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<title>ユウジ（仮）Blog</title>
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<description>読書感想文。雑記帳。</description>
<language>ja</language>
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<title>砂漠⑬</title>
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<![CDATA[ 卒業式自体は、本当に淡々としていて、相変わらず僕は、さめた思いで式の進行を眺めていた。ただ、式の最後、学長の言った台詞は印象に残った。くどくどと話をしない主義なのか、学長は、卒業おめでとう、という趣旨のことを簡単に言った後で、<br>「学生時代を思い出して、懐かしがるのは構わないが、あの時は良かったな、オアシスだったな、と逃げるようなことは絶対に考えるな。そういう人生を送るなよ」と強く言い切った。さらに最後にこう言った。<br>「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」<br>・・・<br>　照れ臭さを誤魔化すために、後ろからついてくる友人たちを振り返ったが、その直後、ある予感に襲われた。卒業してからの僕たちのことだ。<br>　四月、働き始めた僕たちは、「社会」と呼ばれる砂漠に厳しい環境に、予想以上の苦労を強いられる。その土地はからからに乾いており、愚痴や嫌味、諦観や嘆息でまみれ、僕たちはそこで毎日必死にもがき、乗り切り、そして、そのうちその場所にも馴染んでいくに違いない。<br>　鳥井達とは最初のうちこそ、定期的に連絡を取るけれど、だんだんと自分たちの抱える仕事や生活に手一杯で、次第に音信不通になるだろう。<br>　僕は、遠距離で交際を継続することに疲労を覚え、鳩麦さんと半年もしないうちに別れるかもしれない。そして、さらに数年のもすれば、鳥井や西嶋たちと過ごした学生時代を、「懐かしいなあ」「そんなこともあったなあ」と昔に見た映画を同じ程度の感覚で思い返すくらいになり、結局、僕たちはばらばらになる。<br>　なんてことはまるでない、はずだ。<br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 12:32:44 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑫</title>
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<![CDATA[ 「北村、ちょうど良かったんだよ、決着をつけるべきなんだ」鳥井が、僕にだけ聞こえるような声で言った。<br>「決着」と僕はそう呟いてみる。それは先日、僕が口にして、東堂に論理的じゃない、と指摘されたのと同じ言葉だったけれど、ただ、鳥井が発声した、決着、の響きのほうが何倍も重みがあって、なぜかその瞬間、僕の頭には、赤く広がる砂漠の光景がぱっと浮かんだ。鳥井には、眼前に広がる砂漠に足を踏み出す覚悟を決めた力強さがあったのだ。「理屈や講釈は不要だ。砂漠に出るために、まずは決着をつけるのだ」とそんな響きに聞こえた。決着をつけなくては、前進するにもできない、というような。<br><br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11987194400.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 12:22:57 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑪</title>
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<![CDATA[ 「俺はね、準備してるんですよ。いざという時に、周章狼狽しないために、すでに怒っておくんですよ。憤っておくんですよ。後で、文句を言っても意味がないですからね。北村みたいな奴はね、日頃から社会に無関心だから、本当に世の中が混乱すると、途端にパニックですよ。どうしよう、どうしよう、って身体中を探ったところで、ポケットから出てくるのは周章狼狽だけですよ。<br>　周章狼狽という四字熟語の発音をよほど気に入ったのか、西嶋は何度も言った。<br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11987190067.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 12:09:30 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑩</title>
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<![CDATA[ 「怪しい宗教かあ」と僕はピザを皿から取り、口に入れる。「僕は、真面目な大人たちが、不気味な新興宗教にのめり込んでいくのが、理解できないよ」<br>「そうかな、わたしはできるよ」と鳩麦さんはすぐに言った。<br>「え、どういう風に？」僕はまさか、鳩麦さんが自信たっぷりに答えてくるとは思いもしなかったので、少し驚いた。<br>「毎日毎日、わたしたちって必死に生きてるけどさ、どうしたら正しいかなんて分からないでしょ」<br>「え、どういうこと？」<br>「何をやったら、幸せになれるかなんて、誰も分からない。そうでしょ」<br>「うん、そうですね」南はうなずいた。<br>「変な話、砂漠にぽんっと放り出されて、『あとは自由に！』って言われたようなものじゃない」<br>「自由に？」<br>「そう。どうやって生きればいいか、なんて誰も教えてくれない。お好きなように、と指示されるのって、逆につらいと思うんだよね」<br>「どういうこと」<br>「みんな、正解を知りたいんだよ。正解じゃなくても、せめて、ヒントを欲しがっている。だから、たとえば、一戸建てを買う時のチェックポイント、とか、失敗しない子育ての何か条、とか、これだけやれば問題ないですよ、っていう指標に頼りたくなる」<br>「たしかにそういう部分はあるよね」<br>「でも、人生全般にはそういうものってないでしょ。チェックポイントとか、何か条とかはない。自由演技でしょ。だから、誰かに、『この修行をすれば幸せになれますよ』とか、『これを我慢すれば、幸福になりますよ』とか言われると、すごく楽な気分になると思うんだよね。どんなに苦しくて、忍耐が必要でも、これをすれば幸福になれる、っていう道しるべがあれば、やっぱり、楽だし。だってさ、わたしたちって子供の頃から、やることを決められているわけじゃない。生後何カ月検診とか、六歳で小学校へ、とか、受験とか、考えなくても指示を出されるわけでしょ。例年通りの段取り、とかさ。不良少年が卒業式を迎える段取りだって、あると思う。それがある時、急に、自由にどうぞ、って言われて愕然としちゃう」<br>「それが宗教ってこと？」<br>「そういう宗教もあるってこと」鳩麦さんがコップの水に口をつける。「よく、怪しい宗教には、階級見たいのがあるでしょ。修行によって、どんどん偉くなる感じの。ああいうのは本当によくできていると思う。これをやったら一つ階級が上がって、上がっていくほど幸せになる、って言われたら、やっぱり気分的には楽でしょう？」<br>「楽かな」<br>「つらいけど、楽だよ。何をすれば良いか分かっていて、しかも、結果も見えるんだから。でも、結局、そういうのに頼らず、『自由演技って言われたけど、どうすればいいんだろう』って頭を掻き毟って、悩みながら生きていくしかないんだと、私は思う」<br>「鳩麦さん、鋭い」南が感じ入った声を出す。<br>　僕はそこで、ずっと前に西嶋が、「終わった後で身悶えするのが麻雀じゃないか。確率だなんだと分析するのは、麻雀ではなくて、ただの計算じゃないか」と主張していたのを思い出した。確かに、生きていくのは、計算やチェックポイントの確認じゃなくて、悶えて、「わかんねえよ、どうなってんだよ」と髪の毛をくしゃくしゃやりながら、進んでいくことなのかもしれない。<br><br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11987188263.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 12:03:51 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑨</title>
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<![CDATA[ 　店を出ようとしたところで、「サン＝テグジュペリの本、読んだことがある？」と、西嶋が先日言った本のことを訊ねてみた。うろ覚えのタイトルを口にすると鳩麦さんは、読んだことあるよ、と言って、「西嶋君のルーツはそこかあ」と笑った。<br>「ルーツっぽいんだ？」<br>「細かいことは覚えていないんだけど、ただね、わたしも覚えてる文があって」<br>「どんな？」<br>「『どこか遠くの彼方には難破している人たちがいるんだ、こんなに多くの難破を前に腕をこまねいてはいられない、我慢しろ、今、ぼくらのほうから駆けつけてやるから！』」<br>「へえ」<br>「うろ覚えだけどね。でも、これって西嶋君っぽくない？」<br>　それを聞いて、遠くの中東で、大国の理屈で延々と繰り返されている意味不明の戦争やら紛争に、何かしなくてはいけない、と焦り、必死に麻雀でピンフを上がる、西嶋の真剣さを思い出した。待ってろ！今、俺が駆けつけてやる！と威勢の良い声を上げたにもかかわらず、駆けつけることができない無念さも感じる。「似てる」<br>「でしょ。それから、『人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に忸怩たることだ』っていう文もあった」<br>「それに似たのを聞いたことがあるな」ぼくは記憶を辿る。確か、初めて、「賢犬軒」に来た時に西嶋はそれに似た台詞を口走っていたはずだ。「僕も読んでみようかな」<br>「小説としては面白いのかなあ、どうだろう」鳩麦さんは気勢を削ぐようなことを言った。<br><br><br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11987179956.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 11:38:52 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑧</title>
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<![CDATA[ 　少し前、街頭で、マイクや拡声器片手に、政治について叫んでいる者たちを見かけたときに、「西嶋もああやって、みんなに訴えてみればいいじゃないか」と唆したことがあった。<br>　本気で言ったわけではなかったが、「砂漠に雪を降らせるんですよ」というメッセージは、「自衛隊の海外派兵は今すぐに阻止しなくてはならない」「日本の右傾化に歯止めを」と喚くことよりも、学生に分かりやすく届くのではないかと、そう思ったのも事実だ。<br>　西嶋は、「三島由紀夫」と呟いて、菓子パンをちぎって、地面に投げた。そうだ、あの時の僕たちは、公園のベンチに座り、群がってくる鳩にパンをやりながら、だった。<br>「三島？」<br>「三島由紀夫が死んだのは、北村だって知ってるでしょうに」<br>「そりゃ」と僕は答える。「自衛隊の市ヶ谷駐屯地で、演説して、腹を切って死んだ。そうだろ？」<br>「三島由紀夫はその時ね、こういったんですよ。『貴様たちは武士だろう』『どうして諸君は気づかないんだ』ってね。必死に呼びかけたんですよ」<br>「どんな感じだったんだろうね」<br>「俺はその時の映像を見たことがないけど、ざわざわしていたのは確かでね、前に、その時の演説を読んだけど、静かにしろ、聞け、聞け、って言ってるのが残ってましたよ」<br>「それは切ないな」<br>「誰か、俺と一緒に立ちあがろうって奴はいないのか！そう呼びかけてね、でも、誰も立ち上がらないんですよ」<br>「寂しいな」<br>「ああ、寂しいですよ。孤独の極致ですよ」<br>　おそらくその場に自分がいたとして、遠目に、「まったく奇妙なことをやるんもんだなあ」と感心しながら、嘲笑していたに違いなかった。「でもさ、彼だって、反応がないのは覚悟してたんだろ。まさか、本気で、自衛隊員が立ち上がると思ってたのかな」<br>「事前に新聞社に遺影を配ってたから、覚悟してた、って言う人もいますけどね、俺は、多分最後まで信じてたと思うんですよ。自分が本気を出して行動すれば、もしかすると、世界は動くんじゃないかとね、期待していたと思うんですよ」<br>「でも、駄目だった」<br>「『やっぱ駄目かあ』とは思ったんじゃないですか。で、自決ですよ」<br>「西嶋には、三島由紀夫の気持ちがわかるんだ？」<br>「そこまでして何かを伝えようとした、という事実が衝撃なんですよ。しかも伝わらなかったんだから、衝撃の二乗ですよ。別に俺は、あの事件に詳しいわけじゃないですけどね、きっと、後で、利口ぶった学者や文化人がね、あれは、演出された自決だった、とか、ナルシストの天才がおかしくなっただけ、とかね、言い捨てたに違いないんだけど、でもね、もっと驚かないといけないのはね、一人の人間が、本気で伝えたいことも伝わらない、っていうこの事実ですよ。三島由紀夫を、馬鹿、と一刀両断で切り捨てた奴らもね、心のどこかでは、自分が本気を出せば、言いたいことが伝わるんだ、と思ってるはずですよ。絶対に。インターネットで意見を発信している人々もね、大新聞で偉そうな記事を書いている人だって、テレビ番組を作っている人や小説家だってね、やろうと思えば、本心が届くと過信しているんですよ。今は、本気を出していないだけで、その気になれば、理解を得られるはずだってね。でもね、三島由紀夫に無理だったのに、腹を切る覚悟でも声が届かないのに、あんなところで拡声器で叫んでも、難しいんですよ」<br>　僕はそれから、三島由紀夫の声が誰にも伝わらなかったのは、国連が反対しようと、世界中の世論が非難しようと、大国が戦争を起こすのを阻止できないどうしようもなさと似ているな、とも思った。<br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11987176601.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 11:28:25 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑦</title>
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<![CDATA[ 「で、男の中の男、冷血漢の中の冷血漢である北村青年はどうするつもりなわけ？」<br>　翌々日の日中、僕は仙台市街地の、鳩麦さんの働くブティック前で、鳩麦さんと立ち話をした。<br>「どうするつもりも何も」僕は言い淀みながら、彼女の背後の店内に目をやる。水色のＴシャツを広げている女性がいた。「客はいいの？」と小声で訊くと、「それどころじゃないから」と彼女は胸を張る。<br>「どうすれば雪が降るか、僕には分からないんだ」<br>「雪？」<br>「砂漠に雪を降らせたいんだよ」<br>　そこですぐに、何を訳の分からないこと言ってんの、と言い出さないところが鳩麦さんの長所だ。そして、自分で勝手に空想を広げ、的外れなことを考え出すのが短所だった。彼女はしばらく黙ってこちらをじっと見ると、「北村君たち、学生は」と指を立てた。「学生は、小さな町に守られているんだよ。町の外には一面、砂漠が広がっているのに、守られた町の中で暮らしている」<br>「鳩麦さんの言うその、砂漠というのは、いわゆる、社会ってこと？」<br>「社会って言っちゃうと、格好悪いじゃない」鳩麦さんは笑う。「町の向こう側に広がる、砂漠のほうがイメージが近いよ」<br>　僕は素直に、想像してみる。堅牢な壁に囲まれた、町をだ。家々はそれぞれに気取った外装で、色とりどりではあるけれど、どれも似通っている。無菌に保たれた、無機質な町だ。その中で、住人である学生は知った顔をし、大人びて、「町の外はこんな感じだ」「しょせん砂漠なんて」と得意げに話している。砂漠に足を踏み出したこともなければ、砂漠のひどさを知りもしないくせに、だ。<br>「町の中にいて、一生懸命、砂漠のことを考えるのが、君たちの仕事かもよ。言っておくけどね、砂漠はひどい場所だよ！」<br>　そうか、と気づく。鳩麦さんはすでに、砂漠に立っているのだ。<br><br>・・・<br>　鳥井は笑ってはいたが、無理をしている。僕や南も無理をしていたし、いつもと同じ冷たい表情をしている東堂だって、無理をしていた。だから、砂漠に雪が降りました、なんて楽天的なことは決して言えない。でも、こうやって無理をし合っている状況も、悪くはなかった。それから僕は、僕たち五人の平和を取り戻すのでさえこんなに大変なのに、町の外側に広がる、砂漠のことなんてとてもじゃないけど面倒見切れないな、と思った。<br><br><br>砂漠/伊坂幸太郎<br>
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11987168184.html</link>
<pubDate>Sun, 08 Feb 2015 11:02:36 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑥</title>
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<![CDATA[ 　僕の頭には、広大な、赤とも白ともつかない地面が延々と広がる、砂漠の光景が浮かんでいた。鳥井の今の心の内は、からからに干からびた砂漠そのものだ、と思った。果てがなく、精神が乾燥し、方向感覚を失っている。砂漠には、スーパーサラリーマン行きの標識など立っていないし、水場がどこなのか、夜を凌ぐ場所がどこなのかも分からない。鳥井はベッドの上で、無表情のまま、仰向けになっていたが、きっと同時に、砂漠に座り込んで、茫然とした表情で、肩を落としているのかもしれない。これからどう歩きだせばいいのか、途方に暮れている。<br>「果たして」と考えずにはいられなかった。果たして、この、鳥井の砂漠を潤すことができるのだろうか。<br>　西嶋の顔を見やる。使命感と意地が漲ってはいたが、策はなさそうだ。「ペソコン」では、砂漠に雪は降らない。<br>　僕だち四人は、根競べをするかのごとく、三十分も無言でそこに座っていたが、鳥井は一度もを見こちらを見なかった。痛みのためか、包帯が巻かれた左腕を何回か触った。<br>　鳥井のマンションを後にすると、欠けた月が見えた。<br>「なあ、西嶋。中東で戦争が起きてるし、世界は温暖化で大変なことになっているのに、僕たちは目の前の危機すら、解決できない」と肩をすくめた。<br>　すると西嶋は心外だ、と言わんばかりに、「こんなのは危機なんかじゃないですよ」<br>と答えた。「怒られますよ」<br>　誰に怒られるのかは、訊ねなかった。<br><br>砂漠。伊坂幸太郎
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11986639653.html</link>
<pubDate>Fri, 06 Feb 2015 23:51:02 +0900</pubDate>
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<title>砂漠⑤</title>
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<![CDATA[ 　旗を掲げて、募金を呼びかける中年男性たちの姿も目に入った。「遺児」という言葉は見えるが、何の遺児なのかは分からなかった。募金箱を首から下げて、道行く人に声をかけている。以前、ニュースで見た、募金を装った詐欺師の話を思い出す。そのせいなのかは分からないが、募金をする人間はいなかった。お金を出した結果、それが悪人の手に渡る、というのでは、気持ちはよくないし、馬鹿を見た気分にもなる。僕も、財布を取りだす気にはなれなかった。<br>・・・<br>「それなんですよ」西嶋が声を大きくする。「さっきの募金を同じですよ。関係ないんですよ！歴史とか世界とかね。今、目の前にある危機、それですよ。抗生物質をあげちゃえばいいんですよ、ばんばん。みんなに広めちゃえばいいじゃないですか。あのね、目の前の人間を救えない人が、もっとでかいことで助けられるわけないじゃないですか。歴史なんて糞食らえですよ。目の前の危機を救えばいいじゃないですか。今、目の前で泣いてる人を救えない人間がね、明日、世界を救えるわけがないんですよ」<br><br>砂漠・伊坂幸太郎
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11986639457.html</link>
<pubDate>Fri, 06 Feb 2015 23:50:23 +0900</pubDate>
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<title>砂漠④</title>
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<![CDATA[ 「ああいう、マネキンのを一揃い買っていったら、恥ずかしいですかね?」<br>　僕は、マネキンに目をやる。紺色のジャケットに白い綿のパンツ、それから中には薄い茶色のシャツ、という服装になっていて、派手さはないけれど、いい組み合わせに思えた。<br>「全然、恥ずかしくないと思う」鳩麦さんは自然に微笑んだ。「だいたい、外に出たら、他の人はマネキンそのままの服とは気づかいないんだし」<br>「ああ、そうですか」西嶋はむすっと答えた。<br>「ああいうマネキンが着ているのをそっくりそのまま買うのって、普通は、店員に対して恥ずかしい、って思うんだけど」鳩麦さんは笑いを洩らした。<br>「普通はそうだよなー」と鳥井も同意する。<br>「今回みたいに、マネキンのを一揃い買ったら恥ずかしいですか、なんて、堂々と聞いてきた人ははじめてだよ」<br>「そこが西嶋の偉いところなんだ」僕は言った。<br>西嶋が試着室に入ると、「面白いお友達だね」と鳩麦さんが目を細めて、言ってきた。「堂々としている」<br>彼女のその評価は、西嶋の本質を言い当てていると僕は感じた。<br>「格好悪いけど、堂々としているんだ」鳥井は自慢げだった。「見苦しいけど、見苦しくない。西嶋を見てると、何でもできる気がするんだよなー」<br>「西嶋には涯てがない。そんな感じだ」僕が思いつきで口にすると、鳩麦さんが、「ああ」と歯を見せた。「坂口安吾にそういうのあったね。桜の下に涯てはないって」<br><br>砂漠・伊坂幸太郎
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<link>https://ameblo.jp/leiunlibro/entry-11986639133.html</link>
<pubDate>Fri, 06 Feb 2015 23:49:30 +0900</pubDate>
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