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<title>ショート・ショート</title>
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<description>短編小説を書いてみました。もしよかったら、お気に入りを見つけてください:)</description>
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<title>木の実</title>
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<![CDATA[ 　ルキジが小学生だったころのある晴れた日、家の近くの並木道で、赤いような、黄色いような、オレンジ色のような、なんとも表現の仕様のない、あえていえば絵に描いたやさしい太陽のような色の木の実をひろった。<br>　その木の実は、手のひらの中でやさしく、ほんのりと輝いていた。ポケットの中にしまいこんだその実は、いつの間にか無くなってしまっていた。<br><br>　そんな木の実に再び出会うことになったのは、それから何年もたって、ルキジが働き始めてからのことだった。といっても、決してロマンチックな再会とはいかなかった。<br>　ちょうと手袋が必要になったくらいの、寒い日のこと。会社からの帰り道、公園のベンチで寝ている老人の手には優しく光るなにか、魅力的なものが握られていた。ルキジにはわかった、それは宝石でもライトでもない、他ならぬあの木の実なんだ、と。十数年越しに再び出会ってしまったことは、運命以外の何物でもないのだと、そう信じたかった。しかし、そんな木の実を大切そうに握っているのは、少しでも近づけば異臭の漂いそうな、孤独のあまり日本語で話すことすら忘れてしまいましたといわんばかりのみすぼらしい姿の老人だった。とてもではないが、話ができる相手ではないと思われた。<br>　しかし、その木の実の光を見るうち、ルキジは、そんな気持ちを抱いた自分を恥じるようになった。彼も同じ人間で、同じときを同じ町で過ごしてきたのではないか。そして、きっと彼もルキジも、木の実の美しさに魅了された仲なのだ。ふと、初めて木の実を手にしたときの、幼かった頃の記憶がよみがえった。<br><br>　テストの点が悪かったことで母親に叱られて家を飛び出し、たどり着いた黄金色のイチョウの並木道に落ちていた木の実のこと。木の実を手にしたときの、言葉にはできないあたたかく、優しいきもちになって、宝物にしようと、ポケットにしまったこと。その日、家に帰って家族で食べたシチューのおいしかったこと。そして、その日から、優しさ包まれたような気持ちで、毎日お母さんの夕ご飯の手伝いや、宿題を欠かさずするようになったことが、走馬灯のように思い出された。<br>　<br>　そしてさらには、木の実がなくなった日のことまで思い出された。木の実を拾ってから数ヵ月後、学校の帰り道に例のイチョウの並木道の真ん中で、座り込み泣いている同い年くらいの男の子を見つけた。ルキジが、<br>　「どうしたの」<br>　と何度かやさしく語りかけても、彼は答えようとしなかった。ふと、ルキジまで悲しい気持ちがこみ上げてきて、宝物だった木の実をポケットから取り出し、彼に無言で手渡すと、寂しさと照れが混じった複雑な気持ちになって、家まで駆けて帰っていったのだった。その後、この男の子と再び会うことはなかった。<br><br><br>　そんなことを思い出していると、いつのまにやら体が勝手にホームレスのほうへ向かい、気づいたときには話しかけているのだった。<br>　「こんにちは、今日は寒いですね」<br>　ホームレスは一瞬驚いたようだったが、体をなんどかくねらせてしばらく彼を眺めると、優しい目で微笑んで、しゃがれた声で精一杯挨拶しかえした。<br>　「こんばんは。いやあ、本当に寒い。しかし、こんな若い人から話しかけられるとは思わなんで、おどろいたあ。いやあ、気分はどうかね」<br>　ルキジは後悔こそしていないものの、一体どうしてこんな男に話しかけたのかと自分でも疑問に思いながら答えた。<br>　「僕は、まあまあですよ。おじさんはどうですか」<br>　「わしゃあ、まあ、見ての通りだよ。これだって昔はちいさな町工場をやってたんだ。いや、今日は本当に冷えるねえ」<br>　老人はすべてを悟ったような、優しい表情でルキジに答えた。自分で一瞬寒さなど忘れていたルキジは、ふと、われに返り、目に入った木の実について聞くと、老人が話し始めた。<br>　「この木の実はねえ、もうだいぶ昔のことだよ。大切な人からもらったんだ。だけどね、その日以来、その人とはもう会っちゃいないんだ。今更会えないよなあ。嫌われてるに決まってんだからさあ」<br>　ゆっくりと、しゃがれた精一杯の声で老人がここまで言うと急に咳き込み始めてしまった。<br>　「この木の実、きれいだよなあ。どうだ、これも何かの縁だよ、君にあげるよ」<br>　ここまでいうと、老人はまた急に咳き込み始め、木の実を持った手を差し出したまま、蹲ってしまった。しかし、もはやルキジは木の実のことなどどうでもよかった。初めて木の実を手にしたときの、あの暖かい気持ちで胸が満たされていた。<br>　「良かったら、うちに来ませんか。一緒に暮らしましょうよ。これも何かの縁ですから。」<br>　しかし、老人は手を差し出したまま首をふるだけだった。ルキジは、無理に誘うのは良くないと思い<br>　「また明日ここに来てください、必ずです。もっとお話してみたいんです」<br>　老人は一言、<br>　「そうするよ、ありがとう」<br>　と精一杯の声で答え、木の実を握った手をもとあった腹のところに戻し、眠りについたのだった。<br> 「それでは、さようなら」<br>　ルキジは一言言い残し、公園を去った。今日の晩飯はシチューだな、街灯がやさしく照らす夜道を歩きながらつぶやいた。
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<link>https://ameblo.jp/miutanshort/entry-10476327141.html</link>
<pubDate>Mon, 08 Mar 2010 02:27:29 +0900</pubDate>
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<title>窃盗犯</title>
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<![CDATA[ 　父が帰らなかった日の翌朝、警察署から電話がかかってきた。父が窃盗で逮捕されたのだという。<br><br>　私が生まれた日から、風邪も引かずに日々せっせと働いて、車を買って、一軒屋を建てて、母が宗教にのめりこんで家から出て行っても、愚痴の一つこぼさずにせっせと働き続けた父が、である。<br>　思えば、父は愚痴をこぼすような人ではなかったが、母や私に対する愛をの言葉を口にすることもなかった。　今更こんな状況で父と会ってたって話すことなんてないのだ。<br>　父のことを何も知らない私に、獄中の父と何を話せというのか。<br><br>　気がつくと、この家が建って以来、数度しか入ったことのないの父の書斎のドアに手をかけていた。<br>　中に入ってみると、何年か前に入った時と同様、父の性格をそのまま反映したような小ざっぱりした小さくて、木目調のきれいな部屋のなかに私はいた。趣味の少ない父がこだわった、部屋の奥の窓の下にある立派な木製の机の上には何冊か本が寝かされいる。窓からは、朝の木漏れ日が部屋をやさしく包んでいる。本棚の一応目に付く場所に、十数年も前に家族でとった写真が飾られていた。机の隅に置かれた何年か前の手帳を見ても、なんの面白いこともない、仕事のスケジュールが書き連ねられているだけだった。<br>　ゆっくりと、机の引き出しを開けてみる。手紙やら年賀状やらが、雑然と詰め込まれている中に、父が愛読していた詩集があった。まだ母がいたころ、その詩を夕食の時間に私に聞かせてくれたこともあったが、私は無愛想に聞き流していた。<br>　<br>　白地に赤の文字でタイトルが書かれた詩集を手にとり、ページをめくってみる。終盤のページに、ずいぶん古そうな写真が二枚挟まれているのに気がついた。一枚は、きれいな女性が、公園だろうか、整った木々を背景に微笑んでいる写真。もう一枚には、父とその女性、それに幼い女の子が三人で写っていた。<br>　私は妙な不安を胸に抱いた。その女の子が幼いころの私に似ていたことと、そして父が今まで見せたことのないほどの笑顔だったためだ。<br>　<br>　そろそろ出かけようと、リビングで支度をする。ふと、応接間にある父の仏壇が目に入る。そう、父は三年前に交通事故で亡くなっているのだ。<br>　いつものように仏前で合掌し、父に私を育ててくれたことを心から感謝する。父は本当に窃盗をしたことがあるのかもしれない。母に嫌気が差して、写真の女性と付き合ったことがあるのかもしれない。私はあの写真の女性の子供だって可能性すらあるのだ。それでも、今となってはどうだっていい、私は大好きなお父さんの子供なのだ。<br><br>　身勝手な、悪意に満ちた電話がきっかけで、父が亡くなってから入ることもできずにいた書斎にはじめて入った。でも、今、私の胸は高鳴っている。お父さん、あなたについてもっと知りたいよ、どうして窃盗なんてしたの？いつ、どこで、なにを盗んだの？そんなことだって本当に、娘として、父を知るために聞いてみたいと思うのだ。<br><br>　示談金なんて払うつもありありませんから。<br><br>　すがすがしい朝日を右手でさえぎりながら、勝ち誇った気分で家を出た。
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<link>https://ameblo.jp/miutanshort/entry-10475187462.html</link>
<pubDate>Sat, 06 Mar 2010 20:19:19 +0900</pubDate>
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