」とか「死」とか、「生きている」とか、それが「現実なのか夢の中」なのか。<br>私には、その境目がわからなくなっていた。<br><br>&nbsp;</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12621000424.html</link>
<pubDate>Thu, 09 Apr 2026 00:00:30 +0900</pubDate>
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<title>⑨夢の船と、真冬の麦わら帽子</title>
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<![CDATA[ <p data-path-to-node="8">年が明け、一月に入ると、妻の命の灯火は目に見えて細くなっていった。</p><p data-path-to-node="8">病の苦痛を和らげるため、点滴には少しずつモルヒネが混ぜられるようになる。</p><p data-path-to-node="8">その微睡（まどろ）みの中で、</p><p data-path-to-node="8">彼女は体調不良と得体の知れない不安に、心も身体も削られているようだった。</p><p data-path-to-node="9">もともと明るく、前向きな人だった。だからこそ、病魔に蝕まれる苦しさは計り知れなかっただろう。<br>ある時、彼女が急に、<br><br>「この船から、早く出ないと……」<br>&nbsp;<br>と言い出した。<br>どうやら彼女は、家族で行くはずだったUSJのアトラクションの船の中にいると思い込んでいるようだった。</p><p data-path-to-node="10"><br>「大丈夫だよ。今日は少し元気になったね」<br>私はそう声をかけるしかなかった。<br>彼女はきょとんとした表情で私を見つめていたが、その瞳の奥に何を見ていたのだろうか。<br>せめて、眠っている間だけでもいい。<br>病の苦しみから解き放たれて、楽しい夢の続きを見ていてほしい。<br>そう願わずにはいられなかった。</p><p data-path-to-node="11"><br>食事はほとんど喉を通らなくなっていたが、時折「アイスが食べたい」とねだることがあった。<br>彼女はいつも私に気を使って、「今日は調子が悪いから、来なくていいよ」と優しく突き放したけれど、私は心のどこかで、もっとわがままを言ってほしかった。<br>「何かが欲しい」「そばにいてほしい」<br>そう頼られるたびに、必要とされている喜びを噛みしめていたのだ。</p><p data-path-to-node="12"><br>この頃から、無菌室への入室が許可された。<br>私はノートパソコンを持ち込み、彼女のベッドの傍らで多くの時間を過ごした。<br>彼女が眠っている間、私は画面に向かい、医師が示していたデータの意味を必死に手繰り寄せた。<br>どの数値が正常で、今の彼女の身体に何が起きているのか。<br>検索結果は残酷なほど明快に、現実を突きつけてきた。</p><p data-path-to-node="13"><br>がん細胞を抑えるために薬を増やせば、肝臓が悲鳴を上げる。 薬を控えれば、がん細胞が容赦なく増殖する。 画面に並ぶ数値は、彼女の肝機能がすでに限界を超えていることを冷徹に告げていた。</p><p data-path-to-node="13">&nbsp;</p><p data-path-to-node="14">1月20日。その日は、忘れもしない。 眠る彼女の顔を見て、私は直感した。</p><p data-path-to-node="14">&nbsp;</p><p data-path-to-node="14">「もう、持たない」と。</p><p data-path-to-node="14">&nbsp;</p><p data-path-to-node="14">医学的な知識などなくても、素人の目で見ても、終わりの時がすぐそこまで来ていることがわかった。</p><p data-path-to-node="15">そんな時だった。&nbsp;</p><p data-path-to-node="15">彼女のいる無菌室の前は、行き止まりの専用廊下になっている。戸を開けてわざわざ入ってこない限り、誰も通るはずのない場所だ。 ふと視線を上げると、そこを小学校三年生くらいの子供が通り過ぎるのが見えた。</p><p data-path-to-node="13">&nbsp;</p><p data-path-to-node="16">真冬の一月だというのに、その子は麦わら帽子をかぶり、まるで真夏のような衣装を着ていた。&nbsp;</p><p data-path-to-node="16">&nbsp;</p><p data-path-to-node="16">横を向きながら、楽しそうに通り過ぎていくその姿。 誰も来るはずのない行き止まりの廊下に現れた、季節外れの小さな影。</p><p data-path-to-node="17">錯覚だったと言われれば、それまでかもしれない。</p><p data-path-to-node="17">しかし、ひどく鮮明で、不思議と穏やかな光景として目に焼き付いた。</p><p data-path-to-node="18"><br>私は覚悟を決め、彼女の家族に連絡を入れた。 「一度、みんなで顔を見に来てほしい」</p><p data-path-to-node="19">彼女のお兄さんには、ありのままを伝えた。<br>体力的にもう限界であること。<br>自分で調べ尽くした結果、5年以上の生存確率は「0％」だということ。<br>「ご両親が受けるショックは計り知れない。</p><p data-path-to-node="19">だから、僕たちがしっかり支えないといけないんだ」</p><p data-path-to-node="20">&nbsp;</p><p data-path-to-node="20">電話を切った後、私は静かに熱を帯びていく自分の掌を見つめていた。</p><p data-path-to-node="20">どんなに言葉を尽くしても、この絶望を覆すことはできない。</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12961787677.html</link>
<pubDate>Fri, 03 Apr 2026 05:55:59 +0900</pubDate>
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<title>⑧雪降るイブと、ノートに遺された「ありがとう」</title>
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<![CDATA[ <p>二回目の正攻法による抗がん剤治療も、私たちの祈りは届かず、結局うまくいかなかった。<br>しかし、深い絶望の中に一筋の光が差し込むように、運良く妻と型が適合する臍帯血（さいたいけつ）が見つかった。私たちは、その臍帯血移植に次の希望をすべて懸けることになった。<br><br>ただ、妻にとって未知の移植に対する恐怖と不安は、私の想像を絶するものだったのだろう。<br>「移植をすることを、私の家族にも伝えておいてほしい」<br>彼女は、あえて私にそう頼んだ。それは万が一の事態を覚悟した、彼女なりの切実なSOSであり、身辺整理のような響きを持っていた。<br><br>そして迎えた移植の当日。<br>私は相変わらず、無菌室の分厚いガラス越しにその様子を見守っていた。数人の医師が入室し、処置の直前、一人の医師が臍帯血の入った注射器をガラス越しの私の方へ向けて、静かに掲げて見せてくれた。見知らぬ誰かから提供された、新しい命の源。<br>時間にしてわずか数分。祈るような時間の中、移植はあっという間に終わった。<br><br>しばらくして短い入室の許可が下り、私は防護服を身につけて妻のベッドのそばへ向かった。<br>妻はひどく青ざめた顔で私を見上げ、「体の中に入ってきた瞬間、死ぬかと思った……」と震える声でこぼした。それほどまでに、他者の細胞を体内に受け入れるという命のやり取りは、弱り切った彼女の体に凄まじい衝撃と負荷をかけるものだったのだ。<br><br>移植の翌日は、クリスマスイブだった。<br>夜になると、窓の外には冷たい雪が舞い始めた。いつもの年なら、家族で温かい食卓を囲み、彼女の明るい笑い声が響いているはずの夜。しかし今年の妻は、変わらず無菌室のベッドに横たわっていた。<br><br>そんな過酷な状況の中で、彼女は一冊のノートを開いていた。<br>そこには、彼女が一生懸命に描いた可愛らしいクリスマスの絵と、「メリークリスマス」という文字があった。<br>そして、その傍らに、私に向けた言葉が添えられていた。<br><br>『パパ、いつもありがとう』<br><br>自分の命の灯火が揺らいでいる最中なのに。彼女の心の中には、私への感謝と家族への愛が溢れていた。<br><br>しかし無情にも、その切なる思いとは裏腹に。<br>この臍帯血移植を境にして、妻の体はさらに、日に日に弱っていくこととなるのだった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12960897597.html</link>
<pubDate>Thu, 26 Mar 2026 00:00:48 +0900</pubDate>
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<title>⑦食べられない和菓子と、消えた笑顔</title>
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<![CDATA[ <p data-path-to-node="7">一回目の治療が望む結果に届かず、薬の組み合わせを変えた二回目の抗がん剤治療が始まった。</p><p data-path-to-node="7">&nbsp;</p><p data-path-to-node="8">主治医は「今度こそ」という思いで治療方針を説明してくれたが、私の心は別の焦燥感に支配されていた。</p><p data-path-to-node="8">薬が効くかどうかよりも、妻と適合する骨髄か臍帯血のドナーが見つかるのかどうか。</p><p data-path-to-node="8">&nbsp;</p><p data-path-to-node="8">それが何よりも気がかりだったのだ。&nbsp;</p><p data-path-to-node="8">頼みの綱だった妻の兄やご両親とは、残念ながら型が適合しなかった。見知らぬ誰かと適合するのを待つには、数ヶ月という途方もない時間がかかることもある。&nbsp;</p><p data-path-to-node="8">&nbsp;</p><p data-path-to-node="8">果たして、それまで妻の体力がもつだろうか。</p><p data-path-to-node="8">先の見えない不安が、黒い波のように何度も押し寄せてきた。</p><p data-path-to-node="8">&nbsp;</p><p data-path-to-node="9">私の不安を裏付けるように、妻の体は少しずつ、けれど確実に弱っていった。&nbsp;</p><p data-path-to-node="9">あんなに好きだった食事も喉を通らなくなり、日に日に食欲を失っていく。</p><p data-path-to-node="9">なんとか少しでもカロリーを摂らせてあげたい。</p><p data-path-to-node="9">&nbsp;</p><p data-path-to-node="9">そう考えた私は、甘いものなら少し口にするだけで力になるかもしれないと思い立ち、和菓子屋へと足を運んだ。</p><p data-path-to-node="10">ショーケースに並ぶ、季節を彩るような美しく繊細な和菓子の数々。</p><p data-path-to-node="10">これなら、殺風景な病室にいる妻の心も少しは華やぐかもしれない。</p><p data-path-to-node="10">そう願いながら、特に見た目がきれいなものをいくつか見繕って、短い入室の許可を得て病室へ持ち込んだ。</p><p data-path-to-node="10">&nbsp;</p><p data-path-to-node="11">買ってきた和菓子の箱を開けて見せると、妻は</p><p data-path-to-node="11">&nbsp;</p><p data-path-to-node="11">「わぁ、綺麗……！」</p><p data-path-to-node="11">&nbsp;</p><p data-path-to-node="11">と声を上げ、ぱっと花が咲いたように目を輝かせた。</p><p data-path-to-node="11">&nbsp;</p><p data-path-to-node="11">過酷な治療ですっかり元気をなくしていた彼女が、久しぶりに見せた、本来の明るく弾むような笑顔だった。</p><p data-path-to-node="11">&nbsp;</p><p data-path-to-node="12">しかし、その喜ぶ顔を見た瞬間、サーッと全身の血の気が引き、背筋が凍るような思いがした。&nbsp;</p><p data-path-to-node="12">「待てよ……。今の妻は、免疫力が完全にゼロの状態だ。職人さんの手作業で作られたこの和菓子には、目に見えない菌が付いているのではないか？」</p><p data-path-to-node="12">私は居ても立っても居られず、慌てて近くにいた看護師さんに尋ねた。</p><p data-path-to-node="12">&nbsp;答えは、残酷なほど明確だった。&nbsp;</p><p data-path-to-node="12">&nbsp;</p><p data-path-to-node="12">「免疫がない今、手作りの生の和菓子はやはり感染のリスクが高すぎてお出しできません。召し上がっていただけるとしたら、工場で完全に機械化され、直接ビニールに密閉されたような羊羹（ようかん）くらいでしょうか……」</p><p data-path-to-node="12">&nbsp;</p><p data-path-to-node="14">その言葉を聞いた時の、妻の顔が忘れられない。 あんなに輝いていた瞳からすっと光が消え、肩を落として、言葉にならないほど残念そうな表情を浮かべた。</p><p data-path-to-node="14">&nbsp;</p><p data-path-to-node="15">ただ、喜んでほしかっただけなのに。ただ、少しでも元気になってほしかっただけなのに。&nbsp;</p><p data-path-to-node="15">私の浅はかな思いつきのせいで、彼女にぬか喜びをさせ、かえって残酷な思いをさせてしまった。</p><p data-path-to-node="15">一口も食べさせてやれない美しい和菓子を見つめる妻の伏し目がちな姿が、痛くて、苦しくて、たまらなく申し訳なかった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12959974607.html</link>
<pubDate>Thu, 19 Mar 2026 00:00:59 +0900</pubDate>
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<title>⑥熱を帯びる両手と、夢うつつの境界線</title>
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<![CDATA[ <p>白血病との闘いは、まず「正攻法」と呼ばれる標準的な抗がん剤治療から始まった。<br><br>主治医は、私を安心させるように丁寧に説明してくれた。</p><p>しかし先生は、私がすでに渡された資料や検査結果の数値を調べ尽くし、この治療法での生存率が「0％」であるという絶望的な事実を知っていることに、気づいていなかったのだろう。</p><p>それとも、医師たちの間だけで共有されている、わずかな希望の糸口があったのだろうか。<br>治療は、がん化した細胞だけでなく正常な細胞もろとも薬で死滅させるため、妻の免疫力は容赦なく奪われていった。<br><br>彼女が過ごす無菌室のベッドの背後には、巨大な空気清浄機が設置されていた。</p><p>常に浄化された空気が妻に向かって吹き付けられ、面会者の菌が絶対に寄り付かないような特殊な構造になっている。<br>&nbsp;</p><p>ある時、そよ風程度の風量設定のなか、風下に立って妻と話していた私が、つい「コホン」と小さな咳をしてしまった。</p><p>&nbsp;</p><p>「あっ、ごめん、咳が出ちゃった」</p><p>&nbsp;</p><p>と口にした瞬間だった。</p><p>すぐ脇にいた看護師さんが、すかさず</p><p>&nbsp;</p><p>「バンッ！」</p><p>&nbsp;</p><p>と勢いよくスイッチを押し、風量を最大に切り替えてくれたのだ。</p><p>その機敏で力強い対応に、妻の命がどれほど細やかに、そして厳重に守られているかを知り、深く頭が下がる思いだった。<br><br>この一回目の治療の最中、妻にはまだ体力と気力が残っていた。<br>ベッドの上で私のためにお絵かきをしたり、手紙を綴ったり、私や友人に頻繁にLINEを送ってきたりしていた。</p><p>私は「何が見たい？」と聞いては、彼女がリクエストするビデオを何本も借りて病室へ通った。</p><p>食欲が落ちてきた彼女に「何か食べられそうなものはある？」と尋ねると、「吸って飲むタイプのゼリーなら欲しいな」と言うので、それを買い揃えて持っていった。<br><br>治療の途中経過について、主治医は「がん化した細胞は死滅しており、とりあえず順調です」と私を気遣うように語った。</p><p>&nbsp;</p><p>しかし、私は知っていた。</p><p>本当の試練は、薬を止めた後なのだ。</p><p>そこで正常な細胞が、がん細胞よりも一気に増えてくれなければ意味がない。<br>&nbsp;</p><p>そして案の定、増殖したのはがん化した細胞の方だった。一回目の治療は、無情にも失敗に終わった。<br><br>私は、不思議なくらい取り乱さなかった。<br>&nbsp;</p><p>この正攻法ではうまくいかないだろうと、初めから諦めていたのだ。最初から「臍帯血か骨髄移植しか希望はない」と自分に言い聞かせ、最悪の事態を想定しておくことで、壊れそうになる精神を必死に守っていたのだろう。だからショックは少なかった、はずだった。</p><p><br>なんとか平常心を保てている。</p><p>そう思っていた。<br>しかし、幼い頃からの癖は誤魔化せなかった。深い絶望や悲しみを無理に押し殺して平静を装うと、決まって手が熱くなるのだ。</p><p>気がつけば、私の両手は、火につつまれているように熱を帯びていた。<br><br>残酷な結果を突きつけられた中でも、私は毎日、子供たちを妻の元へ連れて行った。<br>子供たちは、そんな絶望的な状況など知る由もない。</p><p>無菌室のガラス越しに、相変わらず無邪気な声で</p><p>「今日はこんなことがあったよ」</p><p>「ママ、早く治ってね」</p><p>と楽しそうに話しかけている。<br><br>死の影が忍び寄る冷たい病室と、愛する家族の温かく平和な会話。<br>あまりにもちぐはぐなこの光景をぼんやりと見つめていると、不意に足元が揺らぐような感覚に襲われた。<br><br>果たしてこれは、本当に現実なのだろうか。それとも、たちの悪い悪夢を見ているだけなのか。<br>だんだんと、その境界線すらわからなくなっていく自分がいた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12638787207.html</link>
<pubDate>Thu, 12 Mar 2026 00:00:10 +0900</pubDate>
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<title>⑤どうしようもない無力感</title>
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<![CDATA[ <p data-path-to-node="3"><span style="font-size:1em;">バセドウ病の治療が一区切りつき、いよいよ白血病という本丸との過酷な闘いが始まった。</span></p><p data-path-to-node="3"><span style="font-size: 1em;">妻はすぐに無菌室へと移された。<br>そこは、家族である私でさえも自由には足を踏み入れることの許されない、徹底的に隔絶された空間だ。<br>分厚いガラスという透明な壁に遮られ、備え付けの電話越しに声を聴き、スマートフォンの画面に並ぶ文字から互いの温もりを探り合うだけの日々が始まった。</span><br>&nbsp;</p><p data-path-to-node="6"><span style="font-size:1em;">私の朝は、相変わらず慌ただしかった。<br>不慣れな手つきで朝ご飯を作り、長男を小学校へ、次男を保育園へと送り出す。<br>それが終わるとすぐに病院へと向かい、冷たい廊下に持ち込んだパイプ椅子に腰を下ろした。<br>ガラスの向こうにいる妻の姿を見つめながら、ただひたすらにLINEで他愛のない会話を続ける。それが私の一日の中心だった。</span><br>&nbsp;</p><p data-path-to-node="7"><span style="font-size:1em;">夕方になり次男を迎えに行くと、長男の帰りを待って、再びみんなで病院へ向かう。たった一人で病室に取り残された妻が、どれほど寂しい思いをしているか。<br>それが痛いほどわかっていたから、私はできる限り毎日、子供たちを彼女の元へ連れて行きたかった。</span></p><p data-path-to-node="8"><br><span style="font-size:1em;">誰よりも子供たちのそばにいて、成長を見守りたかったのは、妻自身だったはずだ。<br>ある日の帰り際のことだ。妻はガラス越しの電話で、子供たちに<br>「今日は何があったの？」<br>と、なるべく普段通りの、優しいお母さんの声で話しかけていた。<br><br>そんな彼女に向かって、まだ4歳の次男が、小さな手で受話器を握りしめながらふと尋ねたのだ。</span></p><p data-path-to-node="9"><br><span style="font-size:1em;">「ママ、もう帰ってくる？」</span></p><p data-path-to-node="10"><br><span style="font-size:1em;">まだ舌足らずな、あどけないしゃべり方だった。<br>無邪気に帰りを待ちわびるその幼い声を聞いた瞬間、妻はたまらなくなったのだろう。<br><br>子供たちのために必死に作っていた笑顔が消え、どうしようもなく悲しい顔になり、そのまま言葉が出なくなってしまった。<br>&nbsp;彼女はただ泣き崩れ、その問いかけに何一つ答えることができなかった。</span><br>&nbsp;</p><p data-path-to-node="11"><span style="font-size:1em;">痛いほどにかわいそうだった。<br>目の前で愛する人が泣きじゃくっている。<br>それなのに、私には何一つできない。<br>病気を代わってやることも、その震える細い肩を抱きしめてやることもできず、ただ見つめることしか許されない。<br>自分の無力さが、どうしようもなく悔しくて、悲しかった。</span><br><br>必死に作っていた笑顔が崩れ落ちたあの時の悲痛な顔は、<br>今も私の脳裏に焼き付いたままだ。</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12620110399.html</link>
<pubDate>Thu, 05 Mar 2026 01:30:25 +0900</pubDate>
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<title>④1本のカサブランカ</title>
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<![CDATA[ <p>バセドウ病の治療を受けていたこの頃、妻にはまだ、自ら動けるだけの元気が残っていた。<br><br>病院へ行くたび、私は彼女が欲しがるものや食べたいものを聞き出し、少しでも喜ぶ顔が見たくてあれこれと買い揃えては病室へ向かった。<br><br>ある日、妻が「病室に花を飾りたい」と言い出した。<br>私が「どんな花を買ってくればいい？」と尋ねると、彼女は結局、「一緒に買いに行く」と言ってきかなかった。<br><br>そうだった。花に関しては、嫁と私には忘れられない思い出があったからだ。<br>あれは、付き合い始めてまだ間もない頃のこと。<br>妻が「たくさんのカサブランカが欲しいな」と無邪気におねだりをした。<br><br>「たくさんって、どれくらいだろう？ カサブランカって、一体いくらするんだ？」<br><br>男の私にはさっぱり見当がつかず、考えるのも面倒になって、花屋にこう頼んでしまった。<br><br>「とにかく見栄え良く、5万円分のカサブランカをお願いします」<br><br>結果、彼女の元に届いたのは、部屋を埋め尽くすような大量のカサブランカだった。<br>後になって妻は、「いくらなんでも多すぎるよ！ 私が欲しいのは、毎月少しずつなの。本当に少しでいいから！」と笑いながら怒った。<br><br>だから次の月、「少しって、これくらいか？」とちょっとだけ悩んだが、やっぱりわからなかったので、私はカサブランカを<br><br>『1本だけ』綺麗に包んでもらい、彼女の元へ持っていった。<br><br>それを見た彼女は、「いくらなんでも1本はないでしょ！」と、ころころと大笑いしていた。<br><br><br>私のそんな極端な花の買い方を思い出したのだろう、それで妻は「自分で選ぶ」と決めたのだろう。<br>私は彼女を車椅子に乗せ、ゆっくりと押しながら病院の1階にある花屋へと向かった。<br>色とりどりの花を前にした妻は、病気のことなど忘れたかのように目を輝かせていた。<br><br>そして、花を包んでもらう時、店員さんに向かって、まるで少女のように弾んだ声でこう言ったのだ。<br><br>「旦那さんが、お花を買ってくれるの！」<br><br>本当に可愛らしくて、無邪気で、喜びに溢れた笑顔。<br><br>そして<br>あの時の嬉しそうなあの声は、笑顔とともに<br>今も私の記憶に深く刻み込まれている</p>
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<link>https://ameblo.jp/konoyowayumemaboroshi/entry-12957912313.html</link>
<pubDate>Thu, 26 Feb 2026 00:34:07 +0900</pubDate>
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