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<title>アジア放浪記　～バックパッカーズ読本～</title>
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<description>初海外。発大阪！着上海♪</description>
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<title>1本の電話</title>
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<![CDATA[ <p>「今日、高野は？なにか連絡ない？」</p><p>人の気配がまばらな事務所で、物流のベテラン社員に声をかけられた。</p><br><p>水無瀬はココの所、普段よりも早く出社していた。</p><p>仕事が山のようにあるからである。</p><p>朝仕事の段取りをして、始業までに動けるようにしておく。</p><p>事務所には人も少ないし、余計な電話は皆無だ。仕事に集中できる。</p><p>それが水無瀬の早朝出社の理由であった。</p><br><p>基本的に朝の弱い水無瀬。</p><p>できることならば、布団に一秒でも長く包まっていたいのだが。</p><br><p>「いえ、知りません。まだこの時間だし、もう少しで来るんじゃないですか？」</p><p>「そうか。ならいいんだが・・。アイツにしては遅いな、っと思って。もう少し待ってみるよ。ありがとう。」</p><p>急ぐベテラン社員を、水無瀬は思わず引き止めていた。</p><br><p>「・・・！ちょっと待ってください。高野はいつも、一体何時に出社しているんですか？」</p><p>「いや。いつもって言われてもな。昨日洗濯もかねて久しぶりに家に帰らしたから・・・。」</p><p>何日髪を洗っていないのか。</p><p>フケだらけの頭をかきながら、力のない笑顔で彼は答えてくれた。</p><br><p>物流課の忙しさは、水無瀬の想像をはるかに超えていた。</p><p>そこには「出社」という言葉はもうすでに存在していなかった。</p><p>働けるだけ働く。</p><p>最低限の睡眠を休憩室でとれば、すぐに働く。</p><p>家に帰る移動時間すら勿体ないそうなのだ。</p><br><p>夜。業務終了後。</p><p>幾度と無く水無瀬も物流の作業に加わり、夜が明けると同時にそのまま仕事に戻ったものだった。</p><br><p>仕事は至って単純。</p><p>次の朝、配送される品物のチェックをするだけ。</p><p>コンテナとよばれる四方２０cm程度の「箱」の中に商品が所狭しとならんでいる。</p><br><p>配送リストとコンテナの商品を照らし合わせて、一致すればＯＫ。</p><p>抜けがあれば倉庫から取ってくる。</p><p>それを一晩かけて行うのだ。</p><p>責任は重大ではあるが、作業内容としては比較的簡単なものである。</p><p>しかし物流経験のない人間にできるのは、その程度のものだった。</p><p>「もっと手伝えれば・・・」</p><p>そんな不甲斐なさを、水無瀬は感じていたのであった。</p><br><br><br><p>1本の電話が不自然になった。</p><br><p>普段、電話はひっきりなしに鳴っている。</p><p>取引先、下請け、クレーム、直接の売買・・・。</p><p>そんな中その電話がひときわ皆の注目を浴びたのは、時間帯に起因していた。</p><p>12時30分。</p><p>お昼時ど真ん中。この時間にかけてくる者といえば、緊急を要する電話が多い。</p><p>お昼を早く終えた皆が、少し緊張した面持ちで、電話番の話し声に集中する。</p><br><p>「・・・はい。少々お待ちください。中田さんお電話です。」</p><p>「中田――」</p><p>水無瀬はある予感を感じていた。そう、中田は高野の直属の上司である。</p><br><p>小さく返事したその顔は、ババ抜きの最後の最後にババを引いてしまった様な顔になっている。</p><p>この時間帯の電話にはロクな事がない、というのは中田も承知しているようだ。</p><p>しかし、次の一言で顔の色が引いて行った。</p><br><p>「高野君のお母さんからですが・・・。」</p><br><br><br><br><br>
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<pubDate>Sat, 15 Nov 2008 17:05:32 +0900</pubDate>
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<title>忙殺</title>
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<![CDATA[ <p>忙しい。</p><p>「心」を「亡」くすで忙しい。</p><p>缶コーヒーのCMでサラリーマンに扮した芸人がこういっていた。</p><br><p>しかし彼は続けて、暇よりは忙しい方がいい、と言うのだ。</p><p>確かにそうだ。</p><p>暇はいけない。そんなもの老後の自分にくれてやるべきだ。</p><p>しかし、忙しいのはもっといけないのではないか。</p><p>本当に心を亡くす程、イソガシイ場合であるが。</p><br><p>新本社設立は甘くなかった。</p><p>営業機能を移転させるだけなら、問題は無かったのだが、如何せん新本社は巨大物流センター併設というプロジェクトのもと立ち上がっていた。</p><p>いや、立ち上がってしまっていたのだ。</p><p>物流センター稼動を見越して立てられた計画は全てにおいてツメが甘く、実際の作業者の事を全く配慮していないものとなっていた。</p><br><p>計画とのギャップに戸惑う現場。時間が命の物流。</p><p>なんとかして、配送を間に合わさなければいけない。</p><p>解決策は？</p><p>・・・マンパワーしかなかった。</p><p>全国各地の拠点から物流課の人間が集められ、24時間体制で昼も夜も無く働いた。</p><br><p>高野は物流の人間ではなかった。</p><p>しかし、その部署で特別決定権をもっている訳でもない彼は「少々業務を抜けても問題なし」と判断された。</p><p>そしてマンパワーの足りていない倉庫へ。</p><p>この騒動が終わるまで、一時的物流社員として急遽配属となった。</p><br><p>しかし、そこで高野は驚くべき活躍を見せる。</p><p>初物づくしの物流課のなかで、毎日のようにトラブルに接する。</p><p>見事な発想力と、柔軟な対応でそれをすり抜けていく。</p><p>そういったイレギュラーに強い男とは知っていたが・・・。</p><br><p>物流の社員も、倉庫内のパートさんも彼に信頼を寄せていく。</p><p>「賢い。出来る。まじめだ。」</p><p>そういった評判が水無瀬の部署にも届いていた頃だった。</p><br><p>朝、水無瀬は物流課の人間から声を掛けられ、悪い予感が広がっていくのを感じた。</p><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10158736514.html</link>
<pubDate>Thu, 13 Nov 2008 17:20:14 +0900</pubDate>
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<title>不在</title>
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<![CDATA[ <p>予想がむずかしい馬券は倍率が上がる。</p><p>時には100円を賭けて、1,000万円になったりする時もある。</p><p>この一連の事件が終わって、気づいたこと。</p><p>これは競馬で言うところの万馬券だったな・・・と。</p><br><p>「我が社は新本社という新しい船を得て～～」</p><p>社長は演壇が似合う。</p><p>というよりも、演壇にいる社長が水無瀬にとって一番なじみが深いだけの話だ。</p><p>神々しい社長ではない。水無瀬のような末端とも呼べる社員に、気さくに声をかける、そんなTOPである。</p><p>だが実際、そんなことは滅多にない。</p><p>TOPというのは忙しいのだ。それも半端なく。</p><br><p>”そう我が社は新本社という新しい船を得たのです。”</p><p>ノートにそう書き込んだ水無瀬は、感想文をすでに考え始めていた。</p><p>社長のスピーチ＝感想文</p><p>この方程式が確立されるのにそう時間はかからなかった。</p><br><p>「10年後のビジョンは～～」</p><p>10年後彼は60歳を超えているはずである。</p><p>現役宣言をこんなところでされても・・・経営陣の苦笑いが見える。</p><br><p>会社方針説明会。</p><p>役員、幹部、拠点のヒラまで全員参加のこの行事。</p><p>もちろん、得意の日曜日だ。</p><p>慣れてきたのか、諦めたのか、水無瀬は当たり前のように日曜日をこの下らない儀式に費やしていた。</p><br><p>高野の姿がない。</p><p>そう気づいたのは各課の点呼の時だった。</p><p>風邪を引いて休んでいるならともかく、不在の理由は「作業中」であった。</p><p>そう、高野は今まさに働いているのである。</p><br><p>実際何人かの社員は作業中であった。</p><p>しかし、本当に忙しく責任のあるポジションならともかく、なぜ1年目の彼が・・・。</p>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10158725154.html</link>
<pubDate>Thu, 06 Nov 2008 20:24:37 +0900</pubDate>
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<title>伊海の決断。</title>
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<![CDATA[ <p>「オレ辞める」</p><p>そう聞いたのは昨日のことだった。</p><p><br></p><p>「辞めようと思う」ではなく、「辞める」である。</p><p>よく三文週刊誌に「○○離婚！！」の後に”へ”とか”か？”とかが虫眼鏡サイズで付いてるが、今回は、ヘ、も、か、もない。</p><p>確定のようだ。</p><p>どうやら辞表提出済み。受理も時間の問題だという。</p><p><br></p><p>物流部門のボスは絵に描いたような、ボスキャラである。</p><p>といってもミナミの帝王にでてくる様な「かっこいいボス」とは一線を介している。</p><p>体格はよく、といってもお相撲さんの流れにある体だが、顔は日本人離れした大きな目。</p><p>唇は分厚く、脂ぎった鼻頭にはほくろがやたら多い。</p><p>そう、やたら。</p><p>なんといってもトレードマークはオールバック。</p><p>1世代前のやくざといった感じか、もしくは自己管理の下手なマフィアだろうか。</p><p><br></p><p>水無瀬はそのボスが嫌いではなかった。</p><p>仕事の出来る人間だったし、なによりも明るかった。</p><p>部署は違えど、会えば何かしら話をしていた。</p><p>そしてその言葉の端々に、伊海への期待がこめられていたのを、よく知っていた。</p><p><br></p><p>もちろん「なぜ」という質問がでる。</p><p>これから、伊海はこの「なぜ」という質問に何十回と答えなくてはいけない。</p><p>お世話になった上司、先輩、そして両親・・・。</p><p>あまり良いニュースではない。話をするのにも骨が折れるだろう。</p><br><p>そんなことをもわかりながらも、水無瀬は躊躇無く聞いていた。</p><p>「何故なんだ」と。</p><p><br></p><p>「バックパッカーがしたい！」</p><p>答えはシンプル。</p><p>同期たちは、さらに質問を深めていく。</p><p>いつ辞めるのか、旅はどこに行くのか、物流のボスは何て言ったのか・・・。</p><br><p>伊海は大きな決断をやりきったかのように、ハキハキと答えている。</p><p>水無瀬は上の空で聞いていた。</p><p>先ほど聞いた言葉が、幾度も幾度も頭の中を反芻していた。</p><p>「バックパッカーか・・・」</p><p><br></p><p>今朝掃除した社屋は元通り、落ち葉で黄色く染まっていた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10158261835.html</link>
<pubDate>Tue, 04 Nov 2008 18:25:23 +0900</pubDate>
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<title>男３</title>
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<![CDATA[ <p>吐く息が白い。</p><br><p>「四季。各々が織り成す美しい表情。それを感じるだけで日本人でよかったと思います。」</p><p>朝、ニュースキャスターが嬉しそうに、そうコメントしていた。</p><p>それを思い出しながら、水無瀬はウンザリしていた。</p><br><p>この日、水無瀬は外掃除にあたっていた。</p><p>会社の周りには、数え切れないほどの落ち葉が舞い落ちている。</p><p>掃いても掃いても終わるわけがない。</p><br><p>社員は就業時間の２０分前に来て、掃除をしている。</p><p>毎日のことなので、強制ではない。</p><p>・・・のだが誰一人遅刻しないし、サボらない。</p><p><img height="16" alt="むかっ" src="https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/034.gif" width="16">ナンデダヨ・・・。</p><br><p>秋という季節はあまり好きではない。</p><p>理由は簡単。冬が嫌いだからだ。</p><p>「寒いのはイヤだ。」</p><p>水無瀬は狭い駐輪場に、駐車したバイクを見ながらそう思った。</p><p>単車は水無瀬のFTR、そしてTWがもう一台止まっているだけだった。</p><br><p>社員のほとんどが掃除をしている最中、もうすでに働いている男がいる。</p><p>彼の配属は物流部門。</p><p>昼の出荷に間に合わせる為、この時間からフル稼働しなくては間に合わないそうだ。</p><br><p>「リフト」と社員の間で呼ばれている、荷物を上げ下げするアームのついた不恰好な機械を操作しながら、倉庫を縦横無尽に走り回っている。</p><br><p>「伊海くん、朝から忙しそうだね」</p><p>同じ当番の先輩が声を掛けてくる。</p><p>あまりの葉っぱの多さに、早くもあきらめた様だ。</p><p>「そうですね」</p><p>水無瀬は曖昧に返事をして、掃除を続けた。</p><br><p>いつもなら、話しに花を咲かせる水無瀬だったがこの日は違った。</p><p>というより、話題が悪すぎる。適当なゴシップのほうがまだマシだ。</p><p>水無瀬は心の中で苦笑するしかなかった。</p><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10158249396.html</link>
<pubDate>Sun, 02 Nov 2008 22:05:23 +0900</pubDate>
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<title>男２ vol.2</title>
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<![CDATA[ <p>高学歴。</p><p>初めて出会ったときはそれしか印象がなかった。というよりも、これほどの学歴の人間に出会ったことがなかったから、それだけが鮮烈に残ったのである。</p><br><p>勉強ができる。しかし、頭のキレが悪い。トラブルに弱い。のろまだ。勉強しか知らない。</p><p>・・・なら水無瀬にも勝ちようがあったものの、高野は全て完璧であった。</p><p>唯一、玉に傷と言えるところがあるとするならば、この会社で一生やっていく、と決めていることか？</p><p>彼なら、巨万の富を築ける。会社を経営すればの話だが。</p><br><p>下らないことを考えながら、帰り支度をようやく始めた高野に声をかけた。</p><p>「大変だな」</p><p>「そっちこそ」</p><br><p>やわらかい笑顔をする。</p><p>これだけ働かされれば、誰だって笑顔なんぞ枯れそうなものだが・・・。</p><p>日付の変わってしまった掛時計は、何事もなかったように時を刻み続ける。</p><br><p>社会人にすっかり適応した高野が</p><p>「お先に失礼します！」と</p><p>水無瀬もそれに続く。</p><br><p>肩を並べて社屋を出る。夜の風が季節に反して、異様に冷たい。</p><p>高野はこんな生活を、後４０年近く続けるつもりなのだろうか。</p><p>とそんな質問がよぎったが、すぐに打ち消した。</p><p>彼なら「もちろん」と答えるに決まっている。</p><br><p>そう、それが決めたれた事柄のように。</p><br><p>４０年。彼なら間違いなく社運を握る重要人物になっているだろう。</p><p>水無瀬は疑いも無くそう思った。</p><p>その時、その事、は揺るぎもない事実のように思えたのだ。</p>
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<pubDate>Sat, 01 Nov 2008 21:15:02 +0900</pubDate>
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<title>男２</title>
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<![CDATA[ <p>「残業と言うのは、仕事の出来ない人間がするものだ。」</p><p>本当にそうなのであろうか。確かにその考え方は間違っていない。</p><p>しかし、物理的にマンパワーが足りずに、残業せざるを得ない状況下に置かれる事だって多々あるのだ。</p><br><p>時計の針が１日の終わりを告げようとしていた。</p><p>水無瀬は月初の忙しさに、時間も忘れて働いていた。</p><br><p>目の前の柱に、ひときわ大きい掛け時計がある。</p><p>白い時計版に黒い３本の針。デザイン性はおろか、何の工夫もないこの時計。</p><p>いつもなら５分おきに、時間が経たないと、罪のないこの時計を睨み付けているのだが。</p><br><p>さすがにこの時間だ。人もまばらにしか残っていない。</p><p>事務所は昼間の半分ほどの明かるさになっている。</p><p>この会社は、一人一人の蛍光灯に「ヒモ」が付けられており、帰るときには自分で消すといった習慣があった。</p><p>その事がさらに、水無瀬の気持ちを暗くさせていた。</p><br><p>水無瀬の対岸で端末を叩く音がする。</p><p>「パコパコ、パコパコ、パショ・・。」</p><p>ＥＮＴＥＲを叩く音すら元気がない。</p><br><p>その一角は彼と、その上司二人しか残っていない。</p><p>あたりは暗く、それと対照的にパソコンの液晶の明かりに照らし出された二人が、疲れた顔を覗かせていた。</p><br><p>「ん・・？高野か。まだ残ってるのか？あいつ。」</p><p>水無瀬は、最近働きすぎの同期を少し不憫に思っていた。</p><br><p>彼は最初から老後のことを考えて、この会社に入ってきているらしい。</p><p>きっちりサラリーマンをして、きっちり国民年金保険払って、きっちり年金貰うのだそうだ。</p><p>「確かにマットウだ。」</p><p>関心はすれども、水無瀬にはその考えが、いまいち理解出来なかった。</p><p>そして、その事に焦りすら感じない自分に、少し嫌気がさしていた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10158171046.html</link>
<pubDate>Fri, 31 Oct 2008 22:31:45 +0900</pubDate>
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<title>男</title>
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<![CDATA[ <p>芥川賞、直木賞。</p><p>権威のある２つの賞であるが、この年は、デビュー間もない若い２人が選ばれた。</p><p>読みやすさも助けとなって、彼女達の書籍は書店から文字通り飛ぶように売れた。</p><p>「生れる前から作家だったのか。」</p><p>とある評論家に言わせしめた、二人の鮮烈な受賞劇であった。</p><br><p>ビンゴゲームで貰った受賞作が、大事そうに本棚に収まっている。</p><p>男の部屋は以外にさっぱりしており、無駄なものはなく、かといって空虚感を感じることのない部屋であった。</p><p>酒を飲みすぎたのか、水がうまい。深酒の後水を飲むと、体の毒素が空気中に分解していくような、そんな錯覚にとらわれる。</p><br><p>新入社員歓迎会。</p><p>部署ごとに行い、会社全体では行わない。</p><p>水無瀬は男と同じ部署ではなかったが、「席が近い新入生」というくくりで歓迎会を同日にされた。</p><br><p>散々悪乗りをした。「ノリ」でタバスコを一気飲みしようとして、先輩に止められた今日。</p><p>学生時代、ロクでもない安酒を呷っていたあの頃と大して変わらないな。</p><p>苦笑。しかし悪くない。</p><br><p>水無瀬は男の胸板が同じリズムで上下しているのを認めた。</p><p>サッカーを現役でやっているらしく、体は筋肉の均衡がとれ、メタボと呼ばれる種族とは対岸にいるような、そんな男である。</p><p>島生まれの島育ちとあって、性格は明朗快活。目に見えない「芯」というものが見えそうな、そんな奴だな、というのが水無瀬の男に対する第一印象であった。</p><p>「多竹寝たのか？」</p><p>「いや・・・寝ようか」</p><p>蜘蛛の糸のように天井からぶら下がる「ヒモ」を下に引っ張ると、頼りない明かりが２人を照らし出した。</p><p>そしてもう１回。部屋は当然のごとく闇につつまれた。</p><br><p>今日は悪くなかった。</p><p>多竹は悪乗りが「効く」。まだ社会人らしくない。学生が抜けきれていない。</p><p>だから楽しかった。</p><br><p>社会人になりきれない、そしてなれそうもない水無瀬は、強くそう思って深い眠りに落ちていった。</p>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10157817649.html</link>
<pubDate>Thu, 30 Oct 2008 20:48:38 +0900</pubDate>
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<title>始まり。</title>
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<![CDATA[ <p>「一社会人としての自覚を～～」</p><p>某有名銀行頭取の挨拶が延々と続いている。</p><p>誰も耳を傾けていないことを知ってか知らずか、不機嫌そうなその顔と額に浮かんだ汗が小気味悪い。</p><p>日曜日だと言うのに社員は全員参加。</p><p>当たり前と言えば当たり前だが・・。</p><br><p>世間ズレせず、大学生→社会人とレールを走った。</p><p>超就職氷河期と呼ばれた時代。ろくすっぽ真面目に就職活動もせず原付で日本中を回っていた。</p><p>周りの人間も、厳しいご時世とあってなかなか内定を取れないでいた。</p><p>下らない話、皆がそうなので安心していた。そして、遊びほうけていた。</p><br><p>長旅から帰ってきて、就活でも、と生半可な気持ちで受けたのがこの会社。</p><p>就職する気なんざ毛頭なかった。社会経験として面接を。心の底から腐っていた。</p><br><p>しかし、すばらしい面接官だった。この日のことは一生忘れないのだろう、と今でも真剣に思ったりする。</p><p>すばらしい人との出会いは、人生を変えるというが、あながちウソではないのかもしれない。</p><p>社会人になってもいいか、という気持ちになったのはそのときが初めてだった。</p><br><p>パラパラという拍手の音で、それ、が終わったことに気づいた。</p><p>「続きまして～～」</p><br><p>ホワイトボードに書かれた進行表を見て、うんざりする。</p><p>外は雨模様。占いの類は信じたことがない水無瀬だったが、この時ばかりはこの先に不安を覚えた。</p><br><p>ようやく式が終わり、司会者から順番に出て行けとのアナウンスがある。</p><p>「・・・ふぅ」</p><p>気疲れなのか、これから始まるビンゴゲームへの気遅れなのか。</p><p>水無瀬はゆっくりと腰を上げた。</p><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/minase239/entry-10157746278.html</link>
<pubDate>Wed, 29 Oct 2008 17:22:19 +0900</pubDate>
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