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<title>マイペースな日々【小説編】</title>
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<description>ド素人の気ままな小説です☆</description>
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<title>はじまり・１</title>
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<![CDATA[ 　結局その日、明石は１６時から通常通りにアルバイトをしていたが、喫茶店が閉まる時間になっても香苗は戻ってこなかった。いつもはしない店内の掃除を隅々まで終え、賄いをゆっくり食べて時間を稼いでも帰ってこないため、明石は諦めて帰ることにした。<br>　カバンを持ち、いざ帰ろうとしたところで喫茶店のドアががらりと開いた。<br>　冷たい風が一瞬、店内に入ってきて、暗闇の中から出てきたのは、明石の幼なじみの塩田さざみだった。制服姿で、紅色のマフラーをぐるりと首に巻き、さらさらと揺れる長い黒髪には雪がついていた。<br>「さざみ」<br>　明石が言うと、さざみはにこっと微笑んだ。<br>「良かった、もう帰っちゃったかなっておもって。一緒に帰ろう」<br>　亜矢は、さざみの赤くなって震えている手、髪やマフラーについている雪の量を見て、しばらくお店の前で待っていたんだなと思っていた。それは、明石も気づいていた。明石を見て、にこにこと嬉しそうに微笑むさざみは、とても幸せそうであった。そしてこの二人が別れたなんて、と驚きながら見ていた。<br>「ササミ、良かったらコーヒーでも飲んでいきなよ。温まるよ」<br>　亜矢はやかんに水を溜め、コンロを点けた。<br>「先生いいの。明石を待っていただけだから。もう帰らなくちゃ、親が怒る」<br>　立ち話をしているうちに、喫茶店の前に一台の車が止まった。中から出てきたのは、香苗であった。香苗はなにか短く話をして、すぐ喫茶店の中に入ってきた。明石は、久し振りに見る香苗が現れたことに驚いたが、嬉しさの方が大きいことに気づいた。そして、自然と目で追っていた。<br>「あ、こんばんわ」<br>　香苗が短く、伏し目がちに明石に言い、前を通って行った。さざみはそんな香苗を引き止めた。<br>「あの。あなたが、もしかして、香苗さんですか？」<br>　香苗は立ち止まり、さざみの顔を一回見て、頷いた。<br>「やっぱり。明石に話聞いていて、会ってみたいなっておもっていたんです」<br>「そうですか」<br>　香苗はすぐ亜矢の元へ行った。<br>「今日は遅くなってしまって、ごめんなさい。」<br>　亜矢は「大丈夫よ」と言って、明石を見た。明石は香苗を見ていたが、さざみはそんな明石の顔をずっと見ていた。
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<pubDate>Mon, 21 Sep 2009 00:08:15 +0900</pubDate>
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<title>出会い・３</title>
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<![CDATA[ 　それから２日ほど経った土曜。ランチタイムが終わって自分達も賄いを食べ、亜矢は休憩しながらテレビを見ていた。するとドアがからんからん、と音と共に開き、息を切らせながら走ってきた明石が「ちわーっす」と言いながら入ってきた。制服を着て、デカイかばんを背負っている。学校帰りだった。<br>「あら？随分早いじゃない。今日夕方からでしょ？」<br>「そうなんだけど。先生に教えてほしいところがあってさ。古文。」<br>「えーどこよ？」<br>「ここじゃダメ。先生んちで教えてよ」<br>「・・・あ～あんたもしかして香苗ちゃんとおしゃべりしたいのね。でも、残念。今日は出かけてるわよ」<br>　亜矢がそう言うと、少しガッカリした顔を浮かべながら明石はカウンターに座った。<br>「香苗ちゃん、おととい以来見てないけど、ずっと２階にいるの？学校はいつからくるの？」<br>　亜矢は明石にグラスに入ったアイスコーヒーを差し出した。<br>「うん・・・大体２階に籠もっているわよ。学校は、すぐにでも明石と同じところに行かせる手続きをしたいのだけれど、香苗ちゃんが行きたくないって言うのよ」<br>「人見知りとかしちゃうから嫌なのかな」<br>「まぁ・・・あの子は色々な事情があるからね。行きたいっていうまで待とうかなっておもっているわ」<br>　明石はふーん、と言って、アイスコーヒーを口にした。聞きたいけど、聞いても教えてくれないから聞かないといった感じに胸につっかえているものを残しながら、ただうつむいていた。<br>「でもまぁ香苗ちゃんって可愛いわよね～。絶対高校に行ったら、アイドルよ。２年はササミで、３年は香苗ちゃん。」<br>「なんでさざみ？」<br>「もーあんたは幼なじみだから分からないかもしれないけど、ササミ人気は侮れないわよ。あの子がウチでバイトしてくれたとき、お客さんでファンになった人多いもの。・・・あなた達って、まだ付き合っているの？」<br>「もうとっくの昔に別れたよ」<br>　明石は空になったグラスの中の氷をひとつ口に含んだ。そしてこりこり音を立てながら噛んで食べた。
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<pubDate>Wed, 22 Jul 2009 00:48:51 +0900</pubDate>
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<title>出会い・２</title>
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<![CDATA[ 　夕食が終わり、香苗は明石に誘われるまま、１階にある喫茶店に行った。らせん階段を降りている途中、目の前の景色が街灯ひとつない真っ暗闇に包まれていることがとても新鮮で、頬にあたる冷たい風に耐えながらしばらく見ていた。辺り一面、濃くて深い闇が広がり、地平線に沿って遠くの明かりが見えてとてもキレイだった。すると立ち止まったまま前を見ている香苗にすぐ前を歩いていた明石が気づいた。<br>「どうしたの？」<br>「いや、真っ暗闇なの、経験したことないから。すごいなって」<br>「あーそっか。田舎は、こんなもんだよ。まぁ先生んちが特に僻地にあるっていうのもあるけど」<br>「そう」<br>　香苗の口から漏れる白い息がふわっと空に舞い上がり、外の寒さがようやく香苗の芯まで伝わり、歩き出した。明石はくすっと笑って、そのまま歩き出した。<br><br>　喫茶店はとても小洒落た所だった。外壁はすべて丸太がむき出しで入り口に小さな黒板にチョークで「本日のオススメ」が書かれていた。ドアを開けると鈴がからんからん、と澄んだ音で響き、「いらっしゃいませ」と優しい声がすぐ聞こえる。亜矢の声だ。<br>「あら、明石。香苗ちゃんにご飯作ってくれた？」<br>「うん。あ、香苗ちゃん連れてきたよ」<br>　店内は、カウンター席が八つと四人掛けのテーブル席がカウンター席に沿って四つあった。入り口はこじんまりしていたので、思ったより中が広く感じた。一番奥のテーブル席に３人サラリーマン達が楽しそうに食事をしているのが見えた。カウンター席には食事後のお皿やグラスが２人分残されており、亜矢がせわしなく片付けていた。<br>　明石は慣れた様子でそのまますぐ横のドアから中に入り、ダウンを脱いで黒いエプロン姿でカウンターに入った。<br>「香苗ちゃん、さ、カウンターに座って。今お店が落ち着いてきたところなのよ。何飲みたい？」<br>　香苗は入り口に立ってどこに座ればいいのだろう、ときょろきょろしていたらカウンターから明石が出てきて香苗の肩と掴んで一番手前の席に誘導した。<br>「さぁ、こっちに座って。ここならお客さんにも話しかけられないから」<br>　明石はそのままカウンターに残された食器を亜矢に渡し、ふきんでテーブルを拭いた。香苗は言われるまま座り、亜矢を見たらぱちっと目が遭った。<br>「なによ明石、やたら香苗ちゃんに優しいじゃないの。」<br>「俺は可愛い子には優しいんです」<br>「あら？私、一度も優しくされたことないけど？」<br>「はぁ？！何で先生に優しくしなきゃいけねーんだよ」<br>　明石と亜矢の掛け合いが実に息がぴったりで、香苗は漫才を聞いているようであった。<br>「ボクは年の離れたオネエサマにはお優しくできませぬ」<br>「まあ。香苗ちゃんだって、お姉さまよ、ねぇ？」<br>　亜矢は香苗に相づちを求めた。香苗はそのとき初めて、明石が自分よりも年下ということを知った。<br>「えっ香苗ちゃんって・・・いくつなの？」明石は驚きながら香苗に言った。<br>「１７。今年１８」<br>「え～！小さいからてっきり同い年か年下かとおもった。俺、１７歳。２年生なんだ。馴れ馴れしく話しかけて、すみません」<br>　明石は急に改まって言った。香苗はそんな様子がおかしくなって微笑んだ。<br>「別にいいよ。ここでの先輩は、あなたでしょ？」<br>　香苗は明石の顔を見て、にこっと笑った。
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<pubDate>Wed, 22 Jul 2009 00:00:55 +0900</pubDate>
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<title>出会い・１</title>
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<![CDATA[ 「出来たよ。こっちにきて」<br>　男の声で香苗はハッとして顔を上げた。気がつけばリビングはとてもいい匂いに包まれ、香苗のお腹もぐるぐると鳴っていた。香苗は招かれるままダイニングにいった。テーブルには、どこかのレストランのようにニンジン、じゃがいもなどが入ったクリームシチュー、卵できれいに巻かれたオムライス、コンソメスープが置いてあった。香苗は思わず表情がほころんだ。<br>「すごい・・・全部あなたが？」<br>「うん。まあ、全部先生のレシピだけどね。俺、下でバイトしてるんだ」<br>　男は香苗を誘導し、いすに座らせた。香苗は「いただきます」と手を合わせてクリームシチューを口に入れた。<br>「・・・美味しい」<br>　そのクリームシチューは実に絶品だった。何の変哲もないし、お腹が空いていただけかもしれないし、特別なスパイスが入っているわけでもないのに、香苗の体にしみこんでいくほど美味しかった。香苗は何も考えずにぱくぱくと料理を運んだ。<br>「よく食べるなあ」<br>　男は香苗の食べっぷりにくすっと笑いながらも嬉しそうに見ていた。香苗は自然と笑顔になっていき、２０分もたたないうちに完食した。<br>「ほんとに美味しい。こんな美味しいもの食べたの初めてかもしれない」<br>「大袈裟だな。東京人は、もっといいもの食べてるんじゃないの？」<br>　香苗は驚きながら顔を上げた。<br>「私のこと、知ってるの？」<br>「うん。先生から聞いた。姪なんだってね」<br>　香苗はスプーンをまっさらな皿の上に静かに置き、頷いた。<br>「たぶん俺の高校に転校になるんだろうし、バイトもしてるし、俺の顔はこれからもよく見るとおもうよ。まあ、何でも言ってくれ」<br>　男は皿をテキパキと片付けながら言った。その男をよく見てみると、すらっとしていて全身から清潔感が漂っていて、何より初めて会ったのにもかかわらず、妙な安心感を感じた不思議な男だった。香苗は男の背中を見ながら、少し心が和らぐのを感じた。<br>「あの。名前、なんていうの？」<br>　香苗が言うと、男は笑顔で振り向いた。<br>「俺、鈴木明石。よろしくね、香苗ちゃん」<br>　男の笑顔はとても輝いていた。
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<pubDate>Tue, 18 Dec 2007 01:37:10 +0900</pubDate>
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<title>新しい土地・３</title>
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<![CDATA[ 　どれくらい眠っていただろうか。香苗がふと目を開けると、周りはすでに薄暗く、しんと冷えていた。思わず「寒い」と呟き、体を起こした。すると玄関のインターホンが鳴った。<br>　ピンポーン。ピンポーン。<br>　香苗は気にはなったが、自分の家ではないし勝手に出てはいけないとおもって黙っていた。しかしインターホンは鳴り止まない。ピンポーン、と何度も家に鳴り響く。香苗は恐る恐るドアを開けた。<br>　ドアの先には、男が立っていた。<br>「あの・・・」<br>　男は黙って香苗を見つめていた。香苗は、とまどいながら言った。<br>「どちら様ですか？」<br>「あ、あの、先生が・・・橘先生が、お店が忙しくて夕飯に呼べないから代わりに作ってって言われて来たんですけど、入っても大丈夫ですか？」<br>　男は白い息を吐きながら、いかにも走ってきましたとばかりに息切れしていた。ダウンの下には黒いエプロンをしていて、スーパーの袋を両手に持っていた。香苗はどうしよう、とおもったけれど家に入れることにした。男は申し訳なさそうに家に入り、慣れた感じでリビングに向かった。<br>「今日のメニューはクリームシチューとオムライスです」<br>　男はそう言ってダウンを脱ぎ捨て、手を洗いながら微笑んだ。香苗は会釈してリビングのソフアに座った。リビングから台所はよく見えて、男のテキパキとした動きに香苗は驚いていた。<br>　あの人、何者なんだろうー
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<pubDate>Tue, 18 Dec 2007 01:22:52 +0900</pubDate>
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<title>新しい土地・２</title>
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<![CDATA[ 「で、地元の私立で、国語を教えてたんだけど３０をきっかけに辞めたの。ずーっと教師でも良かったんだけど喫茶店開くことも夢でね。まあ皮肉なことに、ウチの会社で喫茶店経営もしていたから興味があったわけなんだけど・・・運良く栄養士の友達がいたから、一緒にお金出し合って開き、現在に至るってわけ。<br>　てなわけで、今日から香苗ちゃんは喫茶店の看板娘よ」<br>　ぼんやりと話を聞いていた香苗だったが、はっとしたように寄りかかっていたシートから起き上がった。<br>「え？？」<br>　香苗の様子を見て、亜矢はくすっと笑った。<br>「やっとしゃべった」<br>　くすくすと亜矢は笑い、香苗も自然と笑みがこぼれた。<br><br><br><br>　それから１５分くらい車を走らせた後、車は止まった。その周辺は建物が密接しているわけでもなく、ぽつん、と建っていた。周りは街灯が１０mごとにあるだけで夜になると真っ暗なのが伺えた。１階は田舎の風景に明らかに浮いている小洒落た喫茶店で、２階が横に洗濯物が見えたので住居部分のようであった。<br>「家は２階よ」<br>　裏手にある外階段をかんかんと上っていき、亜矢は鍵を開けた。家はとても掃除が行き届いていてきれいで、玄関には花が飾ってあった。目の前はリビングで、目の前に続く廊下までに左右２つずつ部屋があった。<br>「香苗ちゃんの部屋はこっち」<br>　亜矢がドアを開けたのは、右の一番手前の部屋だった。部屋はとても広く、白を基調としていて机やベッドが置いてあった。<br>「ふふ。色々勝手にそろえちゃった。若い子の好みとか分からなくてさ、元教え子とかに聞きまくったのよ」<br>　亜矢は部屋の隅に香苗のボストンバックを置いた。<br>「それで香苗ちゃん、悪いんだけど、私お店の準備しなくちゃいけなくって・・・行かなくちゃいけないのよ。と言っても下にいるからさ。鍵は机の上に置いておくね。リビングに飲み物とかお菓子とかあるから、好きなだけ食べて。夕飯は呼ぶからそれまでゆっくりしててね」<br>　亜矢はそう言うとせわしなく出て行った。部屋にぽつんと一人残された香苗は、壁に体をゆだね、目を閉じた。
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<pubDate>Fri, 07 Dec 2007 16:45:03 +0900</pubDate>
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<title>新しい土地・１</title>
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<![CDATA[ 　羽田から釧路までは、２時間もかからず行くことができた。知らない土地ではあったが、何だかとても懐かしいような気がした。９月という東京ではまだ汗ばむ気候なのに、少しひやりとした風が香苗の頬に当たった。<br>「香苗ちゃん！こっちこっち」<br>　声が聞こえた。白いワゴン車の前に亜矢が香苗に向かって手を大きく振っていた。香苗は亜矢の方に向かって小走りで行った。<br>「寒くない？東京はまだ暖かいとおもうけど、こっちは寒かったりするからね。これ使って」<br>　亜矢はそう言って香苗の首にカシミヤのピンク色のマフラーをふわりとかけた。そのマフラーはとても暖かく、柔らかく、コーヒーの匂いが少しした。香苗は東京からそのまま来たので、薄いシャツにカーデガンを羽織った服装だった。<br>「これはね、香苗ちゃんのために買っておいたの。香苗ちゃん、とっても女の子らしいから、ピンクがぴったりだと思ってね」<br>「・・・ありがとうございます」<br>　香苗はうつむきながら呟いた。<br><br><br>「実はね、私も家出して、ここに移り住んだのよ」<br>　しばらく釧路の街を車で走らせているとき、亜矢が言った。<br>「私、橘の家が大嫌いでね。特にあのじじい。香苗ちゃんにとっては、ひいおじいちゃんになるのかしら。橘グループの最高顧問で、ワンマンおやじ。あいつのせいで、私は今まで色々なものを制限されて苦しめられてきた。長男である私の弟ばっかり可愛がってるくせに、私の行動もいちいち干渉する。ほんっと最悪よ」<br>　香苗は助手席にうなだれるようにして座っていた。返事もから返事をする位だった。<br>「だからお父さんの反対を押し切る形で北海道にきたの。私、教師になりたくてね」<br>　はきはきしていて、明るい。亜矢はそういうイメージだったから妙に納得してしまった。
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<pubDate>Fri, 07 Dec 2007 13:34:24 +0900</pubDate>
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<title>出生の謎・５</title>
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<![CDATA[ 「あの・・・」<br>　香苗はしばしの沈黙を破って口を開いた。<br>「私のお母さんとお父さんは、いないのでしょうか？」<br>　裕章は、一瞬にして表情が明らかに曇り始めた。亜矢も、うつむいたままだった。<br><br>「ごめん。僕もよく分からないんだ。和子は何も話してくれないし、どこにいるのか、元気にしているのかも分からない。本当に知らないんだ」<br>「でも、私が生まれたことを知っているのなら、私を妊娠している間はお母さんはおばあちゃんの元にいたってことですよね」<br>「いや・・・」<br>　裕章は少し言葉に詰まっていた。香苗は、「言ってください」と小さく言った。<br>「友梨は和子の家を家出している時に妊娠していたんだ。だから和子も君がいたことや生まれたことは知らなかった。そして、君を産んで和子に託し、そのまま失踪した・・・」<br><br>「私は捨てられたんですね」<br>　知りたくはなかった。でも、１８年間胸につかえていたものが、ほんの少し取れたような気がした。<br><br><br><br>　それからすぐ、香苗はアパートの整理をして、ボストンバック一つの荷物を抱え、先に北海道に戻った亜矢の元へ向かうため、電車に乗った。学校の手続きも、アパートの引き払いも、すべて裕章がしていたので、香苗は何もせず旅行に行くような感じだった。学校に友達がいるわけでもないので、東京を離れることは寂しくも何ともなかった。
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<pubDate>Thu, 06 Dec 2007 20:24:52 +0900</pubDate>
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<title>出生の謎・４</title>
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<![CDATA[ 　香苗は、ただ呆然としていた。しばらく和子と二人にしてくれないか、という裕章の言葉を聞いて、ふらふらと部屋を出てみたのはいいけれど、ただどこ行くあてもなく、とりあえず部屋の外に出た。そして、うつむいていると、こつこつというヒールの音が遠くから聞こえ、香苗の傍で止まった。顔を上げると、３０代くらいの、一目見ても気の良さそうな女が香苗の顔を見て笑った。<br><br>「やあ。遅かったじゃないか」<br>　裕章の声がした。<br>「パパ。ごめんなさい、久しぶりに東京に来たものだから、電車乗り間違えてしまったの」<br>「だから迎えをよこすと言っただろう。お前がなかなかウチにこないおかげで、この子は結構な時間ひとりで待ちぼうけだったんだぞ」<br>「迎えは嫌なの。お嬢様じゃあるまいし」<br>　その女は香苗を見てにっこり笑った。裕章はやがて香苗たちの元にやってきて、その女の正体を明かした。<br>「香苗くん、この子が僕の娘で亜矢。友梨の異母姉妹で、年も一緒なんだよ。亜矢、この子が長瀬香苗くん。君の、えー、姪だよ」<br>　亜矢は、一瞬ぎょっとした表情を浮かべた。<br>「ウッソー。いきなり伯母さんじゃない。もお～。よろしくね、香苗ちゃん」<br>　亜矢は手を差し伸べた。香苗もそっと手を出すと、温かくてさらっとした亜矢の手が香苗の手を握りしめた。なんだかとても、懐かしいような気がした。<br><br>「香苗くん。いきなりなんだけど、君は橘家の養子に入ってもらう。今日から、長瀬香苗ではなくて、橘香苗として生活するんだ。そして、亜矢と一緒に北海道に住んでもらう。相談してなくて申し訳ないけど、それでいいよね？」<br>　突然だった。
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<pubDate>Sun, 02 Dec 2007 23:04:46 +0900</pubDate>
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<title>出生の謎・３</title>
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<![CDATA[ 「和子と出会ったのは大学。僕たちは同じクラスで、共に経済を学んでいたんだ。和子は優秀で、美人で、でも気取ったりせず気さくな女性だった。僕たちはすぐ仲良くなって、卒業したら結婚しようって言ってたんだ。でも、たくさんのグループ会社の社長である僕の親父が僕たちの交際に猛反対で、和子を無理矢理退学に追い込み、和子の面倒を一生見る約束で僕たちを別れさせた。」<br>　裕章は、ずっと和子の遺影を見ていた。<br><br>「面倒？」<br>　香苗が始めて声をだした。裕章は、少し驚いた表情を浮かべた。<br>「驚いた。声まで和子にそっくりなんだな。和子は、両親がいないんだ。事故で亡くなったと僕は聞いているけど、実際のところは分からない。奨学金で大学に通っていたんだ。和子が何を考えていたかは分からないけど、たぶん、僕のことを考えて身を引いてくれたんだと思ってる。」<br>　裕章は淡々と語っていた。<br>「その後僕は、親父が連れてきた会社の社員と結婚、子どもが生まれた。そしてその同時期に、和子にも子どもが生まれた。君のお母さん、友梨だよ」<br>　母親の名を初めて聞いた。
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<link>https://ameblo.jp/meme111505230901/entry-10057699505.html</link>
<pubDate>Thu, 29 Nov 2007 12:54:45 +0900</pubDate>
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