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<title>molto amabile</title>
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<description>きわめて、愛らしく。</description>
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<title>井戸の、向こうへ。 - molto amabile 16</title>
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<![CDATA[ 深い、深い井戸の底から、エイミがかすかに呼んでいる。<br><br>コト、コト、おいでよ、コト。<br><br>あたしは、耳をふさぐ。泣きながら、耳をふさぐ。そっちに行っちゃったわけ、ないじゃん。なんで何も教えてくれなかったの。<br><br>カーテンの外の、透き通る青空がスクリーンになって、エイミが浮かんでくる。<br><br>コト、コト、ごめんね、コト。<br><br>キシノとのこと、知らなかった。気づきもしなかったよ、あたし。あのとき、あのメモを渡されたとき、あたしがこんなにのんきで鈍感じゃなかったら、問いつめてたのに。あたしが、あのとき、スタバで別れるとき、もうちょっと一緒にいようって提案したら、エイミはこっちにいたかもしれないのに。<br><br>これから、あたしは、誰に話したらいいの。いろんなことを。深い深い井戸に向かって、ひたすらつぶやけっていうの？こだまがかえってくるだけなのにね。<br><br>ひどいよ、キシノ。なんであたしからエイミを奪っていったんだよ。失ったものが大きすぎて、怒る気力もないよ。ひどすぎるよ…。<br><br><br><br>太陽はこれからのぼるっていうのに、あたしは、毛布にくるまって、ぴくりとも動きたくなかった。ずっと、このままでいたって、いいと思った。だって、エイミは、もう動けない、んだもんね？<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=937864" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">クラシック・アプレ・ミディ・プール・ソワレ/ロジェ(パスカル)<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21M67AQRZ0L.jpg" border="0" width="160"></a><br>￥2,375<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Sat, 19 May 2007 23:36:29 +0900</pubDate>
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<title>失われた、表情。 - molto amabile 15</title>
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<![CDATA[ 「箏乃、」<br><br>さすがに今朝は、もう目のはれも消えてくれた。ばしゃばしゃ顔を洗っていると、お父さんが洗面所まで歩いてきた。真剣な顔で。<br><br>「今日は、学校へ行かないほうがいい。」<br><br>リビングで、お母さんがひっきりなしに電話をかけている。そうそう、そうなんですよ、うちの娘なんか何にも気づきませんで、ええ、ええ、大変でしたわねえ。いつもついているはずのテレビが、今朝はしーんと黙っている。<br><br>「なに？いったい、なにがあったの？」<br><br>お父さんは、一言、一言、重い声で、言った。<br><br><br><br>「山内映見さんが、亡くなった。」<br><br>…なんで？エイミが死んだ？どうして？<br><br>昨日、あんなに元気だったじゃん。あたしたちスタバでお茶して、エイミはデッサンに行くって言って。<br><br>「岸野誠に、殺されたんだ。」<br><br>思考が、停止した。<br><br><br><br>「キシノにはばっちりおしおきしとくさー」<br><br>あの紙切れ、今も数学の教科書に挟まってるかな。そんな、どうでもいいことばかりが頭をよぎる。<br><br>いやだ、いやだ、エイミが死んだなんて嘘だ。それも、キシノに殺されたなんて、ドラマじゃないんだから。嘘だ。嘘だ。<br><br><br>お父さんが止めるのをふりきって、あたしはテレビをつけた。ブラウン管に見慣れた校門が映る。<br><br>「現在、私立翔陽高校には、ぽつぽつとまばらながらも登校してくる生徒たちが見えます。」<br><br>画面の下半分にでかでかと表示された字幕に、あたしは、声も出なかった。<br><br>『高校教師が交際していた17歳の生徒を殺害』<br><br>交際…していた…？<br><br>モザイクがかかった女子生徒が、質問に答えている。<br><br>「エイミさんはぁ、ちょっとオトナっぽい感じで、いつもひとりで行動してたみたい☆」<br><br>なんなんだろう、同じ学校の生徒が死んだっていうのに、この明るい声は。<br><br>「お友達がこんなことになっちゃうなんて、とっても悲しいですぅ」<br><br>…リエ！<br><br>お父さんが、後ろからリモコンでスイッチを切った。<br><br><br><br>何も、考えられなかった。<br><br>携帯のメールを、何度も何度も見返す。内容がちっとも頭に入っていかない。笑っている顔文字、怒っている顔文字、泣いてる顔文字…エイミの表情が重なって見えた。<br><br>「箏乃、おにぎり、置いておくわよ。」<br><br>お母さんの遠慮がちなノックも、どこか遠い国のおとぎ話みたいに聞こえる。<br><br>水さえも、のどを、通っていかなかった。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=932158" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">シューマン:子供の情景/アラウ(クラウディオ)<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21BP6SPZ25L.jpg" border="0" width="160"></a><br>￥1,000<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/moltoamabile/entry-10033958735.html</link>
<pubDate>Fri, 18 May 2007 11:27:02 +0900</pubDate>
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<title>放課後の、ビター＆スイート。 - molto amabile 14</title>
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<![CDATA[ お兄ちゃんがバンドをやるって言ったとき、はじめはお父さんもお母さんも反対してた。そんなの不良がすることだって、お父さんはそっぽを向いた。お兄ちゃんは、小さなパソコンを持って下りてきて、あたしたち家族を最初のお客さんにしてくれたんだ。<br><br>お兄ちゃんの、打ち込んだ、曲。透明で、ひとのこころの奥にある細い細い弦を、そーっと、はじくみたいな曲。<br><br><br><br>「以来、ブリ☆ランの曲は、ずっとHIBIKIが担当してるんだよね。」<br><br>スターバックスで、ココア味のマカロンをかじりながら、あたしはうなずく。エイミは、涼しい顔でブラックコーヒーを飲んでる。<br><br>「３年前にカイ君がメンバーに加入して、ファンの間では軽く大騒ぎになったみたい。なんてったって、中学生だもんね。」<br><br>でも、ブリ☆ランのメンバーは、彼の年齢なんて問題にしてなかった。彼の才能を、受け入れたんだ。<br><br>「HIBIKIは１年半前に脱退。今でも曲だけは提供してる、かあ。コトのお兄ちゃんもなかなかやるじゃん。」<br><br><br><br>お兄ちゃんは、すごい。昼間は仕事をしているのに、夜帰るとパソコンに向かっていつも何か作ってる。あたしには、とてもまねできない。<br><br>「どうして、響みたいにできないのかしら。同じきょうだいなのに、困ったわ」<br><br>お母さんの声が頭の中でがんがん鳴り出そうとするので、あたしは、必死でぶんぶん、首を振る。<br><br><br><br>「そういえば、コト、昨日リエと帰り一緒だったんだって？」<br><br>「うん。それが、どうかした？」<br><br>エイミは、苦い苦いコーヒーを一口飲んで、言った。<br><br>「あの子には、気をつけな。」<br><br>「え？なんで？明るいしやさしいしかわいいしさ、めっちゃいい子じゃん」<br><br>あたしなんかと違って。そうやって、ついついヒクツになる自分が、嫌いだ。<br><br>「ああいう子には、絶対ウラがあるんだよ」<br><br>ま、私なんて全部ウラみたいなもんだけどね。エイミはふふっと笑う。<br><br>「んじゃ、５時からデッサンだから、また明日ね」<br><br>「あ、うん。あ、エイミ…」<br><br>「なに？」<br><br>エイミが、ふりむく。何気ないその仕草が、なんだかとてもきれいに見えた。<br><br>「ううん、なんでもない。」<br><br>エイミは、にっこり笑った。<br><br>「じゃ、よかった。なんかあったらいつでもメールするんだからね。」<br><br>そうやって、あたしたちは別れた。いつものスターバックスで。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=932055" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">Hot Drinks around the World 世界のホットドリンク<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21KSBCDKNXL.jpg" border="0" width="118"></a><br>￥1,680<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Fri, 18 May 2007 11:22:25 +0900</pubDate>
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<title>墜ちる、許可。 - molto amabile 13</title>
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<![CDATA[ 「夢じゃないよ」<br><br>そう、一言だけのメールが飛び込んできたのは、よりによって苦手な数学の授業中だった。あたしは、ぼーっとしちゃって、しばらく携帯の液晶にくぎづけになっちゃって、エイミが背中を叩いてくるまで先生に指されたことすら気づかなかった。<br><br>「こーとーのぉー、お前何やってんだぁ？」<br><br>教室じゅうが爆笑する。岸野先生は、若くてそこそこかっこよくて、おまけに融通もきくから、生徒の中でも人気ナンバーワンを争う。あたしは、そのわざとらしい雰囲気があんまり好きになれなくて、数学もやっぱり成績が上がらない。立ち上がって、教科書の、エイミが小声で教えてくれたページを読み上げる。<br><br>「よーっし。恋の病じゃねえの？大丈夫かぁ？」<br><br>また、教室がくすくす笑う。あたしは、赤くなって小さくなるしかなかった。<br><br>「どんまい☆キシノにはばっちりおしおきしとくさー　(^ー^)ノ」<br><br>ノートを破って、エイミがこっそり手紙を投げてきてくれた。あたしは、ますます混乱する。夢じゃない、夢じゃないって、なんだろう。机の奥に隠した携帯が、また、ふんわりと光り出した。<br><br>「人を好きになるのに許可なんていらない。そうでしょ？」<br><br>フラッシュバックする、何かが。金色の、まぶしいひかり。<br><br><br><br>恋に墜ちるのに許可なんて要らないでしょ？<br>ただ君を見つめてるだけで<br>僕はどこまででも墜ちてゆけるんだ<br><br><br><br>その「うた」を、あたしはメモ帳に書き出す。記憶の中のことばたちは、きれぎれで、なかなか姿を現してくれない。それでも。<br><br>メモ帳を後ろに回す。すぐまた手元に戻ってくる。<br><br>「これ、ブリ☆ランの『墜ちる』って曲じゃん。こないだのライブの最後に歌ってたやつ。」<br><br>「この詩書いたの、誰？」<br><br>「んー、確か、カイ君だよ。あそこの歌詞はほとんどカイ君が書いてるみたい。」<br><br>もう一度、液晶のひかりを見つめる。<br><br>「人を好きになるのに許可なんていらない。そうでしょ？」<br><br><br><br>放物線も、公式も、教室のざわめきも、何ひとつ耳に入ってこなかった。<br><br>墜ちる。あたしは、墜ちたんだ。たしかに。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=932053" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">高校これでわかる数学I+A―基礎からのシグマベスト<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21REXXAGCVL.jpg" border="0" width="103"></a><br>￥1,470<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<link>https://ameblo.jp/moltoamabile/entry-10033958425.html</link>
<pubDate>Fri, 18 May 2007 11:17:26 +0900</pubDate>
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<title>お兄ちゃんの、目。 - molto amable 12</title>
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<![CDATA[ あれは、夢だったのかな。どうも境界線が、くっきりしていなくて困るな。<br><br>シャワーを浴びながら、あたしは鏡の中のあたしを見つめる。何度ごしごし洗っても、どんな強力な洗剤を使っても落ちない、みにくいよごれがたくさんついてしまった、あたしの身体。<br><br>これから先、誰かから、あったかく抱きしめてもらえることなんて、あるのかな。<br><br>泣きそうな顔をする鏡の中のあたしに、あたしは、勢いよくシャワーを浴びせた。<br><br>「箏乃、いつまでお風呂に入ってるの。響が来たわよ」<br><br>そうだった、今夜はお兄ちゃんが来るんだった。いつまでもめそめそ泣いてちゃいられない。<br><br><br><br>子供の頃から、あたしはずうっと、お兄ちゃんが大好きだった。ブラコン、ブラコンって近所の男の子たちにはからかわれたけど、それでもお兄ちゃんが守ってくれた。お兄ちゃんは頭も良くて、優しくて、みんながうらやむような大学に入って、就職してすぐ、結婚した。結婚するって聞いたときは正直さびしかったけれど、サエコさんに会って不安はふっ飛んでしまった。とってもかわいくて、すてきな人だったからだ。<br><br><br><br>「コト、お前、失恋したんだって？」<br><br>お兄ちゃんが、缶ビールを開けながら突然切り出した。お父さんもお母さんも寝入って、お兄ちゃんとあたしだけのリビング。<br><br>「え？もー、冗談キツいよー」<br><br>あたしは、冷蔵庫を物色して、りんごジュースをグラスに注ぐ。透明な、金色のしずく。<br><br>「隠さなくても、いずれわかることなんだから、正直に話せ。な？」<br><br>お兄ちゃんが、少し寂しそうな顔をする。あたしは、この顔が世界で一番好きだ、と思う。この顔をされると、何をされても歯向かえなくなる。<br><br>「ケンジにふられた。ほかに女がいたの。あたし、何も知らなくて、大人ぶって、付き合ってるって思ってた。…信じてた。」<br><br>ばかみたいだよ、お兄ちゃん。また、泣けてきた。自分のふがいなさに。<br><br>「あいつとは、もう会うな。この先、いろいろ理由つけてお前を誘い出そうとするかもしれないけど。」<br><br>うっ、うっ、と、泣きながら何度もうなずいた。<br><br>「俺が守るから。お願いだから、お前のほうからケンジに近づくなんてことは二度としないでくれ。」<br><br>お兄ちゃんの目の奥は、暗くて、底がないみたいに思えた。<br><br>「もう、悲しい思いはしたくないんだよ。」<br><br>どこを見てるんだろう、お兄ちゃんは。あたしは、どこへ行けばいいんだろう。お兄ちゃんを悲しませないために。<br><br>お兄ちゃんは、いつのまにかウイスキーを飲んでた。琥珀色の液体が、氷とぶつかってしずかに音を立てた。遠くを見つめたまま、お兄ちゃんは、すごく明るい笑顔になる。<br><br>「さあ、明日ははれた目で学校へ行けないぞ。さっさと寝る寝る。」<br><br>お兄ちゃんだって、明日、仕事あるじゃん。心の中で反発しながら、階段をのぼる。お兄ちゃんは、何を抱え込んでるのかな。あたしのことで、また、お兄ちゃんの重荷を増やしてしまったのかな。<br><br>かなしかった。お兄ちゃんが味方だってことがわかってうれしいはずなのに、どうしてだろう、とてもかなしかった。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=932035" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">もし僕らのことばがウィスキーであったなら/村上 春樹<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21BNDPJZK6L.jpg" border="0" width="98"></a><br>￥500<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Fri, 18 May 2007 11:14:53 +0900</pubDate>
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<title>めざめは、夕焼けの時間。 - molto amabile 11</title>
<description>
<![CDATA[ 「こっつん！こっつん！」<br><br>あったかい夢が、ゆっくりと現実に変わっていく。<br><br>「ホームルーム、終わったよ。一緒に帰ろっ☆」<br><br>リエの、天使みたいに明るい笑顔。ふわふわしたパーマに、右側にだけこっそりできる、えくぼ。男子の間で人気ナンバーワンだって、いつかエイミが言ってた。<br><br>「えいちんは、デッサンあるから先帰るってさ」<br><br>エイミは、美大志望だ。中学の頃から、デッサンの教室に週３回は通っている。努力をちっとも鼻にかけないで、遊ぶときはきっちり遊ぶから、あたしはエイミが大好きだ。<br><br><br><br>「昨日のブリ☆ラン、かっこよかったよねぇ～」<br><br>リエは、ため息をついた。帰り道の夕焼けは、どんどん深くなる。<br><br>「こっつんは、ケンジのファンなんだっけ？」<br><br>無邪気な笑顔を向けられて、思わず何度もうなずいてしまう。<br><br>「そっかぁ。シブいよね、ケンジ。関西弁やし☆」<br><br>歌うように笑うリエにつられて、あたしも、力なく笑った。<br><br>「リエはね、カイ君のファンなんだぁ☆」<br><br>えへへ、と、リエは照れたように笑う。<br><br>「来年、３年生になったら、またコース変更あるでしょ？今のうちに、私文に希望出しておこうと思うの。そしたら、カイ君と同じクラスになれるじゃん？」<br><br>「それで、いいの？リエは」<br><br>「いいのって、何が？」<br><br>リエは、きょとんとしてる。<br><br>「カイ君と同じクラスになれるってだけで、進路決めちゃって、さ…」<br><br>「ぜんぜーん、モンダイないなーい♪」<br><br>リエは、アイドルの振り付けをまねして歌う。<br><br>「リエ、短大行くんだ。幼稚園の先生になりたいの。子供、好きだもん」<br><br>あたしは、何になりたいんだろう。未来が、水晶玉の中にくっきり見えたらいいのに。エイミにも、リエにも、いまのあたしは負けてる。<br><br>「…あっ！でも気にしないで！リエ、カイ君ゲットしようなんて考えてませーん」<br><br>「え？なんで？」<br><br>そんなに明るくて、かわいすぎるリエと、同じクラスになんかなったら、男子なら誰だって恋しちゃうっていうのに。<br><br>「こっつん、知らないの？カイ君、彼女いるんだよ。３年のトウコさん。もう、10年以上続いてるらしいよ☆」<br><br>納得だよね、リエは、ちょっとしょんぼりした顔をする。トウコさんなら、わたしでも知ってる。文芸部部長で、生徒会書記で、モデルみたいにすらりとした美人だ。<br><br>「そうなんだ、お似合いだね」<br><br>「よくふたりで一緒に帰ってるしさ。あーあ、リエもかっこいい彼氏ほしーい！」<br><br>大きく伸びをして、リエは叫んだ。あたしは、思わず吹き出しちゃって、<br><br>「きっとできるよ。リエなら、すぐ」<br><br>なーんて、励ましちゃったんだ。<br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=930299" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">空の色/HABU<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F21%2BFip7NGIL.jpg" border="0" width="160"></a><br>￥2,520<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Thu, 17 May 2007 12:43:10 +0900</pubDate>
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<title>昔から、知ってる。 - molto amabile 10</title>
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<![CDATA[ 「コトノさん、コトノさん」<br><br>手首を、誰かにつかまれる。あったかい。<br><br>ふしぎ。あたしは、誰もいない荒野でひとり泣いてたはずなのに。<br><br>「忘れ物を、お届けにあがりました☆」<br><br>遠くからぼわーっと聞こえる、高い、男の子の声。<br><br>「ハートのピン、本に挟んでただろ」<br><br>あ、あの、女の子の笑顔のところだ。お気に入りの、きらきらのピンクのハートのピン。<br><br>恥ずかしくて、目が開けられない。<br><br>「つうか、うなされすぎなんじゃねえの？悪い夢でも見てた？」<br><br>あ、そっか、全部夢なんだ。こわい雨に降られたことも、泣いたことも、ケンジと、付き合ってた、ことも。<br><br>「ほんと、天然だよなぁ。まだ寝ぼけてるし」<br><br>突然、あったかい布団の中で、あったかい誰かに、しずかに抱きしめられた。<br><br>夢の余韻が続いていて、あたしはぶるぶる震えてしまう。<br><br>「大丈夫だって。何もしねえから。こわがんな」<br><br>ぽん、ぽん、と、背中を軽く叩かれる。昔から、知ってるみたいだ、この温度のこと。<br><br>「アンタは知らなくても、俺はずーっと前から知ってるんだからな、アンタのこと」<br><br>ぎゅっと、抱きしめられる。<br><br>「ていうか、」<br><br>あたしは、ハスキーなその声を子守歌にして、すうっと、溶けるように眠っていった。<br><br>「アンタのこと、好きだ」<br><br>あたらしい夢の中では、もう泣きそうになかった。<br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=930294" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">夢の温度―はる/南 Q太<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F11F39FD73QL.jpg" border="0" width="99"></a><br>￥980<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Thu, 17 May 2007 11:52:22 +0900</pubDate>
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<title>ワインレッドの雨に、降られて。 - molto amabile 9</title>
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<![CDATA[ あたしは、ぐにゃりと曲がったピアノの鍵盤の上に立ってた。タップダンスみたいにステップを踏んでも、ひとつも音なんて鳴らない。<br><br>空はくすんだ黄土色で、太陽なんか見えない。遠くから、小さな黒い雲が全速力で近づいてくる。<br><br>鍵盤に足がもつれて、思うように逃げられない。あっという間に、雲はあたしの頭の上で、雨を降らせる。<br><br>ワインレッドのラメ。あの女のくちびるの色。<br><br>あたしは、もがく。そんな雨に濡れたくなんてない。<br><br>ほんま、コトはかわいいなぁ。<br><br>助けて、助けてよ、ケンジ。あたしのことが好きって言ったじゃん！<br><br>すりむけたひざこぞうから、パッションピンクの血が流れ出して、止まらない。<br><br>コイツは、俺のメル友やから。<br><br>痛い、痛いよ、ケンジ。そんなに笑わないでよ。何がおかしいっていうの？<br><br>ずぶ濡れになったあたしをそのままにして、二人でどこかへ帰ってかないでよ！<br><br>アンタ、天然だなぁ。<br><br>何が楽しいの！何がおもしろいの！<br><br>雲のいなくなった空に、ようやく太陽が昇る。太陽が、にこにこ笑ってる。あの笑顔。遠い国の、女の子の。<br><br>あたしも、そんなふうに笑いたいよ。いつ、心から笑える日が来るかな。<br><br>いつか、来るよ。きっと、来るよ。<br><br>あたしは、太陽を見上げて、大声で泣いた。<br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=930284" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">ダリ―シュルレアリスムを超えて/ジャン=ルイ ガイユマン<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F216JKK1MTNL.jpg" border="0" width="112"></a><br>￥1,575<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Thu, 17 May 2007 11:28:55 +0900</pubDate>
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<title>５時間目の、涙。 - molto amabile 8</title>
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<![CDATA[ ５時間目の授業は、まるで手につかなかった。<br><br>どうして図書室で気がつかなかったんだろう、あたし。昔から鈍いなあ。<br><br>「アンタ、天然だな」<br><br>笑い声が、頭の中でぶんぶん飛び回る。<br><br>だいたい、気がつける状況じゃなかったじゃん！シャーペンの芯をぽきっと折って、あたしは開き直る。<br><br>それに、あのときカイ君だってわかってたら、どうやって自己紹介した？<br><br>「どーもー！昨日あなたのバンドのドラマーにあっけなくフラれた女、箏乃でーす☆」<br><br>そんなのって、お笑いにもならない。大きく、ため息をついた。<br><br><br><br>天然で、鈍くて、コドモで、あたし、なんにもいいとこなんかないじゃん！<br><br>机に突っ伏す。また、涙が、どんどん溢れ出してくる。<br><br>「コト、コト」<br><br>エイミが、後ろから背中をつっつく。<br><br>「保健室行って、寝てな。先生に言っといたげるから」<br><br>ありがとう、も言えなくて、後ろにまわした左手で、ゆっくり、ピースサインを作った。<br><br><br><br>ふらふらと、廊下に出る。誰もいない廊下は、しずかだ。溶けちゃいたいぐらい白くて、しずかだ。<br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=930273" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">スノーフレーク/ケネス リブレクト<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F217-r5lbpRL.jpg" border="0" width="134"></a><br>￥2,730<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Thu, 17 May 2007 11:02:17 +0900</pubDate>
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<title>昼休みの、オレンジジュース。 - molto amabile 7</title>
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<![CDATA[ 「なかなか戻ってこないから心配しちゃったよ」<br><br>エイミは、ずずっと、オレンジジュースをのんきそうにすする。<br><br>「屋上に行って飛び降り自殺でもしてたらどうしようって」<br><br>「ちょ、ちょっと！笑いごとじゃないよう～」<br><br>あたしは、ふざけて泣きまねをする。もっとも、ずっと泣いてるから、ほんとに泣いてるのかもしれない。自分で自分が、わかんないや。<br><br>昼休みがもうすぐ終わる教室の空気は、生ぬるくて湿っぽい。がやがやした声が、エコーになって両耳を突き刺す。<br><br>「そういえばさ、昨日のボーカル、ウチのガッコらしいよ」<br><br>エイミは、空になったジュースの紙パックをふくらます。<br><br>ブリ☆ランのボーカル。高いハスキーな声で何度も何度もシャウトしてた。くるくる色を変えるまぶしいライトの下で。最前列の、着飾った女の子たちにきゃーきゃー叫ばれながら。<br><br>カイ君。そうだ、確かそう紹介されてた。<br><br>「大野海。私立文系コースだから、なんと隣のクラスってわけ」<br><br>紙パックを、エイミは教室の隅のゴミ箱めがけて放り投げる。ナイスシュート☆<br><br>オオノカイ。サングラスをかけて、生き生きと歌ってた。左耳だけに付けられたリングピアスが、舞台の上できらきら光ってた。つんつんの髪の毛と、小柄で、お人形みたいな身体。<br><br>「…ああああーっ！！」<br><br>「何だよ、コト。もうすぐ授業始まるって」<br><br>「あたし、カイ君に会った！」<br><br><br><br><br><br><br><br><br><a href="http://click.affiliate.ameba.jp/affiliate.do?affiliateId=930262" alt0="BlogAffiliate" target="_blank">Orange Sunshine/JUDY AND MARY<br><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fec1.images-amazon.com%2Fimages%2FI%2F31tZYkwUVgL.jpg" border="0" width="160"></a><br>￥2,600<br>Amazon.co.jp<br><br>
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<pubDate>Thu, 17 May 2007 10:40:18 +0900</pubDate>
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