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<title>メタモルフォーゼ</title>
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<description>幼馴染の優貴と怜の初恋は、大人達の欲望、相次ぐ家族のとの死別、静かに迫る狂気の影に引き裂かれようとしていく。何にも引き離す事の出来ない固い絆を守る為にふたりが選んだ路とは…？重くなりがちな本編と別に軽めの番外編も時折収録予定。</description>
<language>ja</language>
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<title>m(_ _)m</title>
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<![CDATA[ 体調不良の為しばらく休載します。<br>ごめんなさい。
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-11035404130.html</link>
<pubDate>Sat, 01 Oct 2011 23:15:09 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒―　21</title>
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<![CDATA[ <p>「ふー、何だったんだアレ、老人将棋愛好会か何かか？」<br>名刺でいっぱいになったポーチをぱたんと閉じて優貴は翔を振り返った。<br>「あれ、お前何やってんの？」<br>翔は目を真ん丸にさせて後ろの柱にへばりついていた。<br>「ゆ、優貴…前の前の総理大臣が居た…、あとテレビに出てた人が何人も…」<br>彼が優貴のドレスをぎゅっと掴む。<br>「おー、良く知ってんなあ。ちょっと、何よその手は！お前びびってんの、もしかして？」<br>「だってだって…あんなすげえ偉い大人達がみんなして優貴に頭下げてきてさ…」<br>「テレビに出るのが偉いならのび太だって偉いっしょ。大体テレビくらいうちの親父だって出てるし翔の父ちゃんだって出る事もあるんじゃね？らしくねーなあ、まあ酒でも飲んで落ち着けよ」<br>「優貴、あと、優貴の父ちゃんがさっきからすごい目で睨んでたよ」<br>「ああ、奴らばあちゃんの知り合いっぽかったからねぇ、狸親父的には欲しい人脈、幼稚園児に持ってかれて悔しさ爆発ってとこじゃん？」</p><p><br>優貴はワイングラスを載せたトレイを持って通りすがったウェイターを呼び止めて「二つ頂戴」と若干横柄に命じた。組で一番背の高い二人だがどう見てもせいぜい小学生、ウェイターは迷ったがここは未成年者の飲酒が固く禁じられているカラオケや居酒屋ではない。権謀術数渦巻き札束の雨が降るパーティー会場である。彼は黙って白ワインを二つ差し出した。<br>「有難う」<br>にっこり笑ってウェイターのポケットに札を突っ込む優貴は抜け目が無い。ごちゃごちゃ言う奴も言うので黙って持って来てくれる奴をキープしておくに越した事は無いのだ。<br>「おお、美味っ」<br>「マジ？あ、ほんとだー！てかさーあ、翔、ゆいたいんだけどー」<br>「おおう、何だ？ドレス掴んで悪かったよ、皺になったとか？」<br>「下らんドレスなんかどうでもいーい！お前あたしの一の子分なんでしょ？違うの？」<br>「そうだけど…？」<br>「だったらあたしに頭さげてぺこぺこしてったさっきのじじいどもより、お前、立場、上って事よ？そこんとこ、わかってる？」<br>翔はぽかーんとした。優貴は更に言葉を重ねる。<br>「こんな事ゆーの、今日だけだよ？今後、一生、絶対ゆわねーから、よーく聞けよ？あのね、あたしが居なかったら天才ってゆわれてたのはきっと、翔だよ。小、中、高と進んでけばいずれ解るって。そんでいずれはあの辺で日本を回してく役になるんさ。ただし、お前がそれを望めば、だけどね」<br>優貴は暖炉の辺りを指差した。彼女の父を始め先程の老人達、いずれもテレビや新聞で見慣れた顔が談笑している。</p><br><p>「日本を回す…？！」</p><p>ごくりと唾を飲み込んで、それは具体的にどういう事なのか想像してみる翔に、優貴が瞳をきらきらさせて悪戯っぽく迫ってくる。</p><p>「ねーねー、翔は将来どーしたいのー？やっぱ、『如月』を継ぐのー？卒業文章の下書きの、『将来の夢』に『お婿さん』とか書きやがってよお、てめーはオンナかよ？ああっ？」</p><p>「『如月』も親父も、オレ的にはどーでもいいんだよなあ…。てか優貴って、やっぱすげーのな。何だ、その、『日本を回し』てる奴らと、たいとーに、しゃべってんだもん」</p><p>「ええっ？あたし別に、将棋とチェスの話してただけじゃん？じじいらの権力争いなんか、浜小と鈴小の縄張り争いの百分の一も興味ねーし」</p><p>「……」</p><br><p>（だから、放っておけないんだよっ…！）</p><p>『優貴は頭脳の割に肝心な所で抜けている』</p><p>…この事実を知っているのは多分自分だけだろう、と思う程に、自分がしっかりしなきゃ、という気持ちに彼は否応なくさせられた。優貴は知能年齢は大人だが、精神年齢が全くそれに付いて行っていない。</p><p>一方で両親共働きでしかも両方共肩書きは社長、姉・兄とも歳が離れていて双方家には寄り付かないどころか札付きの不良であり、そこでただ一人の『鎹（かすがい）』の万事両親の期待に応えてきた（彼としては実のところそれは全て優貴に張ってゆきためだけであったのだが）秀才として家族を纏めてきた、気働きだけは些細なところまで完璧に出来てしまう翔は、精神年齢的にはかなり早熟だといえた。</p><br><p>「ああ、まーな。てか、俺にも今度将棋教えろよ。駒の動かし方くらいは兄貴に教わって分かるけど、兄貴は弱すぎるし、あんまやった事なくってさ」</p><p>「わー！マジ？対戦してくれんの？最近ばあちゃん以外の対戦相手いなくて困ってたんだあ。けど、あたし手加減なんかしてやんねーからなっ」</p><p>「おお！上等だ、こないだのハイキックの借りを王手で返してやるぜ！」</p><p>翔の挑戦に優貴は再び極上の笑みを刻んだ。パーティー用の笑顔とは全く別物の、かと言ってあえて無邪気を装っている訳でもない、それは紛れも無い、彼女の本気の笑顔であった。</p><br><p>「…んで？」</p><p>白ワインをくいーっと飲み干して、バイキング形式になっている料理と、酒をトレイに載せてうろうろしているウエイターの間で視線を彷徨わせながら優貴が問う。</p><p>「まだ聞いてなーい！翔、お前の将来の夢！」</p><p>「優貴、お前、もしかして酔ってるだろ…？」</p><p>「酔ってなーいっ、ないったらなーい！さっさとゆわないとビービ―弾百連射祭り！」</p><p>何だよそのとてつもなく物騒な祭りは…、と苦笑しながら翔は答える。</p><p>「その言い方がすでに酔っぱらってるっぽいんだけどなあ…、いーよ、云うよ。俺の将来の夢は…」</p><p>「…夢は？」</p><p>「『チーム優貴』の、サブリーダー！！」</p><p>「はあっ？あんたアホ？一生ビービ―弾撃って過ごしたいワケ？」</p><p>「誰もそんな事、言ってねーだろ」</p><p>翔は苦笑して、通りがかったウエイターにソフトドリンクを頼もうとしたら、優貴の、「白ワイン、グラスでふたつ！」との声に遮られてしまった。</p><br><p>「俺は、今も将来も、優貴のサブリーダーで居たいんだよ。優貴が国会議員になってお父さんみたく総理を目指すなら俺は秘書になる、もしうちの父親みたいに社長になるなら俺が副社長になる。優貴の、隣に居たいんだよ！俺は！今更、ダメとかゆーなよな。俺よか優秀なヤツなんか、さっき優貴自分でゆっただろ、そうそう居ねぇんだからっ」</p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-10968141383.html</link>
<pubDate>Tue, 13 Sep 2011 10:40:24 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒ー　20</title>
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<![CDATA[ <p>「あ、初めまして」</p><p>途端にガキ大将の素顔からお嬢様の仮面を纏った優貴はそつのない応対をする。</p><p>「経済界の今をリードする方からのわざわざのご挨拶、身に余る思いでございます。こちらこそ…、でも、お父様はあちらですよ。わたくしから、ご紹介いたましょうか？」</p><p>「いやいや」</p><p>大男は苦笑、とも何とも言えない笑顔を刻んだ。</p><p>「わたくしは真理様と将棋仲間でしてね…、優貴様が真理様より、お強いかもしれないと真理様からお聞きして、これは是非に、とご挨拶にお伺いしただけです。いかがですか、いずれわたくしと一局」</p><p>「はあ…」</p><p>優貴の頭脳はくるくる回転する。おそらく、この男は嘘を言っている訳ではあるまい…、それは、六歳にしてひとを見過ぎる程見てきた彼女の、本能で、判る。そしてかれの、自分の祖母との繋がりが深い事も。</p><p>（ばあちゃんは、やっぱし、なかなかどうして只者じゃねーな…）</p><p>「わたくしなどでよろしければ」</p><p>優貴はにっこり微笑んでみせる。天使の笑顔、と、周りがほめたたえる微笑。</p><p>「けれど、わたくしとおばあさまとは、今はもう互角なので、油断なさいませんことよ、柴崎社長」</p><p>「…あはははは、こりゃまいった、さすが真理様の見込んだ華京院の…」</p><p>「それで」</p><p>豪放磊落に笑うかれの笑顔を、優貴が遮る。</p><p>「勝負、っていうものはそれだけのモノを、賭けてやるものですよねえ？社長？貴方は何を賭けます？わたくしは、何を賭ければ、よろしいのですか？」</p><br><p>場は一瞬、しいんとなった。優貴の挑戦的にきらめく瞳と、酸いも甘いも噛み分けた『茅場町の鉄人』、柴崎の瞳が一瞬火花のように交錯する。</p><br><p>「うわっはっはっはっはっはっは、これはこれは、お嬢ちゃま」</p><p>「なんで笑うんですかっ？」</p><p>「俺が、負けたならば、何でもひとつ、君の言う事を聞こう―この日本で、金の力で動かせない事は、そうそう、無い―のでね。しかし君が負けたら…」</p><p>「あたしは誰にも負けません！」</p><p>優貴は高らかに言い放った。すでに天下無敵のガキ大将の素がほぼ見えてしまっている。</p><p>柴崎は髭の下で微笑んだ。</p><p>「いつも、君が、そうである事を祈るよ。お姫様。…しかし、この条件だけは、覚えておきなさい。私は、君に負けたら、ひとつだけどんな事でも君の言う事を聞く、とね。ただし、それは反対条件次第にもよるが…おお、怖い怖い、君のお父上がこっちを睨んでいる、私はここらで退散するとしよう、良かったら受け取ってくださいませ、私の名刺ですが、いつか役に立つこともあるでしょう」</p><br><p>一礼して去って行った柴崎の後に、優貴の周りには今をときめく人間の輪が出来ていた。</p><p>「先程はお見事でしたよ、流石華京院の後継者のお嬢様…華京院先生と懇意にしていただいいております、菱形商事の山形と申します」</p><p>「あ、わたくしは○○弁護士事務所のパートナーの秋山です、是非お見知りおきを」</p><p>「初めまして。私は東京地検特捜部の大内と申します、どうぞ宜しくお願いいたします」</p><p>「お嬢様、お初にお目にかかります、わたくしは財務省の事務次官の桑畑と申しまして…」</p><p>優貴がマナー通りに丁寧に受け取る名刺があっと言う間に増えてゆく。と、ある事に思い当たって彼女はふ、と苦笑した。</p><br><p>（うっわ…、三権分立どころか三権集合しちゃってるよ！この手の中に）</p><p>優貴の胸が思わずときめく。</p><p>（何だろう、この感じ……）</p><br><p>「こんばんは。先程柴崎社長からお話があったとおもいますが、うちのグループは社長の代から身を起こして一部上場してもう五年でしてね、お嬢様が株に興味がおありだと、真理様からお聞きしましたのですけれど、事前に情報を流す事も幾らでも…」</p><p>「インサイダー取引に興味はありません！」</p><p>優貴の声は相変わらず凛と響く。</p><p>「おばあさまはおばあさま、私は私よ！取り入るなら、その先を間違っているわ、おじさま方。あの暖炉のあたりの、狸親父の前をうろちょろしてた方が時間のロスじゃあ、ないんじゃなくって？」</p><p>その次の声は流石にひそめられていたが、柴崎の部下を慌てさせるには充分な効果があった。</p><p>「いやいやとんでもない！私達は修三氏では無くて、貴女にご挨拶に伺っているのですよ、『裏華京院』の正当な後継者たる…」</p><p>隣の大内が慌てて小声で止めたが、優貴の耳はそれを聞き流さなかった。</p><p>「おい、それはこの方にはまだ伝わってない筈だ」</p><p>（『裏』…？『後継者』…？何だろ？ばあちゃんにあって狸が継がなかったモノ…まあいっか、後で考えよー）</p><br><p>「それで、皆様もおばあさまの、将棋仲間でいらっしゃるんですか？わたくしは最近、チェスも好きですけど」</p><p>彼女は虫も殺さぬ歳相応の笑顔で尋ねる。</p><p>「おお、チェスなら自信がありますよ」</p><p>弁護士の秋山が嬉々として乗ってきた。</p><p>「おい、この悪徳弁護士め。チェスは本来正義の味方たる検察官向きのゲームだぞ。俺の華麗なキャスリング・ターンに手も足も出なかった癖に、何が自信だ」</p><p>大内がすかさず口を挟んだ。どうやら弁護士と検事のふたりは元々の知り合いらしい。</p><p>「取った駒を自陣で使うあたりが将棋の気に入らんところだ、いくら真理様がお好きでもどうもここだけは譲れねえ…、どっかの法律ゴロならやりそうだがな」</p><p>続けた大内の物言いが面白くて優貴はつい口を挟んだ。</p><p>「あら、わたくしは使えるものなら何でも使いますけど？諺にもあるじゃあ、ありませんか、立ってるものは狸でも使え、って」</p><p>暖炉の方にちらっと一瞥を向けて言う。</p><p>これには、狸、が差すのが誰だか一瞬にして分かってしまっている一同、大受けであった。溜飲が下がったらしい秋山に至っては腹を抱えて笑ってしまっている。</p><br><p>「ゆ、優貴お嬢様、貴女と本気で対戦してみたくなってきました」</p><p>はーはーと笑いながら大内が言う。</p><p>「たまに真理様の離れに皆でお邪魔していますので、今後は是非ご一緒に」</p><p>「こちらこそ、楽しみにしております、先生」</p><br><br><p>と、そこで、レディ・マサコのスピーチがあるというアナウンスがかかった。</p><p>一同はみな一礼して名残惜しげに優貴の傍を去ってゆく。</p><br><p>（いろいろ、忙しい日だなあ、今日は…でも、みんな面白そうな奴だったな。）</p><p>彼女は手のひらの名刺を見返して名前と顔と職業、ついでに連絡先を頭に叩き込んだ。</p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-11011302456.html</link>
<pubDate>Sat, 10 Sep 2011 00:28:57 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒―　19</title>
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<![CDATA[ <p>「優貴が良けりゃ、って、なにそれ？！てめーは、自分の意見とか、プライドってもんが無いワケ？仮にも如月の後継者として、何かあるでしょ？おじさまもよ！」<br>（だからあ…優貴の隣に居るっつーのが俺の望みとプライドであってだなあ…）<br>しかしそれをこの、あろうことかパーティーの場で、彼女らしくもなくガキ大将の素に戻ってしまっている親分の前で言う訳にはゆかなかった。<br>父親は優貴のオーラに圧されている。周りの人々はこちらを見てざわざわしている。このままでは、当の優貴自身の評判がどうなるかわかったものではない。<br><br>（はあぁー…困ったなあ…えーと、ええっと…）<br>翔は秀才の頭脳をフル回転させて場を丸く収める方法、もとい親分の機嫌を収める台詞を必死に考えた。</p><p>（とりあえず優貴さえ納得させれば、周りは何とかなるはず…！この際、親父もグループも知ったこっちゃない、つーか俺的に元々どーでもいいしー…けど俺が優貴に軽く見られるのはぜったい嫌だしなぁ…それこそ優貴がこないだゆってた『ほんまつなんとか』…なんだっけ……あ！！）</p><p><br>「優貴、頼む耳貸して」<br>「何よっ」</p><p>優貴は翔の懸命な表情に、渋々ながら耳を傾ける。<br>「あのな、如月グループは今上々を控えて、一番不安定な時期なんだよ、解るだろ？優貴なら。うちの親父なんかとは、比べ物になんねー権力を、優貴の父ちゃんは、持ってんの。その機嫌損ねたら、どっからどう、突っつかれて崩れるか分かんねーんだよ、うちは。俺は今日は、そこを考えてんの。優貴の気持ちはすげえ嬉しいけど、ちょっとはその辺も、考えてくれよお。なあ」 </p><p>「あっ…あ、…ごめん、翔…」</p><p>優貴がはっと我に返りお嬢様の仮面を取り戻す。</p><p>「悪かった、翔…あたしとしたことが」</p><p>この、ひとに謝っている姿など一度も見た事も無い親分に謝られて翔はあっけなく調子を崩してしまう。</p><p>「ええっ？いいって優貴！あやまんなよ！俺は…」</p><p>（ほんとは如月グループなんか知ったこっちゃねー！優貴さえ良けりゃ、幸せそうなら、俺、別に何がどーでもいいんだし！今日のパーティーだって優貴に会いたくて来たんだし…）</p><br><p>それは事実だった。クリスマスイブに優貴と会える、それは、翔には、何とも言えず特別で素敵な事のような気がした。今日の、まるで良家のご子息（実際そうでなくもなかったが）のような出で立ちは、アパレル関係の会社を経営しており今日は別のパーティーに出席している為彼らとは別行動を取っている母親に根掘り葉掘り聞いて用意して貰ったものだ。そのサスペンダーで吊るされたズボンのポケットの中には、夏の縁日の射的での一位の景品・優貴が欲しい欲しいー！と騒いでいた翡翠の指輪がー最も優貴の性格からして指輪などに興味を持つ筈は無いので、ただ単に一位のだから負けず嫌いの彼女としては欲しい、というだけだったのだろうと彼にはとうに推測がついていたがー、同じ組の長谷川麻美に頼んでラッピングしてもらったものが、渡すタイミングが計れず彼女へのクリスマスプレゼントとして入っていた。</p><br><p>「あ、でもだいじょぶだいじょぶ、親父はばあちゃんにだけは逆らえねーから！今日の狸親父のしっつれーな行動、みんなばあちゃんに言いつけてやるよっ、翔！そしたら『如月グループ』も安泰、あたしも狸に怒られなくて済む、これでめでたしめでたし、だあー！！」</p><p>ささやき声が徐々に大きくなってまた普段の笑顔になった親分とその言葉にほっ、と彼が安堵の息を吐き、一方現実的な優貴が、</p><p>「あ、そういえば腹減らねー？あの辺から何か、取ってこよーぜ？」</p><p>などと普段の会話を始め、</p><p>「お、あのミートボールっぽいの、めっちゃ美味そうだな。あっちのなんかスパゲティみてえなのも食いてぇな…」</p><p>「そりゃあ美味そーだけどさあ…お前、せめてパスタってゆえよ」</p><p>「あー？呼び方で食いもんの味が変わるってかあ？よっしゃ、行こうぜ親分！」</p><p>「たしかに…飲み比べの前に食べ比べでも行っとくぅ？」</p><p>などと、やっと普段の『浜沿小学校付属幼稚園』の親分とその一の子分の調子に戻ったふたりの間の和やかな空気に、</p><br><p>「お話し中失礼致します、華京院優貴様ですね？お噂はかねがね真理さまから。…今日はほんの、ご挨拶に。」</p><p>至極丁寧な態度で割り込んで来たのは、政財界の誰もが知らぬ者は居ない、今をときめく『柴崎ファンド』のトップ・豊かな髭を蓄えた恰幅の良い大男・柴崎亮介であった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-11006814770.html</link>
<pubDate>Sun, 04 Sep 2011 02:48:05 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒―　18</title>
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<![CDATA[ <p>「あ、初めまして。如月のおじさま。こちらこそ息子さんにはいつもお世話になっております！どうぞこれからもよろしくお願いいたします」</p><p>一瞬で外用の仮面を付けて美事な愛想笑いを披露する優貴に、翔はせっかくの思いで取れた二人の時間を邪魔された不愉快を隠せない。</p><p>「おい、親父。幼児園児の機嫌取ってて、どーするんだよ。もっと他に、やる事があるだろーが」</p><p>低い声、というかその歳からぬ地を這うような声で父親にだけ聞こえるように囁く翔を笑顔で黙らせて、優貴は更に続ける。</p><p>「近々上場なさるんですってね、お父様は目覚ましいご活躍だわ、ねえ翔」</p><p>「……」</p><p>「おお、お嬢様はお美しいだけでなくご利発でいらっしゃる…！」</p><p>父親の視線が自分の世界一大事な親分を舐め回すように眺めるのを、かれは見てしまった。</p><p>「この会場広しと言えどもお嬢様程お綺麗な方はいらっしゃらないでしょう、まるで挿絵から抜け出て来たようだ…」</p><p>「てめっ、親父！」</p><p>いいかげんにしろよっ！とキレかけた翔に構わず優貴はパーティー用スマイルと得意のさり気無ーい、ーくもなかったがー嫌味でで鮮やかにスルーした。</p><p>「いやだわ、おじさま。あんまり誉めすぎると、歯が浮いちゃいますことよ」</p><br><p>と、そこへ、翔に取っては救世主、優貴にとっては地獄の使いの様に登場したのは華京院修三・目下最も総理の座に近いと巷で言われている彼女の父親であった。</p><p>「優貴。何をそんな下請の子供なんかと喋っているんだ！菊の宮の姫君が、お前をお待ちかねだぞ」</p><p>（下請…！！）</p><p>一同は皆一瞬息を飲んだ。</p><p>確かに如月グループは先の代まで、修三の父の持っている建築会社の下請工場でしか無かった。しかし一代でそれを上場間近まで発展させた翔の父親・正和の功績は未だ修三には伝わっていなかったらしい。</p><br><p>「お父様、謝ってください！」</p><p>優貴の声はどんな場所だろうと凛とよく響く。</p><p>なんだなんだ、と周囲の人々の注目が集まってくるのをものともせず、</p><p>「翔はわたくしの親友です。親友を侮辱する方など、もうお父様とは呼べません！」</p><p>響き渡ったその声に、場は騒然となり、『下請』呼ばわりされた如月正和は青い顔でわなわなと震え出し、当の修三はあからさまに狼狽えた。</p><p>「…、ゆ、優貴、場をわきまえろ」</p><p>声でさえ上ずっている。</p><p>「いいえ！」</p><p>そこに更に響いた声は翔のものであった。修三を真っ直ぐに見上げる。</p><p>「優貴さんは、悪くないんです。僕がわがままを言って、引き留めてしまったから…、本当にすみませんでした、華京院先生。今後気を付けますので、お許しください」</p><p>いつの間にか翔が、自分を庇うように立ちはだかった優貴を押しのけて90度以上のお辞儀をしていた。</p><p>「解ったならいい…。優貴、行くぞ」</p><p>「いいえ！行きません！お父様」</p><p>自分の一等大事な子分が狸親父如きに頭を下げている、その事実は優貴の、常に冷静沈着であろうとしている理性をも軽く取っ払ってしまうに充分だった。</p><p>「ひとをそうやって差別する人間が、仮にも一国の総理を務めようとするおつもりですか？それに国民がそんな人物についてくるとでも？お父様なんかがなったら、日本もおしまいだわ！大体『下請』なんて、お父様は、いつの話をしてらっしゃるの？新聞を、読んでいらっしゃらないの？そんな人物になんて、わたくしだったら、投票なんかぜったいしないわ！」</p><p>「……」</p><p>修三は数秒黙りこくった。</p><p>「済まなかったね、君」</p><p>ふんっ、とでも言うように踵を返して元の場所に戻っていった。</p><p>やべえやべえ、と焦る翔の、背後で自分の父親の、喜色満面、という顔が、見なくてもわかる。</p><br><p>この瞬間の優貴を、生涯忘れる事は無いだろう…</p><p>と、かれは思った。</p><br><p>そう、それは、彼女自身が持って生まれた、王者のオーラ。</p><p>『華京院』も何も関係無しに、生まれながらにして定められた輝き。</p><p>ああ、俺は…</p><br><p>（優貴の、隣に居たい…）</p><br><p>場は一瞬静まり返り、次に何故か、暖炉の前ーと、いう事は権力中枢そのものだーが、徐々にひそひそやり始めた。</p><p>（そうか、あれが…真理様の）</p><p>（後継者か、さすが、『裏』の…）</p><br><p>暖炉の傍のざわめきに、聞くとは無しに聞き耳を立ててしまう気が回りすぎる翔に、目の前の親分の顔がずずずいーーっ！と迫ってきていた。</p><p>「わわっ？優貴？さっきはありがとな。けど、こんなとこで親子喧嘩なんかしなくてもいーじゃんか！目立つだろ？俺と親父が大人しく謝りゃー、とりあえず、丸くおさまったんだからよー」</p><p>「はあっ？あんな事ゆわれて、おさまるワケ？翔は？」</p><p>そんなヤツを一の子分のしとくのは問題だ、達也に代わってもらおうかな、とかブツブツ言っている親分に、かれは思いもかけぬ爆弾を思わず落としてしまう。</p><p>「別に親父は親父、俺は俺だし。俺は優貴が良けりゃ、それで何でもいーもんよ」</p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-11002974592.html</link>
<pubDate>Wed, 31 Aug 2011 02:24:08 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒― 17</title>
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<![CDATA[ <p>修三が暖炉前の、同じ党派の議員達が集まっている辺りへ片桐に連れられて行ってしまうと次に寄って来たのは貴美子のお取り巻き達であった。雨霰と降るお世辞に彼女の機嫌がみるみる急上昇したはいいものの、優貴は様々な香水の入り交じった匂いに頭がくらくらしてきた。<br>（はあーあ…狸とカタギリにくっついてった方がまだマシだったかも…）<br><br>と、背中に何かが当たって優貴は振り返った。<br>（翔ー？！）<br>会場の斜め向かい側の壁際、同じくらいの背丈の男の子三、四人と一緒に居る幼馴染みがこちらへ大きく手を振っていた。<br>下を見ると落ちているのはワインのコルク。<br>（あいつ、凄え…）<br>この人混みの中で、優貴の小さな姿を探し出すだけでも大変な筈だ。そして人が割れる一瞬の隙を見計らって、正確なコントロールで彼女にだけ当たるように軽く小さなモノを投げる。<br>（…っ、信じらんねー、天才じゃねーの？）</p><p><br>談笑に夢中になっている貴美子を放り出して優貴が真っ直ぐ翔の方へ向かうと、彼も連れの子供達へ一言二言何か言い置いて駆けて来た。<br>「翔！ナイスコントロール！…てかお前、こんなとこで走んなよ、ガキかよ」<br>「へへ、すげーだろ？…悪ぃ悪ぃ、優貴が気付いてくれて嬉しくってついさあ」<br>どこからどう取ってもふたりはガキ以外の何者でも無い。しかし話題にしろ何にしろ、優貴のレヴェルにぴったり付いて来る、そんな所がこの一の子分の、彼女の大のお気に入りたる所以であった。<br>「しっかしこんな人多いのに、よくあたしの事判ったねえ」<br>「俺の目をなめんなよ。こん中に一億人居たって俺はすぐ優貴の事見付ける自信あるぜ。『チーム優貴』のサブリーダーとしてだな…」<br>「変なチーム名と役職を勝手に決めんじゃねー！」<br>優貴は人垣から死角になっている左手で翔の腹に軽くフックを入れる。うっ、と腹を押さえつつ、<br>「あ、そうそう、あっちに居た奴ら、浜小の三年だってさ」<br>「マジ？サブリーダー、お手柄ー！で、どんな奴よ？」<br>「珍しく誉められたとこ悪ぃけど、奴らは使えそーにねーよ。ケンカなんか縁もなければ、年上のくせに頭も悪いときた。親の方はかなりいいとこだぜ…優貴んとこと反対派の議員に、すぐそこの大病院の院長の息子に、会計事務所のパートナー…若いのに凄ぇな」<br>「こんなパーティーに来てるぼんぼんらが使えるだなん最初っから思ってねーよ。てか、うちらと歳が近いからってオヤが若いとは限らねーよ？もしかして、すげー歳とってからの愛人の子供かも…」 </p><p>「アイジン？何だ？そりゃ」<br>幾ら人一倍頭が切れ、更に優貴に張ってゆく為に日々努力を惜しまない翔とて所詮は幼稚園児であった。そして優貴も。彼女は一瞬説明に困る。<br>「んーっと…、ケッコンしてる奴以外に交尾してる奴のコトよ。例えばあ…アレ、うちのくそおやじの愛人。あ、これ誰にもゆーなよ」<br>優貴は暖炉の傍で談笑している修三に付き従っている片桐を指差した。<br>「言わねーよ、俺口固ぇ」の、知ってるだろ。…ふーん、交尾ねえ…」<br>翔が納得したようなしないようなしないような感想を漏らす。<br>「優貴の母ちゃんのが美人なのになー」<br>「美人だからいいって訳でもないんじゃね？あ、でもあたしがオトコだったらやっぱし、可愛い子がいいかなあ、ほらうちの組の麻美ちゃんとか、ね、翔はどーなのよ？」<br>「えっ、俺そんなの分かんねー…」<br>「嘘つけよー！『好きな子だあれ』であたしを差し置いて一番になりやがってモテまくってるくせによ。翔も、美人がいーの？つーか、翔もやっぱ麻美ちゃん好きなの？みんなには黙っててやるから、この際吐いちまえー！」<br></p><br><p>優貴がショートカットで男の子だと思われていた年少組、女の子全員が優貴を指差したものだった。そして優貴の髪が伸びて顔立ちの美しさが際立ち、紛れも無い『女の子』になってしまった年長組、そのお鉢は翔に回った。つーんとそっぽを向く優貴を除いて。そして女の子バージョン。そういう対象にされる事を極端に嫌う優貴にぶっ飛ばされるのを恐れて誰もが憧れまくりつつ彼女を差せないでいる（という事実を知らないのは当の優貴のみであったが）中、大人しい子を好きな少数派が長谷川麻美を指差したのだ。<br>「はー…優貴は何でアイジンの話からそんなとこに話が飛ぶんだか…俺は別に、絶対美人じゃなきゃ、とは思わねーな。飾っとく訳じゃあるまいし」<br>「おおー！さすが翔、いいこと言う！それに翔は余計な事言わないのね、だから好きー！」<br>優貴がぎゅうっと翔の手を握って極上の笑顔になる。翔の心臓が思わず跳ねる。しかしそこに何の特別な意味も込められていない事も、彼はとうに解ってしまっている。<br>この親分は暴力と同じくらいスキンシップも過剰だ。自分を男の子と思っていた頃の癖が抜けないのであろうか、手を繋ぐ、肩を組むは当たり前、ちょっと嬉しい事があると抱きつく。飛び付く。抱き上げてぐるぐる回る。おまけに『わーい、大好きーっ』との言葉付きだ。<br>子分らが「俺はゆーきに何回好きって言われた」「俺は何回だ」との不毛な争いを繰り広げるのも無理からぬ事と言えた。</p><br><p>「余計な事って？」</p><p>「下らんお世辞！綺麗だのお姫様だの、あーだこーだ、もう耳にタコが出来るどころか巣を作って繁殖しそーな勢いだわー」</p><p>「……」</p><p>鏡を見ろ鏡を、との一言は賢明にも翔の胸に飲み込まれる。本当は彼だって、どれだけ言いたいか知れないのだ。優貴が世界中でどんなにいちばん綺麗だと、自分が思っているか。彼女が人の群れの中でどれだけ光り輝いて見えるからこそ、自分はこの人混みの中で彼女を見つけられたのか。自分の日々が、他の誰よりもどれ程優貴一色で埋め尽くされているか。しかし、それは彼女の前では決して『言ってはいけないコト』だった。</p><p>彼はにやっと笑って言ってやる。</p><p>「『お姫様』ねえ、他の奴らが正体を知ったらきっと、目を回して吹っ飛ぶだろーぜ」</p><p>「うっせ！くそじじいとくそばばあ、つーか華京院家の為だもん、しゃーねーだろ！ぶっ飛ばすぞ」</p><br><p>と、そこへ、</p><p>「おお、これは華京院のお嬢様、息子がいつもお世話になっております」</p><p>赤ら顔を、大分酔いが回ったのであろうか、さらに赤くして現れたのは翔の父親、来年には上場が見込まれている『如月グループ』の代表取締役である如月正和であった。 </p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-10989154565.html</link>
<pubDate>Sun, 28 Aug 2011 21:36:27 +0900</pubDate>
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<title>(下書き) side Rei</title>
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アメンバー限定公開記事です。
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/amemberentry-10972454282.html</link>
<pubDate>Sun, 14 Aug 2011 00:51:06 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒―　16</title>
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<![CDATA[ <p>クリスマスパーティーは麻布の大規模な有名フレンチレストラン―優貴も両親に連れられて行った事がある―を貸し切って行われていた。名物としている噴水付きの庭園はライトアップされ、大きなツリーが飾られ、そこに雪が積もりはじめている光景がちょっとした見物である。</p><p>修三お抱えの秘書兼運転手の白いベンツで三人が到着した頃には、もう宴もたけなわ、という様子であった。</p><p>（翔、来てるかなあ）</p><p>今日だけは下らない愛想と社交辞令を振り撒くのは程々にさっさと人混みに紛れて両親の傍を離れてしまい、いつもの仲間と楽しんでやろうと企んでいた優貴はクロークに荷物とコートを預けて会場に入った時点で唖然とした。</p><p>（人、多っ…、何、これ…？）</p><p>パーティー慣れしている優貴でも初めて見るくらいの会場の広さに、立食パーティーだからこそなのか、史上最高の人口密度。無数のシャンデリアと女達のドレスのスパンコールやレースの輝きに目がチカチカしてくる。</p><p>（これじゃ翔、探せないじゃん…あれ？）</p><p>蜂の飛行のようにわんわんと響く人々の話声の中で響いてくるのは弦楽器の音色であった。</p><p>（これ、『ディヴェルティメント』じゃん！弦楽四重奏入れてんだあ、やるーぅ！）</p><p>優貴が本を乱読する如く、怜は事クラシック音楽に関する限り、ピアノ・ヴァイオリン独奏はもとより交響曲からオペラまで乱聴、と言えるくらい何でも聴く。よっていつも一緒に居る優貴も自然と曲名に詳しくなってしまうのだ。</p><br><p>と、そこへ人垣を縫って現れたのは優貴にして心の中で、やるーぅ、と云わしめたこのパーティーの主催者である人物、嘗ては海外のとある大統領の第二夫人であり、クーデターによってその座を追われた今でも日本の政財界に裏で深く関わっているという噂が絶えないレディ・マサコであった。</p><p>「華京院様、お待ちしておりましたのよ！」</p><p>「これはレディ、せっかくのお招きを頂きましたのに遅くなって申し訳ない」</p><p>「貴美子さんも…相変わらずお綺麗だわ、ねえ、十何年振りかしら」</p><p>「嫌ですわ、真佐子様におっしゃられるとわたくしなど恥ずかしくって…」</p><p>両親の社交辞令は優貴の耳を素通りしてゆく。</p><p>（うっわ…ちょっと、ヴァイオリン！あの音階の音程のいい加減さって何？ありえねー！…怜が聴いたら、そっこーで、帰るだろーなあ…）</p><p>怜は音程に関しては神経質、というレベルをを通り越して正確さに拘る。ピアノでは小学校高学年顔負けの曲を弾いている癖に、ヴァイオリンでは同い歳と同じような曲に留まっているのはひとえにその為だ。例えば今の『ディヴェルティメント』、CDを聴いただけで弾けて指も回るにも関わらず、音程が少しでも狂うと嫌な顔をして引き直す。それを何度か繰り返して、どうしても満足がゆかなければ、悲しそうな顔をして弾き止めてしまう。優貴とて四歳からピアノをやって来て絶対音感は完全に身についていて、ドとドの♯間の微妙に嫌な感じの音、それくらいなら全然聞き分けられるが、怜の細かさには遥かに及ばない。例えば梅雨の日と冬の乾燥した日、部屋で弾く時とホールで弾く時、その時々によって怜の調弦のやり方、音の取り方は異なるらしい。</p><p>それはCDを聞く際についてもそうであった。音程に関して怜のお眼鏡にかなうのは大体、超絶技巧を売り物にしているヴァイオリニストしか残らない。しかし結局、超絶技巧派は感情が込もっていないー怜曰く「この人きっと、ヴァイオリンが、好きじゃないよ」ーとの一言で一蹴されてしまう。<br>（怜もなー、チェスみたいにちょっとくらい妥協したっていいのにさあ）<br>と、しかし、そこでふと思い出すある日の天使の笑顔。<br>（僕がヴァイオリンを好きなように、ヴァイオリンも僕の事が好きなんだ！）<br>エルガーの『愛の挨拶』を優貴へ、と捧げた演奏を彼女が絶賛した時に彼は誇らしげに言ったのだった。<br>（そりゃ、妥協できねーよなあ…でもきっと怜はすっごく上手くなる筈、きっと世界で一番くらいに…！）<br><br>しかし優貴がただ単に物思いに耽っているのかというとそうではなかった。父親と母親の呼吸に合わせて微笑み、そつのない挨拶をし、時には頭を下げ、如才無い相槌を打つ。それはもはや彼女にとってオートマチックの動作であった。<br>特に今日誉められるのはそのドレス姿でだった。<br>「まあ、何てお綺麗な…」<br>「貴美子様のお嬢さんはやはりそっくりでいらっしゃるのね」<br>「とても六歳なんて思えない、貴婦人のようなお美しさだわ」<br>優貴に賛辞が集中する度、修三は僅かに誇らしげになり、貴美子は僅かに機嫌が悪くなり、優貴はくそばばあの、パーティーで取り繕った仮面が剥がれてまたぶっ壊れやしないか、とはらはらしていた。<br><br>と、そこへ救世主の如く現れたのは一人の女性であった。<br>「先生、ご歓談中失礼いたします、至急ご覧いただきたい書類が…、それから須田先生と江戸先生がお話したい事があると仰っています」<br>「ああ、片桐君、須田先生かね？すぐ行くよ」<br>（『カタギリ』、だーあ？ふーん、これが狸の交尾相手…）<br>優貴は女をまじまじと眺めた。きっちりとしたスーツ姿に薄い化粧、後ろでひっつめて止めた髪。しかしすらりとして背が高くてスタイルが良く、顔立ちが整っているのが周囲とかけ離れた薄化粧のせいで妙に際立っている。<br>（こいつ、くそばばあに、似てやがる…！顔はちょっと落ちるけど、頭の出来とかは相当違うんだろーな…）</p><p><br>優貴の視線に気付いたのか、彼女は分度器で図ったかのような正確な角度で貴美子と優貴にも礼をして挨拶した。<br>「奥様、お嬢様、初めまして。華京院先生の秘書を務めさせていただいている片桐彩香と申します 」<br>貴美子は彼女の地味な装いを一目見て、相手にするまでも無い、とでも思ったのであろうか、<br>「あら、いつもご苦労様です」<br>と、素っ気ない挨拶を返したが優貴はふと悪戯心が芽生えた。<br>「初めまして、華京院優貴と申します。お父様がお世話になりまして…、これからも『いろいろ』と、お父様の事、よろしくお願いいたします」<br>『いろいろ』を強調した挨拶に、父とその秘書がパーティー仕様のポーカーフェイスを僅かに崩したのを見て優貴は心の中でざまあみさらせ、と悪態をついた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-10980963640.html</link>
<pubDate>Thu, 11 Aug 2011 07:33:15 +0900</pubDate>
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<title>第一話―筒井筒―　15</title>
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<![CDATA[ <p>「ねー、美代さん、くそばばあはどんな調子よ？」</p><p>怜と引き離された優貴は不機嫌なまま、リビングの大きな暖炉の前でドレスを乾かされつつ、美代さんに髪の毛をドライヤーでセットし直してもらいながら問う。</p><p>「ああ、奥様にはブランデーを入れた紅茶をお召し上がりいただきまして、大分落ち着かれたようですよ.。本当は安定剤を飲んでいただきたいんですけれど、パーティーではお酒を飲まれるでしょう？お薬とお酒や相性が良くないですからねぇ」</p><p>「ふーん、そーゆーもん…」</p><p>優貴は絶対的な無関心であった。</p><p>「うわっち、熱いっ！左側やってよっ」</p><p>「あら、すみませんすみません、優貴さん」</p><p>「てかさあ、これからはあたしの髪の毛、美代さんがやってくんない？」</p><p>「え…でも今までそれは奥様が…」</p><p>「やだよお、あたし。今回はあたしの反射神経が良かったから助かったけどさあ、もしこれから毎回あんなんでうっかりガラス食らっちゃったらどーすんのよ、ケガしたらケンカできなくなるー！」</p><p>「優貴さんは女の子なんだからケンカなんかしなきゃいいんですっ。…まあ、奥様がご自分でなさるっておっしゃらなかったら髪のセットくらい私がやりますけど」</p><p>「ちょっと！くそばばあ何かのゆーことよりあたしのゆーことを聞いてよっ」</p><p>「それは…」</p><p>使用人の立場である美代さんが咄嗟に言葉に詰まると同時に優貴はすっと立ち上がった。</p><p>「美代さん、ねえ」</p><p>華京院家の、と言うよりも、優貴自身の生来の威厳。圧倒的な、ひとを惹くオーラ。見上げられている筈なのに射止められるような気がして彼女は釘付けになる。</p><p>「あなた、頭がおかしくて凶暴で美代さんにしょっちゅう物投げたりして、しかも毎日男を連れ込んでるくそばばあとか、美代さんの事をその辺の置き物のように扱う狸親父にとかに、腹立たないの？いっくら給料払ってるったって美代さんだって同し人間じゃん！あたしだったら絶対他の就職先探すよ？美代さんのご飯はすっごい美味しいし、お掃除だって完璧だし、アイロンに至ってはクリーニングに出すよりキレイに仕上がってるもん。…でも、あたしは、美代さんが居なくなったら、嫌だけど…」</p><p>凛とした瞳は、しかしどこかであどけなさを残し縋り付くようだった。</p><p>「…私は優貴さんがいらっしゃる限りここで働かせていただきますよ」</p><p>「え？ほんと！超嬉しいー！！」</p><p>優貴は途端に歳相応の開けっ広げな笑顔に戻る。</p><p>「優貴さんを叱れるのはこの私しか居ませんからね」</p><p>「えー、やだーぁ、美代さん、お尻叩くんだもん」</p><p>「それは優貴さんがイタズラするからですよっ、いい子にしてらっしゃったらそんな事しません」</p><p>「じゃあ狸親父とくそばばあのケツも叩いてやればーあ？ちょっとはいいオトナになるかもよー？」</p><br><p>…と、その時慌ただしく帰宅して来たのは華京院修三・史上最年少総理の座を目前とした優貴の父親であった。</p><p>「遅くなって済まなかったな、貴美子は？」</p><p>「あ、奥様はお部屋にいらっしゃいますよっ」</p><p>美代さんがバタバタと呼びにゆく。</p><p>「優貴」</p><p>「はい。お父様、お帰りなさい」</p><p>「お前…、貴美子にそっくりになってきたな…。いや、それ以上に綺麗になるかもしれないな」</p><p>もう、『綺麗』は沢山になってきた優貴は嫌々ながら、なるべくそれを表に出さず答える。</p><p>「やっだぁ、お父様。世界で一番綺麗なのはお母様よ」</p><p>「……」</p><p>父親の、彼女のドレス姿を上から下まで眺め回す粘りつくような視線を、その類に鈍感な優貴気付かなかった。</p><p>「ねえ、お父様。今日ってクリスマスイブでしょ？パーティーでは何かイベントとかあるのかなぁ？」</p><p>「いや、私はそういう類に興味は無いから…」</p><br><p>と、「ねえ、あなた」</p><p>若干ふらふらしながら階段を降りてきた貴美子の声が父娘の会話を遮った。</p><p>「私と優貴と、どっちが綺麗？」</p><p>「は…？」</p><p>さしもの権謀術数の真っ只中に居る修三も言葉に詰まる一言であった。</p><p>「ねえ、どっちの方がドレス似合う？どっちの髪が綺麗？」</p><p>（うわ、くそばばあめ、美代さん効果台無しじゃーん！相変わらずぶっ壊れてやがる…）</p><p>と、優貴はげんなりしたが、父親の、</p><p>「ああ、お前が一番綺麗だよ、リボンもこの世で一番似合うよ」</p><p>との言葉に、</p><p>（おお、狸にしてはナイスフォロー！！）</p><p>と、彼女は心の中で喝采を送った。</p>
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/entry-10975997313.html</link>
<pubDate>Fri, 05 Aug 2011 08:49:15 +0900</pubDate>
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<title>（下書き）人物紹介・小６春</title>
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アメンバー限定公開記事です。
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<link>https://ameblo.jp/metamorphose-novel/amemberentry-10973501770.html</link>
<pubDate>Tue, 02 Aug 2011 20:58:30 +0900</pubDate>
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