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<title>螺旋巻トワイライト</title>
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<description>楽しいことばかりじゃないけど、自分ペースに生きてます。☆彡二次創作小説と日常を綴る個人ブログ☆彡</description>
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<title>須賀シオ小話「水鏡の底から」</title>
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<![CDATA[ <p>涙は下へ向かって落ちていく。その雫の行き先を、僕はいつだって眺めているから。</p><br><p>「あ、水たまり出来てる」</p><br><p>大きいねと言いながら、しぃちゃんは中庭へ出て行った。僕もその後をのろのろとついていく。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243142">昨晩から続いた夏の嵐は今朝まで続き、古い建物である資料館をギシギシと唸らせた。嵐が来る度僕は資料館の損壊具合を心配しなければならず憂鬱な気持ちになるのだが、彼女は普段やってこないこの悪天候を楽しいイベントか何かと脳内変換しているらしく、「雷とか落ちたりするかな？」とキラキラした目で言われたのを覚えている。雷なんて落ちたら燃えてしまうかもしれないよ、しぃちゃん。いや、避雷針があるしそれは言い過ぎかもしれないけれど、まったくこの悪天候で楽しそうにいられる彼女は昔と変わっていない。</p><p>その嵐は今朝方ようやく去り、朝から僕は資料館の至るところのチェックに走っていた。普段自分でやっている洗濯物や開館前の軽い掃除も流石に手が回らなく、朝食後しぃちゃんにそれらをお願いした。彼女の手もあり僕は優先すべき仕事を終わらせ、しぃちゃんに任せていた仕事を手伝うべくリビングへ戻ると、冒頭のように彼女が中庭へ出て行くところを見たのだ。<br></p><p>「しぃちゃん」</p><p>僕が呼び止めると、しぃちゃんは振り返った。</p><p>「あ、須賀くん。チェック終わったの？お疲れ様！どうだった？」</p><p>「うん、とりあえず、今すぐ修理しなきゃならない、ところは無い。屋根も無事」</p><p>「この屋敷古いけど、須賀くんがこうしてチェックして直してくれてるから今もちゃんと建ってられるんだね」</p><p>ありがとう！とにぱっと彼女の笑顔が咲いて、僕はあわあわと口をぱくつかせて動揺した。本当に僕は彼女の笑顔に弱い。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243201"><br></p><p>両手に抱えていた籠を乾いた地面に置く。洗濯機が終わって後は干すだけのそれから一度離れ、彼女は気になっていたらしい水たまりへぴょんぴょんとステップしながら近づいてしゃがむ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243226">物干し竿の傍に出来た大きな水たまり。確かそこは以前から大きな窪みがあって、雨が降るといつも水たまりが出来ていた。その度洗濯物を干すのに苦労するのでよく覚えていた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243228">しぃちゃんがしゃがんで何の変哲も無い水たまりをじっと見つめている。その横に立って、彼女のことを僕はじっと見つめた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243234"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243236">「しぃちゃん。どうか、したの？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243246">「いやね。ほら、アメンボ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243244"><br></p><p>彼女が指差した先には、水面をつうっと滑るアメンボが二匹。静かに波紋を起こして滑っている。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243257"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243326">「あそこにはカエルがいるよ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243263"><br></p><p>今度は井戸の傍を指差す。井戸の周りに生えた雑草から、ぴょこんと緑のカエルが飛び出した。まるで生き物を探す超能力みたいだな、なんて思いながら、僕は中腰になって水たまりの中を覗き込む。</p><p>嵐の去った、真っ青な空。白い雲が鮮やかに水鏡に映る。</p><p>水たまり越しの風景を見て、ふと脳裏にぼんやりと思い出が浮かび上がった。忘れもしない、彼女との出会いの日。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243316"><br></p><p>「…しぃちゃん、覚えてる？」</p><p>「何を？」</p><p>「僕と、しぃちゃんがはじめて出会った日の、こと」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243332">「勿論。須賀くん、森の傍で迷子になっちゃってて。たまたま通りがかった私が資料館まで連れて帰ってきたんだよね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243339"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243341">僕は頷く。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243349"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243351">あの日は雨が降っていた。土砂降りの雨。前も見えなくなるくらいのそれに僕は動けなくなって、小さくなって泣いていたんだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243360"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243362">『どうして泣いているの？迷子なの？』</p><p>『雨の日は一人で外に出ちゃ危ないよ。だからうちにおいでよ』</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243376"><br></p><p>あの時の黄色い傘は、目を閉じてもまだそこにあるように鮮明に思い出せる。あの時君は、僕に傘を傾けてくれたんだ。</p><p>ビニールから滑り落ちる雨水の雫が俯く僕の後頭部と首に当たって冷たかった。もう少し近づかないと傘の意味がない、って君は怒って。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243627">ああ、小さな頃の僕は俯いてばかりだった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243398"><br></p><p>「僕、嬉しかったことが、あるんだ」</p><p>「嬉しかったこと？」</p><p>「今だから、言えること」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243413"><br></p><p>水たまりに浮かぶアメンボの真似をして、指先を水たまりにちょんと浸ける。波紋が広がって、アメンボは少しだけバランスをくずした。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243423"><br></p><p>「あの日。お父さんに迎えに来てもらうまでしぃちゃん家に保護されて。その間、しぃちゃん、泣き止まない僕に怒ったんだよ。いい加減泣きやもうって」</p><p>「そんなこと言ったかなあ？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243443">「言ったんだよ。それでもぐずぐずしてる僕に、晴れたら泣きやめ！って言い始めたの。その日はそのまま迎えがきて帰ったけど…。次の日、しぃちゃん村中探し回って僕のこと見つけに来て」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243449"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243451"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243459">――――見つけた！ああ、すがくん、また泣いてる。君と会う時、いつも泣いてるね。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243474">――――だって…。勝手に、出てくるんだもの。僕は、…止め方を知らない。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243509">――――こんなに晴れてるのにどうして泣けるのかな。空を見上げてごらん？</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243537">――――…ダメ。泣いてるのに、上なんて、見れないよ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243511"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243513"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243515">（涙は"下"に向かって流れていくんだ。空を見ながらなんて泣けないよ）</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243476"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243478"><br></p><p>僕のことを引っ張る彼女の手は大きかった。力強くて、温かい。</p><p>雨上がりの村にはたくさんの水たまりがあって、しぃちゃんは一番大きな水たまりまで僕を引きずると、指差して言ったんだ。<br></p><p>――――ほら。覗いてごらん。何が映ってる？</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243544">――――おそら…。</p><p>――――でしょ。こんなにいいお天気なのに、泣いてるなんてもったいないよ。それに、君の顔。そこに映った君の顔、とってもヘン。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243558"><br></p><p>笑おうよ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243570"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243572"><br></p><p>「……覚えてた？」</p><p>僕が改めて聞くと、しぃちゃんは顔を両手で覆って膝に埋めていた。髪の毛の間から覗く耳が真っ赤になってる。これは思い出したんだろうな。</p><p>彼女にバレないようにくすりと笑うと、僕は後ろで干されるのを待っている洗濯物に手をかける。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243625">パン、パンと皺を伸ばして物干し竿に干される白いタオルは眩しくて、僕は思わず目を細めた。</p><p>「うう、ああ、もう！」</p><p>すっくとしぃちゃんは立ち上がる。僕の方までツカツカと歩み寄ると、僕が持っていた洗濯物をババッと取り上げ、力任せにバンバンと皺を取る。そうして僕に向き直り、真っ赤な顔をして言った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243640">「今、水たまりに映った私の顔も、ヘンだった！」</p><p>「…うん」</p><p>「須賀くんのせいだからね！責任とって！」<br></p><p>ぷりぷりと怒る彼女が背中を見せる。やっぱり耳まで真っ赤なのは治っていなくて、余計それが愛おしさを増していった。</p><p>僕は地面の水たまりに視線を少しだけやり、すぐに空を見上げる。</p><p>大丈夫、今もまだ、泣き虫だけれど。今は彼女がいるから、涙の零れる先ばかりを見つめたりしない。<br></p><p>「うん、しぃちゃん。責任、とるよ」<br></p><p>僕でよければ、と喉の奥で出かけた言葉を飲み込んで。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243740">代わりに零れた笑みを、照れ隠しに慌てる彼女に差し出した。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243717"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243719">＜水鏡の底から＞</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243730"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243732">（いつも俯いてばかりの僕でも、空の色を忘れないでいられたんだ）</p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243725"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410789813243721">ＦＩＮ<br id="yui_3_2_0_3_141078981324352"></p><br><p>琉唯＠ＦＰ様のリクエスト須賀シオでしたー！ありがとうございました！</p><p><u><font color="#0084b4"><br></font></u></p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11925511152.html</link>
<pubDate>Tue, 16 Sep 2014 00:25:14 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「涙の小瓶」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_3_141040431276358">「この小瓶、一体何なのかな？」</p><p id="yui_3_2_0_3_141040431276347"><br></p><p>物が少しばかり増えた僕の部屋。増えていくのは今のところ本ばかりだが、どうしてもかさばるもので。いつまでも床に積み上げているのは本が傷むし、掃除する時に邪魔だという理由から、新しく本棚を置こうということになった。</p><p id="yui_3_2_0_3_141040431276386">望月巡査とこの間手作りした本棚。苦労して作ったそれに増えた書物を並べていた時、不意に彼女が言った。彼女の手の中には、小さな小瓶が摘まれている。人差し指くらいの大きさの瓶だ。小瓶を窓の光に透かして、目を細くするしぃちゃんに僕は答える。</p><p id="yui_3_2_0_3_141040431276389"><br></p><p>「それ、僕の」</p><p>「須賀くんの？へえ。一体何に使ってたの」</p><p id="yui_3_2_0_3_141040431276399"><br></p><p>少し悩んで、質問に答える。別に隠すようなものでもないし、と作業の手を止めて窓際に歩いていく。椅子に座って小瓶を眺めているしぃちゃんの傍に来ると、僕はそっと彼女から小瓶を摘み上げた。</p><p>瓶の中身は入れていたものが乾いたせいか、水垢のようなものがこびりついて見た目には綺麗と言えない。瓶の蓋であるコルクには可愛らしいお花のシールがべったりと貼られていて、端っこが埃で浮き上がっていた。それらが僕に年月を感じさせ、胸の奥をチリリと刺激する。</p><p>あれから、もう何年も経ってしまったんだなぁ。改めて越えてきた月日、時間を思い、思わず苦笑が漏れる。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763157"><br></p><p>「須賀くん？」</p><p>「あ、ごめん。これ、しぃちゃん見覚えない、かな？」</p><p>「見覚え？うーん、言われてみれば、あるような、ないような…。もしかして私が関係しているの？」</p><p>「関係、というか。この小瓶、しぃちゃんから貰ったんだ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763176"><br></p><p>そうなの！？と目を丸くするしぃちゃん。ああやっぱり忘れてたんだな。口には出さず微笑んで、小瓶の手の中でコロリと転がした。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763215">途切れ途切れに見える水垢に思い出を照らし合わせると、淡く過ぎていった昔の出来事がほんのりと浮かび上がってくる。小さな彼女が僕に言った理不尽極まりない約束はすぐに鮮明と思い出された。その様子に気がついたのか、しぃちゃんは僕の肩を叩いて興味津津に言う。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763208"><br></p><p>「ね、教えて！」</p><p>「……」</p><p>「あっ、今少し嫌そうな顔したでしょう」</p><p>「そんなこと、ないよ！」</p><p>「あと恥ずかしそうな顔してた。隠そうったってそうはいかないよ。須賀くんは表情で何考えてるかバレバレなんだから、観念して教えなさい！」</p><p>「別に隠すつもりなんてないよ、しぃちゃん…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763244"><br></p><p>さあさあ！期待に胸を膨らましている彼女を尻目に、少しの躊躇いを振り払うように溜息を吐いた。</p><p>コトンと小瓶を机において、蓋のシールを指で触る。浮き上がった端っこの部分を爪先でピンピンとはじきながら、思い出を手繰り寄せる。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763261"><br></p><p>「昔、僕、泣き虫だったでしょう」</p><p>「今も泣き虫じゃないかな」</p><p>「もう、これでも少しは強くなったと思ってるんだよ」</p><p>「ふふ、そうだね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763283"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763301">言いたいことも言えない、引っ込み思案な僕。それが彼らをイラつかせるのか、村の気の強い子ども達によくいじめられていた。母親がいない父子家庭であることも、彼らからのからかいの的だった。</p><p>言葉に詰まると涙が出た。喉の奥で引っかかって出てこない言葉の変わりに涙が零れ落ちた。殆ど癖みたいに、心が少しでも傷つけば防衛反応でボロリと雫が垂れ落ちる。</p><p>それに、彼女は我慢しかねたのだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763318"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763368">「あんまりにも僕が泣き虫だから。しぃちゃんがこの小瓶をくれて、言ったんだ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763325"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763327"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763353">――――すがくん、泣き虫を治そう。</p><p>――――治らないよ、しぃちゃん。治らないよぉ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763366">――――はじめからあきらめないの。そうだ、このビンをあげるよ。</p><p>――――どうするの？</p><p>――――すがくんが、これから泣いちゃったら。その時流した涙を、ここにためるの。マンタンになったら、私の言うことをひとつ、聞いてもらうからね。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763376"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763380"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763390">「…私そんなこと言ったっけ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763392">しぃちゃんは首を傾げながら難しそうな顔をする。本人に覚えは全くないようだ。彼女が覚えていなくても、僕ははっきりと記憶しているのだけれど。</p><p>「言ったんだよ。それで、毎日僕が泣いてないかチェックしはじめたんだ。学校の時も、放課後の時も。泣いてるとすぐに僕から小瓶を奪って、"はい、涙貯金ね！"って言って」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763401"><br></p><p>溜まっていく涙。どうしたって、すぐに泣き虫が治るなんてことはなくて。</p><p>気付けば透明の瓶に涙がたまってた。ああ、その時の君のニンマリ顔は忘れられやしない。</p><p>僕は頬にそっと指を当て、唇の端を爪で押した。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763443">僕が言わないその話の続きをしぃちゃんが急かす。爪で押した唇の端がじんと痛んで、唇に違和感が残る。こうでもしないと、ニヤついてしまいそうだった。</p><p>「それで？その後どうしたの？満タンになったんでしょ、須賀くんのことだから！」</p><p>「言い方酷いよ。しぃちゃん」</p><p>「だって、ほら。須賀くんだし」</p><p>「なんだか悔しいな…。確かに、たまった、けど」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763630">「言うことって何だったの？きっと私のことだから、戦いごっこに無理矢理参加させたのかなー？」</p><p>「（それは確かに否定できない、けど）」</p><p>唇が、甘く痛む。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763498"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763500"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763582">――――ビンがいっぱいになったね！約束だよ、すがくん。言うことを聞いてもらいましょう！</p><p>――――う、うん。僕が、泣き虫治らなかったのが、いけないから…。</p><p>――――ほらあ、泣かないの。んーとね、じゃあ、命令！</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763524"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763550">小さなあの子の手が、僕の頬を伝う涙を荒っぽく拭う。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763537"><br></p><p>――――ちゃんと、いつか、泣き虫をコクフクすること！</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763566">――――え？そんな命令で、いいの？しぃちゃん、何にも得しないよ。</p><p>――――いいんだよ。ああ、じゃあ、代わりに人質をいただこう！</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763568"><br></p><p><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763645">すがくん、こっち向いて。目を閉じてね。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763647">それで、息をとめるの。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763584"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763586"><br></p><p>「……」</p><p>「須賀くん？おーい？」</p><p>「…え？」</p><p>「ぼんやりして大丈夫？さっきからやたら唇触ってるけど、どうかしたの？」</p><p>「あ、ええと。なんでも、ない。ちょっと唇、乾いてるだけ」</p><p>「あらら。須賀くん、男の子でもリップは塗った方がいいよ。唇は大事にしないとね！色んな意味でも！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763613"><br></p><p>笑顔で僕にそう指摘する。それはこっちのセリフなんだけどなあ、なんて思うも、今更明かすことも出来ない。</p><p>それで結局どんな命令されたの、としぃちゃんが思い出したように聞くので、僕は「戦いごっこを一週間続けてやったんだよ」と誤魔化した。</p><p>そりゃあ辛い命令だったね。彼女は明るく笑って立ち上がると、机に置いていた小瓶を掴んで尋ねた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763639"><br></p><p>「ねえ、これ貰っていいかな？」</p><p>「小瓶を？別に、かまわないけど」</p><p>「ありがとう！…えへへ。じゃあ、これでまた涙をためようか！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763670"><br></p><p>ぎょっとして彼女を凝視すると、しぃちゃんは楽しそうにケラケラ笑い声を上げる。</p><p>いいでしょう、別に。また約束しようよ。涙がたまったら、またひとつ、命令をきいてもらうから。</p><p>言い出したしぃちゃんは止まらない。僕に拒否する権利なんてくれない。それでも、僕は彼女を嫌だと感じたことは一度だって無かった。だって、僕はしぃちゃんのことが。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763689"><br></p><p>「人質、まだ返してあげてないよね」</p><p>「――――！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763746">「今度は頑張ってね、須賀くん」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763704"><br></p><p>しぃちゃん。本当は覚えているの？</p><p>僕が問い詰める前に、彼女は踊るようにくるりとターンして部屋を出て行ってしまった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763720"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763735">「…涙がたまる前に、リップ、買わなきゃなぁ…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763727"></p><p><br></p><p>＜涙の小瓶<a></a>＞</p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763740"></p><p><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1410404312763742">（君に奪われた僕の唇、今度は奪い返しにいくから）<br id="yui_3_2_0_3_141040431276334" class="yui-cursor"></p>
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<pubDate>Thu, 11 Sep 2014 18:59:43 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「ある昼下がり」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_3_140915381273996">一昨日から降り続いた嵐のせいで、ついに冷蔵庫の中身がからっぽになってしまった。普段食材を買い貯めすることもないし、何より一人暮らしにそこまで大量の食品を保存しておいても食べきれないので、一人家に増え、まる二日家にこもりっぱなしにしていただけで冷蔵庫が空になってしまったのだ。穏やかな日曜日。前日に夜更かしした私はいつもより遅く起床して冷蔵庫を開け、その事実に気がついた。</p><br><p>「どうしよう…」</p><br><p>困り果てながら冷蔵庫の前で腕を組む。本当に何もない。有り合わせで朝食兼昼食を作ろうとすることも出来ない。流石に漬物と白いご飯を出すだなんて、自分一人なら構わないが、今は客人がいるのだ。</p><p>まだ二階の、かつて両親が使っていた部屋で眠る彼のことを考える。優しい彼のことだ、そんなお粗末な昼食でもおいしいと言って文句も言わずに食べるのだろうが、そんなことは自分が許せない。</p><p>「スーパーは開いてるから、こっそり行ってすぐ帰ってくればバレないかな？」</p><p>いつも規則正しい生活をしている恋人だが、昨日の晩は無理を言ってＤＶＤ鑑賞に付き合わせてしまった。大分遅い時間まで起きていたのだが、最後の方は目を開けているのがやっとで恐らく映画など身に入っていなかっただろう。その後布団に移動させると、有名なアニメキャラよろしく落ちるように眠りについてしまった。あの様子じゃ、起きて来ることはないはずだ。</p><p>そう決めこむと、早速私は二階の自室に戻って財布を取り、そっと階段を下りる。玄関のドアに手をかけた時、後ろからトントン、と何かが肩を叩いた。思わずぎゃあっと酷い声で飛び上がる。</p><p>「し、しぃ…！」</p><p>振り返ると、真っ黒い服を着た男がぬらりと立っていた。おしゃれなメモ用紙に、『しぃちゃん、どこにいくの？』と達筆な文字で書かれている。</p><p>「須賀くんか…。驚かさないでよ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739156">「…それは、こっちの台詞。しぃちゃん、僕が呼び止めても、真っ直ぐ玄関に行っちゃうから」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739159">どこに行くの、と須賀くんはもう一度尋ねた。それはさながらペットの犬が出かける主人に置いていかれる時の様そのものだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739170">ああ、まさか起きてるなんてなあ。失敗しちゃったな。なんて心の中で小さく溜息を吐く。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739197">一昨日から恋人である須賀くんが、阿座河村からわざわざこちらまで遊びに来てくれていた。大学やアルバイトで忙しい私はなかなか彼に時間を作ってあげられない。その話をしたら、僕が会いに行くよと言ってくれたのだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739207">わざわざ金曜日を臨時休館にして遠いこちらの街まで足を運んでくれた須賀くんには、こちらの生活を少しでも楽しんでもらいたかった。それなのに彼がこちらについた時には嵐が街を襲い、昨日も引き続き暴風雨で私達は家に閉じ込められた。折角観光案内でもして楽しんでもらおうと思っていたのに。その上冷蔵庫の中身が無くなってご飯が出せません、だなんて格好悪すぎる。だから彼が寝ている間をついてそっと買い物に出たかったんだけど、もうそれも無理そうだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739215">私は観念したと言わんばかりに眉を下げ、ごめんね、と彼に謝った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739225">「冷蔵庫の中身、空っぽなんだ。だから買出しに行こうと思ってて。須賀くんはお客様なんだし、ここで待っててくれる？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739230">「え、僕も行くよ？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739235">「ダメ。すぐ帰ってくるから」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739239">「しぃちゃんが、何て言おうと、いやだ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739243"></p><p>一人にしたくない。危なっかしいから。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739258"></p><p>須賀くんはそう言って引き下がらない。危なっかしいのはどっちよ。森での事件の時は、私を助けるためとは言え子どもの霊に飛び込んで戦っていたくせに。…いや、私も似たようなことをしているから、私達は似たもの同士なのかもしれない。――――そうは言っても私だって引き下がれない.</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739283">「本当にすぐだってば。テレビ見ててもいいし、私の本棚の本読んでてもいいから」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739288">「いや。しぃちゃんと、一緒に行く」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739292">「須賀くんも強情だなあ…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739297">このまま玄関を飛び出して強硬手段に出てしまおうか。そんな案を考えるも、あの俊足の彼が私に追いつけないはずがない。どうしようかと頭を捻らせていると、須賀くんが素早く私の財布を取り上げた。あっと声を上げると、須賀くんはオドオドした態度でこう言った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739308">「あの、しぃちゃん…。じゃあ、こうしよう？僕の行きたいところに、しぃちゃんが、連れてく。それなら、二人でお出かけってことになる、よね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739313">「…うん、まあ、そういうことならいいけど。でも、こんな時間から行けるところだと、遠くは無理だよ？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739318">「遠くじゃ、ない。すぐ傍」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739330">すぐ傍？私が首を傾げると、須賀くんはふふっと笑って靴を履いた。寝癖がついた髪の毛が間抜けで可愛くて、私は彼をここに残らせたかったことも忘れてその寝癖を指先でなぞっていた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739338"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739341">須賀くんが来たかったところって、ここ？</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739349">隣の彼は黙ってコクンと頷いた。その目は頭上の看板に釘付けだ。緑色と赤色が印象深いその看板にはアラビア数字の七がでかでかと書かれている。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739371">私は訝しげに思い訊いた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739367">「ここ、コンビニだよ？」</p><p>「…うん。コンビニ、来てみたかった」</p><p>阿座河村にはコンビニなんてなかったから。須賀くんはそう言って楽しそうにニコッと笑った。</p><p>ああ、田舎も田舎なあの村には、買い物できる場所なんて小さな商店くらいしかなかったものなあ。思い返して納得すると、私は彼の手を引いて店内へ入る。すると須賀くんは一目散にレジ傍に置いてあるコーヒーメーカーに目を奪われた。</p><p>「し、しぃちゃん！コーヒー屋さんがある」</p><p>「それはお金払うとコーヒー淹れてもらえるんだよ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739429">すごいすごい、と須賀くんは感動しながら、今度は背後にあるレーンへ足を向ける。身長一八〇強の男が小走りで店内をはしゃいで回る姿は少し滑稽だが、私には何だか愛おしいものに見えて胸がほっこりする。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739415"></p><p>「わあ…。しぃちゃん、お弁当だよ。こっちには、お菓子がたくさん…！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739425">「コンビニだからねぇ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739439">「レトルト食品も、売ってる…！缶詰まで！すごいねえ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739446">「コンビニだからねぇ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739450">「ボールペン？文具、雑誌まであるの？本当に、噂で聞いてたより、便利…！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739455">「コンビニだからねぇ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739459">「本当にすごい。ねえ、しぃちゃん。ここが所謂、しょっぴんぐもーるってやつ、かな」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739463">「コンビニだよ」</p><br><p>色々なお菓子が並んでいる横に、レトルト食品や缶詰が並ぶ。その隣では文房具やちょっとした玩具が並んだりなどして、コンビニ初体験の須賀くんは目をキラキラさせて普段以上のはしゃぎようを見せている。店内にいる他のお客さんの、子どもを見るような温かい視線が少し気になるけれど、彼が楽しいならそれでいいかと自然に笑みが浮かんだ。</p><p>お弁当を選んでいると、須賀くんが一直線に端っこのおにぎりコーナーに手を伸ばす。鮭、梅、おかか、昆布。スタンダートな具材のおにぎりを全て籠に入れる。</p><p>「おにぎりだけでいいの？」</p><p>コクンと頷く。これが食べたかったんだ、と言ってほやっと嬉しそうに笑う。そんなに珍しいものでもないんだけどなあ、と苦笑しながらそのままレジに進んだ。</p><p>その後も須賀くんは、コンビニでメール便が送れたり、お中元やお歳暮が買えたりすることに驚いていた。レジの前でそわそわ身体を動かすものだから、店員さんに「大きなわんちゃんみたいですね！」なんて思い切りからかわれたりしたけれど、肝心の須賀くんは全く聞いておらず、ずっとレジ脇のおでんを眺めていた。</p><br><p>そんなこともあったけれど、どうにか無事に彼のコンビニ初体験は終わり、ゆっくりとした足取りで帰路につく。嵐は去り、すっかり青く晴れ渡った空を見上げながら、かさりかさりとビニール袋の音を立てながら二人並んで歩いていく。こんな外出で彼は満足なのだろうかと思いながら横を見やると、須賀くんもこちらを見下ろしていてバチリと視線がかち合った。</p><p>「どうしたの？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739553">「…なんでも、ない」</p><p>ぐうう。お腹の底から低く響く音。…私じゃない。容疑者の方を見れば、既に自白と同じ赤面がそこにあった。</p><p>「お腹すいたの？食べる？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739578">「いいの…？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739580">勿論。ガサガサと袋からおにぎりを取り出す。鮭おにぎりを手渡すと、須賀くんは申し訳なさそうに頭を下げて、恐る恐る包装を被った。はじめて開ける特殊な包装に手間取りながらも、どうにか海苔は破れることなく形を保った。また許しをもらうかのようにこちらに視線を寄越すので、少し母親みたいな気分になりながら、「どうぞおあがりなさい」なんて言ってみる。須賀くんはそれでぱあっと顔を明るくさせると、はむっとおにぎりをかじった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739592">「いかがかな？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739597">「…おいしい」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739601">「それは良かった！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739630">昨日も、一昨日も。彼を楽しませられたか少し不安だった。少しでも彼の希望をきいてあげられたのなら嬉しい。</p><p>須賀くんは一気におにぎりを間食すると、指についた海苔をぺろりと舐め取った。そうして自分の手と、私を交互に見て、小さく口を開ける。まだ人通りの少ない昼間の住宅街に、その声はやたら鮮明に響いた。</p><p>「でも、しぃちゃんの作ったものの方が、おいしい」</p><p>「…！」</p><p>殆ど無駄のない、自然な流れで須賀くんが私から袋を持ち去る。そうして空いた私の手を須賀くんのもう片方の手が奪うときゅっと深く絡めた。</p><p>見上げてそこにある彼の表情は、青空を背景にやたらふんわりと柔らかくって、私の心まで雲みたいにふわふわになっていく。</p><p>（ああ、須賀くんはお客様なのになあ）</p><p>おとなしくお客様になってくれればいいのに。</p><p>そんな小さな私の願いも無視して、君は私ばっかり幸せにしてしまうんだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739690"><br></p><p>「…もう、須賀くんには敵わないなあ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739713"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739709">今日のお夕飯ははりきっちゃうぞ！そう宣言すると、須賀くんは待ってましたと言わんばかりの笑顔で、</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739730"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739732">「じゃあ、二人で買出し、行こうね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739736"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739738">そう言って絡めた手を大きく空に掲げた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739744"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1409153812739746">＜ある昼下がり＞</p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11916249941.html</link>
<pubDate>Thu, 28 Aug 2014 03:11:39 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小説「何を食べるかじゃなく、誰と食べるか論」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_4_140782113237057">「須賀さんって今まで一人でご飯食べてたんですよね」</p><p id="yui_3_2_0_4_140782113237047"><br></p><p>不意に、目の前で箸を動かす彼女が尋ねた。辺りを確認しそうになって思いとどまる。どう考えても、この資料館には僕と彼女――――神崎シオリさんしかいないのだから、この質問は僕に向けられたものでしかない。</p><p>口に運びかけて止まった黒いお米を、一気に口に押し込んでもぐもぐと咀嚼する。返事することは無かった。返答するのに使う声は枯れ果ててしまったのだから。</p><p>数日の同居生活で慣れてしまったのか。僕のこういった対応にもあまり動じない彼女は、僕と同じようにお米を口に運びながら箸を止める。僕をじっと見つめ、うーんと悩みながら言った。</p><p id="yui_3_2_0_4_140782113237096"><br></p><p>「一人でご飯食べるの、寂しくありませんか？」</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370102"><br></p><p>カラン。</p><p>床に箸が落ちる。僕の箸だ。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370120"><br></p><p>「あっ、大丈夫です？」</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370126"><br></p><p>僕の箸を拾うと、席を立って箸を洗う。洗った箸をこちらに渡すと、記憶を無くした僕の幼馴染…しぃちゃんはにっこりと悪びれも無く笑った。</p><p>本当に彼女は僕の痛いところをつくのが得意だな。そんなことを思う。何を理由にこんなことを聞くのか分からなかったが、ちっとも怒らずに彼女らしいと呆れる僕も僕だ。</p><p>この質問は返答すべきものだろうか。それとも沈黙で押し通すべきものだろうか。脳みそが咀嚼と一緒に動く。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370185">ごくんとご飯を飲み込んで、僕はポケットから使い慣れたメモ帳を取り出した。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370187">なんて書こう。嘘、ついてもバレやしないだろうけど、それではしぃちゃんに悪い気がする。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370196">もう既に『帰れ』と自分の気持ちに嘘を吐いている分、これ以上心に背を向けたくなかった。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370176"><br></p><p>『今は、貴方がいる』</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370201"><br></p><p>最後まで書いてはっと前を向くと、メモを見せる前に彼女がテーブルから身を乗り出してこちらを覗きこんでいた。ぶわわっと突如体中に駆け巡る熱を唇を噛むことで押えつける。</p><p>メモは急いでポケットに隠して、残ったご飯をいつもの倍以上の速さでかき込んでいく。途中で変なところに入って咳き込むと、しぃちゃんが抑えられていない笑みを零しながら僕にコップを渡してくれた。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370230"><br></p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370241">「ふふ。須賀さん、なんだか面白いですね」</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370378">「……」</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370373">「やっぱり誰かとご飯食べるほうがおいしいし、楽しいですよね。…ちょっと嬉しくなっちゃいました」</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370247"><br></p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370376">私がいるって言ってくれて。</p><p>テーブルに肘をついてこちらを見つめてくるしぃちゃん。少しだけ上目遣いに見えて、僕はやっぱりすぐ彼女から目を離してしまった。ああ、これでは彼女のペースだ。</p><p>本当はいけないと分かっているのに、彼女からのコミュニケーションを拒めない。鬼にもなることが出来ない僕が、この先本当に彼女を守れるのだろうか。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370274"><br></p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370380">「ね、須賀さん」</p><p>「…？」</p><p>「さっきのメモ、頂けませんか？」</p><p>「…！」</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370292"><br></p><p>ダメです？</p><p>そう言われて、ダメな理由を脳みそがぐるりと検索しはじめた。が、彼女を納得させそうな理由が検索結果に挙がってこない。</p><p>メモを見て何かの拍子に記憶が蘇ってしまうから、なんて理由は絶対に言えないし、字が汚いから、なんてものは彼女が否定して納得しないと思う。</p><p>そこで僕は、メモにさっと一言綴った。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370338"><br></p><p>『恥ずかしいのでダメ』</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370346"><br></p><p>そのメモも書いてはすぐにポケットにしまった。自分にいたたまれなくなってまた彼女から視線を外す。ここ最近の僕は視線があちこちに飛んでいる気がする。</p><p>早く帰ってほしい。しぃちゃんには早く正しい日常を送ってもらいたい。こんな村にいないで、早く。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370367"><br></p><p>「あはは！須賀さんって案外照れ屋なんですかね。いや、これは馬鹿にしているとかではなく、須賀さんのことをもっと知りたいと思うのであってですね」</p><p>「…」</p><p>「迷惑、でした？ごめんなさい、調子のっちゃって…」</p><p>『迷惑ではない』</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370402"><br></p><p>メモに淡々とそれを書いて、僕は空になったお皿を流しに置いた。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370422">背中に、彼女が楽しそうに微笑む声が聞こえる。僕は耳に熱を感じながら蛇口を捻った。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370420">ああ、明日の食事時、また彼女にやりこめられて調子を崩してしまうかもしれない。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370435">早く用事を済ませて、帰って、しぃちゃん。</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370443"><br></p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370445">＜何を食べるかじゃなく、誰と食べるか論＞</p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370426"><br></p><p id="yui_3_2_0_4_1407821132370449">（その日、久しぶりに僕の頭に『団欒』なんて言葉が思い浮かんだんだ）<br></p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11908967995.html</link>
<pubDate>Tue, 12 Aug 2014 21:33:49 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「君は世界に愛されている」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_3_140747614929484">ねぇ、須賀くん。<br>君は、私がいない世界なんていらないなんて言うけれど、それはただの甘えじゃないかしら。<br id="yui_3_2_0_3_140747614929450"><br id="yui_3_2_0_3_140747614929452">私の言葉に、雨に打たれ続ける黒い影のような男は、向けていた広い背をゆっくりと返した。<br id="yui_3_2_0_3_140747614929456">大粒の雨に濡れてべったりと髪の毛が顔に張り付いている。いつもの隈がこびりついた目元と相まって病人みたいだと思った。</p><p>彼の瞳が私を捉える。何色にも染まらない漆黒の瞳が、愛用の刀みたいな鋭さで射抜く。思わず怯んでしまいそうな迫力に、私はごくりと息を飲み込んだ。</p><p>彼は言葉を使いたがらない。理由は分からないけれど、声を取り戻してからもメモ会話は健在だ。けれどこんな雨の中では彼お得意の筆談は出来ない。その声をひきずりだしてやろう。</p><p>彼の名前をもう一度呼べば、彼は癖になっているポケットからメモを取り出す動作をして、すぐに止めた。手のひらをぎゅっと拳にして握り締める。そうしてまた真っ直ぐな目でこちらを見やった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294151"><br></p><p>「僕、は」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294159"><br></p><p>小さな口を開けて語りだした。雨の音で消えてしまいそうな声。私はよく耳をすませて聞く。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294169"><br></p><p>「しぃちゃんがいないのなら、こんな村も、世界も、どうだっていい、って、思う」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294176"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294312">ぽたりと彼の髪の毛から雫が落ちて頬を伝う。それはまるで涙のように見えた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294193"><br></p><p>「須賀くん。そんなのおかしいよ。どうして私がいないといけないの」</p><p>「だって…。だって、しぃちゃんは、僕を助けてくれた。僕の、友達になってくれた。優しく、してくれた」</p><p>「昔の話？そんなことふつうだよ。みんなしてる」</p><p>「違う。ふつうなんかじゃない。とても、意味のあること、だ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294220"><br></p><p>普段オドオドしながら話す彼が珍しくきっぱりと否定の意を述べた。その意味を私は深く受け止めなければならないと、対峙する自分を鼓舞する。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294354">差している黄色の傘に雨粒がリズミカルに跳ね返る。濡れる彼に傘を差し伸べようと一歩を踏み出すと、須賀くんは怯えるように一歩後退した。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294281"><br></p><p>どうして彼は拒絶するのだろう。たった一言、私は彼に「おいで」と言っただけなのに。触れようと手を伸ばすと逃げるように離れてしまう。</p><p>私だけじゃなく、あの森の件で親しくなった佐久間ちゃんや望月巡査とも、一定以上の距離から先は近づこうとしない。それは目に見える近さではなく、心の距離だ。須賀くんはどこか私達を避けている。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294314">だから言ってしまったのだ。たった三文字の言葉。その意味を深く伝えずとも彼は理解し、そして拒絶した。私の口から出た台詞に酷く怯えて走り去り、土砂降りの雨に打たれている。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294316"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294318">（寒い、だろうに。どうしてそこにいるの）</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294320"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294308">冷たい雨に混じる黒いのっぽの影は、温度を嫌う生き物のように思えた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294324"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294357">「しぃちゃんがふつうだと思ってること。それは、僕にとって、特別で。うれし、かった」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294341"><br></p><p>ねえ、覚えてる？はじめて出会った時も、こんな雨が降ってた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294359"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294365">「…覚えてるよ。土砂降りの雨の日、須賀くん、うちの近所の森の傍で迷子になってたね」</p><p>「あの時、僕は、いじめっ子から逃げて隠れて、あそこで迷子になって。そうしたら、しぃちゃんが来てくれた。まるでね、神様みたいに、僕を助けてくれた」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294373"><br></p><p>次第に饒舌になっていく。目を閉じてあの日を思い返すように天を仰ぐと、また小さな声で「神様」と呟いた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294387"><br></p><p>「しぃちゃんは、僕の神様なんだよ。何にもなかった弱虫の僕に手を伸ばしてくれた、神様。だけど、そんな君を、僕は危険な目にあわせた。幸せを君から奪った。僕は悪魔とか、疫病神みたいなものなのかもしれない」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294414">「須賀くん…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294412">「僕は、しぃちゃんが幸せならなんでもいいんだ。そういう男なんだ。もう、二度と怖い思いはしてほしくないし、笑っていてほしい。その為なら、また何十年も独りきりになったってかまわない」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294409"><br></p><p>だけど。</p><p>須賀くんは呟いて、両手で顔を覆った。両手に溢れる透明の水がポタポタと地面に落ちていく。腰を屈め、堪えるように息を吐き出す。漏れた声は嗚咽に似たものだった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294435"><br></p><p>「しぃちゃんがいなくなってしまったら、僕には何も残らない」</p><p>「……」</p><p>「そんな世界で生きたくない。しぃちゃんがいない世界で生きて、君を忘れてしまうなんて嫌だ。他の人と仲良くして社会に溶け込んでいくなんて考えられない。僕には、しぃちゃんだけがいればいい」</p><p>「…それなのに、私がおいでって言うと拒絶するんだね…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294476">「……！」</p><p>「佐久間ちゃんや望月巡査のことは？」</p><p>「…それは、」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294478">「須賀くんの中で私が神様だから？他に何もいらないから？自分はいけない子だって思ってるから？」<br></p><br><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294486">違うでしょう。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294494">私は怒鳴りつけるように叫んで、黄色の傘を放り投げた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294513">弾けるように須賀くんに飛び掛かり彼の胸板をぼすんと叩く。昔やった遊びではこれだけで彼はのけぞったのに、今はびくともしないで私を押さえつけている。</p><p>気弱だった幼馴染の顔を見上げると、驚愕と恐怖を滲ませた表情をこちらに向けている須賀くんがいた。</p><p>そうやって、いつまで自分を隠しているんだろう。自分を守っているんだろう。男の子なんだから、もっとしっかりしてよ。</p><p>出かけた言葉を飲み込んで、私は掴まれた手を振りほどいた。<br></p><br><p>「須賀くんは、臆病者」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294566"><br></p><p>私の辛らつな言葉に須賀くんが唇を噛む。それでも私は続けた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294582"><br></p><p>「泣き虫。心配性。足の速い黒い電柱だし、言葉も満足に喋らない変な人」</p><p>「……」</p><p>「だけど、私はそんな君を知ってるよ。君の弱い部分を全部知ってる」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294603"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294605">ぱしゃん。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294645">水溜りには濡れた私と須賀くんの姿が濁って映る。びしょびしょの彼を逃がさないように、腰に両手を回した。ポタリポタリと降ってくる、彼の前髪からの雨粒。瞼に付いて目を閉じると、震える手で須賀くんが雨粒を払ってくれた。<br></p><br><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294736">「須賀くん。私は、神様なんかじゃないよ。ほら、私の手のひら。あったかいでしょ？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294648"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294681">腰に回していた手を彼の前に出す。須賀くんは黙って私の手に自分の大きな手のひらを合わせた。雨に打たれて少しひんやりしているけど、それでも失われていない温もりがそこにある。</p><p>二人の手をきゅっと絡めると、温もりは一段と温かみを増した気がした。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294710"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294734">「きっとね。神様なんてものがいるとするなら、手は冷たいと思うの。何でだと思う？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294716"><br></p><p>須賀くんが首を横に降ると、パラパラと雫がそこら中に散った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294727"><br></p><p>「だって、須賀くんだけに辛い思いさせるなんて、そんな神様私は酷いヤツだと思うよ。だから、そんな神様の手は冷たい」</p><p>「…しぃちゃん」</p><p>「だから、手があったかい私は神様なんかじゃないし、神様なんてのがいても、信じるに値しない酷いヤツだよ」<br></p><br><p>何十年もこの村に縛り付けて、罪の意識を根付かせて、声を奪い、心を永久の雨模様にした。そんな運命を背負わせる神様なんて信じたくない。</p><p>須賀くん。神様なんていないんだよ。みんな本当は自由なんだよ。君のことを想う人は世の中にたくさんいて、君に出会うのを待っている。</p><p>私だってそうだ。私に縋る君じゃなくて、私と一緒に歩いてくれる君に会いたい。<br></p><br><p>「おいでよ、須賀くん」<br></p><br><p>雨が次第に小雨になっていく。雲の隙間から一瞬だけ晴れ間が見えて、光が黄色い傘を眩しく照らした。<br></p><br><p>「おいで。こっちにおいで。待ってるから」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294822"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294824"><br></p><p>ＦＩＮ<br></p><br><p>（君は世界に愛されてここにいること。どうか忘れないで）<br></p><br><p id="yui_3_2_0_3_1407476149294858">※お題：キミがいない世界など　より<br id="yui_3_2_0_3_140747614929462"></p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11906790863.html</link>
<pubDate>Fri, 08 Aug 2014 17:26:56 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「愛し君へ」</title>
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<![CDATA[ <p>夜の阿座河村は飲み込むような闇と静寂で包まれる。<br>今日は満月で明るいだけ少しマシだけれど、明かりを付けなければ資料館内ですら歩くことは出来ないくらい暗くなってしまう。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098950">普段見回りは閉館後一度だけしている。しかしここ数日中は閉館後と就寝前の二回行うことにしていた。それというのもここへ予期せぬ客人が現れたからだ。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098954"><br id="yui_3_2_0_3_140722565098956">ギシリ。古い洋館の廊下は大きく音を立てる。一階、二階と見回りを済まし、いよいよ彼女が床についている三階へ足を踏み入れた。何があってもいいように持っていた刀の柄を強く握る。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098960"><br id="yui_3_2_0_3_140722565098962">（何も、いないな）<br id="yui_3_2_0_3_140722565098966"><br id="yui_3_2_0_3_140722565098968">何も、というのは鼠や害虫、不審者の類ではない。勿論不審者がいては困るが、それ以上にいては困る存在がいるからだ。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098972">特に彼女が宿泊している間は。神崎シオリという人間がこの村に滞在している間は、奴らを少しでも見逃す訳にはいかない。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098976">――――神崎シオリは、僕が守ると約束した幼馴染だ。命を、この村の伝承であることりお化けに狙われている。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098980">どんな因果か、記憶を消し去ったはずの彼女が忌まわしいこの村へ戻ってきた。幸い記憶はまだ戻っていないようで、ことりお化けにも居場所は気づかれていないようだ。僕は約束通り彼女を守らなければならない。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098984">本当はすぐに帰って欲しいのだが、彼女がこの村へ来た理由から無下に帰す訳にも行かず、僕は毎日神経を尖らせて用心している。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098988"></p><p>資料館と村の中以外への移動は禁止。夜の外出も禁止。雨の日の外出も勿論禁止。僕の挙げる禁止事項に苦笑いを浮かべていたようだったが気にしなかった。僕は頭のおかしな管理人で通っている。きっとそんな噂は誰かしらから聞いているだろうから、僕のことをそう思って恐れていてくれればそれでいい。僕への恐怖で彼女がその禁止事項を守ってくれるのならば。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098992">極力僕の目の届く場所にいてほしいけれど、寝る時までそれはかなわない。彼女が眠ったかどうか、彼女の傍に奴の手先が来ていないかどうか。今日もそれを確認するために、一歩一歩進んでいく。<br id="yui_3_2_0_3_140722565098996">ギシリ。軋む床に一度足を止めた。ひゅう、と風を感じる。ここの廊下は窓はないはずなのに。不思議に思って懐中電灯を少し上へ向けると、彼女が使用している客間のドアが少しだけ開いていた。それを目で確認し、背中にひやりと冷や汗が流れる。ギッギッと軋む音が響くのも気にせずドアを開けた。部屋の窓は開け放たれ、日焼けで少しくすんだ白いカーテンが風にはためいている。いるはずの女性の影は、ベッドにも、部屋のどこにもなかった。<br id="yui_3_2_0_3_1407225650989100"><br id="yui_3_2_0_3_1407225650989102">「…！」<br id="yui_3_2_0_3_1407225650989106"><br id="yui_3_2_0_3_1407225650989108">懐中電灯を取り落としそうになって柄を掴む。布団を触るとまだ温かい。さっきまでここにいたということだ。<br id="yui_3_2_0_3_1407225650989112">見回りをしていてすれ違った感じはなかった。あるとすれば各部屋を覗いている時に彼女が廊下を歩いて出て行ったということだ。<br id="yui_3_2_0_3_1407225650989116">黒い室内用靴で床を踏みしめUターンする。壊れそうな音を立てながら軋む床の上を走り、各部屋を開けて回る。どこだ。どこにいる。<br id="yui_3_2_0_3_1407225650989120"><br id="yui_3_2_0_3_1407225650989122">（しぃ、ちゃん…！）</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989140"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989339">ドアの開け閉めを数度繰り返し一階に戻ってきた時だった。電気ランプを灯していたリビングの明かりに細長い影が揺らめいた。考えるよりも先に足が動いて、玄関へ駆ける。</p><p>暗闇に浮かぶ後ろ姿は、玄関のドアノブに手を伸ばしていた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989197"><br></p><p>「…ッ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989205"><br></p><p>客人の手首を掴んでこちらに向かせる。ぐるんと抵抗なく方向を変えた体はいとも簡単に僕に押さえつけられた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989330">扉を壁にして彼女を押さえつけ、抵抗しないところまででようやく頭が追いつき、知らずの間に迫っていた危機を逃れたことに安堵する。自分の呼吸が激しく乱れていたことにもそこでやっと意識出来た。</p><p>僕に両手首を押さえられても無反応な幼馴染に少しずつ不安を覚え、僕はゆるゆると力を抜いていく。逃げ出す素振りがないため完全に手を離すと、しぃちゃんは僕を見上げて虚ろな瞳を露わにした。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989333"><br></p><p>「かんりにん、さん…？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989391">『大丈夫ですか』僕はメモに書いて見せる。</p><p>「え、っと…。私、少し嫌な夢を見て…水をもらおうと一階に来たはず、なんですけど…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989372"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989395">どうして玄関前にいるんだろう、と理解出来ずに瞬きをした。彼女自身は不可思議な現象だけれど、僕には分かる。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989397">背中に、何か重たいものがずしりと乗っかるような気がして、僕は思わず唇を噛んだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989419"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989421">―――あいつがしぃちゃんを連れて行こうとしている。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989437"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989439">「寝ぼけて間違っちゃったのかな…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989443">『一人で夜中、外に出るのは禁止』</p><p>「わかってます…」</p><p>『少しでも何か違和感があったら、すぐに伝えて』</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989508"><br></p><p>メモを見るなり、目の前の女の子はふにゃりと笑う。まだあいつの影響なのか、ぼんやりとして虚ろな目をしていたけれど視線は真っ直ぐにこちらを向いていた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989531"><br></p><p>「管理人さんは、優しいですね」</p><p>「――――！」</p><p>「見ず知らずの私を、ここに泊めてくれたり。身の安全に気を使ってくれたり。なんだか、とっても…懐かしい」</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891109">「……」</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891111">「ごめんなさい。少し気分が悪いんです。お水、頂けますか？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989556"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989672">コクリと頷いて、彼女をソファに座らせるとすぐに水の入ったコップを用意した。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989616">懐かしい。その台詞を聞いて内心焦った。ぞわりと体中を恐怖が駆け巡った。思い出していたりしないだろうか。ただそれだけが心配だった。</p><p>水を一息で飲み干した客人は落ち着きを取り戻すように深呼吸して、僕に一言謝罪する。管理人さんすみません、と。空になったコップを受け取りつつ首を振る。一瞬指先がしぃちゃんの指に当たって取り落としそうになるが、すぐに反応した彼女がしっかりと受け止めてくすりと笑った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989662"><br></p><p>「管理人さん、私が今から言うこと、寝言だと思って聞き流して下さい…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989677"><br></p><p>しぃちゃんはコップをもう一度こちらに渡しながら呟いた。ふかふかのソファの背もたれに背中を預け、天井の方に視線をやりながら彼女は眠る前のうわ言のように言う。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989705"><br></p><p>「私両親を失ってここに来ましたけど、祖父ももう亡くなっていて…面影しかもう探せなくて。どうやったってあの人たちにもう声をかけてもらえることなんかないのに、管理人さんが私を気にかけてくれることが、欲しかったそれに似てる気がして…。嬉しいんです」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989798"></p><p>彼女の呟きを頭の中で咀嚼して理解する。やはり思い出してしまっているのかと、ソファの横にかけていた夜光石の刀に手を伸ばしかけたが手を止めた。</p><p>こてん。しぃちゃんの頭が傾いて隣の僕の肩に乗る。声も出ないのに思わず「うっ」と呻いて視線をそちらに移動させると、しぃちゃんは半分眠っているような口調で続けた。</p><br><p>「なんだか、ほごしゃ、っていうか…もっと、あったかいような…。そんなものに包まれているような、きが、して」</p><p>「………」</p><p>「変だと、おもうんですけど。でも、その変が、私…」</p><br><p>その後彼女は堕ちるように眠ってしまった。小さな寝息を立てる彼女をどうしたものかと迷い、ゆっくりと自分の膝の上へ頭を乗せる。枕になりそうなものがなかったから仕方ないんだ、と自分に言い聞かせて天井を仰ぐ。</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891106">付いていた電気ランプがジジジと音を放ってぷつんと消える。寿命が来た灯火に、もう今夜はこのまま動けないと諦めをつけてソファに体重を預けた。キシリと軋むソファ。膝を見やればあの幼馴染が穏やかな表情を浮かべて眠りについている。</p><br><p>（…キレイだな、しぃちゃん）</p><br><p>窓から零れ落ちる満月の光が、白い彼女の頬を照らす。頬にかかった前髪をそっと指先で払ってやると、桃色の唇が小さく開いた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989915"><br></p><p>「須賀、さん」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989921"><br></p><p>ひゅっ、と僕の喉が息を吸い込んで飲み込む。</p><p>桃色の唇に視線が釘付けになってしまって、そこから湧き上がる衝動を精一杯押さえつける。</p><p>ふっと熱い息を聞こえないように零しながら、僕は眠る彼女の耳元にそっと口元を近づけた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989986"><br></p><p>「　　　　　」</p><p id="yui_3_2_0_3_1407225650989996"><br></p><p>どうせ出ない声だ。だから何を口にしようが出るのは二酸化炭素だけだ。</p><p>分かりきったことなのに、無性に喉の奥が燃えるように熱くて、痒くて、痛んで仕方なかった。喉を爪で引っ掻いて、それでも出ない声に涙が溢れた。</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891051"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891053"><br></p><p>（しぃちゃん。僕は、まだ泣き虫みたいだ）</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891059"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891095"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891097">＜愛し君へ＞</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891061"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891104"><br></p><p>FIN</p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891071"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891073"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14072256509891075">（君を想うと、枯れたはずの涙だって蘇るみたい）<br id="yui_3_2_0_3_1407225650989126"></p><br><br><p>※お題「泣きたいほどに愛しくて堪らない」より</p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11905291347.html</link>
<pubDate>Tue, 05 Aug 2014 18:18:03 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「身長も力も君を追い越した」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_4_140713572537536"><br></p><div class="msg-body inner  undoreset">最近村の子供達が資料館裏で何かやっている。</div><div class="msg-body inner  undoreset">気になって見に行ったら、気の強そうな男子数人と女の子が1人対峙していた。何か揉めているようで、ここにはいない子供の名前が関連して飛び交う。そして業を煮やした女の子が男の子達を叩いたり蹴ったりして追い払う。その姿は懐かしいあの子に似ていた。</div><div class="msg-body inner  undoreset">僕は擦り傷をこしらえてしまった女の子の手当てをしようと救急箱を持って森の入り口に向かう。目つきが悪く言葉を喋らない不気味な人間と評判な僕に、女の子は不審そうな顔をしていたけれど無言で手当てを受けてくれた。<br>救急箱から花柄の絆創膏を出して貼り付ける。女の子はそれを見ると嬉しそうにして、次に少し涙ぐんでいた。メモで、怖かったのかと問うと、小さく頷く。<br>でも、…くんを守ってあげなきゃいけないもん、と力強く言う。そこがまた、記憶の彼方にある少女を僕に思い出させた。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375117" class="msg-body inner  undoreset">『でも、けがをしたらその子はしんぱいする』</div><div class="msg-body inner  undoreset">僕はメモに書いた。ぐっと言葉を堪えて僕を見つめる女の子は、しゅんと俯いてしまう。自分でも分かっていたことなのだろう。</div><div class="msg-body inner  undoreset">ガザガザ。葉っぱをかき分ける音がして振り返ると、資料館の方面から女の子と同じ歳くらいの男の子が植木と植木の間をかき分けて現れた。男の子はあっと声を上げると、小走りで女の子に駆け寄る。どうやら女の子が言っていたのはこの子のことのようだった。</div><div class="msg-body inner  undoreset">「だいじょうぶ？けが、してる」</div><div class="msg-body inner  undoreset">「だいじょうぶだよ。この人がばんそうこうくれたから」</div><div class="msg-body inner  undoreset">「でも、ぼくのせいでけがしちゃって…」</div><div class="msg-body inner  undoreset">ぺちん。女の子が両手で男の子の頬を叩いた。ぎゅっと頬をつねって、女の子は怒りながら目を細める。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375202" class="msg-body inner  undoreset">「そうやってウジウジしてるから、あいつらにいじめられるんだからね！しっかりしてよ！」</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375204" class="msg-body inner  undoreset">「そ、そんなぁ」</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375330" class="msg-body inner  undoreset">「わたしがちゃんとキミを守ってあげるけど、キミもつよくなってくれなきゃこまるんだから」</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375332" class="msg-body inner  undoreset">男の子は半べそになって、服の袖で涙を拭った。はあ、と溜息をひとつして、少女は資料館の方へと歩き出した。</div><div class="msg-body inner  undoreset">黙って見ていた僕は不思議な気持ちで彼を見つめる。過去の光景をまるで映写機で見ているかのようだった。</div><div class="msg-body inner  undoreset">モノクロの過去は僕を見えない刃物で切りつける。大人になると過去なんて後悔しか思い出せないものなのかもしれない。…いや、それは僕だけか。</div><div class="msg-body inner  undoreset">（…あ）</div><div class="msg-body inner  undoreset">男の子が小さな手で女の子の服の裾を掴む。相手は振り返って首を傾げるが、少年は何も言わずに少女の服を掴んで離さなかった。なあに、と訊いても少年は反応しない。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375410" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375412" class="msg-body inner  undoreset">――――言いたいことは、わかるよ。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375408" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">僕は男の子の目線まで腰を下ろして、ぽんと頭を撫でた。擦りすぎて赤くなった目をこちらに向けて少年はぽかんと口を開ける。</div><div class="msg-body inner  undoreset">僕も釣られて口を開こうとして、閉じた。代わりにメモ用紙にペンを走らせる。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375469" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375580" class="msg-body inner  undoreset">『しんちょうも、ちからも、いつかあの子をおいこす』</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375502" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">それを見た少年は僕を真っ直ぐに見つめ返した。丸く黒い瞳が涙の粒を残して射抜く。</div><div class="msg-body inner  undoreset">彼の姿はとてもよく似ていた。だから同情した…そういう訳ではないけれど、言わずには居られなかった。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375561" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375600" class="msg-body inner  undoreset">『そして、いつかキミがあの子をまもる方になる』</div><div class="msg-body inner  undoreset">『手をはなさないで』</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375608" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">くしゃり。男の子の少しくせっ毛な髪の毛を指に絡ませて撫でる。男の子はくすぐったそうに声を上げると、立ち上がった僕を見上げてペコリとお辞儀した。</div><div class="msg-body inner  undoreset">何やってるのよ。行くよー。女の子の急かす声が聞こえ、男の子は声の方へ駆けていく。</div><div class="msg-body inner  undoreset">女の子が元気よく振る右手を取って、しっかりと繋いだまま二人の子どもの姿は見えなくなった。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375667" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375669" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">もしも過去に戻れるとするなら。僕はそうやって自分に伝えたい。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375786" class="msg-body inner  undoreset">今の僕はあの頃よりもうんと背丈は伸びて、人並みに強くなった。あの子に守られていた時より少しくらいは頼りになる男になれたと思う。</div><div class="msg-body inner  undoreset">だけどあの頃じゃないと叶わないことがひとつだけあるんだ。</div><div class="msg-body inner  undoreset">ねぇ、僕。どうか自分の手を離さないで。その手を離してしまうと、大切なものも全部失ってしまうんだ。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375789" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">「……」</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375795" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">風に乗って、森がざわめく音がする。</div><div class="msg-body inner  undoreset">今日の夜は雨が降ると聞いた。いつもより慎重に巡回しなければならない。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375845" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">（しぃちゃん。僕は強くなったんだ。…それでも、今の僕で君を守れるかどうか、不安になるんだよ）</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375852" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div class="msg-body inner  undoreset">ああ。叶うならあの頃へ。</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375882" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375884" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375904" class="msg-body inner  undoreset">＜身長も力も君を追い越した＞</div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375896" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375898" class="msg-body inner  undoreset"><br></div><div id="yui_3_2_0_4_1407135725375900" class="msg-body inner  undoreset">（そして今日、僕の成長を試すように君が舞い戻ったんだ）<br id="yui_3_2_0_4_140713572537534" class="yui-cursor"></div>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11904755552.html</link>
<pubDate>Mon, 04 Aug 2014 17:09:57 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「その声も」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_3_1406880715997197">死んだ人を忘れる時、何から忘れると思う？<br>そんなクイズをいつだったか、クラスメイトにされた。中学生くらいの時隣の市の学校で自殺を図った生徒がいて、その話題と一緒にそういうクイズが流行ったのだ。<br id="yui_3_2_0_3_140688071599750">今思えば酷いタイミングで流行ったクイズだと思う。でも、そのお陰でやけに脳にこびりついていた記憶だった。<br id="yui_3_2_0_3_140688071599754"><br id="yui_3_2_0_3_140688071599758">「死んだ人を忘れる時、何から忘れると思う？」<br id="yui_3_2_0_3_140688071599762"><br id="yui_3_2_0_3_140688071599766">紅茶を入れたカップを二つ、テーブルに運んで言った。ソファに座り、今日の大掃除で出てきた大きなファイルを眺めていた須賀くんは、目を丸くして私を顔をぱちくりと見返す。<br id="yui_3_2_0_3_140688071599770">砂糖は入れる？とわざと彼の表情を無視して訊くと、彼はこっくりと頷いてから再び私を見つめる。そうして、普段所持しているおしゃれなメモを取り出してこう書いた。<br id="yui_3_2_0_3_140688071599776">『どうしたの、そんなこと聞くなんて』<br id="yui_3_2_0_3_140688071599782">相変わらずの綺麗な字が疑問を含んで綴られる。心配性の彼のことだから、普段滅多にネガティブにならない私がそんな話題を持ちかけたことを心配しているんだろう。そんな心配することないのにな、と心の中で苦笑して、私は彼のカップへ砂糖を一つ入れて混ぜた。<br id="yui_3_2_0_3_140688071599786">自分のカップにも同じように砂糖を混ぜて、温かい紅茶を少し口に含んでから私は答える。<br id="yui_3_2_0_3_140688071599792">「昔、そんなことをクラスメイトで聞かれたなって、思い出したの」<br id="yui_3_2_0_3_140688071599796">『阿座河村で？』<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997100">「ううん。引っ越した先の学校。そんな風なこと、昔の自分はあんまり気にしなくて、適当に喋ってたと思う。人の死なんて、子どもには身近なものじゃなかったと思うし」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997104"><br id="yui_3_2_0_3_1406880715997106">勿論、私が死ということを真剣に考えていなかったのは、ことりお化けの事件のことを忘れて普通の子どもとして人生をやり直していたからだ。事件の後そのまま成長した須賀くんだったらそんな風には考えないだろうし、記憶を無くさなかった私がそこにいたとしたら、お互いに死に掛けた幼馴染がいるのに、死を他人事のように捉えることなどなかったと思う。<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997112">「人が死ぬって怖いことなんだとその時はぼんやり思ってた。でも、ことりお化けの記憶がなくなって、大切な須賀くんのことも忘れて、死ぬってことの現実味が全く分からなかったんだよね。悲しい、とかくらいかな。だから、誰かが死んで何かを忘れるってことの怖さとか理解出来なかったなあ」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997116">『子どもは、みんなそう。だから無鉄砲、無茶をやらかす。記憶を無くしたしぃちゃんは一般的な子どもの感覚になっただけ。死を理解出来なくて当然。悪くない』<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997120">「あはは、ありがと。でもね、良い悪いの話がしたいわけじゃないんだなぁ」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997124">「？」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997130">カタン。紅茶のカップをソーサーに戻して、中で揺れる赤茶色の液体に目を落とした。紅茶に映る自分の顔は浮かない表情をしている。気遣われるのが苦手な性質だから、何があってもつとめて明るく振舞う。それが自分だというのに、今の私はすっかり肩を落として「落ち込んでいます」って顔だ。情けないと思いつつ彼を頼ってしまうところ、須賀くんの存在は私の精神安定剤のようになっているらしい。<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997134"><br id="yui_3_2_0_3_1406880715997136">「死んだ人のことをね、何から忘れるって、まずその人の声から忘れるんだって」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997140"><br id="yui_3_2_0_3_1406880715997142">紅茶から目を離し、組んだ自分の手をじっと見つめて先程の答えを呟いた。<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997146">カップを持ち上げた須賀くんが固まる。<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997152">「中学生の頃だけど、私それを聞いた時、凄く懐かしい声があったはずなのにもう思い出せないなあって思ったんだ。本当だよ。多分あの時そう思ったのは須賀くんのことがまだ記憶にあったからなんだろうなぁ」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997156">「しぃちゃん…」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997162">須賀くんが私の名前を呼んだので、薄く微笑んで、「声、出たね」とからかう。未だ声でコミュニケーションを取ることを苦手としている彼は、私と一緒でも滅多に声を使わない。<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997166">恥ずかしそうに頬を朱色に染めながら、須賀くんは紅茶カップを置いた。<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997172">「あのね。私声から忘れるってこと、本当だと思うんだ」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997176">「え？」<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997180">「記憶を無くしていたせいもあるだろうけど、お祖父ちゃんの声、私もう思い出せない。ここにいる須賀くんの小さな頃の声も思い出せない。あんなにたくさん遊んで、あんなにたくさんお世話になったのに、思い出せないの」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997490">ゆっくりと記憶は色褪せていく。祖父のことも、幼い須賀くんとの思い出も。あんなに傍にいた両親のこともいずれ忘れてしまうのだろう。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997496">もう会うことが出来ない人達。大切だった日々も遠くなって、その人の声までも忘れてしまうのだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997221">せめてビデオテープがあれば、声が残っているかもしれない。けれどどこを探してもそれらしいものは見当たらなかった。あったのはアルバムだけだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997219">「…ビデオテープは、機械が苦手な敬一郎さんが、全部、捨てたと思う」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997213">「ふふ、そっか。お祖父ちゃん世代だとそういうのわからないもんね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997227">「ご、誤解しないで欲しい。敬一郎さんは、しぃちゃんのこと嫌いになったんじゃ、ない。とても、大事で、会いたいと言ってた。でも、万が一があったら困るから、って、しぃちゃんがいたことが分かるものは捨てたんだ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997238">「……でも、アルバムだけは捨てられなかったんだね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997246">須賀くんが見ていた大きなファイルに眼をやる。ファイルには写真がいくつか挟まっていた。多分捨てられなかったのであろう、自分の家族の写真。お祖父ちゃんが若い時やお父さんの子どもの頃、お父さんとお母さんの結婚式の写真、そして私が生まれてからは、小さな私ばかりがそこに写っていた。ページをめくると、写真に黒い棒みたいに突っ立っている小さな少年の姿も混じるようになる。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997269">それを見て須賀くんは恥ずかしそうにファイルを閉じると、私にイヤイヤと首を振った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997276">「も、ダメ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997280">「なんでー？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997284">「何だか、恥ずかしい」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997288">「どうして」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997294">「…僕がしぃちゃん家に混じったみたい」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997300">顔を真っ赤にしていうものだから思わず噴き出してしまった。須賀くんは昔と変わらず、どこか乙女思考なところがある。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997313">いいから見せて、と半ば無理矢理アルバムを奪って立ち上がる。アルバムを奪われた須賀くんは驚き続いて立ち上がると、素早く目標を取り上げようと手を伸ばした。本の背に彼の手が強く当たり、弾かれるように私の手から離れた本はバサバサと写真を散らばして落ちた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997322">「あーあ、やっちゃったね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997326">「ごっ…！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997330">「謝らなくていいよ。そういえば、昔こうやって須賀くんのノート取り上げて『取ってみよ勇者！』とかやってたね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997335">「あの頃はしぃちゃんの方が少し背が高かったから、取り戻すの大変だった…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997339">「ふふ。今は須賀くん大きくなったもんね。私からものを取り返すのなんて簡単だよね」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997346">二人でしゃがみ、散らばった写真や添えてあったメモを集める。最後に落としたファイルを持ち上げた須賀くんは、違和感に気がついた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997359">「重たい。…何だろう、これ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997363"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997365">ファイルの一番最後のページ。そこだけ真っ黒い紙封筒がファイリングされている。封筒はぴったり糊付けされていて開けることが出来なかった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997373">気になった私はすぐにはさみを持ってきて、丁寧に封筒を開ける。須賀くんが中身に指を入れ、ごそごそと中身を取り出すと――――。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997384">「これ、ビデオテープ？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997388">「いや、カセットじゃないかな。…今、ラジカセ持って来る」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997394">黒いテープ。ラベルには日付が書いてあった。須賀くんは得意の俊足であっという間にラジカセを用意する。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997411">聞けるかな、と二人で顔を見合わせ、そのカセットを入れた。ジジジというノイズ音が暫くした後、カチッという音がラジカセから響く。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997419"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997421">『あーあー。まいくのテスト中！あー！』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997434">直後にキーンというハウリングの音が耳を突く。すると少し高めの少年声が、先程の大声の主をたしなめた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997428">『しぃちゃん。大きい声、出しすぎ、だよ』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997195">『いいのいいの。テストなんだから』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997449">そのやり取りで、小さな頃の須賀くんと私だ、とすぐに分かった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997455">驚いて一緒に聞いている彼を見ると、彼も驚いているようで口をぱくぱくさせていた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997463">『でも、マイクこわれちゃう』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997475">『大丈夫だよ。おじいちゃんが買ってきたものなんだからそうかんたんにこわれないよ！ねーおじいちゃん！』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997483">『ああ。おじいちゃんが買ってきたんだから間違いないだろうよ』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997504"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997562">低くしわがれた声。それなのにどこか力強さを感じる声色だった。何より、何年も聞いていないその声に安心感を覚えていた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997519"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997542">『まったく、シオリはお転婆すぎるな。マイク壊すなよ、せっかくおじいちゃんが買ってくれたんだからな』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997544">『はーい！おとーさーん！』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997551">『…ただの音楽会の練習なのに、奮発しすぎじゃありません？』</p><p>『なあに、大丈夫。それにあの子たちが練習したいっていうんだから、応援してやらなきゃだろう？』</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997540"><br></p><p>今度は両親の声が混じる。心配性の母親。大らかな父親。どちらの声も、ついこの間までこの世にあった声なのに酷く懐かしい。</p><p>子ども達の声がマイクに乗って聞こえる。歌の練習をするらしい。どちらもへたくそな、音程がばっちり外れているへんてこな歌を聴かされた。須賀くんの声は小さく、何度もテープの中の私に叱咤されている。自分だってへたくそなくせに、まるで先生と生徒みたいにして須賀くんに命令して、何度も歌った。時折聞こえる両親と祖父の笑い声に、ついに私は耐え切れなくなって顔を両手で覆った。</p><p>「し、しぃちゃん？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997590">「……ごめん。悲しい、とかじゃないから。なんか…なんか、涙出ちゃったの。なんでかな」</p><p>両手の隙間から、すくいきれない涙が零れていく。パタパタと微かな音をさせてカーペットに染みこんでいった。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997602"><br></p><p>（この声を。いつか忘れてしまう日がきてしまう）</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997612"><br></p><p>テープはいつかダメになる。もう思い出したくても思い出せなくなる。大切な人のことを。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997622"><br></p><p>「しぃちゃん」</p><p>ぎゅ、と私の両手を彼の手が包んだ。涙で濡れた私の両手。ぬるりと滑って気持ち悪いだろうに、彼は力強く握り締めると、珍しく私とぴったり目を合わせた。</p><p>「僕、は。もうお父さんの声も、お母さんの声も、きっときちんと覚えていない」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997732">「……」</p><p>「それは、仕方の無いことだと思った。形に残らないし、人の覚えておけることって、きっと限られてるから」</p><p>「…須賀くん」</p><p>「だから、他の何を忘れたとしても。僕はしぃちゃんのことだけは、忘れないって、誓うよ」</p><p>握った両手を自分の口元まで持っていって、優しく口付けする。</p><p>絶対に忘れないよ。しぃちゃんの声も、笑った顔も、流した涙も、僕は死ぬまで覚えてる。</p><p>「頭の大半を、しぃちゃんで埋め尽くせば、多分忘れない」</p><p>「…ふふっ、言い過ぎだよ、それ」</p><p>「でも、それくらいの気持ち。忘れないくらいの思い出を、二人で作ろうよ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997692"><br></p><p>ぎこちなく須賀くんが笑った。真っ直ぐな彼の優しさが胸の奥を撫でてこそばゆい。</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997707"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997721">「そう、だね。たくさん作ろう、須賀くん」</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997713"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997715"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997735">＜その声も＞</p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997724"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997730"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1406880715997726">（私、忘れないよ。大切なものがそこにあったこと）<br id="yui_3_2_0_3_1406880715997184"></p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11903255413.html</link>
<pubDate>Fri, 01 Aug 2014 18:24:46 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「幸福な時間」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_3_1405483793258160">シュウシュウ、と煙が上がる音が微かに聞こえる。現実と夢の狭間で揺れ動く意識の中、その音に耳を傾けていた。</p><p>あれは多分ヤカンの音だろう。そういえば昨日、寒くなってきたからストーブを出そうって言って物置から苦労して出してきたのだった。早速使っているんだなぁ。…誰が？</p><p>それに何のためにお湯を沸かしてるんだろう。ああ、誰かがヤカンをストーブから離した。食器がカチャカチャぶつかる音もする。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258264">誰かがいるんだ。この館に。僕しかいないはずなのに。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258262"><br></p><p>「須賀くん。須賀くん」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258273"><br></p><p>僕を呼ぶ声に、微睡みの中瞬きを二回ほどする。ぼやけた視界にいたのは、マグカップを二つ持って立っている幼馴染の姿だった。</p><p>まだ半分夢の中の僕は、口の中で言葉を揉みながら彼女の名前を呼ぶ。すると彼女はほんのりと笑いながら、寝ぼけてるのかな、と首を傾げた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258336"><br></p><p>「コーヒー淹れたの。もし起きてるなら、どうぞ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258348"><br></p><p>しぃちゃんが渡してくれたカップにはコーヒーが入っている。真っ黒の液体を眺めて、何も気にせず口にした。広がる苦味に僕は顔を顰める。それでようやく微睡みから覚めた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258383"><br></p><p>「須賀くん？もしかしてブラックコーヒーダメだった？」</p><p>「う、うん…」</p><p>「ご、ごめんね！てっきりブラックの方がいいのかと…」</p><p>「大丈夫、だよ。飲めない訳じゃないから」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258405"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258426">そのままブラックコーヒーを口にする。しぃちゃんが申し訳なさそうに頭を下げるので、僕はその度大丈夫だと連呼した。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258475">二人でソファに座りながらぼんやりテレビを見る。もうすぐ日付が変わる時刻で、テレビの中ではニュース番組が最後のコーナーを進行していた。</p><p>どうやら話を聞くと、しぃちゃんがお風呂に入っている間に僕は眠ってしまったらしい。出てきた彼女が部屋の寒さに気がついて、僕にひざ掛けとコーヒーを淹れてくれたという訳だ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258545">少しの申し訳なさと、しぃちゃんの気遣いに嬉しく思う自分がいて心がむずむずする。何より彼女が傍にいてくれることが、ストーブよりも僕を暖かくしてくれた。こんなに感情の起伏を感じるなんて去年まではなかったのに。</p><p>カップの中に残る真っ黒なコーヒーに視線を落とし、その揺らめきを注視する。こんな風な、真っ黒の夢を見ていた気がする。…長い間。</p><p>僕らを引き裂いていたことりお化けはもういない。だからこそ彼女は記憶を取り戻しこの村に帰って来れるようになったし、僕の無くしていた声も戻ってきたのだ。酷い悪夢のような日常がゆっくりと変わり、反対に温かい日の光みたいな優しい毎日が僕にも彼女にも訪れた。</p><p>連休があるとしぃちゃんは阿座河村に帰省してくるようになり、今回も冬休みという理由で資料館に帰ってきている。電話口で帰省を聞いた時の僕は佐久間さん曰く「ことりお化けも逃げ出すニヤケ面」と言われたものだが、自分ではよく分からない。ただ嬉しくて、館の隅から隅まで掃除したことは記憶している。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258662">隣でテレビに釘付けになっているしぃちゃんをチラリと見つめる。もう見るのも慣れ始めているけど、はじめしぃちゃんのパジャマ姿を見た時は目のやり場に困った。別段布面積が少ないという訳でもないのだけど、淡いオレンジ色の寝巻きは襟元や裾に可愛らしいレースが付いていた。直視出来なかったのは、単純に「女の子」を意識させられて恥ずかしくなったからだ。自分の知る幼いしぃちゃんはもっとカジュアルでTシャツ短パンみたいな部屋着だったから。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258670"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258732">（あ、いい匂い）</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258736"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258738">ふわりと香るシャンプーの匂い。しぃちゃんとは同じシャンプーを使ってるはずなのに、彼女から香っていると意識するだけでとても高級なもののように思えた。そんな風なことを思っているなんて、僕はなんてスケベなんだろうと頭を振る。隣でしぃちゃんが「何してるの」とおかしそうに笑った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258757"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258759">「な、なんでもない、よ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258763">「あはは！須賀くん、今何かスケベなこと考えてたでしょ！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258767">「！？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258775">「顔で分かるよー。ちっちゃい頃も、私のスカートめくれちゃった時にあわあわしてたけどそんな風な顔してたもん！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258780">「うう…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258784">「気にしてないから、ほら。泣かないで」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258790"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258792">しぃちゃんは僕の背中をさすりながら、でもなぁ、と小さく呟く。少し伏し目がちな彼女に、僕はめそめそするのをどうにか収めて彼女の名前を呼んだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258817"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258819">「どうしたの？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258824">「え？ああ、何となくね。須賀くんの顔みただけでどんな気持ちだとか、昔はすごく分かってたのに今は少ししか分からないんだなって。さっきのコーヒーもそう。小さい頃は須賀くんの好きなものも嫌いなものも、全部分かってたはずなのに、今はおぼろげな記憶しかないから…寂しいなって」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258836">「…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258840"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258842">僕らの間にある空白の時間は、取り戻しつつある日常に塗りつぶされていくようで、まだそこにある。歪な形をしているその空っぽの時間は、時折塗りつぶされた日常から顔を出して嗤う。決してそれは無くならない。それが時間というものだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258868">お互いに無くしたものを埋めるように僕らは寄り添うけれど、僕らだって完璧に混ざりあえる訳じゃない。取り戻せない時間があるように、昔に戻るなんてことにはなれない。彼女は分からないけれど、僕は少なくともそうだ。声を取り戻して、押し殺した感情が綻びから解けていくのを感じて、僕は思ったんだ。<br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258946">「僕は、寂しくない、よ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258948">しぃちゃんの左手をぎゅっと握る。これでも大冒険したつもりだった。普段手なんて握ったりしたら、心臓が爆発して死にそうなくらいなのに、今回は爆発死の恐怖を飛び越えて手を握りたいと思った。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258951">「とても、長い間会えない時間があった…けど。お互いこと忘れてる部分も、知らない部分もあったりするけど。また、しぃちゃんのことを知ることが出来るって思ったら、嬉しかった」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258959">また、この温もりに触れることが出来るだなんて考えもしなかった。僕は指をしぃちゃんの手に絡めて続ける。</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581018">「しぃちゃんは、僕の宝物だから。壊されないように、僕が守りたい。僕は昔の僕とは少し違う、かもしれないけど、しぃちゃんが大好きなことは変わってないから」</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581024">「うん…」</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581035">「ふ、二人で思い出、作りたい、な」</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581040">勿論だよ、としぃちゃんは答える。それに嬉しくなって、胸の奥がきゅんっと甘く締め付けられて、わっとなって僕はしぃちゃんを抱きしめた。</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581044"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258971">「ねぇ、しぃちゃん。僕は今、幸せだよ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258978">「須賀くん…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405483793258984"><br></p><p>顔、真っ赤だよ。しぃちゃんがくすくすと笑う。僕は真っ赤な顔をしたまま、口をきゅっと結んでしぃちゃんを見つめる。おかしそうに笑う彼女は笑い続けながら、絡めた指をもっと深く絡めて、そうだねと言った。</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581008"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581088">「私も幸せだよ。だってたくさんたくさん、須賀くんが想ってくれるんだもの」</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581097"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581099">こんな素敵なことはないね。</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581113">僕は彼女がそう言い切る前に、ボロボロ涙を零しながら彼女の耳元に囁いた。</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581153"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581155">＜幸福な時間＞</p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581016"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14054837932581168">（幸せ過ぎて死にそう、だなんて言ったら、君は僕のほっぺをつねったんだ）<br id="yui_3_2_0_3_1405483793258606"></p><br><p>※お題「今、幸せだよ」より。</p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11895070014.html</link>
<pubDate>Wed, 16 Jul 2014 15:40:34 +0900</pubDate>
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<title>須賀シオ小話「good night」</title>
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<![CDATA[ <p id="yui_3_2_0_3_140539622957897">刀を持って暗い館内を駆け回る姿は強盗だって逃げ出す恐ろしさだと言われたことはあるけれど、僕は自分をそんな風に思ったことはない。</p><p>刀を持つのは、あの森にいる子どもたちが入ってきてしまった時に対応する為で人間は切れやしないし、誰かを傷つけるなんて気が弱い僕に出来るはずがないのだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578510">これは用心の為。約束の為。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578508">弱虫な僕が、彼らに立ち向かう時の火付け石役なんだ。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578265"><br></p><p>夜が怖い、だなんて言ったら君は笑うだろうか。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578275"><br></p><p>村が闇で包まれると、日中遠くなっていた声が僕の耳に届くようになる。</p><p>オマエナンカイナケレバヨカッタ。全部オマエノ所為ダ。</p><p>ツライカナシイイタイコワイ。</p><p>直接脳味噌に語りかけるように、その声は僕を侵食する。やめろ、あっちに行けと言ったところで霊を従わすことなど出来ない。耳を塞いだって木霊する悲鳴が、毎夜僕をがんじがらめにする。</p><p>心を荒らしていく子どもたちの叫び声に、僕は何度もそれを切り刻んでやりたかった。だから一人ベッドに潜り込んで、切れない刀で何度も枕を突き刺して駄目にした。宙に舞う羽毛を錯乱した頭でぼんやりと眺めて、自分がおかしくなりつつあるのを自覚する。そんな時、自分自身に受け継がれるあの男の匂いを深く感じるのだった。</p><p>何も考えず、感情の波に乗ってしまえば、僕はきっとあの男のように狂ってしまうのだろう。</p><p>森で彷徨う子ども達に罪はないのに、僕はあの悲鳴に耐え切れず自分の勝手でこの刀を振り下ろしてしまう。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578484"><br></p><p>――――それだけは。それだけは避けなければいけない。ただ殺しのために使うなんて、その為にこの刀を作ったんじゃない。<br></p><p>夜が怖い。</p><p>一人で恐怖と狂気に耐えなければならない時間が堪らなく怖い…。<br></p><br><p>「須賀くん、まだ寝ないの？」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578715">ノックの音が数度、次にしぃちゃんがドアを開けて入ってきた。僕は仕事机から振り返り頷く。</p><p>「もう、毎日遅くまで何してるの。そんなだから隈が酷くなっちゃうんだよ？」</p><p>「ご、ごめん…」</p><p>「よしっ、今日は須賀くんが寝付くまで傍で見張ってることにする！」</p><p>「はっ！？」</p><p>「はい、寝て寝て！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578690">背中を押されてされるがままベッドに放り込まれる。瞬く間に掛け布団を準備され、しぃちゃんはベッド脇にちょこんと座り僕を寝かそうと布団をぽんぽんと叩いた。</p><p>いや、眠れないんだけどなぁ。そう思いながらしぃちゃんを見上げる。彼女はどうしたの、と微笑みながら一定のリズムで布団を叩く。</p><p>「し、しぃちゃん…いいよ。僕、まだ寝れない、し」</p><p>「ダメダメ、そんな疲れた顔してるのにまだ仕事するなんておかしいよ。今日はもう寝る時間！」</p><p>「でも…」</p><p>「須賀くんっ！」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578725"><br></p><p>ぴしゃりと遮られる。雷みたいなそれに僕は驚いて布団に頭を隠した。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578747"><br></p><p>「…ねぇ、須賀くん。多分なんだけどね。須賀くんすっごく無理してるんだと思うんだ」</p><p>しぃちゃんはぽつりと呟いた。布団の中で僕は黙って聞く。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578816">掛け布団の上から、しぃちゃんの柔らかい手で頭を撫でられる。何となく懐かしく、くすぐったくて唇を噛んだ。</p><p>「須賀くんって溜め込んじゃうタイプだし。すごく心配だよ。昔と違って弱音も吐かなくなっちゃったし。私が頼りないのかもしれないけど…。須賀くんの傍に私がいること、忘れないでほしいな」</p><p>「……」</p><p>「…おやすみ」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578828"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578909">しぃちゃんがそう呟いた後すぐスリッパが踵を返す音がした。部屋は暗くなり、溢れてくるのはカーテンの隙間から入る月明かりだけだ。</p><p>外で鳴く虫の声と月明かりだけの静かな夜。僕はベッドの上から天井をじっと見つめ、目を閉じた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578873"><br></p><p>夜が怖い。耳に届く子どもの悲鳴とあの男の狂気が僕から「僕自身」を奪っていくようで。</p><p>弱い、弱虫な僕。強気でいられたのはあの刀があったからだ。今はもうないけれど――――代わりに、かけがえのない大切な拠り所があるじゃないか。<br></p><p>「しぃちゃん…」</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578934"><br></p><p>布団から起き上がって彼女を呼び止める。ドアノブに手をかけていた彼女は振り返り、どうしたのと尋ねた。</p><p>僕は、少しだけ口ごもり、自分の隣をぽすぽす手で叩いて示す。すると彼女は察したように微笑み、スリッパを途中で放り出して駆け寄ってきた。</p><p id="yui_3_2_0_3_1405396229578981"><br></p><p>「なあに？」</p><p>「…一緒に、寝て欲しい」</p><p>「ふふっ、もしかして夜が怖いとかなのかな？」</p><p>「……」</p><p>「ことりお化けに立ち向かう勇気はあるのに、夜が怖いなんて不思議ちゃんだ、須賀くん」</p><p>「…ダメ？」</p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781008"><br></p><p>僕がしぃちゃんの顔を覗き込むように言うと、嬉しそうに笑顔を零して彼女は僕を押し倒した。</p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781028"><br></p><p>「おやすみ、須賀くん！いい夢を！」</p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781036"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781070">＜good night＞</p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781046"><br></p><p>※お題「独りの夜を越えて」</p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781073"><br></p><p id="yui_3_2_0_3_14053962295781109">刀の存在は須賀くんを強くするけど逆に狂わすもの。しぃちゃんは須賀くんを強くして守ってくれるものなイメージ。<br id="yui_3_2_0_3_1405396229578694"></p>
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<link>https://ameblo.jp/minao1213/entry-11894517708.html</link>
<pubDate>Tue, 15 Jul 2014 14:03:26 +0900</pubDate>
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