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<title>酒場人生覚え書き</title>
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<description>太宰治によると津軽には七つの雪が降ると言うが、酒場にも心盃を満たす七つの酒がある。楽しい酒・悲しい酒・恋の酒・愁い酒・勇気凛々の酒・狂い酒・やけ酒････それぞれに彩られた酒場人生の小話集である。</description>
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<title>続・続　人間機雷　３７９　</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（１５） 坂の下ににじむ家々の明かりがみえる窓際に座り、飲み干した茶碗の底を見つめながら、過ぎ去ったその歳月の流れをたどっていた秀敏に「秀ちゃんきて」と聴き取れないほどの小声が聞こえた。我に返ったように振り返ると、小さな常夜灯の薄ぼんやりした明かりの中に、肌襦袢になった妙子が横たわって居るのが見えた。秀敏のどことなく躊躇いがちの思考がとまり、長い禁欲生活から解き放された欲情が生きもののように全身を駆け巡り、動悸だけが頭の中で鳴り響いた。秀敏は妙子に添い寝をす
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<dc:date>2020-04-06T09:56:21+09:00</dc:date>
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<title>続・続　人間機雷　３７８　</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（１４）酔い覚めの喉を潤す冷酒はおいしかった。妙子が庇護を受けていた鬼塚の怒り狂った怒声に、秀敏の後を追うようにして浅草を出奔した後、その尻拭いのため小津政吉が一肌脱いだことなど、秀敏はもちろんのこと妙子でさえ知るよしもないが、そのときの政吉の押さえがなかったら、あるいは横浜の“あいざわ”でさえ安息の地にはならなかったかもしれない。その夜、二人が一夜のねぐらと決めたのは、東ヶ丘からほど近い野毛坂の成田山横浜別院の裏参道になっている路地にある旅荘“野毛坂”であ
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<title>続・続　人間機雷　  ３７７</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（１3）  「深味にはまっちゃいけない････なんて、どうしてそんな他人行儀なことが言えるの？悲しくなるからそんな言い方やめてよ。ずっと前にも言ったけど、ママゴト遊びをしている頃から“私は秀ちゃんのお嫁さんになるんだ”ってずっと思っていたの。だから秀ちゃんが予科練に志願して出征したときは、本当に悲しくって何日も泣き暮らしていたのよ。戦争が終わってあの焼跡で、秀ちゃんに会えたときのうれしさは、誰にも分かってもらえないほどだった。あの時にも子供じみていたかもしれ
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<dc:date>2020-03-23T09:34:11+09:00</dc:date>
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<title>続・続　人間機雷　  ３７６</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（１２） ４月も終わろうとしているが、咲き残った桜の花びらが、妙子の髪に舞い落ちてきた。フト我に返ったように「妙ちゃん、中にはいろうか」と秀敏が言った。「待って、もう少しこうしていたいの」妙子はそう言うと、秀敏の首に巻いた手に力を込め、唇をもとめてきた。柔らかく湿った唇に言葉を奪われながら、秀敏は遠い昔に忘れてきたような懐かしく切ない想い出に包まれたが、それがいつのことだったかさえ思い出せなかった。この夜更けに水面を覆い隠すほどの夜霧の中を、出航する外国航路
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<title>続・続　人間機雷　３７５　</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（１１）「ガキじゃああるまいし、オメエたちに手を引かれなくたって帰えれるぜ。そんなことよりこっちえ来て一杯えのみな。今夜はなあ、めでたさが半分と俺の悲しさが半分の酒盛りなんだ。まあ、お前らに言っても分かるめえがな。さあ飲め」「せっかくのお言葉ですが、親分が心配して東ヶ丘の“あいざわ”にいるはずだから迎えに行ってこいって言われたものですから、頭をお送りしたら親分に報告しに戻ります。お酒を頂くのは次の機会にして頂きます」「そう固えこと言うな。この俺が飲めって言っ
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<title>続・続　人間機雷　３７４　</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（１０）卓をつなげ席を作ると、良三はのりきらないほどの料理を作って並べた。若い頃には京料理の老舗で修行したというだけあって、素材は簡素でも心を込めた品々がその夜の酒席を盛り上げた。白魚の卵とじや韮の味噌和えなどの小鉢の他、今が旬の蛤鍋や嫁菜を添えた鱒の味噌漬は数日前から仕込んだものだろう。別の大皿には薬味をのせた鰹の刺身がある。「よお、親父さんもう料理はいいから、こっちにきて一緒に飲もうぜ。酒もいちいちお燗なんていらねえから、一升瓶ごとここえ並べちまいな。今
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<title>続・続　人間機雷　  ３７３</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（９） 「国松さん、本当にありがとうございました。ひとりではここに来られる勇気もなかったです」「そうだろうと思ったから、こうやって引っ張ってきてやったんじゃあねえか。全くだらしねえ男だなあ。ぼーっと突っ立っていないでなんか言ったらどうなんだい。えっ、秀敏ちゃん」「妙ちゃん。不実な男とさげすんでいたろうね。申し訳なかった。許してくれ」妙子に向かって頭を下げた秀敏が、ぎこちなく言った。「不実なんて････思っているわけないじゃない。ズーッと待ってたわ」唇をかみし
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<title>続・続　人間機雷　  ３７２</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（８） 「おお、大迷惑だ。迷惑ついでに今夜俺と“あいざわ”につきあってくれ。いやとはいわせねえぞ」白神一家の若頭武井国松の突然の強要が、秀敏のなかに呼び覚ましたのは､六年前に封印したはずの妙子に対する恋慕の情だった。                                       東ヶ丘の住宅街にある小料理屋『あいざわ』は、昔日のままの佇まいであった。昭和２０年９月２０日、予科練から復員したばかりの秀敏を、実の親のように歓待してくれたのも、その年
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<title>続・続　人間機雷　３71</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（７） 白神一家の木村京介から浅草小津組の小津政吉に宛てた手紙を懐にした秀敏は、浅草に戻ろうと桜木町駅に向かった。上りの列車が出発するまで１時間ほど間がある。所在なく雑踏の中にたたずんでいるとき、なぜかそのなかに６年前の自分の姿を見た。予科練で支給された夏服に戦闘帽を被り、大きな背嚢を背負っている。まだ晩秋には間があるというのに、心の中には木枯らしのような冷たい風が吹き荒び、歯の根も合わないほどの戦慄に全身が震えた。太平洋戦争の末期、戦況の危惧の中で天皇陛下
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<title>続・続　人間機雷　３７０</title>
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第七章 蒼穹遙か一  巨星落つ１　情縁（６） 「洗いざらい話したんじゃないの？」「秀ちゃんが命をかけて戦おうとしていたアメリカ兵と結婚したうえ捨てられて、芸者に身を落としてるだけでも恥ずかしかったのに、金で身体を許しているダンナがいるなんて言えなかった。ましてはじめて身体をあわせた後は、その人のことは言えなかった････」「お母さんも知らなかったわ････そんなダンナさんがいたなんて。置屋の女将には迷惑かからないの？」 「浅草のお母さんのスポンサーでもあるから、関わりは出てくると思うの････」
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