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<title>むげん、の小説ときどきブログ</title>
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<description>小説「眠れる女子」公開中！！！！</description>
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<title>眠れる女子（あとがき）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u>こちら</u>から<br><br><br><br><font size="3"><br>　眠れる女子を終えることができました。<br>　最終話、更新遅くなってしまってごめんなさいでした。<br>けど、本当に読んでくれた皆さんのコメントやメッセージがないとここまでできませんでしたよ、これ本当です。<br>　もともと、このブログ自体、なんで作ったかって、知人の暇つぶしでしたから。知人の「暇」の一言で私ここまで必死に動きましたから。そしてその知人今はもう暇じゃないって言う。何だそれって言う。ね。<br>　でもこのブログで、もっかい小説書いてみて、色んなことを思いました。<br>　<br>　すぺしゃるさんくす、しゅんぷーさん。ありがとうです。応援してくれる人に差は付けたくないけれど、やっぱりあなたには助けられた。そういうの嫌がる人だけど、やっぱり、全身全霊でありがとうと言いたい。<br><br>　さて、作品の方ですが、この作品、原案はむげんが高校１年くらいに作ったもんだと思います。今回はそれに加筆修正した形です。<br>　当時は、すっごいどす黒いもの＆だだっぴろいスケールのものを書いていたので、もっと身近で、自分が書いたことの無いもの、と思っていたら、女子高生書こう(笑)ってなったと記憶してます。そして今回もそうだけれど、意外と女子高生を書くのは面白かった。変態です。うん。<br><br>　とりあえず、もう少し書きたいと思うんですが、最終話アップからしばらく皆さんのコメントやメッセージをお受けして、それに対して返答するという形で物語をちらりと振り返りたいと思います。<br>　物語自体に対してでも、むげんの小説スタイルについてでもかまいません。質問、感想、ひやかし、叫び、絶望何でもカモンです。<br><br>　それでは、また今度。<br><br><br>むげん、</font>
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<link>https://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10891945712.html</link>
<pubDate>Sun, 15 May 2011 00:15:43 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２８）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10885561971.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　眠らないまま夜を越えて、次の日の朝に千尋に電話をかけた。<br>　「もしもし！？」<br>　取り乱したように千尋が電話に出た。<br>　「もしもし、ゆき、元気、大丈夫？もー電源も入ってなかったから心配したよ」<br>　やっぱり私、電源を入れてなかったんだ。<br>　でもいつから入れていなかったのだろうと考えて、最後に電源を切った時を思い出した。体育祭の後に父に電話して、留守電だった時だ。不機嫌になって、電源を切ったのだった。<br>　「ごめんごめん。もう、大丈夫だから」<br>　「本当に、大丈夫？」<br>　「うん、すっかり」<br>　「嘘。声で分かる」<br>　全てお見通しなんだな、と思った。<br>　「電話もらってすぐこういう話するのもどうかと思うんだけど、あのメール気にして休んじゃった？ それなら、ごめん。謝って済む問題じゃないけど」<br>　「あのメール？」<br>　「うん。その、体育祭の後に送ったメール」<br>　千尋は声を小さくして言った。<br>　私は思い出した。これが考えても唯一分からなかったこと。千尋の送ったメールとは一体何だったのか。<br>　「体育祭の後って言うと……」<br>　「猪俣先輩のこと」<br>　「猪俣先輩」<br>　猪俣先輩についてのメールなんて、もらったっけ。<br>　少し考えると、思い当たることがひとつだけあった。自分の中では夢だと思っていたことだ。<br>　『猪俣先輩、最低だよ。<br>　　あんなのと付き合わないほういいよ。<br>　いっつもだったらこんなこと言いたくないんだけど、今回ばっかりはどう見ても確信犯だから言うね。<br>　猪俣先輩、智理学園の女子と二人っきりでじゃれあいながら歩いてた。それだけならまだしも、その女子、ゆきのマフラー付けてた。間違いない。絶対。たぶん、あげたんだと思う、猪俣先輩。<br>　もう、最低だよ。やめなよ、あんな男』<br>　あの日ベッドで読んだメールの文面がよみがえった。<br>　「えっと、あのー。マフラーの？」恐る恐る訊いてみた。<br>　「そう、他の高校の女子とって話」<br>　千尋の語調には、収まり切らない怒りが感じ取れた。だから、内容をそれ以上確かめるまでもなく、自分の思っているメールのことなんだなと思った。<br>　そう言えば。<br>　電源を切っている間に受信していた千尋からのメールの中の、体育祭の次の日のメールに、「昨日のメール」とあった。その「メール」と同じものではないかと思った。<br>　体育祭の日、昼寝の夢の中のメールだと思っていたものは、夢なんかじゃなかった。<br>　寝ぼけて、勘違いしていただけなんだ。<br>　まったく。<br>　自分に呆れた。夢の中のことを現実だと思って、現実を夢だと思っていたわけだ。<br>　でも、あの日、受信メールの中には、昼寝から起きた後もメールは無かったし、念のため、もう一度確かめてみたが、やはりそのメールは無く、そこだけがおかしい点で、そればっかりは千尋に訊くわけにもいかなかった。<br>    メールはどこに消えたのかわからなかった。<br>　「あんな男、もう忘れて、どっか一緒に遊びに行こう！ 不快だったら削除して、あのメール。ほんっとうにごめんね！」<br>　削除。<br>　削除していたのかもしれない。私は。すでに。もうろうとした意識の中で。<br>　千尋からのあのメールを読んで、すぐに削除したのだと思った。そうしたら、寝起きに確かめるためにメールをチェックしてもそんなメールはあるはずがないことになる。本当に削除したのか真相は分からなかった。しかし、そんなことはもはやどうでも良かった。<br>　付き合っている事実があったか、なかったかという問題を確かめる以前の問題だった。付き合いたいか、付き合いたくないかという問題だった。もちろん、付き合いたくなどない。<br>　淡い期待を抱いていた。最後までそれは、大事にしたかった。嘘でも。<br>　そんなことあるわけないという気持ちが大きい中で、小さなひびからこっそりわき出る水のように、それはあった。<br>　もしかしたら、付き合っていたのかもしれない。そう思っていた。<br>　どこまで自分が浅はかなのかつくづく思い知らされた。マフラーをあげて、舞い上がっている自分に何か言ってあげたい気がした。<br>　「ゆき、今日、学校は？」<br>　「行かない」<br>　「そっか……ゆき？」<br>　「ん？」<br>　「ごめんね、けしかけるようなこと言って」<br>　「けしかける？」<br>　「私が、無理に告白させるようなことゆきに言ったから、あんな最低なやつに告白してしまって」<br>　「そんなことないよ、自分で、決めたの。そりゃ、千尋の言葉の影響もあってだけど、千尋の言葉で焦ったとかじゃなく、今回のこと以外でも、勇気をもらったの。だから、千尋にはありがとうって言いたい」<br>　「そう言ってくれると、ありがたい」<br>　千尋の声は、涙声だった。<br>　「ゆきはね、きっといい人見つかるよ。でたらめじゃなく」<br>　「本当？」<br>　「絶対。大丈夫。」<br>　その声は、力強かった。<br>　「ゆき、待ってるよ」その言葉で、電話は切れた。<br>　待ってるよ、か。<br>　花瓶に入った柊の枝と、机の上に投げられたままの恭哉が最後に持ってきた柊の枝が目に入った。<br>　結局恭哉の言っていたことは当たっていたわけだ。猪俣先輩が、女の子をもてあそぶような人だということ。後味の悪い事実だけが、残るばかりだ。<br>　自分の部屋のドアをノックする音がして、「ゆき、起きてる？」と言う母の声がした。<br>　私はびっくりして時計を見た。本当だったら、母はもうとっくに出勤しているはずの時間で、実際、出勤しているものだと思っていた。<br>　「起きてるよ？」<br>　その声を聞いて、母はドアをおそるおそる開けた。<br>　おはよう、といつもと変わらない調子で母は言った。<br>　「お腹空かない？ 昨日の夜から何も食べてないでしょ？」<br>　私は少しためらったけれど、小さくうなずいた。<br>　「お母さん、今日仕事は？」先にキッチンに向かう母の背中を追いかけた。<br>　「休みもらったよ」<br>　「いいの？」<br>　「ゆきが休んでるんだから、いいに決まってるでしょ？」母は私の朝食を作るためにキッチンで準備をし始めた。<br>　私はその言葉を聞いて、罪悪感でいっぱいになった。母が今休んでいる場合ではないことを、世の中の誰よりも私が知っていた。それなのに、私のせいで休ませてしまっているということは、あってはならないことだと思っていた。私は、母の方に身を乗り出す形になった。<br>　「私なら、大丈夫。もうすっかり元気だし。だからお母さん、仕事行って大丈夫だよ？」<br>　すると、母はキッチンから私のいる方に回ってきて、私の両肩を軽くつかんだ。<br>　「お母さんが近くにいたいの。だめ？」<br>　母の目は、優しかった。とても、とても優しかった。だから、私は泣きそうになった。けれど、ここで泣いたらすごく変だと思ったので、笑ってみせた。<br>　「いいよ、ありがとう」<br>　キッチンでは鍋を火にかけていたらしく、鍋がコトコトという音がした。母は、それを思い出し小走りに鍋の方に戻って、火を止めた。<br>　母が私の前に朝食を出すと、目の前がぱあっと明るくなった気がした。<br>　「おいしそう」<br>　「消化が良い物のほうがいいと思ったから」<br>　真っ白いお粥の上に、オレンジのようなピンクのような色をした焼き鮭のほぐされた身が乗っていた。<br>　１口お粥をほおばると、口の中に程良い塩気が広がった。前の日の晩から何も食べていないだけなのに、それが久しぶりに食べたものだとさえ感じた。<br>　幸せ。<br>　生活が現実と夢が入り組んだ状態になってしまったので、今が現実なのか、夢なのか、それすら疑わしくなっていた。しかし、たとえお粥を口にした一瞬が夢でも、この気持ちは夢ではないと思った。それで十分だと思った。<br>　「学校は、行きたくなったら行けばいいよ」<br>　私の前に座った母は、頬杖をつきながら満足そうに私の顔を見た。<br>　「毎日頑張れるわけじゃないよね」<br>　私がなぜ学校を休んだとか、そういった話をまだ何もしていないのに、母は全てを知っているような口振りだった。<br>　「お母さんも、そんな時あるの？」<br>　「そんなことばっかりよ。お父さんを尊敬する。泣き言一つ言わないから」<br>　確かに、お父さんの泣き言なんて１度も聞いたこと無い。お父さんは、くじけそうになったこと無いのかな。あったとしたら、どうしているのだろう。お母さんや、他の人に話せているのかな。<br>　一番弱い時、お父さんのそばには、誰がいるのだろう。<br>　「お母さんは、どうするの？頑張れない時」<br>　うーん、と母は首をかしげた。<br>　「自分ができるって嘘でも思ってみるかな」<br>　「自分が、できる」私は自分に言い聞かせるように言った。<br>　「自分ができないことを、神様はお母さんにくれないと思うの。努力し続けた人を、誰も見ていなくても、神様は見てくれているって」<br>　「神様」<br>　「お母さんは別にキリスト教でも何でも無いけどね」<br>　<br>　気付いたら夕方だった。<br>　何をするでもなく、ベッドに座って自分の部屋の窓から間違いなく時間が流れるのを見ていた。手には、夢を見る薬の瓶が握られていた。残り２錠を残したまま、私の夢は終わった。当たり前だけど、携帯電話に猪俣先輩からのメールが来ることもなかった。<br>　私は夢を生きた。<br>　「人」が見た「夢」なんて「儚い」か。<br>　言葉遊びをして笑って見せた。かすんだ笑い声が、行き場も無く部屋の中でじんわりと消えた。<br>　机の上の柊の枝を一本取ってみた。<br>　誰が、いてくれるの。<br>　ねえ、誰がいてくれるの。<br>　そばに。<br>　柊は、何も言わなかった。<br>　いたんだよ。<br>　いっつもいてくれたじゃない、みんな。<br>　千尋がいた。待っていてくれた。<br>　母がいた。待っていてくれた。<br>　みんな待っていたのに、私が見ていないだけだった。<br>　「自分を見ろよ」<br>　「あきらめんなよ」<br>　柊から、聞こえた気がした。<br>　待っている人は、いる。<br>　メッセージカードを見て、家を出ていた。<br>　大黒屋の脇には、ベンチが設置してある。私が着くと、恭哉はそこにいて、今にもクレープを食べようと大きく口を開けているところだった。<br>　「……よう、もう、元気？」<br>　恭哉は開けた口をゆっくりと閉じた。<br>　きれいな薄紅色。持っているクレープは、ストロベリーアンドストロベリーだった。それを見て、恭哉もそのクレープが好きだったことを思い出した。２人で１つ買って、半分こしたこともあった。<br>　私の胸がきゅっと締め付けられた。<br>　何も言わない私を見て、恭哉は店の人に、ストロベリーアンドストロベリーをもう１つ頼んだ。恭哉も何も言わなかった。<br>　クレープができあがると、それを恭哉が私に手渡した。<br>　私は手を出せずにいた。恭哉は、手をもう一押しした。<br>　「ほら、今度は間違って落とすなよ」<br>　あの日の、砂利に混じった薄紅色が頭に広がった。あれがずっと、つかえていた。<br>　「恭哉」<br>　「ん？」<br>　「あれね」<br>　「あれ？」<br>　「あれ、ほんとは嬉しかった。ごめんね」語尾が、涙声になって、小さくなった。<br>　それから涙が止まらなかった。つかえていたものがすっぽり抜けて、流れに流れた。子供のような、大泣きだった。<br>　「鼻水」<br>　「うるさい」<br>　私は顔をぐちゃぐちゃにしながら、クレープにかぶりついた。<br>　それから二人でブランコに乗りながら、金曜からのことを聞いた。千尋が心配して、藁をもすがるような顔をして恭哉に訊きに来たこと、千尋に、私がふられたことを話したこと。それから、恭哉が金曜の夜から毎夜柊の枝を公園から取ってきた来たこと。<br>　「ほら、あそこの枝」<br>　そう言って恭哉は公園の柊の木を指した。恭哉が指した木の枝を見ると、所々不自然に折れた跡があった。<br>　「やっぱ、柊の葉っぱは触ると痛くてさ」<br>　「まさか、あそこを折ったの？」<br>　幼い頃、恭哉が柊の枝を折ろうとしたことを思い出した。<br>　恭哉は何も言わずにいたずらっぽく笑って見せた。<br>　「もー。ばか」<br>　たまらず二人とも笑いだした。<br>　私は自分のバッグから夢を見る薬の瓶を出していた。<br>　「恭哉、これね、夢を見る薬なの」<br>　恭哉はクレープの最後の１口を入れたまま、動きを止めた。<br>　「私、これ飲んでね、猪俣先輩への告白成功させようとしたの。そしたら、見事失敗。でも、薬のせいで自分が今眠っているのか、起きているのか分かんなくなった。馬鹿だよねー。私その中で猪俣先輩と付き合って、デートして、それを現実だと思っちゃった。現実は、単なる三日間の学校欠席。無遅刻無早退無欠席だったのにね」<br>　恭哉は何も言わなかった。馬鹿にされても良かった。ただ、私は話しておきたかった。<br>　すると、恭哉は私の手をいきなり握って、立ち上がった。<br>　「何！？ どうしたの！？」<br>　「貸して」<br>　恭哉は薬の瓶の前に手の平を出した。私は反射的に瓶を手渡していた。彼は瓶のふたを開けると、瓶を持っていない手で私の手首をつかむと、そして私のつかんだ方の手の平に瓶を逆さにした。私の手の平には、残りの薬２錠が乗っていた。<br>　「投げよう」<br>　「え？」<br>　「大丈夫、ゆきなら、もう」恭哉は大きくうなずいた。<br>　私は、頭でうまく整理できていなかったけれど、恭哉の言いたいことは何となく分かった。<br>　「自分の力で」<br>　私は精一杯の力で薬を握りしめると、腕を思い切り、振り切った。薬が飛んでいっただろう先に、大きな夕日が出ていた。<br><br>　「しかし、ああいう人にはなってみたいよ」帰り道、暗くなった路地を二人で歩いていると、恭哉が言った。<br>　「ああいう人？」<br>　「猪俣先輩みたいな人」<br>　「どうして」<br>　「なんていうか、勝ち組って言うのかな。思ったことは何でも叶っちゃう人」<br>　「先輩だって、何でも叶うわけじゃないでしょ」<br>　「そうだけど、それでも不公平だなって思うことはある。どんなにどんなにどんなに頑張っても、ウサギとカメのウサギみたいに、軽々跳んでっちゃう人」<br>　私は、昼休みに恭哉がバットを振る姿を思い出したが、それは言わなかった。<br>　「ウサギとカメの話では、カメが最終的に勝つでしょ」<br>　「それでも、現実は、ウサギが寝る前にゴール地点があることだって多い。本当の話の中ではさ、ウサギが途中で寝るほどコースは長かったでしょう。現実はそういうことのほうが少ないように感じるんだよね。カメが追いつく頃には、ウサギはゴールしてから寝てる」<br>　何にも言えなかった。<br>　「けど、自分は自分だからね。当たり前の、ことだけどさ」<br>　「カメは、どうすればいいんだろう」<br>　泣き言ばかり、卑屈ばかりのカメ。<br>　「猪俣先輩のようにいつも勝っている人がいるから、俺のようないつも負ける奴がいる。でも、じゃあ負けた奴は腐るしかないのかってわけじゃなくて、探さなければならないんだと思う。」<br>　そこまで言って、恭哉はくすくす笑いだした。<br>　「格好悪いね、俺」<br>　「そんなことない」それは私の本音だった。<br>　「そうかもしれない。あるかもしれない」自分の歩調に合わせて、私はつぶやいた。<br>　「負けた奴だって、勝利は探したい」<br>　いつの間にか、二人とも、白んでいる月を見て話していた。お互いに向かって話しているというよりも、自分が話さなければいけない別の何かと話しているみたいだった。<br>　「あ、俺、こっちだから」恭哉は自分の家に帰る道を指した。<br>　「あ、私、こっち」<br>　「じゃ」「うん、じゃ」<br>　「あ、恭哉！」<br>　恭哉は自転車をまたごうとしていた体を止めて、こちらを振り返った。<br>　「ありがとう。現実でも、夢でも」<br>　それを聞いて、恭哉は意味が分からないと言った顔をしたが、「おう」とだけ言って、自転車で行ってしまった。<br>　<br>　私の不眠症はあっけなく治った。というか、治っていたのかもしれない。<br>　その日の夜はぐっすり眠れることができた。夢を見たのか、覚えていない。寝起きの私の心は乾燥機をかけたようにからっとしていた。だから、もしも夢を見たとしても、それはきっと良い夢だなと思った。<br>　それから、夢を見る薬の話を聞いた。どうやら、嘘の薬をしかも許可無く販売したとして警察に捕まったらしいという話だった。実際に事務所を見てみると、「三井建築事務所」という看板も無くなっていた。<br>　なんだ、効果はなかったのか。<br>　私には、薬に効果がないことが少し残念な気持ちがあった。だとしたら、あの数日間の正夢はなんだったのだろう。単なる偶然だったのだろうか。不思議さだけが残った。<br>　それでも、まだ自分が夢を見ていることを意識する夢は見た。<br>　あの薬によって、とはあまり言いたくないし、言ってもいけないのだろうけれど、私には少なからず見なければならないものを見ることができるようになった気がする。<br>　学校の下駄箱から上靴を取り出して、足を入れた。<br>　「おう、おはよ」<br>　その声のほうに顔を上げた。見知った顔だった。<br>　「なんだ、恭哉か、おはよう」<br><br>　私の一日が、始まる。<br><br><br><br>「眠れる女子」　完</font><br><br><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10891923744.html</link>
<pubDate>Sun, 15 May 2011 00:06:37 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２７）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10880773638.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　時計の針が重なって３本重なって、また分かれていった。私の中でたくさんのことが崩れた日から次の日へと、寝静まった世の中は歩みを進めていた。<br>　私は寝返りを打つことしかできなかった。<br>　眠れない。そして、眠らない。<br>　その日の朝まで感じていた眠気は、どこかへ飛んでいた。<br>　この数日、何が起きていたのか。<br>　考えても、考えても、手がかりもまともに無い状況では、分かることには限界があった。<br>　私は行っていたと思っていたが、金曜から私が学校に行っていなかったこと。<br>　猪俣先輩の連絡先を知らないこと。<br>　猪俣先輩からもらったと思っていた柊の花を、本当は恭哉が持ってきたということ。<br>　だから、猪俣先輩と付き合っていたという事実も、嘘である可能性が高いこと。<br>　これらが、分かることの全部だった。<br>　けれど金曜からの数日間、私が普通に生活していると勘違いしている間、私は何をしていたというのかということと、なぜ私が勘違いしていたのかということは、いっこうに分からなかった。<br>　また寝返りを打った。<br>　眠って、忘れられればいいのに。<br>　そう言えば、と気付いた。薬を飲んでいなかった。<br>　しかし、もう薬どころの話ではなかった。そもそも、薬を飲んで叶ったはずのことが、嘘だったんだと気付いたのだから。<br>　結局あの薬、嘘だったのかな。<br>　でも、夢みたいな話だったな。<br>　夢。<br>　はっとする。<br>　私が見ていた現実が、もし夢だったとしたら。<br>　私が、学校に行っていると思っている間、実際は、家で寝ていたとしたら。そして、その夢を、現実だと思い込んでいたならば。<br>　嘘のような話。<br>　だが、そんなことあり得ないとは思わなかった。すでにあり得ないことばかりが私を襲っていた。あり得ないことも大真面目に起きている可能性はある。<br>　でも、夢を見ていたなら夢だと気付かないだろうかと思ったが、ここ数日の現実と勘違いするような夢を思い返すと、気付かないこともあり得た。実際、薬を飲んでからの夢は、途中で夢だと気付いたり、変なところで目を覚ましたりしなければ、夢か現実か、区別ができなかった。<br>　ここ数日、学校から帰ってくると、毎日昼寝をしていることに気付いた。<br>　金曜日から、「学校から帰ってくると」ベッドで死んだように眠っていた。そう考えていた。それが間違いで、金曜日から、「学校に行かずに」ベッドで死んだように眠っていたのではないかと思った。つまり、昼寝を夕方していたのではなく、朝からずっとしていたわけだ。<br>　それなら、帰宅後の昼寝から起きたのだという勘違いとつじつまが合う。朝から見ている夢の世界を、現実の世界だと思って、そのまま夢の世界で昼寝をしたのに、現実の世界で昼寝をしたと勘違いし、実際に起きた時、さも昼寝から起きたように感じる。そして、夕飯を母と食べ、何事も無かったように寝る。<br>　自分でも驚くような推理だった。それしか無いようにも思えた。欠けたピースが、埋まり始めるように感じた。<br>　それでも、その推理は一度ストップした。夕飯の時はそれでつじつまが合う。けれど、朝は説明がつかない。母と、毎朝顔を合わせていたのは確実だったからだ。<br>　もしも朝も起きずに夢を見ていて、母と顔を合わせなかったら、母は私のことをきっと起こしに来た。それが無かったということは、毎朝起きて、母と顔を合わせ、母の出勤を見送ったのは、夢ではなかったということだ。<br>　では、私はどうやって、そしていつの間に再びベッドに戻っていたのか。私はどこからどこまで起きていたのか。<br>　私は、夕方昼寝から起きると、ちゃんと制服に着替えていた。ということは、朝に制服に着替えて、母を送り出したのは夢ではない。<br>　そこから何をしたかをよく思い出してみた。<br>　しかし、どう思い出しても、普通に学校に行った記憶しかない。つまり、現実のことは何も覚えていない。<br>　机の上に、外からこぼれてくる光にうっすら照らされる柊の花が目に入った。<br>　あ。<br>　柊の花をポストに入れたという恭哉の言葉を思い出した。<br>　ポストは、私しか開けない仕事だ。学校に行っていないとしたら、学校から家に帰ってきてポストを開けるわけがない。ということは、朝、私がポストを開けて柊の花を取っていたということだ。<br>　でも。<br>　自分がポストから柊の花を取った記憶なんてなかった。<br>　けれど、柊の花を私がポストから出したことは、事実だ。もしポストに入った柊を取っていないなら、同じく取り忘れた新聞がポストに入っているはずだ。<br>　現実のことを何も覚えていないということが、逆に、それを証明しているのでは。あまりの眠気で、母を見送った後は、ポストから柊の花を取ったことを覚えていないのでは。そういう方向に考え方を変えてみた。ポストをチェックする癖はもう無意識に近いものだから、多少の眠気でもやってしまうだろうし。<br>　そうすると、それを裏付けることを見つけた。数日の間で、どんどんひどくなった眠気だ。歯を磨いたことを忘れたこともあった。デートのことで舞い上がっているかと思っていたが、眠気のせいかもしれないと考えると、そんな風にも思えた。<br>　他の日の柊も、ポストに入れたのかは分からなかったが、少なくとも、メッセージカードを付けた柊の花を取った日曜の朝は、自分の推理も当たっている。<br>　記憶は無くとも、自分がポストから柊の花を取ったということは、確からしかった。<br>　だから、自分はポストまでは実際に学校に行っていたことになる。<br>　また、ピースがはまっていった。<br>　押さえられない衝動にかられて、ベッドを飛び出すと、机に座った。そして、机の電気をつけ、ノートを開いた。それから、頭を整理するために、ノートに自分が考える一日の流れを時系列に書き並べ始めた。<br>　無理矢理すぎると思われていた推理に、当たっていると言わざるを得なくさせる事実がポンポン落ちてきて、この数日間の全容が浮かび上がった。<br>　「ポストから柊の花を出す」と書いた次の行に、「ベッドで二度寝」と書いたが、そこから分かったことはどう考えてもポストに行った後に、家の中に戻っていることだった。私は、そのふたつの行の間に、「部屋に戻る」と書き足した。<br>　だからか。<br>　夢の世界で、猪俣先輩が自分に柊をくれたのは、朝にポストで取った柊の花の印象が強くて、夢の中に出てきたのではないか、と思った。<br>　確かに変な状況だった。教えてもいないのに猪俣先輩が自分の好きな花を知っているなんて。<br>　恋に夢中になりすぎて、夢の中の違和感に気付かなかったのか。<br>　もしかしたら、柊は、私が夢を見ていることを必死に教えようとしていたのかもしれないと思ったが、今さらそう思ったところで意味もない。胸が、ただ苦しくなるだけだった。<br>　思えば、あの恐ろしい眠気は、薬を２錠飲み始めてからみるみる強くなっていった。<br>　何もかも、あの薬か。自業自得か。<br>　ノートを見た。そこに私の金曜からの本当の１日が浮かび上がっていた。<br>　そこから、嬉しいことなんてひとつも出なかった。<br>　ただ、色んなことが消えていくだけだった。<br>　薬を飲んで夢を見て、次の日にその夢を二度寝の中で叶える。そんな、夢の中に逃げ込んだ生活をしていた自分が、馬鹿らしかった。<br>　頭おかしいんじゃないの？<br>　ノートの、「二度寝」と「夕方起きる」と書いた間には、大きく「夢を見ている」と書いていた。<br>　現実も見ないで、夢見てただけじゃない。<br>　自分で思い描いた告白のシーンを現実と勘違いして、幸せな気分に浸っていた自分が哀れだった。<br>　あるわけのないデートを待ちこがれて勝手にウキウキして、準備をしていた自分がむなしかった。<br>　実際は誰ともキスしていない唇を、大切そうに何回も触っていた自分がみじめだった。<br>　ばっかじゃない。<br>　それでも、そんな馬鹿で、哀れで、むなしくて、みじめで、救いようのない自分が、どこまでも愛おしく感じて、もっと悲しくなった。<br>　自分の現実が書かれたノートのページを破った。捨てようと思った手を止めた。そのページをくしゃくしゃになるまで抱きしめた。<br>　ごめんね。<br>　ごめん。<br><br>　その日は、眠らなかったのか、眠れなかったのか、分からなかった。</font><br><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br>
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<pubDate>Sun, 08 May 2011 19:29:18 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２６）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10880105450.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3"><br> 『○月△日（日）１０：０８<br> 送信者：相澤千尋<br> 件名：無題<br> 本文：<br> ゆき！おはよ！<br>　今日いい天気だね、良かったら買い物でも行かない？私、この前、すごいかわいい服売ってる店見つけちゃったの！絶対ゆき気にいると思うんだ！<br>　暇になったらいつでもいいから連絡ちょーだい！<br>　ゆきのためならいつでもかけつけますぜ！(&gt;_&lt;)<br>　待ってるよ！』 <br><br>　日曜日。私がタケと一緒に遊園地に行った日。初めてキスをした、日。<br>　パタン。パタン。<br>　耳の奥で、音が鳴る。<br><br>　『○月□日（土）１６：１１<br>　送信者：相澤千尋<br>　件名：無題<br>　本文：<br>　やっほー(^O^)／ <br>　一斉清掃かったるいっす…(；一_一)<br>　私は体育館のモップがけだった…。広いよ、体育館…。<br>　今日もゆきんとこの担任にゆきが欠席してる理由きかれたから、昨日と同じように答えといから！<br><br>　それでね、ゆき…<br>　私ゆきが来てないのあまりにも心配になって、今日西野君のところに行って、何か知らないかってきいちゃった…勝手なことしてごめん。<br>　前に、西野君近所だってことちらっときいたから、少しでも知りたくて…。<br>　でもそこで、体育祭の後の猪俣先輩とのこと聞いて…。<br>　私それ知らないのに、体育祭の後にメールで傷つくようなことおくってごめんね。ホントごめん。<br>　長文失礼！ 連絡できるようになったらちょうだいね。』<br><br>　土曜日。私は一斉清掃に行っているはずだった。帰りに猪俣先輩とクレープを食べて、公園からの景色を眺めて、高ノ宮遊園地に行く約束して。<br>　『ゆきが欠席してる』ってどういうこと？<br>　じゃあ、私は、どこに行ってたって言うの？<br>　パタン、パタン、パタン。<br>　また、鳴った。<br><br>　『○月○日（金）９：３０<br>　送信者：相澤千尋<br>　件名：無題<br>　本文：<br>　おはよう(^_^)/<br>　どうしたー？ 寝坊かー？<br>　私、朝ゆきに用事あって、待ってたんだけど来なかったから、ゆきの担任に、ゆきちょっと体調悪いみたいなんで、来れたら来るそうですって伝えといたから、もし遅れて来るんだったら、そこらへんよろしくね（笑）<br>　ゆき真面目だから、それで担任は了解って言ってたから大丈夫！(^_^)v<br>　昨日のメール気にしてたりする？もしそうならごめんねm(_ _)m』<br><br>　金曜日。私が先輩に告白された日。<br>　私はきちんと朝に登校したでしょ。そしたら、千尋が教室に入ってきて、タケが私のこと好きだって友達と話してたとか言ってたじゃない。<br>　誰？<br>　私にこんな嘘のメールを送ったのは誰？<br>　もしくは、私がこの数日会っていたのは、誰？<br>　残りの未開封のメールは、白石静からだった。『もう打ち上げ始めてるよ？』という文面が、最初意味が分からなかったが、体育祭の後に、土曜日に体育祭の打ち上げをする約束をしたことを思い出し、自分がそれに行かなかったことを思い出した。けれど、私の記憶では、今日の掃除の時などに白石静と話したが、そんなこと何１つ言われなかった。<br>　『昨日のメール』って何？<br>　千尋のメールの文面に登場した言葉に引っかかりを感じて、昨日のメール、つまり木曜の体育祭の日に来たメールを探したが、その日にメールは来ておらず、金曜日の前に来たメールは、体育祭の前の日の、水曜に来た、千尋からの『体育祭絶対優勝！！』というメールしかなかった。<br>　木曜以前のメールは、開封されたメールだったし自分で読んだ記憶があった。だから、木曜以降、私の知らないことが起こっているということになっているのだと思った。<br>　私は携帯電話を投げて、両手で口元を押さえた。<br>　パタパタパタと、倒れていく音が、段々近くなっていった。<br>　この状況が、いたずらではないことは、すでに分かっていた。もしこれがいたずらならば、世の中みんなが私をだましにかかっていることになる。しかし、そんな気分だった。さっきまで信じていたものが全て私にあっかんべーでもしているようだった。<br>　タケ。<br>　猪俣先輩のことを考えると同時に、携帯電話を再び握って、アドレス帳を調べていた。もしも、恭哉たちの言うことが本当なら、アドレス帳にも猪俣先輩の連絡先が入っていないことになる。<br>　それは、自分の大切な気持ちの大部分を、賭けることを意味していた。勝てば、もしも私の数日間が変なことになっていたとしても、そんなことはしばしの混乱が落ち着けば、笑い話にできると思った。だが、もし負ければ、もう何も無い。もう全部、倒れていく。<br>　猪俣、猪俣、猪俣、猪俣。<br>　確かに交換したはずの連絡先。絶対に入っている連絡先。私は電話帳の「猪俣」という名前を、必死に探した。<br>　電話帳の五十音順の「い」のページはすでに通り越して、さ行のページに入っていた。なんでよ、なんでよ、と悲痛なつぶやきと一緒に、乱暴にボタンを叩き続けた。<br>　３周程電話帳を探したが、あるはずの連絡先は、無かった。<br> 全部、無いんだ。私。<br>　「この柊、恭哉が本当に持ってきたの？」<br>　私は、恭哉も見ずに訊いた。<br>　訊いたけれど、それは本当かどうか確かめたいという気持ちは毛頭も無く、ただの確認だった。もうこれ以上知りたくないと思って、心に覆いを被せることにした。分からないことはたくさんあったけれど、嘘でも、残ったものを大切にしたかった。<br>　「うん」<br>　「証拠は？自分があげたっていう証拠」<br>　恭哉はそれを聞いて頭を掻くと、少し小さい声で、「カード」と言った。<br>　「土曜日の夜に、メッセージカードを入れた柊の花を、ゆきの家のポストに入れた」<br>　そこまで正確に言われると、もう信じざるを得なかった。<br>　待っている人は、いる。<br>　メッセージカードにはそう書いてあった。やっと意味が分かった。学校に来ない私へのメッセージだったわけだ。<br>　柊の花とか、メッセージカードとか、私の数日間とつながっている点はあったけれど、そんなことは、疑問に思うだけでも疲れるので止めた。<br>　私は、そっかとだけ答えた。<br>　それも、現実か。<br>　これが、現実か。<br>　「最後に私と会ったのはいつ？」<br>　「体育祭の、帰り道」<br>　「クレープ」<br>　「うん」<br>　「私、食べなかったよね」<br>　「うん」<br>　淡々と、そう言った。<br>　やっぱり、金曜日からか。<br>　やっぱり、私たちは、付き合っていなかったのか。<br>　「帰って」<br>　「え？」<br>　「もう分かったから、帰って」<br>　少しの間恭哉はうつむいていたが、もそもそと立ち上がって、出て行った。<br><br>　パタン。<br><br>　私の恋は、終わった。<br>　どうやら、私の何かがおかしくなって、私は何かを勘違いして生活していたことが分かった。<br>　その何かは分からなかったけれど。<br>　私の恋は、終わった。<br>　その実感だけが、部屋に置き去りになった。<br></font><br><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10880773638.html</link>
<pubDate>Wed, 04 May 2011 07:38:22 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２５）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10879141089.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　恭哉の顔は、嘘を言っているようではなかった。そして私も、担任を出してまでも、恭哉が嘘をつこうとしているとは思えなかった。<br>　私が、間違っているの？<br>　少しずつ、少しずつ、自分に対しての疑念が強くなっていた。今まで自分が考えてきたことが、はがされていくような感覚。<br>　でも、間違っているとしたら、私の何が間違っているの?<br>　「嘘つかないでよ。なんでそんなに分かりやすい嘘をつくの？もうちょっとまともに嘘ついたら？」<br>　言っていることは相変わらず攻撃的だったけれど、口からは、もう言葉が力強く飛び出ることはなく、出た瞬間に、ぽろぽろと落ちて行った。<br>　「学校は、行ってた。行ってたの。だって、タケと一緒に帰ってたし。帰りに、柊の花もらったし。今日だって、ほら、ね、制服着てるじゃない」<br> 私は布団をはいで、自分が来ている制服を見せた。だから今日も学校行ったって証明できるでしょ、と言いたかったのだが、そんなことはどうとでも言い訳ができると、言ったそばから気付いた。<br> 口調としてはもう、お願いだから信じてと言うような状態だった。<br> 私ばっかりが、一方的に空回りして喋り続ける一方で、恭哉は頭を掻き続けてはいたけれど、それは、目の前で意味の分からないことを言う私に、どうやって自分の伝えることを分かってもらえるかと頭を痛めているようだった。<br>　「大黒屋に、クレープ食べに行ったんだから。一緒に」<br>　恭哉は、頭を掻き続ける。<br>　馬鹿に、しないでよ。何よ。私間違ってないよ。<br>　恭哉に対しての苛立ちは、まだあった。というよりも、苛立ちを持ち続けることによって、意味の分からない告白に、足元を崩されることを防ごうとしていた。<br>　段々気持ちが悪くなっていた。鼓動が強いのか、吐き気が強いのか、分からなかった。自分の知らないことが、何か隠されているようで、怖くなった。でも、自分の中にも、はっきりと現実がある。知らないことが滑り込む余地など、無かった。<br>　焦りが、私の頭を支配した。ちょっと前までそんな物が出てくるなんて考えてもみなかった。<br>　何か。私が正しいことを証明する何か。<br>　すがるような目で、自分の正しさを見せてくれる物を探して、部屋中を見回した。<br>　そうだ、携帯電話。<br>　そんなことをするのもおかしかったが、携帯電話で千尋に電話して、自分がこの数日に学校に行っていたことを証明してもらおうとした。<br>　千尋だったら、金曜も、今日も、学校で私と会ってるはずだ。<br>　金曜は朝学校に行ったら教室にいたし、今日だって、帰り際に私が走っているところを見ているはずだった。<br>　通学用のバッグから携帯電話を取り出して、電話をかけようとした。が、いつ切ったか、電源が切れていたので、電源を入れた。電源が入るまでの間、体を小刻みに揺らして恭哉のほうからは目を離していたが、頭を掻く姿が視界の中に入っていた。<br>　そうだった、最初っからこうすれば良かったんじゃない。<br>　冷や汗をかきながら、ようやく一安心と、震えるため息を出したところだった。<br>　暗い画面が、明るくなり、電源が入ったことを知らせる画面に切り替わった。<br>　それを見てすぐさま千尋に電話をかけようとした。しかし、それよりも早く、「メール受信中です」と画面に表示されて、操作ができなくなってしまった。私の携帯電話は、電源を切っている間に来たメールを、電源を入れた瞬間に受信しだす設定にしていた。<br>　私はいつまでも操作ができないことに我慢できずに、意味もないのに電話帳を開くボタンをカチカチと連打していた。<br>　もう、なんで電源切ってんのよ。<br>　全てのメールを受信し終わると、しきりに連打し続ける親指も動きを止めた。受信結果画面の、「新着メール５通」という画面を見たからだ。<br>　？ どうしてこんなにメールが？<br>　猪俣先輩からの、私を心配するメールかもしれないと思い、少し表情を明るくしてメールを開き始めたが、メールの送信者の名前を見て、まぶたがくたびれたように落ちた。<br>　ほとんどは、千尋からのメール。１件だけ、何の用か、白石静からのメールだった。<br>　千尋に電話する前に、まずそのメールを見ようと思い、受信歴の一番上から開いた。<br>　そして、それが、私に現実を教えるには十分なものだった。<br><br>　『ゆきー！ 起きてる？ 今日は竹内の宿題が超ヤバかったよー(&gt;_&lt;)マジで死ね、アイツ（笑）<br>　いつ来ても私はいいと思ってるよ！ゆきの来たいときに学校来ればいいよ！<br>　でもちょっと淋しいな、ゆきがいないと(T_T)』<br><br>　『来たい時に学校来ればいいよ』？ 『来たい時に学校来ればいいよ』？  どういうこと？<br>　私は必死に恭哉の顔を見たけれど、恭哉は私の顔を見ないでぽりぽり頭を掻いていた。<br>　本当なの？ 本当に私、学校行ってないの？<br>　千尋からのそのメールの日付を確かめてみると、「○月×日（月）」と、今日の日付だった。<br>　じゃあ、私が今日見た千尋は何？<br>　ぼんやりと、現実を見せられているような気がしたが、何も考えないようにした。パタパタと、遠くの方で何か倒れてくるような音が聞こえた。<br>　そして、その音はどんどん大きくなった。<br>　他の未開封メールが送信された日付を見ると、全て今日の日付ではなかった。一番古いもので、金曜日に送られたメールだった。<br>　金曜日。<br>　私が学校に行っていないと「されている」のは、金曜日からだった。<br>　そして、私が猪俣先輩と付き合い始めたのも、金曜日からだった。<br>　私は恭哉のほうを静かに見た。恭哉は私のほうを静かに見ていた。もう頭は掻いていなかった。<br>　自分の知らない自分を、みんなが見ていたような気分になった。<br>　私は無言で、千尋からの未開封メールを開け続けた。<br></font><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10880105450.html</link>
<pubDate>Tue, 03 May 2011 16:20:59 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２４）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10873129747.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　突然目の前の世界が消えて、母の顔が現れるというわけの分からない事態の中で、ある程度把握する余裕が出てきて、私が自分の部屋のベッドに寝ているということを、やっと把握できた<br>　「ゆき、具合悪いんだったら、無理しないでお母さんに言ってくれて良かったんだよ？お母さんのこと気にしてくれなくてもいいんだよ？」<br>　どういうこと？どうして私は自分の部屋にいるの？どうしてお母さんがいるの？<br>　自分がどこにいるのかは分かったが、一体にしてなぜそう状態に置かれているのかについては、頭の中がまだ錯綜していた。<br>　帰り道に先輩と一緒に帰っていて、そこからどうなったんだ？<br>　その先の記憶が無い。<br>　まさか、倒れたの、私？<br>　可能性があるとしたら、それしかないように思えた。<br>　そっか……そう言えば、最近眠気ひどかったからな。<br>　目の前の母が申し訳ない顔でいることに申し訳なさを感じた。<br>　ごめんね、お母さん。薬の、せいだ。私が薬なんか飲み続けるから。<br>　顔を動かすと、足下の方向にあるドアの近くに、誰かがいる気がして、少し身を起こしてそちらを向いた。<br>　タケかな、と思って見たが、すぐさま目を背ける結果になった。<br>　なんであんたが来てんのよ。タケはどこにいるの。<br>　一番見られたくない相手。私は深めに布団に潜った。<br>　「恭哉君ね、ゆきのこと心配でお見舞いに来てくれてたのよ」<br>　タケに来て欲しかった。あんたじゃなくて。最悪。<br>　恭哉とは幼い頃からの付き合いだから、母も恭哉のことは知っていた。母は、当然ながら、高校でも私と恭哉が昔と同じように仲良しだと思っているようだった。<br>　「ありがとうくらい、あってもいいでしょう、ゆき」<br>　「……ありがと」ものすごい早口で言った。<br>　「ごめんね、恭哉君、この子照れちゃって」<br>　照れてないよ。勘違いさせないでよ、お母さん。<br>　しかし、私のそんな嫌悪感など、笑い飛ばすほど小さなことにしてしまう発言が、私の耳に突き刺さる。<br>　「ゆき、学校行ってないんだったら行ってないなりにお母さんに言ってくれてもいいでしょ？お母さんだって、学校行ってないだけで怒ったりしないよ？」<br>　「どういうこと？」<br>　学校は行ってたじゃない。ずっと。今日だって、学校の帰り道で倒れたんでしょう？<br>　「どういうことも何も、先週の金曜から学校行ってなかったんでしょ？この柊の枝だって、本当は恭哉君が持って来てくれたんでしょ？何もそこまで彼氏にもらったなんていう嘘つかなくていいじゃない。恭哉君が教えてくれたよ、全部」<br>　え？学校なんてずっと行ってたよ。金曜日は先輩に告白された日だし、土曜日も、一斉清掃の日だったでしょ？今日だって、行ったよ？誰が、何のためにそんな分かりやすい嘘を？それに、柊の枝だって先輩からもらったもので、何がどうなって恭哉からもらったものになっているわけ？<br>　私は、一瞬恭哉をにらむような視線を投げた。その手には、柊の枝が握られていた。母の目からすれば、恭哉の言う通り、実は毎日柊の枝をくれていたのは恭哉という「嘘」もまかり通る。しかし、私からすればそんなものは考えなくても猪俣先輩からもらったものだと自信を持って言えた。<br>　私はすぐに視線を母に戻した。今はそんな面倒くさい奴を相手しているよりも大事なことがある、恭哉なんて無視していても支障無いと思った。<br>　それよりも、何よりも、<br>　「お母さん、私、学校行ってたよ？」<br>　私の訴えるような言葉を聞くと、お母さんは「分かった分かった」と私の頬をポンポンとなでるように軽くたたいた。明らかに、私の信用していないが、嘘を言っている私を許すような顔をしていた。<br>　本当だってば。<br>　いくら目で訴えても、母は顔を変えなかった。　<br>　もう、意味の分からないことの連続だった。なぜ、恭哉は、私のクラスの人にでも訊けばすぐにばれるような嘘を言っているのか。なぜ母は恭哉のそんな意味の分からない嘘を信じているのか。そして、意味不明の最たることは、恭哉が柊の枝を持って来ていることだった。それは、猪俣先輩がここ数日、私に柊の枝をくれていることと無関係には思えなかった。<br>　もしかして、私とタケが一緒にいるところを今まで見てたの？<br>　ストーカー。そんな言葉が頭に浮かんで、恭哉に対する嫌悪感が広がって、私は布団に潜った。<br>　整理するのは、とにかくこいつが帰ったらだ。<br>　しかし、母は、「とりあえず、お母さん、お茶淹れてくるからね。話は、落ち着いてからでもいいから」と言って、母が立ち上がってしまった。<br>　「恭哉君も、座っていいのよ。ほら、座って」<br>　母は、私の学習机用の椅子を、立ちっぱなしの恭哉の前に出し、部屋を出ていった。<br>　しばし沈黙が居座った。<br>　「ここ、座ってもいいか」<br>　「座れば」<br>　自分の部屋に恭哉がいるのが、自分の領域に異物がいるみたいで嫌だった。自分のイスにも座って欲しくなかった。しかし、だからと言って、恭哉に対して強い口調で「帰れ」とも言えなかった。私にそこまでの強さは無い。ただ嫌な時間が過ぎるのを待つしかない。<br>　それでもやはり布団に潜ってじっとしていると、苛立ちは募って、なんで私が我慢しなければいけないのかという思いは、ついに火を噴いてしまった。<br>　「ねえ」<br>　私は起き上がらず、恭哉を見ずに、ゴミを投げ捨てるように言った。<br>　「ん？」<br>　「なんで嘘ついたの？」<br>　「嘘？」<br>　恭哉は自分がどこで嘘をついたのだ、という口ぶりだった。そのしらばっくれようとする態度に私は余計に腹が立った。<br>　「嘘ついてたでしょうが。お母さんに。私が学校休んでたとか。それに、花だって、あんたが持ってきたわけじゃないでしょ。あんたが持ってきたのは今日のその花だけじゃない。なに格好つけようとしてんのよ」<br>　私は、恭哉を潰そうとしていた。日頃溜めていた、諸々の行き場の無い怒りも、まとめて全部恭哉に振りかざして。<br>　「この花は、柊の花は、タケが、猪俣先輩が、私のために、持って来てくれたの。あんたからなんかもらってないよ」　<br>　恭哉は黙っていた。顔を見ていないために、どんな気持ちなのかを察することもできなかったが、私の言葉が恭哉にめり込んで行くことを想像して胸がすかっとした。<br>　「あんたのせいで話がややこしくなった。本当のこと話しても私が嘘ついてるみたいじゃない。もう余計なことしないでよ。意味分かんない。帰って欲しいんだけど」<br>　ふっと満足のため息を吐いた。とどめは刺した。<br>　恭哉は何も言わなかった。相槌も何もしないせいで、本当にそこに恭哉がいるかどうかも疑わしくなった。だから、たまらずにベッドから身を起して、恭哉のほうを見た。<br>　「何とか言いなよ」<br>　本当に何とか言って欲しいわけではなかった。抑えが効かなくなった口が勝手に喋っていた。<br>　勝った。<br>　疎ましかった敵を、ついに倒した勝利の余韻に浸った。<br>　言いたいことを全部言い切って落ち着くと、恭哉の反応を落ち着いて見ることができるようになった。けれども私が見たものは、私が望んでいたものではなかった。<br>　恭哉が、変な顔をしていたからだ。変な顔と言うのは、何かを疑問に思っているように、眉を寄せた顔だ。およそ、私にあれこれ言われてショックを受けているような顔には見えなかった。そして、癖で頭を掻いている。小さい頃から見てきた、いつもの、自分の頭で考えきれないことや言いづらいことがある時に出す癖。<br>　そんな恭哉の様子を見て、私の苛立ちはすぐに戻ってきた。しかも、さらに大きくなって、だ。<br>　なぜなら、考えきれないことが起こっているのは、むしろ私のほうだし、この期に及んで何が言いづらいと言うのか分からなかった。恭哉にはもう何も言うことは無いはずだった。<br>　それじゃまるで、自分が被害者みたいな態度じゃない。<br>　そして恭哉が何も答えない時間がやはり続き、どうでもよくなった私が、もう一度布団を被って横になろうとしたときだった。倒したはずの敵が、口を開いてきた。<br>　「ゆきは……ゆきは学校来て、じゃあ学校で何してたって言うの？」<br>　はあ？<br>　意味不明の質問に、半ば相手にする気すらなくなった。<br>　私は横になろうとした体を止め、もう一度元の位置に体を戻し、恭哉を睨んだ。静まった怒りが、じんじんと戻ってきた。<br>　「だから、言ってるでしょ」<br>　自分の声があまりにも大きすぎるということに、そこで気付いた。<br>　母に聞かれてはまずいと思ったので、声の大きさはささやくようにしたが、話し方は恭哉に対する敵意をむき出しにした。<br>　「普通に学校に行ってたって。普通に登校して、普通に授業受けて、普通にお昼食べて、普通に家に帰ったって。あんたは違うクラスで見てないかもしれないけどね」<br>　変な会話だった。恭哉は私の返答を聞くほどに顔をしかめていった。そして、頭をまた掻いていた。だが、しばらく掻いたと思うと、何かしらの整理ができたのか、やっと喋った。<br>　「なあ、俺、ゆきが休んだ日に、学校でゆきのクラスの担任に、訊かれてんだよ。今日、なんでゆきが学校休んだんだって」<br>　ぱたん、と何かが倒れる音がした。私の大事な何か。</font><br><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br><br><br>
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<link>https://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10879141089.html</link>
<pubDate>Mon, 02 May 2011 18:07:47 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２３）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10872326344.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　もう十分幸せだという気持ちのせいなのか、その夜は夢を見なかった。ただ、十分眠れた。起きて、いつものようにテーブルに座っていても、眠気がのしかかってくるくらいだった。<br>　先輩に告白する前のように、夢が見られなくなっても、焦りというのは全くと言っていいほど無かった。それも、もう十分幸せだという気持ちのせいだったのだろう。<br>　学校に行けば、先輩に会えるんだし。<br>　「ゆき、大丈夫？すごく眠そうだけど、眠れてるの？」<br>　母が眠気と戦う私を見て、言った。<br>　「そう言えば、最近ぼーっとしてること多いし」<br>　「大丈夫だよ。それを言ったらお母さんも同じでしょ？」<br>　「うん、まあ、そうだけど」<br>　母はばつが悪そうな顔をした。<br>　「それじゃ、お母さん行くからね」<br>　荷物を持った母が、まだ心配そうに私を見た。<br>　「だーいじょうぶ、ほら、遅れちゃうでしょ」<br>　「なら、行ってきます」<br>　「行ってらっしゃい」<br>　母が背中を見せてから、あ、と言った。何？と言うような顔で母が振り返った。<br>　「今日もポジティブにね、お母さん」<br>　「そうね、ポジティブに」<br>　母が微笑んだ。<br>　バッグを取りに自分の部屋に戻った。先輩からもらった柊の枝を差した花瓶をぼんやり見た。<br>　あれ？<br>　柊の葉の間に白いメッセージカードのようなものが見えた。<br>　なんだこれ？先輩が入れたのかな？気づかなかった。<br>　ベッドに腰掛けてカードを裏返して見た。<br>　「待ってる人は……いる？」<br>　カードにはそう書かれていた。見た感じだが、男の人の字だったので、やっぱり先輩が入れたんだと思った。<br>　どういう意味だろう。待っている人って、私を待っている人ってこと？<br>　直接言ってくれればいいのに。<br>　わざわざメッセージカードに書いたことに疑問を感じた。<br>　いくら考えても、分からなかった。<br>　今日の帰りにでも訊いてみようか。<br><br>　私が猪俣君と付き合っているという噂は瞬く間に広がっていた。それは、私よりも、先輩に対しての周りの注目が高かったからだと思う。仮に私が先輩と付き合っていることに周りが注目したとするならば、それは、あの猪俣先輩が、他のどの注目されている女子でもなく、どこの者とも知らぬ私と付き合っているということだろう。祝福ではなく、関心、疑問、嫌悪、そういったものだということは分かっていた。<br>　「すごい見られてるよ」帰りの掃除の時間に、白石静がほうきでゴミを掃きながら、肘で私をつついてきた。<br>　白石静が顎で指した方にちらっと目を向けると、クラスの出入口から少し間を取って、数人の女の子が私の方を指さして見ていた。好感とは明らかに違う気持ちが、私に向けられていることは感じ取れた。<br>　「人気者だね」白石静が言った。<br>　私が、ではなく、タケが、ね。<br>　それでも、もうそんな視線は気にならなくなっていた。最初はあまり良い気分はしなかったが。<br>　タケが、待ってくれているから。<br>　彼が待っているということだけで、そんなうっとうしいものは取れる。<br>　掃除が終わると、一目散にバッグを持って、走り出した。待ち合わせの場所に。<br>　「あ、ゆき！」<br>　走っている途中で声をかけられた。千尋だった。<br>　「ごめん、千尋、また明日ね」<br>　私はスピードを緩めず、先輩の元へと向かった。<br><br>　「ごめんごめん、待たせた？」<br>　用具倉庫に着いた私は前髪を直した。猪俣先輩は今日も私よりも早く待ち合わせ場所に着いていた。<br>　「ううん、全然」<br>　「そっか」<br>　先輩と一緒に歩いていると、もう心細くは無かった。私が先輩を見ると、先輩は私を見返してくれた。付き合う前は、私が先輩を見ても、先輩は私を見ていてくれたわけではなかった。だから心細かった。亜紀ちゃんの視線に怯えた。一人で立ち向かう勇気なんて、なかった。あの視線が結局何だったのかは分からなかった。そして、心の中で感じていた通り、先輩と付き合うようになってからは、あの視線が増えた。けれど、それよりも猪俣先輩が強く私を見てくれるおかげで、何も怖くなかった。<br>　私は猪俣先輩の手を強く握った。<br>　「ん？どうしたの？」それを先輩は感じ取った。<br>　「何でもないの、しばらくこうしてて」<br>　一歩だけ、近付く。<br>　落とした影が、寄り添って、重なる。<br>　どれだけ近付けば、１人になれるの？<br>　ゆき……。<br>　どれだけ近付けば……。<br>　ゆき！ゆき！<br>　んあ……？お母さん？<br>　世界が、少しずつゆがんで、影が見えなくなって。<br>　「ゆき、大丈夫？具合悪いところ、無い？」<br>　あれ、お母さん、なんでここにいるの？私、先輩と歩いてて……。<br>　目の前の光景が一気に変わって、心配そうに顔を私の顔を覗き込む母の顔があった。<br>　ここ、何？<br>　「ここ……私の部屋？」<br>　私が自分の部屋のベッドに寝ているということを、やっと把握できた。</font><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br><br><br>
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<pubDate>Tue, 26 Apr 2011 19:19:28 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２２）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10870957964.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　高ノ宮遊園地は、前に行った時同様、カップルか家族しかいなかった。<br>　でも、今日は。<br>　私は自分の手を見た。前に来た時とは違って、今日は私の手を握ってくれる人がいた。<br><br>　「私、遊園地なんてあまり来たことないんだ」というか１回しか来たことない。<br>　遊園地までに歩いてくる道のりで、敬語を使わないことも慣れてきた。<br>　「俺も久しぶりだな」<br>　「へえ、そうなんだ」<br>　意外だった。もっと頻繁に来ているのかと思っていた。来る子なら、先輩ならきっとたくさんいただろうから。<br>　「家族と来たくらいかな、最後に。小学校６年くらいの時」<br>　「私は家族と遊園地って来たことないんだ」<br>　家族と遊園地。<br>　小学校の時に日記の宿題が出ると、クラスのみんなが家族と旅行だの、水族館だの、動物園だのに行ったということを書いてきた。私も母と食事に行くなど出かけたことはあったが、家族揃って行くということは無かった。父が帰ってきても、「お父さんの仕事を応援する」という私とお母さんの決め事があったから、私はどこに行きたいということを言わなかった。たまに帰ってくるお父さんを、できるだけ休ませたい。私も幼いながらに、背伸びしてお父さんのことを考えようと思っていたのだろう。しかも、そんな家庭環境が淋しかったなんて全然思ったことは無い。思ったら、お父さんが忙しい分、頑張ってくれていた母に申し訳が立たない。だからこそ、たまに遊んでくれる父が教えたサッカーが大好きだった。<br>　「だから、今日は楽しもう！」<br>　私は気合いを入れるような動きをした。<br>　「そうだね、ゆきちゃん何乗りたい？」<br>　「そうだな――」<br>　辺り一面広がる笑い声に、私たちは入っていった。<br><br>　たくさん笑った。たくさん叫んだ。<br>　走って、はしゃいで、ふざけて、また笑って。<br>　こんなに思いっきり何かをしたのは久しぶりだった。<br>　絶叫系のアトラクションも、メリーゴーランドも、遊園地の中を歩いている時も、体全体がスキップしているようだった。<br>　楽しいってこういう気持ちを言うんだ。<br>　大げさだけれど、そんな風に感じた。<br>　先輩も、学校で見る顔とは全然違う顔をした。夢の中で見たほどではないけれど、小学生のように無邪気に笑顔を作り、「ゆきちゃん、次あれ乗ってみようよ」と手を離したら、走って行ってしまいそうだった。<br>　どうして付き合うのかなんて質問をされたら、しっかり答えられる自信は無い。千尋は自分の弱い時にいてくれる人がそばにいてくれるのがいいと言った。私なりに答えるなら、好きな人の笑顔を誰よりも多く、長く見られるから、付き合うのだと答えるだろう。<br>　<br>　「うわーすごいすごい、きれーい」<br>　もうちょっとで観覧車が一番高いところに着く。<br>　あっと言う間に日が暮れて、帰りの時間が迫っていた。先輩が、「最後にあれ乗ろうか」と言って、最後に観覧車に乗ることになった。<br>　「私、遊園地の外ではこの観覧車がライトアップされるのを何回も見てたんだけど」<br>　遠くに見えるお城を見る気分だった。見えるけれど、行けない、行ってはいけない場所。許可証でもないと、いけない場所。<br>　憧れ。<br>　「花火みたいだなっていっつも思ってた」<br>　「じゃあ、今日は花火に乗れたわけだ」<br>　「そうだね、そうだ、素敵」私は身を乗り出して外の景色を見た。<br>　きっと、小さく見える町の景色の中には、あの日の自分がいるはずだ。憧れをその目一杯にためて、こっちを見ている自分が。<br>　「ゆきちゃんは、どうして俺のこと好きになったの？」<br>　「どうしてって……言われても」<br>　私は乗り出した身を元に戻して、先輩の向かいの席に座り直した。<br>　「タケは？どうして私なんか？」<br>　「ずるいなあ、自分は答えないで、人に訊く」<br>　「ごめーん」私は笑った。<br>　「でもね、私なんかって言わないで、ゆきちゃん。ゆきちゃんはすごくいいもの持っていると思うんだよ。そして、おれはそこがすごく好きになった」<br>　「いいもの？いいものって？」<br>　「それはうまく言えないけど……」<br>　何それーと、私は言った。<br>　「だから、もっと自分を見て、ね」<br>　自分を見ろよ。<br>　ドキン、と一回だけ心臓が強くなった気がした。<br>　忘れていた、夢の中の恭哉の言葉。<br>　自分を見ろよ。<br>　あきらめんなよ。<br>　何で今こんなことを思い出さなきゃなんないの。<br>　「あ、そう言えば」先輩が自分のバッグをあさりだした。<br>　「ほら、これ」<br>　先輩が取り出したのは柊の木だった。<br>　夢と、同じ。<br>　「え、いつ取ってきたの？」<br>　「内緒。好きでしょ？」<br>　いや、好きだけど。わざわざ、今日もくれるんだ。<br>　私のバッグには入らなかったから、手で持つしかなかった。さすがに、この行動には頭の上に小さな疑問符が浮かんだ。<br>　柊の木のせいもあって、余計恭哉のことを思い出してしまった。きっと恭哉が自分のことを呪っているんだな、と思った。<br>　「どうしたの、ゆきちゃん、具合悪い？」<br>　いえ、と私は無理に笑って見せた。<br>　私は柊の木を自分から見えない位置に下げて持った。<br>　「もうすぐ頂上だね」先輩が顔を外に向けた。<br>　「うわ、本当だ、高いですね」<br>　先輩がそうだね、と返事した後に「あ」とほぼ二人同時に声を上げた。<br>　「敬語、使っちゃったね」<br>　「あー。やっちゃった」<br>　「罰ゲーム」<br>　「本当に？」<br>　「じゃあ、今日は、もらうのクレープじゃなくていいよ」<br>　先輩は向かいの席から私の隣に座ってきた。<br>　近い。顔が近い。見れない。<br>　「キスでいい」<br>　本当に来た。この時が、本当に。<br>　あとは、暗黙の了解が、空気を作った。<br>　先輩が姿勢を少しずつずらした。顔が近づいてくるのが、見ていなくても分かる。<br>　鼓動が恐ろしく高鳴っているのが、近づく先輩に聞こえていそうで恥ずかしかった。<br>　視界の中に先輩の顔が入ってきて反射的に目をつぶった。あれだけどうしようか悩んでいた問題だったのに、体のほうが素直だった。<br>　ああ、そうか、自分があまり見られたくなくて、逆に目をつぶるんだ。<br>　緊張しているくせに、そんなことを考える余裕はあった。<br>　真っ暗で何も見えない中で、近づいてくる先輩の顔はどこにあるのかは、不思議と分かった。あと数センチ。唇が触れていないのに、その近づく空気さえ、キスの一部のような気がした。<br>　唇に、やや冷たいものが触れた。その後、ゆっくり柔らかさが伝わる。<br>　レモンの味も、甘酸っぱい味もしなかった。<br>　優しさの感触が、伝わった。<br>　私は先輩のキスを、背筋を伸ばしたまま、受け止めた。それが先輩には分かったのかもしれない。<br>　「初めて？」<br>　「うん、キスは初心者」<br>　「初心者って」先輩は吹き出した。<br>　緊張していた私も、和んで笑った。<br><br>　「ゆき、夕飯できたよ。はい、起きて」<br>　母の声が部屋に入ってきて私を起こした。<br>　起こされてからもしばらく気が抜けた状態でいた。<br>　デート疲れで寝ちゃったのか。<br>　あれから先輩にいつもの場所まで送ってもらった。その後はいつものごとくベッドに倒れ込んで、寝てしまっていたのだなと思った。ベッド近くまで行ったことは覚えているが、その後の記憶がない。<br>　指の腹を唇に触れさせてみた。次に手のひらを。けれども、どこに唇を触れさせても、あの時のキスと同じ感覚を持つことは無かった。<br>　少しだけ、大人になった気がした。悪いことはしていないのに、罪の意識にも似ていた。夕食の席に座っている母の顔をまともに見られなかった。<br>　「ゆき、あの枝何？」<br>　「え、枝？」柊の木のことを言っているのは察しがついた。<br>　「ほら、ゆきの部屋にあったじゃない、あのギザギザの葉っぱ付いた枝」<br>　「あ、あ、ああ。あれね。あれは、柊の木」<br>　「柊？あ、あれが柊って言うの？誰から？」<br>　「……知り合い」<br>　私は間を取るように食卓のシチューを口に運ぶ。<br>　「お母さん、私、付き合っている人いる」<br>　「え、ああ、そうなの」<br>　意外な反応だった。良くても悪くても、もっと大きな反応だと思っていた。<br>　「その人にもらったの」<br>　「それで、今日はその人とデートだったわけね」<br>　「え、なんで分かるの！？」<br>　そのことまでは言うつもりはなかった。<br>　「自分の娘が勝負服着ている時くらい、母親には分かるのよ」<br>　母は、私の体を円で囲むようにスプーンを動かした。<br>　あ、そうなんだ。<br>　私は自分の今日の服装を改めて見た。<br>　「どういう人？」<br>　「うーん、優しい人」<br>　「かっこいい？」<br>　「うん」<br>　「お父さんとどっちが？」<br>　「タケのほう」<br>　「タケ？」<br>　「ああ、彼氏のあだ名」<br>　自分で言ってびっくりした。平然と自分の口から「彼氏」という言葉が出た。<br>　「お父さん悲しがるよー」母はふふ、と笑った。<br>　でもね、と母は続けた。「お父さんが私は世界で一番かっこいいと思うの」<br>　私は、もーとあきれた調子で言ったけれど、そういう話ができるのが楽しくて仕方なかった。女性として、同じく女性の母と初めて話ができたと思った。自分の母親としての母とは話すことはできたが、女性としての母には、全然手が届かないと思っていた。<br><br>　薬と聞けば、どこか悪いイメージしかなかったけれども、誰にも迷惑はかけていない。自分で貯めたお金で買って。薬の効果で誰かを傷つけたわけでもない。病院送りになって親に迷惑をかけたわけでもない。ただ、自分が幸せになっていくだけだ。その幸せを、「薬」というだけで否定しようとするのか。私の幸せを、誰が投げ捨てる権利があるのか。<br>　残り４錠の内２錠を飲んで床につき、私はそんなことを考えていた。<br>　ずっと引きずっていた負の感情とは、そろそろ決別してもいいのではないかと感じていた。<br>　それでも、自分が薬のために幸せを手に入れられたんだという話を誰かにするつもりはなかった。いくら言葉では割り切れても、どこかでその話をすることには抵抗があった。千尋に話したら、千尋はどんな顔をするだろう。母は、父は。<br>　薬を飲み切ったら、もう薬のことはきれいさっぱり忘れようと思った。もう十分幸せだ。<br>　幸せ……。<br>　ちくり……。<br>　……。<br></font><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a 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<link>https://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10872326344.html</link>
<pubDate>Mon, 25 Apr 2011 20:45:25 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２１）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10870533589.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　はっとして目を開けた。カーテンの隙間から朝の光が射し込んでいる。<br>　え？<br>　直感的な焦り。目覚ましを取って時間を見た。<br>　「やばい！」<br>　泣きそうになった。１１時だった。待ち合わせの１０時からだいぶ遅れていた。<br>　「なんでいっつもこうなのよー」<br>　急いで支度をして、家を飛び出した。もう１時間以上も先輩を待たせてしまっている。初っぱなからこれでは、嫌われてしまう。<br>　髪型を整えるのもそこそこに、私は家を飛び出した。<br>　もっと完璧にして出ていきたかったのに！<br>　とにかく先輩が怒っていないか心配だった。携帯には連絡が来ていなかった。<br>　もしかしたら、帰ってしまっているかも。<br> 待ってて下さい！待って下さい！<br>　前髪を押さえながら、待ち合わせの大黒屋前の公園に走った。<br>　公園に着くと、乾いた空気を吸い込みながら、あたりを見回した。ブランコに、彼は、いた。<br>　かなりきっちりした格好だった。スーツ姿に近い格好。そのままフランス料理店にでも行けそうだった。<br>　やっぱり先輩は、こういう格好してるんだ。<br>　　髪をもう一度手グシで直して、先輩の方に体を縮めながら近寄った。<br>　「あ、おはようございます。すいません。ごめんなさい」<br>　ブランコに乗った先輩の背中に申し訳なさそうにそう言うと、先輩はこちらを向いてきたが、まともにその顔を見ることができなかった。<br>　「寝坊したの？」やさしい声だった。<br>　「ごめんなさい」<br>　ちらっと先輩の顔を見た。いらだちのかけらも無い顔が、私を安心させた。<br>　「昨日は眠れた？」<br>　「はい、だいぶ」<br>　「寝すぎちゃったのかな？」<br>　「はい、本当にごめんなさい」<br>　「よし、行こう」先輩は手のひらを私の手の前に出してきた。<br>　「本当に、ごめんなさい」申し訳ない気持ちで、私は先輩の手を指先だけで握った。<br>　「今日はもう謝るの無し！楽しむよ！」先輩は、指先だけでしがみついている私の手を、ぎゅっと握り返してきた。<br>　はい、と私は晴れ晴れとした声を出した。<br><br>　私たちは、休む間も惜しんでアトラクションに乗り続けた。先輩は、いつもと違って子供のように無邪気に遊園地を楽しんでいた。私の方が疲れてしまっているのに、先輩は私の遙か先にアトラクションの前まで行って、早く早くと叫んで、手招きした。先輩の意外な一面だった。<br>　「そろそろ帰ろうか」<br>　先輩がそう言った時、私の足は棒のようだった。先輩には言えないが、やっと終わったという気持ちが、もっと一緒にいたいという気持ちと同じくらいあった。<br>　デートってこんなに疲れるものなの？もっと穏やかじゃないの？<br>　先輩が帰り際にどこかに行ってしまうと、たまらず私は近くのベンチに座り込んでいた。<br>　先輩が戻ってくると、その手には、柊の枝がまたしてもあった。<br>　「どうしたんですか、これ？」柊の枝を見て、私は訊いた。<br>　「あげようと思って。ゆきちゃんに」<br>　先輩は私の隣に座って、私の膝の上に柊の枝を乗せた。<br>　「あ、ありがとうございます。どこにあったんですか」<br>　私が見た限り、高ノ宮遊園地の中には、どこにも柊の木は植えられていなかった。植えられていたとしても、さすがに遊園地の木の枝を折ってくるような人ではない。しかも、もしそんな風にして折ってきた枝なら、周りの目を考えると、あまりいらなかった。<br>　「その枝ね……。今公園から折って持ってきた」<br>　そんなわけがないでしょ。遊園地から公園まで走っても片道５分くらいかかる。先輩が私から離れたのはそんなに長くなかった。<br>　「本当だよ、信じてないでしょ、ゆきちゃん」<br>　先輩がひどく真面目な顔をしたので、強制的に信じさせられた。<br>　変なの。<br>　そう、なんだか、変なの。ずっと。<br>　夢なの？<br>　先輩の肩が、私の肩に軽くぶつかってきた。<br>　先輩の体との近さを感じて、先輩の顔を見上げると、何も言わずにこちらをじっと見ていた。そしてその顔は、どんどん近くなった。<br>　キス。<br>　「ちょ、ちょ、ちょっとごめんなさい」<br>　私は手を先輩の両肩に当てて、それ以上近くならないようにした。<br>　夢なのに、キスともなると緊張した。あまりの緊張に、静止させてしまった。<br>　久しぶりに感じた夢の中にいる実感。いつものように、ここが本当に夢だと言える確たる証拠はない。何とも言えないけれど、空気をつかめるような独特の感覚。それが、夢の中にいるという唯一の証拠。<br>　よかった、と安心する。これで、遅刻の罪悪感もなくなる。現実のデートも、もっと疲れないもののはずだ。<br>　でも、ここから、どうすればいい？<br>　両手で止められている先輩は、起きていることが不思議そうな、そしてがっかりしたような顔をしていた。<br>　待てよ、と思う。<br>　このままキスしないままで夢が終わったら、現実でもやっぱりキスできないの？<br>　それは、イヤだ。<br>　さっきは勢いで止めてしまったけれど、したくないわけではない。むしろ嬉しかった。ただ、心の準備ができていなかっただけだ。<br>　何とかしないと。<br>　「あの……いいですか？」<br>　この単語ひとつ言うことが、こんなに恥ずかしいのか。<br>　「キ……ス……いいですか？」<br>　先輩は黙ってうなずくと、もう一度、顔を近づけてきた。<br>　夢なのに、唇の感触が分かった。<br>　そっと３秒程、そのままで、私は夢から覚めた。<br><br>　それが、私が薬を飲んでから見た、最後の夢。<br>　真実など、忘れさせてくれた、夢。<br><br>　「よし、大丈夫」<br>　前髪一つでも、理想通りになるように、何度もやり直した。<br>　夢から覚めたのは、目覚まし時計がなる２時間も前だった。夢の中の遅刻のせいでその後は心配で眠りたくなくなり、二度寝の誘惑に何とか打ち勝った。<br>　そのおかげで、デートの準備は万端だった。<br>　鏡を見てリップを塗る時、夢でのキスを思い出した。まだ感覚が残っているみたいで、指の腹で、唇をそっとなでた。<br>　～唇かんで指で触ってあなたとのキス確かめてたら～<br>　aikoが歌う『ボーイフレンド』の曲の、ワンフレーズのリズムが、どっどっどっどっ、と心臓の鼓動とかぶさって、鼓動を一層強くした。<br>　ファーストキス。<br>　ダイニングのテーブルに座った。母はすでに出勤していた。<br>　「どうしよー！」<br>　テーブルに突っ伏して、とりあえず大きな声を出してみるが、ダイニングの静けさにすぐ吸い込まれた。<br>　どんな顔するの？目はつぶるの？顔は何度に傾けたらいい？そのままくっつければいいの？<br>　今日キスができると知ったところで、私にできることなど、なかった。<br>　<br>　公園には、思いの外着くのが早すぎてしまった。待ち合わせの１０時まで、あと１５分近くあった。<br>　ブランコにでも揺られていようかと思って、ブランコに近づくと、先輩の背中が向かう先にあった。いつもの学生服と違ったので、一瞬分からなかったが、先輩だった。<br>　先輩はジャケットにジーンズという服装だった。いつもと違って、ちょっと大人な雰囲気にどきっとした。<br>　私、釣り合ってるかな。<br>　自分の服装を再度見直した。釣り合っていなかったとしても、どうしようもないのだけれど。<br>　私は手鏡を取り出して、髪型をチェックした。来る途中、もう何度も見直していた。<br>　よし、と軽く深呼吸をして、先輩に近寄っていった。<br>　「遅れてすいません」<br>　その声に、先輩が振り向いた。何か言おうと息を吸った口のまま、先輩は一瞬固まった。<br>　「びっくりした」<br>　「え？」<br>　「あ、いや、別人かと思った。いっつも制服しか見たことないから」<br>　「変、ですか？」<br>　「いや、何て言うか」先輩は首を振った。「何て言うか、その、うん、可愛いよ」<br>　「あ、ありがとうございます」<br>　本当は飛び上がりたい気分だったが、何とか照れ笑いに抑えた。<br>　「よし、行こっか」<br>　先輩は私の手を握ってきた。<br>　「ん？どうかした？顔に何か付いてる？」<br>　私の視線を感じて、先輩は自分の顔を手のひらでこすった。別に先輩の顔に何か付いているわけではなかった。夢の中のキスをあまりにも意識しすぎるせいで、私は先輩の唇ばっかりに目がいっていたのだ。<br>　「猪俣先輩、どれくらい待ってたんですか？」<br>　それが気づかれていないかと戸惑って、無理矢理話題を変えた。<br>　「またその呼び方してる」<br>　「あ」<br>　そうだった。<br>　「タケって呼ぶんでしょ？」<br>　「はい、そうでした」<br>　「それに、敬語じゃなくてもいいでしょ」<br>　「はい……うん」<br>　「今度、猪俣先輩って呼んだり、敬語使ったら、そうだな、大黒屋のクレープおごってもらおうかな」先輩はいたずらっぽく笑った。<br>　「ええー。やだーそんなの」<br>　「言わなきゃいいんだよ」<br>　「じゃあタケも。何か罰ゲーム作ろうよ」<br>　「イヤだよー」<br>　少しずつ、少しずつ、恋人になってゆく、気がした。</font><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673"><img src="https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fimage.with2.net%2Fimg%2Fbanner%2Fc%2Fbanner_1%2Fbr_c_1673_1.gif" width="110" height="31" border="0" alt="人気ブログランキングへ"></a><br>携帯はこちら↓をクリックして投票<br><a href="http://blog.with2.net/link.php?1185895:1673" target="_blank">ブログランキング（現代小説）</a><br><br><br><br><br>
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<pubDate>Sun, 24 Apr 2011 13:32:34 +0900</pubDate>
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<title>眠れる女子（２０）</title>
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<![CDATA[ 「眠れる女子」<br>あらすじは<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10850100402.html" target="_blank">こちら</a></u>から。第一話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10846323640.html" target="_blank">こちら</a></u>から。前回の話は<u><a href="http://ameblo.jp/mugen-infinity/entry-10868920148.html" target="_blank">こちら</a></u>から<br><br><br><br><font size="3">　先輩との帰り道を、ふらふら歩いていると、知らぬ間に、大黒屋の通りに来ていた。私が来たわけではない。私は先輩が歩くままに歩いただけだ。だから、先輩が連れてきたということになる。<br>　「先輩、ここ知ってるんですか？」<br>　「うん、よく来るところ」<br>　「え！？私も小さい頃からよくここ来るんですよ」<br>　「そうなんだ、奇遇だね」<br>　やっぱり夢が当たった。てっきり大黒屋だから、私が連れてくるのかと思っていたし、夢の中もそういう台本だった。先輩が知っているとは、予想もしていなかった。でも、逆に嬉しかった。大好きな人が、自分が好きな場所に来ていたのだから。<br>　「おごるよ。何がいい？」<br>　「あ、ありがとうございます。私は、ストロベリーアンドストロベリーで」<br>　「じゃあ、俺は……。」<br>　「あっ、待って下さい、私当てます。先輩の好きなもの」<br>　「え？」<br>　先輩はきょとんとした。<br>　私は夢で見た光景だったから、少し調子に乗った。予言者にでもなったつもりだった。夢で先輩が食べていたものは、ショコラオレンジだった。甘いショコラのクリームに、オレンジの甘酸っぱいソースが混ざっていて、甘さがしつこくないクレープだ。<br>　私はわざと考えるふりをした。<br>　「ショコラオレンジ……じゃないですか？」<br>　先輩は嬉しそうな顔をして驚いた。<br>　「なんで、なんで分かるの？」<br>　「いや、なんとなーく」<br>　「でも、なんか嬉しいな、そういうの」<br>　私は得意げな顔をした。<br>　<br>　クレープを食べながら、ブランコに乗り、そこから見える大好きな景色を見た。何もかもが、私を幸せにする力を持っていた。きっと死ぬ前になったら、この日見たものを、思い出すだろう。<br>　「俺も、ここの景色好きなんだよね」<br>　先輩が、指先についたクリームを軽くなめた。<br>　「私もです。」暗がりとオレンジをバランスよく見せる街並みに目をやった。<br>　「ここのクレープも、景色も、全部」<br>　隣でブランコに座る先輩の向こうに、柊の白い花が見えた。<br>　私は今、幸せだよ。淋しくないから。<br>　心の中で呟いた。<br>　ただ、全てが幸せに包まれている状況で、１つだけつかえていたのは、ストロベリーアンドストロベリーを見ると、あの日落ちた恭哉のクレープを思い出すことだ。その鮮やかなピンクが、心のどこかにマチバリのように刺さっていた。<br>　「どうしたの？ゆきちゃん。クレープ食べないの？」<br>　「いえ、何でもないんです」無理矢理クレープを口に突っ込んだ。そしてせき込んだ。<br>　「そんなに無理して食べなくても」先輩は笑った。すいません、と私はむせながら謝った。<br>　「ゆきちゃん、明日、暇？」先輩はブランコをこぐ体を止め、笑った顔を少し戻した。<br>　「暇、です、けど」<br>　何だろうと私は不審そうに答えた。<br>　「じゃあ、明日は遊びに行こう。高ノ宮遊園地に」<br>　高ノ宮遊園地。デートと言ったらここだ。中学生の頃に女友達と行って、挫折して帰ってきた。家族連れかカップルしかいなかったからだ。ジェットコースターや観覧車が、出て行けと私たちに行っているような気がした。二度と来るか。出てくるときにそう言ってやった。心の中で。<br>　デートだ。デート！<br>　やった！<br>　「待ってろ、ジェットコースター」<br>　飛び上がるほどの喜びと共に、昔の屈辱を思い起こして、ぼそっと口から出た。<br>　「え？嫌い？そういうの」<br>　「いえ！全然好きです」<br>　「よし、じゃあ、明日ここで待ち合わせしよう。１０時」<br>　「はい！」<br><br>　「先に行ってて」と先輩に言われて、公園を先に出た。後から先輩が追いかけてきたときには、先輩が手に柊の枝を持っていた。<br>　「どうしたんですか、それ」<br>　「これ、ゆきちゃんに、あげる」<br>　「え、どうして」<br>　「好きでしょう？柊の花」<br>　私はびっくりした。公園にいたときも、柊の花が好きだなんて一言も言わなかった。<br>　「どうして私が好きだって分かったんですか？」<br>　「いや、なんとなーく」先輩は、クレープを当てたときの私の口調を、まねした。<br>　どうして、クレープを当てられたときに先輩が嬉しそうな顔をしたか分かった気がした。自分のことを考えてくれている、分かってくれている、それが私には嬉しかった。<br>　「でも、これ、取って来てだめなんじゃ……」それを取ろうとして怒られたバカが、昔いた。<br>　「だから、そーっと」先輩はいたずらっぽく笑った。<br>　こういう変なこともやってしまう人なんだと新しい発見だった。絶対にそういうことをやらない人だと思っていた。<br>　ありがとうございます、と言って、私は柊の甘い香りを連れて、帰り道を行った。なぜ私が柊の花が好きだと分かったかは、結局言ってくれなかった。<br>　「あ、先輩、私ここで」<br>　前の日と同じ場所で、別れの挨拶をした。それを言うのは、嫌だった。<br>　「うん、じゃ。あ、そうだ」手を上げてから、先輩が何かに気づいたようだった。<br>　「ゆきちゃん、もう『猪俣先輩』は止めようよ。付き合ってるんだし」<br>　「あー。えー。じゃあ何て呼べば……」<br>　戸惑ってしまった。私の中で猪俣先輩は猪俣先輩だ。<br>　「下の名前が、健だから、タケでいいよ。タケル、でももちろんいいけど」<br>　「じゃあ、タケ、で」<br>　健だと、あまりにもいきなり親しすぎると思った。タケのほうが、距離感としては、ちょうど良い。<br>　「じゃあ、また明日、ゆきちゃん」<br>　「また明日、……タケ」<br>　やっと言えた『タケ』は、聞こえたか分からなかった。<br>　家に着くなりベッドに倒れ込んだ。<br>　付き合うって結構体力使うんだなあ。<br>　ふと気を抜くと意識を飛ばしてくる睡魔に襲われながら、タケ、タケ、と何度も口に出した。そうする度に訪れる胸にチクチクした感覚を味わいながら、意識が遠くなっていくのを楽しんだ。<br>　<br>　何を着ていこうか。<br>　夕食後、鏡を見ながら、あーでもない、こーでもない、と明日着ていく服を自分の体の前で合わせては投げる、合わせては投げるを繰り返した。<br>　まさか自分がこんなことをするなんて。<br>　今までだって、おしゃれに気を使わなかったわけではないけれど、明日は特別だ。猪俣先輩の隣を歩くのに、先輩とレベルの釣り合った格好をしなければならない。誰に笑われるわけではないけれど、不釣り合いな女の隣を歩かせるわけにはいかなかった。気の毒だと思ったのだ。<br>　「こんなことだったら服買っとくんだった」<br>　先輩はどんな服装が好きなんだろう。カジュアル？きれいめ？ラフ？かわいい感じ？ギャル？いやいや、そんなわけないか。<br>　決められない。<br>　「どうしたらいい？千尋に電話でもしようか」<br>　花瓶に挿された、先輩からもらった柊の枝に問いかけてみた。けれども、柊の花は、自分で決めなさいよと言っているような気がした。<br>　分かったわよ。<br>　「よし、これとこれと、これ」<br>　お気に入りの真っ白いロングスカートと、水色と黒のチェックシャツ<br>に、灰色のピーコート。悩んだ挙げ句、一番無難ではずれがないものにした。下は、この前買ったブーツにした。「デートでは、あまり決めすぎず、なおかつ女の子らしさをさりげなくアピールすることが大事！」。ちょっと前に読んだ女性誌の、「デート成功大作戦」なる企画が、やっと役立つ日が来た。<br>　「ふー」<br>　デートの度にこれほどまでに神経をすり減らすのか。大変だ。<br>　気づけば、１時間程服装のことを考えていた。<br>　先輩も今頃はこんなことしてくれてるのかな。<br>　胸が高鳴った。<br>　自分のいない所で、先輩は自分のことを頭に浮かべて頭を悩ませてくれている。他の女子と話しているのではなく、私のことを考えている。<br>　他の女子。<br>　そう言えば。<br>　「繋ぎって言ってた」<br>　かつて、恭哉が先輩を悪く言ったことを、あろうことか初デートの前に思い出してしまった。だが、先輩の様子を見ていると、何か証拠があるわけでもないが、私のことをしっかり見てくれている気がした。待ち合わせの場所に一生懸命走ってくる姿や、私のために柊の枝を取ってくれることを考えると、女の子を「繋ぎ」だなんてひどいことを言う人には思えない。<br>　やっぱりあいつが間違ってたんだ。あいつがバカなんだよ。嘘つき。<br>　私の中での先輩の汚名返上と同時に、恭哉の評価はさらに低くなった。<br>　やめよ、こんなときに恭哉のこと考えるのは。気分悪くなる。<br>　起きていてもそわそわしてしまうから、早く寝ようと決めた。放り投げた服を片づけた。<br>　あれ、歯って磨いたっけ。<br>　緊張のし過ぎのせいか、歯を磨いたかどうか分からない。<br>　親子揃って、数日ぼーっとしている。私は眠気がひどかったし、ぼけてやったことも忘れていた。母も今日の会議が相当忙しかったからか、夕食中ずっと鶏の唐揚げをはしでつまんだまま宙に浮かせていた。相当忙しいのだなと思い、またしても先輩の話をせずに夕食を終えてしまった。<br>　今日２錠飲んだら、あと残り４錠か……。<br>　しかし、残り４錠が無くなったからと言って、もう買いに行くことはできない。売っているか分からないと言うことではなく、単純にお金が無い。<br>　もう夢は叶った。<br>　眠れない不安も、無い。<br>　だが、なぜか、細々とした恐怖があった。薬の少なさを見る度にそれはちらついた。<br>　でも、買えないものは仕方ないもんね。<br>　私は２錠取り出し、いつものように飲んだ。<br>　明日はデートだ。早く明日になれ。<br>　目覚まし時計を見て、明日の待ち合わせ時間まであと何時間か計算した。秒針は思ったより動きが遅く、じれったいばっかりだったが、それでも、想像もできない明日へと着々と進んでいた。<br>　良い夢見よう。<br>　目を閉じた。<br><br><br>　良い夢だった。が、それが私を幸せにする、最後の夢になるとは思わなかった。</font><br><br><br>―――――<br>投票数を次回の反省点にしています。応援してくださる読者様、面白かったら押し↓、面白くなかったら絶対に押さないで下さいね。<br><br>PCはこちら↓をクリックして投票<br><a 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<pubDate>Sat, 23 Apr 2011 23:34:36 +0900</pubDate>
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