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<title>Mono-Write　　　　　　　　　　　　　　　　　【ﾓﾉｶｷ】</title>
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<description>【No Mono, No Future.】                 【No Write, No Future.】</description>
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<title>ミィとバルバトゥルス⑪</title>
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<![CDATA[ <p>世界が全ての色を失い、時が静止したように静かになります。</p><p>それが一刹那という恐ろしく短い時間の持つ独特の空気なのかもしれません。</p><p>『ガッ！』</p><p>『ガガッ！』</p><p>激しい音が続いて生じます。</p><p>ですが、ミィの身体にその衝撃は訪れません。</p><p>ミィは、痛みを感じるまでもなく死んでしまったのかしら？と思いました。</p><p>先ほどとは違う一瞬、永遠にも感じるような間をおいて、ミィ目をあけます。</p><p>目を瞑る前とあとで、特に変わった所はありません。</p><p>ミィの身体はなんともないようです。</p><br><p>「い、痛やぁ！」</p><p>「ワ、ワシらの嘴が！」</p><p>傷を負っていたのは、なぜか２匹の禿鷹の方でした。</p><p>片方の禿鷹は嘴がボロボロに崩れ、もう片方は大きな罅が何本も入っています。</p><p>ミィには、なにがなんだか訳が分かりません。</p><p>「へへ？ミィ、無事かい？何事もないかい？」</p><p>のた打ち回る2匹の禿鷹、少し離れた所にひっくり返っているロンがいます。</p><p>「ああ、ロン。あなたがあいつらから庇ってくれたの？痛くない？」</p><p>ミィはロンに駆け寄ります。</p><p>どうしたのかは分かりませんが、ロンが身を挺して助けてくれたのには違いがないようです。</p><p>「へへへ。イワクダキガメをナメてもらっちゃ困るよ。それはもうこの世の何よりも硬いんだぜ。」</p><p>ミィはロンを正位置に戻してやりました。</p><p>「ありがとう、ミィ。例えどんなに硬くても、俺っちは逆さになるとダメなんだ。お終いなんだよ。」</p><p>ミィに立たせてもらったロンは、顔を赤くして照れています。</p><p>「じゃぁ、私もロンの命を救ったのね！」</p><p>ふふ、とミィは嬉しそうに笑います。</p><p>「そうだね、ミィは俺っちの命の恩人だ。同じだね。」</p><p>笑いあうミィとロン。</p><p>しかし、危険が去ったわけではありません。和やかな空気は、本当にちょっとの間だけでした。</p><p>「猪口才な亀如きが、邪魔をしてくれるな。」</p><p>ボス禿鷹が、嘲笑交じりに語りかけます。一瞬で空気が荒んだものへと引き戻されました。</p><p>ボス禿鷹は顔色ひとつ変えていませんでした。</p><p>２匹の手下がやられたことを、気にも掛けていないようです。</p><p>冷たい目で、残酷な鍵爪で、朱に染まった嘴で、全身を悪意の眼差しにかえて、ミィとロンを見やります。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10128868667.html</link>
<pubDate>Mon, 18 Aug 2008 21:57:40 +0900</pubDate>
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<title>ミィとバルバトゥルス⑩</title>
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<![CDATA[ <p>影は全部で３つでした。瓦礫の上に降りたちます。<br>「やぁ、お嬢ちゃん。」</p><p>カタカタと嘴を鳴らしながら、そのうちの一匹が語りかけます。</p><p>「あ！」</p><p>「ミィ、あいつを知ってるのかい？」</p><p>ロンが聞きます。</p><p>「森であった禿鷹よ。とても嫌なヤツなの。」</p><p>ミィはそいつを覚えていました。同時に、とても恐ろしい感情がミィの中に蘇えります。</p><p>ガタガタと震えていまうミィ。震えたくなんてないのに身体がいうことをききません。</p><p>「まだ、死者にはなっておらんようだね？」</p><p>クククッと意地悪そうに笑います。前に見たときとは違う場所が、濁った朱で染まっています。</p><br><p>「なによ！なんの用よ！！」</p><p>ミィは恐怖をおしのけ、精一杯強がりをしてみせます。怖がってなんてやんないんだから。</p><p>そんなミィの心をを見透かしたかのように、禿鷹はミィを見て笑っています。</p><p>残りの2匹の禿鷹も同じ笑い方をします。</p><p>2匹は、森であった禿鷹を囲むように立っています。</p><p>大きさは一回り小さくはありましたが、残忍そうな顔はみな似通っています。</p><p>「それはこちらの台詞ぞ。このゴント砂漠は我等の縄張りなのだ。何をされても文句は言えんよ。」</p><p>真ん中の禿鷹が笑いをそのままに、言いやります。</p><p>「クククッ、頭。それは違いますぞ、世界中が我等のものではありませぬか。」</p><p>右の禿鷹がニヤニヤ笑いを湛えながら、森であった禿鷹に語りかけます。</p><p>どうやら森であった禿鷹が、一番偉いボスのようです。</p><p>「そうだな、まったくその通り。」</p><p>満足げにボス禿鷹が頷きます。</p><p>取り巻きの2匹が、愉快そうに笑います。本当に底意地が悪そうに、笑っています。</p><br><p>自分たちだけ悦に入った禿鷹に、ミィが怒鳴ります。</p><p>「私はパパとママを探しているの！たまたまここを通っただけだわ。」</p><p>こんな性悪な禿鷹をいつまでも相手にしたくありません。</p><p>ですがミィにも分かります。禿鷹が何もせずにここを通すはずがないと。</p><p>「ククッ、お嬢ちゃんは不法侵入という言葉を知らんらしいな。ここは我等のものなのだぞ。」</p><p>左の禿鷹が嬉しそうにいいます。</p><p>「そうさ、我等のものだ。そして、縄張りを侵すものは、往々として餌となる末路を辿るのよ。」</p><p>右の禿鷹が仕方ないことなのだよ、という様子で諭します。</p><p>ミィたちと禿鷹の間に冷たい空気が走ります。</p><p>砂漠はジリジリと肌を焼くようなのに、その空間だけ切り取られたように別世界の空気が広がります。</p><p>いよいよ、なにかを仕掛けてくるのだとミィにも分かりました。</p><p>2匹が身構えます。今にも飛びかかろうと翼を持ち上げ、身を低くします。</p><p>「お嬢ちゃん、そろそろ死者になってもらおうか。我らは腹が減って仕方がないのだ。…なぁ？」</p><p>ボス禿鷹がそういうと同時に、手下の2匹がミィに向かって、</p><p>凄まじい速さで襲いかかってきます。</p><p>ミィは、あまりの恐怖で身動きが取れません、覚悟をして目を瞑ってしまいます。</p><p>パパ、ママ、神様！！そう願って目を閉じてしまいます。</p><p>「クククッ！観念したか！！」</p><p>「ケケケッ！我等が腸に収まれぃ！」</p><p>身を強張らせ、両の腕で必死に身体を守ります。</p><p>2匹の残虐な嘴が、今にもミィを引き裂かんと風を裂いて迫ります。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10126605957.html</link>
<pubDate>Tue, 12 Aug 2008 22:00:00 +0900</pubDate>
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<title>うたうたい②</title>
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<![CDATA[ <p>心許ない灯りにライトアップされる人影。</p><p>近づいてみるまで気づかなかったが、舞台の上で胡座をかいている弾き手は、</p><p>意外にも女性…女の子だった。20歳前後というところか。</p><p>高校生と言われても、学生と言われても、私には区別はつかない。<br>黒のニットキャップを深くかぶり、白のTシャツと白黒のボーダーの長袖を重ね着し、</p><p>深緑のダボついたカーゴパンツを履いている。</p><p>髪は長く、キャップから左右に垂れている部分をゴムでまとめていた。</p><p>ギターはエレアコというやつで、アンプには繋げていない。</p><p>お世辞にも立派とはいえないギターのネックには、</p><p>得体の知れない不定形？のマスコットが宙づりにされていた。</p><br><p>変な趣味、それが第一印象だった。 </p><p>大体において、こんな夜更けに女の子がひとりでストリートライブなんてしているのが、</p><p>おかしい。そう思ってしまう私は頭が固いのだろうか。</p><p>今時ならば別に不自然なことではないのかもしれない。</p><p>確かに、仕事帰りに同僚たちと飲みに使う繁華街なんかでは、</p><p>こんな年頃の子よりずっと若い子がうろついてたり、クラブで働いたり、</p><p>飲み屋でアルバイトしてたりするのは、珍しいことでは無い。</p><p>だがここは、人通りも無いに等しい、寂れた駅の小さな公園だ。</p><p>自分の力を磨くにしろ、日銭を稼ぐにしろ、もっと適当な場所がありそうなものだが。</p><p>いぶかしく思いつつも、他人のことをとやかく言える立場ではないな、と思う。</p><p>真ん中のベンチの左端に、腰を下ろす。普段の自分なら、こんなことはしないだろう。</p><p>やはり多少は酒が回っているのかもしれない。気が大きくなっている気もする。</p><p>女性はこちらに気づいたようだ。視線が交差する。</p><p>だが、特に気にした様子もなく、ギターに手をかける。</p><p>調弦を繰り返し、また繰り返し。</p><p>黙ってそれをみている、私。にじみ出る汗、思い出した様に吹く弱い風は、なんの救いにもならない。</p><br><p>不意に少女が、何かを差し出す。</p><p>「なにか、リクエストある？」</p><p>それはボロボロになった大学ノートだった。</p><p>彼女の声は、やや低めで落ち着いて響いた。</p><p>じめじめした湿気と木々の吐き出すフィトンチッドの混ざり合った空気のなか、</p><p>彼女の声は心地よい冷気を含んでいるように感じられた。</p><p>冷たく突き放した響きではなく、なんといえばいいのか･･･冷涼感、そんな響きを携えていた。<br>ボーっとしてしまった私に、動じることなくノートを突き出したままの彼女。</p><p>慌てて、ノートを受け取る。</p><p>中を開くと、綺麗に整った字で曲目が書かれている。</p><p>ノートの半ばまで、ずっとそれが続いている。</p><p>パラパラと捲りながら、知ってる曲と知らない曲を選別していく。</p><p>彼女はじっとそれを見ている。それに気づき、少し慌ててしまう。</p><br><p>優柔不断な私は、こういう時いつも”コレ”と決めることが出来ない。</p><p>ランチでメニューを決めるときも、周りはすんなり決めているのに、</p><p>オーダーを取りに来た店員がくる直前まで決まらなかったりする。</p><p>最近は、ここの店ではこれしか食べない、と事前に決めておくことで回避するようにはしているが。</p><p>ストリートミュージシャンにリクエストする曲までは決めていなかった。</p><br><p>間が空く。こういう間も苦手だ。</p><p>「ここにある曲、全部弾けるの？」</p><p>空白を取り繕うとして聞く。すぐに間抜けな質問をしたと気づいた。</p><p>黙ってうなずく彼女。</p><p>弾けない曲をリストにしておくものか。</p><p>「譜面見ないと弾けないのもあるけど。」</p><p>あと練習中のもある、後ろの方のがそう。と付け加える。</p><p>流行のポップス・ロック・バラード・オールディーズ・アニメソング･･･とジャンルは多岐に渡るようだ。</p><p>だが、自分自身が取り立てて音楽を必要とする生活をしていないせいか、</p><p>大半はタイトルをTVやら雑誌やらのランキングで見かけた程度、</p><p>どれが誰のどんなの曲までかは、ピンとくるものがない。</p><p>せいぜい、今よりずっと暇を持て余していた学生時代に聞いた曲程度が関の山だ。</p><p>そうなると、ますます焦ってくる。「う～ん。」などと、真面目に選別する振りをする自分が情けなく滑稽だ。</p><p>彼女はじっとしたまま動かない。こっちを見たままだ。</p><p>気まずい。彼女は動じる様子はない。気にならないのだろうか。</p><p>焦りが極限に達し、私は適当に開いてページの真ん中あたりをさして、彼女に見せた。</p><p>私の指先を見つめる。さっきと変わらない、じっと見つめる。なんだか少し照れてしまう。</p><br><p>私が適当に指定した曲名は『☆　mellow』と書かれていた。</p><p>星の意味が謎だったが、今更訂正したり質問したりもできない。</p><p>宙を眺めるようにして、それからギターに手をかけ、呼吸を整える。</p><p>コッ、コッ、コッ。リズムをとる、随分スローテンポだ。やがてイントロが始まる。</p><p>『☆　mellow』という曲は聴いたことがなかった。</p><p>牧歌的で、どこか郷愁を誘う曲だった。歌詞も素朴な単語を連ねただけ。</p><p>どこか知らない国の童謡や、民謡をアレンジしたものなのかもしれない。</p><p>その曲調と、彼女の低めの声はよく合っている、とか思う。</p><p>音楽の専門知識なんてほとんどない自分には、その評価が正しいかどうかも自信はない。</p><p>季節感も、時間帯にもあまり則してないような曲だったのだが、</p><p>暑苦しい夏の夜を忘れるには十分魅力的で…そう、いい曲だった。素直にそう思った。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10125835581.html</link>
<pubDate>Sun, 10 Aug 2008 21:22:56 +0900</pubDate>
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<title>ミィとバルバトゥルス⑨</title>
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<![CDATA[ <p>滅んだ町を進む、ミィとロン。</p><p>おそらくかつては、町の目抜き通りだったであろう道を進みます。</p><p>道はミィを10人足しても足りないくらいの広さがあります。</p><p>両脇には、建物があった跡が見てとれます。</p><p>かろうじて壁であったであろうものもあれば、</p><p>地面からちょっと出っ張っただけの石ころが線を為しているだけのものもあります。</p><br><p>ミィは、すっと目を閉じます。</p><p>行き交う行商人、買い物をする親子、呑んだくれた老人もいます。</p><p>家や店は多少くたびれてはいてもきちんと建っていて、通りの奥には噴水も見えます。</p><p>過酷な砂漠の地にあっても、活気にあふれた町がそこにはあります。</p><p>ミィの頭の中でだけ、蘇るのです。</p><p>しかし、目を開けるとそこにあった素晴らしい風景が、無残な現実によって掻き消されてしまいました。</p><br><p>「ミィ、どうしたんだい？疲れたのかい？」</p><p>ロンが心配そうにミィの手を引っ張ります。</p><p>「ロン、ここはとても悲しい場所ね。」</p><p>ロンの心配をよそに、話します。</p><p>「ここにくるまで、色んな所を見てきたけど、ここはかなり悲しい場所よ。」</p>ミィは哀れみの表情で町を見渡します。<br><p>「だって、ここは捨てられてしまったのでしょう？要らないものにされてしまったのでしょう？」</p><p>「ミィ、砂漠で生きるっていうのは大変なのさ。色んな色んな事が大変なんだよ。」</p><p>勿論、砂漠に限った事ではないけどね、そう付け加えます。</p><p>ぴょんぴょんと跳ねながら進む、ロン。</p><p>やがて道は、開けた場所へ行き当たりました。</p><p>地面には、大きく整形された石が円形に埋められています。</p><p>その中は、スプーンで掬ったかのように球状に掘り下げられていました。</p><p>「どうしようもない砂嵐に襲われる事もある、ある日突然水が枯れてしまう事もあるんだよ。」</p><p>ロンは、おそらくは湧水地であったであろうその場所にしゃがみこみ、</p><p>手に砂をすくいとりました。風が吹き、それを遠くへ飛ばしてしまいます。</p><p>「ミィ、町は町だよ。それ以外の何者でもないんだ。人が住む、それが町の意味さ。」</p><p>ロンは迷うことなく、断言します。いつものロンと少し違うみたいです。</p><p>「でも、そらならやっぱりここは死んでしまった町だわ。」</p><p>「ミィ、町は生きたり死んだりはしないよ。そこに住む者がいるかいないか、その違いさ。」</p><p>辛そうに呟くロン。</p><p>「じゃあ、町自体には意味なんてないの？」</p><p>ミィは問い詰めます、少し怒っているのかもしれません。</p><p>「ないよ。そこを必要とする者がいなければ、意味なんてない。」</p><p>冷静に、ロンは言います。</p><p>「ロンは、意外と薄情なのね。残念だわ。」</p><p>ミィは、結構がっかりしたのです。ロンはもっと明るく楽観的で前向きにものを考える、とミィは思っていたのです。</p><p>「勘違いしちゃいけないよ、ミィ。重要なのは、命が生きるってことなのさ。」</p><p>たしなめる、というより諭す様にロンは語ります。</p><p>「どういうこと？」</p><p>やっぱり調子の違うロンに、ミィは思わず怒りを忘れて問い返します。</p><p>「町がヒトを生かす事ができなくなったら、それはもう町じゃないのさ。」</p><p>クルっと身を翻して、遠く空を仰ぐロン。</p><p>「ヒトが生きてれば、町はまた作れる。でも町はヒトを作れないんだよ。」</p><p>背を向けたロンの表情は読み取れません。</p><p>「それは・・・確かにそうね。」</p><p>ミィは、ロンがどう言いたいのか、だんだんと分かってきたような気がします。そして、もうひとつ気付いたことがあるのです。</p><p>「ここを捨てたヒトたちだって、好きで出て行った訳じゃあないと思うよ。止むに止まれぬ事情があったればこそさ。きっとね。」</p><p>そう言いなが振り返ったロンは、力ない優しい笑顔をしていました。でも、それはとても悲しそうにも見えました。</p><p>「うん…そうね。」</p><p>ミィは、もうロンの言うことを黙って頷いてあげるくらいしかできなくなりました。</p><br><p>ロンはもしかしたら、同じような経験をしたことがあるのかもしれません。</p><p>大好きな大好きな場所を捨てなくてはならなくて、それでもどうしようもなくて。</p><p>そんな経験をしたことがあるのかもしれません。</p><p>ミィには、想像するしかありませんでしたが、それはとても辛いことだな、と感じました。</p><p>ミィはちょっと悲しくなって俯いてしまいました。</p><p>それに気付いたらしいロンは、こう言います。</p><p>「でも、多分ここを出て、どこか新しい地で新しい町を作っているに違いないよ。そして、そこはきっと素晴らしい所なんだよ。」</p><p>いつものロンです。明るく前向きな大好きな友達に戻っていました。</p><br><p>その時です。</p><p>「そいつは、どうじゃろうなぁ？」</p><p>広場の奥にある朽ちたモニュメントの影から、黒い塊が物凄い速さで飛び出してきたのです。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10124763472.html</link>
<pubDate>Thu, 07 Aug 2008 23:00:53 +0900</pubDate>
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<title>ミィとバルバトゥルス⑧</title>
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<![CDATA[ <p>大岩周辺の捜索が始まりました。</p><p>ロンが言います。</p><p>「あの人工物が少し埋まったってことは、あの高さより低い所を探せばいいんだよ。」</p><p>それは至極当然なことね、とミィは頷きます。</p><p>さしたる時間をかけず、目的のものは見つかりました。</p><p>大岩をくるりと回りこんだ先は、緩やかな下り坂になっていたからです。</p><p>ミィとロンは、目を凝らしながら砂の丘を下って行きます。</p><p>あちらこちらに、砂の大地から突き出した大きな石や、小さな石が転がっています。</p><p>どれも疑わしく見えますが、しっかり見ればそれが自然物なのか人工物なのかは分かります。</p><p>多少風化していたって、人の手が加わったものはそれなりの形をしているのですから。</p><p>一つひとつ、近寄っていって確かめます。</p><p>「これも違う。」</p><p>次の石。</p><p>「これも違う。違うね、ミィ。」</p><p>次の次の石。</p><p>これは日が暮れそうだわ、とミィは思いました。</p><p>そもそも、こんなことして何になるなのかしら、とも。</p><p>ミィはパパとママを探しているのです。砂に埋もれた何かを探す為に旅をしているのではありません。</p><p>とはいえ、張り切っているロンにそんなことを言うのは酷というものです。</p><p>ピョンピョンと石から石へと跳んではねるロンを見つめながら、ミィはどうしたものかと溜息をつきました。</p><p>「パパ、ママ。どこにいるの？何をしているの？」</p><p>空を仰ぐ、ミィ。青色と太陽の日差しが目に突き刺さります。寂しい気持ちが膨れてきます。</p><p>「おーぃ、ミィ。ちょっと！こっち！こっち！！」</p><p>ロンの声が不意に、ミィの悲しみの心に割って入ってきます。</p><p>思わず飛び出そうになっていた涙を慌ててひっこめる、ミィ。</p><p>でもロンの姿を見つけることはできませんでした。</p><p>「ロン？どこ？」</p><p>間髪入れずに返事が返ってきます。</p><p>「こっちだよ、こっち！」</p><p>声の方向に歩いていく、ミィ。</p><p>「あ！」</p><p>ロンが思い出した様に、声を上げます。</p><p>「え？なに？」</p><p>慌ててミィは聞き返します。ロンの身に何かあったのでしょうか。心配になって駆け出します。</p><p>「ミィ、気を付けてね。」</p><p>そう聞こえた瞬間、ミィは自分の足が引っ張られるのを感じました。</p><br><p>一瞬のあと、ミィの前に現れたのはロンの顔でした。</p><p>心配そうにこちらを窺っています。</p><p>「ロ・・・ン？」</p><p>「ああ、ミィ大丈夫かい？大事はないかい？」</p><p>ロンは首をぐるぐる回してミィの全身を看ます。</p><p>「俺っちがもう少し早く忠告していればよかったね。」</p><p>心底申し訳なさそうな顔をしています。</p><p>ミィは周りを見渡しました。背後は大きな土の壁があります。<br>上から見たらちょっとした崖に見えるのでしょう。</p><p>あそこから落ちたのだ、ミィはそう理解しました。</p><p>足が引っ張られたんじゃなくて、踏むべき地面が無くなっていたのだと。</p><p>そして、ショックで軽く気を失っていたのだと理解しました。</p><p>「もう、ロンったら、普段は要らないことばかりベラベラ喋るのに、肝心なことは忘れちゃうのね！」</p><p>からかい半分でミィは言ってやりました。</p><p>「ああ、ゴメン。本当にごめんよ、ミィ。でも、それだけ軽口が叩けるなら心配要らないね。」<br>ロンの困り顔はなくなり、ほっとした顔になっていました。</p><p>「それより、ミィ。ごらんよ、立って見てごらんよ。」</p><p>調子を取り戻したロンは、後ろに振り返ると、右手でくいくいっと手招きします。</p><p>ミィが立ち上がり、ロンの示す方向を向きます。</p><p>そこには、町がありました。正確には町であったものですが。</p><p>かつては家であったものが、なにかの施設であったものが、モニュメントのようなものであったものが。</p><p>ほとんど形を残していませんでしたが、その構造が町であったことを物語っています。</p><p>グィユルとは違う、終わってしまった町。</p><p>グィユルはお終いの天使に滅ぼされたようでしたが、</p><p>この町は気候と時によって滅んでしまったようです。</p><p>砂に埋もれ、風に削られ、誰も住まなくなった町、見捨てられた町です。</p><p>どちらが不幸なのかしら、ミィはそんなことを考えました。</p><p>でも、どちらにしても不幸は不幸ね、ミィはとても悲しくなりました。</p><p>「こんな風景ばかりしか、この世界には残っていないのかしら。」</p><p>思わず口をついて出た言葉に、更にミィは悲しくなったのです。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10120413762.html</link>
<pubDate>Sat, 26 Jul 2008 22:28:09 +0900</pubDate>
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<title>不許王の最期</title>
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<![CDATA[ <p>王様は、何もかもを許せない人でした。</p><p>人ではないかもしれません。</p><p>人の姿をした人でなし、魂無き王、そんな風に影で謗る人もいました。</p><br><p>王様が王位継承権第三位の位置にいるとき、彼は一位と二位の兄君たちを殺しました。</p><p>自分より順位の上の兄君たちを許すことはできませんでした。ついでに弟も妹も殺しました。</p><p>晴れて王位継承権第一位となった彼は、今度は自分の父親を手にかけました。</p><p>自分より偉い王など、彼には必要なかったのです。ついでに皇后も殺しました。</p><p>こうして王様は、この国で一番偉くなりました。</p><p>ですが、王様は王位を手に入れても変わりませんでした。</p><p>次には、隣の国の存在を許せなくなりました。</p><p>直ちに兵を挙げ、隣の国を攻め滅ぼします。</p><p>次には、左隣の国を。上隣の国を、下隣の国を。</p><p>領地を広げたら、また隣の国を飽きることをしらないかのように、王様は攻め、滅ぼし続けました。</p><p>そうして、大陸を統一して、巨大な国の王様になりました。</p><p>それでも王様は、常に満足してはいませんでした。</p><p>何一つを、許してなんておけないのですから。</p><p>しかしながら、何もすることがなくなってしまった王様は、</p><p>何を許さないでいたらいいのか分からなくなりました。</p><p>でも、この気持ちは消えないままです。</p><br><p>馬にまたがり、家来を引き連れ、領地を回る王様。</p><p>農村の畦道でボロを纏った子供が言います。</p><p>「王様は、なぜそんなに許せないのですか？」</p><p>子供の言葉には研ぎ澄まされた刃が潜んでいました。</p><p>家来たちは慌てて子供をひっ捕らえます。</p><p>「なぜ？そんなこと、俺が知るものか。」</p><p>地べたに抑えつけられた子供を見下ろしながら王様は聞きました。</p><p>「じゃぁ、許せるものはあるのですか？」</p><p>組み伏されながらも、子供は必死に聞きます。子供の瞳には、黒い炎が宿っていました。</p><p>「なんでボクたちの国を・・・。」</p><p>王様はくぃっと片手を振り上げ、手下たちに合図します。</p><p>子供は許されませんでした。</p><p>王様に語りかけることも、質問することも、文句を言うことも、存在することも。</p><br><p>王様には后がいました。７７個目の隣国を滅ぼそうとした際に、その国の国王が姫を捧げる代わりに</p><p>降伏を申し出たのです。姫はこの大陸では知らぬものが居ないほどに美しい姫であったといいます。</p><p>王様は、姫にききました。「お前は俺と結婚させられるんだぜ？」</p><p>姫はいいました、「いやです」と。王様は倣岸に笑ったといいます。</p><p>「それは許されないぞ。」そう、不遜に言い放ったといいます。</p><p>そして、姫は王様の后にされたのです。勿論、王様は降伏を願い出た隣国を攻め滅ぼしました。</p><br><p>王様は自分の子供を許すことも、できませんでした。</p><p>「俺と同じ血を持つものなど、居てもいいはずがない。」</p><p>王様は狂ったように泣きながら、そう呟いたと言います。</p><p>王様は、王子がこの世に生まれてくることすら許しませんでした。</p><p>后は泣きました。「死なせて。」</p><p>王様は言います。「それは許されない。」</p><p>后は血の涙を流しながら、「自分で身篭らせておきながら、なんと恥知らずな！人でなしの王め！」<br>それだけ言うと、離れの塔に引き篭もり、出てくることはありませんでした。</p><br><p>王様は、兵たちに言いました。</p><p>「植物を、動物を、村人を、町人を、子供を、大人を、男を、女を。</p><p>風が運ぶ春の匂い、照りつける日差し、去り散る草花、降り積もる雪。</p><p>何もかもを。</p><p>植物を焼き払え。動物を狩りつくせ。領民を殺せ。」</p><p>兵たちは納得できませんでした。</p><p>「反逆か？それは許されない。」</p><p>兵たちは、恐ろしい王様の命令に背くことはできませんでした。</p><p>次に王様は、近衛たちに言いました。</p><p>「兵を殺せ。官僚を殺せ。大臣を殺せ。」</p><p>近衛長は恐る恐る、王様に聞きました。</p><p>「それが終わったらどうなさるのでしょう？」</p><p>近衛長は、即座に首を落とされました。</p><p>怯える近衛たちに、王様は言いました。</p><p>「それが終わったらだと？もちろんおまえら近衛が自決するんだ。」</p><p>たまったものかと、近衛たちは王様に反逆の刃を向けました。</p><p>王様は「俺に刃を向けるなどと、許せないにも程がある。」そういって近衛たちを皆殺しにしました。</p><p>王様は、何よりも強かったのです。万の民よりも、千の兵よりも、百の近衛よりも、ずっとずっと強かったのです。<br></p><p>そして、王様は城内に一人になりました。</p><br><p>遠くの外では、兵たちが恐怖に駆られ、気が狂いそうになりながら、</p><p>自国の領土を、領民を滅ぼしている音が聞こえます。</p><p>剣の打ち響く音、銃の発砲音、大砲の炸裂音、逃げ惑う人々の声、気勢を上げる兵の声。</p><br><p>王様は玉座で一人、ただただ涙を流し続けました。</p><br><p>王様は気がつきませんでした。外の怒号にかき消されてしまったのかもしれません。</p><p>玉座の間に、微かに衣擦れの音がしたことを。</p><p>王様は気がつきませんでした。城の外から伝わる虐殺の空気に飲まれてしまったのかもしれません。</p><p>玉座のすぐ背後に気配があったことを。</p><p>そして王様は気がつきました。</p><p>いつからか背中の一点が灼けるように熱いことを。それとともに激しい痛みを覚えました。</p><p>玉座を立ち、振り返ると、そこには黒い影が立っていました。</p><p>ボサボサに振り乱された髪、透き通るほどの白い肌。黒いドレスに身を包んだ后がそこには立っていました。</p><p>左腕の先からは、ヌルヌルした赤いものが滴っています。</p><p>王様は、更に気がつきました。自分の背中にはナイフが突き刺さっているのだと。</p><p>王様は背中から、ナイフを引き抜きました。</p><p>自分の身体から、勢いよく赤い色をした命が流れ出ていくのがわかります。</p><p>手にしたナイフの銀と赤の煌きが、一瞬どこかで見かけたような子供を頭に映し出しました。</p><p>あれは、どこだったか・・・、そんなことを思い出そうとしていると、</p><p>いよいよ身体が痛みだけに支配されてきました。</p><p>王様は耐え切れず、玉座へずり落ちてしまいました。玉座から更に下へ。無様に地面に転がります。</p><p>后は、安堵の表情を浮かべていました。</p><p>王様が今まで一度も見たことがない、安らかで清らかな天使のような笑顔でした。</p><p>見られることなどひとつも意識していない后の姿と、その笑顔とは遠くかけ離れていましたが、</p><p>やはり、それは美しいと評されるものでした。</p><p>かすれる視界の中で、后を捉えた王様は呟きます。苦しそうに。途切れがちに。</p><br><p>「俺は最初から全てを許すことができなかった。</p><p>だから俺には、二つしか選べなかった。</p><p>全てを許さないでいるか、俺自身を許さないでいるか。</p><p>その二つしか道はなかったのだよ。」</p><br><p>だから・・・、そう続けようとしたところで、王様は息絶えたました。</p><br><p>「王様・・・」</p><p>后はじっと、王様の骸を見つめています。</p><br><p>城の外では、王様の死を知らぬ人々が、まだ闘争を続けています。</p><p>阿鼻叫喚が響き渡る、この世ならぬ地獄絵図を作り続けているのです。</p><br><p>「王様、あなたははじめて許すことができたのですね。」</p><p>后は、命尽きた王様にそう語りかけ、玉座の間をあとにしました。</p><p>王様は、穏やかな笑みを湛えていたといいます。</p><br><p>-了-</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10118008186.html</link>
<pubDate>Fri, 25 Jul 2008 22:14:36 +0900</pubDate>
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<title>ミィとバルバトゥルス⑦</title>
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<![CDATA[ <p>薄くなった砂煙をまとうロンが偉そうにポーズを決めて立っています。</p><p>「こいつを見てみなよ、ミィ。なんだか、わかるかな？わかるかな？」</p><p>ミィは一段低くなった、石のあった所を覗きこみます。</p><p>「ロン、これってなに？ひどく大きい石っていうのはわかるけど。」</p><p>ミィにはロンの持っている答えがわかりません。</p><p>「これはね、ミィ。なにかの建物だと思うんだ。大きな石ってのも間違っていないけどね。」</p><p>「建物？」</p><p>「そうさ、建物の、一部なんじゃないかなと思うんだよね。」</p><p>石をよく見ると、確かになにかの建物の一部にも見えます。</p><p>それなりに規則正しい角や直線を備えていたからです。</p><p>「多分、門とか塀とか、そういうものの一部だね。全部掘り出していないからわからないけれども。」</p><p>長く砂に埋まっていたそれは、砂や風に侵食されて、あちこちボロボロになってはいましたが、</p><p>遠目に見ると、確かに人の手が加わっているとわかります。</p><p>「ミィがほら、さっきまで凭れかかっていたその大岩も、多分これと繋がっているんだよ。」</p><p>「へぇ、ロンすごいわね。まるで発掘家みたい。」</p><p>へへん、と鼻をならすロン。</p><p>「それだけじゃないんだよ、ミィ。」</p><p>「えぇ？まだなにか発見があるの？」</p><p>「それはそうさ、簡単なことさ。いいかい、ミィ。よく考えてごらん。」</p><p>ミィは考えることはしないで、ロンの説明を待ちます。</p><p>「いいかい？こういうものがある、ってことは？この辺一体は町だったんじゃないかな、ってことさ。」</p><p>これが仮に門だとしても、この様子ではと、ミィは考えます。</p><p>「町…。あったとしても埋まってしまっているんじゃない？。」</p><p>「それは、それはわからないよ？一部が埋まってるだけかもしれないし。一部が埋まってないかもしれないよ。」</p><p>「町じゃなくて、ただの一軒家かも。それともただ、門があるだけってことも考えられるわ。」</p><p>他の可能性を提示する、ミィ。</p><p>「門だけ！？門だけだって？そんな馬鹿な門があるもんか。ただそれだけなんて。」</p><p>ロンはやれやれ、といった調子で首を横に振ります。</p><p>そんな様子にミィはちょっとカチンときました。</p><p>でも、ミィは「私は大人なんだから」と言い聞かせて、ロンに提案します。</p><p>「とりあえず、ちょっと近くを探してみましょうか。」</p><p>ミィは休んだので、元気が戻ったのです。</p><p>ロンと言い争いを始めたって疲れるだけだし、あの口数の多さには勝てる気がしないわ。</p><p>「そうだね、それがいいよ、確かめるのがいい。」</p><p>ふふん、と鼻をならすロン。意気揚々と歩き出します。自信に満ちた足取りで。</p><p>自分の想像を的確なものにしたいのか、何か面白いものを見つけたいのかはわかりませんが。</p><p>ロンは発掘家というより探検家ね。探検家というより好奇心に満ちた猫ね、そうミィは思いました。</p><p>いつか、危ない目に遭うんじゃないかしら、とも。</p><p>「ん？どうしたんだい、ミィ。早く行こうよ？」</p><p>ロンが気づいて聞いてきます。首だけヒョコっとこっちに向けながら。</p><p>「なんでもないわ、ロン。あなたはもう少し落ち着いてもいいんじゃないか、って思ってただけ。」<br>ふふ、と微笑むミィ。</p><p>「そうかい？俺っちはいつでも冷静沈着、クールなつもりだけど。」</p><p>ロンは首を、ぐにょんと横に傾けながら、腕組みをして考えこんでしまいます。</p><p>「そうだね、でもそうかもね。ちょっと落ち着きがないかもね。でも、それも仕方ないよ。俺っちは俺っちだもの。」</p><p>ロンは数秒だけ考えた様子でしたが、すぐに別の思考に移ってしまったみたい。</p><p>「さぁ、ミィ。ちょっと周りを探しに行こう。」</p><p>頭を切り替えたように見えたロンは、結局身体がさっさと動き出してしまったのかもしれません。</p><p>おかしなロンについていく、ミィ。</p><p>果たしてなにかが見つかるのでしょうか、こんな砂しかない場所で。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10119003949.html</link>
<pubDate>Tue, 22 Jul 2008 21:24:17 +0900</pubDate>
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<title>うたうたい　①</title>
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<![CDATA[ <p>あれは昨年の8月、うだるように暑い日のことだったと記憶している。</p><p>夜半をすぎても、生ぬるい大気が身にまとわりついてくるようなそんな日が、終わろうとする頃だった。<br>私は、都内にあと2駅ほどという距離の、発展しきれていない町にいた。</p><p>J駅。2階構造の構内を出ると、丁度陸橋の中腹にでる。</p><p>ガードレールの向こうには主を迎えに着たであろう軽自動車が一台、ハザードを焚いて路上駐車していた。</p><p>昼間はさぞ車通りも激しいのだろうが、私が見た限り、今の所車が通る気配はない。</p><p>私と同じ電車から降りたであろう人々はせかせかと私を追い抜いていった。<br>ぶらぶらとだらしなく歩みを進める。酔いが頭に回るほど飲んではいない。<br><br>今日は同僚の送別会だった。今月末で寿退社する、長澤さん。</p><p>お腹には3ヶ月の赤ちゃんまでいるそうだ。聞けば旦那は私と同い年だという。<br>羨ましい話だ。<br>片や家庭を手に入れた28歳、片やひと月前に彼女に捨てられた28歳。</p><p>しかも未練たらしくまだ想っていたりする。</p><p>みっともないとは思いつつも、踏ん切りをつけることもできないでいる。<br>長澤さんを羨ましく思う気持ちを心に抱きながら、皆と一緒に今までの働き労った。<br>妊娠中の長澤さんの代わりに、課の若い男衆が、課長の杯を代わる代わる受ける。</p><p>大別すれば、下戸の部類に属する私は、最初の1、2杯で難を逃れることができた。<br>その後は、ただの飲み会になってしまった。</p><p>長澤さんは、ダシに使われることがなくなりほっとした顔で気楽に女子社員たちと語らい、</p><p>課長はとりまきを囲み説教をし始め、私はその他の中に紛れ…。<br>二次会も企画されたが、私とほか数名は丁重にその誘いを辞し、帰路についた。<br>地下鉄を2つ乗り継いだ後の電車内で眠り込んでしまった私が、</p><p>気がついたのは下車するべき自宅最寄り駅を3つほど過ぎたj駅に乗り入れる時だった。<br>ホームに降り立ち、自分の粗忽さを呪った。<br>上りの電車はしばらくこないようだ。<br><br>見慣れぬ駅で降りてみよう、などと思ったのはただの気紛れだ。<br>明日は土曜日で、休みだから、急いで家に帰る必要もない。</p><p>小腹も空いているし、ラーメンでも食べていくか、という程度の軽い心づもりでいた。</p><p>住処のほんの3つ先の駅というだけなのに、全く土地勘が働かない。</p><p>どこも似たような駅、駅前だろうと高をくくっていたが、期待は見事に裏切られた。<br><br>仕方なく、陸橋を下りだしはしたが、行き先は気まっていなかった。</p><p>ぶらぶらと足取りも重く、引き返そうかと考え始めていた。</p><p>その時、不快な風に乗ってギターの音が聴こえる。</p><p>途切れ途切れなメロディーが耳に届く。</p><p>どこかで聴いたことがある、でも思い出すまでには至らない。<br><br>微かな旋律を頼りに、陸橋をやや早足で歩く。</p><p>ややもすると、小さな公園を視界に捉えた。</p><p>街灯も疎らな、緑に覆われただけのうすら淋しい公園が、陸橋の上から見下ろせた。</p><p>陸橋が下り始める横脇に階段が生えだしている。</p><p>ゆるやかなスロープを行くより、公園には近い。</p><p>曲はもう途切れることはなく、正しく連なった旋律を成していた。</p><p>歌は…聴こえない。弾き語りではないのか。</p><p>ああ、この曲、すぐそこまで出掛かっているのに。</p><p>などと考えながら、足は誘われるように公園の中心へと進んでいく。</p><p><br>両脇に等間隔で列を成している名も知らぬ木々。</p><p>でこぼこと木の根に盛り返され始めているアスファルトを行くと、</p><p>開けた場所に舞台がひとつ。囲むようにベンチが3つ、円形状に配置されている。</p><p>舞台といってもたかだか10数メートルの扇状で、一体何のためにあるのかわからない。</p><p>もしかすると公園の竣工を祝う式典、ただそれだけの為に作られたのかもしれない。</p><p>さもなければ、線路沿いの住宅もまばらな地に、どうしてこんな舞台などがいるのか疑問だ。</p><p>そもそも、こんな所に公園を作る意味なんてあったのか。</p><p>ひねくれた推論はともかくとして、公園は、舞台は、そこにきちんと存在している。</p><p>理由なんて知る必要はない。そして、意味はある。</p><p>今目の前に、ギターをかき鳴らし終えたストリートミュージシャンがそこにいる。<br><br>結局、最後まで聴いても曲名はおろかアーティスト名すら思い出すことはできなかった。 </p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10117525147.html</link>
<pubDate>Sat, 19 Jul 2008 21:59:06 +0900</pubDate>
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<title>盲目が私に与えたナニカ。⑩</title>
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<![CDATA[ <p>図書室前に着いた私は、神妙になりながらそのドアを開けた。</p><p>私の中で、図書室は神聖な場所になっている。</p><p>なにか特殊な空気を持つ、別世界への入り口。</p><p>学校には、そういう場所がいくつかある。学校の中の切り取られた空間。</p><p>放送室。映写室。化学準備室。使われなくなったプレハブ(昔校舎立替の際に使った架設校舎、今は物置。)</p><p>要するに、あまり立ち入る機会の少ない場所が、イコール特殊な場所に感じられてしまうわけだ。</p><p>体育用具倉庫はダメだ、神聖さとはかけ離れている。</p><p>黴臭さと汗臭さと石灰の粉っぽい空気が充満しているだけ。</p><br><p>ガラッとドアの下のローラーが音を立てる。教室と一緒の造りのクセして、なんだかいい感じに響く。</p><p>古びた書物の独特の臭いが私を包む。</p><p>狭い室内に聳え立つ書架群。(勿論教室なんかよりは広いが。)</p><p>窓際に大きなテーブルが3つ。反対側の壁沿いには個別の机と椅子が10席程度あったろうか。</p><p>私の予想していた光景に反して、図書室内には何名かの生徒が見受けられた。</p><p>司書の先生しかいないと思っていたのに。</p><p>どうやらみんな三年生のようだ。三年になると同時に、学校の授業というのはとても空疎になる、らしい。</p><p>自習時間や受験対策の模試もどきが横行し、授業はそっちのけになるみたいだ。</p><p>ウチの学校は進学校という位置にはいないが、やはり進学が主な進路になっている。</p><p>真面目に受験に取り組もうとする生徒は、自分の世界を作り、試練に立ち向かう準備を重ねる。</p><p>図書室に居場所を見つけた兵たちが、今、ここにいるという訳だ。</p><p>全てが全てと言い切れないけど。音楽を聴きながら、『Newton』なんて読んでるヤツもいる。</p><p>残念ながら、自分が図書室の王様になったような気分を味わうことはできなくなったが、</p><p>そのおかげで司書の先生には、今日だけで何度もしてきた説明をしないで済んだ。</p><p>テーブルの席にはまばらに先客たちが陣取っていたので(誰一人、隣通しには座っていない)、</p><p>壁沿いの席を物色しに行く。こちらも何人かの先客は見られたが、規則的に一個飛ばしに座っていたので、</p><p>前から4番目の席を自分のものと決めた。</p><p>例えしきりがあっても、連続して詰めて座る気にならないのは、日本人気質でしょうかね。</p><p>私も、その一員だけどね。テーブルに座るより、個席の規則性をぶち破る方が断然気楽だ。</p><p>席を決めたとはいえ、手ぶら状態の私は腰を落ち着ける前に、読み物を物色することに決めた。</p><p>伝記、参考書、学術書、学術文庫・・・雑学、スポーツ、写真集、卒業アルバム、新聞・・・。</p><p>暇つぶしにはやはり、文芸でしょう。と思いつつも、学校の品揃えは町の図書館や書店などには、</p><p>遥か遠く及ばない。いわゆる名作文学やら、昭和期以前の大家の小説やら詩集やらしかない。</p><p>そんなものは、小中学生時代に一通り読み倒してしまったし、未読なものは読みたいと思わないものだ。</p><p>これから先もよほどのことがなければ読まないだろう。</p><p>ええぃ、なんで『Newton』はあるのに『ムー』は置いてないのよ。</p><p>そそる本が見つからず仕方なく、物理学の「わかりやすい相対性理論」という専門書だか、</p><p>雑学本だかわからない大判サイズの本を引っこ抜いて席に着く。</p><p>これなら真面目に読みだせば、数分と立たないうちに眠りに落ちることは間違いない。</p><p>あと2時間、ここで寝て過ごせば今日の業務は終了だ。なんと甘く怠惰な時間！</p><p>そういう訳で、私は神聖な図書室でその庇護を一身に受けつつ、安らかな惰眠を貪りまくることに決めた。</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10117312058.html</link>
<pubDate>Thu, 17 Jul 2008 22:41:41 +0900</pubDate>
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<title>ミィとバルバトゥルス⑥</title>
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<![CDATA[ <p>いけどもいけども砂ばかり。</p><p>分かっていたことだけど、不毛な大地に嫌気がさしてきます。</p><p>最初はあれだけ元気だったロンでさえ口数が減ってしまい、黙り込んでいます。</p><p>口を開けば、砂利を含んだ風が遠慮なしに飛び込んできます。</p><p>ここでは、何もかもが風化し、砂漠の一部に変えられてしまいます。</p><p>草も木も、地走りネズミも猛毒ハイエナも、岩や瓦礫も、そしてミィもロンさえも。</p><p>油断をしたらお終いになってしまう砂漠。</p><p>「ロン、疲れたわ。ちょっと休憩しない？」</p><p>小さなミィはへこたれてしまいます。</p><p>「うん、そうだね。ちょっと休もうか。」</p><p>ロンはテコテコと駆けだし、目の前の砂丘を登りだしました。</p><p>そして、ピョンと一跳ねしてミィに言います。</p><p>「ミィ、この先に大きな岩が転がってるよ。そこの日陰でちょいと休もう。」</p><p>やっと休むことができる！そう思うとミィは目にも止まらぬ速さでロンの元へと駆けつけます。</p><p>さっきまで、鉛のように重かった足が、瞬時に羽根へと変わります。</p><p>丘の上から見下ろすと、下ったすぐそこに大岩がありました。後ろ半分は砂に埋まっているようです。</p><p>ミィの背を5、6人･･･いいえ、もっと足したくらい大きな大きな岩でした。</p><p>砂に埋まっていない部分は、ほぼ垂直で、だけど風に当たり続けているせいかひどくデコボコです。</p><p>その垂直な大岩が、いい感じにお日様を遮る壁となってくれているのです。</p><p>「ふぅ。」</p><p>やっと休める、とミィは一息つきます。</p><p>ロンも隣に寝そべります。</p><p>ずっと朝から歩き通しだったので疲れました。砂地に足を取られるので、いつもよりもっとずっと疲れるのです。</p><p>「どれくらい歩いたのか、全然わからないわ。」</p><p>太陽が空に姿を現してからだいぶ時間は過ぎていました。</p><p>心地よかった朝の空気は遠く彼方、今はまとわりつく熱気と砂ばかり。</p><p>日陰に入ったので少しはマシになりましたが、やっぱり暑いものは暑いです。</p><p>「そうだね、俺っちにもちょっと見当がつかないけど。ミィはがんばってるよ。がんばって歩いてる。」</p><p>「ありがとう。」</p><p>ロンが褒めてくれるので、まだがんばれそうです。</p><p>でも今は無理、暑さと疲れでヘトヘトです。</p><p>ズリズリと身体をひきずり、大岩にもたれかかるミィ。背中がひんやりして気持ちいい。</p><p>そのままボーっとしているミィ。</p><p>水筒の蓋を開けて少しだけ口に含みます。とても美味しいです。</p><p>ミィは今まで、ただの水がこんなに美味しいと感じたことはありませんでした。</p><p>大好きな流星イチゴの生絞りジュースと、同じかそれ以上に感じました。</p><p>水筒の蓋に水を入れて、ロンに差し出します。</p><p>「ありがとう、ミィ。」</p><p>器用に両前足を使ってそれを飲み干す、ロン。</p><p>「ぷはー、生き返る。生き返るね、ミィ。いくらか舌の滑りもよくなるよ！」</p><p>ミィは少し「しまった」と思いましたが、美味しそうに水を飲むロンは本当に元気一杯になったようなので、</p><p>「よかった」と思う気持ちの方がいっぱいです。</p><p>「もう少ししたら、出発しよう。お日様が真上に来る頃までにもう少し進んでおかないと。」</p><p>うん、とだけ答え、ミィは身体を休めます。</p><p>でも、特にすることもないので退屈です。</p><p>意味もなく、足元の砂を指でいじります。</p><p>”の”の字をグルグル、グルグル描きます。次は丸、三角、お家、山、お日様・・・。</p><p>せっせとラクガキ。だんだん楽しくなってきます。</p><p>ロン、パパ、ママ。どんどん描いては消し、描いては消し。</p><p>そのうち指先に、固いなにかが当たりました。ザラザラして、トゲトゲしたなにか。</p><p>興味をひかれたミィは、そのなにかが当たった部分の砂を払っていきます。</p><p>休憩の時間がラクガキに。ラクガキの時間が発掘に変わります。</p><p>ほどなくして、正体不明のなにかの正体を、ミィは探り当てたのです。</p><p>それは、何の変哲もないただの、石でした。ただの平らな石。</p><p>全部が姿を現した訳ではないので、大きさはわかりません。</p><p>ミィはがっかりしました。こういう行為には、なにかすばらしい結果を望んでしまうものです。</p><p>たとえば、盗賊の隠した宝箱とか。謎に包まれた古代文字の石版とか。</p><p>それが、ただの石。落胆は隠せません。</p><p>「はー。」</p><p>溜息がついてでます。折角の楽しい気持ちが台無しです。</p><p>その溜息に気づいて、寝ていたロンが近寄ってきます。</p><p>「どうしたんだい？ミィ、砂遊びかい？」</p><p>「ロン、私はさっきまで発掘家だったのよ。とても楽しい気分だったわ。でも今は台無しよ。」</p><p>ふんふん、と理由を聞いてロンは頷いています。</p><p>そして、ミィの掘り当てた石を見つめます、じっと見つめています。</p><p>しばらくの間、じっとしていたロンは言いました。</p><p>「ミィ、ちょっと離れてて。マント被って、離れてて。」</p><p>よくわかりませんが、ミィは言うとおりにして、影地の隅っこまで移動しました。</p><p>それを確認したロンは、身体を少し揺さぶって、ピョンと一跳ね。</p><p>空中でグルグル回転して、石に向って飛びこみます。</p><p>ブオォォォォ。</p><p>ロンが飛び込んだ瞬間に、激しい砂煙が上がります。</p><p>時折、礫がミィの所まで飛んできます。だからマントを被ってなきゃいけないんだ。</p><p>･･･オオオオオオオオオ･･･ン･･･ン。</p><p>暫くすると回転音は止みました。煙はまだ立ちこめています。</p><p>「ゲホゲホッ･･･ペッペッ･･･おーぃ、ミィ。もういいよ、こっちに来なよ。」</p><p>砂煙にロンの姿がシルエットとなって映ります。モヤモヤと朧気なロンの影が手を振っています。</p><p>なにかを発見したのでしょうか、声色はちょっと嬉しそうに聞こえます。</p><p>「ごらん、ミィ。こいつはちょっとしたものさ。」</p>
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<link>https://ameblo.jp/mono-write/entry-10116940363.html</link>
<pubDate>Wed, 16 Jul 2008 21:34:26 +0900</pubDate>
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