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<title>masanusのブログ</title>
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<title>更新停止のお知らせ</title>
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<![CDATA[ ぜんぜん更新しないブログに月々３００円ぐらい払って拡張機能を使っていましたが、３月３１日を以って拡張機能を解除し、これを機会に完全更新停止いたします。<br>暫くは「ハーモニカのナス畑・跡地」としてコンテンツも残しておきますが、いずれ機会をみて撤収すると思います。<br><br>以降、ショートショートに関しては自サイト「EGGPLANeT」にて引き続き掲載致します。<br><br><a href="http://www.geocities.co.jp/masanus/">http://www.geocities.co.jp/masanus/</a><br><br>今までここを訪れてくれた皆様、更新頻度が低くなっても覗きに来てくれた方、どうもありがとうございました。<br><br>2009/03/31 Masanus
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<pubDate>Tue, 31 Mar 2009 16:17:18 +0900</pubDate>
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<title>大地の戦士アースマン（ヒーロー企画）</title>
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<![CDATA[ 大地の戦士アースマン・第一話。 <br><br>　地球そのものがもつ天体としてのエネルギー結晶「スターオーブ」の移植手術の実験台となり、超人への変身能力を得てしまった青年、大地 陸（だいち りく）。その能力が他国侵略などの武力として使われることを知った彼は組織から逃亡、今は身を隠しつつ、フリーターとして生計を立てているのであった。 <br>　とは言え、変身時の多大なエネルギー制御のために普段の体力、知力は極端に制限されており、仕事もうまくいかず上司や先輩から怒鳴りつけられながらなんとか働いているという状態なのでった。 <br><br>　彼のことを「放っておけない弟」のような存在、もしくはそれ以上として意識しているバイト先の女チーフ、森野 碧（もりの みどり）は、彼が何かを隠していることにうすうす勘付きつつ、好意を押し殺して叱り付けることにまた別の快感を見出しているのであった。 <br><br>　彼がなにかヘマをやらかしたと、いつも決まって言うのであった。 <br><br>「あー、スマン」 <br><br>（おわり）<br>
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<pubDate>Wed, 18 Mar 2009 07:12:31 +0900</pubDate>
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<title>漂着者ふたり</title>
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<![CDATA[ 「……ニー、アンソニー！」<br><br>「……う……あ、げほっ」<br><br>「よかった、目を覚ましたか。俺が誰だか分かるか」<br><br>「……キャプテン、一体、どうなったんすか」<br><br>　アンソニーと呼びかけられた大柄な青年は体を起こす。よく日に焼け、がっしりとしたいかにも船乗りといった体格である。一方彼を助けたキャプテンと呼ばれた男は、細身で色白、しかしアゴには立派なヒゲを生やし、それなりに貫禄のある顔つきをしている。<br><br>「わからん。他のクルーも見当たらん。生き残ったのは我々だけなのかも知れん」<br><br>「確か、私掠船と戦闘になって」<br><br>「うむ、なんとか撃退はしたが、その直後嵐に巻き込まれた。大砲を食らっていたのが致命的だったな」<br><br>「じゃあ、オーベルジーヌ号は」<br><br>「うむ、沈んだ」<br><br>「そうか、そうだ、確か、俺は手近にあった樽を抱えて……」<br><br>「お前は大したものだな。泳ぎながら樽と破片でイカダを組み立てちまったんだから。さらに、溺れかけていた俺も引き上げてくれた」<br><br>「ウチ、漁師でしたから。でもキャプテン助けたとかはあんまり覚えてないっす」<br><br>「無我夢中だったんだろうな。お前は意識を失っちまったが、まあともかくこうして生きながらえ、偶然とは言え上陸できたってわけだ」<br><br>「どこなんでしょうね、ここ」<br><br>　二人が座って会話をしているのは、波の穏やかな砂浜。少し離れて彼らが乗ってきた即席のイカダが漂着している。<br><br>「ケガがないようなら、ともかく周辺を探索してみるべきだな」<br><br>「ウワサに聞いた、人食い族なんてのはまさかいないでしょうね」<br><br>「さあな、ちゃんと話の通じる人間が住んでいれば幸いだが」<br><br>「――キャ！」<br><br>　突然、甲高い叫び声が背後から聞こえたため、二人はぎょっとして振り返る。深い茂みの中に、小柄な少女が立ちすくんでいた。その顔立ち、髪や目の色は彼らとは明らかにちがってはいるものの、浮かんでいる表情は容易に読み取れた。つまり、恐怖だ。<br><br>「……人だ」<br><br>「……人っすね」<br><br>　ボソボソと間の抜けた会話をする。彼らにしても突然の遭遇にどうしていいか分からなかったが、自分たちが襲われる危険はなさそうだ、という安心から判断を間違えた。アンソニーの方が、近寄ろうといきなり立ち上がってしまったのだ。<br><br>「アーッ！　オ、オニッ！」<br><br>「あ、ま、待って！」<br><br>　ただでさえ大柄な彼が急に立ち上がったことで、彼女はよく分からない叫び声を上げ、逃げ出しにかかった。大声で呼びとめ、追いかけようとしたのも逆効果で、あっという間に彼女は視界から消え去ってしまった。<br><br>「――驚かせてしまったな。どうやら近くに人里がありそうだが、友好的に迎え入れてもらえる望みは薄そうだ、な」<br><br>「すんません、キャプテン、俺、人見てつい安心しちまって」<br><br>「まあ過ぎたことを言っても仕方あるまい。それより、身を隠せる場所を探そう。あの女の子が仲間に知らせて、大勢して襲ってくる可能性だってある」<br><br>　そうして、二人は探し出した天然の洞穴を拠点に生活を始めた。漁師出身のアンソニーが海で魚を獲り、その日その日をなんとか食べ繋ぐだけの糧を得ることはできた。一方、キャプテンは何度か人里に降り助けを求めようと意思疎通を試みた。しかし案の定言葉は全く通じず、彼らを怯えさせるだけの結果に終わってしまった。<br>　季節は晩秋で、生活を始めた当初より次第に、しかし確実に寒さが厳しくなりつつあった。<br><br><br>「キャプテン、顔色悪いっすよ。大丈夫すか」<br><br>「ゴホ、ゴホ、ああ、ちょっと風邪気味なだけさ。寝てれば治る」<br><br>「夜になったらまたあの村からニワトリ盗んできます。栄養つけてください」<br><br>「やめろ、これ以上彼らに憎まれてはいかん。今は怯えてるが、本気になったら我々を『狩り』にくる」<br><br>「同じ人間だってのに、言葉もわかんねえし、寂しいっすね」<br><br>「ああ、彼らも穏やかに畑を耕し、生活している――我々の故郷となんら変わらんな」<br><br>　懐かしそうに、遠い目をした直後、激しく咳き込みだした彼の背をアンソニーはさする。<br><br>「ああ、キャプテン、寝ててください。うまい魚獲ってきますから！　待っててくださいね」<br><br>「ああ、頼りにしてるぜ」<br><br>　数日経っても彼の体調は改善せず、顔色もいよいよ青ざめていった。ある日、アンソニーが食料を洞窟に持ち帰ると、寝たきりのはずの彼の姿はなかった。慌てて周囲を探すが見つからず、そして気づいたのは洞窟の地面に書かれた彼のメッセージであった。<br><br>”我慢も限界だ。俺は女を抱きにいく”<br><br>「キャプテン……な、なんて事を！」<br><br>　洞窟を飛び出し、村に急ぐアンソニー。そしてたどり着いたとき彼が目にしたものは。<br>「キャー！」<br><br>「オニ！　オニガ！」<br><br>「うおおおお！　女！　女！」<br><br>　逃げ惑う人々、髪を振り乱して木の棒を振り回すキャプテン。その片腕には悲鳴を上げる若い娘が抱えられている。アンソニーは慌てて彼を取り押さえようと、後ろから羽交い絞めのように抱える。病人とは思えない、凄まじい力であった。<br><br>「やめて下さいキャプテン！　村人を刺激するなって言ったじゃないっすか！」<br><br>「もうウンザリだ！　お前だってそうだろう！」<br><br>「お願いですからやめて下さい！　洞窟に戻りましょう！」<br><br>「嫌だね！　俺はこの女を抱く！　なんならお前にも回してやろうか！」<br><br>　病気のために錯乱していると判断したアンソニーは、仕方なく彼を思い切り殴りつける。<br><br>「すんません、キャプテン！」<br><br>「グウッ！」<br><br>　ぐったりと力を失った彼から娘を解放して逃がしてやると、村人からわっと歓声が上がった。<br><br>「……どうやら、上手くいったようだな」<br><br>　その場に仰向けに倒れた男から、理性的な声が漏れる。<br><br>「キャプテン？　大丈夫すか！」<br><br>「……そのままで聞け。どうせ俺はもう長くはなさそうだからな。一芝居打ったんだ」<br><br>「え、し、芝居！？」<br><br>「お前はまだ若いし、力もある。そして、悪い『オニ』から村を救った英雄になった」<br><br>「俺が、英雄？」<br><br>「いいか、俺の後を絶対に追うな。彼らに、お前が俺を追い払ったと思わせるんだ」<br><br>　そう吐き出すように言うと、彼はヨロヨロと起き上がり、その場を離れはじめる。思わず彼を追おうとするアンソニー。<br><br>「キャプテン！」<br><br>「来るな！　俺は、また海に出る！　船乗りだからな！」<br><br>　木の棒を杖がわりに、夕日の沈みつつある海岸の方へと歩いていく男。アンソニーは呆然と立ち尽くすばかりであった。その彼の傍に、恐る恐るといった様子で子ども――最初に海岸で出会った少女だ――が歩み寄る。<br><br>「ネエ、イイ、オニサン、アリガトウ」<br><br>　わからない言葉ながら、感謝の気持ちが伝わってきた。振り返ると未だ怯え半分といった風ではあるが、明らかに今までとは違う、村人たちの暖かい雰囲気があった。<br><br>「俺は『イイ　オニサン』なんかじゃないよ……」<br><br>　キャプテンを犠牲にしてしまうことより、久々に感じた、大勢の人たちに受け入れられる喜びを選択してしまった。彼の頬を伝うのは、自責の涙か、それとも安堵の涙か。<br><br><br>　一方海岸では、波打ち際までイカダを引きずり、その上に身を投げ出した男。やがて満ちた潮がそのイカダをさらい、海へと招きよせる。<br><br>「悪くない。元からあいつに助けられた命だしな」<br><br>　水平線にかろうじて残っていた夕日を目に刻みつけ、彼は目を閉じる。<br><br>　ゆらり、ゆらり。イカダはゆったりと彼を運んでいく。<br><br>（おわり）<br>
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<pubDate>Tue, 10 Feb 2009 03:27:58 +0900</pubDate>
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<title>二つの鍋の話</title>
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<![CDATA[ 「ねえ、あなた。ちょっとこれ」<br><br>　土曜の昼下がり、居間でテレビを観ていると妻がキッチンから呼ぶ声がする。行ってみるとテーブルの上に置かれた土鍋を前に腕組みをしている。<br><br>「どうしたんだ。それ俺が実家から持ってきた奴じゃないか」<br><br>「ほら、ここ見てよ」<br><br>　彼女の指差した部分をよく見ると、内側に細い線。引っ越して棚にしまったときにはなかったと思うのだが。<br><br>「寒いし、今夜お鍋にしようと早速使おうと思ったらこれよ。やっぱり、新しいやつ買えばよかったわ」<br><br>「そう言うなよ。なんでもウチの親が新婚時代から使ってきたやつらしくてさ」<br><br>「でもヒビはいっちゃったら怖いわよ。お鍋の途中で割れちゃったら危ないし」<br><br>「確かになあ。でも今夜鍋ってのは捨てがたいな。よし、新しいの買いに行くか」<br><br>「そうね、どうせ材料も今からだし、一緒に買っちゃいましょう」<br><br>　平日は近所のスーパーで済ませていることが多いが、休日はこうして郊外の大型ショッピングモールにドライブがてら来ることもある。<br><br>「へえ、なんか渋いね」<br><br>　食材の買出しは終わり、せっかくだから安物ではなくいいものを買おう、と本格的な店に足を踏み入れたものの、いささか高級すぎだったようだ。提示されている価格は一番安いものでも五桁を下らない。その辺のスーパーなら五百円でも買えるものがあるだろうに。<br>　しかし、感心したように店内を眺めている彼女には、その値札が映っていないのか。このまま放っておくと価格を気にせず感性だけで選んでしまいそうだ。私は椅子に腰掛けている店主らしき老人に声をかけた。<br><br>「陶器とか素人なんで詳しくないんですが、なかなか見事なものですね」<br><br>「すぐ近くに工房がありましての。ここにあるのは全部ワシと弟子で作っております」<br><br>「ええとですね、土鍋を買いたいのですが、もう少し、お手頃なのはないですかね」<br><br>　駄目元で言ってみる。違う店に行けと言われればそれまでだ。しかし、彼は意外にもにこやかに笑うと、いったん店の奥に姿を消し、箱を手にして戻ってきた。<br><br>「貫入（かんにゅう）の入りが気に食わなかったので出していなかったものです。鍋としての使い勝手は、そこに並んでいるものと変わらないのですが」<br><br>「貫入？」<br><br>「ほら、表面の細かいひびのような模様があるでしょう。これが貫入です」<br><br>「ああ、そういう呼び方だったんですか、これ」<br><br>「焼いた後、釉薬（ゆうやく）が冷えて固まるときにできるものです。その後も、使ってるうちに変化をみせたりするんですよ」<br><br>「へえ……」<br><br>「ねえ、何話してるの？」<br><br>　私たちの会話に気づいた彼女が、後ろから声をかけてくる。どうやら値段の高さにやっと気づいたらしい。<br><br>「ああ、もう少し安いのはないかと聞いてみたんだ」<br><br>「そういうところ、わたしよりしっかりしてるよね。それが安いのなの？」<br><br>　さすがに老店主の顔は苦笑いのようになったが、我々の手にしているいかにも鍋をしますといった食材の入った袋を見て、さらに顔をほころばせた。<br><br>「そうですな、早速有効活用して頂けそうですし、三千円でお譲りしましょう」<br><br>「え、あっちにあったのは、同じ形で三万はしたのに」<br><br>「ワシの見立ててでは、これはいわばまだ『成長中』でしてね。お客さんのところで育てて頂く必要があるモノです。大切に使って下さるという条件ですが」<br><br>「もちろんです。ありがとうございます！」<br><br>　帰宅すると、妻は台所に入ってなにか始めた。鍋なら下ごしらえを始めるにもまだ早いと思うのだが。ヒビが入ってしまった鍋を捨てる前に、親に一言ぐらいは言っておくべきだろう、と思い立ち、結婚後初めて実家に電話をかける。ほどなくして、母親が出た。<br><br>『どうしたの。結婚前だって滅多に電話してこなかったのに。ケンカでもしたかい』<br><br>「そんなんじゃないよ。それより、貰った土鍋、あったろ？あれ、使う前に割れちゃったんだ。ゴメン、思い入れのあるやつだったのに」<br><br>『完全に、パカっと割れちゃったのかい』<br><br>「いや、今のところヒビが入ってるだけだけど。危ないだろ？」<br><br>『バカだね。いい土鍋は、ヒビぐらいじゃビクともしないよ。もし心配だったら、それでご飯炊いてみなさい』<br><br>「ご飯？土鍋で？」<br><br>『お米の糊がヒビに染みこんで、ちゃんと塞いでくれるから。それに、使い込んだ土鍋はすごいのよ？騙されたと思って味もなにもつけずに水とお米だけで炊いてみなさい』<br><br>　土鍋で米を炊く方法を細かく教わり、その後近況報告のようなことをさせられ、電話を終えた。キッチンに入ると、ちょうど買ってきた新しいほうの土鍋がガスコンロにかけられているところだった。中を覗くと、真っ白い液体で満たされている。<br><br>「なんだこれ？ん、もしかして米の研ぎ汁か？」<br><br>「うん、さっきのお店のお爺ちゃんが、教えてくれたの。新しい土鍋は使う前に、こうするといいんだって」<br><br>　米の研ぎ汁かおかゆなどを暫く煮込んで、冷ましてから使う必要があるらしい。鍋の内側の細かい穴がふさがって長持ちするようになるのだそうだ。先ほどの電話との共通点に気づき、それを彼女に話す。<br><br>「え、お義母さんと電話してたの？もう、そういうときは呼んでよね」<br><br>「いや、ヒビが入ったから捨てていいか聞くだけだったんだけどさ、どうやらまだ使えるらしいって」<br><br>「えー、じゃあ新しく買ったの無駄になっちゃうの？」<br><br>「そっちで今夜の鍋は作ろう。それで、古いほうでご飯炊いてみようぜ」<br><br>　そう言って、古いほうの土鍋を軽く洗って、彼女が研いだ後ザルで水を切っていた米を入れ、水を注ぐ。<br><br>「よし、こっちは俺がやるから。さっき電話で炊き方聞いたし」<br><br>「じゃあお鍋のほうはわたしね。今のうちに、材料切っちゃうわ」<br><br>　そろそろ空腹が限界だ、と感じる頃に準備が終わった。二口のガスコンロに新旧二つの土鍋が並んでいるというのも奇妙な光景だ。ある程度材料が煮えてきたので、テーブルの上のカセットコンロに移す。ご飯のほうは、火を止めたあともう少し蒸らさなければならない。<br><br>「ごくろうさま」<br><br>「おつかれさま」<br><br>　冷えたビールをグラスに注ぎ、乾杯。早速煮えている鍋に箸をつけていく。ビールを三本ほど（そのうち二本ぶんは彼女が飲んだ）飲んだ後、ご飯を土鍋から茶碗によそう。<br><br>「……ちょっと水が多かったかな。柔らかい」<br><br>「大丈夫よ。それよりなんかこれ、不思議！お米と水だけなんでしょ？入れたの」<br><br>「ああ。でもなんだか、すごく複雑な味がするよな。うまい」<br><br>「やっぱり、これのせいなのかな」<br><br>　古ぼけた土鍋が、今はあたたかい、落ち着いた存在感をもって目の前にあった。<br><br>「あなたのお義父さんとお義母さんが今まで食べた、お鍋の味なのかな」<br><br>「そうか、そういうことか」<br><br>　翌朝用に残しておくことを考えて多めに炊いたのだが、思わず二人で全て食べてしまっていた。空になった鍋の内側には、うっすらとヒビの跡が残っているが、ほとんど目立たなくなっている。<br><br>「明日はさ、朝昼兼用でこっちのお鍋に残ったお出汁で、うどん作ればいいのよ」<br><br>「いいね。日曜だし、のんびり寝よう」<br><br>　食後、二つの土鍋が並んだ食卓を挟み、お茶を飲みながら呑気にそんな話をする。まったく平和な夜に、ほっと一息ついた。その時。<br><br>―ピキンー<br><br>　何か澄んだ、ガラスを叩くような音がかすかに聞こえた。私以上に耳のいい彼女も、虚を衝かれたような顔をしている。<br><br>「今の音、なに？」<br><br>「しーっ、ちょっと静かに」<br><br>―ピン―　―チリン―<br><br>　甲高い音で、発生源がすぐには分からなかったが、どうやら目の前の二つの土鍋から鳴っているらしい。不思議ではあったが、何故か不安な気持ちは起きず、むしろ普通のことのように感じた。<br><br>「……きっとさ、挨拶してるんだよ」<br><br>「挨拶？」<br><br>「新人が、大先輩にさ。『よろしくご指導お願いします』ってな具合に」<br><br>「フフ、面白いこと言うわね。でも、確かにそんな気がするわ」<br><br>　残ったお茶を飲み干す。<br><br>「ねえ、わたしたちのこっちのお鍋も、あんな美味しいご飯が炊けるようになるかな」<br><br>「ああ、時間はかかるだろうけどね」<br><br>「そっか、じゃあお鍋の回数増やそうよ」<br><br>「準備楽だから言ってるんじゃないのか」<br><br>「そんなことないわよー」<br><br>　他愛のないやり取りで夜は更けていく。昼間、陶器店で老店主が言った、鍋を育てるという言葉の意味が分かった気がしたのだ。<br><br>（おわり）
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<pubDate>Sun, 01 Feb 2009 22:23:30 +0900</pubDate>
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<title>披露宴（ショートショート）</title>
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<![CDATA[ 　親戚同士の挨拶やら記念撮影やら、バタバタと何やかやが終わり、ポツンと控え室に取り残された。新婦は衣裳含め何かと準備に時間がかかるものだが、新郎である私には特にすることもない。相方の準備ができれば揃って披露宴会場の入り口で出席者を出迎える、という手はずになっており、両親たちも既に現場で待機している。 <br>　急に手持ち無沙汰になると、今までは忙しさのお陰で忘れていられたこれから先に対する不安が頭をもたげてくる。おいおい、今更、しかも男なのにマリッジ・ブルーというやつだろうか。 <br><br>「なんだ、ビビッてるところを見に来たのに。随分落ち着いてるじゃないか」 <br><br>「そうでもないさ」 <br><br>　昔からの付き合いの友人が控え室に入ってきて、第一声がそれだ。相変わらずのからかうような口調だが、それが今はありがたくもあった。 <br><br>「なあ、『結婚は人生の墓場』なんて言うじゃないか」 <br><br>「ひとつのゴールには違いないかもしれないけどな」 <br><br>「このままでいいのか、という気になってくるわけさ」 <br><br>「一般論だね。もっと具体的に、お前自身の言葉で話せよ」 <br><br>　と、こうくる。彼は懐からタバコを取り出し、口にくわえる。最後の一本だったようで、箱をクシャッと握り潰した。 <br><br>「悪いな、お前にも一本やろうと思ったけど最後だった」 <br><br>「いや、禁煙してるんだ。構わない」 <br><br>「知ってる」 <br><br>「嫌な奴だな、相変わらず」 <br><br>　ニヤリと笑ってライターで火を点け、うまそうにタバコを吸う。その彼を見る私の目が、物欲しそうな視線になってないかと考え、あわてて目を逸らした。 <br><br>「まだ一緒に、住んでないんだ」 <br><br>「これから新居で新婚生活だろ？羨ましい限りじゃないか」 <br><br>「交際はそれなりに長かったんだけどな、暮らすとなるとそうもいかないんじゃないかって」 <br><br>「フム。お前は彼女に秘密にしてるようなとんでもない性癖でもあるのか？」 <br><br>「いやいや！そういうわけじゃないけど！」 <br><br>「ハハハ、それも知ってる」 <br><br>「ともかく、いろんなことが不安だらけで。うまくやってけるか自信がないよ正直」 <br><br>「別に、お前がうまくやるって自信は要らないんじゃないかな」 <br><br>「え……？」 <br><br>「ま、一般論が好きなお前のことだ。頭じゃわかってんだろうがな」 <br><br>　彼はボリボリと頭を掻きながら、どう説明したものかと思案しているようだ。 <br><br>「他人同士が一緒になるんだからな、意見が違ったり腹が立ったりは当然あるだろうさ」 <br><br>「そこを円満にやってく秘訣でもあるなら教えを請いたいところだね」 <br><br>「交際が長かったって言ったな。お前は、彼女が怒ってるのに笑顔だったり、なにか心配事があったりしたら、それが分かるか？」 <br><br>「……それで痛い目見たり喧嘩になったこともあったからな。たぶん分かると思う」 <br><br>「絶対？自信あるか？」 <br><br>「なんだお前、俺の不安を煽りに来たのかよ！絶対の自信なんかあるかよ」 <br><br>「まあまあ。たぶんだけど、長年連れ添った相性バッチリのカップルだって、真意の二割ぐらいしか分からないんじゃないかなって話さ」 <br><br>「二割……」 <br><br>「表情とは別の真意が分かるってのは、きっとそれ相手も『分かって欲しい』と思ってるときだけなんだぜ」 <br><br>　あるいは男の真意は女にはダダ漏れで筒抜けかもしれんけどな、と彼は付け足した。なるほど、と思う。単純に私が嘘が下手ですぐ表情に出る性質だからというのもあるかも知れないが、なかなかに説得力のある言葉だ。 <br><br>「お前が完璧な夫じゃなけりゃダメと思ってる女ってわけじゃないんだろう？」 <br><br>「そりゃそうさ」 <br><br>「じゃ、それでいいじゃないか」 <br><br>「……ありがとう」 <br><br>「どういたしまして」 <br><br>　気取った一礼のついでに短くなったタバコを灰皿に押し込み、彼は出て行く。ちょうど新婦の準備が終わったらしく、迎えの会場係が呼びに来た。 <br>　控え室を出ると、目の前の彼女はほんの少し顔をしかめ、すぐ笑顔に戻る。私がタバコを吸ってしまったことを察したようだが、気づかない振りをしてくれているのだ。 <br><br>「ゴメン。今のが正真正銘最後の一本だったから！」 <br><br>「あなたのそういうところ、ホント信じられないんだけど」 <br><br>「許してくれよ。今更緊張してきちゃったんだ」 <br><br>　私の顔をまじまじと見つめたあと、あっさり引き下がってくれた。一緒に歩いて会場の入り口に着いたときには私を責めるような雰囲気はすっかりなくなっていた。 <br><br>「おめでとう」「このたびは真にご結婚……」「ご結婚おめでとうございます！」 <br><br>　友人、職場の同僚、そしてよく分からない客たちに愛想を振りまいていると、ふいに背中を叩かれた気がした。 <br><br>「さっきは言い忘れた。おめでとうな。じゃ、俺行くわ」 <br><br>「ああ、ありがとう。じゃあな」 <br><br>　振り向かずに、小さな声で答える。隣の彼女がちらりと私のほうを見た。 <br><br>「どうしたの？」 <br><br>「なんでもないさ」 <br><br>　全ての出席者が会場に入り終わると扉はいったん閉じられる。中から司会者の声がかすかに聞こえる。やがて、入場に彼女と二人で選んだ曲が流れ始めた。 <br><br>「ねえ、まだタバコくさいんだけど」 <br><br>「なんというかまあ、今日のは線香みたいなもんなんだ」 <br><br>「お線香？」 <br><br>「うん、線香」 <br><br>「――ふうん。じゃ、仕方ないか」 <br><br>そして扉が開かれる。 <br><br>（おわり）<br>
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<pubDate>Wed, 28 Jan 2009 07:33:48 +0900</pubDate>
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<title>Windows7</title>
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<![CDATA[ <img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20250521/18/masanus/14/78/j/o0300024015600217353.jpg"><br>　技術的な話なのでまあ適当に読み流してOKです。 <br><br>　よく人にOS(オペレーティングシステム=基本ソフト)の役割を説明するにあたり、パソコン本体を馬、ユーザを人間とすると、野生の馬にそのまままたがって走らせることのできる人はほとんどいないだろう、という話から始めたりします。 <br>まあ乗馬とかやったことないのですが、あくまでイメージの話で。 <br><br>　それで、長時間乗っても疲れないようにだとか、乗り降りが楽にできるようにだとか、進行方向を馬に伝えやすくするためだとか、という必要があって、鞍や鐙(あぶみ)、手綱といった「馬具」が生み出されたわけです。 <br><br>　馬にとっては重荷ではありますが、人間にとっては制御しやすくなる、そんな存在がOSです。アップル社のMacOS、マイクロソフトのWindowsの登場により、コンピュータは一般人にとって一気に身近なものになったわけです。 <br><br>　それまではコンピュータはキーボードから複雑なコマンドを打ち込んだり、さらに前はパンチカードを読み込ませたりして仕事をさせていたわけで、これは野生の馬のタテガミをひっつかんで無理やり乗りこなしているような状態を想像してもらえればいいでしょう。そう考えると、今、皆さんの目の前にあるマウスなどで操作できる環境がいかに楽なものかがお分かりになるかと思います。 <br><br><br>　さて、そのOSですが、アップル社のMacOSも頑張ってはいますし個人的には悪くない(全く触ってませんが)ものだとは思いますが、一般業務、家庭レベルですとマイクロソフト社のWindowsのシェアのほうが圧倒的に高いと思います。今でもユーザが多いWindowsXPが2001年、後継のVistaは2007年の発売です。ちなみに私はどちらも発売日の0時販売イベントに秋葉原に行ってます。 <br><br>　ちょうど2年にもなろうとしているのに、Vistaのシェアは未だ伸びていません。新品のパソコンを買うと最初からVistaなので仕方なく使う、という消極的な採用が多く、わざわざ今までのマシンにVistaを買って入れる、という人は少数派です。 <br><br>　ひとつには外見や操作方法が今までのWindowsから大きく変わっていて、「初級・中級者に厳しく、上級者を苛立たせる」という何を考えているかわからない仕様。これはまあ、Windows98や2000からXPに乗り換えた当時にも感じたような気がしますし、時間が解決することなのかも知れません。次のほうが問題です。 <br><br>　重すぎることと、互換性の問題。今まで問題なく使えていたソフトを入れても、ちゃんと動かないかも知れないという不安と、実際に動かない例があります。最新型の性能のいいパソコンで運用しても何故かもっさりとした動作感も感じます。徐々に改善されてまともにはなってきたものの、発売された直後は実用レベルなのか首を捻る性能でした。馬に装着する馬具が重すぎて、まともに走れない状態、と考えれば想像しやすいのではないでしょうか。 <br><br><br>「メモリを……メモリを喰ってる！」 <br><br>「……そうよ、あれはOSなんかじゃない。上がりすぎたパソコン本来の性能を押さえ込む為の拘束具なのよ！」 <br><br>（新世紀ヴィスタゲリオンより） <br><br>　……ええと、まあそういうわけでVistaはあんまり評判がよろしくなかったりするのです。ここに来て、マイクロソフト社は今年末から来年頭発売の予定として新OS、表題の「Windows7（セブン）」を発表したわけです。実際には去年の早いうちから話はあったんですが、いよいよ開発も後半、開発中だけどある程度まともに動く「ベータ版」を一般にも公開して、使ってもらって意見や不具合を聞こう、という段階に来たのです。やれやれ、やっと表題の話題になりました。前置き長すぎましたか？ <br><br>　セットアップファイルをダウンロードしてDVDに焼いて、職場に置いてある個人所有のお古のパソコンに入れてみました。お古と言ってもまだまだ現役で十分通用する性能なんですけどね。 <br><br><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20250521/18/masanus/78/7e/j/o0300024015600217358.jpg">　<img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20250521/18/masanus/11/6f/j/o0300024015600217364.jpg"><br><br>　単純に入れただけ、の状態ではありますが、Vistaの製品版より数段快適に感じます。ハードウェアを的確に制御する「ドライバ」も何もセットしていないので、もっと速くなる可能性もあります。Vistaをベースに徹底的にチューンナップを施した、という話も伊達でなく、メモリは1GBでも十分使い物になりそうです。 <br><br>　外見や操作感は現状ではVistaと大差ないですが、これはまあコロコロ変えられるよりはいいでしょうね。 <br><br>　さて、何故「７」なのか。これは現行のWindowsの系譜を辿るとWindowsNTというOSが先祖にあたり、そのバージョン4.0の後継、NT5.0がWindows2000として発売されたのです。そしてその次のWindowsXPは実は内部的にはNT5.1であり、Vistaは6.0に相当する、ということに由来します。元のバージョンの表記に立ち返ったわけですね。でも個人的には軽快さを感じはするものの、Vistaから大きく飛躍するほどの変化とも思えず、 <br><br>「Windows6.05」 <br><br>ぐらいでいいんじゃないかなと思ったりもしました。でも発売されたらVistaからアップグレードする価値はあると思います。この調子で開発されていけば、Vistaより数段軽くなるでしょうから。でもその快適さというのはつまりこれ、 <br><br>「ふ、さすがにこのままで相手をするのは失礼だったか」 <br><br>（ジャケットを脱ぐ。ドサッとやたら重い音がする） <br><br>「なにぃ！そんな状態で今まで戦っていたというのかッ」 <br><br>みたいなバトル漫画的なアレなんですぜきっと。<br>
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<pubDate>Fri, 16 Jan 2009 09:49:44 +0900</pubDate>
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<title>あけおめ！ことよろ！を続けて打つと</title>
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<![CDATA[ <img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20250521/18/masanus/4b/7d/j/o0320023615600217341.jpg"><br>皆様、新年明けましておめでとうございます。 <br>えー・・・ <br><br>・・・ねむい。 <br><br>また今年も日付変更後に徹夜突貫にて作りました。 <br><br>まだ荒削りで調整が必要っぽいですが、とりあえずアップ。 <br><br><br><a href="http://home.att.ne.jp/aqua/Masanus/">http://home.att.ne.jp/aqua/Masanus/</a> <br><br>Web版・動く年賀状です。 <br><br>えーとまあとりあえず本年もよろしくお願い致します。 <br><br>・・・ｚｚｚ。<br>
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<pubDate>Thu, 01 Jan 2009 08:12:08 +0900</pubDate>
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<title>ZWEI II</title>
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<![CDATA[ 仕事がなかなかに立て込んでるんでまだちょろっとだけしかプレイしてませんが。<br><br>昔からファンの老舗、日本ファルコムのPCゲーム新作「ZWEI II」、通販予約で申し込んでいたものが届いて<font size="4" color="black" style="line-height:160%;"><b>しまいました</b></font>。<br><br>そもそも旧作のZWEI!!（ツヴァイ、ドイツ語の『２』の意味）は、少年（戦士系）と少女（魔法使い系）、二人の主人公を切り替えながら様々なダンジョンを攻略していく、というアクションゲーム。ファンシーな雰囲気でありながら迫力のあるデカキャラとのボス戦も魅力のゲームでした。2001年発売ということですが、だいぶ前なんですね。<br>それもプレイしてなかなか楽しめましたので、このZWEI IIには発表時から期待していたんです。そもそもZWEIが２って意味なのにIIってナニという話はありますが。<br><br>世界観や時代は共通、前作の主人公たちも脇役として登場しますが、今作はまた別の少年と少女の物語。最近のいろんなマンガやアニメ作品のオマージュというか影響受けてるのではと思ってしまう、どこかでみたような感漂う設定ではありますが、贔屓目混じりながら上手くファルコムらしく王道的にまとめてくれています。<br><br>まだほんの序盤をちょっとだけかじってる程度ですが、とりあえず今週乗り切れば仕事もひと段落ですし、来週火曜水曜と連休もあったりしますので、じっくり取り組んでみたいですね。
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<pubDate>Thu, 25 Sep 2008 20:11:08 +0900</pubDate>
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<title>架空書店（ショートショート）</title>
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<![CDATA[ 架空書店 <br><br>　採光を考えられた少し傾斜のついた広い窓ガラス、それでいて書架には日光が当たらないように設計されているのが見て取れる。案内されたテーブルに着く。腰をかけたソファは硬すぎず、柔らかすぎず。シュッという短い空気音がしたかと思うと腰のあたりの落ち着きがよくなった。座る者の体形に自動的に合わせるという最新型のソファだ。 <br>　店員から差し出されたおしぼりで手を丹念に拭く。手の汚れはもちろん油脂を取り、心おきなく本の「試読」ができるようにするためだ。ここではおしぼりで顔や、まして体を拭くような不届き者はいない。 <br>　テーブルの上に置いてあるメニューを手に取る。頻繁に更新しているであろう、しかもワープロ打ちでない手書きの新刊情報、店員たちによる一口書評が目に入ってきた。 <br><br>　「風の隣人」武井 肇　著　想到社ノベルズ <br>　　読みやすい一品、中盤ほろ苦く読後感は爽やか。マキのおススメ！ <br><br>　丸みがかった若い女の子特有の文字に思わず苦笑しつつ、顔を上げると、目の前の、ここまで案内してきてくれたその女性店員のエプロンの名札がはたして「真希」であった。 <br><br>「これ書いたの、貴女ですか」 <br><br>「はい、今月読んだ本の中では、イチオシですね！」 <br><br>　にっこりと自信満々に答えるその笑顔になんとなく惹かれるものを感じ、思わず注文していた。 <br><br>「じゃあ、これお願いします。それから、なんというかこう、時間をかけてじっくり読むようなタイプの本でなにかお勧めはありますか」 <br><br>「じっくりですか、そうですねえ……」 <br><br>　人差し指を頬にあて、小首を傾げる姿は若いというよりむしろ幼さを感じる。しかし、数秒の後に開かれた唇からはスラスラと淀みのない説明が始まり、予想をいい意味で裏切られた。 <br><br>「洋書ですが『ドルフ戦記』、史実を元にした小説ですが、翻訳が見事です。かなり濃厚な読感ですから、ご自宅でナイトキャップと共に、なんて読み方がいいかもですね。それから最近出たものでは大泉望さんの『許されざる栞』も、腰を据えて毎日数ページずつ読みたくなる小説ですね。他にもいくつか重厚な作品の在庫がございます」 <br><br>「ふむ、ではいくつか見繕って頂けますか」 <br><br>「かしこまりました。少々お待ち下さい」 <br><br>　相当な読書量を窺わせる説明に頼もしさを感じ、”テイスティング”を依頼する。一礼してくるりと踵を返し書棚に向かう彼女の後姿をなんとなく目で追う。エプロンの腰帯に差した水色のハタキがふわふわと揺れていた。 <br><br>「――お待たせ致しました」 <br><br>　書架の間をテキパキと移動しながら集めてきた本を小型のワゴンに載せ、暫くして彼女が戻ってきた。真っ白な手袋をはめた手で一冊を取り上げ、エプロンのポケットから小さなナイフを取り出し、慣れた手つきで帯封を解く。 <br><br>「こちらが『風の隣人』でございます」 <br><br>　受け取って美しい装丁の表紙をめくると真新しい本特有のインクの香りが鼻をくすぐる。ページを繰ると書評通りの清涼感のある文章がするりと頭に染み込んでいくようだ。数ページを斜め読みした後、丁寧に本を閉じる。 <br><br>「うん、いいですね、これはテイクします」 <br><br>「ありがとうございます。それから、こちらがじっくり読むのに向いているとお勧めする本でございます」 <br><br>　そう言うと彼女はワゴンに積まれた七冊の本をテーブルに並べ、『風の隣人』に丁寧にカバーをかけ始める。布製の、手作りらしいブックカバーであった。 <br>　こちらの注文が注文だけに、物理的な重厚感もあるドシリとした手ごたえの本を手に取り、”テイスティング”していく。一冊、少々古く独特の香りのする本があり、それに妙に心を動かされた。 <br><br>「この本は……」 <br><br>「『オーギュメント』ですか。31年前に初版となったものの難解であるとの評判からあまり売れず、当時は日の目を見なかった作品です。作者の榊恒義ではその後に書かれた『瞳と鏡』のほうが有名ですね」 <br><br>「たぶん時代が早すぎたんでしょうね。面白いです。ちょっと重いですから、配送でお願いします」 <br><br>「かしこまりました。ご利用ありがとうございます」 <br><br>　伝票にサインをし、持ち帰るほうの本を受け取り、鞄にしまう。 <br><br>「こちらこそ、いい本に巡り合えました。どうもありがとう」 <br><br>　そう声をかけると、ぱっと眩しいような笑顔を浮かべ、彼女は答えた。 <br><br>「そう言ってもらえるのが、一番嬉しいです！」 <br><br>　帰る前に、”個人用書架”のエリアを覗いていく。この店では購入した本を持ち帰ったり配送にしたりすることはもちろん、こうして会員専用の書架にキープし、いつでも店内で読書をすることが可能になっている。鍵付きのガラス扉はあるものの、他の会員がどのような本をキープしているかが見て取れるようになっており、この棚を充実させることにステータスを感じる会員もいるようであった。また、会員同士でお互い信用できれば友人登録をして本の貸与を許可することができるのもこの店独自のシステムである。 <br><br>　本が売れなくなり、街から次々に書店が消え始めた現在でも、この店の売り上げは良好である。書架を借りたりテーブルを使用したりする場合はチャージがかかるが、昔のように自分で目的の本を探して購入することもできる。この先も生き残っていけるのは、このような独自の工夫をした新しい書店なのだろう。 <br><br>「ありがとうございました」 <br><br>　店員の元気な挨拶を背に店を出ると灰色の空からちょうど雨がぽつりぽつりと降り出したところであった。 <br><br>「読書日和だね」 <br><br>　そう一人ごち、鞄の中の、買ったばかりの本を濡らさないよう早足で駅へと向かう。 <br><br>（おわり） <br>
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<link>https://ameblo.jp/masanus/entry-12904868068.html</link>
<pubDate>Tue, 05 Aug 2008 07:31:48 +0900</pubDate>
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<title>ヨーグルティングＲＰＧ＜２Ｄ＞</title>
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<![CDATA[ <img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20250521/18/masanus/b9/00/p/o0400015015600217313.png"><br>今日は遂に発売まで１ヶ月を切った要注目ビッグタイトルを紹介しよう。<br>その名も「YogurtingRPG-2D」。<br>わざわざ３Ｄのオンラインゲームを、スタンドアロン型のフィールド見下ろしタイプのオーソドックスＲＰＧにして需要あるのそれ、とかいう前評判をものともせず開発も最終段階だ。<br><br>開発中の画面写真が手に入ったので紹介しよう。<br><br><img src="https://stat.ameba.jp/user_images/20250521/18/masanus/5a/c4/p/o0398039715600217323.png"><br><br>冒険の初期、御馴染みのエピ待機ルームがスタート地点のようだ。登場キャラクターのプロフィールも公開されたので要チェックだ。<br><blockquote><br>主人公<br>ＶＩＰ先生（びっぷせんせい）<br>スタート時点でＬｖが２００オーバー、防御力ＭＡＸというバランスを無視した設定が魅力のキャラだ。ただ、常にコントローラのボタンを押して操作していないとすぐに寝落ちし、操作不能になるというクセがアクセントになっている。<br>夢の国の王子で、伝説のコタツを捜し求めて世界を旅することになる。<br><br><br>水上瑞葉（みなかみみずは）<br>オーソドックスなツンデレ系ヒロインながら、あらゆる「挟み」を支配する”挟みマスター”の称号を持つ一面も。これを活かした戦闘スキルには、相手の歯にニラを50%の確立で挟んでイラつかせる『ニラトゥース』など、微妙なものが多い。<br>普通にカタナなどの武器を装備させて殴らせたほうが強いのはご愛嬌だ。<br><br><br>まいつー（まいつう）<br>常にねもがっている寝落ち予備軍。催眠系スキルを受けるまでも無く戦闘中に寝落ちすることもある。<br>棒読み系呪文によりパワーアップをする。<br><br><br>ＲＥＢＩＡ（れびあ）<br>「かぷっちゅ～ｗ」の掛け声と共に敵に齧り付き、血を吸うことで攻撃と体力回復を同時に行う便利なスキルを備えたヴァンパイア系少女。<br>ヴァンパイアなのだが夜中の１２時を過ぎるととたんに弱くなる。<br></blockquote><br><br>次週以降の追加情報を待て！<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/masanus/entry-12904868065.html</link>
<pubDate>Tue, 01 Apr 2008 17:39:40 +0900</pubDate>
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