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<title>クラム</title>
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<description>長編小説「逃避行」連載中。毎日20時に投稿予定_✍﻿</description>
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<title>逃避行ー長編小説ー二章④</title>
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<![CDATA[ <div>&nbsp;四、終末</div><div>&nbsp;朝十時学校から連絡が来たらしく、眠っていた所をお母さんに起こされ、私は学校に行く支度をしてお母さんと一緒に学校に行く。</div><div>&nbsp;心の中は相変わらず空っぽのまま。いつもより人の声が遠のいていく感覚。終業式が終わって先生達しかいない静かな学校。</div><div>先生が</div><div>「大丈夫？朝警察が来て凄くビックリしたのよ。」</div><div>と、まるで学校で私を別室に放置していたのを忘れたかのように話す。</div><div>私は</div><div>「はい…。すみません…。」</div><div>と答えた。</div><div>別に心配して欲しい訳じゃない。何かして欲しい訳じゃない。私は楽しい時間を返して欲しいだけだった。</div><div><br></div><div>…？</div><div>&nbsp;私がおかしいのだろうか。先生とお母さんは何を言っているのだ？先生なんて、特にこの件に関しては本当に関係がない。彼女と居る時、久しぶりにあんなに笑えた。たったの三日間とは思えないほど楽しかったあの時間は、悪い事だったのだろうか。感覚が鈍る。頭痛が、目眩がしてくる。</div><div>&nbsp;気づけば目の前には児童相談所の人と市役所の人が来ていた。</div><div>&nbsp;私はありのままを話した。家族、主におばあちゃんが嫌いだと。だがお母さんはそれをオブラートに包んで「馬が合わない｣と言い直した。</div><div>&nbsp;やはり私がおかしいのだろうか。ダメだ。これ以上深く考えると頭がパンクしてしまう。</div><div><br></div><div>&nbsp;考える事を放棄して私は適当に相槌を打って話しを合わせた。その時私はよく分かっていなかったが児童相談所に行くことになった。</div><div>&nbsp;二週間程で出られると聞いた。だが今すぐは空きがないらしく、あと数日間は家に居ないといけないらしい。</div><div>&nbsp;私は児童相談所の人に聞いた。</div><div>「スマホは…もちろんダメですよね…？」</div><div>もしも、児童相談所がいいと言ってもお母さんが許さないだろうと思ったが一応聞いてみた。隣に居る母は驚いた顔をしていた。</div><div>「うーん。ちょっと、ダメかなぁ…。」</div><div>私は「ですよね」と短く返し俯きながら笑った。</div><div>その時の母の顔は見なかった。きっと、呆れた顔をしていたのだろう。帰ってきてどっと疲れが出る。</div><div><br></div><div>&nbsp;二日ほどだろうか。驚くことにスマホはまだ没収されなかった。児童相談所に行くからだろうか？お母さんの意図が読めない。</div><div>&nbsp;とりあえずその間はあの子と、あいなちゃんと家出の時、別れた後どうなったかなど話し合った。</div><div>&nbsp;</div><div>その時、あいなちゃんのLINEのステータスメッセージを見た。</div><div>「さ &nbsp;び &nbsp;し &nbsp;い &nbsp;な」</div><div>と、書いてあった。それはそうだろう。大好きな恋人と話せないのだ。</div><div>&nbsp;その時は警察の監視下にあると予想されていた。下手に話すとややこしい事になると想像された。</div><div>&nbsp;そこで私はいい事を思いついた。私のアカウントを貸せば良いのでは？と。</div><div>&nbsp;とりあえずあいなちゃんに提案してみた。</div><div>「私のアカウントちょっと貸すよ？」</div><div>すると、「なんでー？」と返って来た。</div><div>&nbsp;いきなりの提案で理解が追いついてないようだった。だから</div><div>「話したいでしょ？」</div><div>と言ってみると、</div><div>「あー。たしかに話したい」</div><div>と言われたので、今度はTwitterに飛んでかずまに話しをしに行った。</div><div>&nbsp;DMで</div><div>「ねー！！彼女様と話したい？話したいならアカウント貸すけど」</div><div>と言うと、</div><div>「神様だ…」</div><div>とまず返ってきた。神なんて大袈裟だな。と思った。でも喜んでくれて良かった。だが、次の言葉にはビックリした。</div><div>「うーん…焦って話さなくてもいいかな」</div><div>!?!?…話さなくてもいいということなのだろうか。</div><div>「ゆっくり話したい」</div><div>&nbsp;ビックリした。話したくないという意味かと思った。</div><div>&nbsp;私は"話したいけど、ゆっくり話したい。"という意味で捉えた。</div><div>&nbsp;これをあいなちゃんにスクリーンショット付きで話した。</div><div>「ほうほう、んー、ということは」</div><div>「良いって事やね！」</div><div>私はルンルンで話しを進めた。だが予想外の言葉が並んでいた。</div><div>「話さなくてもいいということか…」</div><div>ビックリした。なんでそうなった！？私は何とか説明した。</div><div>&nbsp;まぁ、なんだかんだあってアカウントを貸す事になった。</div><div>「私は一旦離れるから自由に使ってもいいよ」</div><div>と言った。すると</div><div>「ツイートとかもしていいの？」</div><div>と質問されたので私は、</div><div>「アカウント返してくれる時に消してくれればいいよ笑」</div><div>と言った。何とか二人で話す時間を作ってあげたかった。こんなことしか出来ないけれど、私なりの優しさだった。</div><div><br></div><div>&nbsp;だが、本当に二日だった。スマホがない。</div><div>&nbsp;すると、探している所をうっかりお母さんに見られてしまった。</div><div>「スマホはもう解約するから。」</div><div>と、一言言われた。</div><div>&nbsp;当たり前だ。自分でもそう思った。だってネットで出会った人を勝手に家に泊めて、危険な目にあったのだ。普通の親の判断だろう。だがお母さんはそういう、手続きだったり色々苦手な面があった。だから、おそらくすぐには解約しないだろうと思った。私にはやらないと、聞かないといけないことがあった。あの子に。聞かないと、お願いしないと。</div><div><br></div><div>&nbsp;お母さんがお風呂に入った所を確認し、私はスマホを探した。スマホは一分もしない間に見つかった。大体検討はついてたのだ。テレビ台にして使っているタンスの中。</div><div>&nbsp;私は、急いだ。まず、スマホを起動させるのに時間がかかった。私の家は湯船に浸かることが禁止されていた為、みんなシャワーで終わる。つまりはお母さんも早く上がって来てしまう。心だけ焦っても仕方がないと思い、私は一旦深呼吸をきて落ち着いた。</div><div>&nbsp;スマホが起動されると、心臓がまたドキドキ鳴り出した。何から話せばいいのだろうか。</div><div>&nbsp;私は細かくして文を送った。まず解約されるということを伝えた。そして、</div><div>「私」</div><div>「ピッピと別れないと」</div><div>&nbsp;その文を打った瞬間だった。自分でも理解出来なかった。ドキドキしているから？いや違う。痛い。辛い。辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い。なんで…私泣いてるんだろう。これが失恋ってやつなのか？</div><div>&nbsp;一瞬考えてしまったがスマホに落ちた涙を拭って私は打った。伝えなくちゃいけないことをあいなちゃんを通して。あいなちゃんは</div><div>「…待ってくれるんじゃない？」</div><div>と言ってくれたが、</div><div>「何年も待たせてられないわ」</div><div>この時悟っていた。私は年単位で戻ってこれないことを。戻って来るのがいつになるか分からないことを。</div><div>&nbsp;だから打った。本音じゃない本音を。スマホという薄っぺらい機械を通して言葉にして、文字にする。</div><div>「ピッピは若いし、優しいから本当はもっと」</div><div>「素敵な子と付き合った方が良いと思ってたの」</div><div>「何年も待たせてたら人生なんてあっという間だし」</div><div>「ピッピが待っている間に私がぽっくり逝った場合」</div><div>「ピッピに申し訳ない」</div><div>私は連投した。涙をボロボロ流しながら画面を見ながら。目が乾くまで。</div><div>「それで」</div><div>「今日からスマホは完全に使えなくなる」</div><div>「から、君を優先して今話してる」</div><div>&nbsp;あいなちゃんは自分なんかを優先していいのかと説いてきたが、私はその時あいなちゃんが最重要人物だと思った。</div><div>&nbsp;何故ならこの家出の目的は、あいなちゃんとかずまを幸せにする事が最優先だったから。</div><div>「私もピッピと別れたくないし、大好きなの。でも、仕方ない気がするの。」</div><div>辛い。仕方ない。私が選んだ道だから。</div><div>最後に、あいなちゃんにこの文章をピッピに送ってとお願いした。</div><div><br></div><div>『私、遥はレンのことが心から大好 きです。 でも今回の件で、 スマホが解約されることになっ</div><div>た。 それで、いつ戻ってこれるかも分</div><div>からない。 本当に、申し訳ないけど</div><div>レンには私のことを忘れて欲しい の。</div><div>急で本当にごめんなさい。</div><div>レンはまだまだ若いし 私もこんな事言いたくなかった。 それに言えるタイミングも無くて 事が早く進みすぎてスマホも使えないし 伝えられなくてごめんなさい。</div><div>これからも、きっと私を待つより 良いと思うの。</div><div><br></div><div>私､ 施設に行くことになったの。</div><div><br></div><div>普通の保護の 言えなくてごめんなさい。</div><div><br></div><div>会いたかった。 本当は手紙書いて 写真送る予定だったんだけど、 間に合わなくて...</div><div><br></div><div>とにかく... 私を忘れて強く生きて欲しい｡ 頑張って欲しいんだ。』</div><div>中学二年生の拙い文章。</div><div><br></div><div>&nbsp;こんなことをお願いしてしまうのは本当に申し訳ないと思った。だけれども、この時はこれしか考えられなかった。</div><div>「そっちも上手くやってな」</div><div>&nbsp;私はその言葉を最後に連絡をとるのを辞めた。</div><div>&nbsp;その後は泣いた。いつも心の支えになってくれた人達が皆んな消えた。死ぬことも考えた。でも、もしいつかまた出会えたら。そう思って踏みとどまった。そんな日やってこない事も知っていたけど、少しの希望を持って。</div><div>&nbsp;私、こんなに人を愛せる人になったんだな。</div><div><br></div><div>&nbsp;次の日、私はお母さんに言われた。</div><div>「あんた家族全員犯罪者にしたんだからね。自覚持ちなさいよ。」</div><div>&nbsp;私、書き置きになんて書いたんだっけ。どれだけ私が追い詰められて居たかなんて知りもしないんだな。事の発端はあいなちゃんじゃない。お母さんなのに。結局、何も分かってない。私がどうやって行動を起こしても、分かってくれない。普通、家出したら自分達も悪かったのではないかと考えるものではないのだろうか。</div><div>&nbsp;何故私や、あいなちゃんのせいになっているのだろうか。</div><div>&nbsp;何故、事情も聞かずにそんなことを言うのだろうか。やはり、私の家族は狂っている。</div><div>&nbsp;私が間違っているのだろうか。いや、私は間違っていない。正しい事をしたと思う。今まで私が受けてきた事。家族にされてきた事。忘れたとは言わせない。</div><div>&nbsp;でも、言い返せなかった。怒鳴られるのが怖かった。あいなちゃんの悪口を言われる度、私の心は傷ついた。人生の中で唯一リアルで楽しい時間を与えてくれた人の悪口。勿論、代償は大きかった。でも、そんなの誰だって聴きたくないだろうに。三十分間耐え続けた。だがその三十分間は何時間にも感じた。</div><div><br></div><div>&nbsp;私は児童相談所に行った事はなかったが、スマホが使えた時、あいなちゃんからどういうところか事前に聞いておいた。</div><div>&nbsp;私と別れたあと、児童相談所に一日居たらしい。</div><div>&nbsp;怖い人が居たとか、何人部屋かとかそういうことを聞いた。私は誰にでも愛想良く話しかけるタイプだった為、怖い人とも仲良くなる気満々だった。</div><div><br></div><div>児童相談所に行く日が来た。</div><div><br></div><div>二章【完】</div><div><br></div><div>次の章からは再びあいな編に戻ります！</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12737470834.html</link>
<pubDate>Thu, 14 Apr 2022 22:25:09 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー二章③</title>
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<![CDATA[ <div>「クラちゃん、やばいお願い事していい？笑笑」</div><div>&nbsp;私のネット名はkuraha。遥という本名を英語表記にして文字を入れ替えた名前。</div><div>&nbsp;私は即答した。どんなお願いにも応えてあげたかった。少しでも、なんでもいいから人の役に立ちたかった。</div><div>「いいよ！」</div><div>&nbsp;すると彼女は焦ったようだった。</div><div>「え、ほんとに？やばいお願いだよ？」</div><div>&nbsp;少し考えて私が聞き返す。</div><div>「どんなお願い？」</div><div><br></div><div>&nbsp;数十秒後の返信、それが私の人生を大きく変える言葉だと、その時は知らなかった。</div><div>「家に泊めてほしいんだ」</div><div>&nbsp;少し驚いたが冷静に考えた。</div><div>&nbsp;「大丈夫！多分大丈夫！多分！」</div><div>&nbsp;そしたら彼女は困惑していた。おそらく半信半疑だっただろう。</div><div>&nbsp;だが私は久しぶりに嬉しさを感じた。</div><div>&nbsp;自分の事を理解してくれる人に会うことが出来る。幸せだった。</div><div>&nbsp;彼女とは通話をしたりキャスを聞きに行ったりなどの交流があった為、女の子だということは九十八％確信してた。</div><div>&nbsp;まぁ、人生どうでもよかった私にとっては男も女も関係ないし、自分は死んだって構わない。死ぬのが本当に怖くなかった。失う物はもう何も無かった。仮に死んだとして葬式代、火葬代が家族にかかるのがざまぁだと思った。</div><div>&nbsp;それに向こうはわざわざ『群馬』から来るのだ。</div><div>&nbsp;それでただ私を殺すだけだと向こうは損しかないだろう。そんなことを考えてしまった。</div><div>&nbsp;別に彼女を疑っている訳ではなかっただろう。</div><div>&nbsp;ただシワの少ない私の脳みそがフル回転してそういう思考に至った。</div><div><br></div><div>&nbsp;と、その前に私は彼女に問わないといけない。</div><div>「私の人生を壊してしまう可能性がある。その覚悟はあるかい？」</div><div>&nbsp;もしその覚悟がないなら断らないといけない。だって、彼女が傷つくじゃないか。</div><div>&nbsp;こんなに、毎日毎日少しづつ生きる理由を与えてくれた彼女が傷つくのは割が合わないじゃないか。</div><div>&nbsp;もしこれを断る事になったとしても傷つけてしまうだろうが、人の人生を変えてしまう恐怖はきっと比にならないぐらい壮絶だろう。</div><div>&nbsp;けれども彼女は</div><div>「大丈夫。出来てるよ」</div><div>&nbsp;安心した。私も覚悟は出来ている。</div><div>&nbsp;私達は計画を立てた。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;彼女は今お友達の住んでいるマンションのロビーに居るらしい。</div><div>&nbsp;だが私には一つ困ったことがあった。</div><div>『明日は学校』なのだ。</div><div>彼女が来るにしても学校から帰った後では遅すぎてしまう。</div><div>&nbsp;外に出るには危ないと家族に思われる時間帯だと想定した。</div><div>&nbsp;私達は相談し合い、会う日を明後日、終業式が終わった次の日と決めた。彼女には可哀想だが、一日はネットカフェなどで過ごして身を潜めて貰うことにした。</div><div>&nbsp;話を聞くには、彼氏さんとの関係が"親にバレたから"と、ざっくり聞いた。詳しくは会ってから話すと。</div><div>&nbsp;私は彼女が心配で正直終業式どころでは無かったが、家に帰ってから少し安心した。</div><div>&nbsp;彼女はまだ警察に見つかっていなかったのだ。</div><div>&nbsp;つまり、このまま行けば明日会うことが出来る。</div><div><br></div><div>&nbsp;私が学校に行っている間は飛行機のチケットなど調べていたらしい。予約も済ませたと言っていた。</div><div>&nbsp;私達は作戦を見直した。間違いはない。大丈夫なはずだ。</div><div><br></div><div>&nbsp;作戦はこうだった。</div><div>&nbsp;私の地元、北見に一番近い女満別空港まで羽田から彼女が飛ぶ。</div><div>&nbsp;バスに乗って北見駅まで来る。着く予定は三時。</div><div>&nbsp;そこから歩いて私の家まで。</div><div>&nbsp;家に着いたら家族にバレないようにこっそり彼女を家に上げる。</div><div>&nbsp;それからは一体どのぐらい滞在するか分からない為、家族にバレてしまわないようにトイレやお風呂は一緒に入る約束になっていた。</div><div>&nbsp;今思えば家の中の事は欠点ばかりだった。成功するはずない。確実に家族にバレるに決まってる。</div><div>&nbsp;本当に、まだ子供だったんだと思う。私も彼女も。</div><div><br></div><div>&nbsp;私は三時の予定より四時間早い昼の十一時に駅に着いて待っていた。楽しみで早く会いたくて、家には居たくなかった。</div><div>&nbsp;待っている間、時間が経つのが遅く感じた。駅の裏にある図書館で時間を潰した。短い小説を三冊ほど読み終えると、三時二分。予定の時間を越えていた。慌てて本を本棚に戻して駅に並列しているバスターミナルに走った。</div><div>&nbsp;彼女を探して居ると、屋内のバス待ち場に座っている彼女らしき人が居た。</div><div>&nbsp;いざとなるとどう話しかけたら良いか分からなくて外であたふたしていると彼女が外に出てきてくれた。</div><div>&nbsp;間違いない。この子なんだ。大丈夫。</div><div>「あいなちゃん…ですか？」</div><div>&nbsp;勇気を振り絞って話しかけた。すると</div><div>「あ、はい…！」</div><div>&nbsp;その返事にどっと安心感が出た。</div><div>「よかったぁ〜！居なかったらどうしようかと思った！」</div><div>本音がポロッと口に出る。</div><div>「いやぁー私も来ないかと思ってドキドキしてたよ」</div><div>と彼女は優しく笑って返してくれた。</div><div>&nbsp;彼女の持っている荷物が気になり、重かったんじゃないかとか色々考えて、遠慮されたけどお客様だからと言って無理矢理持った。</div><div>「それじゃ、行こっか」</div><div>私が先に歩き出した。</div><div>&nbsp;まず彼女はパジャマ姿だった為、私が予め用意しておいた服に着替えてもらった。</div><div>その後は少し会話をながら私達は私の家に向かった。</div><div>&nbsp;その途中で一度休憩を兼ねてイトーヨーカドーのフードコートで、朝私が作ったお弁当を食べてもらった。</div><div>&nbsp;塩っぱそうで美味しくなさそうな卵焼きと、紫が乗ったお米。ただ塩ゆでして花形に型どった人参。たったそれだけのお弁当。</div><div>&nbsp;初めて人にお弁当を作ったが、時間が経っていて余計に美味しくなさそうだ。</div><div>&nbsp;だが彼女はそんなお弁当を「美味しい」と言って食べてくれた。それが嬉しかった。</div><div>&nbsp;道のりは長く、冬だったのもあり道が悪くて六キロ歩くのに普通は一時間半ぐらいで着くはずが、休憩時間も含めて三時間もかかってしまった。</div><div><br></div><div>&nbsp;家に着いてからはドキドキだった。家族に気づかれないように家に入る。まず私が先に入って家の中の様子を探る。</div><div>&nbsp;お母さんはお風呂、おばあちゃんは仏壇のある部屋でお経を読んでいた。今だ。今のタイミングしかない。そう思い、寒い中外で待たせた彼女に謝り、 私達はこっそり中に入った。誰にも気づかれずに私の部屋に辿り着いた。</div><div>&nbsp;だがそこからが問題で、お母さんは私の部屋によく出入りする。</div><div>&nbsp;私の部屋は元々お母さんと二人の部屋だったのでクローゼットはお母さんと二人で使っていた。</div><div>&nbsp; お母さんは今お風呂。つまり後で部屋に入って来る確率が高い。そこが怖かった。</div><div>&nbsp;彼女には毛布に包まってもらって、ベッドから布団が落ちたように見せかけた。</div><div>&nbsp;お母さんが今の自室に入り、何とか難を逃れた。</div><div>&nbsp;だが私はご飯を食べなくてはいけなかったので、彼女に息苦しくないか聞いて、</div><div>「まだ大丈夫そう」</div><div>と返事が返って来たのでもう少し布団の中で我慢してもらう事にして夜ご飯の支度をした。</div><div>&nbsp;豚肉を焼いて、温め終わった多めのお米の上にキャベツを乗せて焼き終わった肉を上に乗せた。</div><div>&nbsp;初めて肉を焼いた。塩コショウで味付けをしたのだがまた塩っぱくなってしまった。料理は難しい。</div><div>&nbsp;家族にバレないように器は一つ、箸は二膳用意した。これを部屋に持っていく。</div><div>&nbsp;我が家は個食だったため、部屋に持っていくのが当たり前だった。</div><div>&nbsp;「ごめん、お待たせ。暑かったよね。」</div><div>&nbsp;彼女は大丈夫だったよと優しく言って、二人でご飯を食べた。</div><div>&nbsp;塩っぱい肉を二人で交代でゆっくり食べた。</div><div>&nbsp;私は途中からお腹がいっぱいになってしまって彼女に食べてもらった。</div><div>&nbsp;その塩っぱい肉も彼女は『美味しい美味しい』と言って食べてくれた。申し訳ないと共に有難い、いや、嬉しいと思った。こんな下手くそな料理でも美味しいと思ってくれる人が居るということを知った。</div><div>&nbsp;そのあとは部屋の明かりを薄暗くして何があったのか詳しく聞いた。</div><div>&nbsp;その話しは数時間もかかる内容だった。</div><div><br></div><div>&nbsp;二○十八年</div><div>九月二十三日頃かずまとTwitter上で出会う</div><div>→九月三十日に付き合う</div><div>→十月八日 初めて通話</div><div>→十二月二十四日初めて直接会うその日は月曜日だったが</div><div>天皇誕生日の振替休日だったため、休みだった。</div><div>→二○十九年</div><div>三月十六日土曜日</div><div>かずまの家に泊まる、親が怪しむ→家庭教師の先生に親が相談→家庭教師の先生が親に日にちをズラしてるのを言ってしまった(九時に塾に行くふりをして、いつもかずまと会っていた)</div><div>→そして定期的に会っていた事もバレる。→かずまがあいなちゃんの親の誤解を解くために手紙を書く→親がかずまを責める→お前の親のせいで体調悪化したと言い始める)</div><div>→家出直前に中山という本当の苗字を山村に変えるようにゆかちゃんに指示される。つまり警察に捕まりたくなかった(考、仮)。だけど指紋でバレる。(ちなみに下の名前を変えなかった理由としては、あいなちゃんの親が知っていたから)</div><div>→三月十七日スマホを親に取り上げられ、かずまとTwitterで知り合った事が親にバレる。</div><div>かずまの精神状態があいなちゃんの親のせいで安定しなくなったと言われ、どう責任を取るんだとかずまの幼馴染のゆかに問いただされて、親と離れる事を決心した。そして家出するという結果に至った。</div><div>との事だった。</div><div>&nbsp;正直ややこしくて聞いただけでは頭の中で処理出来なかったので、メモにしながら説明をしてもらった。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;話しによると、かずまの幼馴染のゆかは難病を患っており、余命幾許もない状態らしい。そしてかずまの事が好きで片想いだったが、そんな状態では恋なんてしてられないと思ったのもあり、かずまが振り向いてくれない事に気付き、あいなちゃんにかずまを託した。</div><div>&nbsp;その時私はふと思った。『あいなちゃんって騙されやすいのでは。』と。</div><div>&nbsp;何故なら私はゆかの存在に違和感を持っていたから。ゆかは小学六年生で、年齢を偽ってTwitterをやっていた。そして話している口調、どこも似ていないはずなのにどこか、かずまに似ている節がある。</div><div>&nbsp;私は少し嘘をついてみる事にした。</div><div>「実は私も、難病なんだ。もう、長くは生きられないんだよね。」</div><div>&nbsp;私史上最大で最低な嘘だった。私はヘラヘラした言葉で続けた。</div><div>「本当はこの時期に毎年検査入院なんだ。」</div><div>…彼女は泣いていた。私のベッドの上で寝そべりながら泣いていた。大粒の涙が彼女の左目から落ちた。</div><div>&nbsp;最低だ。それと共に嬉しかった。他人でも私が居なくなって悲しんでくれる人が居てくれる事を初めて知ったから。</div><div>&nbsp;でもまさか、泣いてもらえるなんて思いもしなかったから、それが嘘だと言うことが出来なかった。</div><div>『ごめんね』</div><div>&nbsp;私は心の中で謝った。</div><div><br></div><div>&nbsp;朝になった。昨日の夜は、楽しかったけど罪悪感でよく眠りにつけなかった。</div><div>&nbsp;問題が出来た。トイレだ。どうやら彼女は限界らしい。私は一階に降りてタイミングを見計らったがなかなか家族に見つからないでトイレまで辿り着ける気がしない。と思った時、一瞬だが隙が出来た。そして何とか彼女をトイレまで連れていった。が、しかしバレた。お母さんがトイレに入ろうとしたのだ。</div><div>&nbsp;その時私は焦ってうっかり玄関から外に出てしまった。そこが問題だった。</div><div>&nbsp;数十秒経って家の中を覗くとお母さんとおばあちゃんは焦った状態。トイレが開かないから。</div><div>&nbsp;私はもう諦めた。</div><div>「ごめん、もう出てきていいよ。」</div><div>お母さん達はビックリして</div><div>「え！」</div><div>としか言葉が出ない状態だった。</div><div>お母さん達があいなちゃんを見た瞬間、予想外の反応をした。</div><div>「もー！ビックリしたー！」</div><div>とお母さん。</div><div>「男の人かと思ったわ」</div><div>とおばあちゃん。</div><div>&nbsp;お母さんは焦りを見せながら笑ってくれた。おばあちゃんは驚き過ぎてそれ以降何も言えてなかった。</div><div>&nbsp;お母さんが</div><div>「誰？学校の友達？」</div><div>と言ってきたので私は心臓をドキドキさせながら「うん。」と嘘をついた。</div><div>&nbsp;その後私は部活が一緒の友達、クラスは違うけど最近仲良くなった。と一時しか持たない嘘を重ねた。</div><div>&nbsp;だが、それが功を奏した。親の目を気にせずお風呂にも入れてあげられるしトイレも行かせてあげられる。お母さんも怒っていない。むしろ歓迎している雰囲気だった。</div><div>&nbsp;朝食はリビングで食べた。その日は何をするか全く決めていなかったので、少し女子力上げようという話しになりお菓子作りをする事にした。伯父から自転車を一台借りて二人で自転車でスーパーに移動した。生チョコを作ろうと生クリーム一パックと板チョコを沢山買って、その帰りにお昼ご飯に五○○円の海鮮丼を買って家に戻り二人で食べた。</div><div>&nbsp;そこでも彼女は美味しい美味しいと言って食べてくれた。今まで食べた中で一番美味しいとまで言ってくれた。私はそれが面白かった。普段食べてる物に感謝もした。</div><div>&nbsp;それと同時に北海道外に出るのが少し不安になった。不味い物しか食べられないのではないかと心配した。まぁ、暫くそんな機会はないだろうと思った。</div><div>&nbsp;生チョコ作りは本当に楽しかった。思い出として作っている間に動画も撮った。彼女は動画には賛成したが恥ずかしいと言って最初の方はあまり映ってくれなかった。途中からは諦めたのかよく喋ってくれるようになった。</div><div>&nbsp;こんなに楽しく笑うのは何年ぶりだろうか。幻聴も幻覚もその時は治まっていたような気がした。</div><div>&nbsp;その時彼女が、この時間が私を少しずつ変えてくれるような気がした。</div><div>&nbsp;毎日消えたい、死にたい、なんて思って自傷行為までしていた私が『生きたい』と思った。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;次の日は、二人でカラオケに行った。本当はもっと観光させてあげたかったが、行って楽しい所も無くて結局カラオケということになった。</div><div>&nbsp;その中で私が歌った曲のうち一つ、彼女の心に刺さる曲があったらしい。それはボカロの中でもバラードに入る部類だった。私もその歌詞が好きで感情を乗せるのが心地よい歌だった。</div><div>&nbsp;どんな曲かと言うと、ロボットの主人公は人間の娘と恋に落ちるが、ロボットには恋とか愛とか理解し難いところがありちゃんと人間を愛する事が出来ない自分が嫌になるが、そんなところも愛してしまう人間の娘の優しさが痛く感じるという曲だった。</div><div>&nbsp;私には恋とか愛とか理解が難しいところがあった。ちゃんとした愛し方が分からなかった。そんなところが自分と似ていると思った。</div><div>&nbsp;カラオケから出ると、外は生憎の霙。急いで自転車を走らせるも向かい風でなかなか前に進めない上に、視界はどんどん悪くなって行った。帰った頃には髪がびしょ濡れで鼻水が止まらなかった。もっと厚着していけば良かったと後悔した。</div><div><br></div><div>&nbsp;その夜の事だった。私は祖母に呼び出された。</div><div>「はるちゃん、こんなに長い間人を泊めていたらお金めっちゃかかるんだよね。相手の親も心配してるだろうし。」</div><div>相手の親の話しより先に金の話しをされた。本当に祖母のそういう所が気に食わない。</div><div>「わかりました。」</div><div>苛立ちを隠して落ち着いた声で敬語で返す。</div><div>&nbsp;部屋に戻った時すぐに彼女に伝えた。</div><div>「もうこの家には泊められないみたい。」</div><div>彼女は下を向いて言った。</div><div>「そっか…。」</div><div>&nbsp;とりあえず私達はゆかちゃんと相談をして彼女を帰す事にした。そして産まれてから一度も北海道から出たことがない私は、とある質問をした。</div><div>「あいなちゃんが住んでる所ってどんな所なの？」</div><div>彼女は少し考えてから</div><div>「んー。なんにもない所だよ」</div><div>と笑って言った。</div><div>&nbsp;話しを聞いてるうちに私も北海道から出てみたくなった。そして彼女が</div><div>「帰ったら親に上手く説明出来るか不安だな」</div><div>と言った。その言葉が引き金となり、私はある提案をした。</div><div>「じゃあ私も着いて行って一緒に説明するよ！」</div><div>この家には散々な記憶しかない。私は何も躊躇わなかった。正直もっと彼女と一緒に居たかった。この三日間は私が今までの人生で一番楽しかったから。</div><div>&nbsp;ただただ自分が嫌いで、ただ、死にたくて失う物とかほんと無くて、本当は消えたかったけど、存在してしまったことは変えられないから。</div><div>&nbsp;そんな人生が戻ってくるのが嫌だった。この非現実を長引かせたかった。</div><div>&nbsp;私達は作戦を考えた。まず、家を四時に出る。カラオケで朝まで過ごす。そして朝になったら駅に向かって歩く。そこからバスに乗り、空港に向かう。飛行機のチケットも予約した。</div><div>&nbsp;完璧だと思った。だが盲点だった。中学生なのだ。十八歳以下の年齢では夜八時までしか居られないと店員さんに言われた。仕方ない。八時までは軽く睡眠を取った。寝れなかったけれども。スマホをそこで充電して一〇〇％にしてカラオケから出た。</div><div>&nbsp;そこからはなにも考えられなかった。北海道の寒い冬の夜をどう乗り切ればいいのか分からなかった。すると彼女から一つ提案があった。</div><div>「ネカフェとか近くにある？」</div><div>確かに、そこなら暖かいだろうし朝まで過ごせるだろう。だけど北海道のネットカフェは親同伴、そして親は身分証明書が必要だった。だからおそらく入れないと言う事を彼女に伝えたが、寒さに耐えきれずとりあえずネットカフェまで行ってみることにした。だがやはり入れなかった。</div><div>&nbsp;店員さんの</div><div>「身分証明書はお持ちですか？」</div><div>という言葉にドキッとする。</div><div>「あ…すみません、持ってくるの忘れてしまって。」</div><div>と返した。店員さんからしたら違和感があっただろう。大きな荷物を持っているのに身分証明書が無いなんて普通おかしい。</div><div>&nbsp;それを悟られないようにすぐにそこを出た。</div><div>&nbsp;そこからは行く宛が無かった。持ってた私のスマホで近くの公園を検索して一番近くの公園のベンチで過ごした。</div><div>&nbsp;なめていた。外の気温はマイナス十度。体感温度はマイナス十四度。しかも今は夜の十時。これからもっと寒くなる。その事を分かって出てきたはずなのに、体の震えが止まらなかった。</div><div>「ちょっと移動しようか…。」</div><div>二人とも限界が近かっただろう。</div><div>「そうだね、どこか室内に入ろう。」</div><div>&nbsp;彼女の同意の元、私達は移動する事にした。歩いていても声が震える程寒かった。</div><div>&nbsp;歩いているとTSUTAYAが開いているのを見つけたのでそこのトイレに一旦入ることにした。</div><div>「TSUTAYAってこんなに遅くまでやってるんだね。」</div><div>&nbsp;十一時頃だっただろうか。田舎の店は早く閉まるから夜出歩いた事など親ともしたことが無い。あちこち歩いたおかげで足が痛い。</div><div>&nbsp;トイレは入口に入ってすぐだったが、とてつもない暖かさを感じた。</div><div>&nbsp;けれども彼女の意見でここに長居するのは危険だと言われたので私はその意見を呑んだ。</div><div>&nbsp;少し温まってまた外に出る。…寒い。だがこの寒さを乗り切ったらまた日が昇って多少暖かくなる。あと六時間の辛抱だ。</div><div>&nbsp;そう思って私達はまた歩き出した。けれども行く宛がない私達はまた別の公園を転々とした。体が凍りつくのでは無いかと不安になった。そうしてる間に二時間ぐらいが経っただろうか。</div><div>「寒いし…お腹空いたね。」</div><div>四時に出てきたため、ご飯も何も食べてない。なんなら飲み物すらも飲めてない。</div><div>&nbsp;ここから見えるセブンの誘惑に負けた。</div><div>&nbsp;彼女はミートパスタを、私はサンドイッチを買った。食べられる場所を探しながら歩いているとマクドナルドを見つけた。</div><div>「二十四時間営業なんだね。」</div><div>驚いた。こんな田舎でも二十四時間営業の店があるなんて知らなかった。</div><div>「そうなんだよね。マックで買った物食べようか」</div><div>彼女が言う。</div><div>でも私は嫌な予感がした。一つはマクドナルドで買った物を食べないでコンビニで買った物を食べるということ。もう一つは、お店の人に通報されるかもしれないということ。</div><div>でも彼女は</div><div>「大丈夫大丈夫！飲み物だけ買えば怒られたりしないよ。」</div><div>と言うので私は彼女を信じて勇気を振り絞って店の中に入った。</div><div>&nbsp;私はパックの中に入ってるサンドイッチを一瞬で食べ終えた。彼女はまだゆっくりパスタを食べている。</div><div>&nbsp;すると彼女から一つ提案があった。</div><div>「一応住所とか覚えておいた方がいいよね。」</div><div>確かにそうだ。</div><div>&nbsp;マクドナルドに居る間に作戦を考えておこうという話しになり、考えた。</div><div>&nbsp;まず、あいなちゃんと私はこっそり年賀状を交換していたという事にした。次に、私達はその年賀状以降連絡を取っていなく、いきなりあいなちゃんが私の家に訪ねて来た事にした。</div><div>&nbsp;そして一応住所を覚えておいた方がいいということで持ってきていたメモ帳に住所を書いて覚えてもらっていた。</div><div><br></div><div>&nbsp;その時だった。</div><div>&nbsp;「狩野愛奈さんですか？」</div><div>&nbsp;後ろから四十代後半〜五十代前半の人の男の人の声がした。</div><div>&nbsp;振り向かずとも分かった。彼女はあっけらかんとした表情を浮かべていたから。『警察』だ。</div><div>&nbsp;終わった。私達おわった。隣の席に居た三人の大学生ぐらいの男の人達はビックリした顔でこっちを見ていた。</div><div>&nbsp;事情聴取を受けている間はただただ彼女の心配と、「さようなら」を言えない悲しさで溢れていた。その時も、私は警察の人に聞かれたことに笑いながら答えた。警察の人もきっとおかしい思っただろう。</div><div>「なんで家出したの？」</div><div>家も学校もクソだからだよ。</div><div>「愛奈ちゃんを一人で帰す訳には行かないきがしたので。一緒に。」</div><div>本音を七割、嘘を三割。</div><div>なるほどね。と適当な相槌を打って警察の人は続けた。</div><div>「机の上に書き置きを残して行ったそうだけど、そこに『警察に通報したら死んでやる』って書いたらしいね。どうやって死のうとしたの？」</div><div>そんなのどうだっていいだろうが。</div><div>「ガラスでもなんでも、そこら辺に落ちてた物で死のうと思いました。」</div><div>「じゃあ刃物とかは持ってないんだね。」</div><div>持っていこうか悩んだが彼女を心配させたくなかったからやめた。</div><div>「はい。」</div><div>その後もどうでもいい質問に幾つか答えて終わった。</div><div>&nbsp;迎えに来たお母さんの目はまるで唐辛子のように真っ赤で、暴力を振るわれた犬のように悲しげだった。</div><div>&nbsp;家に帰ると嫌いなおばあちゃんが抱きしめてきた。いっつもこうだったら今よりマシだったかもしれない。</div><div>&nbsp;部屋に戻った。私はシャワーを浴びて着替えた。</div><div>服を着たら今度はお母さんが抱きしめてきた。お母さんは泣いていた。</div><div>なんて言っていたかは覚えてない私はただ「うん」と言った。</div><div><br></div><div>呆気ない家出の終わり方だった。</div><div>楽しかった分、私の心の中は空っぽだった。</div><div>残ったのは少しの疑問。</div><div>私は人の役に立てたのだろうか？</div><div><br></div><div>&nbsp;家出が終わって疲れ果ててベッドに倒れ込むように寝た。</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12737265647.html</link>
<pubDate>Wed, 13 Apr 2022 20:00:07 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー二章②</title>
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<![CDATA[ <div>二章</div><div><br></div><div>&nbsp;二、崩壊</div><div>&nbsp;十二歳、中学生になった。</div><div>&nbsp;思春期に入った。友達は欲しくなかった。私はひねくれ者だから。</div><div>だっていつかは必ず皆んな裏切って行く。そんなんなら友達なんか要らない。</div><div>&nbsp;でも、気づいたら何故かグループに入ってて。何処かそれは楽しかった。部活もやって。まさに充実した日々だった。</div><div>&nbsp;休みの日は、四人で一緒に田舎臭くて古いショッピングモールに遊びに行って、暑い真夏日にはコンビニでアイスを買って食べた。そんな日々が続けばいいと思った。</div><div>&nbsp;嫌な事が起きたのは、四人でアイスを食べたその次の日だった。</div><div>その日は学校で部活が休みの月曜日。</div><div>私は珍しく自分から声をかけた。</div><div>「今日どっか行かね？てかウチくる？エアコン無いけど。」</div><div>すると、彼女達はそれぞれ用事があるらしく断られた。何かが怪しい。気づいていた。けど気づいてないフリをした。</div><div>&nbsp;その日暇になった私はベッドの上で寝そべっていると、そのまま気づいたら寝ていた。</div><div>&nbsp;起きたらもう暗かった。スマホを開いて時間と通知を確認した。</div><div>&nbsp;そしたらTwitterの通知に違和感。</div><div>「○○と△△最高！」</div><div>とコメント付きの三人の自撮り画像。</div><div>「そうだよね、」</div><div>気づいたら声に出していた。</div><div>&nbsp;私はすぐに三人をブロック。TwitterもLINEも。</div><div>そして泣いた。辛かった。怖かった。</div><div><br></div><div>死にたかった。いや、消えたかった。最初から居なかった事にしたかった。</div><div>そんなこと出来ない事なんて解ってる。</div><div>少しでも信じていた私が馬鹿だった。</div><div>やっぱり信じて良いのは自分だけなのだ。</div><div>辛かったね。お疲れ様。自分。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>&nbsp;私は学校に行かなくなった。</div><div><br></div><div><br></div><div><br></div><div>&nbsp;学校に行かなくなって気がついた。</div><div>&nbsp;学校なんて行かなくたっていいと言うこと。</div><div>&nbsp;私みたいに学校に行けなくなっている人が沢山居ること。</div><div>&nbsp;学校は行かなくてもいいけど、勉強はしておけと言う人。そんな人達が沢山居ること。</div><div><br></div><div>&nbsp;案の定私は勉強なんてしなかった。</div><div>&nbsp;心底どうでもよかった。本当に。そんなことよりも一日でも早く死にたかった。</div><div>&nbsp;でもそんな勇気、自分にある訳無くて。毎日少しずつ自傷行為。</div><div>&nbsp;精神病の中でも難病指定されてる病気にかかっていた。でもそれに私以外誰も気づかなかった。</div><div>&nbsp;言う気も無い。</div><div>小学生の時一度だけ誰かに話したことがある。誰か…誰だっけ…。家族の誰かだろう。</div><div>&nbsp;私は言った。おじさんと同じ病気だと。そしたら</div><div>「あのね、おじさんの病気は本当に重い病気なの。」</div><div>&nbsp;まるで私に、そんな軽いものじゃないと言うように言った。</div><div>&nbsp;当時の私はショックすぎてもう誰にも言わないと自分に誓った。</div><div>&nbsp;でも日に日に声は増えて行った。怖かったが幻聴だと気づいていたからそこまで怖くなかった。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;見えるまでは。</div><div><br></div><div>&nbsp;以前は幻聴だけだった。けれどいつからか『幻覚』が見えるようになった。</div><div>&nbsp;最初は虫がいっぱい見えた。北海道に住んでいたという事もあって私には、大体、幻覚と現実の区別がついた。</div><div>&nbsp;気持ち悪かった。体を這うヤスデに驚く事もあった。</div><div>&nbsp;一度だけ、幻覚だと思って毛虫を踏んでしまったことがあった。本物だった。足の裏に感じるグニュっとした感触。</div><div>&nbsp;でもその時は気持ち悪いより、汚いより、生き物の命を奪ってしまった自分に衷心より呆れた。</div><div>&nbsp;黄色い汁が足の裏から溢れる。本当は私が死ぬべきなのに。潰される側なのに。他の人は私と同じ状況だったらどう思うのだろうか。分からない。いや、どうでもいい。ただ自分に呆れた。その気持ちがその時は一番怖かった。</div><div><br></div><div>&nbsp;そんな生活が続いて半年が過ぎた。</div><div>&nbsp;冬休み。私はいつもの様に部屋に引きこもった。</div><div>&nbsp;クリスマスもお正月も私にとっては変わらない平日だった。</div><div>&nbsp;冬休み明け。お母さんに無理矢理学校に連れていかれるようになった。怒られ、怒鳴られ、昔を思い出すのが嫌だったからなるべく自分から行くようにした。別の部屋で一人で、六時間自習。先生もついていない。</div><div>&nbsp;自由だけど自由じゃないような空間。</div><div>&nbsp;勉強はしなかった。絵を描いたり窓の外を眺めたりして過ごした。休み時間は人とヘラヘラ笑いながら話した。</div><div>&nbsp;正直面倒くさかった。裏で何言われてるか分からないし。</div><div>「遥なんで普通教室来ないの？」</div><div>&nbsp;そんなことを言う人も居たが、逆に疑問だった。今更普通教室に行って授業に追いつけると思うか？</div><div>&nbsp;私はいつも笑いながら誤魔化した。その笑顔はいつも作り笑いだった。</div><div>&nbsp;毎日疲れて行く。ストレスが溜まって行く。それに誰も気がつかなかった。</div><div>&nbsp;いつも分かってくれるのはネットの人だけだった。</div><div>&nbsp;私は小学六年生からTwitterに依存していた。本当は十二歳(中学生)からだが設定の所だけ年齢を変えて使っていた。</div><div>&nbsp;人と本音でお喋りする事はそこでしか無かった。家族とは会話するうちに入らないぐらい口を開かない。みんな嫌いだったから。</div><div>&nbsp;Twitterは楽しかった。</div><div>&nbsp;共感してくれる人が沢山居て、皆んなが皆んな優しくて。話したい人とだけ話せる。嫌な人はブロックすればいい。そこだけが私の居場所だった。</div><div><br></div><div>&nbsp;それに私にはネット彼氏、いわゆるネ彼が居た。</div><div>&nbsp;付き合ったのは七月十四日。夏休み少し前辺り。</div><div>&nbsp;優しくて可愛いくてちょっと変態でおバカさん。そんな彼氏君が大好きだった。依存していた。彼氏君は十九歳で職業は海上自衛隊。主にご飯を作っているらしい。だが海外に行ったりするお仕事だから3ヶ月ぐらいの間、少し話せるか話せないかくらいの事もあった。</div><div>&nbsp;私は不安だった。もし向こうで可愛い女の人が居たら私は捨てられてしまうのだろうか。怖かった。</div><div>&nbsp;そんな時、心配をかき消してくれたのが『あいなちゃん』だった。</div><div>&nbsp;Twitterでも本当に仲良くしてくれて学校に行けていないことも気軽に相談出来た。私より二つ歳上だったが、そんなことを感じさせないような振る舞いをしてくれた。有難かった。不安を消してくれると共に私はまだ人と話す事が出来るという自信も一緒に付けてくれた。親友と言っても過言ではないと思っていた。ネット上なのが本当に勿体ないと思っていた。</div><div>&nbsp;</div><div>ある時伯母が家に来て私に言った。</div><div>「遥…スマホ依存症だわ…。絶対やめた方がいいと思うよ。」</div><div>三十分ぐらい長ったらしく話された。私は適当にうんうんと相槌を打つが内心</div><div>「何言ってんだこいつ」</div><div>としか思ってなかった。</div><div>&nbsp;現実に居場所がないのにネットまで取り上げるのか？？訳が分からない。</div><div>&nbsp;まぁ、親じゃないから取り上げる事まではできないけれど。</div><div><br></div><div>&nbsp;ある時あいなちゃんがカラオケでツイキャスを開くと言ったので私はすぐにリプライを送る。</div><div>「行く！楽しみ！」</div><div>&nbsp;と言ったらあいなちゃんも喜んでくれたようだった。</div><div>&nbsp;どんな声をしているのか気になっていたからとても楽しみだった。</div><div>&nbsp;お友達と一緒に三人でやるらしい。</div><div>&nbsp;私は気長にその日を待った。待つのは昔から不得意で待っている時間がまるで私だけ時間が遅く流れているような気分になる。</div><div>&nbsp;だが案外、YouTubeを見て寝ていたらいつの間にかその日は来た。</div><div>&nbsp;キャスの時間は十時半から。私は珍しく早起きしてもYouTubeを見てその時間まで待った。三十分前になるとあいなちゃんとの会話に盛り上がり、おそらくお互いにドキドキしていただろう。少なくとも私はそうだった。</div><div>&nbsp;キャスの時間が来た。</div><div>&nbsp;「HELLO!!」</div><div>私のコメント。すると</div><div>「お！やっほやっほ！」</div><div>あいなちゃんだった。それに続いてお友達のエルちゃんが挨拶をしてくれた。</div><div>&nbsp;あいなちゃんの声は予想とは全然違った。驚きはしたが決して酷い声ではなかった。女の子らしい声。私の低くてガラガラ掠れたような声ではなかった。</div><div>&nbsp;それより驚いたのはエルちゃんの声。『美声』とはこの人のためにあると初めて思った。声優さん以外の人でこんなに綺麗な声を出す人と出会うのは初めてだった。それぐらい衝撃を受けた。</div><div>&nbsp;もう一人居るらしいが恥ずかしがり屋さんらしく声を出してはくれなかった。少し残念。</div><div>&nbsp;だが正直、二人とも歌はそこまで上手だと思わなかった。歌が上手い従兄弟達と比べてしまったらもうキリがないが、私と比べるときっと上手かっただろう。間違いなく。だから私は二人を褒めた。</div><div>「声綺麗過ぎん！？」</div><div>だとか</div><div>「こんな声に産まれたかった」</div><div>とか言ったような気がする。</div><div>ひたすら褒めちぎってキャスは終わった。私はキャス自体初めてだったが、とても楽しかった。またやってほしいと思った。</div><div><br></div><div>そういった生活をしているうちに私は二人と仲良くなって行った。特に、あいなちゃんとは本当の親友だと思えるぐらい仲良くしてもらっていた。</div><div><br></div><div>&nbsp;ある時から、あいなちゃんと連絡があまり取れなくなった。</div><div>&nbsp;私と一緒で、ネ彼が出来たらしい。</div><div>&nbsp;だから私は要らなくなったのだと思った。腹が立った。まるで利用されてるようじゃないか。必要な時だけ使われる暇つぶし。</div><div>&nbsp;ネットだからって、そんなの酷い。そんな想いがフツフツと湧き出てきてついに爆発した。</div><div>&nbsp;私は今までにないぐらいの速さで文字を打った。</div><div>&nbsp;思っていた事全てを込めて全部で十八個ぐらいの長文ツイートをした。</div><div>&nbsp;心配してくれる人も勿論居た。だけどこのツイートを届けたい人はあの子だから。私は無視して書き続けた。丁度、七個目のツイートを書き終わった時だろうか。</div><div>&nbsp;あの子からリプライが来た。そのネ彼さんからも。正直に言うと爆発しすぎて何を言ったかも、言われたかも覚えていないが、私とこれからもお話ししてくれる事を約束してその時は終わった。</div><div>&nbsp;今思えばまだ子供だったんだなって思うけれども、その時は仲のいい人が離れて行かないようにと必死だったのだろう。許してほしい。</div><div><br></div><div>&nbsp;私は心は精神的に追い詰められ、その度自傷行為をして体もボロボロになって行った。</div><div>&nbsp;その時は本当にネットだけが私の居場所だと思っていたのだろう。</div><div><br></div><div>&nbsp;そんな日々を過ごしていたある日、春休みに入る二日ほど前の事。</div><div>三月二十一日、TwitterのDMに</div><div>「クラちゃん、やばいお願いしていい？笑笑」</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12736905064.html</link>
<pubDate>Mon, 11 Apr 2022 20:03:57 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー二章①</title>
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<![CDATA[ <div>二章</div><div><br></div><div>一、生き様</div><div><br></div><div>&nbsp;スマホに繋がれたプラグ。十七秒の曲がヘッドホンから永遠に流れる薄暗い部屋で、私はベッドの上で微睡んでいた。</div><div><br></div><div><br></div><div>&nbsp;初めて死にたいと思ったのは六歳の時。</div><div>&nbsp;正確には死にたいと言うよりかは生きてて良いのか分からなくなった。</div><div>&nbsp;三日に一回くらいだろうか。もう覚えていないが、お母さんに叩かれたり殴られたりしていた。真冬に外に出されて鍵を開けてもらえなかった事もあった。お母さんの機嫌が悪かったら、ちょっとした事で怒り出して長かった髪を掴まれ、家中引きずり回される。そんなような幼少期を送っていた。</div><div>&nbsp;六歳の時お母さんに言われて気がついた事があった。</div><div>『ほんと、＂遥＂って空気読めないよね。』</div><div>&nbsp;ごめんなさい。ごめんなさい。お母さんごめんなさい。出来の悪い子供でごめんなさい。</div><div>&nbsp;これからはもっと努力するから許してください。</div><div>&nbsp;ひたすら口でも「ごめんなさい」心の中でも謝った。</div><div>&nbsp;それでもあの蔑むような目は私の記憶から離れてはくれなかった。</div><div><br></div><div>&nbsp;小学生になった。私はお母さんが病気だということを知った。</div><div>&nbsp;少しずつお母さんは私を叩いたりすることは無くなっていた。</div><div>&nbsp;私はどんな病気なのか知りたくて母に何度か尋ねた。でもいつまで経っても教えてくれなかった。</div><div>&nbsp;八歳、暫くしてからの事だった。</div><div>&nbsp;お母さんの姉、つまり伯母とお母さんが喧嘩する声で目が覚めた。喧嘩なんてよくある事だったが今回は違った。</div><div>&nbsp;</div><div>&nbsp;お母さんが入院した。</div><div><br></div><div>&nbsp;私は喧嘩の詳細を教えて貰えず、『お母さんが悪い』と祖母と伯母に教えこまれた。</div><div>&nbsp;けれど私は母を信じていた。叩かれても、引きずり回されても、外に出されてもたった一人の肉親。それに、実は悪い記憶だけではない。お母さんが笑っていた記憶だってあるし、優しい時のお母さんは本当に大好きだった。</div><div>&nbsp;だから信じ続けた。それに、理由を聞かないと誰が悪いかなんて分からない。そう思ったから。</div><div><br></div><div>&nbsp;そんな事が起きたと同時に、従兄弟達とは一緒に住んでいた為、私は差を特に感じるようになった。</div><div>&nbsp;どういう所で差を感じるかというと、まずこの家には『六つに分かれたランク』があるということ。</div><div>&nbsp;そのランクは祖母の家に住んでるという事で、祖母が全てを決める。</div><div>&nbsp;祖母は長男長女が好きだ。理由は今でも不明。理不尽で私は祖母から嫌われていた。</div><div>&nbsp;一番は伯母と従兄、二番は従弟、三番は伯父、四番は猫、五番が私、そして六番がお母さんだった。</div><div>&nbsp; そう、自分は五番目。猫より下だった。何故なら私は六番目のお母さんの娘だから。猫は伯母が飼い始めたから。従弟は次男でも伯母の息子だから。</div><div>&nbsp;従兄弟達は勉強も出来て歌も上手くて運動神経が良くて絵も、私より上手かった。家族から期待されていた。</div><div>&nbsp;比較の内容は言葉ではなくて、行動だった。全く違った。私は祖母から見たらただお金がかかる邪魔者だった。</div><div>&nbsp;でも私と従兄弟達は性別が違うから。いつからかそう自分に言い聞かせるようになっていた。</div><div>&nbsp;しかし、そんなの小さな脳みそでは通用する訳がなくて出来損ないの私には、嫉妬する事しか出来なくて、家族や友達、周囲に比べられるのも、本当は嫌だったけど我慢し続けた。耐えるしかなかった。周りから比べられて当たり前。そう思うことにした。</div><div>&nbsp;そんな暮らしをする事数ヶ月。お母さんが退院した頃には伯母、従兄弟達は私達と別々に暮らし始め、私は人前でヘラヘラ笑う癖がついていた。他人に嫌われるのが怖かった。だって、家族にも嫌われてて友達にも嫌われてしまったら、私の居場所は本当に無くなってしまうのだろうと思ったから。</div><div><br></div><div>&nbsp;九歳、自分の部屋が欲しくなった。今はお母さんと二人部屋。毎日お母さんと気まずい空気に耐えられなくなった。普段から何を考えているのか正直よく分からないお母さん。お母さんは気まずいと思ってはいなかったかもしれないが、私は正直毎日気まずかった。なんて言うのか分からないが、扱い方が分からないと言うか。多分お母さんもそんな感じだったと思う。</div><div>&nbsp;私はお母さんの機嫌の良さそうな時に</div><div>「向こうの全然使ってない部屋使って一人部屋にしようよ！」</div><div>と提案した。お母さんはハッキリ言って乗り気じゃなかった。だけれども何とか交渉して祖母が仕事に行っている間にテレビや布団などを向こうの部屋に移動させることにした。その日は祖母が二階に上がってこなかった為気づかなかった。</div><div>&nbsp;次の日はもちろん気づかれ、祖母は激怒して朝六時に怒鳴りながら入ってきた。正直怒られるのにはもう慣れていたし、体も大きかったし、力も祖母より強かった。だから特に怖くはなかった。ただうるさかった。でも、思ったほど怒られはしなかった。</div><div>&nbsp;その日は貯めていたお年玉で自室用のテレビを買った。五万ぐらいだった。九歳のお財布の中に五万も入ってるなんて誰も思いもしないだろうが、私はぎゅっとお財布を握りしめ電気家電屋さんに行く。</div><div>&nbsp;できるだけ今まで使っていた物と似ているリモコンのテレビを選んだ。</div><div>&nbsp;選ぶのにかかった時間は五分くらい。会計で対応してくれたお兄さんも優しかった。</div><div>&nbsp;こうして、私の部屋にはテレビ、本棚、机、ベッド、とまぁ少し寂しさは残るが充実した部屋になった。</div><div><br></div><div>&nbsp;十歳、親友のコノハが学校の課題で犬を飼っている人にインタビューをしないといけなくて、毎朝登校する時通る、立派な家のゴールデンレトリバーを飼っているおばあさんにインタビューしたいと言い出したので、いつもは七時半に迎えに行くところを一時間早めて六時半に迎えに行くことになり、</div><div>約束した。私は朝が苦手だったが頑張って5時半に起きて六時半にちゃんと彼女の家に着くようにした。</div><div>&nbsp;けれども、インターホンを押していつもなら「はーい」</div><div>と一言返ってくるが、その日は違った。</div><div>&nbsp;いきなり玄関のドアがガチャッと開き、コノハのお母さんが出てきた。</div><div>その時顔を見てすぐに気がついた。怒っている。</div><div>&nbsp;でも私は間違った事はしていないはずだ。だから</div><div>「おはようございます！コノハちゃんを迎えに…」</div><div>私の声に被せてコノハのお母さんが言った。</div><div>「非常識だわ」</div><div>&nbsp;その突き放すような言葉に私はとてもビックリした。一瞬何のことか分からなくて頭の中を整理して口を開けた瞬間彼女のお母さんは続けた。</div><div>「準備出来てないから。大体、おかしいでしょ？こんな朝早くに来られても相手困るよね？そんな事も分からないの？」</div><div>&nbsp;私は自分がした事の何が悪いのか分からなかった。だから、今にも溢れ出しそうな涙を堪えていつものヘラヘラした顔で言った。</div><div>「あの、今日はコノハちゃんが六時半に迎えに来て欲しいって…」</div><div>&nbsp;また被せてコノハのお母さんが言った。</div><div>「あーはいはい。そうだけどさ、分からないの？」</div><div>&nbsp;少し面倒くさそうに言う彼女のお母さん。</div><div>&nbsp;本当に分からなかった。だが、私は</div><div>「…すみません！朝早くに起こしてしまいましたね！今後気をつけます。」</div><div>と丁寧にお辞儀して、後ろを振り返り走った。目からはポロポロと大粒の涙が零れた。そんなに迷惑なら、昨日のうちに電話をくれればよかったのに。それをコノハのお母さんに悟られないようにすぐに振り返り自分の家に帰った。</div><div>&nbsp;帰ったらお母さんが駆け寄ってきてくれた。</div><div>「どうしたの！？」</div><div>&nbsp;泣いている私を見て焦るお母さん、私はあったことを正直に全て話した。</div><div>&nbsp;お母さんの手が上がった瞬間叩かれると思った。だって、怒られたということは私が間違った行動をしたとおもったから。けれど違った。お母さんの手がそっと私の頭に触れた。撫でられた。その事に驚き涙は止まった。</div><div>&nbsp;母はコノハの家に直接電話をかけた。</div><div>&nbsp;私のために怒ってくれたのだ。冷たかった母が、その時は心の深い所がとても温かく感じた。</div><div>&nbsp;けれどもその後、彼女と登校する事はなかった。遊ぶ事も、話す事も。</div><div>&nbsp;それが辛くて思い出す度、コノハを見る度、私は辛くて泣き出す事があった。泣き出すと毎回周りが先生を呼ぶ。ほっといてくれれば良いものを。と私は内心冷たかった。</div><div>&nbsp;私は昔から説明するのが下手くそだったのをいいことに、コノハは自分の良いように話しを作り替えて私が悪いように言った。だから先生も</div><div>「ほら、コノハちゃんは何も悪くないでしょ？泣くことなんて何も無いわよ。」</div><div>と言った。</div><div>&nbsp;しかも、コノハの家は裕福だった為、新築の広い家に最新のゲーム機を揃えて何人も友達を呼ぶ。私の従弟もたまに呼ばれていた。その話を従弟から聞く度に私は従弟に</div><div>「あの家には行くな！！行くならこの家にもう来るな話すな！！」</div><div>と怒鳴り声をあげた。母が事情を説明してくれたから従弟も分かってくれたようで話すことも行くことも無くなった。それでも収まらない涙で私は学校を少しずつ休むようになった。</div><div><br></div><div>&nbsp;殺せ殺せ押し殺せ。私は感情を殺すようにした。</div><div>学校を休むと言っても三日に一度は多分行っていたと思う。時たまに一週間ぐらい休む事もあったけれど。</div><div><br></div><div>&nbsp;その頃から私にも病気の症状が出始めた。声が…聴こえるようになった。</div><div>&nbsp;それはどこから聴こえているのか分からなくて、お母さんに知られないようにこっそり探した事もあった。</div><div>&nbsp;知られないようにしたのはお母さんを心配させたくなかったから。これがもし私にしか聴こえないものだったら、私は</div><div><br></div><div>"統合失調症"だから。</div><div>&nbsp;私は病名を知っていた。伯父がその病気で引きこもっているから。そしてそれで家族が大変な目に遭っている事も知っていた。お母さん以外の家族が苦しむなら、ざまあみろとでも思うがお母さんまで苦しんでしまったら、可哀想だ。</div><div>&nbsp;暫くして、やっぱり私は病気だということに気がついた。辛かった現実を受け入れるのには時間がかかった。いや、正直今ですら受け入れられていないのかもしれない。その頃はスマホすら持っていなかったから、只管テレビを観て過ごした。何度も観た映画に、なんとも観たアニメ、ループさせる日々。外に出る気は全くしなかったが、時折母が北海道内だが遠出したがるので私はそれに着いていく。</div><div>&nbsp;私は割と近場でお気に入りのホテルがあり、そこによく泊まりに行っていた。そこには天空ガーデンスパがあり、そこにいると何だか落ち着く事が出来た。おそらく、私は水に関係する場所が好きなのだろう。特に海、湖は私が唯一心が落ち着ける場所だった。『前世は魚だったのかな』なんて思ったり考えたりして二時間ぐらい入り浸る。</div><div>「帰りたくない。」とお母さんに巫山戯たように言う。お母さんも「そうだねぇ。」と言うが勿論帰らねばならない。</div><div>&nbsp;現実から目を背けないように私は重たい荷物を持った。</div><div><br></div><div>十一歳、私は知った。お母さんが鬱だと言うこと。お母さんの容体はあまり良くはないと言うこと。お母さんの症状は私にも当てはまる部分があると言うこと。そしてそれは『私の方が重い』と言うこと。</div><div>&nbsp;薬は貰わなかった。病院の先生に私の事はただ眠れないとだけ伝えた。事実だった。嘘はついてない。私はいつもお母さんを優先させた。お母さんが心配だったから。辛そうにしている所は見ていたくない。そう思った。</div><div>&nbsp;急に発作が出ても、我慢した。怖かったけど、我慢した。自分よりお母さんに元気になってもらいたかった。</div><div><br></div><div><br></div><div>蝉が木から落ちる。</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12736722556.html</link>
<pubDate>Sun, 10 Apr 2022 19:58:54 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー⑧</title>
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<![CDATA[ <div>八、逃避行</div><div>私は先が見通せなかったので、ゆかちゃんに相談した。すると、かずまの家に警察が毎日来ていて迷惑がかかっているとの事だったので正式に家に帰る事を決意した。しかし、私は両親から怒られる事を恐れた。それに上手く両親に思ってる事を伝えられるか分からなかったのだ。そして一番心残りなのがもっとkurahaと一緒に居たかった。</div><div>「帰ったら親に上手く説明できるか不安だな…」</div><div>私は一人言のように呟いた。するとkurahaは信じられない事を口にした。</div><div>「じゃあ私も着いていって一緒に説明するよ」</div><div>嬉しかった。この冒険がまだ続く事が。何よりkurahaと一緒に居られる事が。私はkurahaの厚意に甘える事にした。私はもっとこの先ずっとkurahaと一緒に居たい。一緒に苦楽を共にしたい。私はこの三日間でそんな思いが湧いてきた。かずまと一緒に過ごす為に両親を説得する為に家出をしてきたという当初の目的は忘れていた。これからはこの先の二人の幸せの為に大人と闘う。</div><div>&nbsp;夜になり、私はkurahaと一緒に寝たいと言った。これが最後の夜であり、寄り添って寝たかったからだ。kurahaは最初は狭いよと笑って拒否していたが、最終的には</div><div>「良いよ」</div><div>と言ってくれた。私達は寝っ転がりながら二人の未来を考えた。群馬に来たらこんな事がしたい、させてあげたい。二人で目を輝かせながらこれから先の未来の事を想像した。</div><div>「私さ、桜一回も見た事ないんだ」</div><div>kurahaは寂しそうな顔で言った。</div><div>「え！？なんで！？」</div><div>桜は全国に咲いており、そこら中に咲いているはずだ。</div><div>「この時期検査入院だからさ」</div><div>kurahaは笑ってそう言った。笑った顔が寂しげで無理に笑っているような表情だった。</div><div>「じゃあさ、東京行ってかずまとゆかちゃんとクラちゃんと私の四人で桜見ようよ！この冒険で大人と闘ったメンバーでさ」</div><div>私は話しながら想像をした。きっとこのメンバーで花見をしたら楽しそうだ。</div><div>「いいね！ゆかちゃんやかずまくんと会うの楽しみだな」</div><div>kurahaも目を輝かせながら賛成してくれた。</div><div>「あとあと！群馬に行ったらエルちゃんに会いたいな」</div><div>エルはクミのTwitter名だ。</div><div>「もちろん！三人で遊ぼうね！」</div><div>クミと私とkurahaの三人で遊ぶのも楽しそうだった。想像するだけでも楽しい。</div><div>「エルちゃん可愛いだろうな〜」</div><div>kurahaはシャーペンを持ってイラストを描き始めた。一分ほどでクミのミニキャラを描き上げた。可愛いイラストだ。何となくクミに似ている。kurahaは絵を描く事が上手でそんな所も尊敬していた。</div><div>&nbsp;二人で楽しい話をしながら気付いたら寝付き、朝になっていた。二人で作戦を立てた。</div><div>&nbsp;飛行機は昨日の夜に明日の飛行機を二人分予約してあるので準備万端だ。今日の夕方頃に二人で家を出て、カラオケで朝まで過ごし、バスがある北見ターミナルまで歩いて行くつもりだ。北見ターミナルから女満別空港へ行き、二人で羽田空港へ行って電車で私の家へ向かうつもりだ。家出の期間は</div><div>&nbsp;kurahaはスーツケースを出してお泊まりセットを用意しているようだ。紙に何か書き出したので</div><div>「何書いてるの？」</div><div>と聞くと、</div><div>「警察に通報したら通報した人の目の前で首を切って死にますって書いてる笑」</div><div>kurahaはあっけらかんと答えた。kurahaの覚悟は凄い。私なんかと比べ物にならないくらいに。</div><div>「そしたらさ、通報されないでしょ？」</div><div>確かに通報されないだろうと思った。いくら子どもの事が心配でも、通報したら目の前で死んでしまうんだから誰も怖くて出来ないだろう。人の死を間近で見るのはトラウマに残る。自分の身内なら尚更だ。私もkurahaと同じように家族を脅していればこのように警察に追われる事は無かったのだろうか。</div><div>&nbsp;私達は準備万端という事で早速歩いてカラオケに向かった。北見バスターミナルからkurahaの家まで遠くは無いが、中々の遠さだった。しかし、休めるような所も無ければ、休んでいる暇も無い。辺りはすぐ暗くなってしまって道が分からなくなってしまうからだ。痛い足を引きずりながらカラオケに着いた。</div><div>&nbsp;カラオケでは少し歌った。朝まで居れるから少しくらい娯楽をしようと思ったのだ。歌っている途中でkurahaのスマホが鳴った。どうやら電話がかかってきているようだった。</div><div>「もしもし」</div><div>kurahaは電話に出る。どうやら伯母さんから電話がかかってきたらしい。恐らく家に帰るように促されているのだろう。</div><div>「もう限界なの！！！」</div><div>kurahaはそう言って電話を切った。私は彼女にどういう顔を向けたら良いか分からなかった。私のせいで家出を実行させてしまったのだから。私はkurahaに向ける顔が無かったが、彼女は笑った。また悲しそうで辛そうな笑顔だった。</div><div>&nbsp;kurahaはストレスを発散させる為だか分からないが、連続して悲しい曲を歌った。歌声は切なくて聞いているこっちまで悲しくなった。kurahaにこんな思いをさせてしまったのは私が原因だ。私が提案しなければ、迷惑をかけていなければ、そもそも北海道に来なければ…色々な思いが巡った。しかし、覚悟が出来ていないのは私だけだ。kurahaは命をかけてまで覚悟をしてくれた。私はその気持ちに応えないといけない。気合いを入れた。最後までkurahaを群馬に辿り着かせる。責任を持つ。その覚悟を持った。</div><div>&nbsp;カラオケで歌い切ったら睡眠を取っていたが、問題が発生した。十八歳未満だからと八時に追い出されたのだ。カラオケに居られないのは困るので</div><div>「私、十八歳です」</div><div>と嘘をついたが、身分証が無いため、追い出されてしまった。その後、ネットカフェに行ったが、そこでも身分証が無い事を理由に追い出されてしまった。</div><div>&nbsp;私達は途方に暮れた。カラオケからネットカフェに歩く際にもう足が限界だった。ネットカフェがダメならもう泊まれる所はないだろう。私達は仕方なく公園に居座る事にした。ブランコを見ると、雪で危ないからだろうか。ぐるぐる巻きにされて乗れないようになっていた。ベンチで座りながら足の疲れを癒すが、北海道の冬を舐めていた。気温はマイナス十度という信じられない気温だった。二人で私が持ってきたタオルや毛布を被ったり、手袋をしたり、カイロを持ったりして寒さを凌ぐが、震えるばかりだった。</div><div>&nbsp;このまま目を閉じたら二人とも凍死してしまう。何かしなければ…</div><div>「お腹空かない？」</div><div>思えば、お昼から何も食べていない。パワーを付ける為にも何か食べないといけない。家から持ってきたおやつカルパスとチーズかまぼこ、ハイチュウを二人で分けて食べた。</div><div>&nbsp;そこから一時間程公園に滞在するが、限界が来た。</div><div>「ちょっと移動しようか…」</div><div>kurahaも限界なのだろう。</div><div>「そうだね、どこか室内に入ろう」</div><div>私はどこか室内に入る事を提案した。このままだと生き延びる事が難しいと感じたからだ。</div><div>&nbsp;二人で歩いていると、ふとkurahaのかじかんだ手が目に入った。kurahaは手袋をしてこなかったのだ。私はkurahaに半分手袋を貸してあげる事にした。kurahaは遠慮してたが、</div><div>「こうすれば寒くないでしょ」</div><div>私は片方の手袋を外してkurahaの手を握った。</div><div>「うん。暖かいね」</div><div>kurahaは少し笑った。kurahaの手は冷たくて少しだけ暖かった。</div><div>&nbsp;私はkurahaの彼氏の事を聞いた。彼氏さんはネットの人で『ピッピ』という人らしい。ネット恋愛だが、私とかずまよりも長く続いていて常に電話をしているらしい。愛おしそうに語るkurahaを見ると本当に幸せなのだろう。私は少し罪悪感を感じた。</div><div>&nbsp;近くを歩いていると、TSUTAYAを見つける。そこのトイレで時間を潰す事にした。室内というだけで暖かい。外の気温とはだいぶ違った。ここにずっと滞在しているのも良いと考えていた。しかし、外からの足音が聞こえた。私はかずまのマンションのロビーに滞在した際に警察が来た事を思い出した。ここにずっと滞在していると怪しまれて警察が来るような気がした。</div><div>「ここにずっと居るのは危険かもしれない」</div><div>私は外に出る事を提案した。行く宛てが無かった私達は再び別の公園を探した。</div><div>&nbsp;公園に着くとまた地獄の始まりだった。先程の公園より周りに住宅地が無いので人にバレづらい場所にあったが、時間が経ったからなのか寒いような気がした。二時間程我慢をするが、死ぬほど寒い。震えるkurahaを見ていると、私と同じくらいの身長のはずなのに小さく見えた。</div><div>目を離したら消えてしまいそうだった。大人っぽくて考え方も生きてきた経験値も大人なkurahaが子どもに見えた。ああ、本当はkurahaはまだ幼い。kurahaが大人に見えるのは育った環境のせいだ。本当はまだ守るべき存在だったんだ。そんな事にも気付けなかった。</div><div>「寒いし…お腹空いたね」</div><div>私は再び歩く事を提案した。私が守らなくては。消えかけている命を救わなくてはいけない。</div><div>私達はとりあえずコンビニ行く事にした。コンビニで私はパスタを購入し、kurahaはサンドイッチを購入した。コンビニの時計を見ると0時を回っていた。こんな時間に出歩いた事などもちろん無かった。そしてまだ0時だという事に絶望してしまった。これから朝まで外で過ごさなくてはいけない。私も彼女も限界だった。</div><div>&nbsp;コンビニを出て歩いていると、マックを見つけた。私は東京でマックに滞在していても怪しまれなかった為、ここでもいけると思っていた。</div><div>おまけにマックは二十四時間営業なのでここで朝まで過ごせるだろうと考えていた。</div><div>&nbsp;私達はマックに入り、飲み物だけ購入してコンビニで購入した食べ物を食べる。kurahaはどうやら別のお店で購入した物をマックで食べるのはいけない事だと考えていたようだった。しかし、私は大丈夫だろうと軽い気持ちで考えていた。</div><div>&nbsp;マックでは作戦を考えていた。私とkurahaはTwitterで知り合い、お互い住所を知っていた。その為、電子機器を使わなくとも来れたという設定にしようという話にした。警察や両親に電子機器でやり取りしてた事をバレたくなかったからだ。私は辻褄が合うようにkurahaが書いてくれた住所を暗記した。</div><div>&nbsp;暗記していて脳が疲れたのとマックの中とはいえ、寒かったので顔を伏せて寝ていた。すると、顔を上げた瞬間予想もしなかった出来事が起こった。『警察』がいたのだ。四、五人の警察に囲まれた。もうどうする事も出来ないと思った。もうこれでkurahaが群馬に来るという希望が砕けてしまった。絶望に満ちた。楽しい未来を想像していたから余計に。</div><div>「狩野愛奈さんだよね？」</div><div>警察は私に声をかけてきた。</div><div>「はい。」</div><div>そう答えるしかなかった。違いますと答えても、逃げても捕まるだけだ。こんなに沢山警察が居たら逃げれるわけがない。</div><div>「何でか分かるよね？署まで来てくれる？」</div><div>ああ…もう全てが終わってしまった。明日帰ろうと思ってたのにこんなにも運が悪い事があるだろうか。</div><div>&nbsp;「あれ君は？名前は？どうしたの？」</div><div>警察はkurahaの存在に気付いたようだ。どうやら私に気を取られて気付かなかったらしい。</div><div>「佐藤遥 」</div><div>kurahaはぶっきらぼうに答えた。</div><div>「君達未成年なんだからこんな時間に出歩いちゃダメだよ」</div><div>警察はそう言って私とkurahaにそれぞれ二人ずつ付いていった。どうやらパトカーもkurahaと分かれるらしい。私は警察署では一緒に居れるだろうと考えていた。</div><div>&nbsp;パトカーの中では私を挟んで警察が座った。そんな事しなくてももう逃げないのに。犯罪者の気分だった。</div><div>&nbsp;警察署に着くとkurahaがゆかちゃんにDMで</div><div>「け」と打っている姿が見えた。事前に警察が来たら「け」と打ってやり取りを消すようにゆかちゃんから指示されていた。kuahaは指示通りにやっていた。私はそれが最後に見るkurahaの姿だった。</div><div>&nbsp;警察署では取り調べが行われた。</div><div>「どうして家出したの？」</div><div>「どうして北海道に来たの？」</div><div>など在り来りの事を聞かれた。私は今までの経緯を簡単に話した。警察の人は優しく私の話を聞いてくれた。警察から家族に見つかったと電話をしたらしい。もう時刻は恐らく二時過ぎだろう。</div><div>「北見何も無いでしょ？笑」</div><div>「札幌とか函館とかそっちの方が良かったんに笑」</div><div>などフレンドリーに話し掛けてくれたので私もあまり緊張せずに話す事が出来た。そして驚いた事に食事を提供してくれたのだ。</div><div>「カップラーメンあるよ」</div><div>「パンもあるけどどうする？」</div><div>警察の方がお腹空いてるだろうと提供してくれたのだ。私は両方受け取り、快く頂いた。すると、若い女の人が話し掛けてきた。</div><div>「ボカロ好き？」</div><div>私は趣味が合う人を見つけ、楽しく話した。どうやら彼女はまだ十八歳らしい。十代の頃からこんなに遅くまで働いている姿に感動した。</div><div>「よく一人で北海道まで来たね」</div><div>「行動力があるね」</div><div>と皆褒めてくれた。何だかくすぐったい気分になった。何より、</div><div>「家出は悪い事ではないからね。もちろんしてはいけないんだけども」</div><div>と言ってくれた事が凄く嬉しかった。私は多くの人に怒られる事をしていると思っていたが、私のした事は間違っていない。そう思った。</div><div>&nbsp;警察署で朝まで寝た。酔っぱらいのおじさんが吐いた部屋らしいが、特に臭いがしなかったので敷かれていた布団で寝た。本来なら知らない場所ではあまり寝られないのだが、疲れていたのだろう。寝てしまった。</div><div>&nbsp;警察署では結局、kurahaに会える事はなかった。私はkurahaに「ありがとう」も「さようなら」も言えていない。あんなに沢山の事をしてもらったのに。後悔でいっぱいだった。こんな事になるのなら、kurahaを連れてくるべきでは無かった、一人で帰ればkurahaに迷惑をかける事は無かったのだ。あの時、私がマックに入ろうなんて言わなければ見つからなかったのかもしれない。全て私の責任だった。kurahaは今頃大丈夫だろうか。私は憂鬱な気分で目が覚めた。</div><div>&nbsp;朝になると、どうやら北見児童相談所へ行くらしい。私は言われるがままにパトカーに乗り、北見児童相談所まで送って行ってもらった。</div><div>&nbsp;児童相談所でも警察と同じような事を聞かれた。</div><div>「どうして家出したの？」</div><div>私は警察署と同じように理由を話す。同じような質問に飽き飽きしていた。</div><div>&nbsp;聞き取り調査が終わると、子ども達が居る所に案内された。</div><div>&nbsp;児童相談所では十人程の子ども達がいて年齢は様々だ。誰も私が何故ここに来たのか尋ねてくる人は居なかった。恐らく一人一人様々な事情でここに来ているからだろう。無邪気にはしゃぐ子どもでありながら事情を察してくれる人達で安心した。それと共に私よりも小さな年齢から家庭の事情を抱えている事を考えると何とも言えない気持ちだった。</div><div>&nbsp;児童相談所では快適で皆優しくて明るいので、深い事情を抱えているようには見えなかった。</div><div>一日で友達が出来て先生方も優しくて素敵な場所だった。強いて言えば、自由を奪われているという事だろうか。ここでは通信機器であるスマホはもちろん、中に持って行ける荷物も限られている。お風呂の時間も決まっていて、確かに自由は多いが、縛られる自由も多い。外にはもちろん行けないし、まるで牢獄のようだった。</div><div>私にはそう感じた。一日だけなら楽しかったという気持ちで終わるが、恐らく何日も何ヶ月も居ると嫌になるだろう。そんな空間だった。もちろん先生や子ども達が沢山居て良い環境だが、私には少しだけ息苦しかった。</div><div>&nbsp;夜になると、両親が迎えに来た。皆と離れるのは少し心苦しかったが、両親の顔を見ると安心感があった。意外な事に両親は私を怒ったりしなかった。それよりも</div><div>「無事で良かった」</div><div>と言ってくれた。祖父母や親戚も心配してくれていたようだった。私はこんなにも多くの人に愛されていたなんて思ってもいなかった。私が居たところでどうにもならないと思っていたから。しかし、それは違ったようだった。祖父母は毎日泣いており、母も泣いていたそうだ。私は申し訳なさでいっぱいだった。もう家出なんてしない。家族が不幸になるだけだから。そう思った。</div><div>&nbsp;家出など無かったかのように家族の仲はすぐ元に戻った。北海道を楽しみ、お土産なども見て回った。見た事ない美味しそうなお土産に溢れていてついつい沢山買ってしまった。</div><div>&nbsp;群馬に戻ると今度は高崎警察署で取り調べが行われた。質問も児童相談所と北見警察と同じだった。私は淡々と質問に答え、家に帰った。久しぶりの家は五日間しか留守にしていなかったのに懐かしかった。</div><div>&nbsp;いつもの日常に戻ったが、一つだけ問題があった。警察に見張られている為、かずまが連絡を取るのを拒否したのだ。私は仕方ないと思ったが、寂しかった。もうすぐ半年記念日でもうすぐかずまの誕生日だったから。</div><div>&nbsp;kurahaと思い出を語りながらお互いの状況を伝えていた。しかし、ある日kurahaは児童相談所へ行くと言っていた。私のせいなのだろうか。児童相談所へは恐らく長くても一ヶ月程度で戻ってくるだろうと考えていた。その為、呑気に児童相談所の様子や居た人達の特徴などを伝えていた。kurahaは直ぐに帰ってきてまた今までのように連絡が取れると思っていたのだ。</div><div>&nbsp;四月一日</div><div>この日はクミとカラオケに来ていた。クミに北海道での出来事を語っていた時、突然kurahaからLINEが送られてきた。</div><div>「ごめん。大事な話がある。本当に謝らないといけないこと。」</div><div>私は嫌な予感がした。急いでkurahaにLINEを送った。</div><div>「…なに？」</div><div>私は聞くのが怖かった。</div><div>「私、もうすぐ居なくなる(スマホ内で)」</div><div>「ピッピと別れないと」</div><div>どうやらkurahaはスマホを解約されるらしい。それで私を最重要人物として選んで急いで連絡をしてきたらしい。スマホを解約されるという事はもう話せない。絶望した。</div><div>「待ってくれるんじゃない…？」</div><div>ピッピとkurahaは愛し合っていたのでピッピは何年だろうと待ってくれるだろうと考えていた。なので別れる必要は無いとkurahaを説得した。</div><div>「何年も待たせてられないわ。ピッピは若いし優しいから本当はもっと素敵な子と付き合った方が良いと思ってたの。」</div><div>「何年も待たせてたら人生なんてあっという間だし、ピッピが待っている間に私がぽっくり逝った場合、ピッピに申し訳ない。」</div><div>「本当に私もピッピと別れたくないし大好きなの。でも仕方ない気がするの。」</div><div>「それともう一つ言いたい事があって私は君を恨まないし、重い気持ちでこれからを過ごしてもらいたくないの。」</div><div>「だから強く生きてね！！遅くでも五年とかで戻ってこられるように頑張るから。」</div><div>kurahaからピッピに送ってほしい文が送られてきて施設では私が行った所と違うので会えないと言われた。</div><div>「ごめん…もう…」</div><div>「そっちもうまくやってね」</div><div>この言葉を最後に返信が途絶えてしまった。私はここに来て初めてkurahaが以前言っていた人生を壊してしまう可能性の意味が分かった。今頃分かってしまった。私はとんでもない事をしてしまった。一人の人生を奪ってしまったのだ。これから先楽しい事があるはずの人生を奪ってしまった。私が北海道へ行かなければ家出しなければ私が死んでしまっていれば。様々な事を考えた。この先、生きていける自信が無かった。この重い責任を背負って生きていかなければならないのだから。何度も自殺しようと考えた。何故なら私は人の人生を奪った人。生きている資格など無いのだから。しかし、その度に彼女の言葉が脳内で再生された。</div><div>「強く生きて」</div><div>私は踏みとどまった。kurahaの希望を裏切る訳にはいかない。彼女も新しい環境で頑張って生きているのだ。私がマイナスな気持ちでいてどうするのだ。私は人を救いたい。何よりkurahaを、そして同じような立場の人を。そう思った。私が生きる理由はそこにある。私は涙を拭って今日も強く生きる。彼女に再び会えるその時まで。</div><div><br></div><div>一章[完]</div><div><br></div><div><br></div><div>次の章からはkuraha編です。</div><div>二章からも是非お読み頂けると幸いです。</div><div><br></div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12736550062.html</link>
<pubDate>Sat, 09 Apr 2022 21:04:48 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー⑦</title>
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<![CDATA[ <div>七、至福</div><div>「クラちゃんやばいお願い事していい？笑笑」</div><div>私はこの現状から目を背け、いつものように明るくkurahaに話しかけた。するとkurahaからの予想外の反応に私は驚いた。</div><div>「いいよ！」</div><div>すぐに返信が来た。kurahaの即答に少し戸惑った。ダメ元で言ったので予想外の言葉だった。</div><div>「え、ほんとに？やばいお願い事だよ？」</div><div>私はkurahaのあまりにも軽く答える素振りに驚いて聞き返した。</div><div>「どんなお願い？」</div><div>kurahaが内容について聞いてきたので私はついに話す決心をした。</div><div>「家に泊めてほしいんだ」</div><div>言ってしまった。恐らく無理だと断られるのがオチだろう。私はドキドキしながら返信を待った。</div><div>「大丈夫！多分大丈夫！多分！」</div><div>kurahaは内容を話しても大丈夫だと答えた。</div><div>「え、ほんとに？」</div><div>私はやはりkurahaがあまりにも簡単に大丈夫だと言うので未だに信じられなかった。</div><div>「うん。でも一つだけ。確認がある。」</div><div>さっきとは違って真面目な雰囲気だった。</div><div>「私の人生を壊してしまう可能性がある。その覚悟はあるかい？」</div><div>kurahaの人生を壊してしまう可能性…怖かった。しかし、何の覚悟も無しに家出をしてきたのでは無い。私は現状を変える為に家出をしてきた。このままの状態が続くといつかお金が尽きて寒い中、死んでしまうだろう。死にたくなかった。戦いたかった。ただの自己中心的な考えだが、kurahaの人生を壊してしまう恐怖よりも先に死んでしまいそうな状況から抜け出したかっただけかもしれない。助けてもらいたかった。この状況から。</div><div>&nbsp;「大丈夫。出来てるよ。」</div><div>私は複雑な感情を抱きながら今の状況と戦う覚悟を決めた。しかし、私はこの時、この質問がどういう事を意味しているのか分からなかったのかもしれない。</div><div>&nbsp;kurahaに家出した経緯を軽く話しながら、今後の計画を立てた。まずはいつ行くのかを話し合った結果kuraha通っている学校の終業式が明後日の二十三日という事なのでその日にする事にした。また、kurahaが住んでいる場所は北海道なので飛行機のチケットを取る必要がある。kurahaにどの飛行機のチケットを取ったら良いのか聞いた。</div><div>「女満別空港だよ」</div><div>聞いた事がない名前の空港だった。どうやら女満別空港からバスで北見に行くようだった。とりあえず北見バスターミナルに待ち合わせにした。kurahaとは初めて会う。楽しみな気持ちでいっぱいだった。初めてこの家出に希望の光が照らされた。しかし、家族旅行で沖縄に行った時に空港を利用した事があるとはいえ、チケットを取るのも一人で空港へ行くのも北海道へ行くのも初めてなので不安な事だらけだった。私はGoogleで検索をし何とか飛行機のチケットを取る事が出来た。</div><div>&nbsp;「もううちは寝るね。五時くらいになったらマンションから出て」</div><div>kurahaとの一連の流れを説明し、0時頃ゆかちゃんが就寝した。非常階段にいるとまだ警察がいるのだろうか。パトカーの音が良く聞こえ、非常階段にも誰かいるように思える。怖くて怖くて仕方がなかった。kurahaとは三時くらいまでやり取りが続いた。</div><div>「朝まで大丈夫？電話する？」</div><div>kurahaが心配して電話をするかと尋ねてきた。しかし、明日はkurahaも学校だ。</div><div>「明日学校でしょ？寝て大丈夫だよ」</div><div>私はこれ以上kurahaに迷惑をかけるわけにはいかないと思い、断った。本当は電話したかった。深夜に一人でいるのは怖かった。誰にも本当の気持ちを伝える事も頼る事も出来なかった。</div><div>私のわがままをこれ以上誰かに伝えるわけにはいかない。一人で生きていかないと。そう意気込み、またイヤホンをして音楽を聴いた。イヤホンをすると現実から離れられる。一人ではない気がした。</div><div>&nbsp;五時になり、まずは近くのコンビニで航空チケットの支払いをした。スマホの充電とバッテリーの充電、ゲーム機の充電をする為に再び東京駅のマックに向かった。マックで暫く時間を過ごし、ゆかちゃんからの提案で昨日行ったところとは別のネットカフェを行くように言われた。近くのネットカフェで十八時まで過ごし、もうかずまのマンションには迷惑をかける為、居られないので何処で過ごそうか迷った。年齢制限が緩いネットカフェをネットで検索すると、昨日行ったネットカフェが検索に引っかかった。一か八かそこのネットカフェに行く事にした。マスクをしている為か、すんなりと年齢確認される事なく店に入れた。昼間来た時とは違い、人が多く夜にそこで過ごすのは不安だった。Twitterを覗くとどうやらこの一日でkurahaが明日の為に色々と準備をしてくれたらしい。北海道へ行くのが楽しみだ。私の予定ではかずまが一人暮らしを始める一年後まで北海道へ居るつもりだった。その為、クミへも報告として北海道へ行く事を伝える事にした。しかし、</div><div>「もう知らね」</div><div>クミには迷惑を沢山掛けたので見放されるのも当然だろう。そう思っていたが、</div><div>「やっぱり面白そうだから応援する笑」</div><div>やはりクミは友達だった。応援すると言われた事が凄く嬉しかった。その後、kurahaの家に泊まる事を伝え、かずまとゆかちゃんには内緒で三人のグループを作った。『あいな北海道へ旅立つ』クミらしいネーミングだった。kurahaとクミは私が北海道へ行く事を応援して励ましてくれた。</div><div>「北海道の写真送ってな」</div><div>「色々大変な事はあるだろうけど。楽しんでこーい！！」</div><div>クミはあくまで家出では無く、旅行として楽しんできてほしいとの事だった。これから沢山の困難が立ち向かうだろう。警察に途中で捕まるかもしれない。それでも頑張って前向きに生きよう。そう思わせてくれた大事な友達だった。</div><div>&nbsp;そんな中、事件が起こる。なんとかずまの家に警察が来たらしい。どうやら手紙の指紋から交際相手であるかずまを特定したらしい。警察は私達が思っているよりも優秀だった。どうやらサイバー警察というネットに強い警察が動いているらしい。スマホの電波を拾っているらしいので今からスマホの電源を切るように言われた。スマホの電源を切る前に日付を見て私は今日がなんの日だか思い出した。今日はこないだ喧嘩して仲直りしたばかりの友達、瑞希の誕生日だ。しかし、LINEは出来ないと伝えてあったので瑞希のLINEを知らなかった。私はクミに頼み、瑞希のLINEを教えてもらった。私はどうしても祝いたかった。これが最初で最後のLINEになるかもしれないから。</div><div>「お誕生日おめでとう。ごめん。追加したけど暫くLINE出来ない。これだけ伝えたかった」</div><div>私は苦しい気持ちを抑えながらLINEを送り再び彼女をブロックした。その間に家庭教師からLINEがあった。話したい事と謝りたい事があるという事だった。私が返信をするとどこにいるのか聞かれたので</div><div>「すみません…それはお伝えする事ができません…でも心配はしないでください！」</div><div>私は家庭教師に返信をした。家庭教師にも罪悪感がいっぱいだった。私は色んな人を利用して傷付けてしまっている、その事に気付いていたが、気付かない振りをした。自己中心的に物事を捉えなければ、家に帰りたくなってしまうからだ。自分よりも他人を優先してしまいそうになるからだ。私は家出というミッションをクリアしなければならない。</div><div>&nbsp;もう一つやることがあった。羽田空港への行き方を調べる事だった。</div><div>「浜松町へ行くとええよ」</div><div>ゆかちゃんに聞くと新橋駅の隣の浜松町駅に行く必要があるらしい。私は女満別空港から北見バスターミナルへの行き方と共に紙にメモをした。スマホが無いとかなりきつい。ゲーム機はWiFi下でしかウェブサイトが使えなかった。正直無事に辿り着けるのか更に心配だった。心配よりも先に身体を休めないといけない。私は朝まで寝る事にした。</div><div>&nbsp;五時に起きてネットカフェを出る。浜松町駅までの行き方が分からなかった為、新橋駅から浜松町駅に行く事にした。新橋駅に無事に着いたが、東京は群馬に比べて電車の数が多い為、どの電車に乗れば良いか分からなかった。迷った末にスマホを一瞬だけ付けることにした。無事に浜松町駅へ行くことが出来たが、今度は浜松町駅から羽田空港への行き方が分からなかった。私は今度は勇気を出して駅員に聞く事にした。モノレールに乗るように言われたので、モノレールに乗る。モノレールに乗るのは初めてだったので、電車とは違う景色に驚いた。初めての体験。こういうのも悪くない、楽しいと初めて感じた瞬間だった。</div><div>&nbsp;羽田空港に着いた。女満別空港への便は十一時二十分発だったのでだいぶ時間に余裕があった。私は空港を散策してみる事にした。羽田空港は広くてお店も沢山ある為、飽きなかった。お店は閉まっていたが、見ているだけで楽しかった。マックがあったのでマックに寄って時間を潰す。十時ぐらいになり、そろそろ手続きを済ませる必要があったので色々な手続きを済まし、ついに飛行機に乗る事になった。空港は警察も居るため、パジャマ姿だと怪しまれるか心配だったが、何とか大丈夫だったらしい。</div><div>&nbsp;飛行機では一番安い飛行機だったからなのか、今まで乗ってきた飛行機よりも随分小さかった。途中強風の為なのか分からないが、大きく揺れて落ちるのではないかと心配だった。このまま落ちて死んだ方が楽なのかもしれない。そう思ったが、私は飛んでいる中、ずっと外を見ていた。北海道に近づくにつれ、雪が降って積もっている景色を見て新鮮な気持ちだった。私の住んでいる地域は全く雪が降らない。雪景色に囲まれた北海道は初めて見るに等しい程だった。五稜郭が見えてきて興奮した。北海道だ。ついにkurahaの住んでいる北海道だ。北海道は一回も行った事が無かった。人生のうちに一度は行きたい場所だった。</div><div>&nbsp;女満別空港へ着陸したとのアナウンスが流れた。女満別空港は羽田空港と比べると随分と小さい空港だった。しかし、中に入ると広く感じた。手続きを済ませ、座れる場所に移動する。空港はWiFiが飛んでいる為、kurahaに空港に着いた事を連絡する。十五時に北見バスターミナルに待ち合わせにした。時刻はまだ十一時半だったが、早めに移動する事にした。バス乗り場を探しに外に出ると信じらないないくらい寒かった。外は雪が降っており、関東の春としては信じられない光景だった。かずまから貰った膝掛けを身体に掛けながら震えながらバスに乗る。四十分ほどバスに乗ると北見バスターミナルに無事に到着した。どこで待って良いのか分からなかった為、色んな場所をウロウロとしていた。あっという間に時間が過ぎ、十五時を過ぎてもkurahaの姿が見当たらなかった。待ち合わせ場所がここで合っているのかすら分からなかった私は焦っていた。初めてkurahaと会うという緊張感もあるのだろう。来なかったらどうしようという不安も抱いていた。kurahaはそんな事しないと分かっていたが、最悪の事態も考えていた。</div><div>&nbsp;すると、十五時半を過ぎた頃にkurahaらしき人を見掛けた。kurahaもこちらを見て目を見開いた。</div><div>『あ、この人だ』</div><div>何故か分からないけどそう確信したのだ。私はkurahaらしき人に近付いた。すると、</div><div>「あいなちゃん…ですか？」</div><div>kurahaが話し掛けてきた。</div><div>「あ…はい！」</div><div>私はぎこちなく返事をした。</div><div>「よかったぁ〜！居なかったらどうしようかと思ってた！」</div><div>kurahaは胸を撫で下ろすリアクションをした。</div><div>「いやあー私も来ないかと思ってドキドキしてたよ」</div><div>私は久しぶりに人と話せた事に喜びを感じ笑顔でそう答えた。</div><div>「それじゃ行こっか」</div><div>kurahaが先に歩き出した。どうやら自転車でここまで来たらしく、図書館の駐車場に停めてきたとの事なので図書館へ二人で歩いていった。</div><div>「荷物持つよ！」</div><div>kurahaは私のリュックを見てそう言った。重そうだと考えたのだろうか。しかし、さすがに持ってもらうわけにはいかない。私は遠慮したが、</div><div>「お客様だから」</div><div>kurahaは笑ってそう言った。</div><div>「その前にあれじゃな」</div><div>kurahaは図書館へ着いた所で立ち止まった。</div><div>「パジャマじゃ寒いだろうから服持ってきたからトイレでこれに着替えて」</div><div>kurahaは私に服とズボンを渡した。</div><div>「ええ！？絶対着れないよ」</div><div>kurahaは私と同じくらいの身長だが、体型が違うので着れるはずがない、そう思っていた。しかし、トイレで着替えてくると丁度良いサイズ感だった。</div><div>「めっちゃ丁度良かった」</div><div>私はkurahaに一人言のように呟いた。</div><div>「でしょ！？大き目のサイズ持ってきといて良かった」</div><div>kurahaは喜んだ表情で再び歩き出した。気付いたことがある。kurahaは私と初対面にも関わらず、表情やリアクションが大きい。私もそんなkurahaとは相性が良いのか話しやすかった。まるで初対面ではないようなそんな感じがした。自転車置き場の元へ歩いて行く。</div><div>「ようこそ北海道へ！」</div><div>kurahaに言われた瞬間にこれは旅なんだ、家出ではない。そう思った。これから先に起こる出来事はきっと楽しい物に違いない。&nbsp;</div><div>&nbsp;kurahaの家は北見バスターミナル、北見駅から</div><div>六キロ程離れていた。私はその事を聞いた瞬間に絶望した。何故なら空港や昨日までの東京で歩き回ったせいで足の疲れが残っていたからだ。それに加えて雪道で足場が悪かった。私はkurahaにある提案した。</div><div>「自転車さ、二人乗りって出来ないかな？」</div><div>以前に父と二人乗りをした事がある。無理難題では無い話だと思っていた。</div><div>「いいね、やってみる？」</div><div>kurahaは自転車に跨いだ。私はその後ろに乗ってkurahaが漕ごうとしたが、よろけて全く前に進めない。恐らく私の体重が重いからだろう。いくら力持ちのkurahaでも無理だろう。選手交代して私が前に乗り、漕ごうとする。すると、</div><div>「やばい転ぶ」</div><div>自転車が倒れそうになった。やはり無理らしい。</div><div>二人乗りは無理だったので、私はまた一つ提案をする。</div><div>「じゃあ一人が自転車乗って一人が走るのはどう？」</div><div>私はどうしてもこの距離を歩いていくのは無理だと感じた。一番最初にkurahaが乗り、私が走る。</div><div>「もう無理〜…」</div><div>私は体力が無い為、百メートルくらいで力尽きる。自転車と同じスピードで走るのも疲れる…</div><div>私はkurahaと交代して自転車に乗る。kurahaは元テニス部だと聞いていたので私より断然体力があるだろうと考えていた。しかし、</div><div>「無理無理無理…」</div><div>kurahaも私と同じくらいの距離ですぐ息が切れる。どうやら私と同じく体力が無いらしい。親近感が湧いた。</div><div>「やっぱ歩いて行こうか」</div><div>私達の挑戦は無謀に終わった。くだらない事をしていたが、何故か楽しかった。</div><div>&nbsp;途中でイトーヨーカドーを見つけ、そこで休憩を取ろうとの話をした。正直安心した。もう既に足が限界だったからだ。時間も迫っている中、自分から休憩しようとは言えなかったのでkurahaの気遣いに感謝した。</div><div>&nbsp;イトーヨーカドーに入ると昭和のレトロの雰囲気を感じた。フードコートで休もうとの話だったので二人でフードコートへ向かった。椅子に座ると足の痛みが緩和されていく感じがした。</div><div>「お弁当作ったんだけど食べる？」</div><div>kurahaは予想外の言葉を口にした。まさか私にお弁当を作ってくれるとは全く予想していなかったのだ。そして私は飛行機に乗っている最中におにぎりをいくつか食べてお腹が一杯だった。</div><div>しかし、私の為に彼女は作ってくれたのだ。食べない訳にはいかないだろう。そして嬉しかった。母以外の誰かがお弁当を自分の為に作ってくれる事なんて今までに一度も無かったからだ。</div><div>「食べたい！」</div><div>お弁当を開くと丁寧に巻いてある卵焼き、花形になっている人参、ウインナー、紫の乗ったお米だ。それを見た瞬間美味しそうと感じた。母は料理がお世辞にも上手いとは言えない為、巻いてある卵焼きを見るだけで感動した。そして</div><div>味も甘くて物凄く美味しかった。卵焼きをよく見てみると、細かいピーマンらしき物が入っている。私はピーマンが苦手だったが、全くピーマンの味がしなくて美味しかった。人参も苦手だったが、軽く味付けがされているのだろうか。凄く美味しかった。</div><div>「美味しい！」</div><div>私は感動しながら何回も美味しいと呟いた。その度にkurahaが優しそうな表情でこちらを見ていた。暖かい。お弁当も。kurahaも。kurahaのお弁当は今まで食べてきた中で一番美味しかった。そして深い思いやりを感じた。私はあっという間に食べ切ってしまった。数時間前におにぎりをいくつか食べたとは思えない程だった。食べ終わった後は私のスマホが使用出来ない為、kurahaがゆかちゃんにDMをする。</div><div>「合流したよ！」</div><div>私はkurahaとゆかちゃんのやり取りを横で眺める。</div><div>「良かった。二人で楽しんで！これから先お金がかかるだろうからかずまくんの口座からお金振り込んでおこうか？」</div><div>ゆかちゃんもkurahaへの負担を気にしているらしい。私はかずまやゆかちゃんがお金持ちだと知っていたので、</div><div>「良いんじゃない？」</div><div>と提案をするが、</div><div>「いや、いい！」</div><div>kurahaは断った。金銭面で援助を受ければだいぶ楽になるのにと思ったが、この旅は私とkurahaの旅だ。二人には迷惑をかけられないのだろう。</div><div>&nbsp;私達はイトーヨーカドーを出て、再び歩き出した。限界が通り過ぎた頃、ようやくあと少しで着くようだ。途中にあったコンビニに寄り、ゆかちゃんから事前に用意するよう言われていたカイロを買ってから家に向かう。</div><div>「ここが家だよ」&nbsp;</div><div>kurahaは立ち止まった。大きな家で新しそうだった。</div><div>「お母さんとおばあちゃんの様子見てくるね」</div><div>kurahaはこっそり家に入った。作戦ではお母さんとおばあちゃんの隙をついて家に入るらしい。</div><div>「入っていいよ」</div><div>kurahaが小声で合図をした。私は無言でkurahaの後を着いていく。階段を昇る時もなるべく音を立てないようにしないといけない。二人の間に緊張が走る。ゆっくりと歩いて行き、ようやく部屋に着く。</div><div>「ふう…」</div><div>二人同時にため息を着く。ここまで辿り着くのに長い道のりだった。一安心をする。kurahaの部屋はぬいぐるみが並んでおり、本棚やテレビなど色々な家具がある。誰かの部屋に来る事も久しぶりだった。私は辺りを見渡した。kurahaの部屋は何故か落ち着いた。それは部屋に着いた安心感なのか久しぶりの安全な場所だったからなのかは分からない。</div><div>&nbsp;kurahaが夕食を作りに行ってくれるとの事だったので私は家族が部屋に来ても良いように毛布にくるまって布団が落ちているように見せかけた。いつバレるか分からない、それが怖かった。布団の中は暑くて息苦しくてkurahaが一刻も早く来てくれる事を祈りながら息を潜めていた。</div><div>&nbsp;kurahaが帰ってくると</div><div>「ごめん。お待たせ。暑かったよね？」</div><div>と気遣ってくれた。私は夕食も作ってくれたのに私の気遣いまでしてくれるkurahaを女神様だと感じた。&nbsp;</div><div>&nbsp; 二人でkurahaが作ってくれたお肉を食べた。kurahaが焼いてくれたお肉は美味しくて私はまた感動した。kurahaが作る物は何でも美味しい。そして私は一つ疑問に思った事があった。</div><div>「部屋で食べてて家族に疑問に思われないの？」</div><div>私の家では家族が揃って食事をするのが常識だったからだ。</div><div>「私の家は個食なんだ」</div><div>どうやらkurahaの家はそれぞれ自分の部屋で食事を取るのが常識らしい。私は安心した。個食なら家族にバレる危険性は無い。</div><div>&nbsp;私達は食べ終わった後、kurahaに家出に至った経理とかずまとの出会いを説明した。</div><div><br></div><div>二○十八年 九月二十三日</div><div>かずまとTwitterで出会う</div><div>↓↓↓</div><div>九月三十日に付き合う</div><div>↓↓↓</div><div>十月八日初めて通話、kurahaに報告</div><div>↓↓↓</div><div>ゆかちゃん、さつきさんという幼なじみに出会う。</div><div>↓↓↓</div><div>クリスマスイブに初めて会う</div><div>↓↓↓</div><div>二月中に両親にかずまの存在がバレる。具体的には塾の外でかずまと会っていた事がバレた。</div><div>↓↓↓</div><div>付き合っている人は塾の人だと両親に話す</div><div>↓↓↓</div><div>三月九日にかずまと八時からの約束。こんな早い時間に遊びに行くのはおかしいと気付いた両親は私を外に出さなかった。帰りに両親を安心させる為にかずまと母を会わせる。</div><div>↓↓↓</div><div>三月十六日にクミを含む友達とお泊まりすると嘘をつき、かずまの家へお泊まりする。しかし、位置情報を切っていた事から東京に行ったのがバレる</div><div>↓↓↓</div><div>塾の先生に電話をし、かずまという名前は塾の生徒に存在しない事がバレる。両親が推測した結果、Twitterで知り合ったのではないかという考えに至る。</div><div>↓↓↓</div><div>三月十七日にかずまが私の両親に対して手紙を書くが、逆効果。両親に認めて貰えず、スマホやネットに繋がる物を没収された。しかし、かずまから念の為にと渡されていたゲーム機でゆかちゃんと連絡を取る。</div><div>↓↓↓</div><div>かずまの体調が私の両親のせいで悪化したとゆかちゃんから言われる。ゆかちゃんからどう責任を取るのだと問いただされる。</div><div>↓↓↓</div><div>かずまとの未来を想像し、批判をする両親に対して反抗する姿勢を取り、家出の決断をする。</div><div><br></div><div>&nbsp;大まかな内容をkurahaに説明した。しかし、kurahaは理解が追いつかない様子だった。無理も無い。この話はややこしい。ただ、両親と喧嘩をしたから家出をしたという簡単な話ではないからだ。私はメモに書きながら必死に説明をする。</div><div>「要は大人ＶＳ子どもって事だよ！私の両親と警察ＶＳ私とクラちゃんとかずまとゆかちゃん」</div><div>私はこれが一番分かりやすいだろうと考えた。そう。この家出は大人達へ反抗する為の物である。</div><div>「なるほど」</div><div>kurahaはこの例えに納得した様子だった。</div><div>&nbsp;私はkurahaに悩みを打ち明ける。</div><div>「このまま生きているのが辛い。」</div><div>私はこの先どうしたら良いのか分からなかった。かずまが一人暮らしするまで一年間kurahaの家に泊まらせてもらう訳にもいかないし、このまま家に帰るのも怖い。私はこの先の未来が見えなかった。今は楽しいが、いずれ決断をしなければいけない時が来る。それが怖かったのだ。ゆかちゃんは難病で長くは生きられない。余命幾ばくもない状態だったので私にかずまを託したのだった。そのゆかちゃんの想いに答えられる決断にしたかった。</div><div>「実は誰にも言ってなかったんだけど私も、難病なんだ。もう長くは生きられないんだよね。いつ死ぬか分からない。だからゆかちゃんの気持ち分かるんだ」</div><div>kurahaは伏し目がちでそう言った。それを聞いた瞬間に涙が溢れた。kurahaは長く生きられない？もうすぐ死ぬの？私は色々な想いが溢れる。</div><div>「だから、ゆかちゃんの分まで幸せになるの！君は幸せになる義務がある」</div><div>真剣な眼差しでkurahaはこちらを見た。</div><div>「ゆかちゃんの分まで幸せになるって強く生きるって約束出来る？」</div><div>私は涙が止まらなくて返事をする事が出来なかったが、首を上下に振った。私は強くない、すぐにマイナスな思考に至ってしまう。私は自分の殻に閉じこもり、周りを見ていなかった。周りを幸せにしたいとか思いながら自分が幸せになろうとしなかった。その事に気付かされた。私が幸せになると周りが幸せになるのだ。負の連鎖と同じように幸せの連鎖もあるはずだ。そんな大事な事も知らなかった。情けなくて泣く事しか出来ない自分を恥ずかしいと思った。kurahaはこんなにも必死に生きているのに。</div><div>「私も君らの結婚式行くまで死ねないわ」</div><div>kurahaは笑ってそう言った。</div><div>「誰かが泣いているのを見たくないんだ。だから湿っぽい話が嫌いなんだ。病気も誰にも話した事がない。でも何故かあいなちゃんには話せるんだ。」</div><div>kurahaに地元の友達さえも知らない事を教えて貰えたのが嬉しかった。それだけで特別感があるが、残酷な事実を知りたくなかったという気持ちもあった。しかし、そのおかげで私はkurahaと残りの人生を楽しむ事が出来る。私は二人で思い出を作りたい。そう思った。</div><div>「この病気は四十歳以上生きた人が居ないんだって。でも、私は四十歳以上まで生きてやろうと思う。長生きするんだ。」</div><div>私は未だにkurahaが私と同じように生きられない事を受け入れられなくて泣いたままだった。しかし、今すぐ死ぬような病気ではないようなのでそこは安心した。kurahaにはずっとずっと長生きしてほしい。そう思った。</div><div>&nbsp;kurahaがお風呂に入らせてくれるとの事だった。どうやらお風呂は決まった時間に入らないと祖母に水道代がかかると文句を言われるらしい。私はkurahaがお風呂の外で人が来ないか見張ってもらってる中、急いでシャワーを浴びた。</div><div>お風呂から上がるとkurahaが体重計を用意してくれた。体重計に乗ると体重がだいぶ軽くなっていた。このまま家出を続ければ、痩せるのではというくだらない考えが思いついた。私はこれから先の事をワクワクしながら考えていた。</div><div>&nbsp;お風呂も入り終わり、髪の毛を乾かし終わったのでそろそろ寝ようかという話になったkurahaは床に寝ると言ってくれたが、申し訳なかった。しかし、身体も疲れていたのでkurahaの厚意に甘える事にした。久しぶりのベッドはふかふかで暖かくてすぐ眠れた。</div><div>&nbsp;朝になり、kurahaに起こされた。私は朝起きて一番に思った事を口に出した。</div><div>「やばい、トイレ行きたい」</div><div>私は未だに膀胱炎が続いていた。kurahaに家族の様子を確認してきてもらい、今行けるとの事だったので二人で急いで降りていった。しかし、私がトイレに入っていると、足音が聞こえてきた。私は嫌な予感がした。</div><div>「誰か入っているの？」</div><div>kurahaの母と思われる人物がドアノブをガチャガチャする。どうしよう。ここで出てしまったらバレてしまう。私は焦った。</div><div>「トイレ開かないんだけど壊れたかな？鍵どこにやったっけ？」</div><div>kurahaの母はkurahaの祖母のもとへ行き、トイレの鍵を探しているようだった。そしてkurahaの母と祖母がトイレの前へ来てドアノブをガチャガチャと確かめていた。このまま出て行こうか迷った時にkurahaからの掛け声があった。</div><div>「ごめん、もう出ていいよ」</div><div>とうとうバレてしまう。もうこの旅は終わってしまった。そう思いながらドアを開ける。</div><div>「もー！びっくりした！」</div><div>「男の人かと思ったわ」</div><div>kurahaの母と祖母はほっとした様子で私を見る。</div><div>「もうー！はるちゃんのお友達が泊まりに来てるなら早く言えばよかったのに」</div><div>kurahaの母は笑ってそう言った。良かった。どうやらkurahaの地元の友達だと思われているようだった。</div><div>&nbsp;kurahaは二人に私の事を説明した。部活が一緒の友達でクラスも小学校も違うと話した。私の名前を覚えておきたいとkurahaの祖母が言ったのですんなりと私は本名を言ってしまった。ぎこちなさはあったが、kurahaの母と祖母は受け入れてくれた。しかし、これでコソコソせずに済んだので見つかって良かったのかもしれない。</div><div>&nbsp;私はkurahaに失敗したバレンタインの事を話した。すると、kurahaは</div><div>「女子力上げよう！」</div><div>と言ってお菓子作りを提案してきた。私もそれに賛成し、生チョコを作る事になった。</div><div>&nbsp;kurahaの伯父の自転車をい借りていき、二人でスーパーまで向かう。初めて他人の自転車に乗るのと雪道という事もあり、覚束なかったが、直ぐに慣れた。スーパーでは大量の板チョコと生クリームパックを購入した。百円ショップにて飾り付けも買おうとの話だったので隣にあった百円ショップに向かう途中にトイレに行きたくなった。私はkurahaに待っててもらい、急いでトイレに向かう。残尿感もあり、排泄した後に痛みがあるので辛かった。</div><div>&nbsp;百円ショップにて飾り付けを選んでいる最中にまたもやトイレに行きたくなったので途中でトイレに走る。私が何回もトイレに行くのをkurahaは疑問に思うだろうと思い、膀胱炎の事を伝える事にした。</div><div>「それは辛かったね」</div><div>kurahaは私に同情してくれた。本当に辛い。まさか家出をしている時に重なってしまうとは思いもよらなかった。</div><div>&nbsp;百円ショップでの会計が終わり、お昼を買いに行った。どうやら五百円で海鮮丼が買えるらしい。私の住んでいる地域では千円以上している海鮮丼が多かったので驚いた。やはり海鮮が有名な北海道は安く買えるのだろうか…。そこは海鮮丼専門店らしく、メニューが豊富にあった。全部五百円なんて信じられなかった。</div><div>&nbsp;家に帰り、部屋に二人で購入した海鮮丼を持って行った。私はワクワクした気持ちで一杯だった。刺身を一口食べると感動した。やはり北海道の刺身は美味しい。別格だった。今まで食べた海鮮の中で一番美味しい。私はあっという間に食べ終わってしまった。こんなに美味しい食べ物が食べられるなんて北海道の人は幸せ者だなと思った。私は海鮮が好きなので北海道にずっと住みたいくらいだった。</div><div>&nbsp;お昼ご飯も食べ終わり、生チョコ作りをした。kurahaは慣れた手つきで私に教えてくれた。実際にkurahaが調理している姿を見て、女子力が高いと感じた。全てが私よりも歳上に見えた。kurahaは記念に作っている所を動画撮影すると言ってきた。私は恥ずかしくてフレームアウトしていたが、せっかくの記念だ。私も積極的に動画に映るようにした。生チョコを作っている間は二人とも笑いが絶えなかった。kurahaのおちゃめな所が面白かった。くだらない事をしたり、ふざけ合ったり、そんな時間を過ごした。</div><div>&nbsp;生クリームが余ったのでどうしようかという話になった。私はもうすぐかずまの誕生日だから</div><div>何か出来ないかとkurahaに相談した。すると、</div><div>「生クリームでHappy &nbsp;birthdayかずまって書くのはどう？」</div><div>良い考えだと思った。kurahaは机にサランラップを敷いてその上に生クリームを搾って書こうとの事だった。二人で協力して文字を書く。途中生クリームが床に落ちたりなどのハプニングはあったが、無事に完成する事が出来た。kurahaが写真を撮ってくれたので生クリームをスプーンで二人で食べる。もう生クリームは暫く要らないというくらい沢山食べた。</div><div>&nbsp;夜になり、冷蔵庫に入れていた生チョコを食べる。美味しかった。二人で一緒に作った生チョコは普通の物より美味しく感じた。</div><div>&nbsp; 三月二十五日</div><div>母の誕生日だった。複雑な気持ちを抱きながら今頃家族は何をしているのだろうかと想像した。家出は正しい事だったのだろうか。罪悪感を感じた。しかし、やり遂げなくてはならない。中途半端の気持ちで北海道に来たわけではないのだから。そう思っても憂鬱な気分が続いた。</div><div>&nbsp;今日はkurahaと自転車でカラオケに行く事になった。誰かとカラオケに行くのは久しぶりだったので楽しみだった。カラオケまでは距離があったので二人で会話をしながら自転車を漕いだ。</div><div>「クラちゃん迷惑かけてごめんね、」</div><div>私はkurahaに思っていた事を打ち明けた。</div><div>「警察から追われてるなんて冒険じゃん！非日常で楽しいよ」</div><div>冒険…確かに私も非日常だと感じていた。こんな事は気軽に体験出来る事ではない。kurahaの言うように前向きに捉えようと考えた。</div><div>「冒険か…この話、本に出来ちゃうね」</div><div>私は笑ってそう言った。</div><div>「いいね」</div><div>kurahaも乗り気のようだ。</div><div>「いつかこの話を本にしよう。」</div><div>二人で約束した。</div><div>&nbsp;カラオケに着き、二人で交互に歌った。その中でkurahaが歌っていた一曲が印象に残る。ボカロのバラードの曲だ。kurahaがあまりにも感情的に歌うので私も感動してしまった。私はこの曲はkurahaにとって感情を乗せられる大切な曲なのだろう。そう思った。</div><div>&nbsp;夜になり、kurahaが一階に用があるとの事だったので一人で部屋で待っていると、イラついた表情でkurahaは部屋に入ってきた。恐らく何かがあったのだろう。</div><div>「どうしたの？」</div><div>私はkurahaに尋ねた。</div><div>「もうこの家にはこれ以上泊められないみたい」</div><div>私は絶望した。これ以上泊められないという事はもう帰らなくてはいけないから。私は目の前が真っ暗になった。</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12736187460.html</link>
<pubDate>Thu, 07 Apr 2022 20:41:52 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー⑥</title>
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<![CDATA[ <div>六、家出</div><div>&nbsp;三月二十日</div><div>この日は高校の入学説明会だった。今後高校で使用する体操着や上履きなどを購入する日でもあった。体育館で高校での生活やルールなどを聞いていたが、自分には関係の無いことだと思った。何故なら私は明日家出をする。いつ帰るかも決まっていない為、高校は行かないという覚悟も出来ていた。かずまが高校を卒業したら一人暮らしをすると話していたので、ゆかちゃんとその日まで家出をするという計画を立てていた。およそ一年以上家出をし、群馬には帰ってこないつもりだった。その為、体操着や上履きも要らなかった。</div><div>「体操着は二枚で良いよ」</div><div>母が三枚体操着を購入しようとしていた為、最低枚数で良いと母を説得した。母のお金を少しでも無駄にしたくなかった。制服も購入してある為、既にだいぶ無駄なお金を使わせてしまっているが、数千円でも無駄にしてほしくなかった。</div><div>&nbsp;入学説明会を淡々と済ませ、家に帰ってきたが、身体の変化が起こった。いつもは数時間はトイレに行かなくても平気だったが、一時間毎くらいに尿意がした。それに排泄をし終わった後に激痛が走るのだ。初めての事だったので焦ったが、両親を含め恥ずかしくて誰にも言えなかった。後にネットで検索をすると、症状的に膀胱炎の可能性が高そうだ。かといって、治るまで家出を延期する訳にはいかないので少しでも早く治そうとネットの記事に書いてあった水分を多く取る事を意識した。</div><div>&nbsp;夜になるといよいよ本格的な準備が始まった。まず母がお風呂に入って父が寝室で寝ている隙にリュックに詰めるものを探した。着替えを詰めようとしたが、両親が寝ている寝室にある為、着替えを持っていく事は不可能だと考えた。そうなると、食べ物だ。テーブルや冷蔵庫から直ぐにつまめそうな物を探す。冷蔵庫に入っているものだと、日持ちが悪そうだ。私はテーブルに置いてあったおやつカルパスをいくつか手に取り、チーズかまぼこ、蟹の缶詰、ハイチュウをリュックに詰めた。外は寒いだろうから手袋とブーツ、毛布を詰めた。外で何かあった時の為に保険証を持っていた方が良いとゆかちゃんから助言があったので保険証を財布の中に入れて財布をリュックに入れる。後はどこでも充電出来るようにバッテリーとiPhoneの充電器、暇潰しが出来るようイヤホンもリュックに入れた。準備は万端だ。後はかずまから貰ったゲーム機を家を出る時に持っていくだけだった。</div><div>&nbsp;ゆかちゃんから常時DMが来ていたのでお風呂でもゲーム機を持っていく。そんな中、ゆかちゃんから提案があった。</div><div>「家出する時、置き手紙を残すのはどう？家出する理由とかずまくんの良い所を沢山書いて。それで警察に行かれるとかずまくんに迷惑がかかるから警察には行かないように書いて。」</div><div>確かに警察に行かれたらかずまの存在が警察にバレてかずまには迷惑がかかるだろう。</div><div>「わかった。」</div><div>私はゆかちゃんの提案に賛成した。</div><div>「じゃあ一緒に考えよう」</div><div>お風呂に入っている間手紙の内容を考えた。三時間近くかかってしまい、両親がトイレに来た時に怪しまれてしまった。私の家は浴室の隣にトイレがある為、どうしてもお風呂入っている事がバレてしまう。</div><div>「ゲーム機持ち込んでるんじゃないのか？何してるんだ」</div><div>父に怒鳴られ、</div><div>「違うよ。もう出るよ」</div><div>私は否定をしたが、やはり父は察しが良いと感じた。お風呂から上がり、ゆかちゃんと考えた手紙の内容を机の上にあった用紙に書く。</div><div><br></div><div>&nbsp;みんなへ</div><div>中学校では本当に色々な事がありました。友達に裏切られて苦しんだり、陰口に悩んだり…。特に三年生の時は酷かったです。親友だと思っていた人に無視され、陰口を言われて避けられて、その子の友達までもが加わって私はクラスで一人ぼっちでした。部活でも上手くいかなくて一人ぼっち。人が怖くなりました。誰も信じる事が出来ない、そんな状態でした。学校に行くのが凄く辛かった。外を歩くのも、人目を気にしてマスクしたりで精神的にボロボロだった。生きたくないとも思ってました。そんな時にかずまと出会いました。救われたよ。ネットでの関係だけど…かずまは親身になって私の事を考えてくれたり、話を聞いてくれて…正直こんな人いるんだと思ったんだ。一番救われたのが「居場所になるよ」</div><div>と言ってくれた事。かずまは言った通り私の居場所になってくれた。一人ぼっちだった私はそれがどれだけ嬉しくてどれだけ救われた事か。かずまは…私のヒーローなんだよ。私が今笑って生きていられるのはかずまがいたからなんだ。かずまは凄く凄く優しい人なんだよ。優しすぎるくらい…。いつも自分より私の事を優先してくれて、考えてくれて。自分を犠牲にしてでも私の事を優先してくれたんだ。それにさり気ない優しさもあって凄くかっこいいんだよ…いつも私に合わせて道を歩く時はゆっくり歩いてくれてさり気なく車道側を歩かせないようにしてくれたよ。どこかに入る時も必ず私が入るのを待ってから入ってたよ。全部、私優先で自分の事より私の事を考えてくれてたよ。会う時も何回か大事な予定があったのに…無理やり私に予定を合わせてくれてたんだよ。私が体調を崩した時は凄く心配してくれて…沢山どうやったら良くなるかを考えてくれた。筋肉痛になった時だって、かずまのおかげで一日で治ったんだよ。自分より私の事をいつも考えて行動してくれる、そんな凄く優しいかずまが好きなの。お母さんもお父さんも私を心配したりするのは分かる。それで制限したり縛ったり…でもね、私を制限したり縛ったりするとかずままで苦しいんだよ。かずまも一緒に縛られる事になる。それにかずまの家庭にも事情があるんだよ…。なんでそんなに一方的なの…。向こうの事も考えてあげて。</div><div>&nbsp;挨拶しようよって話も前からしてた。かずまがね。群馬に来るなら良いって…かずまが深夜に東京に帰るのは全然良いんだね。相手の親の心配は考えないんだ、私の好きな人がどうなっても良いんだね…。かずまが居なかったら私がどうなるかも、かずまが私にどれだけの事をしてくれたのかも知らないのに…。そもそも向こうのご両親は私を信じているみたいだよ。向こうだって怖い気持ちはあるのに…息子の彼女だからって信じてるみたいだよ。私ね、かずまと一緒に居て凄く幸せだったよ。かずまと過ごす時間が一番幸せなんだ。こんなに笑えた事ないよ。こんなに誰かを好きになった事も、一緒に居たいと思った事も、大切だと思った事も、幸せだと思った事なんて無かった。高校に受かったのもかずまが居たから…かずまが支えてくれてたから、それに受験が終われば、受験に受かれば、かずまと話せる。かずまともっと一緒に居られる。そう思ったから頑張れたんだよ。かずまが居てくれないと嫌だ…かずまともっと一緒に居たい…かずまと色々な所に行ってみたい。ディズニーとか、海とか、花火大会とか、プールとか、綺麗な景色の場所とか…東京にも、お泊まりも…したい。かずまが居なかったら…私には何も残らない…。笑っていられない…楽しくない…苦しい…。でも…かずまはもう精神的に酷い状態みたいなの。私と話せないから。もう本当に嫌。苦しい…だからもう出て行きます。どこか知らない場所、遠くに行きます。ごめんなさい…。かずまの所にはもう行きません。かずまは私の事をもう見たくないと思うから。かずまをもう苦しめたくないの。だからかずまとはもう離れる。全く知らない場所に行って頑張って生活する。東京は危ないって言ってたけど、そんなの群馬だって危ないよ。事件はどこにでも起きる。東京は人口が多いからその分事件が多く感じるだけだと思うよ。かずまは危ない場所に私を連れて行かないし。最後に心配はしないでください。警察とかは呼ばないでね。みんなにも心配しないでと伝えてください。私には…チチがついているんだから。私は私の人生をちゃんと生きていくから。絶対にいつか戻ってくるし、定期的に連絡はします。こんな人でごめんなさい。でも…帰ってくるから。それだけは信じてほしい。</div><div><br></div><div>&nbsp;私は手紙を書いてる途中涙が溢れてきた。ほぼゆかちゃんが考えた文で私が考えたのは心配はしないでくださいからの文だけだった。ただゆかちゃんに従うしかなかった。家出以外に道は無かった。手紙を自分の部屋の机の上に置いて部屋を出た。まずはスマホを取り返すのがゆかちゃんとのミッションだった。恐らく父の車の中にスマホはあるだろうと判断した。しかし、父の車の鍵は両親の寝室にある。気づかれないようにゆっくりと鍵を取り、駐車場へ行き車を開けるとやはりスマホがあった。鍵を元の場所に戻し、コートを着て物置から家を出た。服装はパジャマだったので着替えたかったが、始発の時間に間に合わない為、諦めてそのまま行く事にした。家を出る時に私の家は犬を飼っている為、物音ですぐ吠えるのでおやつをあげて静かにさせた。</div><div>「ごめんね、」</div><div>と告げた。愛犬との別れが辛かった。沢山私に吠えているのはまるで行かないでって言っているようだった。それを私はおやつで釣って利用してしまったのだ。暫く会えないとは知らずに嬉しそうにおやつを食べる姿を見て罪悪感でいっぱいだった。 &nbsp; &nbsp;</div><div>&nbsp;最寄りは新前橋駅で自転車では二十分程度。始発の五時に乗る予定だったので四時半頃に家を出た。もちろんスマホの位置情報は切って行った。余裕を持って出たつもりが、新前橋駅に着くとギリギリだった。ゆかちゃんの指示で東京に行くように言われたので言われた通りに東京へ行く為に高崎駅へ行く必要があったのでまずは高崎駅行きの上越線のホームで電車が来るのを待つ。人が全く居らず、駅員さんしかいないホームは新鮮だった。誰も居ないからなのか一人で旅をする事に対してだか分からないが、</div><div>寂しくて寂しくて仕方がなかった。自分がしている事も合っているのかどうかそれすらも判断が出来ない状態だった。私は良く聞いている曲の歌詞で現在の私の感情に似ているものTwitterにツイートとして載せた。不思議と手が震えるような不安な気持ちも少し抑えられたような気がした。しかし、ゆかちゃんも朝の九時頃まで寝ているそうなので連絡出来る人もいない中、不安な気持ちが拭える事は無かった。どうやって生きていくのかも今後どこで過ごして行くのかも分からないまま、ただ目の前の事に必死だった。</div><div>&nbsp;電車が来たので、電車に乗るとスーツケースを持ったカップルが居た。本来なら旅行して楽しむ為に遠い場所に出掛けるのだろう。私も家出じゃなくて普通の旅行なら楽しめたのだろうか。私との違いに落胆した。高崎駅に着き、乗り越えをする。いつもは人で溢れ返っている高崎駅もやはり人がほとんど居なかった。乗り換えをして高崎駅から東京駅に向かう。席はクロスシートで安心した気持ちで過ごせた。不安の気を紛らわす為にイヤホンをして曲を聴いていた。</div><div>&nbsp;ついに東京駅に着いた。時刻はまだ七時前後で空いているお店が全く無かった。ゆかちゃんからの事前の指示でコンセントがあるマクドナルドに居座るように言われたのでそれを思い出しながら東京駅にあるマクドナルドを探す。探している途中に中学二年生の時に校外学習として行ったラーメンショップの事を思い出していた。せっかく東京に来たんだから服とか色々見たかったし、色々な食べ物が食べたかったが、私にその余裕はなかった。</div><div>&nbsp;マクドナルドに着くと食べ物と飲み物を注文し、二階の席に居座った。スマホの充電とゲーム機の充電をする。周りを見渡すとパソコンで仕事をしている人が多かったが、どの人も居座るのは一時間程度だった。二時間三時間も居座っていたが、周りの目が気になったので外に出る事にした。外に出て行く宛ても無いまま、東京駅を彷徨いていると、ゆかちゃんからの連絡があった。</div><div>「ラムネさん大丈夫？」</div><div>ゆかちゃんは恐らく警察にバレずに上手くやっているのかの確認だろう。</div><div>「大丈夫だよ」</div><div>ゆかちゃんにすぐ返信をした。私が警察に捕まるのが心配だったのか、常に連絡をしてきたので充電が無くなってきてしまった。リュックの中に入れていたモバイルバッテリーを使用すると、バッテリーの充電が切れていた。焦った。早くゆかちゃんに連絡しないといけないのだが、スマホの充電が切れる。スマホの充電が切れたらゆかちゃんとの連絡が途絶え、更に事態が悪化する。最悪の状態だった。ゆかちゃんに連絡をしなければ、怒られる。それが一番怖かった。私は最終手段で近くにあるコンビニに寄り、モバイルバッテリーを購入した。所持していたモバイルバッテリーを充電すれば良かったのだが、少しでも連絡が途絶えたり、モバイルバッテリーの充電が無いと正直に伝え、ゆかちゃんに怒られるのを恐れた。私はお金よりもゆかちゃんが怒らない手段を選んだのだ。急いでモバイルバッテリーにスマホを繋いで事なきを得た。</div><div>&nbsp;ゆかちゃんからの指示でネットカフェで過ごすように言われた。しかし、位置情報を切っている為、ナビを使用する事が出来ない。ゆかちゃんがナビをしてくれる事になった。現在何処にいるのか写真を送り、その写真に基づいてゆかちゃんがどう進めばいいか教えてくれる仕組みだ。無事ゆかちゃんのおかげでネットカフェに着くことが出来た。ネットカフェに入る前に隣にあるコンビニに寄っておにぎりや飲み物などを購入した。ネットカフェはどうやらビルの中にあるらしい。ビルの中に入ると、雰囲気が悪く薄暗く怖いイメージだった。エレベーターに乗り、ネットカフェがある階へと移動した。ネットカフェは落ち着いた雰囲気だったが、東京には珍しい完全個室では無く覗こうと思えば隣が覗けるような設備だった。しかし、自分に興味を持つ人はいないだろうという自信があった。</div><div>ずっと寝ていなかったのでネカフェで睡眠をとる。ネットカフェでは十六歳未満は十八時までしか居られないので十八時にネットカフェを出た。ゆかちゃんからの指示でかずまのマンションのロービーに居座るように言われた。しかし、かずまのマンションは確かオートロック式で住人しかロックを解除する事が不可能だ。そこでゆかちゃんから禁断の指示が下された。</div><div>「マンションの住民がオートロックを解除した時に一定の時間空いたままになるからその隙に入って。」</div><div>私は今まで世間で言われる悪い事はせずに真っ当に人生を生きてきた。学校でも家でも。ゆかちゃんからの指示は、不法侵入に当たる。もちろんしてはいけない犯罪行為に当たる。私は躊躇した。しかし、人が多い東京。十八時以降になると辺りも真っ暗だった。怖かった。それにパジャマ姿でリュックを背負った私は明らかに怪しい人だろう。警察に捕まるかもしれない。かずまに迷惑はかけられないし、ここで帰るわけにはいかなかった。そうなると方法は一つしかない。</div><div>「分かった。」</div><div>私はゆかちゃんの指示に従った。マンションの前に怪しまれないように立っていると、すぐに住民の人がマンションの中に入っていった。一定時間開いている隙に私も急いで入る。成功してしまった。罪悪感よりも先に安全な場所に来れた事の安心感とかずまが居るマンションという何とも言えない気持ちに駆られた。私は一階のロビーにある長椅子に座った。本当ならかずまの部屋に行きたい。かずまと一緒に居たかった。一人でいるのは不安だった。住民がマンションを出入りする姿を見送る。もしかしたらかずまが出入りするかもしれない。そんな奇跡を期待しながら。</div><div>&nbsp;何時間かロビーに居座っていると、予想もしなかったハプニングが起きた。『警察』が来たのだ。警察は私の元に近付く。</div><div>「住民から通報があってね。何号室の子？」</div><div>ほっとした。どうやら住人だと思われているらしい。</div><div>「あ、もう部屋に戻ります」</div><div>私は住人のフリをする為にエレベーターに乗って警察から逃れた。私は事の経緯をゆかちゃんに説明した。まだ警察がいる恐れがある為、防犯カメラに映らなくて人が来ない非常階段にいるように言われた。しかし、非常階段は外にある為、寒くて仕方なかった。私は毛布を身体にかけて震えて過ごした。そして私には問題があった。現在膀胱炎でトイレに行きたくて仕方がなかった。</div><div>「トイレ行きたいんだけど…どうすればいいかな？」</div><div>ゆかちゃんにトイレはどこにあるのか聞いた。</div><div>「え…朝まで我慢出来へん？」</div><div>どうやらマンションにはトイレは無いらしい。しかし、私は限界だった。仕方なく誰も居ない事を確認し、そこで用を足した。そうするしか無かった。身体も心も限界だった。</div><div>「ラムネさん、もうかずまくんのマンションに今後行くことは無理かもしれん。誰か泊めてもらえるような友達おる？」</div><div>私は考えた。クミはかずまのお泊まりの件で迷惑をかけて見放されている、そもそもゆかちゃんの指示で友達は捨ててしまったので頼れるような人は居なかった。</div><div>「いない…」</div><div>私はゆかちゃんにそう返した。</div><div>「ネットも…？」</div><div>ネット…ネットで仲が良い人も限られていた。何人か居たが、一年程前からずっと連絡を取っており、通話もした事がある信頼している人を思い浮かべた。そう、kurahaだ。</div><div>「聞いてみる。」</div><div>私はそう言ってダメ元でkurahaのDMへメッセージを送ってみる事にした。</div><div>「クラちゃんやばいお願い事していい？笑笑」</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12736001897.html</link>
<pubDate>Wed, 06 Apr 2022 20:00:09 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー⑤</title>
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<![CDATA[ <div>五、限界</div><div>&nbsp;三月十六日</div><div>かずまの家にお泊まりをした。両親にクミと友達の家に泊まると嘘をつき、車で井野駅まで送っていってもらった。これから井野駅から東京駅に行く。東京まで行く事がバレてはいけない。私は電車に乗った途端に位置情報を切った。しかし、それがいけなかったのだろう。父にバレてしまったのだ。</div><div>「位置情報どうしたんだよ」</div><div>「電話も出ない」</div><div>「約束守れない」</div><div>「折り返し連絡しろ。しないなら警察や中学校の先生に探すように手配する」</div><div>「早くしろ」</div><div>「どうしようもないな。完全な裏切りだな。自分は嘘をついてますって言わんばかりだな」</div><div>「バカにするのもいい加減にしろ」</div><div>父からLINEが連投された。怖くて怖くて仕方がなかった。それでも、</div><div>『好きならかずまくんの為に家族や友達を捨てるのが普通。』</div><div>ゆかちゃんのこの言葉が頭から離れなかった。これで本気の恋だという証明が出来ただろうか。</div><div>家族を押しのけてまでお泊まりを実行させる行動力をゆかちゃんやかずまが認めてくれるだろうか。そんなことを考えながら電車に揺られていた。すると、</div><div>「どんなに辛い事があっても時間がかかったとしても絶対に俺が助けるし、数年後、そういえばあんなこともあったねって笑い話にしてしまえばいい笑」</div><div>とかずまからLINEが来た。泣きそうだった。両親に認められなくてもこの恋だけは貫きたいし、かずまと共にこれから先も過ごしたいと思った。</div><div>不安や希望を抱きつつ、東京駅に着いた。東京駅へ行くのは人生でまだ二回目だったので、ホームや改札口の場所さえ分からなかった。やはり東京は広いし人が多い。中々かずまの姿を見つけられないでいたが、かずまが私の姿を見つけてくれた。</div><div>「あいな」</div><div>ニコッと笑い私の傍に来てくれた。東京駅からかずまの家までは徒歩二十分くらいの距離だった。都会の景色に感動しながら辺りを見渡しながら歩く。</div><div>「ここの通りにゆかの家があるんだよ」</div><div>かずまが高層ビルが並ぶ通りを指差す。</div><div>「ええ！？やっぱゆかちゃんの家お金持ちなんだね」</div><div>やはり東京の人はお金持ちが多いのだろうか…。</div><div>街を歩く人も老若男女関わらずオシャレな方が多かった。群馬と東京の違いをはっきりと見せつけられた。</div><div>「そういえばお昼どうする？コンビニでも良い？」</div><div>かずまがそう聞いてくる。</div><div>「うん！」</div><div>本当はかずまは料理が得意らしいのでかずまの手料理が食べたかったが、そこはグッと抑えた。</div><div>コンビニもやはり群馬よりも少しだけ広い。さすが都会。コンビニさえも感動してしまった。お腹が空いていたが、好きな人の手前、多くは買えないので量は少な目にした。コンビニから出て少し歩くと、かずまの家の前に着いたようだ。高層マンションだ。どうやらオートロック式らしい。初めて見るセキュリティの高い設備に驚きながらかずまの部屋の階までエレベーターを使って行った。部屋の前に着くと、初めて入る異性の家ということで緊張した。しかし、かずまが華麗にエスコートしてくれるのでスムーズに入ることが出来た。部屋に入ると、弟らしき人の学習道具が置いてあったり、家族の洗濯物が畳んでおいてあった。生活感が良い意味で溢れ出た部屋は過ごしやすかった為、直ぐに慣れた。かずまといる間はスマホの電源をオフにして両親の事も忘れ、楽しく充実した一日を過ごした。好きな人の隣で寝るのは初めは緊張したが、安心感からかすぐに寝てしまった。</div><div>&nbsp;十七日</div><div>夜が明け、朝になった。</div><div>「もしスマホが没収された時の為にこれでインターネットからTwitterで随時連絡して」</div><div>&nbsp;かずまから部屋から出る前にゲーム機を渡された。確かに親にスマホ没収されたら連絡手段が無いから良い考えだ。</div><div>「ありがとう。万が一の事があったら使うね。」</div><div>&nbsp;ゲーム機という高価なものを受け取るのには抵抗があったが、かずまからのプレゼントだと思って快く受け取る事にした。</div><div>&nbsp;お昼頃にマンションから出た。家が近づく毎に私は内心両親がどれだけ怒っているだろうかと不安で仕方がなかった。</div><div>「本当は新橋駅という所の方が近いんだけど、どっちから乗る？」</div><div>かずまが提案をしてきた。聞いたことがない駅名だ。やはり東京は駅が沢山あるなと感心した。</div><div>「じゃあ新橋から乗りたいな」</div><div>私は歩くのが疲れたので電車賃よりも早く電車に乗って座りたい気持ちの方が強かった。</div><div>「俺、ご両親に挨拶代わりに手紙書きたいんだけどどう思う？」</div><div>電車の中でかずまが提案をした。</div><div>「良いんじゃない？私の両親も少しは信用してくれるかも」</div><div>とても良い考えだと思った。早いうちに挨拶した方が良いが、この状況で挨拶したら逆効果だろう。手紙が最善だと考えた。</div><div>「まずスマホで書き出してみるね」</div><div>かずまはそう言ってスマホのメモに手紙の内容を打ち出した。私はかずまが打ち出している姿を横で覗き込んでいた。</div><div>スラスラと打ち込んでいたかずまの手が止まった。どうやら手が震えているように見える。どうしたのだろうと戸惑っていると、スマホに大粒の水滴が落ちた。かずまも不安なのだろう。</div><div>このまま私の両親に信用されなければ、恐らく私達は二度と会えなくなる。外出を禁止されるだけならまだしも連絡手段を断たれてしまうかもしれない。そして何より彼女の両親に信用されていないのは想像も出来ないくらい自分が悪役に思えるのだろう。私は無言でかずまを抱きしめた。</div><div>「大丈夫だよ」</div><div>なんて気軽に言えなかった。私達の未来がどうなるのか分からなかったから。かける言葉が見つからなかったけど少しでもかずまを安心させたかった。どんなに批判されても私がいるって思ってもらいたかった。あなたの味方は私だよって伝えたかった。かずまが泣き止むまで人目を気にせず抱き締め続けた。</div><div>&nbsp;一時間半もすると高崎駅に着いた。かずまも駅に着くと落ち着いている様子で手紙の内容も完成したようだ。後はもう手紙の内容を用紙に書き写すだけのようだ。かずまが書き写している中、</div><div>時刻も十九時を回っていたので両親に連絡をしようとスマホの電源を入れた。すると、両親からの連絡で通知が埋め尽くされていた。心配する気持ちは重々承知しているが、ここまでされるともはや恐怖に感じた。両親に束縛されている自分は不幸なんじゃないかと思ってしまうほどに。</div><div>返信をすると</div><div>「今どこにいるの？」</div><div>「何時になるかはっきりしろ」</div><div>すぐに両親から同時にLINEが届いた。とりあえず、高崎駅にいる事と帰る時間はかずまが手紙を書き終える時間が分からなかったので、まだ分からないと伝えた。</div><div>「もうすぐ書けそう？」</div><div>私はかずまにそう問いかけた。</div><div>「うん。もう終わったよ」</div><div>私が両親とやり取りをしている間に書き終えたそうだ。</div><div>「かずまくんの電話番号教えて」</div><div>母からLINEが来た。おそらくかずまを信用する為だろう。</div><div>「お母さんが電話番号教えてって言ってるんだけど…電話番号を教えることって出来る？」</div><div>私はかずまに控えめに聞いてみた。</div><div>「それは出来ない。あいなは良いけど…信用してない人に送ることは出来ない。個人情報だしね。」</div><div>かずまは怒ったような口調でそう言い放った。私からはそれ以上何か言う事は出来なかった。確かに個人情報だし、彼女の母親とはいえ第三者に教えるのは躊躇するのだろう。</div><div>「電話番号は個人情報だから教えることは出来ないよ」</div><div>と母に伝えた。もうかずまが手紙を書き終えたようなので付け足しで</div><div>「高崎駅に迎えに来てもらってもいい？」</div><div>と頼んだ。時刻はもう二十時を過ぎていて父はもちろん母も怒っているだろうと予想していた。改札口の方へかずまと向かうと母の姿が見えた。どうやら母一人のようだ。安堵したのと同時に母が私に話しかけてきた。</div><div>「これどうやって入るの？」</div><div>どうやら改札の入り方が分からなかったらしい。</div><div>母は抜けた所があってそこが面白くどこか空気を和やかにしてくれる。母のそんな所が好きだった。母とかずまはどちらとも第一印象が好印象なので上手く世間話をしながら父が車で待っているそうなのでかずまは母に手紙を渡して帰って行った。母と二人で急いで駐車場に向かう。</div><div>「お父さん怒ってる？」</div><div>私は母に歩きながら聞いた。</div><div>「今はそんなに怒ってないよ。心配してた」</div><div>母は軽くそう言った。それを聞いて罪悪感を感じた。しかし、かずまを第一優先にする気持ちは変わらなかった。いくら家族がどう思おうと心配しようとかずまの事しか考えられなかった。</div><div>車に戻ると母が父に</div><div>「かずまくんと会ってきたよ。これ手紙だって」</div><div>母は父に渡すと、</div><div>「そんなのどうでもいい。もう携帯禁止な」&nbsp;</div><div>父は冷たく言い放った。</div><div>「え？どういう事？」</div><div>私は今回友達の家に泊まると嘘をついて東京まで行きかずまの家に泊まったのが原因だと思った。だが、</div><div>「家庭教師に全部聞いたよ。塾はそんなに早く空いてないんだってな。本当は塾に行ってないんだな。」</div><div>バレてしまった。本当の事だから何も言い返すことが出来なかった。</div><div>「それと塾にかずまなんて人は教員にも生徒にもいないって聞いたよ。そもそも東京の人と知り合うなんておかしい。Twitterで知り合ったんだろ？」</div><div>父がため息をつきながら言った。</div><div>「…」</div><div>やはり何も言い返せなかった。本当だと言う事もまた嘘をつく事も出来なかった。この人には嘘が通用しない。</div><div>「もう暫く携帯取り上げるから最後にかずまに連絡したら？」</div><div>父は私にそう提案した。涙が溢れてきた。こんなにも嘘をついてきたのだからかずまは両親に信用される事はないだろう。今まで描いていた私とかずまの未来が全く見えなくなった。</div><div>「大丈夫かな…？」</div><div>かずまからのLINEが来た。</div><div>父にあまりスマホを触っているとバレるのでなるべくスマホの光を下にしながら急いで返信をする。</div><div>「大丈夫じゃない…」</div><div>「全部全部バレたみたい…」</div><div>「携帯取り上げられる…」</div><div>私はパニックの状態でありながら一生懸命今の状況を伝えた。また返信が来ていたが、父がいるので家に帰ってから返信をすることにした。どうやら今夜はまだスマホが使えそうだったのでそこは一安心した。</div><div>「LINE消して。取り上げられる前に」</div><div>「Twitterもログアウトして」</div><div>「あと…俺が泣いたこと、言っていいよ、」</div><div>かずまから指示されたが、Twitterをログアウトする事もLINEを消す事も出来なかった。私はかずまとの思い出を消したくなかった。もう両親に全てバレているので何も恐れるものはないと思っていた。父は手紙を読む気にはなれないそうだ。そしてどんなに説得しても謹慎の考えも変わらないそうだ。もう無理だ。取り上げられる前にかずまに謹慎になるときちんと伝えなくては…。</div><div>「わかった。スマホは謹慎になるって…」</div><div>「ごめんね、かずま…ごめんなさい…」</div><div>かずまには申し訳なかった。どんなに手を尽くしても両親には、父には、適わなかった。</div><div>「…。」</div><div>「正直…もう嫌だ…」</div><div>かずまからすぐ返信が来た。予想外の言葉だった。スマホが無くてもゲームがあるから完全には連絡手段が絶たれることはない。このまま大人しく両親の言う事を聞いていればいずれスマホも解禁されるだろう。外に出ることも許されるだろう。私はポジティブに考えていたが、かずまはどうやら違うようだった。</div><div>「そっか…」</div><div>私はそれしか言えなかった。だって、私はどうする事もできないから…。</div><div>「ごめん、」</div><div>「今体調凄く悪い」</div><div>「駅にずっと座ってる」</div><div>かずまからそうLINEが来た。おそらく私の両親が原因だろう。</div><div>「まあ…スマホはどうにかなる」</div><div>「もう無理、」</div><div>「拒絶反応が」</div><div>「本当に」</div><div>「やばい」</div><div>「助けて」</div><div>かずまから連続でLINEが来る。私はとっさに立ち上がった。</div><div>「え…ちょっとまってて…むかう」</div><div>かずまが死んでしまうのではないかと思った。向かわなくては後悔すると思った。しかし、</div><div>「今は来ないで」</div><div>「くるな！！！」</div><div>かずまは来ないでほしいみたいだった。私はそれはもう時間が遅いからだと判断した。なので、</div><div>「親と一緒に行くから…」</div><div>両親と一緒に行くなら大丈夫だろうと思ってLINEした。</div><div>「来ないで。ダメ。それこそ具合悪くなる」</div><div>私の両親に対してだいぶ拒絶反応があるようだ。</div><div>「私だけで行くよ」</div><div>ダメもとでもう一度言ってみた。</div><div>「だめ」</div><div>「そもそも高崎じゃないから！！！」</div><div>「途中の駅」</div><div>「本当に来るな！」</div><div>「やめて」</div><div>「あいなまで言うこと聞いてくれないんだ…」</div><div>「もう無理、」</div><div>どうやらかずまは途中の駅にいるらしい。それなら行くことは不可能だ。</div><div>「分かったよ…行かないよ」</div><div>私はかずまからこんなに拒否されては行くことは出来ないと判断して諦めた。</div><div>「今日はまだ平気、」</div><div>「正直、この先は無理だと思う、」</div><div>「もって今週まで」</div><div>私はかずまのもって今週までの言葉が引っかかった。恐らく精神的苦痛を受けて具合が悪くなって死ぬという事だろう。私はそういう意味に捉えた。</div><div>「一体どうしたら…」</div><div>私はかずまにどうしたら良いのだと問いかけた。</div><div>「耐えられないよ、こんなの」</div><div>「精神的苦痛過ぎる」</div><div>しかし問いには答えてくれず、精神的苦痛を訴えてくるだけだった。</div><div>「そっか…」</div><div>私は何と答えていいか分からなかった。両親をどうにか出来るわけでもないので、かずまを慰める事は出来なかった。</div><div>「ひどいよ…」</div><div>かずまは私の両親に対して言ったのだが、私にも言っているように聞こえた。</div><div>「ごめんなさい…」</div><div>私は謝ることしか出来なかった。</div><div>「あいなは悪くない」</div><div>「もう会えないでしょ？」</div><div>かずまは私は悪くないと言ったが、両親に従っている自分が悪いような気がした。</div><div>「いや、会うよ。」</div><div>私は諦めたくなかった。</div><div>「どうやって」</div><div>かずまは私に問いかける。</div><div>「群馬に来てくれるなら会ってもいいって…」</div><div>私はかずまには申し訳ないが、群馬だと許可を貰ったので会えなくなる事はないと考えていた。</div><div>「東京は？」</div><div>かずまは東京に来れるのか聞いてきた。</div><div>「東京へは…行けない…」</div><div>私も東京へ行きたかったが、両親が許してくれなかった。</div><div>「どうして？」</div><div>「あと俺行く時間とお金ないよ」</div><div>かずまから予想外の言葉を言われた。かずまの事だからまた今まで通り群馬に来てくれるだろうと容易に考えていた。</div><div>「心配なんだって…」</div><div>「そうなんだね…」</div><div>私は両親に言われた通りにかずまに伝えた。</div><div>「何がそんなに心配なの？」</div><div>「俺ずっといても無理？」</div><div>「今までで十万くらい使っちゃった」</div><div>かずまから驚きの事を聞かされた。十万も使っていたんだ…。私はかずまに頼ってばかりだった事を改めて実感した。</div><div>「多分、先に挨拶したら平気なんじゃないかな…まだ素顔が分からないからかも」</div><div>「十万…会うためにそんなに使ってくれたんだね…」</div><div>私はそうかずまに提案した。二人での未来を諦めたくなかったから。</div><div>「挨拶の機会貰えるの？」</div><div>「全部合わせたら二十万くらいだけどね」</div><div>二十万…中学生の私からすると信じられない額だった。その額を私に費やしてくれたんだろう。それを強調しているように聞こえた。</div><div>「うん。どうにか出来ないかな…」</div><div>「そうなんだね…」</div><div>私はかずまに縋り付くように返信をした。何とかかずまに挨拶をして貰えればきっと両親に認められるだろうと考えていた。後はかずま次第だった。</div><div>「嫌だ…もう本当に辛い」</div><div>「頭痛いし気持ち悪いし」</div><div>「苦しい」</div><div>「呼吸が上手くできない」</div><div>かずまに挨拶の件は拒否されてしまった。</div><div>「大丈夫…？」</div><div>私はかずまの体調が心配だった。</div><div>「大丈夫なわけない」</div><div>「俺精神的に弱ってた状態だったから」</div><div>「元々弱いし」</div><div>「こんなことされたら無理だよ」</div><div>こんなことって私の両親や私が直接かずまに何かしたわけでもないし、変える気がないのに弱る素振りにムカついた。</div><div>「私は…どうしたらいいのかな？」</div><div>私はかずまに問いかけた。しかし、そこから</div><div>かずまからのLINEが来ることは無かった。</div><div>&nbsp;かずまのことが心配だったので、ゆかちゃんにDMをしてみる事にした。</div><div>「ゆかちゃん、かずまからの連絡が無いんだけど…大丈夫かな？」</div><div>ゆかちゃんに連絡をすると</div><div>「大丈夫なわけないやろ！！！ラムネさんの両親がかずまくんをこんな状態にしたんや！」</div><div>「どう責任を取るつもり？」</div><div>私の両親のせいで…分かってはいたけどはっきり告げられるのは複雑だった。</div><div>「家出するよ」</div><div>そうしなくては両親が、父親が、変わらない気がしていた。以前から皆に両親は変われないので離れるしか道はないというのを言われていたので、何回か考えた事があったが、実際に言うのは初めてだった。そして両親はもちろん、ゆかちゃんやかずまから責められるのが辛かった。何もかもに解放されたかった。その答えが家出しかなかったのだ。この先にどんな幸せがあるのか、どこに泊まるのか、そんな事も考えていなかった。ただぱっと思いついた無謀な考えだった。</div><div>「いいね。いつするん？」</div><div>ゆかちゃんからいつするのか聞かれたが、具体的な日にちが思いつかなかった。</div><div>「二十一日にするよ」</div><div>パッと思いついたのが春分の日である三月二十一日だった。なんだかこの日なら亡くなった相棒の猫の『チチ』が守ってくれるような気がした。チチは祖父母宅で飼っていた猫であり、私の相棒のような存在だったが、去年の六月に亡くなってしまった。小学生まで両親が共働きで祖父母宅に預けられていた為、いつも傍にいてくれた記憶がある。亡くなった為、もちろん目視で確認出来ないし、常に近くにいるかは分からない。しかし、春分の日はお彼岸で彼岸と此岸が近づく日とされている為、近くにいてくれるだろうという考えだ。そうだったら良いなと考えながら家出の計画を自分でも考えていた。</div><div>&nbsp;次の日からはスマホを取り上げられていた為、ゲーム機でWebサイトでTwitterを開き、ゆかちゃんと連絡を取っていた。ゲーム機で文字を入力するのは慣れない為、大変だった。</div><div>&nbsp;三月十八日</div><div>私のスマホは父が持っていた。父が仕事から帰ってくると、再び交際を反対された。</div><div>「あいつだけはやめろ。詐欺師だ」</div><div>父は私にこう言い放った。確かに今まで身分を偽ってたのだから当然だろう。しかし、かずまからそう説明するようにとは言われたが、私が言った事だ。</div><div>「私がバレたくないから嘘ついただけだから」</div><div>私はかずまを庇った。父と二時間近く口論をしたが、やはり認めてもらえなかった。このまま家出を実行するしかない。そう思った。</div><div>&nbsp;ゆかちゃんからも私の両親に対して嫌悪感を抱いていた。大好きな幼馴染を傷つけられたのだから当然だろう。</div><div>「ラムネさんが家出しないならうちのお父さんの力で国外追放しようと考えてたんやさ」</div><div>ゆかちゃんは怒りが収まらないらしい。私は目を見張った。国外追放なんて出来る人が居るのだろうか。ゆかちゃんの父親は凄い人らしくゆかちゃんもお金持ちそうだから出来るのだろう。私はゆかちゃんの言葉を信じ、尚更家出を実行せざるを得なかった。</div>
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<link>https://ameblo.jp/kuram0321/entry-12735823953.html</link>
<pubDate>Tue, 05 Apr 2022 19:59:20 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー④</title>
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<![CDATA[ <div>四、歪んだ愛</div><div>二月十七日</div><div>かずまのテンションがいつもよりも低かった。私がLINEしても素っ気ない。私は気になり理由を尋ねるとどうやら私の以前のTwitterに対しての怒りらしい。今はゆかちゃんが選考した仲の良い女子しかフォロワーにいないが、以前に男女混合の歌い手グループに所属して配信をし、尚且つフォロワーの男子と普通に話していたのが気に食わなかったのだろう。</div><div>「凄い楽しそうだったじゃん。よかったね。別に俺じゃなくてもいいんでしょ。他の人にも好意寄せてたんでしょ。優しくしてたじゃん。優先してたじゃん。通知も入れてた。俺としたことがないことも他の人としていた。俺がいない時も日常と変わらなかった。俺にだけってことは何もなかった。他の人にも照れてた。」</div><div>「信用だって出来ないよ」</div><div>「あいなには分からないよ。」</div><div>「俺より他の人を優先してたしね。」</div><div>「例えば、夜通話出来ないとか言って他の人、男と配信のコラボしたりとか」</div><div>「今だってそうなんだと思っちゃうよ」</div><div>「陰謀なんていくらでも出来るしね。」</div><div>確かにその通りだ。私はかずま以外の他の人と以前は楽しそうに話していた。しかし、好意は寄せていない。それは本当だった。</div><div>「確かに楽しかったけど、かずまじゃなきゃ嫌だ。他の人には好意は寄せてないよ。優しくはしてたけど、返信とかはかずまを優先していたよ。確かに最初の頃は通知入れてたけど、付き合ったらかずましか通知入れてなかったよ。確かにそうだね…。かずまがいない時は確かに表面上は何も変わってなかったね。でも…凄く寂しかった。でも、かずまの勉強を邪魔したくないからあえて連絡をしなかった。他の人には照れてると言ってるけど、照れてる度合いが違う。確かにキャスはしてたね…。」</div><div>「今は違う。</div><div>確かに…信用出来ないと思うけどそんなことしてない。」</div><div>「垢を変えた時から新しい垢のフォロワーさんとは話してたけど、その他の人とは話してないし、DMもゆかちゃんとしか話してないし、</div><div>そもそもTwitter開いてない。」</div><div>私はその通りだと考えた事は認めて謝り、否定はしっかりした。</div><div>「そんなことないだろ。誰だって楽しめるんでしょ。寄せてるようにしか見えなかったよ。優しくしてたんじゃん。絶対入れてたよ。そうだよ。照れてる時点で浮気だよ。</div><div>そうでしょ。キャスしてたじゃん。楽しそうだったよね。俺よりも他の男だったよね。誰か構ってとか癒してとかさ、誰でもいいってことじゃん。質問箱で「電話していいですか！」って質問にいいって答えてたよね。それ男だったらさ、もう完全にあれじゃん。俺と全然電話しないのに他はいいんだね。」</div><div>「別の垢使ってる可能性だってある」</div><div>「行動力も覚悟もないでしょ」</div><div>「ゆかから凄いサポートされてるでしょ。これやったらいいよとか教えてもらってるでしょ。自分で考えてない事でしょ」</div><div>「その時点で本気じゃないよ」</div><div>「俺と付き合う前絶対他の人の事も気になってたでしょ。リプとか見れば分かるよ」</div><div>「軽い恋愛で良いって事でしょ。付き合えれば良いんじゃない？大体付き合ってから自分縛るのって遅いんだよ」</div><div>「本気で恋愛したいなら好きな人が出来る前から好きな人が出来て付き合えた時にほぼ全ての事がその人が初体験となるように自分を縛るよ。俺も幼なじみ達もそうしてるよ」</div><div>「恋愛慣れてないとか関係無いでしょ。本気で好きなら慣れてなくても分かるよ。どうするべきとかね。こうしたらダメだろうかとか普通考えるよ。」</div><div>かずまは物凄く私に怒ってる。私が悪い。</div><div>「そんなことあるよ。ただ単に話せればよかった。好意とか寄せてない。</div><div>入れてないよ。確かにキャスは楽しかったけど…かずまより他の男ってことは無かった。</div><div>誰か構って 癒してってさ… &nbsp;私はその頃、かずくんに言えなかったからツイートすればかずくんが見てくれるから敢えてそうしてたんだよ。遠回しにかずくんに伝えてたんだよ…。確かにそれは答えた…。でも、女子だと思ってたし、質問箱に来てもLINE交換しないだろうって思ってた。」</div><div>「別の垢なんか使ってない。行動力も覚悟も本気である。」</div><div>「確かにサポートされてる。これやったらいいよって…でも、全部教えてもらってるわけじゃないよ。半分くらいは自分で考えて行動してる。</div><div>バレンタインもそうだったよ。」</div><div>「他の人は気になってないよ。大体、ネットで誰かを好きになったことなかったもん。」</div><div>「軽い恋愛でいいとか考えてない。付き合えれば良いとかそういうんじゃない。もしそうなら違う人ともイチャイチャしてるし、すぐ照れたりしない。」</div><div>「確かに…それは考えてなかった。付き合う前から自分を縛っていなかった。」</div><div>付き合う前から自分を縛らなければいけないのは知らなかった。そんな人周りに存在しなかったからだ。</div><div>「話してる時点であれでしょ。そんなこと言われてもさ、あの時のあいなならあり得るんだよ。</div><div>だったら俺と通話出来たでしょ。言ってることと行動が違うよ。あのさ…ツイートしたら他の男が反応するでしょ。そのくらい分かれよ。女子だと思ってた。それ男子だったらどうするんだよ。考えが甘いんだよ。」</div><div>「信用出来ないって言ってるじゃん」</div><div>「行動力も覚悟もほとんど伝わってこないよ。」</div><div>「半分は教えてもらってるんじゃん」</div><div>「リプを見たらそうにしか見えないんだよ」</div><div>確かにその通りだ。私はもう自分の意見を言う事が出来なかった。彼が怖かった。かずまが。しかし、自分なりにかずまを優先してきたつもりだった。毎週かずまに会い、テスト期間や受験前も勉強を捨ててかずまを優先していた。それだけ話したかったからだった。その為、夜寝るのが遅かったし体調もよく崩していた。また、</div><div>かずくんが寝てから寝るようにしてたし、自分から終わらせたくなかった。その事も伝えたが、かずまには届かなかった。</div><div>「浮気者。嘘つき。最低。」</div><div>「もう限界超えてるんだよ」</div><div>「こんなに最低で最悪な事されたことねーよ」</div><div>「人生で一番辛かったよ」</div><div>「何をされても傷は治らないよ一生ね」</div><div>ナイフのように刺さる言葉の数々。</div><div>「ごめん…」</div><div>私は謝る事しか出来なかった。だって私のせいだから。</div><div>「ごめんじゃねーよ」</div><div>「こんなに最低で最悪な事されたことないから」</div><div>「こんなに夜中まで起こさせて昼間倒れるかもね」</div><div>かずまは私が謝罪をしてもそう言い放った。私は別の垢を作って他の人と話していない証明をする為に一日中画面録画とスマホを触っていない時は実写の録画をする事を決心した。しかし、かずまやゆかちゃんと話している時は録画をしていなかった。それが盲点だったのだ。</div><div>「ずっとじゃないじゃん。信用無くなるよ。本当はゆか以外と話してるんじゃないかって思うよ。」</div><div>かずまはそう言った。もうかずまとゆかちゃんしか話してはいけない雰囲気だった。kurahaとさえも…。</div><div>&nbsp;私は前回の反省を活かしてずっと録画を続ける。勉強している時や塾に行っている時、学校に行っている時はノートに記録をし続けた。録画をLINEに送るのは凄く時間がかかる。一日の動画を送るのには三時間近くかかっていた。LINEを閉じてしまうと送れないので、あと少しで受験を控えた私には負担が大きかった。寝るのはいつも四時近くだった。かずまと話す為に六時に起きていたので睡眠時間は二時間だむた。そしたら次は既読がつくのに間があると言われた。けれどもたった数秒単位だった。私だって、見れない時間だってある。LINEを閉じてTwitterでゆかちゃんと話している時はずっとLINEを開けない。しかし私は</div><div>「そっかそんな事思ってたんだね。」</div><div>と返した。自分では気づかなかったけど相手にはそう思わせる事してたのかなと思ったから。</div><div>自分が悪いんだ。怒られる度に私は</div><div>「ごめんね」</div><div>と謝った。</div><div>&nbsp;暫くは誰も友達を追加しないでいた。しかし、クミと遊んだ時についノリで交換をしてしまった。事後報告という形にはなるが、かずまに報告をした。</div><div>「友達とLINEを交換したんだけど…やっぱり、後日事情を話してブロックした方がいいかな？それかそのままでいいかな？」</div><div>少し不安だったが、許してくれると思っていた。しかし、</div><div>「交換したってことは交換したかったんだね。友達が他の人にあいなのLINEを教える可能性があるって気づかなかったの？」</div><div>怖い。怒らせてしまった。</div><div>「友達はそんなことする人じゃないよ。それにちゃんと教えないように言っておくよ」</div><div>何より私の唯一の友達だった。その友達を悪く言われるのは私も腹が立った。</div><div>「俺がお前の友達なんて信用するとでも思う？」</div><div>それもそのはずだ…。かずまは私の事さえも信用していない。それなのに私の友達なんて信用するはずがないのだろう。</div><div>「ごめん…ちゃんと聞けばよかったね」</div><div>私はかずまの意見に譲歩した。いやするしかなかった。</div><div>「すぐに交換するとか何も考えてない証拠じゃん。もうさ、本当に話してても不快になるだけなんだけど。全く信用出来ない」</div><div>怖い。怖い。怖い。かずまの口調がどんどん荒くなっていく。</div><div>「でも…学校の事で何か聞きたい時に聞こうと思って…聞く人いないから…それに特に話さないから大丈夫かなって思って…」</div><div>私はInstagram、LINEなどのSNS上でリアルの友達がいなかった為、必要な情報も教えてもらう事が出来ないから不便であった。登下校もクラスが別のクミと中々会わないため、話す人がいなかった。その為、LINEが便利だと思って帰り道ばったり会った時に交換をしてしまったのだ。だが、そんなの知りもしないかずまは</div><div>「ほんと都合いいよね。LINEなんていくらでも保存出来るよ。ネット舐めんな！常に不快なんだけど」</div><div>やはりかずまには言い訳にしか聞こえないようだ。</div><div>「確かに…少しネット舐めてた…」</div><div>ネットを舐めていたのは事実だった。それにかずまやゆかちゃんの事も舐めていたのかもしれない。このくらいなら大丈夫だと…怒らないと</div><div>信じきってしまっていた。完全に油断をした私のせいだ。</div><div>「そうだよ。ほんと甘すぎ。お前は何がしたいんだよ。夜まで起こさせてさ。やることだってあるのに。不快にさせて。まじなんなん？」</div><div>この時時刻は夜中の一時を回っていた。かずまはこの日、二十一時に寝る予定だった。私のせいでこんなに夜中まで起こさせてしまった。私のせいで不快にさせてしまった。私のせいで無理をさせてしまった。</div><div>「ごめんなさい。確かにそうだね。ごめんなさい。」</div><div>私は謝るのが癖になっていた。毎日のようにかずまとゆかちゃん、さつきさんの誰かに怒られていた。三人の機嫌が良い日なんて滅多に無かった。ゆかちゃんやさつきさんはかずまの幼なじみなので、かずまが苦しんだり怒っていたりする姿が嫌らしく、かずまの完全な味方だ。過去の私に対して</div><div>「最低」</div><div>「浮気者」</div><div>と言っていた。かずまに対しての行動力も足りないと言っていた。私は限界だった。こんなに頑張っているのに…私は三人の顔色を常に伺っていた。</div><div>&nbsp;クミと久しぶりに一緒に下校をした。最近は朝はギリギリまでかずまやゆかちゃんと話していたり、動画を送ったりしていたのでクミと登校時間が合わなかったのだ。</div><div>&nbsp;私はクミにLINEが出来なくなった事を告げた。それに加えてクミをブロックしなければいけない事を話した。</div><div>「なんでLINE出来なくなったの？」</div><div>クミは私に不思議そうに聞いた。疑問に思うのも当然だろう。スマホを持っているのにLINEが出来ない人はあまりいない。私はクミにかずまの事を話した。私の事が信用出来ない為、画面録画と日常生活の録画をしている事、かずまが他の人とLINE交換をする事を禁止している事。ありのままに話した。すると、</div><div>「それモラハラじゃん。画面録画とか日常生活の録画とか有り得ないんだけど」</div><div>クミはかずまの事を有り得ないと言った。しかし、かずまは普段は優しいし私の事を一番に考えてくれる。モラハラではないだろうと考えた。私が信用されなかった事をしたのが悪い、そう考えていた。</div><div>「でもそれは私が悪いんだ。それに今幸せだもの」</div><div>私は笑ってそう言った。クミはまだ納得していない様子だったが、私が自分を抑えるのは今後の未来の為、そして何よりかずまの為だったのだ。私はかずまを愛しているし、かずまからも愛されている。そう考えていた。</div><div>&nbsp;クミと帰り道たまたま会った事から再びよく一緒に登下校をするようになった。私はクミやkurahaとどうしても個人的な連絡を取りたかった。しかし、かずまやゆかちゃんに禁止されており、画面録画もしている。私は良い考えを思いついた。父が以前に使用していたスマホは水没して一切使用出来なくなった私のスマホとは違い、操作する事が可能だ。Twitterのアプリを入れてかずまと出会う前に別垢として使用していたアカウントを使用し、クミやkurahaと話そうと考えたのだ。それに加えて父は以前のスマホは使用しておらず、放置したままだ。私は急いで父の以前のスマホの充電をした。右手でスマホを使用しながら左手で父の以前のスマホの操作をした。自意識過剰だが、両手で文字を打つ自分を我ながらプロ並みだと思った。</div><div>&nbsp;ツイートをすると、すぐにkurahaとクミから返信が来る。久しぶりに二人と話して凄く幸せな気持ちになった。ここ最近は自分が悪いのだが、かずまやゆかちゃん、さつきさんに酷い言葉を投げかけられていたので久々の和やかな雰囲気は何とも言えない気持ちになった。暇な時はこの垢にこっそり浮上していた。クミからkurahaへLINEが出来ない理由を話してもらえるように頼んだ。中々この垢には浮上出来ないし、浮上出来るとしたら数分程度だ。かずまやゆかちゃんにバレてしまってはいけない。私がkurahaに直接説明する事は不可能だったのだ。</div><div>&nbsp;二月二十一日</div><div>この日は合格発表の日だった。結果は合格だった。しかし、元々の志望校では無かった為、複雑な気持ちだった。私は勉強時間が足りずに直前で志望校のレベルを落としたのだ。そしてもう一つ問題がある。かずまとゆかちゃんには女子校を志望するように言われていたのだ。しかし、私が住んでいる所の女子校は偏差値がどこも高く、届かなかった。私はかずまとゆかちゃんに女子校を受験したと言っていたのでいつバレてしまうか不安でもあった。合格してしまえばその学校に決定してしまう。複雑な気持ちだった。合格発表は学校の帰りにあった為、スマホを触っている余裕が無く、かずまに連絡をするのがいつもより三十分ほど遅くなってしまった。かずまから既にLINEが来ていたので急いで返信をした。</div><div>「合格発表が学校であったから帰るの遅くなっちゃった…」</div><div>私はかずまによそよそしくLINEをする。</div><div>「それ朝に言えよ」</div><div>どうやらかずまに心配をかけさせてしまったらしい。</div><div>「そうだったね、ごめん」</div><div>私はかずまにいつものように謝った。</div><div>「そもそも後から○○○だったからと言われても信用出来ないよ」</div><div>事後報告がいけなかったらしい。</div><div>「これからはちゃんと先に言うね」</div><div>「あと、今日十八時から家庭教師が来る」</div><div>この時時刻は既に十七時四十五分だった。もう少しで家庭教師が来てしまう。私は急いで文字を打つ。</div><div>「後からならいくらでも言えるよね。学習しろよいい加減」</div><div>「そうかよ」</div><div>かずまはそう言った。</div><div>「そうだったね…」</div><div>私はその通りだと思った。</div><div>「変わるっていうの嘘なんだろ。もういいよ。信用しないから。」</div><div>「じゃあね」</div><div>かずまは私が何度も変わると言っているのに変わらないから嫌気がさしたらしい。もう別れると言ってきた。</div><div>「嘘じゃないよ。ちゃんと変わるよ。」</div><div>こんなの口だけだ。自分でも分かっていた。</div><div>「変わるって言って変われてないじゃねーか。</div><div>変わるのが遅いんだよ。」</div><div>「もういいよ。ばいばい」</div><div>かずまは再び別れようとしていた。</div><div>「そうだけど…変わるのが遅いけど…</div><div>もう少し待ってほしい。」</div><div>「嫌だ…。ばいばいしたくない。」</div><div>私はどうしてもかずまと離れたくなかった。</div><div>「どんだけ待たせんだよ。」</div><div>「嫌だってお前が悪いんだろ。」</div><div>かずまは最近私の事を名前で呼ばなくなった。怒ると呼ばない、の方が正しいのだろうか。最近はいつも怒っているので名前で呼ばなかった。</div><div>「ごめんなさい。でもお願いします。」</div><div>「そうだね…私が悪い。でも、ばいばいはしたくない。」</div><div>私は離れたくない気持ちをかずまに一生懸命伝えた。</div><div>「お願い…じゃねーよ。都合良すぎんだろ。」&nbsp;</div><div>「そうだよ。うるせーよ」</div><div>「もう待たないから。ばいばい」</div><div>「そもそも自分の立場分かってんのかよ」</div><div>かずまには一生懸命伝えても届かなかった。私が悪い。</div><div>「どうしても今週だけ待ってください。お願いします。」</div><div>「一旦家庭教師が来るからまた連絡する。」</div><div>もう十八時を回っていたのでかずまとのやり取りを終わりにする。</div><div>&nbsp;家庭教師の先生に高校が受かった事を報告した。すると先生の目から涙が溢れた。私はびっくりした。</div><div>「良かった。本当に良かった。おめでとう」</div><div>先生は泣いて喜んでくれた。私は先生に沢山迷惑をかけた。先生からの課題もやってこない事が多かったが、叱らずにしっかりと指導をしてくれた優しい先生だった。先生には週一の塾の時間や日付を両親に内緒で勝手に先生とLINEで変更したりしていた。私は先生に対して悪い事しかしていない。複雑な気分だった。しかし、凄く嬉しかった。それと同時に申し訳なさで一杯だった。</div><div>&nbsp;家庭教師の時間が終わり、かずまにLINEをするが、返信が来なかった。私はゆかちゃんに相談をしてかずまの怒りが収まる方法を提案してもらった。しかし、その内容が目を見張る内容だった。</div><div>「かずまくんに裸の写真を送るのはどう？恥ずかしい写真や動画を積極的に送るのは行動力を示すチャンスだと思うよ」</div><div>ゆかちゃんは私にそう言ったが、戸惑った。そんな写真や動画を撮影した事なんて一度もない。しかし、かずまの怒りが収まって行動力を示す事が出来るのなら送ろうと決心した。私はかずまにLINEで写真や動画を送るとかずまの態度が変わった。機嫌が良くなったのだ。やはりゆかちゃんに言う通りにして良かったと思った。私はかずまと平和に過ごしたい。ただそれだけだった。その為なら何でも出来た。</div><div>&nbsp; 二月二十三日</div><div>この日はかずまと会う日だった。私は今日もいつも通り塾に行くと両親に話していた。しかし、受験に合格したのに朝早くから行くのはおかしいと言われたのだ。遊びに行くとは言えなかったので、何とか両親を説得したが、塾に好きな人が居るのではないかと両親は恐らく察したようだった。かずまとは八時に約束だったが、着くのに三十分程度遅くなってしまった。私はかずまに事情を話して何とか許して貰えた。私は一安心した。しかし、帰ってきた後に両親に問い詰められ、付き合ってる人が居るという事を報告した。ネットの人だとは言えない為、塾の人だと嘘をついた。</div><div>三月四日</div><div>ゆかちゃんの命が危ないとの事だった。どうやらゆかちゃんは頭が良いが故に脳に負担がかかっているようだった。私のせいで最近はさらに脳に負担がかかって仮死状態になったとの事だった。私は母に事情を話して学校を休ませてもらった。こんな時に呑気に学校なんて行っていられないと思ったからだ。私は泣きながら母に語り、何とか休むのを許して貰えた。私はかずまにこまめにゆかちゃんの状況を聞きながら心配をしていた。するとかずまから衝撃のLINEが届いたのだった。</div><div>「言わなければならない事がある…多分単位貰えない。退学」</div><div>どうやらかずまは学校に通う日数が足りなくて退学になるとの事だった。しかし、私は退学する事なんてどうでも良いと思っていたのでそう伝えると…</div><div>「社会はそうだとは思ってくれないよ…？」</div><div>「特にあいなのご両親とかね」</div><div>確かに私の両親は許してはくれなそうだ。</div><div>「社会に認めてもらえなくても私はかずまの生き方、行動…全部尊敬してる。どんな人が否定してもね。」</div><div>私はかずまにはっきりとそう伝えた。学歴より重要な物は人柄だ。私は人柄をかずまを好きになったのだから。</div><div>「そっか」</div><div>かずまは少し冷たげにそう言った。</div><div>&nbsp;夜になってもゆかちゃんの状態は変わらなかった。私は眠くなったので少し仮眠を取ろうと思い、かずまにこれから画面録画じゃなくて通常の録画をするので返信が遅れると伝えた。二時間後、</div><div>「あいな今何してる？」</div><div>「大丈夫？」</div><div>「…さすがに遅くない？」</div><div>「…やめろよ…」</div><div>「おい、」</div><div>「これだけ送れば気づくよね？」</div><div>「あいな！！！」</div><div>その後、かずまからの通話で気付いた。録画をしながらだと通知音しか聞こえない為、LINEが来たことに気付かなかったのだ。私は急いでかずまに謝罪をした。</div><div>「ごめん。ずっと録画してたからラインに気付かなかった」</div><div>私はありのままに伝えた。</div><div>「もういいよ。あいなはそういう人だから。変われないの分かってるから。」</div><div>かずまは私にそう言った。</div><div>「でも変わる。それに録画してるとラインの通知が表示されないんだ。通話は音が鳴ったから気付いたけど…」</div><div>私はかずまに心配をかけてしまったのは申し訳なかったが、仕方の無い事だと思ったので必死にかずまに伝える。</div><div>「変わる変わる言って変われてないよね？</div><div>俺は表示されるよ」</div><div>「設定の問題でしょ」</div><div>かずまは私を信用してはくれなかった。私はさすがにムカついた。かずまの設定がどうであれ、私のスマホの設定とは違うはずだ。しかし、ムカついても言い返す事は出来なかった。その夜私宛にゆかちゃんから手紙が届いた。ゆかちゃんはかずまの幸せはもちろん、私の幸せもいつも考えてくれていた。それに気付かされて再び自分の事を責めた。どうして私は二人の望む人になれないのだろう。それが凄く悔しかった。</div><div>&nbsp;二日後にゆかちゃんは目を覚ました。安心した。このまま私のせいでゆかちゃんが亡くなってしまったらどうしようかと考えていたから。</div><div>&nbsp;三月九日</div><div>かずまといつも通りに八時に待ち合わせで友達と遊びに行くと両親に伝えたのだが怪しんだ両親、特に父が外に出さないと言い出したのだ。どうやら両親はこんなに早くから約束しているのがおかしいと感じたらしい。私は何とか両親を説得し、無理やり家を出る。両親は私の事を</div><div>「頭がおかしい」</div><div>と罵ったが、私はどうしてもかずまに会いたかった。両親はどれだけ怒っているだろうと考えると帰るのが怖かった。私は覚悟を決めて母にかずまと会って貰えるように話した。かずまと母はお互い気が合ったらしく好印象だったようだ。しかし、父は会っていないままなので印象は悪いままだ。父からの交際の反対が続いた。</div><div>&nbsp;三月十三日</div><div>ゆかちゃんにかずまへ再び裸を送るように催促される。私は送ると答えたものの、送る事に躊躇していた。それがいけなかった。かずまは私が躊躇している間に他の誰かに送ったと考えているのだろう。</div><div>「ゆかから聞いたよ嘘つき。」</div><div>かずまはどうやらゆかちゃんから私の裸が送られてくる事を知っていたが、送らなかったので嘘つきと言ったのだろう。しかし、誰かに送ったという疑いをかけられるのは良い気がしなかった。</div><div>「そっか。でも誰にも送ってないよ」</div><div>私ははっきりとそう答えた。</div><div>「もう信用出来ないよ。」</div><div>「じゃあな」</div><div>「嘘をついた事に変わりない」</div><div>「ゆかを苦しめるの楽しい？」</div><div>「もういいよ。」</div><div>かずまは信用出来ないと言った。</div><div>「誰にも送ってないし浮気なんかしてないよ。」</div><div>「そうだね。変わりはないけど…」</div><div>「楽しくない、苦しめたくない。」</div><div>私が悪かった。躊躇せずに早く送っていればこんな事にはならなかったのだから。</div><div>「うるせーよくそ」</div><div>「寝れねーまじで倒れるからな」</div><div>「もう本当に嫌」</div><div>「あああああああああ」</div><div>「もう本当に最悪」</div><div>「ふざけんなふざけんなよ！！！」</div><div>「イライラする」</div><div>かずまはまた怒ってしまった。</div><div>「ごめんなさい…」</div><div>私は謝る事しか出来ない。</div><div>「謝って済むの？いまなにしてんの？」</div><div>「もういいやおやすみ」</div><div>今日の所は寝る事になった。</div><div>三月十四日</div><div>「もう苦しめない…幸せにする。」</div><div>私はかずまにLINEを送った。</div><div>「信じられないんだけど」</div><div>かずまから予想通りの返信が来た。</div><div>「そうだよね。でもこれでダメだったら…</div><div>もう本当にばいばいしていい。それくらいの覚悟を持つ。」</div><div>私はこれで私が変われなかったら幸せに出来なかったら別れると言った。それくらいの覚悟を持って接するという意味でかずまに伝えたのだが、伝わっていなかったらしい。</div><div>「その考えがうざいんだけど」</div><div>「ばいばいしたいなら良いよ。しろよ」</div><div>かずまは私が別れたいと解釈したらしい。否定をしたが、かずまは折れなかった。私は本気で好きでかずまの事を考えていると伝えても伝わらなかった。</div><div>「言ってる事と行動が違うんだよ」</div><div>「本気で好きとか言いながら理解してない」</div><div>「お前の言葉とか誰が信じるんだよ」</div><div>「嘘つくくせに」</div><div>かずまの言う通りだった。私はゆかちゃんに写真を送ると言いながら送らなかった。私は嘘つきだ。その通り過ぎて何も言い返せなかった。</div><div>「昨日嘘ついた時点でもう無理だよ」</div><div>「よくこの状況で嘘つけるよな。よくゆかを裏切れるよな。裏切ったらゆかの命を奪うことになるっていう状況でさ」</div><div>かずまは信じられない事を言った。</div><div>「命を…奪う…」</div><div>私はかずまの言葉をオウム返しのように返す事しか出来なかった。</div><div>「お前がしてることは殺人だよ」</div><div>殺人…私は殺人を犯しているのだろうか。私はゆかちゃんの命を奪っているのだろうか。私は唖然とした。</div><div>「人殺し」</div><div>再びかずまからそう送られてきた。</div><div>「自分に自信がなかったんだ。それを送ったところでどうにもならなくてダメだったらどうしようって…こんなネガティブなこと言えなかった送るって言ったのにおどおどしてそんなこと考えてるなんてそれで送ったって嘘をついた…」</div><div>私はありのままに伝えた。</div><div>「だからその考えがうざい」</div><div>かずまはそう言った。だったらどうしろと言うのだろうか。自分に自信をつけるようにしたら良いのだろうか。</div><div>「あとゆか見つかったから」</div><div>「ベンチで一人で震えながら泣いてたお前のせいでな」</div><div>「ゆかと話してくるから暫く待ってろ」</div><div>「一人で何かするなよ？」</div><div>「特に自殺とか」</div><div>「絶対すんなよ」</div><div>「浮気もな」</div><div>「お前に何かあったら俺もうだめだからね」</div><div>「嫌いになったわけじゃないから」</div><div>「好きだからさ」</div><div>かずまは私にそう言い残して二時間ほど返信が来なかった。</div><div>「人殺し」</div><div>かずまが私に言った言葉が何度も頭を過ぎった。私がした行為は許されるべきではないだろう。ゆかちゃんとかずまを裏切った私はこれから何をすれば良いのだろうか。そう考えた。</div><div>&nbsp;かずまが帰ってきた。どうやら怒りは収まったらしく、暴言を吐かれる事は無かった。</div><div>「あいなは今まで何を学んできたの？」</div><div>「ご家族がどういう育て方してるの？」</div><div>「ただ厳しいだけで大切なものを教えられてないように思えるよ」</div><div>かずまは私にそう言った。その通りかもしれないと思った。</div><div>「確かにそうだね。私は大切なものを学んできていない。何もかも全部誰にも頼らないで教わらないで自分で考えてやってきた。」</div><div>私は誰かに頼るという事をしなかったのだ。</div><div>「…正直、それは子供の育て方を知らないよ」</div><div>「愛もない。」</div><div>「だいたい長時間怒ったら思考能力が低下しちゃう」</div><div>確かに私の両親は長時間私を叱る事が多かった。</div><div>「そんな家庭にいて誰かを幸せに出来るわけがない」</div><div>「本当の愛を知らないんだから」</div><div>かずまはそう言った。</div><div>「じゃあどうしたらいいの…？本当の愛を知るにはどうしたらいいの？」</div><div>私はかずまに聞いた。</div><div>「親が変わる以外ない。」</div><div>「でもそういう親は変われない」</div><div>「離れる以外にないんじゃないかな？」</div><div>かずまはそう言った。しかし、離れた所で居場所が無い。</div><div>「でも離れた所でどうするの？居場所が無いよ」</div><div>どうしたら良いか分からなかった。</div><div>「じゃあそれが運命なんだよ。そこまでって事。人によってはそこから進めるけどね。」</div><div>私は考えた。両親と離れたい。特に父とは。私の父は声を荒らげて自分の思い通りにならないと怒るタイプだ。反抗期が来る事を許さなかった父は意見をすると反抗だと怒られる。そんな父が交際を認めてくれるわけが無かったからだ。</div><div>&nbsp;かずまからお泊まりを提案された。しかし、認めてもらえるわけが無い。私はクミに相談をして協力してもらう事になり、クミと他の友達とお泊まりをするという事で了承を得た。</div><div>&nbsp;これから先両親やかずま、ゆかちゃんとどう接したら良いのか考えている中で倒れる事が良いと考える。倒れればかずまやゆかちゃんが心配してくれる。弱っていれば誰からも責められない。責められる毎日から解放される。かずまやゆかちゃん、父からも。私は倒れる方法を検索する。画面録画をしている為、以前用意した父の以前のスマホだ。今思うとこの時点で既に限界を迎えていたのかもしれない。</div>
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<pubDate>Mon, 04 Apr 2022 20:18:29 +0900</pubDate>
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<title>逃避行ー長編小説ー③</title>
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<![CDATA[ <div>三、違和感</div><div>&nbsp;十二月二十四日</div><div>初めてかずまとリアルで会った。高崎駅の改札口で約束していたので改札口の方に向かうと伝えられていた服装の特徴を聞いてかずまと思われる人を見つけた。かずまはかっこよくて服装もお洒落だった。それに比べて私は不細工な顔で服も適当に家にあったものを着てきただけだった。恥ずかしくて声が掛けられなかったが、向こうも私に気が付いたようだ。</div><div>「あいなだよね？」</div><div>向こうも緊張しているのだろう。照れた様子で私に近づいて聞いてきた。</div><div>「そうだよ。」</div><div>と返しまずは映画館に向かうことにした。緊張して中々話せなかったが、すぐに慣れて映画の感想を言い合った。その後は駅の小さなイルミネーションを見る事にした。歩いていて気づいたことがある。私達はまだ手を繋ぐこともハグすることもしていなかった。どっちもしたかったが、言い出す事が出来ずにいた。しかし勇気を出して言うことにした。</div><div>「あの…手繋ぎたいな。あとハグも…」</div><div>照れて顔も見れなかったがそんな私を</div><div>「可愛い。良いよ！ハグは人混みがない所にしよう」</div><div>と言われ手を差し伸べられた。嬉しくて照れてばかりいた。かずまの手は温かくて大きな手だった。</div><div>&nbsp;駅の周辺を歩き、ビルとビルの間の人混みがない暗い所に着いた。</div><div>「ここでしよう」</div><div>とかずまに言われて足を止めた。</div><div>「好きだよ」</div><div>そう言われながら抱き寄せられた。力強い抱きしめ方と広い背中。当たり前だけどやっぱり男子なんだなと感じた。幸せな気分を感じながら</div><div>離れようとすると目が合って口付けをされた。ファーストキスだった。</div><div>『あれ普通のキスとは違う』</div><div>何故か舌を入れられた気がしたのだ。ディープキスというものなのだろうか。キスをしたことがない私は分からなかった。そしてキスするのも予想外だった私は酷く動揺したが、敢えて聞くことはせずに一日の終わりを迎えた。最寄り駅まで送っていってもらった私は別れるのが凄く寂しかった。しかし、私は時間が無かった。夕飯を祖父母の家でみんなで食べることを約束していたのである。寂しいながらも迎えに来てくれた父と母の元へ急いで向かった。</div><div>「遅い！！！約束してるんだからお前のせいで夕飯が遅れてみんなが迷惑かかるんだよ」</div><div>父が不機嫌な様子で怒鳴った。時刻は七時頃だった。あまり遅くないのでは？と考えたが…</div><div>「…ごめん」</div><div>&nbsp;父は食いしん坊な所があるのと時間がいつもよりは遅くなったのは事実だったので素直に謝った。祖父母と両親と夕飯を食べながら会話をしたが、初デートで浮かれていて中々話が頭に入らなかったりもした。幸せな一日だった。</div><div>&nbsp;私はあと二ヶ月少しで受験を控えていた。三学期は家庭教師と塾を行き来する日々だった。私は元々家庭教師に教わっていたが、家庭教師が塾講師も併用していてLINEを交換している為、やり取りは主に家庭教師との連絡のみで済んでいた。その為、塾の日付の融通もきいていたので一週間に一回のペースで会っていた。会う度にかずまの嫉妬が激しくなっていくことに気が付いた。私はそれだけ愛されているのだろうと特に気にとめていなかった。 それに会う度に私もかずまへの気持ちが強くなっていく事に気付いたからだ。会えない期間は凄く寂しくなって胸が締め付けられた。会ってからの方が辛い気持ちになるなんて思いもしなかった。</div><div>&nbsp;ある日、</div><div>「かずまくんのアソコがおかしいんやさ、病気かな？」</div><div>ゆかちゃんからとんでもないDMが届いた。</div><div>「どういう感じにおかしいの？」</div><div>とりあえず詳細を聞くことにした。</div><div>「最近ずっとかずまくんのアソコがとんでもないくらい膨れ上がってる…かずまくん苦しそう…」</div><div>私はなんと答えていいか分からなかった。ゆかちゃんはまだ小六で性に関しての知識がないのだろう。</div><div>「病気じゃないよ。大丈夫だから安心して！」</div><div>とりあえず病気じゃないことを伝えて安心してもらうことにした。それにしてもずっと膨れ上がっているというのはどういうことだろう。そう考えていると今度はさつきさんから連絡が来た。</div><div>「あいなちゃん。かずまくんもう限界みたいなの…今日ちかねと私が襲われかけて…やっぱりその…怪我してて自分では出来ないし…発散出来ないみたい。私が発散させることが出来れば良いんだけどね…」</div><div>襲われかけた…？彼女でも何でもないのに？</div><div>私は嫉妬した。それと同時に私が何とかしなければいけないと思った。</div><div>「私がやります」</div><div>私は決意した。男子が発情するのは仕方の無いこと。爆発して周りの女子を襲ってしまうのも生理現象だと自分に言い聞かせた。ちかねさんやさつきさんを襲ってしまう最悪な結末になることだけは避けたかった。何より私が傷ついてしまうからだ。</div><div>「ほんと？よかった…じゃあ次に会う時にしてくれる？」</div><div>さつきさんは安心したようだった。</div><div>「わかりました。」</div><div>私はそう答え、かずまにこの事を伝えることにした。</div><div>「あの…性欲が溜まってるの？」</div><div>私は直球に聞いた。</div><div>「うん。正直ね…怪我してて自分ですることが出来ないし…」</div><div>さつきさんの言った通りだった。やはりかずまは辛い現状のようだ。</div><div>「あの…私が抜いてあげようか？」</div><div>恥ずかしかったが、もう恥ずかしさを捨ててやるしか無かった。</div><div>「いいの？じゃあお願いしようかな。」</div><div>かずまは遠慮なくそう答えた。正直私は経験をした事がなく怖かった為、かずまが遠慮してくれるのを期待していたが、期待はあっさりと裏切られてしまった。</div><div>&nbsp;かずまと会う日がやってきた。いつもよりもさらに緊張していた。</div><div>「とりあえず公園に行こう」</div><div>かずまの提案から公園に行くことになった。</div><div>『どこでさせられるんだろう』</div><div>&nbsp;不安を抱きながら公園へ歩いて向かっていった。公園へ着くとかずまに手を引っ張られ公園にあるトイレに連れ込まれた。すると突然いきなりキスをさせられた。いつもよりも長いキスで舌を絡ませてきたので私は戸惑った。不安な気持ちでいっぱいだが、どこか嬉しい気持ちでそのまま身を任せた。初めての事ばかりだったけど体を触られる事は不快ではなかった。むしろ好きな人に触られて気持ち良かった。そしてかずまの男性器を舐めると体液でしょっぱく生臭かった。私は少し吐き出してしまったが、かずまに頭を押さえつけられ無理やり精液を飲まされてしまった。飲み終わると気持ち悪くてフラフラとした足取りで立ち上がった。好きな人の精液とは言え、正直無理があった。その日はそれで終わった。</div><div>&nbsp;ゆかちゃんとはいつもかずまとの話をしている。もちろん会った時の話もしているのだが、毎回アドバイスをされる事がある。私の積極性についてだ。私は自分に自信が無く、引っ込み思案な性格だ。男子とどう接したら良いか分からず、受け身になってしまう。話しかけるのもかずまからが多かった。そこを毎回指摘されるが、実行出来ずにいた。</div><div>&nbsp; お風呂の中でもどこでもスマホを肌身離さず持っていた。それはかずまやゆかちゃんへの返信を早くするためであった。しかし、その行いに災いが降りかかることになる。私はスマホを湯船の中に落としてしまったのだ。すぐに拾い上げたが、電源がつかなかった。私はスマホが壊れた心配よりかずまやゆかちゃんの返信が出来なくなってしまったことを心配した。その心配は的中した。母のスマホを貸してもらい、Twitterから二人に返信をしたが、翌日の朝になってしまった。</div><div>「何かあったのか心配した。その間に浮気してたんじゃないかと疑ったよ。なんで早く言わなかったの？」</div><div>まずはゆかちゃんから返信があった。浮気…その言葉が出てくるとは思わなかった。Twitterの人達ともゆかちゃんの言う通りもう関わっていなかったのに。まだ信用出来ていないようだ。かずまはどうやら私に何かあったのかと心配して学校に行かなかったらしい。学校にいかなかったからといってどうにかなるわけでもないのに。そこまで心配されるのは逆に重荷になっていた。スマホが完全に使えなくなった私は両親に新しいスマホを購入してもらった。これで一安心。と思ったが、突然の水没による故障のため、LINEのバックアップがとれていなかった。仕方なく新しくLINEを始めることにした。</div><div>「これを機にかずまくんに信用される為に親と家庭教師とかずまくん以外追加しないようにしたら？」</div><div>ゆかちゃんにそう提案されたが、正直焦った。友達とLINEが交換出来ないのは辛かった。しかし、信用出来ずに責められる方がよっぽど辛いと思った私は提案を受け入れた。これにより友達との連絡手段は断たれてしまった。これで怪しいことは何も無い。やっと信用される。そう思った。</div><div>二月二日</div><div>「あいなって結構嘘つくよね…」</div><div>かずまから控え気味にそう送られてきた。しかしTwitterも多くの人と縁を切り、LINEも学校の友達さえ追加しなかった私はまだ信用されてないことに腹を立てた。</div><div>「そんなに嘘つかないよ…。それに来週テストだし。前は話すとしたらリア友が一人いたけど今は増やすつもりもない。」</div><div>私は来週テストが控えており、かずまやゆかちゃん以外と話す余裕もなかった。それに二人以外とは話していなかった。</div><div>私はLINEの友達リストをスクショし、一人一人のトークもスクショした。そうは言っても親と家庭教師しかいなくてつまらないLINEだったのだが。</div><div>「そんなにってことは嘘つくっていうことだよね…ゆかが、ラムネさん嘘ばっかつくって言ってたよ。それに本当はもっと追加したいんじゃない…？」</div><div>嘘はついている自覚はなかった。が、ゆかちゃんからよく嘘つきと言われていた。思い当たる節としたら…</div><div>「まあ…体調とか心配されそうだなってことなら嘘ついたことがある。LINEの件に関してはリア友一人はLINE交換したいって言われたら追加するかも。宿題とかも聞きたいし、テストのことも聞きたいし。まあ…追加しても特に用がない限り話さないよ。」</div><div>この頃は体調があまり良くなかった。受験生ということもあってか、睡眠があまり取れていなかったのだ。常に頭痛がしていた。それを心配されないようにいつも大丈夫だと見栄を張っていた。しかし、ゆかちゃんに追求されて本当の事を言ってしまうのがオチだった。</div><div>「そういうの本当にやめてほしいんだけど。今までに嘘ついたこと、隠してること…隠してしたこと全部言って。処女じゃないなら正直に言って。浮気したことがあるなら言って。嘘だけはやめて。全部言って。」</div><div>え？今の話に処女か処女じゃないかなんて関係があるのだろうか？かずまには以前にかずまが初カレだと伝えたはずだ。そして何より私は男子が苦手だった。その事を理解しているものだと勝手に思っていた。それと同時にゆかちゃんだけではなくかずまも浮気を疑っていたんだなと思うと悲しくなってきてしまった。</div><div>「そういうことに関しては何も嘘ついてないよ。初カレだし…もちろんそういう行為もしたことがない。浮気もしたことがないし男子は誰も視界に入らないのも事実。私はかずまの為なら何でも出来るよ。」</div><div>私は堂々とそう返した。Twitterでも多くの人と縁を切り、残ったのは十五人程度。LINEも親と家庭教師とかずましかいない。もう捨てるものは無かった。自暴自棄かもしれないが、自分のことなんでどうでもよかった。ただかずまに信用されたかっただけだった。</div><div>「…一番確実なのは…処女かどうか確認することだけど…」</div><div>ああ…もうそれしか確認する方法がないのだな。</div><div>「うん。出来るよ。確認してくれた方が私も良いし。」</div><div>もうどうでもいいやと思った。こうして私はあっさりと自分の身体を汚してしまったのだ。</div><div>&nbsp;二月九日</div><div>かずまと会う日の前日だった。</div><div>「八時からでも大丈夫になったんだけど…かずまはそれでも大丈夫？」</div><div>最近会う時間が少ないとゆかちゃんやかずまに言われたので明日から会う時間を増やす為に家族に嘘をついて家を出る事にしたのだ。土曜日に塾に自習をしに行くと言い、八時から行くと両親に伝えていた。</div><div>「俺は大丈夫なんだけど…今親が…」</div><div>かずまは大丈夫らしいが、両親がどうやら外出するのを反対をしているらしい。</div><div>「親…？？」</div><div>かずまの両親が渋るのは珍しいと思った。</div><div>「今日まで体調不良で休んでいたのに明日遊ぶのはダメだという…笑」</div><div>かずまは少し控えめにそう言った。確かに学校は休んで遊びに行くのを許す両親は居ないだろう。</div><div>「あー…そういうことか…許して貰えそう？」</div><div>私はかずまに無理はしてほしくなかったが、会いたい気持ちが強かった。</div><div>「今のところ無理。まあ最悪無断で出るけどね」</div><div>かずまは信じられない事を言った。</div><div>「無断で…後で凄く怒られそうだね…」</div><div>私の両親に置き換えると物凄く怒られそうだ。普通の家庭でもきっとそうだろう。</div><div>「そうだね…でも俺は何よりもあいなが好きだから…何よりも優先するって決めてる」</div><div>「そのくらいの覚悟は全然あるよ」</div><div>かずまはそう言いきった。嬉しかった。かずまが誰よりも何よりも優先してくれる事が。それと同時に自分の日頃の行いを反省した。私は自分の身を守ってばかりでかずまを優先しきれていないと感じた。かずまは約束通り両親を押し切って私と会ってくれた。こんなにも想ってもらえるのは初めてで嬉しかった。自分が情けない…好きな人を第一優先に出来ない自分が。</div><div>二月十日</div><div>かずまと会った。私達はいつも土曜日にほぼ毎週会っていた。両親には塾に自習をしに行くと嘘をつき、かずまと会った帰りにいつも塾の最寄り駅の新前橋駅まで行き、塾までかずまと歩き、塾までは両親に連絡をして迎えに来てくれるのでそこで別れるのがいつものパターンだ。しかし、私が両親に連絡をする前に塾前で父らしき車を発見した。塾の近くまでかずまと手を繋いで歩いていた。父に見られたかもしれない。パニックになった私はかずまに事情を話し、車を影からこっそり撮影してもらった。写真を見ると父の車ではないようだ。ホッと息をつき、その日は終わった。しかし、胸のモヤモヤは晴れなかった。</div><div>二月十四日</div><div>今日はバレンタインだ。しかし、平日の為、かずまに会えるのは二日後だった。私はかずまにチョコを渡す為、初めての手作りに挑戦する。私は料理やお菓子作りなどをした事がなく、上手く出来るか心配だった。ゆかちゃんにバレンタインの相談をしながら作業を進めていた。作業をしている為、かずまへのLINEの返信が疎かになっていた。</div><div>「何してるの？」</div><div>かずまは私にそう尋ねた。</div><div>「秘密。でもかずまにとって良い事だよ」</div><div>私はバレンタインはかずまにサプライズとして渡したかった為、なるべく隠し通したかったのだ。</div><div>「本当に？あいな嘘つくから信用出来ない…」</div><div>私はその言葉を見て悲しくなった。今までの行動的に私はかずまに尽くせてないだろう。信用が無いのも分かっている。だが、今この瞬間かずまの為に作業をしている。それなのにそんな事を言われるのは嫌な気持ちになった。</div><div>「かずま…土曜日になったら私にそう言ったこと後悔すると思うよ。」</div><div>私は少しかずまに嫌な言い方をした。</div><div>「でも今までの行動的にね？正直…信用はあまりないよ」</div><div>はっきりとそう告げられてしまった。</div><div>「でも…私、土曜日のために</div><div>ここ数日、一生懸命頑張ってたのに…そんなこと思われてたら…少し悲しくなるよ…。」</div><div>｢信用がないのはわかってる。でもこれは…信じてほしかったな｣</div><div>私は思った事をそのまま伝えた。しかし、かずまの反応は酷いものだった。</div><div>「頑張ってたと言われても俺はその姿を見てないから知らないし…いきなり、今回だけ信用しろと言われても出来ないよ。</div><div>そもそも何をしてるのか分からないんだよ？</div><div>既読のつき方が変な時とかあるし…｣</div><div>「返信もなんか今日遅い時とかもあるし…最近前よりテキトーだと思う時があるし」</div><div>「めんどくさくて嫌なやつだと思われると思うし嫌いなら嫌いって言っていいよ」</div><div>「飽きられたのかなとか思う時あるし」</div><div>私が悪い。かずまにそう思わせてしまった私が悪い。行動で好きだと示さない私が、かずまを第一優先にしない自分が悪い。私はかずまにとにかく土曜日に証明するとだけ言い残した。それでかずまも納得したようだった。次に会う時が勝負だ。私はかずまが好きで好きで仕方なかった。</div><div>二月十五日</div><div>新しいスマホに変えてからLINEのアカウントが使えなくなったのだが、かずまは私が前のLINEアカウントを使って他の人と連絡を取っているのではないかと考えているそうだ。どうやら前のLINEアカウントを追加出来たからだという。私は何度も否定をしたが、信用してもらえない。どうやら私自身を信用していないというのが正しいらしい。私はLINEやTwitterのトーク履歴をスクショして送った。それでも信用出来ないそうだ。どうしたら良いか分からない…。人に信用されないのはここまで辛いものだとはこの時まで知らなかった。</div><div>二月十六日</div><div>ついにかずまと会う日が来た。かずまにバレンタインのチョコを渡した。</div><div>「ごめん…下手なんだけど…作ってきたんだ」</div><div>私は上手く作れなかった為、自信が無く震えた手を何とか抑えながらかずまに渡す。</div><div>「ありがとう。これから先ずっと付き合うしこれから少しずつ上手くなればいいじゃん」</div><div>かずまは笑ってそう言った。嬉しかった。下手なチョコでも喜んでくれる所とずっと付き合うと言ってくれた事が。かずまとの未来を想像した。この先ずっと居られる未来を。その未来はきっと幸せだと思っていた。</div>
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<pubDate>Sun, 03 Apr 2022 21:20:00 +0900</pubDate>
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