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<title>Love story</title>
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<description>航太と寧々の１６年間</description>
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<title>⑥</title>
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<![CDATA[ <br><p>梅雨も明け夏も本番に差し掛かろうという７月。</p><br><p>それぞれの友達を連れて海へ行こうと寧々と航太は企てた。</p><br><p>寧々が真っ先に指名した夏実は化粧品会社の同僚で彼女より1つ年上の面倒見の良いお姉さんのような存在だった。</p><br><p>夏実は寧々のモデルとしてのファンでもあり、いつも夏実ちゃん夏実ちゃんと甘えて自分にまとわりついてくる寧々をとても愛くるしく思っていた。</p><br><p>もちろん航太との事も2人が付き合い始める前から聞かされていたけれど、実際に航太と顔を合わせると妹をとられたみたいで恨めしい気分になった。</p><br><p>その日は前日の晩から航太の大学時代の友人の昇平を含め、４人で食事をして。そのまま寧々は夏実の家に泊まり、次の日の朝から海へくり出す予定だ。</p><br><p>パジャマパーティ用のお菓子と甘い飲み物を航太に買ってもらい、じゃ夏実ちゃん、寧々ちゃんをよろしくな。と言い残して男達は去って行った。</p><br><br><p>「うち狭いけどごめんね。」</p><br><p>「なんで！全然全然！一人暮らしってだけでもカッコイイもん！そんなの関係ないよ。」</p><br><p>夏実の家は綺麗に手入れされた雑居ビルのようなマンションの最上階で古いエレベーターを降りると目の前には夜景が広がり</p><br><p>初めて訪問する友人を招き入れるのを気恥ずかしそうに慣れた手つきで鍵を開け、どうぞと言った。</p><br><p>「カッコイイなぁ。夏実ちゃんが大人の女に感じるよぉ～。」</p><br><p>「なに言ってんの。もうちょっといい家なら良いんだけどね。」</p><br><p>「十分だよ！私は半身浴できればそれでいい。」</p><br><p>「あ。言うの忘れてた。うちトイレとお風呂が一緒のユニットバスなんだけど大丈夫？見てみ。」</p><br><p>｢……これはお湯を入れたらどこで体を洗うの？」</p><br><p>「あはははは！ちがうよ。先に半身浴してお湯を流してからバスタブの中で洗うの。」</p><br><p>「そうなの！！ほんとだ！それなら問題ないね！すごいすごーい！じゃお風呂掃除しなきゃ！夏実ちゃんスポンジどこ？」</p><br><p>そう言って、おもむろに寧々は機嫌良く風呂掃除を始めた。</p><br><p>夏実は片眉を下げて、初めて家に来るなり風呂掃除をしている寧々を変わった子だとは思いながらも、微笑ましい眼差しを送らずにはいられなかった。</p><br><br><p>次の日の朝、バスルームから寧々の悲鳴がした。</p><br><p>驚いてどうしたのか尋ねると、毎月やってくる憎いやつがやって来てしまったのだ。</p><br><p>航太と2人で買い物に行って色々と揃えたり準備したのを自分が全部台無しにしてしまう気がして唖然としている。</p><br><p>「どうしよう。」</p><br><p>「大丈夫だよ。水着だけ着て海に入らなかったらいいだけじゃん。心配ないよ。」</p><br><p>「うん…。」</p><br><p>おもちゃを取り上げられた子供のような顔で寧々は頷いた。</p><br><p>航太と昇平が迎えにきて、真っ先に寧々は航太の膝に座り脇の下に顔を埋めた。</p><br><p>昇平が少し驚いてはいたが、夏実が上手くフォローして航太にあとはよろしく、とアイコンタクトを送った。</p><br><p>飲み物を買いに入ったコンビニでも航太のＴシャツを掴んで離さない寧々が小さな声で</p><br><p>寧々今日海入れないの。女の子になっちゃったの。ごめんね。と半べそをかいて言うので、</p><br><p>じゃ俺も入れへんわ。とだけ言って寧々の頬を撫でて笑った。</p><br><br><p>到着した昼前の須磨海岸は早々と夏気分で盛り上がっている若者達でごった返していた。</p><br><p>４人も場所を確保してシートを広げて、熱い熱いとはしゃいだ。</p><br><p>かき氷が食べたいという航太は寧々を連れて、昇平と夏実にシートの留守番を頼んで、ずらりと並んだビーチハウスの真っ白な店に腰掛けた。</p><br><p>「くぅ～！冷たっ！うまいなぁ。」</p><br><p>「うん！ウマイ！」</p><br><p>「やっと笑った。」</p><br><p>笑みを含みながら言う航太に寧々はなんだかちょっと恥ずかしくなった。</p><br><p>「朝はどうしようかと思ったけど、今は笑ってるからよかった。今日は昼寝にするか。」</p><br><p>やっぱり航太はピンチからも救ってくれるヒーローのような気がした。</p><br><br><br><p>シートに戻ってきてフリルのついたバスタオルをひらひらさせている航太と寧々をおいて、昇平と夏実は海に入っていった。</p><br><p>バスタオルに包まったままの寧々が更衣室に行ってくるからとそれを預けて航太を一人にした。</p><br><p>寧々のフリルのバスタオルを肩にかけて待っていると、たくさんの好奇の目が航太を見ながら通りすぎていく、おそらく小学校に入ったばかりくらいの男の子が母親に、あのおにいちゃん変なの、と話す声がする。</p><br><p>その話声やたくさんの視線を航太は誇らしく思った。自分は寧々のためなら誰にどんな風に思われても構わない。彼女の一部に自分がなれるのなら自分自身なんて二の次でよいのだ。</p><br><p>戻って来た寧々を迎え入れながら、彼女は自分をいい男に磨き上げさせてくれる最高の恋人だと思った。</p><br><br><p>シートにバスタオルを広げて2人で寝転がったらいつの間にか眠ってしまった。</p><br><p>それを見つけた昇平と夏実はあまりにも仲睦まじい姿をそっとするようにビーチハウスに出掛けた。</p><br><p>寧々が目が覚ますとほんの少しだけ夏の太陽が傾いたような気がした。</p><br><p>航太が目を覚ました時のために冷たい飲み物とフライドポテトを大急ぎで買いに行って</p><br><p>冷たいグレープのソーダを飲みながら手元にあったシャボン玉を砂浜に向かって吹いた。</p><br><p>少しオレンジ色がかった砂浜を心地よい浜風に虹色のシャボン玉が舞っていて、遠くからＢｅｙｏｎｃｅとＪＡＹ－ＺのＴｈａｔ’ｓ　Ｈｏｗ　Ｙｏｕ　Ｌｉｋｅ　Ｉｔ　が聞こえる。</p><br><p>う～ん。という声とともに航太が目を覚ました。</p><br><p>「きれいやな。」</p><br><p>「うん。」</p><br><p>そう言って、寧々の腹に腕をまわして自分にもたれかけさせる。</p><br><p>シャボン玉と砂浜をぼんやり眺めながらきっとこれを幸せっていうんだと寧々は思った。</p><br><br><p>海もそれぞれ存分に楽しんで昇平と夏実を送り届けたあと、寧々の家の近くのヨットハーバーを散歩していた。</p><br><p>日の暮れた海に照明の光がゆらゆらしている。それを寧々が眺めようとしても航太がやきもちを妬くかのように寧々の顔に覆いかぶさった。</p><br><p>「愛してる。」</p><br><p>航太の気持ちが触れられるかのように分かる気がした。寧々だって航太が愛しくてたまらない。だけど甘い言葉は信じない。その空間を愛しむからこそ守れない約束になる可能性のある言葉は使わない。</p><p>それらは恋が自分のもとを去ってからも再び傷付けるのだ。</p><br><p>自分自身を全部捧げてしまいたくもなる。すべてを解決してくれるヒーローなんていない事なんか知っているというのにこれまで自分が積み上げてきた経験をすべて投げ捨ててしまいそうになる。</p><br><p>「俺は一生寧々ちゃんのもの。」</p><br><p>寧々は航太から体を離した。</p><br><p>「聞きたくない。言ったでしょう。甘い言葉は信じないの。寧々もこたちゃんを愛してる。それだけが真実でしょ？」</p><br><p>「心配ない。寧々ちゃんが望む限り俺はそばにおる。」</p><br><p>「ねぇ　こたちゃん。信じない。」</p><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/m0611a143/entry-12069154630.html</link>
<pubDate>Thu, 03 Sep 2015 21:02:11 +0900</pubDate>
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<title>⑤</title>
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<![CDATA[ <br><p>午前１時過ぎに航太は車を走らせている。</p><br><p>寧々は航太に帰らないでなどとは言わない。</p><br><p>自分の感情と欲求を同時に言葉にする事は寧々にとって京都大学に入学するよりも難しいのだ。</p><br><p>彼女は言う、家に帰ろうが一緒にいたいと思うかは自由よ。でも好きな女を目の前にしてとっとと家に帰っちゃう奴に魅力は感じないわ。</p><br><p>オートマチック車を運転する左脚はとくに忙しくはないので、いつも寧々の行儀良く揃った脚が掛けられ、航太の首元までぴったりと接着剤でひっつけたかのように彼女は満足そうにくっついている。</p><br><p>ハンドルを握る航太の手をぼんやり眺めているかと思えば、ふと車外の人間と目が合えばクスリと笑って片目を瞑るその様はやんちゃなベイビーガールそのものだった。</p><br><p>寧々と航太は人がいない真夜中のヨットハーバーや駐車場に車を停めてよく愛し合った。</p><br><p>普通の女の子なら抵抗のある車の中での情事も寧々は何の躊躇いもなく愛情を注いだが、彼女の体が他の誰かに見られてしまったり、むしろこんな愛し方をして嫌われてしまうのではないかと航太はひやりとしながら尋ねると</p><br><p>「見たいなら見てくれて構わない。だってマキューシオも言ってるじゃない。目は見るためにあるのよ。見ればいいわ。それに愛し合うのにラブホに行くなんて嫌だ。そのためにシャワー浴びて勝負下着なんか着ちゃって、あ～やだやだ。寧々はね、愛したいと思ったその時の空間を大事にしたいの。場所なんて気にしない。それにその人が１日を過ごしたなりで愛し合う汗や体の匂いは最高に愛おしいの、その汗が混ざり合う時間が好きよ。綺麗にシャワーなんか浴びてちゃ味わえないんだから。」</p><br><p>彼女にはいつも独特の美学があり、それは航太を魅了するものでもあった。</p><br><br><p>車を停め、小さい子供のように自分の胸元でぐずぐずと甘える寧々は彼にとってこの上なく愛おしく、守ってやらなければという男心を掻き立てる。</p><br><p>「寧々ちゃんどうしたん？一緒におるやん。何か嫌？」</p><br><p>「嫌ちゃうもん。」</p><br><p>そう言って、航太の胸に顔を埋めている。</p><br><p>「もう可愛いなぁ。俺は寧々ちゃんと結婚するからずっと一緒やで。」</p><br><p>「こたちゃん。」</p><br><p>「ん？」</p><br><p>「そんな甘い言葉は信じないの。多くは望まない。そばにいたいの。」</p><br><p>「俺の気持ちがそこら辺の男と同じやと思ってるんか？俺を甘く見てるな？」</p><br><p>「わからん。そんなん。この目で見てないことは信じない主義なの。」</p><br><p>「わかった。まぁ見ときや。どこまでこの人はそばにおるんやろって思わせたるから。後悔するなよ。」</p><br><p>にやにやした笑みを浮かべて嬉しそうに寧々を愛し始めた。</p><p><br><br>2人は毎日寝ている間以外はずっと連絡を取っていた。</p><br><p>それだけでなく、寧々が体調を崩せば航太は仕事を休んで側にいたし、寧々が女友達と遊びに行った帰りは必ず迎えに来て彼女の為にドアを開けた。</p><br><p>寧々もまたやきもち妬きだった航太の理不尽な要求を全て受け入れていた。どこに出掛けても子犬のように航太の側から離れることはなかった。</p><br><p>そしてなによりお互いを大切に扱っている様子は周囲のカップルたちの憧れであり、どうしてあんな風に自分は扱われないのかと恋人に激怒しては心ない言葉を言われ、泣きながら寧々に電話を掛けてくる女の子も少なくなかった。</p><br><p>ただ、いくら彼女が寛大だとはいえ、航太はメッセージに５分間以内に返信しなければ浮気をしているのではないかと毎回言い掛り、その度に返信できなかった理由を説明しては謝っている姿を友人達からは不憫にしか思えなかったが</p><br><p>実際に人前に出る仕事をしていた寧々にとっては航太のやきもちも理解出来なくはなかった。<br><br><br><br></p>
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<link>https://ameblo.jp/m0611a143/entry-12034584513.html</link>
<pubDate>Sat, 08 Aug 2015 01:12:30 +0900</pubDate>
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<item>
<title>④</title>
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<![CDATA[ <br><p>少し緊張しながら寧々は普段よりも多めの荷物の準備をする。早く化粧もしなくては仕事を終えた航太が迎えに来る。何度も時計を見ながら誰もいない家の階段を上ったり下りたり走り回る。</p><br><p>付き合って最初の週末は一緒に過ごしたい、と航太の申し出にどきりとしたけれど。ここで動じてなるものかと申し出を受け入れた。</p><br><p>バージンじゃあるまいし自分だって少なくはない経験のあるいい女だと奮起したものの、２１歳の寧々にとってのいい女の定義は男性経験が豊富で男心をよくわかっているという、つたない解釈だけで</p><br><p>マスカラを塗る手元が震えている彼女よりもバージンの方が余程腹をすえているのではないだろうか。</p><p><br></p><div><br></div><br><p>ベッドの上の言葉はすべてが嘘である。</p><br><p>寧々の頭にはそう刻まれていた。</p><br><p>人を愛した事がないわけではなかったがメイクラブというセックスに愛情を織り交ぜる手段をまだ知らなかった。</p><br><p>もちろんそれまでにもたくさんの男達が丹念に彼女を手に掛けてきたけれど “丹念に扱われること” しか知らない寧々にとってそれらは好意の種類ではなく、それぞれがいい男だっただけにすぎない。</p><br><p>どんな甘い言葉も信じたことはないし、自分の言葉も信用を必要としなかった。</p><br><p>ただ、月明かりが差し込む部屋の天井を見ながら彼には嘘をつかないでいようと決めた。</p><br><br><br><p>心地よく航太が波の音を聞きながら目を覚ますと寧々は白く縁取られた明るい窓際で化粧をしていた。</p><br><p>大きないびきが止まったのに気付いて、あどけない素顔で頬笑みながら、おはようと航太にキスをする。</p><br><p>彼は寧々を引き寄せてベッドに寝転がる。</p><br><p>「波の音聞こえるね。」</p><br><p>「な。最高やわ。」</p><br><p>「舞子まで来た甲斐があったね。窓の外すっごい綺麗だよ！」</p><br><p>寧々がはしゃぐので覗いてみると瀬戸内海の美しい海が日差しに照らされてきらきらと光っている。</p><br><p>隣でにこにこしながら海を眺めている彼女を腕の中に入れてやると恥ずかしそうに微笑んで顔を逸らした。</p><br><p><br></p><p>須磨海岸でピクニックしながらブランチを食べて</p><br><p>寧々がよく遊びに来ていた神戸元町をのんびり散策した。</p><br><p>その最中、ふと航太は彼女が大きな鞄を持っていることに気付いた。</p><br><p>「寧々ちゃん。鞄に俺の財布とキーリング入れてくれへん？」</p><br><p>快い返事をしてそれを入れて再び鞄を肩に掛けようとしたところ、航太はその鞄を自分の肩に掛けた。</p><br><p>「あれ？」</p><br><p>「俺の入れてもらってるから持つよ。」</p><br><p>そう言って彼は優しく寧々を言い包め、その言葉通りの意味しか解っていない寧々はますます航太の口元を緩める。</p><br><p>ヴィンテージ家具が無造作に並び、ホールの外壁はすべて開け放たれ、笠の大きなスタンドランプが路地にまで顔を出しているカフェを指差して</p><br><p>梅雨の合間の強い日差しから隠れるように、店の屋根の内側の日陰に置かれた大きなソファに座って寧々は喜んでいる。</p><br><p>薄い茶色の髪に透けるように白い肌、大きな瞳にすらりと高い鼻、それらの卓越した美しさとは対照的に標準的な体型よりもひと回り細く小さな身体はまるで人形のようで、彼女の不思議な雰囲気はブルネットの少女を思わせる。</p><br><p>あまりに美しいその色彩や容姿は誰もの視線を集め釘付けにし、航太もその姿に会話も忘れて見惚れてしまった。</p><br><p>「どうしたの？」</p><br><p>「うん？」</p><br><p>「こたちゃん？」</p><br><p>「あ、うん。」</p><br><p>「ねぇ。」</p><br><p>「ほんまかわいいな。」</p><br><p>なにそれと言い、柔らかい髪を揺らして寧々は笑った。</p><p><br><br>２人は毎日一緒に過ごした。</p><br><p>互いの友達は全員紹介し、どこへ行くのも何をするのも一緒。</p><br><p>寧々が友達と遊んでいれば仕事を終えた航太が迎えに来て、きちんとその友達を家まで送って行き、</p><br><p>彼女が一緒にいたいと駄々をこねる日は朝まで必ずそばにいた。</p><br><p>寧々が望む事は全部叶える。と航太は言い</p><br><p>あなたの行動が私の言葉ひとつで変わるのなら、もっといい男にしてあげなくちゃね。と寧々は言い</p><br><p>２人の中でそのルールは常に成立していた。</p><br><p>当時、航太が暮らしていたのは会社の寮で、食事が美味しくないとよく不満を言っていたので、</p><br><p>寧々は毎日彼の夕食に弁当を作り、それを食べ終えると彼は寧々の膝枕で心地よくいびきをかいた。</p><br><p>ベンチシートになった車の運転席と助手席に横たわり、膝の上でうとうとしている航太の髪を撫でながら寧々はぼんやり外を眺めて微笑んだ。</p><br><p>「今日も平和だ。安心。」</p><br><p>「安心か。うん。よかった。」</p><br><p>「ずっと安心？」</p><br><p>「ずっと安心。」</p><br><p>「なんで？」</p><br><p>「俺は寧々ちゃんと結婚するから。ずっと安心。」</p><br><p>結婚という言葉の意味が寧々にはまだよくわからなかったけれど、男の人は結婚って言葉が好きなんだと思うことにした。</p><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/m0611a143/entry-12033933142.html</link>
<pubDate>Wed, 03 Jun 2015 19:47:03 +0900</pubDate>
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<item>
<title>③</title>
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<![CDATA[ <div><br></div>「コタが再婚⁈ ありえない！！」 <div><br></div><div>iPhoneの通話アプリから早恵の驚きつつ怒った声がする。<br><div><br></div><div>彼女と寧々は高校以来の親友で航太と寧々が友達だった頃から側で見守ってきた。<br></div><div><br></div><div>「相手はフッツーの人なんだって。やりくりも上手で気立てのいいフッツーの人だって。私と大違い。」</div><div><br></div><div>「確かに大違い。でもさぁ、誰が見ても寧々が全て～！だったのに再婚って。なんかコタ見損なったわ。どうせ寧々に別れてって言われたら別れるくせにね。」</div><div><br></div><div>「私がぁ？言うわけないじゃん。欲しけりゃあげるよ。」</div><div><br></div><div>「さすが。強いね～！私はこんなの平気でいられないと思うなぁ。なのに寧々は何があっても絶対クールで冷静だよね。」</div><div><br></div><div>「だってこの恋、私の勝ちだもん。」<br></div><div><br></div><div><br></div><div>そうだ。私の完全な勝ちだ。</div><div><div><br></div><div>会う前から再婚したと本人から聞いて知っていたけれど彼と会うと決めたのだ。</div><div><br></div><div>目の前で寧々の好きなグレープタイザーを飲みながら嬉しそうに見つめている。</div><div><br></div><div>「こたちゃん。ほんと寧々大好きだね。」</div><div><br></div><div>「もちろん。好きにきまってるやん。」</div><div><br></div><div>思わず寧々の片眉が下がり、航太を抱きしめてしまいたい衝動に駆られるけれど、しない。<br></div><div><br></div><div>「だよね。こたちゃんは一生寧々大好きだもんね～。」</div><div><br></div><div>「さすがの自信やなぁ。」</div><div><br></div><div>「間違ってるなら訂正するけど。」</div><div><br></div><div>「間違ってないよ。その通りやからな。」</div><div><br></div><div>伸びをしながら自分の負けだと言わんばかりに航太は言葉を落とす。その様はぶっきらぼうに見えていつだって優しく寧々を包み込みながらにっこりと敗北する。</div><div><br></div><div>そうやって航太はいつも寧々の牙を抜くけれど、彼女から牙を抜いてしまうのは猫の髭を切ると真っ直ぐ歩けなくなってしまうの同じで寧々を立ち上がれなくするのだ。</div><div><br></div><div>「俺の負け。いつも正しいのは寧々ちゃんやな。」</div><div><br></div><div>「あ～。なにそれ卑怯者。でも、ねぇこたちゃん。あなたがいつも負けなら、私は永遠に勝ち続けてあげる。」</div><br></div><div><br><p>撮影が早く終わった金曜日、ティーンエイジャーの頃から遊んでいるクラブのカウンターで寧々はＤＪ兼スタッフの１人とお喋りにかまけていた。</p><br><p>みんな彼女を高校生から知っていたから顔を見れば「寧々いくつになった？」と尋ねた。</p><br><p>知っていたけれど、親しく話すようになったのは最近のお喋り相手は隙あらば寧々をデートに誘っている。</p><br><p>「へぇ。今からなら空いてるけど。」</p><br><p>「また意地悪やなぁ。俺仕事やん？あかんやん？」</p><br><p>「すっごい残念～！またね♪」</p><br><p>彼にクランベリージュースを入れさせてカウンターからにっこりと手を振った。</p><br><p>赤い氷の浮かんだ飲み物を口に含みながら、誰と遊ぼう。そう思考を動かすとふと航太の顔が浮かんだ。</p><br><p>前に会って以来、半月程経っている。とくに連絡も取っていなかったけれど車の好きな航太とドライブはセットのようなものだと寧々は考えていた。</p><br><p>ドライブも悪くない。そう思い、航太に連絡した。</p><br><p>当然のように来てくれると言う。他の男達と違って、いいわけせずに必ず飛んで来てくれる彼は寧々にとってある種の信頼を満たす相手でもあった。</p><br><p>車が近くに停められなかったと歩いて寧々をクラブまで迎えにきた航太はLAブランドのTシャツの重ね着にハーフパンツとスニーカーを合わせてニットキャップを被っていて、小柄なわりには筋肉の付いた体をうっすらと垣間見せていた。</p><br><p>なにより似合いのニットキャップを被った航太の雰囲気は寧々の鼓動を早めた。</p><br><p>普段はお喋りでもない２人は車を走らせながらとくに話すわけでもない。</p><p><br></p><p>その日は寧々も頑張って盛り上げようという気も起こらず、気ままに窓の外を眺めては心地良く静かな車の中で航太との空間に微睡んでいた。</p><br><p>寧々が行きたいと言う先はユニバーサルスタジオがある桜島の向こうにあって、今は野外フェスの会場に夏はなっている舞洲。</p><br><p>海沿いに大きな公園があって、友達が見せてくれたビデオを観て寧々も行ってみたかったのだ。</p><br><p>ユニバーサルスタジオを通り過ぎると埋め立ての人口島の舞洲へ渡るには高速道路のような高架道路を通って湾岸の夜景を一望しながら橋を渡る。</p><br><p>「すげえな。綺麗やな。」</p><br><p>「うん！めっちゃ綺麗！」</p><br><p>目をきらきらさせる寧々を見て、航太はこんな顔が見られるのなら何だってしたいと思った。</p><br><p>人気のない夜の舞洲の駐車場に車を停めて、広い公園の森の中に続く散歩道を歩く</p><br><p>節操がなければどちらともなく手を繋いだりするのだろうけれど、航太は一切寧々に触れないし寧々もまたそれを好ましく思っていた。</p><br><p>彼はシャイだったのもあったけれど、何の抵抗もなくあっさり男と寝る寧々が本当に恋に至る相手にだけは航太以上にシャイで怖がりだった。</p><br><p>寧々のファーストキスの相手は彼女が怖がるのでキスするまでにデート５回分も待ったくらいだ。</p><br><p>木が生い茂る森を迷っていると大きなライトで照らされている一面青々とした広い芝生の丘に出た。</p><br><p>数百メートルほど緩やかに下る芝生の先には噴水があってその向こうには真っ暗な海が見える。</p><br><p>すごーい！と感嘆の声を上げた寧々はゆっくりと芝生を下りて行こうとしたが少し歩いて足を止めた。</p><br><p>「どうしたん？」</p><br><p>「うん…。だってこれ土…。」</p><br><p>足元を見ると網タイツにストリングスの細い華奢なピンヒールのサンダルが芝生と湿った土で泥まみれになりそうになっている。</p><br><p>どうしよう。と言って少し困惑した顔でうつむいて自分の足を見て考えている。</p><br><p>掌の力を抜いて腕を寧々に伸ばす。</p><br><p>「おいで。」</p><br><p>「え？」</p><br><p>航太は寧々を抱き上げた。</p><br><p>「ちゃんと掴まっときや？」</p><br><p>｢…うん。」</p><br><p>誰もいない明るく照らされた美しい芝生の上を航太は寧々を抱き上げて歩いていく。</p><br><p>寧々は顔から火が出そうで心拍数も心臓が壊れるんじゃないかというくらい速く打ったけれど、それが聞こえないのを祈りながら航太にしがみ付いた。</p><div><br></div>何も言葉は交わされず、航太のスピードで通り過ぎて行く芝生や彼女を抱き上げた影がライトに照らされて伸びている。<br><br><p>映画みたいだと寧々は思った。</p><br><p>なんてロマンチックなんだろう。</p><p><br></p><p>航太はまるで大事なものを運ぶように寧々を自分の両腕の中に抱えている。その腕と体温はシャイで怖がりな寧々にとって、どんな怖いものからも自分を守ってくれる頼もしいヒーローみたいだった。</p><br><p>この出来事を心の中でずっと大切にしようと決めた。</p><br><br><p>何度か休憩しながらウッドデッキの海に辿り着く頃には「お肌すべすべやなぁ」なんて言える程距離は縮まっていた。</p><br><p>帰りの車の中で明日は腕が筋肉痛やわ、と笑い合って</p><br><p>道路のオレンジの灯りと航太を見つめながら寧々は航太が好きだと思った。</p><br><p>どこにも完璧な人間なんていないし、この先自分は彼に泣かされるかもしれない、それでも彼になら泣かされても構わない。好きなのだから。</p><br><br><p>その後、２人は２，３日に１度は会うようになった。</p><br><p>寧々は会う口実のために小さな理由を一生懸命考え、航太はどんなに仕事から帰って疲れていても彼女の元へ会いに行った。</p><br><p>５月もあっという間に過ぎ去り、６月になって梅雨に入ろうかとしていた夜。</p><br><p>大阪港の海遊館の周りを散歩していたら、雨が降ってきてたちまち強い雨になった。</p><br><p>走って車に戻ると２人はすでにびしょ濡れで航太は体を乾かすために暖房をつけた。</p><br><p>「あったか～い。でもガラスめっちゃ曇ってるけど。これあやしいなぁ。あはは。」</p><br><p>「ははは。ほんまやな。車揺らさなあかんな。」</p><br><p>雨は大雨になってフロントガラスを滝のように流れている。</p><br><p>「雨すごいね。なんにも見えへんようになった。」</p><br><p>「寧々ちゃん、あのさ、」</p><br><p>「うん？」</p><br><p>「俺、寧々ちゃんのこと好きやで。めっちゃ好き。」</p><br><p>寧々は両手で口を押さえた。</p><br><p>「こんなに好きなの学生の時以来かもなぁ。うん。惚れてしもたわ。本気やねん。」</p><br><p>寧々は顔ごと両手で覆っていた。</p><br><p>「寧々ちゃん。それなに。」</p><br><p>「ちゃうねん。恥ずかしいねん。」</p><br><p>「もう！可愛いなぁ！堪らんなぁ。好きやわぁ。」</p><br><p>「待って！もう！恥ずかしい！言わんといて！」</p><br><p>「え、あ。ごめん。」</p><br><p>「ううん！ごめん。違うの！」</p><br><p>「うん。まぁ、俺は好きやで。寧々ちゃんが俺をどう思ってても。」</p><br><p>「ありがとう。めっちゃ嬉しい。寧々も航太くん好きよ。でも今はまだデートしてる人が他にもいて、その人達とちゃんとしてくる。この続きはそれからでもいい？航太くんには寧々の中でそうする必要があるの。」</p><div><br></div>航太は彼女なりの誠意を快諾し、一呼吸置いて <div><br></div><div>寧々と航太は付き合い始めた。<br><div><br></div></div></div></div>
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<link>https://ameblo.jp/m0611a143/entry-12030331768.html</link>
<pubDate>Wed, 27 May 2015 02:17:00 +0900</pubDate>
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<title>②</title>
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<![CDATA[ <div><br></div><div>その日、祈るような気持ちで会わないかと誘うと寧々は予定があると返答に困った様子だったがその予定が済んでからなら会うと言う。</div><div><br></div><div>もし断られたら、最終の新幹線で東京に戻ろうと思っていた。</div><div><br></div><div>彼女が指定したのは午前０時。</div><div><br></div><div>航太は戸惑ったけれど寧々が男の都合に合わせる事はない生き物であるのを思い出した。</div><div><br></div><div>その生意気で媚びない圧倒的な魅力は何年経っても色褪せず、会いたくて夢にまで見た彼女はたった数分で航太を再び虜にするのだった。</div><div><br></div><div><br></div><div>並んで歩く２人は８年ぶりに会った様には見えないだろう。</div><div><br></div><div>航太は嬉しさが全身から溢れ出し、歩いていても前方を見もせずに寧々ばかり見ていた。何度も寧々にちゃんと前見てと注意されても、注意されるのが嬉しくてにやけるだけだった。</div><div><br></div><div>「こたちゃん。聞いてる？もう！」</div><div><br></div><div>「聞いてるよ。ああもう可愛いなぁ！すごいな。８年前と全く変われへん。さらに綺麗になってる。寧々ちゃんは歳とれへんの？」</div><div><br></div><div>「とるよ。自分では最近老けたなって思うけど。寧々も一応人間ですから。」</div><div><br></div><div>と、寧々が話してるのをにやけた顔に口は半分開きの状態で見ている。</div><div><br></div><div>その表情を見て、寧々は溜め息をつきかけてやめた。</div><div><br></div><div>一緒にいた頃もいつもそうだった。車の運転中も航太は寧々ばかり見て、ちゃんと前見て！と、いつも寧々がきつく言ってもにやけるだけの彼によく溜め息をついていたから</div><div><br></div><div>嬉しくて堪らない航太とは対照的に彼女が表情を変えることはないのは</div><div><br></div><div>再婚してしまった男に一喜一憂するなど寧々にはあってはならないのだ。だからそのために自分の心に蓋をする必要があった。</div><div><br></div><div><br></div><div>朝まで営業しているカフェに向かい合って腰掛け、どれが飲みたい？と寧々に尋ねると、あれとこれとそっちも…と返ってくるので全部注文した。</div><div><br></div><div>「こたちゃんのは？」</div><div><br></div><div>「全部、寧々ちゃん飲まれへんやろ？」</div><div><br></div><div>こういうところはさすが夫だっただけあると寧々は思う。どうすれば寧々が好ましく思い、甘い視線で彼を見つめるようになるかを航太は誰よりもよく知っている。</div><div><br></div><div>彼女を甘やかしてきた数々の男達の中でも航太の右に出る者はいまだに誰もいないのである。</div><div><br></div><div>過去の寧々には薄情で優しい魅力的な男達がいつも側にいた。</div><div><br></div><div>人に執着する事も依存する事もなかった彼女はピンときた相手とは必ず寝るのは常識であって</div><div><br></div><div>男がいなきゃお話にならないというのが彼女の理屈なのだ。</div><div><br></div><div>そんな有様を「尻軽女」と言う人種もいたけれど、</div><div><br></div><div>「尻軽だなんてダッサいの。やめてよね。ビッチって言ってくれない？寧々は男が好きよ。悪い？」</div><div><br></div><div>なんて言ってのける始末。</div><div><br></div><div>いくら生意気を言っても長毛種の子猫のような彼女を周りの人間は仕方がないと片眉を下げるだけだった。</div><div><br></div><div>そのお陰で寧々は自分の気に入らない事を言う人間は全て嫌いだったし、自分を気に入らないのなら側に来ないで欲しいと思っていた。</div><div><br></div><div>しかし、そんな寧々を疲れさせる出来事もある。<br></div><br><p>１６歳でスカウトされて始めたモデルは自分の意志で入った世界ではなかったけれど、その中でヘアメイクに憧れてモデル業を片手間に化粧品会社に就職した。</p><br><p>人目を引く彼女の容姿は化粧品を買い求める女性客達の憧れの的であり売上成績もよかった。</p><br><p>さすがの彼女も職場では大人しかったが、ぶっきらぼうで不器用な性格は同僚達からは誤解されたり、嫉妬やねたみをかうことも少なくない。</p><br><p>もとから勝気ではない寧々はさらに大人しくなったが、何がいけないのか考えてもわからないまま、会社組織というところとモデル業界との違いに馴染めず悩んでいた。</p><br><p>さらにその数ヶ月前には４年間寄り添った大好きな恋人に別れを告げた。</p><p><br></p><p>寧々の気持ちがすり減っていくのに気付いた彼は心身ともに余裕がなかった事から、寧々に対するあたりは友人達から見ても目に余るものがあった。</p><br><p>そんな状況が落ち着いた頃には憔悴しきってしまって、恋をするエネルギーも残っていなかった。</p><br><br><br><p>捻くれたように自分のしたい事だけをして過ごしていた４月の最後の日曜日</p><br><p>友達もお気に入りの男友達たちも誰とも都合があわず、一人で午後を持て余していた。</p><br><p>部屋の鏡台に座って時々自分の顔を眺めながら携帯電話のアドレスを開いてみた。</p><br><p>するとそこに１度連絡があったきり使われていない連絡先を見つけた。</p><br><p>とりあえず、電話をかけてみる</p><br><p>すぐさまスピーカーから声が聞こえてきた。</p><p><br>「もしもし、寧々ちゃん？」</p><br><p>「航太くん！遊んで～！！」</p><br><p>「お、いおい。ははは。どうしたん。今日は出掛けてないんか？」</p><br><p>「出掛けたいけど出掛ける相手がいないの。みんな忙しいの。」</p><br><p>「それで電話してきたん？」</p><br><p>「うん。」</p><br><p>「わかった。日暮れてからでもいいか？」</p><br><p>「全然いい～！あ、でも航太くんどこにいるの？予定大丈夫？」</p><br><p>「いま滋賀。気にせんでええよ。」</p><br><br><p>滋賀から大阪までは昼間なら車で１時間半程、時計を見るともう１６時前</p><br><p>航太は１８時に梅田（大阪駅）で待ち合わせを指定した。</p><br><p>寧々も大急ぎで化粧をして、お気に入りだった背中の大きく開いたホルターネックのトップスにシンプルなミニスカートにピンヒール、オールブラックのワントーンコーディネイトで機嫌良く待ち合わせ場所へ向かった。</p><p><br>待ち合わせ場所には時間通りに車を停めて航太は待っている。</p><br><p>前々から企画して友達数人で苺狩りに行っていたのを寧々からの誘いの電話で突然帰ると言い出し、ひんしゅくをかいながらも飛んできたのだ。</p><br><p>久しぶり！元気だった？遅れてごめんね。そう言いながら車のドアを開けた彼女は航太の期待をはるかに超えていた。</p><br><p>食事をしようと寧々のお気に入りのレストランへ向かう車の中で近況の話をしていると</p><br><p>航太は就職してから大阪に住んでいると話し、あとは他愛の無い話にそれとなく耳を傾け、淡々と寧々のお喋りを聞いていた。</p><br><p>着いた先はエスニック料理を出す、廊下には水が流れプールのあるアジアンリゾートをイメージしたレストランで、深夜営業もしていたこの店に寧々はお気に入りの男達とよく来ていた。</p><br><p>寧々にとって航太もその１人になるのかとふと頭を過ったけれど、案内されたテーブルの奥の席に座り薄暗い店内を「ムード満点やな。」と言う彼を見て、お友達が妥当だと判断した。</p><br><p>食事をしながら寧々は最近の恋の話ばかりを航太にする。</p><br><p>一見、彼女は彼に興味がない風に見える光景だが、寧々にとっては逆なのである。航太の反応を見ているのだ。自分を好意的に思っているかいないかは返ってくる返答でなんとなくわかるというのが彼女の理由だが、少し鈍いところのある寧々の判断はよくはずれた。</p><br><p>目の前で表情をころころ変えながら一生懸命話す寧々は航太にとってどうしようもなく可愛らしく、時折見せる素気なくて生意気なしぐさも全てが愛くるしくて</p><br><p>まともに寧々を見ることができずに、平静を保っているのが精一杯な彼は話の内容など聞いてはいなかった。</p><br><p>そんな姿が彼女には「何を話しても優しく聞いてくれる人」に映り、やっぱり彼は親切なだけで自分に興味などないのだと思った。</p><br><p>そう思うとなんだかつまらなくなった寧々は帰路へ着く車の中で航太をこっそり見ていた。</p><br><p>寧々の身の回りにいた男達とは違う雰囲気があった航太に興味を持ったのだ。</p><br><p>彼は優しいだけでなく、平日はきちんと働き限られた休日を有効に使い毎日を楽しく過ごしてる。</p><br><p>自分はといえば、欲しい物は何でも誰かが与えてくれて、それを手に好きな人間としか関わりたくないと思って過ごしている。そんな自分をとても情けなく感じた。</p><br><p>もしかして彼はいい男なのかもしれない。</p><br><p>そう思えば思うほど自分を恥じるのだった。</p><br><p>彼に軽蔑されたくない。もっと寧々もがんばろう。</p><br><p>小さなプライドを奮い立たせて彼女は一人ごちていた。</p><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/m0611a143/entry-12029131661.html</link>
<pubDate>Sun, 24 May 2015 02:54:35 +0900</pubDate>
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<title>①</title>
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<![CDATA[ <br><p>私をおいてもう行ってしまうの？</p><br><p>行かなくては殺されてしまうよ。</p><br><p>まだ朝じゃないわ。本当よ。マンチュアまでの道のりを照らしてくれる星たちの光よ。あの声はヒバリじゃないわ。夜のつがい達。だからお願い。まだ行かないで。</p><br><p>捕えられて殺されてもいい！僕も行きたくなどない、死よ来い！ジュリエットの望みだ。話をしよう。心配ない。まだ朝は来ないから。</p><br><br><br><br><p>朝目が覚めるといつもジュリエットと同じ気持ちになる。寧々は３２歳にもなるのに１４歳のジュリエットと同じ気持ちで目を潤ませる。</p><br><p>「何時の新幹線？」</p><br><p>「１３時に東京に着けばいいから、ここを９時には出なあかんな。」</p><br><p>「じゃまだ一緒に居られる。」</p><br><p>寧々は寝転がったまま両手を航太に向けて伸ばす。</p><br><p>「こたちゃん。」</p><br><p>「ん？」</p><br><p>「来て。」</p><br><p>航太は寧々の背中に腕を沿わせて抱き寄せる。</p><br><p>「なんやねん。なんでそんなに今日も可愛いねん。もう昨日なんか堪らんかったわ。なによその指輪！気分悪い！外してよ！！て、くくく…。」</p><br><p>「だって嫌やねんもん。だってこたちゃんは寧々のなの。他の人の所に行くなんてありえない。わかってる？寧々怒ってるんだからね。」</p><br><p>小さく頬を膨らませていつもより早口で喋る寧々を航太はにこにこしながら眺めた。</p><br><p>彼の左手の薬指と左足首にはケロイド状になったような痕があった。それは寧々と結婚した時に入れた刺青の痕だ。その傷を見て彼女は悲しそうに喜ぶのだ。</p><br><br><p>２人は夫婦だった。８年前のある日彼女が姿を消し、家からは一切の物が消え去り、１通の置手紙と寧々に買ってやった車だけが航太に残された。</p><br><p>それから２年後に離婚は成立したが彼にとって寧々はどうしようもない心残りだった。</p><br><p>そんな出来事も薄れていこうかとした頃、突然転勤になったはずの勤務先に寧々から電話がかかってきたのだ。</p><br><p>航太は寧々に会いたいの一心で東京から大阪まで飛んで帰ってきたけれど</p><br><p>再会した彼は再婚したばかりだった。その事実に寧々は怒ったけれど彼女は彼の胸の内を知っているかのように顔を歪めた。</p><br><br><p>シーツにくしゃくしゃに包まりながら航太は寧々を引き寄せて、満足気に仰向けになる。</p><br><p>「憶えてるか？和歌山の白浜、高速も使わずに何時間も車乗って行ったよな。」</p><br><p>「憶えてるよ。だってあの時こたちゃんプロポーズしたじゃん。」</p><br><p>「そうやったっけ。なんて言った？」</p><br><p>「あはは。毎日、俺は寧々と結婚するって言ってたもんね。確か、寧々がずっと側にいてって言って、こたちゃんが “おるよ、一生。生まれ変わっても絶対見つけて一緒におる。”って。」</p><br><p>「うん。言った。」</p><br><p>「まだそう思ってる？生まれ変わってもまた寧々と結婚する？」</p><br><p>「する。絶対に。」</p><br><p>「ねぇ。もし今の寧々と出会ってても好きになってた？」</p><br><p>「当たり前やろ。」</p><br><p>子供のように甘えた表情で質問ばかりする寧々を見て、航太は愛おしくて堪らなくなった。</p><br><p>まだ喋ろうとする唇に自分の唇を合わせて、両手首を掴んで自由を奪う。</p><br><p>寧々はまた航太の悪い癖だと思いながらも、だから自分たちはだめになったのだと胸が苦しくなる。</p><br><p>そんな彼を寧々は少し不憫に思う時がある。</p><br><br><p>惚れるという言葉は一体どこまでをそう呼ぶのだろう。</p><br><br><br><p>航太は人並み外れたワガママで甘えたな寧々の要求を１度だって断ったことはない。</p><br><p>誰も気付かないような本当に小さな彼女の表情を見つけて可愛いと言う。</p><br><p>航太だけは自分の事なら知らない事なんてないんじゃないかと寧々は思う。</p><br><p>彼は滑稽なまでに寧々に惚れきっている。それは平穏さをも奪い去り、寧々自身を蝕み、時には異常としか言えない惨事となる。</p><br><p>寧々は感受性が強くて神経質、繊細でいて脆い。彼女はどこかいつも憂いを感じさせ、とても美しく愛らしいのに儚く消える事を前提にしているかのようにふわりと小さな体で長い髪をなびかせている。</p><br><p>そんな彼女は男達の心を知らず知らずのうちに掴んでいるが、航太だけは常軌を逸していた。</p><br><p>寧々に他の男がいようと彼女が航太にどんな仕打ちをしようとも彼には問題ではない。</p><br><p>男女間なら起こりうる様々な感情の浮き沈みなど存在せず、寧々はただそこに存在しているだけで強烈な欲望を航太の中に生まれさせる。</p><br><p>それは彼が寧々に出会ってしまった以上、逃れられない性のようで彼女はそれを知っているようでもあった。<br><br><br></p><br><p>２人が出会ったのは寧々１６歳、航太２１歳。</p><br><p>まだ高校生だった寧々は夏休みに所属していた事務所のソファでマネージャーにじゃれついていた。</p><br><p>「ねぇねぇ、寧々夏なのに全然仕事ないね。売れてないね。あははは。」</p><br><p>「あはは、じゃないの！あんたがオーディション受けに行かないからでしょ！」</p><br><p>「だってなんか受けにきてる人達みんな鬼みたいな顔してんだよぉ。やだぁ。」</p><br><p>「ほぅ。わかった。じゃ高校生らしく夏は野外でキャンペーンガールのバイトでもしてきなさい。」</p><br><p>「え！野外？行く～！なんか楽しそう！」</p><br><p>「あ、日焼け厳禁ね。髪もね。あと、現場の男の子と仲良くなっちゃだめよ！後の仕事に響くから。」</p><br><p>「は～い♪」</p><br><p>そう機嫌良く引き受けたものの、派遣先のガソリンスタンドは寧々の住む大阪から片道２時間程かかる京都の郊外だった。</p><br><p>あまりの郊外に楽しみ方もわからず、がっかりして渋々アルバイトに従事していると自転車に乗った航太がスタンドに入ってきた。</p><br><p>目が合って、航太は寧々に笑って手を振ったけれど寧々は会釈しただけだった。だって彼はちっとも寧々の好みのタイプじゃなかったから。</p><br><p>航太はこのスタンドでアルバイトしていた大学生だった。その日は休みだったけれど通りがかったので寄ってみたところ、寧々に一目惚れしてしまったのだ。もちろん、なんとかして連絡先を知りたいけれど彼女に直接話しかける勇気はない。</p><br><p>スタッフルームであれこれ考えていると女の子のバイト仲間が出勤していたのでその子に望みをたくした。</p><br><p>「寧々ちゃんあのね、さっき来たうちのバイトの男の子が連絡先教えて欲しいって。」</p><br><p>「え…う～ん。それは困りましたね。で、それよりあの人は誰？めちゃくちゃカッコイイ<img alt="ハート" src="https://emoji.ameba.jp/img/user/st/style-8/377191.gif">」</p><br><p>「あの人は社員の山川さん。今日は夜勤じゃないかな。」</p><br><p>寧々ときたら少しの情報だけ聞けば、もう目をきらきらさせて彼に挨拶するふりして自己紹介までして談笑している。あっという間に連絡先も交換して、今晩電話してね♪なんて言っちゃう始末。</p><br><p>その様子を見ていた航太は肩を落としてスタンドを後にした。</p><br><br><p>山川は周囲も認めるプレイボーイで、特定の恋人がいようと可愛い女の子がいればお構いなし</p><br><p>とはいえ、人望にも厚くて航太も慕っている、みんなの人気者だった。</p><br><p>寧々は程なくして山川の “お気に入り” になった。</p><br><p>航太と山川が働いていたスタンドは従業員同士の仲が良く、年に数回は職場の同僚たちで海に行ったり飲み会を開いたりしていて、山川はよくこの集まりに寧々を連れて行ったから航太と寧々は顔見知り程度に話すくらいになっていった。</p><br><p>ただ、その頃に誤解が生じたのが、寧々にも山川とは別で他に恋人がいた事を航太は知らず、寧々の事を一途な女の子だと思い込んでしまった。</p><br><p>顔を合わせる度にいつも優しかった航太を寧々は「すごくいい人。」 とよく山川に言っては機嫌を損ねていた。</p><br><br><p>そんな “お気に入りの関係” も終焉を迎え半年ほどが経ち</p><br><p>寧々も２１歳になった、ある日、鳴るはずがない山川から電話が掛かってきた。</p><br><p>動揺しながらそれをとると、航太だった。</p><br><p>「もしもし寧々ちゃん？誰かわかる？航太やで。」</p><br><p>「あ、うん。わかるよ。久しぶり。」</p><br><p>山川と別れれば、もう接点のない相手だと思っていた。</p><br><p>「今さ、山川さんと飲んでるねんけど。なんか体の調子悪いって聞いてんけど大丈夫？」</p><br><p>寧々はその頃、仕事が上手くいかなくて、ストレスで少し休んでいた。</p><br><p>「俺いつでも相談のるし、山川さんの事でも何でもいいから連絡しておいでや。」</p><br><p>そう言って電話番号を航太は寧々に教えた。</p><br><p>あれだけ、航太の話をしたら不機嫌になっていた山川が航太に自分の電話から寧々に連絡するのを許したのは大きな疑問だったけれど、寧々がいくら聞いても航太は教えてくれなかった。</p><br><p>彼に特別な感情もなかった寧々は親切な人もいるものねと思いつつ</p><br><p>何の思考を働かせる事もなく航太の番号は寧々のアドレスに加わった。</p><br><br>
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<pubDate>Wed, 20 May 2015 00:10:12 +0900</pubDate>
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<title>プロローグ</title>
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<![CDATA[ <br><p><img alt="かっこハート*" src="https://emoji.ameba.jp/img/user/mi/misato818/4356847.gif">恋をすればひとつの小説が書ける<img alt="かっこハート*" src="https://emoji.ameba.jp/img/user/mi/misato818/4356852.gif"></p><br><br><p>それを実行してみようと思います。</p><br><p>ここに書くお話は全てノンフィクションなので、リアル過ぎるのは生々しくて良くないと思うので</p><br><p>いつもとは違う名前で書きますね。だから、登場する名称は全部 杏オリジナルです<img alt="はぁと" src="https://emoji.ameba.jp/img/user/ke/kesera-seraaa/3934.gif"></p><br><p>ゆっくり自分のペースで書き進めていこうと思うので</p><br><p>気長に見守って頂けたら幸いです。</p><br><p>作中、少し過激な内容も見受けられるかもしれませんが、ご了解と対処のほど</p><br><p>よろしくお願いします。</p><br>
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<pubDate>Tue, 19 May 2015 23:50:45 +0900</pubDate>
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