<?xml version="1.0" encoding="utf-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:atom="http://www.w3.org/2005/Atom">
<channel>
<title>LapuLapu News Letter</title>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/</link>
<atom:link href="https://rssblog.ameba.jp/lapulapu-matzno/rss20.xml" rel="self" type="application/rss+xml" />
<atom:link rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com" />
<description>エッセイ、小説など。今宵、”思想付きエンタメ”をお送りします。</description>
<language>ja</language>
<item>
<title>「愛と笑いの夜」との再会　　　　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>　 ヘンリー・ミラーの「愛と笑いの夜」が古書店から届いた。本が記憶を呼び戻しにきたのだ。</p><p>　 1968年初版本で、390円とある。現在700円の価格で仕入れたから60年弱でほぼ倍になっていた。</p><p>　池田満寿夫装幀の表紙もそう言えば、見覚えがある。ページを捲ってみた。パッと古書独持のきな臭さが鼻孔に広がった。</p><p>　 「マドモアゼル・クロード」</p><p>　 「頭蓋骨が洗濯板のアル中の退役軍人」</p><p>　 「ディエップ=ニューヘイブン経由」</p><p>　 等々5編。</p><p>　 最初にこの短編集を手にしたのは何年前だったろう。初版本ではなかったし、たぶん10代後半だったように思う。</p><p>　それから半世紀以上たち、家を売却して、当書は本棚に埋もれたまま記憶の中に埋もれてしまった。</p><p>　 それがある日、海原からひょっこり顔をだすように本のタイトルが甦った。まるで海難者のように手を差し伸べてきたのだ。</p><p>　 本編に目を通す前に、まず訳者吉行淳之介のあとがきから読むことにしよう。</p><p>　 この短編は一作一編を大事に読み直すことにする。</p><p>　 作者ヘンリー・ミラー、翻訳吉行淳之介、装幀池田満寿夫。 実は、この三人には少なからず縁があった。</p><p>　 ヘンリー・ミラーと言えば、「北回帰線」や「薔薇色の十字架刑三部作（サクセス・プレクサス・ネクサス）」などが知られているだろう。特別なファンではなかったが、なんとなく気にかかる作家だと思っていた。</p><p>　そんな時、仕事の関係で、長野県大町市を訪れることになり、その地域にひっそり「ヘンリー・ミラー美術館」があったのだ。水彩画、リトグラフなど200点ほどが展示された美術館だった。晩年の妻、徳田ホキ関連で日本の地方に設営されたのかと思ったが、そうでもないらしい。</p><p>　 美術専門とは言えないミラーの作品は、どこかピカソのキュビズムを連想させたが、むしろ彼独特の自由奔放さが際立って、なにより鑑賞者を解放する力を秘めているような印象を受けた。だから、美術館自体にさほど知名度がないことが残念だった。<span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">そのせいか、後の2009年に当館は閉館してしまい、収蔵品は韓国の釜山市立美術館に寄贈されたと聞く。&nbsp;</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　翻訳は吉行淳之介である。「驟雨・原色の街」以来、「夕暮れまで」に至るまでなにかにつけ、私の創作活動に寄り添い続けてくれた作家である。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　大学時代に一旦、まとめとして「吉行淳之介論」という題目で卒業論文を書いた。だが、作家自身がご存命で、執筆も続けられていたので、論文というより、感想文的な中途半端な内容になってしまったことが悔やまれる。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 吉行の文章から学んだことは、大きく言って二つあった。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　まず、気負わず、気取らず、平素な語り口を心掛けること。ふたつ目は、書きすぎないこと。そのために彼の文章をなぞってみることもあった。たとえ、いくら吉行淳之介に近づけて書こうとも真意さえ揺るがなければ、できあがったものは自分の文章になる。そう信じてのことだった。その方法は彼自身推薦していて、そうやって自分の文体を探す時期があったのだ。（本人には迷惑かもしれないが、）その意味で吉行淳之介は文章においての先生だった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　この本のあとがきで、吉行がミラーの長編を「ダダ的」だと評している部分がある。ミラーの文章は「一行一行が強力な破壊力の砲弾だ」とも言っている。「ダダイストたちは破壊することだけに一生懸命で、ついには自分自身を破壊したり」、「破壊後の建設物がみつからず、結局平凡な世俗人になって、長生きする」とかなり手厳しい。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　それに対し、短編はミラーにとって解毒的に書かれていて、それが「爆発をつづけながら、自爆もせず、長生きする秘訣」のように見えると言う。この解毒剤をミラーは「ディエップ=ニューヘイブン経由」の中で、”人間の意識の下剤”と呼んでいる。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 34才で早逝した父、吉行エイスケもまた、世間ではダダイストと呼ばれた作家であった。野放図だった父親を揶揄する気持ちが、この一節にすこしばかり滲んで見えた。</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 時代は進んで、仕事に邁進していた30代。プロモーション業界に身をおく友人のイベントで、池田満寿夫のリトグラフ展が開かれた。その頃、池田はすでに著名なアーティストになっていて、ヴァイオリニストで妻の佐藤陽子と熱海に住んでいた。その関係か、静岡で個展が開かれたのだ。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　展示会の終盤、なにかの手違いで彼のリトグラフが一枚だけ売れ残った。友人にとって初めての展示会、しかも池田満寿夫作品だったので、売れ残りがでるなどもっての他の事態だった。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そこで、こちらに電話がかかってきた。 版画やリトグラフなどは作品の価値を保持するため現定数刷られたら、元版は処理されると聞く。だから、作品にはすべて刷り順に番号がふってある。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　当のリトグラフの番号は忘れたが、一作30万円だったと思う。</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">「友人の窮地を救うための代金」は、その後、5年も寝かして売りに出せば、10万は上乗せできると友人は説得する。バブルの頃だったし、ヘソクリもあったので、仕方なく購入することになった。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そして、5年後、友人の言葉どおり売りに出すと、50万になっていた。売ることが前提だったし、綺麗に保管するために作品自体は２、３度しか見ていない。池田先生には後ろめたい気持ちもあり、今思えば、ずっと壁に掛けて鑑賞していた方がよほど値打ちがあったと思う。&nbsp;</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 さっそく、本編に目を通す。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「マドモアゼル・クロード」は、娼婦との関係が描かれている。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　物語は体験談としての客観性はなく、その一筋縄でいかぬ邂逅がプラトニック的な考え（登場人物に「不器用さと執着」が漂う筆致は、どこか、訳者の吉行作品に近い匂いがする）に支配される。その分、主人公の悩みや自分だけが彼女の本性を知っているという思い込みにはそれなりの痛々しさがつきまとうことになる。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 当時読んだ時は、エピソードのひとつひとつに引っ掛かり、おそらく突き放して主人公を捉えていたのではないか。だが、何年も経ち、本の内容が古びていくのと同じくらい、再び本を手にした自分も年取ってしまった。今回再読するにあたり、個々のエピソードを追うというより物語に漂う空気に身を委ねることを意識した。だから、後悔や妬みで不安になる主人公の心情やクロードの本意にこだわっていちいち立ち止まらず、事象の流れとして読み進めると、ラストシーンの夢想は、路上に咲いた徒花に降り注ぐ朝露のような優しさに満ちている。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　その優しさは、一時の息継ぎのようなものなのかもしれない。けれど、それは娼婦のクロードを「マドモアゼル」と敬称で呼ぶ作者の切なさゆえのことだった。</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 ところで、時を経て、突然本書のタイトルが脳裏に浮かんだのはなぜだったのだろう？&nbsp;</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">本書を取り寄せてまで再読を迫られたのは、なんの合図だったのか。一瞬そんなことも考えてみた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　池田は63、吉行は70、ダダ的だったミラーは88まで生きた。人にはそれぞれの生き方があり、それぞれの死に方がある。生前のことは、残った者だけが語り継ぐ。</span></p><p>&nbsp;</p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 この本を手に取り、再び読み始めて気がついたことは─。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　総じて、ここに書かれた逸話は人生の一休止のように見えたことだ。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「あとがき」で訳者の吉行が語ったように、「自爆もせずダダとして長生きしている秘密」とはまさに、一旦主張をやめ、目を閉じれば、どんな奇妙な出来事も意味なく見える人生も、すべてを肯定し、「笑い」に変える優しさになる。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 そんなものが、どこかにあるのかもしれない。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12963261441.html</link>
<pubDate>Fri, 17 Apr 2026 09:09:57 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ （PerMans.Zero） vol.9　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第9章　「くるわせ屋Ⅴ」The Manipulator of EmotionsⅤ</p><p><br></p><p>　 JBAホールでの音楽番組のリハーサルを終えた『D坂4989』の総勢20名ばかりの女の子たちが、センター・ポジションの星野スミレを先頭にして彼女たちの特権であるその若さを振り撒きながらぞろぞろと局の楽屋に向かっていた。<span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">無邪気にはしゃぐ女子学生が振る舞うその華やかさはこの業界では当たり前の光景だった。</span></p><p>　そしてその後ろを、フル装備のパーマン、パー子、パーやんがなに食わぬ顔でくっついて歩いていく。だが、誰ひとりとしてそんな格好の三人を訝しがる者はいない。</p><p>　 「あれが今話題のアイドルグループ『D坂4989』です。社長さんのインタビューが終わったら、本番ちょっと覗いてみます？」</p><p>　 「<span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">いや、結構です」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「それから、その後ろにいるのは、たしか子供番組『宇宙戦隊クルリンパ』の子供たちです。まだ小学生なのにホント頑張ってますよね」番組Pが聞いてもいないのに知ったかぶって、そう説明した。もちろん公共放送のヒーロー『宇宙戦隊クルリンパ』などではなく、我らの『パーマンズ』だ。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「色んなひとたちがいるんですね、放送局っていうところは」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「では、インタビューの前にひとまず控室で整えてからスタジオ入りしますから、よろしく」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　すぐ横にいる岩倉にそう語りかけながら、階段を上がろうとした番組Pの頭上で、局のスタッフが手にした機材を落としかけた。それをすばやく察知したパーマンがあわててそのスタッフの腰のベルトを掴んだ。危うく岩倉たちの頭を大きな金属製のケースが直撃するところだった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「大道具さん、危なかったよ。ちゃんと気を付けてくださいね」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 パーマンが声をかけると、男は目をキョトンとさせて、「あれ？」という顔をした。だが、誰もそんなことが起きたことに気付きもしない。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そこで、機転を働かしたパー子がパーマンになにやら耳打ちした。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「私、岩倉さんの後方に付くね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「たのむ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そしてパーやんには、犯人を警戒して前方に注意を払うよう素早く指示をだした。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「合点承知之介や」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　《JBA　Gスタジオ・控室》　&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そこでは手短な打ち合わせが岩倉を待っていた。どうでもいいような指示だらけの流れをプロデューサーから聞かされて、いちいち答えなくてもいいという選択肢はあるのかと一瞬岩倉は思ったが、さすがに大人げないと思い直し、それには素直に頷いた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　控室からGスタジオまで歩いて５分もかからないという。その途中に例の女子グループがいる控室もあった。だが、フロアの時と違い、思いの外、大部屋は静かだった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そこへ出入り業者の運ぶ大量の叙々苑の焼き肉弁当の乗ったカートが通りかかった。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そして突然、それを押している虚ろな目をした若者の両手にぎゅっと力が入り、鉄の台車が岩倉の背後に迫った。まさにその瞬間、いいタイミングで控室のドアが開き、若者の進行を止めた。中から出てきたのはアイドルの星野スミレだった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「お兄さん、突然ドア開けちゃってゴメンなさい。大丈夫だったかしら？あら、今日は焼き肉弁当なんだ。私大好物なの」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 その光景をフロアの隅に置かれた観葉植物の陰から見ていた着ぐるみ姿の小斉が舌打ちをした。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　彼の目論みが次々と阻止されていくのを目の当たりにしている。偶然と言うにはあまりにもうまい具合に偶然が重なり、次々と岩倉を守る状況になっている。何かの意志が働いているのかも知れない。まるであの時みたいだ。そう新幹線のあの時だ。自分の思い通りにことが進まず、訳のわからぬことで少しずつ追い込まれていくと小斉は感じはじめていた。そこで仕方なく実力行使に出ることにした。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 一方、Gスタジオ。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 出入口のところで岩倉は、番組Pにテレビでよく見かける局勤めのベテラン女子アナウンサーを紹介された。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「この度は、お忙しいところ、わざわざ弊局までお越しいただいて、ありがとうございます。岩倉社長のご活躍があのフォーブスジャパンに認められて、心からお祝い申し上げます」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　アナウンサーは如才なくそう言って、岩倉に深々とお辞儀した。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　スタジオは思いのほか広い造りで、中央にチョコンと置かれた丸テーブルを挟んだ形でインタビューは行われるようだった。閑散と言っていい空間にスタジオカメラが２台、その後方に番組Pが陣取って番組を見守るといった具合のまさにプロデューサーが言うように地味な感じのインタビューになりそうだった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「そろそろ始めまーす。まずは、ゆっくり歩いていただいてテーブルに着くところから撮影を開始します。それでは、オープニング映像入りまーす」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　やがて、上階のスイッチルームからそう指示がかかり、一挙にその場に緊張が走った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　曲が流れる中を、テーブルを挟んで双方からゲストと進行係のアナウンサーが歩み寄り席に着くという打ち合わせに従った演出が一通り取り行われた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「IT企業『フェローズ』代表の岩倉駿社長は、今年最も注目されるゲームソフト業界の若手の旗手であり、今回、雑誌フォーブスジャパンの『世界を変える百人』のひとりに選出される人気のインフルエンサーでもあります」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そこまで、進行係が彼を紹介した時、スタジオの奥から見ず知らずの男が突然現れた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　想定外の出来事に驚き、慌てた番組Pが何度も両手を高くバツに振り、収録を一旦止め、不審者に向かって怒鳴った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ここは部外者は立ち入り禁止だぞ。何だ、お前は？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　それに対し、男はたじろぐ様子もなく、番組Pを睨み付けて言った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「いいから、お前はそこでじっと眠っていろ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　すると、そう言われた番組Pは途端にその場で気絶したように膝から崩れ落ちた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 意表を突かれたベテラン女子アナウンサーは、あわててスタジオの端に逃げ込み、顔を押さえてうずくまった。長いアナウンサー生活の中でも初めての経験でそれ以外の対処法が見つからないようだった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　その光景をスイッチルームのモニターで目の当たりにしたディレクターがひどく怯えた様子で叫んだ。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「スタジオで、一体何が起こってるんですか、チーフ!」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　その隣で同じようにモニターにかじりついていたチーフディレクターが、妙に落ち着いた様子で言った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「とにかく、急いで警備を呼びなさい。とにかく落ち着いて」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　落ち着いていると言えば、スタジオにいる岩倉もそのひとりだった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「なんだ、君は？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　岩倉の詰問に小斉は目もくれず、二人のスタジオカメラマンに向かって大声で檄を飛ばした。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「カメラをこの男に思い切りぶつけなさい」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そう言われた二人がスタジオカメラを握った手を持ち変え、岩倉に向かって突進しようとした瞬間、Gスタのぶ厚いドアが放たれ、パーマンたちが飛び込んだ。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　一人が岩倉の盾になり、残る二人が間一髪のところでカメラ自体を持ち上げた。そして、小斉に唆されたカメラマンたちは思わず横転してその場にへたり込み、気を失った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「バッチグー間に合うたで」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 パーやんが上階にいるチーフディレクターに向かってパーマン・バッジを指差し、グーサインを出した。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「お前たちは一体何者なんだ？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 小斉が叫んだ。そして、パーマンズを罵倒した。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「いい連携じゃないか。お前たちのような仲良し子良しが一番嫌いだ。見ていて心底ムカつく」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 そう言い放つと、今度は岩倉に駆け寄り、顔を覗き込み、心の奥底から声を張り上げた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「いいか、お前はこれから飛び降りる。このビルから飛び降りるのだ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そう言った。だが、言われた岩倉はポカンとしてパーマンたちの方を見た。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「何故だ？なぜ通じない。こんなことは初めてだ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「そんなこと、いくらやっても今の岩倉さんには通用しないよ。もちろんマスクしてる僕らにもね」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">&nbsp; &nbsp; 「どういうことだ？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「あんたの能力をうちらはもう見切ってるってこっちゃ、なあ、コピペ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　パーやんの言葉に岩倉が頷いた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「この男は岩倉じゃないのか？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「初めからね。岩倉さんは今回のインタビューがあることすら知らないからね」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 その時、スイッチルームから声が届いた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「パーマン、スイッチルームのモニターがスタジオ内での一部始終をすべて録画したから。あとはうまく編集しておきましょうか？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「それはいいから、早くこっちに来て、コピーロボに戻って」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　二人の会話を聞いた小斉が最後のあがきを見せた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「お前たちは、パーマンというのか？それは、戦隊ヒーローの一種か？いいかよく聞け、お前たちのようなスーパーヒーローが、この世に存在できるのはその対極に俺のようなヴィランがいるからだ。これからも、お前たちがいる限り、次から次と好敵手は現れる。俺たちはそうやって、セットで生きていく運命なのだ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　それを聞いたパー子が悲しげな口調で呟いた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「あなたって、今までどういう生き方してきたの？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　すると、それに対し小斉が怒りを露わにした。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「うるさい。俺はソシオパス（反社会性人格）ではなく、生まれながらの偉大なるサイコパス（非社会性人格）なのだ、パーマンズ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 顔全体に目隠しされた小斉をテーブルにしっかり縛り上げ、そこにパーやんのコピーロボットが化けたチーフディレクターが撮ってくれた証拠の録画テープを置いた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 渋谷署員が駆けつけた時には、スタジオにもう誰もその姿はなく、番組Pがその呑気な眠りからやっと目覚めた頃だった。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 警視庁から出回ってきた極秘のUSBを手に入れた公安がその内容を精査した結果、事件の詳細が十分に明かになったとは言いがたかった。だが、少なくとも今後の捜査に役立つ資料にはなった。特に空飛ぶ子供の存在については極力伏せられ、法務省の事務次官止まりで機密扱いにされた。この事件を探っていた村西課長もさすがに合点がいく内容ではないことが彼を不安にさせた。自分が勤めあげるうちに、果たして解決できる事案なのかと。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 新幹線暴走事件を含む、IT会社社長殺害未遂の首謀者、小斉陶冶が捕まり、その依頼人が自分の盟友だった専務の紅林だと判明すると、さすがにショックを受けた岩倉社長は思うところがあり、これからの仕事の方向性を大幅に切り替えることにした。今後自分が社会に貢献できることについて真剣に悩んだ結果、以前から抱いていた環境問題に取り組むことを決意したのだ。そしてそれは以前からずっと紅林と二人で話し合ってきたことでもあった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 逮捕後、小斉の顔には彼の神通力を防ぐため常時、厳重な特殊マスクが被せられた。だが、裁判の日まで、国は彼の勾留先に苦慮していた。前例のない異能の力を持つサイキックの扱い方がわからなかったのだ。そこで、本来は少年法に基づいて設立されたさいたま市にある政府機関、矯正管区の一部を改築し、法務省の管理下でこの男を収監することに話は落ち着いた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　それは合衆国における異常犯罪のための最高レベルのセキュリティ刑務所、かつてウサマ・ビン・ラディンと共にFBIの指名手配者リストに名を連ねた連続殺人犯、かのハンニバル・レクター博士も収監されたことのあるボルチモアの『精神異常犯罪者診療所』を模したものだった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「Okie Dokei！（わかったわかった）」　&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　終わり　　　　　　　　　</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－藤子不二雄両先生の果てしなき夢に捧ぐ－</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12963210125.html</link>
<pubDate>Thu, 16 Apr 2026 18:45:38 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ （PerMans.Zero） vol.8　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第8章　「くるわせ屋Ⅳ」The Manipulator of EmotionsⅣ</p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「その話、どこまで信憑性があるんですか？それより、課長はそれを真に受けているってことですか？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「それって超能力っていうか、マンガみたいなことですか？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「こんな突拍子もない作り話、まともに上に報告できませんよ」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 鬼の首でも取ったかのような部下たちの矢継ぎ早の質問攻撃に、村西課長は少々面食らった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「なんかみんな急に元気になっちゃって。だから、聞き流してくれって言ったんだけど」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　これでは到底返答にはなっていない。見てとれるほどに顔を火照らした村西課長にさらにつけ入るように部下のひとりが決定的なツッコミを入れた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「常識が僕らの最後の砦だって、課長はいつも言ってたんじゃなかったですか？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「確かにそうだし、今もそう思っている。でも、臨機応変にそんなことにも対応し、捜査するのが我々の仕事だともいえる。だってそれこそが、警ら査察隊ではなく、公安にいる理由だって思わないか？少なくとも自分はそう思うけど」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　それに対し、いつも前向きな寛ちゃんが冷静に口を開いた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「そうなると、常識が通用しない事件ということで、まず僕らは何から始めたらいいですか？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　それにはさすがの村西課長も答えに窮した。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 雑誌フォーブスジャパンの『世界を変える百人』のひとりに選ばれた岩倉駿は、休日、日本放送協会（JBA）のインタビューに応えるため、早朝から自家用車を局の駐車場に乗り付けると、遠くから&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「おはようございます、センセイ。本日のインタビューはGスタで準備万端整っております」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　と、丁寧なのか、ぞんざいなのかわからぬ口調で情報番組担当のプロデューサーが岩倉を出迎えた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「センセイ、この度は『世界を変える百人』に選ばれ、おめでとうございます。それって、ホントすごいことなんスよね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　スタジオに向かう途中、耳に着けたスタッフルームとの連絡用イヤフォンを必要以上にいじる番組Pが言った。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「世界を変える人間が百人もいるっていうことですよ。それから、『センセイ』って呼ぶのはやめてください」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そう応えたものの岩倉は早くもこの仕事を受けたことを後悔し、自宅に戻りたい衝動にかられた。放送局の中でも比較的セキュリティが厳しいといわれるJBAのロビーを番組Pの目配せひとつで通過した岩倉たちの目の前を着ぐるみ姿のご当地のゆるキャラ、今流行りのドザ衛門が愛想を振り撒きながら通り過ぎた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「今日はこれから、アイドルグループ『D坂4989』の音楽番組の収録がありまして、なんやかんやで賑やかになっております。それが夢と希望をお茶の間にお届けする放送局というところでして（笑）。まあ、片や私のような情報番組に携わる地味な部所もありますが（自虐）」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 本当のところ、いつも眉間にシワを寄せたお堅い学者や経営者などを相手にするのではなく、呑気で気ままなバラエティーのような派手で注目され易い部局こそ自分の力が発揮できると言わんばかりの口ぶりだった。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 そんな初対面のプロデューサーの愚痴をあっさり岩倉が聞き流した三日前。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 例の絶海の孤島で依田コーチの淹れてくれたアイスティーを口に運びながら、パーマン、パー子、パーやんの三人が、相変わらずスーツ姿のバードマンを囲み、新幹線暴走事件についての真相に耳をそば立てていた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「一応、公安の情報と私の調査を基にこの事件を整理するとだね、ある人物の殺害計画ということに行き当たった。それに、私も驚いたのだが、この殺し屋、名前はまだ特定できていないが、この男はある特殊な能力があるようだ。それについてはパーやんが調べてくれた」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 バードマンの目配せに促されたパーやんが口を開いた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「こいつは、『人たらし』っていうんか、人の心にスーっと入り込むことができるらしいんや。バードマンから言われて、コピーロボに手伝ってもらい、昔の事件を探ってみたりしたけど、直接本人には行きつかんかった。ただわかったことは、他人を操って、関係のない人たちを事件に巻き込む手を使うらしいんや。だから『くるわせ屋』なんてけったいな名で呼ばれとる。」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「でも、証拠が出ないから、捕まらないんでしょ。それで現行犯で押さえ込む方法をとるってわけね」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 パー子がワクワクした感じで身を乗り出した。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「それで、そいつが誰かはわかったの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「わからへん。それ以上調べられへんのや」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「誰かもわからない人間を捕まえるの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そんな話についていけず、今まで黙っていたミツ夫が小さく呟いた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「バードマンにはなんか秘策でもあるの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「みんな、誤解しないでくれ。捕まるえるのが目的ではない。事件を未然に防ぐことが大事だから。あとは警察に任せればいい」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そうやんわりたしなめ、バードマンは言葉を続けた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「例の新幹線乗客リストから気になる人物が浮かびあがった。乗客の中で、社会的にみて唯一影響力をもつ人間、つまり犯人のターゲットになりそうなのは、岩倉駿という男ではないかと思われる」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そう言ってバードマンは雑誌フォーブスジャパンの岩倉の写真が載っているページを開いた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「彼はIT企業『フェローズ』の社長だが、そう言っても君たちは知らないだろう」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「知ってるよ。ゲームソフト『ブッシュクラフト』を作った人でしょ。有名だよ」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 自慢気にミツ夫が応えた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「なんだ、知ってんだ。ひとつの可能性からの判断ではあるが、まずは、この人物をマークする。それで犯人をおびき出す計画を立てることにした」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「わかったけど、バードマンはやけにこの事件に固執するね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「岩倉って人間は、この先、日本、いや地球規模の環境問題に深く関わってくる存在だということが徐々に予測できたのだ。プライオリティ（いわゆる優先順位）からして、その重要性を見逃すことはできない」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「バードマンって未来がわかるの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「未来など誰にもわからない。それは可能性だ。だから、常に時間を構造的に見守っている。時間の流れとはエネルギーの緩やかな移動なんだ。そしてその流れを一点に収束した場所が現在だ。無意識のようでいて、すべてに意識は働いている。みんなの意識がその流れを創るのだ。みんなが当たり前だと思っていることは、みんなが当たり前だと認識することではじめて成立するのだよ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「せやけど、そない時間が気になるんやったら、ホラあっこにあるで」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　パーやんが後ろの柱を指差した。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「あれは、時間ではなく、柱時計だ。とにかく情報が少ない以上、確率的な手立てが有効になる」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「バードマンって、時々訳のわからないこと言うよね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そうやってパーマンは無理やり話を片付けたが、この問題が解けないのは、それはバードマンのせいではなく、子供たち側にある。彼らはバードマンという存在と機能について、その真の奥深さにまだ気がついていないからだ。もう少し大人になって、依田コーチの言うようにちゃんと鍛練すれば、この先ある程度は彼を理解できる日が来るかもしれない。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 放送局JBAの玄関先で、不審者を厳しく取り締まる警備員に呼び止められた小斉陶冶は自分をその該当者にした警護の男に一瞬ムカついた。だが、それをよそに制止を静かに振り切り、振り替えると、警備員の目の奥をじっと見つめてこう言った。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ここを通しなさい。大丈夫、私は簡単に通れますから」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　耳元でそう囁かれた警備員はとたんに虚ろな表情になって、&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ハイ、どうぞお通りください」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そう言ってこの不審者をあっさり通してしまった。行き際、小斉が小声で相手に向かって言葉をつけ加えた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「フォースと共にあらんことを」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そうやって、エントランスに入り込むと、ロビーの隅に設置された休憩ベンチに腰かけた着ぐるみ姿の例のゆるキャラに目に止め、小斉は声をかけた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「はじめまして。私、以前からドザ衛門さんの大ファンでして」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ああ、そうですか」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　可愛いキャラなのに、休憩中はひどくそっけない。それを無視して小斉は相手を食い入るように除き込んだ。</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">しばらくそうしてみたが、ああ、これはイカン。人形の大きな被り物が邪魔して自分の力が思うように相手に通じないのだ。</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">とにかくその被り物をはずさなれば。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そこで機転を利かせたつもりで小斉はバレるような嘘をついた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「さっき、トイレの洗面台にお金の入った財布が置いてあって、そこにあなたのゆるキャラマークがついていたんで、てっきりドザ衛門さんの財布じゃないかと思いまして、盗まれる前に一応行ってみませんか」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　小斉の口車にまんまと乗せられ、被り物をした男と小斉はトイレに向かった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　やがて、局のトイレから出てきたのは、ぎこちない歩き方をしたゆるキャラ、ドザ衛門ひとりだけだった。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12963163861.html</link>
<pubDate>Thu, 16 Apr 2026 09:54:43 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ（PerMans.Zero） vol.7　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第7章　「くるわせ屋Ⅲ」The Manipulator of EmotionsⅢ</p><p><br></p><p>　 IT企業「フェローズ」の代表取締役社長の岩倉駿は一代で築き上げた会社を年内一杯で身売りするつもりでいた。総勢百人ほどの社員を抱える手前、自分だけが退いて後進に後を譲ることも考えたが、長年開発に心血を注いだゲームソフトが思いの外大当たりした今こそ売り時だと決心したのだった。それが次のレベルに移行する一番の近道のように思えた。<span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">先手先手を読む先見の明の力量でのしあがってきた岩倉であるが、その急進的な考え方が他人にはなかなか理解されず、時には疎まれることさえあった。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 創業以来、ずっと岩倉とともに苦楽を共にしてきた相方の専務紅林庄平もその一人だった。大学の同級生だった頃からの仲間で、ともにアルバイトに明けくれ、夜になると決まって安酒場で二人して自分たちの将来について何度も語り合った。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 もともと紅林は理工系の学生で、なによりソフトをいじるのが得意だった。そこに経営学部の岩倉がゲームソフトの開発話を持ちかけたのがきっかけでできたのが「フェローズ」である。学生の頃から岩倉の経営手腕は目を引くものがあった。なかば強引なところもあったが、それが今の会社の基礎にもなっている。ふたりのゲームソフト作りのアイデアは新興のベンチャー企業だとはいえ、他社を抜きん出る勢いがあった。ただ、マーケットの小ささはいかんともしがたく、アイデアだけが唯一の財産とも言えた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　昔から岩倉は、自社において、自分は頭脳であり、社員は手足だとする考えがあって、それを隠すことも、また臆することもなかった。頭脳も手足もそれぞれが一丸となり、はじめて一人前の身体をつくるという思いからの発想ではあったが、実質手足は頭脳にただ従えさえすればいいという考えにも捉えられ、社員からすれば、決して気分のいいものではない。そういう人の気持ちを察せられないのも岩倉という男のひととなりであり、自ら墓穴を掘るタイプの人間といえなくもない。正直いって、他人に身を委ねるのが苦手な若倉駿は、基本的に外出を避けていた。運転手付きでの出勤・退社か、よほどの用事でもない限りは、六本木のタワマン上層階に籠もりきりだった。セキュリティ完備の“要塞”のような部屋が彼の生活拠点といえた。またそれで充分生活が事足りてしまうのが、都会という名の聖域だ。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 十月も終わりに近づいた頃、岩倉の個人的な携帯に訃報の連絡が届いた。このところ体調を崩し、病に臥せっていた母親が実家である静岡市内の病院で亡くなったのだ。高齢ではあったが、元来気丈夫な性格で、町工場を営んでいた夫が早くに他界してからは、小学生の息子を女手ひとつで育てながら、夫の仕事を引き継いで細々とはいえここまで存続させてきた。そんな母親の並々ならぬ苦労になにひとつ酬いることなく、久しぶりの帰郷が母親の葬儀となってしまった岩倉は、一切の仕事を専務の紅林に任せ、ひとり新幹線に乗って深い哀しみと取り返しのつかぬ後悔を噛みしめながら、親族の待つ静岡へと向かったのだった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　葬儀は、ほとんど身内だけで執り行われた簡素なものだった。息子の岩倉が喪主となり、式は滞りなく進められたが、段取りのすべては母親の実妹である時枝が取り仕切り、息子はなにすることなく、ただじっと母親の遺影に寄り添っていれば良かった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　葬儀が無事終わり実家に戻ると、家を囲む塀に沿い、植えたアロエ一面に溢れるように赤い花が咲いていた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「この時期に花が咲くなんて珍しいね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「母さんが育てていたんですか？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「アロエはね、昔から『医者いらず』って言うんだよ。この万能薬はまるでよくできた息子みたいだって姉さんは自慢して笑ってた。ほかに趣味がないから、どんなに忙しい時も大事に育ててるってね。だから葬儀のあったこんな日にアロエもなにか感じたのかもしれないね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　母に対する叔母の穏やかな逸話を聞いていると、自分自身の「生き馬の目を抜く」ような今までの生活がどことなく虚しく思え、心の奥底でなにか疼く気持ちがつむじ風のように舞い上がった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「時枝おばちゃん。通夜の手配から告別式に至るまで、今回、何から何まで、委せっきりにしてしまい、ホント申し訳ありません」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「いいってさ。駿ちゃんはなんも気兼ねせず、金銭面だけちゃんとやってくれりゃあ、それで十分だからね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「本当にありがとうございます」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　不思議なもので、いくら年月が経とうと、甥と叔母の関係は昔とさほど変わらなかった。姉が息子をことのほか溺愛していたことを身近で見てきた分、甥っ子を自分の息子のように扱う気持ちは時枝の優しい心根だといえた。それと、親戚や近隣が助け合うという地方都市に根付いた葬祭の土地柄もあるのかもしれない。そして葬儀の収支が、精進落としの手土産まで含めて全くのトントンだったのは、母親がこの年まで町工場を切り盛りして築き上げてきた人脈のおかげだといえるだろう。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 告別式に訪れた親戚以外の参列者のほとんどに岩倉は面識がなく、あらためて母親の顔の広さと、これまで自分がいかに母親のことをないがしろにしてきたかを思い知らされた数日だった。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「駿ちゃんはいつ東京に戻るの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「初七日も済ませたし、今日の午後の予約便のひかりで帰るつもりです」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「パーマン、今回の活躍はうまく三人の連携がとれていたね。事故後もちゃんと役割分担できたし、あまり目立たぬようにこの調子で。今後も期待しているからね」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「でも、僕らあんなにあっさりと別れて良かったの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「それでいい。まず己れの役割を果たすことが大事だ。『大いなる力には、大いなる責任が伴う』ものなのだ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「あれ？そのセリフ、スパイダーマンの映画で聞いた気がする」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ふふ...一度、言ってみたかったんだよ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「パクりじゃん」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「オマージュだよ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そのにやけた顔が中国の「変面」みたいにサッともとの無機質な表情に変わると、バードマンはさっそく本題に入った。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ただ、ひとつ気がかりなことがある。ニュースで知ってると思うが、事故を起こした犯人はすでに逮捕された。でも、当局の見解とは別にどうやら裏に別の大きな力が働いていたと考える向きもあるようだ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「どういうこと？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「犯人の森田は自殺願望マニアで、乗客を巻き込んで、本望を遂げようとしたらしい。だが、もともと小心な男でずっと地味に生きてきた引きこもりであることから、そんな大それた計画をひとりで成し遂げられるとは到底思えない、というのが公安の認識らしい。つまり、口添えした黒幕がいるのではないかと。本人も何度か、それとおぼしき人物と対面したという供述も残っている。そうなると、単なる事故や事件ではなくもっと大掛かりな犯罪に発展する懸念もでてくる。公安は当時の新幹線の詳しい乗客リストを作成しているという情報もある。ただ不思議なことは加害者に事件についての認識が稀薄だということだ。では、どうしてこの事件が起こったのか。見方を変えて再度調査するらしい」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「バードマンはどこでそんな細かな情報、手に入れたの？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ミツ夫くん、私を一体誰だと思っているのかね？言っちゃあなんだが、『H-17』と言えば、『H-17』というのは私のことだが、惑星M34ではその名も知れた諜報の鬼といわれた存在なのだよ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ふーん」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「ふーんって。公安の調査を見守りながら、結果次第では我々も再度出動することになるかもしれないな」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 森田を選んだことはなにも間違っていない。実際、列車は思惑通り暴走していたではないか。あと少しのところで何か邪魔が入った。一体何が？予想もできないことだ。そのことに想いを巡らすと、小斉陶冶は心底ゾクゾクする胸騒ぎを感じ、今までにない興奮を覚えた。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そして、手にしたフォーブスジャパンの雑誌を捲ると、「チャンスはいくらでも転がっている」と言い、鼻をフンと鳴ら</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">した。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">&nbsp;　フリーライターの町田は、警察発表とは別に、独自の調査を続けていた。特に当時誰も注目しなかった目撃情報、『空飛ぶ子供』というキーワードが記者の琴線に触れ、とりあえず新幹線に乗り合わせた乗客ひとりひとりに出来る限りの取材を申し込んでいた。空振りに終わることはハナから覚悟の上である。だが、見落としている何か大事なことに行き着く可能性も十分ある。それこそがフリーランサーの本領であり、記者としての力量なのだと確信しながら。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 『公共の安全と秩序の維持』というおおまかな題目を掲げる公安、警視庁公安部公安第二課の村西課長は、警視庁警備局警備企画課情報第二担当理事官（長い！長過ぎるかもしれません）、通称裏理事が統括するコードネーム・零（旧チヨダ）からの直々の命で、先頃起こった新幹線暴走事件について、本来の丸の内署の方針とは違う角度で独自に捜査を進めていた。警視庁と丸の内署との合同捜査会議にオブザーバーとして参加した際に渡された資料にあらためて目を通した村西は特に容疑者森田の供述に注目した。</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">そこには、犯行の三ヶ月ほど前から数回に渡って彼がある人物と会っていたことが記されている。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 そこでまず、その不審な人物の特定から始めるように部下たちに指示を出した。そして揚がってきた調査報告のひとつが、大衆居酒屋『和太鼓』の存在だった。部下に言わせると、森田という男は元来引きこもりであり、かなりの出不精であることから外部との接点は驚くほど少なく、この店が第二の容疑者との待ち合わせ場所だと突き止めるには雑作もなかったようだ。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そして、その店の名は森田の供述書にも度々出てきていた。ただ、本人はその辺りのことが不明瞭で、そのことを思い出すと、頭が痛くなるとまで言っている。そのことから本庁は不確実な情報と捉えているのかもしれない。あくまで森田個人の犯行であると認定するには、そのような曖昧な供述は排除されることはよくあることだと村西は知っている。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「まずは、『和太鼓』周辺の監視カメラのチェックを木村くんに頼みます。山ほどあると思うから、誰か誘って、残業よろしくね」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　捜査員の頭の中には、『面割り』といって監視対象の顔が全て暗記されている。それでも何十台という監視ビデオを数ヶ月に渡って調べあげることは並大抵でないことは村西にもわかっている。それをサラリと言ってのける課長の人望は部下の信頼があってのことだ。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「遠回りが一番の近道って、これ誰の金言かな？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「課長の口癖でしょ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 そうやって村西はみんなを前にいつもケロリと煙に巻く。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　翌日、午後のブリーフィングで目を赤く腫らした木村捜査員がみんなを前に残念そうに報告した。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「監視ビデオを一通り照合したんですが、確かに森田は映ってました。でも、森田と接触した人物は誰ひとりおりませんでした」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「そうか、木村くん良くやったな」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そう言うと、課長は額のイボを優しく撫でながら呆気にとられる木村に向かい、にやりと笑った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ってことはだな、相手はカメラの位置を常に念頭に置いて行動しているということか。まるでプロじゃないか。それがわかったってことは木村くんの手柄だね」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　みんながなるほどと頷いていると、&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「そう言えば、この件とは関係ないと思うんですが」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　それまで黙っていた山本が突然口を開いた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「あの店で、当時ひと悶着あったって話を聞きまして」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　そこまで言って、山本はそれ以上言うことをためらった。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「どうした、寛ちゃん」課長の村西が興味を示し、話を促した。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「店長いわく、客のひとりが大暴れしたらしいんですが」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「うん、うん、それでどんな暴れ方だったの？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「今までみんなから温和だと思われていた上司が突然服を脱ぎ出して、裸踊りをはじめたとか」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「きっかけは何だと言ってた？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「仕事仲間は何がなんだか訳がわからないと。トイレから戻ってきたら突然豹変したらしいんです」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「寛ちゃん。お店にも、働き先まで、ちゃんと裏取りしてるじゃん。いいねえ、ナイスですね」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「まあ、それが仕事ですから」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　村西課長が部下の仕事ぶりに感心していると、誉められて調子がでてきたみたいに山本は話を続けた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「その裸男なんですが、その後、上野警察署に公然ワイセツ罪で捕まっているんですよ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「あらま」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　額の目立つところにできたイボを村西課長がまた撫で始めた。それが思いを巡らす時のこの男の癖らしい。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「寛ちゃんは、その騒ぎに例の二人が出くわしていると睨んでいる訳だ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ええ、まあ。奇妙な話の裏にはいつもちゃんとした理由があるって、課長の言葉を思い出しまして。今のところなにも根拠はないですが」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「うんうん。それで、裸男と森田の連れとの接点があるとしたら？店のトイレか」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 村西のイボの撫で方がますます激しくなった。そして、何かに思いあたったようにその手を止めた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ところで、みんな、『くるわせ屋』って、聞いたことあるか？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「なんですか、それ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「10年前、都内で連続的に起きた異常現象事件...その時、捜査線上に浮かんでは消えた名前だよ。“そいつ”の手口に酷似してる気がしてな」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　部下たちは新しい展開に一瞬言葉を失った。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「噂話さ。信じるか信じないかは...ってやつだ。ああそうか。若い君たちは知らんかもしれないな。これは都市伝説みたいなもんだから、聞き流してくれていい」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　呆気にとられる部下たちを尻目に村西課長はそう言って、静かに話を切り出した。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12963123344.html</link>
<pubDate>Wed, 15 Apr 2026 21:21:36 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ　（PerMans.Zero）　vol.6　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第６章　「くるわせ屋Ⅱ」The Manipulator of EmotionsⅡ</p><p><br></p><p>　 小斉陶冶（こさいとうや）という男の仕事は殺し屋である。</p><p>　だが、一口に殺し屋と言っても、現実離れしていてあまりピンとこないだろう。まず頭に浮かぶのは、ゴルゴ１３などの漫画や刑事ドラマくらいで、他に知るよしもないフィクションの世界だ。</p><p>　では実在の殺し屋とは？</p><p>　つまり、依頼を受けて対象人物をあやめることで報酬を得る者をさすことはほとんど漫画と変わらないが、そこにロマンや冒険なんてもちろん微塵もなく、あるのはただ冷徹な殺人鬼たちの取引だけだ。そして、それをいくら生業にしても、まさにその行為は殺人であり、履歴書の職業欄に堂々とその職種を記載できるわけがない。だから、非合法のそれを果たして職業と呼んでいいかは別の話になってくる。実際、実行犯は殺人罪、依頼者は殺人教唆で起訴され、ともに共同正犯として同等に厳しく罰せられることになる。捕まればの話だ。</p><p>　小斉はいわゆる殺し屋だが、ヒットマンではない。デューク東郷やレオンのように銃や刃物を持つ必要もない。</p><p>　彼の手口が他と決定的に違うのは、自ら手を下さない点にあった。特定の事情を知らぬ善意の第三者を、深い催眠や強い暗示にかけ、当人も気付かぬうちに、本筋の犯行を誘発するといった類いの特異な方法を使うのが彼の特徴だ。</p><p>　そのため今まで事件そのものが決して表面化することなく、『くるわせ屋』などとまるで都市伝説めいた噂だけが警察関係者のあいだで独り歩きしていた。</p><p>　 今回の対象相手は、あるIT企業の若手社長で、その上、事故死という条件が付いていた。いつものように小斉は相手のことを徹底的に調べ上げ、入念な計画を練る。しかもそれだけでは収まらず、依頼主のことも躊躇なく調査することを怠らない。仕事の性格上、依頼人との信頼関係がなにより大事であることを彼は心得ている。万が一、ちょっとでも不審な点があれば、即座に断るか、場合によっては対象が依頼主に切り替わることさえある。</p><p>　自ら十分精査した結果、今回の依頼自体に問題は見あたらず、報酬が振り込まれた時点でさっそく仕事に取り掛かったのだ。</p><p>　 計画に沿って、小斉がまず始めたことは、自殺志願者を探すことからだった。一見、難題のように思われる手順だが、インターネット上の自殺志願者サイトというものを覗くことで、それは難なくクリアすることができる。その闇サイトには自殺志願者が溢れかえっているのだ。</p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　その中から、彼は一人を選んだ。選び出すことは他愛もないことだった。当事者がサイトに載せている記事の内容は大抵どれも似たようなものなのだが、文章力に注目すれば、おおよその人物像が浮かんでくる。特に優れた文章である必要はない。毒にも薬にもならない方がかえって都合がいい。決め手は、順序だった物言いができるかどうかである。変にこねくり回した文章を書く者ほど始末に負えぬ人物が多いということを彼は経験上知っていた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 まずは相手のブログに♥️いいねボタンを押し、共感を示す。それから、フォロワーになって、見ず知らずの相手を自分の同種の仲間だと認識させ、安心させる</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　それがうまくいったら、直接DMを送りつけ、初めて自己紹介に至るが、もちろんそれは取って付けたような偽名である。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　ある程度、信用が得られたら、すぐさま一対一で会う機会を設ける。その種の人間は、内向的な性格の者がほとんどなので、秘密裏に動きたがる傾向があり、押しの強さに弱い。だから、当人と会うまでに一ヵ月もかからなかった。依頼の契約上、猶予は三ヶ月ある。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 夕暮れ、都心の繁華街を夏の夕立が仕事を切り上げるように通り過ぎると、雨に濡れた路面はネオンの明かりを照り返し、都会の底が光って見えた。&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　西新宿駅近の雑居ビルの一画に店を構える大衆居酒屋『和太鼓』は、早い時刻からすでに仕事帰りの会社員でごった返していた。</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">席に着いた小斉は、開口一番、相手に向かって静かな物腰で言った。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「こんな所で良かったですか？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ええ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 そう応えたが、当人は決して相手の顔を見ようとしない。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「森田さんでしたよね、お名前。こんなにすぐにお会いできるとは思いませんでしたよ」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　それでも森田は黙っている。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「とりあえず、ビール頼みましょうか」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「俺、酒飲めないんで」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「じゃあ、ウーロン茶で」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　この会話の流れを読んで、小斉はひとつのチャートを思い描いていた。</span><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">そこに森田の言葉のひとつひとつをはめ込んでいく。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 例えば、（森田は酒が飲めない→ではなぜここに現れたのか→求めるものを得るため→）といった具合に。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ところで、森田さんは趣味とかお持ちですか？私は無趣味でして、何でもいいので、夢中になるものが欲しくて」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 しばらく伏し目がちだった森田が、その白い顔を上げ、初めて自分から口を開いた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「アメコミって、知ってます？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「バットマンとかスーパーマンとかのことでしょ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ええ。その原画集めるのが好きでして」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 二人が目立たぬようにひそひそと喋っていると、店の奥の方から騒がしい笑い声が響いた。眉をひそめながら小斉が振り返ると、作業着姿の男たち数名が馬鹿笑いしながら、酒を飲んでいた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「賑やかですね」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ええ、まあ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「何かの宴会でしょうか？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 すると、その賑やかな一団から年配の一人が大仰な足取りでトイレに立った。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「森田さんの趣味の話、面白そうなので、続きを詳しくお願いしますね。私ちょっとトイレに行ってきますから、そのあとで」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 そう言うなり、小斉は中年男の後を追うように席を離れた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ずいぶん賑やかですね」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ああ、騒がしくてすいません。仕事仲間がこんど結婚するって言うんで、すっかり盛り上がってしまって」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「かまいませんよ。仕事の後は、やっぱり発散しなくてはね。発散するっていいですよね。そう、そうやって自分を解き放すのはね。もっともっと素の自分を出せば、心から自由になるんですよ。誰も邪魔することなんてできないんですからね」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「お待たせしました。それで、バットマンでしたっけ？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「アメコミの原画がフリマのオークションに出てて、以前買った絵が、ここ十年くらいで何倍以上の価格になって。いえ、もちろん手放す気なんかないけど」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 その時、奥の席でなにやらごたごたが起こった。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「先輩、一体どうしたんすか？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 さっきトイレに立った男が突然立ち上がり、着ていた服を脱ぎ始めたのだ。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「なにやってんだ。おい、こいつを止めた方がいい」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 みんなの制止を振り切って、男はパンツ一丁になって騒ぎはじめた。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「こりゃイカン。とにかくこいつを店から連れだすぞ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 仕事仲間全員で男を担ぎ上げ、早々に店を退散した。</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「やれやれ、やっと静かになりましたね。それで、何枚くらいお持ちなんですか、その原画？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「まあ、百枚程度ですけど、その内の十枚はけっこういい値がつきます」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「そんないい趣味があるのに、死にたいだなんて」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「それとこれは別で」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「私も同じですがね。何回も試しましたが、結局ムリでした。なんか一人だと淋しいというか、自分だけがいなくなるのが」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「わかります」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「森田さんって、もともとJRの整備士だったんですよね？」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「でも、こんなんだから、結局クビになったけど」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「じゃあ、電車に詳しいんだ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「まあ、一応は」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「いいですね。それで、みんなで逝けるじゃないですか。できれば、派手に新幹線なんていいですよね。ブレーキ壊して、ATSって言いましたっけ？あれもこの際、壊してしまおう。そうそうハロウィンの日なんてどうですか？あなたの大好きなアメコミのジョーカーの衣装を着て。素敵ですね。みんなアッと驚くでしょうね。まるでアメコミのヒーローみたいじゃないですか。いやヴィランですか」</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12963009163.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Apr 2026 19:35:48 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ　(PerMans.Zero)　vol.5　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第５章　「くるわせ屋Ⅰ」The Manipulator of EmotionsⅠ</p><p><br></p><p>　 「パーマン、一週間頑張ったそうだな。それで訓練はどうだったかね？」</p><p>　 「うん。とてもためになったし、依田さんってホント凄い指導者だと思うよ。まるで『鬼滅』の鱗滝さんみたいで、僕もなんか前と変わった気がする」</p><p>　 「ウロコ？」</p><p>　 「ああ、なんでもない」</p><p>　 「そうか、依田コーチに、すっかり感化されたようだな」</p><p>　 「依田さんのこと師匠って呼びたいくらいだよ」</p><p>　 「そう呼ぶのは、君の自由だが」</p><p>　 だが、あれをプログラミングしたのは自分だとそう言いかけて、バードマンはその言葉をグッと飲み込んだ。</p><p>　 「依田コーチも、いや、師匠だったね、君みたいな弟子ができて、きっと満足じゃないかな」</p><p>　 「ところでバードマン、そう言えば、ほかにパーマンが二人いるって言ってたけど、それって本当なの？」</p><p>　 「パー子とパーやんのことだね。二人とも頑張っているよ。いずれ三人で協力し合うことになるだろう」</p><p><br></p><p>　 そして、何事もなく三ヶ月ほどが過ぎようとした頃、テレビ番組を中断するほどのニュースが飛び込んできた。</p><p>　 フリーライターの町田は、事件発生の報を無許可で手に入れた警察無線で傍受し、すぐさま現場に向かうことにしたが、正直なところ何が起こっているのかはっきりと把握しきれていなかった。</p><p>　そこで、スマホのライヴ情報をたよりにとにかく現場と思われる東京駅に向かった。ただし、SNS上に拡散されているもののほとんどは、デマや憶測によるものだったので、決して正しい情報と言える代物ではなかった。だからプロの自分がこうして駆けつけているのだと、日頃デジタル文化を目の敵にしている彼はそう自分に言い聞かせた。</p><p>　しかしながら、この状況で自分がスマホをたよりに現場に向かっていることはすっかり棚に上げている。</p><p>　とにかく、事件なのか事故なのかはっきりと確認する必要があった。事件なり事故なり、ニュースの速報性は生中継のテレビが一番早い。だが、それは状況を伝えるのみであって、事件の真相には迫っていない。近頃ではたまたまその場に居合わせた素人の発信するSNS情報もかなり役にたっているが、先ほども言ったようにその信憑性は発信者次第のところがある。自分たちフリーランスの記者の仕事は、何の制約も忖度もなく、覆われた真実を読者の前に晒すことだ。それにはしっかりとした裏取りと明快な分析が大前提だと思っている。</p><p>　そして今、願ってもないスクープのチャンスが自分に到来している。</p><p>　 現場は、すでに警察の規制が敷かれ、多くの警官と野次馬でごった返していた。かつて起こったカルト集団によるテロ事件を誰もが想起し、右往左往している様子だった。</p><p>　 町田は腕に委託契約先のテレビ局のプレス腕章をつけ、カメラ片手に駅の構内に入った。途中で何人かの警官に呼び止められたが、そのたびに何が起こっているのか逐一取材していった。</p><p>　 まもなくJR東海の広報部から発せられた緊急発表が世間を震撼させることになる。</p><p>　 １５時４１分静岡駅発の新幹線ひかり５１0が、止まるべき駅をそのまま通過し、速度を落とさず東京駅に向かって暴走しているという内容だった。事故を事前に防ぐ、要の信号保安システム、ATS（自動列車停止装置）が反応せず、１９６４年の開業以来、乗客が犠牲となる事故ゼロという輝かしい記録に幕を降さざるをえない非常事態が迫っていた。</p><p>　 やがて品川駅を物凄い勢いでひかりが通過すると、状況は刻一刻と深刻さを増していった。</p><p>　 その頃になると、新幹線の乗客も異変に気づきはじめ、手持ちのスマホで家族をはじめとするいたるところにその状況を発信し始めた。</p><p>　 駆けつけた丸の内署をはじめとする多くの警官が耳につけたPチャンマイクから流れる対策本部の指示に従い、駅周辺の人々をすべて避難させ、東京駅を全面封鎖した。</p><p>　 このままでは、車両は構内のデッドエンドに追突してしまう。</p><p>&nbsp;　最悪の状況を想定した処置だったが、それ以外にこの未曾有の危機に対処するすべがなかったのだ。</p><p>　 もはや手立てがなくなり、タイムリミットが迫って、車両が汐留あたりにさしかかった頃、浜離宮の方角から一筋の閃光が走った。</p><p>　 夕日を受けとめ、きらめくその飛行体は制御不能になった車列の背後に急降下した。そして車体と同じ速度で追走すると、いきなり無人の後尾車両のフロントガラスを打ち破り、中に突入した。そして、すぐさま身を反転すると、車体正面のフレームをしっかりと掴み、全開のスピードで逆噴射した。</p><p>　 とたんに掴んだフレームが吹き飛び、パーマンは後方に押し出された。やはり前方から止めなければ無理か。そう思った時、西と東、双方から飛来する二つの姿が現れた。</p><p>　 「遅くなって、ゴメン」</p><p>　 「さあ、力を合わせましょ」</p><p>　 「うわっ、君たち、パーマンだよね。僕ひとりじゃ無理だった」</p><p>　 「なぜ連絡寄越さないのよ？あんた、ひとりで全部やろうとしすぎ。力を合わせるって、パーマンの基本でしょ」</p><p>　 「ごめん...でも、なんか、僕だけ足引っ張るんじゃないかって...」</p><p>　 「そういうとこ、うちらにもあったで。けどな、うちら、"チーム"やで」</p><p>　 そう言い、パーやんはミツ夫に向かって軽くウインクし、思いついたように二人に提案した。</p><p>　 「このまんま、せーので三人一緒に持ち上げるってのはどうなんやろ？」</p><p>　 「でも、乗ってる人たちに影響でるんじゃないかしら。慣性の法則って学校で習わなかった？」</p><p>　 二人の言葉を飲み込み、すぐさま、パーマンが判断を下した。</p><p>　 「じゃあ、僕は車両の前方から、きみらは両側面から、車体を徐々に止めよう」</p><p>　 「わかった」</p><p>　 「よっしゃ」</p><p>　 すぐさま三人は、指定の体勢に移り、列車の勢いに合わせながら、徐々に上げたスピードで強い摩擦力を起こした。やがてフルスロットルで進行とは逆方向の力を車体に集中させていった。</p><p>　 パーマンの判断は正しかった。ひかり５１０はみるみる速度を落とし、鍛冶橋通りに面した辺りで、なんとか停止した。</p><p>　 三人はひとまず胸を撫で下ろすと、念のため負傷者がいないか、車体の側面を周回し、車中を確認した。</p><p>　 「どうやら大丈夫そうだ。後は各機関に任せよう」</p><p>　 「そうね」</p><p>　 「ほな、さいなら」</p><p>　 なんか、ずいぶんあっさりしてるな。正直そう思ったが、これ以上は自分たちの役割でないことはミツ夫もわかっていた。ただ、それにしても、パーマンのことは世間には秘密厳守だとバードマンはいつも釘を刺すが、お互いのことさえも内緒にしなくちゃいけないのか。今回は運良くうまくいったけど、今後これで、チームワークって大丈夫か？ミツ夫はちょっと心配になった。</p><p>　 危機が去り一段落すると、停車した車体箇所を除き、徐々に規制は解かれていった。</p><p>　報道陣がプラットホームにどっとなだれ込み、いたるところでフラッシュがたかれた。そして、原因究明のための初動捜査の一環で、警察による急場の事情聴取が行われた。ただ、乗客の中には恐怖のあまり過呼吸の症状を起こし、体調を崩す者もいて、何名かは救命隊によって運び出された。</p><p>　 また、ある乗客からは、空を飛ぶ子供たちを見たという突飛な目撃情報も飛び出したが、混乱の中での錯覚だとされ、とりあえず棚上げされた。</p><p>　 聞き取りが進む中、一瞬その場が騒然とする場面があった。</p><p>　 避難してすっかり無人となった車内の中央部に、一人だけ憮然と残っている者がいる。</p><p>　全身オレンジのスーツと緑色のシャツ姿で、顔にはけばけばしい道化師の化粧を施したハロウィン姿の男が、ひとり座席に座り、ゆっくりと煙草をくゆらせていたのだ。</p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　そして、記者の町田がおもわずカメラを向けると、男はこちらを見て、にやりと嗤った。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12962982725.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Apr 2026 14:46:28 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ　(PerMans.Zero)　vol.４　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第４章　「依田コーチの試練」The Ordeal of Yoda</p><p><br></p><p>　 昼のバラエティー番組にゲスト出演したアイドルの星野スミレは、司会者の次の質問に言葉を濁した。</p><p>　 「今朝の新聞記事によるとやな、パンツ一丁の男が、台東動物園の檻の中にいたんやて。警察の発表は、昨夜閉園後、何者かが閉じ込めたっちゅうことらしいんやけど、よう調べたら、そいつ公然ワイセツの犯人やて。スミレちゃん、これどうおも？」</p><p>　 番組内のやり取りは、事前に入念な打ち合わせがあって、質問も、その返答さえも前もって準備されていることが多い。新聞記事からの丸投げで作られた番組があり、その新聞記事さえも実は警察発表そのままの内容でしかない。そうやって、ほとんどの報道は作られる。</p><p>　 「...」</p><p>　 「どうしたんや？」</p><p>　 「ごめんなさい。私、こういう話題苦手で」</p><p>　 「一体誰の仕業なんやろね。カッちゃん、誰かが犯人を閉じ込めたちゅうことやな。ヒーローっ気取りで」</p><p>　 「あ、それ、次のパネルでコメントお願いします」</p><p>　 「あっ、そっか。ゴメンゴメン」</p><p>　 「ワコさんは、すぐ先走っちゃうんだから」</p><p>　 スタジオに軽い笑いが起こり、ディレクターがいつものお約束の流れに沿って番組が進行していることに満足している中、星野スミレだけは違う角度でこの事件について思いを巡らせていた。</p><p>　 （こんな子供じみたことが起きるなんて。もしかしたら...）</p><p><br></p><p>　 バードマンからミツ夫のバッジに一報が入った。</p><p>　てっきり昨晩の活躍を誉めてもらえるものとばかり思い、うきうき気分で公園に出かけてみると、</p><p>　 「ミツ夫くん、君は何をしてくれているのだ？」</p><p>　 会ったとたん、バードマンから大目玉を食らってしまった。</p><p>　 「何をって？昨日、偶然、ヘンタイの現場に居合わせたもんだから、パーマンに変身して、取っ捕まえてやったよ」</p><p>　 「それで？」</p><p>　 「反省させるために、動物園の檻の中に閉じ込めた」</p><p>　 「それって、パーマンの仕事かね？」</p><p>　 「だって、警察はなかなか捕まえられなかったし」</p><p>　 「君は警察官でも裁判官でもないんだよ」</p><p>　 「じゃあパーマンの仕事って一体何なのさ」</p><p>　 彼には珍しく強気な態度でバードマンに聞き返す。</p><p>　 「それ以外の人助けだ。警察にも、レスキューにも叶わない重大事案が君の仕事になる。だから、思い付きやその時の気分でパーマンになってはいけない」</p><p>　 「そういうことは前もって言ってくれなきゃ」</p><p>　 「いいかい、ミツ夫くん、これから言うことを素直に聞いてしっかりと心に留めておいて欲しい。まず、君のやるべきことと、できるのにやろうとしないことを実現する勇気、それから、できないことをちゃんと受け入れる落ち着き。その境界線をくっきりと見極める知識、それが一番大事なことなんだよ」</p><p>　 「ふーん」</p><p>　 「やはり、追加訓練が君には必要のようだな」</p><p>　 そう言って、バードマンはぴしゃりと会話を閉めた。</p><p>　 「追加訓練？」</p><p><br></p><p>　 訓練の日程が決まり、バードマンからその旨の連絡が入ると、ミツ夫はまるで遠足にでも出掛けるような浮かれた気分で身仕度をしてリュックサックに外泊に必要なありったけを詰めた。お菓子持ってったら、バードマンに叱られるだろうか？だろうな。</p><p>　 そして最後にコピーロボットを取り出し、その鼻を押した。</p><p>　 「コピペくん、あとは頼んだよ」</p><p>　 ミツ夫はコピーロボットを『コピペ』という愛称で呼ぶことにして、前もって自分の姿の時に口頭でインプットしていた。</p><p>　その名を呼べば、どんな姿になっても本体はコピーロボットだと確認できるようにするためと、なにより愛着が湧くと思ったからだ。</p><p>　準備万端、整ったところで、留守番をコピペに託し、パーマンの格好でバードマンのもとへ向かった。</p><p><br></p><p>　彼が指定した待ち合わせ場所は、エンピツ公園の３００メートル上空だった。</p><p>　 到着すると、そこには小型円盤にちょこんと座ってビジネス雑誌の週刊ダイヤモンドに目を通しているバードマンが待っていた。</p><p>　 「ちゃんとコピーロボットをセットしてきたかな？」</p><p>　 「うん」</p><p>　 「訓練は、長丁場になりそうだからね」</p><p>　 「え？」</p><p>　 「いいから、私についてきなさい」</p><p>　 そう言うやいなや、正座したバードマンを乗せた機体はそのままの形で超高速で南南東の方角に向けて飛び立った。</p><p>　ミツ夫は言われるがままに、全開でバードマンの後ろについていく。</p><p>　そして、小一時間ほども飛び続けた結果、二人が行き着いた先は太平洋上に浮かぶ絶海の孤島だった。</p><p>　 「さて、この無人島で一週間、訓練することになる。君を導くのは」</p><p>　 そう言うと、バードマンはこちらに向かってゆっくりと歩いてくる人物をミツ夫に紹介した。</p><p>　 「彼が君の指導者、コーチロボットの依田さんだ」</p><p>　 現れたのは、いかにも運動部のコーチといった感じの小柄な初老の男だった。しかも手には竹刀を握っている。</p><p>　 「パーマン、よろしく。依田という者だ」</p><p>　 そして、持っている竹刀で地面をパンと叩いた。</p><p>　 「それでは、ミツ夫くん。一週間後にまた会おう」</p><p>　 「あれ？バードマン、帰っちゃうの？」</p><p>　 「私だって、暇というわけではないのだよ。残り二人のパーマンの面倒もみなくてはならないからね」</p><p>　 「え？パーマンってあと二人いるの？」</p><p>　 「言ってなかったか？」</p><p>　 「聞いてないよ」</p><p>　 バードマンが去り、満を持した依田コーチの特訓の第一歩は、ミツ夫を島の浜辺に連れていき、こう指示することから始まった。</p><p>　 「さあこれから、腕立て伏せ１０００回」</p><p>　 「えええっ？」</p><p>　 「えええじゃない。まずは自分と強化スーツを信じることから始める」</p><p>　 仕方なく、「わかった。じゃあ、やってみるよ」</p><p>　 ミツ夫がそう言うと、すかさず依田さんの褐が飛んだ。</p><p>　 「違う。やるかやらぬかだ。試しはいらない」</p><p>　 強い口調で依田さんはそう言い、砂浜を竹刀でパンと叩いた。</p><p><br></p><p>　 次に用意されたメニューは、蹴りの繰り返しだった。</p><p>　 「この技は非常に有効であるからして、練習１０００回」</p><p>　 そう言って、空蹴りを指示した。</p><p>　 不器用なミツ夫は何度やっても思うように高く脚が伸びず、挙げ句の果てにはバランスを崩して、後ろにひっくり返える始末だった。</p><p>　 「違う。月に向かって蹴るのだ」</p><p>　 「この角度でいいかな？」</p><p>　 「考えるな、感じるのだ」</p><p><br></p><p>　 浜辺から森に向かって数分歩いたところに、にわか造りの小さなロッジがあった。</p><p>　午前のトレーニングを終えると、ミツ夫はパーマン・スーツから普段のTシャツ姿に着替え、そこで依田さんが用意してくれた簡素な昼食を取った。ただ、食事をしたのはミツ夫一人で、依田さんは傍らでその光景をじっと見ていた。そんなことから、あらためて彼がコーチロボットであることを知らされた。</p><p>　 「食事を済ませたら、３０分ほど休憩を取って、すぐに午後の訓練開始だ」</p><p>　 「依田さんは食事しないし、エネルギー補給はどうしてるの？」</p><p>　 「ああ、私か？私ならこれがあるから大丈夫」</p><p>　 そう言って、取り出したのは赤いパッケージの煙草の箱だった。</p><p>　 「今時タバコなんて、体に悪いよ」</p><p>　「勘違いしないでくれ。これは煙草型のエネルギー補給器だ。一日二本体内に取り込めば、十分活動できる仕組みになっている。ただ、端から見れば、煙草と間違えるのも無理はないかもな。熱を逃がすためにほのかな煙もでるし。まあ、H-17（バードマン）が作った優れもののひとつだ」</p><p><br></p><p>　 午後の訓練が再開すると、トレーニングの内容が格段レベルアップした。</p><p>　 「パーマンよ、これから海上２０００メートルの位置に一気に上昇したら、急降下してそのままの速度を保って海中に飛び込み、海底にタッチして、また上昇する。その繰り返し、5００回。楽しそうだろ。そして仕上げに夕食用の魚を何匹か捕獲してきなさい」</p><p>　 「そんなことできるの？」</p><p>　 「君が大事に持っているそのちっぽけな固定観念を捨てればいいことだ。それから、回数を誤魔化すようなことは、金輪際パーマンはしない筈だ」</p><p><br></p><p>　 なんとか訓練をクリアし、海から上がってきた頃には、すっかり陽は傾いていた。</p><p>　全身の筋肉がピリピリするほど、ミツ夫は疲労困憊していたが、夕食の魚だけはしっかり確保することを忘れなかった。</p><p>　訓練合宿の初日だから、今晩は歓迎会の豪華なディナーがきっと待っているに違いないと無邪気に思い込むあたり、まだ幼いあどけな<span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">さ加減とポジティブな精神だけがミツ夫の強みなのかもしれない。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 ところが、帰ってみると、夕食は豪華なディナーどころか、魚の塩焼きと磯の味噌汁が用意されただけだった。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　陽は沈み、すっかり暗くなった孤島は、虫の声と波のさざめきだけが耳に響いた。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　見上げれば、都会では見ることのない満天の星空に、流れ星が幾度も走った。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　何気なくベランダの方に目をやると、揺り椅子に腰掛けた依田さんが煙草をくゆらせながら、いや、エネルギー補給器を口にくわえて、初日の訓練結果が表示されたタブレットに目をやり、なにやら几帳面にチェックしていた。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　その手を止め、依田さんが思いついたようにミツ夫に話しかけてきた。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「南海の海底は美しかったか？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「そんなの見る余裕なんてなかったよ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「そうか。だが、よく観察しなくては魚は捕れなかっただろ？がむしゃらにやることだけが訓練ではない」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 依田さんの言葉を聞きながら、ミツ夫もベランダに出て、もう一度星空を見上げた。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　ここからペルセウス座流星群は見えるだろうか？以前、バードマンから教わった惑星のことが頭をよぎった。そして同じ星からやって来たであろう残りのパーマンたちがいることを思い浮かべた。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　自分のほかに二人もパーマンがいるなんて。たぶん優等生なんだろうな。その二人もこの訓練受けたんだろうか？それとも僕だけか？結局、学校の居残りと同じじゃないか。そう思うと、ミツ夫はすっかりへこんでしまい、こんな場所にひとり取り残されたやるせなさと自分の甲斐性のなさに思わず涙が出そうになった。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 そんなミツ夫の気持ちを察したのか、依田さんが、孫ほども年の違うミツ夫の傍らにそっと寄り沿って穏やかな口調で言った。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「なぜバードマンが君に追加訓練を命じたかわかるか、ミツ夫？」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 初めて依田さんが自分のことをパーマンではなく、ミツ夫と呼んだ。&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「落ちこぼれだから？」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「そうじゃない。君は頑張っているよ。それはバードマンもわかっている。彼は君に期待しているんだよ」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「だけど、いつも失敗ばかりしてる。学校でもそうだ。僕なんか、しょせんパーマンじゃなくて道端のただの雑草なんだ」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「雑草だって？雑草という名の草はないよ」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「うん」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　「逆風も回り込めば、追い風になるんだ、わかるよな？」&nbsp;</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);"><br></span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 翌朝の依田さんは、昨晩の優しい伯父さんとはうって変わった厳しい教師の態度で号令をかけてきた。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　一瞬リセットされたのかとミツ夫は疑ったが、そこは素直に指示に従った。</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 「おはようパーマン。さあそれでは、今日も元気にラジオ体操１０００回、いってみよう」</span></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　 そうやって、手を変え品を変えた容赦ないの訓練があと六日続いたのだった。</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12962951255.html</link>
<pubDate>Tue, 14 Apr 2026 08:20:59 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パ－マンズ・ゼロ　(PerMans.Zero)　vol.3　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第３章　「見えざる脅威」The Phantom Menace</p><p><br></p><p>　 週末、町内のラジオ体操のせいで、早朝から母親に布団をまるごと剥がされた。もうちょっと寝たかったのに、母親は容赦なく寝床を丸め、「はよ、朝メシ食べ、ラジ体行ってこ」と、極端に横着した言葉で、ミツ夫に指示した。</p><p>　 「ガンちゃんはもう行ったからね」</p><p>　 要領のいい妹のガン子は、ラジオ体操後に配られるジュース目当てにいつも一番乗りで公園に向かう。早い者勝ちで、飲み物の選択ができるからだ。</p><p>　 仕方なく言われたままに朝食を取っていると、どこかで打ち上げ花火の音が響いた。その音に反応して、思い出したように母親が言った。</p><p>　 「ああそうだ。今日は、河川敷の花火大会の日だわ。予定どおり開催するっていう合図だよ。三年ぶりだから、楽しみだね。スイカでも用意しようかな」</p><p>　 COVID-19は、感染の脅威もさることながら、夏の風物詩である色々な娯楽さえも人々から奪っていた。大敵コロナが完全に消え去った訳ではないが、その影響力がちょとでも下火になると、感染対策を横目で睨みながら、まるで喪が明けたように、あらゆる催しが再開された。戦争や災害での死者を弔う意味をもつ花火大会はその中でも、誰もが待ち望んでいた夏の大事なイベントのひとつだ。</p><p>　 大急ぎで公園に向かったのはいいが、案の定ラジオ体操はもう始まっていた。こっそり列の後ろに並び、目立たぬようにみんなに合わせて体を動かしていると、背後から聞き慣れた声が掛かった。</p><p>　 「ミツ夫、この前は大丈夫だったか？」</p><p>　 声の主はカバオだった。盆祭りをひとり抜け出したのを心配してくれている。</p><p>　 「ちょっと疲れただけだから、もう平気だよ」</p><p>　 「今日、花火大会だって知ってるか？」</p><p>　 「うん」</p><p>　 「サブやミチ子誘って一緒に見に行かないか？」</p><p>　 「いいけど、毎日がお祭り騒ぎみたいだね」</p><p>　 「そうさ。だって、夏休みってそういうもんだろ」</p><p>　 ラジオ体操が終わり、スタンプ帳にハンコをもらっていると、おーいお茶のペットボトルを一気飲み干したカバオがそっとミツ夫に耳打ちした。</p><p>　 「なんかさっきから、あいつずっとお前のこと見てるぞ。知り合いか？」</p><p>　 その言葉に振り返ると、広場の端に例のスーツ男が立っていた。そして、ミツ夫と目が合うと、胸のあたりで小さく手を振って寄こした。</p><p>　 「ああ、なんでもない。じゃあ、花火大会、夕方６時にこの公園で待ち合わせな」</p><p>　 そう言って、ミツ夫はそそくさとその場を離れた。実は、スーツ姿の男を見たとたん、ミツ夫の中で忘れていた先日の夢が一挙に甦ったのだ。</p><p>　 「やあ、ミツ夫くん。ラジオ体操は体力向上、健康の保持や増進にとっても役立つのだよ、知ってたか？」</p><p>　 「そんなことより、おじさん」</p><p>　 「おじさんではなく、バ」</p><p>　 「バ？バードマン？」</p><p>　 「頭の中で伝えたことを思い出したようだね。では、さっそくこれを」</p><p>　 そう言って、例のぐしゃぐしゃになったボール玉をミツ夫に手渡した。</p><p>　 「あれは夢じゃなかったんだ」</p><p>　 ミツ夫の脳内を目まぐるしくシナプスの触手が連結していく。ただ、その着地点がどこなのか分からないまま戸惑っていると、いきなり、「それから、ひとつ言い忘れたことがある」と、バードマンはミツ夫の心のざわつきをよそに、食い気味に言葉を発した。</p><p>　 「パーマン・セットは、とにかく取扱書をよく頭に叩き込んで、自主トレすること。それと、これこれ、これが大事だった」</p><p>　 そう言って、松坂屋の紙袋から彼が取り出したのは、何の変哲もない無地の人形だった。</p><p>　 「これはコピーロボットと言って、鼻のスイッチを押せば、押した者にトランスフォームする。解除するには本人か、ロボット自身がもう一度鼻を押せばいい」</p><p>　 「ふーん。で、それって名前あるの？」</p><p>　 「だから、コピーロボットだって」</p><p>　 「名前ないんかい。掃除機だって名前あるのに」</p><p>　 「君がパーマンとして活動している時に、君の身代わりとなって、アリバイをつくってくれる。君がパーマンだとバレないためにね。その間のことは互いの額を合わせれば記憶を受け繋ぐことができるから安心していい。そうだ、試しに今ここで、パーマンに変身してみるか？」</p><p>　 「それは止めとく。人目もあるしさ」</p><p>　 「あっ。うんうん。それはいい心掛けだ。バレちゃまずいしな。ちょっと君を試してみただけだ、ハハハ。私との連絡はパーマン・セットの中にバッジがあるから、それでいつでも…」</p><p><br></p><p>　 「コピーロボットつこうて、店の手伝いさせとるやろ？ほんまあきまへんで」</p><p>　 「バードのおっさん、さっきからそのけったいな関西弁やめなはれ」</p><p>　 「コピーロボット使こうのはパーマンの活動中だけやと、口酸っぱくゆうとるやろ」</p><p>　 「ケチ臭いやっちゃなあ」</p><p>　 「法善君。これから、君をこう呼ぶさかい。関西のパーマンで、パーやん、どや？」</p><p>　 「なんでやねん」</p><p>　</p><p>&nbsp;　取扱説明書が苦手なことは初めから分かっていた。大体、「取扱説明書」という文字の羅列がもうすでに煩わしく映る。自慢じゃないが、電化製品からプラモの組立にいたるまで、今までちゃんと読み通したことなどない。とにかく実践あるのみ、というのは面倒くさがりの言い訳だ。</p><p>　それでも、受け取ったパーマン・セットの中にある『3）マント』だけは興味が湧いて、ちょっとページをめくってみた。</p><p>　原理は全く分からないが、思った通りどうやら自在に空を飛べるらしい。それで、まず最初に心に浮かんだのは、これで学校を遅刻しないで済むということだったが、すぐにそんな考えは通用しないと気が付いた。それより何より、高いところから失敗して墜落でもしたら、と想像したとたん、怖くなって慌てて説明書を見直した。</p><p>　 「これは、実際に飛んでみないと、要領がつかめないかも」</p><p>　 普段なら、河川敷あたりで練習するところだが（自転車の乗り方もそこで覚えたし）、あいにく今日は花火大会ということで、大勢の見物人がでることだろう。そう考えると、人目につかない場所ってなかなかないもんだとミツ夫は頭を抱えた。</p><p>　そこで、ひとまず近所のひと気のない路地裏あたりを物色することにした。</p><p>　 まずは、マントを取り出して身に付け、本人だとバレないようにポケットにあった不織布マスクをして試してみる。何も起こらない。「えいっ」とか、「やー」とか言うんだろうか。とにかく両腕を上に伸ばし、なんとなく前のめりになると、急に体が軽くなり、宙に浮く感じになった。宙といっても、地面から１０センチ程の高さでフワフワ浮いている感じだ。これでいいのかなあ、と戸惑りながら、平泳ぎの要領でスイスイバタバタして前に進むと、少しずつ上昇していった。結構、これって疲れるじゃん。走ったほうが早いんじゃない。そこで思い付いて、上に伸ばした手を拳に握り、片方を腰にあててみた。すると、とたんに物凄い勢いで上空に飛び出して、地上のあらゆる建物を乗り越え、薄い靄掛かった空域まで一気に達した。怖くなって、おもわず握った拳をほどくと、一直線の軌道にブレーキがかかった。極端なやり方であたふたしたが、なんとなくコツが掴めたような気がした。未熟者はすぐそう思う。</p><p>　「それにしても、この高さってこんなに寒いんだ」</p><p>　 Tシャツ姿のミツ夫は身震いしながら、眼下に拡がる街並みを臨み、直に見たことのない景観にちょっと感動した。</p><p>　 この調子でゆっくり高度を下げ、しばらくあたりを旋回してみた。徐々に慣れてきて、重力に逆らって自分の思うままに飛行できるようになると、今度は人目につかぬように低空飛行を繰り返した。</p><p>　そして、ちょうどエンピツ公園の上空に差し掛かったところで、訓練を終了した。</p><p>　 公園の時計台に目をやると、時刻ははや５時半。今日はここまでと自分に言い聞かせ、帰途についた。カバオたちと約束した花火大会の集合時間に間に合うように一旦帰って、夕食にはちょっと早いけど、少し腹ごしらえしてからまたここに戻って来るつもりだ。</p><p>　そう考えていると、どこからか「きゃーッ」と、か細い女性の叫び声がした。おもわず辺りを見渡し、声の主の方向に足を向けた。すると、すぐ近くでひどく動揺した様子で駆け去る若い女性二人とすれ違った。</p><p>　何事かと身構えたミツ夫の前方に、なんとトレンチコートの前をはだけたパンツ一丁の男がこれぞとばかりに立ちはだかった。</p><p>　 「うわ、ヘンタイがでた」</p><p>　 思わずそう叫んだミツ夫は、その場から反射的に一目散で逃げ出した。</p><p>　一方、『ヘンタイ』と呼ばれた男もまたその声に驚き、あわてて反対方向に逃げていく。</p><p>　 どうしよう、どうしよう。顔ははっきり見てしまった。だけど、小学生の自分がなんとかできる訳ないし、なによりまず怖いし、どうしよう。そういう思いで一杯一杯になった頭を抱えながらなんとか家に辿り着くと、初めて自分がパーマンであることに気が付いた。あれ、こういう時のためのパーマンじゃないの。そう思ったとたん、へんな正義感がムクムクと湧きあがり、なんとかしなきゃモードに切り替わって例のボール玉を取り出した。そこまでは、まあなんとなくバードマンの見立てどおりのミツ夫だったが、</p><p>　 「あっ、でもこれから、花火大会の約束があるじゃん、さあどうしよう？」</p><p>　 「さあどうしよう？」もないだろう、と誰かのツッコミが聞こえる。</p><p>　 「わかってるよ、わかってる。コピーロボットがあるってこと」</p><p>　 バードマンの教えに従い、取り出したコピーロボットの鼻を手順どおり押して、そして現れた自分は、自分よりしっかり者のように思えた。</p><p>　 「はじめまして、ミツ夫です」</p><p>　 「あっ、こちらも、ミツ夫です」</p><p>　 「状況は了解してるので、ここは僕にまかせて、フル装備でいってらっしゃい」</p><p>　 「あ、はい」そんな感じのやり取りで、パーマンになったミツ夫は二階の窓から不器用に飛び出した。</p><p><br></p><p>　 ミツ夫の家の界隈は、襲われた女性たちの通報で駆けつけたパトカーのサイレンがけたたましく鳴り響いていた。何人かの巡査が動員され、捜索したが、それでも犯人はいまだ捕まっていないらしい。</p><p>　唯一犯人の顔を間近で見たミツ夫は、テレビの刑事物番組のお約束を思い出し、『犯人は再び現場に舞い戻る』を実践して、エンピツ公園に向かった。</p><p>　 すると、都合よく公園沿いの路上に駐車した工事用バンの中から例の男がひょっこり顔を出すところに出くわした。</p><p>　 「ヘンタイおじさんだよね」</p><p>　 突然そう声を掛けられた男は、一瞬息を飲んだようだったが、相手が奇妙なコスプレをした子供とみると、急に高飛車な態度にでた。</p><p>　 「なんだ、お前は？」</p><p>　 「隠したってダメさ。だって僕見てたもん」</p><p>　 「子供が変なこと言うもんじゃない。さあさあ、仕事の邪魔だ」</p><p>　 そう誤魔化しながらも男の体は少しずつ運転席に移動している。そして突然アクセルを思い切り吹かした。だが、物凄いエンジン音はしたものの車は一向に進まな　　い。</p><p>　「おじさん、無理だって」</p><p>　 車の後部を片手でしっかり掴んだパーマンが、諭すような口調で言った。</p><p>　 「なんだこいつ、化け物か!?」</p><p>　 相手の予想外の力に圧倒された男はあわてて車を飛び出し、闇雲に逃げ出そうとした。姿はトレンチコートのままだった。</p><p>　その衣服の襟をひょいと掴むと、パーマンはそのまま上空に舞い上がった。</p><p>　 「一体どうなっているんだ？」</p><p>　 最初のうちはひどくもがいていた男も、あまりにもあり得ない状況に自分自身が起かれているという恐怖と、もがけばもがくほど落下する確率が増すことに気が付き、すっかり観念して静まり返った。</p><p>　 男を吊り下げたまま、パーマンは雲ひとつない夕焼け空を飛んだ。</p><p>　茜色から薄紫に、そして急速に夜に向かって暗くなっていくのがわかった。</p><p>　やがて、河川敷あたりに差し掛かった頃、ひゅるひゅるという音とともに一発目の花火が打ち上がった。花火大会の開始だった。次々と花火は打ち上がり、奇妙な二人をシルエットにして鮮やかに夜空を飾った。</p><p>　そして、見事に花開いた色とりどりの光の粒の傍らを、ゆっくり通り過ぎながら、ミツ夫は小さくため息をついて頷いた。</p><p>　 「結局、花火見れたけどさ、近すぎ」</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12962864878.html</link>
<pubDate>Mon, 13 Apr 2026 11:33:21 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ　(PerMans.Zero)　vol.2　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第２章　「理力の覚醒」The Force Awakens</p><p><br></p><p>　夏休みが始まった次の日、小学校の校庭を開放し、学区の自治会主催で盆祭りが行われた。</p><p>　去年、一昨年とコロナ禍の影響で開催が見送られたこともあり、感染状況が下火になった今年こそはその分、少しでも盛大にしたいというのが主催者側の意向である。</p><p>　 校庭の中央には５メートル程の高さの櫓（やぐら）が組まれ、浴衣を着たおばさん達がこの日のために練習を積んだ盆踊りを披露する。参加者フリーのこのイベントにご先祖様もさぞや喜んでおられることだろう。</p><p>　その櫓を取り囲むように各種の露店が建ち並んでいる。焼きそばもあれば、タコ焼きも、みんなが好きなイカのぽんぽん焼きも、綿菓子も、かき氷も、アルコールさえも、すべてが格安で用意されている。</p><p>　 そして、祭りの目玉として、正面には舞台が設置され、ステージ上では有志によるバンド演奏やフラダンスが大々的に華やかさを演出していた。</p><p>　 先程から縁日の定番スーパーボールすくいに夢中になっていたカバオが、突然その手を止めて真顔になった。</p><p>　 「ん?」</p><p>　 「カバオ、お前鼻血でてんぞ」</p><p>　 サブが心配そうにカバオの顔を覗き込む。よほどボールをすくうのに全集中していたのか、それともこの蒸し暑い外気のせいか、すっかり頭に血が登ってしまったのだろう。</p><p>　 「とにかく、救急所に行こう」</p><p>　 「そうだな」</p><p>　 この時ばかりは、恥ずかしさと不安な気持ちがいつもの強がりを抑えて、カバオは素直に皆に従った。</p><p>　 「つづきは、ミツ夫がやってくれ」</p><p>　 「えっ？わかった」</p><p>　 請け合ったのはいいが、考えてみれば、スーパーボールすくいなどやったことがなかった。それなら、金魚すくいの要領でやればいいんだ、と思いついたが、それだって今まで一度もやったことがなかった。結局、一個すらすくうことができないまま、カバオが手に入れた三個のみが手元に残った。</p><p>　 まあ、こうなるだろうなと、へんに納得して、カバオ向けの弁明を色々考えながら救急所に向かった。</p><p>　 あたりを見回しながら救急所の場所を探していると、アロハシャツの二人組がすれ違い様にミツ夫にぶつかってきた。雰囲気からして、おそらく中学の男子だ。</p><p>　 「おい、なにぶつかってきてんだよ。お前、何年生だ」</p><p>　 「あ、ごめんなさい」</p><p>　 「ごめんなさい？謝るなら、他に謝り方があるんじゃねえのか」</p><p>　 二人のうちの比較的体の小さい方の男子が凄んできた。</p><p>　 「そうだな。慰謝料ってやつが発生したな」</p><p>　 もう片方が図に乗って言い寄った。</p><p>　 ああ、これって世に言うカツアゲってやつか。そう心の中で呟いたつもりが、ミツ夫は思わず声に出していた。それが相手には舌打ちしたように映ったのだろう。</p><p>　 「お前、なめてんのか、コノヤロー」</p><p>　 「ひえーっ。勘弁してください」</p><p>　 「ミツ夫くん、なにやってるの!?」</p><p>　 そこに割り込んできたのは、同じクラスの沢田ミチ子だった。可愛い浴衣姿の女の子が唐突にひどく勝ち気な口調で声をかけたものだから、中学生の二人組は少々面食らった。</p><p>　 「なんだ、こいつ」</p><p>　 「なんだこいつはないでしょ。あんた達こそなんなのよ」</p><p>　 その騒ぎにぞろぞろと野次馬が集まりだした。</p><p>　 「なんだ、なんだ」</p><p>　 「どうした、どうした」</p><p>　 その中には、カバオやサブもいた。</p><p>　 「クソガキがっ」</p><p>　 騒ぎのどさくさに慌てた二人は、そう捨て台詞を吐くと、そそくさとその場から立ち去った。</p><p>　 「どうした、ミツ夫?」</p><p>　 「カツアゲされた」</p><p>　 「あいつら、○×中学の生徒だな」</p><p>　 「俺たちの縄張りで、なにしてくれてんだ」</p><p>　 カバオがその筋の人間みたいなことをいった。さっきまで、鼻血を出してビビっていたようには思えない。</p><p>　 「ミッちゃんって、けっこう心臓強いんだね」</p><p>　 「なに言ってんの。ミツ夫くんがだらしないからよ」</p><p>　 それはそうか。いくら年上とはいえ、中学生に睨まれたとたん、すっかり足がすくんでしまい、何もできなかった。それどころか、クラスメートの女の子に助けられる始末。</p><p>　 「俺、先に帰るわ」</p><p>　 なんとなく気まずい雰囲気になり、自分の情けなさにも嫌気がさした。恥ずかしさも手伝って、とにかく今は一人になりたい気持ちが先にたった。</p><p><br></p><p>　 夕刻、茜色に染まった公園は、いたるところに長い影が差し込み、眼にするものすべてを物悲しく映しだした。</p><p>　飼い主のもとへ帰るタイミングを失い、物憂げにその辺をうろうろしている犬さえも哀愁を帯びて見えた。</p><p>　 自分も同じだと、ミツ夫は思った。いつものあのモヤモヤ感の度合が今にも沸点に達してしまいそうな気がして、頭を冷やすためにミツ夫はひとり公園のベンチに座っていた。そのまま真っ直ぐ家に帰れば、家族相手にうっぷんを晴らしてしまいそうだった。</p><p>　 「君は優しいんだな」</p><p>　 ミツ夫の心を見透かしたような言葉が不意に背後から聞こえた。</p><p>　 「うわあっ。なっ、なんだ!?」</p><p>　 突然の声に、ミツ夫は思わずベンチからずり落ちた。</p><p>　 「だが、優しいだけではだめだ」</p><p>　 ベンチのま後ろにスーツ姿の男がぬっと立っていて、驚くミツ夫を尻目にそのまま言葉を続けた。</p><p>　 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」</p><p>　 「おじさん、こんなところで何してんだよう、びっくりするじゃないか」</p><p>　 「ああ、驚かして悪かった。今夜は、ペルセウス座流星群を観察しようと思ってね。知っているかい、これから、夏の間、毎晩現れるのだよ」</p><p>　 「聞いたことある。流れ星のことだろ」</p><p>　 「ペルセウス座γ（ガンマ）星付近が放射点になってこの季節になると、地球の近くを通過するのだよ」</p><p>　 そう話しながらスーツ男は、いつのまにか傍らに現われた天体望遠鏡のファインダーをさも自然な仕草で覗き込んだ。</p><p>　 「そのペルセウス座っていうのはどこにあるの？」</p><p>　 「地球から７０００光年離れたところにある。アンドロメダの近くだ。まあ、”近い”という感覚は、移動手段にもよるがね」</p><p>　 「７０００光年って一体どれくらいの距離なの？」</p><p>　 「１光年は、光が１年間に進む距離のことだ。光が届く距離、つまり見えるということ、だから、１光年離れた星ならば、１年かかってやっとこの地球にその姿が届くということだ」</p><p>　 「ちょっと待って。むつかしいよ」</p><p>　 「雷がピカッと光った時に、音が少し遅れて聞こえたりするだろ、雷が消えたあとにね。それを光の速さに置き換えて考えてみるんだ」</p><p>　 「外国からの中継なんかで、通信や映像が少しズレて届くのと同じこと?」</p><p>　 「まあそうだな。だから、今見えるペルセウス座の恒星は７０００年前の姿であって、例えば、今の時点で消失しても、地球から見えなくなるのは７０００年先ということになる」</p><p>　 「不思議だなあ」</p><p>　 「それだけ、遠く離れているということだ。ワープ・ドライブなしでは星間移動など夢物語だな」</p><p>　 「ワープ・ドライブって？」</p><p>　 「まあ、SFの話だと思えばいい」</p><p>　 「なんか、途方もない宇宙の話で、自分がめっちゃちっぽけに思えてくるな」</p><p>　 「そうか。モヤモヤは消えたか？」</p><p>　 「おじさん、明日もここに来る？」</p><p>　 「来るとも」</p><p><br></p><p>　 その晩、ミツ夫は奇妙な夢をみた。</p><p>　 表面がプラスチックのレゴを無造作に積み上げて、デコボコになった坂道を、自転車を押しながらせっせと上っていく自分がいる。前へ行けば行くほどあたりはどんどん暗くなり、地面と地平の境を見極めるのがやっとという状態だ。しかし、もはや引き返すことはかなわない。後方では、知人のカバオやサブやミチ子が、戸惑うミツ夫を追い立てるように口々に囃し立てる。</p><p>　「ミツ夫、その顔一体どうしたんだ？」</p><p>　「ミツ夫くん、その姿どうしちゃったの？」</p><p>　 一体何事かと不審に思い、自転車のバックミラーを覗き込むと、そこには醜い姿になった爬虫類の顔がじっとこちらを覗いていた。あまりの恐ろしさに、自転車を放り投げ、全速力で坂道を駆け上がった。やがてなんとか頂上に辿り着いたと安心したとたん、足元の底がストンと抜けて、宙に投げ出された形になった。危険を避け、無意識のうちに姿勢が丸くなっていた。そのままぐるりぐるりと回転していくと、その度に体が縮んでいき、ついにはすっかり胎児となった自分がそこにいた。</p><p>　そして、あたり一面が、あっという間に満天の星に包まれた。</p><p>　 （凄い。星がいっぱいだ!!）</p><p>&nbsp;「うむうむ、なるほど。これは、夢を見ているということだな」</p><p>　 ミツ夫の両目が目蓋の下で勢いよく動くのを、じっくり観察しながら、H-17は、ああ、これがいわゆるレム睡眠という事象なんだと理解し、『知ったかぶりの知識の宮』にしまっておいた情報（未確認）と共有した。そして、双方を実際例としてひとつにまとめ、その情報（確認済）にチェックマークのレ点を打って上書き保存した。</p><p>　こういう事例は、情報収集能力に長けた彼にとってさえ、なかなか自分自身では実践できないことのひとつで、貴重な調査結果だといえた。</p><p>　 「さてと、それでは」</p><p>　 眩しいほどに煌めく星々の空間に、突如巨大なカーテンが引かれ、一瞬にして場面が白い壁に囲まれた一室に変わった。</p><p>　そこには自分と、それから公園で出会ったスーツ姿の男がいて、ミツ夫に椅子に腰掛けるよう促しながら、落ち着いた口調で語り始めた。</p><p>　 「いいかい、ミツ夫くん。これから話すことは全部本当のことだと思って、驚かないで聞いて欲しい」</p><p>　 「これは、夢なんでしょ、おじさん」</p><p>　 「君にはもうひとつの名前がある。リピアという存在がそれだ」</p><p>　 「やっぱり夢だわ」「ペルセウス座の恒星アルゴルを周回する惑星のひとつM34が君の故郷だ」</p><p>　 「なんか漫画っぽい夢じゃん」</p><p>　 「だから夢やないゆーてるやろが。ちゃんと話聞きなさい」</p><p>　 「はーい」</p><p>　 「M34はすでに消滅してしまった。だが、その直前に真空冷凍保存した母星の種を乗せ、私は使命に従い、宇宙船でからくも惑星を脱出したのだ。そして何年もかけ、次の永住地を探す旅の果て、やっとのことでこの地球に辿り着くことができたのだよ」</p><p>　 「おじさん、それってなんの使命？っていうか、大体おじさんって一体何者なのさ」</p><p>　 「おじさん、おじさん言うな。私はH-17、カーボン・ベースの人型ロボットであり、君たちの庇護者だ。M34の種を守るべく創造された」</p><p>　 「じゃあ、おじさんって機械なの？」</p><p>　 「だから、おじさんじゃなくて、私のことはこれからバードマンと呼びなさい。人知を越えた超人のバードマンね。それから、君が思っている以上に私は人間に近い存在だ」</p><p>　（超人のバードマン？バードマンって鳥人じゃないの）そうミツ夫はツッコミを入れたかったが、話が長くなりそうなので、そこはスルーした。</p><p>　 「それで、なんで地球だったの？しかも日本だなんて」</p><p>　 「いい質問だ、ミツ夫くん。かつて航行中に偶然、地球から発射されたヴォイジャー１号という探査機に出会ったのがきっかけになったのだよ。それで、その情報を他の各宇宙船に発信したところ、そのうちの何艘かが地球にやって来たという訳だ。だから、我々がいるのは日本だけではないのだよ。まあ、私見を言えば、日本という国は今のところ戦争を起こしそうにもないし、この星の未来は日本人次第とも思っている。『和を尊ぶ』という言葉聞いたことあるだろ、それが君たち日本人の基本的文化なんだ。そこには学ぶべき点が多いと感じる。だから私はこの場所を選んだ。だが、異星人の我々が地球の未来に影響を与えるのは極力避ける必要がある...で」</p><p>　 「あ、ひとつ気になるんだけど」</p><p>　 「なんだい、急に？」</p><p>　 「さっき、地球に何艘かの宇宙船でやって来たって言ったけど、もし大勢でドッと押し寄せてたら、地球を侵略してた？」</p><p>　 「それはどうかな。M３４は温和な星だったから、そんなことにはならないと思うよ。相手を尊重し、共に生きることが共存共栄の近道だと、我々は痛いほど知っているからね」</p><p>　 「ほんとかなあ」そんな温和な星がなぜ滅んでしまったのか、ミツ夫は反射的にそう思ったが、その疑問を口にするのは不躾な気がして、話題を変えた。</p><p>　 「ああ、それから、さっき、僕にはもう一人いるとか言ってたよね、リピアとかいう名前の」</p><p>　 「M34の種は、ガス状の知的生命体で中心部にDNAの塩基配列をもつ共生生物なのだよ。言ってみれば、ひとつの概念的生物といえる。リピアはそのひとつの名だ。種を繋ぐため未知の惑星を探し求めたが、物質的な世界に飛び込むには私のような管理者が必要だったのだよ」</p><p>　 「何言ってんのか、ぜんぜん分かりましぇーん」</p><p>　 「１０年前の話になるが、君が赤ん坊の時に、とても体が弱くて危険な状態だったのを宇宙船に内臓されたシンパシー・システムが偶然感知したこともあって、リピアは君を宿主として選び、寄生したのだ」</p><p>　 「えっ？じゃあ、それからずっと悪魔みたいに僕に取り憑いてたの？それって、『エクソシスト』じゃん」</p><p>　 「取り憑くって、それはひどくないか。もともと人間にはミトコンドリアと葉緑体のような共生関係の細胞核があって互いに助け合っているじゃないか。お陰様といちゃあなんだけど、ミツ夫くん、それですっかり元気に育っただろ」</p><p>　 「で、僕はそのリピアくんと、会ったり会話できたりするの？」</p><p>　 「直接は無理だが、イメージとしてなら疎通は可能かもしれない。言ってみれば、リピアは君にとってハイヤー・セルフ（高次元の精神的支柱）的な存在とも言えるが、基本、ふたりは一心同体だということを忘れるな」</p><p>　 「ハイヤー・セルフってなに？」</p><p>　 「うーん、そうだな。例えば、テレビでお笑いを見るだろ。それを君はただ呑気に笑っているだろう。だけど、もしかしたら、その笑いの裏には哀しみや怒りが隠れているかもしれないじゃないか。つまりそれを色々な角度から捉えることのできる力、それを感受性や心眼と呼ぶ」</p><p>　 「それって、おもいやりのこと？」</p><p>　 「わかっているじゃないか」</p><p>　 「で、なんで今になって、バードマンは僕の前に現れたんだい？」</p><p>　 「ミツ夫くんは今年何歳になった？１１歳だね。M34での成人の年だ。だから、君はこの星でパーマンという名のもとに地域を守る立派なガーディアンとなるのだ」</p><p>　 「なんそれ！」</p><p>　 「いいかい、ミツ夫くん。アパートを借りたら、ちゃんと家賃を払うだろ。それが道理ってもんだ。この地球に間借りするには、それなりの代償が必要だということだ。それが、ガーディアンという仕事なのだよ」</p><p>　 「別に僕は間借りしてないけど。地球人だし」</p><p>　 「だから、一心同体なんだって」</p><p>　 「だけど、僕は全然強くないし、今日も中学生にカツアゲされたばかりだし」</p><p>　 「それなら心配にはおよばない。君にはこれがあるからね」</p><p>　 そういって、バードマンが自慢気に取り出したのは、ガチャくらいの大きさのくしゃくしゃに丸めたボールだった。</p><p>　 「パーマン・セットだ。これを拡げ、装着すれば、眠っていたリピアの能力が覚醒し、超人パーマンが発動する。まあ、取扱説明書があるから、かならず目を通すんだ」</p><p><br></p><p>　 　《 パーマン・セット一覧（３年間保証書付）:</p><p>　　　　1)マスク</p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　　　　2)強化スーツ&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　　　　3)マント</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　　&nbsp; &nbsp; 　4)パーマンバッジ</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　　　　　　　　　　　　 ※各機能の詳細は別紙参照 》&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;"><br></span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 「いいかい、これを渡すには、条件がある。まず、このことは絶対秘密にすること。親にも、友達にもだ。それから、私的なことに使用しないこと。これを守れば、君は地域を守る立派なガーディアンだ」</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　 「あのぉ、これって拒否できないの？」&nbsp;</span></p><p><span style="color: var(--color-text-high-emphasis); font-size: 16px;">　「ミツ夫くん、人生で一番大事な日はふたつあるのを知っているかい。それはね、生まれた日と、生まれた理由がわかった日だ」</span></p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12962824793.html</link>
<pubDate>Sun, 12 Apr 2026 23:03:08 +0900</pubDate>
</item>
<item>
<title>パーマンズ・ゼロ　(PerMans.Zero)　vol.1　by LapuLapu Matzno</title>
<description>
<![CDATA[ <p>第１章　「新たなる希望」A New Hope　</p><p><br></p><p>　 秋の宵、北天に浮かぶペルセウス座の一隅にある名もない星が、その寿命をひっそりと閉じようとしていた。７０００光年彼方で煌めくその星の、今やすっかり枯渇した地上のあちらこちらからなん艘もの宇宙船が蜘蛛の子を散らすように一斉に飛び立っていく。もはや古巣に見切りをつけ、新しい居場所を求めて飛び立っていく鳥群のようだ。</p><p>　 永住地を探し求める旅路はあてどもなく続くように思われた。そうして、幾百年が過ぎ去った頃、一艘の宇宙船が宇宙空間に漂う未知の物体に出くわした。</p><p>　外見から察すると、それはどこかの星からやってきた無人の探査機に違いない。宇宙船の巡航を管理する特別乗組員、カーボンベースの人型ロボットのH-17は直ちにその機体をスキャンしながら、胴体に刻まれた文字らしきものに目をやった。そこにはその星の言葉で、『Voyager』と記されていた。</p><p>　 それ以後、当挺はPale Blue Dot（淡く青い点：地球）を目指す新しい旅が始まった。</p><p><br></p><p>　 東京都区立の小学校の放課後、５年４組の教室では担任の津島が生徒の親の前で頭を抱えていた。</p><p>　 「実は、複数の親御さんから息子さんにクレームがありましてですね」</p><p>　 担任は、クレームを書き留めたノートを広げながら話を続けた。</p><p>　 「というのも先日の習字の授業のあとの休憩時間に、遊びの一種というか、いたずらごっこだと思うんですが、生徒同士で墨汁の掛け合いみたいなことが起こりまして、それがエスカレートしてしまって、クラスの女子何人かのシャツが墨だらけになってですね、その張本人がですね、ミツ夫君だといっておりまして、ちょっとご連絡させていただいた次第でして」</p><p>　 担任はひどく申し訳なさそうにそう言い、保護者の顔色をうかがった。</p><p>　 当の母親はというと、それに対し、なにひとつ臆することなく、</p><p>　 「それで、息子にどうしろと？」そう言い放った。</p><p>　 担任はひとえに物事を荒立てたくはなかった。昔と違って、昨今の教師はあらゆるルールに縛られ、微妙な立場にたたされている。とにかく、クラスを全体的に捉え、どちら側にも組することなく、ある意味、調停役としてwin winの関係を求められる。その結果、ある種の忖度が物事の本質と対峙する機会を失わせてしまっているのも事実だ。</p><p>　わかってはいるが、根が生真面目な教師、津島修治はそれらの問題に対し、いつも穏やかな結論を導きだすことに苦心する。とにかく、モンスター・ペアレンツの餌食にだけはなりたくないと言うのが本根だ。生徒不在のそれを世間は、おそらく事なかれ主義というのだろう。</p><p>　そんな教師の内情を見透かしたように母親は続ける。</p><p>　「喧嘩両成敗って熟語は小学校で習うんでしたっけ？」</p><p>　 そう言って、手荷物のバックから真っ黒に染まったシャツを取り出し、担任の前で拡げた。</p><p>　「その日はうちのバカ息子、これ着て帰ってきたんですけど、お嬢さんたちも可哀想に同じくらいひどかったんでしょうね」</p><p><br></p><p>　「ただいまー。ママ、今日の夕飯なに？」</p><p>　「帰ってきて、すぐそれかい！夕食はミツ夫の好きなハンバーグだよ。でもその前に、手を洗って、ちゃんとうがいもするんだよ」</p><p>　「わかってるよ」</p><p><br></p><p>　 急遽、担任に呼び出されたミツ夫の母親の須羽允子は、なにもなかったように表情ひとつ変えることなく、早足で帰途についた。</p><p>　そのまま真っ直ぐ家に戻ると思いきや、なにやら近所の公園に立ち入った。</p><p>　夕刻の公園は誰ひとりおらず、閑散としている。と、その時、小さな茂みから突如現れたのは一人乗り用の小型の円盤に乗ったH-17だった。だが、その姿に驚く様子もなく、母親は彼に向かい、「任務完了」そう一言だけ告げた。驚くほど平坦な口調だった。それに対し、H-17は、「OK。ミッション解除」と事務的に応えた。指令を受けた彼女は人差し指を自分の鼻の上にもっていき、まるでボタンを押すような仕草をした。すると、母親の姿は一瞬にして無地の人形に変化し、同時に体はもとの四分の一程の大きさに縮まった。それをひょいと円盤に押し込むと、H-17の乗った円盤は急速に上昇し、あっという間に雲間に消え去った。</p><p><br></p><p>　 小学５年生の夏、須羽ミツ夫は自分が何とも言いがたい違和感にとらわれていることに気が付いた。それは自分を取り巻くすべての世界が、本来とはかけ離れたところで活動しているという違和感だ。思春期にありがちな孤立感と言えば、それはそうかもしれない。だが、子供のミツ夫にはまだその正体がわからない。</p><p>　 学校での成績はけっして自慢できる方ではなく、運動神経もそこそこ、いわゆる平均的な学力のどこにでもいる普通の生徒だといえるが、なによりその目立たぬ性格から同級生からはいつも三番手の友達として扱われ、『フツーちゃん』などと軽口を叩かれて揶揄されることもあった。そんな違和感をうまく吐露する術もなく、まともに取り合ってくれる相手もいないように思え、ひそかに自分の心の奥にしまいこんだまま、なんとなくモヤモヤしながら生きてきた。</p><p>小学生のミツ夫にとって、この世界はまだまだ狭く、窮屈な場所だったのだ。</p><p>　 そんな日々ではあったが、今の生活自体に取り立てて不満があるわけでもなく、また、そんな彼にも仲のいいクラスメートがいないわけでもなかった。</p><p>　 「ところでミツ夫、お前、このあいだの墨汁合戦のことで、担任の津島に親が呼び出されたんだってな」</p><p>　 「なんのこと？」</p><p>　 あいかわらず学校内の裏情報に詳しい同級生のサブがミツ夫に鎌をかける。『墨汁合戦』は事実だが、サブのいう『呼び出し』についてはミツ夫にとって初耳だ。</p><p>　 「とぼけなくてもいいぜ。家でこっぴどく叱られたんだろ？」</p><p>　 ガキ大将タイプのカバオが嬉しそうに話に入る。</p><p>　 「俺なんかしょっちゅうのことだから、もう慣れっこさ」</p><p>　 変なところでドヤ顔になる。</p><p>　 「そんなことより、腹減ってないか」</p><p>　 「そうだな。じゃあ、大屋敷に寄っておでんでも食うか」</p><p>　 『大屋敷』というのは、公園の真向かいにある駄菓子屋のことだ。二坪程しかない敷地にもかかわらず、畏れを知らぬ大それた屋号を掲げている。</p><p>　 おでんのガンモを冷えたラムネで流し込むと、なんとか腹の虫も落ち着いて、三人のあいだで、今流行りのアイドルグループ『Ｄ坂４９８９』の話に花が咲いた。</p><p>　 「やっぱ一推しは誰がなんと言おうと、センターの星野スミレで決まりだな」</p><p>　 それには三人同時に頷いた。</p><p>　 「それから北川ケイってのもアリじゃないか」うんうん、納得。</p><p>　 「でも、『Ｄ坂』を本気で応援するなら、グループ全体を応援する気持ちがなきゃあね」</p><p>　 そうしたり顔でミツ夫は言ってみたが、実は彼の本命は星野スミレであり、ある意味、二人を牽制した格好になった。</p><p>　（いいよなあ。スミレちゃん、いいよなあ）</p><p>　 「お兄ちゃん!」</p><p>　 そんなミツ夫の淡い妄想を掻き消したのは、たまたまそこを通りかかった妹のガン子だった。</p><p>　 「学校の帰り道、立ち食いなんかして、ママに言いつけるからね」</p><p>　 「ガン子、それだけは、やめて。たのむから」</p><p>　 「それなら、このグミ、買ってくれる？」</p><p><br></p><p>　 夏休みが始まる一週間ほど前、小学校から父兄の携帯に一通のメールが着信した。</p><p><br></p><p><span style="font-size: 16px; color: var(--color-text-high-emphasis);">　　　『不審者情報：昨日７月１５日(金)1４時ごろ、エンピツ公園付近で不審者がでたとの情報が寄せられました。</span></p><p>&nbsp;　　　　・４０歳くらいの男性</p><p>&nbsp;　　　　・下着姿なお、この件については、警察に通報済みです。</p><p>&nbsp;　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　区立第七小学校』</p><p><br></p><p>　 「授業を始める前に、先生から大事な報告があります。親御さんにはすでにメールでお伝えしましたが、昨日、エンピツ公園あたりで不審者情報がありまして、下校の際は複数の生徒でかたまって帰るようにしてください。寄り道はしないように」</p><p>　 「先生！またヘンタイが出たんですかー」</p><p>　 「っつーか、ヘンタイって一体何だ？」</p><p>　 どっと笑いが起こり、教室がざわついた。</p><p>　 不審者が目撃されたのは、実は今年に入って二度目だった。実際、実害のない子供たちにとって、この問題はさほど切実とは思えず、馬鹿な大人がいることをからかうことでなんとなく自分たちがマウントを取った気分になるのも仕方ない。</p><p>　教師たちがセクシャリティというものに対して躊躇し、ことさらタブー視して過剰な反応を避けていることを、子供たちはよく知っている。それは、つまりお笑いのネタになるということだ。</p><p>　 ところが、担任の島津先生に限っては、この種のジョークは通用しない。何度も言うように先生は生真面目一本で生きているからだ。</p><p>　 「えっと、『変態』という言葉ですね。辞書で調べてもらえば、わかってもらえるんですが、性格がですね、普通と異なる人たちのことでして、態度が変というか、問題は、そういう趣味を無理やり他人に押し付けるというところでして。相手が嫌がることをしてはいけないということですね。これは犯罪ですからね、お巡りさんが取り締まります。大きな事件に発展する可能性もありますから。万が一眼にしたら、すぐにその場から逃げて、家の人に伝えるなり、学校に報告を入れるなりしてください。わかりましたね」</p><p>　 島津先生は、呆気に取られる生徒たちを尻目に何のてらいもなく、真っ正直に応える。</p><p>　 「それでは、国語の授業を始めます。今日は、『走れメロス』ですね」</p><p><br></p><p>　 金曜の夕刻になると、トレンチコートにサングラスの男がどこからともなく現れる。暑いこの時期にトレンチコートとは、誰が見ても不審者そのものだ。むしろ、どうか捕まえてくださいといわんばかりの格好で、今まで一度も職質に会わなかったことが不思議なくらいだ。</p><p>　 その姿で公園の小さな茂みに身を潜め、周囲に気を配りながら、めぼしい獲物に狙いを定めるその光景は、見ようによっては、ひどく滑稽であり、哀しくもあり、まさに異様な状況である。</p><p>　 そうやって小一時間ほどもその場で粘っていたが、すっかり日が暮れて人影のなくなった公園に見切りをつけたのか、男はすごすごと、近くに停めてあった作業用のバンに戻った。そして、車内でもとの仕事着に着替えると、車の周りに設置しておいた工事用三角コーンを手っ取り早く片付けて、まるで作業が終了したかのように平然と車を走らせた。</p><p>&nbsp;　「うーむ。実に興味深い。人間とは、なんとも不可解な生き物であることか」</p><p>　 立ち去った男の一部始終を、中空からずっと観察していたH-17が頭を抱え、大きくため息をついた。そしてなにやら物思いに耽った様子でいるかと思いきや、次の瞬間、乗っている円盤ごと前後に急反転させると、その姿は瞬く間に中空から掻き消えた。</p><p>　 考えてみれば、そんな人型ロボットもまた、不審者のひとりだと言えなくもないのだが。</p>
]]>
</description>
<link>https://ameblo.jp/lapulapu-matzno/entry-12962802550.html</link>
<pubDate>Sun, 12 Apr 2026 19:35:28 +0900</pubDate>
</item>
</channel>
</rss>
